垣根帝督「はぁ? 俺はオタクじゃねえぞ」 (985)

ゆるいかんじの『スクール』のSSっつうかだべってるだけみたいな

主な仕様
◎更新不定期
◎時間軸は原作十五巻より前
◎土星わっかゴーグル君は「ゴーグル」呼称。テキトーなキャラ付けと出すかわからん能力の設定も一応済み。ベタっぽい念動系

馴れ合い、あと垣根が原作よりデレるかもしれないから嫌な人は注意
『スクール』周辺は情報少なすぎだからほぼ妄想



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407332154

「なぁ。これどうすんだっけ」
とあるマンションの一室。
カウチに寝転がったままの少年が誰にともなく呟いた。
呑気にスマートフォンをいじるのは学園都市の生んだ最高位の能力者、超能力者第二位垣根帝督。
その声に振り返ったのは、ちらかった机の前でパソコンのキーを叩いていた少年だった。
少年がカウチの前まで部屋をつっきってくると、ぽいっとスマートフォンが放られた。
それを受け取って画面を覗くと少年は首を傾げた。
「なんスか……って、この前『スクール』でリスト作ったSNSアプリじゃないっスか。あれ、垣根さん公開アカにしちゃったんですか?」
『スクール』。毒をもって毒を制する学園都市の自浄装置、暗部組織の一つで垣根がリーダーを務めている。
この少年は、その内でも数少ない正規構成員の一人だった。
能力使用時に腰に下げた装置と頭部を繋いだゴーグルを使うために組織内では「ゴーグル」なんてそのまんまなあだ名で呼ばれている。
本人は、
「どうせならもっとカッコイイので呼んでくださいっス!」と憤慨し、愛用するハンドルネームをメンバーに教えてまわったのだが努力むなしくちっとも浸透していない。

ゴーグルにうなずくと垣根はだるそうに足を組んだ。
足元は革靴のままアームレストの上に掛けてしまう。
「別に連絡受けるだけの仕事用の番号だし気にして無かったんだけどさ。何かやたらとフレンド申請が来てんだけど。なんで?」
「なんでそんな動きのないアカに申請が……えーと『どこ鯖ですかコードxxxx-xxxx-……』『高レベ友求』『上位レアトレードリストあります』……あー、垣根さん。もしかして……自分の名前そのまま入れちゃいました?」
「うん」
一覧に表示されたメッセージをざっと見ると。
少年はしばらく考えてから垣根にそんなことを聞いた。
そして何だか気まずそうに頭を掻いた。
「多分……うーん、相手の勘違いっスね。うわ、知らないって怖いわー。垣根さんっスよ? こんなこと言えないって」
「あとな、なんかムカつくのがいる」
一人勝手に納得している様なゴーグルを手招くと垣根はスマホを操作してみせた。
「どいつっスか『かっけえ誤字m9(^Д^)www』うわー!」
「何なんだこれ」

顔文字つきのメッセージを読むなりおかしな声をあげるゴーグルの少年。
意味がわからないらしく心底不思議そうな顔をする垣根に。
少年は少し悩んでから息を吐いた。
そして何故か真剣なおももちで切り出した。
「……垣根さんこれは俺の想像なんスけど。どうか怒らずに聞いてもらえますか」
「中身によるな」
「『艦隊っち』ってゲーム知ってますか」
「いや」
「戦艦がモデルになったキャラクターを育てて戦わせるオンラインゲームがあって、『艦っち』なんて呼ばれて今人気なんスよ。多分、そのユーザー間のフレンド募集してる連中に絡まれてます。このSNS名前やキーワード検索も出来るんで」
「俺そんなの知りもしねえけど。なんの関係があんだっつうの」
そこまで説明してからゴーグルはもう一度。
念をおす様に垣根の顔を見つめた。
「えっと……怒らずに聞いてもらえますか?」
「おう。言えよ」
ポーン
そこでスマホが鳴る。
軽い通知音のあとにメッセージバルーンが表示された。
それをみた垣根はほんのちょっと眉を寄せた。

「ん? さっきの奴か」
『ねえねえ間違っちゃってるけどどんな気分?』
「意味わかんねえ」
怒っている、と言うよりも呆れた顔で首を鳴らした。
たとえ外国語にも堪能な超能力者だって、外宇宙語で話しかけられてはリアクションに困る。
「あの」
「ああ。さっさと言わねえと俺の気が変わっちまうかもな」
垣根の物騒な言葉を聞いたゴーグルの少年は意を決した様に首をタテに激しく振った。
「そのゲームって、ユーザーが戦艦の上官って設定なんスよ。つまり海軍の司令官っス。だからゲーム内外でもHN提督って呼ばれたりするのが多くて……その、垣根さんの、名前があのー……多分他のやつもそれで勘違いしてるん、だ…と……思います。つうかそれくらいしか考えつきません」
「ふーん」
ごにょごにょとフェードアウトしながら自分の想像でこのできごとの背景を推理するゴーグルの少年に、垣根はつまらなそうに頷いた。
半目で小さな液晶画面を眺めるその顔から今何を考えてるかさっぱりわからない。

『スクール』の連中がそこそこの付き合いがあっても、このリーダーのことは読み切れない。例え人間の心理に精通した能力者がいても。
超能力者の思考回路は常人のそれとは違うのだ。
何を考えているのかわからない真っ黒な目のまま、ぷちっと突然切れられるのが何よりおっかない。
特にこの第二位は能力の見た目も派手だがやることも派手だ。
ちょっとしたストレスのはけ口にされて破壊されたものは数知れず、以前アジトにしていた所だって垣根が派手に吹っ飛ばしてしまってやむなく引っ越すことになった。
ちなみに判明しているうちで、最も踏んではいけない地雷が彼の能力『未元物質』にまつわる事だったりする。
「この世界には存在しない物質を生み出し操る能力」なんて、炎や電撃を出したりと言う一般的なものよりスケールの大きな力だが。
何故か能力を使うと背中に羽根が出てくる。天使の様な、と言う言葉がピッタリのメルヘンチックなやつが。
それも六枚も。
天が与えた罰ゲームかそれとも何かの代償なのかは不明らしいが。
どんなに愉快でもそこに触れてはいけない、と言うのが組織内の暗黙の了解になっていた。

『人が教えてやったんだからありがたく直したらw恥さらし君』
地雷原を爪先立ちでそろそろ歩いているゴーグルの少年の目の前に、燃料がポイっと投下される。これをよけたところで、別の場所がドカンといくかもしれない。
泣きたい、と言うか逃げ出したい。いいよなあネット上でどれだけ煽ってもおまえには実害ないもんね?! と顔も名前もわからないユーザーに八つ当たりしたいくらいの気分だった。
「決して! 俺は馬鹿にしてる訳じゃねえっス!!」
「つまり俺の名前がお船の提督で、おかげでお前の同類とお友達だと思われてるってことか?」
一体どこが気に障ったのか。
にやあ、と口元をつりあげた垣根の手の中でスマートフォンが嫌な音を立てはじめた。
大慌てでゴーグルは垣根をなだめた。
「垣根さん! スマホが! 画面割れます!!」
「間違ってねえよ本名だよ。一発じゃちゃんと変換できねえし検索もされねえけどな。そんなの俺の責任じゃねえよ。何なんだこいつ」
「暇なんスよきっと」
持ち主の手から避難させたスマートフォンの無事を確かめながらゴーグルの少年は見知らぬだれかさんを憐れむ様に言った。

ポン
ポン
ポーン
ものの数分で再びメッセージが届く。
意味のないやりとりの為に貼りついているなんて、この相手はゴーグルの言葉通りよっぽど暇なのだろう。
『既読蹴んなしwあ、ひらがなじゃないとわからないかなwwwwwww』
「垣根さん、相手にしない方がいいっスよ」
「そこまでレベル低くねえよ」
ゴーグルの少年に釘をさされた垣根は手にした雑誌に目を向けたまま答えた。
心外だ、と言いたげな様子ではもう腹を立てていないらしい。
垣根の許可を得てSNS内の他のメッセージや設定のチェックをしていたゴーグルは用の済んだスマートフォンを返した。
「でも公開解除もこいつの拒否もしないんスか」
「こっちが折れたら負けた気がすんだろ」
気にしていないのかと思いきや、そんなことはないらしい。

「あれ。しつこくメッセ飛ばしてた奴来なくなりましたね」
それから小一時間近く、数分間隔で挑発的なメッセージと画像の嵐だったのだが。
気付けばぴたりと止んでいた。
「ああ。『スクール』の下の奴に声かけて、軽く灸すえさせといた」
「どんなのっスか」
垣根も、つっかかってきた相手をただ放置していたわけではないらしい。
ちょっとそわそわしながらゴーグルは椅子に座り直して話を聞く。
「電話番号から契約してる端末の名義、そっから『書庫』で所属校割り出して、組織下の奴に学校内のデータをハックさせた」
「それで」
「そいつのこの前の定期考査と『身体測定』の結果を送ってやった。『暇があるなら勉強でもしたら』っつって」
「うわあ。特定怖っ」
口ではそう言いながら、愉快そうにゴーグルの少年は笑った。
せいせいした様子の垣根は指定リスト内の受信メッセージに目を通しながら笑い返した。
「お。何かついでにそいつのプロフや背景の画像がテストの答案になるようにオマケしたらしいぞ。それもひっでえ奴。あいつらも暇だな」
「うっわあ。でも大人気ないってか意外と地味なお返しっスね」

「けどそいつのゲームのデータをサーバーから消す、とかまでいくとやりすぎだろ。出来なくねえけど。馬鹿にされたくらいでんなことまでする気はねえよ」
実際にはさせる、と言う方が言葉としてはきっと正しい。
垣根帝督の行動範囲と実行可能な内容は一般的な個人のそれよりはるかに広い。
使える能力、金、人脈。そして選択肢の中には非人道的で反社会的なものも含まれている。
ほんの思い付きで社会的どころか実際に相手を消せる程度には。
そう考えると今回垣根がしたのは他に比べて優しいくらいの対処だった。
その気になればちょっとした警告以上のことが出来てしまうところまで相手に伝わっているのかわからないが。
相手もほんのちょっとのストレス解消のつもりで、言ってみればベルト持ちのプロボクサーをサンドバッグがわりにしようとしたのだ。
これくらいで済んでラッキーだとゴーグルは言ってやりたかった。
しかし。
「それはちょっと俺、垣根さんの味方出来ないっスわ」
「そう言うシャキっとした面は仕事中にしろよ」
ゲーム好きと公言するゴーグルの少年はデータ削除と言う死刑宣告並みの提案に至極真剣な目をしていた。
「あーあ。つっまんねえの。なんかオススメのアプリとかねえの。レベル上げとかめんどくせえのはパスな」
「あっ! それならこのパズルゲーなんてどうスか?」

実際艦○れのフレンド機能にユーザー間補助とかそんなのないらしいけど
艦っちはパ○ドラとかパズ○ックスみたいなありがちアプリやよくあるカードゲームモドキを足したもんだと補完してっス


垣根提督「艦むす……?」

東京湾で迷子になったバレーボールさんがなぜか艦隊娘の残留思念てきなデータを読み取ってそこから未元物質で艦むすをつくるよ!
ってネタがさいしょうかんだんだけど
艦むすやったことなくてわかんねえのと資材も補給も整備もなにも
未元物質じゃあ無限供給っぽいからチートハーレム以外の遊びようがなさすぎて没
だれかやって

なんかかけたらまたくる
読みづらかったら言って
ドーモ

読みづらい

何か最近改行しない奴多いな

改行じゃなくて「行間空けてくれ」って言いたいのか?

俺の環境だと改行はされてる文章に見えるんだけど

行間だろうね。
文句言う割には日本語自分も正しくないというね笑

乙。面白いです。

今はラノベの行間すごい空いてますからねー
慣れてないとこういう詰まった文章読むのは辛いのでしょうか?
すぐ慣れると思いますがー


「ちース、今日は間にあいましたよ!」

そう言って部屋に入るゴーグルの少年だったが、彼は室内を見回して首を傾げた。
リビングルームのソファには心理定規だけが座っていた。
肝心のリーダーの姿がない。
連絡があるといつも一番乗りってくらいに待ち構えているのにだ。

「あれ? 招集かかったんじゃないんスか? 時間そろそろっスよね。垣根さんは?」

「あっち。服が決まらないんですって」

心理定規が指差した先、ドアの前には紙袋や箱が乱雑に置かれていた。
見た所買い物帰りと言った感じだった。
それにしても量がやけに多い。

「てっきり君も荷物持ちに付き合ってたのかと思った。違ったの」

心理定規の言葉にゴーグルの少年は首を振る。
今日は用事があって学校に顔を出していた。
彼も一応、真面目に学生生活は送っているつもりだった。
授業中にアプリのイベントに精を出して、休み時間に友達とノートを回しあうくらいの一般的な学生レベルで。

「そんなにデカい用事だったんスか?」

聞けば、垣根は昼ごろにいつも使っている運転手を呼びつけて買い物に出かけていたらしい。
心理定規もその場にはいなかったらしいが、リーダーはどっかのファッションショーにでも出るのかとドライバーがこっそり口にしていたのを聞いたんだそうだ。

「いつものじゃダメなんスかね。それにあれは『スクール』での仕事着みたいなもんだって前に垣根さん、自分で言ってませんでした?」

「そう言えばこの前かな。よく行くお店で顔が覚えられたかもしれないってぼやいてたけど」

超能力者なんてネームバリューを考えたらそんなもの、とっくに学園都市じゅうに知れ渡っていてもおかしくないが。
実際は。
超能力者であっても、通称である能力名や本人のフルネーム以外は広く知られていなかったりする。
七名の超能力者のうち、一人は名前どころかどんな能力かさえ。影も形も定かではないくらいだ。


『未元物質』垣根帝督もその例にもれないらしい。
今は一応暗部組織にいるのだからあまり有名過ぎても困るのかもしれない。
本人もこだわりがあるのかたまに人目を気にする様な素振りを見せていた。
もしかしたら。
能力を使えば嫌でも目立ってしまうのを実は気にしているのかもしれない。
かと言って急なイメチェンに走るのはゴーグルの少年にはよくわからなかった。
例えば有名校の制服や、目立ち過ぎる特徴で相手に正体を悟られてしまう、なんてことは垣根の場合あまり心配ないように思う。
いい意味で人目を引くことがあっても。


「それ服関係あります? つか心理定規は着替えなくていいんスか」

「私? 私仕事中はこれでいいのよ」

「暗部っぽいって言うか、なんか危ない仕事みたいっスよね」

この時期はどこに行っても冷房が効いているからだろうか。
今日はきれいな色のストールを持っていたけど、心理定規の格好はいつも肩が寒そうなドレスばかりだった。
高級クラブでも似合いそうな格好をした見た目推定中学生、と言うのもなかなか怪しい。

「なあに?」

「いや! 大人っぽくてカワイーっスね!」

じっと見ていたゴーグルを心理定規は見つめ返した。
小首を傾げて上目づかいのサービスつき。
美少女にそんなことされたらテンションが上がりそうだけど、ゴーグルはさっと顔の横で両手を振ってついでに首も振る。
リーダーの次くらいに一癖あって食えないのがこの少女なのは『スクール』ならみんなが知っていた。

「はいはい。ちょっと彼の様子見てきてもらっていいかな? そろそろ電話かかってきちゃうかも」

そう言って。
長い爪を気にしながら心理定規はスマートフォンをいじりはじめた。


「垣根さん? 俺っス、いいっスか」

「ああ。入れ」

ノックをして、頭を下げつつ部屋に入ったゴーグルは中の様子に眉を寄せた。
リビングルームのすぐ隣の洋室はついこの前までさっぱりしていたのに。
今はどこかの服屋のバックヤードみたいな状態だった。
店ならもう少し片付いているかもしれない。

紙袋、緩衝材にビニール、空き箱も中身の服や小物も乱雑に置かれていた。
有名な服飾ブランドから、『外』の格安メーカー、中には聞いたことのないような店のものまで。
靴だけで少なくとも五つのブランドの箱が積まれていた。
ごちゃごちゃになったその中で垣根は難しい顔をして立っていた。

「聞きましたよ。垣根さんみたいなタイプが表出て人目につかないってのは難しいと思うんスけど」

「だからこうやって色々考えてんだよ。たまには気分転換してえし。けどあれこれ見すぎたな。よくわかんなくなってきやがった」

垣根の着ているものはいつもと同じ。
上着だけ近くのラックに掛けてあった。
着替えようにも何にするかまだ悩んでいるらしい。


「ほら、これどう思う」

垣根が近くにあった服を手に取ると、空中から真っ白なものが伸びてきてその内側に入っていった。
等身大のヒト型の風船をふくらめたみたいにあっと言う間にアイテム一式を身に着けた即席のマネキンが現れた。

「そのシャツに眼鏡は呑みサーの大学生みたいっスよ」

「こっちは」

「チャラい医学生みたいっス」

「これは」

「うーん、中堅ホスト。そのグラサンはすげーイケてるんスけど全体的にNo堅気なタダナラヌ危なさがにじみ出ちゃってます」

「お前なあ、褒めてんのかバカにしてんのか。どっちだよ」

次々と部屋の中に現れるオシャレなのっぺらぼうを前にゴーグルがそんな感想を言うと。
おかしそうに垣根は笑った。

「服は変じゃ無いんスよ。うーん、俺にもよくわかんねえっス」

シャツにジーンズでいいや、と言う一般的な男子学生の感覚と比べると垣根は敷居のちょっと高そうなものばかり好んで買っているみたいだった。
だからゴーグルもセンスの良し悪しではなく、パッと見の雰囲気でコメントを返していた。


と言うか見せる服見せる服全てアイテムが被っていない。
このリーダーの頭の中には着回し、と言う言葉がないのだろうか。
これ全部買ったんだよな、着るかどうかわからないのに? とゴーグルは段々違う所が気になりはじめていた。

「じゃあこう言うのは」

中身があるのかないのかわからない言葉がプリントされた英字ロゴのTシャツ、ベストと下は黒のデニム。
さっきまでのよりは印象はぐっとラフになったが垣根は今ひとつ納得していない顔だった。

「垣根さん地がいいんスから何着てもカッコいいっスよ」

「そうか?」

「背高いしイケメンだし。あ……っと、垣根さんはモデルみたいじゃないっスかーオーラもバリバリだしー俺みたいなその他大勢顔からしたら超うらやましいっスーあれこれ気にする必要ないっスよーーー」

実はさっきからポケットの中の携帯電話が震え続けている。
心理定規だといいな、と思いながらゴーグルは垣根にあいまいな笑顔を向けた。

「そっか」

垣根はなぜか満足そうにうなづくと、別の包みを開けはじめた。
予想外の好感触に、ゴーグルの少年は視界の下で何かのパラメータが上がったことを知らせるアイコンが見えた気がした。


「君ねえ。彼に何言ったの」

「……普通のことです。間違ったことはなにも言ってません」

「何でよりによってあんな……派手好きなパンクスみたいなのになっちゃったの? 全然キャラ違うじゃない。なあにあの髪型」

「逆に目を背けられそうなのにしてみたんだそうでございます。わたくしは一切関与しておりません。俺はノータッチっス!!」

二人がリビングに戻るなり。
険しい顔でゴーグルに寄ってきた心理定規がこっそり指差した先には、普段以上に跳ねた毛束を遊ばせる垣根の頭があった。
ついさっき、着替え終えた垣根が軽く髪に手櫛を入れるとあっという間にスタイリングが決まっていた。
それも『未元物質』効果だろうか。だとしたら万能すぎるとゴーグルはちょっと感動したが。
垣根が唐突に鼻歌を歌いはじめたのでゴーグルがそれを聞くチャンスはなかったのだ。
もちろん、ふっきれるどころか軽くはっちゃけてしまったらしいリーダーにスタッズだらけの派手なジャケットの趣味について意見する度胸なんて最初っからない。
んなもんあるわけない。


あれはゴーグルの内部パラメータの変動じゃなかったのかもしれない。
かと言って垣根の方、とは言っても好感度上昇ではなく、なにかのフラグでもなく。
もしかしたらバッドステータスかもしれない。
馬鹿なことを考えながらゴーグルが垣根の頭上に目をこらしても、もちろんアイコンとかマークとかそんな愉快なものは見えない。

「一応聞くけどね。彼の暴走防止もかねて君にお願いしたのはわかってるかな?」

「心理定規……人間、わかっててもできないことってあるんスよ。垣根さんが『心配するな、自覚はある。一回こう言うカッコしてみたかったんだよ』って言うんスよ? そこに俺がストップなんてかけられると思ってるんスか」

ゴーグルは胸をはる。
長いものには巻かれて、危ない橋は叩きもしない。
まして触らぬ垣根に祟りなし、だ。
要領よくやっていかないとこの学園都市では生き残れない。ちょっとオーバーだが。
とりあえず、ゴーグルの少年の中ではこの組織内で下げる選択肢は存在しない。
上げて、上げて持ち上げていくポジションを確立している。

「だからって……あなたたち自由すぎ。男の子ってわかんない」

使えないと心理定規の冷ややかな視線が語っていた。


「俺はあれはあれでカッコいいと思うんスけど。フェスとかライブとかそう言うイベントなら」

ちょっとその辺に遊びにいこうぜ、と誘われたらゴーグルもお断りするかもしれない。
似合っているのが幸いと言うか不幸と言うか。
街中であれはとっても残念な人にみえそうだった。
中身が。

「さっきマシンガン持ってかないのかって聞かれたんだけど。どうせあんなの使わないだろうし、私邪魔なのは好きじゃないんだけどな」

壁際に置かれた鏡台とスチールラックを睨んで心理定規は頬を膨らめた。
彼女のスペースには、女の子らしいコスメやジュエリーに混じって物騒な小火器が置かれている。

もし戦闘になっても心理定規の能力は対人なら敵は居なくなる。
自分を、相手が傷つけられないような心の近い距離に置いてしまえばいい。
やりようによってはその場で人の盾も手に入るだろう。
しかし、自分からの攻撃手段は無く、乱戦にはあまり意味がないので彼女は暗部の仕事となると武器を持ち歩いているようだった。

「ギターケースに入れっぱなしのあれっスか。いいんじゃないスか? 今なら多分荷物持ってくれますよ。そうだなあ……バンドやるなら垣根さんはボーカルとかギターみたく派手なのっスかね。心理定規はキーボードか、歌えるならボーカルもいいかも。俺はベースかなあ。そうするとやっぱりもう一人、ドラムも欲しいっスよね。あはは、んなこと言って俺楽器弾けませんけどねー」

「おばかな妄想はいいから」

現実逃避しかけたゴーグルに釘を刺すと心理定規は呆れたように首を振る。


「で、これからどこ行くんでしたっけ」

「資料のファイル開かなかったの? 第十六学区にある施設よ。ちょっとした……マナー違反が出たみたい」

第十六学区は学園都市でも優れた商業区画だ。
高額なバイトや特別待遇だけでなく、学生の奨学制度や学区内独自の制度も多い。
人も金も多く集まり流れていく地域だ。

中にはもちろん『特別』なバイトもあるのでトラブルには事欠かない場所でもあった。
『スクール』でも前に「お掃除」や「お片付け」をしたことがある。
慈善事業じゃねえんだけど、とリーダーはつまらなそうにぼやいていた。

「あー……そこだったら呑みサーの学生風でバッチリだったんスね。そう言う連中も多いし目立たなかったかも。今はどこ行っても悪目立ちしそうっスよね」

最初のでGOサインを出しておけば話は早く済んだのか、と今更になって気付き。
ゴーグルは肩を落とした。
なんか余計に疲れた気がしていた。
そんなゴーグルの気持ちは、まあわかってるんだろうけど。
垣根をまじまじとみていた心理定規はお構いなしに次の難題をふっかけた。


「やっぱり着替え直すよう言ってよ。大急ぎね」

ちょっと嫌そうに心理定規は目を伏せた。
でもまあ正直なところ、ゴーグルの少年からみたら垣根も心理定規も派手さなら同列だった。
二人の方向性がちょっと違うだけだ。
ごくごく一般的で地味な服装のゴーグルのほうがたまに浮いているような気がしてしまう。

「ええっ、垣根さん今すげー機嫌いいじゃないスか! それも珍しく! 嫌っスよ。そう言うのって女の子が言った方が効果ありそうだし、心理定規はその辺専門じゃないスか。うまい感じに誘導して下さいって」


そんな気持ちは今は伏せて、情けなく抗議するゴーグルの少年に心理定規は静かに首を振った。
何を言ってるのかしら、なんて心の声が聞こえてきそうなかんじだった。

「効果的だからいやなのよ。私、仕事前に彼の不興なんて買いたくないの。余計な事したくないでしょ」

お馬鹿さん、もおまけについてきそうだった。

「何してんだお前ら。行くんじゃねえの」

ひそひそと二人で話し込んでいる内に、今のいままで人を待たせていたとは思えない態度のリーダーからお声がかかってしまった。

「ほら、まだ間に合うわ。がんばって。ね?」

「ええー!」

いつになく上機嫌な垣根と、口元だけで笑う心理定規に挟まれて。
ゴーグルの少年は自らの不幸さを嘆くしかなかった。


超能力者の自分だけの現実、特にセンスは未知数だぜ
麦野はあの中でも趣味良さそうだよね
下着透けちゃうストッキングはいちゃうけど

ドーモ
スマホでみるとけっこうつまってんね
中身つまらんけどつまってる
せりふまわりの行間いじってみた
ちったあマシかな


面白いぞ

マミ「100円ローソンが来週で閉店なんて・・・ショックだわ。」

まどマギの巴マミの日常の物語です。
この物語は見滝原100円ローソンと巴マミのエピソードである。
キャラ設定の崩壊があるかもしれないですが
ご了承下さいまし。

マミ「100円ローソンが来週で閉店なんて・・・ショックだわ。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408390558/)


なんかいい感じ、面白い
垣根提督のくだりに凄い納得して笑ってしまった

実際の小説とかだとフリガナが入る分の空きがあったりするが
こういう場だと完全に行間が詰まってるからなぁ
個々人の環境設定次第にもよりはするんだろうけども


「ああっ、ダメっスよそこは」

「ばーか違うだろ。もうちょい下だ」

「右っス右!」

「と、思わせて実は反対側が安全だったりしてな」

「あなた達うるさいわよ。これで……どうかなっ?」

「あーっ!! マジっスかー!!」

「よし。次お前だな」



とあるファミレスの一角。
小さい子供むけのおもちゃを囲んで騒ぐ一団がいた。
夕方、混み合う店内の騒がしさの中でもひときわ目立ちそうな大きな声を上げて少年がテーブルにつっぷした。
目の前におかれた『黒ひげ危機一髪』のプラスティック製の剣をつまむとテーブルをつつきはじめた。


「どうしよう……残り六本っスよ」


任務帰りの『スクール』はご機嫌なゲームの真っ最中だった。
ルールは簡単、負けた奴が他のメンバーの食事をおごる。
それだけ。
ただし、外の車内で待つ構成員のテイクアウト分も含まれるので一般的な学生の財布基準でみると痛い出費になりそうだった。

「心理定規、お前ほんとにあれだけでいいのか。飯食わないと逆に太るらしいぞ」

「あなたが頼みすぎなのよ」

「そっか? 和風御膳とポテトとフライ盛り合わせだろ、やっぱピザも食おっかな」

「……好きにすればいいと思うよ。メインのおかずにから揚げがあるのに揚げ物追加するのはちょっとついてけない」

呆れた様な目をする心理定規の向かいの席。
いつもの服装とは違いややハードな格好の垣根はまだメニューを眺めていた。
出かける直前の懸命なゴーグルの訴えが効いて、パンクロッカーみたいに派手なジャケットが今回陽の目をみることはなかったものの。
音楽の道を踏み外して夜の街に片足突っ込んだ若者の様な格好に余り違いはなかった。

「やっぱり! 俺が飛ばす流れっスよねこれ?」

派手なカップルとうっかり相席してしまった学生、みたいに見えるゴーグルの少年が座るのは当然の様に通路側だった。


「すいません。季節のフルーツのパンケーキ二つ追加」

「垣根さん?! まだ俺やってないのに注文足さないでくださいっス! しかも二個も」

どこに剣を刺すか悩んでいるゴーグルを無視して呼び出し用のボタンを押すと、垣根はデザートまでオーダーした。
店員に似合わない愛想笑いを返した垣根は途端にしれっとした顔で前の席を指差した。

「一個はこいつのだぞ」

「何で勝手に頼んじゃうの。食べるなんて言ってないよ」

一瞬目を丸くした心理定規は細い眉を寄せて抗議する。
テーブルに乗せられていた限定メニューのカードを端に寄せると、垣根は首を振った。

「お前こればっか見てたろ。いいから我慢とかしないで食っちまえ。俺が食ってる間、ぶすっとした面が目の前にあんのは気分が悪いだろ」

「心理定規? 嫌なら俺、食べるっスよ」

「いい。二人にそんないじわるされたら我慢できそうにないし」

こうなったら食べちゃうんだから、と心理定規は頬を膨らめた。


「まさかこんなおもちゃで遊ぶことになるとは思わなかったなあ」

「カードもコインもダメってなると勝負の方法は限られるけど。俺こんなん初めて触るぞ」

「んなこと言ってもっスねえ、心理戦で二人に勝てた試しがないんで。やる前から結果見えてんのはフェアじゃねえっス」

赤と白。
それぞれ小さな剣を手の中で遊ばせる二人が呆れたように笑う。
店内で売られていたおもちゃに目をつけ、これを持ってきたのもゴーグルの少年だった。

「あら。あなたたちだってサイコロやコインの出方を確率以外のやり方で決められるじゃない。でもじゃんけんもダメなの?」

「そりゃ心理定規がいるんスから。俺が何を出すかこっそり誘導してるに決まってるっス。出なきゃ仕草や会話から読み取るんスよお」

情けない声を上げるとゴーグルの少年は目の前のおもちゃをぐるぐる回し始めた。
外からみたところでたった一つのハズレがどれかはわからないだろうに。
よっぽど負けたくないのか、くだらないことに大真面目になるゴーグル。
それを見ていた心理定規は自分の頬に手を当てると大袈裟にリアクションした。

「嫌だな。もしそうなっても、そんな無駄な事しないよ?」

「思い切り損得絡んでるけどな」


「それよりほら。料理来る前にハッキリさせちゃわない?」

いつまでも自分のターンのまま、ゲームの進行を止めているゴーグルを見かねたのか。
心理定規がそう促した。

「ううう……」

散々悩んで渋っていたゴーグルも観念したように顔を上げた。
神様仏様二次元の女神様! と唱えるとゴーグルは思い切って剣を差し込む。
だがカチン、と小さな音がしただけだった。
タルにはまった人形はピクリともしていない。

「やったあああ! やっ……あ、あのスンマセンっス」

「次。さっさと貸せよ」

勝ち誇った様に大きくバンザイをしたゴーグルは次の瞬間、素早く腕をひっこめた。
ささーっと頭を下げながら隣にタル型のおもちゃを回す。

「こう言うのは、グダグダ考えずに直感でだな――」

垣根が言い終わる前にビョン! と人形が跳ね上がった。

「ごちそうさまー」

「ご、ゴチになります」

頭を下げる二人の前で俯くリーダーはちいさくため息をついていた。


今回の敗者がはっきりしたところで、ゴーグルが席を立った。
心配事がなくなったのかすっかり晴れやかな顔をしていた。

「じゃあ俺飲みもの持ってくるっス」

「私ダージリン。あったかいのお願いね」

「アイス抹茶ラテ。あんま薄めんなよ」

「りょーかいっス」

少しして。
グラスを二つと湯気の立つカップを乗せたトレイを手にしたゴーグルが戻ってきた。
二人の前に飲み物を置くと、後ろを振り返りながら席に着く。

「なんかあっちにすごい客がいたんスよ」

そんな言葉を聞いて。
心理定規がカップを持ち上げながら首を傾げた。

「女子ばっかなんスけど、ドリンクバーオンリーどころか弁当とか缶詰持ち込みしてました。おまけに店員呼んでおかわり持って来いって言うんスよ!」

すごくないっスか? とゴーグルは自分の見てきたおかしなものを二人に伝えたが。
きっと席についたままの二人がその光景を見ることもこの感覚を共有することもない。
わざわざ見に行くどころか、きっとついで、で立つ用事もない筈だった。



「随分非常識な連中だな。まぁ、お前みたいのがいないんだろ」

汗をかいたグラスを受け取ると垣根は意地悪く口元で笑った。
濁った底を混ぜ返すとカラカラと氷が音を立てた。

「それにしてもっスねえ。堂々としすぎっス。呼ばれたウェイトレスがかわいそうでしたよ」

「んな馬鹿共に構ってる暇があったらさっさと持って来いっつうの。氷、溶けてねえ?」

眉を寄せながら垣根はストローをくわえた。
それ以上の文句が飛んでこないので、どうやら気にしていた味の方は合格ラインに達していたらしい。

「ねえ、君の飲んでるそれは?」

ゴーグルの手にしたおかしな色にまじりあうジュースを心理定規が不審そうに見ていた。


「これスか? ホワイトメロンジンジャーっス」

ゴーグルは得意げに答える。
なんて言っても、ドリンクバーに並んでいたジュースを適当に混ぜたものだ。
味はまあ、甘い炭酸飲料には違いない。
どうせ飲み放題なんだからそれぞれ一杯ずつ飲めばいいとか言ってはいけない。
これは、混ぜることに意味があるのだ。

「それ、香料と着色料がちょっと違うだけでほとんど砂糖水なんだよな。俺次コークジンジャー」

「1:2でしたっけ」

「そ。氷多めで。レモンあったっけ」

「それ他の店っス」

「やだなあ。あ、それこっちです。いただきまーす」

糖分の塊みたいな独自ブレンドを開拓する男子二人を無視して。
紅一点は目の前に運ばれてきたサラダに手を合わせた。



「そう言えば。何でお前仕事中あんな感じになんの?」

「あ、私も気になってた。話し方とか妙にカッコつけてるよね」

普段は砕けた調子のゴーグルだが、『スクール』での有事の際にはそのキャラクターが度々変わる。
口数はうんと減るし、ふざけたことも言わなくなる。
おまけに敬語。
180度の路線変更を茶化され、ゴーグルは口にしていたサンドイッチを詰まらせかけた。
水で何とか流し込むとテーブルをグラスで叩いて反論する。

「おっ俺はTPOに合わせた感じにしてるんスよ! このノリじゃイザって時にしまらないってくらい自覚あるんス」

「あったのか」

ポテトフライをマスタードとケチャップまみれにしていた垣根が意外そうに眉を上げた。

「別にそのままでいいんじゃない? おかしくてつい笑いそうになっちゃう」

「後はほら……気持ち切り替えてるんスよ。俺ゲーム以外で物騒なのはそんな得意じゃねえってゆーか。だからあれは仕事用のキャラメイクっス」


ゴーグルの言葉に垣根と心理定規は不思議そうに目を合わせた。
何言ってんだろうな?
さあ、わかんなーい
なんて無言のやりとりが聞こえてきそうだった。

「なんでそこで仲良く首傾げちゃうんスか……いーっスいーっス、俺だけ小者なのも自覚済みっス」

肩を落とすゴーグルをまじまじと見て、垣根は呆れた様に息をはいた。
改めて不思議そうに隣に目を向ける。
確かに、暗部組織や後ろ暗いものと関わりがあるようには見えない一見普通の少年だ。
普通の基準が『外』と学園都市では随分違ってしまっているとしても。

「はー。お前みたいなのがなんで『スクール』にいるんだかな」

「それは……お互い言いっこなしじゃないスか。ここで色々あった奴なんて山程いるんスから」

「……ご飯の間くらい、つまらない話はやめない?」

互いに一度視線を合わせると、三人は少しの間黙って目の前の料理を口に運んだ。



「取りあえず、これからの方針は前と変わらず……でいいのかしら」

一通り食べて、大したことのない会話を終えて。
そう切り出したのはサラダとデザートを食べ終え、一足先に目の前の食器を下げさせてしまった心理定規だった。
彼女が眉を寄せる視線の先では、垣根が最後に運ばれてきたパンケーキにシロップをなみなみと注いでいた。

「動くのに必要な情報を得るにしても、もうちょっと懐に潜り込まないとっスよね」

『スクール』の中では各々の利害の一致から、ある程度の活動指針があった。
いつも電話をよこすエージェントから持って来られる話とは別に、それに沿って組織として動くこともある。

「やっぱり『直接交渉権』を引き合いに出来るくらいの位置にいかないとダメかな。組織でも個人でもいいんだけど、まだそんな話が出来る様な信用も対価も不十分よね」

心理定規はそう呟くと頬杖をついた。
それに答えたのは、それまで黙ってナイフを動かしていた垣根だった。
唇についたクリームを舐めとると。
暗部組織のリーダーは、店内の雰囲気に似つかわしくない裂いた様な笑みを浮かべた。

「信用なんか必要ねえ。ただ『スクール』が便利なポジションにいれば学園都市も俺達を利用せざるを得ないからな。まぁ、こっちが黙って頷くだけのいい子ちゃんじゃねえのはあっちもわかってんだろ」


「やっぱ相当リスキーっスよ。後ろ盾も交渉材料もないし、手っ取り早くどっかの理事を引き込んじゃうとか出来ないんスか」

ドリンクバーとは別に注文したクリームソーダのアイスクリームを溶かしながら。
何気無くそう提案したゴーグルだがそれを聞いた垣根の顔が何故か不満そうになった。
むすっとした表情で再びスイーツと向かい合うリーダーに、心理定規はこれまた意味ありげに微笑む。
すっかり冷めていそうな紅茶をスプーンでくるくる混ぜながら口を開いた。

「ほら。やっぱりそうなるでしょ。だから話くらい聞いた方がいいよってアドバイスしたのになあ」

「嫌だっつってんだろ。お前やれよ」

「私にはまだそこまでのコネクションがないの。残念だけど」

「あのー。よくわかんないんスけど俺も混ぜてもらっていいスか」

ゴーグルは仲良くおしゃべりする二人に声を掛けたが、揃ってグラスとカップを突き出されてドリンクのおかわりを催促されてしまった。


「垣根さん、いつもあんなにマネーカード持ち歩いてんスかね。ポケットにカードケースだけってどんだけ――あれ?」

テーブルの上を片付けていたゴーグルの少年が首をひねる。
用が済んだからといって買ったものを置いていくわけにもいかず。
箱に入れなおしていたおもちゃを見ると不思議そうな顔をした。

「どうしたの」

化粧を直していたらしい心理定規が荷物を取りに戻ってきた。
きれいに塗りなおされたピンクの唇を尖らせて、支度の遅いゴーグルの少年に声を掛けた。

「なんか剣が多いんスよ。ここの穴の数の割に、やけに余るような」

「勘違いじゃない?」

箱の横に印刷された仕様をみながらゴーグルはまだ首を傾げていたが。

「お前らなあ、早くしねーと車出すぞ!」

「はっ、はいいっ! 今行きます!」

疑問にけりが付く前に、強制的にピリオドが打たれる。
店の入り口から響いた怒号にゴーグルの少年はビシィ! っと背筋を伸ばした。

ドーモ

禁書は学園物の割に殺伐としてるから普通の学生っぽいことしてるのがみたくなる
元暗部の中では『アイテム』がその辺は恵まれてそう。今は浜面もいるし。他は一応解散しちゃったし

モ○ゲーとかでやらないかな。大覇星祭系のイベント前に7、5以外の超能力者による選手宣誓デモンストレーション。でなきゃ描き下ろしカード
残りも男女ペアで1、3と2、4とかさー舞台裏がすげー殺伐としそうだけど
って考えると漫画でやったの七位と五位で大当たりだ。実行委員がかわいそうだわ
体操着の第四位とかいろんないみでヤバいっしょ

レスありがとう

乙の一言だけでやる気があがるぜ
がんばるわーまたかけたらくる

おつ

乙っす、原作大幅改変せずここまで面白いスクール書けるとは
続きお待ちしております


なんだこいつら可愛すぎる、雰囲気が良いね
余った剣は白かったりするんだろうか

体操着の第二位と第四位が並ぶと何のプレイだとしか

このSSとは関係ないんだけど
大覇星祭の選手宣誓を超能力者にやらせるかの話し合い
ネタ浮かんだんだけど、ここに落としてもいいかな

いいんじゃないかな
まったく別ジャンルのネタってわけでもないし

上記の話の構成力からして、期待せざるをえないネタだね
別スレだと見つけられるか判らんし、ぜひここに落としてください

レスあざまーっす
スレッド立てたの初めてだからこういうのやべえうれしい
まとめて失礼

>>48
まだおばかな『スクール』SSだけど、今後大幅改変入る予定
それも気に入ってもらえたらうれしっすー

>>49
剣なー、どうなんだろうなー
お互い見た瞬間、垣根も麦野も即チェンジっていいそう

>>51
ありがとー
こっからちょっと落としてく

>>52
即興だから期待されると自信ないw
短いからわざわざ立てるのもよくないしね

じゃあ折角前振りもしたし、お言葉に甘えて

こっから12レスくらい
台本
一応sageますスルーしてもらって結構っす


※SSの内容とは関係ない一発ネタです※

頂点決戦ネタあり、あそこは時間の流れも原作本編の軋轢もあんまり影響ないギャグ特化世界なのでいーっすよね
何度でも春夏秋冬のイベントがみれるよ!
暗部解体後のどっかのギャグ次元ってことでひとつ
なかよしレベル5が定期的にみたくなる



運営委員「第一位さん入りまーす!」

一方「ったくなンなンですかァ……面倒くせェことで呼びやがって」

垣根「遅えぞ。第一位様は重役出勤ですかあー? こう言うのは最低五分前には動けよ」

一方「あァ? なンでオマエらがいるンだ」

麦野「大覇星祭の開会式ってのに超能力者の残りの面子が呼ばれたのよ。前に下二人が出たんなら、その上も使えると思ったんじゃない。こっちは迷惑だっつうの」

垣根「え。結果次第で『直接交渉権』の繋ぎがつくって話は? 第一位も来るし、当然来るよなって俺言われたぞ?」

麦野「アンタそれ、担がれたんじゃないの」

一方「超能力者を集めるって言ってもよォ。その割りに一人足りてねェみたいだけどなァ」

御坂「ごめんなさーい! 実験に付き合ってたら遅くなっ……ええっ?! 麦野沈利に一方通行も?」

麦野「来た来た。テメェなあ、人を呼ぶのにさんくらいつけたらどうなんだよ」



御坂「えーと。そっちの人は?」

垣根「ああ、自己紹介が遅れたかな。はじめまして、俺は垣根帝督。第二位の超能力者だ。よろしく御坂美琴さん」

麦野「うわぁ」

一方「キモい」

御坂「どうも……あー、よかった超能力者って普通そうな人も私の他にいたんだ。安心したわ」

一方「残念だったなァ。こいつが一番非常識だぞ」

麦野「なーに猫被ってんだか。気持ち悪い」

垣根「人間、初対面の印象が大事なんだよ。こいつはこっち側じゃねえし、おまけに中坊だろ。無駄にビビらせてどうすんだよ」

麦野「相手で態度を使い分けるとか、性根の悪さが滲み出てるけど」

御坂「じゃあ、結局この中でまともなのは私だけかぁ」

垣根「……なぁ。こいつって実は性格悪いの? 単に口が悪いの?」

一方「口から出ちまうンだろ。悪意だらけなのはもっと酷ェぞ。まァ、悪気がないのは質が悪ィけどなァ」

麦野「第一位、アンタそのうち御坂の扱いも慣れてくるんじゃない?」

一方「オマエ相当ふざけてンなァ、麦野」


垣根「で。俺たちに大覇星祭のイベントに出ろっつう話なんだよな。暗部が解体されたからって、随分と平和ボケしたもんだ」

一方「麦野オマエ、もォ断る理由がねェンじゃねェか?」

垣根「じゃあ麦野と御坂で充分だろ。俺たち来た意味ねえな。別に男女各一名、なんて縛りもねえだろうし」

御坂「ちょっと待って! 麦野と?」

麦野「私だってコイツとなんかごめんだっつうの」

垣根「ふーん。なんだ、お前ら仲良くねえんだ」

麦野「じゃあ、第一位と第三位でいいんじゃない。第二位と一緒は嫌でしょ」

一方「オマエ……それはマズいだろォが」

麦野「オリジナルとは嫌な訳?」

一方「俺個人の問題じゃねェよ」

御坂「嫌って言うか……複雑よね」


垣根「御坂忙しそうだしな。メディア露出もかなり多いんだろ? じゃあ麦野と一方通行……は、ガキの教育に悪そうだな。目つき悪すぎ」

一方「腐ったドブみてェな目のヤツに言われたくねェ」

麦野「まるで自分はいいみたいな言い方ねえ。確かに子どもウケは良さそうだけどさー色々と」

垣根「テメェ、この中で一番格下の癖に俺に喧嘩売るとかいい度胸してんな。いっぺん痛い目みたくらいじゃ足りねえか?」

御坂「ちょっと、少しはまともに話し合いましょうって」

一方「もォオマエら並べば? リーダーさんよォ」

御坂「そうね。麦野と垣根さんなら二人とも丁度いいかもよ? スタイルとかバランスも」

垣根「美男美女なのはいいとして。これからたのしい運動会、ってガラじゃねえだろ。『外』でも流すんだよな確か」

麦野「何プレイだっての」

一方「オイ。せめて罰ゲームくらいにしとけ」


垣根「まぁ、誰が出るにしてもだ。どんな感じか想定くらいしておこうぜ」

麦野「それはいいけど何でアンタが仕切ってんの」

垣根「だってお前らやる気ないだろ。これっぽっちも。こう言うのは誰かがやんねえとな、話にならねえ」

御坂「垣根さんて、意外と面倒見がいいのかな」

麦野「でも、確かに浜面は世話になったらしいのよね。滝壺のこととか」

一方「そォ言えばオマエ、口は相当ユルかったなァ。べらべら余計なことまで教えてくれてよォ」

垣根「そうか。そうかよ。そうですか。お前らそんなに俺が嫌いか」

御坂「えー。いや、ホラ今日あったばっかだし」

麦野「悪いけどさ、アンタみたいなの趣味じゃないから」

一方「ウゼェ」

垣根「俺だってテメェらなんか大っ嫌いだよ!!」


御坂「まあ上から順に考えましょう。一方通行は、今回もし出るならどうするの?」

一方「もしもだろォ……カッコは前と同じでいい。面倒くせェ。最初に顔だけ出したら帰るからな」

御坂「前って……あー、あの応援団の」

一方「あれ暑いンだけどな」

御坂「じゃあほら垣根さんもあんな感じにすればいいんじゃない?」

麦野「長ランねえ、色は白でいいんでしょ。どうせ」

一方「裏地は紫ってかァ? 趣味の悪ィ」

垣根「テメェに服の話はされたくねぇ。っつうか、それだと俺は白組サイドってことでいいのか? 白手袋に白いハチマキ……あれ、結構よくねえ?」

麦野「一昔前のヤンキーみたいだなあオイ。ついでに派手な刺繍でも入れればいいんじゃないかにゃーん」

御坂「???」

一方「オイ、『超電磁砲』がついてこれてねェぞ。いつの時代のはなししてンだ」

垣根「なあ。それあんまりかわいくねえにゃーん?」

麦野「テメエらぁあ……ブチ殺し確定だぁああ!」


垣根「まぁ、とりあえずカッコはその辺でいいとして。なんかこー、いい感じの煽り文句が欲しいよなあ」

麦野「その辺、第一位はどうだったのよ」

御坂「えっと、確か『最強の応援』だったかな?」

一方「じゃァ、コイツは『非常識な応援』でいいンじゃねェか。『上から二番目の応援』とか士気が下がンだろォが」

垣根「……『あのガキ、ケガしねェだろォなァ?(裏声)』」

御坂「ぷっ」

麦野「くふっ」

一方「垣根ェ……よっぽど愉快なオブジェになりてェらしいなァ?」


垣根「用意するんなら横断幕は『未元物質』でいいぜー。間違ってもこっぱずかしいのは止めてくれ」

麦野「ふっ、ふふ…ガキの…名前とか?」

御坂「ちょっと、笑っちゃ悪いわよ」

一方「……気付いたら外堀からガッチリ埋められてた俺の気持ちなンざオマエらにゃわかンねェよ。はしゃいだアイツらにビデオ用意するだなンだって言われてから、参加するだろって話が出てくンだぞ」

御坂「ああ……それでアンタあんな似合わないことしたの」

一方「次はオマエらの番だろォなァ。楽しみにしてろォ」

御坂「なんかそう言われると嫌な想像しか出来ないんだけど……黒子とか、黒子とかマm」

麦野「ま?」

御坂「なっ、なんでもない!!」

垣根「……埋まる外堀がねえ」


垣根「まぁ御坂は無難でいい感じにこなしてくれるとして、問題は麦野だろうな」

麦野「私?」

一方「体操服……着ンのか」

御坂「あんまり想像できないわね。確かに」

垣根「でなきゃチアとか……あんな短いの履く?」

麦野「あんなバカみたいなカッコ、誰がっ」

垣根「多分、お前スポーツとか似合うさわやかなキャラじゃねえんだよ。一方通行もそうだろうけどさ」

一方「否定はしねェ」

麦野「ああ? テメェは似合うってのかぁ?」

垣根「おお。そこのモヤシと違って腹筋割れてっからな。確認してみるか?」

一方「そこで脱ぐんじゃねェぞ。非常識野郎」


垣根「いっそエロい路線でいけばいいんじゃね? ラウンドガールみたいに競技とか学校の紹介してまわれば?」

御坂「ステージ用のレーザーやライトも必要ないわね」

麦野「人のこと、馬鹿にしてんだろテメェら」

一方「……浜面が喜ぶンじゃねぇか」

垣根「あー、あいつそう言うの好きなの。チューブトップとか」

一方「バニーとかなァ」

麦野「……ぜっっったいに出ない」

御坂「へ?」

麦野「私は、そんなの絶対しないからなあっ! 畜生、帰るっ!!」

御坂「うっそ、本当に帰っちゃうの? ちょっと?」

垣根「超能力者ってさあ、めんどうなヤツばっかだな」

一方「まァな」


垣根「……なんか、俺らも帰っていいってよ。デモンストレーションは無しだとさ」

御坂「急にどうしたの?」

垣根「前回出た、削板軍覇がどっかから聞きつけて『また出てやろうか』ってノリノリで立候補したんだと」

一方「それで懲りたってのか。下らねェ」

垣根「ああ。運営委員会の連中は超能力者が一筋縄じゃいかねえ、あいつらの思う様に動いてなんざくれねえってことを思い出したんだろうな。第七位でアレだ、その上の怪物なんて持て余すに決まってる。まぁ、賢い判断じゃねえのか」

御坂「うーん。大覇星祭自体私は好きだから、開会式くらい別にいいんだけど」

垣根「あっちは削板は使いたくないらしいから……『心理掌握』と並べば? 常盤台の株も上がるんじゃねえ。けどあいつもさー、中学生らしくねえよなあ」

御坂「!! やっぱり止めた!!」

垣根「女ってさあ、めんどうなヤツばっかだな」

一方「まァな」

垣根「……テメェ、ほんっとにやる気ねえな?」

一方「まァな」


ドーモ
お目汚ししつれいっした
暗部5は口調がどうも被っていかん。麦野は口が悪すぎて一方さんと被るし
とりあえず垣根以外は「アイツ」ってのはおぼえた。ちいおぼ

新規でキャラの描き下ろし増えねえかなーって思うわけっすよ

乙wwwwww


こういうレベル5のギャグ的なのとても好き、掛け合いが面白い
この4人の中で一番マシな組み合わせは……垣根と美琴?

乙っす、期待を裏切らない面白さでした
次回も期待しております


面白い

ちっともみさきちでないから今から投下するわー

>>68
垣根と御坂は営業スマイルも得意っぽそうだし、関わりないからお互い嫌がる理由もなさげだよね
ただ、垣根に頼みごとすると後で何を要求されるかが怖そう


とあるマンションの一室。
広い部屋の中ではキータイプやクリックの音が折り重なる様に響いていた。
他は静かなものだ。
電源の点いたモニタの前に座る垣根も、パソコンから背を向けてじっとしていた。
手には少年漫画が一冊。
その近くには漫画が山と積まれていた。
どれもゴーグルがレンタルショップから借りてきたものだ。
ついさっきも垣根に、

「こんなにどうすんだ?」

とつっこまれたが、ゴーグルは胸を張って答えた。

「明日からたのしーたのしー夏休みっスから! パーっとまとめ読みするんス!!」

それを聞いた垣根はわざとらしく頷いていた。
もしかしたら夏休みなんて感覚がそんなにないのかもしれない。
超能力者には学校も授業もあまり重要じゃなさそうだった。
今現在『スクール』に与えられた任務は特にない。
だが、ゴーグルの少年はこの隠れ家でしばらくデスクワークの予定だった。
任務とは関係ない『スクール』の夏休みの課題、なんてところだ。
飲み物や弁当、スナック菓子をコンビニで調達し遠足気分でカンヅメの準備を進めていたところにたまたまリーダーがやってきて寛ぎはじめたのだ。


「あーあ。だからどこもかしこも、下校時刻前だってのに学生だらけなのかよ。このクソ暑いのに」

むっとした顔で垣根は愚痴る。
ファミレス、ゲームセンター、カラオケなどなど。どこの娯楽施設も飲食店も浮かれた学生で溢れているだろう。
何しろ明日から夏休み。
ちょっとはしゃぎすぎても大目にみていただきたい。

「垣根さん……ちょーっとそれ、暑がってる風には見えねえっス」

今着ている長袖のジャケットをなんとかしてしまえばいいんじゃないか、とゴーグルは思う。
思うだけだ。
そこまでは口にしない。

「んなの気分だよ。気分。ったく、どうしろってんだよ。ギラついた日差しの下を呑気にお散歩でもしろってのか」

言われて目を向ければ、ここまで暑い中歩いてきた様には見えない。
汗なんてかいた様子もなかった。
街の混雑っぷりがお気に召さなかったらしいリーダーは、涼しい顔でエアコンの設定温度をいじっていた。
まさかわざわざ手伝いに来たとはゴーグルも思っていないが、どうやら本当にただ暇を潰しに来ただけらしい。


パタン、と本を閉じる音にゴーグルはふとつぶやいた。

「垣根さんて漫画はゆっくり読むんスね」

「そうか? 普通じゃねえの」

「いつも資料とかはぱーっと目通しちゃうじゃないスか。あれスか、ああ言う時ってフォトリーディングとかしてるんスか」

「ホットリーディング?」

椅子にもたれたまま垣根はかくん、と首を傾げた。
どうやら聞きなれない言葉だったらしい上になんだか聞き間違っていた。

「それだと心理定規とかの分野っス。フォトリーディング、速読法の一種っスよ」

ホットリーディングはどちらかと言うとパチモン占い師の技能で、自前に調査しまくった情報を素知らぬ顔で「たった今あなたから読み取りましたよーすごいでしょーう」なんてわざとらしく披露することを言うらしいからちょっと違うかもしれない。



「ああ。別に意識してねえ。能力開発されてるヤツにしたらそう言うのって工夫で何とかなるんじゃねえの」

『能力開発』も表向きは記憶術や脳科学のジャンルだ。
育脳なんて呼ばれることもあるが実質的には量子力学に基づいた『観測』がメインだ。
育てる前に捉えることが必要で、ある程度の演算能力がないと扱えない。
そんな能力者の頭脳にはその為に欠かせない訓練や開発もされていた。
もちろん個人差はある。
複雑な演算をしなければいけない高レベルの能力者の方がその辺の処理能力は高いはずだが、能力が使えてもお馬鹿さんなやつもいる。

「にしても、ああ言うのはテクニックと効率重視で実が少ないんス。かさましの専門書ならともかく小説や漫画にディッピングとかあり得ねえっスよ。様は他を読み飛ばしてるようなもんスから」

「そんなもんか」

「ファンは些細な描写も大事にしたいんスよ。アニメだって、作画で一喜一憂するし。キャラの公式プロフィールがあれば好きなものとか押さえときたいんス」

「そりゃ随分と暇だな。いや、忙しいのか?」

口と手を忙しく動かしながらモニタをにらみ続けるゴーグルに、垣根はキャスター付きの椅子を引きずりながらやる気なさそうに答えた。
読み終えた本をそばに積まれた山に戻しているらしい。


「あれば……それもあればの話なんスけどね。いくら脇扱いでも誕生日や身長体重くらいもったいぶらなくていいと思うんスよ……」

「なぁ、これ続きねえの」

ゴーグルのマイナーな独り言は今や当然の様に流される。

アニメやゲームの話題に垣根や心理定規がいちいちなんだそりゃ、と聞いてくることはほとんどなかった。
下部組織の下っ端くん達は、愛想笑いでたまに頷く。

「あー、借りてんのはそこまでっスね。それは『外』の作品なんで買おうにもこっちでの流通少ないんスよ。確か既刊はまだあるんスけど。気に入りました?」

「読むと続きは気になんだろ」

「じゃあ後借りたらまた持ってきます」

「っつうかここはお前の家じゃねえからな」

『スクール』の中で恐らく一番身軽な垣根から釘をさされて、ゴーグルはペコっと頭を下げた。
ここは『スクール』の隠れ家として使っている部屋だが、ゴーグル個人の荷物も多い。
物理的な重量なら心理定規もいい勝負かもしれなかった。
室内のパソコンのうち1台もゴーグルの私物だった。
一体型のオシャレなやつの隣に置かれた、今使っているミニタワーがそうだ。
ネットサーフィンにはまるで必要なさそうな機能が充実している。


「今日は合間に読もうと思って持ってきただけなんで。置いてきませんから大丈夫っス」

そうか、と返事すると垣根は別の漫画を手にとって読みはじめた。


「垣根さんは……カリスマ性ばっちしなんで特質っスよね。操作系ってか具現化よりで中身は多系統の複合能力っぽいっスけど」

「そんなのここの能力者なんて操作か放出のどっちかってのがほとんどだろ」

ついさっき、
「休憩! 俺は今から絶賛休憩タイムに入ります!!」とハイテンションに叫んで作業を中断したゴーグルは漫画を片手に垣根とだべっていた。

「でも例外っぽいのもたまにいるみたいっスよね。レアな能力者とか。後は何でしたっけ『外』でたまーに自然発生するって言う『原石』とか。あ、このマンガじゃないスけど、磨けば光るっていいっスねえ。うらやましーっス」

「まぁ、学園都市の能力開発なんざ……たとえば必要な機材と材料を全部揃えた上で、適当な手順で人工ダイヤでも作ってる様なもんじゃねえの。発現する能力もやってみるまでわかんねえんだから。そうやって作ったもんも、それなりのカットを施せる出来かさえ怪しいレベルだろ? 磨いても光るかわからねえってのはひどい話だよな」

そうやって試行錯誤、失敗の繰り返しの中でたまたま見つけ出されたのが、この垣根の様な超能力者、と言う事になるんだろうか。
開発を受けている本人たちでさえ、この街で行われていることについてろくに知らなかったりする。



「垣根さんは手元から離しても能力使えますよね。羽根飛ばしたりしないんスか」

「羽伸ばしたりはするけど」

何だよ、と言いたげに顔を上げた垣根の表情を確認するとゴーグルは身を乗り出した。
この流れなら大丈夫! と判断して、思い切って『未元物質』の話題を振ってみた。

「バラして飛び道具にするのカッコよくないっスか? 『フェザーショット』的な。流石に敵を操るのは別能力っぽいから難しいかもっスけど」

「カッコいいのかよ。それ」

垣根は内心複雑そうに眉を寄せた。
だがゴーグルは首を縦に振る。
『未元物質』はすごい能力だ。
単純に戦闘面だけみても高い防御性能と攻撃力、そこにオールレンジ攻撃も可能そうな飛び道具なんてプラスされたら。
もしも何かのゲームキャラならよっぽどの弱点を設けるか他のパラメータを調整しないとバランスブレイカー過ぎて禁止キャラ扱いになりそうだった。
そう思いつくとぜひ一度試してもらいたくなる。

「やってみて下さいっス。すげーカッコいいですって」

広げた六枚の翼から『未元物質』を掃射する痩身の少年……は想像するとやっぱり絵面がシュールすぎるかもしれない。
そう思ったがゴーグルは黙っておいた。
垣根は満更でもない顔をしていた。


「やっぱり、四六時中『未元物質』で遊んでるうちに能力が使える様になってたりしたんスか」

「別に。俺の場合は多分……他の奴らとはやり方がちょっと違ったかもな」

垣根が自分の能力の話をするのは珍しい。
ゴーグルは期待して聞き返した。

「違うって。どんな風にスか」

「俺についた開発官どもがやったのなんざ、俺が発現出来るようになった『未元物質』ってのが何なのか、理論的にこじつけた様なもんだ。既にあった何かの理論から上手いやり方を見つけてくるんじゃなく、その為に一から積み上げなきゃならなかった訳」

垣根はそう言うと組んでいた腕をつまらなそうに伸ばした。
開いた右手の周りにはパキパキと音を立てて『未元物質』が展開されていた。
室内照明からの光を不自然にねじ曲げ、反射しながら能力の産物はトゲだらけの螺旋を描いて伸びていく。
眺めていくうちにその形が歪み、滑らかになり、最後はチリ一つ残さずにきれいさっぱり消えてしまった。


「それでも、これが何なのか誰もわからなかった。この俺だって、こいつで何が出来るのか隅から隅まで理解してる訳じゃねえ。演算式もまだ未完成って所だし」

ぷらぷらと右手を振って、垣根は息を吐いた。
飽き飽きした様に吐き捨てる超能力者だが。
それを見ていたゴーグルの声は正反対なくらい興奮していた。

「それでも超能力者って……垣根さんがマジになったらどうなるんスかね。『未元物質』完全掌握! とかしちゃったらヤバいっスね!!」

「……いいな、それ」

垣根は驚いた様に目を丸くすると、ふっと微笑んだ。



「まぁ、最初から情報が足りてねえのは自覚してるけど。無い物ねだってもどうにかなる訳じゃねえし」

垣根は頭の後ろで腕を組むとそのまま深く椅子に体を沈めた。
ギィィ、と背もたれが音を立てた。
不自由はしていない、しかし現状に満足もしていない。
そんな態度がみて取れた。

「能力者の法則って言えば、垣根さんが前に調べてた事例ってのはどうだったんスか?」

「暴走能力者か? ああ、ありゃダメだ。中身も参考にはならねえ。何より使われてんのが色々と悪趣味過ぎる」

そう言うと垣根は近くの収納を漁りはじめた。
少しして、分厚い何冊かの資料と共に小さなケースを取り出した。

「……なんスか。これ」

プリントアウトされた書類の方はぱっと見て「大脳生物学」とかの難しそうなものらしいこと以外よくわからない。
そしてケースの中から出てきたのは薬局にでもありそうな小さなビニールのパウチ。
中には白い粉末がごく少量だけ封入されていた。




「『能力体結晶』。試すか? トベるかもよ」

垣根はつまんだ袋を指で叩くと底に溜まった粉末をならしてそう言った。
封を切ったスナック菓子でもすすめる様な気軽さだった。

「いいッ?! 『体晶』ってこれっスか? 能力者何人も潰したって薬っスよね。俺いいっス、遠慮しときます」

ゴーグルは思わずのけぞって首を振った。
適性があれば、極一部の能力者には大幅な能力の上昇効果があると言われる薬品だ。
だが、暴走状態を起こす強烈な副作用の方が有名で、その名前だけならゴーグルも聞いたことがあった。

「垣根さんまさか……試しました?」

「はぁ? んな無駄なことする訳ねえだろ、俺が」

おそるおそる聞いたゴーグルは苛立った目を向けられて慌てて謝る。
ゴーグルは、この人が暴走状態になったらどうやって止めるんだろう、とか怖い想像をしてしまったのだが不要な考えだったらしい。
超能力者、現在学園都市でも最高峰に位置する能力者がわざわざ危険な賭けに手を出す理由がなかった。



「これって何で出来てるんスか」

「暴走能力者の脳内には独自の伝達回路があるらしい。そこで異常分泌される神経伝達物質なんかを集めて精製したのがそれだ。物としちゃあ、暴走時の脳内を再現しちまうのか、それとも他の能力者の伝達回路ってのに使用者が拒否反応でも起こすんじゃねえかと思うんだけど」

「あれ。拒否反応って初耳っス。どうしてそう思うんスか?」

「『多重能力(デュアルスキル)』の研究は知ってるか。俺達能力者は、まるで違う二つの能力を使う事が出来ねえ。一つの能力の幅を広げる事は出来ても、開発で開いた脳回路を元から増やすなんざ負担がデカすぎるって立証済みだろ。そこに他人のおかしなモンをブチ込んでみろ、どうなるか……っつうか拒否反応以前に気持ち悪いだろ。それ、元は他の能力者の一部だぞ」

うげっ、と舌を出すと垣根は嫌そうに顔を顰めた。
劇薬で引き起こされる危険な暴走よりも、そちらの方が余程不快だったらしい。

「複数の能力使おうとするのはやっぱ無理なんスかね……能力使用に必要な、例えばOSみたいなもんの入ったドライブのパーテーションはいじれなくても、外付けとか他ドライブ経由なら何とかならないスかね? パソコンだって、既存のOS維持したままの切り替え方法くらい幾つもあるんスから」

学園都市に居る数多くの研究者の中には、愉快でイカレた仮説を立てたり実験してみたりする人間もいる。
今のはゴーグルがほんのちょっと思いついただけの事だが、探せばどこかにそんな「実例」もありそうだった。


「必要なもんを外から丸ごと持ってくるってことか? 今の段階じゃそれも難しいだろ、何しろ『自分だけの現実』や『AIM拡散力場』でさえ研究途中の分野だからな。たとえ脳を移植したって、能力は変わらないなんて話もあるし。開発してない人間に既存の能力者の機能だけあてがうとかするんなら、暴走はひとまず防げるかもしれないけど」

「あー。でもそれやると、能力開発そのものがいらなくなっちゃいますね。俺たちもお払い箱、とか」

いや、と垣根は少し何か考えてから首を振った。
いつの間にか真剣な顔をしていた。
雑談には変わりないが、つまらない内容が思わぬ方向に向かっていた。

「狙った能力者が手に入らねえうちは、『絶対能力(レベル6)』の可能性に当たるまで数をこなしたいってのも恐らくは学園都市の本音だろ。気軽にそんな真似したんじゃ本末転倒だろうけど、別に互いに潰し合う様な条件じゃねえ。まぁ、そんな技術が使えるかどうかは別として、今まで無駄に開発させられた下位能力者連中にはそれなりに同情するけどな」

現段階で、学園都市に暮らす180万の学生のほとんどは強能力者以下に振り分けられる。
日常生活で便利だと思える程度の異能さえ、手に入れられていないものが数多くいる。


「やっぱり超能力者から上ってのを作るのが学園都市の目的なんスかね」

能力開発を受ける為に希望を胸にやってくる子どもや、行き場のない子どもたちの為にただの親切や善意でこの街が開かれていないことは、垣根もゴーグルも嫌と言うほどわかっていた。
なんの為の能力開発か、なんてところに焦点があたった。

「さあな。だが、それだけだと思うか? だとしたら、第一位が確立した後の能力開発なんざそもそも意味なくなるだろ」

「うーん……たとえば約0.00000056%の確率のガチャを回したとして。一つでもマシなの引いたら、俺ならとりあえずそれを全力強化っスかね。次同じだけ回しても、いいのが出るとは思えないんで」

180万分の1の確率で見つかった金の卵。
それを、それこそ文字通りにレベルアップさせるなら、現在使えるベースで済ます方が早いに決まっている。
その後使うかもわからない素材を数万単位、数を揃える方が、余程手間がかかりそうだ。

「だが下は五歳から、ガキの能力者は今だって生産され続けてんだ。そんなに保険をかけたいのか、別に思惑があるのか。どっちにしろ学園都市の目的ってのがそこで止まるとはどうにも思えねえ」

学園都市は膨大なロスを抱え込んででも次の候補の発見に賭けたいのか。
それともその余剰すら必要だとでも言うのか。
たった二人の思いつきでは答えが出そうもなかった。


「そう言えば最近出回ってるって言う……それ何だっけ?」

「『幻想御手』、まだ調査中っス。薬なのか特別な開発方法の資料なのか……それがどんなもんかもはっきりしないし、噂されてる能力増強の話もなにがなんだか」

今日は朝からインターネットの掲示板を中心に眺めていたゴーグルは椅子の上で伸びをしながら返事をした。
思い出したようにモニタに向かうと、いくつかのウェブページを開いた。

「ただ……効果はあったって話はよく聞くんスよねえ。で――これは使えそうなんスか」

コピーしたログを作業中のテキストファイルに貼り付けてゴーグルは垣根を仰いだ。

「いや。目についたもんは当たっておきたいだけだ。何が『直接交渉権』への突破口になるかわからねえからな。だが」

垣根はコキコキと首を鳴らすと眉を寄せた。
椅子から立ち上がると、ゴーグルの背後からモニタを覗いた。
マウスを取ると次々にウィンドウを開いてゴーグルがまとめていたファイルに目を通し始める。


「どうも、話が広がり過ぎてねえか? 知られちゃマズいもんならさっさと情報が潰されてると思うんだがその様子もねえ。デマにしては息が長いだろ」

「そうっスね。『神様の頭脳』系の噂は山ほどありますけど、これは珍しいやつっス。噂の盛り上がりと探す書き込み、使用者の実体験報告がこの一週間で明らかに増えてます。燃料、何らかの裏付けがないと普通この手の話はあっと言う間に飽きられて消えちゃうんスけど」

「はぁ? 待て。そんなのわざわざ知らせてんのかよ。馬鹿じゃねえの」

呆れた様に垣根は聞いたがあるものはあるんだから仕方ない。

「ほら。ここに元無能力者の書き込みとか、こっちは動画とかあります。みんな自分の能力に変化があれば自慢したいんスよ。あーあ。現物があると色々わかりそうなんスけど」

「美味いだけの話なんざ、どうせ存在しねえ。馬鹿なやつらはろくに考えもせずに引っかかるんだな」

どう見てもチンピラな大男が、何もないところから火を起こして大はしゃぎする。
そんなある意味微笑ましい動画を横目に。
垣根はさっき出した資料と『体晶』を元の様にしまった。

「でも、調子にのり過ぎて騒ぎを起こすやつがいるなんて話もあるんスよね。そっちが大事になると……いよいよ俺らに話が回ってきますかね」

にしし、と愉快そうにゴーグルが笑う。
だが垣根は冷め切った目を細めただけだ。
あまり期待はしていない様だった。



「下手に騒ぎになって警備員や風紀委員が絡む様だとかえって俺たちの出る幕は無くなっちまう。話の裏を取る前に、表向きそれらしい体裁が整えられちまうこともあるだろうし。そしたら余計な詮索なんざした所でこっちが怪しまれるだけだ」

痛くもない腹を探られるのは誰だって嫌だろう。
でも、人間痛いところをつかれるのも癪なものだ。
ただでさえ『暗部』の首輪が付いている様な状況で、牙を剥いたのではないかと今認識されるのは『スクール』としても望ましくない。

「引き続き様子はみとけ。だが、タイミングを見誤らない様気をつけねえとな。いいカードがあっても、それを引く前にこっちがバーストしたんじゃ意味がねえ」

はーい、と少年は軽い調子で答えると机の上に置いてあった輪の様なゴーグルを頭に付けた。
同時に、それまで暗かった近くのモニタも電源が入り室内からは立ち上がったハードディスクのシーク音が幾つもしはじめた。


「まー、俺らみたいのが多少つつき回しても、次々わいてくるんスよね。この手の話。ネタに困らないのはいいんスけど今更そんなもんどうした、ってあっちも開き直りそうでムカつきません?」

「必要なのは、中核に食らいつける程の重みのあるもんだ。上辺だけ掬い取って掻き集めた所で、これっぽっちも役に立たねえだろうし」

繋いだケーブルをいじりながらゴーグルは愚痴っていた。
休憩時間は終わったらしい。

「もしも……もし、俺が……はじめっから」

「垣根さん? 何か言いました?」

垣根の呟きは、再びキーボードに指を走らせカタカタと作業を再開したゴーグルに拾われたらしい。

「別に。少しばかり面倒だってだけだ。何でもねえ」

肩をすくめると垣根はまた椅子に座った。
頬杖をつくと窓の外を睨む様に眺める。
学生で賑わう街は日が暮れようとしていた。

ドーモ

『未元物質』のはなしする真面目ルヘンに挑戦
学園都市に知られ過ぎてたって言う『スクール』の動向が気になる
このあとはビリビリ大惨事になるから多分ゴーグルは泣くことになると思う。がんばれ


って投下しようとしてたらまさか我が家がビリビリ大惨事だった
煙でたり色々修羅場になった

垣根「ブレーカー上がんねえしお湯出ねえぞコラぁ!!」
ゴーグル「俺のせいじゃありません!!!!」
みたいな小ネタ足そうとしたからか
その呪いか、いや能力か
魔術師の仕業か

間あいたけど、たぶん抜けはないはず
とりあえずおやすみ


おのれ魔術師!
未元物質って何がどこまでできるのかよくわからんよね

>脇扱いでも誕生日や身長体重くらい~
名前すらないゴーグル君が言うと涙を禁じえない

乙ぅ
ゴーグル君の名前はいつ知ることが出来るの

未元物質がどこから出てきたか分かっただけで垣根が世界の全てに勝てると思うあたり
垣根の中の世界から出てきたとでも思うのが妥当なのかもしれない
現実との差異の演算次第でなんでも出来るかもね

禁書はキャラ多いわりには正確な名前わからないキャラが多いんだよね
モブとメインキャラの中間みたいな

未元物質って禁書SSのどらえもん的な感じあるよね
物質を生成できるってのがとても便利、一方通行よりチートに思えてならない

新約6の未元体の垣根の発言から未元物質は垣根の自分だけの現実から生成されてるって言ってたから未元物質はAIM系の能力で確定だね


能力者は大なり小なり物理法則を突破してるが、垣根のはその中でも「無から有を引き出す」という質量保存の法則ガン無視の超異能だからな……
未元物質自体の性質も合わせて、どうも魔術寄りな能力に思えてならない


一位が来る前に二位がカンストしそうだぞちくせう

前回ので一巻久しぶりに読んだ
能力開発って「もしかしたらあり得るかもしれないけど自然の状態ではまずあり得ない未来の現象の可能性」を
「それを観測した個人の頭の中から現実にひっぱり出す」みたいなことしてんだっけ

それを説教やワンパンで問答無用にブチ[ピーーー]上条はすげーなあと思うんだ

どうやら好きでやってるわけじゃないらしいのにそのおかげでメルヘンな羽しょっちゃう羽目になった垣根ってきっと頭おかしいんだろうなあと思うんだ

他にも周りを反射するやつとか、ものすごいビーム打っちゃうとか、他人をおもちゃにしてみるとか、前髪から放電するとか色々あれだけど。そんなのが自分の可能性って確かにみんな隠しきれない人格破綻者っぽいけど


>>92
それな。ゴーグルくんなんかモブの中でも名もなきモブだからな。『ブロック』のやつすら名前と過去とおかしな口調とキャラ設定あったからな

>>93
超電磁砲の外人研究者もアニメ化したら確か名前があった。つまり何らかの形で映像化されればワンチャン。それでも「ゴーグルの少年」のままかもしれないけど

>>94
あえて名前を出していないタイプがインなんとかさん、一方通行、冥土帰しあたりだとして……残りはなー期待しちゃダメなやつだよな

>>95
未元物質食べたりする話あったしね
きっとその気になれば衣食住完備出来る。なんでもありだ夢が広がる

>>96
「AIM系の能力はとりあえずなんかチートっぽい」イメージ。AIM拡散力場がよくわかんねー
あと超電磁砲SでフェブリのAIMを物質化する能力うんぬんかんぬんって出てきたときに「なんでそこで未元物質は触れられないしでてこないんだよ!」
と思った人は一人くらいいると思うんだ。なんとなく系統は近そうだよね

>>97
ほんとなんなんだ未元物質
科学発の能力のくせに天使に似た六翼なんてモロ魔術的な象徴を背負ってるあたり怪しいよな
一方通行のも風斬のも翼って作中で呼ばれてるがあっちは輪っかついてるけど形全然違うし
色々怪しんでるけどいつかかまちーが教えてくれんだと信じてる


「はぁあああ……マジ雷空気読んでほしいっスわーありえねえっスわー」

しょげながらキーボードを叩くゴーグルの少年の口からはやる気のない愚痴がだらだらともれていた。
ソファに転がっていた垣根がその頭を狙って本を投げつけた。

「お前それ何回言い続ける気なんだよ。聞き飽きた」

「この前の落雷で最終回の予約がパーになったんスよ……円盤になるまで悔みきれねえっス。作業途中でふっとんだデータはなんとかなるからいいんスけど」

ぶつかる直前で急に下に落ちた本を拾うと、ゴーグルは次の巻を机の横から探して投げ返した。
ゴーグルの少年は先日に引き続き『幻想御手』に関する話をネットから拾い集めていた。
垣根はたまに顔を出してダラダラしながらゴーグルが借りてきた漫画を読んでいた。
ゴーグルを追い越してすっかり先まで読んでしまったらしく、そのうちレンタルの催促とかをされそうだった。


「ああ、あん時はシャワーが水になったから焦ったけどすぐに戻ったな」

「こっちは突然全落ちっス。レンジもダメでした。この辺だけじゃなくて、やっぱそこそこの範囲に影響あったんスね。雷なんて予報になかった筈なんスけど」

「どっかの研究所がなんかやらかしたって話も聞かねえしな」

「人為的な落雷をあの規模で起こすのなんてどんな無茶っスか。それこそ超能力者でも呼んでこないと」

おかしな出来事、をそんな風に笑い飛ばそうとしたゴーグルだったが、はっと顔を上げると大声でしゃべり始めた。

「そう言えば。なんなんすかねー今朝! 朝の五時っスよ? 警備会社からすげー電話来たんスよ。あんまうるさいんで起きて出たら警報装置がどうの、もう用事済んでますーとか言ってなあなあで切られたんス。結局『スクール』で使ってるマンションからだったんスけど。あれもなんだったんだか。迷惑っスよね」


「ああ。俺」

「へ?」

椅子のキャスターを転がしてゴーグルは思わず後ろを振り返ったが。
「私が犯人です」とあっさり自白した超能力者は呑気にコミック本のページをめくっていた。

「それ俺。そっか、お前んとこにも連絡いったのか」

大したことなさそうな垣根だが、ゴーグルはそうはいかなかった。
この超能力者がトラブルを起こしたと聞いてしまうと前例がいくつか浮かぶだけに嫌な方に考えてしまう。

「垣根さん? あそこって確かこの前借りたばっかっスよね? まさかもう何か壊しちゃったんスか!?」

「壊してねえよ。ったく、一々うるせえんだよな。ちょっと窓開けただけだっつうの」

「なんでそれで警報鳴るんスか」

そこで垣根は黙ってしまった。
ソファに本を置くと、おもむろに座りなおした。
両膝の上にそれぞれ腕を乗せて下を向いてしまう。

「……外から」

そしてぼそっと呟いた。

「はい?」

「ああもう! 外から窓開けて中に入ったんだよ! 悪いかよ!」

下を向いていた垣根は顔を上げると同時に、そりゃあ見事に逆ギレした。
外ってなんですか何してるんですかおかしいし悪いでしょう! とツッコミたくなるのを我慢してゴーグルは息をはいた。


「いや、そりゃ警報バッチリ作動しますよ。無人の部屋の、あのでっかい窓が玄関より先に外から開くなんて空き巣か何かに決まってるじゃないっスか。泥棒でもそんな無茶すんのはアクション映画の主役くらいっス」

『スクール』で使っている中には第三学区の某タワーマンションもあった。
それも上層階だ。
そんな所にワイヤーアクションとかで侵入を試みる命知らずがいるなら、拍手喝さいと共にブタ箱送りだろう。
そもそも窓はどうやって開けるんだ、と思ったが『未元物質』ならそれもなんかやれそうだったのでゴーグルの少年はあえてそこに触れなかった。

「言っとくけど靴は脱いだぞ。っつうか警備会社のヤツとおんなじ様なこと言ってんじゃねえよ。俺は疲れてたんだよ。エレベーター待つより直のが早いだろ」

「垣根さん……それでもせめてドアからちゃんと帰ってください。そこは常識的に」


ゴーグルはちょっとがっかりしながらそう忠告した。
しかし、ほんのちょっと前までむくれていた垣根はもう悪びれた感じもなく腕組みすると不敵に笑った。

「この俺にその常識は通用しねえ。まぁ、次からは心配いらねえよ。外からも電子ロックと認証を解除出来るようにさせたから」

「そんなの誰も出来ないっス。垣根さん専用じゃないスか……てか勝手にしちゃっていいんスか? オーナーに話通しました?」

「何かあったら後で言やいいだろ」

自分が折れると言うのはとことん垣根の中ではあり得ない事らしい。
おまけに反省もしていないし、次もあるつもりの様だった。
心理定規がびっくりしなくていいように、今度それとなく『垣根さん専用口』の話をしておこう、とゴーグルは心のメモに書いておいた。
それと。
もしかしたら大笑いするかもしれないから垣根さんのいない時にしておこう、と書き足した。


「ああ、なんかまたお前宛に荷物来てたぞ『PC部品』だっけ。お前の棚んとこに置いといたけど。本当パソコン好きだな。全部で何台あるんだよ」

「寮の部屋の抜いても三台はありますけど……って、まさか開けました?」

「その辺は常識的だ」

垣根の言葉に一瞬肝を冷やしたゴーグルだが、慌てず騒がず落ち着いて聞き返した。

「ですよね……いや、その、中見てないんならいいんスけどね万一あると俺の信用とか社会的な生死に関わるんで困るんですよねははははは」

ゴーグルは内心必死になって脳をフル稼働させていたが、最近その手の商品は注文していなかった気がする。
多分。
だからセーフだ、もし何かあってもきっと。
多分。

学園都市は『外』以上に年齢規制のレーティングが厳しいところがあってちょっとした買い物にも苦労する。
アニメが好きなやつだと認知されているのはいいが、流石にゲームオタクの方だと『スクール』内での評価とか色んなものがガクッと下がりそうだった。



「ああ……お前もおかしな名前で注文するんだ? この前心理定規のやつに『メルヘン・ファンシーグッズ』とか届いてたから開ける所見てたんだけどよ、期待裏切って小分けのプラスチック爆弾だったわ」

「これっぽっちもファンシーでもメルヘンでもないじゃないっスか。まるで対極っスよ」

「だよな。しかも『ぬいぐるみか何かだと思った?』とか言って鼻で笑いやがったぞあいつ。かわいくねーよな」

今いない心理定規のがっかりなニュースに二人は息を吐いた。
『スクール』の紅一点は時に変化球を放ってくる。
いや、案外自分の部屋はかわいいものだらけとかそんな感じなのかもしれない。
男子としてはそんな幻想を抱きたかった。

「顔は結構かわいいんスけどね」

「な。っつうかお前アニメ以外の女に興味あったんだ」

「そりゃま普通に」

「そう言えばあいつ、今度知り合いに頼んで大型免許の教習受けるとか言ってたな」


ギャップありすぎな二球目にゴーグルはずっこけた。
心理定規と車。
それもかわいいバスガイドさんとかタクシーの運転手のお姉さんとか言うレベルじゃない。
大型車両でイメージされるのはトラックとかダンプ、ショベル、クレーン車。
まるでかわいくない、十代の女の子とは無縁そうなものばかりだ。

「いや、普通に年齢でひっかかりません?」

「技術教習だけでカード取るわけじゃねえからいいらしい。それも動けばいいってレベルで充分とか言ってやがったな。何かあっても、その辺の車やなんか使えれば確かに足には困らないだろうけど」

「ああー、前に普通車なら動かせるって言ってたかも。言ってたなあぁ。動かすってなんだろって思ったんスけど」

ちょっぴり残念な記憶を思い出してしまったゴーグルは頭を抱えた。
もしかしてピッキングとかも出来るんだろうか、なんて想像をたくましくすると心理定規が段々とマルチスキルなトンデモ少女になってしまいそうだった。
『スクール』に常識的な人はいないのだろうか誰かに聞きたくなる。


まさかの特技にゴーグルはそれなりに驚いたのだが。
ある意味なんでもアリな超能力者はあまりその辺りは気にならなかったのか。
なんてことない調子で続けた。

「攻撃も防御も出来ねえ、その上逃げるのにも使えねえ能力だといざって時に苦労するらしいぜ。あいつも、テメェしか信じてねえ様なタイプだしな」

「いやーしたたかっスねー。でも幾ら緊急事態でもあのカッコでトラックとか乗ってほしくない様な……」

困った時誰かに助けてもらう、と言う女の子の王道がイメージできない心理定規だった。
何かあっても、能力で相手を誘導して結局は自分の力で助かってしまいそうだ。

「垣根さんは乗らないんスか? バイクとか似合いそうっスけど」

「車なんざテメェで乗るもんじゃねえ。用意させるもんだ」

今ここで口に出しては言えないが、能力で飛べてしまう人間に乗り物の必要性はあまりないかもしれない。
おまけにものすごーく上から目線な、リーダーらしいお言葉を頂戴してしまった。


駄弁っているうちにゴーグルの机の上の携帯電話が鳴った。

「もしもーし。え? スコア? ああ、マジかー。じゃあ今度更新しとくから――」

なんだかやたらハイテンションな相手と話すと、ゴーグルはすぐに通話を切ってしまった。

「ダチか」

「ええまあちょっとゲーセンで知り合ったんスよ。あえば遊ぶ顔見知りっス」

「そいつもオタク?」

「んー、まあリアル寄りっスけどね。面白いヤツですよ。ストライクゾーン激広くって」

「そこは否定しねえのか」

呆れた顔で笑うと垣根はまた漫画の続きを読み始めた。
モニタの前に戻ると、ゴーグルはなんとなしに口を開いた。
話のタネになりそうな知り合いの愉快で馬鹿な話はちらっと聞いたことがあった。


「なんかこの前は……『JSの希望の星になるんやー!』って言って遠足シーズンの小学生にてるてる坊主を山ほど作って配ったとか配らないとか」

「JSって何だ」

「女子(J)小学生(S)の略、っスかね」

「それただの変態じゃねえか」

眉をひそめると垣根はズバっと言い切った。
件の知り合いなら自分は紳士だとか言いかえしそうだった。
女の子に言われるなら大喜びしそうだからやっぱり変態だろうとゴーグルも思う。

「光源氏計画なのか、単にお礼が聞きたかったのかわかんねえっスけどね」

「礼? なんでわざわざんなもん聞きてえんだ」

「さあ……なんでなんスかね」

ゴーグルもなんでそんなことをしたのか何て詳しくは知らない。
一緒にいたそいつの知り合いによると、不審者として風紀委員にしょっぴかれたらしいからうまくいったのかもあやしい。

「うーん。ちょっとしたことでいいんスけど誰かに、感謝されたい時ってありません? でも悲しいもんで、小さい子は何かあっても『ありがとうございます』って素直に言ってくれるんスけど、特に女子は年齢上がると途端に態度が辛辣になるんスよ。まぁ最近は小さい子相手だと親切も『事案』扱いになっちゃうんスけど」

「そう?」

さっきからこの話題にまるっきり共感できないらしく、垣根は首をひねっている。

「ああー……垣根さんには関係ない話っスよね。そうっスよね。垣根さんの場合、もし人とぶつかっても相手の方からお詫びしたいって連絡先とかプレゼントとか貰いそうっスよね。すいません俺が間違ってました」

「お前……どっかで人のこと見張ってんのか」

「マジスか」

冗談で言ったつもりが垣根には真剣な顔をされてしまった。


「この前、カウンター席で近くの女に水ひっかけられてさ。どうせ汚れもしねえしいいって言ったんだけどよ」

ポケットをごそごそしていた垣根は取り出したものを放り投げた。
女物のハンカチだった。
シルクか何かの高そうな、なんか刺繍とかしてある。
その間に小さな紙がはさんであった。

「まさかっ、『きゃーごめんなさーい手が滑っちゃった☆』ノリの超古典的な逆ナン……ッ?!」

今時ドラマや漫画でもみないような手法なのかと、メモを手にしたゴーグルは戦慄した。
焦って書いたのか斜めに走る文字で電話番号とメアドが書いてあった。
いや。
もしかしたら、本当に心優しい女の子が何かしたくて勇気を振り絞ったのかもしれない。
学園都市だってそんな純粋な子が一人くらいいるかもしれない。

「やるよ。いらねえし」

「お、俺がもらっても何にもならないじゃないスか、いいです!!」

そんな自覚も興味すらなさそうな垣根の前では彼女のフラグは立つ前に消滅しまった様だ。
成就させたり回収するどころか構築するのにはきっと苦労するんだろう。


ドーモ
冷蔵庫とクレーン女に比べるとゴーグルのインパクトのなさが際立つ
かわいそうに
クレーンはプラス大型特殊免許がいるんだってね
定規ちゃんがんばれ


専用口wwww
青ピ名無し繋がりかぁーとか反射的に思ってしまったのが少し悲しい

定規ちゃんは教習を受ける時もドレスなんだろうか

マジな話、垣根は恋愛に興味無さそうだもんなー
彼女いないだろって突っ込まれても「それがどうした?」って返しそうだ

どうしよう垣根がモテるビジョンが浮かばない
なんかサドっぽい女に股間踏まれてるところしか浮かばない
あの中学生みたいな精神の虫マニアが数々の女性に愛されてたという過去が暴露されたら
鬱要因にしかならなかったオティヌスからの虐待シーンも魔神様もっとやっちまいなって見方にすり替わりそう

あと俺も垣根進化させた上でランクマしました
一方通行出なさすぎてもうどうでもいいの心境
男しかいないホモパ作りたかったのにィ!!

艦コレで初春って見ると、提督+初春で帝春を連想してしまい
同時にこのスレも思い出す今日この頃

レベル5の男共は女に縁がない運命なんだよ

待機

戻ってきてよ>>1さん
パズデックスで垣根が弱体化されたショックで死にそうなんだ
助けてよ
僕を助けてよぉ!

スクールのスピンオフとかでねぇかなぁ…

ていとくんについてどこかで見かけた、「禁書SS界の渚カヲル」って表現は至言だと思った


微かな音を立ててエアコンが室内の空気を整えている。
適当な手つきでリモコンをいじっていた少年は少ししてそれをソファの上に放り投げた。
真夏だというのに長袖のワイシャツに袖を通した少年は続いてテレビのリモコンに手を伸ばす。
昼すぎのバラエティ番組で若い女性リポーターがにこにこしながら、
「おいしーい」
「かわいーい」
「すごーい」
を繰り返すのを数パターン眺めてからチャンネルをあちこち変える。
しばらくそんなことをしてから、電源を切るとため息と共に肩を落とした。
そんな時、玄関の方から物音がした。

「ちース。やっぱ垣根さんスか」

ドアを開けるなりゴーグルの少年はそう口にした。
垣根が眉を寄せると、彼は鍵が開いていたから居ると思ったと答えた。

「最近心理定規は見てないし。夏休みっスからねえ」

「そう言うお前は? わざわざこっちに何しにきてんの」

ついこの前まで調べていた『幻想御手』にまつわる話は結局これと言って『スクール』に役立ちそうな情報は掴めないままだった。
騒ぎと、ちょっとした事件がほんの数日であっと言う間に収束したかと思うと、後には嘘か本当かわからないような噂話ばかりが残っていた。
『スクール』での目立った活動もないので、彼も特にここに来る用事はないはずだった。

「隠れ家のパソコンならセキュリティその他が『ランクB』以上で使えるんで。何かと便利なんスよ。なんか今日は、日付変わったへんからっスかね? ネットとか回線がやけに重いんス」

なんて言いながら少年は背負っていたリュックサックを降ろすが。
そんなことを言っていた癖に中から出てきたのは数台の携帯ゲーム機だった。

「はぁ。しっかし今日もつまんねえな」

ソウデスネーと返事をしながら後ろを通ろうとしていたゴーグルの少年は、ちょっと引き返すとスマホをいじっていた垣根の手元を覗きこんできた。

「あ。スコアアタックっスか? 『キャンディ☆スラッシャー』、けっこうハマりますよね」

「ああ。クエストの方はだいぶ埋まったから」

「あれ。垣根さん、チョコフォンデュのブラインドってアイテムで消せますよ?」


パズルアプリの中でも、好き勝手にキャンディを操作して時間いっぱいひたすらポイントを稼ぐモードで遊んでいた。
ちょうど、画面の上に出てくる敵キャラが数ターンおきに邪魔をしてくるステージだった。
ボウルに入ったチョコをぶつけられると画面に並んだキャンディが少しずつ見えなくなってしまう。
チョコレートをなぞると一瞬だけ下のキャンディは見えるようになるが、それで移動してしまえばあまり意味はない。
面倒なオジャマ効果をなくすには、同じところを三回以上こするか専用のアイテムでまとめて取り除くしかない、と言うのが一般的な攻略法だった。

「いいんだよ。こういうプレイだ」

「でもキャンディ全然見えないじゃないスか。どんな縛りプレイっスか」

首をひねるゴーグルの前で、垣根は画面の上を一筆書きで素早くスワイプしてみせた。
すると。
面白い様に少年は目を丸くする。

「え? なんでそれで15も連鎖するんスか?」

「開始直後、一番最初の並びは見えるだろ。動かせば確認も出来るし」

「あー、でもまたチョコが……って、更に18? どうなってるんスかこれ」

再び塗り潰されたなんてお構いなしに、垣根が指を動かすと次々にキャンディが消えていく。
画面に浮かび上がるコンボ数にゴーグルは信じられないと言いたそうな声をあげた。

「こいつの配置と落ち方のパターンな。やってるうちに大体読めてきた。あー、二つ連鎖が足りねえってことは……ここ、丸い緑じゃなくて紫のがきやがったな」

「……本当だ」

キャンディの色も形も見えない所で垣根が指を動かすとなぞられた場所だけ一瞬キャンディが浮かび上がる。
繋げられた緑のキャンディが消えていく。
ずれたキャンディも消えて2COMBと文字が光る。
上から落ちてきたキャンディも更に増えたが、おかげで半分近く目隠しされた所が今どう並んでいるかは横から見ていてもほとんどわからない。

「見てろ。この配置なら次は後五……いや、四ヶ所落とせばもっと消えるから」

ろくに見えないゲーム画面を頭の中でシミュレートしてしまったらしく、垣根は得意そうに笑った。
すごいのだが、何かもうケタも違うレベルですご過ぎてゴーグルの少年はぼんやり口を開けて頷くしかなかった。


「いやー、すごいっスけど。垣根さん何と勝負してるんですか。ランク上位とかんなレベルじゃないですよね」

「ハイスコアとかボーナスとか。やりはじめでどうなるか見えてくるとそんなに面白くねえんだよな。落ちてくるのに合わせて配置すりゃ残りも消える。点とかその通りやりゃ出るし」

ゴーグルはためいき混じりに称賛するが、垣根は面白くなさそうだった。
これも飽きてきたな、と呟くとポケットにスマホをしまってしまう。

「あんま狙っても出ないんスけどね。うーん、じゃあパズル以外のアプリにしたらどうっスか。箱庭ものとか、それか携帯機のゲームにします? アクション系とか」

リュックからポーチを取り出すとゴーグルの少年はゲームソフトを探し始めた。

「アクションものっつうとあれだろ。敵狙ってポイント稼ぐとか、潜入して情報収集とか銃撃戦とかだろ? そう言うゲームって普段しねえようなことして遊ぶんだよな、普通は」

気乗りしないらしい垣根の言葉にゴーグルは苦笑いした。

「あー。リアルっスね。俺らたまにしますねそう言うの。気分転換には向かないかもっスね」

「な」

「でも面白いのもあるんスよ。実は最近やってる奴みつけたんで、『スクール』系の組織メンバーでパーティ組んでるのがあって――」

近くのテーブルの上に数種のゲーム機とソフトを並べて小さな見本市を展開していたゴーグルがカバンの底の方を漁る横で。
垣根は一台だけ起動している機体に目を向けた。
テーブルの端、ちょっと手の届きづらそうなところにそれだけ押しのけられていた。

「お前はいっつも、ながらで何かしてるだろ。これは何してんの?」

垣根が勝手に動いているゲーム機を手に取った瞬間。
ガキン! とおかしな音が立った。
それに慌ててゴーグルが顔をあげた。

「うわ! 垣根さん、ちょっ何してんスか? ケガとかしてねえっスか」

「別にこれくらいなんともねえけど」

「あー、びっくりした。『未元物質』スか。でも俺が動かしてる物にいきなり手ぇ出さないでください。見てない時に何か巻き込んだら怖いじゃないスか」

「あれ。これ能力っつってもお前がやってるわけじゃねえのか」

垣根は携帯ゲーム機の画面を覗いて首をかしげた。
今は止まっているそれをポーズモードにするとゴーグルは他のものと同じように並べた。

「そっス。それは範囲と対象――そのゲームなら押すボタン決めてそこにぶつけてるんで、セミオートってかそれ以外のものに触ったら止めるとか器用な設定は出来ないんス。判断は今SE聞いて俺の耳でしてたんで。いやーだからっスかね、心理定規なんて俺が能力使ってるってわかるときは近寄ってきませんよ」

「使ってる時『は』? 『も』じゃなくてか」

「え。俺そんな嫌われてます?」


結局。
おすすめをいくつか教えたものの。
今はゲームとかいいや、と言われてしまいゴーグルはテーブルの上を片付けていた。
ちょっとさびしそうだった。

「お前って普段からよく能力使ってるよな。『念動力』ってそんな便利か」

「そっスね。ちょっと物取ったりとか出来るんで便利っスよ。ちゃんと制御するならこれっスけど」

少年は定位置のパソコンの前に座ると、リュックから取り出した「ゴーグル」を横に置いた。

「それって結局、何の意味があんだっけ」

垣根も、彼が能力使用の時に機材を使っていることは知っているが、つけている時といない時の差までは気にしていなかったらしい。
必要な時に十分な成果が出せれば特に考えることでもないかもしれない。

「こいつっスか? そっスねー、ここに紙があるじゃないスか」

ゴーグルの少年の言葉にテーブルの隅にまとめられていたチラシが持ち上がった。
目の前までふわふわ浮かんできた紙切れを垣根が睨みつけると、ゴーグルはうんうんと頭を下げる。

「これを……こうっス」

バチ、バチ、バツッ。
横に一直線、少年が自分の体の前で手を動かすと紙の上にはほぼ等間隔にいくつも穴が開いていった。

「で。今度はこれと…こいつを」

少年は頭にゴーグルをはめてケーブルを腰の機械に繋ぐ。
調子でも確かめる様にウエストポーチみたく括り付けられた機材をチェックすると。
ポケットからボールの様なものを取り出した。
大きめのスーパーボールほどで、小さなレンズが付いていた。
床に置かれたボールが二つ、紙の下まで転がっていく。
そしてもう一度手を横に動かすと。

ダダダッ、とミシンでも掛けたような音と共に紙が揺れた。
さっきの倍、それ以上の速さと数で穴が空いていく。
くしゃくしゃになりながら丁度切り取り線の様に細かく穴の打たれた紙は。
最後にバリッと下に引きちぎられた。

「こうっス」

切断されたと言うには不恰好な。
強引にねじ切られた様な紙をそのまま床に落とすとゴーグルの少年は手をはたいた。

「ゴーグルの効果ってこんな感じっス。俺が一度に能力を使える規模ってそんな大したことないんスけど、視点を増やせば手数がちょっと稼げるんスよ」


そのあとの話を簡単にまとめると。

能力者個人が見ているもの、一定の範囲のものを動かすのが得意な能力を何とか今以上に伸ばすために彼の『開発官』が編み出したやり方が「能力を分散して処理させること」だったらしい。
桁の多い計算を、コンピュータは莫大な演算能力にものを言わせて単純に1+1を繰り返すだけでも一瞬で解くことが出来るが。
そうはいかない人間は、効率的なやり方を模索して、たとえば掛け算を使うことで同じ問題をクリアする。
一つの画面を分割して二種類の映像を同時に流しても、慣れれば人間意外とみれてしまうものらしい。
能力のベースに大きく関わっていた「能力を使う、目の前の世界」を少しくらい増やしても彼の念動力に問題はなかった。
ケーブルだらけの土星の輪の様な機械は。
下の機材で受信する映像を切り替えて、ゴーグルに内蔵された電極から送られる信号で、外部からの情報を自身の感覚に近付けて捉える為の装置と言うことらしい。

「たとえば十二のターゲットをまとめて撃ち落とすのが難しくても、四つずつ×3なら焦らずいけるって感じっス。まあカメラ位置で被ったりするし、条件は他にもあるんスけどね」

「ふーん。お前、狙撃手の代わりする気はねえの。出来そうだよな」

「そういうのはFPSで充分っス。それに幾ら映像があっても、それで距離や正確さを稼げる様な仕組みじゃないんで。遠距離から頭や心臓に致命傷ってのは厳しいっスね」

そんな話をしばらく黙って聞いていたリーダーからの提案を、少年は申し訳なさそうに笑って断った。

「まあ俺も学校じゃ成績はそこそこっスよ。こう言うプラスαは『身体検査』の結果に反映されないんで」

拳で頭に着けた「ゴーグル」を小突くと少年は苦笑いした。


「メジャーで、そこそこ幅のきく能力の代表みたいなとこあるよなそれ。他に何が出来んの」

「単純に物動かすのは得意っスよ。細かいものからそこそこ重いのもいけるんスけど、俺は能力での複雑な操作になるとあんまり」

意外と、他人の能力の話に興味がわいたらしい。
そう振られたゴーグルの少年は、思い出したようにパソコンで動画サイトを表示すると出てきたものを垣根に見せた。

「何これ」

「念動力の練習動画、っスかね。複雑な方が得意なやつはこんなのもいけます。やってるのは強能力者なんスけど。あーあー、俺もこれくらい小器用な使い方出来たらいいんスけど。同じ系統でもジャンル違うんスよねえ」

フレーム内の粘土がぐにゃぐにゃと伸びたり丸まったりしながら形を変えていた。
ゆっくりと、小さな子どもが遊んでいる様な動きだったが段々と形がはっきりしていく。
細部、たてがみまで作りこまれたライオンの頭がぐるりと映って再生は終了した。

「そうか? こんなん手でやった方が早いんじゃねえの」

「いやあ、ただ動かすより意外とムズい……って! そうだ、垣根さん!!」

はっとした顔をすると。
少年は急に垣根に振り返った。
そのままつかみかかりそうな勢いで話はじめた。

「罰音メクちゃんて知ってますか?!」

「あ? なんだそりゃ」

「罰音メクちゃんス。メクちゃんは『外』で生まれたソフトウェア発のヴァーチャルアイドルで十五歳の女の子っス。公式のプロフの生年月日は十月十日、なんでかって言うとローマ数字の10が――」

「いや。そこ聞いてねえしうるせえよ」

がーっとまくしたてていたところを垣根に止められたゴーグルの少年は、床に正座をしてちょっと落ち着かされた。
そして頭を勢いよく伏せながら持っていたタブレットを頭上に掲げた。

「垣根さん、これ出来ますよね? フィギュア! 作れますよね!!」

画面いっぱいに表示された画像は少女のイラストだった。
それと、さっき見せられた動画を交互に見比べながら垣根は眉を寄せた。
テンションのおかしいゴーグルの言葉を補完するなら。
垣根には『未元物質』で粘土遊びが出来るか、アニメフィギュアの様な細かいものが作れるかやって見せてくれと言いたいらしい。

「はぁ? そんなの……楽勝だ」

「そうですよね! 垣根さんは超能力者っスもんね。強能力に出来る様なのは楽勝の朝飯前っスよね!! この、初期の公式イラストってほとんどグッズにされてないんスよ。多分一生三次元でお目にかかれないと思ってたんスよ!!」

ゴーグルは、普段の態度はどうしたのかと言うくらいのものすごい勢いと食いつきだった。
おまけにまだ落ち着きが足りない上にこりてないらしい。
垣根が迷惑そうに一にらみしても、まったく効果がなかった。

「お前さ、俺がそう言われたからって、はいそうですかってただやるとは思ってねえだろうな」

「そりゃもちろんっス。でも俺もー『未元物質』のすごさを目の当たりにしたいって言うかー垣根さんの偉大さはもう常々ひっしひし感じまくりなんスけどー……恥も無礼も承知で何とかお願いできませんでしょうか」

よっぽどそのなんとかちゃんがお気に入りなのか、ゴーグルは暴走気味なテンションでそう続けた。
今にもごりごりと床に頭をすりつけそうだった。
それに。
心底呆れきった目をすると垣根はため息をついた。
かわいそうなものを見る顔をしていた。

「仕方ねえ。見学料込みで今後のギャラ五本分な。キッチリ働けよ」

その条件だと当分ゴーグルは『スクール』での仕事がタダ働きになるのだが。

「やったああああ! 俺、俺、墓の下まで持っていくっス!」


本人はものすごく嬉しそうにバンザイまでしていた。

「あ。多分燃えねえからな、一応『未元物質』だし」

学園都市内の埋葬システムに含まれる火葬設備がDNAマップの一片すら残さない超高性能といっても、『未元物質』まで葬り去れるかは不明だ。
もちろん垣根は冗談のつもりで返したのだが。

「じゃあ、完成したメクちゃんはもしかしてこの先数百年残るって事も……」

ゴーグルは何故か真剣な声でそう聞いた。
早速目の前のモニタに勝手に開かれたウェブページにやる気なく目を通しながら垣根はうなづいた。

「かもな。一日か数十年か。まぁ俺の気が変わらなきゃだけど」

「やばい。ずーっと先の世界のどこかでもし俺のフィギュアが発見されたら、メクちゃんの愛らしさと素晴らしさと完璧さが伝わって後世も讃えられてしまう感じになっちゃいますよ。メクちゃんマジ電子の女神」

「まじもんの偶像崇拝(アイドル)かよ」

がっくりしながらツッコんだ垣根の一言もなんだかスルーされてしまった。


「で。これってどう言う仕組みなんだ。具体的なイメージがピンとこねえんだけど」

ゴーグルが浮かれながら見せてきた個人製作だと言うCGアニメの動画とその中のグラフィックデータの、プログラムコードが表示されたモニタを前に。
垣根は首を鳴らした。
暇つぶし程度にはなると思ったのか、それともさっさと済ませてしまいたいのか。
やる気はそれなりにあるようだった。

「えっと…俺もフィギュアはそんな持って無いんスけど、どれか参考にします?」

「いらねえ」

「3Dモデルのグラフィックっスか? 俺も作る方は詳しくないんスけど。確か……初心者向けのページが」

なにやら自分の作業をしていたゴーグルがぶつぶつ言っている間に、垣根の前のパソコンが勝手に操作されていく。
テーブルの上に置かれたボールカメラがレンズの向きを調整していた。
共有ソフトでも入れて操作をリンクさせればいい、と思いつきそうだがゴーグル的にはこっちの方が楽らしい。
文字通りの遠隔操作で何も触れていない様に見えるキーボードはカチャカチャと叩かれていった。
モニタ上にはパラメータ編集に必要なコードの読み書きの解説、作成ソフトに関するページが表示された。

「ふーん。この辺の反映とかどうなってんだろうと思ったんだけど。このファイルの数値をベースにして立体化してやればいいんだよな。よし、あとこっちのソフトと他、まとめて寄越せ」

そうしてダウンロードされたファイルを幾つもいくつも開きながら垣根は独りごとの様に口を開く。


「髪って他の人形みたく塊でいいのか。それともバラかした方がいいのか」

「質感髪の毛っぽくしてあの髪型再現できるんスか」

「俺の『未元物質』に常識は通用しねえ」

「えー見てみたいっスお願いします!!」

「それと、こう言うのってどこまでしていいもんなんだ。別にリアルなのが欲しい訳じゃねえんだろ」

「顔とか体のバランスはなるべく資料の方に寄せてほしいっス」

互いにパソコンの前に向かったまま、二人はそんなことを話した。

「あ?」

「どうしたんスか」

ウィンドウを埋める文字列を眺めていた垣根は急に。
不満そうな声を上げた。

「これさ……服の下までわざわざ作り込んでんの? 見えねえのに?」

「何がっスか」

そう言われて席を立って見にきても、ゴーグルには画面に表示されたコマンドのどの列の辺りがそれなのかがよくわからないらしい。
垣根が渋い顔でキーボードを叩くと。
すぐ横のグラフィック制作ソフトのウィンドウ内の衣装とアクセサリが取り除かれベースに髪と顔のパーツ、インナーをのせた状態のモデルが現れた。

「あー。パンツくらい普通のフィギュアも履いてるっスよ。メクちゃんのパンツはピンクの水玉なんです。ほら」

ゴーグルは自分用の棚からケースを取ると1/8スケールのフィギュアを出した。
こちらはさっき垣根に見せた画像とは髪型も服装も違う。
公式発のイベント限定モノで、わざわざ『外』から苦労して取り寄せたお宝とだと言った。
付属パーツでの衣装変更に対応したスカートを外してみせる。
それを見た垣根はものすごく。
そりゃあもう今までで一番かもしれないくらい軽蔑した目をゴーグルに向けていた。

「あっ! いや、そんな酷い目で見ないで下さいっス! どんなものにもディテールにはこだわりがあるんスよ」

「……こう言うのって安請け合いしていいもんじゃねえな」

今更ながら、縁のないオタク趣味に関わってみたことを後悔しているらしい暗部組織のリーダーは。
ため息と共にモニタを眺め続けていた目元をこすっていた。


「なぁ。こんな感じでいいか」

ちょっとうんざりした様に。
コキコキ首を鳴らすと、垣根はゴーグルを呼んだ。
ゴーグルが振り向くと目の前のテーブルの上に白い水たまりの様なものが広がる。
15センチほどになるとその中から真っ白な女の子のシルエットが生えてきた。

「はやっ……ってすごいっスね。わあ! ちゃんと衣装やパーツの質感が違う!!」

瞬きする暇もないくらい、あっという間に伸びた『未元物質』はゴーグルのよく知っている形に変わっていく。
花びらの様に髪が、スカートがふわっと広がり真っ白だった全身は一瞬で鮮やかに色付いた。

「えっと。こんなだったっけ」

「うわー! うわー!!」

ゴーグルがさっき見せた動画と同じ振り付けで、テーブルの上でフィギュアが踊りはじめた。
垣根が動きを思い出しながら操作しているからか。
ぎこちない動きが照れたように見えて、また可愛らしかった。

「こんなのも出来る。ラジオ体操第二」

続いて、規則正しく体操をはじめるフィギュアにゴーグルは腹を抱えて笑った。


「いやぁ。『未元物質』ほんっとハンパないっスね。夢みたいな能力っス。垣根さんこれで食ってけるレベルっスよ。原型師とかやったらマニアが大金と菓子折りと五体投地の三点セットで押し寄せますよ。3Dプリンターなんかには真似出来ない鮮やかな仕事っぷりっス」

ますますテンションの上がったゴーグルは早口で褒めまくった。
ミクロ単位の精巧さにあらゆるキャラクターやポーズにも対応出来るだろう幅広さ。おまけに早い。
そしてそのクオリティはものづくりの素人だとはとても思えない域だ。
『未元物質』そのものを素体にせず、枠組みだけみても充分通用しそうだった。
正直、頭の中のイマジネーションを三次元に落とし込める能力がここまでとはゴーグルも思っていなかったらしい。
そんな口ぶりだった。
物体操作が出来る能力は数あれど、ここまで正確に緻密にイメージを形にし、それを自在に使いこなすのは超能力者ならではなのかもしれない。


「まあこいつで色々出来そうなのはわかったから、今回は俺にもそこまで悪い話じゃなかったかもな」

すごいすごいと手放しで褒められて悪い気もしないのか、気を取り直したらしい垣根はなんとも複雑そうに言った。
だがその呟きにゴーグルの少年は首を傾げる。

「垣根さん、今まで能力で遊んだ事ないんスか?」

「んー、別に。何が出来るかなんざあれこれ考える必要もなかったし」

「もったいないっスよ。こんなにすごい能力なのに」

惜しむ様な言葉に、垣根は片手をぞんざいに振った。

「煽てたって、もう出さねえぞ。これからはお前のお気に入りをフィギュアになんてしねえからな」

「ええっそんな! 立体でみたい子がまだ居るんスよ」

ふざけたノリで返された垣根は。
にやりと笑って足を組んだ。

「ばーか。これからキリキリ働いてもらうんだからよ。忘れんな」

「はいっス!! 何でもお申し付けくださいっス!」

最後に垣根に操作してもらい、元のイラストとそっくりなポーズを決めたフィギュアを受け取ったゴーグルは、急に不安そうにうつむいた。

「えっと……俺調子乗っていろいろしましたけど。これ本当にもらっちゃっていいんスか? 垣根さんいつも『未元物質』はすぐ処分してませんでしたっけ」

最新の科学技術をふるっても学園都市どころか恐らく世界中でも垣根帝督にしか作り出せない『未元物質』。
そんなもの欲しがる奴は山程いそうだった。
垣根がそれを勝手気ままに扱いながらも、管理はきちんとしていた様にゴーグルは見ていたらしい。
まあ、誰もこんな美少女フィギュアの材料が何かなんて気にかけないだろうが。

「返されたって、俺こんなもんいらねえし。俺にあそこまでさせたんだ。あの下らねえ時間を無駄にしやがったら許さねえからな」

「はい。一生大事にします」



「なあ」

うきうきしながらフィギュアを捧げ持って眺めていたゴーグルだが、垣根に呼ばれて振り返った。

「アロサウルスとティラノの殴り合いって見たくねえか」

いつの間にか、テーブルの上には菓子箱サイズの小さな恐竜が二頭並んでいた。
意地の悪いにやにや笑いをはじめた垣根の前のモニタには、化石や骨格標本のWebページが映っていた。
どうやら外観の参考にしたらしい。
爬虫類を模した真っ白なものはテーブルの上を太い尻尾で叩いている。
牙のずらっと並んだ顎を見せつける様に頭を振っていた。

わーちっちゃい恐竜さんだーかわいー
とかどっかの展示物だったらのん気にながめていられそうだったが。
垣根の意味ありげな顔をみていたゴーグルはなんだか嫌そうに頬をひきつらせていた。

「えーっと、暴君フルボッコならやめてくださいっス。男子の夢を壊さないでください。どうこう言われたってティラノサウルスは知名度は間違いなくトップクラスなんスから」

「王者、暴君、ナンバーワン。御大層な名前が並んだところで、スペックは圧倒的に負けてるけどな!」

「ああああ! 酷いっス! やっぱ前脚短い!!」

小さな二頭は同時に動いた。
しかし。
ほんの一歩の差で初手を奪われ頭を押さえつけられる古代の覇者のミニチュアにゴーグルが嘆いた。
その後はなんかもう、蹂躙っていうか一方的なティラノサウルス公開処刑のフルボッコだった。
その指揮をする垣根はなんだかとってもご機嫌だった。

『未元物質』のクソ無駄使い(時価)
未元物質での再現はレコードの溝に針を落として再生って感じらしいけど、加工も設計図やベースになるデータがないとやりづらいとかあるんだろうか
索敵用に作ってたトンボは小さい方が小回りきいていいと思うんだけどでっかいのは趣味か?あと垣根って実はネッシーとか好きですか?それともありゃ病理さんの趣味でーす?

ゴーグルくんのは勝手な妄想と適当なこじつけ。ゴーグルってのは基本目に掛けるものだけど頭に着けてるものをわざわざそう呼ぶのは視覚補助目的だからかなとかなんとかでどうでしょ
ほんとはもうちょっと能力関連の話あったけどそんなに面白くなかったからカット

ほんっとお久しぶりですドーモ
ギリですんませんおやすみなさい

乙!
やっぱ面白い


垣根が死んだら垣根が展開していた未元物質はどうなるのかね
やっぱ消滅するのか?

戻ってきてくれてありがとう
今回も面白い

おおーきてた!乙!落ちたかとおもったよ
ゴーグルがヲタ化とか個性ついてるのはあんまないよな
暴走しすぎだけどwwwwSSはやりすぎくらいがおもしろいよ
なんか死亡フラグめちゃ立ってる気するけど今話はまだ夏なんだよね
秋になるとやっぱ死ぬの?

フィギュアから主神の槍まで作れてしまう未元物質マジ万能。
一家に一台ていとくん。

やってる事は物質成形系能力と大差はないんだろうけど、能力の錬度が高すぎるのと、未元物質自体馬鹿げた応用性を持ってるから、実質「万物を創造、操作する能力」といっても過言じゃないんだよな
だから無限の創造性なんて作中でも明言されてるんだし
ただ15巻垣根はその領域に至って無さそう

うっかり頂点一日ログインしてなかったっぽ。ログボずれてたかも
なんか悔しい
パズデックスもすすまないからちょっとネタ投下しますね
いいですか、どうもありがとう
また台本。sageます
たぶん10もいかないと思うよ



※SSの内容とは関係ない一発ネタです※
今開催中のパズデックスのあれ関係だと思ってください
メタ気味なのは仕様です



ゴーグル「垣根さん」

垣根「……」

ゴーグル「かーきーねーさん」

心理定規「それじゃダメよ。今は委員長って呼ばないと」

ゴーグル「い、委員長? 垣根…委員長?」

垣根「何だよ」

ゴーグル「俺たちのこの格好はなんなんスか」

垣根「見てわかんねえのか。制服だよ」

ゴーグル「はぁ。それでもシャツの下はいつものセーターなんスね。それで何でみんな眼鏡なんでしょうか」

垣根「……イメチェン?」

ゴーグル「そこ分かってないんスか?!」

垣根「文句あんのか」

ゴーグル「いいえいいえ」


ゴーグル「でも委員長眼鏡良く似合いますね。クールで知的っスね」

垣根「だろ」

心理定規「君はあんまり馴染んでないね」

ゴーグル「そうなんスよ。これ外してもいいっスか? モブモブしさに拍車がかかるって言うか、目の前にあると逆に違和感がっスね」

垣根「そうなのか」

ゴーグル「そうなんスよ」

心理定規「……だからって頭に乗せるのはありなの?」

ゴーグル「あ。ちょっと落ち着くっス」

垣根「そうなのか」

ゴーグル「そうなんスよ」

心理定規「……ちょっと。彼に変なこと教えないで」

ゴーグル「もしかしてちょっと気にいったんスか?」

垣根「……そうなんだよ」

ゴーグル「そうなんスか」

心理定規「ねえ。やめてくれる?」


心理定規「もう。話がちっとも進まないじゃない」

垣根「そうなのか」

心理定規「や・め・て」

ゴーグル「ほら、委員長。副委員長が怒っちゃいましたよ」

心理定規「次やったらほんとに怒るよ?」

ゴーグル「さて。ところで委員長」

垣根「どうした」

ゴーグル「俺たちはどこの委員会所属なんスか」

垣根「なんだ。お前まだ気付いてなかったのか。ほら」

ゴーグル「それって……腕章っスか。あれ。四本線に、盾って」

垣根「風紀委員に決まってんだろ」

ゴーグル「え、ええ?!」


ゴーグル「なんで風紀委員なんスか? え、まるっきり『スクール』と立ち位置逆っスよね!」

垣根「やってることはどっちも治安維持活動含まれてんだろ。一応な。んなこと言ったらあいつらの方があり得ねえだろ」

心理定規「生徒会実行委員ね」

垣根「あの第一位が会長だぞ? リーダーシップも協調性もクソもねえような、他人なんざ寄せ付けねえ孤高の悪党みたいなツラしたあれが会長だぞ。学年主席で会長だぞ?」

心理定規「彼は次席で委員長だけどね。第一位だけど選挙戦のポスターには確か『ここから先は一方通行だァ! 進入は禁止ってなァ!!』ってあったんだけど。蓋を開けたら本当に、ぶっちぎりで当選よ。他の候補に九九六九票の大差を付けてね」

ゴーグル「まじスか。ってかこの学校生徒何人いるんスか」

心理定規「書記の彼が会長の候補者だったら、全校生徒の過半数どころか八割ががそこに投じたって噂もあるんだけど。そっちは辞退しちゃったから」

垣根「そこで。お前、生徒会実行委員に並ぶ勢力って何だと思う」

ゴーグル「え。きょ、教師っスか?」

垣根「風紀委員だろ」

ゴーグル「まさか……そんな理由っスか。それで風紀委員長?」

垣根「何だよ」

ゴーグル「すいません今は呼んでません。ええーそこなんスか」

心理定規「理由なんてそんなものよ」


心理定規「でも。それだけじゃこの仕事は務まらないわ。実際、やってみたら彼にはピッタリだったのよ」

ゴーグル「はぁ。そうなんスか」

垣根「考えるまでもねえだろ。他の能力者どもを制圧してルールに従わせる、教師共ともそれなりに折り合いが付けられて学校外への牽制やアピールも出来るなんて器用な真似が、俺以外に出来んのか?」

ゴーグル「そう言われれば、確かにそんな気もするような」

心理定規「彼、実力だけじゃなく結構顔も利くし。副会長について生徒会役員になった元風紀委員の穴もあったしね。何か校内で問題があったからっていちいち会長以下役員のみなさまに動いて貰う訳にはいかないでしょ? あ。こんな話してるうちに、もう昼休みね」

ゴーグル「それがどうかしたんスか?」

心理定規「見てればわかるよ。彼がこの仕事のトップを任されてる理由もね」


削板「   根  性   ! !  飯だ飯っ!!」ドバン!!

垣根「削板ぁぁぁあああああ! テメェまた備品を見境なく吹き飛ばしやがって!! 毎度毎度尻拭いするこっちの身になってみやがれクソがぁぁぁあああ! 廊下ッッッ走ってんじゃねぇよ!!」バサァァァ!!

ゴーグル「え」

心理定規「委員長の大仕事。いえ、もういつものことね」


ゴーグル「今のって」

心理定規「この学校一の問題児、削板軍覇。彼は特別悪い子じゃないんだけど、加減を知らないのよ。彼を鎮圧出来るのは、生徒会会長か書記。それとうちの委員長だけよ。書記の彼だとがんばっても十分くらいしかもたないのよね」

ゴーグル「原石相手に十分もたせる無能力者ってなんなんスか。いや、あのそれだけじゃなくて……委員長、飛んでましたよね?」

心理定規「そうよ。初速でF1並みのスピードの相手に、走って追いついたらいくらなんでも怖いでしょ?」

ゴーグル「いや、廊下走るのはダメで飛ぶのはありなんスか」

心理定規「……君ねえ、そんなんじゃ帰ってきてから委員長に怒られちゃうよ? 校則ちゃんと目を通してないの?」

ゴーグル「えー、と。『授業及び休み時間、教室移動の際、廊下を走ってはならない。学校行事、第二級以上の警報発動時他、特例を除く』」

心理定規「『校舎内を飛んではいけない』ってきまりは、無いのよ。あれで彼も真面目なところがあるから、ちゃんとここのルールには従ってるの」

ゴーグル「ええ?! いいんスか? そんな一休さんのとんちみたいなので」

心理定規「ちなみに、彼の機動力もこの学校で二番目よ」

ゴーグル「……会長も?」

心理定規「飛ぶの」

ゴーグル「まじスか」


垣根「はぁ……今日の被害は西校舎一階の窓十二枚と校庭脇の木が三本。それといつもの食堂裏の自販機。っつたく、昼まるまる潰して愉快な鬼ごっこじゃねえんだぞあの野郎。いい加減御坂にもあれ止めさせてやるからな」

心理定規「お疲れさま」

ゴーグル「……そっスか。風紀委員。俺も頑張らなきゃっスね! で、俺のポジションって」

風紀委員長「G」

ゴーグル「え?」

副委員長「君ね、風紀委員Gだよ」

ゴーグル「……それ、は。ゴーグル、の?」

風紀委員長「ABCDEFG、のG。お前下っ端だぞ」

風紀委員G「そう……なんスか」

副委員長「そうなのよね。がんばって」





会長ちっとも出てこないし、初日サボりやがるとかナメてやがりますかそうですか
あのイラストの女子制服かわいいよね
心理定規ちゃんも着ませんか、ついでに眼鏡もかけませんか

あの生徒会イラストからのネタ。中高一貫の学校でイメージしたけど生徒会役員が全校合同ってあるのかなまあがくねんとかなんとかつっこんだらだめだね?

あとの超能力者はあれだ、近所にあるお嬢様校にまとまってればいいよ。たまに学校間交流会とかそんなあれで顔合わせするような
初等部から大学までがっつりエスカレーターみたいな女子校で面子は常盤台と一部の女子。会長みさきちか、替え玉の縦ロールちゃん。
麦野はスケバン。
女生徒にきゃーきゃー言われて「沈利お姉様!! 素敵ですわ!」とか呼ばれてるのみてみたい

禁書は一応学園ものジャンルな筈だけどたまに学パロをみたくなるのはなんででしょうね

ドーモ
お目汚し失礼っした



いちお前のれすもしとくねありがとうね

>>113
部屋でくつろいでる時とかに突然窓から入ってくるけどそこで笑ったら愉快な死体の恐れがある。絶対に笑ってはいけない『スクール』24時てきな
流石に定規ちゃん女子だから暗部休みの時は私服だと思うw

>>114
「んなもん必要ねえ」って言いそう
興味ないことにはとことんドライそうだし
何を目的として何に興味があったか気になるから『直接交渉権』を得て何しようとしてたかちょっとでいいから教えてほしい鎌池先生頼む

>>115
パズデックスはドロップ率キツいから大変だよな
書き下ろしはよかった
色々根つめない方がいいよ深呼吸すると楽になるよ
って返そうと思ってたんだけど。色々あったな息してるか。こっちはまだしてる。なんとか。あいかわらず本体出ない

>>116
垣根提督(公式)
名前で呼んでくれとか言ってんのに作者に間違われるとかおいしい。誤字ほんと
帝春もいいよなー

>>117
ナンバーセブンはどこかでフラグ立ててそうな気もする基本いいひとっぽそうだし
第一位は既に……おっと誰か来たようだこんな時間に一体

>>118,119
おひさしぶりです

>>120
スピンオフとか書き下ろしイラストとか贅沢言わない。SSの初春みたいな出方でうれしいからさー
禁書超電磁砲のどっちかにコマ端のガヤでもいいからまたでないかな

>>121
なんとなくわかるようなカヲル君。原作で出番ろくにないけどおいしいネタもっててSSではネタ扱いorスルーとか?
イケメン天使でダミーなスペアで最期は愉快にぐしゃっとされるとかそっくりかな?
カブトムシ化してから自己再生するし増えるし量産型で共通点は意外とあんのかもしや

>>134,136
おつありですの

>>135
どうなんだろ。垣根は自分の死んだあととかそんな先のことは考えてなさそうだから疑問すらないかもしれない。個人的には垣根が処理してなければただの残骸として残りそうな気がする。消去も能力操作の一部みたいな。『一掃』の金ピカ粗大ごみみたいな
原作で冷蔵庫ついたのは生産、加工、操作を垣根に依存してるから延命したのかどうか
カブトムシはもうどうやって始末していいかわからない状態だけどね。メイン以下の個体も垣根化分裂オーケーならマジG並み。一人みかけると三十人はいる第二位

>>137
ゴーグル?垣根?
ゴーグルならセミみたいにいわないでやって。垣根ならカブトムシはひと夏どころか冬越えるらしいよ。なんて
ゴーグルが死ぬ意味はこのSSであんまりなさそうだからどうしようかとおもってるけど。んな先はともかく九月に入るくらいまでかけたらいいなって思ってる。もやっと話は考えてるからがんばりたい

あと実はゴーグルの扱いをどうしようか考えた時に「ゴーグル付けてないと『スクール』以下暗部組織のメンバーにろくに認識してもらえない」ってネタを仕込もうかと最初の頃思ってたんだけどやめてよかった。持たざるものからあまりに多くを奪い過ぎるところだった
でも最初は「垣根のしらないゲーム(艦っち)の話を解説する」だけで別にオタクではなかったんだけど
どうしてこうなった

>>138
一家に一台帝凍庫くん。うちにも羽根つき冷蔵庫ほしい。きっと親切に食品の期限とか聞いてなくてもべらべら教えてくれる
『この肉三日前に入れたろ。下の野菜室にキャベツがあっからそれと炒めてだな。調味料はここのポケットと、こっちの……』
そう言う話じゃないか

>>139
『回折』みたいな副産物的な効果以外だと精々形を変えるくらいだと思う。
第一位は血流操作やプラズマを作ってみようなんて実験やるまで思いつきもしなかった
第二位は自分の体を直してみるまで未元物質にそんな応用性があるなんてきっと考えもしなかった
ちょっと能力使えば即終了なら工夫することもないだろうし
15巻垣根もよくわからないことしてるけどね。ベクトルを偽装ってなんだと。向きをどうすんのと
黄砂「きなこです。通っていいですか」ってことなんだろうけど難しいよ禁書


最近1は話が長すぎて改行多すぎって怒られる。長文控えるべきか


ドーモ
ではまた

おお、しばらく速報来てなかったら更新されてた、ありがたや…
相性が良いのか知らんが、なんか個人的に>>1の文章は読みやすく感じられて好き

ゴーグルと未元物質の掘り下げ面白い
ていうか、なんだかんだ言ってゴーグルに対してちょっとデレてる…?(他の人間への対応の差を想像すると)
きっと冷蔵庫化した後にメクちゃんは垣根の仮の体として頑張ってくれるに違いない

乙乙
あの生徒会の垣根のバージョンあったらまた垣根のためだけにパズデックス課金するんですがねえ
さもなくば二度と課金しません
生徒会のやつで穏やかな美少年がごとくピアノを弾く垣根のカードなんて出ようものなら笑いすぎて死ぬと思います

しゃべってる中身はとにかくキャラの感じがぶれてないのがすごいと思う
垣根とか出番全然ないけどそんな感じするもん
禁書の他のキャラもみたい

なぜていとくんは苦労人というか他人の尻拭い役がこうも似合うのか
乙ですの

更新待ってます

まだかしら


垣根の顔を見飽きてくるなんて想像もしなかったよ
フランベルジェの消費数が増えてきたよ投下するね

>>150
このSSのリーダーはわりとメンバーにデレている。心配するな自覚は無い
ちょいちょい残念な自爆があるから実はゴーグルの印象は下方修正されていく一方だと思うけど
あとさすがに美少女フィギュアになるならカブトムシのがいいと思う。もしそんときゴーグルが元気だとかわいそうだわ
読みやすいすか。ありがとうまたがんばる

>>151
ピアノ弾けるんかなw
パズデックスはクリスマスイベントがなかったことだけが残念。もうやる機会ないじゃんな

>>152
垣根はカブトムシに抜かれそうだもんね。ページ数とか
ブレるってかハズれてる気はしてんだけどだいじょうぶかな
禁書のキャラは話し方が目立つの多いのは見てて楽しいけど大変な
妹達はラクでいいな

>>153
原作での扱いから、相手の事情をあれこれ超解説する役になってしまったのが超原因じゃないかと思います。敵ともみんなよくしゃべるけどさ

>>154
大変ありがたくおもっとります

>>155
たいっへんお待たせしています


「あれ垣根さんじゃないスか。今日こっちなんスね……おはようございますっス」

「もう昼だぞ」

ふかぶかーと頭を下げたゴーグルの少年に首をかしげると。
垣根は時計を見上げた。

「なんかいつもと違いますね。どうしたんスか」

「ああ。昨日着てたのはクリーニングに出したから代わりにな。わざわざ着替えなんざ持ってこなかったからよ」

いつもとは違う垣根の服装にゴーグルの少年は目を丸くしていた。
『スクール』での活動があるときは垣根は大体同じ様な服装だったからTシャツにジーンズなんて珍しがられてもしょうがないかもしれない。
けど垣根の発言にゴーグルの少年はますますびっくりしたようだった。

「え。ここに泊まったんスか?」

無駄に広いリビングルームだけではない。
第五学区内にあるマンションのこの部屋は、それらしく豪華な家具が並んでいてちょっとしたホテル並みの設備と雰囲気があった。

「まぁ、ベッドもあるし。一応手入れはされてるからたまには使ってやらねえとな。昨日どっかの奴が掃除に来てさ。笑えるくらいビビってたぞ。あんな奴らでも俺のこと知ってんだな」

「『スクール』下部組織の構成員スかね。ひゃー、組織トップの前で片付けって考えただけで胃が痛くなりそうっス」

垣根は意外そうに言ったけどゴーグルはなんとなく納得しているようだ。
新入りや下っ端がささいなことで取り返しのつかない結果を生まなくて済むように、リーダーである超能力者のことは話が伝わっているのだろうか。
正規構成員の知らないところでもしかしたら最低限の新人研修的なことがされているのかもしれない。

「それにしても垣根さん、こことかよく使ってるんスね」

冷房のしっかり効いた部屋の中をゴーグルの少年は不思議そうに見回した。

「お前は人のこと言えんのかよ」

「いやあ居心地よくって。テレビもデカイし。おまけに学生寮なんかとは回線速度も環境も全然違うんで。ええと……こういうのも職権濫用になっちゃうんスかね。後あの、お邪魔なら言ってくださいっス」

「ここだって『スクール』で勝手に押さえてる部屋だし。どう使おうが別にいいんじゃねえの」

リュックを降ろすとゴーグルの少年は少し考えてから申し訳なさそうに答えたが。
垣根は何ともやる気のない返事をよこした。
スニーカーのまま足を組んだ少年は、すっかり自分の部屋のように寛いでいた。


「へえー。垣根さんがジャージとかスウェット着てるとこが想像つかないんスけど」

「俺だって楽な格好くらいするぞ。流石にそれでは外に出ないけどな」

ゴーグルの
「カッコイイっスねー、どこで買うんスかそう言うの」
からはじまった普段、何着てる?トークは意外と盛り上がった。
垣根は、その辺は常識的だぞ、と返したがゴーグルは何がツボだったのか面白そうに聞いていた。

「あれ。待ってください。これ確か有名どころの……ちょっと写メ失礼します。そこのプリントんとこだけです」

スマートフォンのレンズを向けられて不快そうな目をした垣根に、慌ててゴーグルは付け足した。
はい、チーズ なんて間抜けな音声の後で少しの間何やら操作していたかと思うと。
ゴーグルの少年は垣根の服と画面を交互に眺めて大声を上げた。

「やっぱ! 最新作のシャツじゃないスか! 一枚三万以上する! 部屋着? これが?! セレブだー!!」

わざわざ画像検索して商品を特定したらしいゴーグルはなんだかとってもショックを受けていた。

「ならいつ着るんだよ。これでわざわざ出掛けんのか? こんなんでんなこと言ってお前、普段何に金使ってんの。わざわざ『スクール』にいるんだし、まるっきり金がねえ何てこともないだろ」

騒ぐゴーグルとは対照的に垣根は、おかしなものを見たように首をひねっていた。
学園都市の生きるレアアース鉱脈みたいな能力者の金銭感覚は一般学生とはずいぶん違うのかもしれない。
それでなくても超能力者だ。
どこかの研究機関とちょっと真面目な話をするだけでそれがそのまま大金に変わる、なーんてのはオーバーかもしれないけどそんなイメージがある。
そう考えれば、垣根にとって暗部での活動での成果なんてバイトどころか子どものおつかいみたいな感覚なのかもしれない。


「実は……学園都市に家族がいるんス。親は当てになんないし将来とかあるし、俺が何とか稼がないと面倒見切れないんで金が要るんス……って話だったらいい感じなんスけど――すんませんっス」

「何度も言わせんな?」

深刻そうな顔をしたかと思うと、次に笑って茶化そうとしたゴーグルの少年は。
垣根の顔を見て最終的に頭を下げた。


「いや大したことじゃ、アニメのディスクとかグッズとか後はえっとゲーム機とか……」

「同じのを何台も買うから悪いんじゃねえのか」

「特典付きのやつなんですよ。ソフトと本体同梱とか多くて。それにいいんス。俺これがあればゲーム一度に何個も遊べるんで便利なんス」

ぱんぱかぱーん! とか言いながら少年は取り出したゴーグルを掲げた。
それに能力の無駄遣いだとでも言いたげな顔で垣根が尋ねた。

「そんなにして楽しいのか」

「そっスねー。乱数調整とか個体値にこだわりはじめた頃はすげー便利だったんス。あとは神おま堀りながら努力値振れるしレベルも上がるしダンジョンも潜れるし下校リロードも全部まとめて出来ます。パソコンも使えば遠征やドックの待ち時間使えるしクッキーも焼き放題っスよ。作業時間の短縮にはいいっス」

ゴーグルが口を開くたびに垣根は頭上に一個ずつクエスチョンマークが増えていく様な。
そんな顔をしていた。


「後ケータイも。幾つ持ってんだ」

「こっちはタブレットっス。これとスマホと『スクール』の連絡用のガラケーと……基本料金はちょっとプラスなんスけど、おかげで堂々アカウント複数持ちっス」

「ガラケーは何かわかるけど、スマホはお前の能力で動くのか」

「じゃじゃーん。ここにタッチペンがあります」

今度はタブレット端末のケースからカラフルなペンが出てきた。
それも何本も。

「俺がその気になれば、個人戦だけじゃなくユニオンイベントでも複垢四つは同イベ上位に入れられますよ! 手動で!!」

自慢げに、熱く語るゴーグルの少年に向けられた視線はなんとも冷やかだった。
聞いたけど。聞かなきゃよかった。
そんな様子で垣根は頭の後ろで腕を組んでいた。

「よくわかんねえけど幸せだなお前。これっぽっちも羨ましかねえけど」

「ゲームの仕様もずいぶん変わったし、そこまでしないっスけどね。報酬全部まとめられる訳じゃないし戦力分散するし。なによりフェアじゃないんで。最近はそれより別のやってるっス」

ゴーグルの少年はリュックサックから荷物を並べ始めた。
いつものパソコンの前に置かれるのはペットボトル、スナック菓子、ゲーム機と映画のディスク数枚。
そして代名詞のゴーグルがモニタの横に置かれた。
それを横目にみていた垣根は立ち上がると、一応、といった感じで声をかけた。

「俺メシ行くけど」

「はい。えーっと? 戸締りっスか留守番スか? 何かご用っスか」

玄関、垣根、大きな窓、垣根、今出したばかりのパスケースとあちこち見てからゴーグルの少年はもう一度垣根を見た。
待機中、と顔に書いてありそうな部下に対して、すでに背中を向けたリーダーは上着に袖を通していた。

「ついて来たいんなら好きにすれば」

そう言われたゴーグルは動画を逆再生したみたいに荷物を詰め直しはじめた。


そのあと。
適当な店に入って腹も膨れたところで、

「次どうすんの?」

と垣根に振られてゴーグルは焦っていた。
もうちょっと詳しく話をすると。
垣根は今日は予定もないしノープランで何となく出てきたが、どうせなら外で暇を潰したい。
と言うことらしい。
いきなりそれをただついて来ただけのゴーグルの少年に言われても困ってしまう。
残念ながら『読心能力』や空気をよく読むスキルは搭載されていない。
更に、

「っつうか飯だけならデリバリーでよかったじゃねえか」

なんて言葉が出るあたりが何と言うか垣根帝督だった。


そういうの先に言えよ、なんて顔を垣根はしていたがゴーグルにそこまでの発言権はないと思う。

「じゃあ……そっスね。俺がよく行くところでいいっスか」

無言でうなづく垣根の態度には、なんだか期待より圧力が込められていそうで。
ゴーグルはいっぱいになったばかりの胃をそっと押さえた。


「この辺って、こんなに人通りあったか」

前を進んでいた垣根は首を鳴らした。
第七学区まで移動した後、二人はひと気のなさそうな路地裏を通っていたのだが。
ずいぶんとすれ違う相手が多いことに垣根は疑問をもったらしい。

「やけに人多いっスね。もしかしてあの噂は本当なんスかね」

無言で振り返る垣根にゴーグルは続きを話した。

「建物の裏とか、あっちこっちにマネーカードが最近よく落ちてるらしくて。垣根さんいつもマネーカードっスけどもしかして…それともどっかで落としませんでした?」

「ばーか。違えよ。んなもん探すほど暇じゃねえし配るほどお人よしでもねえ。下手に口座から金を動かしたりカードで落とすより、あっちの方が金の流れは追いづらい。だからある程度まとめて用意してんの。それだけだ」

「かえって面倒なんじゃ……って! なにしてるんです?!」

ゴーグルは大声でつっこんだ。いや、叫んだ。
垣根は話しながら、近くのビルに近寄ったかと思うと壁に手を突っ込んでいた。
壁の隙間にとかヒビにってことじゃなく。
白い外壁のど真ん中に垣根の腕が突き刺さっていた。

突然そんなおかしな真似をされて叫ばずにいれようか。いや無理です。
出てきた手の中には数枚のマネーカードが握られていた。
慌てて駆け寄ったゴーグルはおそるおそる壁を叩いてみたが当然のように固かった。
目の前で手品でも見せられたような反応に、垣根は自慢げに種明かしを聞かせはじめた。

「これ『未元物質』だからな。俺にしか出せねえし、中身も劣化しねえ。暗部なんて真似してるし、もし俺に目を付けられても手元のもんを下手に押さえられない様にしてんだよ」

「そりゃあ、貸金庫なんかよりよっぽど、いや世界一安全でしょうけど」

ゴーグルがよく見ると、もともと壁ではなく建物の隙間が埋められているみたいだった。
あと、あちこちの壁や塀に落書きが目立つのにその近くはあまり汚れていなかった。
『未元物質』相手に市販のスプレーや塗料が勝てるわけもない。
勝手に加工されていることに建物の持ち主が気付いても取り除くことも出来なさそうだ。

「他にも幾つかこうやって置いてんだ。ATMもいらねえし結構使えるぞ」

「そっ、そう……っスかあ」

自慢げに語る垣根に、冬眠前にあちこちにドングリを隠しておくリスの話を思い出してしまったがゴーグルは必死に口を閉ざしていた。
そんなファンシーなものと一緒にしても喜ばないことはわかりきっていた。
オチとしてはリスは自分で隠した所を忘れてしまうんだけど、垣根ならきちんと管理しているだろう。
最近はちょっと、ほんのちょっぴり当たりが柔らかくなった様な気もするけど。
それはやっぱり超能力者で暗部のリーダーな垣根が相手なので。
うっかりや都合のいい勘違いの招いた甘さで、周囲数メートル単位の自分の墓穴を掘ったりしない様にゴーグルは気をつけていた。
能力者相手だとこれがたとえ話じゃなくガチになったりするのだからおっかなかった。


さすが夏休み。
やってきたゲームセンターはそこそこのにぎわいだった。
でも店内は騒がしいくらいで。
こういった店にありがちな工事現場クラスの騒音は響いていなかった。
この店では主な音源である「音ゲー」にはそれぞれ専用のヘッドフォンが用意されていて、音の問題だけではなく客同士のトラブルなんかも防いでいるらしい。

両手に荷物を持って店内を歩く少年におーい! と後ろから声がかけられた。
振り返ると、格闘ゲームコーナーのそばにいた大柄な男子が手をぶんぶん振りながら近寄ってきた。

「ああっ、やっぱりGセンセやないのちょっとぶりやねー」

野太い関西弁で話しかけてきたのはゴーグルの少年の知り合い、青髪ピアスだった。
親のセンスがひどいのではなくもちろんあだ名だ。
名前どころか、高校生という情報以外ろくに相手のことは知らないがそのへんはお互いさまだったりする。

「あ。青ピ君ちース。なあGはやめてって」

「ありゃ、略さない方が良かったん? 名無しの権兵衛センセ」

「……AAA(ノーネーム)ってつけたのは自分でもちょっとどうかと思うから。人の過去の心の傷をつつかないで欲しいっス。今は反省してるから」

ゴーグルの少年はゲームのプレイヤーカードにあえて「AAA」なんてベタな名前を登録していた。
事前にユーザー情報をいろいろ登録しておけるのに、ランキングにそんな単純な名前が並ぶことは少なかった。
逆に目立ったのかあちこちの上位にいる「ハイスコアの名無しさん」はちょっとしたネタにされていた。
そのおかげで青ピと知り合ってからも未だにそれをいじられていた。

「よお。最近俺のスコアも伸びてるんだぜい。この調子だと次はもらったにゃー」

「ええと、つっちー君だっけ。ちーっス」

青ピに遅れて寄ってきたのは青髪ピアスの友だち。
こいつも派手だった。
髪は金髪、何故か金のネックレス、そしてグラサン。
クラスメイトらしいのだが、なんだか怪しいバイトでもしていそうな雰囲気だった。
ゴーグルの少年も最初は見た目にちょっと驚いたが話してみると明るくて愉快な奴だった。


「そぉ言えばセンセは平気だったん? 休みに入ってすぐ『幻想御手』なんてあやしい開発ツールの健康被害が噂になったやんか」

「あー。俺は使わなかったけど、同じクラスでぶっ倒れたのいたってメール回ってた。退院してからそれ使っても、何にもならないって悔しがってたらしいってのもセットで」

「病院送りになったのにまた使おうとしたのか? そりゃまたなんでだにゃー」

「そいつ、それ使う前はレベル1の『透視能力』だったみたいでさ。あれって効果それなりにあったんスね」

「そりゃ……」

「にゃー……」

苦笑いをするゴーグルに無言で二人は頷いた。
何故そんな無茶をしたのか、なんて説明も言葉もいらない。
聞いていた二人はそんな様子だった。
もし自分がその学生だったらどうしたか、それも考えるまでもない。

限りなくそれがゼロでも諦めたりしない。
だって、それは。

男子の夢の一つだろう。

「ああああ! カミサマってざんこくやね! ボクだってレベルが上がればウフフなことに能力が使えるかもしれないやんかー!!」

「はははー俺らにはあんまり関係ない話だにゃー」

体をグネグネさせながらうなる青髪ピアスはものすごく悔しそうだった。
他の能力者とは違い、ちょっとしたプラスαで能力が上がるゴーグルの少年自身はあまり幻想御手に魅力は感じなかった。

「うーん。売値が二十万代の時に一つくらいうちで買っとけば良かったんスかね。今じゃあれは音楽ファイルだった、って以外の話聞かないしなー」

だが、物があったらリスクがあろうとなかろうと、どっかの学生の下っ端とかが実験台にされていたかもしれない。
入手しなくてよかったのか悪かったのか。ゴーグルの少年は今更すぎる考えに首を振った。


「さーて。またいつものいきますのん? 毎度勝ち逃げなんて許しまへんよーボク」

つっかまーえたー、なんてテノールで歌う青髪ピアスに肩をつかまれた。
更に反対側には金髪グラサンが寄ってきて。
暑苦しい感じに挟まれてしまったゴーグルの少年はふっと目をそらした。

「いや……今日はちょっと人と来てるんだ。ごめん」

「おやおや? そのビミョーに嫌そうな反応は、さては女子かにゃー」

「なにぃっ!? センセまさかいつの間に抜けがけを」

二人は勝手な想像で盛り上がっていたが。
他人に不用意に会わせたくない、と言う理由なら非実在のガールフレンド(仮)より暗部の上司の方がきっと上だ。

「いやいや男だって。先輩、みたいなさー。俺にもし女子の友達がいてもこんなとこには連れてきません。彼女はここだけど」

ゴーグルのウエストバッグにぶら下がったケースの中には携帯ゲーム機がのぞいていた。
ボディにはゲームのタイトルとキャラクタのシルエットが刻印されている。

「それ確か前に流行ってたやつだにゃー。なんていったっけ」

「『0−(ラブマイナス)』。好感度マイナスからはじまる超リアル恋愛シミュレーションってのが売りでさ。この間最新版が出たんだよ」

ゲーム機を嬉しそうに取り出したゴーグルの少年を囲む様にして二人は覗き込んできた。
揃って背の高い、なんとなく派手な野郎共に並ばれるとダサ男を自覚するゴーグルでは場所的にもきっとカツアゲ寸前のカモに見えるだろう。
実際はもてない男子がたまーに会えば駄弁ったりゲームする、そんな仲だ。

「センセこれクリア出来たん? 前のもそうやけど、ゲームなのに女子が冷たくない?」

「それがいいんじゃないスか。でも一周目は三年間まるまる意識外のモブで過ごして難易度がすげー上がって、BADエンドまっしぐらだった」

「うわー悲惨なやつやん。ちなみに誰が好みなん」


「俺はやっぱレンコちゃんスかねー。ちょい病み中二でツンて良くないスか」

「ボクはノノちゃんがえーなー。ロリ巨乳で後輩でドジっ子ついでにツインテやけどキャラ盛りすぎてないのが。でも、もなかちゃんもええよねえ」

「気の強い先輩キャラかと思ってると、見た目と違って天然お嬢様なんスよねえもなかちゃん。前作のスチルイベの下校のやつ」

「ケーキのやつな! あれはぐっときたわ」

「ただなあ。初期が黒髪ショートなのが惜しいんスよね」

いきなりマニアックなゲームの萌え語りを繰り広げる二人の横で、金髪が咳き込みはじめた。

「つっちーどしたん? なんやムセるとこあった?」

「いや。俺の知ってる最中ちゃんを思い出してちょっとにゃー」


なにやら肩を震わせていた金髪だったが、すぐ回復した。

「それにしても噂のトップランカー名無しさんが、がっつりオタだったとはびっくりだぜい。青ピと話が合うわけだにゃー。だが、こいつみたくヤバイことはあんまりしないほうがいいぜよ」

風紀委員のお世話になるぜい、とからかわれて。
ゴーグルの少年は静かに首を振った。

「逆っスから。オタクは三次元では無害でおとなしい種族だから。特に女子にはそうあるのが本来の生態なんで。青ピ君みたいな希少種と一緒にして欲しくないっスね」

「センセが冷たい! なんやもー、ボクらも信頼と実績の負け犬組仲間やない?」

「俺は非リアなんでそう言うのいーんス。二次ライフは充実してるんで」

仲間を増やそうと通行人を引きずり込もうとする妖怪かなにかの様にすがりつく青髪ピアスだったが。
ゴーグルの少年は淡々と相手をしていた。

「ほんっとに薄い女の子好きやね。ボクもそう言うん好きやけどそこまで愛は注げへんっちゅうかーやっぱリアルな子ときゃっきゃしてみたいやん。なー」

「いや、ほらタッチ出来るし。それとも俺たち三次元女子となら触れ合えるって言うんスか。あははは…そんな馬鹿な」

「はっはっは、現実は厳しいんやで。でもなセンセ、目を背けたらアカンのや! チャンスはあるっ!」

拳を握って熱く語る青髪ピアスは、そのチャンスを狙いすぎて年中風紀委員から職務質問を受けているらしいから何とも言えない。
ついでにまだ女子風紀委員とのフラグも立たないらしかった。

「でもなあギャルゲ最近やってなかったし、ボクも最新のやってみよーかなあ」

「たのしーっスよ。一家に一台一彼女。ほら」

「なんか色違いでもう一台出てきたんやけど?! どうなってるん、え。なにこれ青狸のポケットか何か?」

「限定版三人分揃えたから」

「レンタル彼女…ってなんかエッチやね」

「よーし。じゃあ俺はぬいぐるみを落とそうとしてる女子をキャッチ出来ないかあっちを見てくるぜい。今日はカミやんがいないから、フラグの回収日じゃない筈だ」

青ピが不思議そうにカバンの中をのぞきだした横で。
こう言うことには積極的らしい金髪グラサンはにゃーにゃー鳴きながら店内をうろつきはじめた。


「さっきから気になってたんやけど、その小銭そんなにどうしたん?」

「あー。先輩のなんだ。あっちのコーナーにあるレトロゲー、『外』のゲームって電子マネーとか使えないのばっかだから。両替してきたとこ」

メダル用のプラスチックトレーに硬貨を盛ったゴーグルの少年はそう言って苦笑いした。
あえて一昔前のゲームに挑戦している「先輩」は、やっぱり余分な小銭なんて持ち歩いていなかったらしい。

「はあー。なんかセンセがそう言うん意外やね」

「いや、あの人はさーなんかもうレベルってか生き物としても格が違い過ぎて。従うのがデフォってか、己の矮小さに自然とこっちの頭が下がっていくみたいなのがっスね」

「先輩さんどんだけー」

青ピは茶化したけど。
何しろ相手は超能力者。
能力者の格付け的な意味でも、自然界の弱肉強食的な意味でもピラミッドの頂点側に振り分けられるタイプだ。
下の方に位置するゴーグルの少年の態度も自然とそうなる。
そういう風に世の中出来ている。

「ありとあらゆる次元で半端ないよ。本当に」

「おい」

「はいッ?! あ、か」

突然肩にかかった重さにゴーグルの少年がびっくりして横を見ると、そこには肘がのっていた。
そのまま視線を段々上げていくと。
ゴーグルが向こうで待たせていたはずの垣根の顔がそこにあった。
そこで我にかえったゴーグルの少年が何も言えずに顔をひきつらせていると。
垣根はそのまま肩の上に腕を伸ばして、軽く叩いてきた。

「遅えよ」

言い終わった口元は上がっていた。
口調も表情も怒っていない様にみえるのがかえって恐ろしい。
わかってんだろうなテメェいい度胸だ、的な副音声がゴーグルの少年には聞こえてきそうだった。悪い方に考え過ぎかもしれないが無いとは言い切れない。

「えーっ! 先輩さん? イケメン! 俺らレベルじゃ100人集まっても勝てる気しまへんけどぉ」

「まあ実際やりあってもそうだろうな。それでも桁が足りないと思うぜ」

「あの……やってたのはどうしたんスか。終わったんスか? これ、足りました?」

ゴーグルは足元を見ながら手に持ったトレーを示した。
実際の何百倍もの重さが肩を中心に全身にかかったかのように、少年は身動きがとれなかった。
垣根の能力なら本当に出来そうだが、そんなことをされたらゴーグルなんてあっという間にぺしゃんこだろう。


「いいや。足りなかったからな、近くのヤツに借りた」

それにますます身をこわばらせるゴーグルの少年だったが特にお叱りは受けなかった。
ふーん、とつぶやくと垣根は青髪ピアスを物珍しそうに眺めていた。

「これか? 例のダチ」

「あー、えっと青髪ピアス、青ピ君っス。えーっと、こっちは……」

「こいつのセンパイさんです。どうも」

垣根のことを何と言えばいいのか、そもそも名前は教えていいんだろうか。
そんな風にゴーグルの少年がまごついている間に。
垣根はにっこり笑顔を浮かべると青ピに軽く頭を下げた。
明らかにどうみても純度100パーセントの作り笑顔だった。
青ピはめっちゃイケメンやん! などと騒いでいたが、ゴーグルは気が気ではなかった。
なんでのんきに立ち話をしていたのかちょっと前の自分を恨みたくなる、そんな気分だった。

「君は青ピ君と遊んでる? 俺ちょっと向こう見て回るけど」

「いえ、あの……ご一緒しますっス」

「じゃあセンセまたー、先輩さんもー」


垣根の後ろをおっかなびっくりついて行くゴーグルの少年と入れ替わるように、反対側の通路から金髪グラサンがもどってきた。

「いやあ最近の女子はガード固いぜい……ってそんなとこで凹んでどうしたんですたい」

ひとり残った青髪ピアスは店の壁にぐでーんともたれていた。
すっかりやる気や生気のぬけた顔をしていた。

「ははは……圧倒的な差ってのをガッツリ見せつけられた気分やでつっちー。高ランクのイケメンって……あれはもう人生勝ち組イージーモードですやん。逆立ちしたってもう無理無理無理無理」

「そう言う話ならまだ俺にだってチャンスはあるんだにゃー。メガネキャラには素顔公開と言う禁じ手があるんだぜい」

メガネもといグラサン装備な土御門が得意げに腕を組む。
あら不思議! 外した途端美形がコンニチハなんてベタな展開があるんだろうか。
ギラギラ光る青いサングラスは正直、イケメンがつけていても好みが分かれそうだった。

「ボクかてなぁ! 細目糸目は本気出したらイケメンっちゅうお約束があるんや!!」

「あ。あんなところを露出過多な金髪幼女が歩いてるにゃー」

「どこに?!」

「青ピ。瞼が開いてるようには見えないぜい」

「まだや、まだボクは本気出してへんだけですー!」

デルタフォースの一角を欠いた馬鹿コンビは寂しい掛け合い漫才をまだしばらく続けていそうだった。


「でもさっきやってたのは無事クリアできたんスよね。よかったっス」

「ああ。コツがわかればあんなもん。軽いぜ」

どうやら、ゲームが無事クリア出来たことで垣根の機嫌はそこそこいいらしい。
これでもしコンティニューに失敗したり、途中でうんざりして止められていたら今頃ゴーグルはどうなっていたかわからない。
そんな嫌な想像をついしてしまってから、ゴーグルの少年はほっと胸をなでおろした。
店の中をうろうろしているとクレーンゲームのコーナーにやってきた。
ぬいぐるみの横に怪しい能力開発キットとかまで並んで、ごちゃごちゃしていた。

「お前の能力ってこう言うの取り放題なんじゃねえの」

「いやあ最近のゲーセンは能力者対策してあるからダメっス。前にちょっとやってみたら警報なって係員に注意されました」

「俺がやっても感知されると思うか」

「多分AIM拡散力場の変化とかを検出する仕組みになってるから難しいと思いますよ」

「ふーん」

実際に垣根がそんなことをやるとは思えないが、本人はただ気になったから聞いてみただけらしい。
ゴーグルが箱入りのヒーローもののフィギュアをみていると、横からのぞいていた垣根が口を挟んだ。

「そっちのはうまくやっても5回はかかるぞ。それにこう言うのってアームの強さも変えてるんだろ」

「うーん。それでもとれるかもしれないって思うとつい連コインしちゃうんスよね」

「ああ。まんまと乗せられてるヤツがいるな」

垣根がそう言ってガラスをつついた先には。
景品同士の間に埋まりそうになっているぬいぐるみがあった。
中ではカエルのキャラクターが小さな山を作っていた。
このクレーンゲームで遊ぶやつはどうやらそのてっぺんにある、他より数倍おおきなサイズの一匹を狙うらしい。
あちこち動かしているうちに余計取りにくくなってしまったようだ。


「相当やってそうな割に思い切りが足りねえのかな。そうだな、まず取れる位置まで動かさねえとだろ」

緑色の目立つカエルの群れをしばらく眺めまわしてから。
垣根はクレーンを操作する。
上から隙間に押し込まれかけていたぬいぐるみを、周りの景品をずらすことで移動させた。
ゴーグルの少年あたりなら、硬貨を入れる前に店員を呼んで配置を直してもらう所だが垣根は呼びたくなかったのか。
それともそんなことをするなんて考えもしなかったのか。
横で立っているゴーグルのトレーに手を伸ばすと二枚、三枚と機械に次々硬貨を飲ませていた。

「で。胴をこうしてから、頭を狙う。うわーブッサイク」

容赦無く顔面を押しつぶされたカエルはかわいそうなことになっていた。
垣根は愉快そうに笑ったが小さい子がみていたら泣きそうだ。
そうやってアームで顔をぐにぐにされるうちに。
頭の重さにひっくり返る様にして一番大きなぬいぐるみが出口に向かって落ちた。

「ほら。落ちたろ」

「おおーっ! って、こいつ結構デカいっスね」

歓声を上げるとゴーグルの少年はしゃがんで景品を取り出そうと引っ張りはじめた。
取った本人の垣根はただそれを見ているだけだ。

二人がそんなことをしていると、ジャラジャラ音を立てながら女の子が走ってきた。
音源は彼女の持っているビニール袋だ。
少なく見ても福沢諭吉とチェンジしたくらいの量の小銭を握りしめているのは、グレーのスカートにブラウス、サマーセーター。
夏休みだと言うのに上から下まできっちり制服姿の女の子。
見た目は中学生くらい、ちょうど心理定規と同じくらいだった。



「あ。さっきの……ねえもしかしてっお兄さんもゲコラー?!」

ゲーム機の前まで走ってくるなり、女子学生はいきなり意味の分からないことを言い始めた。

「はあ? なんだって?」

不審そうな目をする垣根の前で彼女はコンコンとガラスを叩く。
その顔は得意げ、と言うかなぜか嬉しそうだ。

「ゲコ太よゲコ太。もしかして知らない? 知らない男の人でも……こういうの興味あったりするの?」

このキャラの名前はゲコ太と言うらしい。
見た目はヒゲを生やして服を着たカエルのおっさんだ。
中には服を着てないやつや、リボンか何かをつけているのもいるが。
もちろんそんなものを知らない垣根には個体差がピンとこない。
無言で視線を向けられたゴーグルの少年も首を横に振っていた。

「全然。っつうかさっきのガキじゃねえか。おいゴーグル、財布」

「あっいいのよあれくらい。ああいうのって、クリア直前でやめるの悔しいじゃない? はぁー、しっかしそれよく取れたわね。私もやってみたけど全然駄目だったわ」

ぱっと手を広げると女子学生は、財布もといゴーグルの少年を呼びつけようとした垣根を止めた。
何だかゲーセン慣れした少女は小銭を貸したことなんて気にもしていないらしい。
それよりも。
中身の減ったクレーンゲーム機を見て残念そうに肩をすくめていた。
背中の後ろに回した手の下でビニールにつまった小銭が小さく音を立てた。


「いや。別に欲しくて取った訳じゃねえし」

「そっ、そうなの? じゃあなんでやったのよ」

「強いて言やあ…ノリか? こんなのどこがいいんだか」

それを聞いて女子中学生は今度こそがっくりと肩を落とした。
膝から崩れおちてもおかしくなさそうなへこみっぷりだった。

「うっそぉ……油断してたわ。まさか他にもBIGゲコ太を取ろうって人がいるなんて全然思わなかったから、って言っててちょっと悲しいけど」

クレーンゲームコーナー内に用意されている「挑戦中」の札を横目にため息までついた。
隣で黙って様子を伺っていたゴーグルからカエルのぬいぐるみを受け取ると、垣根は眉を寄せた。
デフォルメされた両生類は確かに実物より愛らしい見た目だが、きゃあきゃあ騒がれそうな人気者には見えない。
おまけにデカい。

座らせてもタテ50センチはありそうなカエルはその名に恥じずBIGサイズだった。
しかし、それを見た女子学生は途端に落ち着きがなくなった。
おもちゃを目の前でゆらゆら〜っとされている猫みたいにそわそわしはじめた。
たいして可愛くもないカエルを見ては首を振り、また見ては頭を振っていた。
それをしばらく眺めると。
垣根はぬいぐるみの足を掴むと無造作に放り投げた。

「ゲコ太ーっ?!」

ものすごい勢いですっ飛んでいくぬいぐるみを追いかけて。
女子学生はスカートばきとは思えない、気合の入ったダッシュとスライディングを披露していた。
おかげで哀れなカエルは床に落ちる前に無事にキャッチされた。


「さっき借りたの、これでチャラな。こいつもちょっとつついたら落ちたしよ」

床に座り込んだままの女子学生の近くまで歩いてくると、垣根は空いた手をポケットに入れた。

「えっ、でも……あの、ううん。貰えないわよ」

「うるせえな。だから俺には必要ねえんだ。テメェもいらねえんならそれ捨てんぞ。バラしてドラム缶の餌にする」

「だっ、ダメよそんなの!! ゲコ太にそんなことさせないわ!」

清掃ロボに食わせるぞ、と垣根が脅すと女子学生はぬいぐるみをしっかり抱きしめて首を振った。



暫く中学生と話すと垣根はその場を離れた。
女の子がぬいぐるみを抱きかかえて出口に向かうと、ゴーグルが寄ってくる。

「あの子に借りたんスか? あれって常盤台の制服っスよね確か。垣根さん常盤台に知り合い居たんスか」

「あんなの知らねえよ。近くのメダルゲームんとこで見てたらしい。俺が金が終わって、カウント眺めてたらこれ使えって小銭放ってよこしたんだよ」

「結構ガサ……ワイルドなお嬢さまっスね。それでさっきの景品は?」

「何かごちゃごちゃ言い始めたから押しつけてきた」

「ありゃ。あげちゃったんスか」

残念そうにゴーグルは言ったが垣根はせいせいしたらしい。
どう見ても似合わないぬいぐるみは持って帰ってもその後困りそうだった。

「何となく取ったけど、あんなもんどうしろっつうんだよ。まぁ、丁度いい厄介ばらいが出来た。どっちもな」

「でもあの子よっぽど欲しかったんスかね。あのカエル。はあー、お嬢さまもゲーセンで遊ぶんスね……」

「けどよ、この手のゲームって自分で取るまでが楽しいんだろ。人に譲ってもらって、それで喜べんのか」

「それはそうっスけど。プライズって非売品も多いんで、ラスワンを何したって欲しいって奴はやっぱ嬉しいんじゃないスか」

そんなもんか、と首をかしげるとそのままコキコキと鳴らしながら垣根は歩きだした。

「ほら、次。どっかねえのか」

「ちょ、ちょっと待って下さいっス!」

ゲームセンターを満喫したのか飽きてしまったのか。
気まぐれな超能力者の暇つぶしはもう少し続きそうだった。

ドーモ。
お久しぶりです。
風斬の本体だけ取り損ねて残った専ゲコの山にうちひしがれていたら年を越してた。かなしい

頂点で垣根のイベントやってるね!おめでとう我らが第二位。お祝儀に5万ほど包みましたがSレア上条さん数人と勝利宣言しか出ませんでしたのことよ。ステップ後は同じ確率ならSSRがよかったんだけどこれも不幸か当然か

遅くなったけど今年もよろしくドーゾ

よろしく、乙

1乙
まさかビリビリが出るとはw
ソシャゲほどほどにしたほがいいよ
次も楽しみにしてるから


美琴たんかわいよぉ
つっちーと青ピって垣根と身長同じなんだよな
あと頂点は垣根の絵がパズデの使い回しな上イベントオープニングが手抜きでなきゃ相当課金してた

垣根さん学園都市の広告塔だぞその子
あれ、原作では美琴の顔って広く公開されてるっけ

垣根はオタクじゃなかったけどゴーグルはおたくだった
これはまだ実験発覚まえだよな美琴フラグが立つのか

これで実験に介入して垣根×御坂になるなら読みたくない
スクールの話じゃなかったのか

もちつけ

ここのはそこそこマトモだし垣根が好きな1がかいてんだと思ってたんだよ
それを簡単にヒロインとくっくけたりするようなら幻滅した
せめて退場前の垣根っぽいのがみれると期待してきてんだよ

つかまだそんな展開ねえから

早とちりしすぎだろ…
まだ会話しただけじゃん

つっちーとていとくんが同じ場所に居合わせたとかかなりギリギリだなww
危うくゲーセンが抗争の舞台となるかもしれなかったな…ww

とあるネット小説サイトとかには、出てきた美女美少女美幼女は主人公のモノで他の男と仲良くするだけで発狂する読者が多数いるくらい「出会って会話=カップル(予定)」と短絡化する傾向にあるのがネット小説の現状

なのかもしれない

ネタにつっこみ間にあわないww
垣根自由すぎ
ゴーグル結局名無しだし
もしかしてゴーグル装備したらいろいろ見放題か?

ドーモ

>>174
乙あり。ドーモ

>>175
ビリビリ中学生……一体どんな人物、ビリ坂ビ琴なんだ
わがまま枠もオマケもなくてイベントもそんなでなくて。純粋に垣根帝督に対して金が出せるのは今しかないと思ったって今考えた。アニメ化まだ待ってる
あっちは微課金で。こっちももちろんがんばる

>>176
三人とも180近いのは知ってたけど一緒なのか!
まだだまだEDがある。電話一本で暗殺中止になって垣根が文句垂れながら連れ戻されるシーンがカットされないか期待せずに待とう

>>177
注目されてるのは能力の方で本人じゃないから顔はみんな知らないのかも
でも垣根はもし知ってても興味ない関係ないやつには反応薄いかもね

>>178
フラグはどうなんだあれで立つのか。相手はゲコ太を横取りして捨てようとした顔はキレイなチンピラだぞ
ゴーグルも別にここまでオタクじゃなかったんだよ!ほんとだよ

>>179 >>181
垣根×美琴の予定もつもりもまだないけど、この先誰かといい感じになる展開になってもちゃんとみんな出てくる話にしたいよ
>>1も垣根は好きだ。『スクール』好きだ。出なきゃスレ立ててこんなことしてないよ
でも>>1の書くのが気に入ってもらえるかは人それぞれだと思う難しいけど。話が好みじゃなかったらすまないね

>>180
そうな。よいしょーよいしょ

>>182
まだな。お嬢様でも殿方と手を繋いだらお付き合いとかそんなあれじゃないよな

>>183
確かに。チンピラホストをひっかけてたら大変なことになるところだったな。土御門は科学サイドの重要人物は頭に入ってそうだし賢いから、無駄な争いは避けてくれそうだけど
垣根の方はそん時の気分次第かもしれないw

>>184
まじか。じゃあ「あいつと喋ると妊娠すんぞw」が笑えなくなったりすんの。上条さんどころじゃないフラグのインフレなの。こわいな

ほんとはタイミングよく二月一日にしようと思ってたけどそれまでに190いきそうだからここでお礼とお知らせ

筆のおっそい1がスレを落とすことなく続けてこれたのも皆様のおかげです。これからもよろしくお願いいたします
ネタ切れ…もといマンネリ防止とこんなスレでも見てくれる人に感謝を込めて
>>200
>>222
でネタ出しされた話を書いてみようと思う
別にキャラは『スクール』だけに限らないしこのSSの内容直接関係なくてもいいんで
流れてもいいし。よかったら

ドーゾよろしく

乙、しかし随分遠投だなww

それはともかく、青ピ登場でwktkしてたらつっちーみこっちゃんで読んでてハラハラドキドキすげえ引き込まれたわ
おもろい!

でも「ついて来たいんなら好きにすれば」が一番ワラタ
垣根wwデレ過ぎwwww

深夜に>>1
1さんなんで間に202でも212でも入れてくれないんだよ!的の間が広いよ
本当に当たったらなんでも書いてくれんの?

「頂点につぎ込む位なら一番くじにつぎ込むべきかも!」

垣根のSSでの名役者っぷりは異常、アカデミー助演男優賞取れるレベル
なぜか知らんがすんげー書きやすいんだよな、垣根

わかる
本当垣根は異様に描きやすいんだよな
能力が自由度高すぎるし「気まぐれだから」と言えば何してもいいし
黒垣根やら白垣根やら出た関係でますますキャラの幅が広がった
口調も普通だしね

垣根がゲーセンってのは似合わないのか、それとも(見た目的には)チャラくて似合うのか
マフィアの幹部って感じのスマートダンディな人が格ゲー(メルブラ)やってたりすることもあるしなぁ

そういや垣根と美琴が話のメインなSSはいくつかあるけど
はっきりとカップリングになってるのは何気に無いような……?
妹の方は見たことあるんだけど

頂点とパスデックスのイベント最終日をごっちゃにしていた1です。ヤシがずいぶん増えてました。とりあえずOPEDのスクショをとっといたよ
ドーモ

安価予告って前もってした方がいいのかと思ってたけど届くころには忘れ去られそうな気がしてきたんだぜ。まあ気長に
いっこ前のレスみのがしてたみたいだからそっちを忘れるまえに

>>185
ゴーグルなんてよぶか問題。一般的に呼ばれる名前がないと苦労するんだなあ
あー。あー…このゴーグルが二次元好きでよかったってはじめておもったかも
ソウデスネーデキマスネー。さすがに悪用はしないと思いますん

カブトムシとフレメアのはなしみてみたいんだけど
カブトムシも好き?正直あれとか白い垣根ってどう思う

安価まだだろ少しくらい待てよ

垣根って以外に人気あるよな

あげ

もうすぐ節分だね帝督
上下のお口に恵方巻きをほおばってもらいながら外にも中にもたっぷり豆まきしてあげたいよ
西南西を向いて最後まで声を出さずに我慢してなきゃ駄目だからな


って事でガチホモキメセク輪姦垣根よろしく

今回の面白かったからいつかゴーグルに渾身のデレをかます垣根みたいw

おいおいまじ?

大丈夫かよこれ見たら1なくんじゃね

>>200こえたようなのできました>>1です
ドーモ


>>188
どうせなら数字にこだわりたかったんだ。したっけ遠くなったけど
垣根のデレはまだこんなもんじゃねえぞ。奴はまだ本気のデレを隠しもっている筈
あれも、恐らくデレてるつもりなんざまるでねえだろうからな
おもろい!がうれしいよドーモ


>>189
最近1投下10レスでおさまんないから1がなんか投げるとすぐ埋まるよ。ま、ゆっくりいこうよ。そりゃー振った安価には従うよ
出来る限り努力してみるよ
って返事するつもりがな……ああ頑張るともさ

>>190
近所で置いてくれないんだよ。わたしだって形あるものにもっとお金を使いたいかも!ふれめあとお揃いのキーホルダーでいいから公式にはなにかグッズを作ってほしいんだよ!

>>191-192
わかるわかる。「冷蔵庫のあと色々あって綺麗になった垣根」も今はほぼ公式設定で通用するし。大概のことは未元物質が解決してくれる。困るのは自由度高すぎて間がもたないくらいじゃないか?
みんなそんなにSS書いてんの!そして垣根も出んの。やったね垣根仲間が増えるよ

>>193
今回はいつものオサレ上下じゃないから多少馴染むんじゃないすか
妹絡みのだと対動物電磁波除けの指輪つくってあげたやつかな?他にもある?
アルカディアにあったあれは…どうなんだろ垣根帝督だけど厳密にはそうじゃないし。123のトライアングルとか希少価値だ

>>195
1はカブトムシも嫌いじゃないし未元体の垣根ホワイトも嫌いじゃない。垣根の一部らしいしね。アナザー垣根とか垣根の中の小さな悪魔と天使とかだと思ってる。贅沢言うなら以前の雰囲気の垣根も原作に出てきて欲しいけど
ボールにされたやつはどうしてるんだろうな。世界が何度か壊された時にいなくなったのかな
フレメアとカブトムシは一回書いてみたいかも

>>196
>>1もそう思うよ!すごくね

>>197
誤字だよね?

>>198
さげるね

>>199-200
ってことでじゃないぞ?!なにそのスリジャヤワルダナプラコッテ的な語感でリズムは楽しそうだけど口にしたらこの世の希望が消え去ったかの様な苦しみに襲われそうなそれは何の呪文でせうか
もう>>199がスレ立てて書けるんじゃないか?その発想力と情熱はすごいわ畏怖の念を禁じ得ないっすわ。節分こわい

>>201
たのしかったならよかった。大丈夫だ。いつかかー垣根デレてくれっかな


トリわすれてんじゃん

よくみたら>>198も199だしあげちゃってるのでひとつずあいて>>201も入れて、>>200-201をそれぞれかくね
次は>>222ですねよかったらよろしくドーゾ

えっ何本気なの>>200-201マジで書くんですか
割と真面目なスレだと思ってたよ?
はぁ?ガキの頃からわけ変な薬使われまくってる俺がトぶわけねえだろ何がチンポ奴隷だよ[ピーーー]とかほざいたのもつかの間
注射刺された次のコマで肉棒に囲まれてアヘ顏ダブルピースしちゃってんの?次回の垣根は?
このスレ懐深いってレベルじゃない
カウパー垂らしながら待ってる

チェック外れてageてごめんなさい

>>207
アゲだのサゲだのそんなのはいいよ

首置いてけ なあ >>199だ!! >>199だろう!? なあ>>199だろおまえ

真面目じゃないがゆるく『スクール』が遊んだりだらだらしたり、もしかしたら誰かといちゃつくなんてこともあるかもしれない
そんなスレのつもりだ
そんなつもりでSS速報にはじめて立てたスレなのに>>1の常識がまるで通用しないんだけどなんだこれ能力?魔術?未元物質?
次回じゃないよ。>>1は書けたら投下するから先に出来たらそっちを順番に落としてく
ここで折れたら負けた気がすんので言ったからにはきちんと書くよ。注意書きとかつければここにそういうの落としていいんか
ただ書くのは>>1だ。仕上がりは期待すんな
寒いから服は着ろよ

確信した。この1は拝み倒せば一発ヤらせてくれる1だ

とか思われたくないからこれっきりな!

たまたま似た言動を取ってしまいましたが別人ですマジで
キメセクはリアルに人間性が壊れる恐れがあるから体だけでなく魂まで愛してる相手にはとても出来ない
垣根のことを本当に愛してるから気持ちいいって言ってくれること何でもしたいのに首締めプレイすら手が震えて出来なくて
しょっちゅう垣根に呆れられてるくらいですし
でも白濁液まみれで痙攣しながらイキ狂う垣根はむしろ見れるものなら見たいっていうか

テメェらそんなにエロいこととホモが好きかよ。そうかそうかよそうですか。1をよっぽど愉快な死体にしてえとみえるな

ちょっと待て別人なの
201もホモ?ここ1以外ホモばっかなの?
垣根ゲイ督「はぁ? 俺はホモじゃねえぞ」とかそんな次スレ立てんのやだよ

>>212
そっちにもいるならそういうのはそっちの垣根にしてもらっていいか

無駄にスレ伸ばしちゃったかな…ごめんな
ちょっと落ち着くな

あーうんなんか別ベクトルなことしてリフレッシュしてくるべき
あと逃げたら負けとか言わずに、連投安価とりしたルール違反の言うことはきかん、でよかったと思うの
通例上

そうそう、こういう場合は無理なら無理ってはっきり言った方が良いよ
その方が後々面倒くさくならない

マジな話>>1氏無理せんでくれ
ここノンケスレだと思ってたし無理に安価ネタ使って不健全にせんでもいいと思うわけですよ
>>1が安価ネタをやめるならキメセクで狂う垣根は俺が他所で代わりに生み出すから大丈夫

ドーモ
ここは>>1がSS書きにくるとこだからなるべく発言はまとめていくな。昨夜は刻んだ連投失礼っした

>>215
そんなルールもあるんか。まあその分楽しい話を書いてりゃリフレッシュできると思うんだ
書きたいネタいくつもあるとパソコンに向かう時間が一週間くらいまとめて欲しいけど

>>216
やったことないだけで、書いたら何とかなるような気がしてきてるww
絶対無理ってかんじでもないのがなー。なんだっけ、男は度胸?なんでもやってみるんだっけ?
前向きに考えてみたい

>>217
別に無理はしてないさ。書いたことないの書いて!ってくるとビビるだけでな。別に>>217が書いてくれても構わんのだよガチホモキメ(ry
あとまさかホモネタがくるとか思ってなかったからびっくりしたんだよ。まあ2chだもんホモくらい居るよな
ギャグとエロは難しいからつまんなくなりそうなことだけが問題だよ
あと名前、名前気になるからやめて

とりあえず201と、あと200も浮かびそうだし書いてみるけど多分あれだ。
>>207の期待にはそえないかもな
垣根に[らめぇぇっ!]語っつうのがどうしても第一ハードル高くて違う感じになると今のところ

逆によ。まるっきり本筋と無関係として不健全っぽいのを書いて、その後で本筋の『スクール』でヤイヤイするのが嫌だなーってみんなならないか?そこだけトライしようとする上で心配なのよな
切り離して見てもらえるかな

これだけじゃなんだから。次の予定はゴーグルと心理定規です。垣根はいるけどいないかも

個人的には、このスレでそういうアッーなネタは見たくないなあ
まあやりたいってんなら止めないけどさ

夢オチにしたら何やっても問題無い

垣根が心理定規とイチャイチャするのが見たいです

暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根の話をだな

魔術サイド女子と垣根でかいてみてよ!

例えば上琴の作者が同スレでいきなり上イン書いたら間違いなく荒れる
これは考えなくてもわかる筈
対処出来ないなら気軽に安価とかするべきじゃなかった
全レスは義務じゃないのと荒らしに構うやつが迷惑なのは最低限覚えておくべき
スレは作者のものた゛から好きにすればいい
中身がまともなら読むやつは勝手に読む
だが>>219のようにネタによって見たくないってやつがいるんだから配慮はすべきだ

>>224イケメンやん

>>217
そんな物書かなくていいから…(良心)

キメセク輪姦もう冒頭部とプロット完成してるわ
安価に便乗悪ノリした責任を取ることは可能
鬱な話になったけど責任さえ取れればいいよね

>>

>>228メール欄になっとるww

スレ止まってんの

安価箇所超えてまであんまり雑談するのもあれやん
>>1楽しみに待ってるー

保守

アイテムとの絡みも見てみたいし、(ホモとかでなく)一方通行との絡みも見たい…このSSには期待してるで?

更新はないのですか!?
この際もう安価なんて忘れて書きたいものだけ書けばいいじゃないですか!

1ももう投げたんじゃ
禁書もSSも落ち目だし
出番のないキャラのファンもいないだろ

安価内容なんて無かったことにして戻ってきてよ>>1
垣根(非白)より好きなキャラは今も昔も恐らくこれからも存在しないしここが唯一と言っていいサンクチュアリなんだよ

戻ってきても何も毎回こんくらいのペースじゃね?

スクール楽しみにしてたんだけどな...
お願いだから戻ってきてくれ1...

>>237
冷静に考えれば確かにそうだけど・・・
やっぱり気になるし・・・

スレ落ちそうならまだしも必要以上の催促とか端から見てて荒らしと変わらねえからな
下手すりゃモチベ下がるわ

落ち着いて待て

いきなり保守劇場はっじまーるよ




青ピ「なぁなぁカミやん。昨日の『ラッスンゴレライ』みた?」

垣根「らっすんごれらい……って、あれか。ズンドコベロンチョみたいなのか」

土御門「おっ? ズンベロ知ってるなんて、ていとくんもツウだにゃー?」

垣根「ズンベロな。ああ言う救いのねえの、嫌いじゃないぜ」

土御門「不条理で涙を誘うんだにゃー」

垣根「ズンベロな」

土御門「ズンベロ」

青ピ「……なあ、あっちはどうしたん?」

ゴーグル「この前『世にも』の特選集を見たんスよ」


上条「昨日は見てないなー。何か新ネタやってたか?」

土御門「いーや、いつもと一緒だったにゃー」

ゴーグル「関西人的にはありなんスか、あれ」

青ピ「なんで? 勢いまかせの体当たりもええと思うよ?」

垣根「……」

一方「……」

土御門「おやぁ? まさか二人とも、今大人気の『ラッスンゴレライ』がわからないとか言わないにゃー? 超能力者ともあろう御方が揃って、こりゃとんだモグリぜよ」

垣根「そう言うテメェらは……当然出来んだろうな?」

青ピ「そんなのあったりまえやんなー? つっちー?」

土御門「もちコースだにゃー」


土御門「ラッスンゴレライ!」

青ピ「え? え? 何て?」

土御門「ラッスンゴレライ、ラッスンゴレライ。ラッスンゴレライ説明してね?」

青ピ「ちょっと待って、ちょっと待ってお兄さーん? ラッスンゴレライて何ですのん? 説明、しろと言われましても意味わからんから出来まっせーん」

土御門「ラッスンゴレライ、ラッスンゴレライ。楽しい南国ラッスンゴレライ」

青ピ「ちょっと待って、ちょっと待ってお兄さーん? ラッスンゴレライてリゾートなん? でも南国言うても色々あるよ? パリ、グアム、ハワイどれですのーん?」


青ピ「と、まあこんなもんやね」

土御門「軽いもんだぜい」

上条「おおー、完璧完璧! 別にお前らだってさあ。あれくらい知っ」

一方「出来ンぞ。俺を誰だと思ってンだ。超能力者だぞ。なァ?」

垣根「は? え、俺も?」

上条「いや、別にそこまではですね……」

土御門「止めるなカミやん。あの一方通行があそこまでいってるんだにゃー。やらせてやろうじゃないか、っははは」

ゴーグル「爆笑が隠しきれてないっスよ」


垣根「…ラッスンゴレライ」

一方「え? え? なンて?」

垣根「ラッスンゴレライ、ラッスンゴレライ。ラッスンゴレライ説明して…ね?」

一方「ちょっと待ってェ、ちょっと待ってェお兄ィさァン? ラッスンゴレライてなンですかァ? 説明しろと言われましてもォ意味わからないから出来ませェン」

上条「ぷっ」

垣根「……ん? ラッスンゴレライ、ラッスンゴレライ……楽しい南国ラッスンゴレライ」

一方「ちょっと待ってェ、ちょっと待ってェお兄ィさァン? ラッスンゴレライてリゾートかァ? でも南国つっても色々あるよォ? パリ、グアム、ハワイどれですかァ?」

土御門「は、ははっ流石レベルが違いますたい。笑いでも圧倒的…だにゃーあっはっはっは!」

青ピ「つっちーそんな笑ったら悪いやん……アクやんも一生懸命がんばってくれたやないの…あー、あかん、これ腹筋割れるっ」

上条「くっ、く…ふ、ふふ……………」

ゴーグル「カミやんさん! ちょ、息は止めちゃダメっスよ?!」

垣根「おい。今の」

ゴーグル「これでムービー撮ってましたよ! 学園都市ツートップのコントなんて見れませんからね!!」

垣根「よし。しばらくはあの野郎を馬鹿にするネタが出来たな」

ゴーグル「あれ、垣根さん今の笑いどころわかったんスか」

垣根「ああ。お前らの反応から逆算した。でかした、青ピ」

青ピ「それほどでも…あるやーん?」

一方「どォ言う事だァ。オマエら人ォ馬鹿にしやがって」

上条「いやあ今のはそんなのじゃなく、微笑ましい笑いですことよ? 一方通行さんや」

土御門「カミやーん。ネタばれしたらつまらんぜよ」

垣根「テメェが関西弁なんざいきなり口にしたら気持ち悪いだろ、ってことだ。結果オーライってな」

一方「はァ? ……なン言うてるン? そないなこと気にしたはるンは流石ァ三下、お育ちがしれますわァ」

垣根「そっちこそ悪趣味やな! 京言葉ってか、きっしょ。ほんまにセンスあらへんな?」

青ピ「ちょお、二人ともそれ僕と被るやん? やめてやー」

一方「あァ?」

垣根「はぁ?」

上条「おい、なんか外国語VS外国語の壮絶な口喧嘩が始まったぞ」

ゴーグル「お互い違うので返してるんスかね。何言ってるか全然わかんねえけど怖いっス」

土御門「ドイツ、ロシア、広東…今のはタガログ語かにゃー。カミやん、能力使いだす前に止めないとまずいぜい?」

上条「へ? 俺が?」

青ピ「そうやねーアクやんに振ったのはカミやんやねー」

ゴーグル「俺らじゃとても手がだせないっスねー」

土御門「さ。その右手の出番ですたい」

垣根「ばーか! シマシマ! 貧弱モヤシ!!」

一方「うるせェ! メルヘン! ドヤ顔ホスト!!」

垣根「っつったくムカつくんだよテメェ、今日こそ白黒つけてやろうかぁ?」

一方「吠えてろ三下ァ。どっちも俺一人で足りてンだよォ」

垣根「はぁ? 勝手に羽の色パクってんじゃねえぞ?」

一方「好きでンなことしませンー勝手になったンですゥ」

上条「なんか既に物がいろいろ飛んでるんですが…あれをどうしろって……ふ、不幸だー」

オチないけどね。ほしゅですね。浜面も入れてやればよかったね。あいつとうとう人外までハーレムにいれたね
なんでいきなり仲良しかって、あれじゃないか。パズデックスのマイページとかなんだよきっと

ドーモ
保守だろ?生存宣言をしに来たぜ

安価とかネタをいろいろ思いついたのからいくつも書いてるとまとまんなくてね?
でもちゃんと書いてるんだね?
1のパズデックスはまだSAOとはコラボしてないらしいね?
リズムネタみてたらなつかしのオリラジをスクールでもいいんじゃないかとも思ったんだね?

垣根「『スクール』だ」
ゴーグル「お願いします!」
心理定規「……リーダーいつものやってあげて」
垣根「おう。聞きたいか? 俺の武勇伝」
ゴーグル「そのすごい武勇伝をゆったげて!」
垣根「俺の伝説ベストテン」
心理定規「…れっつごー」

暗部の超能力者はうまくのせたらやってくれそうなきがする。怖い武勇伝ばっかになりそうだけど

>>1きてたー!
乙!

土ピコンビは漫才しててもあんまり違和感ないけど
一垣っていうか一方通行がやるのは違和感しかなくて腹筋がヤバい

一通は知らなかったから元ネタの関西弁でやらなかったって事?
武勇伝のほうがみたかったここ提督とスクールのスレだよね

個人的に
七位…薩摩弁
五位…博多弁
四位…広島弁
二位…大阪弁
を使いそうなイメージ

一位と三位はイメージ沸かない

セロリは元が方言みたいなモンだろw

関西弁使う御坂はかわいいかもしれない

1まだか
さっさと書けオラッ

       ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       (;´Д`)< すみませんすぐどかしますんで

  -=≡  /    ヽ  \______________
.      /| |   |. |
 -=≡ /. \ヽ/\\_

    /    ヽ⌒)==ヽ_)= ∧_∧
-=   / /⌒\.\ ||  ||  (´・ω・`) >>256
  / /    > ) ||   || ( つ旦O
 / /     / /_||_ || と_)_) _.

 し'     (_つ ̄(_)) ̄ (.)) ̄ (_)) ̄(.))

保守


ソファに座った少女はのんびり雑誌をめくっていた。
学園都市内のブランドを扱ったファッション誌は中学生くらいの女子に向けたもので。
彼女の普段の服装と比べると並ぶ写真はどれも子供っぽく見えるものばかりだった。
『これで完璧! 最新秋ファッションのマストアイテム徹底特集! オシャレのレベルもアップしちゃおう!!』なんてフレーズが表紙を飾っている。
学区別に組まれたショップ情報。
大きく取り上げられるのは最新より一歩先、次のトレンド。
流行ることがもう決まっているから、と言うことなのだろうか。
一ヶ月以上先のことが透かしたようにわかるだなんて。
『樹形図の設計者』による精密な天気『予測』の様だ。
そんな大がかりなことに限らなくても当事者の都合はお構いなしに、第三者が作り上げた予定の上で様々なものが動いている。
自分の意志で歩いているつもりでも見えないレールの上に知らない間に乗せられているのかもしれない。
どこもかしこもそんな出来レースだらけだとしたら。
常識の、価値観の。
判断の基準はその『物差し』はどこにあればいいのか。
それを自分の外側に、他者に委ねることは簡単だ。
ただ口を開けてマジョリティの情報を飲み込んでしまえばいい。
万人受けする流行りの風潮やお約束のイメージに思考停止で流されてしまえば無駄なエネルギーを使わずに済む。
ページをめくるこの少女も時にそう言った使い分けをするタイプだった。

見た目、服装、第一印象。
○○な人と言う一人間関係の一番最初のラベルはそんな所から決まっていく。
そこから勝手に相手が考えて、都合よく解釈されるのは楽なことだ。
自己紹介文を長々と背負って歩く訳にはいかないんだし。


心理定規はどこかつまらなさそうにページをめくっていた。
次のバイトまではまだ随分と時間がある。
ただの時間潰しならカフェでもいいんだけど、暑い中歩き回るのは気が進まない。
次の相手は会話と軽い食事も楽しむタイプ。ならたとえドリンクだって無駄にお腹を膨らめるのは嫌だった。
あとは移動時間その他色々。
そんな条件を考えると、この隠れ家を使うのが今日の彼女には都合がよかった。
ほとんど荷物置き場の様な部屋でも居心地は悪くない。
使っている建物や周囲の雰囲気にふさわしく、もしかしたら少しくらいメンバーの好みに合わせているかもしれない内装や家具は、すぐにでもここに住めそうなくらい整えられていた。

少女の指が写真の横の見出しをなぞっていく。
その爪先は明るいオレンジ色に塗られていた。
心理定規は黙々と記事に目を通していた。
次の『客』は大学生だった。
確か一三学区で教育実習をしているが、女子児童となかなか話が合わないのだと前に話していた相手だ。
背伸びをしたがる年頃の女の子とは、実際の目線より少し上の話をした方が良かったりする。
こうしてページをめくりながら心理定規はコミュニケーションに必要な、会話の種を拾っておく。
とは言っても、テストの前に仕上げたノートを貸してやるような真似をするつもりはない。
彼女がするのは精々ヤマのはりかたをアドバイスするくらいのことだ。
彼女の仕事は相手の面倒を見てやることではないのだから。
その他にも。
相手によって用意するものも中身も変わるが。
彼女にいつも求められるのは、『客』の気持ちを満足させてその時間を終えることだった。

最新の保湿成分の配合されたコスメの広告。
人気のスイーツの特集ページ。
新ドラマの紹介記事。
心理定規はそこで少し、ページを戻した。
少女の目がほんのちょっと真剣にページに向かっていると。
ドアが開いて携帯電話を耳に当てたゴーグルの少年が入ってきた。
ソファに座った心理定規に気付くと、片手で(失礼しまーす)とジェスチャーしてから頭を下げて隣の部屋に入っていった。



「ええっ?!」

「なんで…なんでなんスか? ああ、そっスね。所詮俺はその程度ってことだよねええええわかりました。よーくわかりましたって」

「はぁ? ちっぱ…いやいやだから、その風潮がさあ? なんで同系統な女子はみんなまとめてつつましやかにされてしまうのかってむしろ聞きたいね。え、嫌いじゃなかったか? んな訳ないって!」

「心にゆとりのある娘は病まないなんて誰が決めたんだ青ピくん。君はそんな固定観念に縛られる男だったのか?! いいじゃないかネガティヴ巨乳!」

「いいんだよわかってくれれば…って俺ら何の話してたんだっけ?」


何だかやけに騒がしく話していたゴーグルの少年は電話を終えたらしく部屋から出てきた。

「……おともだち?」

「うーん、まあ。友だちがいの無い友だち…っスかね。こっちはそう思ってたんスけどね」

「ふーん。ケンカでもしたの?」

喧嘩って程でもないし誤解は解けたんスけど、とゴーグルの少年は言ったが。
なんとなく歯切れの悪い返事が返ってくる。
心理定規は視線を雑誌に向けたまま、
「もやもやしてるなら言ってみたら?」
と続きを促した。

聞きたくて聞いた訳ではない、騒がしい電話の様子ではちょっと揉めた後で解決した風だったのが。
それでも「誰かに愚痴をこぼしたい空気」が垂れ流されているのを放っておけなかったのは、この少女のある種の職業病だ。
気づいてしまった、床に落ちた小さなゴミをつまんで捨てるようなものだ。
放ったまま過ごすよりはちょっと気分がいいかな、くらいの。


どうやらそのお友達はこの前町中でコスプレしている女の子と遭遇したらしい。
最近では、お嬢様の間でサバイバルゲームが流行ってるらしいなんて噂もある。
学園都市にはたくさんの人間がいる。
好みもそれぞれ、と言うことかもしれないが。
ゴーグルの少年がことのいきさつを話す間。
ふんふんと頷きながら心理定規はページをめくり続けていた。

「別に話してこいとか写メとらせてもらえとか、んな無茶も失礼なことも言わねっスよ。ただそんなネタがあんなら話の一つくらい振ってほしかったなーとかっスね。
『次は必ず』ってそんなポンポンチャンスが転がってたら世話ねっス。自称魔法使いな巫女さんとか気になるじゃないスか。何スかその盛った設定」

ジャンル問わず萌え語りの出来るヤツだと思ってたのは俺だけだったのかよ? ってちょっとした気持ちの行き違いがですね、とかなんとか一息で語った少年は。
オタクだった。

開き直っているのか、いろいろと諦めたのか。
それとも価値観の違いとかは気にしない人なのかは知らないけど。
こうして暗部組織のメンバーの前でも構わずシュミを話題に出来てしまうオタクだった。
女子中学生でもアニメやマンガくらいの理解はあるが、コスプレとか巫女さんみたいなワードには軽くカルチャーショックを受けるかも
って言うか引くかもしれない、とか考えないのか。
しかし。
三次元空間より点を線で繋いだ世界が好きなんだろうな、と相手の嗜好を疑いもしていなかった少女は。
この手の話題にいつもなら、
「そうねそれは残念だったわねそんな時もあるんじゃない気にしすぎると良くないよ?」
くらいのどうってことない返事でさっと流して終わらせるところを。

「君ってアニメの女の子以外も気になるんだ?」

珍しく。切らなかった。
少女とこの少年と二人で。
長く会話が続いたことはあまりなかった。
話が弾むどころか、共通の話題もほとんどない。
特別話す必要も任務以外では感じていないくらいだから、仕方ないかもしれない。

「コスプレは2.5次元っつうか。いや、まあそこは、フツーに?」

「ふうん。そうなの。普通ねえ」

「なんか…最近自分のポジションに自信がなくなってきました。俺はこれでいいんだろうか」


そんなことを言いながら、ゴーグルの少年は心理定規の横を通り過ぎると。
キャスター付きの椅子をゴロゴロ転がしてきた。
広い部屋の壁に沿ってバーのカウンターテーブルみたいな長い作業机が置かれている。
そのうち、一台のパソコンの前がここでの彼の定位置だった。

「そう言えば心理定規いるなんて久しぶりっスね、おまけにオフ仕様っスか? んで、今日は垣根さんがいないんスか」

パソコンの電源を入れながらゴーグルの少年は部屋の中を見回した。
隣の部屋はもちろん、リビングルームにもあの存在感はかけらもなかった。
窓辺のカウチも空だ。

「彼も来てたけど。出かけたわよ」

いつものドレスではなく、夏っぽい服装の心理定規は短いスカートの下で膝を揃えた。

「へーえ。どうしたんスかね」

「大したことじゃないみたいだからその内帰ってくると思うけど?」

「心理定規と垣根さんて結構仲良いとは思ってたんスけど。実際どうなんスか?」

ゴーグルが聞き返すと、綺麗に塗られたネイルが並んだ両手の間を。
すとーん!
と雑誌が滑り落ちていった。

「え? 私と彼が? え。なんで?」

それまで気にも留めていなさそうだった心理定規は。
膝の上に落ちたファッション誌ではなく、ゴーグルの少年の方を向いていた。


「だってよく二人で話してるじゃないスか。同じ空間にいてハブられたらさすがにわかるんスよ。俺だって」

「あのね。私たちは何? 学園都市の暗部組織でしょ。なかよしこよしのお友だちグループじゃないよね」

「そりゃ……わかってるっス。でも知り合った相手と仲良くはしたいじゃないスか。ギスギスしててもいいことないスよね」

「まあ一般的にはそうかもしれないけど。そう見える? 私だって特別親しいつもりないよ?」

むしろ逆、と言って心理定規は首を傾げた。
垣根からなのか、心理定規からなのか。
一体どう見れば仲良くしている様に見えるのかが本人にはわからなかったのか。
ちょっと真剣に眉を寄せて考えていた。

「三人でいてもそこはかとなく扱いの差を感じます」

「そこはしょうがないよ。私と君って役割が違うもの。でも君もよくやるでしょ、彼の思いつきを聞き流す係とか」

「俺はそれなりに真面目に聞いてますよ! えっ心理定規は流してるんスか」

不満そうにしていたゴーグルの少年は、心理定規のまさかのカミングアウトにガタっと体を起こした。
その勢いで椅子がぐらぐら回りそうになる。

「ああ言うのバイトで慣れてるもの。相づちはちゃんと打つよ? 機嫌悪くなっちゃったら困るし。
壁や観葉植物とか、金魚鉢に話しかけるよりは、いい話相手してるつもり」

「なんスかそれ。隠居したおじいちゃんスか。そう言えば前の部屋に水槽ありましたよね。
世話のいらない熱帯魚の。たとえばああ言うのに、したことあります?」

「ああ。あったね。そんなのも」

「あれ。女の子って動物好きじゃないスか? そんなリアクション?」

「うーん、たまに見るときれいだったけど。あれはペットって言うよりインテリアみたいだったじゃない。でも男の人は結構好きみたいよ、ああいうの。きれいで静かなものって癒されるみたい」

あきらかに気の乗らないざっくりしたリアクションにゴーグルの少年は残念そうに息を吐いていた。
きゃあ、おさかなさんかわいいよね! とかそんなのを期待していたんだろうか。

「えー。俺女の子は小さい生き物に話しかけるんだと思ってたんスけど。そんなもんなんスか……」

「それは人によるんじゃない?」


「そっかー…あ。垣根さんは動物平気なんスかね。もしかして、犬とか猫とか意外と好きだったりして」

心理定規はあまり興味がなさそうだったが。
生き物にやさしい不良やヤンキーはベタな設定だ。
だからって動物相手にセリフを即興吹き替えしている超能力者、とかが和んだり萌えるかと言われるとそれはまたむずかしいかもしれない。
向こうのリアクションが怖くて反応にも困りそうだ。

「鳥…はなんか嫌がりそうっスよね。『何でわざわざ狭苦しい籠に押し込めなきゃいけねーんだ?』とか言いそうな気も――」

「ね、まって…今の何?」

「え? いや垣根さんなら『おいおい、こいつら自由に飛べるんだぜ?』とか言いそうじゃないっスか?」

ゴーグルが振り返ると心理定規は口元を手で隠していた。
肩がぷるぷる震えている。

「そうじゃなくて…なにそれ彼のものまね? ねえ、なんで……なんで最後にちょっと『フッ』ってするの?」

「(キリッ)とかのがいいっスか? じゃあ――」

「やめてもう、おかしいってば」

ゴーグルの少年は調子に乗って「垣根さんあるあるネタ」的なものまねを披露した。
もちろん似てない。
それでも、垣根がまず言わなさそうなおかしな発言をなんとなくの「垣根さん風」のセリフで言い続けると。
両手で顔を覆いながら心理定規は笑っていた。


「はあ。ちょっとほっとしました」

「どうして?」

ゴーグルの少年は、自分の胸をなでおろした手でそのまま頬を掻いた。
ちょっとばつが悪そうに心理定規から目をそらしていた。

「いやー俺もしかしなくても、心理定規に嫌われてんじゃないかなーとかっスね。避けられてんのかなーって…ははは」

心理定規は。
一瞬きょとんと目を丸くすると少し考えてから首を振った。
ちょっと眉を寄せてからの五秒間、ゴーグルの少年は聞かなきゃよかった! って顔をしていた。

「好みの問題じゃなくて。そうね…人には適切な距離があるでしょ? もちろん物理的な意味でもね」

自分の能力にあてはめたのか、一言付け足すと。
心理定規はゴーグルの少年を観察するようにながめた。

「そうね。たとえば君にとって親しみがある、特別な距離をあげるなら……
一メートル二〇センチとかどう? 普段、能力の使いやすい範囲ってそれくらいじゃない?」

「何で……知ってるんスか。俺、そんなこと話してないよな?」

「どの隠れ家でも、君のスペースは物の配置がいつもそっくりよ。座る位置も。
『手が届く所に好きなものを置いておきたいタイプ』だと思ったんだけど、どうかな。君は人よりその範囲が広いみたいだしね」

もし暴走とかされても十分離れれば安心出来そうだし、と言って心理定規は得意そうにほほえんだ。
いつの間にそんなことまで見ていたのか。
ゴーグルの少年ははぁ、と感心した様に息をはいた。
そして、一瞬ドアの方を気にすると声をちょっと小さくして質問した。

「じゃあ垣根さんは? えっと。心理的にまずい距離とかって、あるんスか」

「彼は……また他の子ともちょっと違うのよね。でも対処は出来ると思うよ。ちなみに暴走されると、
あの能力だと逃げ場なんて無いし防ぐこともきっと出来ないからお手上げ。巻き込まれないですむって幸運を祈るしかないんじゃないかな」

取扱い説明書でも読み上げるような口調で心理定規はそう言うと。
顎に指先をそえながら首を傾げた。
垣根もそうだが、この少女もどちらかと言うとドライな印象がある。
たとえ相手が仲間だろうと不測の事態への警戒や注意は人一倍、それもして当たり前と言った態度だ。
垣根の方は、「何が起きてもわざわざ備える必要がない」
ので常にマイペースな自然体に見えるが頭の中はどうだかわからない。


「対処ってどうするんスか」

「彼の心に近付き過ぎなければいいの。ムカつく味方より、つまらない敵の方が関係性としてはずっと安全よ」

雑誌を横に置きながら心理定規は足を組んだ。
一瞬、何か思い出すように視線が上に向く。

「それも狙って出来るかはわからないけど。ほら、彼って結構気まぐれでしょ? 
でも彼の場合、他者への心の距離なんて扱いがほとんど一緒じゃないかな。彼の主観以外の一般的な分類もあんまり興味がないみたいだし」

「はぁ。なんかわかるようなわかんねえような…もしかして垣根さんの心理距離、測ったことあるんスか」

「会ったばかりの時にね。もちろん彼に言われてだけど。私の『心理定規』がどんな能力か知りたかったみたいだったから」

「えっどんな反応したんスか」

心理定規は返事の代わりに髪の先を人差し指に巻き付けていた。
カールした毛先がするりと逃げるのを目で追ってから口を開いた。

『ムカつくから止めろ』って。こわーい顔されちゃった。あれから、彼に力はあんまり使いたくないのよね。
勘もいいみたいだから、こっそりやってもバレそうじゃない?」

身を乗り出して聞いていたゴーグルはふと不思議そうな顔をした。

「あれ、でも仲良くなるのは悪いことじゃないっスよね? なんで精神的に近寄ると危ないんスか」


「そうね。彼に限ったことじゃないけど。興味がわくと期待するでしょ」

その反動が怖いのよ、と心理定規は真面目な目をして言った。
彼女が警告するように立てた人差し指を見つめてゴーグルは息をのんだ。

「だから。彼にあんまり期待させないこと。そしてそれを裏切らないこと、かな。それを守ってれば安全だと思うよ。これからもね」

「どうしてそうなるんスか」

頭の上にクエスチョンマークの乗っていそうなゴーグルの少年に、心理定規は眉を寄せる。
しようがないなあ、と口にはしないがなんかもうダメな子を見る顔をしていた。

「そうね、君風に言うなら……楽しく長い時間遊んでたゲームの結末がそれまでを台無しにするくらいひどかったら。ガッカリするでしょ?」

「あー…他がよくってハマった上でオチがひどいと凹み加減倍増っスね。しばらくはCMみるのもやんなりそうっス」

「それで済むならいいけど。彼の場合、本体ごとその場で壊しかねないと思わない? 『俺がこんなにやってやったのに!』とか言って」

肩をすくめる心理定規にゴーグルの少年は激しくうなづいた。
つまったり、気に食わないとゲーム機やコントローラーを叩いたり投げたりはその辺のやつでもするが。
超能力者の八つ当たりは規模がやばそうで怖い。

「すげー納得しました。いやあ、原作公式に背中を撃たれるほど辛いことはないっスよね」


「だからね、もしも。それが君自身や他の誰かの為でも、たとえ彼の為でも。
結果、君のしたことが彼のやり方を裏切ることになればそこでおしまいかな。きっとそう言うの、許せないと思うよ」

「じゃあ、もし俺が心理定規や垣根さんと引き換えにでも『スクール』の内部情報を売ったりしたら……」

「それで相手には見逃してもらえても、彼がトドメを刺しに来るんじゃない?」


恐ろしいことを笑顔で口にする心理定規に、ゴーグルはひきつった顔で笑い返した。
確かに。
理由はどうあれ背信間違いなし、ってとこだけで怒りがゲージを振り切りそうだ。
相殺しようにもきっと事情なんて説明する猶予も聞いてくれる保証もない。
ゴーグルの少年はうーんとうなった。

垣根が怒ったところには何度か遭遇しているが。
あのリーダーがガチギレするとどうなるのだろうか。
ムカついたとかよく言ってるがよっぽど、イライラでもつのらないと怒鳴ったりはしないと思う。
そんな垣根帝督が本気で怒りをぶつけてきたら一体どうなるのか。

もしかしたら静かに切れるタイプかもしれない。
一見いつもと変わらない態度と軽薄な笑顔で、真っ黒な目にだけ明確な怒りを燃やしてやって来る。
そんなの恐いに決まってる。

案外、語気も荒く怒鳴り散らすなんてこともするかもしれない。
冷静さを欠いて普段のイケメンぶりをかなぐり捨てて。あの垣根帝督が感情のままに悪意と怒りをまき散らす。
そんなの悪夢でも遠慮したい。

そして。
どうあっても最後はきっと、『未元物質』での粛清コースだ。間違いない。


「怖いっスよ! 俺自分の為なんかにはぜってえ裏切れません!! そんな予定もつもりもないっスけど!!」

うわあああああ! とうっかり怖い想像をしてしまったゴーグルの少年は頭を抱えた。

「自分以外ならいいの?」

「結局俺は助からないならやるだけすっげえ損じゃないスか。いや死ぬようなのはいつだって嫌ですけど」

ね、とうなづく心理定規と珍しく意見があった。
ステータスすらわからないボスモンスターみたいなリーダーと比べたら、この二人は紙防御もいいとこだ。
危ない目には、あわないのが一番。


「まあ、そんな風にいろいろあるけど。私は彼とはビジネスライクな距離感を保たせてもらってるの。がっかりした?」

心理定規は笑ってそう聞いたけど。
思いがけずいろいろ聞かせてもらえて満足したのか、ゴーグルの少年は首をふった。

「二人並ぶと華やかでお似合いだなーとか思ったんスけど。うーん。でも俺の居場所がますますなくなりそうなんで、正直ちょっとホッとしました」

正規構成員現在わずか三名の状態でカップル成立なんてされてしまうと。
リアルに見切りをつけているゴーグルの少年でも、リア充度の高い空気にやられてしまいそうだ。
おまけにリア充爆発しろ、とか冗談でも言おうものなら速攻でアイエエエエ! カキネ=サンナンデ!? とか言ってこっちが爆発四散するはめになりそうで恐ろしい。サヨナラはきっと言えない。
いや、リーダーだっていくらなんでも公私混同して仕事中もイチャつくなんてことはないと思うが。

「つうかノロける垣根さんとか想像できねえ」

プライベートにずらっと?が並んでいそうなリーダーは。
意外なことを想像しようとしたところで、謎が深まるばかりだった。

ドーモ

長くなったんで今回わけた
とりあえず投下だけ
続きはまた来るね

おつ
更新待ってたぜ!相変わらずいい感じにそれっぽいな
つーかゴーグルと青ピの会話が一瞬痴話喧嘩的なものかと思ったわww

垣根が出てきてないのが笑えるなww

1乙
戻ってきてくれてうれしいぜ
長くなってもいいからまた読ませてくれ
ゴーグル青ピとどんな話してんだw
安価はまだ期待しててもいいか?

某スレの影響かゴーグルがほのぼのしてるだけでちょっと感動するわ乙


「ビジネスライクかぁ。ビジネスって言えば。よく小遣い稼ぎしてるって言いますけど、心理定規っていつも何してるんスか?」

なんでそんなことを聞かれるのか。
そもそも『暗部』の知り合いなんだから、おかしな副業・バイトよりよっぽど『本業』にまつわるその他いろいろの方が気になりそうなものだけど。
不思議そうにしている心理定規にゴーグルの少年は、
「おにいちゃんは心配してます」とか言いそうな顔で続けた。

「よくあるじゃないスか。洋画とかで出てくるお姉さんはみんなちょい派手なカッコで『お金が目的じゃないの。お互いの人間関係なのよ彼はかわいそうな人なのよ』って話すじゃないスか。まさか…そう言うのはしてないっスよね?」

ちょっと品のない想像をしてますよ、と遠回し何だかストレートなんだかわからないたとえ話で尋ねられたが。
当の少女は「ハレンチですぅ」とぷんすかするとかおろおろ困ってしまう、みたいな妹系年下女子にありがちなパターンは返さなかった。

「どんな返事を期待してるのかな。あと私は純粋にお金目的だからね」

「それはなんか前に聞いた気がしますけど」

淡々とした心理定規にゴーグルの少年は苦笑いをしたがちょっとほっとした様だった。
だが、それも次の言葉を聞くまでだ。

「そうね。人によっては、ホテルに行ったりもするかな」

やっぱり?! と、目をむいて食いつくゴーグルの少年に心理定規は小馬鹿にしたように笑い返した。
それをわかってて狙ってやったのだろう。
意味ありげな言い方をした少女はリアクションに満足したのか口元を綻ばせる。


「コミュニケーションは相手との距離感もだけど環境も大事なの。仕事なんだからその辺はサービスしておかないとね。にぎやかなファミレスが安心するって人もいれば静かなバーのラウンジがいい人。
二人きりでないとなかなか口も開けない人、とか色々。でもみんな紳士的よ? 何故かよく言われるけど、そんなに気にすることかな」

誤解を招いてるのは主に服装とかじゃないかなぁ、とゴーグルは思ったけど口には出さなかった。
今はそんな風には見えないけど心理定規と言ったら夜の蝶、とかそんな言葉がしっくりきそうな派手なドレスがトレードマークだ。
ホステスとか水商売のおねーさんと言われるとそういう方面につい考えてしまう奴だっているだろう。

「それでもっスねえ。ちっちゃいこが好きな危ない『紳士』も世の中には居るんスから気をつけないと」

まるで「最終下校時刻の後はあぶないから出歩いちゃいけません」と注意する様な言い方だった。
心理定規は、
「こんな能力なんだし、使う相手は選ぶよ」とちょっとムッとした様に返した。

「それに相手は男の人ばかりじゃないわ。つまらないことでも生身の人間と話がしたい人もいるし、会話の中で考えをまとめたい人もいるのよね。
ささいなストレスや不安の解消、欲求を満たしてあげること。そんなことの対価に私はお金をもらうの。それなりにね」

相手のリラックス出来る距離感と環境で話をする。
やってるのは、セラピーにもならない人生相談や気楽な話し相手みたいなものよ、と言って心理定規はたいしたことなさそうに笑った。

「心理定規の能力って話聞くとすごそうっスけど。具体的にどうなるんスか」

「私の能力は、相手の心の中の距離を自在に調節することが出来るの。とっても大事な対象から、思い出したくもない嫌な相手まで。そっか、君にはまだ使ったことなかったっけ?」

やってみてもいい? と聞かれてゴーグルの少年はどうぞどうぞ、とうなずいた。


ソファから立ち上がると心理定規はゴーグルの席の辺りをうろうろと見て回った。

「そうね例えば……初対面の人間が入ってきて」

出しかけの荷物がごそっとおかれたカバンの前で足を止めると。

「へえ。かわいいわね?」

心理定規が手を伸ばすとパシン! とテーブルの上のフィギュアが動いた。
そのまま彼女の手が届かなさそうなところまであっと言う間に移動する。
心理定規はちょっと目を丸くして弾かれた指先を見ていた。

「あ……あの、すんませんっス。なんかすげー嫌で、つい」

いきなりフィギュアを遠ざけてから、ゴーグルの少年は慌てて謝った。
自分で能力を使っておきながら心理定規にそこまでしたことに戸惑っている、そんな風だった。
心理定規の方は、別にショックをうけた様なそぶりも見せずにテーブルにもたれた。

「って、君の大事な大事なお人形を勝手に触ろうとしたらこうなるわよね。でも、ここでいつもくらいの距離にするとどうかしら」

「あ、そんなじゃないっスね。良かったらそれ見て下さいっス」

実は垣根さんに作ってもらったんスよ! と自慢する表情はもうすっかり普段通りに見えた。
ふーん。そうなの、と言って心理定規は一見どこにでもありそうな美少女フィギュアを手に取った。
実際は世界にひとつしかない特別製だが。
ケースに厳重に保管しておかなくても劣化したり壊れる心配がないのでゴーグルの少年は、はじめておもちゃを買ってもらった子供のように一番のお気に入りを持ち歩いていた。
心理定規はそれを不審そうな顔でしばらくみていたが、いきなりそんなもので喜ぶ非オタもあんまりいないだろう。

「さてと。今の違いは君でもわかるかな」

「そっスね。心理定規なのわかっててもムカッとするんスね。びっくりしたっス。あと、やっぱ隣に居ていきなりふんいき変わると変な感じするっス」



「今のは距離単位二五〇。『社会距離』くらいの心の距離まで離してみたわ」

「なんとか距離ってのは何スか?」

ゴーグルの少年は聞きなれない単語に首をひねる。
年上の男の子の疑問にも心理定規は親切に教えてくれた。

「『パーソナルスペース』って知ってるかな。人には、他人に近づかれると不快感を得る距離があるって考え方。
『社会距離』は相手と問題なく話ができる距離。仕事相手や知り合いと過ごす時の距離感って言われてるのよ」

そのあとの説明をまとめると。
分類は大きく四つ。
遠い順に『公共距離』、『社会距離』、『個体距離』、『密接距離』と分かれていてそれぞれ距離とあてはまる人間関係が決まっているらしい。
さらにその範囲をそれぞれ二つに分けたものを『近接相』、『遠方相』と呼ぶそうだ。
これは能力者じゃない普通の人が考え出したものだから、もちろん実際の相手との距離のことよ、と付け加えると心理定規は体の前で両手を向かい合わせに広げて見せた。

「一番近い『密接距離』は四五センチから。親しい…家族や友人が対象になるかな。『密接距離』の『近接相』〇から一五センチは恋人に許される距離感、ってところかしら。
だから、四五センチ以下一五センチ程度の距離に不快感を覚えない人とは友人以上のお付き合いができるかもね」


『発火能力』や『発電能力』の様に、実際にある物理法則と関係のある能力者が既存のそういった化学知識を活用していることはよくあるが。
『洗脳能力』や『思念使い』、『念話能力』の様に宇宙の法則を乱していそうな、一見どうやって何をしているんだかよくわからない能力でも、そんな風に理論や学説を持ち出してくることがあるのか。
大元では、量子物理学に即している能力がほとんどだろうから、全くの無関係、無駄なんてこともないのかもしれない。

「へえー。心理定規の能力って心の距離を操作するんスよね? それでもそう言うの役に立つんスか」

「目安にはなるかな。私みたいな曖昧なものを扱う能力者は大まかに力を使うより、自分の中でも区切りを付ける指標があった方がいいのよ。
自由度が高くてもやり辛いの。ちょっとしたマイルールみたいなものかな」

でも。同じ距離単位でも、相手との関係で受け取る印象はずいぶん違うの。その辺りはひとまとめに考えちゃだめなところね、と心理定規は説明した。
そこまで話すとぱっと両手をあわせてテーブルから離れた。

「じゃあ、次はもっと驚いてもらおうかな。騙されないぞってつもりで用心してても全然いいけど」

少し離れたところにある椅子の前まで進むと。
心理定規は座る前に一度振り返った。

「ここでちょっと問題。今、私たちはどれくらいの距離があるでしょうか。どんな感じがするかな」

「さっきより、ちょっと……嫌な感じがするんスけど。席をどっか移したいくらいっスかね」

そう言うが、二人の間はゆうに三人分はスペースが空いている。
決して近すぎる距離ではないがゴーグルの少年はなんだか居心地悪そうにしていた。

「そうね。今の私たちは距離単位三〇〇以上だから君には近く感じるかも。これを段々近づけていくと、どうなるか。君にわかるかしら」

「それくらいなら。人間、嫌なやつにも敏感になるじゃないスか」

それを聞いて。
心理定規はなんだか楽しそうに笑った。
学園都市の能力者が持つのは一人ひとり違った能力だ。
自分だけの特別な力、に自信や誇りを持つような子どもは少なくない。
そして彼女もそんな子どものひとりらしい。
今からそれを披露してみせる、と告げた少女は何だかとても得意げな顔をしていた。


「さて、どうかな? 君は普通にしてていいよ。って言っても、今はあんまり会話もしたくないと思うけど」

そう言って、雑誌と自分の荷物をそばに置いてから心理定規は椅子をカラカラ引き寄せた。
特に予備動作やアクションはなく静かに心理定規の能力のテストがはじまった。
漫画やアニメにでてくる魔法や特殊能力みたいに技名を叫んだり始動キーのいらない学園都市の能力は、初見だとまず誰が何をしているかわからない。

「あ。ゴメン」

小さなポーチの中身をテーブルの上に並べていた心理定規の手元から、黒いキャップのガラス瓶が転がってきた。
パソコンに向かっていたゴーグルの少年は横目で、ラメ入りのマニキュアの瓶をキャッチすると机に置いた。
黙ってそれを押しのけるように心理定規の方に転がし返す。

「ありがと」

そう言ってにっこり笑うと。
心理定規は受け取ったマニキュアをポーチから少し、離して置いていた。


それから少しの間。

二人はちょっとずつ会話をしていた。
心理定規の能力の効き目はばっちり出ていたらしい。
いつもなら、まあ世間話くらいはするのだが。
ほとんど口を開くのは彼女の方で、それでもなかなか話は弾まなかった。
内容は特に大したこともない。
これから心理定規は用事があるとか。
『スクール』や、前にあった任務のこととか。
ゴーグルの少年のシャツに、値札のタグがつきっぱなしだったなんてつまらないことだ。
そんな風に何事もなく過ごしていた。


「ねえ」

横から聞こえた声の近さにゴーグルが振り向くと。
ちょうど漫画雑誌を横向きに置いたくらいの所に心理定規が座っていた。

「あ、れ」

「こーんなに近くに来ちゃったけど。途中で止めなくてよかったのかな」

大体二五センチくらいの距離を実際に、更に詰めながら。
頬杖をつくと心理定規はゴーグルの目を見上げた。

「どう? 私がどこで力を使っていったかわかったかな」

「えっと……さっき化粧品拾った時? と、あと……あ。服、のも? もしかして」

つっかえつっかえの少年の『回答』に少女はうなずき返した。
どうやら悪くない答えだったらしい。
そんな彼女の反応をみながら、ゴーグルの少年は喉の奥がつかえる様な変化を感じていた。
ひどく緊張しているような違和感。
そうは言っても嫌な気分のものではなかった。

「まあまあかな。会話の中での同調、共感、そう言うのも人の心の距離を縮めるには都合がいいの。
もちろん肉体的な……例えばこうして距離を縮めたり、触ったりもね」

そう言いながら、少女の手がすっと伸びて少年のシャツに触れる。

「後は、好感ね。いい気分になると警戒心も薄らぐし」

曲がった襟をきれいに直すと小さな手は元の様に戻っていく。
指先のオレンジの軌跡を、名残惜しくみつめていたゴーグルの少年を見て。
心理定規は愉快そうに。
小さく声を上げて笑った。

「表情も大事な武器よ。ね、さっきから私が何回笑って見せたか覚えてるかしら?」

「す…すごすぎて、軽く女子が怖くなりそうなんスけど……」

「女の子だけじゃないわよ。君だって相手や行先で服装に気をつかったりするでしょ? 
まあ、さすがにここまでは普段意識しないと思うけど。私はこう言う実際の感覚も能力に活用させてもらってるの」

木を隠すなら森の中、って言うよね。と心理定規は得意そうに付け足した。
何でそんなことをわざわざするのか。
問答無用で心の距離を維持しておさえつけるくらいこの能力なら簡単そうだった。


「だって……私が変えられるのは距離だけだから。感情も、前後の記憶のそのままだもの。いきなり変化すれば、どうしたって違和感は出ちゃうのよね」

いざと言うときにはもちろん手段を選ばないだろう。
それでもどうせなら、もっと上手に能力を使いたい。高めたい。
そんな口ぶりだった。

それでも。
頭でわかっていてどうにか出来るレベルのものじゃないくらい、今のゴーグルの少年にはわかる気がした。
それまでマウスにかかっていた右手をテーブルにつきながらゆっくり息を吐く。
だってそうだ。
心理定規は同じ組織のメンバーで。
かわいいけど女の子として特別意識したりすることはなかった。
それなのに。
隣に座った彼女とのこんな少しの距離が。
もっと近ければいいと感じたことは今までなかったはずだ。
こんな風に「冷静な判断」めいたことを考えてみても、気持ちはちっとも落ち着かなかった。

「でも、いつの間に…こんな」

心理定規から目をそらしてゴーグルの少年は少し考え込んでいたが、いったいいつの間に『普段以上に近い距離』に踏み込まれていたのかがわからない。
わかっていても無駄かもしれない。
目に見えない精神的な能力の干渉に抵抗は難しいだろう。



「さっきの『パーソナルスペース』もだけど、男の人は自分の体の前、縦方向に意識を向ける傾向があるから横には注意がいかないのかもね。それにしても、君はパーソナルスペースが広い『他人との接触を避ける』タイプだと思ったんだけどなあ。
いつもの距離単位からあとは全然気にしなかったね。鈍いのかな。それとも、好意をもつと相手に甘くなっちゃうの?」

「一生に一人の大親友や運命の相手、なーんて言うのも私なら好きなだけ、出会う前から作り放題」

「一目ぼれって言うのも便利な言葉よね。根拠のない好意を一方的に抱いても疑いもしないの。人間は思ってる以上に上手に自分のことを騙せちゃうんだから」

「ただ距離を変えるだけでも工夫すれば色んなことが出来るのよ。君が思うよりもずっと、ね。私なら……相手の行動だってやり方次第で操ることも難しくないかな」

どうしてでしょう、と問いたげに心理定規は笑った。

「なんで…っスか?」

そこで、やっとゴーグルの少年は声を出した。
それまで頷いたり、首を振ったりと最低限のリアクションは取っていたが。
隣にいる心理定規からすっかり目が離せなくなっていた。
普段と変わらない筈の声も表情も何だかとってもキラキラしていた。
視線ひとつ、何気ない仕草の一つまで。
彼にはとびっきりの、まばゆいエフェクトをかけたみたいに見えていた。
ゴーグルの少年は知らないが。
この時、二人の間の距離単位わずかに一〇。
肩が触れ合う様な近くにいても相手の存在を許せてしまう。
それくらいの親しみを感じてしまうように調節されている。
心理定規の能力に文字通り心を奪われてしまっていた。


「向こうがそうしてくれるのよ。好感のある相手には良く思われたいし、お願いだって少しくらい聞けちゃうでしょ? 
今ならちょっとわかるんじゃないかな。そんな気持ち」

手のひらで転がして、遊んで、飽きたらポイってできちゃうんだから。
そんな笑顔を向けられても。
ゴーグルの少年は今この瞬間、彼女を嫌いになんてなれそうもなかった。

「心理定規っ、ズルいっス」

「ズルいのは…イヤ?」

心理定規はわざとらしく眉を寄せてみせる。
からかわれているのはわかっていた。
能力で心の中を探られて、遊ばれているのはわかっていた。
わかっていても、それでも抗えない。
心臓は勝手に早くなる。
もちろんそんな顔だってサイコーに可愛いちょいセクシー小悪魔系あざとカワイイ心理定規ちゃんマジ暗部のヒロインごちそうさまですって気分になりますね最高にハイってヤツですねええ

我慢できなくなって、ゴーグルの少年は大きく息を吸った。

「はいっ! 好きです!!」

「あはは。君、面白い」




ソファに座ったゴーグルの少年は自分の手を握って下を向いていた。
隣には、さっきより近い心理定規。
この後の予定は聞いていたから出かけると言うのは知っていた。
それが気になると話したら、じゃあバイトの方も試してみない? と言われてしまい。
能力で心に干渉されたゴーグルの少年はいつも以上にされるままだった。
狭いスペースで、物理的にも心理的にも彼の逃げ場はない。

「そうね。何か、不満とかある? 『スクール』の活動とかで。あ。心配しなくても、私聞いたことは他の人に漏らしたりしないから好きに話していいよ」

「うーん……そうだなあ。大したことじゃねえっつうか。ここみたいな隠れ家でよく垣根さんと会うんで、一人でゆっくりゲームが出来ないのが最近の悩みって言えば悩みで。秘密基地独り占めだーってのが楽しかったんスけど」

「ゲームくらいすれば? 彼も気にしないでしょ」

「そうなんスけど。こことか PC もテレビも画面すぐ見えるじゃないスか。いや、えっちいのはしないっスよ? まだ俺じゃ買えないんで出来ないっスけど。ギャルゲじゃない普通のでもなんとなくやりづらいんスよ」

「ふーん」

「この前もっスね、たまたま鉢合わせたら何か出かけるって言うんでついてったんスけど。結局俺が良く行くとこ回っただけみたくなって。垣根さんは……よくわかんねえっス」

「君さ、それでよくハブられてるって言えたね」

それまで相づちをうちながら、彼女の言うところの「いい話し相手いい聞き役」をしていた心理定規がふと口をはさんだ。



尋ねると言うかなんとなく、不満めいたものを感じてゴーグルの少年はドキっとした。
彼女の機嫌をそこねるような話をしたつもりはないし、あるならもっと他のところだと思う。
ゲームとか、ゲームとか。ゲームの辺が。

「え。何でっスか」

「私もプライベートで出かけたり、一緒に遊んだりなんてしないよ?」

ちょっとむっとした顔もかわいいなあなんてのん気に萌えながら、ゴーグルは慌てて言い訳した。

「一緒に遊んだって言うか。遊んでもらったのか、つきあわされたって言うのか……あれは垣根さんにも原因がっスね? 
いや悪くはないかもしんないっスけど、あんな言い方されたら即『 yes 』の選択肢を選びますよ。俺は他の娘ルートでも本命の誘いは断れない、そんなプレイヤーなんスよ」

「ごめん。よく…わかんない」

「レン子ちゃ……ゲームん時の悪い癖が出たんですよ。それ以前に俺が、垣根さんに『結構ですおひとりでどうぞ』って言えると思いますか」

「それもそうだったね」

しょうがないなあ、と呟く横顔にほっとしつつ、ゴーグルの少年は思い切って提案した。

「じゃあ、あの今度心理定規もどっか行きます?」

「あら。デートに誘ってくれるの?」

「でっ、デート……はい。その、良かったら」

あえて説明しなくても、彼は三次元の女の子とのデートはしたことがない。
液晶内の2D女子なら数えるのも嫌になるくらい経験済みだ。自慢にはならないが。

「そっか、ありがとね。でも…私結構忙しいの。また、今度ね?」

トドメににっこり微笑まれて、遠まわしにお断わりされたかもなんてことはどうでもよくなっっていた。



「でも、君がそんな風に考えてるとはね。彼にはもっと懐いてるのかと思ってた」

「やっぱそこは世界が違うっつうか。俺けっこうヒールも好きなんで垣根さんみたいな人も嫌いじゃないんスけど」

ピンと来なかったのか首をかしげられてしまった。
そこでゴーグルの少年は、心理定規でも知っていそうな、超有名なアニメの悪役の名前をあげた。
けど、聞いた途端心理定規は何言ってるのこの子?! みたいな顔をしてきた。

「いや! すごいんスよ? ばいき○ま○! 頭いいしなんでも作れるし実はハイスペックなんスけど。
それをあ○ぱ○ま○をやっつけることにしか使わないんスよね。つめが甘いのと展開上いっつも返り討ちっスけど憎めない悪い奴って感じで。俺好きです」

「彼がばいき○ま○なら、私はどき○ちゃ○なの?」

「あれ、ぴったりじゃないスか? かわいいし」

ゴーグルの少年の熱弁にやっぱり首をかしげる心理定規はそんな悪役サイドのヒロインに似ているかもしれない。
雰囲気は気が強そうでわがまま、ツンっぽくて。
男相手にも命令したり手玉にとっちゃう系なイメージなのもちょっぴり。

「じゃあ君は?」

「俺は……そっスね。かびる○る○、とかじゃないスか」

「なんで?」

「いると画面が寂しくないけど、別にいなくてもいいガヤ要員とかパシリっつうか」

「……せめてマスコットってことにしておけば?」

下を向いたゴーグルの少年の自虐的なコメントに。
心理定規はものすごく同情したかんじで軽く肩を叩いてきた。
少年は、いつもよりずっと悲しかった。


「あの…俺からも、聞いて…いいっスか?」

「なあに?」

「心理定規ってどう言う人が好きっスか?」

好きって言っても色々あるんだけど、と心理定規は

「一緒にいて楽しいひと、って言うのはやっぱり大事よね。あとはそうね……安定してるひとかな」

「えっと…経済的に? それとも落ち着いてるって言う前向きな解釈もオーケーでしょうか」

「そうね。精神的にもかな。だから、君とか彼とかはちょっと、ね? 特に彼は仕事もプライベートも気分次第で振り回しそうなんだもん」

やっぱり自分が振り回したい系なんだろうか。
他人を操る能力者ってわたしがだれよりいちばん! って感じするけど実際どうなんだろうか。

「じゃっ、じゃあ肉食系より草食系のほうが好きだったりします?」

「うーん、そうなるのかなぁ」

わずかな可能性に、今のゴーグルの少年は本気で喜んでいた。
勢いよくガッツポーズまでしてしまう。
そして。
その勢いのまま、気になっていたことを思い切って口にした。


「あと、あ。名前。俺っ心理定規の名前知らないっス!」

それまで。
面白そうにゴーグルの反応を見ていた心理定規は、一瞬目を丸くした。
しかし、すぐににこにこした顔で目を細める。


「そんなの記号じゃない。呼ぶときに困らなければなんだって」

「でも大事っスよ。俺は『スクール』の『ゴーグル』ってのは結構気に入ってきたんです。ここでしか呼ばれないし。でも、能力名だと、それが自分なのか能力のことなのかわかんなくなりません?」

真剣に聞いてみたが少女から返事はない。

「そう言うの、垣根さんはなんか嫌がってるみたいじゃないっスか。だからもしかして……君も」

「……そう言うの、つまらないわよ」

さあっと波が引くように心理定規は冷めた目をして呟いた。
突然、目の前に見えない壁が現れた様だった。
そこにぶつかったゴーグルの少年はかあっとなって言葉を叩きつける。

「そんなことないだろ? なんで、そんな風に!!」

「ちょっと! もう、調子に乗らないの!!」

勢いあまって腕をつかむと心理定規にしかられた。
はっとして離した手を細い指でおさえつけられる。


「あ…俺、ごめん」

ゴーグルは慌てて謝ったが心理定規はうつむいていた。
やりすぎちゃったかな、と少し戸惑ったように呟いていた。


「仕方ないなあ。でも、これはもうおしおきね」

おしおき、なんて言いながら心理定規は隣に座ったままもう反対の手もゴーグルの少年に握らせる。

「じゃあはい。こうやって手握っててね? しっかり、ちゃんとね」

「はい」

おとなしく従うゴーグルはちょっとうれしそうにしていた。
今彼の心の中では心理定規はとても身近な存在になっている。
何も、警戒する様子も疑うそぶりもなかった。

「いくよ?  3 、 2 、 1 ……はい!」

「ひっ……?!」

短いカウントが終わると。
安心しきっていたその表情があっと言う間に変わる。

「あれっ? 急にどうしちゃったのかな? ごーぐーるくーん?」

「な、なに……なんスか? なんスかこれ?! め、心理定規っ止めて下さい!」

「何のことかしら。私何かしたかな? 隣に座ってるだけだよね?」

心理定規は目を細めている。
つかまえた虫で遊ぶ子猫みたい、と言うとちょっと可愛いが。
可愛い顔していじわるな笑みを浮かべていた。
一方、あわてるゴーグルの方はいっぱいいっぱいだ。

「嫌っス、とにかく嫌っスこれ! 怖いっス一体何と距離合わせたらこんななるんスか!! いますぐッ、能力を」

「え? なあに、きこえなーい」


ついさっきまで、能力で心理定規は本当にかわいいなあなんて状態になっていたゴーグルの少年だが、今の反応は真逆もいいところだった。
心理定規が嫌でいやでたまらない。
これもさっき調子に乗ったおかえしと言うことらしい。

「近い近い近いッ! ごめんなさい俺ごときが調子乗ってすいませんでした謝るんで今すぐどいてください!!」

「嫌ならはねのければ? ああ、手が塞がってると難しいの?」

ソファにひざをのせた心理定規は嫌がるゴーグルにさらに近づいた。
そして目の前に、さっきつながせた両手を持ち上げてみせる。
たったそれだけだが、隙の無い追撃だ。
それに一瞬固まるとゴーグルは目をつぶって頭を振った。


「へ。手、ぇ繋……ヒッ、無理無理無理だって! 勘弁して下さい!!」

「身動き取れないくらい嫌なの。ふーん。ねえ、そんなにダメ?」

ほぼ一方的に大声を上げるゴーグルの少年を心理定規は不思議そうに見下ろしていた。


そんな風に騒ぐ二人の声の合間に。
部屋のドアが開いていた。

「何だ? お前らずいぶん盛り上がって――」

「っく」

「あ。おかえりなさ」

ガチャン。
開いたと思った次の瞬間。
何事もなかった様にドアは閉められてしまった。
その向こうに消えてしまった垣根に向かってゴーグルは必死に叫んでいた。

「垣根さぁん! 垣根さん心理定規っ何とかしてください!! も嫌っス! これ、助けてくだざぁい゛!!」

入り口から中の様子を伺うと。
もう一度垣根は部屋に入ってきた。
ソファの上にはぶるぶるしながら半べそのゴーグルの少年。
その上に、楽しそうな顔をした心理定規が座っている。
メンバーの意味不明な状況を見下ろしてリーダーはあきれ返った顔をしていた。

「一体何してんだお前ら」

「心理定規があ、ひど…これ…どけてくだ、ざい」

「ねえ、今の聞いた? 女の子に対してずいぶん失礼よね」

ぐすぐすしているゴーグル。
それを見下ろしてむくれる心理定規。
垣根は、はあ、とため息を吐くと面倒そうに頭を掻いた。

「お前もあんまり馬鹿で遊ぶんじゃねえ。うるせえだろ」

「はぁーい」


素直に返事をして心理定規が膝から降りた後。
ゴーグルの少年は恐怖のおしおきがよっぽど嫌だったのか、ものすごくテンションが低かった。
パソコンの前に戻り、椅子の上で器用に膝を抱えるとヘッドフォンをつけて『笑える動画』みたいなタグのムービーを片っ端から流しはじめた。
かわいい彼女がいきなり目の前でぐにゃぐにゃの遠い星から来た系のバケモノに変身したり、母親がモンスターに乗っ取られていたのを見てしまった。
それくらいのショックだったのかもしれない。

「ああ。こいつの能力、ムカつくだろ? 気をつけろ、エグいことも平気でやるからな」

「もう。私は無駄に、そんな趣味の悪いことはしないよ?」

「あれでいい方なんスか……一体何と同調してたんスか?」

からかうような垣根の言葉に反論していた心理定規は。
ふりむくと唇をつりあげた。

「え? ふふふ。ナイショ」

「うー、わー。だから怖いっスって」

髪を整えていた心理定規は鏡に向かってにっこり笑った。
それはとっても可愛い笑顔だったが。
今日、女子の怖さをちょっぴり知ってしまったゴーグルの少年はまっすぐそれを見れなかった。

ドーモ
垣根、ゴーグル、ときて心理定規ちゃんの能力のターン
距離単位の謎の数値が気になってたけど「パーソナルスペース」ってのがいい感じだったからこじつけた
レスと小ネタがまた今度


勉強になったが、よく考えたら自分の人間関係では生かせる場面がない疑惑

ゴーグルくんがビビりまくるものというと、背中から羽生やす系のホストぐらいしか思い付かない…

1乙
いつもネタだらけでウケる
ゴークルはもげろよ!
心理定規をひざ抱っことか吹き飛べばいい

>>294-295
ゴーグルがひざに垣根を乗せてるって?(乱視)

なんだ。TDNホモか

ドーモ
過去レスまとめ

>>219
いくらネタやギャグといっても好き嫌いってあるもんね。ごめん。書けるものなのか興味がわいてしまった

>>220
その手があったか!

>>221
ごめんそれより先にゴーグルが。ゴーグルが、うん

>>222
安価いただきました!!やった面白そうなのがきたぞ!
もしかして女装なのか?ていこちゃんをご希望なんでしょうか
ギャグで全てが許されるなら垣根に真面目にバカをやってもらおうか

>>223
キリスト教系のみなさんは能力みせた瞬間にキレないでせうか

>>224
全レスはけっこう好きでしてるんだ。スクロール長くなるけどすまんね
もしそんなネタを番外で投下する時は事前予告注意書きsage進行、あとは本文反転ってここ使えるのかな。配慮したい
アドバイスありがとう。とてもためになる

>>225
な。イケメンだにゃー

>>226
良心のある方がここにも

>>227
鬱っぽくなるよなあ胸糞注意だよなどうやると鬱らないんだろうね
そこまで出来たらあとはスレを立てるだけだながんばれ(棒)

>>228
需要はあるんじゃないかな特定層とかに(棒)
ゼロなら何故こうなったのか、こっちの安価を振り返った>>1が泣く

>>230
不肖>>1めは申し開きもございませんのことよ

>>231
おまたせー……してます

>>232
ほしゅありですよ

>>233
がっつり暗部絡みなら15巻らへんの話かな
季節感ないけどこのSSまだ夏やすみじゃん。がんばってみたい。がんばって、うん。がんばる

>>234
大変お待たせしていた>>1です

>>235
すいません
二期の頃の盛り上がりを思えば確かに今は穏やかだけど三期が来たら再沸しないかな。三期まだ諦めてないよまだ。動く未元物質と垣根みたいぞ

>>236
すいませんすいません
なかったことにしてもいいんだけど書いてしまった。もったいないからそっちはそっちで活用するね
よかったな垣根あいされてんなかきね

>>237
1のパターンが読まれている……だと……
いや、今回は長かった。スレにきたけど投下はしてないからと>>1>>1は反省してみたり

>>238
ご心配をおかけしました

>>239
大丈夫だ。やめるときはhtml化だっけお願いして落とす宣言するから。>>1だって黙って落としたくはないぎりぎりなときあるけど

>>240
ありがとう。フォローしてもらってすまない

>>250
乙ありー!ありがとうがんばりますことよ

>>251
字面もキャラも一番面白いのは一方さんだと思ったんでやってもらった!

>>252
そんな感じ!一方さんの勘違い。わかりづらくてすまんね
関西弁デフォな青ピと、つっちーの分担が逆だったらこうはならなかった
メインは垣根と愉快な仲間たちなんだけど1が妄想を書き散らすスレでもある……スマヌ、スマヌ

>>253
ごめんちょっと怖すぎていろいろ吹っ飛ばされた。何その恐怖の権化極道な第四位。アネリ付き浜面でも勝てるのかそれは

>>254
それは一方弁とか言うンですかァ?

>>255
ミコッちゃんは何がいいかね
御坂(関西)「ビリビリ言わんといて! うちは御坂美琴ゆーんやっ!!」
関西弁だとこんな感じ?
方言変換のサイトに禁書の名言打ち込むと楽しいよ

>>256
すいませんすいません、すいません
キレた麦野みたいに言って貰ってもいいですか

>>257
こいつはドーモ
かわいいAAもドーモ

>>258
保守ありですの



>>270
乙ありー!それっぽいって何っぽいんだ
なんだそりゃって読み返したらたしかになんか痴話喧嘩だったw大丈夫だゴーグルはロリショタじゃないし青ピも2D美少女じゃないから

>>271
垣根は二人の心の中に居ましたよ

>>272
ありがとうそう言ってもらえると長文でもほっとする
虹嫁の包容力の話ですよ>電話
安価は進捗かな?次かな?
次回投下で200、その後201。222はまだだから間に本筋が入る(予定)
500くらいいったらまたやるかその辺で考える。一年またぐのが先かどうかヒヤヒヤ

>>273
乙ありです
某スレとはどこのことでしょうかと>>1は気にしつつ、ほのぼのですかええ何しろまだ八月ですからねとメタな発言をかまします

ドーモ
とりあえず前々回前回レスでまたな
お前ら本当にホモが好きか好きだな好きですね三段活用
予定では次がお待ちかねのホモ安価ですけどたぶん幻想はブチ殺す

あぶないあぶない
>>252ちゃんのみたがってた『スクール』の武勇伝
>>249の続きなのですよー!
コピペサボってるのは見逃して欲しいのです。でないとゴーグルちゃんがうっとおしいことになるのですよ


垣根「『スクール』だ」
ゴーグル「お願いします!」
心理定規「……リーダーいつものやってあげて」
垣根「おう。聞きたいか? 俺の武勇伝」
ゴーグル「そのすごい武勇伝をゆったげて!」
垣根「俺の伝説ベストテン」
心理定規「…れっつごー」
ゴーグル「武勇伝武勇伝、武勇でんでんででんでん」
心理定規「れっつごー」

垣根「手ぶらで暗部の仕事いく」
ゴーグル「すごい荷物係がちゃんといる」

垣根「行列あっても並ばねえ」
ゴーグル「はい! 俺と下っ端で代わりに待機!」

垣根「雨が降っても傘はいらねえ」
ゴーグル「すごい翼があるから濡れません!」

垣根「ス◯バの注文めんどくせえな」
ゴーグル「すごい!『いつもの』でトッピング追加されてる!」

垣根「電車は滅多に使わねえ」
ゴーグル「えっ、自動改札に喧嘩売ってる?!」

垣根「意味はねえけどムカついたから、割り箸あるだけ割っといた」

ゴーグル「武勇伝武勇伝武勇でんでんででんでん」

バッサァ

ゴーグル「すごいっスよ。垣根さんすご過ぎっスよ! なんでそんなにかっこいいんスか? 教えてほしいっス!!」
垣根「しゃらくせえ」
ゴーグル「ぎゃあ! い、いきなり蹴ることないじゃないスか?」
垣根「そんなもん、言葉にした瞬間に色あせちまうだろうが!」
ゴーグル「かっこいーっ!」

バッサァ

ゴーグル「原作全然出番はないけど」
垣根「まだまだ活動終わらねえ」
心理定規「…ぺけぽん」

心理定規のぺけぽんで俺の腹筋に会心の一撃!

>>273の某スレってのは
垣根「世界が悪意で溢れても」の事じゃあないかな?

>垣根「雨が降っても傘はいらねえ」
>ゴーグル「すごい翼があるから濡れません!」

翼と水滴を煌めかせながら雨の街を歩くホスト
面白さを通り越してある種の神々しさすら感じそう

>>294-297
おまいらのおかげでホモごっこのコピペ思い出したぞどうしてくれる


帰ってきたのにびびってドア閉めちゃう垣根かわいすぎか
でも心理定規サービスしすぎ?フラグ勃った?

取り急ぎ

>>301
あーあそこか!ありがとう
シリアス暗部いいよなあ!かっこいいし
最近みなかったからちょっと心配してたけど生存報告きてたのか。よかった
ゴーグルは…かっこ良かったよな

頂点さんレベル5ブースターとかありませんかね。メルヘンブースターなんて贅沢言いませんから
キャラ別Bの腕時計みたいなデザインきらいじゃない


ここみた後に出てきたマンガの広告がギャルと地味なオタクが付き合うなんてーなやつでなんかドキッとした

心理定規がメッチャかわいいんだけど
垣根とはイチャつかないのか

逆に考えるんだ。好きだからこそいちゃつけないと考えるんだ。

おまえら雑談もほどほどにな
おれは帝春も好きです

ドーモ
レスと報告

>>294
大丈夫だなんかのネタにはなる問題ない
心理定規が言っていた。相手からイニシアチブぶんどるのに年齢性別問題ないと
もし心理定規≒垣根であの反応だったら、後の安価分で阿鼻叫喚地獄絵図ですわ

>>295
そうですね。おまけにミニスカですよ

>>296
君も眼鏡の度があってないのかな?(近視)

>>297
しばらく悩んじゃった。「ただの」か

>>302
垣根「かっこいーだろ? メルヘンだぜぇ?」

>>303
電車の中でWカップルのやつかね

>>304
「よくわからんけど修羅場っぽい」状況で構わずはいってきちゃうのは超能力者でも麦野と削板くらいだとおもう
定規ちゃんは格下相手になめてたらちょっと反撃されたんで仕返しをですね
って良くしつけられた予測変換ですね

>>306
それっぽいのみかけて調べたらタイトルずばり3D彼女でびびった

>>307
かわいい心理定規大好きだけど、出来る女っぽいクールなのも好きでついツンクールになてしまう

>>308
おんなごころってむずかしいのな

>>309
別に気にせず雑談してくれ。1は投下ん時に顔だすくらいだけど
埋め立てる勢いじゃなきゃ全然。保守代わりにもなるしね


安価>>200が28日以降になりそうなので一応
本文をあぶり出しで投下、どうやってもレス数が過去最多になりそうなので読みづらさを含め事前報告しておきます
モブのダサ良い名前が無事ついたのでひとあんしん

>>303
ググるついでに改変したけど
ネタはこれでいいんでせうか

『スクール』でコピペ改変

ゴーグル:組織のやつらとホモごっこで盛り上がってたら垣根さんがそれっぽく「挿れてもいいんだぜ?」って俺の膝に乗って肩に腕回して
抱きつきながら言ったんだけど、
俺が「垣根さんいつももっと切羽詰って言うじゃないスかw」って返したせいで今周辺の空気がデカイ任務中みたいになっててヤバい
何より笑いが取れなかった垣根さんの無表情がヤバい

『超能力』でコピペ改変

垣根:超能力者でホモごっこしてたら一方通行がそれっぽく「やだァ早く挿れてェ」って俺の膝に乗って肩に腕回して
抱きつきながら言ってきたんだけど、
俺が「お前いつももっと上手にねだれるだろ?」って返したせいで今麦野が大爆笑しててすげーうるさい
何よりこっちを見てる食蜂の笑顔がヤバい。こっちにリモコン向けたら容赦しねえぞ

みさきち腐女子疑惑ww
クッソワロタwwww

みさきちwwww
この場に御坂さんいたらどうなってたのだろうか

顔真っ赤にして目を手で覆う(指の隙間から覗く)んじゃない?

みさきちわろたwwww
SSもだけどこういうちょっとしたネタすきだわ
また楽しみにしてる

もう29日だよ>>1

28日以降(6月とは言っていない)
SSは待ち難きを待ち・・・忍び難きを忍ぶ事だと昭和天皇もおっしゃっていたよ。

SSでのみさきちって腐ってること多い気がしないでもない

HTML化されなければいくらでも待てる
むしろHTML化されてもずっと待ってる、ずっとずっとずっといつまでも…
エタって数年経つようないくつもの垣根スレだっていつかは再開するはずだからずっと待ってるんだよ……(ハイライトoff

そうだよ(便乗)

待てばこのSSも愉快な仲間たちシリーズもいつかは復活するんだよ(ガンギマリ)

ドーモ
まず前回のコピペ改変ですが。えーと垣根が好きな人には「者」がちゃんと見えているはずですね1にはみえます。嘘です
脳内補完をおねがいします

そしてこっから>>200の安価分を投下します
特殊ネタなので
あぶり出しsage投稿ですよろしく
ながくて辛い




ザリザリと何かが擦れる音がしていた。
不愉快だ、と垣根は雑音に眉をひそめた。
開きかけたまぶたはまだ重かった。
頭も鈍い痛みがある。
体にかかる怠い重さと不快感から逃れるため彼は目を閉じようとしたが。
視界の端に映ったきらめきが垣根にそれを許さない。
光源は光を照り返したナイフだった。
危機感が鈍った感覚に警鐘を鳴らす。
垣根はそこでようやく「なにかおかしい」と感じることが出来た。


「やっべぇ。縛る前に上剥いとけばよかったんじゃね? 腕抜けないじゃん。服切る? え、それならやっぱ起きてからしたいんだけどイイ?」

「お前ほんと頭わりーなー。 つか脱がす必要あんのー?」

「なんかさあ刃がゼンゼン通んないんだわスパっとイカねえ。ナニコレ何製? 新種の超合金シャツ?」

「ここに運んできて裸じゃねえやつとか新鮮な。逆に」

近くでは緊張感のない声が次々と上がっていた。
遮音性の高いイヤホンを耳に挿したまま外の音を拾った時のように、聞こえづらいぼんやりとした音声が垣根の耳に届く。
沈みかけた意識を引き上げると。
彼はまだはっきりとはしない視界で辺りを見回した。
うつむき気味の姿勢のまま、静かに視線をめぐらせ状況を確認していく。


どうやら、垣根は椅子に座らされているようだった。
腕は更にその後ろで縛られてでもいるのか。動かせそうになかった。
今まで気絶していたのか。それとも眠らされていたのか。
どちらにしても随分と舐めた真似をされたものだ。
目がさめる前は……どうしていたか。
確か、喫茶店でコーヒーを注文した。
口をつけた記憶はなかったから運ばれてくる前に何かされたのか。

そうして思い返し思案する垣根の視界が大きく揺れる。吐き気をもよおす程の強いめまいが襲う。
おまけに頭もひどく痛むせいか、考えが思うようにまとまらない。
能力の使用に必要な演算に集中する以前の問題があるように感じられた。
まるで、考えると言う作業そのものが、のしかかる重い痛みに端からすり潰されていくようだった。



見える範囲に男が三人。
一人は垣根の前に屈み、折りたたみ式のナイフをチラつかせていた。
残りも若い男だ。いずれも大学生くらいの同年代に見えた。
だがいかにも不良を絵に描いたような、路地裏のスキルアウトとは少し違う印象だった。
服装も雰囲気も全員バラバラだが。
身綺麗だった。
いい服に時間と金を割くだけの余裕があるのだろう。
そして。
服や香水だけでは隠しがたい汚臭がした。
軽蔑すべきクソ野郎に共通した、濁った臭いだ。


どうやら垣根がいるのはどこか建物の中らしい。
薄暗い部屋の中では時間も場所もはっきりしない。
床も壁も打ちっ放しのコンクリート。
生活感のない室内は清潔さには程遠かった。
埃っぽく湿った空気に、垣根は舌打とうとして。

更なる違和感に気付かされた。

「あー? こいつやっと起きたんじゃねー?」

「おい、お目覚めだって。はじめんぞ支度しろ」

好き勝手喋っていた男たちが垣根に注目し、ドアの開く音がした。
どうやら垣根の背後からもう一人、歩いてきたらしい。
カツコツとひときわ硬い靴音が床を叩く。
手には小型のハンディカメラを持っていた。
垣根の前まで回りこむと、そいつは神経質そうに眼鏡のフレームに手を伸ばした。

「これで……映ってんのかと。今時旧世代のビデオとかどんだけアナログかと。マニアックだと」

「今度の客はテープでねーと嫌なんだとー。デジタルデータは幾らでもコピーも修正も効くからとかなんとかー。
でも能力者マトにしてわざわざつかまえてくんだからすげーよなー」

「コイツのために店ごとやったんだし……おお、すっげ! なぁやっぱりオレらニュースになってんじゃん。やっべぇの」

ナイフを畳むと男は、いじっていたスマートフォンの音量を上げた。
横向きの画面の中にはネットニュースの動画が流れている。


今日の夕方、第五学区の喫茶店で薬品の流出事故があったと報じられていた。
バイク便のドライバーが荷物の受け渡しを店内で行った際に薬品の梱包に不備があることを荷受人が発見し、その場で中身の無事を確認した。
その際、容器内の高濃度の麻酔ガスが漏れ出し当時店内に居た従業員、客を含めた一二人が昏倒。
その後周辺の通行人が異変に気付き警備員に通報したため、被害は調理場で火にかかっていた鍋が焦げた程度。
幸いにも重症者や火災、関連した事故の発生には繋がっていないと言う。
荷受人は「中身がなにかは知っていたがまさか開けただけでこんなことになるとは思いもしなかった。本当に予想外の事故だった」と繰り返しそれだけをコメント。
安全管理の欠如、管理者の怠慢だとアナウンサーが淡々と語っていた。
その時店内の一人が、それも超能力者がそんな騒動の陰に隠れて連れ出されたことは。
きっと誰も知らない。

状況をひとつひとつ、ゆっくりと噛み砕くようにしていきながらも垣根は落ち着いていた。
気付いたら拘束されて知らない場所に居て。普通ならパニックになりそうなものだが、
「何でこんなことに?!」なんて、ありがちな第一声も垣根にはふさわしくなかった。
取り乱す暇があったら、ほかのことに頭を使う方がましだろう。

彼の身上ではこの状況を引き起こしそうな理由が嫌と言うほどあった。
何しろ暗部組織に所属する超能力者だ。
目的も金目当ての誘拐、交渉用の人質、下らない私刑。おかしな実験のモルモットに、なんてのもありそうだった。
そして敵になりそうな相手も多い。
下らない実験を蹴ってやった研究機関、鼻で笑ってやった研究者個人、情報を掠め取ろうとするブローカー、格下の能力者、群れるしか能のない武装無能力者ども。

潰した相手の数もいちいち覚えていない。
恨みを買うことなど気にもしていない。
垣根にはその全てを真正面から打ち払える自負があった。
その点では、搦め手で来られた今回は少しばかり慢心していたと言えるかもしれないが。
何よりそれ自身が学園都市の抱える最高クラスの実験成果。生きた傑作の超能力者だ。
垣根の身に何か――起きることの方が難しそうだが――あれば、その損失はどれほどのものになるのか。
それを防ぐ意味でも、垣根には不本意ながらいくつか後ろ盾として機能するものもあった。
そんな相手におかしな真似をして、タダですまないことくらい考えなくてもまずわかりそうなものだが。
負けることがわかりきっていても向かってくる者も中にはいる。
目の前の状況を見る限り、残念ながら学園都市にはそんな馬鹿も多いようだ。


「やばいのはこっからだろ」

「ハーイお客サマお名前なんだっけ? どれどれええっとカキネクン。え。コイツレベル5じゃん? やっべぇミンナ知ってた?」

次にメールアプリを開いていた男は仲間の前にそれを見せて歩いた。
何らかの標的のデータは最低限与えられているらしい。
それでも、超能力者と聞いても彼らの反応は大して変わらなかった。
大能力者以上はその力を兵器と比較されるくらいなのは有名だが。それにしたって拍子抜けするほど平然としている。

「アクセラレータとかレールガンは知ってっけどダークマター? ナニソレじゃね?」

「相手は情報だけでも値段が桁違いになる超能力者だと。暗部組織でアングラならマイナーってのも納得かと」

「それちゃんと効果あんのかー。事故るとやべーぞ。前みてーにボヤじゃ済まねーぞ」

「演算阻害装置は四台とも問題なく稼働中かと。薬も効いてる筈だと。搬送用の麻酔と運動機能の制限、それに加えて二種類投薬ずみだと」

カメラ役は片手で壁際に置かれた二台のスピーカーのようなものを示した。
この状態で確認はできないがおそらく垣根の背後にも同じようなものが設置されているのだろうと安易に想像がついた。
頭痛の原因はこれなのか、それとも何か投与されたと言う薬品の方か。まだ決まったわけではないが。
まず、普段通りには能力を使えない筈だと言うことを。
垣根は体の不調を通して体感していた。

「ちゃんとムショでも使われてるってイイヤツ借してもらってんだから。ヘーキっしょ」

「俺らはレベル低いから何ともねえよな。逆に」


「よおしじゃあカキネクン景気づけにカメラに向かって自己紹介オナシャース!」

バカにしたように騒ぐ男を垣根はただ睨みつけた。
いや。それしか出来ない。
体はまるで言うことを利かなかった。
立ち上がり、椅子を蹴り倒すことはもちろん。
目の前に並ぶクソ共の顔に唾を吐きかけることすら今は難しいだろう。


「はいムリー! ですよねえってことで今日はお薬バッチなんで寂しく撮影スタートでえす」

「平気かー? 前効きすぎて呼吸止まった餓鬼いたろー」

「男と女は体格も効きも違うのだと。時間差でまた打つ。レベルの高い能力者には慎重になるべきかと……
それにあの子は弛緩剤の舌根沈下じゃなく別の薬が体質的に……」

「おーいDここカットで! ハッチャン泣かしてんじゃん? ヘイカメラ、こっちパース」

突然顔を背けた仲間からカメラを受け取ると、次の撮影係はハイテンションで寄ってきた。
あちこち遠慮なくレンズを向けてくる。

「なんだーまた思い出し泣きー? 商品ダメにしたり出荷の度に泣いてたら将来卒業式とか来た日にゃ泣き死ぬんじゃねー?」

「どうせこう言う奴が社会に出ると真面目ないい先生とか言われるようになんだろ? 逆に。世の中怖えよな。
はっちゃんの日誌キモいぜ、ガキ一人ひとり出荷まで毎日つけてんの知ってっか」

「外野がウルセーナー、ゴメンナーカキネクン。オッケー見えてる? 聞こえてっかな? うん、目はさめてんね。今からオニーサン達と遊ぼおな?」

駄弁る仲間をよそにカメラと、ペンライトを持った男は垣根の両目を確かめていた。
垣根の顎を掴むと顔を上に、横に向かせ不満げな表情を至近距離でレンズにおさめる。
そして背中に手を回すと垣根の腕を縛りつけていたものをナイフで切った。

「ハーイ。じゃあなにか一言ヨロシク」

「は、ぁ……かはッ。くゥ、お……」

何か。
このタイミングなら。聞くに耐えないほどひどい言葉が口をついておかしくない筈だ。
だと言うのに。出てきたのは言葉にならない音だった。
まるで呂律が回っていない。
息をするにも苦しげな垣根の喉は、か細い声しか出せていなかった。


椅子に座らされたままだらんと手足を投げ出して。
顔をしかめるばかりの垣根に目の前の男はにやにや笑っていた。

「ああムリムリ。喋ると疲れるよ。さっき別のお薬も打ったからアタマもぼんやりすんだろ。手え動く? ムリ? 
そうだよなあっちこっちダリィよなあ。やっべぇっしょ。ヘイヘイミナサマ主役は準備オッケーよ?」

重たそうに頭を垂れる垣根を囲んで男達は立っていた。
そのうち一人が、うんざりした顔で口を開いた。

「こいつこのままヤっちゃっていいんかー? ちゃんと眠剤抜けてんのかよ。今までで一番活きがねーぞ。ぶっかけっかー?」

隣の男に水の入ったペットボトルを振って見せた。
それに、その反対側にいた眼鏡が首を振る。

「室内を無駄に汚すなと。暴れない位が好都合だと。それにこんなでも、自分の置かれた状況を理解するくらいの頭はある筈だと。
そうでないとこの先の作業の意味がなくなるかと」

「まあカキネクンもわかると思うけど。イケナイバイトとかしてっとイラネー敵が出来んじゃん? 
そんなオトモダチからやっべぇオシオキしてやってって話。ザンネンでしたあ」

「目を付けられた相手が悪かったって話だと。ここまで話よこしたのは学園都市の上層ってことらしいと」

「あー? オレどっかの研究所って聞いたぞー。サンプルをおとなしくしとけってんじゃねーのー? おかげでこっちもいい迷惑だよなー。
男回されてもよーたのしくねーよ」

「アホか。これで幾らになると思ってんだよ。前金だけでもガキさばくのの倍以上だぞ。カメラ回すだけで成功報酬いくらになんのか。
後から女なんか遊び放題だろ。感謝しねえと逆に。破格の超能力者様々ってよ」

露骨に報酬の話をし始めたところで、カメラのレンズを見た眼鏡が呆れた様に頭を振った。

「お前ら……全部撮ってるんだと。少しは口をつつしめと」

「イイじゃん。リアルなドキュメンタリーつうことで。お金でなんでもするオレらみたいなんでも、イイってオシゴトくるんだしさあ」

フレームを押さえてため息をつく眼鏡。
それに、
「今さらっしょ」とへらへらしながらカメラをもったままの男は垣根の前に屈んだ。

「今度のはズイブンおっきいコだけど。いつもの出荷用みたく色々仕込んどいたらボーナスでっかなあ」

「オイオイ逆だろ。余計なことはすんなって話。プライドたっかい能力者様をひでえ目に合わせんのが今回のコンセプトだろ。
こいつ楽しませてどうすんだ逆に」

「そこまで珍しくないかと。後々自分で手を掛けたいってやつは多いものだと」


仲間うちで楽しげに、ゲスさのにじむおしゃべりをしていたかと思うと。
そのうち一人が垣根を振り返った。

「なー。まだ何されんのかわからねーって面してねーか。誰かこいつにちゃんと教えてやればー?」

「ああ、さっさとボコらねえから不安か? 今日はそっちじゃないらしいぜ。よかったな、ってそうでもねえのか。逆に」

意味ありげに、背の高い男が笑って見せた。
頭痛をこらえ、彼らの会話からなんとかつなぎ合わせておおよその状況は把握できても。
まるで事態が飲み込めていない垣根は眉を寄せる。
どこかの大馬鹿に金を詰まれたこの馬鹿共は。
厳重に能力者を拘束しただけで、まだ何もしていない。
一方的な制裁ショーでも始めるのかと言うのも違うらしい。
人質や何らかの材料として取引でもするつもりなのか。
こんな所に閉じ込める目的が見えてこなかった。

「今からレベル5のカキネクンを、オニーサン達でブチ犯しちゃいまあす。ちゃあんと動画も撮るよ? 
まあ今日は四人いるんで、満足してもらえっかなあと思いまあす。つうことで? ヨロシク」

「やっぱ頭数にはいってんかよー。今から帰っていいかー俺」

「ここで帰ると損だぞ。逆に。ほら、立たせっからそっち持て」

「お、流石に動揺しているようだと。そこまでは想定していなかったのかと」

カメラを受け取りにきた眼鏡は薄く笑うと。
頭がおかしいとしか思えない、連中の宣言に強ばる垣根の顔を見上げていた。

「やっべぇウケる。イイねえカキネクンさあモテるっしょ? イケメンだもんな。ま、男相手はさすがにはじめてっしょ」

「げー。あってもキモいだろこいつ俺より背あるぞー? つか重いー」

「なんのために作業台があんだよ」





垣根は無理やり金属製の台の上に担ぎ上げられた。
さらに両腕には手錠がかけられた。
吊り下げるのには短く、動きを封じるには少し長い鎖を引っ張られて垣根は上体ごと顔を上げさせられる。
腕は相変わらず動きもしないので、縛られても意味はない。
彼を拘束しておくつもりのものではないらしい。

「チョーエリートのレベル5が、オレらみたいなのにこんなんされちゃってんのってどんな気分? 
ねえねえどんな気分? やっべ、カキネクン目チョーコエーんだけど」

怖い怖いと言いながら男の顔は笑っていた。
まるで有名な落語の一席の、その落ちのようだった。
これからはじめると告げられたのはクスリとも出来そうにない、ばかばかしいオハナシだが。

「こおゆう瞬間はオレレベル低くてよかったって思うわ。レベル高いヤツいじめんのってタマンネーじゃん」

「お。やっぱ超能力者って金もらってんだな。この服ブランドもんだろ? けど『開発』されまくってんのに、そっちは未開発かよ。逆に」

「流石に超能力者ともなると管理も厳しいのかと。この顔でこの歳まで手付かずかとうらやましい限りだと」

「いやー。ガキをいきなり喰っちまう先公もそーそーいねーだろ。そんで、てめぇが教師になるとかレア過ぎ。そーゆーのなんつーんだっけ?」

くだらない話に花を咲かせながら、男たちは分担して作業に取りかかっていた。
それを黙って聞かされる垣根は解剖実験前のラットのように台の上に置かれていた。
震える程度も、唇は動かない。
呟くことすら、ましてあらん限りの力で叫ぶことも。
出来ないことをその事実を眼前に突きつけられた垣根帝督はただ静かに喉を引きつらせた。

「なんだっけほら、歴史は繰り返すって言うだろ」

「あ。オレわかったかも。ズバリ負の連鎖じゃね? FAで。どお?」

「よくできました、かと。後で丸をつけてやると」

台に上げる時脱がせた上着を広げると男がポケットの中を探りはじめた。




「あったあった。元から電源切れてりゃチェッカーで見つからねえはずだよ。でもこれなら電波も拾われてねえだろ。
もしストーカーがいても盗聴の心配も無し。お互い良かったな。逆に」

他の奴にこんな状況は知られたくないだろう、と告げると。
男は取り出した携帯電話を床に捨てて踏み潰した。
垣根は自分で電源を切った覚えはなかったのだが、今更意味のない疑問だろう。
垣根の居場所を知るための手段も、外部との連絡もこれでどちらも望めなくなった。

「ここはさあ公平にジャンケンで。勝ったヤツが超高額な一番槍の権利と、栄えあるレベル5のバックヴァージンゲットだぜえ!! っつうことで! ハーイミナサマ下唇噛んで復唱」

MC気取りでまくしたてる男だが。
その場の誰も返事をしなかった。

部屋の中でじゃんけんの掛け声が間抜けに響く。
それだけなら。
子どもが、友達同士仲良くおもちゃで遊ぶ前のような。無邪気さと興奮のある声だった。
だがこれから始まるのはそんなほほえましいものではない。
かつての子どもは学園都市でいびつに育ってしまったらしい。
その今日の玩具は、超能力者だ。

「はー。まじかよー、俺おまえらと違って男は好きじゃねーよー。譲ってやっから金くんねー?」

「別にオレらもホモじゃねえってば。ファッションホモってかビジネスホモ? 金貰えんならオスガキもいっかなあくらいよ?」

「くれぐれも普段の仕事とは違うことを忘れるなと。撮影を終えたら可能な限り完品で渡す条件だと。派手に傷などつけるな、と」

お遊戯の時間と呼ぶのも悪趣味な。
観客不在の見世物が人知れず始まろうとしていた。


垣根の両足は金属製の台の上でおさえつけられていた。
腰を高く上げた屈辱的な姿勢を強いられながら、垣根には抵抗することが出来ない。
硬い台の上に押し当てられた頬は自らの汗と唾液で濡れていた。
開いたままの口で呻くように息をするのがやっとだ。
目の前に放り出された指先にすらろくな力はこもらない。
苦痛に足掻くこともかなわない彼に許されたのは、首から上をわずかに動かす程度。
それでも。
超能力者のプライドは折れてはいなかった。
逃げ、あるいは祈り。
現実から目を背けるようなことも、苦痛に怯え固くまぶたを閉じることも垣根はしなかった。
苦悶と憎しみのこもった両目にはまだ力がある。

後ろから突かれ揺さぶられる度にジャラジャラと鎖のすれる重い音が響いていた。
そこに、濡れた肉を叩く音と荒い息が混じる。

「やっぱラクなのはイイけどつまんねえじゃん。抵抗ナシ文句ナシ悲鳴もナシってオマエらおもろい?」

ひとり騒がしい男はそんな様子をみながら。
頭をかいてぐちっていた。
何を言ってるんだこいつ、と言いたげな仲間の視線に男は頬を膨らめる。

「オレはくやビクがすきなんだよお。でもこれカンペキマグロじゃん。冷凍モノカチンコチンじゃん。カントクう、もおチョイなんとかなんないんですかあ」

「あのなあ手抜いてやって抵抗されたらどうすんだ。逆に。それよりあいつ顔色ひどいけどいいのかよ。吐くんじゃねえの」

背中に張り付いたシャツが男の手で後ろに引かれる。
脂汗をかきながら垣根はゆるんだ口を懸命に閉じようとしていた。
しかし、短い呻きがその隙間から漏れる。
乱暴に、無様に。醜態をさらし続けるその姿を映していたカメラが一歩、二歩と被写体に近寄っていった。


「だから薬が効いているのは四肢中心の筋肉の動きだと。痛みや感覚はそのままだと。この馬鹿共何度言ったら覚えるのかと。
おいおいお前も、喉だけは詰まらせんなと。今回は、洒落にならねえんだと」

「なに? また腹パン? げえ。オニチクな」

撮影係に悪態をつかれ、仲間に茶化された男はうっとうしそうに息をはいた。
最初から大した気もなさそうな態度だったが。
その間もゆるい抽送は続いている。

「おめーなー……ッみてたろーが。まだ、してねーよ」

「ま、こんなんブチこまれりゃ吐きたくもなるわ。麻酔でケツも弛んでんならよかったんじゃね逆に。俺らん中でこのケチのが一番凶悪だろ」

「えー、これで緩いんかよマジかよー。けっこー……締まるぞー?」

「お前遅いんだから口じゃなく腰動かせって。後がつかえんだろ」

「変わり映えのない画面は面白みに欠けると。お前のケツを拝んで誰が得すんだと」

「いやー顔見なけりゃけっこーイケる。男でもこっちの穴は変わんねえなー」

「お、何だよカキネクンイイ顔してんよ? な、ちょいちょい。こっち撮って撮って。やっべぇってオマエにらみコロしそおな目してるって。
んん? どしたあ、ムカツクー? ソウデスネーよかったなあ」

腰を打ちつける仲間の横を通り、台の前で男はしゃがんだ。
垣根と目線をあわせながらガキ相手の馬鹿にしたような口をきいている。
いや。
そいつは道端の野良猫にでも向けるように、俺は自分より目下のモノをかわいがっています、なんて言いそうな顔をしていた。

「こいつ幸せだよなあ。異能力以上でいいなら学園都市の能力者の半分くらいストライクゾーン入りなんじゃねえか」

「ただし好き放題出来る状況に限る、かと。流石にこういう男はどうなのだと」

「レベル5で遊んでイイとかウソみてえ。やっべぇなあ」

うきうきとした呟きに男達は顔を見合わせた。
駄目だこいつ、と馬鹿に心底呆れた目をしていた。
早く何とかしないと、いけなかったのかもしれないが。すでに手遅れだろう。



「しんどかったねえオツカレ。アーンてしてみ? やっべぇのあんだよねえ」

「おいおい良いんかよー何食わすんだー?」

「オマエのでこんな苦しんでんだからカワイソじゃん。これくらいならヘーキヘーキちょっと元気になるだけっしょ。
ついでにさあ……ちょっとはキョーリョクしてもらえっかもよ?」

そう言いながら男はテーブルからプラスチックケースを取った。
中に入っていた薬の袋を次々破って中身を混ぜると。
垣根の口を無理やり押し開けて何色も混ざってカラフルになった粉末を落とした。

「ざ、けっ……ん?」

むせながらなんとか吐き出そうとしていた垣根は眉を寄せたかと思うと。
口の中を舌で探ってから。
何か考える様に目を細めた。

「ナー、ダイジョブっしょ? ラムネみたいっしょ。これ、元はガキ用の薬。『能力開発』の奴。
ハッチャンはキョーシになっから、色々ナイショでパクってきてくれんの。つかこんなん誰でもやってんじゃん?」

そう言って男は、別のケースからタブレット錠を粗く砕いたような薬の粒を手のひらに広げて見せた。
そのまま飴の様に自分の口に放り込む。

「いやそれ使い方おかしーだろ。今これにやったの、飲むやつじゃなく口で溶かすやつだろ? 一口で相当いってんだろ」

「ウッソォガキ用シロップのバカ飲みとかミンナしねぇの? 気分アガってタノシーよ?」

「自分で試すことではないかと。本来は小児相手の高吸収経口薬だと。それでも極少量で足りるもんだと」

経口摂取する薬剤の多くは、胃液での変質を避ける必要があるため小腸で成分が吸収されるよう加工される。
だがそれでは効果が出るのはどうしても飲んでから時間が経ってからになってしまう。
それを早める為には摂取法や薬の形態を変えなくてはいけない。
多層コーティングを施して一錠あたりの成分の吸収を調整し時間差で効き目を持続させたり。
他にも口の中、鼻、目など各所の粘膜から素早く吸収させることも可能だ。
学園都市では、対象である小さな子どもが自分でも簡単に扱えるように工夫されているものが幾つかあった。
服用からいちいち教師がついて回って、更に必要なタイミングで薬剤の効果がしっかり現れているかひとり一人調べていたら人手が幾らあっても足りなくなる。
そして。
多くのよく効く薬が、裏を返せば有効な毒物でもあるように。
本来の用途から外れたことに使用されるケースもあり得る。

「ハイ先生、オレいっつも鼻からいっぱい吸っちゃうけどダイジョブですかあ」

「小学校からやり直せるもんなら指導してやってもいいかと。お前頭は悪いが顔は良いのだと」

「わあ、先生のロリ! ペド! メガネえ!」

「眼鏡って悪口なんかー?」


「あ」

騒がしいおしゃべりが途切れたのは唐突だった。
べえ、っと舌を突き出して垣根が台の上で口を開けていた。
ヒナが親鳥にエサをねだるようにして、空になった口の中を晒した。

「ホーラ、カキネクン気に入ったってよ? もおチョイいっとく? 他にもタノシくなんのあっけどどうする?」

取り出した薬の小さな包みをいくつかつまんで男はにやにや笑う。
ピンクの錠剤、ライトグリーンの粉末、そのほかどれもほんの少しずつしか入っていない。
そんないくつもの薬が垣根の目の前に並んだ。

「……こ、ちの」

かすれきった声の垣根は何とか目を動かして視線で選ぶ薬を決めていた。

「イイネ! 欲しがるねえカキネクン。デモサー。こんなんでもお薬ダメって言うキビシーのがいるから、オネガイしてみよっかあ?」

眼鏡の肩をつつきながら男がはやしたてる。
それを聞いた垣根は。
鈍った筋肉を動かしてぎこちなく笑みを浮かべた。
ほんの一口、と言っても本来なら成人(一五歳以上)が服用しても多すぎる量の薬を放り込まれて。
態度を変えた超能力者を男たちは下卑た目で眺めていた。

「お。笑ったぞ。けなげな、逆に」

「ウケるー超能力者がこびてんぞー。んなしょぼい薬にー」

「ハーイ、カキネクンの貴重なスマイルいただきましたあっ。カメラサン下から、ナメてナメて。アップも撮ったげて」

「言われるまでもねえんだと」



「じゃあハーイ、リクエストのお薬ここでえす。このノリでジョーズにペロっと舐めてもらおっかなあ? 
ああ? これくらいさあ、出来るよなあオイ?」

袋をまとめて破ると男は垣根の顔の横に足をかけた。
革靴の上にそのまま薬をぶちまけて、低い声でハイエナのように笑う。

「んふ……は、ぁ」

べちゃべちゃと口の周りを汚しながら犬の様に舌を這わせる超能力者の姿に。
男たちは手を叩いた。
目論見どおり、順調に。
彼らの「撮影」が進んでいるのはもちろん。
笑えるほど哀れなオモチャの状況を楽しんでいるようだった。

「超能力者が靴舐めてっぞー。爆笑もん。写真撮っていいかー? 撮影駄目? ケっチくせー」

「あああベタベタじゃんよ。全然ダメじゃんカキネクーン靴フェラもおチョイガンバって。ちゃんとキレーにしてなあ」

まともに顎を開くことも難しい状態で口元に靴の先を押しつけられる。
笑い声の響く中で垣根はひとり顔をしかめていた。

「まだ一人目だが、そろそろ注射の時間だと。お前ら遊んでばかりで無駄に時間を使うなと」

「や、だ……ね」

にらむ様に目を細めると。
垣根はいーっと歯を剥いてから舌を出した。
明らかに馬鹿にした態度を取られると、眼鏡は使い捨て注射器のパッケージを乱暴に破り捨てる。
その横で、薬のパケットがまるで子どもをあやすようにつまんで振られた。

「今度はイヤイヤ入りましたあ。まあデモ注射はしとこうな? お注射したら、こっちもあげるから」

「な…ぁ、やく…ほし……?」

そう聞いて、垣根は不快そうな表情をたちまち緩めてみせた。
それを見ていた男が爆笑して、腹を抱えた。

「おーい催促されてんぞーどっちもさっさとやればー?」



「くッ、ぁ……」

垣根は天井を眺めていた。
真っ黒な目はドロドロに濁った悪意を煮詰めたように沈んだ色をしている。
今度は仰向けに寝かされ、上半身は腕ごとしっかりと固定されていた。
服を脱がされ下半身は膝を曲げた窮屈な格好でキツく縛られていた。
流れ落ちる汗に濡れた喉がひゅう、と鳴った。

「ガンバってたけどやっぱイくもんだなあ。あんだけされたらしゃあねえっしょ。なあなあ、さっきのキョーアクなオモチャ。新作?」

「いーや、買ったやつ。最高クラスの静音仕様とか馬鹿にしてんのか。逆に。音で煽って耳から犯してナンボじゃんよこう言うの。
即ポチ衝動買いはダメな。音がしない以外はいい感じなんだけど一度バラすっきゃないわ」

男は残念そうに言うと、色とりどりの悪質なジョークグッズが幾つも並んだ中から一つ選んで手に取った。
根元に並んだボタンを一つ押すと。
垣根の中をグチャグチャに掻き回していたものが動き出した。
内蔵されたLEDで色を変えながらケミカルで歪な塊がまるで深海の生き物のように蠢いている。
派手な動きに反して小さな、それも耳をすませても聞こえるかどうかの音を立てて、と言うのが何だか奇妙だった。

「うーい。おつかれ、俺そんなつかれてねえけどな。逆に」

カチャカチャ音を立ててズボンを上げると、男は垣根の顔をつかんだ。
まるでチップでもやるように口に薬をざらざら放り込む。
そして、垣根が少し咳き込むのを見て。
テーブルに置かれたボトルの水を口元、ではなく顔目掛けて無造作に零した。

「口の中パッサパサ! パッサパサだよカキネクン」

「おめーはまたなつかしーのいってんじゃねーよ!」

ぎゃはは、と耳障りな笑い声が重なった。


「……く、くくっ……あは」

むせながら薬を舐めとった垣根は笑っていた。
汗と水分でくしゃくしゃになった髪を顔からはらいのけることも出来ないまま、口をゆがめてただ笑っていた。
やけを起こしたのか。
幾つも流し込まれてすっかりクスリがキマってしまったのか。
ギラついた目を天井に向けて彼は楽しそうに笑っていた。

「おっとお。カキネクン楽しくなってきたんじゃね? じゃあ次はオニーサンと遊んでくれたらお薬な。上手に出来たら追加したげっから」

ガチャガチャと、あちこち縛られた垣根の拘束を解きながら。
次の番が回ってきた男はケタケタ笑っていた。

「毎度ゲージュツ的な縛りだけどこれやりすぎじゃね? こんなんオーケーなの?」

「いや、ローテじゃなかったらもうちょい置いとくんだけどな」

「げー。もーちょいが小一時間だかんなー。こいつも運が良かったなー?」

「お? 逆にい?」

何本も締められた細い革ベルトを外されると、肌の上には痛々しい赤い跡がくっきりと残っていた。
別の薬剤のパケットを開けると男は垣根の前にかざして容器を振って見せる。
垣根が首を振ると、うんうん頷きながらそれを全て自分で使ってしまった。

「これもイイんだけどなあ。メッチャキラキラすんの。カキネクンは、シャキッとする方が好みかなあ?」

「だから余り調子に乗るなと。元の商品価値を損なうと報酬に響くと」

「キツイのキマるとヤバいだろうけどあれくらいならいんじゃね。今のところ問題もねえしさっさと片付けばいつもより楽な気してきたわ。逆に」

男は気の抜けた様に返すとだるそうにあくびをした。
一人、二人と用事を終えた男たちは順調な仕事の進み具合に何の疑問も抱いていないようだった。


「やあったのしかった! 久しぶりにガンバっちゃったんだけど。ハメはずしてw」

「なーにしてんだおめーは。それ好きなー」

「お前人のこと言えねえぞ。逆に。つか、痕つけすぎだろ。どんだけだ」

「カキネクンあっつくてオイシーんだって。みてみホラーここも真っ赤じゃん。心臓バックバクだし」

「だから、それは最後に一人でやれといつも言ってんだと。後どうしろと」

一斉に非難されて茶髪の男は唇を尖らせた。
子どもの様にむくれると台のそばでしゃがみ込む。
すぐ横の垣根の顔は、あちこち汚された上にものすごく不愉快そうだった。
さっき男が喜んでいた、視線だけで相手を殺しそうな目をしていた。

「エー。だってオレら生NGじゃん。イイだろこれくらいさ。ダイジョブダイジョブ、そんなに上手くかかんなかったしイケメン白も似合うからw」

「それはあくまで撮影用の預かり物だと。掃除。清掃。何より俺が不快だと」

カツカツと苛立った様子で床が叩かれる。
続いて。
パカーン、と間抜けな音を立てて。
投げつけられた除菌ティッシュのケースが男の頭に当たった。

「なんだよ。こまけえことはイイじゃんなあ。ま、よくできましたっつうことで。じゃあカキネクンやっべぇおねだり! しってくださあい!」

文句を言いながらもとりあえず顔は拭き終えると。
男はうれしそうに垣根に声をかけた。
垣根は少しうんざりした様に口を開いた。

「…ッさと、よこせ、よぉ……な?」

これでいいか、と言いたげな目を前に。
要求した男はブンブン音がしそうな勢いで首を振った。

「ブー。カワイーのがイイでえす。カワイーおねだりガンバってえカキネクンのお、チョットイイトコみてみたいーって。な?」

ぐぐぐ、と垣根の顔が更に険しくなる。
眉間にしわを寄せる垣根の前で、男は両手でバツを作ってみせた。
どこから出したのか、紙に「がんばれ❤がんばれ❤」と書いて大きく振った。


「ちょ、お…い?」

「もおチョイガンバってみよ! スゲー惜しかった。あっちのカメラに向かってワンモア!」

「クスリぃちょー、だ…ぃ?」

垣根は何とか搾り出すように口にした。
あっちゃあ、と男は顔を覆う。
馬鹿馬鹿しいほど大袈裟に残念そうに首を振ったが。
その顔は相変わらず笑っている。

「オニーサン的にはそこ『ら』がよかったけどオーケーガンバりました! ハーイお口あけて。
お薬ふたっつー。イイコちゃんにはさーらーに、もひとつオマケしたげちゃうぜえ」

「あー……っ、ケホ、ゴホッ」

「多いかんナー。しゃあないネー」

男は悪びれた風もなく、ただにやにや見ているだけだ。
息を詰まらせそうになった垣根は横を向いた。
もごもごと口の中で飴を転がすようにざらついた薬品を舌で混ぜていく。
目を閉じると、薬が回るまで荒い呼吸を繰り返した。

「……みず」

「んん? どしたん」

「たりねぇ、よ……ソ」

「お水かあ。ちゃんとお薬飲めたあ? 薄まると効かねえよ。んん、いいけどストローねえし、マウストゥマーウスでオーケーかなあ?」

「……チッ、らねぇ」

不快極まりない提案に、垣根は今度こそ。
はっきりと舌打ちした。
反抗的な態度をここにきてとられたが。
ペットボトルを持ち上げた男は見せ付けるようにそれに口をつけた。
うまそうに喉を鳴らしながら飲んでいた男は、不意に手を下ろして。
垣根の顎を持ち上げて、無理やり割りいるようにして口をふさいだ。

「ぷは、ァ……っげほ……ェ」

「欲しいって言ったのに吐いちゃダメっしょ。もったいねえの。なんだよカキネクーンまだツンツンしてんの? 
元気あんねえ。やっべぇ、コイツすっげぇおもしれえわ」

「あんだけ汗かかして水無しってのも有りじゃねえ? 回り早くて。逆に」

「鬼かよー粘膜死ぬわー。あーウケる腹いてー」




最後の一人は着替えながら途中で眼鏡をかけると後ろを振り向いた。

「ちゃんと撮れてたんだろうな? と。お前らは今ひとつ当てにならねえんだと」

「ダイジョブダイジョブ、今日もイイケツしてましたあ」

「……やる気あんのかとお前」

「つぎ、なにした、くれ……だ?」

何度目かの要求を垣根は静かに口にした。
それまでは機嫌よく応じていたのに、そのセリフを聞いた男の顔が途端に不満そうになった。
垣根はその変化をじっと見据えていた。

「お薬かよお。なんだよサビシーなあやっぱミンナそれ目当てになんだよなあ。なあなあもう一周しよおぜ? まだ尺ダイジョブっしょ?」

「別にいいけどお前はほいほいタマ出してアメをヤリすぎなんだよ。ムチはどうした。逆に。すぐそれでガキを駄目にすんだろ」

「『置き去り』を何人潰したかまさか忘れたとは言わないかと」

「なんだオマエら何イキナリdisってんの。 イイじゃんカキネクンはスッカリイイコだし。もし、オレらで『躾』しろって話がきたらサービスしたげよおぜ」

ね、と。
女子が大げさな仲良しアピールでもするように。
男は転がったままの垣根の肩を抱こうとした。
次の瞬間だった。

「ばっかじゃ、ねえ、の」

ジャリン、と鎖が鳴った。
持ち上がるはずのない垣根の腕が。
男の胸ぐらをがっちりとつかんでいた。

「は?」

次の瞬間。
ドサァ! と男の体が勢いよく後ろに飛んだ。
頭が床に落ちる前に宙で止まる。
仰向けの姿勢のまま、倒れることも出来ない男の腹や肩、 背中を抜けて。
白いものが突き刺さっていた。
だが現れた白い凶器は間にあった垣根の腕も貫いていた。
翼の形も取らないそれは、ただ適当に線を引いてギザギザに囲んだ部分を切り取っただけの様に見えた。
なんとも不格好な白い塊だった。
普段の垣根なら『未元物質』なら、そんな無様な姿は見せないだろう。
垣根の腕を巻き込んでいた『未元物質』がばらばらに崩れ落ちると。
うざったそうに首を振って垣根は起き上がった。
ゆっくりとふらつきながら立ち上がる。
両腕を軽く振ると、ガシャン! と床に手錠が落ちた。


「……っ、げほ。あー、痛ってえな。余計なことさせるんじゃねえっつうの。あーあ、見ろよ。どうしてくれんだ? 貴重な俺のDNAマップが」

ぼたぼたと床に落ちる自分の血液に舌打つ姿は、ついさっきまでされるまま転がっていたのが嘘のような豹変ぶりだった。
咳き込み気味ではあるが声もなんとか通っていた。
垣根は重そうに頭を振ると。
近くに落ちた薬を二包み分鼻に当てて吸い込んでから、新しいミネラルウォーターのボトルを手に取った。
一息で半分空けると残りを頭から被る。

「お、おい……だってまだ薬は、装置も」

「何やってんだと! こいつ何とかしねえと」

「なんでもいいだろ早くしろよ!!」

口ぐちにわめきはじめた男達を前にした垣根は。
小さく吹き出すと。
次の瞬間には声を上げて笑い出した。
肩が揺れる度に、濡れた髪からぽたぽた水が落ちる。

「おいおい、本気で言ってんのか? まだ間に合うって? 『もう遅い』の間違いじゃなくてか」

縦に大きく裂けた傷口から。
血が伝ったままの右腕を振ると。
垣根は目にたまった涙を汚れていない指ではらった。
おかし過ぎて我慢が出来なくなったらしい。


「テメェらも甘いんだよ」

笑い終えた垣根の声はゾッとするほど冷え切っていた。
男達は気圧されたのか押し黙る。
垣根は手のひらで顔を拭うと前髪をうざったそうにかきあげた。

「たかがこの程度でこの俺が。『未元物質』がどうにか出来るなんざ、本気で考えてたのか。
随分と可哀想な頭してやがんな。やべえ、哀れ過ぎてまた笑えてくんだけど」

喉を鳴らすような小さな笑い声に続いてガッ、ゴシャア! と騒音が響いた。
部屋の中に置かれていた対能力者用の機材は周囲の物を巻き込んで、全て潰れていた。
被害はそれだけに留まらなかった。
離れた床や壁も能力の影響かあちこち破壊されている。
混乱した室内の空気は先ほどまでとまるで違っていた。


狩られるはずの獲物は息を潜めて反撃のチャンスを待っていたのだ。
たとえばの話だが。
頭のいいキツネを狩るにはそれより賢く対処しなくてはいけない。
狩場に慣れた猟犬が獲物に出しぬかれるなんて珍しくはないのだから。
それも、相手がキツネならと言う話で。
牙を剥いた猛獣相手に少々の訓練を積んだ犬ごときが太刀打ち出来るわけもない。

「暴走なんざビビって能力者やってられっか。本気で無力化させるつもりなら、意識そのものを奪っとくんだったな。
無様っぷりを思い知らせようなんざ、下らねー理由で俺を起こしておいたテメェらが悪い。弁明出来るもんならしてみやがれ、コラ」

場の支配権はすっかり変わっていた。
強者は弱者に、弱者は強者に。
その序列がかわっていく。
『未元物質』の出現がそれをはっきりと表していた。

「思考が鈍ってようが、たとえコンディションが最悪だろうが。演算が出来てりゃ能力そのものは使えるんだけど……
ああ。テメェらにはわかんねーか。クソ以下のゴミムシだったなそう言や」

それは汚されて貶められ、散々な醜態を今のいままで晒した者の態度ではなかった。
つまらない。道端のゴミを眺めるような目をしていた。
垣根は床に落とされていた自分の服を拾いあげた。
それらを順に身につける間、喉を慣らすように彼はゆっくりと語り続ける。


「まぁ、美味い飴も貰えたしな。あんなのはメシがわりみてえに散々食わされたけど。昔開発官に言われなかったか? 薬の扱いには注意しろって。
特にこれは血流と代謝の促進、ついでに感覚がえらく冴えちまうのが服用時に目立つ作用だ。
リスクとベネフィットを考えねえと、他の薬の邪魔をしちまう薬品があるって話も少なくねえ。
お勉強が足りてねーな」

ゆっくりとした言葉は噛んで含めるよう。
だが、まるで教える気のない台詞だった。
馬鹿を相手にする気はないのか。
勝手気ままに呟く口調は楽しげで、同時に吐き捨てるようでもあった。


シャツの襟を直しながら語っていた垣根は。
黙って突っ立っている連中を鼻で笑った。
男たちは動くことも出来なかった。
さっきブチのめされた仲間の一人は中途半端なブリッジみたいな姿勢のまま、悲鳴を上げて。
まだ。
確かに動いていた。
白い凶器に貫かれたグロテスクなストレッチを並んで一緒にしたがる奴はここにはいないらしい。

「ほら、お仲間がついてこれてねーぞ。なんでテメェらはしくじったんでしょうか? 答えてみろよ。センセー」

「……あの馬鹿が、余計な真似をしたからかと。脳の血流が促進されれば働きは活性化される。鈍らせていた思考力が戻るだけでなく、
四肢の麻痺までこんなに早く抜けるとは……ちくしょうお前、俺たちを、騙していただと」

「おいおい、ちょっとそっちのレベルに合わせてやっただけで随分な言われようだな。それに痛みってのは人間の体に必要な信号だぜ? 
喜べよ。テメェらのお気遣いは最初っから充分過ぎるほど受け取らせてもらった、ってな」

と、そこで垣根は一度言葉を切ると、

「まぁ、一つ賢くなったろ? 超能力者を……あんまり甘くみるんじゃねえ」

堂々と言い放って最後にジャケットを手に取った。
軽くはたいてから上着に袖を通し他の着衣の乱れも確認する。
多少の汚れに目をつぶれば、見た目はいつも通りの彼の姿がそこにあった。
体は長い時間痛めつけられ、おまけに能力で傷ついている。
それでも。垣根は自らの力でそこに立っていた。

確かめる様に腕を、指を曲げ伸ばしながら垣根は首を鳴らした。
だるそうに一つ息をはくと。
その両手をポケットにさし入れた。

「大分……マシだな。悪くねえ、いい気分だぜ? 久しぶりに――心底ムカついてるよ。この俺がさぁ」

引き裂くような笑みと共に音もなく背中に現れたのは六枚の翼。
能力者としての圧倒的な力の象徴だった。
散々垣根を馬鹿にしていた男達は。
最早。
ただの一人も口を開くことが出来ずにいた。
目を反らすことも許されていない様にただその白い翼を見つめていた。


ビリビリとしたプレッシャーが室内に満ちる。
その沈黙を破ったのは間抜けな電子音だった。
散らばった雑多な物に紛れて床に転がっていた携帯電話からだ。
垣根のものはとっくに踏み砕かれていたから、不愉快な三下連中のうちいずれかの持ち物だろうが。
垣根はうるさく呼び出し音を鳴らすそれを当たり前の様に拾いあげた。

『随分長い間音信不通だったが、問題はなさそうだな』

通話中のよその回線に勝手に割り込んでくる、なんてことも平気でやるくらいだ。
暗部組織の『制御役』を自称する正体不明のエージェントが、その辺の電子機器を乗っ取っても今更垣根は驚かない。
しかし彼は怪訝そうに眉をひそめた。
『未元物質』まで披露した反撃のタイミングで、まるで水を差されたように感じたのか。

「空気は読めねえ癖に相変わらず、ぞっとする程察しのいいヤツだなお前。まぁ、いい。これだけ時間があったんだ、勿論裏は取れてんだろうな」

垣根は馬鹿にしたように、挑む様に口にした。
「何があったのか」も「どうしたのか」も相手には聞かれなかった。
「垣根の無事」も、わかっていなければそもそもここに電話を掛けてくる意味がない。
それを踏まえて垣根は問い返した。

この状況を「何故」、「どうして知っているのか」は問題ではない。
余計な質問はする気もなかった。

だから結論だけを求める。
それが相手には可能だと彼は理解しているからだ。
この相手が、暗部の任務でも、それ以外のケースでも。
必要に応じて複雑に入り組み刻々と変わる過程を把握した上で。
その先を行くようでなくては。
甘んじて、下された指令を仰ぐなんて真似を今まで垣根は許さなかっただろう。
そこにあるのは信用でも信頼でもない。
暗部で仕事をこなすうち積み重なった事実に基づいた関係性だった。


『そいつらは『人形製造(バックオーダー)』。『置き去り』中心の人身売買をしていた組織だ。
顧客や資金の出所も、今ある『素材』の保管場所も押さえてある。
今日の話を持ちかけたやつの方は……時間の問題だ。
それでお姫様、いつお迎えにあがりましょうか? 馬車の支度は済んでおりますよ』

電話の『制御役』は淡々とした口調から一転して明るいトーンで答えた。
メルヘンチックな言い回しが余計だが。
垣根に対する馬鹿にした態度はむしろいつも通りだ。
超能力者の略取なんて学園都市ではいい笑い話だ。
それだけでなく結果として、下衆な取引にも使えそうなネタを今回垣根は不本意ながら提供してしまった。
暗部の尾をどこまでとらえられるかは別として。
もしこいつらが、そして悪趣味な依頼主とやらがその気になれば脅迫の対象は垣根個人にとどまらないかもしれない。
だが。
そんな風にして『スクール』の看板に泥が塗られそうになるのを、みすみす見逃すつもりは上の人間どもにもないらしい。
そう垣根は理解した。
彼が無事なら撃って出るのに戦力は充分すぎる。

「そうか。舞踏会と洒落込む前にとりあえずシャワーと着替えだな……清掃車を二台回せ。
『酸性浄化』は多め、忘れんなよ。ちまちました後片付けなんざしてられっか。ここのゴミ処理と掃除は任せる」

雑用をこなす下部組織への指示を伝えると垣根は深く、長く息をはいた。
乾いた唇が愉快そうに弧をかく。

「ああ、そう急がせなくていい。ゆっくり来いよ。俺も……もう少し遊んでくからさ」

通話はそのままに、元のように床に落とした携帯をバキバキ踏み砕くと垣根は振り返る。

「さぁーて。お楽しみはこれから、そうだよな。簡単に楽になれると思うんじゃねーぞ? 死ぬ程ひでえ目なんざありふれててつまんねえだろ。
死ぬより悲惨な状況ってのをたっぷり味わわせてやるから感謝していいぜ。テメェらにふさわしい末路ってのを与えてやろうじゃねえか。
トレンド入り間違いなしの最新の生き地獄をさ」

垣根は笑っていた。
凄惨な処刑の宣言に軽々しく言葉を並べて。
いっそ晴れやかなくらい、心底楽しそうな顔をしている様に。
そう、見えた。


「あー、まだダメだな。調子出ねえなぁ、なんかすっげえ外れるんだけど。どっかのバカ共がおかしな真似してくれたおかげだろうな。
っつうことは、これはもう仕っ方ねえよなぁ?」

垣根は白々しく男に尋ねた。
仕留める為に狩るのではない。獲物をただいたぶるだけのようなそんな態度だ。
首を掴まれ、背後の壁と白い翼に挟まれた男は答えられずにうめいていた。
刃物の様に鋭く尖った羽根が何度も男に突き刺さるが、どれも急所は捉えていない。
翼は撫でるような動きで体の上を行き来する。
無数の羽根の先はずぶずぶと浅く深く肉を抉っていた。

「く、クソぉ……」

「おっと。テメェらも大人しくしてろよ。そう焦るな、順番に相手してやるからさ」

そう告げた途端。
ゴシャア! と残りのメンバーも床の上に崩れ落ちた。
垣根はズボンのポケットに右手をしまうとその内一人に近寄っていく。
頭に足をかけると靴底の泥を落とすようにして顔を踏みつけ、上を向かせた。

「テメェは……そうだな。関節一つひとつすり潰してやる、とかどうだ? 人形気分が味わえそうだろ。
安心しろ、あっさり楽にはしてやらねえから。テメェの体が使いものにならなくなるのをただ黙って見てやがれ」

床の上で唸る男には一見、何もされていない様だが。
体に接した床に、わずかな亀裂が走っていた。
『未元物質』の作用による異常な重圧が男の体を押さえつけているようだった。
人間の体は意外にも丈夫に出来ている。
ゆっくりと少しずつ圧をかけていけば、数百キロなんて潰れずに耐えてしまう。

その時。
ごり、と鈍い音がした。
おさえつけられ赤く変色した指が、途中から空気の抜けた風船のようにくたくたになっていく。
目の前で少しずつ、端から順に。
自分の手指がゴム手袋のように変わり果てていくのを男は目の前で見せつけられていた。
大きく見開かれたまぶたの中でがちゃがちゃと目玉が揺れる。
それに見つめられた垣根は。
端正な顔に笑みを浮かべたままゆっくりと首を左右に振った。

「うわぁあああああ! ああああ……あ、お゛ッ」

ぼきん。
今度は、叫び出した男の頬からだった。
片方の顎の関節が「黙れ」と言わんばかりに一足先に砕かれた音だった。

「お望み通り遊んでやるよ。テメェら……俺を満足させてくれんだろ?」

無様に、なす術なく転がる男たち一人ひとりを見下ろして。
垣根は愉快そうに笑う。

「ははははは!! ははははははははッ!!」

バサリと白い翼が一閃する。
タガの外れたような笑い声と共に。
鬱屈とした部屋の中を真っ白な暴虐が吹き荒れた。



「気をつけろ。そこのダルマ、それまだ生きてんぞ。せっかく失血なんざで死なねえ様に、余分なパーツを丁寧に削ってやったんだ。
クソつまんねえ一生を簡単に終わらせてやるなよ」

垣根は乱れた髪を手で直していた。
すぐ横で肉塊のお片付けをしている下っ端をイラついた様子で睨みつける。

「そういやすげー腕の医者がいるんだっけ? なあ、そこにそのガラクタ持ってったらそんなんでも治すと思うか? 
そいつら、きっと死にたがると思うけどさぁ」

今度はケタケタと腹を抱えて笑う。
機嫌がいいのか、悪いのか。
一転してはしゃいだ口調はいつもより子ども染みた様に聞こえるが判断はつかない。
声を出すのは垣根一人。
残りの連中は黙々と手順に従って、現状の清掃を行っていた。

「おいおい。お前らぁ……返事は?」

それまで勝手気ままに吐き出されていた呟きが一瞬で冷めたものに変わった。その一言に。
ざわざわざわ、と低いざわめきが広がった。
下を向いて作業していた男達はそれぞれ勝手に呟き返したようだった。
言葉に最低限従わなければ残虐な白い矛先が向けられるとでも思ったのか。
何人かは歯の根が合わないような震えた声だった。
凄惨な室内に広がるなんとも異質な光景だが、いやに上機嫌な垣根は反応があったことに自体に満足したのか。
微笑むと大きく腕を伸ばしていた。

「ったく……いってぇ。え、マジで痛えんだけど」


建物の外に停められていたのは一台のワゴン車だった。
ものはよくあるツーボックスフォードア。ただし、すべての窓に貼られたスモークで中はちっとも見えない。
すみからすみまで真っ黒な車に垣根が近づくと静かにドアが開けられた。
黙って乗り込むと彼はブランドもののジャケットを脱いだ。
どろりとした赤黒い汚れがあちこちついていたがしみついてはいないようだった。
不愉快そうにそれを睨むと、垣根はシャツもまとめて投げた。

「ったく、まだベタつく」

脱いだインナーで髪や顔、首周りをざっと拭うと返り血(その他etcドロドロしたもの)でぐしゃぐしゃに汚れたそれも垣根は放り捨てた。
革張りのシートが汚れるのはこれっぽっちも構わないようだった。

座席に置かれた紙袋を覗くと。
ビニールに包まれた、クリーニングしたての服が用意されていた。
見慣れた、なんの変哲もない、無機質な。
それでも日常の一端がそこにあった。
それを見て垣根は吐き出すように口を開く。

「まだ……だいぶ血腥えな。薄汚え、クソ共の臭いだ」

改めて、噛みしめるような言葉と共に。
右腕、その上に大きく走る傷を垣根は左手でなぞった。
出血は『未元物質』で既に塞がれていたが。
垣根の指は何度もそれを辿っていた。


垣根帝督は決して長くはない人生のなかで。
有り余る、などという前向きな言葉でははかれない、過剰すぎるほど多くの経験を――良くも悪くも――積み重ねてきた。
その中でも先ほどまでの時間は、まぎれもなくトップクラスに『ムカつく』ひと時だった筈だ。
それでも、全てが無駄なものだったろうか。

打つ手はないと見えた状況が、覆せると気付いた時のひらめき。手ごたえ。
その為に必要なのはなにか、どうすれば手に入るのか。
窮地にあって少しでも己の勝利に向かってカードを引くだけの、それをかなえる力が彼にはあった。
はびこる現状を塗り替え、意のままに従わせる。
最後に笑う勝者はただ、一人だ。

勝てる。
負けない。

そう理解してからの時間は、次の手へ進めるために一分一秒でも早く過ぎるのを待つだけの退屈なものでしかなかったが。
垣根が得たのはそれだけではない。
怒りをねじ伏せ苦痛と、忍耐を幾度も幾度も重ねた上で解放された瞬間。
復讐をとげたあの味は。たまらなく甘美だった。
乾いた砂に水が次々と染みていくように。
喉を焼くほどの苦く重い甘さが垣根の脳に、腹の底に深く沈んでいった。

剥き出しの神経の束を肌の外に晒す様に。
薬剤で細く鋭く尖りすぎた感覚は余計な情報さえ耐えず頭に送り続ける。
要不要の精査もされず膨大で無作為な電気信号は、ガチョウの腹に流し込まれる穀類の様にただでさえ低下した脳の処理能力を圧迫していく。
少しバランスを崩せば即クラッシュ。
ハンドルからもう手は離せない。余所見をしている暇なんてない。
そんなギリギリまでアクセルを踏み続けた時のように追いつめられていた。
人間は本来ならきわめて強い緊張と恐怖を感じるように出来ているが。
同時にそれを克服し自滅を回避するための機能を備えている。

そんな危うい高揚感は体の中にまだ残っていた。
胸を打つ鼓動の高まりも、全身をめぐる血液のありえない熱も。
呼吸を忘れるほどの苦悶も。
得た一切の信号をみな快楽と錯覚するほど。


何より。
壊すことが、愉快だった。
思いついた暴力をただそのままに。
制限なく思い切り振り下ろすことが。
果物を剥ぐように、潰すようにして人の肉や骨を壊すことが。

タノシカッタ。

他のことが、頭の中の余計なものが。
チカチカ瞬く愉悦に押しのけられていく。
ぶつん、とスイッチを切り替えるように頭の裡が白く白く一色に塗りつぶされる。
タノシイからしているのか。しているのがタノシイことなのか。
どちらが先かわからないニワトリとタマゴのような問いはいつしか変わっていた。その境界もあいまいになっていく。
みずから尾をくわえた蛇のようにそれはぐるぐる回っていた。
今も、昔も。
わかっているしっていることがひとつあった。
善い悪い快不快メリットデメリット、正しいか否か。
それはみな一過性のゆらぐ価値観だ。見ようによっていくらだって変わってしまう。

そんなものより確かな一点を求めればいい。
単純な答えを掲げろ。

楽しんでしまえば、それでいいのだと。


いけない、またタノシクなってきた。

「ふ、くくくっ……はははは、はははははッ!」

落ち着かない様子で垣根は膝を叩いていた。
おかしな高揚感はまだ体に残る薬品のせいなのか。
笑いが止まらないのはどうしてなのか。
ただただ、愉快だからなのか。

それだけ、なのだろうか。
むき出しの肩を掴んだ垣根は。
細い体を抱きしめる様に、背中を丸めて声を上げていた。

「あれ。お前……見ない顔だな」

ひとしきり笑い終えた垣根が顔を上げると。
声を掛けられた運転席の男はビクゥ! っと肩を震わせた。
乗り込んできたお偉いさんが突然ものすごい勢いで爆笑していたら、それだけでも充分恐怖の対象だろう。
男はこわごわとした様子でそうですかぁ、と尋ね返した。

「まぁ、下の奴らなんざ一々覚えちゃいないけど。でも新入りだろ」

若い男に所属を告げられると。
垣根は目を細めた。

「ふーん。そっか、最底辺の補充用かお前」

首を傾げて少し、考える様子の後。
垣根は前の座席に身を乗り出すと急にハンドルを切った。
ドライバーは慌ててブレーキを踏もうとしたが邪魔をされてなかなか止まらない。
その間も垣根がハンドルを切り続け。
騒いでいたドライバーが静かになる頃には車は道を外れて裏通りに停められていた。
辺りは暗く、人気もない。
真っ黒な車体は闇に溶け込むようだった。

「ひっ……あぶ、危ないだろぉ。何なんだよぉ」

「なぁ」

あくびを一つ。
首を鳴らして。
垣根は更に詰め寄った。


「時間あんだろ。どうにも調子が戻らねえし、眠気覚ましだ。ちょっと付きあえよ」

何がなんだかわかんねえ、と言いたそうにまばたきした若い男は。
それでも何とかこの事態に対応しようとしたのか。
上着のポケットから携帯電話を取り出していた。

「あのぉ、予定だと、あんたを拾ったらまっすぐここに送れって言われてんだけどぉ」

「あのなぁ。俺は誰だ? そんなもん、俺がルールだろ。違うか?」

仕事内容を知らせるメールが表示された携帯の画面を見せられて。
ため息をついた垣根は勝手にサイドブレーキを引き、勝手にキーを抜いてしまう。
彼の態度に苛立ちや怒りは感じられなかった。
残念だ、と言いたげな憐れみに似たものが含まれているようだった。
諦めきった目をした垣根は肩をすくめて首を振る。
実に。
芝居がかった仕草だった。

「お前の仕事にはこれが無いと困るんじゃねえの? で。どうすんだ。そこまで言わねえとわからねえほど救えねえ馬鹿なのか。黙って俺に、従えよ」

ちらつかせたキーを握りこむと垣根はそこで再び笑った。
獰猛な笑みを向ける暗部組織のリーダーに、昨日今日入ったばかりの下っ端が歯向かえるだろうか。
答えは一つ。二択のどちらを選んだところで、恐らく結果は変わらない。

「なにをすんだよぉ…?」

「決まってんだろ。タノシイことだよ」

怯えきった男の姿を前に。
そう告げた垣根は楽しげに唇を舐めた。


「なんで、なんで俺ぇこんな……こんなことっ…しに、来たんじゃぁ」

「うるせえ。想定外はこっちもだ。あー、まだ頭いてえんだけど。あとで調整すんのに面倒だから人の体に勝手におかしなもん使ってくれんなっつうの」

「リーダー? ちょ、あの俺本当……ほんとこんな趣味じゃぁないんだってほんとに」

「はいはいお前は大嘘吐きだな。せめてもう少し我慢してから物言いやがれ。なんだこのみっともねえザマは。
はぁ……やっぱさっきの、殺しといてやりゃよかったか? 死体にもなれねえのって悲惨だよなあ」

「聞いてねえ……っこんなの、え。待て待てほんとに?」

「いってえな。ったく、傷が開いたらどうしてくれんだよこの馬鹿。どうせならこっち押さえてろよ。ったく、まだ……グラつくな」

「まずいってまじかよぉ、うっそぉ……なんだこれ……っ」

「うるせえっつってんだよ聞こえねえのか! テメェの声は随分耳障りだな? 
ああ!? 雑魚は黙って、俺の、好きにされてりゃあ……んっ、いいんだよ……クソが!!」

「やばいっ……これぇやばいッ、らめらってぇ」

「静かにッ…して、ろっつうの……はぁ。殺すぞ?」

そう言ったきり、それまで一方的に口を動かし続けていた垣根も口を閉じた。
鈍い音を立てて。
しばらくの間車内は静かに。それでいて騒がしく揺れていた。



「おい。車もう一台よこせ」

繋がった瞬間に垣根はそう下した。
相手は考えるより一瞬早く、それに応じた。
時差などない通話の間に短い沈黙が挟みこまれる。

『はい。ええと……確かこの前入ったって新人が向かった筈ですけど。ナビ通りならもう着いてる頃ですがどうしました。何かトラブルでも?』

「そうじゃねえ。運転もド下手クソだったからさ。ダメだな、ありゃ全っ然使えねえよ」

頭を掻くと垣根はちらりと後ろに目をやる。
停められた車は派手にボンネットが歪んでいた。
そのまますこし手を加えればすぐにスクラップに出来そうだった。
中のものは片付けた方が良さそうだが。

『じゃあその携帯から現在地を送ってください。すぐ代わりを用意させます』

リーダーの要求に応じると組織の構成員は彼の名を呼んだ。
不安や気遣いは感じられない、単純な疑問の声だった。

『それにしても一体何があったんです? こんな時間に突然連絡よこしといて、こっちが幾ら聞いても電話のあいつ何も言わないんですよ。
垣根さんが単独で出てるから迎えを出せばいいの一点張りで』

それを聞いた垣根の頭に突然、と言うのが少し引っかかった。
垣根と連絡が取れないと気付いたのはいつだ。
行方が追えなくなった時、『スクール』ではそれを捜索しなかったのか。
正規構成員でさえ、急に下部組織を動かした理由を知らされていなかったらしい。
まあ。
暗部組織なんてのは後ろ暗い人間の寄せ集めだ。
関連した組織も含めて一枚岩とはとても言えない。
詳細はともかくリーダーが行方不明、何者かに捕まった、なんて失態が組織内で不用意に広まるのを避けたのかも、しれない。

今は細かい思考の整理が出来る様な、そんな余裕は垣根にはなかった。
頭も体もぐちゃぐちゃで疲れきっていた。
後で考えればいいことだ。
そう疑問を断じると。
垣根は無駄にストラップをじゃらつかせた趣味の悪い携帯電話を肩で挟んで近くの建物の壁にもたれた。
再び袖を通した皺だらけのシャツが一層汚れる。


「別に気にするほど大したことじゃねえよ。はー、しっかし俺も何してんだろな。らしくねえの。けど頭は少しマシになってきたかも……」

まるで。
そうしないといけないように。
何かに急き立てられる様に垣根はずっと口を動かし続けていた。相手のことはかまわない。
頭の中の雑音を散らすノイズ。代償行動の一つ。
独り言も気を紛らわせる作業だ。
壁を打つような。ただ地面を蹴るような行為でも無駄にはならない。
その感触から、自分が立っていると感じることが出来ればいい。
知覚できる現実が当人の世界の真実だ。
その足元がどれだけ汚れ歪んでいるかはまた別の問題になる。

『なにかしたんですか。似合わないこと』

「いや……一仕事終えて一服、みたいなもんかな」

無駄な雑談に応じる声に。
右のこめかみから側頭部を指で撫でながら垣根は答えた。
どくどくと指の下に流れる音は少しくらい落ち着いたかもしれない。

『垣根さん煙草なんてやりましたか?』

「だから。気が紛れっかなーって。効果はどうだか。わかんねえけどさ」

別に未成年だから、と言う社会通説一般常識に従ったわけではない。
なぜ好き好んで自分のコンディションを外的要因から乱されなくてはいけないのか。
垣根はそれが今まで疑問だったが。
もしかしたら息抜きやリラックスと言う面での効果だってあるかもしれない。
タバコとは随分とものは違うが、おかしな思いつきでもストレスのはけ口として役立つ期待をしていた。つもりだった。



かといって食後の一服と言うのはどうか。
口直しのデザートと言うにも悪食過ぎるし酷いものだった。
八つ当たり、スケープゴート、いずれにしてもくだらない真似をしたのだとは、垣根も自覚していた。
そんなことでは満たされない。
屈辱はすすげない。
だが。
それをどう解決すればいいのか。今の垣根にはわからなかった。

垣根の実状も思惑も会話の意図さえしらない構成員はスピーカーから聞こえるため息をどう受け取ったのだろうか。

『お疲れですか。珍しく』

「ああ。あとな、すげー……喉が渇く」

では運転手に何か持たせます、と付け加えて通話が切れた。

過ぎてみればふり返ることもないくらい短い時間だった。

車を待つ間。垣根はふと頭上を見上げた。
分厚い雲に覆われた空は暗かった。
その上には月が出ているだろうか。
だが、垣根の目にはうつらない。
ならばそれは無いのと同じだ。それに遥か彼方、天上の意志は地上に立つちっぽけなものの事情には構わないだろう。
ただそこにあるだけ。晴れようが荒れようが変わらない。

つまらないことにいつまでも足を止め、立ち止まってはいられなかった。
今回降りかかったのは垣根にとって巨大な災厄ではなく小さな火の粉程度だった筈だ。
寝覚めの悪い、下らない。
だが。大したことのない問題だ。
垣根帝督に敗北は必要ない。どれだけその身を貶めても。
必要な二文字は、自分の腕でつかみ取る。
だから。
そんなものはきれいさっぱり忘れてしまえば、またいつものようにつまらない日々が帰ってくると。
その時の垣根は思っていた。
それ以外何があるかなんて。考えもしなかった。





突然別れを告げたありきたりの、昨日までが。
クソみたいな笑顔でやってきて片手を上げて挨拶する。
こんにちは垣根帝督、新しい『今日』がやってきましたよ。

ふざけるな、反吐が出る。



少年の日常は、その時一度、失われた。





じりじりと舐める様な強い日差しの下で。
少女が二人、並んで歩いていた。
下校途中だろうか二人以外にも道には制服姿の生徒たちがあふれていた。
ファストフードの新商品、なんだか舌を噛みそうな名前のドリンクをストローでかき回していた少女は残念そうに肩を落とした。


今朝は何だかとっても萌え滾る夢を見たはずなんですけど、知らない人が出てきたんですよ。うーん。なんで目がさめるとちゃんと覚えてないんでしょうね


しらない人が夢に出てくるなんてあるんだ?あははーもしかして運命の人だったりして。
あ。ねえそこのお花かわいいねえ。これなんて言うの?


これですか? シロモッコウバラです。これは棘がないんですよ。えっと花言葉は、『夢は叶うもの』です


テキトー言ってない? 本当かな……そうそう今度の都市伝説も夢の話なんだよね。なんでもAIM拡散力場の干渉で他人の――




雑踏と街の喧噪にかき消されながら少女たちの他愛のないおしゃべりは続いていた。



ドーモ。


>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」

モブマシセリフマシマシトウカチョモランマエロスクナメチュウニオオメカキネツラメ

とりあえずゴールしていいか
じゃあまた

乙、すげー乙
読み応えあってふっつーに面白かった、>>1の技量やべえ。
というか感服過ぎて何ホモ書かせてんだよって感想が一番にくるわww
マジで乙ww

きてた!
まさか本当に書ききってくれるとは
激しくおつ
ただもしもしから読めないんだけどどしたらいい?

>>357
まとめ速報をgoogleで挟め、鳥ググればすぐいける

アヘ顔ダブルピースだったらどうしよと思ったけどシリアスやばいね
エロでもよかったしエロもみたい
垣根最後どうなった?すげー気になる
>>358ありがとう愛してる尻Ass使っていいよ

突然の伊東ライフww
にしても電車の中で読んだら拷問だった。カキネクンってこんなに可愛かったのな。乙です乙です


モブがむかつくはずなのに、なんかキャラがいいなこいつらw
脇役なのに口調とかキャラ固まってんのがなんかそれっぽい
肝心のエロシーンがありませんがどちらでみれますか(迫真)

愛も尻も垣根以外はノーセンキューだ

次安価201じゃろ?渾身デレじゃろ?
なんかホモい目で見そうで怖いから払拭出来そうなのオナシャス

てゆーか何気に来月一周年?俺男だけど>>1の事を愛してるよ

モブとエロい事のプレイ内容の詳細よろしくお願い申し上げます。

まじにホモネタ書くとか乙
価値にこだわるのがそれっぽいんだけどつらい
次は笑えるのがいい

勝ちだすまん

初春の夢かよw
この集団デパートだっけ。幼女監禁してた暗部のやつ思い出す。
安価もいいけどメインのスクールのやつもよろしく。ここのはほのぼのしててすきだ。
1もすきだぞ。

>>367 
初春の夢に垣根がされた事が出てきた予知夢っぽいのじゃないの
未元物資の中身とかリアルでしょ



垣根「お前、またそれやってんのか。楽しいか?」

ゴーグル「艦隊っち、垣根さんもやってみます?」

垣根「どう言うのなんだ」

ゴーグル「よくあるブラウザゲーっス。ユーザー登録さえすればあとは基本無料っス。序盤にレア艦やレア空母並べてもコスト高で運用出来ないんでガチャ建造に課金は必要ないっスよ。資材も弾薬も放っとけば勝手に増えるんで問題ないっス。低レシピと一面周回してとりあえず艦の数を揃えて隊組んでください。序盤は泥のダブりはそのまま取っておいてくださいね。後、艦隊のフラッグシップはなるべくスキルが有利な方が――」

垣根「とりあえず日本語喋れよ」

ゴーグル「実際見た方が早いっスかね。えーっと、色々充実してくるとこんな感じになります。マイペ、母港本部の内装とかも変えられたりしますね」

ゴーグル「この隊の旗艦(フラッグシップ)が秘書艦って言ってここの、ホーム画面に表示されます。ボイス付きなんで色々喋ってくれるんスよ。友軍ってフレンド機能で共有出来るのもこのキャラっス」

垣根「喋んの」

ゴーグル「キャラによってセリフにも個性がっスね。あと結構史実ネタも充実してるらしくて萌えキャラじゃなくてそっち派のマニア受けもいいみたいっス。切り替えがここで……」

カチッ 提督!御用ですか!
カチッ てーとく
カチッ ……しれいかんさん
カチッ はぁい! だぁりん!
カチッ よお! ていとく!
……

垣根「……こいつら馴れ馴れしいぞ」

ゴーグル「垣根さんすいませんそこは仕様なんで我慢してください。断じて呼び捨てにしてる訳じゃないっス」



垣根「ん? これは?」

ゴーグル「あー、これは敵陣のボスキャラっスね。深海棲◯◯姫シリーズ、実はこいつらも色々裏設定があって……どうかしました?」

垣根「いや……何かこのデザインに妙な親近感があるんだけど」

ゴーグル「え。この中二御用達カラーリングモノクロ反転一目でわかるザ・闇落ちみたいなキャラデザの一体どこに? 垣根さんどっちかっていうと闇属性っつうか光系の見た目っスよね」

垣根「何でだかわかんねえけど。こいつらって口ん中も黒いのか?」

ゴーグル「どうなんスかね」



垣根「とりあえずタダでやれんのはいいとして、ちまちまレベル上げんのが面倒過ぎるんだが」

ゴーグル「最初はそうっスよね。そこは作業ゲーの仕様っつうか、でも段々パーティの幅が出てくると楽しいっスよ? DVDとかかけます?」

垣根「何だそれ。時間潰しのゲームの時間潰しって意味あんのかよ。飽きるぞ。飽きる……あー、もう飽きた!」

ゴーグル「じゃあ……俺のところにあかぎっちがすげー余ってるんで一体トレードします? 火力上がればもうちょい経験値のいい面に低レベ連れてっても安定しますよ」

垣根「なんで同じの山ほど持ってんだ。え、ページ半面枠埋まってるぞ」

ゴーグル「イベントとかどの編成でも使えるようにあえて未覚醒のを取ってあるんスよ。一応レア五の子なんで……あと一〇は少なくともプレイヤーランクを上げてもらわないと、コスト不足でまともに艦数揃えた隊が組めないんスけど」

垣根「じゃあ上がったら言うわ。次もログインして、そん時覚えてればな」

ゴーグル「でもこれで垣根さんも艦っち仲間かあ。下部組織にも布教したんであと三人居るんスよ」

垣根「そんなにして楽しいか? 別に複数でやるようなもんでもねえだろ」

ゴーグル「そりゃそうっスけど。みんなでおんなじ話で盛り上がれるじゃないスか。あ、SNSでゲーム用のグループもわけてあるんでよかったら入ってくださいっス。こっちが個別でRPGのと、あとソシャゲと……」

垣根「お前組織の奴らと何してんの」

ドーモ
着任したみたいです。一応。
艦隊っちです。艦これはやったことないんでしりやせん
垣根提督ってしたかっただけ


>>312
昔みさきちが腐ってるSSがあったじゃなぁい?
被害力がなかったからいいけどぉ、洗脳能力でそっちの趣味だと恐ろしいわぁ
食蜂「『強性操作(カテゴリー801)/性的指向対象は同性である』あなたたち、抱き合いなさぁい☆」
とかつまりそういう?こわい

>>313
「超能力者」でやってるから女子軍もふざけあってるよね。御坂は両手に花にきまってんだろ!ばいーんぺたっばいーんだよ

>>314
それだ!

>>315
ドーモ
ありがと>>1も小ネタが好きでね

>>316
でしたねスマンね

>>317
そんなに?!つうかおそれおおくね

>>318
このスレでよければつかんでいなされ つ藁
1もいろいろまってる。一番は原作、派生作品の露出ですよねたしか今日発売日ですよねとうぶん読めませんがね(淀んだ目)

>>319
まてまだあせるじかんじゃない



↑の流れを汲んで個室サロンでカラオケ、ダベりからのホモごっことかしてた筈の暇な日の超能力者たちも落としましょうかね
コピペ踏襲ネタ



御坂「ホモごっこ……って何よそれ」

垣根「なんつーか。どっかでそんなことしてはしゃいだ馬鹿がいて、すげーウケたらしい。じゃあ真似してゲイっぽいこと言ってみようぜ、みたいな流れになってさあ」

食蜂「そんなの面白いのかしらぁ?」

麦野「つうかオマエは組織の人間と何遊んでんだ?」

一方「やだァ、早く挿れてェ?」

垣根「一方通行、お前……いつももっと上手にねだれるだろ?」

麦野「ぷっ」

一方「こォか」

垣根「そうそう。ありえねえよな」

麦野「なにそれおっかし……っ」バンバンバシバシ

一方「ツボにはまりすぎだろ。テーブル割れンじゃねェのか」

御坂「あっ、あんた達ねえ! そんなごっこ遊びがあってたまるかーっ!」

食蜂「全然手で隠せてないわよぉ御坂さん。こう言うのは慣れてるんじゃないのぉ。それとも少年力の高いのがお好きなのかしらぁ?」

麦野「あーっはっはっはっは!!……はーおっかしかった。おいおいお嬢様ったら何カマトトぶってんのかにゃーん?」

御坂「違う違う! 男子ってこう…直接的にネタにするの? まだ黒子のがマシじゃない…って言うかカマ? 何?」

削板「?  何を入れんだ? 気合か? 根性か?」ぐっ

垣根「わからねえんならそのままにしとけ。拳を作るな」



麦野「しっかしまた、上手いことガチっぽいのをやったよなぁ」バシバシ

一方「……ガチ根ゲイt」

垣根「やめろ馬鹿。叩き落とすぞ」

一方「はァ。随分座り心地の悪ィ椅子だ」

垣根「そうやって人の上でふんぞり返ってテメェが格上気取りかぁ? いい御身分だなあオイ」

一方「事実だろォが」

麦野「なーんだアンタら実は仲いいんじゃない? 二人はホモだちって……ふふふ」

食蜂「ぷぷぷ……でもなかなかの傑作力ねぇ。こんな面白いツーショットはそうお目にかかれないわぁ」

垣根「食蜂。お前リモコンこっち向けんなよ? 俺は自分の敵には容赦しねえぞ」

食蜂「何よぉ。冗談力が通じないわねぇ。大丈夫よぉ、何かあっても記憶は消してあげるからぁ」

一方「オマエの頭の電気信号逆流させてやろォか」

御坂「えっ。食蜂、アンタってそう言う……」

食蜂「あのねぇ、私の『心理掌握』はそんなつまらないことには使わないわぁ。『心理掌握』は精神高潔で高尚力のたかぁい私だからこそ許された能力よぉ? 価値を貶めてどうするのよぉ」

麦野「でもその能力だと派閥どころかなんでも好き放題でしょ。逆ハーでも奴隷牧場でも、ムカつく奴を炙ったりとかさあ」

御坂「げ」

垣根「何でお前ってそう、露骨に品がねえんだよ」

削板「牧場であぶって…肉か? でもこいつは人間の頭を操作するんじゃなかったか?」

一方「そォだな。ブタや牛っつうのは偉いよなァ。オマエは根性の曲がった話に混ざンなくてもいいぞ」

食蜂「もう。麦野さんたら見かけ通り下劣力高すぎだゾ☆」

麦野「何だろうね……コイツたまにものすごくムカつくんだけど。ちょっと弾いてみていいかにゃーん」

御坂「気にしなくてもいいんじゃない? 私もよくあるから」

垣根「お前ら、攻撃力皆無のヤツに全力で相手すると悪者でしかねえぞ。少しは加減してやれ」

一方「俺らが言うことでもねェけどな」

削板「そう言うのはな。正々堂々タイマンでやろうぜ!! よっしゃ、表出るか?!」

食蜂「えぇ〜これだけ居て私の味方力ゼロなのぉ?」



席順 

麦 御 食


垣 一 削



御坂「え。さっきの、私たちもするの?」

垣根「何だよ。次はそっちの番じゃねえの」

麦野「まぁ確かにそっちだけじゃヤリ損よねえ」

一方「もォちょい言い方あンだろ」



麦野「それじゃあ今夜はたぁっぷり啼かせてやろうかにゃーん。ねえ? み・こ・と?」

食蜂「あらぁ。私も御坂さんのツンツン顔を蜂蜜色に染めてみたいわぁ♡」

御坂「あはは……ジョークなら、いいんだけどね」

垣根「しっかし……同じ超能力者でも、ここまで違うもんか」

一方「どこ見てンだよ」

垣根「御坂、御坂」ちょいちょい

御坂「何?」

垣根「ちょっとそこ代わってくれよ」

御坂「いいわよ」


席替えタイム

麦 垣 食


御 一 削




御坂「うわぁ」

一方「なァーンか途端にいかがわしい店みたくなったなァ」

垣根「超能力者を侍らせるクラブとかあったらすごそうだな」

食蜂「『みーちゃん』を御指名ありがとうございまぁす。サービスしちゃうゾ☆」

麦野「お客さんいい男ね。もしかして同業?」

垣根「バレたか? って誰がホストっぽいんだよ」

一方「いや。どォ見てもオマエだろ」



垣根「よっしゃ。何でも好きなもの頼めよ。支払い? んなもん気にすんな」

食蜂「お兄さん太っ腹ぁ☆ うれしいわぁ。じゃあフルーツの盛り合わせとぉ」

一方「DXチキンバスケット。ソースはハバネロにしろ」

御坂「じゃあ、私はオムライス」

垣根「何で俺の横に座ってもねえお前らが真っ先に注文してんだよ。せめてシェア出来んのにしとけ」

一方「さっき上に座ってやったろォが。充分過ぎる釣りが出ンだろ」

麦野「やだ。シャケ弁置いてないじゃない」

垣根「こんなとこに普通ねえよ」

一方「幕ノ内じゃダメか」

麦野「邪道ね」

御坂「へえーお弁当はあるのね」

削板「おっ、垣根のおごりか? ありがとな! よーし、根性入れて食うぞ!!」

垣根「はぁ。そいつに端末独占させんなよ?」



食蜂「やだぁお兄さん、おさわりは別料金よぉ?」

垣根「ちょっと当たった程度で金とんのかよ」

一方「払えばいいってのもどォなンだ」

麦野「ちょっと操祈大丈夫だった? こんな野郎に肩なんて触られて」

食蜂「平気よぉ。もぉ、沈利さんってばぁヤキモチ焼き屋さんなんだからぁ♡」

御坂「あ。それまだ続いてたの」

垣根「そう言えばお前ら女子校なんだよな。本当にあんの? こう言うの」

御坂「それは、無い……わけじゃないけど。でもでもほとんどの人は普通よ?!」

食蜂「御坂さんには熱烈力全開なファンがいるのよねぇ」

麦野「ふーん。じゃあ学校で『お姉さま』とか呼ばれちゃってるわけ?」

食蜂「そうそう。モテる美人は大変よねぇ?」

一方「へェ」

御坂「なっ何よお。馬鹿にしてんの?」

垣根「いやー。すげーな?」

削板「お前らぁ、よってたかっては根性が足りてねえぞ!!」

食蜂「ひゃん?!」

麦野「いきなり怒鳴るんじゃねえよ。何、アンタまだ居たの」

御坂「これだけ存在感があるのに、そう言えば静かだったわね」

削板「料理が来たのに誰も食わねえからメシくってましたっ!」

垣根「あーっ! エンデュミオンバーガーがすでに半壊してるじゃねえか」

削板「うまかったぞ。食うか」

一方「あァ、一番下はもらったぞォ」


削板「お前らの話は聞いててもよくわかんなかったけどな。つまり麦野も食蜂も御坂が大好きで、垣根だって一方通行が好きなんだろ?
数字の順番だけじゃねえ、コイツはすげえヤツだってビシっと感じてんだよな!!」

食蜂「なーに言っちゃってるのかしらぁ」

麦野「誰がだよ。死ね。面白オブジェに変えてやろうか」

垣根「キモいこと言うな。ばーか、死ね。愉快な死体になりてえのか」

一方「お、この肉うめェな」

御坂「限定ゲコ太コースター付き? いつの間にこんなメニューが……!」



削板「うるせえ! 同じ能力者としてお互い認め合える存在ってのはそうないんだからよ。
お前らへらへら誤魔化してないでてめぇの気持ちに素直になりやがれ。もっと根性、入れろよ!!」

麦野「お、おう。ついうなずいちゃったわ。何コイツ」

垣根「無駄に暑苦しいよな」

御坂「べっ、別にそう言うのは……間に合ってるって言うか……」

食蜂「超能力者って野蛮力の高い人ばっかりよねぇ」

一方「……そォ言うオマエはどォなンだァ」

削板「俺か? 俺はお前らみんな好きだぜ!! 根性のすわった、いいヤツらだ!!」ドバーン!!

垣根「あ。ダメだこいつとは話があわねえ」

麦野「同感。私らとは相性悪すぎね」

一方「体育会系青春ノリの元暗部とかシャレになンねェよ」



御坂「いやー、ここまで突き抜けてるといっそ清々しいわね……って、食蜂下向いてどうしたの?」

食蜂「なっ何よぉ。私が御坂さんのことどぉ思ってようが関係力ないでしょぉ?」

御坂「は?」

食蜂「御坂さんはいいわよねぇ。いつも元気で、健康的でぇ。動物的でぇ、わっ我儘力は高いしぃ……ヒック」

一方「なンでアイツ半泣きなンだ?」

食蜂「みじゃが……グスッ、ど」

御坂「ちょっと待って食蜂! どうしたのよ落ちついて話し合いましょう?」

食蜂「……みさきちゃん、って呼んでぇ?」

御坂「 」

麦野「 」

垣根「いや、引きすぎだろ。何だその面。麦野、お前女としていいのかそれ」

削板「おう! なんだお前ら青春してんのか? いい根性だぜ!!」


食蜂「うっ、グスッ……ふぇえ」

一方「あーァ。御坂が泣かしたぞ」

御坂「えええ?!」

食蜂「ひっく、御坂さんがいじわるなのぉ…好悪付与、印象操作ぁ……」

垣根「おい待て何か妙だ。リモコン持たせんな」

麦野「止めなさいって。それ御坂には効かないんでしょ?」



御坂「あー。はいはいよしよしいいこいいこ頼むから大人しくしてなさいよ?」

食蜂「えへへぇ。こっちはふわふわねぇ」

麦野「はいはい。ねえ、なんなのこの子。明らかに変でしょ」

一方「その系統の超能力者が精神操作はされねェだろォし……オマエら、まさか酒は頼んでねェよな?」

垣根「超能力者は全員学生ってのは常識じゃねえか。んなバレたら一発で廃業にされそうな部屋に酒なんざ向こうが持ってこないだろ……いや」ハッ

麦野「おい。何でこっち見た」

垣根「お前コンビニでも問題なく買えそうじゃん」

麦野「テメェに言われたくねえよ!!」

垣根「はぁ? 酒なんて飲んだら気軽に能力使えねえだろ。飲んだら飛ぶな、飛ぶなら飲むなって言うだろうが。
ちょいとよそ見程度で起きちまう事故の規模が、俺たちは車の比じゃねえんだぞ。そんな馬鹿が許されんのは無能力者ぐらいだろ」

麦野「普通は飛ばないけど。まあ確かに狙いはマズくなるわよねえ」

御坂「子どもがお酒はだめってぱ、親に言われなかったの? ……って、ちょっとこれ何とかして!」

食蜂「ほらぁおいしいわよぉ? あーんしてぇ」

削板「そう言やフルーツポンチみたいなのがやけに消毒薬臭かったな。根性出しても流石に食えなかったぞ」

一方「あァこれだな。ン……ガッツリ酒の味がすンぞ。ちょっとそいつ貸せ」

食蜂「なによぉ触んないでよぉ」

一方「血中アルコール濃度が〇.〇八はあるなァ。立派な酔っ払いだ。ったく、もしガキが食ったらどォなってたか」

麦野「ビール一、二本空けたくらいか。ああ、確かに強いキルシュがそのままぶち込んであるわ。マチェドニアにしてもやり過ぎ。バイトのミスじゃないの。まあ……味はいいわね」

御坂「……ねえ、コイツって」

垣根「しっ。黙っとけ」



削板「なんだ根性の抜けた店だな。食蜂は大丈夫か?」

食蜂「うふふーみぃさかさんつかまえたゾ☆ ぎゅー☆」

御坂「この通りぐでんぐでん。ちょっと、重いわよ」

垣根「いざとなったら俺とお前で押さえるか。洗脳ってのは『反射』出来るもんなのかわからねえしな」

削板「お前らは俺のことを普通じゃないと思っているようだが、根性で何とかなるだけで怪我もするし骨も折れる生身の人間だからな。
あと根性あるやつの洗脳はまだされたことがないから、俺にもどうなるかはわかりません!!」

垣根「よし。今すぐそいつの鞄とリモコン全部取り上げろ。ついでに腕も縛っとけ」

食蜂「だ〜めぇ〜。これはぁ、みいちゃんのだいじだいじなのぉ。それにみんなぁ仲良くしなきゃダメなんだゾ? よい、しょ」

御坂「いい加減に……しろーっ!」ビリビリッ

麦野「危なかったわね。でも食蜂落ちたわよ、ってアンタどうしたのよ一方通行、フラフラじゃない」

一方「……気持ち悪ィ」

垣根「一口でそれか? 耐性なさ過ぎだろ!」

麦野「本当に虚弱ねコイツ」

御坂「顔どころかあちこち真っ赤じゃない。平気?」

一方「ン……駄目だなァ。御坂が四人に見える」

麦野「それって少ないくらいじゃないの?」

削板「何でだ」

麦野「……ただの冗談だっての。説明なんかしたら笑えないわよ」

垣根「あー、もしもし。ええ。実はそちらの料理に問題がありまして至急お話ししたいことがあるんですよね。こちらはプラチナボックスの部屋番――、そうだよ。こっちは超能力者だ、とっとと責任者と担当よこせコラ」



削板「大丈夫か一方通行。座れ、水飲め。根性入れるか?」

一方「頭、割れそォ……左右に」

削板「なんか背中から黒いの滲んできたけどどうすりゃいいんだ? このままさすってたら消えるか?」

垣根「それは根性でどうにかなるもんじゃねえ。そいつもそのまま落とせ。ここを更地にしたくなけりゃ、大至急だ」

削板「任せろ。よっこいせ!」ゴシャッ!

御坂「……ねえ、大丈夫? 今嫌な音しなかった?」

削板「峰打ちだ安心しろ」

垣根「でもさ、峰打ちでも骨くらい折れるんだろ」

麦野「こいつの馬鹿力にモヤシ体型じゃ……最悪、全身イッてんじゃないの」

御坂「でも……ああ、いざとなったらゲコ太先生がいるわね」



マネージャー「お客さま、大変お待たせいたしました……本日はまことに……」

店員「申し訳ございませんでした!!」

御坂「さーて。おかげで色々大変だったのよねえ。今から聞かせてあげるけど」

垣根「こっちは二人やられてんだ」

麦野「それなりの落とし前はつけてもらおうかにゃーん」

削板「物騒なこと言ってるが安心しろ。こいつらだってきっと話せばわかるさ。お前ら二人の根性は見届けてやる」

麦野「おい」

垣根「削板」

削板「ん? ああ!! やいっ、歯ぁ食い縛れ! その根性叩きなおしてやるぜ!! よーしこうだな?」




食蜂「ふふふ……、りー……そんなに走ると転ぶわよぉ」スヤスヤァ

一方「……ボケッとしてると置いてくぞォ?……と……だー」クカァ



お酒は20歳になってから!!
御坂家では大人になっても異性がいる時に酒は飲むなってきつく言われてそう

あっちこっちで大事にされてる御坂家のいもうとさんだけど実は御坂遺伝子には相当なモテ法則因子があるんじゃないのか。上条さんにはそげられてるだけで
あの子は冥土帰しのところにでも入ればお見舞いくらいは出来てそうなんだけどね?

それではみなさま良い発売日を
じゃあまた

俺も艦コレ知らないけど、垣根はWW1時第二位の海軍国ドイツ帝国が似合うかも。最後第一位の英国に敗けるし

深海棲艦にシンパシー感じんなやwwww
というか色々ツッコミが追いつかないがこれだけは言わせてくれ、
酔っ払いみさきちかわええええええ
ありがとう!ありがとう!!

ワロタw
垣根ゴーグルに甘いし
黒翼でてくんのちょろいし
麦野おまえもうだめだろww
ここのレベル5ぶっ壊れてていいな

……おかしい、垣根と削板が常識人に見える
確かに原作での言動も一方や麦野ほどぶっ飛んでないけど

すごく良かった。やはりゴーグルへの愛が溢れている。

何このみさきち可愛い

仲良しレベル5って好きだけど
この面子だと常識通用しないホストが常識的だったりすることが多い謎

>垣根艦これ
曙「このクソ提督!」 垣根「あ?」
解体不可避

垣根はドMで苦労人だからな他の連中とはそのへんの差がついてしまうんだろ
中身は一番幼いけど

垣根と麦野がうける
>垣根「こっちは二人やられてんだ」
ってやったのお前らだろ!
削板も空気読めるんだなw

>>200についてあれこれとレス


>>1は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐>>200の安価に片をつけねばならぬと決意した。
>>1にはエロSSがわからぬ。
>>1は、ただの暇人である。
さもないSSを書き、スレで遊んで暮して来た。
けれども初めて振った安価に対しては、人一倍に敏感であった。
って具合にあえて別ベクトルにガチなやつでやっつけたがご好評でなにより。

>>356
何をいっしょうけんめいやってんだろうと何度か我にかえったがたのしんでもらえたならいちもうかばれるくさばのかげでがっつぽーず。
垣根には悪いことしたね犠牲はつきものなのだわ。

>>357
書きましたー!

>>359
別に書いてないとこはお好きにドーゾだわ。黒幕ブッ殺エンドでもまさかのドナドナでも構わんよ。垣根にとってムカつく結果になったのは間違いないだけで。
しりあすって…え?シリアスって?
ちょっと上手いこと言ってんじゃねーw

>>360
元ネタこれか!一つ賢くなったありがとう。
そうかかわいいのか流石垣根は未元物質なんでもカバーするね。ありがとありがと。

>>361
垣根の口を塞いだらモブが無駄にやかましくなった。個性的な口調は楽でいいなかまちーは天才だな。
垣根がひどいことをされるシーンは都合削減した。でないとどんだけ長くすりゃいいのかわからんし切ってよかった気もする。
投下で三時間は正直ツラかった。
当時の全容なら『スクール』で回収しただろう撮影時のテープか、『滞空回線』にログがあるのでは、と1は『電話の相手』に見してーって言えばいんじゃないかそもそもネタでパラレルだけどなと無理を承知で進言します。

>>362
安心しろ。グレーゾーンなんて温いことは言わねえ。次の安価は真っ黒だ。
本編じゃやらないことを安価でしようぜネタに走るよ。だから次のも前のも気にすんなそのあとなんかどうするんだいレッツ常盤台だよ。

>>363
まさか一年も続くたあ驚き桃の木にしたって気が早くね。
つかなにこの流れ告白大会なの?そうか1はな…キリンさんがすきですでもかまちーはもーっとすきです!だから三期をよろしく。

>>364
詳細か

一人目主にバック、長音の人。恐らくこの中では一番ノーマルな趣味をしてるが子ども相手に暴力振るってもむしろ喜んじゃうタイプなので軽蔑すべきクソ野郎。巨根遅漏守銭奴の三重苦。

二人目拘束・SM、逆にの人。きっと機械工作が好き。相手が死ななきゃ何してもいいとか思ってそうな軽蔑すべきクソ野郎。他が濃すぎて影が薄い。

三人目BUKKAKEetc、ヤク好きの馬鹿の人。
調子こくとてきとうに薬盛っちゃうし『素材』の自爆補填が一番多い軽蔑すべきクソ野郎。ジャ◯顔のクズ。

四人目眼鏡の人。小さい時なんかあったっぽいが今では小さい子にひどいことするのも見るのも好きな立派な軽蔑すべきクソ。ロリペド教師予備軍
描写がほとんどないのはめんどくさくなったからではなく一人だけ安価内容にそぐわない為。とか言う勝手なこじつけで最終的に属性も変更。

最低限の描写でリンカーンっぽくしようとプレイのバリエーションだけでほわっとごまかした感があるんだが、かったるかったりエロがかけなかった訳ではありますん。
こう言うことが聞きたいんじゃないんだろうけど。心配するな自覚はある。
あんま考えてないからご丁寧におねがいされましてもお答えできかねます。
>>1が書いてないことは妄想暴走お好きにドーゾ。

>>365
乙ありです。
まって誤字からのダブルミーニングつらいやめて。

>>367
どの花飾り風紀委員さんでしょうね。4コマからだっけ?腐ネタがあんの。
需要があんなら供給があるのかなと思って『雑貨稼業』さんをパク…インスパイアしました。
ありがと。本編も頑張って進めるわ。
>>1も垣根が好きだよ。

>>368
夢が先か事件が先か。さてどちらなんでしょうね。
『守護神』は『対空回線』の夢を見るか?でもいいと思うしAIM拡散力場がどうのでもいいと思う。


>>383
Marchenな第二位だけにか。
軍服ってかっけーよね!垣根はうまく乗せたらコスプレとかしてくれるとおもう。

>>384
あの白ベースオレンジ目とかが何となく垣根ホワイトを思い出してしまった。クレイジーサイコホモ気味なレーズン垣根は元気にしてっかな。
みさきちかわいいよな。でももしかしたら麦野も酔うとかわいいかもしれんぞ。


>>385
黒い翼は、レッドブル飲ませたら…ってのもやろうと思ったけどやめた。
しっ!
麦野はもう原作からしてワガママワンマン女王様だから。
多分このメンツでも麦野と削板は他人と会話のキャッチボールをしないと思う。きっと投げっぱなしだろあいつら自由だよね。
多少の壊れはギャグってことで。尖らせてる自覚はある。

>>386
やばいぞ非常識&非常識がまともにみえてくるなんておかしな集団・超能力者に毒されてるぞ早く冥土帰しに診てもらった方が良さそうだね?
超能力者が全員ずーっとぶっ飛んでるとやばいよ。誰か上条さん呼んでこいだよ。
まあ一番ちゃんとした良識があるのは美琴ちゃんだよね。

>>387
え?はい、ドーモ。
おかしいなやつを愛でたつもりもさせたつもりもないぞ。
でもゴーグルがいないと『スクール』は任務以外のイベントが起きない感がやばいから大事にしたいと思います。狂言回し大事。超大事。
垣根と心理定規二人にするとそのまま会話なくても別に平気そうなんだもん。

>>388
みさきちほんとかわいい。超電磁砲ドリー編ですっかりファンになりました。
でもここ最近禁書で一番萌えたのはやたらとパワフルなおじいちゃんとカッコイイ犬です。どうしようorz

>>389
うぃき先生に聞いてきた。解体だ……僅かな資材と装備を残してバラされてしまうんだ
ギャグやらせるとツッコミ・ストッパー役=常識人みたいにみえてしまう気もする。
上条さんとか御坂もそっち寄りっぽいよね。
とかもっともらしいこと考えてみたけど。
見た目ホストっぼいから周りの面倒見せたりまとめさせても似合うんじゃないか?
あとあの中で、外面は一番いいとおもう。

>>390
そうなのか。まあ原作の扱いは、うん。仕方ないよね

>>391
垣根「正当防衛ってしってるか。やられる前にやっただけだ」
ソギーはいいやつだからな!


強すぎる一撃には反動がつきものらしい。
ポケモ○の破壊光線の1ターンスタンよろしく、ホモネタを戦闘シーンにすり替えるために地の文を費やした1の精神は非常に落ち込んでいた。
その為何が生じたかというと。
苦労して前回薄めたホモ成分を超えるひどいものが出来上がった。

なので次の安価レスはデレるどころかひたすらホモネタ大喜利をする垣根です。今度はほぼご機嫌です。よろしく
どうしてこうなった。本当に。

とまあこれだけじゃなんだから次小ネタ。
ちょっと時期外れだけどパズデックスのあれ。


謎解学園てきななにか
※一方さんが会長のあれ。まさかの2本目
※諸々あって『スクール』は風紀委員をしてます


登校時


ゴーグル「はぁ。昨日の小テストが上手くいかなかった。また放課後補習とかになったら嫌だー」

青ピ「ボクはちゃーんとやったで? 赤点ギリ回避!」

ゴーグル「担当が男だからやる気出してるんじゃないよな?」

青ピ「はっはっはー。その通りっ! 野郎に叱られてどないせっちゅーの! ってセンセんとこは確か……
第二外国語、オリアナ先生やん! マンツーマンで個人レッスンとか?! うーわー出来るんならして欲しいわ」

ゴーグル「はぁ。そんなの考えただけでツラい。そうなったら委員の仕事を盾にしてでも断固回避するぞ」

青ピ「あれ。センセ、なんやテンションえらい低くない?」

ゴーグル「ああ言う激肉食系女豹女子はあんまり……男子学生が露骨な下ネタ大好きだと思ったら大間違いなんだって」

青ピ「あー、センセの好みはおとなしい子ぉやったね」

ゴーグル「そうだよ……青ピ君とこの、姫神さんとか」

青ピ「姫神が?」

ゴーグル「ど真ん中ストライク……黒髪ロングストレート、清楚系で薄幸美人とか何だよ属性フルコンプじゃないのか?! あー、もう王道最高!!」

青ピ「そうやったん? でもセンセ、ウチのクラスはほぼカミやんフラグが済みになってるから難しいんやないかなあ」

ゴーグル「現実に高望みはしないから。同じ学校にあんな子がいるってだけで俺は充分です。心のオアシスっス」

青ピ「またそんな謙虚なことを……どう? 今度帰りにみんなでお茶しまへんか~とか。誘ってみます?」

ゴーグル「えっ!」

青ピ「ボク同じクラスやし声かけたってもええよ? あ、ええんやでそんな気にせんでも! ボクとセンセの仲やないの!!」バシバシ

ゴーグル「……何が目的だこの野郎」

青ピ「え? どうせならセンセも女の子連れてきたってな~。Wデートっ! あの、風紀委員の副委員長さんとか!!」

ゴーグル「あの子まだ中学生だぞ?」

青ピ「せやから?」

ゴーグル「……ようじょとかよりはいいんだろうけどさ。幾らなんでも委員の身内は売れねえっス。青ピ君も、いい度胸してるよな。風紀委員とフラグなんてもう立たないんじゃないか? 
職質の常連通り越してそろそろブラックリストに入るっスよ」

青ピ「ボクのことをしらん子は風紀委員に居らへんってことやね!!」

ゴーグル「前向きだよなぁ。それより俺の居ないとこでしょっちゅう問題起こさないで欲しいっスね」

青ピ「なんで?」

ゴーグル「女子の風紀委員から俺に苦情と未処理の報告書が押し寄せるんス。すっかり俺が専用窓口っつうか。
おかげで無駄に忙しい…ん? いや、一度くらい委員長直々に徹底的にシメてもらえばそんな気もなくなるかもしれないよな? 早速見回りの強化をしてもらって――」

青ピ「いやー! センセにはいっっっつもお世話になってます! このとーり!! もー、んなイジワル言わんといて? な? あのセンパイさんおっかないやんイケメンやけどっ!」

ゴーグル「あ。噂をすればあんなところに垣根さん」

青ピ「おーっとじゃあボクもう行くわー、さいならっ!」




シェリー「よぉ。垣根」

垣根「クロムウェル先生。おはようございます」

シェリー「お前のこの前の課題。なかなか良かったぞ。細部の造形まで良く仕上げたじゃない。お前の創作は見事だよ、迫力の完成度が違う」

垣根「ありがとうございます」

シェリー「ただなぁ。芸術にはもう少し遊びがあっていいぞ。作品にもっと熱を込めてみろ。面白くなるわよ」

垣根「……そうですか」

シェリー「お! おーい削板!!」

削板「おおっと。おはよーございますっ!」

シェリー「うふふ。おはよう。朝から調子がいいらしいな、作品にもよく出てるよ」

削板「『根性は爆発だ!No.20』か。あれ? でも先生は絵が好きなんじゃなかったのか」

シェリー「そうね。確かに、前作の大胆な空間の使い方。あれも良かったがお前は筆を鑿に変えても魅せるねえ……お前、本格的にこっちに進む気はないの?」

削板「うーん。俺は体動かすのが合ってる気がすんだよなあ。作って遊ぶのも嫌いじゃないけど」

シェリー「まあ考えときなさい。色んな道があるからね。しばらくは立体作品が続くけど、筆がとりたくなったらいつでも言いな。美術室を好きに使っていい。居残りどもと一緒でよけりゃあな」



ゴーグル「垣根さんおはようございます。はー、人って見かけによらないんスね」

垣根「わっかんねーな。いや、理解したくもないけどさ」

削板「お、お前ら!  オッ   ス !  !」ビュオッ

ゴーグル「あー、走っては…ないんスね。なんだあれ新技か?」

垣根「なあゴーグル」

ゴーグル「はい」

垣根「昼休みが、楽しみだな」

ゴーグル「俺は既に胃が痛いっス」



放課後



上条「ううう……二時間格闘した粘土の上に道具をひっくり返してしまうとは。我ながらなかなか不幸だ」

上条「流石にまだ居残りしてるのは俺たちくらいだな。みんなぱぱっと終わらせちゃうしなあ」

一方「連日居残り皆勤のオマエと違って俺は忙しいンだ。誰かさンが年中データをブチ消したり書類をダメにしてくれるからなァ。放課後にそンな時間がねェ」ペタペタ

上条「上条さんだって……無差別にそげりたくてゲンコロしてるわけじゃありませんっ!」

一方「そォですか。それより進んでねェ現実をなンとかしろ」

上条「むしろまた潰したんで後退してます。ちくせう。自由課題だからな。もう、長く伸ばしてイモムシってのはどうだ。いやーでもみんなすごいな。なかなかの力作だ」ウロウロ

上条「お。一方通行の方はどう……」

一方「ンー。こォ、か?」ペタペタ

上条「…………」ゴクリ

一方「……なンだよ」ガリガリ

上条「えーと。これはなんと言いましょうか……か、かわいいな?」

一方「……ン。まァな」

上条「えっと、それはペンギン……か何かでせうか?」

一方「はァ?」



垣根「うらー下校の時間だ。いつまで残ってんだ……って、テメェらか。何だ何だ? 生徒会役員様が授業の居残りですかあ」

一方「なンだオマエかァ」ぐにゃー

垣根「……へぇ」

一方「なンだよ」

垣根「いや? もうちょっとここは短くしたほうがいいんじゃねえの」

一方「うるせェ。余計なお世話だ」のばしのばし

上条「(垣根)」

垣根「あ? (何だよ)」

上条「(あれ、何だかわかるのか? 上条さんはさっぱりですが)」

垣根「(え。最終信号だろ?)」

上条「はぁあああああ?!」

一方「上条、うるせェぞ」ガチャガチャ

上条「あの何とも名状し難い粘土の塊が、打ち止め……? なんでわかったんだ」

垣根「あのアホ毛っぽいのとか、顔の割にやたらデカい…目…なのか、あれは? その辺のバランスがなんとなく…だな。
いや、相手があれじゃ断言は出来ねえぞ」

シェリー「お前ら今日はそろそろ終わりにしろよ。お、一方通行のも仕上がってきたじゃない」

一方「あァ」

シェリー「うんうん。お前の作品はエッジが効いてるな。そろそろ名前は考えたのか? 作品にはタイトルも大事よ」

一方「そォだな……」

垣根「(何だ、何がくる? 俺の読みは一体どこまで通用するんだ)」

上条「(もし本当にそうだったらかわいそうだが本人には見せてやれないぞ)」




一方「……『道端の犬』だな」

上条「犬?!」

垣根「マジかよ!!」

上条「犬だったじゃん! 大ハズレだぞ」

垣根「これが……犬、だと……? 上条、ならテメェは何だと思ったんだよ」

上条「ペンギン」

垣根「は。俺の勝ちだな」

上条「何でだよ」

垣根「同じ哺乳類だろ」

上条「そこ? いやいやお前のほうがひどいぞ? これと一緒にするなんてかわいそうだ」

シェリー「盛り上がってるとこ悪いけどなあ上条。そろそろ何か提出してくれないとアンタの今学期の成績がつけられないのよ。これまでまともな作品がゼロじゃねえ」

上条「え」

一方「言っとくが次の会議は休ませねェぞ。記録係が不在じゃ話にならねェ」

上条「はい?」

シェリー「途中点でもいいけど……これは、流石に作り直すだろ?」べしゃあ

上条「マズい。このままでは技能教科の成績まで……なぁ、垣根」

垣根「はい。三階の施錠は終わりました。生徒の退去の確認を終え次第戻ります」ピッ

上条「垣根! 頼む助けてくれ!」

垣根「何だよ。んなきたねえ手で触んなよ?」

上条「なんとか粘土をこねるから、出来上がった奴が『何があっても壊れたり変形しないように』してくれないか? 
上条さんは何度も何度も、何度も何度も! やり直すのはもう耐えられません!」

垣根「嫌だ」

上条「何でだよ」

垣根「俺は風紀委員、テメェは生徒会。俺は自分の敵には容赦はしねえ。残念だったな」

上条「そん……なぁあああああああ!」

一方「まァ、そンなに凹むな。俺はそろそろ終わるからな」

上条「へ」

一方「少しくらい…いや、時間があったらだけど……よォ」

上条「一方通行……おお、上条さんの心の友よ!!」

垣根「削板のって……これか?」

シェリー「うふ。うふふふふ。ああ。私も教師になって初めてここまでの才能の『原石』を見つけたわ。二五〇年に一人の逸材と言っても惜しくないくらいだよ」

垣根「やべえ。微塵も良さがわからねえ。前衛的にも程があるぞ」




後日

ザワザワ

青ピ「カミやん……またえらいもんを作り上げたみたいやね?」

土御門「実はカミやんもそっちサイドだったとはにゃー。邪神像が増えてるぜよ」

上条「ハハハハハカンセイシタノニフコウダー」



ドーモ。
最近こんなんばっかで悪いな。

シェリーさん美術の先生にしてしまったが宜しいか。
第一位が実は画伯属性持ちだったら爆笑して愉快なオブジェになる。
でも、何でも出来る奴よりプラス欠点があるとおいしいだろ!
イケメンだけど羽が生えたりよ!!

じゃあまた

イケメンな上に羽が生えるとか利点でしかないだろ!いい加減にしろ!

垣根は美術作品は意外と堅実なのか。常識が通用しないピカソみたいな感じかと思ったが

まとめで一気に読んだけどどれもネタ多くてスゲー笑ったw
ホモのも普通に面白かったし
電話の男にデレてる垣根ははじめてみたかも
もっとえろくてもいいよ
ここの1の垣根愛はすんごいな
頭んなかどうなってんの

相変わらず垣根への愛に溢れていて良かったよ。
このスレ見てからゴーグルも好きになってきたが、原作ではもうほとんど出番ないんだろうなあ……

ていうかもう死んでるし

セロリ画伯ワロタwwww
セロリもデレてるしみさみこ百合とかほもとかあれか
イッチは両刀か

垣根は能力に反して自分自身は常識から脱却できてない感じなのも似合う気はする
万能秀才だけど突き抜けてなくて、それが二位の壁っていうか

この学校楽しそうでいいなw
校長はビーカーから飛び出して攻撃してくんの?

非常識を極めるにはそれだけ常識、当たり前の概念に精通してないとな、と思わんこともない
極論だけどそれらの真逆が常識外の事だし

そういえば垣根って何歳なんだ?
校門で制服チェックしてる垣根におはようございます先輩って言われたい

あと白井が同じ学校で生徒会だと初春と垣根は同じ支部になるのか?帝春来る?

風紀委員の支部は学区内の幾つかの学校でまとまってんだっけ?同じ学校なら一緒だよな
トラブルのない垣根と初春の出会いは新しいかも
でも削×垣、一×上で薄い本のネタにされる未来が見える

その後、さらに垣根に頼み込んで粘土を固めて貰うもげんころして不幸だーの展開が見える

邪神化する前に軌道修正出来なかったのかよ
>>411
セロリ作だって知ってたら固める前にぶっこわしそうじゃね?

青ピの気持ちがわかる
垣根になら放課後個人指導して欲しい
風紀めっちゃ乱れてるから直してくれるよな風紀委員さん

>>1マダァ-?
(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン

>>1マダァー?
(U)←チンチン

>>1マダァー?
 ∩
( 人 )←チンチン

垣根のご冥福をお祈りします(-_-)/Ω チーン

垣根提督ネタで思ったけど
艦娘の台詞を提督(役職)→帝督(名前)に変換すると
なんか親密度とか関係性が違って見えてちょっとニヤニヤできるな

生真面目な感じの台詞も名前呼び捨てだと途端に甘く聞こえる

ちゃんと考えようと思うと提督として着任させること自体が難しくてやれるネタじゃねえなあって断念したが、深海側で提督やらせんのならアリかもな
というかレ級やほっぽちゃんに懐かれる(物理)ホワイトが見たい

15巻後~新訳のパラレルで、黒垣根モドキ的なのが深海棲艦の発生原因
それに対抗するための未元物質製自律兵器が艦娘
艦娘の統率・運用のために脳みそ分割から復活させられた垣根が提督に着任
学園都市に付けられた枷のせいで本人は戦えない&提督やるしかない(資源に使う未元物質も制限)
鎮守府は学園都市が作ったメガフロート的な

禁書ベースならそんな感じの設定も考えたことあるなぁ
深海側の方がハマる気もするけど、また一方通行あたりにやられる未来しか見えなくて…
艦これベースならなんやかんやあって提督になりましたでいいんじゃね?(適当)

さすがに艦これはスレ違いじゃね?
>>1も別にやってないんでしょ
それよりデレる垣根はよ

別にここの1はほっといても書くだろ

スピンオフの方でもいいから漫画にスクール出ないかな


我がもの顔でカンカン照りだった太陽が少し傾きはじめた夏の昼すぎ。
とあるマンションの一室、その中でも一番日当りのいい窓辺に置かれたカウチソファ。
その上に寝そべっていたのは背の高い少年だった。
超能力者、垣根帝督は持て余し気味な長い足を組んでいた。ちなみに靴は履いたままだが、能力でちょっと工夫すると靴底なんて汚れないんだと彼は組織のメンバーに自慢げに語ったことがある。
女子なら真っ先に避けそうな紫外線直撃スペースで、彼は涼しい顔してくつろいでいた。
やかましいセミの声も屋外のうだるような熱気もここまでは届かない。
そのかわり室内にはプラスティックやカーボン、アルミ。
硬質な小さなものの擦れあう無機質な合唱が響いていた。
その中心点からふと、気の抜けたサイダーのような声が上がった。

「あれ……そう言やさっき…心理定規来ませんでした?」

「バイトだって言ってたろ。さっきって、もう一時間は前じゃねえか」

「そー…でし…たっけ?」

やる気、というか生気のない声で答えるゴーグルの少年。
カウチに背をあずけていた垣根は顔を上げると、その背中に目をやって顔をしかめた。

「お前いつからそれなんだ」

別に『スクール』の用事があったわけではない。
この隠れ家の一室で垣根が寛いでいるところにたまたま心理定規がやってきて(彼女はついでだと言っていた)、ゴーグルの少年はリーダーが来るよりずっと前から私用で室内を占拠している。

頭の装置から腰まで垂れ下がったコードに囲まれた姿は何だかクラゲのロボットにでも乗っ取られたようにも見える。SF映画に出てきそうだ。
猫背気味に丸まった背中もまるでゾンビのようだった。
パソコンのモニタに視線をはりつけたまま、B級ホラーものっぽい異様な雰囲気をかもしだしている少年は声だけで返事をする。

「昨日の夜っス。いやー、四つのゲームのイベント開催が被った上に、どうしても出ない素材があって。このままだと揃わないんでもう追い込みかけんのに必死です。あ、ちゃんと寝てます。二時間机で」

口調はだるそうだったが、腕から先はまるで別の生き物のように素早く動いている。
手元の携帯ゲーム機、二台並んだパソコン。
どれもシーク音を立ててばっちり働いていた。
頭に装着したゴーグルで同時に幾つものゲームをすすめているのだろう。
恥も外聞も、尊厳さえ捨てたような姿勢でゲームに打ち込む姿はまさに『廃人』と言う言葉がぴったりだった。
そこまで聞いてねえよ、と垣根は呆れたように首を振ると視線をてのひらのスマートフォンに戻した。


少年は腰の機械のスイッチを切ると、ケーブルを外してゴーグルを取った。
疲れているのかだらけた様子で息を吐いた。
グシャグシャと頭をかいて両手で目元をこする。

「あ゛あ゛あ゛、ちくしょー物欲センサー爆発しろ」

ぐちりながら近くのビニール袋からペットボトルを取り出すと薄オレンジの液体をぐーっと飲み干す。
カフェインたっぷりのエナジードリンクと電解質バランスのいいスポーツドリンクでカクテルを作ると効きがいいと言うのはよくある噂だが。実際どうなんだろうか。
プラシーボなんてものでも馬鹿にできない効果はあったりするが、怪しいところだ。
そんな体によくなさそうな色をしたドリンクをうまそうに飲むと、少年は腕と肩を伸ばしてからもう一度ゴーグルを手に取った。
位置を合わせて頭にかぶり、コードを順につないで。
何気ない動作で。
スイッチを入れた。

「……あ」

ヤバい、と声にする前に。
後ろのローテーブルに置かれたタブレットの上で。
ぐしゃぐしゃとタッチペンが潰れていった。

「あーーーーーーー! またやったぁあああああああ!!」

悲鳴を上げたゴーグルは勢いよく立ち上がる。
ガシャッ! と派手な音を立てて椅子が転がるが、彼は構わずそのままタブレットの前に走っていく。

「あああああああ……よかった、ひとまず平気みたいで」

「何騒いでんだよ」

「危うくこいつをお釈迦にするとこでした。無傷って訳にはいきませんでしたけどギリセーフですよもー」

タブレット端末は液晶に傷とひびは入っているが、動作そのものに問題はないらしい。
被害は、その上で『念動力』によって操作されていたペンに集中していた。
金属製のペンの軸は乱暴にもみ消した煙草の吸殻のように変貌していた。


「うっかり『目』を離すと切り替え時の再設定しくってたまーにやるんス。あー、集中力切れてんなー」

残念そうに言いながら、少年は端末の横のケースから別のタッチペンを取り出した。
一度、ウエストポーチのように巻かれた装置に目を向けると机に置いたペンを宙に浮かべて丸を書く。
調整は問題なかったのか、うんうんうなずきながら席に戻って椅子を起こした。

「『念動力』も力加減が難しいんで。俺はまだその辺が甘いっつうか、最大と最小の幅がありすぎんのも考えものっス。ただボタン押すだけだって、人間の指一つでも再現するのは結構大変なんスから。
前に三徹した時は、ゲーム機バキバキに潰して……あれから俺は赤牛、打破と仲良くするのと能力で遊ぶのは二徹までって決めました」

「要はさ、たるんでんだろ。何してんだか」

超能力者級の自己管理を求められても困るのか、少年は情けなく眉を寄せた。

「俺みたいな能力だと事故ってプレスとかローラーみたいな機械で起きるのと一緒なんですよね」

作業中の不意の巻き込みっスから、と息をはくと、

「能力のフィードバックも自動じゃないっスから。大体これくらい、ってしてても少し設定しくじると簡単に」

パン! と両手を叩いた。

歪んでいた金属製のペンは丸めたガムの包み紙の様に小さく潰れていた。
カフェインの摂取と睡眠不足でハイになっているのか、ゴーグルは一人早口で喋り続けている。

「だから、ちゃんと見える範囲で能力つかわねえと。コロンブスの卵くらいならいいけど生き物って意外と脆いんだよなあ。こう――」

「ちょっとやってみろよ」

「はい?」

コロンブスの卵、と復唱すると垣根は当たり前のように、部屋に置かれた冷蔵庫を指さした。



急で意外すぎるリクエストにこたえてゴーグルの少年はよく冷えた卵の紙パックを両手でささげ持つように運んできた。

「お前、それ着けてると幾つ出来るって言ってたっけ。四か、五か」

「いまはいいとこ三つですね。カメラの台数によるんで」

何で今やるんですか、と少年の投げかけた疑問は、
「見たことねえから」
の一言で切り捨てられた。

「そうかそうか」

ゴーグルが手にしたパックから一つつまみあげると垣根は無造作に卵を放り投げた。

一つ、二つ。
パックが空いていく。

「いいッ?!」

ラックの上に飛んで行った卵が空中で止まる。
続いてパソコンのモニタの近くでもう一つ。
壁にぶつかる直前ですとんと下に向きを変えたものもあった。

卵の動きが止まると、少年は慌ててパックを横に置いた。
体の前で両手をおわんのようにしたゴーグルの少年は宙を見つめたまま息を止めた。
息を吐くと同時に、卵たちは不可視のレールに乗せられたように空中を滑り落ちていった。
中のものを零す様にゴーグルの少年は慎重な動きで両手のおわんを左右に崩す。
コロコロゴトン、と集合した卵が静かに床の上に転がった。
ひびが入っているものもあったが中身が漏れたりひどいことにはなっていない様だった。

コロンブスの卵は生卵を手を使わずに逆さに立てる念動能力専攻の学生にはおなじみの学習メニューだ。
難易度はちょっと高めだが、異能力者でも練習すれば一つくらい成功する様になるだろう。
でも投げられた卵を割らないようにキャッチする遊びは、かすりもしない別物のはずだ。

「いきなり、何、やらせるん、ですか! あーびびった。俺これ嫌いなんですよぜってえ失敗したくな」

文句を言っていたゴーグルの言葉が途中で止まった。
垣根が指でつまみ上げたものがそれを遮っていた。
卵はもう一つ残っていたらしい。


「嫌か。なら仕方ねえな」

気ぃ抜くなよ、と言うと垣根はにやりと笑った。
ゴーグルの少年の目の前にかざされた白い卵から。
垣根はすっと指を離した。
そのまま静止しているのを確認すると、彼を放置してカウチに座りなおしてしまう。
わけのわからないまま、卵とその場に残されたゴーグルの少年は眉を寄せて。
動きを止めた。

「零すなよ? 部屋が汚れる」

垣根が気軽にそんなことを言った先から、何かきしむように嫌な音が立ちはじめた。
ビシッ、と殻の先端に小さなひびが入る。
目には見えない力、重圧が卵の周りにかかっているようだった。

「うえ?! なんッ……だこれぇ!」

少年の悲鳴が上がった。
それにあわせたように、テーブルに大人しく転がっていた小型ボールカメラの向きが一斉に変わる。
まるで重いものを持ち上げているように少年は自分の腕を必死につかんでいた。
一〇、二〇、三〇秒。
それに少しプラスして、それでも一分はもたなかった頃、耐えかねたような声が上がった。

「かき、垣根さん! ギブですって……もう勘弁してください」

あっそ、と垣根がやる気なく返事をした途端、ゴーグルの少年は膝をついた。
べしゃっ。
へたりこむ少年の前で床に落ちた卵は落下の衝撃で無惨に潰れていた。

「ボウリングん時にした話覚えてたんですか? でも俺、防御は得意じゃないっていいませんでしたっけ? 言った気がする。それで重くて小さいピンポイント攻撃ぶつけてくるとか鬼ですか? 卵越しに? うううううちくしょう頭いてええええ」


寝不足と、それ以外の理由で充血しきった目をがしがし押さえているゴーグルの少年に。
垣根はあきれるほどあっさりした声を掛けた。

「なんだ。やれば出来るもんだな。どうだ、眠気は飛んだか?」

「そりゃ、もう……バッチリです」

しゃっくりを止めるために、心臓を止めるほどのドッキリを仕掛けても超能力者なら許されてしまうのだろうか。

そうなっても蘇生処置をすれば問題無いとか思っているかもしれない。おまけに心臓の真上を拳で思い切り叩くような荒っぽいやり方で。

生き返るなら死んでもいいのはゲームの中だけの話だ。



ちょっとげんなりしながらゴーグルの少年はテレビの横でゲームのセッティングをしていた。
用意されているのは壁の『外』製の、随分と古い機種だった。
今の学園都市の技術なら、指先程度の大きさの記録メディアにこのハードで遊べるゲームのデータが何十本も入ってしまうほど昔の技術で作られたものだ。
人気のあった作品は同じ会社の最新機種でも移植やダウンロードで当時のゲームが遊べるようになっているものがあるしリメイク版も作られていた。
技術は進み、時代が変わっても色あせないもの何てものはあるらしい。
前にゲームセンターでやってみて以来、垣根も少しそのへんのものに興味がわいているらしかった。

「垣根さん、アクションゲームは頭でやるもんじゃないんスよ。わずかなラグやタイミングの癖を体に教え込んでボタンを押すんです。反復練習っス。
格ゲーも基本一緒っス。コンボなんてそのうち指が覚えますから」

「んなもんとっくだけどな。コイツがやたら反応鈍いんだよ」

「喋ってるとまた打ち漏らしますよ? ほら、あ。また、コンボ途切れてますって。意味ねえっスよ」

「うるせえ黙れ。ボタンつぶれてんじゃねえのこれ」

NPC相手にコントローラーをガチャつかせながら垣根は画面を睨んでいた。
ゲーム機の方に文句を言われて、私物をわざわざ隠れ家まで持ってきた持ち主の少年は首を振った。

「そんなことないですって。これ、なかなかきれいなの残ってないんスよ。現役で動くようなのは特に。中古っスけどちゃんと手入れされてたの探したんス。生産なんてとっくに終わってんのに、部品からリペアしてる人がいるんスよね」

称賛にも似た得意げな目を本体に向けて少年は語るが。
それはただのゲーム機だ。
簡単な計算も今日の天気も教えられない、平凡な子どもたちを非日常の冒険に少しの時間連れて行くことしか出来ないただの機械だった。
画面端にNPCを追い込んでとどめを刺している非凡な少年は気付いていないかもしれないが。
その口元にはなんだか、言葉に反して楽しそうな笑みが浮かんでいた。

「このゲームは壁ハメから卒業しないと対人は勝てませんよ」

テレビの前まで椅子を転がしてきたゴーグルの少年は、普段なら絶対に出来ない上から目線でそう言った。
ちょっと勿体を付けて、ゲーム機の入っていたケースの中からもうひとつのコントローラーを取り出す。
ことゲームに関してならゴーグルの少年に一日以上の長がある。
他のあらゆることで敵わなくても、得意分野の土俵の上でなら格上の相手の鼻をあかすことも出来る。
あと、もしかしたらさっきひどい目にあった仕返しも含まれているかもしれない。


「でもハンデ盛り盛りの接待プレイだと怒りますよね。こっち半ゲージなんて将棋の一丁半みたいなもんスよ。
ダメ減、コンボ、P縛りはしなくていいんスよね。どれか足しても飛車角落ちだと思いますけど」

「いいっつってんだろ。早くしろよ」

垣根の悪態を横目に画面を確認するとゴーグルの少年は自分の方の設定を変えてからゲームをスタートさせる。
前に同じゲームで対戦した時に「開始十秒は殴り放題」なんてルールを設けたが。
その後逆転負けした垣根にものすごく怒られたことがあった。
垣根は自分が負けると当然怒るのだが、彼がちょっと気を利かせてわざと勝ちを譲ってもそれに気付いて怒る。
でもまあ、垣根の上達には目を見張る早さがあったから、加減抜きで本気の対戦が出来る日もそう遠くないかもしれない。

「ゲームだろうとなあ、お前如きに手抜かれてんのは頭にくるんだ、よっ!」

「あー、また角が落ちた! 玉来いっての!」

開戦からボタンを叩いていた二人だったが連打の音がいきなり途切れた。
ピコンと画面がポーズモードになる。
スタートボタンを押した垣根は、コントローラーを握ったまま後ろを振り返った。
無人のパソコンの前でマウスが忙しく踊っていた。
と言うか確認なんてする前に、近くに座っている少年が頭にゴーグルをつけて遊んでいると言うのはつまりそういうことだ。

「言ってるそばから一人同時プレイしてんじゃねえよ! ああ? ナメてんのか?」

「えっ、俺言ってました? うっかり口に出してました?」

あれ? え? と、とぼけきれないゴーグルの頭を片手で掴むと垣根は力任せに揺さぶった。
相手が寝ぼけていようが能力を使っていようがお構いなしの容赦ない八つ当たりだ。

「誤魔化しもしねえのかよ。せめてばれないようにやれよ! 気分悪いんだよクソが!!」

「ちょっ、頭引っ張んないで下さい! ぎゃあああ線が、ケーブル抜けますってマジで!!」

騒いだままゲームも再開したが。
またしても少年は勝ってしまった。集中力が落ちているとその辺のさじ加減も難しいのかもしれない。
さらに。
垣根の不機嫌さのスイッチに手をかけたついでに、ゴーグルの少年は何か良くない法則でも引きよせたのか。
その後目的のクエストを何周してもお目当ての報酬は全然手に入らなかった。


「よし。もう一回」

「ダメです。ゲームは一日一時間っス」

「お前にそれは言われたくねえよ」

そんなゲーム界の格言みたいなセリフも。
平然と、体力の限界まで挑戦する人間から聞かされてはこれっぽちも説得力がない。

「でも垣根さんペース上げてやりこむとすぐクリアして飽きちゃうじゃないスか。こう言うのは、楽しみを長くとっとくもんです」

「そんなもんか?」

「それに長年の苦労を、たった数日で抜かれたら俺はどう立ち直ったらいいんですか」

「相手が悪かったな。諦めろ」

そこは得意げに言い放つ垣根。
その横顔からは言葉にするまでもない重みが感じられる。
現実に、ゲームのようなキャラクターシートやパラメータリストが存在していても垣根ならあらゆる項目でA以上の判定が出そうだった。
幾つか難あり、なポイントがあってもトータルの数値では圧倒的だろう。
たとえば……寛容さ、協調性なんかの数値が低くても、強制力やカリスマ性なんてところでカバーできてしまえそうだし。

「全方位チート(リアル対応)かぁ……わー、実生活用のPARってないのかな。昏睡とか副作用のないやつで。なんて言うといっそDNAマップの塩基配列からやり直した方が早い奴じゃねえっスか?」

笑いながら出来もしない愚痴をこぼす少年に垣根は、わかんねえなあ、と言いたそうな目をしていた。


「たまには体動かしたらどうだ」

「いいっスけど、能力使用オーケーならボウリングはこの前みたく俺がもらいますよ」

「そんなとこだけ強気だなお前」

「俺遊びには全力っスから。でも垣根さんもけっこーエグい配置ばっかこっちに出したじゃないスか。どっかのバラエティの無茶ブリみたいなの」

以前出かけた時に立ち寄ったボウリングコーナーで、スペアやスプリットの練習用にピンの配置が出来るコースをみつけた。
そこで二人はそれぞれ難しいフレームを作っては相手にトライさせる、と言う遊び方を試していた。
一ゲーム辺りに能力を使っていい回数も決めて相手の手を読み合いながらスコアを競うやり方は、即興にしてはいい思い付きだったらしい。

「あ、この前知り合ったヤツらはあれから連絡とってます?」

「何それ」

「えっ、あの時隣でやってたグループと垣根さんすっかり仲良くなってませんでした? ほら、俺がジュース買いに行って、SNSのアド交換して、確か今度飯いこうって話まで……あれ? しません、でした?」

「そうだっけ。ああ言うの、その場では盛り上がるんだけどな」

あまりに垣根が意味わかんねえ、って顔をしたのでゴーグルの少年はすごく不安そうな顔をしていた。
超能力者の記憶力を疑うくらいなら、自分の頭の記憶操作を心配した方が早い、みたいな反応だ。
異能あふれる学園都市では宇宙人の誘拐より小学生のイタズラでそんなことが起きかねない。

「別にいいだろ。そう言うの」

「そっスか?」

大した興味もなさそうに、吐き捨てるように垣根は言った。
単純に興味がなくて忘れていたということらしい。

コミュニケーション的な意味でなら、ゴーグルの少年も割と一人上手な方だとは自覚していたが。
それでも学校で、それ以外でも友達はいる。
なんと言うか垣根は違う。
ゴーグルの少年は、ほんの少しの関わりあいの中でしか彼のことを知らないが。
その部分だけでの印象でいうなら。世界がごく身近な、手の届く範囲で完結してしまっている感じだ。
超能力者だとそう言う価値観でも仕方ないのかもしれない。
頂点というのは文字通り点で、並ぶものがないから線にはならないし輪もつくれない。
それ以前に。
色んな経験値をすでに埋めてしまって、上りきった技能やスキルでステータスを埋め尽くしていそうな存在からするとそれ以下なんて見えているものが違いすぎて、てんで話にもならないだろう。



「何かそれ新しくなってねえ。あと後ろの壁もか。どうした」

一見、違いなんてないように見えるインテリアの一角を見た垣根はにらむように目を細めた。

「そうなんスよ。ちょっとダメにしちゃって。『スクール』のツテ使ったらすぐ済みましたけど。いやあ、まさか心理定規にゲームさせたらああなるとは思わなかったんス」

キャリーケースにゲーム機を大事そうにしまっていた少年は苦笑いをしながら答える。

「ふうん。で?」

それでどうしたのか簡潔に説明しろ、的なオーダーが凝縮されたクエスチョンマークに少年はうなずいた。

「ゲームなんて楽しいのかって聞かれたんで、心理定規でも出来そうなシューティングやらせたんス。廃墟系の」

「なぁ、いきなりオチが読めたんだけど」

「ちょっと我慢して下さいっス。この機種は普通のディスプレイはもちろん体感型のヘッドマウントディスプレイにも対応してるんスけど」

テレビの近くのラックに置かれているのは小さな最新機種のハードだった。
高音質高グラフィック、シアター並みの環境美の追求を謳ったコマーシャルで話題のハイチューンモデル。
真っ黒なボディは新品特有の指紋も曇りもない輝きを放っていた。
お前のそれみたいなもんか、とゴーグルを見ながら垣根が尋ねるが少年は首を振った。

「これは普通に目にするヤツっスから。俺のゴーグルに比べるとおもちゃみたいにかわいいっス。で、最初のボスに苦戦してるなーと思ったら……心理定規さんたらテンパってコントローラーぶん投げてそのままスカートに手を……」

その上に乗せられた、アイマスク型のディスプレイを手に取るとゴーグルの少年は外側についてしまった傷をいたわるように撫でた。
遠い目をしてかわいた笑いを浮かべている。
どうやらあまり楽しい出来事ではなかったらしい。

「へえ、よく無事だったな。っつうかあいつ普段どこに武器隠してんだ」

「まあ殺傷力なんてあってないような模擬弾入りの護身用だったみたいなんスけど。俺は後ろであそこのモニタ見てたんで。あと速攻で本体ぶち抜いて映像落としてくれたんで被害が最小で済みました。心理定規涙目になってましたよ」

そう言って少年は後ろを指さした。
小型ディスプレイとは別に、パソコンにも映像を飛ばしていたらしい。

「ふーん。お前ら面白そうなことしてんな」

「実は動画があります。いつもの実況用に使ってた機材一式はこっち側にあったんで無事でした!」

「じゃああいつ来たら流そうぜ」

「え。来る前じゃだめなんスか」

「その方が面白いだろ」

リーダーの口から出ると提案も決定事項になってしまうらしい。



その後。
小遣い稼ぎのバイトを終えて戻ってきた心理定規の前で、ゴーグルの少年秘蔵のムービーの上映会が行われた。

「内緒って言ったよね!? なんで彼に話しちゃうのかな。おまけにビデオがあるとか聞いてないんだけど?」

「いつもの癖で幾つか撮ってたやつがっスね後からひょっこりっスね……でもどこにもアップとかしてないっス」

普通に撮れていれば、『悪戦苦闘する女の子のゲーム初挑戦』って感じの微笑ましい動画になったかもしれない。
けど、心理定規がとてもネットには出せない様なオチを付けてしまったのでお蔵入り確定だった。
発砲する中学生とか少なくとも日本ではNG過ぎる。

「もうやだ……信じらんない。ちゃんと同じの買ったし、部屋の修理もしたし。ごめんねおしまいって話したよね。何でまたこんなことするの? なんで見せちゃうの?」

心理定規は腰に手を当てて少年を怒鳴りつけていた。
大画面で失態を流されたのだ。当然ながら怒っていた。
珍しく大声を出す彼女の剣幕に、誠意のアピールとして床に正座をしたままゴーグルはひたすら頭をさげつづけた。

「それは、そうなんスけどね? ええっと俺にもいろいろと事情がっスね?」

ちらちらと垣根を見ながらゴーグルの少年は言い訳をしたが、リーダーは弁護なんてしてくれなかった。
それで大体状況は分かったのだろう。
心理定規は話にならないと思ったのか怒りつかれたのか、ぽすんとソファに座った。

「あーあ。ショックだわ……私すっごく傷ついた。ゴーグル君ってばひどいんだから。どうしてあげようかな。君の彼への心理距離を操作しちゃおうかなー」

「そんなこと出来んの? っつうか俺関係ねえよな」

心理定規の問題発言に、我関せずを通していた垣根がやっと顔を向けた。
それでも。
二人で勝手に騒いでろ、みたいな迷惑そうな顔をしている。

「どうせけしかけたのはあなたなんでしょ。二人で私のことからかってたんだから悪いのは一緒よ」

むくれた顔で頬杖をつくと心理定規はぼんやりとゴーグルの少年に目を向けた。
ため息混じりの沈黙に嫌なものを感じたのか、少年はあわてて立ち上がった。


「待って下さいっス! 心理定規前に、悪趣味なことはしないって言ってましたよね? 言ってましたよね!」

「君が先にいじわるなことしたんじゃない。えーっと……何で君、かなり親密な距離にアニメのキャラクターがいるの? この名前ってそうだよね?」

「心理定規! 心理定規!! タンマっス。絶対に止めて下さい。俺はまだ来週の放送も明日の太陽もこの目で拝みたいんです!! 遠回しに死刑宣告は嫌ですって」

「ふーん。どんなの」

「確かよく名前出してる……あー、これかな?」

心理定規はスマートフォンで検索すると、出てきた画像を寄ってきた二人に見せる。
アイドルみたいなフリフリ衣装のいかにもなアニメヒロインみたいなイラストだった。
だが、それを見たゴーグルの少年はなぜかほっとしたような顔をした。

「あ。それなら多分大丈夫っス。まだ」

「じゃあこっちのは?」

今度出てきたのは、なんてことのなさそうなアニメキャラの画像だった。
長い髪にセーラー服、大人しそうな顔で笑う女の子。
それに今度は少年の剣幕が変わった。
合わせた両手を頭の上にかかげて拝むように心理定規に頭を下げた。
そりゃもうお白洲にひったてられた罪人か、セーブしてないのにゲーム機の電源切れと宣告された、みたいな必死の形相だった。

「その子は洒落にならないんで止めて下さい。もし垣根さんを一瞬でもそんな風に捉えたら俺は即愉快な死体決定っス」

「お前にとってそう言うのって、なんなの」

「日々の癒しと生き甲斐っスかね」

「何でそれで死体になっちゃうの?」

意味がわからないのはいつものことだけど、本気でわけがわからない。
そんな顔をする二人の前でゴーグルの少年は、苦しい胸を掻くように体の前で手を握った。



「心理定規は……俺が
『垣根さん昨日も今日も明日も未来永劫かわいいっスね! もはや世界の常識不変の真理っスね! 垣根さんペロペロ( ^ω^ )』
とかトチ狂ったことを悪気無く、つい、ポロっとうっかり本気で言ってしまったりしてもいいんですか? それで済めばいいんですけどね俺は嫌です絶対嫌です本当に!! どうか勘弁して下さいこの通り!!」

懺悔か祈りのポーズで叫んだ少年だったが、あんまりにもあんまりな発言に周囲の空気は急速に冷え切っていく。
心底軽蔑したような目を向ける垣根。
今にも息絶えそうな可哀想なものを見たような顔をする心理定規。

「テメェ、じゃあ望み通り死ねば?」

「あのね。私はさっきすっごく恥ずかしかったの。いやだったの。だから君もそんな気持ちをわかってくれるといいなぁって思っただけよ? そこまでしなくていいから。ね?」

「恥ずかしくて死んじゃうってのがシャレじゃなくてマジになるって言ってるんスよ! 
垣根さん、怖い顔はやめて下さいおねがいします。言いませんから、万一垣根さんが天使みたいに可愛いあの子に思えてもそんなこと冗談だって口にしませんから!!」

「誰が天使でメルヘンだって?」

「言ってません! 俺そこまで言ってませんからぁああああ!!」

バキバキと伸びた翼が近くの椅子やテーブルを押しのけるのを目の前にして。
ゴーグルは後悔どころか燃え尽きたような顔をしていたが既に手遅れだろう。
自分は能力も手も出さずに、ほとんど何もしないで最終的には少年をこらしめることに成功した心理定規は。
男の子って面白いなあ、みたいな顔をしてドタバタ騒ぐ二人を眺めていた。



ドーモ。
久しぶりにメインっぽいのを。書き手体感でデレ大目だったからかなんか垣根が不機嫌です。
ゴーグルごめんよ。残りの二人の人間性がいまいちわからないからついやりやすくてやりすぎる。まあ原因はリーダーなんだけどね。
安価はまたじゃあまた。

乙ーん
実際垣根のキャラは俺もよくわからんなあ、振れ幅有りすぎて
どんなキャラしてても垣根らしくもあるし垣根らしくもないし

ゴーグル欲望に忠実すぎwオープンな職場だな

>>438
どこの作者?
ここって結構作者っぽいひと来るよね

垣根はギャグキャラは許容できない


学園都市トリビア:スクールで天使はNGワード

しかし楽しそうだなこいつら

垣根が本気出したらどんなゲームでも一月で世界大会二位になれるよ。
一位は一週間前に垣根がゲーム大会に出ることを知って妨害しに来たセロリだけど。

カキネクンの可愛さは不変の真理かあ
ゴーグル(覚醒)とはうまい酒がのめそうだ

アイテムとグループも好きだけどスクールもいいな
暗部のやつらが遊んでんのって和む

普通の話でこんなに垣根でれちゃうと安価ですごいでれるなんてもうする事限られてくるよな
期待してる

手例流とは中国の殺人拳法の一つで欧州から伝来したと言われている。
殺人拳法ながら流儀を重んずるのが特徴で、勝者は敗者の手を切断し、川に流すことで敬意を表す。
現在は派生の摘手例や梁手例などが一般的である。

夏休みもそろそろ終わるな
スクールの夏休みはまだ続くのか待ってる

暗部の呼び出しで夏休みなんて無さそう

ジュラシックワールドみたら恐竜で遊ぶ垣根思い出した
テーマパークとか好きそう

このスレタイからこんなことになろうとはな
ゴーグル裏山すぎ

9月になったけど>>1レスしにも来なかったな

レスとかいいだろ
他にもなんか書いてんじゃないの

>>453
>>1はきっとUR引換券を取るために課金してる

キメセクで忙しいんでしょ

すんげー今更だけど、>>161の描写ってデッドマンズQのオマージュなのかしら

確かにそれっぽいな。
垣根も平穏を求めている・・・?

そんな事より1はどうしたんだ

デレていとクンマダァ-?
(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン

テイトクマスターシンデレラていとくん
略してデレていとクン

待ってるぞー!

シルバーウィークが終わったし
来るよな?

このまま落とさないとは思うけど十月になったから心配

まだかよ
めっちゃ楽しみにしてんだぞ

1もとあるに嫌気がさしたんだろ
HOはアニメ化したけどもう3はやらないだろうし
スクールなんてマイナーじゃネタも続かない

どっかで3期はないだろうって言われたらしいな

あと一週間以内に>>1が生存報告してくれればもう二か月希望が持てるのでオナシャス

はよせんと落ちちゃうで



「俺の借りものが『レベル4以上の能力者』なんスよ! ケータイは使えねーし連絡つく大能力以上のレベルの知り合いなんて垣根さん以外いないんですよ!! 
それにここで高得点をたたき出せればうちの学校にもチャンスがあるんス。ですからどうか俺と一緒に走ってくださいおねがいします失格だけは何としても避けたいんス!! 
でないと人質に取られた俺の大事な」


「はぁ? めんどい。怠い。靴が汚れる」

大覇星祭真っ最中。
二日目、とある競技場内。
観客席の学生用観覧スペースで一世一代の演説を一席ぶっていた少年のマシンガントークがたった三発であっけなく叩き落とされていた。

「そんなざっくり論破しないで欲しいっス。つか垣根さん最後って問題なくないっスか?」

「何よりダセェ。全世界公式行事なんて馬鹿言ってる場所でんな真似出来るか」

突然の事件事故に巻き込まれても微塵もダメージがなさそうなレベル5様は実害より精神的なデメリット、プライドが汚されること理由を盾に首を横に振った。
場内のコースにはずらっと報道用カメラのレンズが向けられている。

「大丈夫っスよ、もしカメラに抜かれても世界規模での垣根さんファン人口がちょっと増えるくらいっスから!」

「馬鹿じゃねえの。お前が大丈夫かよ」

必死になりすぎたのかハイテンションでいよいよおかしなことを口走りはじめた少年に、垣根は心底呆れたような目を向ける。
普段以上のトンだ言動に頭の具合を怪しんでいるらしい。

「君のところの競技は……ちょっと変わってるけどメインは二人三脚なのよね? ちっとも競走させる気がなさそうだけど」

「げ。なんだありゃ。動く障害、ぬかるんだプールに地雷式煙幕……ってえげつねえお笑いの罰ゲームかよ」

観客席の上に設置された巨大なモニターには競技場内のコースの様子が映し出されていた。
その一部を見ただけで、垣根はそのくだらなさに嫌気のさしたような顔をしていた。
この競技場で繰り広げられる競技は。
ただの二人三脚ではない。
ただの借りもの競走でもない。



二人一組で並び立つアトラクションを乗り越える、新感覚アクション強制参加な競技だった。
会場を中心とした競技範囲そのものはそこまで広くない。
だが、子ども相手とは思えないサバイバルアタックを押し出したド派手な演出はまるでスポーツエンターテイメント番組のような催しだった。
学園都市のアミューズメント事業に携わるいくつかの企業がプロモーションもかねて協賛していると噂されるくらい大がかりなコースは派手で、
極めて安全だがものすごく難易度の高いものになっているらしい。
その為話題性、動員される取材カメラと一般の観客数のいずれも高いお祭り騒ぎな種目だった。

「どうスか心理定規! その辺の能力者を協力させてもらって結構っスから!」

「あら。彼の方がずっと頼りがいがあるわよ。あなたもせっかくこんな所まで来て観戦してるんだから……参加してあげてもいいんじゃない? 思い出になるかもよ」

どうしても競技に出場しないといけないらしいゴーグルの少年はいつになく必死だった。
すぐさま標的を変えようとする少年の動きに心理定規はいち早く別のルートを示してそれを回避しようとしていた。
それも、垣根の気分を盛り下げないように巧みに言葉を選んでいる。
読み合いを駆使した本気っぽい頭脳戦をすごい小規模で繰り広げる二人を、本来まとめ役の垣根は一歩引いた様子でみていた。

「お前らって……変わり身早いよな。っつうかお前はここでもいつもの格好かよ」

「流石に自分のところに参加しなきゃいけない時は……あれに着替えるしかないと思うけど。まだいいでしょ」

そう言って心理定規は小さく頬をふくらめた。
仮に彼女の能力強度が4以上、大能力者だとしても。
体操服どころか、学校指定の制服でさえない心理定規は今すぐハードな競技に参加なんてできそうになかった。
本来避けそうな垣根に真っ先に話をそらしたあたり、本人は協力して関わるのもいやなのだろう。
と言うかドレス姿の女子を走らせるとかそれだけでも間違いなく大事故が起きる。
そちらは対策済みかもしれないが、心理定規に限っては一般人の衆目に晒してはいけない危険なおまけが短いスカートの下から出てきそうで怖い。

「はあああ……もう、だめだぁあ」

手詰まりになってゴーグルの少年はがっくりとその場で膝をついた。
その時だった。



「よっこいしょーー!!」



「うえぇ!?」

謎の雄たけびと共に頭上から何かが降ってきた。
ズズン、と大きな地響きを起こしたそれは片腕を大きく上に突き上げる。

「うしっ! 根性っ!!」

バウーン! と特撮ヒーローものっぽい煙と爆音の特殊効果を自力で起こしたのは。
もこもこしたまるっこいシルエットの未確認飛来物体だった。

「な、なんスかこれ? 垣根さん、空から女の子が! じゃなくて手作りっぽい…着ぐるみ?」

「オレは大覇星祭非公認マスコット!! そ……根性くんだ! おまえらの根性を応援してやるぜ!」

「うわぁああ? なんだこれめっちゃ早い分身、いや残像?! なんか動きが怖い!」

コンジョウゥ! と謎の鳴き声をあげながらゆるキャラっぽい空から落ちてくる系のなにかは突然、着ぐるみにしては激しいアクションをはじめた。

「一体なんなんスか……って垣根さん? 心理定規まで。なんで急にそっぽ向くんスか? そんな他人みたいな顔って……聞こえて、ない…? ガチシカト…だと…?」

他人の振りどころか。
ゴーグルの少年も、この「オレか? オレは根性の妖精だ!」とか自称しそうなもこもこしたものも。
まるで見えていない様な反応の二人に、少年は呆然としていた。

「おいお前。そんなに落ち込んでどうしたんだ? もっと根性出せ! 根性!!」

「そうだ……超障害物借り物二人三脚に出てくれる大能力者よりすごい人がいないと俺はっ、俺の大事なものが……!」

「そんなことか根性! オレに任せろ根性! ったく、お祭りなんだぞ! 決まった競技にしか出れねえとかやることちっちぇえんだよな!」

「なんスか急になんでゆるキャラが俺の足をぐるぐる巻きに?」

ゴーグルの少年の持っていたバンドを奪い取ると、根性くんは勝手に自分の足首らしきところと結んでしまった。
おっ、また向こうの組かちょうどいいぜ、張り合いねえと面白くないからな、と意味の分からないことを言っている非公認マスコットはすっかり競技に参加するつもりらしい。

「何とか競走のルールは? 根性。手短にな根性」

「参加者と協力者がこれとこれを着けて、スタート、ゴールと途中の障害のセンサーを全部通って最後の借り物チェックをクリアしたらおしまいです」

もこもこしてるくせに威圧感ハンパない根性くんの気迫に押されて彼は簡潔な説明をした。
足についたバンド、そして手に持ったGPS付きのリストバンドを指さしてからゴーグルの少年は会場内の特設ステージに張られたゴールテープを指した。

「よーしコースはあっちか根性! 干渉数値を気にすんのはスタートしてからだったな根性。
まあ数字聞いてもよくわかんねえしどーせオレの競技じゃないからこまけえこたあいいだろ根性」

「えっあの」

「よっしゃあいくぜ! ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームすごい……ダッシュ!!」

「ちょt」

いきなり降ってわいた助っ人の登場と勢いについていけてなかったゴーグルの少年は。
一瞬で本当に見えなくなった。

「きゃっ! 衝撃の余波でこれって。もう!」

突然の暴風にスカートを押さえると心理定規はスタート地点の方をにらんだ。
肝心の走者の姿は見えないが、そこ目がけて一直線につむじ風のようなものが伸びていく。

「行ったか」

「あら。他人をわざわざさけるなんてあなたらしくないんじゃない? あのぬいぐるみの中身がどう考えても超能力者だから?」

「嫌なんだよああ言う言葉の通じねえタイプ。人の話を聞く気のないヤツは特にな」

コキンと首を鳴らした垣根はうんざりしたような顔をしていた。
厄介ごとが二つ、二人の前からものすごい勢いで遠ざかっていった。


「おい。何かあっちで派手なのが上がってっけど」

「ゴールしたみたいね。彼は無事かしら」

高さ一五メートルほどのステージの上に作られたゴール地点では派手な三色の煙が特撮ものっぽい爆音と共にたちのぼっていた。
超難度のコースクリアに拍手と歓声が沸き起こり取材のカメラが勝者にレンズを向ける。
競技場のどでかいモニター内では、物理法則を無視していそうな動きではしゃぐ超能力者入りの着ぐるみが暴れていた。

「ちースおわりました……」

砂埃となんだかドロドロしたものと白い粉にあちこち塗れて、体操服に焦げまでつけたひどい格好でゴーグルの少年は観客席にやってきた。
カメラが追い切れていなかったところも含め、障害物コースはなかなかハードだったらしい。

「根性くん大活躍で上位に入ったのはいいんスけどまだ目の前がぐるぐるして…
うーん垣根さんが三人見えるぅうう……あなたが落としたのは金の垣根さんですか、銀の垣根さんですか……金なら一枚銀なら五枚……」

「やだ。そんなにいたら大変じゃない」

「あの着ぐるみどうした」

「ゴール直後になんか係とか警備員に追いかけられてものすごい速さで去っていきました。でもおかげでボーナス付きで得点ゲットっスよ! 
いやー怖かったけど非公認マスコットさまさまっス!! ってなんで二人ともそんな冷たい目なんスか 俺がんばったんスけど?!」

「だって。ねえ?」

「結果出したのお前じゃなくてあの着ぐるみだろ」

何言ってんだろうこいつ、と言う二人の指摘にそうなんスけどねえ?! と叫んでゴーグルの少年は頭を抱える。
圧倒的なレベル差の相手に文字通り必死になってついていった少年の苦労は残念ながらいまいち評価されなかった。


「非アクティブ低フィジカル勢にこんなハードな競技をあてるなんてあいつら覚えてろ。前日のバルーンハンターがうちの種目にあったら良かったんスけど」

「どうなるんだよ」

「えーっと」

……競技開始から一〇分が経過していますがハイペースで風船が割られていきます!
突然飛んでくる球に対応できる選手もいますが……しっかし何が起こってるのかよくわかりませんね?

どうやらどこかのチームに『念動力者』がいるようだけど。遠隔操作が出来るならこの競技相当有利ね。
威力の高い能力で動く標的の頭部に乗せた紙風船を狙うのはかえって危険だ。

見えない狙撃手、序盤から攻めてるけどこんなに飛ばして大丈夫かぁ?!

『空間移動』では精密な計算と高度な演算が必要だけどそう言った縛りがないのも単純な能力の強みだけど。
ほぼ同時に離れたポイントでも攻撃している点からも能力者は複数いるとみるのが自然だろうと……


脳内妄想で都合のいいゲーム展開をざっくりシミュレートすると少年はうんうんうなずいた。
勿論、余計な装備は競技場に持ち込み禁止です、と言われたら地味に一つ一つボールを操作して割っていくしかない。

「ゴーグル有りでいいんなら、誰がやったかよくわからないまま、いい展開に持ち込めそうな気がします。クラスメイトにカメラ頼めばいけますね」

「それって盛り上がんの」

「観客はつまらないかもね。君あっちこっちひどいけど、大丈夫?」

「あー、学校戻って着替えますよ。って、ソッコーでカムバックメールかよあいつらもっと功労者をねぎらえっての……お二人とも、じゃあまたっス」

文句をいいながらもうれしそうな顔をしたゴーグルが行ってしまうと垣根は隣の心理定規にどうする、と声を掛けた。
早くも飽きてしまったようなやる気のなさだ。
ダサカッコ悪く障害に苦戦する選手たちは繰り返し見るほど面白いものではなかったらしい。

「そうね。私も競技があるからもう少ししたら行かないと。あと午後にも、一つあるけど……なぁに」

「いや? 客席から手の一つも振ってやろうか」

「いいわよ? 別にわざわざ見なくたって。そう面白いものじゃないから」

「そうだな」

頬杖をつく心理定規はそのままにして垣根は先に席を立った。

「けどまぁ、暇だからな。さーて、後はどうすっかな」

ナイトパレードは見た方がいいんだろ、とぼやくと垣根はつまらなさそうに欠伸をしていた。
日が暮れるまでの時間潰しに悩み始めた横顔に心理定規がため息をつく。

「あなたこそ所属校で何かやれば良かったんじゃない? 似合わないことしてるあなたなんて珍しいもの。応援くらいなら、してあげてもよかったわよ」

「……そうかよ」

垣根が睨むように見上げた先のオーロラビジョンには懸命に競技に取り組む生徒たちの姿があった。
夢や希望、絵空事ではなく目の前にある勝利をつかもうと汗や泥に汚れながら描かれる青春の一ページが大きく映し出されていた。


『第3レースを開始しています。走者が制限時間内に競技場に戻らない場合はその場で失格と見なされます。参加者の皆さん、ご注意ください』

場内のアナウンスが聞こえる。
競技場からそう遠くない場所で一人の男子生徒が歩いていた。
足取りは重く覇気に欠けた様子で、おまけにふらふらしている。

「戦う前から勝負は終わったんや……こんな借りもん……せめて女子、いやロリショタならやる気もでるんやけど無理やん。
こんなん無理やねんなー。まず、見付からへんって……のぉっ?!」

「あぁん? なんだコラテメェどこに目ぇつけてんだよ」

うつむき加減でぼやいていた青髪ピアスはコントのようなリアクションで後ろにのけぞった。
前からやってきた茶髪に鼻ピアスの男子学生とぶつかってしまったせいだ。
青髪ピアスとキャラが被りそうで被らないちょっと被るキャラ要素をしているが、こちらはどう見ても違う方面でアウトだった。
大覇星祭なんて関係ありまっせーん! みたいなTHE不良な格好をしたお友達がたくさんいた。
スキルアウトのみなさんで、間違いない。

「なんだこれ。借りもの競走? つまんねーことしなきゃならないヤツらは大変だな。見ろよこれ」

青髪ピアスの手から落ちた、でかでかと競技名の印刷された紙切れを拾い上げると茶髪鼻ピアスはそれを仲間に回した。
開いた中に書いてある、二人三脚のパートナー兼借りものは。

『外人傭兵部隊に所属してそうなでかくて重いマッチョマン』

競技の助っ人としては大当たりの借りものでも、開発された能力の評価が極めて高い学園都市の中ではガチの体育会系はなかなかハードルの高そうなオーダーだった。
そのとき。
青ピの前をふさいで笑っていた不良少年達の後ろから。
ゴリラと、フランケンシュタインの怪物のハーフみたいな日本人離れしたガタイの男がぬっと現れた。
仲間の手から紙切れをつまみあげると。
それを読んだでかくて重そうなマッチョマンは、
「……手伝うか?」
そう尋ねて青ピに首をかしげた。
見た目によらず親切な方だったようだ。


(いややぁあああそっち!? 絡むんでもカツアゲでもなくそっちぃ? なんでそこ、見逃してくれなかったん? 
こんなギャップ無駄やん萌えへんもん、ちぃっとも萌えへんから! 筋肉でも巨大でも性別:女子なら別としても!!)

ものすごく大当たりっぽいけど絶対に肩を組みたくない借りもの候補(仮)の出現を青ピは脳内で激しく嘆いた。
引いた借りものが女子でオーケーそうだったら合法的に。
いやルールだから仕方ありませんがなにか? と堂々とNO職質、YES密着だった筈なのに。

やっぱり日頃の行いとかあるんかなあ、カミやんの不幸って感染るんかなぁ……と青ピは乾いた笑いを浮かべていた。

「あははは…大丈夫やって。ボクも丁度サボったろーと思っとったとこで……」

そう言って不良たちにさよならしようと背を向けようとした青ピだが、そこで街頭のモニターが目に入った。
近くの競技場の様子を流しているそれには、クラスの奴らと小萌先生が応援しているところも映っていた。

「小萌せんせー、みんなぁ…ボクは、ボクはぁああ……なんて、なんてことをッ!!」

今まさに私欲にかられて欠場してやろうと目論んでいた人面獣心鬼畜青髪ピアスの邪智暴虐非道の所業など彼らは知らない。
ただ、青ピが競技場に戻ってくることを。
そして、全力でゴールテープを切ることを待ち望んで、いや信じてあの場に立っているのだ。
「みんなの気持ちを裏切れない」と「マッチョマンはダメ。マッチョマンはダメ」の相反する感情にさいなまれて青髪ピアスはその場に崩れ落ちた。

「ううう……この青髪ピアスにはみんなに合わせる顔なんてないんやッ」

「立て。仲間の所に戻るんだろう」

その肩を叩いたのは。
パーフェクト借りもの要素を体現したマッチョマンさんその人だった。

「駒場のリーダーが」

「出場するぞおまえらあ!!」

「っしゃあ! アレ用意しますか?」

「構わん。小細工は、無しだ」

どうやらリーダーらしいゴリマッチョ氏が手下っぽいやつに首を振ると、周りの少年たちのテンションがますます上がった。
よっしゃカメラ用意しろ、とかなんとか勝手な声援が上がりはじめる。
青髪ピアスの目の前でものすごい勢いで退路が断たれ、いかっちいオニイサンとなかよしこよしおてて繋いで出場への道に向けてルートが狭まっていく。



「ガキ共に勇姿を見せつけてやってくださいよ!!」

「……行くか」

何が決定打だったのか。

それまで陰鬱だった男の声が一段と真剣さを増していた。
なぜかすっかり参加する気も覚悟完了しているマッチョマンさんを前に、とてもじゃないが青ピがお断りできる空気ではなかった。
きっと言っても周りの奴らが聞いてくれないし、今度はそれでスキルアウトの団体様にボコボコにされそうである。

(だがしかぁあし! ばっちりゴール出来たら小萌せんせーにほめてもらえるやん? なでなで付きでッッ!! 
おまけにクラスのヒーローになって帰ったらもうそれこそ女子の矢印、フラグの総取り……に、とどまらず! 学園都市さらにはテレビの向こうの女子の溢れるラヴがっ……ふはは、カミやんにばっかおいしい思いはさせられへんよねーっ!)

想像妄想たくましく、一気にテンションをぶっちぎらせた青髪ピアスは勢いよく立ち上がった。
その横に不良少年のリーダーが並ぶ。
青ピも背は高い方なのだが。
この「気は優しくて力持ち(おまけに顔怖い)キャラ」っぽい御方は更に縦にも横にもでかかった。
革のジャケットの下はプロアスリート並みに鍛えられた鋼の肉体だろうと素人目に見てもわかる。
障害物競走にはものすごーく有利だろうが、たとえ足手まといだろうとパートナーはかわいい女子がいい。
二人三脚の理想展開、足がもつれてラッキースケベなんて冗談じゃない。
もし青ピが全力で転んでも相手の軸は一ミリもブレない気がする。
競技内容におあつらえ向きすぎる屈強なパートナーをゲットした青髪ピアスはこの試合には勝てそうだが、男としての勝負に負けていた。

「やっぱりいーやーやーぁああああ!」

肩をつかまれ、ちょっとひきずられるようにして会場に戻っていく青ピを、盛り上がった不良少年達は大きく手を振って見送っていた。

ドーモ。

青ピ「って言う夢をみたんやけど。いやー、おっかなかったわー」

うんまたなんだすまない。
根性つながりでモツ鍋さんでもよかったんだけど謎解の方がロリの頂点競ってたからゴリ場さんにしました。
ロリの味方とロリの天敵が手を取りあったありえねー大覇星祭いっぱつネタでしたどっとはらい。

いつからレスもしてなかったっけ…と1は自分のふがいなさを見下げ果てつつ小ネタで延命とお茶を濁そうと目論みます。

前回のスクールもの本編分は、卵の割れる音で新耳袋の怖い話を思い出した、昔のゴーグルくん能力ネタリサイクルもちょろっとしたやつ。
そんときのありえねーネタもみつかったから供養しとく

垣根「エナジードリンクって。こんなん飲んでうまいのかよ」
ゴーグル「試してみます? これは通販で買ったマジモンなんで、その辺のコンビニのより効きます。シュガーフリーのもあるんスけど」プシッ
垣根「ふーん」ゴク

バサッ

ゴーグル「え?」
垣根「なんだこれ。あれ? 消えねえ」
心理定規「何してるの? もう気はすんだんじゃなかった?」
垣根「いや…なんか翼が勝手に、っつうか…しまえねえんだけど」
心理定規「それって収納するものだったの?」
ゴーグル「あのCMほんとだったんだ? レッド○ルすげええええええ!」

当然の如く没。翼がーほーしーいー

チャンスをみつけてまたきますなるはやで

パズデックスの垣根記念カキコしようと思ったら来てた、乙
落とさないならどんなスローペースだろうが待ってる
全レスも待ってる(ニッコリ

SSの更新万歳!Hurrah! Ура!


午後のファミレスの一角。
比較的静かな奥のテーブル席を『スクール』のメンバーが陣取っていた。
その前にはどれも中身の少ないグラスが並んでいる。

「……で、今度『スクール』のメンバーの枠が埋まるかもしれねえって話だ。
派遣業者からのレンタル品でも、頭数が欲しいってことなら……その内デカい仕事でも回す気なんだろ」

先程までの電話の声の話を鬱陶しそうに垣根はまとめたが、その顔はちょっと楽しげだった。
一方、隣の心理定規は唇を尖らせてアイスティのストローを弾いていた。

「そんな話をさせる為に、あの人こんなところまで呼び出したのかしら」

「まあまあ。最近活動してなかったじゃないスか」

「その割にあなた達と顔合わせてる気がするけどね」

「確かに高エンカウントっスねえ。そうだ。垣根さーん、あれから艦っち全然やってないっスよね? やりましょうよー」

「……何で知ってんだよ」

むっとした返事にゴーグルの少年はカバンを持ち上げた。

「こう言うのは……フレンドのログイン状況が見えるんスよ。ほら、ここです」

テーブルをはさんでタブレット端末の画面を見せながらゴーグルはそう言った。
ユーザーネームの横には最新のログイン情報が表示されているが、垣根のものは他と比べて随分と以前のものだ。

「言ったろ。飽きた」

そんなあ、まだ全然っスよこれから面白くなるんスよボイス聞かないとさびしいなあってその内生活の一部になっちゃうんスよ? 
いや、垣根さんにこっちの道にはまってほしいんじゃないんですけどね?
と少年の無駄に熱い叫びを前に垣根はうざったそうに片手を振った。

「お前自分で作業ゲームだっつってたろ。何が楽しいんだこう言うの」

「好みのキャラゲットしよう、出たら今度は育てよう、とかそう言うのきっかけにするじゃないスか。ログボとかでもいいんスけどね。
こう言うのは、スタート押しちゃえばなんとなくで続くんス。その内ランキング上位とか報酬とかが見えてくるとまた幅がっスね」


「こんなんに好みもクソもあんのかよ」

ゲーム画面に並んだ萌え系少女キャラの画像を前に垣根は首をひねっていた。
そうは言っても、絵師も違えばキャラタイプもさまざまでこう言うのには、
大所帯のアイドルよろしくどこか一か所一人くらいツボを狙い撃ちしてくるのがあると言うのがセオリーで醍醐味なのだが。

「ツインテが好きだー。五人いたら緑の子! とか。縦セタ最高、ツンデレはやっぱ王道だよなーとか……そういうのないっスか」

「そう言うので好みを判断すんの?」

「あー、そうっスよね。ですよね……」

新人提督様にはちっともピンとこなかったらしい。
心底不思議そうな目をしている垣根の反応に、なぜかゴーグルの少年は打ちのめされていた。
軽く額をおさえていたかと思うと、心理定規に声をかけられて頭を上げる。

「いや…非オタとのフィルタリングの違いを再認識して俺は今ちょっとした衝撃を受けてます。そうっスよね……普通は属性とか気にしないんスよね?」

高身長イケメンクール俺様ホスト系ミステリアス悪役リーダーポジ規格外能力高パラ底が見えない大物感ギャップメルヘンセレブ臭超能力者謎のチェーンetc…
本人にはハイスペックで多彩なタグ付けがされそうだが『スクール』のリーダーには縁のない知識かもしれない。

「はぁ。これ、お願いしていい? 今度はあったかいのがいいな」

「はいっスー! 垣根さんは?」

「炭酸」

男子の意味不明トークを不審そうに伺っていた心理定規はにっこり笑ってグラスをゴーグルの少年の前におしやった。
暗部のミーティングも終わったところで、ゴーグルの少年はファミレス仕様いつのもお仕事に取り掛かるべくドリンクバーへと向かっていく。


「あぁ? 何だよ。話は終わったんじゃなかったのかあの野郎」

着信音を鳴らしながら震えるポケットに向かって悪態をつくと。
うるさい携帯電話を片手に垣根は席を立ってしまった。
その隙に、と言った様子でゴーグルの少年は腰を浮かせた。

「そう言えば、今日はいつもの運転手じゃなかったっスよね。まさか、またコレですか」

首元を指先で一閃するジェスチャー付きでひそひそ尋ねたが。
心理定規の話によるといつもの運転手はただの休みだと言う。
小声で不安そうに聞いてきたゴーグルの反応が面白かったのか、彼女はくすっと笑って目を細める。

「心配? 大丈夫よ。彼もそう無駄なことはしないでしょ。前にやって懲りてるはずだから」

「あん時は、なかなか替えに出来そうなのが居なくって垣根さんイラついてましたもんね」

下部組織から探さなくても、腕のいい専門の業者を使えばいいじゃないかと少年は遠い目をしてぼやく。
上司が目に見えて不調なのは職場の空気も悪くなるし、人員の精神衛生上もよろしくなかった。
そんな経験でも思い返しているらしい。

「そう言うのって一般人ばかりじゃなかった?……ねえ。前の運転手さんのこと、覚えてる?」

「ハイヤーの人っスよね? んーまあ。礼儀正しい、普通っぽい人でしたよね」

「普通。そうね、お子さんは二人、男の子の方は小学校に上がったばかりで娘さんは三つだったかな。きっと、私達みたいにはなってほしくないでしょうね」

カップにポーションのミルクを注いでいた心理定規はそう言って目を伏せた。
持ち上げたスプーンから小さくしずくが落ちる。

「なんでそんな詳しいんスか」

「別に私が聞いたわけじゃないわ。ああ言う人ってつい自分から話を振っちゃうのは職業柄かしら? 
特に男の人は、狭い空間で相手が女の子とみると安心感でも与えたいのか何気ない話題っていうのを頼んでなくても持ち出したがることがあるのよ」

「へえ~。そうなんスか……うわ、俺そんな覚えねーやって思ったらそもそも女子に振れる一般受けしそうな話題も、そのシチュも前例なかったっス」

「得意げにしないで。で、そんな普通の人が、わざわざこんな仕事に関わってたのも……まぁ、よくある話よね」

知ってるけどなぁに? みたいな顔をした心理定規からすらすら出てきたプライベート情報に目を丸くしたゴーグルに首を振ると。
呆れたような顔で眉をあげながら、情報網の広そうな少女はカップを傾ける。


「そう言えば心理定規も運転出来るって聞きましたけど。立候補したりとか…」

「気乗りしないわ。仕事中に余計な気を使いたくないし、もし事故に巻き込まれたら困るもの」

「ですよねえ」

リスクをわざわざ増やしたくないと語る少女にゴーグルは同意したが。
どう見ても学生っぽい女の子が運転席に座っていることの方が、本来は問題なはずだ。
カップを置くと淵に付いてしまったリップを指先でなぞりながら彼女は続いてため息をもらした。

「前みたいに彼が一眠りできるくらいのテクニックを求められるのも、ね。
まぁ、そんなこと言い始めたら今以上に…ものすごく厳選しなきゃいけなくなるんだけど。何とか妥協してもらいましょう」

それか、今度の新入りさんの運転技術に賭けてみる?と茶化した。
そんな話を聞いていた少年は、納得するどころか改めて疑問を深めたらしい。

「それをすてるなんて…じゃなく、なんでまたそれを切っちゃったんスか。垣根さんも。確か……ちょっと言うこと聞かなかっただけですよね?」

入手の難しいアイテムをうっかり処分しようとしたプレイヤーに警告するゲーム内のメッセージを口にしかけた少年は、ますますリーダーのパターンも思考もよくわからない。
そんな顔を心理定規に向けた。

「さあ? あえて言うなら…あの人が暗部の人間じゃなく、普通過ぎたのが原因じゃない? 出過ぎた真似をして、リーダーの言いつけがきちんと守れないのは致命的よ」

ハンドルを握れなくなった運転手なんて置いておけないでしょ、と当たり前のことを疑問にも思わないように彼女は口にした。
同情めいたものも感慨もそこには感じられない。


「あれ。垣根さんがしたんじゃないんですか? ビジネス的な意味だけじゃなく物理的に切り捨てたんスよね」

「そうよ。最終的には…ね。命に関わるほどのものでもなかったし、事故扱いで彼にはちゃんと上から手当てが出たみたいだけど。
もうこんな仕事は出来ないでしょうね。したくもないでしょうけど。そうだ、私たちがそんな目にあっても災害時の保険みたいなのは適応されると思う?」

気軽な思い付きとでもいいたげに少女は可愛らしい仕草で首を傾げた。
冗談なのか、本気なのかわからない。
そもそも想定された事態が、あまり考えたくもない類のものだ。
一応は、組織の頂点に据えて掲げている人間からそんな目には合わせられたくない、と言う気持ちはあるだろう少年は。
あえて真面目ぶった顔で彼女の問いに腕を組んだ。

「天変地異だと場合によるんですよねー。でも隕石が頭の上に降って来るよりはありえそうで嫌っスね」

「戦争だと免責なんだっけ。死んでもおかしくない状況では仕方ないのかしら」

「垣根さん戦闘能力は充分そっちで通用するクラスっスけど。うーーん。そう言う意味じゃ、俺たち暗部はいつ何が起きても、ってとこありますよねえ。その辺は自己責任で、って感じっスかね」

「まぁ、私が使えないのにそんなものがあってもね。それでブランドの新作が着れるわけじゃないし」

「同感っス。運よく生還しても入院してる間に録画予約がふっとんでたりしたら川向こうのお花畑にもっかいダイブしたくなります」

ブラックなジョークの体でオチをつけたところで、心理定規は通路の先をみると一度席を立った。
奥のシートに座った垣根はおしゃべりしていた二人を見比べた。

「何の話だ?」

「使えねーのに金だけあっても困るんで、それよりは万一ん時に積み荷を燃やしてもらうことを考えねえとって話をっスね」

「なんだそりゃ」

災害や天変地異、はたまた世界規模のドンパチとある意味並べられそうになっていた一個人が戻ってきて。
縁起でもない、くだらない雑談は終わった。


また着信音が鳴る。
またしても出所は垣根。
今度はスマートフォンだった。
だが垣根は通話はしないで画面を触っていた。

「あれ。出ないんスか」

垣根はちょっと面倒そうな顔をすると、
「こっちはプライベート用だからな」と言って画面をスライドすると着信を切った。

「放っておいていいんスか」

私用の電話なら余計に出ればいいのにと思うところだが。
気をつかっているのか、嫌なのか。
垣根本人は、登録してねえ番号には出ねえ、と首を振った。

「迷惑なラブコールだよ。心底ウンザリしてるんだが、一つ着拒するとすぐ別の番号から掛けてきやがる。こう言うのは無視が一番だ」

「えっ。垣根さんにそんな人がいたんスか?」

予想外の、「暗部のリーダーにまさかの恋バナ浮上か」、「お相手は某アイドル似の一般女性!?」なんて三面記事の見出しみたいな話題の予感にゴーグルの少年は食いついたが。
口にした本人は楽しいどころか、渋い顔をしていた。

「そんなんじゃねえよ。言葉通り受け取んな」

「ああ。確か相手は……男の人だっけ」

「え」

またしても訳知り顔、事情通の心理定規さんの問題発言に、ゴーグルの少年は困った顔でしばらく二人を見回していた。

「垣根さん……イケメンも大変なんスね。それともストーカーっスか?」

「ばーか。違えよ、だからそんなんじゃねえっての」

「あなたがおかしな言い方するからだと思うけどな。でも熱烈なラブコールには違いないんでしょ?」

なんなんスか、って言うかまた二人でひそひそバナシっスか? とゴーグルの少年が騒がしくなりはじめたところで。
垣根は気忙しげに髪をかきあげた。
不服そうな視線を向けられた心理定規は私? 関係ないわ、と言わんばかりに肩をすくめる。


垣根は眉間にしわを寄せたまま大きく息を吐いた。
ものすごーく忌々しげに自分のスマートフォンを睨みつけてからやっと口を開いた。

「潮岸だよ。統括理事会理事の一人。ったく、番号も部屋も前に変えたんだがな」

「な、何でそんな人から? 『スクール』じゃなくて垣根さんに直電が?」

突然のビッグネームにゴーグルの少年はガタッと体を起こした。
知り合いに超能力者と言うのも一応はかなりのものだが、「組織のリーダーがめっちゃすごい人」と「名前は聞いたことあるなんかすげーえらいひと」では随分印象が違うらしい。

「軍事関係はあの人の仕事みたいだから。彼の能力を活かして色々作りたいんだって。前から声は掛けられてたみたいよ。プレゼントも随分来てるんでしょ?」

なんて言いながら。
垣根がいつになく困った状況にあるのを見て心理定規は楽しそうに笑った。

「全部突き返してるぞ」

「それ。この前も『スクール』傘下の構成員の子をつきあわせてたよね。理由は伏せて、わざわざあなたの部屋まで様子を見に行ったんでしょ?」

その言葉にゴーグルの少年はピンと来た顔をした。
夏休み前後、このリーダーは仕事もないのにやけにあちこちの『スクール』の隠れ家に顔を出していると見たり聞いたりしていたのだが。

「もしかして垣根さん、最近こっちによくいるのって」

「ああ。そうでなくても、俺名義のとこにはよく交渉人とかがうろついてんだ。暑くなるとヤブ蚊も増える。んな所に帰るのも面倒だろ。そう言う連中を一々熨斗付きで帰らせるのも最近じゃ飽きてきたし」

垣根は今度は気軽に答えた。
ひょっとしなくても、自分の部屋にあまり帰っていなかったらしい。
学園都市内に暗部組織のものとは言え、勝手に使えるセカンドハウスみたいなものがゴロゴロしているとあまり不自由は感じないのかもしれないが。
聞いていたゴーグルの少年は、おかしな話だと言いたげに眉を寄せた。
そして。
超能力者の倍返しなんて想像するのも恐ろしいのだろう。
詳しく中身を質問するような真似は自粛したらしい。

「大丈夫スか垣根さん。牛乳とか冷蔵庫の中のもんダメにしてませんか」

「俺の冷蔵庫は最新式だ。まぁ、腐る様なもんも放置してねえけど」

ふと。垣根が首を傾げた次の瞬間。
バキバキと音を立ててゴーグルの前にあった空のグラスが上からきれいに潰れていった。
一瞬前まで容器だったのに、今はちょっとおしゃれなコースターのようなものに変貌している。

「なんスか?! 俺何かしましたっけ?」

「ムカついた。何でかはよくわかんねえけど」

場を和ませるつもりだったのか適当に振った話題が予想外の方向に転がってしまった。
加害者本人もよくわからない怒りをぶつけられた不運な無機物に、少年は申し訳なさそうに目をやった。


「幾らなんでも個人情報漏れすぎじゃないっスか? 待ち伏せプレゼント攻撃とか芸能人の出待ちじゃないんスから」

「そうかな。まぁ、家に押しかけるのは確かにちょっとやり過ぎな気はするかも。向こうから呼びつけるくらいはしそうだけどね」

「第四学区のお高い料亭で会談とかっスか。かっけー」

心理定規とゴーグルがのんきに議論しているのを。
垣根は腕組みしながら見ていた。

「っつうことは、少なくともお前らが売ったんじゃねえのか」

何気ない垣根の言葉にゴーグルの少年は激しく首を振った。
ついさっきの物騒なたらればトークが頭に浮かんでいるらしい。
もしどこかから取引をもちかけられて、どんな魅力的な報酬が用意されようと。自分の命には代えられないだろう。
この組織のリーダーを裏切るなんて真似をしたらそんなものはまとめてあっさり消し飛ばされてしまいそうだ。
裏切ったなんて真っ黒間違いない事態では出過ぎた真似、で済む様な余地もない。

「んなことしませんよ! ってか、知らねえし……ええー……垣根さん俺ら疑ってたんスか。そんなに信用ねえっスか」

「『スクール』の関係者がリークしてたんなら、私達の使ってる隠れ家なんて真っ先におさえられてると思うけどな。
まあそんなことしてもすぐに上にばれて、悪い子はとっくに首を切られてそうじゃない?」

「それもそうか」

一人へこむゴーグルの少年を放置して。
話を続けていた二人は首を傾げ、肩をすくめて顔を見合わせた。


「先回りしてこっそりサプライズってのは、好意のある相手だから喜ばれるんスね。そうじゃなけりゃただのこわーいストーカーっスよね」

アニメや漫画のような展開は補正のない現実世界では通用しないのだと深くうなずくゴーグルの少年。

「学校の先生が生徒の連絡先や住所を知ってるのは別におかしなことじゃ無いんだけどね。きっとそういう人は情報源なんてあちこちに持ってるんでしょうし。まぁ、後は本人のモラルの問題と感覚の違いになっちゃうかな」

悪気のない押しつけが好きな人っていうのもあり得るのよね、とひとまず疑問の落としどころを具体的に提示してみる心理定規。

「確かに理事って言ったら、学園都市って学校の偉い先生みたいなもんっスけど。納得しちゃっていいんスかこれ」

「この街で俺らが管理されてるなんざ、今にはじまったことじゃねえだろ。わかり切ってることを今更ゴチャゴチャ言うんじゃねえ」

そう言うものだ、と知っていても割り切って、まして愉快な気持ちにはならないだろう。
垣根はうんざりしたように息をはくと氷のなくなった薄いコーラを飲みほした。


「お偉いさんからプレゼントって何が来るんスかね。中見ました?」

「ここのさぁ……リストに良さそうだと思ったもんを入れといたら、たまに何か持ってくるみたいなんだよな。全部確かめてるわけじゃないけどさ」

「カッキーさんの欲しいものリスト……怖っ。こんなもんまでチェックしてるんスか? 学園都市のサンタクロースか足長おじさんか知らないっスけど有難迷惑っつか怖いっスね。
俺こんなん人にみられたら恥ずかしさにのたうちまわってプライドの粉砕が死因でニュースになっちゃいます」

「そりゃ安いプライドだな」

スマートフォンで垣根が開いて見せたのは、よくありそうな通販サイトだった。
その中の会員ページの一部をのぞくとゴーグルの少年は顔をしかめる。

「こんな薄気味悪い真似されて、もし物贈られてもだぞ? 喜ぶとか本気で思ってんのかな。こっちの情報が筒抜けだって脅しにしてもちょっと遠回しすぎねえか」

「潮岸って、確かそれなりに高齢だったわよね」

「ボケか。なんだ、施設にブチこんでジジイの見舞いに死に花でも贈ってやりゃあいいのか。それともあれか。お望み通り頭の上から『未元物質』でも降らして欲しいってか」

苛立っているのか、ふざけているだけなのか。
垣根の発言はいつになくテンションが高かった。

「そんなツッコミ死んじゃうっスよ、そこはタライにしときましょうって。
じゃあ反・潮岸派の妨害工作って線はどうスか。潮岸のせいにして、垣根さんに嫌われちゃえばいいとか思ってるのがいたりして。
どっちにしろリストを非公開にするか、ダメ押しでアカごと消した方がいいかもしれないっスね」

「嫌がらせは別人とか、余計面倒じゃねえか。相手が誰だって構わねえけど…いい加減泳がすのも甘すぎんのか」

じゃあ潰すんですか、と聞かれて垣根は首を振った。

「馬鹿の相手で消耗したくねえ。関わるのも面倒なんだよ」

その後、「寝床があちこち変わんのも意外と面白えぞ」と言っていたので今の状況も、もしかしたらそれなりに楽しんでいるのかもしれない。

「このショップでID紐付きのアドレス使ってました? 学生IDって『書庫』や他のデータベースもたどれるんで。
セキュリティさえなんとかすれば、個人の開発記録までいけるらしいって噂っスから。最新の現住所くらい楽勝じゃないスかね」

「いや。別に作った方だ」

「じゃあ、サイトの提携先と共有してた情報から漏れたとか?」

「そう言う面倒なことするか? 俺達だって似たようなことは出来るんだ。その気になりゃ個人情報くらいなんとかなるだろ」

んなこと気にしてどうすんだよ、と垣根はあんまり中身のないここまでの議論をまぜっかえした。
いやー出所不明ってもやもやしないっスか、と言いながら頭を悩ませていたゴーグルの少年はふと。
あることに気付いたのかハッとして顔をあげた。

「もしかして……いつもマネーカードなのってそのせいっスか」

「別に。まあこう言う時にも便利だぞ」

「クレジットカードは買い物のデータが残るからね」

「使い捨てで替えが利く、手軽な方が何かとな」

薄いケースに目をやった垣根は大したことがないようにそう口にした。


「相手がほんとに理事かどうかは別として、そう言うストーカーっぽいのに見られてる前提でなんか牽制とかしときます? なんかいい害虫駆除はないっスかね」

「こう言うの入れておいたら? 後は盗聴器チェッカーとか。持っていても便利だけどね」

そう言って心理定規の鞄の中から出てきたのは携帯用の防犯グッズだった。
実際に動きがなくても、素振りだけでも相手の警戒は引き出せるのよとすっかり用意周到キャラになりつつある少女は信ぴょう性二割り増しで語る。

「ちょっとアレな本とかどうっスか? いかにも大人の嫌いそうな、無駄に殴りあってそうなのとか」

次にリストに追加されたのは「バイオレンスヤンキー列伝~ムカツクヤツらのオロシ方~」のコミック全巻大人買いセット。


「よくわからないものがあったらどれが本命か混乱しないかな」

「ミステリのガイド完全犯罪指南毒殺編改訂版」と「サイコパスに学ぶアリバイ作りマニュアル『そうだ、殺そう。で後悔しないためのアフターケアの重要性』」

なんて人生でもそんなに役立ちそうにないハウツー本が二冊。
読者層のニッチが狭すぎて何故発行したのかもちょっと理解出来ない感じのものだ。

「確かに意味わかんねえっス……あ。こんなのありましたよ」

「大人のピタ◯ラ装置その5~ハピ◯リ風事故発生装置・良い子は真似しちゃいけません~」なんて愉快なタイトルのDVDが一本。
木を隠すなら森のなか、ないなら作ってやろうぜ! とばかりにそうやって、別に欲しくもないものをいくつも追加された本人は呆れた顔で向けられた一覧画面を眺めていた。

「人のリストを香ばしい中二思考のガキの本棚みたいにしてんじゃねえよ。ったく、ここまでくるといっそ笑える」

「相手は運送屋じゃなくてわざわざ人使って持って来させるんスよね? 重くてデカいのわざと入れて、持って帰ってもらいます? 
冷蔵庫とか家電とか。後は時期的に生ものっスかね。パンパンに膨らんだ世界最恐のニシンの缶詰めとかどうスか。お、こっちにパーティ用食べ頃指定が出来るやつが……」

「出前や宅配ピザをたくさん送り付ける嫌がらせじゃないんだから」

「ピザ送り返してみます?」

「そういうのは住所がわからねえと駄目だろ。なんで直で持ってくんだと思ってたが、業者使うとデータが残るからそっち対策か?」

「手渡しだとお使いの子にただご馳走してるだけになっちゃいそうね」

そんな風に。
三人揃って散々ふざけた話のネタにしていたところで、ゴーグルの少年は急に真面目ぶって腕を組んだ。

「でもしつこいようならやっぱ対策したほうがいいっスよ。警備員に話し通したり、訴え起こすのもまるっきり無駄ってことないんじゃないスか」

ソッコーでもみけされそうっスけど、拒否の意思は伝わりますって、と改めて進言したがトラブルの中心人物はそんな対処は不満そうだった。




「ああ言う連中に頼るくらいなら自分で何とかするっつうの」

「いくら理事とのコネクションが欲しくても、お互いに利害が合わないならむしろ邪魔よね」

軽犯罪じみた馬鹿な真似を理事本人がしているか、と点はさておいて。
大きな影響力と権力をもった人物が、垣根個人とつなぎをつけたいと申し出ているのは事実だった。
学園都市理事会の一員の後ろ盾、なんて得ようと思って手に入るほどのものではないが。

恐らく求められるだろう対価が『未元物質』だと言うのは垣根にとって大きな問題だろう。
この街の学生たちならきっと少なからず共感出来るはずだ。
特に、高いレベルにいる能力者にとって自分の能力の成果を開発官でもない他人に好きにされると言うのはあまり気分のいい話ではない。
人の役に立つ、世界の為に、技術の発展に、とそれらしい美辞麗句を並べるならならまだしも。
当然のように旨味を利用する気でいる、と言う下心が透けていそうな。
疑念を抱かせる相手にはそれは難しい。

能力としてだけでなく資源としてみても『未元物質』は魅力的で希少な存在だ。
それを占有している垣根帝督を第二位たらしめているのも学園都市における有益さ、その点によるところが大きい。
それを十分に自覚しているからこそ、垣根は相手が理事であってもやすやすと交渉には応じない様子だった。
暗部でつまらない雑用をこなしていても。
自身の価値をポンド単位でバターの様に切り売りしたがるような趣味はないのだろう。

「こっちが下手につついてかえって手間がかかるのも癪だ。今の所はくっだらねえ話のネタにしかならねえな」

垣根帝督が、それこそ本気で取り合えば今起きている問題は解決するだろう。
その問題が片付いても、どこでどんな風にそのしわ寄せが生じるかは不明。
そもそも相手の目的や真意さえ見えていないのだ。
そう言った不確定な部分が出そろうまで待っているのか。
話をするのでさえ、こちらに優位な絶好のタイミングを見極めるためにあえて放っておいているのかもしれない。
まさか、すべらない話の鉄板にでもする気で温めていた、と言うことはないだろうが。
案外、本当にただ面倒なだけなのかもしれない。

「これ可愛い。バッグはピンクもいいなあ」

「あ、あのゲーム新作出てるんスね。次ちょっと見せてくださいっス」

暫くスマートフォンを覗いていた二人はそのうち勝手にショップのページをあちこち開きはじめた。

「お前ら幾らなんでも調子に乗って変なもんばっか入れんじゃねえぞ? 悪趣味な馬鹿に俺の趣味が疑われたらどうすんだよ」

もし届いても受け取らねえぞ、と釘を刺してから垣根はスマートフォンを回収した。
どこか気の抜けた、苦笑いでそれをポケットにおさめる。


店内が混んできて、あたりはがやがや騒がしくなってきていた。
ゴーグルの少年がドリンクバーの前に出来た列に並んでいると後ろから背中をつつかれた。
ついさっきおかわりはいらないと言っていた心理定規は、空のカップを持ち上げて席の方を示した。
テーブルで通話中のリーダーに気を使って席を空けてきたらしい。
持っているのが携帯電話、と言うことは迷惑電話問題ではなく仕事がらみだろう。
どっちにしろ彼にとってあまり愉快な話ではなさそうだ。

「まさか垣根さんにそんな事情があったとは。知らないとは言え俺、相当邪魔してたんスねえ」

「ああ、君結構隠れ家使ってたものね」

「でもひとこと言ってくれたって良くないスか? そしたら被んない様に気を付けるくらいするっつうか。隠すほどのことっスかね?」

「カッコ悪いのは嫌なんだって。話をした時も相当渋ってたし。男の子はほら、面子とかそう言うの気にするでしょう?」

「超能力者って大変ですね」

「彼は特に、かな。イメージとかこだわる方みたいだし」

ちらっと後ろを振り返った少年は、心理定規にちいさく手招きした。

「さっきやけに静かでしたけど、もしかして俺に余計な話したから怒ってます?」

「どっちかって言ったら……悔しいんじゃないかな。私たちに弱みを見せたと感じてるのかもね」

「リーダーって、大変なんスね。いやあ俺手下ポジでよかったあ。隠しごととか緊張感とか重い空気苦手なんで。あ、心理定規は何にするんスか」

能力でグラスを持ち上げボタンを押して、一度に三人分のドリンクを用意していたゴーグルは、短い通知音にスマートフォンを取り出した。
それに心理定規はあからさまに嫌そうな顔をしてみせる。

「君は、もうちょっと気にしてもいいと思うよ。周りの目とかその辺も」

「趣味のことなら大丈夫っス。俺はそういう路線なんで」

カバーからストラップまで『痛』仕様な少年はわかりやすいオタク属性の目印と、飲み物を乗せたトレーを持って席に戻っていった。

ドーモ。

垣根ハロウィンコスプレデビューおめでとう!
お祝いしたかったけど小悪魔なみさきちが二枚もきただけでしたちくせう水泳部もアイテムも揃ったし軍覇もきたしノーマル垣根が増えたよちくせう
どうせ女子はのちのちカナミンショップに並ぶんだろうにな!むしゃくしゃして投下した。今は心臓が痛い。

equ.darkmatter関連で一枚噛んでそうだよなと前々から思ってた潮岸の絡め方がわからなくてこのSSではこうなりました。
田舎のじいちゃん系お土産攻撃(善意)もしくはstkアピール(悪意)なのかは現在真偽不明で。すいません偉い人なのにネタにして。

>>502くらいでまた安価とろうかなと二か月くらいまえは思ってたんですけどね。
もちろん前のも消化はしますがここんとこペースがひどいのでどうしようかなと思っとります。
ずるずるしてるデレメルヘンは次の予定です。おまたせしてますが期待値ハードル低めでオナシャス

この際まとめてレスも

>>400
そうですね!未元物質は最高です。
常識は通用しねえだからピカソでもよかったんだけど原型ありだと再現がすごそうじゃん。
その分削板が爆発した。芸術はばっくはつだー。
まぁオフ時のシェリーさんの趣味がわかんないからな。フォークとチョコパンで感動する人だし。

>>401
えーと貴方は初めまして。のあれをやったほうがいいのかな?めんどいからいい?
垣根がデレてるっていうか……うん。
まだ『滞空回線』は知らない体で書いたからねー。
知ってたらあんなこと言わずに何してやがったさっさとしろ!ってキレると思う。
電話のヤツもそれまで何もせずに放置してた訳だし。
1の頭の中はフツーです。妄想力はそこそこ。レベル3くらい。日常でSS書くには便利だと感じられる強さ。

>>402
ここのは名前はゴーグルだけど全然別もんだしな。まあそれ言ったらキャラみんなそうなんだけど。結局、そこは原作が全てって訳よ。
垣根愛か。そっちもレベル3くらいかな。自分でSSスレとか立てちゃうくらいの強さ。

>>403
15巻終了時でイラストが黒くされてた麦野、砂皿も後で実は生きてました!ってなってたからゴーグルは戦闘不能、生死は不明でいいんだろうけど。
ステファニーの活躍の為に、生死不明で退場から復活を遂げた砂皿と違って、今後確認する理由がないから生きててもゴーグルは原作で出番はないだろな。

>>404
1は普通中庸ノーマルストレートでーす。
そっち系のネタは、どうせなら笑えるのがいいです。

>>405
垣根はあんまり感情移入とかしなさそうだよなーと思ったら熱さの足りない上辺きれいな仮面の秀才みたくなった。そこまでやったら盛りすぎだけど。
常識外のことができる筈なのにその常識が邪魔をするのか…かっこいいな!!

>>407
君はあれか1のソウルメイトか?フォロワーか?ツボ過ぎて素敵だとりあえず笑った。
ビーカーから飛び出すアレイスターってなんかすっっごい懐かしいんだけどどこで見たんだ。みんなやっぱ考えるよな。
理事長はビーカーinでもout+衝撃の杖でもいつか実装されないかなーとたのしみにしております。サイド問わず味方攻撃超特大みたいなボーナス仕様のスキルで是非。

>>407
常識に精通しようとして常識問題っぽいマニュアル本読んだり、『スクール』内でも「今のおかしくねえよな?」ってつい聞いてしまう垣根を想像してしまったがちょっと悲しいだけだった。
自分だけの現実由来の能力振り回してる時点で常識ってのが一般かつ普遍的なもんじゃないよな学園都市に限っては。いかに非常識で枠と殻をぶち壊せるかみたいなとこがありそう。
って言うと>>405が的を得てる感素敵よな。

>>408
一方さんは高校生だよね。浜面も上条さんと同じくらい?垣根も高一か二、それくらいじゃないかとは思ってるけど。
ここのゴーグルは中三から高一くらいのイメージ。心理定規と垣根の間でいいすか。
学園都市は圧倒的にレベル>>>学年その他だからあんま関係ないかもしれないけどちょっとそういう情報もほしいわ。

その風紀委員はすげー爽やかな作り笑顔で朝の挨拶しそうですね。校則違反はとてもじゃないが出来ませんね。

>>409
「『風紀委員』だコラ」って羽バサーする垣根はかっこいいかもしれない。ですの!にインパクトで勝てるか?
うーん、帝春かあ。まだみぬ次回ネタに期待?

>>410
風紀委員は基本校内所属じゃなかったっけ。
支部って各校、各学区内にいくつもある交番みたいなイメージでいいのか?
あの辺よくわからないんだよな。レールガンアニメと禁書原作でも微妙に設定違うらしいし。

最初のがただの単発ネタだったから風紀委員さんネタの続きがあるのかもわからん。
まあまたイベントでなんかネタに出来そうなのがあればやるかもしれない。しかしあのシリーズは教師もみんなメガネか?女子がメガネなのか?
つうかお前らホモが好きか好きだな好きですねー

>>411
生徒会役員である限り委員長はツンを通しそうでもある。デレはくるのか。
今回は潰れて未完 < 一方さんに手伝ってもらい最終的に邪神像が出来上がる方が不幸判定が上っぽそう。

>>412
製作過程で上条さんがやらかしたところを一方さんが修正して、上条さんがしくじったところに一方さんが手を加え……と繰り返すことで上条さんの努力が段々そげられて画伯成分が濃く残ったんじゃないんだろうかと今考えた。
そんなにひどいやつじゃないかもしれないよ。いやわかんないけど。第二位は第一位と直接交渉権が絡むとよくわかんなくなるギャグ方面のイメージ。


>>413
警備員さーんこっちです!風紀委員じゃ埒があきません!
それは個人指導と言う名の粛清じゃないか?そんなに愉快なものだろうかと1は心配します。

>>414
茶碗は叩くものではありませんよと1は遅くなっていたことに頭を下げつつ食卓でのマナーを注意します。

>>415
この夏は暑かったけどパンツと靴下くらい我慢しよう。警察組織のお世話になる前に。

>>416
風紀委員さーん!ですのの風紀委員さーん!危険物の通報です。座標>>416をどっか飛ばしてくださいです。どこか遠くになるべく遠くに精度度外視でお願いします。
何か既に座標ずれてるみたいですけど構わずに。

>>418
ああ大丈夫だ『未元物質』がある
それにここはまだ八月だからね!まだ二ヶ月あるよ

>>419
その下に信頼感や思慕が透けるんですかね呼び方って大事。ベタだけどここぞって時の名前呼びは燃えるな。
おねーさまとかあの馬鹿とかクソガキとかニックネームも大事。
垣根はいきなり呼び捨てだとシカトしそう。


>>419
ちょっと妄想してみた。
なんやかんやで垣根に提督になってもらうには

鎮守府にGO
アレイスター「『直接交渉権』が欲しいか?探せ!この世の全てをそこに(ry」
エイワス「今日からお前は富……提督だ!」
暗部の指令『海洋上に謎の敵性組織が発見された。対抗戦力を率いて迎撃にあたれ』
「えっまだ提督じゃないんですか第一位は既に着任したらしいですよ(棒)」

深海にGO
バレーボールがどんぶらこ
上里君がホワイトを転送(科学サイドに効くのか?効かないかもな)

提督じゃないけどまさかの学園都市で
垣根ホワイト「……白いガキを拾ったんだが」???「ウミ…ドコ?」

こんなとこか。
オリジナルより数倍柄悪いあんちゃんみたいな垣根ホワイトが懐かれてほのぼのとか微笑ましすぎて腹筋が割れるね。物騒で殺伐日常ライフでもいいね。
かたき役が似合うなあ垣根は。深海サイドならノリノリで敵艦出撃させそうだし。
残留思念でサルベージさせるなら、より深海向きではあるかもね。

>>420
艦娘も正体はよくわかってないんだよね?
なるほど禁書と絡めるとそういう設定も出来るんだすげー。
はたから見ると垣根のものすごい遠回りなひとり相撲だけどw
がんばれ垣根提督。
超能力者が提督になりましたって言うと六人中ほぼ全員自ら前線に出張りそうだもんなあ。麦野一人でも相当いけるよ。

一掃の粗大ゴミも沈んでるから深海艦は魔術産って言うのもいけるかもしれない。
対魔術ならプロがいるし、鎮守府に着任するゴールデンレトリーバーはちょっと……いやかなりみたい!!だれかたのむ。

>>421
思えば最初の投下からそんな話したのは1だから原因はそこかな。すまんね。

>>422
そうな。出来る限り書かせていただいてます。>>1も早く六道から外れて、妄想をSSとして吐き出すだけの存在とかになりたいわー。解脱しようにも煩悩しかないけどね。

>>423
なー!禁書の方で、上条さんの出ない暗部パートをはたしてやってくれるのかがもう不安だしお願いしたい。
でも超電磁砲な…もっと絡まないイメージが。

>>438
そこでカブトムシさんですよ。抽出されたポイントと濃度によっていろんなタイプの垣根が…ってそんなに居ても大変そうなだけだがね!

>>439
「様子のおかしなやつ」として受け入れられつつある。『スクール』でも1の脳内でも

>>440
そうなの?まあみんな禁書が好きなんだな。こんなとこまでありがたいな

>>441
ここでも容赦なくボケさせたりオチにしたりとやってまして、ご容赦ください。残りの安価もはっちゃけてるってレベルじゃなさそうなのがもう内容からして続く予感なので。ええ。

>>442
おつありっすー
SSでくらい楽しそうに、してほしいじゃないか(遠い目)

>>443
それなら宇宙人がピコピコ侵略してきても安心ですね!!わざわざ妨害してくれる一方さんお暇か。

>>444
どんな覚醒。そんなスキスロあっても埋まっても困らないか。B連打でキャンセルできるやつですか。まずは心理定規ちゃんが他人の間の距離が操作できるか話し合わないとな。

>>445
暗部はみんな個性的だしな。オンオフのオフ時、休日ネタみたいなのはいいよね。

>>446
ありがとうございます。合間に本編一回くらいはさみそうです。でもあまりきたいはしないでください。

>>447
知っているのか雷電?!

>>448
まだ…ハイ。続きます。ハイ

>>449
暗部の仕事って何してんだろ。上からくる指示によるんだろうけど他の組織と変わらずに邪魔者への対処がメインとか?基本ゆるくても時間問わず呼び出されたりしそう。

>>450
恐竜園いいね遊びに行かせたいね。そう言うのなら超能力者勢かなと思うけど安心力が高すぎてちょっとくらい事故が起きてもあいつら平気で観光してそうだな。クロスっぽいのもやってみたいね

>>451
1も予想外でしたのことよ

>>452-455
ほんとうに1の不徳の致す限りだと…
でもおかしなことはしてない。そこはないよまずないよ>>455。課金はしてないけどBOXは回しまくった。3周しても出なかった

>>456
すまん元ネタがわからない。のでオマージュではないですね。

>>457
垣根の平穏はどこにあるのでしょう、と1は原作の行く先に思いを巡らせます。

>>458
引換券も本体も落ちないとのたうちまわってました(hz

>>459
このつぎだよー(予定)

>>460
カブトムシを720匹捕まえてテイトクマスターを目指す奴かと一瞬思ってしまった

>>461-464
大変お待たせしておりました。

>>465
心配するな。気持ちもネタもまだある。

>>466
いつかの電撃祭だっけ。禁書のキャストさん呼んだけど三期の話は一切なかったとか言う。

>>467
お恥ずかしながら戻ってまいりました

>>468
セーフ?!

>>478
ドラキュラなのに天使の羽がでてしまう垣根をリーダーにしたい。特大変換とかおいしい木原くンリストラ確定。乙ありです…!んな甘いこと言ったってなあ、1を持ち上げてもくだらねえネタしか出てこないぞ!

>>479
ワールドワイドなばんざーい!ありですの

改行大杉久しぶりwいろいろながーく伸ばしまくることで定評がついてしまいそうな>>1ですが。コンゴトモヨロシクしたいです。ではまた

めっちゃ久々に見に来たらまだ続けててビビった

ツッマンネーはなしはいいんだよ
いいからあくしろよ
やらねーんなら養分になっちまえ

本当に久しぶり小ネタが小ネタって長さじゃないぞw
大覇星祭でも心理定規はツンツンで垣根はツンデレ
ゴーグルを見習ってちょっと素直になったほうがいいんじゃないか

乙!
どこのスレも最近停滞気味だから戻ってきてくれて嬉しいっす

小ネタのゴーグル君は相変わらずはっちゃけてんなぁ
そしてそれを受け流す垣根はだいぶ甘いな
金でも銀でも未元物質でもない垣根が欲しいよ

今回の潮岸の件ってファミレスで黒ひげ危機一髪やってたときに垣根と心理定規が話してたやつ?
エンカウント率とか、話の持っていき方が丁寧ですごい好きだ
ごく自然に冷蔵庫ネタ入れて笑かすところもなww

1さえよけりゃまた安価やってよ
スクールのはなしもあるしここ落とさなきゃ待つから
白カブトムシとフレメアでやってほしいんだけどどう?

カブトムシとフレメアはスクールに関係なくね
俺は心理定規中心のも見てみたい

おお、来てたか乙
心理定規の風に煽られた裾とレアな体操着ぺろぺろ
あと首を傾げる駒場のリーダー可愛いぺろぺろ

何気に垣根の通販サイトのユーザー名カッキーかよwwww
ゴーグルがカッキーさんとか呼んだらオブジェ不可避だろうか

垣根と心理定規って雰囲気絶妙だな
暇だからって言いながらちゃんと様子見にいったのか垣根はパレードも一緒に見たのか
なんだこのリーダーたまんねえ
あと誰も触れてないがそぎっしーさんはっちゃけすぎだろww
二人三脚してやる爽やかな垣根も見たかったけどな
ファンはどんどん増えればいい

風紀委員のやつで初春が出てくるのもみたいな
あとレスしてた艦これと垣根のやつも。ほっぽちゃんとホワイトとか完璧に保護者

垣根に冷蔵庫を送り続けて愉快な死体になりたーい

毎日ベッドが変わるのを楽しむ垣根だと
お泊まりフラグはあるのか

艦これ×垣根は一時期大真面目にネタを考えた事があるが、どう足掻いてもチートハーレム物にしかならなかったから諦めた
結局だらだらしてる垣根と心理定規を妄想してる方が楽しいし

NカブトムシR冷蔵庫SRバレーボールLR垣根オリジナルな垣根オンリーソーシャルゲーム思いついたけど、垣根主人公で冷蔵庫から吐き出される未元物質を使役する方が面白そう
最弱のカブトムシが進化で稀に白垣根ができたり

>>508
>>11
さてはお前>>1だな

実はこのスレの書き込みは殆どが>>1の自作自演であった可能性が微レ存・・・?

俺たちが>>1だ!!

垣根はかきやすいとか艦これなら設定はこうするとか講釈してるどっかの作者様達だろ
どうせなら宣伝もしてけばいい

垣根スレ、自演、ホモ…そうか!わかったぞ!
>>1の正体が!

野獣先輩垣根帝督説

変幻自在→未元物質も変幻自在

野獣先輩は人間の屑→暗部だから

野獣先輩女の子説→天使で可愛いから

垣根がアイドルのスピンオフに出たってな
カブトムシじゃないらしいし良かった

え。なにそれ
ちょっと意味がよくわからないからパズデのガチャ回してくるね?

パズデに脊髄反射ワロタ
アイドルの方はさておき、超電磁砲が盛り上がりそうだなスクール好き的に
単行本化したらカラー絵拝めっかなあアイテムみたいに

アイドルの方は垣根出てたし超電磁砲に心理定規さんとゴーグルも出てた

もう死んでいい

まじかよちょっと電撃大王買ってくる


学園都市某所。
人気のない場所に一人で呼び出された垣根帝督は、ポケットから取り出したPDA相手に盛大に顔をしかめていた。

【この度お前は『スクール』アイドルとして売り出すことに決まったからな。
上からの決定事項だ。
今日から、「プロデューサー」と呼んでもらってかまわないぞ】

『スクール』の上役である電話の男が、任務の話かと思いきやとんでもない話を放り投げてきたのだ。
ここが組織の隠れ家なら垣根は容赦なく吹き飛ばしていただろう。
もちろん、それも見越していたのだろう。
暇そうな素振りも見せず、違和感も消し去ってごく自然な店内の背景の一部と化している店主を横目に垣根は息を吐いた。

「馬鹿じゃねぇの? 待て。俺は、ってどう言うことだよ」

【お前以外の超能力者(レベル5)も『絶対能力(レベル6)』目指してこれからアイドルとしての活動をだな……】

「あのなぁ、そんな真似してレベルが上がるんならこの世に無能力者なんざいねーよ」

【多くのファン、そこに含まれる能力者のAIM拡散力場の指向性を――】

垣根が馬鹿にして吐き捨てると、PDAに長々とした計画の詳細が送信されてきた。
一応は、理論的に成果の見込みありと裏付けられている実験計画なのだそうだ。

「テメェら…何かっつうと『AIM拡散力場』っつっとけばいいと思ってるんじゃねえよな」

ざっくりそれに目を通した垣根は。
なんでテメェがマネジメントまで兼任してんだ、と続けてぼやくように言った。

【暗部の仕事とのスケジュール調整は他の人間にはこなせないだろう】

おかげでこちらは大忙しだ、と言う嫌味は無視された。


「芸能活動(笑)しながら暗部の活動も続けんのかよ。なぁ、テメェら俺にどうなって欲しいんだ?」

【トップアイドル。そして、『絶対能力者』だ】

予想外に真面目な声で返事があった。
おや、と目を丸くした垣根だが。
次の瞬間にはそれがゆがむ。
獰猛な獣じみた視線を液晶に落とすと舌打ちがそれに続く。

「俺にそんなもんの頂点取らせようって? ったく、阿呆らしい話は大体見えたが。俺に何の旨味もねえのにそうですかって馬鹿な真似やってられるか」

【いわゆる「セレブリティ」の連中を考えてみろ。やつらの財力、コネクション、各界への影響力、それらを束ねるカリスマ性。表立って大々的に「神に選ばれし者」の一員となって潜在的な支援を集めることも……野心的なお前には悪い話ではない筈だが】

「俺の影響力が高まれば、連中も無視出来なくなる。発言権も得られるか……馬鹿なパフォーマンスでレベルが上がるとはとても思えねえが、そっちなら……まぁ」

垣根は真剣な目をして何事か考えはじめた。
ある意味神々しいギフト、彼の能力について触れそうな単語も、珍しく頭にこなかったらしい。

「たまにはつまらねえ話にも乗ってやっても、いいかもな」

いい退屈しのぎをみつけた、とでも言いたげにその口元が釣りあがる。
まるで、そのタイミングを見計らったかのように電話の男は話題を次の段階へとすすめた。

【今までの経験上、お前の資質はある程度こちらも把握している。
不要な営業活動や仕事は除き、お前の強みを活かした仕事が出来るよう「今まで通り」組織で支援してやろう。
当面の活動に必要なスポンサーとも話を進めてある。
まずは幾つかの企業のコマーシャルをこなしてもらう予定だ】

そう言って、次にいくつかの企画資料が送られてきた。
そこに名を連ねているスポンサー候補は。
各分野の有名企業のような大手から、一六学区の個人事業主など規模はさまざまだった。
能力者と聞いてまっさきに飛びついてきそうな学習塾や開発関連企業は、既にあちらでカルテル染みた協定が出来上がっているようだ。
出資し合った企業ごとに、アイドル活動をしている超能力者たちのPR期間のローテーションが平等に組まれるらしいと注釈が付いていた。
超能力者なんて能力開発分野でも反則レベルの絶大な偶像を奪い合っては、競合して潰し合うのは目に見えているから、かもしれない。


大がかりなライヴ、大手雑誌のグラビア、特集記事などそう言う派手な仕事は、もっとアイドルとしての知名度を上げてから効果的に進めていくらしい。
とりあえずは地道に宣伝広告の方を頑張ってもらう方針だと言う。
どうやらプロデューサーや上層部は餌を充分撒いてから、雑魚をごっそり網にかける気でいるらしい。

【お前達がアイドル活動をしてるってことを市民に周知させる必要がある。
超能力者アイドル化計画推進として、それぞれCDも出すからな。
お前の音源もサンプルが幾つか用意してある。すでに本格的な楽曲製作を進めて……】

「待て。いつそんなもん録った」

【この前カラオケに行っただろう】

「完全プライベートだぞあんなの。油断も隙もねえな、本当」

【とりあえず致命的な音痴じゃなくて一安心だそうだ】

よかったな、と言いたげな言葉に。
はあー、と仕方なさそうに垣根はため息をつく。

【超能力者の話題性にそのルックスだ。
お前のような逸材にはかかる声も多くてな、それでも随分厳選したんだぞ】

更に資料のページを進めると、具体的に詰められた企画のスケジュールの予定が並んでいた。
一体、垣根を納得させられなかったらどうするつもりだったのかと呆れるくらい、本人のしらないところで勝手に話が進められていたらしい。

「なんだこりゃ……お、ファッション系が結構入ってんな。ふーん、どこもそこそこのブランドじゃねえか。
『外』のもあるな……ん、高級寝具メーカー? こっちは……ガキ向けの学用品のPRって? 
なーんかまともそうな中にちょいちょいおかしいのが混じってんぞ。何やらせる気だテメェら」

【垣根帝督を前面に打ち出して広告をだしてもらうんだよ。喜べ。どちら様も喜んで受けてくださるそうだぞ】


「まぁ、向こうから頭下げてくるくらいが筋ってもんじゃねえの? で。テメェらのプランの核になりそうな…俺の強みって……なんだよ」

【そりゃあ、天使の羽に決まってるじゃないかw】

「はぁ?」

ここに来て一転。
馬鹿にした時の口調になった電話の声もといプロデューサーは笑い転げるのを我慢しているように裏返り気味な声で続けた。

【年末年始の特番『絶対に笑ってはいけないin学園都市スペシャル』と『芸能人格付けチェック』の能力者席には出れるように頑張ろうな!】

「完ッッッ全にお笑い枠にねじ込む気だろ? なぁ!!」

ガターンと椅子が一つ後ろに飛んだ。
騒音にも店主は眉ひとつ動かさない。

【顔がいいのがあえて外して、馬鹿をやるのがいいんだろう。
お茶の間にはそう言う方がウケがいいらしいからな。
お前の能力にもぴったりじゃないかwww】

「ナメてんのかテメェぇぇぇッ!」

PDAを掴むと垣根は吠えるように叫んだ。
その背中には、いま馬鹿にされた翼が翻っている。
既存の物理を捻じ曲げる能力でも、流石に居場所の知れない通話相手を愉快な死体にはできない筈だが。
既に垣根はそんなことは考えていないだろう。

【そうやってお前ら超能力者はすぐキレるけどな、芸能界の先輩方を見習えよ。
今日日そんなやっすいキレ芸じゃ流れ星にしかなれないぞー?】

「芸でキレてんじゃねえっつうの!!」

【悔しかったら結果を出せ。垣根帝督。障害をねじ伏せその手で登りつめてみろ。お前のやり方が通用するなら、の話だがな】

チィッ、といまいましげに舌打ちすると垣根は近くの椅子を乱暴に引いた。
どさりと再び腰を下ろした。
ほんの少し。
何かを切り替えるような空白を置いて、垣根は顔をあげた。

「いいぜ。俺にその常識は通用しねえ。アイドルだ? 愚図な聴衆共がなんだって?」

その顔は、挑む様に薄く笑っていた。
みてろ、と彼は牙を剥く。

「世界を、ガラリと変えてやるよ」



こうして。
まんまとアイドルに担ぎ上げられた垣根帝督は、トップアイドルの座を目指して学園都市のお茶の間を席巻するようになるのだが。
それはまたべつのおはなしである。

と、いうはなしだったらいいのになーなおはなし。
とあるあいどるの~~に垣根が出てるって聞いてちょっと読みたくなったのでやっつけた。
ガチャはこころをしずめてくれないしいくら回しても徳もつめないのである。
ので。いきなりの小ネタ。失礼。

正直、ちょっとしたデモンストレーションすら不安の塊だった奴らをステージから下ろすのだけはやばいと思う。
超能力者並べてバラエティとかトーク番組出したら編集地獄にしかならないって。
しばらくお待ちくださいからのCMあけたら357以外ちょいちょいぬいぐるみになってそう。生放送は絶対ダメだゾ☆
アイドルな超能力者様は第一位以外もやんのかね?
ラブリーミトンとコラボして泣いて喜ぶ御坂さんとかは大歓迎です。

ドーモ。
ではまた!



言いたいことがあるんだよ
やっぱり垣根はイケメルヘン
すきすき大好きやっぱ好き
やっと見つけた天使様
俺が生まれてきた理由
それはお前に出逢うため
俺と一緒にlevel6目指そう
世界で一番愛してる

アイドルは生がダメとな!?

>>321の安価の中身を初春がインディアンポーカーのカードにしてくれてたら間違いなくSランクで超高額取引されただろうな

羽毛布団とランドセルwwww
ひでえwwwwww



……その布団3セット下さい!

垣根さんマジちょろいっす

垣根の能力フル活用したらジャケ絵とかPVとか撮影楽そうだよな
自前で羽散らせるしwwww

ドーモ

>>495
恥ずかしながらまだやっとります。ハイ。
スレが埋まるかネタが尽きるまではやるのか、いい加減だらだらしてんのもどうなのとはね?

>>496
話によってむらがあるよなあとは書いてても思います。
見事にハロウィン垣根はこなかったよ!ノーマルな垣根はぞろぞろ来たけどな!
超能力から絶対能力まで諭吉が楽々シフトしたって言うところまではお伝えしておこう。経済力も運もない甲斐性なしの1だからか…これが……不幸、か。
ちくしょうそうさ、俺が養分だ!

>>497
リーダー、ツンデレ。紅一点、ツンツン。オタク、だだ漏れ。あれ?バランス取れててよさそうだね?(白目
垣根はある意味素直な気がしてきた。最近。

>>498
そういってもらえると1も嬉しいっす。乙あり!

>>499
垣根はキョロちゃん知ってるのかなって今思った。
ゴーグル君の起こした波に度々乗せていることはこのスレの公然の秘密だからな。

>>500
そうそう。ゴーグル君思いつきよかった。こじつけと寒いギャグは任せろ。
白くて大きな家電を見るとついね。帝凍庫君を思い出してね。disってない、いじりだ。

>>501
そう言ってもらえるとほっとするでな。
前もなんか言われた気する。カブトムシ。
なんか思いついたら保守ネタにするかもしれないししないかもしれない。
レスをネタにしたのはちょいちょいあるんだけど、確約は安価のみと言うことで一つ。
うん。僕もあんまりスレがごちゃごちゃしてるのはどうなんだと思うんだけどね?むずかしいんだね?

>>502
では心理定規濃度の高いのが出来たら。
なぜかゴーグルびいきだとみんなに反応されるけど、定規ちゃんもめでたい。

>>503
名前で呼んで欲しい垣根さんはニックネームだと喜ぶのか、キレるのか。
青ピやつっちーが一緒にいたら普通に返事するかもしれないけど、カッキーさんが奴らにも定着しかねない諸刃の剣。そうなると怒るな。

>>504
垣根はツンデレか。そうか。
暇ならなにしてもいいってわけじゃねえんだぞコラーって言ってやりたいな。
上手く垣根が出場してくれても、別のどっかの誰かの借り物に立候補したゆるキャラと同じレースだと、白熱しすぎた展開にゴーグルが愉快な死体になってしまうんじゃ…

>>505
風紀委員長ネタもか。もしなんか思いついたら(r
艦これはね、元ネタがよくわからないから難しいな。運がないから多分建造でかぶりまくってすぐ詰む。
あえてちょっとやってみるなら

海中から突如として現れた生物兵器の艦隊。
最新鋭科学の過剰戦力を投入してどこよりも早くその敵性の撃破・虜獲に成功したのは学園都市だった。
その根源、敵の正体を探る為の研究材料として、敵艦を壁の中に搬入する運びとなった。
だが移送中にトラブルが発生、拘束していた対象の逃走を許してしまう。

垣根ホワイト「ああ? なんだこれ」

北方棲姫「ウミ……ドコ?」

異形の白い少女と少年が遭遇する。

世界の大洋で発見される謎の『深海棲艦』。
奇しくも過去の大戦、歴史の記す戦火の跡地に彼らは現れた。
砲身を向けられた各国の決断が刻々と迫られる中、港湾棲姫が動いた。
その標的は――学園都市。
第四次世界大戦の勃発は免れないのか。
緊張の増す中、襲撃者が次々と二人に迫る。

???「乱造品の不始末を私に取れとかいい度胸してんなぁクソが」

???「『とりあえず』……それを引き渡してもらおうかァ」

少年は少女を海に帰すことが出来るのか。
彼女の望みは叶うのか。

北方棲姫「テイトク、ゴメンナサイ……」

科学と深海両者の闇が交差する時、物語が変わる。
禁書×艦これの新感覚クロスオーバー、この秋進水開始。


こんな感じで。嘘です。


>>506
何でムカつくかわからないけどもやもやする垣根さんの怒りが有頂天でゴーグル君がストレスでマッハなんてことになるぞ。
鬼かどMか

>>507
その発想は無かった(棒)
突撃!隣の構成員!とか言っていきなりお宅訪問したら心理定規に全力で追い返されそう

「どちらさまー? って」

「よお」

ガチャ……ギッ

「なん、で……あなたがいるのよっ?!」

「よお」

「……何なの。こんな時間にいきなり来て」

「え? 泊まりに来た」

「どうして」

「昨日はゴーグルんとこだったから。今日お前な」

「帰ってちょうだい」

「へー。お前こんな部屋に住んでんだ? ん? なんだよソファ小さいな? じゃあこの辺にベッドを作って……」バサッ

「ねえちょっと勝手に部屋のものに触らないで羽も出さないで。家具を増やさないでってば! 帰ってちょうだい!」

困った。リーダー帰ってくれそうにない

>>508
なー。チートハーレムじゃないガチな戦史ものでクロスとかはまたハードル超たっかいな。
1は今脳幹先生のかんこれSS探してる。
なんだよ妄想してんならなんかかいてよーねーねーかいてよーーー

>>509
オリジナルのレア低くねwはいむら絵なのか?なら仕方ない
ガチャの冷蔵庫が、冷蔵庫(家電)なのか冷蔵庫みたいな装置なのかで愉快さが変わるんじゃ。
冷蔵庫のドアガチャーなら微笑ましいが、引くたびに病理さんがボタンポチーだったら嫌だ。
カブトムシの中にたまにエラーがいてそいつは垣根未元体(SSR)に進化とかなんですか。需要狭すぎて誰得だよお。

>>510
やったー1が増えたぞよしじゃあこっちの1はひたすら強敵叩く係な。そっちの1はNカード集めて売却しといて

>>511
いつからお前が>>1ではないと錯覚していた?

>>512
奇遇だな。私も1だ。

>>513
雑談はおーけーなのですよ。って言うかあれだよきっとこのスレ話題がねえんだよ。1が来たり来なかったりだからだよいわせんなばか
宣伝か。ちょっとくらいしてってもいいよね。なんか書いてんならいいじゃんなー教えてくれても

>>514
な、なんですって?一体誰が犯人なんです!

>>515
そんなこといったらこの世のほとんどが垣根になっちゃいます。未元物質こわい

>>518
えー。アイテムみたいに超人気が出て超出番が超増えるンですか?超嬉しいンですけどォ超ほンとですかァ


>>519

待てよ。そんな簡単に死ぬんじゃねえよ。
まず超電磁砲で垣根が登場するだろ。俺ら死ぬだろ。
上手く進んで禁書の方で暗部サバイバル編がやるだろ。俺ら死ぬだろ。
絶望しろコラで博士死ぬだろ。俺ら死ぬだろ。
次々でてくる垣根往年の名台詞。俺ら死ぬだろ。
一方通行出てくるだろ。垣根死ぬだろ。
数年たって三期アニメ化の話が出てくるだろ?死ぬわ。
声優が決まるだろ。死ぬわ。
アニメのカラー絵が発表されるだろ。死ぬわ。
放送日が決まるだろ。死ぬわ。
OPで垣根が出てくるだろ。死ぬわ。
アニメで喋って動くんだろ。俺たち死んでられないだろ?
いいぜ。せいぜい今のうちにさっさと死んどけよ。
いつまでも死体のままでいれると思うなよ。こっからが本番だろ。

気を付けろ。死に続けてるとな、そのうち起き上がって痛いSS書いたりするようになるんだよ。1みたくなんぞ

>>520
まじかよ。もっと早く言ってよーだよな

>>526
ごめんちょっと笑ったw
ジャ二◯ズとか男性アイドルにもああ言うのあるのかな
キラキラ衣装で踊る垣根とかメルヘン過ぎていろいろ耐えられる自信がない。腹筋とか

>>527
一方垣根、御坂食蜂は一緒にしたら挑発しあって騒動になりそう。麦野はピー音入れそうなことも平気で言いそうだし削板が一番何するか読めなさそう。やっぱ全員問題あり放送事故必須。

>>528
インディアンポーカーて?

>>529
乙ありですドモ

>>530
キレッキレでランドセル体操踊る第二位とかテレビの前のお茶の間が愉快なことになってしまうよ。第二位のイメージ的にまずそうなことはさせないと思いたい。事務所OK出ても本人が断ってくれるはず

きっと企業も便乗しまくってくれる。
限定プレミアム特別仕様だと販促用グラビアポスターやシーツ他コラボおまけが付いてきて今ならお得な羽毛布団夏冬1組二十四回払い月々二万円コースとかがあるんじゃ(適当)

>>531

【超能力者とか言ってもまだ子どもだからですかね。レベル5の中でもお前先発だから第一位に先手打てるぞって言ったらあの後笑えるくらい張り切ってやんのwww】

【見た目通りやっぱ派手好きなんでしょうねー。撮影やステージやらせても自分で演出したがるんですよ。照明スモーク特殊効果おまけに火薬なしで爆発までいけるしいろいろ費用も浮いてます。いやー便利な能力で助かるわww】



今さらだけどスクールの制御役って男でよかったのかな
『アイテム』が軽めでテンション高いステファニーさん系のおねーさん、『グループ』が嫌味な丁寧口調の「くどい海原」みたいな男。
『スクール』は全然描写ないけど超電磁砲のあれで「煽ると草生やす兄さん」イメージなんだがそんなんでいいのか

誰ですかー?本屋さんの電撃大王ラスワンゲットした子はー。先生しかたなく密林さんにお願いしたのですよー。
こっから安価>>201のなげおとすけどなー1も予想外に心配なかんじになったからくれぐれも注意ですよ。



※キャラクターイメージを大いに損なう恐れがあります。くれぐれもご注意ください
※ネタをネタと(r



「あれ……ここ、どこだ?」

ベッドの上からぼけぇ~っとした声が上がる。
間抜けなセリフの主は、寝癖だらけの頭をぐしゃぐしゃと掻いて首をひねった。
彼のことは某組織での呼び名で仮に『ゴーグル』の少年としておく。
ゲーム機とアニメグッズだらけの自室とは似ても似つかない場所で目覚めた彼はちょっとした浦島太郎気分でぼんやりしていた。
思わず口にした疑問はまだ解決していない。
見たことのない部屋だった。大きなベッドと真っ白なシーツ、広い部屋はどこかのホテルみたいだった。
確か昨夜は寝落ち寸前までゲームをしていたが、こんなところにきた記憶がない。
どうしたものか、とりあえずその場に正座してまぶたをゴシゴシしていると。
白い部屋のドアが開いた。
そこから入ってきた人物にゴーグルはねぼけ眼を大きく見開いた。
一発で目がさめるどころか、うっかり心臓が口から出そうなくらいびっくりした。

「おう。目ぇ覚めたか」

暗部組織『スクール』のリーダー、垣根帝督がにこやかに入ってきた。
朝から「ご機嫌なリーダー」なんて言う激レアに遭遇したゴーグルは、その後ろのドアをじっと見つめた。
心理定規や下部組織のやつらがベタなプラカードでも持ってきて「寝起きドッキリ大成功!」みたいなのを期待したが。
垣根は黙って後ろ手にドアを閉めてしまった。
何やら片手にトレイを持って、垣根はベッドの前まで歩いてきた。
ぼさっとしているゴーグルのだらしない格好を見るとしょうがねえなあ、って顔をして眉を寄せた

「ったく、遅く帰ってきてゲームすんならちゃんとしろっつったろ。ソファーで落ちてたから俺が運んだんだぞ。ほら」

そう言われてもさっぱりわからないし、なんでそんなことをされたのかも覚えてない。
じゃあここは垣根の部屋なのか? なんでそんなところで寝てた?
ますます状況が読めなくなる彼の前にマグカップが差し出された。

「あ……なんかわざわざ、すんませ……え」

ペコッと頭を下げてゴーグルは差し出されたマグカップを受け取った。
トレイに残っていたのはソーサーに乗ったティーカップだった。
白く華奢な造りのそれと、自分の手の中のアニメプリントのカップを見比べて少年は反射的に垣根を見返した。

「片方淹れてる間に支度は済む。ついでだ」

ベッド横の椅子に掛けると垣根は足を組んだ。
いちいち絵になる様でカップを口元へ運ぶ。

「紅茶のついででカフェオレっスか」

「コーヒーいれんならお湯は九〇度以下、紅茶の方は沸かしたてに限るだろ。んなことより。味」

なんで全然種類が違うんだろうと思わずつぶやいたが垣根はこれぐらい当然だろ、と言う風にお茶の知識を披露していた。
そして、カップを持ったままぼけっとしていたゴーグルに目を向けてくる。
慌ててゴーグルもコーヒーをすすった。
焦って口をつけた瞬間、火傷を覚悟したのだが。
ちょうど飲み頃な温かさだった。

「なんスかこれ……メッチャうまいっス」

軽く感動しながらそう言うと、垣根は得意げに目を細めた。

「そうだろうな。ま…隠し味が違うからよ」

「だ、『未元物質』っスか?」

「お。お前も違いがわかってきたな」

冗談のつもりでそう聞いたのだが、垣根は特に否定もしないでうなずいている。
まさかの当たり、ガチでしたか? それは口にしても大丈夫なのでしょうか。
ごくん、とカップの中身を飲み込んでから固まるゴーグルの少年。
それを見ていた垣根は愉快そうに笑った。

「ばーか。冗談だよ。俺がちょっとその気になりゃこんなもん楽勝だっての。どうだ? コーヒーメーカーの買い替えは、無期限延期だろ」

「こーひーめーかー?」

「もう忘れたのか? いつまで頭が寝てんだお前」

一体なんの話だろう。
ゴーグルの少年が首を傾げている間に。
垣根は空になった食器を持って部屋を出て行ってしまった。


とりあえず起きよう、と意を決した彼が寝室っぽいとこを出て、やっぱり見覚えのない白くて広い部屋をうろうろしていると。
ひときわ広いスペースに垣根がいた。
壁にはめ込まれた大きなテレビの前に立っていた垣根は、ゴーグルに気付くとキッチンらしきスペースの方を指さした。

「俺そろそろ出るぞ。お前の飯はそっちな、有難く食えよ」

「えっ?! すんませ……あれ」

激レア、超激レアときて更にありえない追加イベントが発生した。
なんかもう、いきなりおかしな事故にあうとか突然敵対組織に襲撃されてうっかり死ぬんじゃないか俺と混乱しながらゴーグルは頭を下げた。
びっくり仰天意味不明の連続だが、反射的に謝罪を忘れなかった。
そして。
顔をあげた時、ここにきて一番の違和感を目にした。
さっきまでは下ばかり向いていたから気づかなかったが。
彼の頭にある疑問が浮かぶ。
今目の前にいるのは本当に垣根帝督なんだろうか?

ぽかんとするゴーグルの少年に、垣根は何故か得意げな顔をしてネクタイを結んでみせた。

「これか? よそのやつも呼んで朝からミーティング。あいつら俺にちゃんとした格好してこいってうるせえんだよ。誰に物言ってんだか。で、どうだ」

「いや……垣根さんっスよね? 垣根さんだけど、垣根さんじゃない?」

以前から大人っぽい服が似合うとは思っていたが。
仕立ても値段もよさそうなスーツにきちんとネクタイまでしていると「ぽい」がすっかりどこかへ行ってしまうようだった。
暗部のリーダーの貫禄はそのままに全体的に落ち着いた雰囲気の垣根が立っている。

「見違えるほどか? それとも寝ぼけてんのか? ったく、ほら。我ながらイケてんだろ。何もねえの」

寝起きの瞬間からよくわからないこと続きでゴーグルの少年は混乱していた。

「はぁ……似合ってるっス」

てきとーな返事がお気に召さなかったのか、垣根はむっとした表情で足をゴーグルへと向けた。

「別に俺は、お前が『嫁』を何人持とうが気にしねえけど。その倍は俺に尽くすのがフェアなんじゃねえか?」

「え、あ」

ゴーグルの少年は不機嫌な垣根の迫力に後ずさる。
言ってる意味はよくわからないが。
垣根は明らかに怒った様子で一歩一歩向かって歩いてくる。
近づいてくる垣根をよく見て、さっき感じたひっかかりの正体が彼にも何となくわかった。
整った顔や細いシルエットは記憶にあるものより精悍さが増しているような気がした。
今目の前にいるのは彼の知っている十代の垣根ではないようだった。
数年越しの記憶喪失、とか中身だけタイムスリップなんて単語が頭に浮かんだ。
まさかそんな、漫画やゲームじゃないんだからと否定したいが、目の前の現実はそうはいかない。

「お前はやっと休みだろうけど、これからつまんねえ用事で出掛ける恋人に気の利いた言葉一つ言えねえのかよ。お前ってさー、何年経っても本当変わんねえな」

「はい? 今……なんて?」

ここ一番の爆弾発言にあっけにとられながら。
おかしな声で叫びそうになるのをこらえて、なんとか聞き返した。
ゴーグルの前まで詰め寄ってきた垣根はそこでふと眉を寄せた。
よく見る不機嫌な表情とは少し違う。
心配そうな目をしている……かもしれない。

「俺今日仕事だぞ。あれ、言っといたよな?」

「いやそこじゃないっス。えっ、冗談ですよね? こいびととかまさ……か」

口にし終える前に、瞬間ゴーグルは悟った。
これはあれだ。

やってしまった。

それを聞いた垣根の顔が一瞬無表情になった気がした。
その後で唇がゆっくりと弧を描く様がなんだか死神の鎌にみえた。
それはそれはきれいにみごとに思いっきり地雷を踏み抜いた実感があった。
背筋にブワッと嫌な寒気を走らせて、引きつった笑顔のままゴーグルは立っているしかなかった。


「ふーん。随分笑えねえジョークだな? お前にしては」

「あの、いや、なんか寝ぼけてて、あれー何言ってんだろ……すみません」

「なあ。俺は朝からすげームカついてんだけど」

「だってあの……俺っ」

ゴツ、と後頭部が壁にぶつかる。
元からどこにいたってなさそうだった逃げ場は完璧にゼロになっていた。
だが。
ゴーグルを追い詰めた垣根は何故か楽しそうに笑ってみせた。

「んなガチでビビんなよ。何それ。うっかりときめくだろ」

「ぎゃあっ!」

ベキャア! と垣根が手をついていた壁が砕けた。
ゴーグルの背中の後ろまで大きくヒビが入っている。
垣根は某第五位みたいな、他人をてっぺんから見下したいい笑顔をしていたが冗談ではない。
恐怖の壁ドンにゴーグルの頭は真っ白になった。
垣根の次の行動がまるでわからない。何だか話もいつも以上に通じていなくて。
ただただこの意味不明な状況が恐ろしかった。
事故とか襲撃とかんなかわいいもんじゃねえ、ここ? 俺ここで死ぬ? と心臓を縮み上がらせながら少年は震えだした。
その耳元に顔を近づけると垣根は静かに囁いた。

「『俺が悪かった、帝督ごめんなさい』って言ってみ。三回くらい」

「はい。えっと……」

「言えよ」

命令する垣根の声が低くなった。
ゴーグルは目を閉じると必死に声を張り上げる。

「俺が悪かったです。垣根さんごめんなさい。ごめんなさい!」

命じられたままにそのあと三回分繰り返すと垣根は腕を組んだ。

「うーん、そうだな。『帝督愛してる』って言ってみろ。百万回くらい。努力次第で考えてやってもいいぜ」

「えええ!」

おまけに考えてやる、だ。
そこまでしてもこの元(?)リーダーはあっさり許してはくれないらしい。
でもゴーグルだってしたくて怒らせた訳じゃないのだ。

なんでこんなことになったのか彼には覚えがない。
あってもそれは嫌だが、いきなりすぎてついていけない。
まるで夢でも見てる気分だった。
夢。

そのひらめきにゴーグルの少年はハッとした。


「なんだこの流れ……あれ、これ夢? ギャルゲ御用達な夢イベントだ? しかも垣根さん√?! なんだそれ誰得だよ!」

そう考えると何となく今までの展開にも納得できた。
覚えてないだけで何がどうおかしな世界線に突入したのか。
生涯ぼっち予備軍だったオタクの俺が暗部のリーダー(男)とくっついちゃったらしいです!なんて話よりはよっぽど。
夢オチの方が可能性と希望がある。
と言うかそうでないとわけがわからないよ。

未来設定の夢の中で新婚さんな二人がいってきますのチューや何やらを巡ってイチャコラする感じのイベントは漫画やゲームでもよくあるやつだ。
目がさめると遅刻寸前とか、登校前にその子とバッタリとかそんなオチのつくやつで。
ラブコメのテンプレってぐらいあるあるなネタの一つな訳ですが。
もし、そうで。
お約束の展開の流れ通りにするなら、垣根にはなんとか穏便に出勤してもらえば話は済むんじゃないか。
「いってらっしゃい」できれいにオチをつけるのが平和なやり方だと思いたい。
ドタバタは勘弁だ。
間違ってもラブコメ路線なんてもってのほかだ。


「これから仕事なんスよね? ダメっスよいかないと」

「平気だって。俺一人抜けたくらいで回らなくなるなんて柔な環境も、ダメな部下もいねえから。
ある程度、トップ不在で動ける組織作りってのはしておかねえと。相変わらず下にいるのは無駄に年だけ食ってる奴らばっかだけどな」

何だか無駄に過去の背景設定の生かされていそうな台詞が出てきた。
一体どんな仕事をしてるんだろう、と興味はわいたが今はそこにかまっていられない。
垣根は、自分の機嫌を損ねたゴーグルになんらかの責任を取らせる為に仕事を休むつもりらしい。
機嫌悪いから休みます、だと小学生でもやらないサボりになってしまいそうだが。
この人なら平気でやりそうな気もするし、そのあと休んだ分くらいはしれっと挽回しそうでもある。


「えーっと……俺のせいで垣根さんの仕事にまで迷惑かけらんねえっス。そういうの、ちゃんと大事にして下さいっス。俺、ちゃんと反省しときます」

(これいけるんじゃねえ? 垣根さんを立てつつ、反省してますって感じで満点はいかなくても高得点なセリフだと思う!!)

よかったこれは現実じゃないぞと思った時点で、彼の心は少し持ち直していた。
ふだんの夢のようにただ見ているというよりは自分である程度行動できるかんじなので、ちょうどゲームでもしている気分だ。

ゴーグルの少年の好きなゲームの中では、途中でちょっとしたズルをすると次に電源を入れた時に彼女から怒られてしまうことがある。
最悪、スタート画面にさえ移動出来ないと言う目にも何度かあったことがある。
おまけにそう言う時に限って場所が電車の中や教室だったりするのだ。
不思議と、マイクでの解除ワードの催促をされても答えられないような悪いタイミングが重なる。
そんな時にゲームしてんじゃねえよ、と言う話は置いておいて。

今、この場合。
ミスると夢の中でもオフになる可能性がある。
ゲームの電源や何かよりよっぽど大事なものかもしれない。
夢だからって嫌なものは嫌だ。
悪夢はすすんで見たくない。今だって十分そんな状況だけど。

そして、夢だと言っても相手はあの垣根帝督。それを避けるには最大限の注意を払って対応しないといけないだろうとゴーグルの少年は直感していた。
愉快な死体エンド痴情のもつれ?バージョンはないと願いたい。
ゴーグルは最悪の目覚めから逃れるために一生懸命頭を下げた。


「……お前がそこまで言うんならしょうがねえな」

垣根が仕方なさそうに頭を掻くと。
その後ろ。離れた床の上に白い点が現れた。
ばしゃん、と液体でも固体でもなさそうなものが大きく広がる。
白いその中から人型が生えてきたと思うと。
あっと言う間に目の前の垣根とそっくり同じ姿をした人物が出てきた。
着ているものも髪型も、もちろん顔も見分けがつかない。
『未元物質』で作られた偽物と言うことなのか。
それに向かって垣根は、気になっていた小さな汚れを片付けたような顔をして晴れやかに笑った。

「よし。俺の代わりに行ってこい。これ、今日のスケジュールな」

ぽいっと投げつけられたPDAを受け取ると二人目の垣根は画面を覗いて顔をしかめた。
ゴーグルの少年が夢の中(仮)だというのに驚いてしまうほど自然な、生き物のような反応だった。

「うわーオリジナルお前サボりかよ。こんだけ予定詰めといてよくぶっちぎるな」

「先方には愛想良くしろよ? ただでさえこっちが優位な話じゃ反感食らいやすい。精々向こうの顔くらい立ててやれ」

「何お前ら修羅場? それとも……えー、朝から随分元気だなテメェら」

垣根(その2)は垣根とゴーグルを呆れた様な目で見ていた。

「ばーか。まぁ、その辺はほら。こいつの今後の態度次第だな」

「はい?!」

心臓によろしくない不穏なワードが次々飛び出してくる。
だが、垣根は二人ともそれを無視した。
大したこともなさそうな、慣れきったような態度が逆に恐ろしい。

「面倒事人に押し付けといて何だよな。楽しそうでうらやましいぜ。久しぶりに血の雨の降りそうなやつかそれとも……
まぁ、どっちにしても後で俺も混ざっていいか。怠いし、幾つか削れんだろこれ」

「うるせえ。いいから行ってこい。手ぇ抜くなよ」

荷物を押し付けると垣根は蹴り出すようにして垣根二号を部屋から出て行かせた。
窓からじゃなくてよかったなあとかくだらないことを考えていたゴーグルの少年は。
何も事態が良くなっていないことにやっと気付いた。


「これでいいだろ。なんかさ、もう行く気なくなったわ」

遅かった。
せいせいしたろ、と笑う垣根は既に問題が解決したと判断しているらしい。
垣根の方はそれでいいかもしれない。
まさかの、気分で仕事の予定をぶっちぎってしまった。
いや。確かに現状で問題は何もないかもしれない。
垣根帝督(らしきもの)は出勤しているわけだし。
残っているのは、ゴーグルの少年がいかに最小限の被害でこの先のステージをクリアできるかと言う未知の課題だ。
それに備えて出来ることはまだあるのか。

「大丈夫だ、俺がしっかり数えとく。だからお前は余計なことなんざこれっぽっちも考えなくていいぜ。ただ俺を満足させりゃいい」

ラスボスはさわやかな笑顔でそう言った。
ここで何か抵抗できるか。
いや。そんなことしても、事態が良くなるとは思えない。
何よりすっかり垣根帝督のペースだ。
きっとこの先待ち受けているのは超能力者ランク『未元物質』の固有結界ステージだ。

「あの馬鹿が帰って来る前に済ましちまおうぜ。まぁ、勝手に増えるなって言っといたからあいつまで替え玉立てて戻ってくるってのはないと思いたいが」

「え。あの垣根さんっぽいの増えるんですか? 更に?」

「そうそう。それにあいつらはほら、俺と違って色々と……な?」

『未元物質』驚愕の新機能らしきものや、さっきからの同性に向けるには色々と問題ありそうな発言と無駄にいい笑顔となんかフェロモンっぽいのやらと、トドメに怖い台詞含みまくりなウィスパーボイスがゴーグルの少年に繰り出される。

丸腰のゴーグルの少年は隙のない垣根の連撃を前にして。
迎撃するにもこっちは弾幕張れない、回避もないしこれ着弾したらアウトだとゲーマーの勘で悟っていた。
なにより相手は垣根帝督。

大人しく従うしかないだろう。

今までも、if未来軸の夢でもそこは変えられないのか。

今までの常識ゲームオーバーの予感に彼のこれまでの人生がつまらないエンドロールになって浮かんできそうだった。


「わぎゃぁぁぁあああああ! あああ、あ……あれ」

がばあっ! と跳ね起きたゴーグルはベッドの上でぜえぜえ息をしていた。

「夢……スか」

肩を上下させながら、少年は部屋の中を素早く見回した。
垣根大人バージョンはそこには居なかった。
部屋のなかは薄暗い。
さっきまでの出勤前の朝っぽい雰囲気もここにはなかった。

「よかったぁ……本っ当に夢でよかったー」

目が覚めた、ということはあのわけわからん空間は夢だったらしい。
これで無事だ。
一安心だ。

「あっちこっちおかし過ぎて、気になるっちゃー気になるけどあの場で深く考えたらそこで終わりな気がする。SAN直的な意味で」

手元にダイスが無くて良かった、振ったらがっつり持ってかれるやつだ、と呟きながら。
悪夢から無事目を覚ませたことに安心しきってゴーグルはベッドの上をごろごろ転がり始めた。

「何してんだか。お前も面白えな」

ドアの開く音と聞き覚えのありすぎる声にグギギギギ、とゴーグルは振り向いた。
ギリギリセーフなのか今度はよく知っている垣根の姿だった。

「目は覚めたか?     」

「かきね、さん? いま、俺の……」

スクール』に入ってすぐ、自己紹介の時に『ゴーグル』を見せたら次の瞬間にはあだ名が決まっていた。

それ以来、もしかしたらはじめてかもしれない。
自分の名前、なんてきっと一生で相当の数見て聞くものを久しぶりに呼ばれて。
ゴーグルの少年は日ごろの扱いとのギャップでうっかり泣きそうなくらい感動していた。

「何だよ。大袈裟だな。それよりハニーとかのが好みか?」

「え」

油断したとたんに雲行きがまた怪しくなった。
垣根が口にしたのは、ついさっきまでの夢の中を想起させる単語だった。

やばい。
これはやばいやつだ。
パターンの判別なんてするまでもない。
この流れはあれだ。
「私はまだ変形を残している」系のボスキャラや、アクションものやホラー映画のオチでよくある「終わったと思ったか? はっはーんまだあるぜ!」的な奴だ。
この場合、物語は一旦締められたように演出されているが、それは次の展開への伏線や次作への期待を持たせるものだ。
残念なことに、油断していたところをひきずり落とされたゴーグルの少年はその気配に恐怖と絶望しか感じない。

「嫌か? じゃあ、ダーリンとか後は……俺の天使? いや、流石にねえな。そんなことより」

「え」

「まだ九十九万四千二百七十三回分残ってるけど。どうすんだ? 続けんのか?」

「あーーー! そっちかぁあああ?!」

はっとして少年はベッドから駆け下りた。
垣根を押しのけてドアを開けた先にはまた広い空間。
そこはまたしても白い壁紙白い床。
見慣れない、白い部屋だった。


「る、ループだ?! 終わってなかったのかよさっきの続きなのかこれどこだ二面か? 
おまけに地味に減ってるってことはガチでやらなきゃダメなんスか、ノルマはスルー不可っスか? 
そして俺はいつの間にそんなに言わされたんスか」


「何だ。やっと気付いたのか。じゃあお前まだそんなに飛んでねえの?」

ドアの前でへたり込むゴーグルの後ろで垣根はコキンと首を鳴らしていた。

「と、飛ぶって?」

「これ何回目だ、って話してんだけど。へえ、意外ともつもんだな」

「い、嫌だ……覚めない悪夢とかなんの冗談スか。つうかループしたってことは、前の俺はどうなった? 
よくあるやつは特定のポイントでループだしあとは……死んでトリップコース? まさか……か、垣根さんに? とうとう俺も愉快な死体デビュー?」

「何だよ。あれ? お前それも覚えてねえのか。詳しく聞きてえか?」

一旦リセットすんのかこれ。いや、状況がわかってんなら最低限、背景設定くらいは頭に入ってそうだよな。
と意味のわからないことを呟きながら垣根は首を傾げた。

「それは気になるけど恐いので遠慮させて下さい」

「遠慮なんざしなくていいっつーの。んなことより、もっと大事なことに頭を使え」

「この垣根さんも前の垣根さんも設定とか何とかは諸々引き継いでらっしゃるのでしょうか?! その優しさが俺には怖いっス」

「別に優しさじゃねえよ」

「それでは一体なんなのでしょうか」

「真心じゃねえから下心、とか」

おっと。
ちょっと不穏な空気がやわらいだぞ、とゴーグルの少年は垣根のベタっぽいボケの振りに便乗してみた。

「でははい、そのこころは」

「えーと。恋?」

「垣根さんにしてはなんかベタすぎっスね」

「そこはスルーかよ」

危険なワードはあえて触れない。
下手に内部パラメーターでも変動して、会話がおかしな分岐に進んでしまっては困る、とゴーグルはノベルゲームにでも興じる気分で笑って返事をした。

「言葉あそびっスよね? そうですよね。ツッコんだら駄目な気がします」

「え? 何だって?」

「あー、いや。はい。スルーしました」

絶対に聞こえていたのに、狙い澄ましたようなおうむがえしで尋ねた垣根に、ゴーグルはあえて言葉を変えた。
その切り返しに垣根は感心したように、にやりと笑った。

「自分からの見え見えの振りをシカトかよ。いい度胸してんな」

「自己防衛本能っス。俺はチキンなんで運良く踏みそこなった地雷は全力で回避します」


おい、とゴーグルに一声かけると垣根は隣に座ってきた。

「は、はい? なんスか」

「ん? いや、やっぱよくわかってなさそうだからさ。どうすりゃいいかヒントくらい教えてやろうか?」

大サービスだぞ? と人差し指をたてて得意げに言うが。
なんかもうノリがおかしすぎてゴーグルはぽかんとしていた。

「なんでこっち来るんスか?!」

「ほら、俺別にお前の敵じゃねえけどこう言うのが許されてんのかまではわからねえだろ。バレない様にこっそり聞けよ?」

そのまま内緒話をするように更に距離をつめてくる。
普段ならそこまで過敏にはならないだろうが、さっきまでの悪夢体験でゴーグルの少年はひどく怖がっていた。

「だからって近っ、顔近いっス!」

「デカい声出すなって。『総体』にバレんぞ」

「えっ。なんスかそれ。もしかして夢の平行ループ世界に散らばる垣根さんの中核が? じゃあその垣根さんに許して貰えたらこのおかしな夢も……」

「いや適当言ったんだけど。そんなの本当にあったのか。へえ、外に出て探してみるか?」

窓の外を指さして垣根はそんなことを提案したが、またしてもほっとしかけたところを落とされてゴーグルの少年はろくに話を聞いていない。
大慌てで垣根から距離をとった。

「なんで! 今! そんなテキトーな嘘吐いたんスか? ちょっと期待したじゃないですか」

「やたらビビってるお前に近寄るには、いい口実だろ? 何お前そんな引いてんだよ」

完全な棒読みで「うわー傷ついた。俺いますげー傷ついたぞ」と言っているのも、普段の垣根ならありえないふざけ方だ。

「やっぱこれ俺の知ってる垣根さんと違う」

「どんなもんかは知らねえけど。お前の知ってる俺ってのが、本当の俺なのか? どれだ? 『スクール』のリーダーの俺か? 『超能力者』の俺か? 他には何だ。何がある?」

皮肉めいた笑みをうかべると。
垣根はふと遠い目をして呟いた。

「そいつの何を、誰が本当にわかってやがるんだろうな」

ゴーグルの少年もオタクの端くれだ。
妄想とかそんなのは大好きだし、実は◯◯設定やもしもネタも笑って楽しめる。
だからって「何故か全力フルスイングで盛大にデレてくる垣根さん」とかはゴーグルの少年は嬉しくなかった。
なんかもうデレとかそんなちゃちなレベルじゃねえのはうすうすわかっていたが。

アクション映画やサスペンスの手に汗握る展開だって見ているからこそ面白い。
自分の身に降りかかってくるのは別問題だ。
もし二次元嫁推しキャラなら強制ラブコメ大歓迎オールオッケーこっちから三つ指ついてお願いしますでも。
実は垣根はホモだったんだよ! 世界は滅亡する!! とか言われたら世紀末の終焉の方に激しく納得同意してしまうと思う。

「なんスかねこの状況。いっそ楽にしてもらった方がマシなのか……
いや、もし死んでも戻るんならなんにもならないじゃないスか長引くだけっスよね。何がループのフラグだったんだ」


ゴーグルの少年は悩みだした。

別におかしなものに触ったり、謎のゲートを通ったりバケモノの返り血を浴びたり。
時間や世界を移動する色んな装置を使ったり乗り物にも乗っていない。
世界を自分の意のままにする女子高生と交流なんかもしていない。
白くてウザいちんちくりんに何か願いごとをしたりもしていない筈だ。
それに、そう言う系のループなら何か便利そうなことや前回の記憶を持ちこしているのがお約束の筈だった。

そもそも夢の中身に理由なんてないのかもしれないけど。それにしてもいきなりすぎて訳がわからなかった。
早く目が覚めるのをまつ以外に対処も浮かばない。
夢だとわかっている夢の中でタイミングよくいまだ! Yボタン、とかすると現実世界に戻れたりするのだろうか?

「俺もよくは知らねえけどお前のことだ、大方俺の機嫌を損ねたんだろ。それがマズいって思ったんじゃねえのか」

「まさかそんなのが原因って……」

「否定出来んのか?」

「そんなぁ? だってここ俺の夢の中ですよね!?」

「そりゃあな。だが相手は垣根帝督だぞ? 俺にそんな理屈や、お前の常識が通じると思ってんのか」

根拠も説得力もないはなしだが、そう言われると何故か納得できてしまう気がするのは暗部組織でのあれこれに毒されているのだろうか。
別に垣根帝督個人はそこまで破滅的に傍若無人で非常識で血も涙もないクレイジーさんではけっしてないのだが。

「夢にしたってすげー理不尽なのになんかしょうがない気がする……垣根さんってすげーなー。えー。じゃあとりあえず、さっき聞いた一〇〇万回どうの…ってのがんばるしかないんスかね」

「まぁ、俺の不満を先に解消させた方がいいだろうな」

そう言うと、垣根はゴーグルをほっといてその場を離れた。

「さっきから随分余裕こいてるみたいだけど……そうやって口が利けてるうちに数稼いだ方がいいんじゃねえのか」

ベッドに腰かけながら垣根はゴーグルの少年を見下ろした。
なぜそこに? 椅子そっちじゃね? と思いながらゴーグルは垣根さんは何してるんですか、と聞いた。

「いや。どうせなら、特等席で聞いてやろうと思って。お前はそこで正座な。まだ」

まだってなんだろうと思ったが、余計なことはきっと聞かない方がいい。
探索者系の一般人寄りのジョブは下手に深追いするとすぐおかしくなって死んでしまうのがゲーム盤上のお約束だ。
長生きしたかったら手も口も出さずにスルースキルを磨いたほうがよさそうだった。


「口にすんのはもう止めたのか」

「夢の中だからってそんな長時間愛を唱えて過ごしてたらうっかり事故りそうで嫌っス。なんか心理定規が前にそんな様なことをっスね……あとで目が覚めるからってToLoveるのは勘弁っス」

とりあえず、一〇〇万回の罰ゲームノルマを遂行中のゴーグルの少年だが言いはじめてみた解除ワードが予想以上に厳しかったので。
もう少し優しいやり方でなんとかならないかと垣根に相談してみた。
なぜかあっさりノートとペンが用意されたので、今は小学生の漢字の書き取りみたいなことを床の上でしていた。

「嘘から出た真って言葉があるよな。別にいいんだぜ、何か芽生えちまっても」

「殺意とか争いの芽とかは縁起でもねえっスけど。愛とかこの場で芽生えても何にもならないスよ」

「何もねえってことないだろ。そうなったらとりあえず、今の俺はしばらく退屈しないで済むだろうな」

「はぁあああ、何故ここにいる垣根さんはそんなに広くオッケーなんスか。
『俺と垣根さんがこう……口に出すのも憚られる感じの、夢の中の設定』の影響なんですか。そこを目指さないと旅は終わらないとかだったらどうしよう」

「なんだよ。そう言う方向性で行ってみるか? っつうかむしろ不満があんのか。顔も頭も良くて金もあって超能力者で、非の打ち所のねえ俺のどこが気にいらねえんだか。
あ。完璧過ぎるとだめってやつか? そればっかりはな。仕方ねえよ。天に二物も三物も与えられてるもんな、俺」

「それを自分で言っちゃうのが垣根さんっスよね。いやあの俺男はものすっごく守備範囲外です。フラグも圏外です」

「じゃあ女ならいいのか。そうだな、別に夢だしなんとか……あれ。お前女の方がいい?」

「そうだ。そうですそうでした。そもそも俺三次元はですね」

「アニメって幾らあれば作れんだ」

金かけるとワンクール数千万だっけ、億いくっけ? いや。垣根さんならリアルワールドでも、用意できたとか言いそうでこわいぞ、とゴーグルはビビッていた。

「えー、あの俺垣根さんのことは『スクール』のメンバー以上に見れないっスから。やっぱ無理ですって」

「お前なあ。ここ夢だぞ。何堅く考えてんだ。まぁ、それでもお前がそこまで言うんなら……仕方ねえ」

あーあ、と残念そうに言うと。
垣根は頭を掻いた。

「お友達から…よろしくな。幸せにしてやるよ」

「最後なんでカッ飛ぶんスか? なんで恋人ルートで完結しちゃうんスか他のENDはどこいったんスか!」

ものすごいファールを場外にぶち込んだ超能力者はものすごくさわやかに片手を差し出したが。
拳を握ったゴーグルの少年が握手に応じないのを見るとすぐにそれをポケットにしまった。

「何言ってんだ終わってなんざねえよ。俺達の活動はこれからが本番だ」

「だめだ。やっぱり聞いてくれない。俺の声は聞こえてるはずなのに話にならない。なぜだどうしてだ」

ただでさえ真偽のあやしい常識なんてものはここではカンナかけてやすりで削っておまけにロードローラーで轢きつぶされてしまったくらい粉々なのかもしれない。

「夢の中の垣根さん、あれっスか……あなたさまは実は男も大丈夫だーとかそんなのが……?」

現実ならもちろんばっさり否定してもらいたい質問だがどうしても、この夢の中が不可解すぎてつい聞いてしまった。

「男だから女だからってのは、そんなに大した問題か? そいつだから、って答えの前にはつまらねえもんだろ」

「夢にリアル世界の理屈を持ち出すのもなんスけど。違和感ハンパねえっスよ」

幅のありそうな返答にほっとしていいのか悪いのか判断に悩みつつ、ひたすらページを埋めながらゴーグルは新たな疑問をぶつけてみる。

「何でだよ。この俺がいいっつってんのにか」

「だって俺っスよ? 能力も大したことねえ顔も並みモブ・ザ・モブいいとこなしオタクで名無しのゴーグルっスよ?」

自分で言っててちょっぴり悲しくなる事実を告げるとベッドの上で暇そうに転がっていた垣根は起き上がって反論した。

「おい。俺のもんを馬鹿にすんのはたとえお前でも許さねえぞ」

「垣根さんかっこいー! じゃなくて! もうちょっとこう、具体的にですね。知りたくないけどきになるっつうか。俺のどこがそんな気に入られてんのかさっぱりなんで…」



「何だよ。じっくり聞かせてほしいって?」

よーし、いいぞ、と。
何故かちょっと照れくさそうにしながら垣根はベッドから降りてきた。
慌てて、ゴーグルの少年は両手を広げてそれを止めた。

マイペースでいつでも俺のターン! って感じのこの人をうかつに近寄らせてはいけない。
そう直感した。

いつだったか心理定規の話を聞いておいてよかった。
何ていうか、相手の都合なんて最初からお構いなしな垣根は相手のテリトリーに踏み込んだら最後、すべて総取りでもぎ取っていきそうだった。
肩ポンで敵も味方もイチコロ、ワンパンキルみたいな。もちろん文字通りの意味でも。

「タンマっス。わかりました。下手に垣根さんの好感度が上がりそうなチョイスは俺の為にならないんですね。
藪から『未元物質』でソッコー詰むの怖いんでとりあえず見た目で! 顔は?」

「ほら、えっと……主張し過ぎねえ控えめなとこがお前らしくていいと思うぞ? なんとかは三日で飽きるっつーけどそんな心配もねえし。
いい意味で平均的なのはマイナスが少ねえってことじゃねえの」

イケメンにドヤ顔でそう言われてゴーグルの少年は肩を落とした。
何故か不思議と悲しかった。

「どうしてでしょう褒められてるはずなのに心が痛いっス」

「お前は自分でモブだなんて言うけどな。たとえ三〇〇人居たって俺はそこからお前を見つけてやるよ」

「……垣根さんて、すごいっスね」

「ゴーグル! って呼んでいい感じに返事すんのがお前だ」

「俺の、アイデンティティ……」

ゴーグルの少年はがっくり床に伏せた。
とどめの余計な一言がなければ。
ちょっと、いやかなり感動しそうだったのだが。
色々恵まれたハイスペックな人間ともなると、あんまり他人の外見に興味はないのだろうか。

「んなこといわれてもだな。じゃあさ。お前は女だとどう言うのがいいんだよ」

「そっスね。やっぱ大和撫子系の、守って応援してあげたくなるよーなのが。基本けなげ系で……髪は黒でロングがベストっスかねー。
ふわふわ系、頑張り屋さんもいいっスけど、ちょいネガちょい病みも全然。派生で毒舌とかもまあ。眼鏡はあってもなくても……あとは」

二次元キャラの個人的萌えポイントをずらっと並べてみたが、垣根はちっとも理解できなさそうな顔をしていた。
かと言って、それに具体的な作品とキャラ名をあげてわかるわかる超わかるー、と同意されたらそれはそれで激しく微妙だったが。

「簡潔にまとまらねえの」

「うーん……わかりやすく正反対なキャラ二派で分かれるやつなら…懐かしアニメのWヒロインでいくと、俺はこっちのアルビノ1st派っスね。
ハーフの2ndはちょっと……性格言動キツい子はあんま、ついでに金髪もそんなに嬉しくねえっつか中外ゆるふわタイプだとむしろ有りなんスけど、
傍若無人に蹴り入れてきそうなのはちょっと」

何かないか、と探したら都合よくズボンのポケットからスマホが出てきたのでゴーグルの少年はそれで画像を検索すると垣根に見せた。
そんなところは夢仕様で便利で助かった。
しかし、それをみた垣根の顔色がさっきまでとはまるで変ってしまった。

「テメェもあれか? やっぱ『第一候補』だよなってことか? ああ?!」

「はい? ちょっ、え、垣根さん?! 意味わかんねえけど……ごめんなさい!?」

背中から翼が出てきそうな勢いで怒鳴った垣根に、訳も分からずゴーグルの少年は頭を下げた。

「女の子の話でしたよね。垣根さん、一体何が地雷だったんだ?」

まさかリメイクででてきた三人目とかをちゃんと数に入れた方がよかったのか。
もっと違う最近の作品ならよかったのか。
何がまずかったんだろうとゴーグルは会話イベント失敗の原因に首を傾げていた。


「ほら。そんなことより手が止まってんぞ? いいのか」

「不思議と手とかは疲れないんスけどこれ精神的にきます。気分転換にひらがなオンリーでもいいっスかね」

垣根の名前は地味に書きづらい上に画数が多い。

「いいんじゃねえの別に」

よし。じゃあほら、後ろにハートも付けろ。
とかすごく似合わないメルヘンなことを言われてゴーグルの少年はもう数えるのも嫌になるくらいのため息を吐き出した。
今まで彼の頭の中にあった「垣根帝督像」がガラガラ音を立てて崩れていきそうだった。
クールでカッコいい暗部のリーダーはどこにいってしまったのだろう。

ていとくあいしてる♡とかもう頭がおかしいとしか言いようのない文字の並び始めたページを見て垣根はちょっぴり嬉しそうだった。
なぜか、ハートマークだけじわじわと色が変わりはじめている。
視界の端で芸の細かい仕事がされているが最早そんなことに一つ一つ反応しているゴーグルではない。
そういったアクション一つにも消費されていそうな精神力的なものを温存しなくてはいけないのだと自分に言い聞かせていた。

(あれ、これ秘書艦に言われてるって思えば……いける? はっはっは、もう、俺ってば愛されてるなぁ)

とひたすら手を動かしながら妄想で逃避しはじめる始末だった。

「あれ。意外とルール緩いんスか?」

「いや、お前が勝手にはじめたんだろ」

「でも垣根さんだめなんていいませんでしたよね?」

「俺も待ってる間暇だし。これなら、話くらい出来るだろ」

おや?
と微妙な意見の食い違いに、怖くなってゴーグルは手を止めた。
彼は、「原因である垣根さんがいいって言うんだからやり方変えても大丈夫だろう」と思っていたのだが。
当の垣根はまるで責任感のないコメントをしている。
この差はなんだろう。
って言うか、こんなことしてていいのだろうか。

「……このノートとペンは?」

「お前がいるって言うから用意したんだけど」

「……この、愛のデスノートみたいになってるものはどうなるんでしょう。最後の審判的なので有利な物証になるんですか」

「さあ?」

「俺…何してるんだろう。え、この時間がまるで無駄だったなんて考えたくもない」

既に何ページもぎっしり文字で埋まったノートを前にゴーグルの少年は割と本気で落ち込んでいた。
時間をかけてこつこつ進めたゲームの報酬がなんかすげーしょぼいしおまけに中途半端で全然使えそうにない大外れだった時の心境に近い虚しさがあった。

「いや、うん。そんな落ち込むなよ大丈夫だろ? 多分だけどさ」

「じゃあ今何回分クリアになってます?」

「あー……良かったな。ちゃんと残り減ってるぞ」

垣根はちょっと慌てた様子で、落ち込みまくるゴーグルのフォローをした。
そして。何か確認しているのか宙をにらんで考えると、つまらなさそうにそう言った。

「……なんでそんな、残念そうに言うんスか?」

「きっとこれが全部済んだら、俺達がこうしてる意味もなくなるんだろ」

「垣根さん」

「なぁ。俺はさ」

「なーんて言っても騙されませんよ! だからなんですぐ距離を詰めようとするんスか。境界線! 境界線!! はーい、こっから俺の陣地ーー!!」

何か言いかけながらまた接近してこようとする垣根だったが。
白い床の上にペンでガーッと線を引きながらゴーグルは大声で騒いだ。

「チッ。だめか」

何らかの、きっとあんまり愉快じゃない目論見が外れたのか垣根は悔しそうに舌打ちをしていた。


「よし」


「……あれって、聞いた方がいいんスかね。垣根さん、そんなとこで一体何してるんですか」

「来いよ」

さっきゴーグルが床の上に適当に引いた線の向こうでは、垣根が腕を広げた姿勢で座っていた。

「仰る意味がわからないのでスペックの低い俺にもわかる言葉でお願いしていいスか。出来たらやさしいにほんごでおねがいします」

「俺が行くのがだめならお前が来りゃいいだろ。ほら、受け止めてやるから」

「どうしてそこで俺がそっちに行く前提なのかがわからないんスけど。いや、キョトンとする所でもないと思います」

なんでお前こっち来ないの? って反応をされてしまった。
目を丸くして首を傾げる「らしくない」垣根の振る舞いにゴーグルはがっくり肩を落とした。
なんというか、ギャップが普段とありすぎてリアクションに疲れる。

「なぁ。お前ノリ悪いぞ」

「うっかりノリツッコミでもして取り返しのつかないことになったら怖いので。そして俺はページを埋めるのに今とても忙しいのです。
そんな訳で塩対応で失礼します」

一応、書き取り地獄が有効なことはわかったのでゴーグルの少年は一刻もはやくこれなんとかしないとって気持ちでひたすらペンを動かしていた。

「なぁ……暇なんだけど」

ペット禁止の学生寮住まいのゴーグルには未経験のことだが。
お猫様と呼ばれる生き物のお世話をしている人間は、何かやっていてもまともに作業をさせてもらえないらしい。
下僕がなにやら忙しくしていると、それが膝だろうがテーブルだろうが、たとえキーボードの上だろうがお構いなしにお猫様がよじ登って来て『相手をしろ』と邪魔をしてくることがあるというのだ。

不満そうに睨んでくる垣根を見たゴーグルはそんな話を思い出していた。
ギャグ漫画よろしくダイビングポーズで飛びかかってこられでもしたら色んな意味で瞬殺っぽいのでその点はありがたいのだけど。

なんでそんなことを思いついたのか。
第二位だけに、にゃんにゃんなのか。じゃあ一位ならわんわんだったのか。
ははは。猫とか洒落にならない。

今の状況を思い出して、そんなおかしなひとり連想ゲームの中身にNGのタグを脳内で速やかに追加した。
どこかに数値化もされていないし実感もないが疲れてきているのだろうか。
妄想脳内逃避も残念な感じになってきていた。


「そんなこと言われても一体何故こんなことになったのか……ってきっと俺のせいなのかもしれないけど
残りはネタをガチでやらせることにした垣根さんのせいっスよね。一〇〇万回ってマジっスか」

「その一〇〇万回だけどさ。お前このまんまで本当にいいのか」

突然真面目な顔をする垣根に、ゴーグルの少年も背筋を伸ばして話を聞いた。

「ここは夢の中だ。なら疲労しねえんじゃねえか、って想定で。お前が今まで通りちまちま数を稼ぐとする」

そこまで言うと垣根はゴーグルがもっているノートを指さした。

「やってみてわかったと思うが、声に出した方が断然早いだろ。一分間に三〇回なんとか言えたとして。
そのペースを維持して、それでも不眠不休で二〇日は掛かる計算だぞ? 不毛過ぎねえか。んなことやる意味、あるのか?」

僕とゲイ約して、ホモォ少年になってよ、みたいな無茶ぶりから。
今度は小学生にもわかりそうなさんすうのお話でいかにゴーグルが無駄なことをしているか説いて落としにきた。

「ぐぅううう。その根本はなんとかならないんスか根っこから問題は解決しないんスか」

「だから俺にはわからねえんだって。しらねーもんそんなの。もっとマシな解決法くらい自分で考えろよ」

「どっちだ……どっちの笑顔なんだこれ」

僕わかりません、みたいにいい笑顔をしてくる垣根は知らないふりをしているのか、本当にわからないのか。
疑念のこもった目を向けてもゴーグルにはさっぱり判断がつかない。


「漫画だと段々スピードアップしてって、一日一万回の正拳突きとかも出来るようになっちゃうんだけどなあ」

「そうだ。それでちょっと思いついたんだけど。面白い話がある。まあ聞け」

「……なんですか」

「平均して十分に一回。一日で百四〇回『愛してる』とか『好きだ』って言う生活をすると一〇〇万回まで十年掛からねえんだよ」

「あれ。計算おかしくないっスか? そのハイペースでも二〇年は掛かりますよね」

「お互いに言いあえば数は半分で済むだろ。で? そんな生活ってのはどうだ」

何となく、いい感じのオチをつけようとしているのを察したゴーグルは垣根の発言を踏まえつつ、少し考えてから口を開いた。

「……幸せは倍、ってオチですか」

「そ。『一〇〇万回の……』って言葉は色々あるけど、何も大袈裟な例え話じゃねえ。実現可能な数字だって気がしてくるだろ。
十年なんて短いスパンで考えなくても人生ってのは長いんだしもっと緩く気楽にすりゃいい」

なんだ。お前ちゃんと上手いこと出来るんだな、なんでそれを使わねえのかわからねえ、とよくわからない独り言を言うと垣根は「面白い話」を終えた。

「はー。なるほど……じゃあ、一生の間に一〇〇万回のありがとうとかも聞いてるかもしんないっスね」

「で、どうだ。俺に養われる覚悟はそろそろ決まったか?」

がくっ、とそこで少年は肩を落とす。

「ああーっ! なんか女子にも受けそうないい話だと思ったのに! 
意外と垣根さんロマンチックな話もできるんですね素敵! って思った途端にこれですよ。
そしてさりげなく最後すり替えないでくださいなんスか俺は何故に養われるんスか。最早対等だとかパートナーとかそんなレベルでもないんスか俺ペット枠っスか?!」

「だから幸せにしてやるって。俺が」

「俺の幸せは俺が決めます! 大丈夫っス!!」

このパターン何度目だろう。
頭を抱えながら。
そんなことが考えられるくらい、ネタ化したやりとりに段々慣れ始めていることにゴーグルの少年は悲しくなった。
流せるようになってきているのは夢の中での彼がいまのおかしな状況に順応している証拠だ。
この先ちょっとやそっと変な振り方をされても、座布団が狙える対応が出来そうなくらいだ。
だが気持ちのハードルが下がってきているのは、まだ笑えるレベルとは言え、振られるネタの傾向を考えてもあんまり良くないだろう。

「チッ……遠回しなプレゼンは失敗か」

「垣根さんって『ガンガンいこうぜ』な感じのゴリ押しパワータイプだと思ってたのに。何だか戦闘スタイルが変わってきてる気がする……垣根さんやっぱすげえ」

「なんだ。競争でもするか? 『ガンガンイ」

「余りにレベルの低いとこに反応するのはどうなんスか。小学生スか」

ゴーグルの言葉にかけて、垣根が下方面の問題発言をしそうになったが。
下らなさすぎてさすがに言い終わる前に止めた。

「あれっスよね? なんか『ホモネタっぽいこと言ってみたいなー』って言うやつですよね? そう言う設定で、ちょっとふざけてるだけですよね」

「いいのか」

「へ?」

「じゃあ、本気出してもいいのかよ?」

小さくため息をつくと垣根はその口元をつりあげて問いかける。
それに言葉を詰まらせたゴーグルの少年の全身からダラダラと嫌な汗が噴き出す。
凍りついたような反応に垣根が目をそらすと、ついさっきまでの圧迫感はなくなっていた。
へなへなと腰を抜かしたゴーグルはそのまま額を床に擦り付けた。

「すいませんでした俺が大変悪うございました」



「少しは理解できたか? この状況でお前が平然と過ごせてんのは俺が遊んでやってるからだ。俺の広い心、俺の温情、つまり」

「つまり?」

「愛だな」

一旦ためて、もったいつけた後に垣根は見事なドヤ顔で言い切った。
ここしばらくの間に、ゴーグルの少年はすっかり見慣れてしまってありがたみが薄いのだが、ドヤ顔品評会とか決め顔選手権があったらグランプリを狙えそうないい表情だった。

「ああ。はい」

「あれ……そこ噛みつかねえな?」

渾身のいい顔と絶好のつっこみどころな一撃に、当然ゴーグルの少年のカウンターを期待していたらしい垣根は。
狙いが外れてちょっと困ったような顔をしていた。
一方、散々な垣根の言動をいまや軽くスルー出来るほどになってしまったゴーグルは修行中のお坊さんの様に静かな表情でうなずいた。

「はい。日本語として広い意味でみればその単語には特別問題がなさそうなんで」

「まぁ……いいや。俺の愛がちっとはわかったところで……おい聞こえないフリしても意味ねえぞ」

「いいえ。聞いていますよ」

「なら……感謝の一つくらいしたらどうだ」

「ありがとうございます垣根さん」

「どこでそんなの覚えたんだよ」

このタイミングで流れるような五体投地をするゴーグルの少年に。
今までさんざん押していたはずの垣根も若干引いていた。

仏教徒みたいなお礼では感謝の気持ちが届かなかったらしく。
垣根はもっと心に響くやつにしろ、とお礼の上乗せを要求してきた。

「で。なんでハグしろなんでしょうか」

「別にいいだろこれくらい。ハグなんて挨拶だろ? ははあ、お前もしかして俺のこと意識してんのか。
まぁ、仕方ねえよな。自分で言うのも何だが、俺は相当魅力的だ」

この自信はどこからくるのか。
垣根さんはこんなこと言うキャラじゃないはずだ、とゴーグルは思うが。
ナルシシズム溢れるセリフもなんだか似合ってしまうのは確かだった。
色んな時に使える魔法の言葉「但しイケメンに限る」は伊達じゃないらしい。

「いや? それはっスね」

「何とも思ってねえんなら……出来んだろ」

「思ってないっスよ? 思ってませんとも」

こんなやすい挑発に乗る奴はいない、と普通なら思うかもしれないが相手は垣根帝督なのだ。
ジャイ○ンがの○太の漫画を「貸せよ!」と言った瞬間にはもう奪い取っているように。
ここまで発言したからには要求でも挑発でもない、確認ですらない。確定事項なのだ。
主導権も決定権もゴーグルにはない、是非も無し。

「え。俺は顔見ながらしてーんだけど。お前、前から嫌なの?」

「顔見ながらハグってどうやるんスか。繰り返しますが、ハグっスよね。絶対間違いないですよね」

「うん。とりあえずは」

少し嫌な含みがあったが、素直にうなずいてくれたので良しとした。
別にまあ普段の垣根相手ならHAHAHAって感じで欧米ノリのハグくらい、何すんだコラと返り討ちにあわなければ出来ると思うのだが。
今この垣根に正面から近づくのは、野生のクマに背を向けるよりはるかに危険だとゴーグルの少年は感じていた。

「はいはい。お前って何気にワガママだよな。意外と度胸あるっつうかどっか抜けてんのかわかんねえけど」

じゃあバックで、と残念そうに垣根は言ったがゴーグルの少年は黙殺した。
ネタを振られた予感は悲しいかななんだかとてもしたが、今その相手をするとやばーいフラグ満載の地雷原で詰むことになる。
辺り一面まとめて吹っ飛んで、この様子のおかしな垣根さんに笑顔で骨を拾われるのは嫌だった。

ビシッと仁王立ちする垣根の背後に回って、ゴーグルは言われたように腕を回した。
長身の垣根とでは身長差があるのでなんとも中途半端な感じに終わり、ゴーグルの少年はげんなりした顔で手を放した。

「何だこの虚しさと敗北感」

「想像以上に……つまらねえんだけど」

こんなことしない方がよかったんじゃないかと言うくらい、不満そうな顔で垣根は首を振った。


「せめて補う努力をしようぜ」

「いやこんなもんっスよね? 挨拶程度のサムシングに俺はいったい何を期待されてるんスか?!」

「じゃあ、ほら。交代」

そう言って強制的に立ち位置が入れ替えられる。
あまりこうして他人を近づけたことが無いのだと垣根は言った。
日本人ならそうそうこんな風にハグとか、よっぽどふざけてないとしませんよねーとゴーグルは返したが。
そう言うことじゃねえよ、と呟くと垣根は肩のあたりに顔を寄せた。

「どこ行っても厄介な実験動物扱いだったからな。昔っからさ」

「垣根さん」

「……何だよ」

「なんかめっちゃ当たるんですが」

「んー? 何が」

「耳に、息が! つうか話の途中で息を荒くしないでください!!」

「なんつーんだっけ。こう言うの。やると喜ぶんだろ? ……えっと、『耳つぶ』?」

「垣根さんがおかしな流行に毒されてる?! っつうかこれもうハグじゃないっスよね? ホールド寸前っスよね俺。ブレーク! ブレェエエエク!!」

ゴーグルの少年は自分の胸の前まで回された腕を激しくタップしてタイムを要求した。

「なんだバレたか。いい作戦だと思ったんだけどな」

垣根はケロっとした顔でターゲットの確保に失敗したことを笑っていたが。
難を逃れたゴーグルの少年はまだ嫌な鳥肌が…と腕をゴシゴシさすっていた。

「けどまぁ、いいニュースだ。お前がひっついてる間の愛してるPはちまちま言ってる時より数倍早く増えたぞ。試してみるか?」

「悪いニュースの間違いっスよね。何スかその、課金扇動みたいな露骨な追加システム。せめてその恐怖のなんとかポイントを可視化してもらえないことには。どんなもんかわからないのにそんなこと出来ねえっス」

「別に何か減る訳じゃねえだろ」

こいつ何マジになってんの? と言われそうだがゴーグルの少年はそこはきっぱり断った。

「形は無くても俺のだいじなものが減る、そんな気がするので。お断りします」

「仕方ねえなぁ。これでいいのか?」

「ああ、垣根さんの機嫌が『悪くねえ』だと高ポイントで『ナメんな?』だとゼロ、『上出来だ』なら更に追加でボーナスなんですねって、何でコマンド結果表まで作られてるんですか?」

突然どこからかニョキニョキ現れたボードは白かった。
ひょっとしなくても、メイドイン『未元物質』のようだ。
そこに出ている表によるとトータル一〇〇万のペナルティ分を、なんとかごにょごにょポイントを増やすことで相殺出来るシステムらしい。
ゴーグルの少年はそりゃもうがんばったのだが、まだ半分以上ポイントを消化しなくてはならないようだった。

「あれ。でも思ったより減ってるんスけど。俺いったいどこでそんなに稼いだんだ?」

そう尋ねると、垣根は「今までもそれなりに楽しかったからな」
と言って笑った。

「俺が飽きて来るといい結果は出なくなるから工夫しろよ。お前、こう言うの好きだろ?」

「思考停止でひたすらタップはダメってことスか。いやいや、ここは地道に頑張らせてください」

「まぁいいぜ。どうせ楽な方に流れちまうんだから」

「恐ろしい予言はやめてくださいっス」

「今はな。すぐに勝利宣言をしてやるよ」


なんと、『ゴーグル』の使用も大丈夫らしい。
もっと早く聞いとけばよかった! とゴーグルの少年は後悔したが、能力を使えば今までの数倍早くノートのページを埋めることが出来る。
おまけで新しいノートやなんかも用意してもらって、ゴーグルの少年は久しぶりに喜んでいたのだが。

「あのー、垣根さんこれは」

「おまけしてやってんだ。これくらいいいだろ。ポイント稼がせてやるよ。ほら、手出せ」

横に座ると垣根は少年の腕を引っ張って自分の頭の上に乗せた。

「撫でろ」

「えー……」

ちっとも嬉しくない新イベントの開始に思わず本音が出てしまう。

「も少し右」

明るい色の髪をわしわし撫でながらゴーグルの少年は無心でペンを操作していた。
どうやら垣根はスキンシップがずいぶんとお気に召したらしい。

「ちゃんと触れって。こっちもだ」

「はいっすー…」

そんな風にひとしきり頭を触らせて満足したのか。

「よーし。次お前な」

垣根はご機嫌で、またしても選手交代を宣言した。

「は!? いや大!丈!夫!っス! 間に合ってますね全然」

「遠慮すんなって。こいつをいじらなきゃいいんだろ?」

「ほんっとーに! 大丈夫です」

どーこーにしーよーうーかーな、と。
頭についた『ゴーグル』をよけて触る場所を探していたがゴーグルが本気で嫌がっているのを見て垣根は手をおろした。

「俺がこうしてやって、喜ばねえ奴なんざいないぜ? つうか、あれだ。お前もいい加減さ」

「だか……あーっもう、俺に触んなって! 言っ」

叫んだ瞬間。
少年の姿はなくなってしまった。





「あー。またか。今度は長くもったと思ったんだけどな」

そうぼやく垣根の前に、何やら白く光る文字が現れて流れてくる。
なにかのコードのようなそれをしばらく目で追っていた垣根は残念そうに首を振った。

「欲を掻くとかえって面倒だな。リセットだリロードだのして同じようなの何度も出来るやつの気が知れねえ。ゲーマーってのはあれか? 暇人ばっかか?」

ちょいちょい、とところどころ文字列をスクロールしながら呟く。

「まぁ、ここでハイスコア、記録更新か? そろそろあの馬鹿も気付けばいいんだけど。俺はそこまでこだわらねえぞ? つーか、その前に飽きるだろ普通。本気で一〇〇万って馬鹿かよ」

英字で短いメッセージが表示され、最終的なスコアデータの様なものが垣根の前に出そろったらしい。

「ここはあいつの夢なんだからさ。あいつがそう思い込んでるうちは、テメェが頭んなかで決めたルール通りに同じことの繰り返しだ。
それは本当に俺に通じんのか、って折角言ってやってんのに。気付くどころか別のプランを試しもしねえ。テメェが悪いの一点張りで、こっちの気はどうでもいいんだろうが」

コーヒー買って来い、と言われたがコーヒーがなかったら手ぶらで帰ってきた。
そんな機転の利かなさに呆れるような口ぶりだった。

「それに、あんなビビんなくてもいいだろ。逆らったところで別に…………」

一瞬をどこまでも引き伸ばしたような、さっきまでの下らないやり取りを思い出しているのか。
少しの間垣根は考えていたが。

「いや。やっぱ、ムカつくな?」

それとこれとは別だ、みたいな顔をすると垣根は近くに浮かんだ光る数字を邪魔そうに手ではらって消した。



「なぁ、心理定規」

「なぁに」

「そいつ、今どんな夢みてやがると思う」

垣根にそう聞かれて心理定規はそいつ、ゴーグルの少年の方にちらっと目を向けた。

「そうねえ。何かミスしてあなたにこっぴどく怒られてる夢……かな」

「ううう……ごめんなさい……垣根さん…俺が悪かったんです……うーん」

「なんかすっごくうなされてるしね」

そうじゃないかな。しょうがないわね、と言いたげな少女の呟きはあんまり興味がなさそうだった。
三人そろって移動中、と言うことは『スクール』がらみのあれこれなのだが、一仕事するまえだと言うのに誰もかれもそんな空気じゃない。

「もう着くんだからそろそろ起こせよ」

自身も、やる気がなさそうなままそう言うとリーダーは軽く肩を回してあくびをした。

「私が?」

「俺にどうしろっつうんだよ。お前そこから手届くだろ。つうか、よくこれで寝れるな」

助手席に座った垣根は後部座席をちらっと振り返った。
左後ろのドアにもたれる、と言うか頭をゴツゴツぶつけながら寝入っているゴーグルの少年の隣。
シートの右端に座る心理定規は声をかけられて不満そうに首を振った。
車内の上座は運転手の後ろ、というのが世の常識らしいが。
それも『スクール』では通用しない。
もしも車が絶望的に大破しても一人無傷で降りてきそうなリーダーは、気分で勝手きままに乗車していた。

結局。
目的地に着くまでに起こしてもらえなかったゴーグルはどうなったのかと言うと。
強制的に下車させられていた。

「わあああごめんなさいっス垣根さんが垣根さんしか垣根さんだけ垣根さんは世界一っスだからあのどうか勘弁して下さい!!」

ドアが開いて、支えがなくなった少年はずるずるとそのまま地面に滑り落ちていた。
重力に負けて転がりながら意味不明な悲鳴を上げる。

「おい、この馬鹿まだ寝てんぞ」

「いだっ……たたた、あれ」

ぱち、と少年が目を開けると。
心理定規と垣根がさかさまに映っていた。

「一体どんな夢みてたの」

「いや……それが……あれー? 覚えてないんスよね。垣根さんが俺の話を全然聞いてくれなかったのはなんとなく」

「いつも通りじゃねえか」

「覚えてなくて良かったかもね。ここにすっごいシワ寄せてうなされてたから相当嫌な夢だったみたいだよ」

心理定規は笑っていたが、垣根は気のゆるみまくった態度に厳しい目を向けていた。

「お前なあ、そんな調子で大丈夫かよ。ヘマするんじゃねえぞ」

「夢だけじゃなくてこっちでも怒られたりしてね」

「そうだな。じゃあもししくじったら――」


寝起きのぼんやりした頭で。
ゴーグルの少年は何故か。
どうしてか無性に嫌な予感がしていた。
一度言葉を切った垣根はにやり、と。
確かに愉快そうに笑っていた。

ドーモ
ちくしょうやっとだ。寝るか寝るぞ寝ますよいいよね

>>201

「ゴーグルに全力でデレる垣根」だったはずだがどうしてこうなった。
ホモ大喜利とかなんじゃこりゃ

ゴーグル「デレデレのリーダーに死ぬほど愛されそうで眠れない安価ぎゃーーっ!」
心理定規「なにそれ」
垣根「キモい」

前に「夢オチなら問題ない」って聞いて。そしたら某プラスの新婚さんスチルのあれが浮かんだのでゴリゴリ押し切った。特に理由のないデレがゴーグルを襲う。
いやもうデレるとかいうかなんかだけど。
一〇〇万回って絶対無理だろうけどほんとにやるとどうなるんだろう?と思ったら無駄に伸びた。
結果、垣根が飽きた。
多分もう今回の以上、様子のおかしな垣根を書くことはないと思います。おかしさの限凸MAX。
ゴーグルくんの敗因は。
別に聞かなくても親切にお話ししてくれる垣根さんにろくすっぽ喋らせなかったことだといちはおもいましたまる

そろそろ他の暗部との絡みが見たいのだがどうだろうか?
アイテムとか、アイテムとか、後アイテムとか!

ハグしたり頭撫でたりとりあえず鼻血が止まりませんどうしてくれんですか1
インディアンポーカーにして売ってくれ

おっつおつ
このリアル体感型シミュレーション(アクション?)ゲームは何処に行ったらできるんだ
垣根を喜ばせたいけど終わらせたくないジレンマに苛まれながらエンディングを迎えて幸福感と謎の喪失感につつまれたままエンドレスモードに突入したい
たとえイベントが100万通りあったとしてもコンプリートしてみせるぜって廃人宣言してみたり

インディアンポーカーってのはレールガンで出てきた見た夢を保存したカードのことでそれを使って他人の夢を体感できるってやつ
そんで需要の高い良質な夢を安定供給する奴はドリームランカーって呼ばれてて青ピもそのうちの一人
詳しくは電撃大王と同時発売のとある科学の超電磁砲11巻を見てね!

どこが悪夢なんだよ超いい夢じゃないか
ゴーグル爆発しろ
垣根が増えてサンドイッチとかハーレムとか出来る未来のゴーグルも爆発しろ
垣根とゴーグルのどっちがどうなのか気になって読んでから寝れないので1は責任を取ってくれ

>>534
1しにすぎだろwwwwww

>>556
教えてくれてありがとう。なぜか11月発売だと思ってた助かった。
青ピすげえ。

やたら親切なのもデレ(愛)かと思ったが、ていとくん元々自爆型だった

つか、むっちゃ笑ったけどゴーグルくんの恐怖が手に取る様にわかるタイプのガチデレ過ぎて
なんかジワジワSAN値削られてる…これは余裕もなにもあったもんじゃねえww
特にオチは最早ホラーだよwwww

おもろかった、乙

デレていとクンキテター(゚∀゚)ー
俺がいるからコーヒーメーカー要らねぇとかなンなンですかァ、コーヒー飲みたくなったら毎回淹れてくれんのかよヒャッホゥ
ばーかってのがいちいち可愛すぎるし愛してるPとか今時バカップルでもやんねっつの
つかわりと適当にあしらわれてんのに減ってるしなにこの色々甘過ぎるていとくんたまんねぇ、むしろたまる
とりあえずゴーグルは爆 発 四 散しろ
コ/"/ー/ク/"/ルくらいになってくれ
つーことで帝子ちゃん(♂)を全裸待機するしかねぇな

おっつ
>>545
第1位っぽい女子に嫉妬するときちゃんとテメェって呼んでる
1のゲイの細かい事
それでもポイント減らさない垣根の愛か
ゴーグル愉快なオブジェになれ

安定して面白かった乙
いやー、3Pも惨[ピーーー]も気分次第とは流石垣根さん過激っすね
たとえ230万人がすし詰め状態でも垣根なら見つけられるって思ったけど想像したら空飛んでた、むしろ不可避だった、一通さんは半径3mくらいの空間ができてた、上条さんは痴漢騒動の中心で不幸を叫んでた、ウォーリー改め妹達を探せやりたくなった

誰も触れてないけど頂点のむぎのんvsていとくんの罵りあい超俺得です本当にありがとうございました
そこに割ってはいろうなんて流石上条さん自殺行為がお好き
よし、俺は垣根のスーツの中探って愉オブになる役やるから上条さんは麦野のビーム受けててくれ

ところでドキッ!まるごと仮装!超能力者だらけのハロウィンパーティー~グシャリもあるよ~はまだですかね?

垣根ハッピーゴーグルバッドないちゃラブエンドがみたいんですが続きはどこでみれますか

ネタバレだったらごめんだけど
ゴーグル君のゴーグルの使い方が判明したけどここのSSは続くよな?マジ心配なんだが

ゲームにめちゃくちゃ役立ちそうwwww

本編とは別の平行世界かもしれないからセーフ

レイプや輪姦ものがすげえ苦手で避けてたんだが>>1の書くキャラとか世界とか好きだから今更ながら読んでみたらわりとイケた、多分垣根の精神が屈してないからだと思うけど。くすりちょうだいでうっかり興奮した、>>1のおかげで新しい扉開いたありがとう>>1

かくして日本は少子高翌齢化にまた一歩進むのであった

ゴーグル君が夢だからといって反抗的過ぎるのは垣根さんが自分の邪魔になる奴以外にあまいからだと思います!もっと教育すべき
つかテメェ前に定規タソも膝に乗られて拒否ったろ、表出ろこの野郎芸術作品にしたるわ

未元物質ならなんでもありだから仕方ないね!

土星は帝督様(エンペラー)の直属の配下であるにも拘わらず帝国民としての忠義に欠けている
帝督様(エンペラー)の御言葉には全神経ごと耳を傾け
帝督様(エンペラー)の勅令にはハイ喜んで!
帝督様(エンペラー)に最高の賛辞を
帝督様(エンペラー)に第一位又はそれを想起させる話題を出すときは細心の注意を(メルヘン,冷蔵庫,カブトムシ,バレーボールついでに鍋の具にも気をつけるべし)
以上のことを心がけよりいっそう帝督様(エンペラー)の為に尽力するように

酔っ払うミサキチ可愛かったから他のメンツも見たいわぁ
できれば垣根&麦のん、削板&美琴がいいんだゾ☆


垣根「さて。ここに向こうの組織の資料がある。お前、あいつら相手にどう対処する」

ゴーグル「何で俺だけに聞くんスか?」

心理定規「私? 私は誰が相手でも一緒よ。『心の中へは近付いて、離れた所から撃つ』あとはタイミングを見て撤退させてもらうわ」

垣根「俺もそうそう変わったことなんざしなくてもいいし。相手によって出方を変えなきゃならねえのはお前くらいだろ」

ゴーグル「なるほど」

垣根「絹旗と戦えっつったらどうする」

ゴーグル「……窒素で身を守ってても、本人の動きに問題はなさそうだな。それなら、酸素の確保に必要な空気交換が普通にされてるか、それとも窒素の装甲化にある程度条件があるのか……
とりあえず俺は盾抜けるほど威力ねえし防ぎきれるほど壁張れないんで、前面突破は避けて麻酔ガスとかスタングレネード系の武器が効くか試します」

垣根「フレンダは」

ゴーグル「余計な武器を使われる前に能力で素早く拘束しますかね」

垣根「滝壺」

ゴーグル「狙いを外されるとかならいいんですが。演算がまずいことになると俺も危ないんで、何とか能力以外で押さえ込む作戦ですかね。
直接攻撃できそうな能力じゃないし。別に、空手の有段者とか暗殺術の使い手なーんてことはないですよね?」

フレンダ「うちの滝壺はりんごくらい片手で楽勝って訳よ!」

滝壺「うん」メゴシャッ!!

麦野「テメェの×××もこうなるわよ 」

絹旗「いくらなんでも超かわいそうです。滝壺が」

ゴーグル「……やっぱり近付くのはまずそうなんでこっちが刺される前に能力でさくっと寝てもらう作戦にします」

垣根「じゃあ麦野を攻略するのはどうすりゃいい?」

ゴーグル「えーっと。基本的にはプライドもその他スペックもハイクラスっスよね。お嬢様女王様にありがちな本人も周囲も高い評価を求められる感じの。
そう言うキャラは、一芸ゴリ押し一点突破だと押しに欠けるんで……イベント何回かやってじわじわ攻めるのが有効手段っス」

麦野「何…急に」

ゴーグル「後は、こう言うタイプはやっぱり肩書きより中身重視に弱い筈なんで選択肢はそこメインで。ただし高いプライド損ねんのはダメっス」

絹旗「そんなことしたら超面白オブジェですよ」

ゴーグル「ちょっと相手のペースを乱しつつ、女の子扱いが効くパターンもあるんで『かわいいね』で向こうの防御を削りたいっスね」

フレンダ「麦野! 麦野は美人だし結局かわいいって訳よ」

麦野「何なんだよこれ」

心理定規「気にしないで。ただの茶番よ」

垣根「そっちの奴らものってるけどな」


ゴーグル「やっぱり自分の壁をぶち壊されたりライン越えられると気になるじゃないスか。それも、かえって一撃で行かないほうが良くも悪くも相手の関心は引ける筈っス」

浜面「あー……なるほどなーだからかよ」

絹旗「何で浜面が頭を超抱えるんですか」

麦野「どつかれたらやり返してやりたくなるじゃない? それも何度もってそりゃもうブチ殺し確定よね」

垣根「…………わかる気がすんのがムカつく」

ゴーグル「プライド高めで気が強い系の女子は、自分で追いかけはじめるとあっと言う間なんで。傾きはじめたら後は楽なのがセオリーっス。
ざっくりこんな感じのベタな攻略プランでどうっスか?」

心理定規「悪くないと思うよ」

滝壺「うん。いいと、思う」

垣根「よーし。じゃあそれでいってみろ。『アイテム』の頭を籠絡しろ」

ゴーグル「いや。俺ああいうタイプは趣味じゃないんスよね。『アイテム』で選べ、って言われたら……ぶっちぎりで滝壺さんっス」

滝壺「え。私?」

麦野「はあ?」

絹旗「超どの辺が?」

ゴーグル「黒髪清楚でおとなしめキャラっスよね。守ってあげたくなる感じの。あと……陰性電波っぽいとか、もうサイコーです」

滝壺「ごめん。私には、はまづらがいるから」

ゴーグル「プラス、確実な良妻タイプ……!! ハーレムには不向きだがピンのルートなら圧倒的に強い……ここまで揃った子が学園都市の暗部にいるなんて感動もんっスね!」

麦野「なんで私がこんなのにフラれなきゃいけないんだろうなあ?」

フレンダ「結局麦野は高嶺の花って訳よ。その辺の奴には無理無理」

滝壺「はまづらは?」

ゴーグル「は、はい?」

滝壺「はまづらはどうするの?」

ゴーグル「そっスね……浜面…君。ちょっとこっちいいっスか。男同士、話をしようじゃないか」



ゴーグル「はーいここに、タブレット端末があります。今から画像を流すんで浜面君はこれ見てくださいねー」

ゴーグル「一画面に女子が①から⑧まで。全部で四枚ありましたが。浜面君が注目したのが1-②と⑦。2-③と⑤。3-④。4-0枚でした。全員キャラもカラーも属性もみんな違うように見えるんスけど……」

浜面「けどなんだよ」

ゴーグル「四枚目に該当なし。それでここまで被ってないってことは……あれスか。浜面君、露出多めの装備が好きっスか? ビキニアーマーとかバトルスーツとか」

浜面「速攻で人の趣味を暴いてんじゃねえよ! なんなんだよこれ」

ゴーグル「俺が友だちと遊びで作った萌えキャラ診断第一印象編っス。これがあればゲームやアニメの作品を知らない非オタでもどう言う見た目の娘にぐっとくるのか傾向がすぐわかるんスよ。いや……あの二人の観察眼と嗅覚はもはやプロの域っスね」

浜面「なんのプロなんだよ」

ゴーグル「はい。では浜面君はコスチューム萌えの人と言うことでいいっスかね」

浜面「そう言うのじゃねえよ。オタクと一緒にすんな。俺は単に水着っぽい格好をプールでもないその辺で見れんのがいいなって思うだけでさ」

ゴーグル「……シチュエーション込みではもはや萌え単体じゃなくてフェチシズムのレベルじゃないっスかね……
と俺は思いがけずディープな嗜好にあたったことにちょっとおののきますってなんだこの口調」

浜面「……なんで俺がオタクに引かれなきゃいけないんだ」


ゴーグル「仮装とかコスプレって可愛いっスよね。非日常っぽいシチュがいいなあってのもわかるっス。ファンタジーほど遠くなくてその辺の隣だけいつもとちょっと違うっつうか」

浜面「そーそー。あとお祭りみたいな特別感があるだろ。別にこんな派手じゃなくていいんだよ。バニーとかそう言うのでさ」

ゴーグル「その前後で私服姿を見ちゃうのは浜面君的には有りスか無しっスか」

浜面「あー、そんな進んで見たくはねえけどありっちゃ有り……かな。なんだあんた話がわかるな?」

ゴーグル「いやー俺のだってただの好みなんスけどね。趣味って結構理解されないじゃないスか。じゃあ……浜面君にはこれを。お近づきの印っス」

浜面「なんだこれ。ちっこい外部メモリ?」

ゴーグル「ビキニアーマー、スーツ系のアルバムっス。特撮キャプが多いっスけどコス写もあります。本当は対青ピ君のジャンル別交渉用なんスけど。どうぞ」

浜面「コスプレって」

ゴーグル「コミコンみたいなイベントともなるとコスプレしたおねえさんも普通に居るらしいっスよ。学園都市はあんまりそう言うのないし俺もまだ行ったことないんだけどさ」

浜面「……どうも。あんたFUKIDASIやってるか?」

ゴーグル「仕事用プライベート用ゲーム用各端末で番号三垢分あるっス」



ゴーグル「垣根さーん! 心理定規! 仲良くなりましたよ!」

垣根「なってどうすんだよ」

浜面「なんだあいつ……いや、師匠と呼ぼう」

麦野「なーに馴れ合ってんだよはーまづらぁぁああ!」



浜面「あんた、俺とやりあえっつったらどうするんだ?」

ゴーグル「え。スキルアウトが武装してない訳ないんで、撃たれる前に即叩きます。俺レベルでも車引きちぎるくらいはいけるんで。
さようなら浜面君カエルの死体の真似してアスファルトにキスしてな、になりますよ」

浜面「ちぎるって何だよ怖えよ」

ゴーグル「いやースパッと切断とか苦手なんスよ。あ、垣根さんは車なんてペーパークラフト扱いだし分厚い鉄板もサクッと通販の包丁並みに切っちゃいますけど」

浜面「こっちのリーダーもやるわ。そう言うの」

ゴーグル「どこの組織もその辺は一緒っスかねー」


ドーモ

がんばれ愉快な下っ端くん達。

ちゃんと名前で呼んで欲しいから自分も名前で呼んでみる垣根



垣根「しーずりちゃーん?」

麦野「死ねエセホスト」

垣根「フレンダ」

フレンダ「はいはーい! お返しにていとくん、て呼んでもいい訳?」

垣根「最愛……ってすごい名前だな?」

絹旗「超お前が言うな、ですよ」

垣根「理后。元気か」

滝壺「はまづらにも、呼ばれたこと…ないのに……!」

垣根「よっ。仕上」

浜面「は、はい?! 何だよ!」

心理定規「」

ゴーグル「」

垣根「えーっと」

心理定規「」

ゴーグル「」

垣根「いや、ほら。あれだよ、あれ…………うーん。あのな?」

心理定規「…『未元物質』」

ゴーグル「『未元物質』!」

垣根「お前らは……許す。ああ。お前らは、悪くねえ」

一方「よォ、垣根くゥン」

垣根「……この時点で想像以上に気持ち悪いんだけど。うわーみろ鳥肌たった。俺に鳥肌って笑えねー」

一方「なンだよ不満があンですかァ。てーいとくゥーン?」

垣根「喧嘩売ってんだろ一方通行ぁぁぁあああ!?」


強敵出演:第一位

きっとあれだね?真名を人に教えてはいけないとかいう魔術的な何かが一部のやつらには恐らくあるんだね?冥土帰しとかだね?
いや、他のメンツも大体は科学サイドのはずだけどね?
カブトムシさんのフルネーム呼びは相手へのリスペクトなんでしょうかね。


>>554
アイテムと関わらせるとなると夏休みから九月をすっ飛ばして十月まで話を進めるかどっかでゲストかネタにして出すか……
とか言ってたら頂点でエセホストと年増が並んだー!やったー!
1は垣麦も好きだ。
チアもきたー!やったな浜面!

>>555
ゴーグルくんに言ってください。
あんなんでも人によっていい夢だったりするのか。

>>556
どこだろうな。六羽野市とか…ちょっといやだ。
こっちの好みに合わせて髪形や性格変更も、ってもうそれ垣根じゃない。カブトムシか?

>>557
1も書いてるうちにゴーグルがプレイヤーなのか垣根がゴーグルを攻略しようとしているのかよくわからなくなってだな。主導権をもぎ取っていく垣根さんはんぱねえ。
垣根は一人で充分だよ。増えても困らないか?
1は書いてない部分の責任はとれないからなー。

>>558
1は死なない!何度でもよみがえるさ
早く楽になりたいので三期を…

>>560
乙あり
ゴーグル「マタタビ装備で大人のライオンの檻に放り込まれた気分です」
って嘆いたら垣根に「俺そんなにかっこいいか?」って喜ばれて逆効果って言う頭の弱い没ネタがあってな。悪意がなさすぎるのもこわい。
楽しんでもらえてよかった。ほっとする。
ゴーグル君は一体何周したのか。彼の冒険はまだまだこれからだ!ご愛読ありがとうございました!
自爆型が自覚ありでデレるのはおっかねえが、本当に恐ろしいのは無自覚のデレの破壊力だと思う。

>>561
基本的には「ゴーグルにデレる垣根」で構成された垣根帝督だからゴーグルには甘い。何しろ渾身のデレだからね。
クレイジーサイコさん気味な垣根さんをあしらわずちゃんと相手していたらもっとサクッと終わったんだろうおそらくは。
あ、やっぱていこちゃんでいいの。そうか寒いぞ着て待って。

>>562
ありっす
「ムカついたからお前が稼いだとこから減点な」とか言ったら垣根がゴーグルに嫌がられるだろ!
おかしいな夢オチなら多少羽目を外しても良かったんじゃないのか。ちっとも許されてないぞ。ゴーグルが。

>>563
おつありです。
うん。飛んでるわ。垣根は飛んでるわ。人混みとか嫌いそうだわ。
そんなに密集してたら痴漢騒ぎどころか将棋倒し(被害約1名)の中心になりそうで主人公不幸つらい。
直径じゃなくて半径かよどんだけあれなんだよ第一位。ごそっと空いたスペースの後ろでは人混みに埋まった幼女がちょっとどいてどいてってミサカはミサ
そこはあれだよ「なんだよこっちも妹のほうじゃねーか!」ってオリジナルをさがせ!をしよう。妹達のほうはそっからさらに10032を厳選するんだ。目をこらせ。

>>564
いいよなあ。たぶん>>554もそれでだと思うよ。
あの二人並ぶとまず絵面がいいんだって、次に雰囲気がいいと1はなんでていとくん茶色に水玉にしたんだろうなと懐かしく思います。
古くからヒーローってのは自己犠牲の塊なんだぜしかし上条さん安定の不幸なセリフが涙を誘う。
十分に命知らずの>>564に合掌。
でも「お兄さんちょっとポケットの中身出してもらえます?」って言って右手と左手と携帯電話しか出てこなくても垣根なら驚かない。
ハロウィンな……垣根引けなかったからなーマントばさばさする垣根ほしかったなーーーあーーー大分時期過ぎてるから時効で?
グシャリもあんのかい。こえーよ超能力者。

>>565
バッドなのにいちゃラブってなんだよSAN0なのかよ。とりあえず1はその展開を書いてないから上のやつらと一緒に>>535のゴーグルを読心能力者のとこに連れていって脳を洗うんだどっかのルートにあるかもしれない

>>566
どこバレかな電撃かなでも大丈夫だ。そもそもここのゴーグルはゴーグルって呼び名だけど全然別人じゃないか。
サブキャラごときでんなこといったらSSなんもかけなくなっちゃうだろ。
垣根なんか……脱色して、分裂して、虫で、キーホルダーだぞ……
ゲームに便利ってオタクなゴーグルに毒されてないか。
そんなことで能力の無駄遣いしてどうするんだ。
ゴーグル能力問題は今こじつけてるから大丈夫だ。

>>567
オティヌスが作って消してみせた世界のどこかにはうっかりしくじって残念なことになったゴーグルとそれを生温い目で放置する『スクール』がいたかもしれないな。
別に原作とだいぶ違ったからって問題はないよね?
どうせSSですしすでにゴーグルじゃねえし

>>568
ひどいことをされてる垣根をなるべく書かなくて済むようにはしたんだ。うん?それは、よかったのかな?>>568がよかったんならまあいいか

>>569
翌ってどこでもわいてくんの?!魔力だけじゃないのか


>>570
じゃあ夢のゴーグルがはいっスわかったっスーって垣根に良いようにされればよかったのか。夢の垣根が喜ぶだけじゃないか
……垣根が幸せなら、それでよかったのかもしれないな? 1は垣根の幸せを願っている。
ゴーグル君を殴る列が形成されそうですが、最後尾はこちらですか

>>571
そう。
どんな時でも便利なのが、未元物質なんです。
そう。
一位を叩ける二万五千ものベクトル注入があるんです未元物質ならね。

>>572
なんでだよ何その勢い笑ったよw
では帝国民は一位を連想させそうな白子入りのタラちりとかもやし鍋はNGなんですかね。
バレーボいや内臓ともやしが一緒に入ったモツ鍋なんてのは厳罰対象なんですか?!うまいのに!
まあ>>1は帝国民ではないので食べる。ハフハフホフッでシャッキリポンさせてもらう。
もちろん、鍋には食べ物いれますよね?〆に鳴き声萌えっぽいしょご☆たんとかいれませんよね?

>>573
おさけはーはたちにーなってからー!
SSなら問題ないな。愉快な超能力者さんはまたやるんだろうか
いつかやりたいネタのとこにメモっとく


とりあえずレスな。
ドーモ

15巻あたりまで順当にいくとゴーグルVS麦野を書くんだなー……ゴーグル大丈夫かな
原作暗部パート辺やるなら心理定規vsフレンダとか書きたい気持ちがわいている。

レールガンの新刊読んだけどなんだあれw
あわきんが我が道つっぱしってるのは置いといて青ピからカードもらってたの『メンバー』の査楽?
テレポーターってあれなの。みんな残念なの?レア能力者ってそうなの?

レベルが高いほど中身がヤバい法則ならやっぱり第六位は青ピだよな!って1は古い噂話をまだ信じてるって言いながらも最終巻まで出てこなかったらそれはそれで藍花悦おいしいねって小並感をのべてみたり。
づらが無能力者なのは素養格付や手抜き時間割のせいだけじゃなくクズでも性根がそこそこ常識人だったからなんだそうに違いない。



最近更新多くて嬉しいぜ

超電磁砲で一人だけ出番ねえと思ったらアレだもんなwwwwww
レベル=妄想力、稀少=中二度、高次元=マニアックさだと思ってる。一通は当たり前のようにカンスト

心理定規vsフレンダむっちゃみたい!
けど暗部抗争パート入ったら終わっちゃうじゃないですかやだー

浜面あっさり攻略されてんなよ
殺しあい無しの暗部なら今度はグループも混ぜてほしい
一位二位のどつき漫才も見たい
心理定規もゴーグルも名前で呼んでもらえないの仕方ないけど可哀相すぎ

>>577
垣根=鶏
チキン→ミンチ→保存・加工→丸める→鍋に入れる
なんだただの鳥団子鍋じゃないか


Tシャツの上に着たノースリーブのシャツは地味なチェック柄、背中には膨らんだリュックサック。
オシャレさを意識していないことをあえて前面に押し出したスタイルの少年はふんふーんと鼻歌交じりであるいていた。
アップテンポなメロディは、はやりの洋楽でも人気アイドルの新曲でもない。深夜に流れるアニメソングだ。
クレヨンで紙にかいたオタク族がそのまま歩いているような少年は第七学区にいた。
目的地のいつものゲーセンで筐体に座り、プリペイド機能付きのユーザーカードを入れてボタンを押す。
さーてゲームスタートと、思ったところで頭上から能天気な低音が降ってきた。

「おーっセンセやん。なぁなぁこれ何だか知ってる? 『インディアンポーカー』って言うんやけど」

そう言っておなじみ青髪ピアスが自慢げに見せてきたのは一枚のカードだった。
特に目立ったイラストもない。両面つるっとした何用かもわからない一見ただのカード。
このゲームセンターにあるどのゲームにも使われていないものだ。
あとは一般的なトレーディングカードより少し大きくて厚みがある、と言うくらいだろうか。

「今、一部の物好きの間で話題だとか言う? 青ピ君よくそんなん持ってるねー」

ゴーグルの少年は生返事でゲームをスタートさせる。
どこかで名前だけ見た覚えがあった。
その時は調べてみても元ネタらしい遊び以外それらしい情報が出てこなかったから気にしていなかったが。
最近どこかの掲示板で見かけた気がする、その程度の印象だった。

「さーすがセンセ、聞いたことあったんや。まだプレ体験版って感じらしいけどけっこーおもろいよ?」

「なんだっけ。『夢が見れるカード』だっけ? あんまりなぁ。物見るのに困らないんだよなあ俺」

そう言って少年は、そばに置いた荷物に目をやった。
中に入っている彼のトレードマークでもある便利な装備を使えば。
ゲームしながら同時にアニメを見て別作品の劇場版をついでで流すことも可能だ。
市場に出回るヘッドマウントディスプレイの最新機種でさえ、まだ目で物を見せている。
『ゴーグル』本来の役割は「使用者の視点」を補強することだが副産物的な利点として、使用者の脳直通で情報を視せるゴーグルにはその質も性能も遠く及ばない。

人間の目は確かに優れたレンズ機能を備えているがそれでも生身の生き物である以上の脳の処理とのバランスを取っている部分がある。
眼球が本来備えた機能を画素数に置き換えると視野全体で五億以上のとんでもない数値になるが、目は常にそれだけのものを認識しているわけではないのだ。


いくら情報の多くを視覚に頼っていてもそれを四六時中、水道の蛇口を目いっぱいひねった様に延々流し込まれ続けるデータを処理していたら。
脳みそだってたまったものではない。
普段はっきりとものを見ている中心部分、意識的に処理される有用な情報を得るための範囲はごく狭いもので。
その部分の画素は合計しても約八〇〇万近くまで落ちてしまう。
どんなに高画質なたとえば『磁性制御モニタ』に映し出された映像でさえ、出力されたデータそのままの精度で脳に到達することはない。
その過程である程度の劣化は避けられないだろう。

学園都市の最新型スマートフォンのカメラ機能のスペックは『外』の一般的なデジタルカメラ並みの性能を誇るすぐれものだ。
そして彼がゴーグルをそう言った、またそれ以上にハイスペックな機器にリンクさせれば。
映したものを場所ごとで劣化なんてしない均一な画像情報としてまるごと脳に処理させることも出来る。

それは機材のつなぎかえで静止画動画を問わず、更に多様化する。
外付けのデバイスに入力を頼っている分、はじめからバックアップがある状態なので印象や記憶違いによって情報の劣化や変質もほとんど起こさずに済むはずだ。

学園都市が目指している能力開発ではその身ひとつで便利な能力が起こせるのが利点なのだが。
少年はちょっとした事情から余計なものを頭に着けて能力を延長して扱うことになってしまった。
だが彼はそれに不自由さは感じていない。
それどころか日常的にゲームやアニメと無駄な方面にそれを活用しまくっているのでプラスアルファ分お得な恩恵にあずかっている。

そして。
そういったものに慣れ親しんでいるおかげで、学園都市お得意の新技術で作られたらしい謎のカードをみても、
「なんだこれすごーいどうなってるの?」なんてテンションが上がることも残念ながらなかった。
地味なワケあり少年は興味なさげに視線をゲーム筐体の画面に戻す。
青髪ピアスはどうしても関心をひきたいのかカードをひらひらさせながら、

「じゃあセンセ作る方は? 今なら限定五名様に制作方法伝授キャンペーンらしくてボクは『親』モニターに前回教えてもろたから、抽選枠に孫モニターを一人紹介できるんやけど」

と追加要素を発表した。
まだ大衆に認知されていない隠れ面白アイテムの制作・体験モニターを募集する活動があるらしい。
簡単に説明された参加資格ははっきりした強いイメージの夢を見れることだとか。
カードに夢を記録するなんてよくわからないことをしようと言うなら、情報も中身も濃い方が抽出しやすいのかもしれない。
だが。
画面内の自機を操作しながら話を聞いていた少年は一層気分の乗らなさそうな声で聞き返した。

「……すっげえ怪しくね? 大丈夫スかなんか金巻き上げられたりしてない?」

「ないない。カード作る装置作るのにおもちゃを幾つか買わないとでちょっと元手がかかるけどそれくらいやし、あとはさらのカードが今んとこ一週間くらいの順番待ちがあって……」

「装置だけ売りつける詐欺じゃなくて? なんでそんな内々でやってんのさ。え、もうこれ俺じゃなくて風紀委員とかに相談したほうがいんじゃないの?
やったねゴーグル君フラグが増えるよ!」

青ピ君だな
補完頼む
脳内で



「いやいや?! 詐欺被害の相談やないって勧誘してますっ! 作れる物がすごいから、急に爆発的ブームからの激品薄にならへんようになってるだけやと思うって! 
せやかてセンセ!! 毎日山ほど夢は見ないやろ? 丁度いいんやってば」

青髪ピアスは拳を握って熱く語る。
どこかの研究施設が一般人をモルモットにデータ収集でもしているのか。
それか在庫を抱えた玩具メーカーが商品の販売促進で尾ひれ付きのステマでもはじめたかとも思えたが、それにしては話がどこか変だ。
限定○名様にお得な情報!系の話がうさんくさいのは今にはじまったことじゃないのだが。
ゴーグルの少年は日頃からアブないことばかりして風紀委員に迷惑をかけている友人が、本格的にヤバい話に手を出していないか疑いながら五面までクリアした。


雑談に応じながらゲームを進める少年の横で青髪ピアスは残念そうに肩を落としていた。

「なんやー。センセクラスなら人気ゲームのカードでA以上は余裕で作れると思うんやけどホンマに? やらへんの?」

実験的なおもちゃのモニター間で出来上がったカードの交換会も行われているらしい。
今日もその交流会がここであると青ピは自慢げに語っていた。
高ランク―高い実用性が見込めるユニークな夢―のカードは特に人気があるそうだ。
その中では、「カードを使ってから何故か数学の宿題が楽々出来る様になった」なんて噂もあるらしい。
夢の中に作った人間の得意分野の情報が紛れ込むことで、それを追体験することも出来るのだろうか。

「俺、ゲームに関してはPARとかあんま好きじゃないんで。攻略動画は撮っても、狙ってゲームの夢みたりカードは作らないかな」

「そーなん? もったいな。あ、そうや! 確かモニター仲間に、メクちゃんのA以上ピンクシリーズ持ってるのがおったと思ったけど在庫あるか聞いてみよっか? 確か好きやったよね罰音ちゃん」

「メクちゃんはDIVAだから。俺の心の聖域だから。他人の夢で会うくらいなら『外』でやってるライブに行きたい。あーあー『外出許可』なーあーあー」

青ピはどうしても謎のカード愛好会に勧誘したいのか、ゴーグルの少年の二次嫁を餌にしてみたが上手くいかなかった。
なぜかがっくり落ち込みだした反応も予想外だったらしく、長身を折り曲げると画面につっぷした友人の肩をはげますようにたたいた。

「センセ……あれなん? なんやそっかー二次でもストイックやねー。なら、これもええかなーこの前たまたまボクんとこで『0マイナス』のカードが出来たんやけど」

「えっ」

「ボク、ノノちゃん好きやし多めやけど……一応三人とも出てたかなあ。レンコちゃんおるけど、ま。センセがいらんっちゅーんならこれも取引に流して」

「あ、あお青ピくん?」

「どしたん? センセ」



「金ならある。言い値で譲っていただけないだろうか。『ラブマイナス』、最近制作サイドで色々あってっスね。スタッフが大幅に変わったりしてですね
ちょっと展望が辛い感じで俺ら全国の「カレシ」は「カノジョ」の実家が心配で心配で…」

なにやら急に早口で話しはじめたかと思うと。
ゴーグルの少年は久しぶりに水をもらったしなびかけの野菜みたいにシャキっと立ちあがる。
まんまと狙いの大物がかかったわけだが、青髪ピアスは何故かものすごく無邪気な笑顔でカードを取り出した。

「やーっ、そんなぁボクとセンセの仲やないの! ええよそんなん。ハイどうぞー」

カードに貼られた付箋には「『ラブマイナス』ノノ、レンコ、もなか S」とあといくつか教室、制服などの単語が書いてあった。
カードに記録されている夢の中で覚えているものを程度メモしてあるらしい。
トレードするのに「誰が作った」、「どんな夢か」が交渉材料になるならストーリーなんかもあった方がいいのだろうが。
断片的な情報しかそこにはなかった。
ゴーグルの少年は、そんなことよりアルファベットに注目したらしい。
なにしろ。
ついさっき夢にはレアリティがつくと聞いたばかりだ。

「これっ……一番レアなやつ? マジで! いいの? えーっ本当に?」

「いやーボクんとこではSの出来っちゅーてもセンセが気にいるかはわからへんもん。
どうしてもっちゅうんなら……トレードにせえへん? 後でボクの装置貸すから、ゲーム系のカードが出来たらもらってもええ?」

もしや初めから目的はそっちだったのか。
たった今いいことを考えついたような顔で交渉をしかけてきた悪友だが。
ゴーグルの少年は眉間にしわを寄せていたさっきまでとは大違いの隙だらけなハイテンションで諸手をあげた。

「そんなんお安いごようっスよー!! もー青ピくんてば愛してるー持つべきものは友だちだね!」

「ホンマやねー。え、三枚もええの? センセめっちゃ好きー。ずーっと詰まってるとこがあってな? でもセンセはゲームのコツとか教えてくれへんしー」

「聞かれたら教えてるじゃないかー何言ってんのさーはっはっはー」

「ズバーっとかズドーンとかスササッて言われてもボクよおわからへんもーん」

おかしいなー垣根さんはそれで出来るんスけどねーと不思議がりながら少年はご機嫌でカードをバッグにしまった。
ぐちっていた青ピは別のゲーム機の前まで行くと、ゴーグルを手招きする。

「ちょっとほら。これは? センセここやってみて」

「えーっと。いいっスか? こっちを、こう。こうして、こう…………」





「で、ここを」

「ここを?」

「だらっしゃあ! って。ほらできたー出来たじゃないか青ピ君!」

「だーかーらーボクには出来へんってば! そんなん気合で出来るかー!」

ほらどうだ! とゲームの先生役はいい笑顔で振り返った。
青髪ピアスは STAGE CLEAR! の文字がでかでかと表示された画面におもいっきりツッコミをいれた。


「俺はさぁ青ピ君……期待に胸を躍らせて、パソコンの出力端子を機能最大精度でまとめてゴーグルに繋いだあの日の絶望をそりゃもう深く覚えてるんだよ!!」

場所をファーストフード店に変えた二人は『インディアンポーカー』の話題で盛り上がっていた。
ちなみに会計は、テンションが上がりきってすっかり心の中までお花畑になりつつあるゴーグルの少年持ちである。
心の壁も距離もぶち破って今なら多少の無理難題もひとつ返事でどうぞウエルカムな近距離無警戒ぶりだった。

一応これでも暗部組織の一員なのだ。
こんな、絵に描いたように悲しい残念なオタクであっても。
学園都市の汚れ仕事や面倒事を回されたり、鉄さび臭い殺伐ワールドを日常パートのすぐ横で繰り広げなくちゃならないような人間の一人。
その筈だが、今の彼はとてもそんな風には見えなかった。
ちょっと怪しい契約書に適当にサインをしたり、あからさまな詐欺っぽい勧誘にホイホイついていきそうな雰囲気だが、ちょっとした判断力の大幅な低下が原因なのだから仕方がない。
一般人からオタクをも殺す「嫁」の一文字の破壊力はすさまじいものだった。

「円盤入れてみても、そりゃ少しは画質音質良くなったかなーいや気のせいかなくらいのもんでさ!!
調整も適当すぎて後で具合は悪くなるし二次元にダイブなんて出来なかった。
俺はやっぱり惨事元の男の子なんだなぁどんなにあの子が恋しくても虹の向こうにいけないんだ……ってあの日は自分の無力さに枕を濡らすしかなかったんだ。
その夢が! 今、君のおかげで叶うかもしれない! あなたが神か?!」

「なんやボクにはなにをしたんかはよおわからんけど……その辛く苦しい気持ちはよぉっくわかるでセンセー!」

「わかってくれるか! 青ピくぅぅぅんんん!!」

熱い友情を確認しあうオタク共の雄叫び飛び交うおかしな儀式は、
「他のお客様の迷惑ですんで神だか何だかしらねーがでてけゴルァ」と笑顔&殺気全開の店員さんに追い出されるまで続いた。



鼻歌まじりで隠れ家にやってきたゴーグルは上機嫌でドアを開けた。
テレビの前にはまたしてもプチ家出中のリーダーがつまらなさそうに座っていた。
以前なら、超の付くプライベート(オタク活動、主にゲーム)で既に誰かが居る隠れ家を使うことは組織のメンバーの前では控えていた筈だ。
だが少年は部屋が被ったことは気にしていないのかカードをかかげてくるくるおどっていた。
どうやらまだ夢も見ていないのに青ピの癖が早くも伝染したらしい。
そして今まさに脳内お星さまだらけで無敵モードに突入した彼はそう簡単に止まれなかった。

「垣根さんじゃないスかーこんばんわーきいてくださいよー俺、友だちにインディアンポーカーのカード貰ったんスよー!」

なんだそりゃ、と振り向きもしない背中を向けたままのリーダーから一応返事があった。

「これを使って寝ると他人の見た夢が見れるんス。えっへっへー青ピ君も好きなゲームでよかったなあ」

そっちの部屋かりまーすと無駄に挙手つきで宣言した超絶ハイテンションなゴーグルの少年に。
厄介なものを感じ取ったらしい垣根は、さっさとあっちいけ、と追い払うように手をふった。

「寝言が聞こえても返事はしねえから安心しろ」

「ありがたいっスけど。なんでっスか?」

寝言と会話するとそいつ目が覚めなくなるって言うだろ、と冗談なのか本気なのかわからないトーンで言いかえされたが、

「垣根さん。俺のスマホ通話にしとくんで、カード使いはじめたらめっちゃ話しかけて下さい」

ゴーグルの少年は大真面目な顔でそう宣言した。

「ああ。ウザそうだから切っとく」

しばらくして。
部屋からでてきたゴーグルの少年は、入っていった時とは別人のようにテンションが低かった。
おまけに泣いていた。



自分の余命宣告でもされたのかと言いたくなるほどの暗い空気を背負っているのを流石に垣根も無視はできなかったのか、

「泣くほど感動的だったのかよ」

「いや……あの、思ってたのと違うっつうか、大分……衝撃的で」

床に崩れ落ちた少年は、そのまま拳で床を叩いた。
違うそうじゃないんだどうして、どうしてそうなっちゃうんだよ……最低だ、俺などと意味の分からないことをぶつぶつ呟いている。
何がどうショックだったかはわからないが、とにかくものすごい落ち込みようだ。
青髪ピアスはSランクだと思った夢は、どうやらゴーグルの少年の好みではなかったらしい。
反応からして大外れ、それも期待していた分だけギャップが激しくてきつい結果になってしまったのか。

「俺…別にああ言うノノちゃんが見たかったんじゃなくてっスね。いろいろと方向性が……ううう、レンコちゃんは、俺のレンコはあんなこと言わないんだぁあああ」

「たかが夢なんだろ。それもゲームの」

うるせえ黙れ、と厳しく言われたがよっぽどショックだったのかゴーグルの愚痴は止まらない。


「夢だけど、中身ばっちり覚えてて好きなキャラの夢なんてそうそう狙って見れないっスよ。
しかし……似たようなオタク同士でも嗜好の差は谷のように深く山の如く越え難いものなのだと俺は今知りました。
でも貴重なSレアを快く譲ってくれた青ピ君の友情は◯ェルタースオリジナルっスね!!」

おまけにしゃべってるうちに勝手に意味不明でいい感じに立ち直ってしまった。
そう言うのはSNSでやってろと言いたくなる短時間での切り替えだ。
そんなゴーグルの少年の大騒ぎで、むしろ興味がわいてしまったのか。
垣根はまだ残っているカード手に取って眺めだした。

「そんなに面白れーのかよ。これは」

「こっちは他のユーザーから貰ったんス。Aレアカードがいくつかゲット出来たんスよ」

カードのトレードをしにゲーセンにやってきた青ピの知り合いからもその話を聞いていた。
ちなみにゴーグルの少年が青髪ピアスの友人だと知ったら無償で譲ってくれた。
どうやら彼は体験者の中でもカリスマ的な人気を誇っているらしい。
みんな揃って青ピのような無邪気(にみえなくもないよう)な笑顔を浮かべていた気がする。

「さっき装置の作り方も見せてもらったんスけど……やっぱこいつ俺のゴーグルにちょっと似てますね」

そう言って少年は借りてきた紙の袋をみた。
中には例のカードを作る装置が入っている。
童話に出てくるお菓子の家のように組み上げられた、おもちゃの集合体だった。
そのうち一つに脳波をキャッチして専用のボールを動かして遊ぶ念動能力を科学で再現したようなものがある。
他にも五感や脳とリンクして遊ぶタイプのおもちゃを交えて作り上げられていた。

彼の使うゴーグルは駆動鎧などにも使われているBMI(ブレインマシンインターフェイス)技術を応用している。
人間の脳から送られた信号を拾いあげ、機械に伝えて手を触れずに操作するのが学園都市外部でも実用化されているBMI技術だが。
ゴーグルはその逆。
リンクした機器からの情報を使用者の脳に直接送ることで情報伝達の簡略化と大幅な向上を図っている。


「俺のは視覚の割合多めなんスけど、このカードは脳に働きかけて情報の吸出しと書き込みをして夢を再現させてるみたいっス」

続いて荷物から取り出した自分のゴーグルを回すと輪の内側とカードを見比べながら少年は珍しく、ゲーム以外の分野で解説をはじめた。
本来は念動力補助目的で彼の視点を増やす機械なのだが、ゴーグルの少年はそれで「ながら見」もするとぶっちゃけた。
カメラやモニタを機材に登録しチャンネルを繋いで行動中も動画や情報を頭に流し込むのだと言う。

「学校のテスト勉強にも使えますよ。暗記系は頭に映像で流して俺は飯食ったりゲームしてます。一発でフル記憶まではしないんで、何周かしますかね」

「んなことしてよく平気だな。普通の映画だって長時間見続けるなって注意書きがでてくるだろ」

と呆れた顔をした垣根だが。

「そうか……それでお前、頭が」

と直後にいやに納得した様な、同情めいた風にうなずいていた。
日頃の少年の様子や奇行と言動を思えば使いすぎの弊害もあって仕方ない、と思ったらしい。

「無休じゃないっスよ流石に重いし疲れるんで時々外します。被るだけじゃ深くサイコドライブなんてしませんし、こいつは俺にはメガネとそんなかわらねえっス」

生き物が道具を扱う技術は人がサルから進化の道を歩き出すその以前からはじまっている。
そしてそれ以来ともに進み適応し続けているものだ。
手にした道具をまるで自分の一部のように感じる仕組みをもともと人間がもっているからこそ。
イメージと実際の動きがスムーズにつながって、駆動鎧やおもちゃのボールは動いてくれる。

さらに優れた技術をもつ者は道具との間に強いつながりを持つ。
各分野のプロはメスや楽器、球技のボールやラケットを手足のように扱い、それには自動車や航空機のような体よりはるかに巨大なものもふくまれる。
優れた能力者ほど、自分の手足以上に自在に能力を扱うことを考えたら、能力開発からまるっきりかけ離れた話題でもないのかもしれない。
自分の体の一部と言えるほどに道具に慣れ親しめば脳の自己認識もそれにあわせて広がっていくと言う研究もある。
それと同時に、眼鏡を探す眼鏡っ子の法則が存在する矛盾を解き明かせたらイグノーベル賞も狙えたりするだろうか。

「でもお前、前にぶっ通しでゲームしてなかったか」

「流石に熱と鼻血が出たら止めてますから大丈夫ですって」

使用者本人はけろっとして笑いながら言ったが。
やっぱり全然大丈夫じゃなさそうだった。
あるあるネタの振りじゃなくマジっぽいのが手遅れだ。色んな意味で。


「そこまでして成果はあんのかよ」

「テストの方の結果は……まあテレビみながら勉強してるようなもんスかね。こいつで記憶領域までの書き込みと定着が出来たら俺もう一生勉強なんてしなくていいんスけど」

だめな子の夢みたいな話を苦笑いでするゴーグルだが、出来すぎて困る子の代表みたいな垣根はなにがそんなに悔しいのか理解できないと言った様子だった。

「集中して普通に勉強した方が早いんじゃねえの。それか小型化していっそカンニングでもしたら」

「こいつ目立ちますよねーそれが出来たらいいんスけど。あ、でもそしたら俺改名してカチューシャとかイヤホンにしないといけないっスよ」

なんて冗談を言いながらゴーグルの少年は話を続けた。
確かに話をすればするほど、こうなっているだろうと考えつくカードの仕組みとゴーグルの間で似ていそうな点が出てくる。
分解したらもっと詳しいこともわかりそうだが、そこまでするほどの話題でもなさそうだった。
おまけにカードはどれも未使用。
ちょっと気になるレベルでばらばらにするのはいくらなんでももったいないだろう。
BMI技術そのものは子どものおもちゃになるくらい、既に学園都市のあちこちに普及しているのだから今更驚くことでもないのだが。
他人と夢を共有する、と言うのはなかなかユニークな思いつきだった。
そこでふと、ここを直に繋いじまったらどうだ、と垣根が自分のこめかみをつついた。

「BTBI(ブレイントゥブレインインターフェイス)スか?
そっちはそこまで広く浸透するんスかね。今だってやろうと思えば念話能力とか洗脳能力で足りるじゃないスか」

簡単なコミュニケーションていどならまだいいが、マインドメルティングまで行って人類みんなで赤い海にダイブするようになるのはちょっと嫌だ。
と垣根にはよくわからない言語でコメントが返される。

「あれは規模が小さいだろ、確かあの辺は強能力者が多いしな、やっても横並びになりそうだ。でも複数の能力者同士の脳を繋いだりすりゃあ面白くなるかもしれないだろ」

「オラに力をわけてくれー! とか出来ちゃったらヤバいっスね。えーと、能力者間でなんか演算とかそう言うののやり取りをしたりだとかしてすげー能力を使えないかってっスね?」

なにそれ、と言いたげな垣根の反応にゴーグルは慌ててつけたした。
パロディは、元ネタがお互いわかっていないとうまく伝わらないのがつらいところだ。

「ぜってぇそんなのには加わりたくねえ。そうだ。お前、「ニューラルアンサンブルの発火保存」や「集団効果」の原理はどうだ? 単一のニューロンのふるまいを人間ひとりに置き換えてみると――」

「タンマっス。えーっと、BMIもっスけど大脳生理学の「相対論的な脳」系の話は確か長点上機の学生が一世代進んだ論文を発表してませんでしたっけ。
俺そっちの専門的なのは全然っス。軽くお茶するんなら連絡先調べさせますよ」

頭が痛くなりそうな話題の予感にゴーグルの少年はてきぱき矛先をそらした。
伝わらないアニメネタではないが、少年にとって小難しい専門分野の話では役不足だ。
ある程度のリアクションを求められたら困るし、うなずくだけの聞き役では中途半端にしか出来そうにない。





「……じゃあ気分転換に軽く読書でもするか。前にあった『幻想御手』のデータどこやった」

「え。あれ結局流れてませんでした? ありますけど。あっちこっちに」

はいこれですねどうぞ。
と今すぐ出てこないことがご不満だったのか。
はぁ? なんで、と言いたげに垣根はゴーグルを睨みつけた。

組織で主に使っているプライベートクラウドに集めた情報をそのまま放置しておけばハッキングのリスクもあるので。
一定期間を置いたらデータをコピーしブロックごとにフォルダを分けた上で別の場所の物理ドライブでばらばらに保管しているじゃないかと少年は確認した。
作業は下部組織の技術担当みたいな連中がしているが、ドライブやサーバーのアクセス権の一部はゴーグルの少年にも与えられているし保管場所の話をされたこともある。
オタクが誤解されているなぁとゴーグルの少年はここでもちょっとした温度差を感じていた。
別にオタクだと自称していても機械にものすごく強い訳ではない。
その時は携帯ゲーム機の記録領域に情報を書き込む話をした。
少年は基本、ソフトを買う派(それも複数)なのでハード(これまた複数)に用意されているDL用の容量が余ることが多かったから思いついた話だ。
AIの記憶媒体があれば、紙幣のICチップにさえ情報を隠せてしまう学園都市の技術力では、諜報活動をする方も防ぐ方も苦労しそうだった。

「見るんスか? 必要なら一覧から関連データ引っ張って、並べてまとめときますけど」

「じゃあ眺められるようにしとけ。今すぐな。それとシステム神経生理学系の資料も追加。大脳生理学は専門じゃねえからな。一応古典にも敬意をはらってやるか」

そういって、垣根はコンビニに買い物を頼むように気楽な様子で口を開いた。
しかし出てくるのは簡単なおつかいメモの中身ではない。
研究者の名前と幾つかの論文が上がって、後は……MNAP(マルチニューロンデータ集積プロセッサ)、オペラント条件付け、あとマルチタスキングの基礎理論……
まぁ、とりあえずはこの辺だな、とつぶやく垣根はどうってことなさそうな顔をしてるが。
横で聞いていただけのゴーグルの少年には難解な香辛料の名前みたいになんだかよくわからない専門用語の嵐だ。

「今スか?! ちょ、ちょっと待ってもらえます?」

ゴーグルを被った少年は大慌てであっちこっちと動き回った。
頭の横から垂れ下がったケーブルがクラゲの足のようにぶらぶらしていた。
パーフェクトな執事並みのサポートスキルをスペック不足の部下に唐突に期待されても困ってしまう。


ガチャン、とドアを閉める音に反応したゴーグルの少年は小声とボディランゲージで「こっちにきてくれ。なるべく静かに慎重にな」と少女に伝えた。
メッセージを読んだ彼女は、バイトが終わってからそのまま駆けつけてくれたのか前髪を軽くなでつけると部屋にはいってきた。

「(心理定規ー!)」

「何よ。急に呼んだりして。君たち何してるの?」

「しっ、今垣根さん夢を見てるんスよ」

さっと口元に指を立てると、少年はソファに目くばせした。
足を組んで横になった垣根の額の上にはカードが一枚乗せられていた。
どうせなら時間つぶしにとゴーグルの少年が一枚進呈したものだ。

「きれいな顔してるだろ、寝てるんだぜ? それ。って言いたくなる安らかな表情っスね」

「そのまんまじゃない。何これ」

「このカードに誰かの見た夢が入ってるんス。夢の中のことを経験するんで、体感ムービーな遊びが出来るみたいなんスけど」

一度眠るとカードの中身が再生し終わるまで目覚めにくい効果でもあるのだろうか。
その前から眠っているのだが、心理定規に説明している間も垣根は静かに寝息を立てていた。


「心理定規がこんな早く来れると思わなかったんで、レアな垣根さんの写真とっといたんスけど見ます?」

「……なに、これ」

スマートフォンの画像を見せられた心理定規は、軽く絶句しつつゴーグルを見返した。
そこには数枚の寝顔の写真があったが、どれも無駄にキラキラ白飛びしてはしゃいだ女子高生のプリクラみたいになっていた。

「未加工なんスけど、なんか光っちゃってるんスよ。『未元物質』って写真に写るんスかね」

「やだ。本当ね」

小さなシャッター音に続いて心理定規のスマートフォンの画面でもアイドルのCDジャケットやグラビア写真みたいになった垣根の寝顔が写っていた。
無駄にキラキラして、それが何だか似合っているのが笑える。
本人にはとても見せられない画像データがそれぞれの携帯に保存された。
垣根にばれたら本体を容赦なく真っ二つにされるだろう。
横にへし折られるのではなく、縦に。

「これは何の夢をみてるの?」

「えーっと確か……『カナダの森と渓流(おまけ)』っスかね。あれ。おまけ付きってなんだ?」

カードの入っていたスリーブに貼られたラベルを読み上げるとゴーグルは首をひねった。
見比べながら残りのカードを手に取ると心理定規に見せる。

「Aランカーの人が居て『いい夢旅気分』ってシリーズのカードが貰えたんスよ。心理定規もどうっスか? もう一枚、こっちは……南の海でイルカと遊べるやつがあります。
人気のだとBランカーの『動物モフモフシリーズ』なんてのもあるらしいんスけどそっちは在庫無しで」

他にも、『いやがるワンちゃんにかわいいお洋服を着せる夢』とか『おねえさんとこいぬちゃん』ってほのぼのっぽいのもSNSに作られたモニター間トレードリストにのっていた。
夢の記録と言うより個人の日常がアップされた動画サイトみたいなラインナップだったが、そうそうドラマティックな夢ばかり見る人間もいないだろう。


ほのぼの系もゲットしておくべきだったのか? と頭を悩ませる少年にはまだゴーグルが装着されていた。
そのケーブルのうち一本は、ミニタワー型のパソコンケースに接続されている。
どうしたのそれ、と聞かれてゴーグルは垣根にデータ整理を言いつけられたと息をはいた。

「幾らなんでもんなすぐ準備できないんで、終わるまでこいつに垣根さんの相手してもらおうと思ったんスよ。あ。今、該当ファイルを順番に並べ替えてもらってます」

あちこちの引き出しや箱の中、棚にばらばらに隠しておいたジグソーパズルのピースを必要な分だけ集める作業を済ませたらしい少年は完成図にそってそれをまとめる指示を出す。
それにも、本人の手や指は使われない。
軽く手を振るだけで能力で操作されるマウスもキーボードも、まるで直接彼の脳から信号を受けているようによく働いていた。

人使いの荒いリーダーの方はそんな苦労をよそによく眠っていた。
黙ってじっとしているとイケメンさが跳ね上がる、と部下たちののんきな会話のネタにされていたのだが。

「なんか……うなされてない?」

「と思ったら笑いだしたっスね」

「……ただの雑魚じゃないって訳か! いいぜ、少しだけ本気を出してやるか!」

更に、安眠とはほど遠そうな寝言まで言いはじめた。
異変を感じて急いで二人がその場を離れると。
眠ったまま笑い続ける超能力者が目覚めるまで心理定規はドアの近くで様子をうかがっていた。
普段はそれなりの気づかいや手加減があっても、寝ている人間相手にその常識は通用しないだろう。
ちなみに。
ケーブルの長さが足りなくて、退避をしくじったゴーグルの少年が庭にリードで繋がれた犬みたいにずっこけたが。

心理定規は、
(静かにしてね)と自分の唇に人差し指を当てた後、無言で手を振って離れてしまった。
ぷるぷる震える愛玩犬なら助けてもらえたかもしれない。


「ん……? なんだ…めじゃーはーとか」

その後。
目をこすりながら起き上った垣根は平然としていた。
後半なんだか騒いでいたのに熟睡出来たようで、機嫌は悪くなさそうだった。

「おはよう。ずいぶん楽しそうな夢だったみたいね」

「ああ」

垣根が見た夢の中では。
学園都市にいたら見れないような、大自然あふれる景色が広がっていたらしい。
森の中や岩だらけの渓流の横を散歩したりとほとんどはのんびりしたトレッキングみたいな内容だったそうだが。

「で、最後の方で熊が出た」

「クマが?」

「いやー野生動物ってのも結構やるな?」

コキコキ首を鳴らしながら話す垣根は嬉しそうに話した。
四〇〇キロ以上ありそうな大きな熊とのタイマンで、最終的に森の王を打ち倒して覇権を手にしたところで目が覚めたらしい。

「やっつけちゃったんスか」

「流石に殺してはねえよ。元からそう言う夢なんだろうし。あれだな、ある程度決まった内容になるように誘導されるみてえだ」

夢の劇場体験を思い出していた垣根は何だか少し悔しそうだったが、一体何をどうしたのかは二人とも聞く気になれなかった。

「しっかし、絶景や旅情系かと思いきやまさかの熊相手に無双するオチ……だと。すごいっスねインディアンポーカー」

流石高レアランカーの夢なのかひねりの効いた展開まであるらしい。
まさかそんなものばかりではないだろうが、残りのカードを心理定規は不審そうな目で見ていた。

「面白かったんなら……良かったんじゃない」

「ま、それなりに。景色はいいし、退屈はしなかったな」

「……どうスか、心理定規。南の海の夢、やります?」

「いいわ。途中でサメとか出てきたら嫌だもん」

心理定規はお菓子を我慢するときのようなむくれた顔でカードから目を背けていた。
興味があっても、かわいいケーキの箱がとつぜんびっくり箱に変わったら嫌だ、なんて心境なのかもしれない。


まだ使っていないカードを前に話をしたが。
垣根はもちろん、心理定規もこのカードについてはよく知らなかったらしい。
実際使ってみた垣根は改めて何か気になったのか、ゴーグルにまとめさせた資料のデータにPDAでアクセスしていた。
彼が雑談のつもりで話していた、
「カードを使ってから勉強が出来る様になった」
なんて胡散臭い開運グッズのレビューみたいな噂のところで、垣根は顔をあげた。

「中に大能力者が能力使ってる夢や開発記録の入ったカード、ってのがあったら? 似た系統の能力者が使うと能力向上に影響すんのか」

「あれ。なんか……『幻想御手』みたいっスね。もしかして、それでっスか?」

なんでまたそんな話題を持ち出したのか、やっとわかったらしいゴーグルの少年に。
それよりよっぽどたちが悪いんじゃねえか、と垣根は返事の代わりに呆れたように口にした。
アルファベットが怪しいような子どもがカードを使ったら一晩で外国語がマスター出来たなんて話が大げさな噂話だとしても。
小さなことでも実際に効果があるならその技術自体は本物かもしれない。
おかしな技術がこそこそと広がりだしている流れは前にひと騒動起こしたものと似ている。
おまけにその中身も類似性がある、とくれば『スクール』が目を光らせるには十分な情報かもしれない。

「脳の働きを誘導して夢を見せるなんて、やってんのは洗脳や睡眠学習みたいなもんだろ。カードだってものによってはただの遊び以上に利益が出るものもあるんじゃねえか」

どこがそんな技術を気軽に流してやがるんだか、と疑うような口調で呟くとまた視線を資料に戻した。

「スキル習得系だと、パラパラチャーハンが作れるようになるかもしれないカードとかありましたけど。確かにプロがカードを作ったら、技術そのものに価値があるのなんてのや特殊技能のヤバそうなのもありそうですよね」

「文書化できないニュアンスや数値化できない微細なデータまで吸い上げられるんなら便利そうね」

「ダーツや射撃が上手くなる夢で知らねえうちに人殺しに便利なスキルが身につくかもな。つまらねえ学校生活の夢で、行ったこともねえ場所の詳細な地理情報が得られるってのも笑えそうだな」

気軽に下らないことに使っていては気付かないかもしれない、なんだか怖い話に話題がシフトしていった。

「夢ってのは意識下の情報を脳が処理してる間に見る、過去の記憶がぶちこまれた情報のるつぼだ。一見無意味で荒唐無稽なもんも、広げてきれいに並べ変えてみたら他のもんが出てくるってことがあるかもしれねえ。
そう言うのも含めて疑似体験で他人の記憶情報が入ってきてるとしたらどうだ」

「インプリンティングを仕込むことも出来るかもね。見た夢をほとんど遜色なく記録して、それを他人の頭で再現させることが出来るなら……
夢に限らず決まったパターンの印象やメッセージをカードの中に紛れ込ませたりなんてことも楽だと思うけど。任意の情報を識閾下に投射出来る仕組みがあれば、催眠暗示をかけるより手間もかからないでしょうし」

全部が全部そんな訳はないでしょうけど。こう言ったものは悪用しようとしたら幾らでも良くない使い方が出来そうだわ。
と心理定規は肩をすくめる。



「まぁ、訳のわからねえもんはやたらと多用しねえ方がいいだろうな。この『インディアンポーカー』ってのも、たかが暗示で火傷しちまう程度の脳みそを、疑似体験でより複雑に騙くらかすって言うもんの筈だ。
深い夢の中で死ぬと人間ってのはどうなるんだろうな」

垣根は、脅す様なことを笑顔で言った。
気楽に考えていたゴーグルの少年に対して。
彼より慎重で賢くて、そして時にずるい二人の意見はカードの機能の楽しさの裏に隠れているかもしれない危うさを掘り起こすようだった。
この街の住人はなまじ科学との親和性が高く、少しくらいおかしなことが出てきてもはいはい神様のおかげ、天狗のしわざ、みたいな信仰レベルで納得してしまうから気付きにくいだけで。
脳に直接作用する技術も、学園都市の他の先進技術と同様に。
便利便利と気軽に触れているから危機感が薄れているだけで、実際はもっと厄介なものなのかもしれない。

少年が青髪ピアスから聞いた、カードは機能を向上させる為にまだ改良を重ねているらしい、と言う情報から。
開発途中のものである以上様子をうかがう必要性があると『スクール』の中ではまとまった。
だが。
心理定規と垣根の反応からして。
交渉や情報収集など組織としての活動に使えそうなら上手く利用するつもりだろうと言うのは今の段階でも彼にはよくわかった。
いい面でも悪い面でも多彩な使い方が出来る便利な発明品には違いなさそうだった。
青髪ピアスがこれで一緒に遊ぼうと誘ってきたのもよくわかる、確かにすごいカードだった。

「三枚作るのに最低でも三日っスかねえ。毎日見た夢覚えてるわけじゃねえし」

ゴーグルの少年はおもちゃの塊の前で腕を組んだ。
とりあえず、お礼のカードは作らなくてはいけない。
対価を先出しで受け取ってしまったのだ、それも相手が欲しいのはお金ではなく「ゲームの上手い友人が作った」、
「攻略法や操作技術のエッセンスが含まれるかもしれない夢」のカードなのだから。
変わりのものを別に用意するのも失礼だろうと少年はいたって真面目に考えていた。
まさかそんなもので青ピが急に名人クラスまで上達するとは今までカードの効果について散々議論していた少年にも思えなかったし。
どうせ景品の当たらないくじみたいなもので適当に三つ用意しても構わないのだが。
少しくらい当たりそうな気がする方がいいだろう、と考えてしまうのはいつも引く側であるゲーマーの悲しい心理だった。

「それってタイマー予約は出来ないの?」

まるでテレビの番組録画のやり方を聞くような気軽さで心理定規が質問した。

「入眠からの時間帯で眠りも夢も質が変わるそうよ。早い段階のREM睡眠は情報が凝縮している…芸術的短編映画みたいだって言ってたかしら。
日中の経験を色濃く反映した夢を記録したいなら、そう言ったところを注意してみたらどうかな」

狙った夢を効率よくみれるようなアドバイスの為か。
相変わらず情報網の広い少女の言葉にゴーグルはへえーーといつものように感心しつつもお約束ネタ的な反応でうなずいた。

「またお客さんからの情報スか。あれスか。心理定規さんたら今日は脳神経学者とでも楽しくおしゃべりを?」

「ううん。セラピスト。彼女、何でもすぐ分析しちゃうからそう言うことを気にしない相手との交流を求めてるみたい」

でも、お互いに日ごろの癖や習慣はなかなか抜けないのよね、と零した辺り。
心の外側に現れてくるものの、心理状態のチェックをしなくて済んでいると言うことではなさそうだ。

「格闘ものの漫画にありそうな、お互いの間合いを測りあうにらみあいみたいになってそうっスね」

笑顔で談笑している水面下でくりひろげられる高度な心理戦なんて、そうと知っている人間にしかわからない火花が背景に飛びまくっているんだろう。
おまけに熟練した使い手同士の手合せの様に互いに傷をつけないハイレベルさなのは間違いなさそうだ。
ご招待されても隣に座りたくない、シュールで怖いワンシーンになりそうだった。


「お前な、自分の立場を自覚してんだろうな」


「はい?」

「さっきも言ったけど。意図してないものが紛れてる可能性はゼロじゃねえ。もし『スクール』に関わる情報がそんな経路で漏れてみろ。お前ら二度と目覚められなくなるぞ」

「……今日から細心の注意を払って寝ます」

リーダーからの警告に少年は身を震わせる。
これから最短で三日間はゆっくり休めそうになかった。
それじゃあ逆はどう? といって心理定規は今度は少年のゴーグルを指さした。

「君のそれをそっちの機械と一緒に使って、見ているものを外部機器に出力することは出来ないのかな? そしたら夢に問題がないかチェックできそうじゃない」

機密レベルの高い暗部組織の情報漏えいの危険性とゴーグルたちの死亡フラグを回避するとびきりのアイディアに思われたが。
女神の天啓にも、ゴーグルの少年は断固拒否だと大騒ぎした。

「それってまるっきり『ダイダロス』、『コレクター』の機能じゃないスか? いや、え。嫌っスよいくら夢だからって頭の中をオープンしたくないっスせめてcv.H原のソバカス美人にお願いします!!」

「意味わかんねえ」

結局、やったこともないしわかりません、何かあったら責任は取りますとゴーグルの少年が頭をさげまくって事態はおさまった。
いくら暗部の人間だからって可能性の低いたらればで、一般人の知り合いを血祭りにあげるつもりはないらしく少年はほっとした。

垣根から、機材を下部組織に回して機能を拡張したり改良できないか調べたらどうか、などと少年の読心能力者化計画を推進しようとする発言まで出てきたが。
少年が、自分の分身であるゴーグルはそんなところにやれないと必死で訴えてそっちもなんとか見逃してもらった。
嫌がる理由が趣味のことならそれって今更じゃないか、と二人は不思議そうにしていたが。
少年は今までもそこまでオープンに趣味の話題を提供している訳じゃないし、一般人のイメージするゲーム好きとオタクではちょっと種類が違うのだ。
そもそもやっているゲームもちょっと違う。
少なくとも画面内の非実在な推しキャラにガチで声援送ったり泣いたりするような痛い奴だとはあんまり知られたくないゴーグルの少年は。
どうにか安全そうなカードを作ろうとそれからひたすらゲームセンターに通い続けることにした。
ゲーセンからおやすみまでカード作りのタイムキーパーなんかを手伝ってもらった下部組織の下っ端は、横で作業していただけでスコアが伸びてしまったのだが、果たして青ピにはカードの効果があったのかどうか。
その中身は開けてみるまで分からない。


ドーモ。

いいなぁインディアンポーカー。ってことで。
こっちのカレンダーはまだ夏休みなんだろうけどむりやり混ぜてみた。
超電磁砲コミック展開と某小説ネタをパク、オマージュオマージュ。
オマージュってこれだけいっときゃ大丈夫ですか。
ドラえもんのひみつ道具で『夢みせ機』が超超欲しかった1には夢のようなアイテムだ。
早くこっちの世界でも実用化されないかなー。
あんまり面白くなくてぶちぎったゴーグルの設定をここぞとばかりにぶち込んでみたり。
ゴーグル君活躍するよりオタク力発揮してばっかだからドヤ顔で能力の解説が出来ないんだな。リーダーを見習おうな。

十二月号の超電磁砲最新話も読んだけど、
垣根「見ろよ。今の俺なら世界に通用するぜ。ほら、なんでも箸でつかめるぞ」
ゴーグル「流石垣根さん! こんな細かいネイルアートも箸で出来るんスね!」
心理定規「じゃあ次は、ここにラインストーン並べて?」
って展開になるところだったのか?笑い死ぬよ?
まだ佐天さんが使ってないとおはし名人のカードを奪いに中学生の所にリーダーが襲来すんのでせうか。
流石悪党だぜ大人げない。

タイムアップでレス後日、にしたいんだけど

>>583
今日の晩飯鳥団子鍋だった。
予知能力の才能でもあるんじゃないか。タイムリー過ぎてびびった

俺の今日の・・・昨日の?晩飯は焼き鳥とチキンソテーと唐翌揚げだったな


普段着ないような水着でイルカと戯れる心理定規とか最高じゃないか
ゴーグル君は今すぐスマホの中身を俺に渡そうな

連投乙、ありがてえ
だが熊と戦う垣根のインパクトがスゴすぎて感想色々あるけどぜんぶ吹っ飛んだ
なんでそんなノリノリなの、むしろそれを夢で見たいよもう

>>601
まじか、ちっと学園都市行ってくる
覚えてないだけかもしんないが普通の夢を見たことがない
黒スーツの組織が攻め込んできて自分囮に他を逃がしたり、突然湧き出るモンスターに武器召喚して戦ったり、何かから逃げてる途中にうっかり公園でスイッチみたいなの踏んで黄金の遺跡の扉が開くのならあるけど
夢の途中で夢だと気づいたことないし自分だけの現実がすごいのかもしれん

>>593
役不足だと意味が逆
ゴーグルにはできないって意味なら役者不足か力不足

>>606
一般に広まった誤用ははたして誤用なのかという言語学的な話になってくるのでNG

>>607ー608
そんな細かい事より垣根の出番はもっと詳細にすみずみまで書かれるべきでFA

おつ
解説難しくて意味わかんないけど相変わらずゴーグルが楽しそうだ
箸持ってはしゃぐ垣根は想像しただけで和む

スクールのスナイパーちゃんは果たしてこのスレにでるのだろうか

>>610
ちゃん?女?
ならばこれからSS界隈で未元定規とゴ撃手と言う組み合わせもありか?!
健在組と退場組でもいいよ(震声)
電撃大王かな

おう、大王だ
チチデカかわいこちゃんだぞ
まあ買うのがてっとり早い



新キャラ記念ネタ
「もしもこのスレがスナイパーちゃんが参加してる世界と時間だったら~(ダミ声)」



ゴーグル「おつかれっしたっスー!」

心理定規「あら、あの子は? 今日は数が多いから、出てもらってた筈よね」

ゴーグル「ああ、すぐ帰るって言ってましたよ。本当つきあい悪いっスよねあの女。俺らみたいないかにも怪しいのとつるんでるとリア充への道が遠のくらしいっスからねー」

垣根「仕事じゃねえんだ。好きにさせとけ」

心理定規「君にしては、随分彼女には強く出るのね。まだ距離があるのかしら」

ゴーグル「裏表のギャップ激しすぎっていうか。真面目健気ちゃんがこじらせて無愛想自己嫌悪系は大歓迎っスけど逆っスから。健気ぶってる腹黒とかあいつは猫被り過ぎっス」

心理定規「君がそれを言うの?」

ゴーグル「え。俺はそんなことしてないっスよ? ねえ垣根さん」

垣根「興味ねえ」



弓箭「(わたくしだって放課後にお友だちとお茶したりお買い物したりお休みの日には遊びにいったりしたいのに。今度こそ脱ぼっちしてやる……まずは明日から、お友だち作りからはじめるのよらっこ!!)」ジャジャーン

弓箭「ひゃっ、ななななな、なに? メール? 『お疲れさま、おなか空いてない?』って……こんなのまで、スイーツの写真…ふ、ふーん! なんですかこれ。素直に一緒に食べたいっておっしゃればいいのに」

弓箭「仕事仲間といやいや飲み会する大人みたいな流れは、非リアコース」

弓箭「(でも、わざわざメールしてくれたのに。悪いかなぁ)」

弓箭「……どうしてもって言うなら、円滑な仕事場の空気を演出する為にもつきあってあげていいですけどね。えっと、場所が……?」


ゴーグル「ったく。最初から来りゃいいんだよ。ドリンク冷めるじゃないスか」

弓箭「何ですかその態度……別にたまたま暇だったから来てさしあげたんですよ」

ゴーグル「……用事なんてないんだろ。どうせ」

弓箭「わかりました。この雄は今すぐ眉間を撃ち抜いて欲しいんですね?」

ゴーグル「誰が黙って見てるって。ここでやる気か?」

垣根「うるせえ。座れ。どっちもだ」

心理定規「ふふ。仲がいいわね」

ゴ弓「「はい?!」」

心理定規「みんなで食事をするのはいいことよ。心も頭も記憶や経験、いろんなものを結びつけたがるから。どうせなら楽しくしましょう」

心理定規「なんて建前はこれくらいにして……ほら。あなたはこっちに座って」

ゴーグル「心理定規はあんたを待ってたんだよ。多分来るからって」

垣根「俺は勝手にはじめてるけどな」

弓箭「……はぁ。ど、どうも」

ゴーグル「どうもじゃねえっつーの」

垣根「うるせえっつったろ」

ゴーグル「すいませんっス」

心理定規「彼は気にしないで。マイペースなのよ。好きなもの頼んでね」

弓箭「スイーツ食べるんじゃなかったんですか?」

心理定規「あんなの強制じゃないわ。呼び出す為の口実かな」

弓箭「(同じくらいの女の子とお食事……なんかリア充っぽい)」

弓箭「あああああ、あの、食べる前に……写真、とっても……いいですか?」

心理定規「もちろん。私の顔が写ってなければどこに上げてもいいし」

弓箭「うわぁ、やった……えええええ、えぇ……どれにしましょう」

心理定規「これも美味しかったわよ。そうね……」

ゴーグル「女子ってああ言うの好きだよなー」

垣根「そのグラス、置くか飲むかしたらどうだ」

ゴーグル「はい?! いや、飲んでますよ! 全然飲んでますって」

垣根「とっくに空だぞ。俺、次もコーラな」

ゴーグル「承知しました」

弓箭「あの、わたくしも……これ新しいのにしてくれます?」

ゴーグル「このおん……ったく、わかったよ」


ドーモ。

超電磁砲で仕事は楽しむ系Sキャラを見せたフレンダ(超ポジティブリア充友だち多め)と比べて。
超電磁砲の新キャラちゃんが、血の味がお好き中二風スナイパーと見せかけてぬいぐるみ抱えて一人反省会するタイプ(本性ネガぼっち)だったらここのゴーグルは即改めそうだなとおもいました(小並感)
まだここ夏休みだからやりようはありそうだけどキャラがよくわからないのとこの事件ですぐ退場しそうなのが非常に惜しい。
わたくしがデフォなのかお嬢さまモードなのかもわからんし。
ともあれ音がモフモフなのに字面が怖すぎる猟虎さんを1は応援したい。やっつけネームっぽいっちゃあれだが。

漫画のゴーグルはすごいな。外部の不要な情報デリートとか念動力系なら海原(真)くらいは能力使えてるんじゃないんですか?
あの土星が何用なのかやっと解明されるんですねかまち先生!何年越しでしょうね!
ついでに名前もお願いします!!お願いします!!


>>580
乙あり
なるほど。
それなら御坂が数の多そうな発電能力で低レベルからの超能力者ってのも納得だな。

>>581
一年やって一夏終わってないんですよー
このペースで抗争編まで書いてたらどれだけかかるかわからないじゃないですか!やだー
別にSSだからそこは原作通りにしなくても構わんのだろう?

>>582
『グループ』は大丈夫だろうか。いざと言う時の制御役がいなくて問題ありすぎないか?
強いやつほどすぐ脱線暴走するからネタSSのお約束として。
どつき合いは百歩譲ってもツッコミ不在ですよやっぱー!
あとロリ軍曹とノーネームさんの友人の正体発覚茶番イベントに最初の数分費やすな。

>>583
本当だ。そんな単純でよかったのかと言うくらい垣根鍋じゃないか。これからの季節にぴったりの。
調理で振り返りたくないがすぐわかってしまう垣根の歴史か何かか。

>>602
鳥ばっかじゃないか。そしてまた翌、お前か。
帝国民には鶏肉はタブーなのかそれともパンとぶどう酒的なポジションなのか。

>>603
乙ありー
カードが一人一枚じゃなかったらみんなで海に行けたのだろうか。そうなるともう別ジャンルの領分だけど。楽しそうだなオイ
相手が垣根好きだと見抜くとゴーグル君はレアなプライベート垣根さん画像を見せてくれるのか、部下として沈黙するのかどちらかによるんじゃないか。
とりあえずゴーグルとお友達からだな。

>604
おつありおつきあいいただきドーモ。
こじつけられそうだからと早めに投げたらあちこち頭痛が痛いことになってる。
せりふの元ネタが頂点だからかなノリが良すぎ。あれはハイな垣根のエンジンかかるの早すぎないか無口な主人公が心配だったw
感想はまたなんかありゃいつでも書いてどうぞ。1のレスが伸びてはかどるくらいの違いだけど。

>>605
>>580の説によると妄想力が高いほどレベル高め、厨二なほどレアだ。がんばー
夢の中で夢だと気付くと内容をコントロールできるようになるらしいと言う話があってな。
よかったらそっちも試してみてくれ。

>>606
おあーありがとう!
無知を晒しちまったぜちくせう。もっと勉強する。
教えてくれてドーモです。

>>607
難しい話はさておいてお気遣いどうもっす。

>>608
おまえらほんとにかきねがすきですね

>>609
おつあり
こまけえこたあいいんだよ!
あんなもんはふいんきなので気にスンナ。
お箸でなんでもできるそんな垣根も見たいようなみたくないような。

>>610
さっそくネタにしてみたでな

>>612
さっそく買ったぜヒャッフー!
枝垂桜って中学だっけ。なんだあのけしからんのは。
1もこれからは雑誌を定期購読せにゃならんかな。

ゴーグルくんはもっと下っ端イメージ強かったけど今回の超電磁砲で結構イメージ変わった気がする
にしてもらっこちゃん可愛いなうへへへ

らっこちゃんかわいいめっちゃ好きだわ
15巻で顔並べてる時点でそんな下っ端じゃないような。まあ人数合わせの可能性もあるが
スクールを海に連れてってもらっこちゃん以外水着になってくんないんだが、俺の中のスクールドライ過ぎる

乙るの忘れてた

らっこちゃんかわいいよらっこちゃん
なんだこのスクール
心理定規×らっこちゃんにゴーグル×垣根でも全然問題ないよ
>>1の早くていい仕事に乙

スレタイ見るたびにどうしても帝督が提督に見えて某艦隊の提督SSだと思ってしまう

更新乙!
最近たくさん読めるからうれしいぜ
垣根の寝顔に寝ぼける垣根にそんなの見れるならスクールの下っ端になりたい
隠れ家の掃除も気合入れてしますよ
ゴーグルはもうダメすぎて親近感わくわw
らっこちゃんの人気がすごいけど電撃大王読んだほうがいいの


ドーモ。
猟虎さんのかわいさに空気的にも救われている1です。
やっつけすぎと後ろから撃たれなくてよかった。

>>616
やっぱりしゃべり方だろうか。
原作十五巻の時やシリアスっぽいのだと、
「なんだコレ……敵襲か!?」
になりそうだけど。
超電磁砲のちースッだと、
「なんスかコレ敵襲っスか!?」
だからな。~っすキャラは下っ端属性になる宿命を負っているんだろう。

>>617
わざわざ乙ありなんだよ。
TPOに合わせて着替えはしそうだけど全然水に入らなさそう。
今回のネタの面子で海に行かせても、

垣根→めんどい。暑くはないがめんどい。
心理定規→メイク崩れる、日焼け嫌、サンダルに砂が入るのも多分嫌。
ゴーグル→ジュース、屋台、海の家のパシリ。ゴーグルはないので「ゴーグルどこいった?」と人ごみで勝手に迷子にされる。
らっこ→泳ぎたくても一人ではいけない。

協調性がねえ組織だ。いや暗部はどこもそんな感じか。
でも心理定規とらっこさんがいれば女子だらけのウォーターガンバトルが見れるかもな!
学園都市は海ないしプールかもしれない。
それより何よりどうやったらあいつら仕事以外でレジャーに出かけてくれるんだろうと1はムードメーカーとネタに欠かない『アイテム』のつかい勝手の良さをうらやみます。

垣根「第三学区のプライベートプールが借りたままだったな。使っとくか?」

ゴーグル「プールっスか。プライベートの……心理定規泳ぎます?」

心理定規「……ううん。他に人もいないのよね。行ってどうするの? スパとかあるならそっちがいいな」

ゴーグル「それだと別行動じゃないスか。えー、じゃあビーチボールでバレーでもします?」

心理定規「そうね。君はあれ着けてれば二対一でも大丈夫そうだし」

ゴーグル「俺とゴーグルの実質ぼっちチーム確定っスか」

垣根「無理に行くもんでもねえし。まぁ別にいいか」

もしプール借りててもこうなりそう。やる気ねえなこいつら。

>>619
乙ありなんだけどなんだその偏りまくった組織内恋愛は。恋愛?
らっこさんはかわいかった。そこは全面的に同意したい。
おどおど系の女子も良い。

>>620
紛らわしい名前してるよな。流石公式でも提督にされただけのことはあるよね、と1も話題の転換を試みます。

>>621
乙あり!
電撃大王の先月号にはアイドルさまに垣根がいたけど今月は出てなかったぞ。
小ネタはよく出る1です。

まず学園都市に行きます。
適当に開発されます。
レベルが低かったら適当に悪さをして、高かったらいっそ正規構成員を目指して暗部落ちまで経験値を積みます。
わかっているだけでも最低五つかそれ以上の組織のどこかに配属されます。
がんばれ。

>>622
猟虎って(ラッコでなくて猟 虎で)ドイツ語にすれば戦車の名前になるよね
だから何だって訳でもないけど戦車アニメが流行ってるから思い出した

ゴーグルは出れば出るほど能力が謎だな便利そうだが
しかし垣根の出番はまだか、最後まで出ないとかあんのかな

らっこちゃんのフレンダ射った後の笑顔ぐう好き

垣根は序列の垣根なんかものともせずに第一位を降せるって信じてるよ!

パズデックソが終了っぽいけど
>>1は元気かな

レールガンまた休載かよ
らっこちゃんはよ

アイドルに心理定規ちゃん出てるで

お前ら俺に毎月電撃大王買わせんのやめろよな


電撃大王連載中のあれをパロったやつ
アイドル垣根&『スクール』featらっこさんだったらネタ



ゴーグル「垣根さーん元気出してください。ファンからの声援はすごかったって心理定規に聞いたっスよ。ネタ的にもつかみはバッチリっスよー?」

垣根「……」

心理定規「プロデューサーは?」

ゴーグル「今日の収録の映像持ってってもう二時間っス。ブイのチェックとか言ってたけど今頃笑いすぎて酸欠で死んでるんじゃねえのっていつものパターンスね」

心理定規「それじゃああの人抜きで彼の戦略ミーティングね。絶対偶像進化計画の為にも頑張ってもらわないといけないしさっそくはじめましょう」

垣根「で。なんの話をすんだよ」

心理定規「今日の内容が放送されると、視聴者の反応が大きく動くはずよ。御坂美琴と一方通行が相手とはいえ、今回の結果はあまりいい傾向とは言えないわ。今後の仕事にも影響してくるでしょうし、対策は立てておかないと」

ゴーグル「でもギャップ萌えと言う言葉があってっスね。短所も魅力の一つってパターンがあるんス。そう言った要素一つでこの先のファンの心がどう転ぶか変わってくるかもしれないっス」

弓箭「こここここのままではいけないのですか。誰でも苦手なことってあるのに」

心理定規「とりあえず、本人があの出来をちょっと気にしてるから今日起きた問題を改善する方向で話を進めましょうか」




ゴーグル「えーと、お客さまの中で料理経験のある方はいらっしゃいますかー?」

垣根「 」スッ

ゴーグル「垣根さん以外でいないっスかーちょっと女子ー何やってんの? リーダー一人で手あげてたらかわいそうじゃないっスかー?」

ゴーグル「心理定規さーん?」

心理定規「だってほら。ネイルが」

ゴーグル「弓箭さあーん?」

弓箭「わわわわわわたくしは、あの。授業……とかでなら。そそそそそ、その。基本的なことは」

ゴーグル「今は重要な戦略会議中だぞ。『スクール』の命運はお前の意見に左右されるんだーってなもんでしっかりしてくれないと困るっスよ」

垣根「いやお前もしっかりしろよ」


弓箭「それでは、状況を確認しましょうか。標的はパスタでしたね」

ゴーグル「えーと具はアサリとエビと…魚介っスかね」

心理定規「何を作るはずだったの?」

垣根「ペスカトーレ・ビアンコだ。レシピも見た」

ゴーグル「あれっペスカトーレってトマト味じゃないんスか。でもこれ赤くないっスよ」

垣根「白ワインでソースを作るから白いパスタになるんだよ」

弓箭「リーダー。めざましい成果をあげられなかった原因の一つ、何でこんなに焦げたのかの原因はご自分でわかりますか?」

垣根「はぁ? そりゃ火が強かったんだろ」

ゴーグル「逆ギレだ…ほんとは白いはずの料理を真っ黒にしちゃったのにドヤ顔っスよ垣根さんってば」

心理定規「それは…彼だもん。仕方ないわよね?」

弓箭「この映像からも戦場の痕跡を分析しますと……恐らく原因は最後のフランベ。それも強火で火にかけすぎたこと。
順調に出来ていたかもしれないのに……ギャラリーの雌共に無駄なパフォーマンスをしていたから見た目が酷いことになってしまったんですよ」

心理定規「パスタってフランベするのかしら。何でそんなことしたの?」

垣根「……カッコいいだろ」

ゴーグル「確かにカッコいいっスねえこの映像。この隙に既にこちらに完成品が!って差し替えちゃえばよかったんじゃないスか」

心理定規「それじゃあ意味ないじゃない」

垣根「ナメてんのか。勝負にならねえだろ」

弓箭「卑怯者の敗残兵」

ゴーグル「ぐっ、フォローしたのにフルボッコっスか」


弓箭「次に味ですが。ご自分で結果を確認して下さい」

ゴーグル「スタジオから料理の残り持ってきてもらったっス。あっためてきましたよ」

垣根「我ながら……くどいし塩辛いな。ついでに苦い」

弓箭「重く感じる原因は追いオリーブオイル。そして全体的に多い塩気、ですか」

垣根「味付けは分量通りだぞ」

弓箭「ソースはそうかもしれませんが。そうですね…パスタを茹でる時に塩は入れましたか?」

垣根「そりゃあ……湯に対して三パーセントは入れろって言うだろ」

弓箭「その塩分量が元のレシピとは差があったのかもしれません。あとはソースをそれだけで完成した味付けに仕上げるのではなく、パスタと合わせてから調味した方が安定すると思います」

ゴーグル「垣根さん味見はしなかったんスかね」

心理定規「アジミネーゼって呼ぶらしいわ。そう言う人」

ゴーグル「もしかしてメシマズ嫁の旦那さんがバイトの顧客に?」

心理定規「いるの。でも、毎日お弁当を用意してくれるんだって。大変みたい」

ゴーグル「うわぁ。冷食コンビニ外食に宅配なんでもあるのに食事に困ることってあるんスね」

心理定規「男の人も、『たまには僕が作るよ』くらい言って家事をしてくれてもいいわよね」

ゴーグル「ソウデスネー」

弓箭「苦味は……仕上げでのパスタや具の焦げだけじゃないですね。ほら、この残骸。真っ黒なにんにくが」

垣根「潰したら最初に弱火で炒めるんだろ。ちゃんとやったぞ」

弓箭「香りを出したら焦げる前に取り出しましょう。それはレシピになかったんですか?」

垣根「なかった」

ゴーグル「多分、書いた人も焦がす想定はなかったんスよねえ」

心理定規「そうね。そこまで親切なレシピサイトみたことないかも」


弓箭「麺が主役の料理になるはずだったのに…火も通りすぎて伸びてしまっています。焦げていないところでも冴えない食感…」

垣根「チッ。茹で時間はキッチリ守ったが……その後火にかけることは踏まえてなかったな」

弓箭「一.七mmのスパゲッティーニですか……好みによりますが、得物はもう一ゲージ以上サイズが上でもこのソースなら合うと思います。芯が消える前に少し早く上げて、具材と合わせて火を加えても仕上げやすいはずなので」

垣根「あれだけ言ってて、最後に加熱すんのか」

弓箭「フランベは外さず、行うんですよね」

垣根「そうだな……」

弓箭「基本はおさえていても状況に合わせて対応出来ないと無残な結果になります。さらに、調子に乗って余計なことをあちこちしていては相手に撃たれる前に自滅してしまいますよ」

垣根「ったく、料理ごときにこの俺が」

弓箭「リーダー、キッチンも戦場です」

ゴーグル「垣根さん相手に……的確に急所を狙った正論しか言ってねえこの女……」

心理定規「でも、確かに調子に乗るのは彼の悪い癖よね」

ゴーグル「自滅型っつうか」

弓箭「あなたの雄姿を待っていたファンの輝かしい期待を潰したからには、せめて誇れる偶像であってくださいよ」



弓箭「あああああ、あの。よかったですね。垣根さん、何回か練習したらちゃんとおいしいパスタが作れるようになりましたよ」

ゴーグル「おかげで垣根さんの仕事の飯休憩と俺らの任務の空きその他はスパゲッティオンリーの食卓っスけどね……それもおんなじスパゲッティ……
味はさておきイタリア人もびっくり空飛ぶモンスターに見えてくる」

心理定規「キャンピングカーなんてどこから持ってきたのかしら。それにしてもレパートリーがないのも困ったものね。たっぷりのオリーブオイルにパスタ……イタリアンはカロリーが高いのよ」

垣根「おーい。お前ら、飯出来たぞ」

弓箭「あつっ……おいしい」

ゴーグル「おおー流石垣根さん、もうレシピをものにしたんスね。工場のラインみたいに完成以降前回前々回と同じ味を維持し続けてますよ。でもちょっと調味料で各自工夫するくらいは許して欲しいっス」

心理定規「そうね。でも余計なことを耳に入れて、変なアレンジとかするようになったら困らない?」

弓箭「隠し味は隠れているからそう言うのに……健康志向からの減塩、そのまま香辛料の投入……普通の家庭料理になるはずだったのに……」

ゴーグル「ちょっ、おい、後ろ向きなのもそのへんで止めろって! うーん垣根さんがアレンジャーに進化したら怖いっス。じゃあパラ変動で分岐がおかしくならないように今は見守るしかないっスかね。もしかしたら満足して飽きるかもしれないっスよ」

心理定規「そうね。でもすでに隠し味に『未元物質』とか入ってたらどうしよう」

ゴーグル「ぶえっほ?!」

垣根「さーて俺も食お、って何水吹いてんだよ汚えな」

弓箭「どどどどどどうしました?」

ゴーグル「何か急に寒気が……」


ゴーグル「あの番組も何がさせたかったんだか。一方通行のあれは料理としていいんスかねえ。炊飯器って飯炊くもんじゃないスか」

心理定規「あら。炊飯器で作るお菓子の本とかもあるのよ」

弓箭「炊飯器調理は、スイッチを入れたら完成するまでほとんど手を加えられないから、結果がわかりづらいはずなんです。だから煮る料理だと特に味付けが難しいんですよ。水っぽくなったりむらが出てしまったり」

ゴーグル「へえー。ポチッとな! で楽々済むんじゃないんスか?」

弓箭「他の人の映像も見ましたけど、あのハンバーグも仕上げにソースを煮詰めたりはしてませんでしたよね。普通はそうやって調整するのに」

垣根「確かに……蓋開けたらそのまま皿に盛ってたな。その状態で完成させてやがるってことは……
奴は具材の火の通りから味の染み具合、蒸発する水分量を想定した味付けの完成形まで食材の調理過程と結果を全て計算した上であえてスイッチ一つで終わらせやがったって訳か」

ゴーグル「第一位の演算能力のなせる技ってことスか」

心理定規「まぁ、確かにお料理も科学実験みたいなところがあるけど。それだけ向こうが知り尽くしてたってことかしら。料理なんて、あなた以上に似合わないけど」

弓箭「そそそそそそれは……リーダーも狩りがいのありそうな獲物ですね」ニコォ

垣根「ったく、ムカつく野郎だ」



垣根「それにしても……炊飯器か。奥が深いな」

ゴーグル「そっちっスか。まさかの、垣根さん料理の次は白物家電に興味を…?」

心理定規「……ねえ」

ゴーグル「なんスか?」

心理定規「この前、彼に関する気になる話を耳にしたんだけどちょっといいかな」クイクイ

ゴーグル「なんスか? 俺じゃなくて垣根さんにそのまま言えばいいじゃないスか」

心理定規「新しい仕事なんだけどね。大手家電メーカーが新商品を販売するの。そのPRを兼ねて、前のシリーズの人気機種を『当社第二位』商品として彼とコラボしたいって話があるみたいなのよ」

ゴーグル「物はなんスか」

心理定規「冷蔵庫」

ゴーグル「は」

心理定規「扉が全面液晶パネルになってる、閉じたままで中が見える冷蔵庫ってあったでしょ? あれに彼の等身大スクリーンを特典として組み込んだりデザインも『未元物質』仕様にしたいって……」

ゴーグル「どんな仕様にする気だよ。ええっ『スクール』の電話の奴は何て言ってんスか」

心理定規「あの人が率先して話を振って進めてて向こうも乗り気みたいなの。企画も相当つめはじめてるみたいなのよね。ほとんど本決まりよ」

ゴーグル「第二位って序列強調してるし、何で垣根さんに全力で喧嘩を売ってるんだろうなあ死にたいのかなあそうかなあ他でやってくんねえかなあ。
じゃあ相当機嫌のいいタイミングで話をしないと俺たちも愉快な死体っスよそれ」チラッ

心理定規「そうね」チラッ

弓箭「ああああああのごちそうさまです! お皿…」

垣根「おう。そこ置いとけ」

弓箭「エプロンも似合いますね」

垣根「だろ」

ゴーグル「……コンビニかファミレスに垣根さんの冠付けたスパゲッティ並べる話を同時進行で進めてもらいます? ドラマとかアニメのコラボメニューとかありますよね」

心理定規「そうね。私、彼のメンタルケアまで面倒みきれないわ」

ゴーグル「おっ」ピロリン

心理定規「なに?」

ゴーグル「あの後、あいつの指示でムービー作って、放送後に動画サイトに上げたんスよ。けっこーいい反応っスよ? 垣根さんのリベンジクッキング、からの華麗な完成品。コメントも伸びてるし……」

心理定規「君も無駄にカメラ持ってないのね。どれどれ?」

垣根様が(´・ω・`)ショボーン
焦げた料理みてる(´・ω・`)
まけずぎらいなていとくんもえー
マジ顔でwオリーブオイルww
完成! ドヤァ!
俺の料理に常識は通用しねえ!
8888888
うまそう食べたい
いいお顔
このイケメンうれしそうである

心理定規「……なにこれ」

ゴーグル「え? こんなのっスよね? Pも大喜びでしたよ」

心理定規「本人には見せちゃだめなやつじゃない?」



後日。

ゴーグル「じゃあこの垣根さんの得意料理(海の幸の白いパスタ)を『超能力者アイドルコラボ飯』の企画に持ち込むってことでいいんスかね」

垣根「いや。どうせならもう一段階上のもんにする。そのままじゃ、俺らしさが欠けてるだろ」

心理定規「あなたらしさ、ねぇ」

弓箭「(はぁ。ここまで注目を集める人でもまだそう言うの気にしちゃうのに……わたくしって)」

ゴーグル「そんなこともあろうかと! 見つけてきましたよ垣根さん! 高級食材に天使のエビってのがありました!」

垣根「よーしそれだ! って誰が天使だクソがぁ!!」バサァ

ゴーグル「どわぁああ!!」

弓箭「あんなにテレビで羽出してるのにまだ駄目なんですかね?」

心理定規「人に言われるのは嫌なのよ。きっとね」


ドーモ。

あいどるさまおもしろかったけどらっこさんがいなくてさびしかったからかいた。
パク…えっと参考資料。美味し◯ぼと鯖カ◯ーなまとめとかそのへん
見る分にはおもしろいけどこわいよ!佐天さんとは大違いだよ!
別に垣根は料理くらいできなくてもいいよな。できなくても困らないもんな
でもなぜか料理とか器用にやりそうなイメージがある。
エプロンつけたAAあったよね?そのせいか?

>>623
ティガー戦車かな?
由来はそう言うのがあんのかね。裏設定で親が虎ファンとかだったらどうしよう

>>624
垣根「ここまで来たらいっそ最後まで顔出さない方が大物っぽくてかっこいい気がしてきた」
いや出て欲しいけどな!!

>>625
狩猟モードでスイッチはいる子なんでしょうかねやんでれっぽい

>>626
垣根だけにってか。
原作で『能力者の垣根を~』とか出てくると前後の文から垣根帝督を探してしまうのはなんの病気でしょうね!?

>>627
パスデック◯なー残念なー
まだサービス終わってないけどw
魔法少女イベントをメダルでコンティニューしたりヘタ錬が頼もしかった頃があったんだよなあ楽しかったなー

1は元気だよ最近は『スクール』周辺が賑やかだからかな

>>628
体調不良じゃ仕方あるまいて

>>629
>>628みて今回はスルーかなとか思ったら>>629のおかげでまた買ったよ!ありがとな

>>630
それな。コミックス派だったのにすっかり継続してますことよ

もう今年も終わりたるものね。
来年の>>1は今書きたる「とにかくアブない『未元物質』in常盤台安心して下さい(下に)履いてますよ」が終わりたれば、いつか『スクール』の面々をプールに連れていきたしと思うておりけるの。
その為にも弓箭女史の仔細は知りたしゆえ、また次号を心待ちにせねばならぬのね。
かようなスレを読みたる方々には来年もよしなに願い申しあげたきことを早めにここに書きておきたるのよ。

やってみたけどエセ古語めんどくせえなもう!



おまけ・ゲーム脳


垣根「お前もゲームばっかしてるけどあれか? 死んだら回復させりゃいいやとか思うのか?」

ゴーグル「垣根さん……それは間違ったゲーム脳のイメージっスよ。ガチなのは『二、三階ならジャンプでショートカットできそう』とか『財布に金がなかったから雑魚狩って昼飯食おう』とか
『眠くなったから回復かけよう』、『この長い話スキップ出来ねえかなあ』ってなことを自然と頭に思い浮かべてしまうのっス」

垣根「ふーん」

ゴーグル「ビデオゲームだけじゃないんスよそう言うの。『スクール』にももう一人いるじゃないスか」

垣根「?」

ゴーグル「弓箭ー、モンパンやらないっスかー?」

弓箭「結構です。あんな、徹甲榴弾を急所に当てても仕留められないふざけた狩猟はわたくし、したくありません」

ゴーグル「リアルをゲームに逆輸入しちゃう狩猟(ゲーム)脳っス。頭ふっとばせば死ぬのにHPってなんだよって思っちゃうタイプっスかねえ」

垣根「……お前らも大変だな」

読み辛いなあ

エプロン装備の家庭的未元物質ww
らっこちゃんも馴染めてて…あれ、なんだろう涙が…
ちょっと早いけどあけおめ1!2016年も張り付きます!

俺も垣根は何でも器用にこなせるイメージあるから笑った、(料理中の)見た目重視過ぎだろwwwwww翼なしでダークマター生み出せて良かったね^^
偶像さまの垣根はやっぱかませ犬枠なのかね、心理定規が可愛いからいいけど

垣根のチンポパスタを食べたいよお

垣根が「今日はうまくいったろ」ってどや顔で作ってくれたらダークマター(玉子焼きらしきもの)でもたべる
真っ黒でいいから飯をふるまわれたい

あけおめ〜
今年もスクールの出番がもっと増えますように

読んでないとわかんないネタやられても

お前の都合なんて知らんがな
分からんならスルーしろ

というか読めばいいのでは

【速報】ゴーグル君に名前が

きたか…!!

  ( ゚д゚) ガタッ
  /   ヾ
__L| / ̄ ̄ ̄/_

  \/   /


垣根「ゴーグル……じゃねえ。えーっとー?」

心理定規「またあなたはそんなこと言って」

弓箭「垣根さん、彼のお名前忘れてしまったんですか?」

垣根「希望の万能細胞だっけ? いや、千載一遇じゃなくて」

ゴーグル「なんスかそのすげー無理矢理なボケ。DQNameにもほどがねえっスか」

垣根「あー、そうだ。ば」

心理定規「ば?」

垣根「……万化」

誉望「はうっ?! はい! はい!! なんですか帝督さん!……痛え?!」

垣根「お前に言われるとなんかムカつく。なんだよその反応キモい」

誉望「ひでぇ! なんでっスか! なんで、痛っものを投げないで下さいっス」

垣根「てーとくてーとく紛らわしいんだよ。お前なんてゴーグルで充分だ。このゴーグル」

ゴーグル「ああー! 垣根さんに呼び方変更イベントを失敗された!?」

弓箭「誉望さんって、わたくしを怒ってる時以外は垣根さんに怒られてません? お二人は仲が悪いんですか」

心理定規「そう見える? でも今ので少しは距離が縮まったかもね」

弓箭「あれで、ですか」

心理定規「口にする呼び方ってそのまま相手の印象にも繋がるのよ。権威を気にする人なんかは肩書きで呼ばれるのも好きみたいだし」

弓箭「そう言えば垣根さんは仕事中にリーダーって呼んでも怒りませんけど、他の連中から能力名で呼ばれるとキレちゃいますね」

心理定規「まぁ、彼もこだわりは強い方だからね」


心理定規「『未元物質』はある点で彼の本名以上に彼を強く示す符号だし、実際名前以上に多く使われていたでしょうから。
微妙な思い入れもありそうじゃない?」

弓箭「そうですね。そう言われますと商品名で呼ばれるような気分、でしょうか」

心理定規「でも、『リーダー』はこの『スクール』の関係者しか使わない限定的なものでしょ。狭いコミュニティ内の共通認識は連帯意識をより高めるのよ。
ゴーグル……誉望くんも、ハンドルネームで呼びあうのが通例なんて環境に慣れているみたいだから余り気にしてないみたいだけど」

弓箭「そう言われれば…垣根さんもああおっしゃるほど、嫌な顔はされてませんね」

誉望「垣根さんさっきから飛んでくるこれはなんスか『未元物質』スか」カツコン

垣根「逆輪投げでもしてやろうと思って」ポイ

誉望「輪っかの中心って俺の頭ですよね! いや、あの端子に引っ掛けんのも止めて下さい!」

心理定規「そうねぇ。照れ隠し……かな。タイミングを逃すと呼び直すのってちょっと恥ずかしいのよね。
だからって二人して八年ぶりみたいな反応しなくてもいいと思うんだけど」

弓箭「それであんな射的になってしまうんですから。殿方のコミュニケーションはわかりませんわ」

心理定規「次は私の番だから。そうよね? 見てなさい」



垣根「お前も結構名前負けしてんな。なんだよ万化って。なんでもありかよ」

誉望「念動能力は学園都市でもオールマイティ便利能力の代表格っスから。べ、別に俺がここでそこそこレベルってのが悔しくなんかないんだからね?!」

弓箭「わたくしが言うことでもないと思いますが、垣根さんもなかなか……」

心理定規「しっ。それにレベルがもう少し上で、本当になんでもできちゃったらこんなに謙虚なキャラじゃなかったかもね」

誉望「えーっなんスかそれ」

心理定規「だってそうでしょ? 君の仕事用のペルソナって自信家で冷静に振る舞うけど攻撃的、自己愛も強めかしら。典型的な人の上に立ちたいタイプ。
その人物像が潜在的な憧れなのか心の中の本質かはわからないけど影響はしてるはずよ。
そんな素養がなくってもゼロから演じられるほどの演技力が君にあるなら別だけど」

誉望「そっスかね。えーじゃあちょっとベルベットルーム探してきます。怪しいリムジンバスがどっかにないかなー。
そっちをメインで降魔し直せば俺もTHE暗部っぽいクールなキャラに……」

弓箭「え。何の話ですか?」

垣根「何だかわかんねえが、そうすると『スクール』には自己中なドSしかいなくなるぞ」

心理定規「あら」

弓箭「垣根さんったら。どうしたんですか、自己紹介?」

誉望「いや女子! 何言っちゃってんだ特に猟虎君は胸に手を当ててよく考えてみような!」

心理定規「いやだわー誉望くんったら何言ってるのかな」

弓箭「……セクハラですか?!」ハッ

誉望「ああああああこの女どもっ!」


垣根「まぁどこの組織だろうが、暗部で仕事するような奴に高い人格レベルを求めても仕方ねえよな。俺以外」

心理定規「えぇ……」

誉望「はぁ……」

弓箭「そうですよね。本当にこう言ったところでお会いするみなさんは人間性も残念な方が多くて……
いえ! わたくし浮いてなんかいませんよ。決して学校外でさえもぼぼぼぼぼ、ぼっちなんかでは!」

誉望「こいつこれだからぼっちなんじゃないスか? 圧倒的な空気読めなさ。あの、心理定規」

心理定規「うーん。みてあげてもいいけど……私結構高いのよ」

垣根「やっぱり金取るのか」

誉望「えっ。スルーっスかみんなして。『ぼっちなんかじゃない』展開は無しっスか」

弓箭「みなさん何て言いましたけど…
…『スクール』のみなさまは、そう……あの……あう。いいえわたくしは……こんな、馴れ合いだなんてううっ」


ドーモ。
取り急ぎもしもし。
十五巻の発売が二〇〇八年だって?
ゴーグル君改めて誉望万化サン。
ドーゾヨロシク
次は心理定規ちゃんだよね?!そうだよね!


ゴーグルはモブだから名前が出なかった(出てなかった)って感じあるけど
なんか心理定規は名前が出ないキャラ的な感じがしなくもない

>>655 それな。それがコワイ
あとゴーグルはもう原作に出番はないだろうけど
心理定規はもしかしたらがあるかもだし出し惜しみされる可能性も

もう出番ないとか言っててめっちゃ悲しくなってきた…
ここのはっちゃけたゴーグルくんとそこそこ釣られるみんなホント癒し、乙

ベールベルベルベルベット~わ~があるじ~ながいはな~

ペルソナ使いのスクールか
垣根は宇宙だろうな

心理定規の今後の活躍がある可能性は
心理定規の名前をいつまでも伏せる理由にはならないんだよ!
実は誰かと同じ苗字っていうなら仕方ないけど

スクールで1番名前としてまともな本名が垣根帝督とかそういう条件でもなきゃ無理だろwwww

ゴーグルよかったな、まさか今更になって本名でるとは思わなかった
にしても説明の最後の一文に腹筋もってかれたわwww全然キャラ被ってねーよwww
垣根に懐柔されたとこ見たすぎる


弓箭「あの……垣根さんはどうしたんですか? なんだか気落ちして、らっしゃいます?」

垣根「……」

心理定規「二月に入ったのにチョコレートが全然届かないってプロデューサーに言われてたわ。そういえば」

誉望「なんでうちのPは垣根さんをあえて煽っていくスタイルなんだ。あいつは見てるだけだろうが被害うけるのは俺達なんだぞ?」

弓箭「でも巻き込まれるのはいつも誉望さんですよね」

心理定規「彼だって、わざわざやられ役をかって出てくれてるのよ。感謝しないとね」

誉望「え。そうなんスか? そうだったんスか? 俺の本人の知らない間にそんなことに?」

心理定規「私や彼女はそんな軽率なことしないけど。君はわかってても場の空気とお約束を踏襲するの、好きでしょ?」

弓箭「そんな、わたくし今まで考えも及びませんでしたわ。矢面に進んで立つことでメンバーを救う自己犠牲の尊い精神……誉望さんのことは忘れないのではないかと思います」

誉望「なんで今手を振るんだよ。あーあ。地雷撤去スキルとか解体知識が身につかねーかなあ」

心理定規「『スクール』の安全弁……いいえ、カナリアかな」


垣根「……」

誉望「あれ。垣根さん今年はあげる側に徹するって言ってませんでしたっけ。週末に、花配るイベントするんスよね?」

弓箭「ああ。日本くらいですよね。殿方にチョコレートを贈る習慣」

心理定規「それに本番はまだ先でしょう? 当日はきっと大変よ」

誉望「当日指定でダン箱が山ほどきますって。垣根さんの国民(ファン)はなんつーか強いっスよね」

弓箭「垣根さんは大変人気がありますもの当然ですね。それに比べて……ふふ、どうせぼっちには関係のない日でしょうとも」

垣根「別に……そんなの気にしてねえよ。世間一般の年中行事だろ。俺にそんな常識はだな」

心理定規「(熱心に注文用のお花のカタログ見る彼もなかなか面白かったけどね)」

誉望「(垣根さんて割とマメっスよね)」

垣根「通用しねえ、って聞けよおい」

弓箭「バレンタインに我がもの顔するリア充共め……世間の浮かれた番をまとめて撃ってやりたい」


心理定規「まぁ、中には気の早い人もいるのよね」

弓箭「どうしたんですかそのチョコレート」

心理定規「逆チョコね。お客さんからだけど、どうせ義理だし食べれないから、ってレポートと一緒に渡されたチョコを私に回すのよ。
好き嫌いを調べもせず賄賂にする相手もどうかと思うけど、女の子は甘いものなら喜ぶって発想もどうなのかしら」

弓箭「あら? 心理定規さん甘いものはお好きですよね」

心理定規「だからってこんな箱でもらっても……全部食べられないでしょ?」

弓箭「そうですか? なら一日に二つほど召し上がればよろしいのでは」

心理定規「……」

誉望「そう言えば弓箭はそんな食い物に文句言わないっスね。俺、女子はカロリーと戦う生き物だと思ってたんスけど」

垣根「世の中にあえて倣ってやる必要ねえんだろ」

誉望「ぼっちのすごいカッコいい言い方っスねそれ」

心理定規「はい。あなたにもあげる」

弓箭「ははははははいっ? あ、あーん」

心理定規「はぁ……おいしい」

弓箭「ふぁい、おいひいれす」


誉望「いーなあゴディ◯っスか。女子からこんなんもらったら嬉しいっスよね〜チ・・ルだって大歓迎だけど。やっぱ憧れるよなー」

心理定規「ゴディ◯がいいの? なんで?」

誉望「えーっとイメージ画像がっスね……あったあった、じゃーん! 食べ終わるとなんと箱に某ハードやソフトがぴったり入っちゃうんスよ!! これやりたかったんだよなー!」

心理定規「じゃあ誉望くんのはゴ◯ィバにしてあげる」

誉望「まじスか!! やったー!! っしゃあ! みんなに自慢出来るー!!」

心理定規「お返しは三倍って言うけど、あんまり返されても困るから気にしないで」

弓箭「えっと、誉望さんは中身はよろしいんですか? じゃあわたくしは箱を贈って差し上げますね」

誉望「何でだよ。それだとホワイトデーは自動的にガワになるけどいいのか」

弓箭「お返しが三倍ですとか、いろいろと作法があるんですか。それでは楽しみにしていますね」

誉望「ゼロに三掛けてもゼロだろ。箱三倍にしてやろうかこんにゃろ」


弓箭「そう言えばみなさん当日のご予定はお有りなんですか?」

心理定規「さすがにそんな日にバイトは入れないわ。何人か誘われたけどね」

誉望「俺は取りあえずバレンタイン限定装備『ハートレフト』、『ハートライト』と『ブロークンハート』のシリーズを揃える為に三垢使ってinかなーそれまでに集まってたらいいんだけど」

垣根「確か仕事が入ってたな。死ぬほど下らねえ方の」

誉望「アイドルって大変っスね」

弓箭「あら……それでは垣根さんにチョコレートを渡すならお仕事先に行った方が良さそうですね」

垣根「そうだな」

誉望「は?」

心理定規「どうして?」

弓箭「え……何かございますか?」

誉望「さあ吐け弓箭! さもないと心理定規の友チョコはないものと思え!」

弓箭「何で誉望さんがお決めになるんですか! そんなこと……ございませんよね?」

心理定規「そうねえ……小さくてもなにか疑念を抱いた相手に気持ちよくプレゼントは、できないかもね?」

垣根「そんな込み入った話なのかこれ」

弓箭「べべべべべべつにわたくしそんな! 垣根さんと特別親しくさせていただいている雰囲気を醸し出して、
運よ、運悪く超能力者アイドルとツーショット、謎の美少女としてスクープなんてされてしまって
超絶リア充街道まっしぐらなななななんて、なーんて狙っていませんわよ?!」

誉望「ダウトー!! やっぱ腹ん中真っ黒だろお前!!」

心理定規「でも珍しく思考展開がポジティブね」

垣根「弓箭」

弓箭「……はい」

垣根「ああ言うのは灯りに群がる虫と一緒だ。お前が勝手に寄ってくる奴らに煩わされてえって言うんならいいけどな」

心理定規「顔が大きく広まると、任務はしづらくなるかもね」

誉望「ほら、暗殺者が目立ってどうするんだよ」

弓箭「それは……困ります」


弓箭「わたくし下らない考えは止めましたわ。垣根さんには日頃の気持ちを込めて、普通にお渡したいと思います。ですが……目立ってしまうとお仕事がしづらくなるのは困りますね。その場合、どうしたらいいのでしょう」

垣根「顔がよくわからねえ様にすれば平気じゃねえの? 俺もなー最近サングラスだとそのへん歩いててもバレるんだよなー」

心理定規「そのサングラスが既にとっても目立つわよね」

垣根「任務中はさ、こう言うの作ればいいんじゃねえかと思うんだよ。日本人だし目元で充分だろ。目出し帽はなんか間抜けだしな」

弓箭「なんだか……ミュージカルみたいな仮面」

心理定規「白いからよね。オペラ座の怪人みたい」

誉望「赤くて三倍速いやつの人みたいっスね」

弓箭「でも垣根さんの場合、羽が出ててしまうと顔を隠してもあんまり意味がないと思います」

心理定規「そうよね。気をつけてもらわないと」


心理定規「そうだ。あなたのチョコレートなんだけど」

垣根「なんだよ」

心理定規「えっと……この前話したお店の、手に入りそうなの……それで、いいかしら」

垣根「ああ。任せる」

オタク「……ゲームの日付け直しとこう」

ぼっち「そうだ。パッチやブラシ出しておきましょう……ふふふ、折角だから綺麗にして当日に備えないと」

弓箭「もうすぐバレンタイン。はぁ……ですが、わたくしの学校では殿方にチョコレートなんて贈る方の方が少な……はっ!!」

弓箭「他の女生徒とは圧倒的な経験差とリード?! ふふふ……これはわたくしやりましたわ。このまま脱ぼっちしてしまいますのも時間の問題」

弓箭「確か今度調理実習もございましたわね。これはみなさんへのアピールのまたとない機会、いえ……
『まあ弓箭さんのお菓子のおいしそうなこと』『わたくしのと交換していただけませんか』『いえわたくしと!』
なんてふふふ……困りますわ〜放課後は…あら、今日は予定がございませんの。宜しければみなさんで……ふふふ、ふふ」

心理定規「あ。誉望君、女の子の照れ笑いよ。夢見がちな子は好きなんだっけ?」

誉望「ええと、手に持ってるのが仕込み小銃ってパラ下降要素じゃねえかなーって思います」

心理定規「チョコレートが欲しいならちゃんと言った方がいいと思うな。万が一、本当に箱だけかもよ」

誉望「ははは心理定規、なんか貰えるだけものすごく幸せなんスよ? そんな贅沢言ったら俺は限定ガチャがことごとく外れる呪いにかかりますって」


ドーモ。

お久しぶりなんだよ
チョコレートがお腹一杯じゃなくていいから食べたいんだよ
聖ヴァレンティヌスとチョコレートは別に関係ないんだよでも折角だからもらってあげるかも!
集めるのはめんどくさいし、イン>美琴なのうっかりしてBP使ったりするけどチョコに恨みはないんだよ!

>>1からバレンタインにおすすめの曲は
藤岡藤巻の「死ね!バレンタイン・デー!」だよ!

みなさん良い日曜日を!

やべえはじめて垣根爆発しろって思った、なんだお前ら熟年カップルか何かかコノヤロー
心理定規たんはこの程度で円滑に(もしくは自分に都合良く)出来るなら安いものよって普通にチョコくれそうだけどこれおもくそデレやんけかきねばくはつしろ

誉望は猟虎呼びだったような
にしてもあーんする二人可愛すぎ乙


えっとってなんだよなんでいいよどむんだよにやけるじゃねぇかこのりあじゅうちくしょう

ゴーグルがゴーグルな時間が長すぎたせいで
未だに 誉望「」 っ表記に違和感を覚えてしまう

わかる。ゴーグルはゴーグルと言うか、いっそGoogle?

ゴーグルはゴーグルでいいよ
もはやゴーグル以外あり得ん

二日遅れだけど つチョコレート
べ、べ、ベベ別にこれはssを読ませてもらってるお礼であって、>>1のssが好きだとかそんなんじゃないんだからねっ!

ディバゲに垣根きてるな

電撃大王では猟虎ちゃんがさよならしました

>>676
え?
ディバインゲート?

あああさげけないし
ぐぐったけどわーいチンピラっぽーい!メルヘーン
第一位くっそ内まただけどどうしたのどっか打ったの
まさか垣根につられてはじめない…と思ったけどそも頂点は人気投票するためにはじめたんだったね?
物欲センサー最大感度だからカブトムシの代わりにベイロープ2枚きちゃうような1だからもうガチャは恐ろしいんだね?

ディバゲのていとくんは正直使いづらいから正解かも!


ど、ドーモね
とりまたまってたやつね…

>>639
そうかー。読みやすくなるようちょっと気をつけてみるな?

>>640
あんときゃまだあけてなかったけどフライングおめ!
退場確定組も小ネタでくらいほのぼのさせたい。
組織の人間撃ったからって麦野さんにやり返されてもおかしくないんだよねらっこさんェ……
張りつい…よくみたらすごい時間な?
一人でも監視してくれるひとがいるとおもうとこころがガクガクしますね!
今年もよろしくドーゾ。

>>641
垣根はんぱねえな料理にすら未元物質の変化が起きるとは。
偶像の……さま!は主役が第一位ですし垣根は原作も登場からカブトムシまで噛ませとしてしか活躍してねえし。
まあうん困った顔の心理定規もかわいいよな!!

>>642
ちょっといみがわかりませんね
召し上がりたいのはカニバ的なのか料理か、それとも……でだいぶ意味合いが変わりそうな
ニポンゴテムツカシイネー

>>643
上手なダークマター?殺傷力が?それでも食っちゃうんかい。冥土帰しに連絡をしてからな!
いやー本当にみなさん垣根が好きですね
かく言う1も好きでしてね

>>644
ことよろ~
な!『スクール』もよろしくお願いしたいな!

>645
そうだな雑誌読んでないとなんのこっちゃーだもんな。
このとこテンション上がっててすまないんだね?らっこさん周りのネタはコミック出た時にでもああなんだこれかってして欲しいね?

>>646
だいぶフリーダムに小ネタやってるから特に気にしてなかったが一言あっても良かったかもなーって。レスありがと

>>647
よっしゃみんなで電撃大王読もうか!そして冬川先生にお便り出そうぜ


>>648
朗報。やったぜ。しかしなかなかのキラキラネームで一瞬オサレな能力名かと迷う。

>>649
゚     *. (_ヽ      +        。

 '  * ∧__∧| |  +
   . (´∀` / /       。  
  +  y'_    イ    *
   〈_,)l   | *      。

ガタン lll./ /l | lll    +  






>>655
一回きりのキャラでさえちゃんと名前があったりすんのに出てこないのはなんかあんのかなあ
ミステリアスなのも定規ちゃんの魅力だけど。

>>656
くっそー
心理定規ちゃんはまだ禁書界の名前で呼んではいけない例のあの人リストに並んだままか

ここのゴーグルくんはすげー事故ってるから正直誉望氏と一緒にするのは失礼な気がしている。
コーヒーに4:6でクリープしこたまぶち込んだような邪道SSだけどね、乙あり。
潰れておかしくなかった砂皿でさえ原作での存在がまだあるのにゴーグルェ……

>>657
メギドラオンでございます!のほうがこのm

>>658
『スクール』は垣根以外なら似合いそう。やっぱリーダーは本体のインパクトの前にはペルソナが霞むw
翼繋がりでルシフェル(はいてない)つけててもいいけどw戦闘の度に翼二倍だと自軍が笑い死にそ。

宇宙アルカナは垣根だとコミュ力が足りないから使うのはむずかしいとおもいます!
この世界じゃ上条さんくらいしか使えないんじゃ……
禁書のオチが右手の中の人を説得した上条さん自己犠牲そげぶで世界フルリセットか完全封印だったらどうしよ。
魔術も科学も異能の力は機能しなくなり学園都市はただの近未来都市として存在そのものが改変されました。アレイスターのプランに関わって死んだ人も不幸な人もこの世界にはいません。
みんなは何も知らず幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし……完全記憶能力持ちの少女だけは名前も知らないヒーローの顔を覚えていましたとかそう言う映画黒い玉や殺伐系魔法少女劇場版みたいなのはううっ……頭が

みんなペルソナ好きな。

>>659
科学サイドの伏せられてる人々は木原となんかあるんじゃないの?って感じするけど心理定規は謎だよな。
想像の余地があったほうが妄想ははかどるよね。
コードネームみたいでまた良し。某黒の組織みたい。

>>660
ていとくなのに、アドミラルなのに後発組にネタさでまけるとは

>>661
能力の汎用性とキラキラネームかな?>被り
幅広く何でも出来るなら第三位、第一位も負けてないけどなんでよりによって対策を立てられそうにない未元物質を標的にしてしまったのか。
喧嘩売ったのに命は無事なのは「いい度胸してんなテメェ」って具合に気に入って見逃してもらえたんですかねそうですか。

物動かすだけじゃねえんだよ!みたいなチート気味テレキネシストな誉望万化氏でさえ、垣根相手に未元物質のメルヘンさをネタに出来ないようだから
相当こてんぱんにやられたんじゃないかと妄想しておく。

暗部編での過去描写が待たれる。ですがそうなると一番可能性がありそうなのは誉望くんの走馬灯での回想でしょうか、
と1は既に決められた終焉に目頭をおさえます。


誉望ってなんだよ褒められたがりかよとぐぐったら名誉名声人望みたいな意味で御大層っぷりに吹いた。
キラキラネームの集まりかこいつら。
>>660の可能性ワンチャン今なら確率三倍。
不可視化、念動力何でもありに襲われて、バリエーション仕掛け満載の搦め手を圧倒的な力技で叩き潰す超能力者がみたいんですがいつ見れますか。


>>670
垣根ばくはつしろいただきました!
まあおちつけ心理定規さんならあらゆる策を仕込んでくるかもしれない。
熟年とか言うなよ!あの子まだ中学生ですよ?
乙あり

>>671
ここの元ゴーグル君には素で女子を呼び捨てってなんかハードル高すぎた。ノリで猟虎殿とか猟虎君ならいけると思う?ような?
小ネタでしか今のところ出せないので猟虎さんは推していきたい。こっちも別物感ハンパねえけど。ありっした

>>672
積極的に呼んでみてるが1もまだちょっと慣れないなー。
ゴーグル君に余計な属性がついちゃったから別もん感が強いんかね。

弓箭「リアじゅうー」
誉望「ばくはつしろー」

>>673
誉望「ggrks(ジト目)」

>>674
ゴーグル「垣根さんとカブトムシが派生元同じパラレル人格で通るんだし、俺も誉望万化の一側面ってことで押し切れる気がしないでもない。
つーかゴーグルを切り替えスイッチにした大能力者とかカッコ良すぎだしうらやましすぎだから。
『心理掌握』の物理verみたいな万能能力って便利すぎだろ」

>>675
ドーモー。
好きでもないのにお礼をしにくるとは>>675もなかなか物好きですな。べ、別に嫌がってるわけじゃないんだからね!?

>>677
それはもう、わかっていたことだ。決まりきった未来だ。
砂皿緻密の存在が弓箭猟虎の退場を確定しているのだからな!
ちなみにまだみてないきてない!konozamaってる!何のためのプライム!Y△M△T○かこんにゃろ不在票もねえのか!

最近夜になると目がショボショボしてPCできんのだがなんだこれ。呪いか魔術か。
どうすりゃいいんだブルーベリーか?
ってことで有名なヤツを

心理定規「みんなでお昼寝してたら「寝言がうるさい」「そっちの方がうるさい」って誉望くんと弓箭さんが口論になっちゃって。
どっちが本当にうるさいか録音しながら寝たら、
ゴ「垣根さんが死んじゃうよー!」
弓「ブルーベリー食べてるから大丈夫!♪ブルベリアイッ!」
ゴ「アイッ!」
なんて全く身に覚えが無い会話が録れてたんですって。怖いしどっちもうるさいよね」
垣根「え。ブルーベリー食った方がいいの?」

ひな祭りにひっかけた何かこう・・・ありませんかね

無能力者でスクールのスナイパーやってたとからっこさんぱねぇっす
ほんと死ぬには惜しすぎるキャラだよ
なんでリア充じゃない(思い込み)のに爆発しなきゃなんねえんだよクソァ
スクールにもっと出番くださいむしろスクールのスピンオフください

公式でもここみたいなノリのスクールが見たかったんだけどな…無理か

好きだったSSが落ちて過去ログ送りになってしまった俺にはもうこのSSしかないんだぜ

ドーモ。

頂点がWDイベントスルーしたからって忘れてたわけじゃないよ?ホントダヨ?
>>675ちゃんだけじゃなくてみなさんにもホワイトデーがあるのですよー

>>680
よく出るとはきいたけどはじめるほどじゃなかったかも!
ぱずどらにきてくれたらうれしいけどきっとこらぼのチャンスがないから難しいんだよ

>>684
垣根「は? 興味ねえ」
最大の障害と書いてリーダーと読む。
年中行事やイベントごとを追っかけるのも楽しそうだよな……なにそれどこのストラグルバトル?って気もするけど。スレが足らんね

>>685
リア充爆発……しない? 爆発するのはリア充じゃなくてぼっちの方だと!? 
オモイコンダラドツボ系自意識過剰真面目ちゃんかな……らっこさんはかわいいな!!

無能力者でスキルが狩猟民の追跡術ってなんだよゴールデンカ◯イかよ!ってぐぐったらラッコ(海獺/猟虎)ってアイヌ語なんだと。
かまちーの名付けセンス相変わらずすげえな!!
水族館のもふもふアイドルかわいい顔して字面おっかねえのな!

ばっきゃろう!らっこさんはスナイパー(初代)だぞ?
『スクール』のスナイパーと言えば死んだと思いきややっぱ生きててなんかステファニーとフラグまで立ててる砂皿緻密(二代目)だぞ?
『スクール』のスナイパー実は生きてた(八年ぶり二回目)かもしれない。

あのあれがお口であれしてなかったら頭があれしなくてらっこさんもまだ命は拾ってるかもしれないじゃないか!
なんかまだ可能性があるかもしれないだろ。
あんま遅いんで誉望氏が文句言いに来てたとかよ。爆風くらい大能力なら防御出来……そんなうまい話はねえな。
やっぱりらっこさんの88が空中でバラバラにッ!?


>>686
公式でこのノリはちょっと……いやーさすがに引くわーと1はそうなった場合の二次創作の存在意義とSSの存続ってやつについて考えてみようと思いついた瞬間めんどくなって即投げます。

いやでも1009事件あたりにはもしかしたら『アイテム』並には殺伐しつつも馴れ合う『スクール』のみなさんが……まずコミカライズでやってもらえるかですよね。
上条も御坂も出ないからとある科学の一方通行の方でやります☆とか言われたら例のアレを一巻から読まないといけないのでせうか。不幸だ


>>687
でもよお執筆再開するって言ってたじゃないかよ……書きたまったらまた立ててくれるかもしれない。そうだろお…


らっこさんも予定通りとうとう退場しちゃったし1も来月からどうしよっかなーって顔してる。
なんかたのしいことねえかな。
いやでも数年越しに『スクール』的には楽しいドリームランカー編でしたよ……ほんと



心理定規「……ハァ」

誉望「でもまだもう一回あるんスよね?」

心理定規「もういいわ。こうなったら、独立記念日までとっておこうかな」

垣根「ずいぶん焦らすな」

誉望「垣根さんは今回顔も出さなかったっスね。でも今になって心理定規を名前で呼ぶのもなんか照れくさいっつーかなんつーか」

心理定規「まったくもう。登場した彼女はともかく君まで……万化、ね。随分ご大層で生意気なお名前だこと。今日から君の名前は万よ。バン。わかった?」

万?「なんか神隠された幼女の話みたいになってませんか。俺だと桁が一つ多いっスけど」

心理定規「不満があるの?……あ、それならこれがいいわ。『諭吉』」

諭吉?「すっげーモテそうだし俺も大好きですけど元の名前要素が皆無っス」


窓のないおかしなビルに迷い込んだはずの少年が正統派ツンデレイケメンに導かれてバイトをはじめたり
上司役の女の子にやれやれされながら個性的すぎる神様どもの世話を焼いたりさせられるかもしれない異世界パラレルSSなのだろうか

僧正「良きかな……うっほほーい☆」




誉望「ホワイトデーは垣根さんがお仕事だったんでちょっと遅くなりましたけど」

垣根「場所もいつものファミレスだけどな」

誉望「俺からのお返しは…学園都市じゃ食べれない、外のお取り寄せスイーツにしてみました!」

心理定規「わぁ。おいしそう」

弓箭「どれから食べようか迷っちゃいますね」

垣根「俺のはそっちの箱だ」

心理定規「何かしらね?」

弓箭「何でしょうね? 開けても構いませんか?」

垣根「好きにしろ」

弓箭「わたくしのは……わぁ~ハンカチです」

心理定規「可愛い。きれいな刺繍入りね」

弓箭「ふふふ~。シェルモですね」

誉望「しぇるも?」

弓箭「シェルモチーフの略ですよ誉望さん。ご存知ないですか?」

誉望「貝殻って言えよ」

垣根「ラッコだからな」

誉望「あ。そこひっかけてるんスか」

心理定規「でも、ハンカチって涙を拭くものだから贈り物にはあんまりよくないって意味もあるらしいわね」

誉望「つまりこのお返しのメッセージは……『さようなら弓箭フォーエバー』?」

弓箭「何でそうなるんですか?! そうなんですか? わたくし、こんなに一生懸命尽くしてきましたのに?!」

垣根「いや? スパイダーシルク製、丈夫で汚れ落ちもいい。一枚あるといいだろ」

弓箭「よかったぁ~ありがとうございます。大事にします」


心理定規「私のは……香水かしら」

誉望「おおー。なんか瓶までお上品っスね」

心理定規「うん。いい香り」

弓箭「トップノートからラストまで、揮発の時間経過で緩やかに変化するものは多いですがこれは…更に体温や発汗などコンディションの変化で、人によってニュアンスが変わりそうですね。
最初はフローラルの中にほんの少しコンフェクショナリーさをのぞかせる、お花と砂糖菓子みたいな香り……心理定規さんにとってもお似合いです」

心理定規「ふふ。ありがとう」

弓箭「もう少し経ってミドルのニュアンスや香りの傾向がわかればマーキングばっちりです。わたくし人ごみでも心理定規さんを追跡できる自信があります」スンスン

心理定規「まあ。いざって時には助かりそう」

弓箭「えへへ。そうですか?」

誉望「らーっこくーん? ちょっとあっちのドリンクバー行こうや」

弓箭「ははははは、はい?」

誉望「空気を読めよこのぼっち女ぁ。お前のソムリエみたいなウンチク披露してる場じゃなかったろうが」

弓箭「心外ですね。わたくしなりに素敵なプレゼントを褒めたんです」

誉望「ったく。なんでこっちに呼んだか理解してねえだろ」

弓箭「誉望さんおひとりでも四人分の飲み物は用意できますし……ハッ、わざわざバレンタインのお礼だなんて改めて仰られなくてもいいんですよ? 
あんなの大したことありませんから」


誉望「チョコレートなら今年も軽く三〇〇〇は行ったっつーの。いちいち消費すんの面倒なんだよ今の一〇倍枠を用意してほしいね」

弓箭「ゲームの話じゃありません。きちんと食べられるチョコレートです」

誉望「クラスのやつのおまとめ配布のお義理にいつものこっちのノリで返したら『ありがとでもちょっと重いw 義理だからね?』って言われたんだよなあ。
知ってるよ。軽けりゃ文句言うだろうにこんにゃろう。リアル女子のプレゼントのウエイトなんか知るかー!」

弓箭「なんだ。他でも貰ってたんですか。それじゃあ本当に箱だけでも大丈夫だったんですね」

誉望「ちゃんと中身はありがたーくいただいたっての。有名メーカーのチョコレートなんてもうこの先貰えるチャンスないですからね、ええそれが何か?」

弓箭「誉望さん…それ、ご自分で仰って悲しくありません?」

誉望「ま、身内からの本命も、所属団体での義理チョコも、妄想のエアチョコもみんなイベント的には負けチョコなんだよなあ
勝者はカップルで黒幕はお菓子のメーカーなんですよねーねーねー」

弓箭「確かにバレンタインもホワイトデーも、リア充の為のイベントですよね……」

誉望「弓箭氏よ、それでも世の中には、クラスメイトや他の学年からも義理だかなんだかわからないチョコレートを山ほど貰う限りなく勝ち組な人がいるそうでな」

弓箭「まあ。そんなに慕われている殿方がいらっしゃるんですね。お知り合いですか?」

誉望「顔も知らない友だちの友だちに。例年はまとめて落とす、急に飛び出してきた車に荷物がひかれる……
今年は同居人にお菓子瞬殺されてやっぱり自分は食えないパターンだけどお返しはしなきゃいけないって毎度ハードなオチらしい。どんな補正がついてんだ」

弓箭「殿方も大変なんですわね」

オタク「はぁあ……」

ぼっち?「リア充……」

誉望「でーゆみやーなにのむー? 俺もたまにはブラックコーヒーにするか。俺の心みたいな、にっがいのにしましょうかね」

弓箭「わたくしはあえてあまーいホットココアを」

誉望「ミルクと砂糖は?」

弓箭「アリアリで」


垣根「で。どうだ。さっきあいつの言った通り、お前にあわせてオリジナルに変化する。面白いだろ」

心理定規「そうね……あなたって本当に、いい趣味してるわ」

垣根「そうかよ」

心理定規「あら。褒めたのよ」

垣根「だろうな」

心理定規「……ありがと」

垣根「お返しに礼なんていらねえよ」

心理定規「そうだけど、ね」



誉望「(よくわかったか弓箭、お前がくっちゃべってると心理定規がいつまでもお礼がいえな――ぐああ? クソ、深くもらった! このままじゃ…沈む?)」

弓箭「(はわわわわわ、よぼうさーん! メディック、メディーック!)」

誉望「(それよりバケツを…うっ)」


垣根「あいつら何遊んでんだ」

心理定規「しーらない」

ヴァレンタインデーはまだ分かるにしても(何でチョコなんだ?とは思うが)ホワイトデーは完全に「作った」イベントだよね。お菓子会社の陰謀マジムカつくぜ。

ではそんな二人にスティッキーなイベントを教示しよう
4/14、ブラックデーという

2/14、3/14のどちらも恋人なしに過ごした人同士が黒い服を着て集まり慰めあい
場合によってはそこで出会えたらいいね、というイベントらしいのだが

あいまいであやふやな記憶に基づいているので大嘘混じりの可能性も大だ

垣根が出たって事は超電磁砲は暗部抗争編やってくれるかな

生きてた、嬉しすぎる
今だけはゴーグルを全力で褒めたい

生きてた、嬉しすぎる
今だけはゴーグルを全力で褒めたい

生きてた、嬉しすぎる
今だけはゴーグルを全力で褒めたい

連投スマソ

いつものファミレスで思ったけど

メタ視点ではともかくSS内の登場人物視点で考えると
ラッコちゃん登場前までの話って、ラッコちゃんがハb…ぼtt…偶然ちょうどいなかった時のことってなるんだろうか

>>701
きっと喋らなかっただけで居たんだよ

おう、ゴーグルよ。いつでも俺がついてるぞ。ケツを借りるつもりで来い♂

暗部とはいえ、傍から見たら下手なオタクやぼっち高校生とかよりはよっぽどリア充に見えなくもない……


まぁ、遠くない未来でリアルそのものが消えるんですけどね!
泣きそう


>>693
おつありですことよ

>>694
チョコレートが食えんのはいいけど義理にもお返しって意味不明だよな!恋人さん共勝手にしてくださいだよな。
まあ浮かれるネタになるってのは評価してやってもいいよね。SS以外じゃ乗っかれないけどさ

>>695

ゴーグル「ブラックデー? いや、三次元のイベントとかどうでもいいし」

ゴーグル「えーっ!? 黒い服着た写真をラヴマ公式に飛ばすと抽選でドンマイグッズ(全三種)がお一つもらえる?! 青ピくんそれは本当かね! 俺の元・実況規制垢達が蘇るぜ!」

弓箭「黒い服を着てジャージャー麺を食べる……そんな風習まであるんですね。なんて、惨めな集団……そこまで独りでいることを強調して何がしたいのでしょうか」

弓箭「……でも、Saezuriで #あえてここで黒を着る勇気 がトレンドワードになってますわね」

心理定規「揃ったわね。それじゃあ打ち合わせしましょうか?」

垣根「何、お前ら今日はペアルックなの?」

ゴーグル(黒)「いやいやいや? 罪に染まりし闇色はメクちゃんのイメージカラーだしな。全然違います」

弓箭(黒)「ちちちちち違います!!」

こうか。

垣根はやっぱりカッコイーな!
いやーあのおっかねえイケメンが爽やかさんの演技したり「探したよん」とか言っちゃうんだなあと1はかつての垣根の姿を懐かしく思います。
ヤバさと気迫で圧倒、バックに未元物質チラ見せ、大物感出てるし何より今回は顔ちゃんと出てたからな!!顔が!見切れてない!
垣根は、やっぱりカッコイーな!!
久しぶりに白くも虫でもないオリジナルの垣根みたからそりゃもうテンション上がった。

>>696
あの後フレンダがご飯しにこなかったってのは、既に色々済んじゃってたからなのだろうか、と思ってたけど邪推が過ぎますかそうですか?
もしまだ終わってなくてやってくれるんなら全力で応援する。
フレー!フレー!ふ・ゆ・か・わ!
がんばれがんばれふ・ゆ・か・わ!


>>697

ゴーグル「いやあさすが大能力者ですよね。レベルが高いといいっスねえ何でも出来て。普段文句言っても仲間は見捨てない、誉望万化様々だよな!! 他人事ながら俺も鼻がたかいっスよ」
らっこさんが生きててほっとした。
いーい感じにヤンデレさんだったし。
>>700のらっこさんへの愛は通じた。案ずるな。

>>701
らっこさんはまだ参加してなかったよ!
だからハブでもぼっちでもないよ!!よかったねらっこさん!
それまで入れ替えでやってたメンバーの空席が久しぶりに埋まりそうらしいってはなしは多分どっかでしたと……思いま、すん。
してなかったらする。
スナイパーさん初代とか原作未登場のキャラは「居たらしい」、「気付いたらいなくなってた」でお茶を濁すつもりだったからなー。
このままらっこさんをねじ込んで、
しれっとすくーるの「ぼくらのなつやすみ(仮)」継続進行出来ないかちょっと考えてる。

>>702
今までの話で、黙って座ってるらっこさんがずっと一緒にいたら……辛すぎるだろ。ホラーだろ。

>>703
胸じゃねえしレンタルなの?わあフレンドリーさこわい。風紀委員さーん
もうすっかり春ですね。暖かくなってくるといろんなひとが、って通年そんなテンションなのかもしや

>>704
浜面の、新約に入る前からなんだかハーレムにしか見えないぞ?と同じからくりですね?
でも『スクール』も基本的にはきっと個人主義の集団だよね。
ぼっちが一人、ぼっちが二人……ぼっちも集まるとまるでなかよく群れてるように見えるのだろうか。

やめたげてよお。らっこさんは無事だったじゃないかよお。
誉望さんだけだよこの後黒枠におさまるかおさまらないか悩む人は

今度のイベントは暗部大集合だって?
上条さんがビームおばさんと羽が生える方の人を見たって?!
なんて言うから期待していたら大強は土御門じゃねえかああああ!
このシスコン!グラサン!指令書ドバっとおいけてこらぁ!

ってだけじゃあんまりなのでネタおっことしてきますね
いろいろと強引な自覚はあるけどまだ四月だから許されるね?
頂点のガチャ季節ものイラスト追加のタイミングのおかしさくらいには許されるといいね?



麦野「なんでまたこの面子で呼び出されなきゃならないのかしらね」

一方「知るか」

食蜂「でもこうやって集合力しちゃったんだからしょうがないわよねぇ。でも個室サロンでどうしろって言うのかしらぁ」

御坂「あ。またメールよ? えーっとなになに…
『「超能力者」のみなさまへ。昨年もお疲れさまでした。これから迎える新年度もみなさまの一層のご活躍、期待しています。ささやかながら宴の席を用意しましたので、存分にお楽しみください』
……主催が学園都市理事一同ってなってるけどこれ本当かしら? ねえ」

一方「…」

垣根「…」

麦野「…」

食蜂「えぇー…」

削板「飯食い放題ってやっぱ本当なのか。根性あんなあ、理事会」

御坂「あれ? なんでアンタたちそんなにテンション低いの?」

一方「なンでオマエは平気なンだよ。本当に差出人は理事だと思ってンのか」

垣根「仮に本物だとしても信用出来るかは別問題だろ。そこの監視カメラって本当にただの店の備品か? 向こうで馬鹿どもが腹抱えて笑ってねえ?」

麦野「うわぁ。あのバカ女ならやりかねないわー」

食蜂「あの女とか絡んでなぁい?」

削板「なーすげーぞ。これ好きなの頼んでいいんだよな!」

一方「早速食う気だぞアイツ」

御坂「まあ折角だからさ。つまんないこと考えてないで、みんなで楽しませてもらいましょうよ」

食蜂「今更疑心力を発揮したところで、意味はなさそうだしぃ……そうしましょうか?」


麦野「メニュー見た? ささやかにしたって酒の一つも出さないのかよ。シケた宴席だこと」

垣根「いや、幾ら無礼講っつっても限度があるだろ」

麦野「何、アンタそんなとこで真面目ぶりたいの?」

垣根「違えよ。俺はどんな時も、テメェの不始末を自己管理の甘さのせいにしたくねえだけだ。少々の酒くらいで堪える能力じゃねえが、おかしな言いがかりの隙をこっちで用意してやることもねえだろ」

麦野「そんなこと言って、その面で全然飲めなかったら笑えるけど。なあ?」

御坂「ねぇ、やっぱアイツって」

一方「俺に振ンな」

食蜂「う~ん。お酒に酔った気分が味わいたいなら、手はあるけどぉ?」

垣根「テレビのリモコンって、おいおい。いいのかよ」

麦野「へ~え? 面白そうじゃない」

食蜂「口にした飲み物をアルコールだと誤認させるくらい簡単よぉ。それに、精神のハードルを下げて酔った状態に近づけるだけだから飲酒よりは健康的なはずなんだゾ☆」

御坂「はー。催眠術で『これはお酒です』ってやるようなもんなのね」

一方「そンなン本当に効果あるのかァ?」

御坂「それはいいけど、アンタそれ自分に使っても平気な訳?」

食蜂「私の制御力はこれくらいじゃ揺るがないのよねぇ。それに、もし何かあっても記憶消去すればいいんだしぃ?」

垣根「覚えてなきゃいいのかよ。うーわー最低だなお前」

削板「何かよくわかんねえが面白そうだな」

麦野「ま。ハメはずしたっていいわよね」

御坂「そうね。校則とかそう言うのは忘れてたまには羽根伸ばしたって、ね?」

垣根「え。ちょっと待て、一方通行お前もっと向こういけよ。羽根伸ばしたらぶつかんだろ」

一方「オマエが縮めりゃいいだろォが」

削板「おっ。手伝うか?」

一方「いや、マジでは出さねェよ」


食蜂「寸劇はその辺にしてぇ、実行させてもらっていいのかしらぁ? リモコンだと効かない人もいるわよねぇ……それじゃあ順番に頭を操作させてもらうわよぉ☆」

一方「痛ェ!」ゴッ

垣根「づッ」ガン

御坂「あいたっ!」ゴン

麦野「チッ」ゴリィ

削板「つ…っとお危ねえ!」バッ

食蜂「ちょっとぉ? やりかえさないでよぉ?!」

垣根「今素で食蜂の額割るとこだったろ」

麦野「どこの戦闘民族なのアイツ」

御坂「何か変わった感じはまだしないけど……まあ、こう言うごっこ遊びみたいなのなら平気よね」

食蜂「なぁにぃ心配なのぉ? 御坂さんったらお子様ねぇ」

麦野「それともいい子ちゃん気取りかしら」

御坂「パ、親が人前でお酒は止めときなさいって言うのよ。まだ未成年だしそんなこと絶対ありえないんだけどさー」

削板「いい親父さんじゃねえか。子どもにちゃんと注意してやれんだろ」

御坂「うーんそうなんだけど、大人になってもって言うのよね」

垣根「お嬢様ってのは親まで過保護かよ」

一方「いや……ありゃ止めといた方がいいだろォな」

麦野「なにアンタ何かしってんの」

一方「……チッ、血は争えねェって言うだろォが」

御坂「え……なに、何その反応。まさかっ私の知らないとこでマ、あの人何かしたの?!」

削板「よーし飯食おうぜ!」

麦野「どうせ払いはどっかのお偉いさんでしょ。よしっ、パーッと飲んでやろっかな」

御坂「あーもう。いくら本当には酔っぱらわなくてもほどほどにしといた方がいいんじゃない?」

麦野「なによ。飲み比べとかしてみる?」

一方「酒の強さじゃねェとこ比べてンだろ。それ」


麦野「ほら。ぐーっといきなよ。もっとこう、ぐーっと飲んでさあ。もっと私を楽しませろよ」

垣根「ヒック、どうせ俺なんか……残念だとかメルヘンとか好き勝手散々いいやがって……何が惜しいイケメンだこんちくしょう、ぐすっ」

麦野「辛気臭いツラしてないでよね、ねえねえそのきれいな顔をジューっとやっちゃっていーい? これなら丁度タバコの火くらいよ大きさだけは」ジリジリ

垣根「あ?」

麦野「ちょっとだけ。ここんとこだけ先っぽだけ。炙ってもぉーいいかにゃあん?」

垣根「顔は止めろよばかぁ…ぐすん。俺からイケメンとってどーすんだよーろくなもんがのこらねーだろーがあぁぁ」

麦野「めそついて女々しいこと言ってんじゃねえよ! じゃあほらぁど・こ・に・してやろっかなー!!」

垣根「チッ、俺が腑抜けてっからこんなやつにもいいように言われて……内臓が、ないぞーって…くそおっ」

削板「いーっち」ゴクゴク

一方「ぎゃはッ見ろよォあれ。ここは地獄のいりぐちですかー? ってなァ。面白ェ、こっちは星がみえそォだぜェ?」ッェーイ☆

御坂「ヒック……ほらぁそれよりアンタも、もう一杯のみなさいよぉ」

一方「オマエに言われなくてものンでますゥー」プイ

御坂「なによおー! あたしのオレンジジュースがのめないっつーの? このもやしぃ!」

削板「にーいっ」ゴクゴク

一方「おおっとォ奪衣麦野が上取ったぞ、チキン野郎が三枚にオロされちまうンですかァー?」アハギャハ

御坂「ほらーもーいっぱいのみなさいってのこのばかー。なんであいつじゃなくてアンタなんかがここに座ってんのよー
このクソ第一位めは度重なる狼藉を働き美琴様まことに申し訳ございませンーって誠意をこめてえこれを一気に飲みなさいよぉおお!」ダァン!

一方「はいはいミカンを圧縮圧縮ゥ」

削板「さーんっこんじょー!! っぷはー!!」

食蜂「向こうはなんだか騒がしいしぃ、こっちはジョッキで三杯連続一気ぃ? お酒じゃないからいいの…かしらぁ」

御坂「よーしやるじゃーんそぎいたーっ!」カン

削板「こんじょーう!!」パーイ!

御坂「あははったのしくなってきたッ! ほ~らあのんじゃうぞおー☆」

削板「いいぜ。気合入ってんな御坂!!」

食蜂「なんだか熱い人たちは意気投合しちゃってるしぃ……」


麦野「ほーら暴れると余計なとこまでこんがりしちゃうわよ。ま、こっちはいい反応も期待してんだけどさあ」

垣根「どうせ『未元物質』仕込みだ。シャツも焦げねえよ。ふん」

麦野「なーに今度はスネてんのかにゃーん。なぁにいアンタ構って欲しいの? よーしじゃあ四つん這いになりなさい面白かったら相手してやるよ、って私がどかないと無理かこれ」

垣根「なにすんだよお踏んだら痛えだろ、別に痛くねえけど」

麦野「つまんないのー…あ。ほーらあかきねえ、アンタの爆笑もんのなっさけなーいとこ一方通行が見てるわよー」

垣根「は」

麦野「ほらほら。手振ってやるよ。おーいあくせられーたあー? 呑んでるう~?」ブンブン

一方「ンーw」フリフリ

垣根「うっ……」

麦野「お、泣く? 格上にダッサイとこ見られてないちゃうのお? 泣き上戸のて・い・と・く・ん?」ニヤニヤ

垣根「ばーか! しね!!」

麦野「お? やーっと抵抗する気になったかにゃーん?」ジジジッ

垣根「だーかーらー顔ねらうなっつってんだろこのごりらおんなぁああ!!」ガバッ

麦野「あ゛あ゛ん?!」

一方「ぷっふー。ぎゃっはァアイツら小学生かよォ」

食蜂「ねぇえあれってまずいんじゃないのかしらぁ」

御坂「なあーにいー? いいからアンタものめーっ!!」ガッシ

食蜂「ちょっ、もごっ!」

御坂「にゃははは~はは……ふにゃーいいきぶんー美琴さんちょっとつかれちゃいましたーぐでーん。ちきゅーのじゅーりょくにはぁ、かないませぇん」ベローン

食蜂「もぉ~みんな自由力が高すぎるわよぉ!」

削板「おーどうした?」

食蜂「あっちの二人をほっとけないんだけどぉ。御坂さんはこんなだしぃ一方通行さんは笑ってるしぃ…喧嘩ですめばいいんだけどぉ。
エスカレートしちゃって後で私のせいだって怒られたら嫌だわぁ」

削板「よし。ちょっと根性入れてきてやる。おとなしく仲良くしてろって言ってくりゃいいか?」

食蜂「でもぉ、一応二人ともあなたより実力者でしょぉ?」

削板「こう言うのは男の仕事だ。偉そうにふんぞりかえってるだけが強さじゃねえからな」

食蜂「…なによぉ。こんなところで男子力発揮してどうするのかしらぁ」

御坂「んーなーんかあの馬鹿みたいなこと言ってたわねえ~」

食蜂「はぁ」

御坂「んぐんぐ…ぷはー! なんでアイツはいないのよお! いくら御坂美琴さんでも呑みニケーションでまでビリビリしないわよ?!」

食蜂「それはぁ『超能力者』のパーティだからでしょぉ? なによぉ私だってねぇ――」


垣根「あー。ちょっと酔いさめたかも。なんだあの頭の芯揺らすうるせえ説教。お、水は飲んでも普通っぽいな」

麦野「ううー私の馬鹿ーーなにしてんだかあ。吹き飛ばしてやりたーい」グデー

垣根「なにそれ。いや、散々された俺の方が凹みたい気分だけどな?」

麦野「はー。やっちゃった。私酔うとさ、近くのやつに甘えたくなるのよね」チラ

垣根「は? あれのどこがだよ。いきなり人の顔面でBBQはじめようとするののどこが甘え癖なんだか。
んなこと言ってんならその上目遣いはさっき使っとくべきだったんじゃねえの?」

麦野「ほら、えーっと…食べちゃいたいほど可愛いとか言うでしょ。それね。アンタは不味そうだけど」

垣根「今考えたろそれ。つまんねー言い訳だな」

麦野「チッ。私みたいなのが…どう甘えたってどうせ可愛くなんてないだろ。だったら何したってさ」

垣根「お前も素直じゃねえな。女ってなんでみんなこう面倒くせえんだ」

麦野「今更この私が素直になんて……なれないわよ。特にあいつ…らの前とかじゃ尚更ね」

垣根「何照れてんだか。ドン引き確定なセリフが平気で吐けるんならもう一歩じゃねえの。さっきのお前じゃないけど、そう言う反応の方がよっぽどいいぞ」

麦野「何言ってんだこの……馬鹿」

垣根「おー、いいじゃん。予行練習だ、どうだ? ひとつ口説いてやろうか?」

麦野「おい」

垣根「あ?」

麦野「ちょっと飲み直したい気分だし。ボトル追加してやるよエセホスト」

垣根「かしこまりました、お嬢様」ニッ


削板「おっす一方通行! お? 今日は顔色普通だな?」

一方「ンー? あァ、酒じゃねェから気分は悪くねェ」

削板「なんだつまんねえな。またスゲー根性いりそうなのが出てきたら手合せしてえと思ってたのによ」

一方「(俺なンかしたか?)」

削板「さっきまでゲラゲラしてたのに盛り下がってんなあ」

一方「別にィ」

削板「あっちのやつらもそうだけどな。お前らみんな肩肘張りすぎなんだよ。余計な力がはいりすぎだ。もっと気楽にいこうぜ。な!」

一方「オマエ、酔うと暑苦しさが増すンじゃねェの」

削板「細かいことは気にすんな! よーしのもうぜ! 根性―!」カチャン!

一方「…根性ォ」チン




……



御坂「だいたいあの馬鹿はねえーばかー!」ダン!

食蜂「ばーかばーかぁ。不幸って言えばどんな目にあってもゆるされるわけじゃないんだゾ!」バン!

御坂「ほんっとにもーばかー! こっちの気もしらないでばかばかー!! うわーん!」

食蜂「ばかぁー! わぁああん!」

一方「……そンで、きっとあのガキも…そのうち、こンななって……」ミサカユビサシ

削板「うんうん。お前、今度はさっきまでの垣根みたくなってっけど平気か? のみすぎか?」

一方「それかァ……番外個体や麦野みたく品のねェことへェきで言うように……グスッ」

削板「ああ? うん。子どもの成長ってはやいな?」

一方「…芳川みてェになっても困る……ウウッ」

削板「うーん。よっぱらいの相手ってのはなかなか根性いるんだな」ポンポン

垣根「おっまえw それはマズいだろwww」

麦野「それでさぁ聞いてよお。でね、言ってやったんだよw ××を××……」

垣根「ぎゃっははは! だから、おかしいっつうのーぶっちゃけすぎだろーw」ゲラゲラ


食蜂「さぁって充分食べて飲んだわよねぇ。そろそろみなさん気分は落ち着いたかしらぁ?」

御坂「なんかつかれた…」

一方「あンだけ騒げばそォだろォな」

垣根「麦野。お前もうさ……酒飲むか、諦めるかどっちかじゃねえの? なんでエログロな下ネタが増えてんだよ」

麦野「あぁああクソがぁあああ!」ガンガン

削板「別にあれだな。あんまり変わった感じはしねえんだな? ほんもんの酒だと違うのか?」

垣根「さーて。そろそろ気分替えて何かするか? カラオケとかあるけど」

御坂「こんなのもあるわね。『王様ゲームぽちっと』」

食蜂「随分ベタねぇ。でも命令されるのは新鮮かもぉ」

麦野「あー、確かにあんまりやったことないわそう言うの」

削板「お前らみんな王様ぶってるもんな」

垣根「ふーん。面白そうだな。お前らに命令できんの?」

御坂「えーっと。王様はこの中から選ぶんじゃなくて、名前を入力するとここからそれに合わせた命令が出てくるのね」

麦野「なーんだ残念。面白オブジェになってもらえっかなあと思ったのによお?」

垣根「チッ」

御坂「アンタたちねえ…」

食蜂「名前なんて数字でいいんじゃなぁい? 私たちならそれでわかるでしょ」

削板「俺何番だ?」

垣根「六人しかいねえし繰り上げていいんじゃねえの」

御坂「じゃあスタートするわよ」

食蜂「最初の命令は何かしらぁ」

一方「はァ。くだらねェ」

垣根「どうせゲームだ。何が出ても恨みっこなしな?」


【6と 5が 2に 激熱おでんを 食べさせる】


麦野「なによアンタいきなりじゃない」

垣根「言いだしっぺの法則ってのがあってだな…クソ」

食蜂「操作力ならまかせてぇ☆」

削板「よっしゃあ!」


垣根「おでんきたぞー」

御坂「垣根さん…罰ゲームに使うおでんを自分で注文するってどんな気分だったのかしら」

麦野「本人に聞けば? 十三段分の階段上るよりはいい気分じゃないの」

食蜂「削板さぁん目隠しはできてるわよねぇ? それじゃあ、ど・れ・に・し・よ・う・か・し・らぁ…ストップ! それよぉ」

削板「これだな!」

垣根「げ。よりによって玉子かよ。すげえ熱い具じゃねえか。っつうかお前よく見ないで取れたな」

御坂「心の目ってあると思う?」

一方「コイツなら根性でやりそうで怖ェな」

食蜂「そのまま上げてぇ……そうそう、それで二〇センチくらい前よぉ」

削板「よし!」

垣根「あっちい!」

食蜂「もう少し右よぉ」

削板「こっちか根性!!」

垣根「ぶわっち! クソ!」

食蜂「あらぁ惜しいわぁ~更に下よぉ」

垣根「ぶっ、食蜂!」

御坂「いやー食べさせる気ないわよね」

麦野「その方が面白いけど」

一方「辛子」

麦野「ほら。あ、柚子胡椒とって」

一方「ン」

御坂「あ。大根。それちょうだい?」

麦野「ふぁいよ」

垣根「なんでお前らが普通に食ってんだよ!! あっつ!!」


【5が 4に 膝枕 して あげる】

食蜂「まぁ、相手が麦野さんでよかったかしらぁ」

御坂「あはは。たしかに男子にするのはちょっとね?」

垣根「こっちもほっとしてるっつうの。王様ゲームごときで不審者扱いとかされたくねーよ」

麦野「結構寝心地いいわ」

食蜂「どうもぉ」

麦野「しっかし……すっごい光景ね」ワッシ

食蜂「きゃあ?! ちょ、ちょっとぉ!」

麦野「いいでしょこれくらい。減るもんじゃないしい?」

御坂「どうせなら減らしてやって」

麦野「他人の胸って重いのね。うわーでか…アンタよくこんなのぶらさげてるわね」ユサユサ

食蜂「やめてってばぁ」

削板「あれって脂肪だろ? 邪魔なら鍛えりゃいいのにな」

垣根「あそこまであると普通にしてても邪魔そうだろ。おーすげー持ち上げてる」

一方「豊胸マシーンなンてのも意味わかンねェが……つゥかその辺にしとけ。罰ゲーム変わってンぞ」

御坂「ふ、ふーん! 何食べたらこんなになるのよ栄養ぜんぶとられてるんじゃないの?!」

麦野「ちょっと食蜂そのまま前かがみになってみて。お、見てみて御坂、顔に乗りそうじゃない? 写メ撮ってよ」

御坂「もう。はーい撮るわよー」カメラヲキドウシタゲコ

垣根「いくぞー、一たす一は~?」

麦野「むー」ピース

食蜂「なんなのこれぇ?!」


【変な語尾でしゃべる】

【にゃん、ゴザル、アル、常識的に考えて、ぴょん、ですの】

【4が ですの 3が アル 1が ゴザル】


麦野「ったく。ばかばかしいったらないわよね。『王様ゲーム』って言うんだからもっと面白くてよさそうなのに。いい加減に…」

垣根「むーぎーのー」ニヤニヤ

麦野「しろっつうんですの!」キリッ

垣根「ぶっ」

御坂「ぷ」

一方「いやァ、笑いごとじゃねェ…」

削板「なんだ、一方通行はもう忘れちまったのか?」

一方「笑いごとじゃないでゴザルゥ」

麦野「んんっw ぶふッ」バシバシ

御坂「一方通行はホント似合わないアルネー絶対こんなことしないキャラアルから余計ヨー」

食蜂「みしゃかさぁん」プフー

麦野「御坂こそ面白みにかけますの! どうせ一人だけ助かったなんて内心思ってるに決まってるんですの!」キリリッ

一方「麦野は開き直っているようでゴザル。諦めが早いにゴザルよォ」

削板「一方通行けっこーノリノリだな」

一方「何言ってるでゴザルかァ別にオマエらを逆にからかい倒そうなンて思ってないでゴザル」

垣根「一方通行」

一方「あァ?」

垣根「拙者って言ってみ」

一方「拙者その様に悪辣非道な考えなどこれっぽっちも抱いてゴザらンよォ?! 断じてないでゴザルゥ」

垣根「拙者w 拙者うけるww」

削板「なあ。この『常識的に考えて』って語尾なのか?」

麦野「さあ。どっかの誰かに似合わなさそうだけど。そんなのもあるんじゃね、あるんじゃないんですの?!」キリッ

御坂「もう止めてほしいアルヨー今度黒子にあったらうっかり笑いそうアルヨー」プルプル

食蜂「ぷふふw なんで麦野さんキリっとしちゃうのかしらねぇ。御坂さんちょっとかわいいわよぉw」

削板「こりゃあ麦野が優勝か?」

垣根「いや、勝負はしてねえだろ?」

一方「勝負でゴザルかァ? 拙者といざ尋常にィ」マイル

麦野「受けて立ちますの!」デスノ!

御坂「とんでもないことになてきたアルヨー」アイヤー

食蜂「もう。みんな優勝ねぇ」


【5が 1の 嫌いなところを 二つ告白】

食蜂「王様ゲームってこんなのもあるのぉ? わたしぃ、悪口なんていえないわぁ?」

御坂「アンタ、ひとには散々言ってくれてるじゃない」

食蜂「あら。御坂さんは例外力よねぇ?」

御坂「なにおーっ?」

垣根「むしろ二つに絞るってのが難問だろ」

麦野「ほら、ちゃちゃっと進めましょ」

食蜂「えぇっとぉ……顔、じゃなくってぇ目が怖いわぁ」

御坂「目つきは確かに悪いけど……ちょっとにっこりしてみたら?」

垣根「ほーら、笑って笑って~?」

一方「イヤだ」

垣根「まぁこいつの笑顔なんて赤ん坊がみたらショック死しそうだしな」

削板「もう一個なんかねえのか?」

麦野「でも、アンタたちお互い嫌いになるほどつきあいないわよね」

食蜂「そうねぇ……あ。その服装で近くはあんまり歩かれたくないかもぉ」

一方「クッ…!」

御坂「うっわ、そこ言っちゃうんだ」

麦野「随分ショックみたいだけど、今まで誰にも言われなかったのかしら。え、それもキツくない?」

垣根「食蜂。グッジョブ」グッ

食蜂「?」ビシッ

一方「クソがァ……」

削板「そっか? お前のもいいシャツだな!!」キョクジツキー

一方「オマエにそこは褒められたくねェ……」シマシマァ


【6が 4の 嫌いなところを 二つ告白】


削板「まーた悪口かあ? なんだ根性のねえ命令だな」

麦野「ゲームなんだし? 遠慮なくいっても怒らないわよ」

垣根「と」

麦野「あ?」

垣根「し」

麦野「ああ?」

垣根「何だよ。まだ何も言ってねえだろ」ニヤニヤ

麦野「てっめぇ…ニヤニヤやらしーツラで笑ってんじゃねえぞ?」

垣根「おっと悪いな。セクシーなのは今にはじまったことじゃねえんだ」ドヤァ

麦野「その顔ボッコボコにしてやろうか」

削板「うーんそうだな。麦野、口が悪いぞ。女らしくねえ」

一方「ド正論だな」

御坂「あと一つって、何だと思う?」ヒソ

食蜂「さぁ? この人の思考力って一番わからないわよぉ?」ヒソヒソ

削板「もういっこか…そうだな…化粧が濃い!」

垣根「んぶっふw」

麦野「テメェもかあああぁん? 確かにベースには大分被せてあるけどさあ仕方ねえだろ。あ゛あ゛ん?」

削板「お前そんなことしなくても十分美人じゃねえか。なんで女ってのは余計なことしたがるんだ?」

麦野「……うっ」

食蜂「麦野さんがぁ」

御坂「止まったわね」

削板「なんでだ? お前ら知ってっか?」

垣根「あれだろ? 女はああやって…ああ、気合い入れてんだよ。なぁ?」

一方「ン? おォ、そうじゃねェの?」

削板「そうか。そいつで気合い入れてんなら余計なことかもしんねーが、お前はそのまんまでもすっげえ根性ある女だ。俺は! そう思うぜ!」ドバーン

麦野「うん…まあ」

御坂「なんか、悪口だったのに褒めてお説教でしめちゃったわね」

垣根「けど根性とか気合いって女相手のほめ言葉じゃねえだろ」


【2が 5の 好きなところを 二つ告白】

垣根「え。一個しか浮かばねえ。どうみてもそれくらいしか美点がねえ」

御坂「えぇー」

麦野「ゲス」

一方「死ねよ」

削板「なんだって? 根性?」

垣根「なんだよ。じゃああえて言わねえで次な。うーん……あ! もしも能力交換しろって言われたらこいつにするかも。いい能力してるよな」

御坂「うわぁ」

麦野「さいってー」

一方「死ね」

食蜂「羽がたくさん生えるようになってもあんまり嬉しくないわぁ…」

削板「それより腹空かねえ?」



【1が 6の 好きなところを 二つ告白】

一方「ンー…」

麦野「随分悩んでるわね」

御坂「なんか褒める所はいっぱいありそうだけどね。いいひとじゃない」

垣根「褒めるってのがあいつには抵抗あんじゃねえの?」

食蜂「垣根さんってぇ、一方通行さんのことになると結構な理解力を発揮するわよねぇ」

垣根「あ? 俺は割と空気は読めんだよ」

麦野「はあ? あれで?」

垣根「読めたからって、それに俺があわせてやる義理はねえだろ?」

麦野「アンタ、舐めてんの?」

御坂「あっ、ねえねえ! じゃあ今アイツはどんな感じなの? 難しい顔しちゃってるけど」

垣根「そうだな。『この俺がガキ向け番組のヒーロー気取りみてェな野郎のことを褒めンのはてんでガラじゃねェ』……とでも思っているんだろうが」

麦野「キモっ」

削板「俺は別に気にしねえんだけどなあ」グー


一方「ンー、あァ。そォだな……余計なことを考えずにすぐ動けるってのは、なかなか出来ることじゃねェ」

食蜂「すぐ深謀力を巡らせちゃう私たちには、確かに真似出来ないかもねぇ」

麦野「はいはい。次は」

一方「後は……根性とかなンとか意味はわからねェがてめェの矜恃を貫こうって気構えは……大したモンだと、思う…ぞ」

削板「おし。一方通行、お前の気持ちはよっくわかった! ありがとな! なあ、飯頼んでいいか?」ググキュー

垣根「ぜってえ聞いてねえよこいつ。今のコメント腹の虫に全部持ってかれたぞ」

御坂「一方通行が人を褒めるなんてあんまりなさそうなのにね」

食蜂「どれだけ本能に忠実なのぉ?」

一方「もォいい。飯食ってろ」ハァ

削板「特別褒めてもらうようなことじゃねえしな。お前も肉食うか?」

一方「……食う」


【6が あらためて乾杯の音頭 をとる】


削板「お前ら! 新年度だかなんだかしらねえが……明日っからも根性みせろ! よろしくな!!」

御坂「まあ、何だかんだで一〇年くらい過ごしたみたいにはここの生活もアンタたちにも慣れっこよね」

垣根「そんなか?」

麦野「アンタ昼寝でもしてたんじゃないの」

食蜂「これからも皆さんとは、なるべくトラブルは抜きでよろしくお願いしたいわぁ」

一方「はァ。なンだこのめンどくせェノリ」



削板「よぉっし。超能力者に……乾杯ッ!!」

「「「「かんぱ~い」」」」

削板「のんのんもっかいだ。一方通行がやってないぞ!」

御坂「もー。またやるの?」

麦野「仕方ないわね」

食蜂「ほらぁ、早く混ざってよぉ」

垣根「うっわ、これだからモヤシは」

一方「関係ねェだろメルヘン野郎」

垣根「あぁ?」

削板「おーっしお前ら根性ぶつけあうのは後にしろ。いくぞー! ハイパーエキセントリックウルトラグレート……」


……


なんだか背中が痛い。
起き上がるとまあ、そのはずだった。
何故か床の上に寝転がっていた麦野はぼんやり目を開けた。
頭を起こすとぐらぐらする。
うっかり飲みすぎたか、いや…でも酒は飲んでないし。
いやーそれにしたって記憶飛ばすほど飲まないよなあ、と麦野は不思議に思いながら自分の周りを見回した。
とりあえず着ているものに乱れはないからひと安心…とも言えない。
麦野は何故かふりふりの白いドレスを着ていた。
レースまみれの清楚にド派手でなんだか女の子の永遠の憧れ、みたいですごくムカついた。
なんだこりゃあ着替えた覚えはないけど、いや覚えてないだけか?

「んげっ」

体を起こそうとしたら足元の方で変な音がした。
ついでになんか踏んづけたらしい。
そっちを見ると、床の上に垣根が伸びていた。
顔ごと思い切りうつぶせになってるけど、声が出たんだし息はできてるんだろう。
こっちも何があったのか。金モールだらけのミュージカル俳優みたいな格好で寝ている。
コイツは脱ごうとしたのか、それとも着る途中だったのか上半分がほとんど脱げていた。
その背中の上にちょうど麦野のヒールがめりこんでいた。

「……なんだこりゃ」

呟きながら部屋の中を見回すと他の連中もちゃんといた。
麦野を含めてこいつらも無事かどうかはちょっと判断しづらい。

まず一人、壁の近くには削板がうずくまっていた。
コイツは何故か半被を着ている。
ハチマキ巻いたお祭り野郎だけどちょっと違うよなぁ、と麦野は首を傾げる。
アイツも寝ているのか動かずじっとしている。
観葉植物の鉢を抱えたまま寝るとか器用すぎるでしょ、と麦野はちょっと引いた。

「むにゃ…ままぁ…えへへ」

「なによぉ…なんのために折角ぅ…」

ソファーの前で御坂と食蜂が並んで寝ている。
とりあえず。
超能力者はまともなところで寝ていないで、床の上でつぶれているようだった。

御坂は何故かウエスタンブーツをはいて西部劇の登場人物みたいだし、食蜂はチアリーダーのコスプレみたいでやっぱり意味不明な格好をしていた。
御坂は、食蜂の胸を片手でわしづかんで爆睡しているがきっと見ているのは色気のなさそうなガキ臭い夢だろう。
一体私ら何してたんだろうなあ、と眉を寄せても麦野にはやっぱり何があったか思い出せない。

食蜂はばらまかれた自分のリモコンに囲まれて寝ていたから原因はそれかもしれない。
ついでに。
食べもの空のグラス、なにかゲームでもしたのかおもちゃや、クラッカーの残骸リボンに紙吹雪『今日のお楽しみ』や『残念賞』とか書かれた変なタスキ。
そのほかごちゃごちゃに汚れたテーブルの上に、アルコールの空きビンがいくつも混じっていたようにも見えたが、多分気のせいだ。
きっと。

さらに顔を動かした麦野の頬がひきつる。
ああ、何があったかわかんないけどこれよりはましよねえ…と妙なところで頭が冷静になった。
この中でも一番いい数字を頭上に頂いている一方通行はなんとまあ、セーラー服を着て転がっていた。
もちろん女子ので、この中で一番哀れで愉快で最高にわけがわからない格好だ。
ご丁寧に髪にはお花のピンまでつけて、近くに転がっている御坂に脇腹を蹴られて小さくうめいているがまだ寝ているのだろう。

そうでなければ今頃、建物ごと嵐の中につっこんだような惨状に襲われていてもおかしくない。

「はァ? そっちが、いきなりぶつかって――」

性別不詳気味でおやすみになっている第一位は。
今日び化石並みに古臭い、曲がり角でぶつかる系ヒロインな夢でもみているんだろうか。食パンのおまけつきで。

「頭いた…もっかい起きたら全部夢になってたりして……」

そんなこんなの意味不明空間で。
なんかもうすっかり考えているのが嫌になってしまった麦野は、寝心地の悪い床の上で再び目を閉じた。
このタイミングで目を覚ましたのが運が悪かっただけだ。
もう少しくらい他の連中と同じように幸せそうに夢の中にいてもいいだろう。
そう勝手に決めつけると彼女は第一発見者の責任とめんどくさそうな現実を放棄してしまうことにした。


ドーモ。

王様ゲームは一人さびしくサイコロ振って決めた。
この春から色いろスタートしたひとも、安定継続中のひともそのほかみーんなよろしくなーって1は1はもっともらしいことを言ってお茶を濁そうとしてみたり。

>>573小波さんが垣根と麦野、削板と御坂ものませようぜ!ってなぐあいのことをいっとったのを思いだしたのでそんなかんじになった次第


責任放棄wwwwwwww

垣根君一方通行のこと好きすぎだろ

むぎのん酔い方が某ハセガワでワロタ、ビール半分燗1本までならトンデモかわいくなる可能性
でもひとりサイコロ振ってたことにもっとワロタ、小ネタにそこまで……乙ww


ですのは禁書SSの鉄板ネタではないかと思うんですの
垣根「俺の未元物質に常識は通用しねえ、常識的に考えて」

昔は仲良しレベル5や女装一方(百合子)ネタ結構あったし、垣麦SSなんかもあったよなぁ……
なんてこと読んでて思ってしまって、ちょっと悲しくなった

相変わらず垣根がかわいい
お姫さまむぎのんもかわいい
おかしな集団で削板はもうまともな人にしか見えない

潜入で女装待ってる


百合子と夢でぶつかったのは俺

GW中の更新はないんですかね
こどもの日の何かとか……

>>729
お前が子供になるんだよ!

>>730
こえーよw

え?垣根が死にかけのゴーグルを未元物質で助けたけど何故かショタになったって?(幻聴)

そこはショタ垣根に振り回されるスクールだろ!

そういえば>>222はやらないのかにゃーん


>>723
見た目はパーフェクトにせれぶりちーなのに女子中学生に早漏!とか言っちゃうわで中身があれなイメージ過ぎて。
一皮むいたらおっさんなのはフレンダ(偽)より麦野だったのでは?と疑うこの頃。

麦野「だってダルイし」
一方「だってじゃねェよ!! なンですかこりゃァ! 俺のキャパ超えそォなンですけどォ?!」

とりあえず次に目を覚ますのが第一位でさえなければ何とかリカバー出来る可能性もまだある

>>724
学園都市の闇で悪党(笑)厨二のおまけに天使でとっても同類だからな。シンパシー不可避。

>>725
「ねえアンタ名前なんて言うの?」って言わせりゃ良かったのか!ちくせうその手が。
耳を噛みたがる麦野に絡まれる垣根とか想像すると辛い。腹筋が。
人数ぴったりだしランダムさがあったほうが書いてても楽しいかな……と。いいだろw1はさびしいやつなんだ。
乙ありです。
おかげでお前が言うな感満載の「常識的に考えて」であえて煽ってくる垣根はネタにしそびれた。
いっそ逆でもいいかも。

御坂「そこはほら……常識的に考えてさ」
麦野「やっぱそうよね。常識的に考えて」
食蜂「でもぉ、理解力が足りてないと困るわよぉ? 常識的に考えて」
削板「根性でなんとかならねえか? 常識的に考えて」
一方「いや無理だろ。どっかのメルヘン野郎じゃねェンだから。常識的に考えて」
垣根「テメェら……そんなに俺が嫌いか。常識的に考えて」

常識ってなんだよ。なんだなんだよなんですか。奇妙な世界に迷い込んでSAN値が下がりそう。常識的に考え…て……

>>726

おつありですの!
くっそw
そこはかとなく馬鹿っぽいのがじわじわくるけど、普通のことを言ってるだけにも、無駄にカッコいいような気もしてしまうこのくそこんw
未元物質イリュージョンか。
垣根は、比べられる常識お持ちなんですkアッ……ハイ
SSも色々あったよなー。クロスシリアス再構成もちろん、みんなでワイワイしてんのぐう好き。

>>727
垣根がかわいいとよく聞くけど垣根はかわいいのか。
かわいいのか、カッコイイのか。
外道なのか、意外といいやつなのか。
貧乳派なのか、巨乳派なのか。
メルヘンなのか、メルヘンなのか。
真実は白いカンカン、じゃなくてカブトムシの中にあるのかもしれない。
ふりふりむぎのんは、BBA俺だ!結婚してくれ!なノリでも笑えるとおもう(小並)
乙ありです。
あれっすね例の安価ですよねそうですよね大変お待たせしてる。
ここまで読んでくれたあなたはいつもありがとう、ならお判りだろうが…
1は思いつきでネタをぶっ込むんで話をまとめるのが壊滅的に下手ですっ!
なので。結局頭と尻尾をまとめようとしてたはずなのに、どうして垣根がラーメン食ったり意外な特技が披露されてるんだろうと思う訳よ。
潜入にひつようそうな装備は責任もってなんとかしたよ!!あいつを生贄にしてな!

>>728
ありー
転入生の席は……728の隣が空いてたな。

>>729
なかったですね面目ねえ
こどもの日はひな祭りよりはなんとかなったのでせうか……?
菖蒲湯って昔入ったけど変にスパイシーな匂いするから嫌がられないだろうか。

>>730
ちょっ理不尽www
いや待てその手がまだだったな!!
よーし。729も子どもになれるように考えとくな!できたら!
『スクール』のこどもの日か……もうイベントは関係ないし日付とかどうでもいいよね(脱力)

>>731
助けてママー!?
いや今度はママにされてしまうのか
この中にどなたかお母さんはいらっしゃいませんか?!

>>732
誰得なんだそれは(困惑)
ゴーグルはまだ元気ですよ!残念。サンドリヨンの後続にはなりません。

>>733
それはとてもいい、と1はここのレスのみんなってネタくれるからいいよねありがたいねと自らの首を絞めにかかります。

>>734
おしおき確定ですよねお待たせしてます



学園都市の中に数ある多くの学校。
その一五倍近く広大な敷地を占有している、白くて四角いシルエットの建物が並ぶその一角。
校庭は博物館のような真っ白い石畳風。
観光ガイドの風景写真や映画に出てきそうな地中海の街並みをそのまま持ってきたような雰囲気の場所だ。
戸板ひとつとっても熟練の職人が仕上げた一級品……に偽装されているだろうドアはそもそも原材料からしてつくりが違う。
厳選された木材ではなく炭素繊維の加工品だろうしそれだけでなくあちこちに最新技術をこらした設備が配置されている。
外観も雰囲気も一切損なわないように徹底されたデザイン。
露骨にセンサーとセキュリティチェックを張り巡らせたいかにも近未来的な面をアピールしている長点上機学園とはその辺りの美意識が違うらしい。
学園都市の有数校、『五本指』と言っても校風は様々なのだろう。
あちこちのセンサーで人の出入りは常に監視されているのだろうが、ここにはそう言った意識をさせないような配慮がなされていた。
温度や湿度の管理、空調を徹底し、快適な環境で美しい花を健全に保つ温室のように。

昼間なら学生にあふれている、いや少女しかいない街。
その校舎の一つ、すっかり明かりを落とした常盤台中学の中を歩くのは指定のガードマンの制服を着た人物。
本来なら施設柄、女性の職員が身に着けるはずの衣装を着ているのは場違いな少年だった。
たとえプロの治安維持要員であっても、男性は動員されないのが当たり前のこの場所ではいっそ異常だ。
おまけに定時の巡回にしては少し様子が違う。
懐中電灯どころか明かりひとつ持っていない。
それを苦にした様子もなく、何かをそっと探す様に彼は静まり返った廊下を歩いていく。

こっちも異常なしです、と無線通信に答える。
彼は暗部組織『スクール』に所属する能力者で今は任務の真っ最中だ。
学園都市でも随一の能力開発技術を誇る常盤台中学から直々に話があったと制御役は告げた。

はじまりは五日前。
校内で立て続けにおかしなことが起きはじめた。
コンピュータの無断使用。施錠された教室、図書室、資料室、研究室への進入。校内のセキュリティランクB以上のファイルへのハッキング。
そのどれもが、生徒や学校関係者の手によって行われた。
所属する風紀委員や警備員によって捜査が行われたが容疑者は口をそろえて「覚えがない。自分の部屋で寝ていたはずだ」と証言。
うそ発見器より正確無比な常盤台の女王の手による調査の元でも証言が虚偽だと断定できず。
「謎の夢遊病徘徊事件」は生徒の不安を煽り、不要な憶測と信用の低下を呼び込むこと……常盤台の名誉に傷がつくことを防ぐため情報統制と最適化がなされた。
その結果、限られた関係者のみが知ることとなったらしい。
そうして超能力者を二人も擁する名門であっても内部で解決できない問題が暗部組織である『スクール』の元に回された。
事件に関係のありそうな不審人物、犯人の確保と原因の解明が望まれている。
それも極めて内密に。
恐らくは依頼のきっかけの一つ。
校内の二人の能力者より序列の高い、組織のリーダーは。
お嬢様がたが寝静まった深夜に校舎の中をうろうろするだけの簡単な仕事の退屈さに早くも嫌気がさしはじめているようだった。



「何かいいっスねえこう言うのも。ほら、スパイムービーみたいじゃないスか?」

おかしな人物もなし、不審な物音もなし。
まるで異常なしオールグリーンの現在。
少年の方にはのんき過ぎる発言をこぼすくらいには余裕がある。
ばーか。死ね、とヘッドセットのスピーカーから悪態が返された。
彼が着ているのは警備会社の制服。
被っているのはいつものリング状の『ゴーグル』ではなくてサバイバルゲームなんかでも使われそうな暗視ゴーグルだった。
『ゴーグル』なら、特撮ヒーローのベルトよろしく外部パーツの変更で録画はもちろん赤外線、サーモグラフィ、その他様々な機能を追加・補強出来る。
さらに、カメラをあちこち動かせば一人で複数のポイントを同時に捜索も出来てとっても便利なのだが。
女子学生の巣窟『学舎の園』と言う場所柄、残念ながら撮影機材の持ちこみは事前に断られてしまった。
また、その時リーダーから
「こいつには女の着替えを覗く趣味もねえだろ」
と余りありがたくないフォローも入ったのだが、もちろん許可してもらえなかった。
なんだか持ち主への誤解が一層深まっている気がしたが、少年も今まで訂正を挟むことがなかったのだからしかたない。

消灯時間からずいぶん経っていることもあってか、どこにも生徒どころか人の気配がない。
ゴーグル無しの少年は腕時計に目をやる。
表示された時刻は午前一時一三分。
いつもなら夜更かしして深夜アニメに備えている時間帯だ。
こう言うところで暮らしているお嬢様ともなると二四分のアニメを見るのに映画館なみのシアタールームを使ったりするのだろうか。
と、くだらないことを考えながら歩いていると前方に何か動くものが見えた。
少年は慌ててすぐ近くの曲がり角の先に潜む。

そのままこちらに向かってきた人物はまっすぐに廊下を歩いて行った。
無意識に口元を手で覆いながら少年は角から様子をうかがう。
わざわざ軍用ゴーグルを頭につけているのはこのためだ。
電灯を持っていたら、向こうからも簡単に見つけられてしまう。

前を歩いているのは後姿でも一目してわかる、気品爆発常盤台の制服姿。
校則違反のスリルと誘惑に負けてお忍びで深夜の散歩をしているお嬢様か。
それとも探している「深夜に徘徊する不審人物」の方か。
いきなり目標の背中が遠ざかる。
標的が走り出したのだ。
気づかれたか。
ちいっと舌打ち毒づくと少年は足を早める。
緊迫したシーンにありがちな靴音は広い廊下には響かない。
ソールに使われた吸音素材は少年の乱雑な足運びでさえ、猫の足元の様に静かにしてしまう。


「待て!」

一声だけ告げると愚直にただ後を追いかける。
彼は相手を即座に取り押さえることはしなかった。
巡回を装って校内を闊歩する言い訳として着ている服だが、この格好で能力を使ったら警備の人間でないことはすぐにばれてしまう。
だが。
そんなことを考えている場合ではない筈だ。
相手のシロクロは関係ない。
こちらが発見された時点で迅速な確保が最優先、これは『スクール』の正式な任務であるからして。

さて。
走りながら少年は状況を軽く整理する。
相手は一人……恐らくは女子中学生。
動く標的を捉えること自体は難しくない。
能力開発を受けて『念動能力』を身につけたこの少年なら「コロンブスの卵」も楽々成功する程度のコントロールは出来る。
しかし自分も走りながら、逃げ回る「生卵」をヒビを付けずに奪い取れるか、と言われると途端に難易度が上がってしまう。
彼の現在の能力規模で言えば、卵を一つクランプでも使ってつまみあげろと言われるくらい難しい。
ついでに視界も狭い。
視覚頼りな能力者としては、コマンド設定後のエンターキーを押す前に再度確認が必要といったところか。
卵をつかむ力が強過ぎると当然殻は破れてしまう。
場所が悪くても同じことだ。
相手が練習用の生卵ではなく生き物で、もしかすれば無関係の生徒かもしれないと言う可能性を含めると……。

並んだ条件の中に悪いものが重なっている。
しくじった場合の嫌な、それも最悪の想像に陥りそうになった少年の胃が縮みあがった。
わずかに込み上げる吐き気をこらえて、頭を振る。
マイナス思考は演算の妨げになる。
頭で考えたように能力を動かすのに。
実現したくないイメージを膨らませていたら思考が鈍る、動きは止まる。
自分のパフォーマンスをつまらない想像一つで下げてどうするのか。うまく切り替えなくてはいけない。
後一押し、言ってみれば自信が足りない。

能力を健全に伸ばそうと思うなら、時間割り通りの開発を受けるのはもっと根本的な話だが……これは今は不要な問題だった。
面倒なルートに逸れそうだった連想ゲームを即座に終わらせると、少年はそのまま走り続けた。
追跡から五〇メートル追うごく短い間にそうして結論付けたのは。
足で追うのが一番安全な手段、だった。
その辺のなんかお高そうな棚とか植物の鉢やら置き物なんかの遮蔽物を操作して足を止める手もあるが、一応は極秘任務だ。
あまり騒がしくするわけにもいかない。


「(不審人物を発見、現在逃走中。現在位置、C-2-17-5付近…増援頼みます!)」

無線を切り替え、別の場所で待機している心理定規に連絡。
対象は逃走に向いた能力を使えないのか、それとも校内には能力使用禁止の規則でもあって、それを大真面目に守っているのか。
インドア派寄りを自負する少年でも女子の足にまかれることはなかった。
建物の端まで追ってくると、廊下の左手にずらっと窓が並ぶ。
少ないとは言っても街灯や月明かりが視野にちらついて眩しい。
少年は暗視ゴーグルを外した。
前を走る生徒の白いシャツの袖が暗がりで目立つ。
それを頼りにひたすら走る。
常盤台生の内部寮の近くまで追い詰めた。
あと一息、と言うところまで近づいた。
少女らしき影を後を追って角を曲がると。
そこには誰もいなかった。

「消えた……だと」

肩で息をしながらぼんやりと呟いた少年は片手を上げかけて。
止めた。
普段の癖で能力を使ってゴーグルを起動しようとしたのだが今は馴染んだ感触は頭の上に無い。
この校内には彼の周辺機器をほとんど持ち込めていないことを慌てていた頭でやっと思い出した。
しかたなく自分の両目だけで周囲を確認するがさっきまで追っていた人影は見当たらない。
この校内ならいつどこに居てもおかしくない制服姿だが、消灯後にそんな格好をしているのはおかしい。
少年は息を殺して不審人物を探すが寮棟の暗い廊下にはドアの開く音一つしない。
逃げていたやつはこの並んだ扉のどこかで暮らしている生徒か、それとも隠れているのだろうか?
ほとんどの部屋はルームメイト制になっている筈だ。
自分の部屋に突然誰か入ってきたら気付くだろう。
そんな非常時にうら若き乙女が二人とも爆睡なんてほわわんで平和ボケな話は幾らお嬢さま学校でもないと思いたい。
ガードマンのコスプレをしていても、深夜にお嬢さまの部屋を一つひとつ訪ねていいのか。
制服姿で隠れているような人物があっさり見つかってくれれば話は早いのだが、その前に騒ぎになってしまうかもしれない。
生徒たちにバレて、その学園生活に支障をきたすことがあれば。
なんの為に『スクール』が日常の水面下である暗部の任務を受けたのか、その意味を問われてしまう。
一応その辺を他のメンバーに確認すると一旦戻って来いと言われてしまった。

「これ、は……怒られるな」

予知能力がなくてもわかる、暗い未来のヴィジョンにすっかり足を重くしながら。
ゴーグルの少年は来た道をとぼとぼ戻っていった。


「えーっと今回の依頼だけど。二日目の今日も成果はさっぱり、おまけに対象とみられる人物は発見したけど確保出来ず。で、いいのよね」

「まことに、申し訳、ござい…ま……せん…ぐえっ」

帰還一撃目、入室即土下座を華麗に決めていたゴーグルの少年が動いた。
言われてからでは威力の半減する先制謝罪攻撃……自主正座から深い礼のコンボ技。
床に座った折り畳みケータイみたいになっているゴーグルの少年は潰れそうなカエルそっくりなうめき声を絞り出しながらさっきからずっとリピート設定されている謝罪をしていた。
心理定規は制裁前のデモンストレーションをしている少年から垣根に目を移すと返事を待っていた。
リーダーはうざったそうに頭を掻いてから、パソコンのモニタへ首を振った。

『本日の任務ごくろうさま、と言ってやりたいところだが、お前達がここまで使えないとは予想外だった……こちらも対策を講じている。先方と調整役を交えた話し合いを――』

「勝手にやっとけ」

制御役の話をさえぎって垣根は席を立ってしまった。
その背中に心理定規が困ったように声をかけた。

「あ。ちょっと」

「今夜はこれ以上やることもねえだろ。寝る」

うんざりしたようなリーダーはあくびをするとドアに手をかける。
ふと。
思い出したように、

「頭は上げとけ。背骨が折れるぞ」

ドアを閉める前にそう呟いた垣根の背後で床が大きくきしんだ。




朝になって。
組織メンバーからの携帯電話の着信(なんとも嬉しくないモーニングコール)で目を覚ました垣根が『スクール』で使っていた部屋に向かうとそこにはおかしなものが置かれていた。
垣根の在籍している学校のものではない、学生服だった。
学園都市の人間のうち八割は学生だ。
学生服なんてそう珍しくもないのだが。

半袖のブラウス。
ノースリーブのサマーセーター。
その胸元には常盤台中学の校章がぬいつけてある。
そしてグレーのプリーツスカート。
繰り返す。
スカートが置いてある。
そう。

女子中学生の学校指定服だ。
きちんと畳まれた夏服がそんなところに置いてある意味がわからず睨みつけていると、しばらく様子をうかがっていた心理定規がため息をついた。

「制服を……ね。用意してもらったのよ。あなたでも着られるようにって身長にあわせて大きめにしてもらったから」

「……一応聞いてやるが、なんで制服なんだ。しかも俺かよ。お前らとうとう頭がどうにかしやがったのか」

「追って説明するから。とりあえず、直すところがないかサイズをチェックしなきゃいけないらしいから着てみてって」

はあ? といらついた視線を向けられたが心理定規は首を振って、後ろに置かれたパソコンを仰ぎ見た。
いつものエージェント、『スクール』の制御役を自称しているおかしな『電話の男』との回線がつながれていた。
なんだか画面がいつもと違ったが、垣根はとりあえずひとこと文句を言ってやった。

「普通説明が先だろ。何がどうなってやがる。おまけになんで俺が着る前提なんだよ」

【ごちゃごちゃいってないではよせいw】


何故かいつもの男の声ではなく、棒読み口調の女の子の声で返事があった。
画面に表示されたほぼひらがなのメッセージに垣根の眉がつりあがる。

「すんません! すんませーん!!垣根さん! 中身あれでもガワは俺のメクちゃんスから勘弁してください!」

なんだコラ、と今にも『未元物質』をお見舞いしそうな垣根に床の上で土下座耐久レース(本日二回目)を個人開催していたゴーグルの少年がすがりつく。
もちろんそんなことで怒りがおさまるわけがない。
見かねた心理定規の説明によると。

ヤツが今朝になって声が出せないので音声のみの通信が肉声ではないと言ったら、ゴーグルの少年がお迎えしたばかりの罰音メクちゃん派生ソフトに練習させたいと言いはじめたのだそうだ。
メールやボイスチャット用の文章読み上げ機能をリンクさせ合成音声に頼る『電話の男』は真面目に仕事をしているモードをすっかり切り替えたのか、煽る姿勢全開でキーを叩いているらしい。
先方との話し合いが長引いて話過ぎたうえに風邪気味だと言い訳していたが。
声が出ないのは別の理由だろうなんてのは今更隠すことでもなさそうだ。
おおかた、この話を聞いた『スクール』の面々のリアクションを思い浮かべて爆笑していて喉を痛めた、とかその辺だろう。



「服をどうにかしたところで、俺は男だからな」

常識的どころか当たり前にもほどがある大前提を垣根は掲げる。
あれれー? 暗部の人に依頼したのに犯人が捕まらなかったぞ困ったなーよーしなら潜入任務にして確実に確保してもらおう、なんて話になった……誘導されたとしても。
唯一の適任者である心理定規ではなくなんでまた垣根なのか。
矛先を向けられた心理定規はつまらない質問をされたように首を振った。

「私のレベルじゃ、あの女王のいる常盤台で好き勝手させてもらえないのよ」

精神干渉が出来る能力と言っても、確かに心理定規では超能力者の『心理掌握』には敵いっこない。
おまけに女王の周りに侍る最低でも強能力以上の、働き蜂として洗脳済みの能力者たちと何かあったら形勢は圧倒的に不利なこともわかりきっている。
それでも。
何故垣根が。
何故女の格好で。
常盤台に潜入しなくてはならないというのか。

「流石にそれを着せただけで『学舎の園』に放り込むなんてことにはならないらしいから安心して」

「既にすげームカつくんだけど」

「後はこいつがあるんスよ。特注のボイストランスミッターで声も変わるみたいっス。チョーカーの裏で声帯をスキャンして、干渉波で声の波形を変える仕組みらしいっスね」

「つけてもなんともならねえけど」

「使用者認識用の起動コードを設定してもらってるんスけど、ちょっとこれ読んでみて下さい」

「あ? ……『抱いて……タイトに』?」 

渡された紙に書いてある言葉を読み上げた途端、発声している垣根の声ががらりと変わった。

『なんだこれ』

若い女の声で首をかしげる垣根の横で、一人ゴーグルの少年だけが急にテンションを上げていた。

「すげー!! 初期設定H原みたくしてって言ったら本当になってる!! チョーカー型の発声器って言ったらセリフはこれだよ半熟卵! 『スクール』の技術班ヤバいっスね!! あ、音声タイプは変更出来るらしいんで、後で好みで調整して下さいっス。お好きなCV.でどうぞ」

どうぞとかどこ向けの発言なんだかわからないが。
おかしな作業についやされた組織の人間の労力のすばらしい結果に少年のスイッチも入ってしまったらしい。

『勝手に何仕込んでんだお前』

「うわー!! ちょっとあの、俺目つぶってるんで『あんた馬鹿ァ?』って罵ってもらっていいですか。デフォが至高なのは勿論だけどあっちもちょっと気になってたんだよなー! 最終回のパラレル展開っぽくなる筈!」

「あー、あー……よし。お前、本当に救いのねえ馬鹿だな」

「垣根さんそれ地声、って痛い? ぎゃああなにこれ頭、頭痛いっス!」

目を閉じたまま悲鳴を上げる少年の頭は垣根にがしっと掴まれていた。
そこに更に、今まさにムカついているだろうリーダーの苛立ちが上乗せされて暴力的にねじ込められようとしている。

「元はっつうか、お前があん時捕まえてればこんな目に合わなくて済んだんだよな?」

「…………はい。俺がチート級の念動能力者で、バレずに不審者足止め確保そんなの楽勝だぜ一人でもM:I余裕の俺TUEEEE!が出来る大能力者とかだったら何の問題もなかったんスよね……俺がダメなやつだったばっかりに……」

がっくりしている少年の言葉通り。
昨夜の不審人物が、別の場所を巡回していた垣根の前に現れていたらあるいは。
この任務も即解決だったかもしれない。

「ほら。こいつにやらせろよ」

「彼は駄目。いざって時に能力面が頼りないし、かと言ってカメラや機材を幾つも持ち込むのは難しいわね。常盤台は貴重な能力をもった女生徒だらけよ。いくら向こうから持ちかけられた話でも学校側の許可が簡単には下りないでしょうね。その点……あなたなら、出来ないことの方が少ないんじゃない?」

【ぶっちゃけおもしろくないじゃんww】

ぐうの音もでないような正論と、不愉快な煽り。
板挟みにされた垣根はつまみ上げたブラウスを忌々しげににらんでいた。

「俺のプライドはどうなってもいいっつうのか? ああ?」

「いきなり破いたりしないでね。常盤台は制服も高いみたいだから」



「なんつーかもう下半身が無防備過ぎねえ? 女ってよくこんなんで過ごせるな」

ぼやく垣根の目は普段から暗い目が死んだ魚にあえて寄せてみた、くらいにどよんとしていた。
暗部組織のリーダーであり超能力者が女子中学生の制服一式に袖を通したその苦悩はおしはかれない。
結果を説明するのに余計な文句がいるだろうか。
見てわかる簡単な一言で済む。

ものすごく似合わない。

残念なことにそして当たり前に。
どこからどう見てもイケメン寄りの立派な男子である垣根にスカートなんて似合う訳なかった。
性別不詳系や小柄可愛い系の男子ならそんな真似をしても、おふざけな喝采をもらいウケも取れたかもしれないが。
ホスト系イケメンを素材にするとご覧のあり様だよ! な予想を裏切らない悲惨さだった。
背は同年代の男子の中でもやや高め、おまけに足も長めのスタイルの良さが完全に裏目に出ていた。
指を十本全部使ってなんとかつまんだり引っ張ったりと少しでも腰装備の防御力を稼ごうとしていた垣根の努力も虚しく。

きっと校内ではミリ単位とかできっちり決まっていて、おまけに内部階級のサインとかステルスすぎて当人同士以外わからない些細な争いの種にもされていそうな学生服の暗部「女子のスカートの丈」。
それは今、完全に校則違反と言うか人目に触れたら最後。
風紀委員から警備員までガン首揃えてはいはいお兄さんどうしたのなんでどうしてこんなかっこしてんのと詳しくお話を聞きたがりそうな職質まっしぐらレベルになっていた。
どこから持ってきたのか申し訳程度に足元を覆うハイソックスが物悲しさをプラスしている。
そしてこの惨状も。
『スクール』の構成員にとってはまだ地獄の入り口だ。

些細なリアクションが命取りになりかねない、けっして笑ってはいけない時間がスタートする。
腹立ち紛れに吹っ飛ばされるのはまだいい。
怒りで加減してませんでした、なんていわれるとその瞬間には汚い花火の出来上がりになる。
リーダーのプライドを傷つけたものには死が待っていると言っても過言ではない。

「ぷ、ふふ……よく、似合うよ?」

「かきねさんさすがっすねー」

「心にもねえこと言ってんじゃねえぞお前ら。おいゴーグルこっち向いてみろ。首がよそ向いてんぞ」

我慢出来ずに吹き出した心理定規はスルー。
いや、睨まれていたからきちんとカウントはされているらしい。
だがまあそれくらいでいきなりかよわい女子に手をあげるなんてかっこ悪いことは、組織のリーダーはしないのだ。
となると標的は絞られてくる。
そこそこ怒りを発散できそうないい反応をして、大げさに吹っ飛ばしてもギャグで済みそうな生贄が必要になるところだ。
プラス、本件の元凶と言う十分すぎるペナルティが付いているのでズタボロにされても文句は言えないサンドバッグが。
それは十分に察しているらしいゴーグルの少年は。
面白おかしいことになっているリーダーから全力で目をそらしていた。


「おおっと突然両目にゴミが! あぁ、目が! 目がぁぁあ!!」

「馬鹿にしてんだろ。口で言ってるうちにききやがれ。な?」

愉快な格好をした執行人が修羅か羅刹の形相で直々に笑わせにこようとしているなんてまるで洒落にならなかった。
ぎゃあぎゃあ騒ぎながらゴーグルの少年は目を両手で覆い隠して抵抗する。
心配しなくても恥ずかしい自覚はあるだろう。
ノーリアクションは本人も痛いだろう。
でも笑い飛ばすのも怖い。
何で彼らがこんな目に遭わなければならないのか。
大混乱の『スクール』をただ一人、離れた場所からこの状況を眺めているだけの『電話の男』は。

【これはこれはどこのおじょうさbんmっ、rちゅjむりうぇrなに89おp;:¥】

通信回線の向こうで死にそうになっていた。
美少女音声ソフトに読み上げられているメッセージがもはや言葉になっていない。

「だって見ても『未元物質』、見なくても『未元物質』ならまだマシに済みそうな方がいいっス!!」

通過儀礼的なお約束。
おしおき『未元物質』一閃までずいぶん手間取らせていた。
長引くと余計にリーダーの機嫌を損ねるのだが、まだこの世に未練アリアリらしい少年は呼吸を惜しんで無駄な足掻きを続けている。

『そんなにおかしいですか?』

「……あ。電話着ちゃった。ちょっとごめんね? 後はお願い」

「垣根さんそれずっりい……って心理定規の裏切り者ぉ!!」

美少女ボイスにまんまとつられて目を開けてしまったゴーグルの少年はひとり修羅場から離れていく心理定規に叫んだ。
後ろに垣根が立っている。
振り返ることは死と同義だ。
笑わない、と言う奇跡でも起きない限り。
言い逃れ出来ない罰があたるまでテンカウントも必要なさそうだ。


説明される前にまんまと着替えさせられた垣根だが、室内を粉々にするより先に今度は着用時の服のサイズを確認することになった。
フィッティングなしでも手直しいらずの完璧な仕上がりで制服を用意される方が……なんでそんなデータまで持ってるんだと気持ちが悪いだろう。
でも、不愉快な経験はせずに済んだかもしれない。



「あの格好で全身採寸ってあんな辱めを受けたのはガキん時以来じゃねえのか。いや、あそこまでは流石に俺も覚えがねえぞ」

「仕方ないわよ。仕事だし」

「だからってなんで関係者でやるんだよ。向こうは顔見知りしかいなかったぞ」

垣根は不満そうに出てきたばかりの隣の部屋を指差した。
一応『スクール』での任務なので雑用その他は当然ながら下部組織の人間がしている。
垣根の立場的には、情けないかっこを見せなければならなかったのが面白くないのだろう。

【ぶがいしゃにみせてじょそうしゅみのレベルファイブがいるってうわさになればよかったのにw】

しばらくの間、言語になっていないひどいメッセージを送信してきていた奴も回復したらしい。
物を投げるような音がマイクに拾われていたから、さっきまでの映像に爆笑しながら机やその辺のものを叩いていたんだろう。
こいつはすっかり普段の(不真面目な)調子で面白がっている。

「お前はフォローしてえの? それとも俺の怒りにガソリンでも投げ込んでんの?」

「ある能力者の協力で、あなたの周囲は認識阻害が出来る筈よ。もしなにか不備があっても服装さえそのままなら体格くらいはある程度距離があれば見間違いでなんとかなる……と、思う……かな」

そうは言ったものの。
心理定規はさんざんなリーダーの様子に自信なさそうに肩をすくめた。
普段ならの説得力のありそうな、精一杯の助言も今は頼りない。
と、言うよりどう見ても無理な話に決まってる。

「根拠も自信もガタガタじゃねえか。っつったく何の罰ゲームなんだよこれ」

【みてるほうはもっとばつゲームだけどなwwwwあとでがぞうzipでおくってwwwww】

「垣根さん! だからそれ俺のパソコンなんですってどうか!! あとそっちも無駄に草生やすのやめてください。うちのメクちゃんはそれ全部読まなきゃいけないんスよ。変な癖がついちゃったらどうしてくれんだこの野郎」

垣根の背中を必死でおさえながらノートパソコン(私物)とインストールされたメクちゃんを必死に守ろうとするゴーグルの少年。
彼が訴える間にもだぶりゅーだぶりゅだぶだぶりゅー、と律儀な機械音声は生えた草を刈っていた。

「そんなに大事なら使わない方がよかったんじゃない?」

「俺のメクちゃんはまだ全然弄ってないんスけど文読むくらいなら何とか出来るんスよ。やっぱほら、声は出させてあげたいなーって。問題は俺の音楽センスが壊滅的なんで調教とか何をどうすりゃいいのかまるでわかんないのがっスね」

「俺が何したってんだ……」

脳内お花畑続行中なゴーグルの少年とは対照的に、精神的疲労がどんどん増えていく垣根のテンションは急降下していた。




「でもまぁ、そうだな。あいつらも仕事は真面目にこなすよな。『当てにならない協力者だと困る』っつって一応このままでも、ゴツめの女だって言い張れるかどうか……色々写真も撮らされたし」

「え?」

「垣根さん? それって……必要でした?」

「何だよ。あのな、俺だって好き好んでそんなことしねえぞ?」

言われなくてもわかるし、そりゃあそうでしょうと思いたいことだが。
垣根は、俺はそんなつもり無いけど撮るって言うから仕方なく被写体になってやったんだと言う旨を首を傾げる二人に弁解した。

何でそうなったかもなんとなく想像がついてゴーグルの少年はこっそりパソコンの方をみた。
同じことを考えていたらしい心理定規と目があって、二人で顔を見合わせる。
あっても無くても良さそうな、それがばれたらリーダーからものすごくとっちめられそうなデータをわざわざ残そうとしたやつが『スクール』の中にいる。
まぁそんなことをさせるやつは組織の関係者でも一人しかいない……はずだった。
下部組織に命知らずのパパラッチや情報屋がいるとかならあれだが。

幸いにも絶賛修羅場真っ最中M7クラスの災難に見舞われているリーダーはそんなことを気にしている余裕もなさそうだ。
後でバレて『電話の男』の使いパシリにされただろうカメラ係の馬鹿がひどい目にあうのか。
今余計なことを教えて、キレるだろう垣根のとばっちりに巻き込まれるのか。
想定される超能力者の人災が二人の頭の中で天秤にかけられていた。

話し合いなんて状況的にできなかったが二人の心の中は一致したらしく両名見て見ぬふりで問題は始末された。
自分に悪いところがないのに巻き添えで大変な目にあうのはごめんだ。
今だと、スカート+『未元物質』=……なんてとっても恐ろしげで悪夢に出てきそうな怖いものが待っているから余計に。

「そうね、丈はもう少し伸ばすんでしょ? 何か下に履けるものを用意してもらうから。そしたらそんなに違和感はないんじゃない? ズボンの上から履いてると思えばそのうちスカートだって慣れるわよ」

変更後のサイズやらなにやらが書かれたらしい紙を見ながら……垣根の方をなるべく見ないようにしながら心理定規が冷静に伝える。
それに対するリアクションはなんとも疲れ切ったものだった。
椅子に座った垣根はため息をついて下を向いた……が、現在の無様な状況がいやおうなしに目に入ってきたのでそのまま顔を横に向ける。
頬杖に乗せられた横顔は心底不満げだ。

「慣れたくねえしシャレになってねえからな」

「後ろ姿は美少女っスよ。バレー部とか体育会系かなーって感じの」

「そうねえ。でも前から見ると……」

【じょそうしゅみのあぶないメルh】

ガターン!! と椅子が壁まで吹っ飛んで。
大慌てで少年が頭を床に擦り付ける。

「すんません! すんませーん!!」

この分では泣き土下座もリピート推奨になりそうだ。



「見慣れるとそうでも……あるけど。まだほら、下手な男の子よりはよっぽど見れるわよ。あなたきれいな顔してるじゃない」

「これっぽっちも慰めになってねえからな」

「よく俳優とかも企画で変な服着せられたりするじゃないスか。若手イケメンの通る道だと思えば……」

「俺芸能人じゃねえよ」

すっかりげんなりしてしまったリーダーに部下二人がおろおろと声をかける。
どうやらこの制服には着用者の体力と精神力を徐々に奪う呪いでもかかっていたらしい。

【なにおまえげいのうかいとかめざしてんのwそうだねーきみグラビアとかきょうみある?】

「死ねよ」

【そんなかっこですごまれてもwwwwwあむりむりしぬくるしくてしぬわwww】

「殺すぞ?」

【wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww――

反応がなくなった。
奴はキーの上に指でも置いたまま死んだのだろうか。
エラーを起こしたような機械音声が不気味だ。

「終わったらみんなで美味いもんでも食いにいきましょう!ほら! 垣根さん元気出してくださいすんません」

「どんな脳味噌してると、テメェがんなことほざけるんだろうな?」

「俺のおごりに決まってるじゃないスか!! ええもちろんスよ! 追跡中にタゲロスした俺がぜぇんぶ悪いんスからすんません」

「『スクール』様で領収書出せるんじゃないかな」

【ていこちゃんがおしゃくしてくれるんならいくわwww】

「黙れ。誰が何だってんだ。それにお前の面に興味はねえよ」


ドーモ

ごーぐるはぎせいになったのだ

>>222

『スクール』さん潜入任務。垣根に制服着せる編でした。
常盤台潜入編もよろしく。
しかしまあ。
スカートやらなんやらで下がりまくってるSAN値が大変なことになっててとても辛い。
かっこいい垣根ってなんだったんだ。
確か冬川絵でそんなものを見た気がするんだけどね?幻想かな

ワロタwwwwwwwwwwwwwwwwww

乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
だめだ息が苦しいwwwwwwwwwwwwwwwwww
垣wwwwww根wwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

芯があってかっこいい
でもどこか抜けてたり愛嬌あったりネタだったりでかわいい
禁書キャラはほとんどそんな感じ

ミニスカ装備のイケメルヘンやばいwwwwwwwwwww
よく着せたなここまで本気だとは思わなかった
スクールに入りたい
ミニスカ垣根にオシオキされたい

学園都市パワーなら顔も何とかなりそうな気がするけどねww
第5位と気が合いそうじゃないか


帝子(ていこ)ちゃんなら、あだ名はティコちゃんかな?
これは後々暗部の連絡係の中で可愛い女の子()の写真が流行る

このSSの世界線では新訳時間軸になった時、
カブトムシではなくCV.H原の女体化垣根になるフラグが立った……?
未元物質は白い=白いスーツ、未元物質による増殖=○人目だから……なるほどな!

前にもH原出てこなかったっけ

ていこちゃんがいるならおしゃくなくても行くわwwww
上条さんにも勝る下僕っぷりでひざまづいて下敷きであおぐわ
あ、その前に変声器でキ○ィさんやってもらっていいっすかwwwwww

メルヘンのヘンってドイツ語で可愛い物を表すんだって。だから「テイヘン」でよくない?

>>756
マジかじゃあヘンタイも褒め言葉になるのか

>>757
~~chen(○○ヘン)
がキュートな印象を与えるみたい。
女の子(麦のんは駄目)の意味のメイドヘンとか。
グリム童話の赤ずきんちゃんのタイトルも「Rotkappchen」で赤ずきん+ヘンだね。

垣根のウエイトレスもみたいな

ドーモ。
何だか草深いとこがwwwwww

>>749
JCになった第二位みてやって〜〜

>>750
乙ありです。

いやあもうギャグSSって時点で『かまちーの書く原作のかっこいい垣根』とはまるで違う別物であることは当然でそれも十分自覚してるんだが。
クリープ9:コーヒー1のコップの底にたまったガムシロップですらない何かをコーヒーだと言うのはいくらなんでもどうだろうなあと。
テンションおかしいのがデフォだけど、たまにふっと正気にかえるんだね。
そして原作にたち返ろうにも、もう昔の垣根がいないことを思い出してSAN値がドバッと下がる。発狂しながらネジの飛んだSS書いて以下ループ。

>>751
ドーモ!安価には全力投球します!1です!
だってみんなが女装でていこちゃんって言うからこれはもうネタを振られてると思うだろ常識的に考えて。
暗部落ちしたい人が増えてますね。頑張ろうぜ

>>752
どこの探偵ですか。
能力者使って何とかならないわけないww
学園都市ならいつもの格好で潜入してもほにゃっと何とかなってしまうに違いない。
そして、それでも垣根にスカート穿かせないとって電話のあいつがノリノリで話をふっかけたに違いないw
何より女装したのに肝心の話はまだきちんとされてないんだぜこのリーダー。
第五位とは……どうなんでしょうね?

>>753
乙ありです。
ティコちゃんwかわいいw
もし、あのノリの良さそうな『アイテム』のおねえさんにまで画像が回ってしまったら学園都市は一体どうなるんだ…

なんだってー!! ΩΩΩ
前もカブトムシ→メクちゃんとか言われてたけどTS(H原声)とかゴーグル以外誰も得しないよね。ゴーグルも嬉しくなかろう。
原形どころか性別の垣根を越えてどうすんですかこんにゃろー
ネタバレすっと今回のネタ元H原キャラは某お料理小説のアニメ版です。
万能汎用兵器な金の卵が美味しいです。アンサイクロペディアが詳しい。

>>754
たぶんゴーグルの趣味です。たぶんN登M子も好き。

>>755
罰ゲームもしてないのに愛玩奴隷>>755が発生しただと。

誉望「いいスか垣根さん……設定そのままで、テンション高めのやや高音で元気よくお願いします」
垣根『こんにちは! わたし、キ○ィ!』
心理定規「本物そっくりね」
垣根「今のでいいならここをこうすると……『どうだ。どんな風に喋ってもそれらしくなるもんだな?』
心理定規「こんなに怖いあのネコちゃんの声は聞いたことないわ」
誉望「中身って大事なんスね」

こうか。

>>756
へーすごーい756ものしりー
テイヘン……ていへん……底辺……
これは、もしも彼女の耳に入ったら審議するまでもなくもう一度絶望しろコラが入るんじゃ、と1は心配します。

>>757
バウムクーヘンのヘンもかわいいのかな。
ヘンタイがそれで許されるなら残りのタイってなんだ。
裸ネクタイ紳士のタイかなにかですか。

>>758
は〜!みんな詳しいな。勉強になる。
なぜわざわざ()付けたしw

>>759
女子sが揉めてるあいだに野郎どもに仕事してもらおうぜ。

とある給仕の超能力者

一方「チッ……お一人様ですかァ」
一方「御注文の品でェす(ベクトル操作)」

垣根「いらっしゃいませ。御注文はお決まりですか?」
垣根「まだかよ……さっさと今ここで決断しろコラ(未元物質)」

削板「らっしゃっせー!!」
削板「おっしオーダー上がったな。七番テーブルだ!(説明のできない力)」

こんなん初日で店長の胃に穴があきそう。
レベル5男衆もウエイター似合いそうじゃん。みんなで社会見学って言ってバイトしてもらえばさー

女装垣根からホモ垣根まで幅広い性癖をカバーしている猛者はおらんのか!

ウェイ…トレス、だと…

いやー改行大杉って怒られたの1久しぶりー

>>759
二次元学園祭の定番になりつつある男装女装がいいのかそうか?
そんなファミレスありなのかそれならみんなでやって麦野も呼んだ方がいいと思うよイケメン確定だよ。
御坂は何も問題ないとして食蜂さんはどうしたらいいんでしょうな。


誉望「垣根さんがバイトすることになった店でコスプレキャンペーンって……俺は三次元は適応外のオタクですが何故当然の様に衣装調達係にされてしまうんスかね。
他の奴らもいる手前ド◯キとかはペラくて駄目だろうなー。コスプレ衣装なんて俺はあてがないしそこそこのクオリティを求められても困るんスけど。あー電話の奴に連絡して何とか断りたい」

土御門「おーっとコスプレのお悩みが聞こえたぜい。それならこれがいいぜよやっぱり衣装はメイドだにゃー。そして中身はロリがベストですたい」バサッ

誉望「つっちー君?! どこから出てきたんスか」

土御門「じゃ~ん! 『熾天使ガチメイド』~! ロンドンの最新作だにゃー。古式ゆかしいメイドスタイルを踏まえつつ新風に鋭く斬りこむこちらの逸品はいかがぜよ」

誉望「いや。この絶妙すぎるタイミング……信用出来るのか? 何かの策略を感じる」

土御門「おおっと何だぜい。何でそんなこと言うのかにゃー? 俺たちオトモダチじゃなかったのかにゃー」

誉望「だって、女子はペッタペタのロリ派なつっちー君がどう見てもS以上の、そんなサイズのメイド服を偶然持っているとは考えづらいだろ」

土御門「いやー俺だってロリ巨乳は賛成派だぜい? 舞夏にはこの前殴られたばっかだからねーちん用を取り寄せたんだが。そっちもあてが外れてにゃー。ってなわけで喜んで進呈するぜよ。困った時はお互いさまにゃー」

誉望「そっちも困ってんだ。いやだからって俺に? その前に完璧アウトっスよこれ女子のだろ!? 俺が欲しいのはメンズなんだよこんな即死フラグじゃないやつなんだよ! 他に無いのか他に。一番いい装備を頼む」

土御門「俺が野郎の服なんか持ってても気持ち悪いだろにゃー。この『セラフ六翼エプロン』を着こなせる者はそういないんだが……
誰かに着てもらうのがメイド服の本懐の筈だ。さっ、えらばれしものよもっていきなさい」

『スクール』の制御役『丁度よかったな。そちらの親切な青年にはお礼に何かご馳走しなさい』

誉望「あたり一面死亡フラグのお花畑が見えるんだが?! 携帯は勝手に通話してるし。俺にどうしろって言うんだよ。他の服が無いならせめていいえの選択肢が欲しい!」

土御門「俺だってこいつを持って帰るのは恐ろしいんだぜい。どう見たって舞夏のじゃないからにゃー。泥沼修羅場展開はいやだにゃーガクガクブルブル。
さー、こいつで勇者になるんだにゃー。ガチと言いつつガチに見せつつゲテモノメイド服の名に恥じない仕上がりだ。
今回は過去シリーズより露出は控えめと見せかけて……ほーら実はここがこんな風になっております。なパーツ可変隠し要素付きぜよ」

誉望「うっわぁ……本当にメイド服なのかこれめいどこわい。はっ、そうか。俺はこれで死んで英霊に……なりたくない!!」

土御門「さーてAAA大先生よどうするんだにゃー。よってらっしゃいみてらっしゃい、英国直送のレアなこちらのお品物、今ならこのお値段でどうだー!」

制御役『即決でww』

誉望「ああきっちり金は取るのかマジの厄介払いか、ってお前が決めんな!!」


ウェイトレスの違いがよくわかんないからもうメイドでいいよな?!メイド!一緒にしたら義妹の拳骨不可避っぽいけど!
と1はゴリ押しで誤魔化せないものかと更に投下します。

ってやってるとさげわすれるのよね

ワロタ

つっちーあとの2人の分も頼んだww
ところで学園都市にはメイドフェチグラサン野郎の他に看護婦属性持ち変態カエル医者もいるんだけどね?



>>761
その二つが入ってる時点で、性癖としてはそりゃーはば広くても相当絞り込まれると思います、と1は小並感を口にします。でもここ速報だからホモの人もいるんじゃねーのと加えて雑に返答しますそっから振り分けるんだがんばれ

>>764
いいぜ。笑えよwwwww

>>765
軍覇は着るんだろうか。そう言うルールだって言えば根性無さそうな服も着るんだろうか。
奴の反応はわからない。
幾ら白衣を天使たちに着せたところで、その結果が地獄絵図ならあのお医者さんも喜ばないはずだね?
看護婦さんは過去のSSであったねそれ。あれはいいものだ。
確か最初はファミレスのウェイトレスの話だったのにいつの間にか怪しいお店になりそうだよ大丈夫かな?

???「アンタの仕事は患者を救うことのはずだろ。視覚の暴力でそいつを増やしてどうするんだ! 体と心を癒してくれる優しい存在に、俺たちだって、ときめいてたんじゃなかったのか。
何でそれが……こんな恐ろしいことにならなきゃいけないんだよ。平等にするなら男もナース服に統一しろ? 無茶すぎるだろ。天使と悪魔の隣りあう病院なんか俺は週二でお世話になりたくねえよ!!
学園都市内の人工的な天使化推進計画なんて言って、服を着せただけじゃただのままごとなのはわかってんだろ。アンタの理想はそんな安いもんだったのかよ!
本当に、看護婦さんの復権を心から望むなら……学園都市の看板みてえな能力者達にこんな格好をさせるんじゃなく、制服制度の見直しをちゃんと訴えるべきだったんだ!
あとな……一方通行ならメイクとディファイ◯でイケるかも知れないなんてそんなふざけた幻想は、この俺がブチ殺す!!」

???「止めるんだ! あれは僕の『最後の希望』なんだよ!
一見して男性に見える一方通行を見事な白衣の天使に仕立て上げることではじめて、この計画の正しさを主張することが出来るんだね?
タイツの色から全体のバランス、メーキャップまで僕らがどれだけ苦労したと思ってるんだ」

???「横で深く頷いてるイケメンが、既に失敗側の代表例になってるじゃねえか!
そんな格好して似合う男がいないのはアンタもわかってんだろ。そこまでしてナース服が大事な癖に……そいつを汚してることにまだ気付かねえのかよ!
可愛いは作れるとか……言ってんじゃねえ!!」

もしも学園都市総看護士さん化……男女平等の観点からナース服の全面廃止なーんてことが起きでもして、
あの学園都市生殺与奪(物理)最後の良心みたいな方が、まかり間違って「君も白衣の天使にしてやろうかな?」な怒れる絶対ナース着せるマンなラスボス化したらこうするしか無い。
麦野のナースはとてもみたいのですこしくらい暗黒面に堕ちてほしいかもしれない。
1はきょうもげんきですネタかくのはおいしーです……かく…うま

冥土返しwww必死かw

最初の犠牲者はアレイスターだな!
ところでイケメルヘンはどうして手伝ってるんだwwww

今更だけどH原+ティコとか七つの海不可避
あと彼女とか女扱いしててワロタ

垣根もマックでコラボバーガー売ってくれ
ハッピーセット毎食買う

マークダターならマックって略せたのにね

>>771
「飲食無料(マックタダー)」か……
確かに素晴らしい

この世の経済は貨幣との引き換えで成り立ってる・・・だが、俺の飲食無料にその常識は通用しねえ
ただの食い逃げじゃないか!

や っ と 追 い つ い た
1レス1レスがこんなに濃いのは久々

頑張れスクール頑張れ


>>767
マニアックな属性持ちで天職についたどこかの医者がなんですって?

>>768
☆が最初なのww黒幕っぽいけど最後じゃないのか。
普通に似合いそうだよねww男にも女にも見える美形だし。ちょっと天地入れ替わってるけど
いやー犯人が某カエル似の方だなんて言ってませんよ?
まさか冥土帰しがそんなことを?

???さんが、とりあえずシンボルであるレベル5にナース服を着せて…ってのが計画とやらのスタート地点なんで多分。
長引くと拘束時間が増えるから人質が速やかに解放される為には犯人に協力するのが一番ですよね(棒)

???「看護婦の居ない職場なんて、僕は仕事をする気が全くもって起きない」
1「……あのガキの管理が出来ンのはコイツくらいだ。どンなアホでもな」
2「面白いもんが拝めるっつうし」
3「そうなると大勢の妹が困るのよ」
4「メンテナンスがあるし」
5「こっちにも事情力があるのよねぇ」
7「よくわかんねーけどこう言う祭りか?仮装パーティーか?」

???「よーし軍覇、お前だけでも着替えて帰るか! な?」

>>769
ぐーぐ○先生に質問不可避だった。
流石ベテランは活動量が違う。
って!ティコってシャチの方かい!探したわ!
禁書は~シャチより~レトリバーが好き~!

だってこれから常盤台の生徒になってもらうのに、こっちもそれなりの扱いをしないと失礼じゃないですかー。

>>770
も?誰かやったかな?缶コーヒーはずいぶん前に第一位がやったらしいね?
偶像さまかな?

>>771
なんて高度なアナグラムだww

>>772
マックタダーww
みんなでポテトとマスタードソース山ほど頼もうぜ!!
マックには無料になるゴールドカードがあるって都市伝説は本当かな。

>>773
なんて恐ろしい超能力だ。学園都市には利益よりも損失しかない。
スタイリッシュ食い逃げwwww

>>774
初めましての方は(r
某ラーメン並みにカサの多いマシマシSSだが、ほとんど『スクール』でできてるからそのぶん濃さには自信があるぜ。
お口に合えばドーゾよろしく。


七夕だったねー
そう言えば短冊あつめるイベントってやらないなー
短冊書くんなら>>1はそうさなあ…
垣根の出番が…増えてもプラスになるとは限らないから、元気でやってくれればいいかなあ



心理定規「そういえば貴方の今度のステージの話は? 進んでるの?」

誉望「えーと……ハコは第二学区に特設ステージを設営中、チケットの売り上げにあわせた十分な人数を収容できる見込みだそうっス」カチャカチャ

弓箭「なんであんなところでやるんでしょう。確かに防音設備が充分ありますけど、他にどこかなかったんですかね」

心理定規「さあ? 第一五学区のテレビ局のホールって話もあったけど、少し狭かったし……ね?」

垣根「広さだけなら二三学区の開放された区画の一部を使うとかって手も……何だよ。俺を見るな」

誉望「動画配信サイトと提携して、ステージの模様の一部をリアルタイム公開することになってます。
サイトの有料会員とファンクラブ会員にはそれぞれ延長放送枠を設けて一般視聴者との差別化もはかるそうっス。
予約視聴も公式公開するんで、地球の裏側にいても見逃さずに済みますよ」カチャカチャ

弓箭「これが準備してるグッズの案ですか。ペンライトやタオルが多いんですね」

誉望「こっちのライブ限定グッズは全て事前予約対応可、チケットコードと紐つけして会場での引き換え以外のものと記念品は通販で発送する予定で、混雑の緩和が出来る筈っス。
飛び込み想定で一部会場販売の準備もしてます。いざって時には『スクール』下部組織フル稼動で開場までには誘導も間に合わせる手筈になってるっス」

弓箭「そんなことまでさせるおつもりで……なんだか誉望さんスケジュールに随分とお詳しいですね」

垣根「ずいぶん張り切ってんな」

心理定規「『スクール』にはそう言うの詳しい人があんまりいないから。企画アドバイザーとして参加者視点からも色々意見してもらったのよ。
プロデューサーからも『珍しく役に立った』って褒められてたわ」

誉望「欲しいとこには十分ものを回さねえとって供給側には大きく幅とって貰いました。メインステージと関係ないとこでファンの不満を爆発させたら、
垣根さんの顔に泥塗ることになるんで。裏方仕事は俺ら『スクール』の本業っスからね」

弓箭「そう言うことでしたら。ステージ上の警備ならお手伝いさせてください。わたくし達でさくっとお片付けしますわ」

心理定規「バックアップは十分かしら? あなたには当日のパフォーマンスに専念してもらえそうね。テロ対策まで想定するアイドルはなかなかいないと思うけど」

電話の男『現段階で観客の動員は見込みより二〇%増、それにあわせてグッズ販売サイトのサーバーの対策と発注数を更に増やす』

誉望「うわははは! 徹夜待機を駆逐しろ! 転売ヤーに死を!! 全ての信者に恵みと幸いあれ!」

弓箭「あれは……大丈夫ですか」

心理定規「いつもより……ちょっと強めにスイッチが入っちゃってるかな?」

垣根「何だか知らねえけど。弓箭に言われてるようじゃ駄目だろうな」

弓箭「ええっ?!」

心理定規「何だか釘をさす相手がいつもと逆になっちゃったわね」


誉望「レア感も欲しいってことで、受注生産グッズの案が幾つかあるんスけど」

心理定規「どんなの?」

誉望「ライブTは通常とプレミアム版に3Dプリントの翼付き、こっちがジャケットで……
あとサイリウムセットを買うと光る六翼の抽選券が貰えるってのが……完全に握手券商法なんですがどうしましょう」

垣根「そのふざけてんのは潰しとく。それより、ステージサプライズでこいつをやろうと思うんだが」

心理定規「なに? ファンを何人かステージにあげて肩ハグ?……大丈夫なの」

垣根「アイドルらしく握手会ってのがしてみたかったんだが……情報機密の関係で許可がまだ下りねえ。俺にはあんまり関係ねえんだがな。
まぁ、向こうに触られるよりはこっちから行く方が安全だろ」

誉望「垣根さんなら握手会に危ない奴やどっかのスパイが乱入しても大丈夫そうっスね」

弓箭「能力で身も守れますから、ライフルとかロケット砲も効きそうにありませんしね」フゥ

垣根「こいつで試すぞ。こう……どうだ」

誉望「ぐっ、肩になんかすげープレッシャーが」ガゴッ

心理定規「女の子にはもうちょっと、優しい感じにしてあげたら? 怖いお兄さんがお財布目当てに絡んでるみたいよ」

誉望「垣根さんが視界にいなくて、こんだけ近いといつ何があるかわからない恐怖しかありません」ブルブル

弓箭「垣根さんは猛獣じゃないんですから視線をそらしても平気ですよ」

心理定規「確かに。見ようによっては、人質に取られたみたいにも見えるかな」

誉望「そうっス。首元に見えない刃物を感じる程度の緊張感です」

垣根「まあ、それも出来るな。ナイフでいいのか?」ズズズ

誉望「ひぎゃああ! 『未元物質』が! 誰か交代!!」

心理定規「えー。客観的にアドバイス出来なくならない?」

弓箭「わたくし、殿方とそこまでお近付きになるのはちょっと」

垣根「まあそん時はそん時だ。実際やれるかはわからねえしな」ポイ

誉望「アイドルとゼロ距離とかやったら、ファン同士で血を見る騒動になりそうな気もするんスけど。ステージから飴投げるとか、規模のかわいいとこで済ませませんか」

たしかにこのSSは濃厚な●ーメンだよな!

未元物質の羽の雨をふわふわ降らせてキャッチすると幸せになれるとかがいいと思う


>>778
垣根にはジャンクな飯を食ってほしいね。
フルコースも似合うが庶民派もいける。
カップ麺だって無駄にかっこよく割り箸割ってほしいよな。
えーとそれでラーメンの話だったね? そうだね。もし愉快でもあんまりうれしくはないね?
このスレはスクールカキネトウカマチマチカイギョウオオメゴーグルツラメが基本仕様だから胃もたれ注意でたのむね?
読みづらさには定評があるしね、多いときはなるべく分けていきたいね?
済んだら丼は上げて、スレはsageてお願いします。

>>779
メルヘェェェェン!
なにそのメルヘン。ステージに天使が降臨する。
ジャ=ーズばりに客席上を飛ぶのか?
それメルヘン過ぎない?平気?ファン召されない?
会場をでるとゲットした羽は消えてなくなりそうだけどいいすか。

メルヘンって散々SSでもネタにしてるけど、映画の天使悪魔系のキャラってクッソカッコイーよね。
だから垣根本気モードも神々しすぎてやばいと思う。動画で見たい。
1もはよ帝国の民になりたい。


誉望「垣根さん、あれってうまいんスか?」

垣根「は? 何がだよ」

誉望「今CMでやってる『レベル5バーガー』っスよ。絶対偶像進化計画の一環でアイドルたちをイメージしたコラボメニューが食えるやつっス。ちなみにハッピーセットは別のチェーンのコラボっス」

垣根「ああ。あれもうはじまってたのか」

心理定規「話が出たのは随分前だものね。ええっと、確かスポンサーが……『バーガー・エンペラー』ね」

誉望「バーエンっスかあ。で、どうなんスか? うまいんスか?」

垣根「いや。食ったことねえ」

弓箭「それは……あくまで垣根さんの名を謳った商品の実情をご存じないのは……いいえ、垣根さんほど自信と輝きに満ちた存在になると、些事には心を砕かないと、そう言うものですか」フフフ

垣根「何だよ。お前ら、そんなにハンバーガー食いてえのか」

心理定規「えっ」



バーガー・エンペラー店内



弓箭「はわー……結構混んでるんですね」

心理定規「今はキャンペーン中だから普段以上に人がいるのかな」

垣根「へえ。賑わってんじゃねえか」

誉望「垣根さん、帽子とサングラスでもそんなキョロキョロしてるとバレるっスよ」

垣根「どうせ飯食いに来てる奴らばっかだろうが」ソワ

心理定規「そうね」

誉望「だと良いんスけど。はいメニューっス。順番待ってる間に何食うか決めちゃいましょう」

弓箭「ええと、これですね。『レベル5バーガー』、第一位コラボ……『イカスミバンズに特製ビーフパティを挟んだ漆黒仕上げ』」

心理定規「第二位が『ホワイトチェダーとモッツァレラ二種のチーズがこだわりの白のバーガー』……うーん」

垣根「白黒ハンバーガーって、ハロウィンの頃にどっかで見たなそんなの」

弓箭「『ハニージンジャーチキン照り焼き風バーガー』なんて言うのも美味しそうですね」

誉望「それ第五位のコラボだろ」

心理定規「じゃあこっちの『サクサクチキンとフレッシュ野菜バーガー、ソースで更にビリビリ!』って書いてあるのが第三位かしら。ふーん」


誉望「この、『レベル5コラボメニュー、学園都市産素材一〇〇パーセント使用』ってのはブラックジョークっスかね」

弓箭「お肉の処理は早い方が良いんでしょうけど……壁の中で過ごした生きものは最期にどんな音色で啼くんでしょうね」

誉望「何で飯の前にそんなこと言うんだこの女。お肉の気持ちなんか知りたくないだろ」

弓箭「産地のしっかりしたものは、よく給食でも出るんですが意識して食べ比べたことはあまり……そんなに違うものですか?」

心理定規「壁より外の物がいいなら第三学区のお店か、第六学区の専門店かな。あるにはあるけど、隠れた名店と一緒で探してまで食べるのは大変じゃない?」

垣根「ああ言うのは付加価値込みの味なんだろ。ビル産は外れもねえし一番間違いが無いよな」

誉望「じゃあそろそろっスから席行っててください。俺注文してきますね」

弓箭「誉望さん!」

誉望「あ?」

弓箭「わたくし、行ってまいります」ハイ

心理定規「どうしたの? 珍しくやる気になってるのね」

弓箭「実はわたくしファーストフードは初めてなんです。あのカウンターでお店の方に注文するんですよね?」

誉望「お嬢様のはじめてのおつかいかよ。別にいいけど間違うなよ?」

弓箭「心配ありませんわ。暗殺術を極めたわたくしは、どんな状況でも一般人に違和感無く溶け込むことができますから」フンス

誉望「いやーそう言うことじゃ……ねえ、垣根さん?」

垣根「腹減ったな」

心理定規「いってらっしゃーい」バイバイ


弓箭「(大丈夫、大丈夫です。周りの方の動きを見ればどうしたらいいのか大体わかりますわ……いつかクラスメイトの方とご一緒に『学舎の園』の外に出た時用の完璧なエスコートもイメトレ済みですから。
きっとこういった珍しい所に入ってみたいと思いますもの。『弓箭さんたらこんなお店までご存知ですのね』、『流石ですわ!』なーんて、ふふふふ。
わたくしったら皆さんの羨望の的……べ、別に大したことではございませんけど……頼られるのも悪くありませんわね)」

店員A「いらっしゃいませ。店内でお召し上がりですか?」

弓箭「ははははははは、はい! ええと……コラボバーガー第二位セットを三つと、オニオンリング、ナゲットを一〇ピース……マスタードソースで。
後はライトミールセットのサラダとスープを一つお願いしますわ。ドリンクは、コーラとアイスティーを二つずつ」キリッ

店員A「かしこまりました。オーダー、垣根スリー、オニオン、ナゲットW、サラダS…………以上ですね。お会計は」

弓箭「ま、マネーカードで」

店員A「ありがとうございました。それでは、お品物はお席にお持ちします。番号札をどうぞ」

弓箭「(任務完了……やりましたわ)」グッ

垣根「あ?」ガタッ

誉望「(垣根さん抑えて下さい!!)」

心理定規「何のためにそんな格好して来たの。暴れたら台無しじゃない」

垣根「チッ。馴れ馴れしく呼んでんじゃねえ」

誉望「は、ハンバーガーのことっスから」

弓箭「ふふふ。ただいま戻りました。ちゃんとオーダー出来ましたわ!」

心理定規「おかえりなさい」

店員A「お待たせしました。コラボバーガーセットのお客さま?」

心理定規「私以外よ」ニッコリ

垣根「意外とちゃんとしてんな」

誉望「っスねー。ケチャップ誰か使います?」

弓箭「思っていたよりボリュームがあるんですね」

心理定規「でもおいしそうじゃない」チラ

弓箭「よろしかったら、一口味見なさいます?」

心理定規「えっ」

弓箭「ほら、チーズがたっぷりでおいしそうです」

心理定規「じゃ、じゃあ少し……」

垣根「これくらいいかねえと味はわからねえぞ」ザンッ

心理定規「ちょっと!」

弓箭「きれいに切れてますわ。はい。心理定規さん」

心理定規「ありがとう」ハァ

誉望「さすが『未元物質』……中身が完璧ずれてないっスよ」

垣根「こう言うのはな、コツがあるんだよ」ドヤァ


誉望「うまいっスねえ」

垣根「悪くねえな」

弓箭「他の方々はどのメニューを召し上がるんでしょうね」

心理定規「カウンターが近いから見えるかもよ」

客A「メルヘンセット、オレンジジュース」

店員B「は~い。メルヘンワン、オレンジ」

垣根「」ガタッ

誉望「すんませんすんません!」

心理定規「いくら何でもずいぶんな呼び方じゃない?」

弓箭「あれで通じるんですね」


弓箭「この袋はなんでしょうか」

誉望「セット一つに一枚アイドルのコースターがランダムで着くんスよ。あ……」

垣根「チッ。ムカつく顔面にコーラ置いてやる」ガッ

心理定規「そう言われるとあなたの上に飲み物は置きづらいわね。あら、こっちのは色違いみたい」

弓箭「何種類かあるんですかね。そして、別に使わなくてもいいんでしょうか。ほら、あちらの方……」

客B「やったあああああ! やっと美琴ちゃんがコンプ出来たぞぉおおおおお!!」ウォオオオオ

弓箭「ハンバーガーをあんなに頼んで、泣きながら写真撮ってますもの」

垣根「……うわ」

誉望「ドルオタちがうけどきもちよくわかる。ひきわるい、つらい。とても」ウンウン

垣根「…………うっわ。大変だなお前ら」ガコ

誉望「何で椅子を蹴るんですか痛え!」

心理定規「御坂美琴のファンなのね。へえ……ああやって何セットも買う人がいるんだ」

弓箭「あんなに召しあがれるんでしょうか」

垣根「あそこまで来るともう食うかどうかは関係ねえんだろ」


誉望「……えーっと、あ。あと対象店舗のレシートのコードでファンクラブ限定ポイントを貯めると、
特設ページで垣根さんのガチャが引け……画像が受け取れるらしいっス。アカウント取って来たんで試しにやってみましょうか?」

心理定規「へえ。どれどれ?」

誉望「結構行ったな。こいつで七回は引ける筈…………ん?」

心理定規「ハイレアって珍しいの?」

弓箭「何だか普通の写真みたいですね」

誉望「多分レアはそこそこっスかね? なんだこれ」

垣根「この前の撮影で使わなかった写真か? ったくあの野郎こんなもんを使いまわしてやがったのか」

誉望「次は……ノーマルっスね」

心理定規「前のポスターの写真ね」

誉望「んで…………あれ」

心理定規「あら。スーパーレアは?」

垣根「…………」

誉望「えーと、ここのレアリティは……あー。ノーマル、レア、ハイ、スーパー、スペシャルシークレットの五段階みたいなんですが……垣根さんこれは」

垣根「これが上から二つ目か? まだこの上があるのかよ。これ、出所やページの大元は見れねえのか」

誉望「URL弄った位じゃダメですね。いやー垣根さんが知らされてないなら俺らはもっと無理っス。暗部の系列で管理してるらしいんで
セキュリティも相当堅いんじゃ……『スクール』の情報処理班で抜けるかどうか」

垣根「チッ。おい、コラボセットあと一〇追加しろ。正面から証拠押さえてあのクソに文句言ってやる。人の画像を勝手に流しやがって」

誉望「か、垣根さん。気持ちはわかるんスけど……十数回ぽっちじゃスペシャルシークレットは引けないと思います」


垣根「じゃあ下部組織の奴らを他の店に並ばせろ最低ノルマは一人二セットな。持ち帰りでもいいんだろ?」

心理定規「そんなに焦って確認しようとしなくてもいいんじゃない? さすがに事務所の仕事で、問題になりそうなものは使わないでしょ。
これだって別に普通の写真じゃない?」

弓箭「垣根さんって写真の写りもいいんですね。でも、何でこんな風になってるんですか」

誉望「いやー、心理定規……よく見てくださいっス。これは」

垣根「俺はムカつく仕事の時は、邪魔にならねえようにしてるが普段は……こうなる」カシャ

弓箭「あら。こちらも画像に変な光が入ってますね」

垣根「空気中の埃やチリが反射して光の球が撮れるのと同じ仕組みだろうな。『未元物質』が写り込む訳だ」

心理定規「と、なると……関係者以外にはそれとわからないでしょうけどこれは、プライベートの隠し撮りね」

弓箭「ええええええ、まださっきの写真より珍しいのがあるんですよね?」

誉望「どんな写真が使われてるんだか……考えんの怖いっスね」

垣根「あの出歯亀クソプロデューサーいつか愉快な死体にしてやる」ミシバキバキ

誉望「あー! 俺のコーラが縦にグシャッと!!」

垣根「ばーか。ボケっと見てんなよ」サッ

弓箭「床が水浸しになってしまいますよ」サッ

心理定規「能力で押さえたらどうかな」スッ

誉望「ちょっ、避難早っ! んぐ……よっしゃあコーラサルベージ!」ジャバッ

弓箭「テーブルの端から空中に集まって……なんだかそのまま飲めそうですね」

心理定規「ふふふ。まるでそこだけ無重力みたいよ」

垣根「お前もうコップいらねえな」

誉望「落ちたの飲まないっつうの。はあ……こいつ片して新しいの買ってきます。コップも欲しいっス」プルプル


誉望「もしもしかきねさ~ん!! 引けましたよ!! SSR!!」

垣根『二時間か、意外とかかったな。で? 何だった』

誉望「人海戦術で並んで出るまで回したんで早い方っス。いえ、それが……」

垣根『早く言えよ』

誉望「発表をまだ伏せてる……垣根さんの新曲の、ノンクレジットPVの視聴コードでした。こいつをフルで見るにはこれしか手段は無いって奴です」

垣根『……そうか』

誉望「俺……ちょっとPの仕事に感動してます。これは、確かにスペシャルシークレットですよ……ええ、失礼しますっス」ピッ

下っ端A「いやーみんなで山ほどバーガー買った甲斐があったっすねー」

誉望「だよなー……あ、垣根さんがみんなに今度はもっといいもん食わせてやるって言ってたぞ。組織の金で」

下っ端A「マジすか。残り持って帰って冷凍するんで、もうしばらく飯はいいっすよw」

誉望「値段一緒だし他のも頼んでみたけどうまかったな」

下っ端A「本当に、みさきちのグッズは俺が貰っちゃっていいんすか」

誉望「うん。確かCチームに第三位のファンもいたからトレードすんなら…いや、あそこは第五位のもいたかな?」

下っ端A「ちょっとSNSチェックしてきます!!」

下っ端B「誉望さん!」

誉望「どしたー?」

下っ端B「Fチームのガチャで……べ、別のが出たそうです!!」

誉望「え」


偶像様で第一位様がやったそうですね。
マグロナルドの一日店長かー。マグロはどこのマックのもじりだっけ。
ところで麦野はまーだ偶像様にでてないんですかねえ。
表の顔はアイドル、裏の顔は闇の狩人wwwなのを期待してるんですがねえ。
似合わねえフリフリを着せられるむぎのんとかみたいだろうが!こんにゃろ!
芸能界の荒波と事務所の販売戦略に翻弄される能力者アイドルのことを思うと>>1は今日も筆がノリます。
らっこさんだってみんなと楽しくしてていいよね?っていつものやつでした。
次は小ネタより本編でお会いしたい。
またドーモ。


ラッコちゃんを虐めまくって泣かせるべきだと最近気づいた

そう言えばこれって番外小ネタだったっけ。

プロデューサーGJ
ファンの射幸心とアイドルのイライラを全力で煽ってくるw
垣根のガチャ回したい

小ネタでもいい
おもしろくてスレ落ちなければ

別のSSRには何が写ってるんですかね(ゲス顔)

垣根スリーとメルヘンワンがめっちゃツボ
というかこうして書くと、なんかロボットとかの名称にも聞こえるな

>>795
なら1が空中と地上戦用で2が地上と地中戦用で3が海中と地上戦用だな
もちろん武装は1がビームとトマホークで2がドリルで3がミサイルだな

>>796
※全ての兵器に翼がついています

超電磁砲の新刊はよ


早朝の常盤台中学にやってきた垣根は耳に手をやった。
服装はまだ、あの屈辱的なものではない。
耳におさまったワイヤレスのイヤーピースは髪に隠れてしまえば見えないくらい小さいが、感触には慣れていなかった。
前日までの装備と同じように常盤台の連中に用意されたと言う無線。
それを繋いだ先で応答したのはゴーグルの少年だった。
第一声で、
「ああ~聞きましたよ。垣根さんボイスの設定変えちゃったんスよね? 折角いい感じだったのに」と言ってきたあたり。
こいつはどんな状況でも、しようのないオタクだった。
失敗については既に反省させて一度蹴りをつけたと言っても、仮にも任務の最中なのだから遊ばずにきちんとして欲しいところだ。
そこは上の人間として垣根も釘を刺しておいたのだが。
本人は、
「俺は耳もとで美少女ボイスは慣れてるんでどんなのが来ても平気っスけどね! いやー、それが好みの子だと集中力はあがるしやる気は出るし、
聞いたセリフは忘れにくいし怒られてもご褒美なんでいいこと尽くめなんですが!!」
などと、意味の分からない供述をしており。
オタクの尖った特性に引いているリーダーの心証はおかまいなしだった。

これから、校内での活動の前に常盤台側の協力者との打ち合わせをしなくてはならない。
仕事用の端末に送られてきた添付ファイルの地図データを確認しながら足を進めていく。
呼び出された場所まで向かう間、垣根はなんてことのない会話を続ける。
この任務の間、常盤台に潜入する垣根の後方支援として組織の人間との通話回線は確保されていた。
校外からの協力が実際に必要かどうかは別としても、話し相手がいるのは暇つぶしくらいにはなる。

[別に俺は、初期設定ボイスの垣根さんにあのアニメのエンディングまで歌って貰おうとかそんなおっかないことは考えてませんよ? 本当っスよ]

「?……ちょっと今それ歌ってみろ」

[えっ何でですか]

「何がおっかねえんだよ。歌ってみろ」

[あっ…………いやいいですって。自慢じゃないんですが、俺すげー音痴なんスよ]

垣根がひっかかった部分を確認すると、ゴーグルは慌てた声をあげる。
うっかりしてしまった失言をごまかそうとしているのがバレバレだが、垣根がそんなことでやり込められるはずもない。
わかっていても馬鹿な真似をするのは、本人の馬鹿さ加減と言うか。うかつさが招く習性に近いのだ、とは心理定規のコメントだ。
同情してやりそうになるくらいは残念さ極まりないが、見逃してやるほど垣根も甘い男ではない。

「いいかどうかお前が決めることじゃねえだろ」

[じゃ、じゃあ怒らないで聞いてもらえますか]

「さっさとしろよ。何度も言わせるな」

[……『わ、た、し、翼があーるーのー♪]

「……いい度胸だなゴーグルテメェ」

ガッ、キーン! と垣根は外した小型マイクを近くのものにぶつけて、ふざけた頭の少年に大音量のノイズをお見舞いしてやった。
耳もとでバタバタした雑音と、すんませんすんませんと謝罪の言葉が繰り返される。
どうやら少年は「電話先の相手に頭を下げる」を土下座で実践しているらしい。


「仕置きが足りてなかったらしいな。ったく、次はもっと重くしてやる」

[そんなぁ俺本当に潰れちゃうっスよ。わあお花咲いたきれいとかそんなじゃないっスよ]

「けど能力使ってりゃまだ耐えられるだろ」

『未元物質』の攻撃手段の一つ、重圧をかけて対象を押しつぶす。
その威力を身をもって思い知らされているゴーグルの少年は、垣根の次回の制裁宣言に情けなく返事をしていたが。
続いた一言に一瞬言葉をなくしていた。

[え?]

「あ? 何、お前真面目かよ」

[え。あの、垣根さんどう言うことっスか?]

考えたらしいのだがまだ理解できていないらしい。
やっぱりこいつ馬鹿だった、と。垣根の肩の力と一緒にゴーグルの評価が落ちていく。

「お前の能力で抵抗させればあのくらいしのげるだろ。今まで馬鹿正直に我慢してたのかお前。はー、馬鹿だな」

[あの俺が言うのもなんなんスけど、ペナルティの意味あるんスかそれ?!]

「頭使えよ。ああ、馬鹿な上にドMだったのか?」

[馬鹿はともかくそっちは違います。ええー……そんな……]

別に、垣根だって憂さ晴らしに人間せんべいやパンケーキを作るようなお料理趣味はない。
向こうの能力の耐久性、と言うか限度も大体分かっている。
どこまで負荷をかけたら事故にならないか、その加減もしているし最初からそこまで悲惨な目に合わせる気がないのはゴーグルだって分かっているだろう。
体罰とリンチは違うのだ。
多分。

わかりやすい……例えばどこかの組織にブチ殺されたとかそんな理由ならまだしも。
こちらの不注意で人員を駄目にしました補充して下さい、なんて話がすんなり通らないことは垣根もわかっていた。
おまけにこの馬鹿は正規構成員なのだ。馬鹿だけど。
それなりの水準で使える人間を暗部に徴収するのだって手間がかかるだろう。
だから垣根が、わざわざつまらない理由でブチっとしたりもしないことくらいわかりそうなものだ。

それでも。
頑張ったつもりで無駄だった結果を知ってしまったゴーグルの少年は、突然のネタバレに納得も出来ないようだった。
そんな下らないやりとりをしているうちに垣根は目的地に着いた。
常盤台中学敷地内の、応接室だろうか。
生徒の集まる校舎から少し離れた、指定された場所についたことを確認すると垣根は扉を叩く。


「どうぞぉ」

入ってみると、部屋の中には豪奢な調度品が並んでいた。
中東の産油国の金持ちには、別宅として来賓を歓待するためだけの屋敷がある、と言う話を思い起こさせる様子だった。
その中心……大きなテーブルの前に座る少女は笑顔で、入り口に立つ垣根をうかがっている。
相手の目星は垣根にも付いていた。
この敷地の中で彼と意見を交わせるような立場の人間がそもそも少ないのだから、そこから更に学生を絞り込むのは簡単だ。

「学校側の協力者ってことはテメェが第五位、食蜂操祈か?」

「アナタが第二位の垣根帝督さんかしらぁ? そんなところに依頼力を発揮するなんて、常盤台も面白いパイプを持ってたみたいねぇ」

今朝までの話は聞いてるわぁ、と言うと食蜂は店先に並んだバッグに向けるような目で垣根を眺めた。
この手のことは、自分がするのは何とも思わないが他人にされるのは気分がよくない。
垣根は舌打ちを我慢して渋い顔でうなずく。
相手は仮にも協力者だ。ファーストコンタクトで即、心証を悪くしても仕方ない。

「挨拶が済んだところでさっさと話を進めたいもんだが……その前に、少し失礼させてもらう」

「あらぁ。そうねぇ、アナタにもセキュリティチェックに散々協力してもらってる訳だし、私は構わないわよぉ?」

ポケットから取り出したスマートフォンを振ってみせると。
女生徒は余裕の態度で、話し合い前のちょっとした確認作業に同意した。
椅子を引くと垣根は声を落としもせず連絡した。
取り出したスマホは通話には使わず、画面を操作する。

「おい。ゴーグルは置いてるな。今から言うチャンネルと映像を繋げ」

少年はそのチャンネルはブランクのはずだ、とか何とか言っていたが、垣根の舌打ちひとつですぐに言われたとおりにした。

[えっ……なんスかこれ]

「何がみえる」

[派手な部屋と女の子っス。金髪ロングでスタイル反則っぽい……垣根さん、いつの間にゴーグルに何か繋いだんスか?]

予想とぶれの少ない返答だったが、垣根は更に注文をくわえる。

「よし。前に拾った画像データがあるだろ。第五位の顔写真、それと照合しろ」


垣根はここに来る前に持ち主に黙ってゴーグルの設定を変更していた。
奴の使う機材はケーブルで直接接続するものもあれば、ワイヤレスネットワークで切り替えているものもある。
土星の輪より下部分、ケーブルで繋がれた機械はチューナーの役割もしているらしい。
そうやって登録された電子機器の中に垣根の携帯電話のカメラ機能を追加させたのだ。
クラウドはもちろん携帯端末のペアリングなど、データを共有する仕組みは幾らでもあるので簡単に同期出来た。

散々、情報漏えいがどうのと『スクール』の人間に注文を付けていた癖に。
個人の携帯端末程度なら部外者が校外から持ち込んだところで問題なかったのは、常盤台側の甘さを笑ってやるべきだったのか。
まあ個人の尊重すべきプライベートが遵守されていると思えば、そう馬鹿にすべきでもないのかもしれない。
一時代前の諜報員が聞けば歯をむいて悔しがるくらい、今やこの一台で何でも出来てしまうのは能力者だってありがたい機能だ。

ネットワーク経由で少年の目の一つになったカメラのレンズを、垣根は室内の女生徒に向ける。
『心理掌握』は対象である人間を操る能力のはずだ。
仮に垣根の見ているものが操作されていても、手元の機械の映像は誤魔化しようがないだろう。
それをそのまま、限りなく正確に確認できる手段が垣根にはひとつある。
確認させる、と言う方が言葉としてはきっと正しい。
だが。

垣根帝督の扱える選択肢の中には、手札の役割もきちんと数え上げられている。
もちろん、任務の中で虚偽の報告や手抜かりを許すほど甘い人間でもないが。
それ以上に彼に逆らううまみがないことを組織の人間はよく理解している筈だ。
そしてそんな重責は知らないだろう、通信先の少年は少し黙った後返事をした。



[あー、食蜂操祈ですね]

「お前には写真に写った食蜂に視えてるんだな? 確かか」

[ものすごい特殊メイク技術か、実は双子……と見せかけて食蜂操祈が最初から暗示に掛けられた替え玉だったんだよ! ってオチがなければですけど。
おっと、顔認証システムにもかけてみましたけど適合しました。そこにいるのは本人で決まりっスね]

これでいいですか、と尋ねられて垣根は一旦通話を切った。
上着のボタンを外し椅子に深く掛けると相手に向きなおる。

「こっちもビジネスだ。依頼元の不利益になる真似は極力しねえ。どうせ記録媒体も、こっちの記憶も洗う準備はあるんだろうが……必要なら今の身の回りも確認しておくか?」

「そちらの話は通ってるから、そこまでのアピール力はなくてもいいんだけどぉ。それで、アナタは満足出来たのかしらぁ」

「まあな。ちょっとした首検分だ」

垣根は大げさに肩をすくめてみせる。
向こうの用事でこうして第二位が出向いているのだ。
多少の失態があったと言ってもそれなりの対応をして欲しいところだ。
垣根帝督と言う人間を招いておいて、もし替え玉でも立てられていたらムカつく。

「いやねぇ。そんなに警戒力を発揮しないわよぉ。いくらアナタにちょーっとみんなには言えないことをしてもらおうと思ってるからって……あ、見せられないの間違いだったかしらぁ?」

「何しろそっちは常盤台の女王様だろ? 噂は聞いてるからな。こっちも気分の問題だ。
いや、仕事の前に軽く運動が必要なら付きあってもいいんだぜ。ダーツでもしてみるか? いい具合に的は目の前にあるしな」

「冗談でそんなに熱くなられても困るわぁ。野蛮力の高い人の相手はし飽きてるし、スマートな会話力を期待させてもらうんだゾ☆」

「煽ってテメェのペースに持ち込もうってパワープレイなら相手を見てやるんだな。こっちの人間でももう少しうまくやるぞ。逆効果で馬鹿見るなんざ、超能力者がしてくれるなよ」

「だからこそよぉ。アナタくらい器の広い人でないとぉ、あんな話も受けてもらえないもの。私の予想力以上に素敵な人で良かったって安心してるわぁ」

「あからさまにいきなり繕われると白々しさに拍車がかかって悲しくなってくるんだが、これ以上俺の期待を裏切るような小せえことはしねえよな?」

「もぉ、こっちが頭を下げるつもりなのに、後ろから撃ったりいきなり洗脳なんて失礼なことしないわよぉ?」

「ははは。不意打ちでテメェの好きにさせるかどうかってのまで今確かめたいのか? そうがっつくんじゃねえ」

緊張感、空気、ブチ壊し。
両者、にこやかな笑顔のまま数発の応酬。
常盤台の今後を左右しかねない力をもった、超能力者二名の会談がはじまった。



とりあえず本人らしいことが判明した食蜂操祈は足を組んで椅子に座っている。
制服を着ていても中学生なのか疑いたくなるプロポーションは、はたしてどんな裏技をつかうとゲットできるのか。
そんな。
能力以外もチートな中学生は話しはじめてすぐに、わかりやすくぶーたれていた。
垣根のせいでこの後、急きょ適当な理由で集会を開いて学校関係者全員の頭に細工をしなくてはいけないのがお気に召さないらしい。
おまけに早起きまでさせられたと不満そうだ。

始業時間までに簡単な説明だけしておく、と前置きして食蜂は話しだした。
今回の任務の内容はと言うと。
垣根に常盤台の生徒のふりをさせ、怪しい人物を洗い出すのが目的らしい。
対・人間関係のスキルやただの嘘つき探しなら、垣根より余程心理定規が長けていることは依頼元にも伝わっているだろうが。

あえて、何故垣根がそんな真似を、と本人が思ってしまうのはやっぱり避けられなかった。
たとえ超のつきそうな極秘任務で、限られた人間にしかこなせない仕事だと言われてもやはり不満はある。
主に扱いと服装に。

「表面力ではこの件の捜査はもうほとんどされていないわぁ。でも犯人さんは、そうじゃないことがわかってるはずよねぇ」

彼女の言う通りどこかの大馬鹿のミスで、自分を狙う動きがあることは犯人側にバレてしまっているだろう。
向こうにも警戒され、調べると言ってもやりにくくなるはずだ。

「昨日の今日っつっても数時間前だが、この先もう騒ぎが起きないって可能性はないのか。わざわざ捕まりに来るほど馬鹿でもねえんだろうが」

「この五日で、分かっているのが一〇人……恐らく、犯行に利用されていた人数よぉ」

食蜂はそう言って書類を一束テーブルに乗せる。
風紀委員の報告書か、形式ばった文章が並んでいるが。
垣根が目を通した限り、中身は昨夜までの任務の際にも伝えられていたことと変わらないようだ。


「同じ日に二人以上が確保されていることもあるわ。何度も挑戦力を示すほど、大事なことがあるみたいねぇ。
でも。この先はもう、夜間の犯行だけにこだわってもいられないと思わなぁい? 大人しく探し物だけしているなんて保証力もない訳だし」

やっと、求める情報に触れはじめた手ごたえに垣根は鼻をフンと鳴らした。
そんな垣根の視線に食蜂も、察しが早いと助かるとでも言いたげに目を細める。

組めば、強固な警備を誇るホワイトハウスさえ落としかねないと噂される常盤台の能力者たち。
そのうち数人とは言え、操られて利用されている実情を踏まえると……最悪、それらを敵に回しても制圧出来るだけの人材。
『学舎の園』の機密性を保つため人員はごく少数、出来れば単身で諜報員と警察組織両方の真似事がこなせないといけない。
だからこそ。
第二位の超能力者。垣根帝督にぜひ頼みたい、と食蜂は、ここではじめてはっきりと口にした。

「大役を任せるだけの人員力に乏しいのよぉ。それも常盤台になるべく関わりのない人がよかったから……
まさか、お願いをきいてくれそうな所にアナタがいるなんて、常盤台も幸運力だったわよねぇ」

一瞬、当たり前の賞賛に垣根も不敵に笑い返したが。
垣根にとっては迷惑な話だ。
垣根個人に対する話なら、ふざけんなとバッサリ断ってしまえたのに。
仕事を受けるのは組織の上の人間だから、暗部組織が噛んでくると垣根も反対しようにも文句を言うくらいしか出来なくなる。


「アナタは普通の生徒と同じように生活してもらえばいいわぁ。この時期にやってくる転入生なんて、犯人さんから見たら不審力爆発だと思うけど」

「そいつの目的が何か、当たりはついてんのか。判断材料無しでおかしなヤツを挙げていったら生徒の中でまともな人間はほとんどいなくなるんじゃねえの」

「目的力は常盤台の内部情報の持ち出しかしらぁ。純粋な産業スパイなのか他に何か、なんてところまではわからないけど今まで見つかった人たちがしていた

……させられていた内容からしてほぼ間違いないわぁ。ただ、主犯格が生徒なのか関係者なのかの判断力もつきかねてるのよねぇ」

恐らく、洗脳能力か、それに類似した技術を使っているのは間違いないだろう。
それが常盤台が導き出したこの事件の重要な手がかりだと言う。
何しろその道のプロが手を焼くほどだ。

「既に確保した中に共犯者がいる可能性は。洗脳されたふりをしたか、そう動く様に無意識に誘導させられている線は当たってんのかよ」

垣根は足を組み、質問を重ねる。
人間を操るのに何も直接頭を操作する必要はない。
感情や印象をヒントに相手の判断を、行動をそう仕向ける。
そうするのが素晴らしい、自らの選択だと思わせてこちらの狙ったカードを相手に引かせる手段があるのは、彼もよく知っている。

「そっちもねぇ……期待力は薄いわ。もしアナタなら、手駒に正直に情報力を渡すかしらぁ? 嘘を吐いている自覚のない人間ほど洗いづらくて困るからまだはっきりとは。
それに……知っている情報は幾らでも引き出せても、本人が知らないことには手が出せないでしょ?」

やれやれと食蜂が肩をすくめる。
手袋に覆われた手が上を向いた。

「ほとんど手がかりはねえってことじゃねえの。それ」

今まで一体、この女を含め常盤台の連中がなにをしていたのかと垣根は呆れそうになる。
だが彼女の『心理掌握』で被害にあった者や捜査にあたった人間への対処は既にしてあるらしい。
ただし、どこにヒントがあるかはわからないので、記憶そのものは消去していないそうだ。
その代わり。
特別なきっかけでもない限り本人の興味が事件に関する情報に向かない様に細工されていて。
彼女らの中ではそれは優先度の低い「既にどうでもいいこと」に仕立ててあると。

注目の目をそらす為にわざと多くの情報をばらまく様に。
派手な話題の裏で、起きている他の事柄を悟らせまいとする様に。
秒単位で更新されるタイムラインの流れのように、日々目につく多くのものの中に意図せず埋もれてしまっているのだ。
だから、校内でこの件に関する余計な不安や噂が広がったり騒ぎが起きることはまず心配しなくていいらしい。
風紀委員のような正規の捜査員とかちあって面倒なことになるリスクもそのおかげでないそうだが。

洗脳を施した中に真犯人がまぎれていても自分の目的を忘れたり、騒動を起こす気を無くして自然消滅していたり……なんて都合のいい話も、同じく期待できないと言う。
犯人の頭の中で特別なカテゴリに分けられているだろう事件に関する情報、記憶、感情。
そのどれもが「どうでもいい」印象のままいつまでも放っておかれるはずがないからだ。

「もしも、人間の行動をコントロールする装置なんて不快力の高い物が存在したら、私じゃ対抗出来ないでしょうし。
同系統の能力者が私の突破力の裏をかいている、って言うのが一番信ぴょう性のある仮説なんだけど」

「あ? けど何だよ。能力じゃねえなら魔法や宇宙人の仕業だなんてふざけたこと言うなよ。古臭いSF小説じゃねえんだ」

「そうなるとさしづめ……ねらわれた常盤台、かしらぁ?」


その後食蜂は、自分の頭にテレビのリモコンを向けるとボタンを押して垣根を見ては首を傾げ……またボタンを押すと言う謎の作業を何度か繰り返していた。

「うん。これにしましょうかぁ。ちょっと目を閉じてもらえるかしらぁ」

「嫌だ」

組んだ腕を指で叩くと垣根は即座に断じていた。
特別意味も理由もない行動だが、残念ながら彼はいい返事を素直にしてやるタイプの人間ではない。

「なんでよぉ。一瞬でいいのよぉ?」

「俺が目を離した隙におかしな真似するんじゃねえだろうな」

「嫌ねぇ。上位の超能力者の癖に格下に警戒力を発揮するのぉ?」

のんびり遊んでる余裕力は無いんだゾ? と食蜂は壁に掛かった巨大な時計を指した。
垣根もこの席を引き延ばすのが目的ではない。
相手のやり方に従っている空気が嫌なだけで、一言文句をつけた時点で気は済んでいる。

「で? 何する気なんだよ」

「私の改竄力でこれから他の生徒達に何をするのか、きちんと試して貰おうと思って。アナタが協力するのに安心力は必要でしょぉ? 
それに、ここにいる以上、それらしく振舞ってもらうには他人にどう見えるのか自覚力を持ってもらわないとねぇ」

食蜂は話しながら、バッグからさまざまなリモコンを取り出して磨き上げられたテーブルの上に並べていった。
能力の使用に必要なのだろうが、他人からみると意味の分からないものだ。
テレビ、エアコン、録画用レコーダー、オーディオ……恐らくは、「十得ナイフ」の様に多様な能力を切り替えるスイッチのようなもの。
その用途の予想がなんとなくつきそうで、はっきりとはしない。
垣根はそれをながめてからうなずき返した。

「不愉快さは少しくらい減るかもな」

「でも、そうねぇ……アナタみたいな能力者に、どこまで通じるか不確定力だからぁ。やっぱり直接頭を弄らせてもらうわねぇ」

そう断ると。
食蜂はわざわざ並べたリモコンの群れをカバンに戻していった。
今から垣根に対して能力を使う、それまでは手出ししていないとアピールしたいだけの儀式めいたパフォーマンスだったのかもしれない。

食蜂の指示を聞いて。
垣根が黙って目を閉じてしばらく待っていると、何度か頭を触られた。
蜂蜜のような甘いにおいが鼻をくすぐる。
食蜂のつかっているシャンプーか何かだろうか。
じっとしていると時間は長く感じるものだが。済んだ、終わったと声がなかなか掛からない。

「まだか」

「ちょっとぉ、いきなりこっち見ないでよぉ!」

垣根が焦れて目を開けると、思っていた以上に近かった。
鼻先が触れ合うような距離にいた少女は驚いたのか目を丸くして叫ぶ。

「痛ぇ?!」

これは。
流石に予想外だった。
ごづん、と。
照れ隠しにしても可愛らしくない鈍い音が垣根の頭蓋に響いた。


その後。
衝立の後ろでサイズを調整された制服に着替え終えて、準備を整えた垣根は。
改めて今回の協力者……学園都市でも随一の認識阻害(他人の脳みそごと騙し通せる)が可能な人物にこの格好への疑問をぶつけた。
他人の頭を好き勝手弄り倒せる超能力者の協力をこぎつけておきながらこのざまは一体何だと言うのか。
組織の誰に聞いても、
「今後の詳細は校内で協力者に聞いてくれ」の一点張りで詳しい話は教えてもらえなかった。
あるいは本当に知らされていなかったのかもしれない。

この常盤台の人間でさえ箝口令を敷かれるどころか記憶を改ざんされているのだ、詳細はなるべく伏せておきたいのかもしれない。
それでも蚊帳の外におかれたような状況は不愉快だった。
まさか、食蜂が『スクール』の上役の馬鹿と組んでいるなんてことは無いだろう。
だが。
これは垣根の推測だが……さっきまでの会話でも、食蜂は他人を振り回すのを楽しむタイプに思える。
たとえば、馬鹿な癖に高慢にふるまう大人をからかう愉快さは垣根にもわかる。
だからと言って。
彼女より格上で年上で、まず他人から馬鹿になどされないこの垣根帝督がこんな仕打ち(女子制服着用を強制)を受けているこの状況が。
単純にこのガキに遊ばれてるだけってことねえよな? と言うのはちょっと愉快すぎる思い付きだ。

ここまで出向いた垣根の期待はそれらを覆す、納得させるだけの返答だったのだが。
もし嫌な予感の方が当たりだったら、たとえ『暗部の任務』と切り札をチラつかされていても全部まとめて吹き飛ばしかねない。
お互いにむっとした顔をつきあわせたブリーフィングを続ける。

「っつうか、テメェが出張るんなら、俺がこんな格好しなくても……やっぱり良かったんじゃねぇのか」

「やることは少ない方がいいのよぉ。校内全ての人間の頭の中をリアルタイムでずっと弄り続ける程私も暇じゃないのよぉ。
いちいち目撃者の記憶を消して回るのも面倒力でしょう」

「回りくどい手しかねえのかよ」

この口ぶりでは、超能力者と言っても校内の生徒だけでざっと二〇〇人、更に関係者を含めた大勢の人間をまとめていっぺんに操作するなんて無茶は出来ないのだろう。
まあそんなことが出来るなら、こいつは第五位なんて位置にとどまっていない筈だ。
そう少し見方を変えると。
厄介な能力者と敵対していない現状は悪くない。
何か、今後上手く使ってやれないだろうかなどと。
一定の評価を含めたややワケありな視線を垣根が向けていると、それをどう受け取ったのか食蜂は肩をすくめた。

「あらぁ、もしかしてまだご理解いただけてないのかしら。だってこれはあなたの為でもあるのよぉ? 
この敷地内で不審者として不当な拘束力は受けたくないでしょぉ?」

「そっちもな。この俺の手をわずらわせておいてあんまり調子に乗るなよ」

にらみあい、互いのプライドがしのぎを削る。
先に折れて、首を振ったのは食蜂だった。

「あなたの場合は少し変化をつけておいたわ。ほら、そこに鏡があるでしょぉ?」

言われるまま部屋に置かれた鏡を見ると、垣根に妹でもいたらこんな感じかもしれないと思わせる様な。
面影をよく残した少女が写っていた。
席を立ち、その前まで移動すると垣根はまじまじと鏡の中を覗いた。
そこに垣根帝督の姿はない。


「これが……俺か」

「ふふふ。なかなかの造形力でしょ。ここの生徒たちはこれから依頼力が終わるまで、あなたが視界に入るとそれを見ているつもりになるわぁ」

食蜂の補足によると、垣根本人の場合は鏡に映った自分の姿だけが洗脳の影響下になるらしい。
それを聞いて垣根は自分の両手を広げて眺めた。いつも通りの手足がある。
確かに、こうやって見下ろした自分の体が四六時中他人のものに見えていたらと想像すると……頭がどうにかなりそうで気色悪い。

「ただねぇ。少し不安力があるのよぉ」

「あぁ?」

はぁ、とわざとらしいため息とともに不審な発言がこぼれる。
それにかみつくような垣根の反応に。
ニヤリと可愛らしくない笑みが返ってきた。

「ちょっとあなたの能力をわかりやすく使ってみてもらえなぁい?」

「なんだよ。これでいいのか」

言われるままに背中から翼を伸ばすと。
鏡の中の少女の姿がぐにゃぐにゃとゆがんだように…垣根には見えた。


「あらぁ。私たちの能力は相性力が悪いみたいよぉ。あなたのその『未元物質』はわたしの改竄力を妨害してしまうみたいねぇ」

「なんだって。じゃあ、俺が能力を使うとどうなる」

ええとぉ、と食蜂は伸ばした人差し指で自分の下唇をおさえた。

「干渉が小規模なら部分的に化けの皮が剥がれてあなたの真実力がお披露目されちゃうかもって感じねぇ。最悪の場合」

きゃるん☆ とおかしな効果音の出そうな仕草の後で、食蜂はそのまま口元を隠して笑い出す。

「ぷふっ、ふふ……その、スカートを履いたお兄さんがいきなりみんなの目の前に登場力するってことよぉ。びっくりするでしょうねぇ」

「何携帯構えてんだ。テメェも死ぬほど驚かせてやろうか」

「あ。カメラ対策もしておかないとねぇ。後で恥ずかしい写真なんて出てきたらあなたの報復力が恐ろしいわぁ」

「よくわかってるらしいな」

てへ☆ とぶりっこなおでこコツンを披露した食蜂だが、すぐにその星の飛んだようなきらきらした目を真剣なものにして垣根を見返した。

「大丈夫よぉ。少しくらいおまけを追加しても私の改竄力には穴なんてないから。そのアバターの希望とかもあったらついでに聞いてあげてもいいわよぉ?」

それは、自分の能力に十分な自信を見せる能力者の顔だった。
それに全くの好き勝手をするだけでなく、一応垣根の意見にも耳を貸す姿勢があるらしい。
垣根と同じくおかしな事件の為に不本意ながら引きずり出された超能力者である彼女も、自分が動くからには抜かりなくことを始末するつもりだと言外に示していた。
終始ふざけたような態度と高慢さが鼻につくが。
食蜂のこの件への態度が見えたことに満足して垣根は問いかけに首を振った。

「別に。勝手にしろ」


依頼内容の詳細と活動方針を含めた話し合いを終えて第二位が去った後の部屋で、食蜂は淹れなおした紅茶を飲んでいた。
垣根の方は折角出された飲み物に最後まで手もつけなかった。
食蜂が自ら淹れたお茶なんて、常盤台の派閥内で争いが起きそうな超レアものだと言うのにもったいない話だ。

「ふぅ……まだガード力は堅そうねぇ」

金の蔦模様が描かれたカップを置くと、彼女はひと心地ついたように息をはく。
常盤台中学側の協力者、案件処理の調整役と言えば聞こえはいいかもしれない。
だが、食蜂の役割はそんなに簡単なものではなかった。
『学舎の園』に男性を呼び込む特例、対象が超能力者と言うそれだけでもう大事件だ。

彼女の一番の大仕事は、「学内に対する第二位の危険性を抑制すること」。
言うならば、花瓶に活ける前の薔薇の花から棘を除くようなものだ。
少女たちが知らずに触れても指先ひとつ傷をつけない為の予防策。
常盤台に危険物を搬入する必要最低限の安全措置。
問題の解決に協力はさせながらも、不要な行動を制限する必要がある。

だが、そんなことはわざわざ他人に言われるまでもない。
ここ。常盤台は女王の城、彼女の庭。
例え相手が超能力者であれ、事件解決のために学校側が招いた厄介な来賓であれ。
そのテリトリー内で勝手な真似をさせる訳にはいかない。
この常盤台の生徒たちは皆、彼女の駒に成り得るものばかりだ。
彼女がその手で扱うのならその責任は全て自らに返ってくる。
その程度の矜持は持ち合わせた上での手駒。
それに無礼に傷などつけられても困る。

その為の保険もきちんと仕込むことが出来たことを食蜂は安堵する。
彼女より力も体格も上の相手だ。
お互いの能力を抜きにしたってまず絶対に敵わない。
だが。
能力の強度、相性、更に序列の違いはあれど、一度頭を捉えてしまえば相手が生身の人間である限り食蜂操祈の操り人形だ。

あの時、彼女が施したのは他の生徒と共通した「人物の認識処理」だけではない。
垣根の頭の中に即興である種のフィルタを組み込んだ。
『印象操作(カテゴリ109)/常盤台の学生は垣根帝督が敵対するに値しない。また心理距離五〇以下の既存のカテゴリに基づいて違和感を与えぬよう自動的に分類される』
と、言う認識を挿入してある。

これで、垣根帝督は常盤台の生徒を『危害を加えてまで排除しなくてもいい程度の人物』と思い込むことになるはずだ。
無関係な生徒たちの安全性があがるだろう。

「メッセージのやりとりくらいなら良いけどぉ、そんなに長く超能力者の操作なんてしたことないのよねぇ」


次に重要なのは暴走防止。
もしも、『心理掌握』の作用に不備が起きた場合。

自分が他人に操られていたと気づいた人間がどんな行動に出るか。
また、拒否感や精神状態の落差からショック状態を起こしてしまう可能性がでてくるかもしれない。
その辺の能力者の暴走ならまだしも。
超能力者にそれをされたら、笑いごとにならない結果が出るのは簡単に予想される。

いざと言う場合に第二位を押さえ込むのが食蜂でも難しく、もう一人の超能力者も当てになるかの判断が難しいなら。
本人にセーブしてもらえばいい。
能力を使わせない方に意識を向けるための最初のステップを兼ねた条件付けはそのためのものだ。

それでも、彼に話にひとまずこちらの言い分に耳を傾けるだけの人間性があったのはありがたかった。
食蜂にとって不都合なのは、「頭の中が弄れない相手」に「力ずくで対処される」事態だ。
安全装置を仕込む前に抵抗されていたらなす術がない。
いくら依頼をした側だろうと、超能力者相手に気が抜けないのは彼女が一番よく分かっている。
もし自分なら素直力を発揮して大人しく相手の言う通りに行動するか? そんなはずはない。
だが垣根帝督も、上手くつついてやれば食蜂の話を受け入れてくれた。

例えば、簡単な指令を幾つかだして従ってもらう。
重要性は関係ない。
従っていると言う感覚が薄いくらい簡単なものが丁度いいのだ。
例えば待ち合わせる時間と場所。行き方もこちらの要求を通しておく。
だんだんとこちらのペースに持ち込む内に、下地が整い主導権はごく自然に手元にやってくる。

まあ、それ以前に。
「常盤台に入るために女の格好をしろ」なんて最大級の無理難題が一番最初につきつけられれば、後はどんな話を聞かせられても「なんだそんなことか」と楽勝になりそうだ。
こんなにひどいコントラスト効果もそうそう無い。
食蜂も『心理掌握』が通用する相手ならどんな馬鹿げた真似でも……ダイエッターに大食いチャレンジや、交差点のど真ん中で裸踊りなんてことも簡単にさせてしまえるが。
勝手な行動への牽制にでもなればとあがった無茶振り案。
その要求を素面のあの少年にのませたあたり、相手側の関係者は余程の懐柔策を弄したに違いない。
それか。
超能力者に首輪をつける、余程の弱味を握っているのか。
そんな影響力を持ち、風紀委員や警備員に頼らずに問題解決の出来る何らかの存在があるのは確かだ。
だがそこに彼女が首をつっこむ必要はない。
今回の件のでどころは食蜂も知らない。
常盤台中学の関係者か、どこかの理事か、もしかしたらムカつく知り合いかもしれないが。
どこかの誰かがそこに声を掛けて上手くことが運んでいる。
今のところ問題はなさそうで、それ以上彼女が気を揉む意味もない。


(それにしても……あんなにあっさり制服を着るなんて予想力を裏切ってくれたわねぇ。かわいそうなくらい似合ってなかったけどぉ)

再登場した時に目が諦めきっていた垣根の顔を思い出して、食蜂は肩を震わせた。
笑っているが同情はしている。
そうなるだろうと知っていた食蜂本人も、制服を着た垣根を見てすぐに自分の頭も操作していなければその後の話し合いなどとてもできなかっただろう。

(まぁそれでも男の子の素直力はカワイイわよねぇ)

自分の言うことを聞いてくれるおバカさんをかわいく思うのは男も女も同じだろう。
もしも彼が食蜂の予想以上に短絡的でムカついたら構わずブチかましてしまう奴でも、駄目押しの予防策がまだある。

それが、『能力を使うと正体がばれてしまう危険性がある』と言う垣根の思い込み。
食蜂が洗脳を施した対象のコントロールは絶対的だ。
最初からそう条件を付けてでもいない限り、外的要因で簡単に解けてしまうような種類の能力ではないのだ。
だから、垣根に能力を使わせたところで生徒たちの認識はあくまで女子の姿のまま。
食蜂が付け加えたのはただの嘘。

だが嘘は、それを信じ込ませた人間には限りなく真実に等しい価値を持つ。
本来の色の上からペンキでべたべたと塗りつぶされたような強制的な白の印象。
それどころか七色にだって塗り替えて見せるのが女王の本領だ。
当人が能力を使うには問題があると認めている状況下で更に能力の行使=他者への加害の機会そのものを減らす、と言う相乗効果を狙う。
彼女の見立てでは垣根はリスクヘッジの出来る人間の様だ、自分の損をわざわざ背負う真似はしないだろうと期待もしている。

他人を徹底して制御下におくことの出来る女王の策はクモの巣のように張り巡らされていた。
全ての意図が機能しなくても構わないが、細部まで整えておく余裕と下準備の美意識こそが重要。
考えなしの脳筋タイプとは違うのだ。
そこに掛かれば、相手が圧倒的な能力者でも獲物に等しく絡め捕れる。

「垣根さん、ねぇ……なかなか紳士力の高い人で良かったわぁ。この分なら、私の本命力も十分果たせそうだしぃ」

少女はまるで盤石の玉座にいるように満足げだった。

「お話は円満力で片付いたから。これさっさと片付けてくれるかしらぁ。余計なものは使わずに済んだわねぇ」

そう、声を掛けると食蜂も部屋を後にする。
すぐに対能力者用の重装備で固めた警備員たちがぞろぞろと集まりだし撤去作業を開始した。
一体どこに設置されていたのか。
AIMジャマーをはじめとする各種装置、まるで猛獣……いや、恐竜でも捕えるような物々しい設備が次々に運び出されていく。
最後には離れのような建物ごと解体されて跡形もないくらいに整えられてしまった。

「いくら敷地の外から殿方を連れてくるからって、私までこんな狭い箱に押し込めることなかったと思わなぁい?」

厳重な警備態勢も、まるでドアを開けるレディ・ファーストのように当然だと言った態度。
その上でさらにからかって見せる食蜂操祈。
学園都市のお嬢様の頂点に立つ女王の風格も、それなりにふさわしい規格外さを発揮している。


食蜂は珍しく、たった一人で校舎に向かって歩いていく。
いつもなら囲んでいる取り巻きも今は誰一人いない。

「まぁ……私欲力込みで『彼』にお願いしてもよかったんだけどぉ。御坂さんが絶対に面倒だし……こんなところで余計な改竄力を発揮する手間が増えても困るものねぇ」

事件解決の出来そうな人物、でもう一人。
彼女の頭に浮かぶ人物はいた。
能力者の精神操作も攻撃も切り抜けられそうな正に「ヒーロー」みたいな人材。
「彼」が上手く巻き込まれてくれればよかったのかもしれない。
けれど全てのお話がそう上手くも行かないものだ。

常盤台の中で起こっている事件でなければ。いや、それでもどこからか関わっていつの間にか渦の中心に立っていてもおかしくない。
だが。そんなヒーロー的な特性は助けられる側の都合で濫用出来るものでもない。
まぁ、彼女の心配はそれだけではなく乙女心とはかくも複雑なものなのだった。

敷地内に招き入れるための工作、その他色々な利害力満載になってしまう。

彼女の思い浮かべる人物を常盤台内に入れたら最後。
学舎の園は事件とは別種の危機に陥り機能不全を起こしかねない。
常盤台が違う意味で落とされてしまうのは食蜂個人としても非常に不愉快だ。
校内を舞台にしたゲームの中で、プレイヤーキャラクタのアクション後に発生するフラグ。
その中から気に食わない……不愉快なフラグをすべて叩き折るどころか完全消去もしてしまえるが。
面倒なデバッグ処理をするつもりも、その権利も彼女にはない。

(洗脳力を『男性が居ても問題ない』設定にしてあのまま垣根さんを中に入れても別に良かったけどぉ。それはそれで面白くても、面倒力も増すわよねぇ)

常盤台には男が(ごく一部を除き)いないので会話どころか異性を見たこともない生徒も存在する。
浮世離れ指数の極めて高いお嬢様になると異性をほとんどフィクションでしか知らないので、

「殿方とは少女漫画のイケメンか芸能人のようで、何だかキラキラしたオーラが出ている生きものである」何て話を夢見ている場合があったりする。

垣根の場合素顔で潜入したらそっちの希望もかなえてしまい、うっかり間違った男性のイメージを生徒たちに植え付けてしまいそうだ。
なにより第二位は、箱入りお嬢様の初遭遇男子としては色々と刺激が強過ぎるだろう。
動物園のパンダか珍獣、UMAやペガサスが常盤台にやって来た!なんて騒ぎになると肝心の任務の方がなにそれ、とかき消えてしまう。

そう言った抑止力も含めてあんな格好をしてもらったわけだが。
広告サイトのゴリ押しするウフフな女子校ハーレムもの漫画みたいな展開は、まああり得ないだろう、と食蜂も浮かびかけた下らない思いつきに苦笑いした。
その線で行くと、先程の前提条件を満たすもう一人の期待のヒーローの方は……少年誌ギリギリなラッキースケベの入れ食い大当たり大連発みたいになりそうだ。
犬も歩けば……何て言うがラッキーも不幸も、常盤台には何しろ歩いて当たる棒の数が圧倒的に多い。
チャイムが鳴る前に何人犠牲になるのか予想もつかない。

もしもあっちを抜擢出来ていたら……常盤台未曾有の大惨事、飛び交う能力、あたりを吹き飛ばす超電磁砲。
墓標のように並ぶフラグの山。
怪獣映画級のすったもんだドタバタ大活劇になるところだった。

そうならなくてよかった。

(でも…そうよねぇ。将来的にどうなるかはわからないし、『派閥』の子には予防接種でもしておこうかしらぁ……)

特定の人物に過分な好意を寄せない洗脳方法でもないか、と危険な妄想を膨らめはじめたところで彼女のポケットから着信音が鳴った。

『女王、本日は急遽集会の予定が入っておりますがご存知ですか』

とSNSに連絡してきたのは派閥のメンバーにして食蜂の腹心、縦ロールの三年生だ。

「はぁい。わかってるんだゾ」

彼女が裏で糸引く一件とは言え。
退屈しない展開力は期待したいわよねぇ、と笑う食蜂はやっぱり楽しそうだった。

ドーモ。


>>789
乙ありですわ。
らっこさん素だとすぐ泣いちゃいそう。狩猟モードのS顔も素晴らしいがふぇえもきっと素晴らしいよね。

>>790
小ネタってなんだろうな。アイドル様は暗部(笑)な世界線らしいからほのぼのしててうらやましい。

>>791
電話のあいつの職権乱用がぱない。ガチャからは垣根しか出ないからはずれ無しで良心的だね!

>>792
ネタ切れで落ちる心配は今のとこないけど投下頻度が心配です……。

>>793
乙あり!!

>>794
それは……きっと沢山お金を納めた帝国民にのみ拝謁を許されたスペシャルなシークレットにふさわしい奴ですよ(棒)

>>795
ツボすか。なんかのコマンドみたくもある。

>>796
えーっとゲッター?

>>797
はい!ゼロEWみたいなメカかっこいいメルへンな翼がいいです!
未元物質製になるとカブトムシがあんな隠し切れない天使デザインにメルへン魔改造されるんだからロボそのほかも期待していいですよね?

>>798
そうな!!らっこさんはいいぞ。垣根も出るぞ!!

ワロタwwwwwwwwww

実際には能力使いまくっても周りからは女の子のままに見えて、垣根の見ている鏡の中の垣根だけがボロボロ顔が崩れるって事?

みさきちはかわいいなあ

垣根ベースの美少女に羽が生えるってそれ天使じゃね?マジ天使じゃね?
声だけでなく見た目も美少女になった垣根からのお仕置きはゴーグルにとってご褒美になるのかどうか

ゴーグルはそもそも三次元NG

何気に800超えてるんだね。好きなSSなので毎回楽しみにしています。


誉望「あーっ垣根さんもやってるんスねーポケGO!!」

垣根「まあな」

弓箭「やっと学園都市でも遊べるようになりましたから。今、大変流行ってますものね」

垣根「なんか出てきたら捕まえりゃいいんだろ」

心理定規「そうね。最初に地図を買うといいのよね。それで今近くにいるポケモンが大まかに表示されるようになるんでしょ」

誉望「ゲームのタウンマップの機能っスね。目当てのポケモン探して立ち入り禁止区域やスキルアウトの縄張りに入るとマジで洒落にならないっスから
ストップもポケモンも危険な所は排除されてて表通りと学校、あとは店に集中してるみたいっスよ」

弓箭「学舎の園は在校生でないと地図上にも表示されませんわ」

垣根「ゲーム目当てで、大勢に押しかけられたら困るところが山ほどあるんだろ」

誉望「あれ。でも垣根さん結構進んでますね。なんだ普通に遊んでるんじゃないスか。もうギャラドスも出来てるし」

垣根「わざわざ出歩かなくてもアイテム使うと勝手に湧くだろ」

誉望「あっ……はい」

垣根「こいつ、見た目の割に弱いんだよ」

誉望「ええ? あーたつまきじゃー仕方ないっスよ。再厳選しないと」

垣根「どうやるんだ」

誉望「ええとっスね……もう一回アメを集めて進化させます」

垣根「面倒くせえな。この雑魚が狙って出ればいいんだけど」

弓箭「ずいぶんたくさんお香を買ったんですね」



誉望「コインじゃぶじゃぶすんのもいいっスけど。外に出ても楽しいっスよ」

弓箭「出かけた時に探しても、色々捕まえられますよね」

誉望「学園都市限定のイベントがあるんスよ。限定ポケモンの隠れスポットも学区別にけっこうあるみたいです」

心理定規「ここでリリースするのに、利権を買ったらしいから相当力は入れてるのかもね」

誉望「後は……能力者のAIM拡散力場と連動してモンスターが出るってのが目玉っスね! 噂によるとレベルの高い能力者の近くにはレアなモンスターが出るらしいっス」

弓箭「これですよね」

誉望「そうそう『AIMアンテナ』……ってお前持ってるのか。ってことはTL20いってんのかよ。チュートリアル終了組か」

弓箭「入手に必要な称号やメダルの条件もきちんと満たしてますわ」

心理定規「それはどう使うの?」

弓箭「スマートフォンに付けて、近くのAIM拡散力場をサーチするんです。そうするとアプリにコードが送られて……あら、誉望さん。さっそく何か見つけましたわ」

誉望「マジかよ。マジだ。おくりものをゲット、『レイドモンスターの気配』?」

弓箭「当たりです」

誉望「AR切替で捜索して……ああっ?! すっげー! フリーザーが垣根さんの横に出てます!!」

心理定規「タップすると……あら。捕まえる画面にはならないのね」

誉望「戦闘画面っスね。このパターンは見るの初めてだな。でもアイテムは使えそうだ。弱らせないと捕まえられない仕様なのか?」

弓箭「そうですね。わたくしの経験ですと、強能力者が近くにいるフィールドでは捕獲画面、大能力者が居て出てくるものでは戦闘になることが多いです。なかなか強いですよ」

誉望「HPが全然減らねえ……何だこの白いフリーザー超つええ」

弓箭「色違いですわね。わたくしのウィンディならどうでしょうか」

誉望「ちょっと待て回復させる。共闘いけそうだ。心理定規は……」

心理定規「そんなに進んでないからいいわよ。あら、それ見たことないわ」

垣根「またカビゴンか」



弓箭「結局どちらも逃げられてしまいましたね」

誉望「さすが伝説のポケモン。でも弓箭、地味に相当強化してるんだな。ガーディどこで取れた? アメが全然増えないんだよ」

弓箭「誉望さんが行ける範囲でしたら……後で今週のポイントをお教えします。追跡と捕獲なら任せて下さい。僭越ながら、枝垂桜学園近くのジムはわたくしがおさえておりますので」

誉望「ガチ勢のお嬢様はそう居ないよなー。攻略出来ないだろ……え、待て弓箭お前『スナイパーR』なの? えっドンマイ」

弓箭「誉望さんこそ何ですかこの『AAA003』って。あれですか、こんなお名前がもう他の方に使われてたんですか」

誉望「オールマイティ、アドバンス、アビリティの略で……って嘘だよ止めてその引き顔。あああ心理定規まで。そうだよAAA1とか散々試したけどどれも埋まってたんですよ!」

垣根「能力者にモンスターが出てくんのかよ……そんな機能があったからか。アップデート後にアプリにメッセージが着てたな」

心理定規「それに、何か貰ったって言ってなかった?」

垣根「ああ」

誉望「ポケモンのタマゴスか……一〇〇キロ? なんかすげー無茶な数字ですね」

垣根「どうしろってんだこれ」

誉望「多分、これを孵化させると垣根さんはさっきのフリーザーが貰えるんスよ。やっぱりさっきのは垣根さんドロップのおくりものだったんだな。自分のデータで出てくるポケモンは捕まえられない仕様なのかも知れないっス」

垣根「一〇〇キロか。それくらいは……飛べばすぐだな」

誉望「あんまり移動速度早いとノーカンになりますよ。自転車でもギリギリなはずっス」

垣根「は? 飛ぶ意味ねえじゃねえか。上空でそんなにトロトロしてたら警備員に文句つけられるだろ」

心理定規「文句の前に驚かれるわよね」

弓箭「空を飛ぶ能力者がいるとは、学園都市でもあまり聞きませんものね。確かに卵の孵化はなかなか難しいです。学舎の園も広いとは言っても、移動するところはたかが知れてますから」

誉望「ふはは……俺の時代が来ましたよ。二キロ一〇〇円でスマホ回しもしてるんス。全自動卵割り機と呼んでください」

心理定規「それはズルじゃないの?」

誉望「いいんです、夜中にうろついて補導されるよりはマシっスよ!」

垣根「ほら」

誉望「なんスかこのマネーカード」

垣根「五〇〇〇円以上は残ってる筈だ」

誉望「いや……垣根さんから金とか取れねえっス。つうかそんなに長時間能力使い続けたら流石に俺の頭が大変なことになってしまいます」

垣根「元からだろ。けどその間俺は普通の機能も使えねえってのも癪だな」

心理定規「あなたが使わない間だけ回しててもらえば?」

垣根「なら車で移動した方が早いな」

弓箭「それでは誉望さん、五キロお願いします」

誉望「へーい二五〇円」


心理定規「集めるならかわいいのだけでいいんだけど、鳥ばっかり出るのよ。探したくても地図でちゃんと見れなくて」

誉望「頭二つのやつも目がかわいいっスよ」

心理定規「まあそうだけど」

誉望「数字が大きいのが出たら進化させると強くなります……っつうか心理定規、ポケモンしたことないんスか」

心理定規「キャラクターは知ってるわよ? 君が教えてくれたから最初のピカチュウは持ってるし」

弓箭「めっ心理定規さん。先日、学舎の園の近くで可愛らしいポケモンを見かけたんです。あの……よよよよよよよろしければ今度ご一緒に」

心理定規「いいわよ。どんなの?」

弓箭「捕まえられませんでしたが、画像は撮ってありますわ。こちらも色違いみたいなんです」

誉望「黄色い……プリンか?」

心理定規「見た目も何だか同じ名前のお菓子みたいね」

垣根「でもこれ目はしいたけだな」


誉望「心理定規たちも今度出かけるって言ってますし、みんなでポケモンとりにいきますか?」

垣根「位置情報だ、特定かどうのって始める前にさんざんぶってたのはお前じゃなかったか」

誉望「気をつければ大丈夫ですよ。そう言えば垣根さん、GOの垢は」

垣根「お前が捨てアドから専用で作れってうるせーからやったけど、俺のところに狙いすましたようなレアポケモンが来るってことは管理者サイドにはバレてやがるんだろうな」

誉望「そうっスね。AIM拡散力場を検知するドライブもかなりの謎技術っスけど……って、プレイヤーの名前にはカッキーが入ってるんスね」

心理定規「重要人物の行動管理も、しようと思えばゲームで出来るのかもね」

弓箭「情報を無闇に流さなければ、そう追跡もされないと思いますけど」

誉望「うーん、白いフリーザーの目撃情報が上がったら対策はとった方がいいかもな」

心理定規「さっきのは残念だったわね。でも白い鳥のポケモンなんているんだ」

誉望「これも本当は青いんスよ。第一世代なら垣根さんはフリーザーで納得っスね。スワンナもそれっぽいっスけど。うわー見て下さいっスさっきのツーショット、圧巻の公式イケメンっスよ」

心理定規「ふふふ。本当」

弓箭「まるでポケモンを従えてるようですわね」

垣根「あ? ……ったく大したことねえだろ。ほら、さっさとこいつ回しとけ」

誉望「はいっス」グルグルグルグル

心理定規「もう」

弓箭「(照れてらっしゃいますね)」

心理定規「(ね。変な所はわかりやすいのよ彼。別にゲームではしゃいだって構わないと思うんだけど)」

誉望「(えー。でも顔怖いっスよ?)」グルグル

心理定規「(ほら、鼻がちょっと膨らんだでしょう。まんざらじゃないのよ)」

弓箭「(見ればわかりますね)」フンス

誉望「え。なんで対抗した?」グルグル


誉望「あ。ジム取られてる。第七学区のとあるジムにリザードンが居るんスけどこれぜってぇ学園都市のプレイヤーじゃないっスよ。レベル30越えマジハンパねえっスつーか……『神の如きもの』ってトレーナーネームがすでにやばすぎっス」グルグル

弓箭「あら、大変ですね。わたくしは一度置くとほとんど手元に返ってくることがございませんのでむしろそちらが不便でなりませんわ」

誉望「くそー環境に優遇されすぎだろ。あれ」グル

弓箭「どうされました?」

誉望「嘘だろさっきまでこの辺赤優勢だったのにあっと言う間に黄色に変わってるし……ありえねえ、なんでもう何ヶ所もハピナスがいるんだ? 強化しまくってるしどんだけラッキー捕まえたんだよ……見てくださいラッキーマニアっスよ垣根さん!!」

垣根「なんだそりゃ」

心理定規「そう言えばどこだったかな。このあたりの病院でラッキーがよく見つかるらしいわよ」

誉望「そうなんスか? じゃあそこが巣になってんのかも。青ピ君もラッキーやたら捕まえてたなそう言えば」

弓箭「その方は病院がお好きなんですか?」

誉望「いや……確か、一緒に出かけるとよくラッキーが出てくる友達がいるって言ってた気も」

垣根「チッ。全然アタリがねえ」

心理定規「あ。ほら。かわいいのが出てきてない?」

垣根「ピッピじゃねえか」

ドーモ。
場つなぎな小ネタですまんねドーモ。

第三の手があった頃の某右の人なら反復横跳びの要領で10キロ卵も即孵せそうでうらやましい。
宗教施設やモニュメントも主なストップならぐるぐるし放題だよねきっと。

時間があればパソコンにはりついてた1も外にゲットしに出かけておりましたことよ。
深夜駅前にたむろする怖いオニイサンと出現地が被っててつらい。
三段進化もちのアメ集めのハードルの高さに限界突破の無茶仕様がダブる。
物欲センサー発揮わざ選別無慈悲。
10キロ?カイロスのたまごだよなあれ。
つって旬を逃したポケgoネタですねドーモ。

こんなポケモンGOは嫌だin学園都市

「部屋にカビゴンが居るのにボールが無いとか不幸だ」
「ピカチュウがコラッタ並みに出てくる学区がある」
「ジムを巡って能力者のリアルファイトが勃発、風紀委員のフシギバナが守護神として配置される」

>>813
どうもwwwwwwwwww

>>814
そんな感じっす。垣根はここでもまた騙されてる。わかりづらくてすまんね。

>>815
今回みさきちにはこれからも出張ってもらいますよー誰かに振り回してもらわないと話が出来んので。

>>816
だよな!
持ち主が女子だったらビジュアルでも得しかない能力だったかもしれないがちょっと染色体がミスったおかげで厨二メルヘン野郎ですよ。
GJしかないな!!
※常盤台で洗脳されていないゴーグルにはていこちゃんが見えません。
CVも変更されたのでサウンドオンリーでもご褒美なし。残念。

>>817
詳しいひとだー。
定規ちゃんをかわいい女子と認識する程度の興味は三次元にもありそうです。

>>818
どうもありがとうございます。毎度ネタに走ってるけどすこしでも楽しんでもらえたらうれしい。
がんばります。


この頃はうぃっしゅのランドセルのCMが直視出来なくなりました、と1はネタ師ネタに溺れていることを告白します。
本当にDMM。

白いフリーザーってそれ宇宙の帝王フリーザ様じゃないんですかね
地球終わったな(確信)

氷タイプ・・・冷蔵庫。
白くて翼が生えてる・・・常識は通用しねえ。
双子島に生息・・・白と黒。

こ ろ さ れ る

ワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

ホワイト冷蔵庫の工場長……!

常磐台の電撃鼠に幸運が逃げる右手はともかくとして
しいたけプリンはむちむちプリンということなのかどうか
白黒カラーのソーナンスとかもいるのだろうか

ふと思ったけど、なんか恋査がポケGOを体に組み込んでレア能力のレアポケ集めしてそう

垣根君にボクの白い分身をぶっ掛けたらどうなるのっと


ホームルーム前の朝の時間。
垣根は授業の準備や部活の片づけに追われるお嬢様たちの中に何食わぬ顔をして紛れていた。
来たばかりの新入りが食蜂と通じているとわかると生徒たちの不要な注目を集めてしまうから、とこの先の単独行動についても一言あったが垣根はむしろせいせいしていた。
食蜂は、
「寂しくなったらおはなしくらいしてあげてもいいんだゾ」とニヤニヤしていたが。
超能力者で実は暗部のリーダーでもある垣根に、潜入任務がこなせないとは思っていないだろう。
さすがに女子校に放り込まれるなんて事態は垣根本人も今まで想像もしていなかったが。
ただでさえ息がつまりそうな環境で、露骨な監視付きは必要だと理解していても不愉快だ。
一人で好きに調べるくらいがちょうどいい。
ただ、対垣根仕様の洗脳は今のところこの学校の関係者にしか通用しないらしいので、しばらくは気軽に校外に出れないのは不便そうだ。

偽装に必要な書類やら何やらを片手に、クラスの担当教師に挨拶をした垣根は職員室の前で待たされていた。
他の生徒たちが授業を受ける間の数コマを使って簡単なオリエンテーションがあるらしい。
学校内の規則、授業の説明、部活動や学校内外の活動について、施設の利用、今後の行事についてなどなど……。
真剣に学生生活を送るつもりが無いのにそんなことをされても意味があるのか。
情報や資料が必要なら、食蜂経由で用意させればいい気もしていたが。
あくまで一般生徒と同等のリアリティの追求でもしているのだろうか。

「あら、見ない方ですわね?」

そんな推測をしながら辺りをうかがっていると生徒の一人に声を掛けられた。
返事をしないのも不自然なので、垣根は挨拶をすると今日付けで転入してきたのだと伝える。

「わたくしも転入組でしたのよ」

一体何がそんなに面白いのか。
片手に持った扇子をパチンと鳴らすと女生徒は得意げに胸を張った。

「そんなところでどうなさいましたの?」

校内の案内をしてもらうことになっているのだが、担任教師が忙しいのかなかなかやって来ないと説明する。
まったく、教師も事情を知らないとは言え垣根を待たせるとはいい度胸だ。

「そうですわ。この婚后光子、先達として学内を案内してさしあげてもよろしくってよ!」

サラサラの長い黒髪、和風お嬢様と言う言葉がピッタリの常盤台生は謎のドヤ顔で話し続ける。
一言ひとことが自信に満ちあふれているせいか、垣根がウザそうな目をしたのも見逃されていた。
彼女の方はこの『転入生』に何の違和感もなかったらしいので、ひとまず潜入の第一段階は成功しているようだ。

「丁度、午前中にはいくつか選択科目がございましたから振り替えが出来たはず……少々お待ちになって下さいな。貴女の担任の先生にもお話してきますから」

ほぼ一人で喋っていた女子はそう言って、垣根を置いて職員室へ入ってしまった。
扉の前に残された垣根は、はあーっと疲れた様な息を吐く。
お嬢様特有の強引な空気なのかいきなりはじまった会話イベントにうっかり引きずられそうになっている。



『(なんだこれ。今のうちにバックレとくか?)』

首元に手をやってからそう呟く垣根は、早くも学校生活と言う奴の面倒臭さを嗅ぎとってうんざりした顔をしていた。

[はい。いやーチュートリアルイベントはやっといた方がいいっスよ]

『(なんでもゲームと一緒にするんじゃねえよ)』

便利なことに、この変声機には使用者の声を周囲に漏らさないようにするステルスモードが搭載されているらしい。
おかげで、垣根は他人の目を気にせず任務の話が堂々と出来る。
逆位相の波で音を低減させるよく似た仕組みは第二学区の防音壁でも採用されている。
そのおかげで、
「スパイ映画の主人公って馬鹿でかい独り言で周りのやつにあやしまれてるんじゃないのか?」と言うつまらない疑問も、電波系転校生に間違われるなんて間抜けな事態も気にしなくて済みそうだ。

「さて! 準備はよろしくて?」

『どうも御親切にありがとうございます。婚后…光子さん?』

「いえ。お気になさらないで。校舎の中は慣れるまでなかなか分かりづらいものですから。通りいっぺんの説明より、実際によく見ておけるとよろしいかと思いましたの。あ、あちらにございますのが……」

これまたご丁寧に自己紹介をしてくれた常盤台中学二年生、大能力の空力使いのお嬢様は垣根より半歩先を上機嫌で歩いている。

『(お嬢様ってのはあれか。他人の話は聞かねえもんか)』

[いやーお嬢さまってみんな高飛車でオホホ系なのかと思ってたんスけど。親切な人もいるんスね]

しみじみ呑気なコメントと、隣で自慢げに繰り広げられる解説を半分。
どちらも聞き流しながら垣根は白昼の校内の様子を頭に叩き込んでいく。

移動中。
なんだかとても張り切ったオーラを出している婚后は解説の合間にも雑談を挟み込んでいた。
『学舎の園』に近い、第七学区の周辺施設案内のようなおすすめスポット情報もいくつか出てきた。
その度に、
「ええと……よろしければ」
「あの、いえっなんでもございませんの!」などと少し挙動不審だったが。

『(やっぱこいつ、怪しいよな)』

他人には聞こえない独り言をつぶやきながら、垣根はそんな婚后の様子をうかがっていた。
やけに親切に新参者に関わってくるあたりがどうにもおかしい。
会話を振って、こちらの情報をそれとなく探ろうとしてくるのも不自然だ。
そんな風に垣根から不審な目を向けられているとは思っていないのだろう。
警戒対象:常盤台関係者。
その中で要・注意に振り分けられようとしていることも知らず。
婚后はまた、にこにこと声を掛けてくる。


「ええと、亘木…ていこさんとおっしゃいましたかしら」


『ええ……そうです』

偽名を呼ばれて垣根は笑顔で返事をした。
男とばれないように極力気をつかった上での敬語喋りでしのいでいるつもりの垣根だが。
隠しきれないムカつきがぎこちない表情に乗ってしまっている。
彼は一切関知していないが、常盤台の生徒名簿に加わる女子生徒の仮の身分証明が既に登録してあった。
特に下の名前はもうちょっと何とかなっただろうと思うのだが、任務の詳細まで把握しているはずの『電話の男』にはそこにツッコミを入れる余裕はなかったのか。
垣根の気分を盛り下げるための嫌がらせのつもりなら、悔しいが非常にいい線を行っている。

「亘木さんは何か見ておきたいところは御座いますか? ここは中学校ですけど文化資料にスポーツ、専門的な実験設備まで幾つか施設もありますから。遠慮なさらずにおっしゃって下さいな」

校内になくても、学舎の園で他校と共有しているものがあるのだと言う。
今の所、外部の寮を含めて校外での事件の発生は報告されていないはずだった。
なら気にするのは校内の施設だけでいいはず……と垣根は目を細めて回答を探った。
欲しいのは、今までに騒動を起こした関係者達の侵入先の情報だ。
不審者の確保と警戒がメインだったこの前までの任務では移動経路の巡回が主。
実際どこで何があったのかはただの書類上の単語でしかなかった。

『図書室や、資料室……後は生徒が利用できるコンピュータのある場所があれば立ち寄っていただけますか。校内の位置関係を見たいので、このまま順に回っていただいて結構です』

「もちろんですわ。読書がお好きなのかしら?」

『まぁ、そんなところです』

その後。
一時限目終業の鐘が鳴っても婚后の案内は続いていた。
時間をじゅうぶんにかけて無駄に広い校内の設備の案内を追え、婚后は最後に敷地外の寮へのバス乗り場へと足を向けようとした。
そこで垣根……もとい亘木は丁寧に案内を断った。
この辺りは、既に先日回ったので充分に見知っている。
それに。
お嬢様の親切ごっこにこれ以上付きあわされるのもうんざりしてきていた。
既に何度もあくびをかみ殺しているがそろそろいいだろう。

『ここまでで結構です。婚后光子さん。私は内部寮を使うので、荷物を運んだ際にそちらは少し見せていただきましたから』

垣根はしれっとそんなことを口にしたが。
もちろん嘘だ。
少ない手荷物は既に運び込まれているし、全校集会が終わるのを待ってわざわざ正面から校内に入りなおした垣根がその足で向かったのは職員室だった。
しかし、そんな事情を知らない婚后はまた嬉しそうに笑って見せた。



「あら。わたくしも内部寮なんですの。奇遇ですわね」

『……わざわざ、お時間を割いていただきありがとうございます。助かりましたよ』

調子の狂う相手だったが。
最後に付け加えたのは本心だ。
朝から受ける意味のない説明会に出ずに、さっさと校内の情報収集に取り掛かれたのは思わぬ収穫と言えなくもない。
今後の学校行事、クラブ活動、委員会……そんな無駄な説明を教師から延々聞かされていたら。
幾ら温厚で優しい垣根でも途中で寝るかキレるかしていただろう。

「かっ、構いませんわ。感謝されるほどではございませんもの」

取り出した扇子で口元を隠すと。
息を整えたお嬢様は自慢げな態度を崩さずに頬に風を送っていた。
そんな彼女の目が、ふと何かを思い出したのか懐かしそうに細められる。

「わたくしも、こちらにきたばかりの頃は心細い思いをしたこともございますが……みなさまに親切にしていただいたものです。ですから、今度はわたくしの番。それだけですわ」

大したことはない、そんな口ぶりだったがその顔はどこか誇らしげに見えた。

その後。
通常授業があると言う婚后と別れて垣根も自分の教室へと移動することにした。
少しイレギュラーがあったが、この後は当初の予定通り授業に出れば問題はないだろう。

『(まだ時間があるな。どっかで暇でも潰すか)』

「亘木さん!」

何故か戻ってきた婚后は振り返った垣根の前まで駆けよってきた。
よほど慌ててきたのか下を向いてぜえぜえ息をしている。

「あのっ……本日の放課後、もし、よろしければ……お時間がありましたらまたお話させていただけませんか?」

『? 別に、構いませんよ』

「本当ですのっ?!」

返事を聞くと勢いよく顔を上げる。
自分から聞いた癖に何言ってるんだこいつ、と引き気味で眉をよせる垣根はまたしてもスルー。
婚后はほんの一瞬で元気を取り戻して走りさっていった。
粛々としているイメージだが、お嬢様も時には走るらしい。
今のは何だったんだ? と不信感をつのらせる垣根だったが、

[やりましたね垣根さん、早速ルート追加のフラグが立ったんじゃないスか]

『(意味わかんねえこと言うな)』



その後は美術の授業だった。
だった、はずなのだが。

[なんか……あれっスね。アニメ知識のトンデモお嬢さまもそんなに間違ってないっつーかさすが常盤台って言うか]

『(なんでお嬢様自ら蒔絵とかしてんだよ。素直に金出して買えよ)』

スケッチや美術史、美術品鑑賞などの一般ラインをすっとばし、何故か突然匠の伝統工芸にトライさせられていた垣根は疲労困憊で机に伏せていた。
未知の領域、魔のお嬢様学校は想定外にもほどがありすぎて流石の垣根でも、ツッコミも脳内処理もまだ追いついていない。
仕上げろと言われた土台からもう既に高そうな漆器は、努力のかいあって授業時間内に合格ラインに達していた。
人間、やってみればなんとかなるものである。
なんとかなるものなんだ、と妙な感動と達成感さえ錯覚しそうな無茶ぶり具合だ。

わたりぎていこはレベルがあがった!
かもしれないが、器用さやスキルの上昇と引き換えに無駄に疲れてしまった。

[絶妙に金箔と金属粉を接ぐスキルなんて一生使わない気がするっス。常盤台ってもっとこう、帝王学とかリーダー育成専門機関なイメージがあったはずなんスけど実際はそんな感じなんスね…なんスか、上流階級の花嫁修業とかなんですか]

授業中、垣根からのリアルタイム実況な愚痴を聞かされていたゴーグルも、まだ見ぬ異世界に呆れたような感心したようなコメントを返した。

『(知るか。単身最前線でなんでもこなせる人材育成でも目指してんじゃねえの。それにしたってやりすぎだろっつう……あ、授業録音しといたか?)』

[はい。いや、そんなのしてませんよ? マイクもそこまで広くカバーしてたか? えーっとなんか必要でしたか]

『(常盤台内部の情報なら音声データも高く売れそうだろ。なんだ、してんのかと思った)』

ガサゴソ何かのチェックをしていたゴーグルの少年は、そこで大慌てで返事をよこした。

[はいい? 何で俺がそんなすぐに足のつきそうな小遣い稼ぎをするんスか。どっかに流しても状況的に今回の依頼経由だって一発でバレ]

『(馬鹿でも間抜けじゃなくてよかったな)』

[はい! あーもーびびった無駄にびびった。変なひっかけやめてくださいよ。情報統制厳しい中でこっちに許可出てんのは、垣根さんとの連絡程度なんスから]

『(よーし。ならその調子で真面目にやれよ)』

[はい……]

気分転換にはなったらしい垣根とは対照的に、ゴーグルはため息をつくとマイクの向こうで静かになってしまう。
気まぐれなリーダーに無意味に翻弄された組織の部下もまた、この厄介な任務に巻き込まれた一人だった。


さーて次回のていこさんは?
こんばんは、心理定規よ。
彼ったらちゃんと任務はできてるのかしら?
私の出番はもう少ししたらみたいだけど、それまで心配よね。
えーとなになに、次回は
「セレブの昼食」
「まさかの放課後ラッキースケベ?」
「お嬢様にも容赦なく壁ドン」
の三本の予定です……じゃなくてなにこれ。本当に大丈夫?
もう。今から頭が痛くなりそう。
それじゃあまたね。
じゃん、けん、ぽん

私はグーを出したわ。どうだったかな。
あら? 誉望君、なんで今パーを出したの? 統計的に、一番最初はチョキを出しやすいから、きっと私ならそれを読んでグーを出すと思った、ですって?
へえ。意外とやるのね。ハンター試験で勉強したの? ふうん。



ドーモ。
こんごーさんかわいいよーこんごーさんかわいいよなー学園都市にはもったいない純真属性の女子だよなーもおー。
なまえくっそ打ちづらいしたまに金剛になるけどかわいいからゆるーす。

時系列とかこまけえこたあアニレー一期や頂点決戦の形ばかりの季節感を思い出してくれ。
どうでもいい。そう言うことだ。
後、今後一部に魔改造がある予定。
そして表記がほとんどゴーグルの少年なのは、まだ誉望氏のことを知る前に書きはじめたからですね、はい。
修正めんどい。


>>824
どっちも冷凍庫ですがね>>824さん。
垣根とフリーザ様のツーショットなんて爆笑ものじゃーありませんか。
ポケモンで学園都市がヤバイなんて困りますよ(困惑)

>>825
しーっ!!
いいだろフリーザーもかっこいいだろ?!だからそれでいいんだよきにすんな
誰がそんなことで愉快な的にされなきゃならないんだ。
アレイスターか?運営か?とばっちりでゴーグルか?
それとも知りすぎてしまった>>825か。そうか。

>>826
ドーモいつもくさをありがとうございますwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

>>827
長なのに自ら量産される工場長様なつい。
なんか進化したらピカ氏と同じような配色になりそうであれな。しいたけ茶碗蒸し(黄)
恋査の有効活用w
それにスマホが複数台あればマルチ可能だな?!
蜜蟻、円周ちゃん大勝利。

あとはきっと白黒ソーナンスやアホ毛のピカチュウ、ピンクのギャラドス、黄色のプリン、大爆発持ちのすごいマルマインなんかが出てくるんでしょうね(適当)

>>828
知らねえよっと。
垣根の白い分身ならいいねえ。人型で。
何百人もいらないし白より色つきの方がうれしいけどね。

相変わらずの面白さ!乙です。
ところで常盤台潜入編での本格的未元掌握の予定はもう無いのかしらん?

あぁ^~婚后さんかわいいんじゃぁ^~
はたしてラッキースケベはするのかされるのか


垣根のテンションは真面目(シリアス)な暗部の任務なのに、傍目には似合ってない女装男が女子中学校に侵入という変態的事案に見えるという……
常磐台の制服来た垣根がJCに囲まれて授業受けてる絵面想像するとシュールすぎてやばいwwww

次回予告が脳内再生でき……そうで、できない!定規さんの声が定まらない!
暗部編アニメ化はよ


頬杖をついて窓の外を眺めるお嬢様。
心ここにあらず、と言った横顔からこぼれるため息は切なげでなんとも絵になる光景である。
……などとおおげさに盛ったドキュメンタリー風のナレーションでもつけられそうな光景だが、中身は暗部組織の超能力者(男)だ。
常盤台中学二年生亘木ていこさん一四歳(大嘘)はぼーっと授業を聞き流していた。
ごく一般的な高校レベルの授業ならすでに軽々こなしているお嬢様学校と言ってもそこは中学生の勉強だ。
基礎学力ならとっくの昔に追い抜いている頭の持ち主ではまじめに聞いたところで、退屈なものでしかない。
何より学生らしいふるまいは偽装なので授業を受ける必要性がまったくもってない。
うっかり居眠りでもして名門の意識の高い教師からお説教をくらうのも間抜けだ。
黙って座っているだけの授業であくびを我慢する方が、おかしな騒動の関係者を探し出すより大変だとは彼女も思ってみなかった。

何とか暇をつぶそうとして、授業とは関係のない現状のまとめなどをノートに書きだしてみようともしたのだが。
なにも書くことがなかった。

今の所、ただ授業を受けているだけなのでこれといった情報収集も出来ていない。
だがそれは、目を光らせて様子を探る対象の生徒たちも同じことで、例の事件の関係者も学校生活と授業に拘束されていては何か目立った活動も出来ないはずだ。
となると授業の合間や休憩時間、放課後に焦点をあてていくのが得策かもしれない。
サボりや欠席などイレギュラーで他より目立つ振る舞いをしている生徒は、既に食蜂側で洗いにかかっていると聞いていた。
あの女王様が駒をいくつも動かしていても他の視点が必要だから、恐らくはこうして『スクール』に任務の話がきたわけであって……
そこまで考えたところで垣根は軽く額をおさえた。

『(……昼はラーメンか?)』

[? ああ、はいっス。あんパンと牛乳でも良かったんスけど、鎮守府特製高速修復・補給剤〈バケツラーメン〉一分バリカタがやっと届いたんで。学園都市での販売予定がない上に通販だと定価割増プラスアルファ、送料プラスとかなめてますけどやっぱいち提督として応募キャンペーンは避けて通れねえって言うか――]

こちらは思考を中断しての一言だったのだが、てんで的外れな返事に垣根はため息をつく。
一度も本来の仕事をしていないシャープペンシルは机の上で転がされていた。

『(……そうじゃねえだろ。さっきからずっとお前のラーメンの音拾ってんだよこの馬鹿)』

雑音への遠回しな嫌味が通じないとは、部下のおめでたさを侮っていたか。
組織のリーダーは教室内には聞こえない愚痴を零すと呆れて首を振った。

[あーっ?! すんません無駄に俺の飯にオンマイクで! うるさいっスよねすんません]

『(ったく。こっちはクソつまらねえ授業中だぞ。はぁ、それ何味?)』

ガサゴソなにか調整しているらしい音は未だに拾っているが、他人が飯を食ってる耳障りで間抜けなノイズはこれでましになるだろう。

[海鮮ホタテ豚骨っス]

『(ちくしょう腹減ってきた)』

つまらない授業はまだまだ長い。
時計を睨んで昼食を待つだなんて、その辺の学生のような真似をさせられている超能力者は。
周囲からは美少女にしか見えない顔でがっくりとうなだれた。


広くて荘厳な食堂は星付きホテルの中などではない。
とある中学校の施設だ。
そんなところに揃って同じ制服姿の学生たちがひしめきあうのは、見慣れていないとなんだかおかしな光景だった。

さて。さてさて。
よいこのみなさんお待ちかね、いや悪い子だって大喜びの学生生活の一大イベント。
給食タイムがやってきた。
とある女子生徒の前に運ばれてきたのは「女子中学生」と言う単語からはずいぶん遠そうで、追加ワード「お嬢様」からは更に遠くウェブの検索候補になどは絶対にひっかかりそうにないメニュー。
「ラーメン」が常盤台中学で注文されていた。
まさか、そもそも、あったのか?!
そんな声が学園都市の男性諸君からあがりそうではあるが。
なんとお嬢様女子校のメニューにも存在したのである。
『期間限定・常盤台特製ラーメン』などと言う名の未知のオーパーツが今、確かに湯気をたててこの場に存在していた。

丼は高価そうな焼き物。
箸はこれまた高そうな漆塗り。
器の中に配置された彩りは黄と緑、そして脇の小皿に赤。
柚子、三つ葉、糸唐辛子が品よく添えられていた。
和食ならともかくラーメンの薬味にはちょっとユニークなラインナップだ。
他にこれと言って具材らしいものもない。麺とスープを純粋に味わってほしいなんて職人の意識の高さでもあるのだろうか。
行儀よくその前で手をあわせた女生徒は笑みを浮かべた唇の端を軽く舐めた。
一瞬前の品の良さに不似合いな、お嬢様らしからぬ仕草で食事がはじまる。
照りの深い黒の箸を取ると麺を一筋持ち上げる。
中太のストレート、澄んだ琥珀色のスープをうっすら纏った麺を口元に寄せる。
二回、三回、息を吹きかけ冷ますと後は一息ですすり込む。
そこで立った音……とうていお上品とは言えないものに近くのテーブルの生徒が驚いたように目をやった。
しかし、食事中の本人はそんな周囲の反応など一切気にしていない。

歯を立てると一瞬受け止めた後でぷつんと切れる。
麺の歯切れ、のど越しを楽しむ様に最初の一口を堪能していた。
スープを口にして。
そこで彼女は一瞬眉を寄せた。
不満と言うよりは違和感。そんなものをふとにじませたが、箸を持つ手は止めなかった。
顔の方に落ちてきた髪を耳にかけるとふーっと息を吐き、また一口麺をすする。
食器の触れ合う音も静かな食堂でたった一人、亘木はリズミカルと言えなくもない食事を続けていた。
そんなことを繰り返して。
吹き出した汗をハンカチでおさえた彼女が箸を置き、軽く片手を上げるとメイドが空いた食器を下げに来た。

『(ラーメンが三〇〇〇円したぞ。なんなんだここ)』

[常盤台やべえ。歌って踊れる農家が試作した原価の高いラーメンみたいな値段っスね]

近くの席に置かれた本日のメニューを手に取ると分厚いページをめくっていた垣根は、

『(フルコースの給食は四〇〇〇〇だったから、まだマシな方かもな。幾ら名門でも、大した奨学金も望めねえようなガキじゃ毎日のお嬢様ごっこですぐ首が回らなくなるんじゃねえの)』

[よんっ、万円って日本円で幾らでした?!]

ゴーグルが吹き出してすっとんきょうなことを口走る。
普段セレブ寄りなエピソードを披露する垣根は珍しくなんだか常識的な発言をした。
ここ学舎の園の外の実情を知っているとあまりのギャップから、相対的に価値観が一般寄りになるのかもしれない。
しかし、通話先の少年は小市民っぽくため息をはく。
今垣根がいるのが学園都市有数の秘境――パンがなければケーキを、なんて言って食事にもならない一口サイズのスイーツ(超高い)を食べていてもおかしくない生き物の生息地――だと思っていても呆れるほど驚いたのか。

[給食って一体なんでしたっけ。しっかし三〇〇〇円のラーメンってセレブっスね。うまかったっスか?]

なんか違うんだよ、と垣根は首を傾げた。
その前に今度は水菓子が運ばれてきた。
組み合わせがちぐはぐな気もするが、ラーメンもこの食堂内では位置づけは和食なのだろうか。



『(味は良かったんだけどな。料亭の椀物みたいでさ、ラーメン食った気がしねえ)』

[スープはなんだったんスか。やっぱお上品に塩とかスか?]

『(鯛と…鴨節だったな確か。使われてるのは海外の食品メーカーと、お料理同好会みてえなここの派閥の研究成果らしいぞ)』

[次元が違え……]

もしかしたらそれも――たとえラーメンのスープの味付けひとつであっても、提供されている食事内容には違いない――門外不出だらけの常盤台マル秘情報の一つかもしれないのだが。
リーダーからの報告のあまりのトびっぷりにゴーグルが絶句した。
何その和風の極みダブルスープは一般市民の想像をはるかに超えて、そいつはもうあまりに上品すぎるがラーメンと言っていいのか。

いまだ根強い和食ブームが続いてはいるものの、まだ海外でも手に入らない日本の食材は多い。
中でも鰹節は生産段階で必須である麹菌を保有している関係で検疫で弾かれてしまい輸出がほとんど出来ていないのだ。
フランスなどではその代用品として鴨や鹿の肉を使ったものが作られているらしい。
街の内外から諸外国相手に幅広いジャンルで研究やモノづくりをしているとなると、学園都市では優秀な学生の論文一つでその分野の一常識を変えてしまうようなこともおかしくない。

お嬢様学校仕様にカスタムされた一流素材を使った超絶意識高い系ラーメンは、おしゃれでお上品、イメージだけなら女子受けも悪くなさそうだった。
おまけに常盤台生のお墨付きと言ういかにもピントのずれた、それらしいメニューだが。
カップ麺からスタートしたラーメン食いたい欲が高まっていた胃袋にはちょっと違ったのだろう。
注文する時に栄養がどうの、とゴリ押しされたサラダやスムージーを笑顔でいなし、麺を特別に超大盛りにしてもらっていたのに垣根はまだ物足りなさそうな顔をしていた。
スープまで残さずきれいに完食していたので物理的には腹は満たされているはずだったが。

『(お上品で美味いのより、パンチの効いたちょっと体に悪そうなくらいのもんがこう言うときは食いたいもんなんだな)』

飾り切りされた果物をいくつもまとめてフォークで刺して口に放り込むと。
待ち焦がれた食事への期待を裏切られた垣根は残念そうにつぶやく。
腹は膨れても気持ちが満足するとは限らない。

[はい。なんかすんません……あの、まだカップ麺が箱であるんで、仕事終わったら食ってくださいっス。俺は蓋だけ貰えればいいんで]

『(その前にコンビニで済むっつーの。あ、俺いけねえんだった)』

外部学生寮なら目と鼻の先にあるらしいが……現代人の生活に欠かせない超便利スポット「コンビニエンスストア」様も、常盤台の校内にまでは進出していなかった。
ジャンクフードの楽しみ方を再確認したところで、慣れ切っていた便利さへのありがたみまで痛感してしまった。
今現在、常盤台の敷地内でしか存在できない亘木ていこさん一四歳(美少女)の学生生活は、まだまだ苦難が待ち受けていそうだ。


一日の授業を終えた垣根は使うことになっている寮の部屋に向かっていた。
何か忘れているような気もしたが、慣れない環境でようやく一人きりになった解放感が勝る。
家具の少ない部屋の中は殺風景だった。ソファもないので仕方なくベッドに座るがなんとなく居心地が悪い。
いいお嬢様がこうやって制服姿でくつろいでいる方がだらしないと思うのは、外から来た人間だけなのだろうか。
垣根もつい癖でいつものように座っていたが、足を広げているとスカートが邪魔で仕方なかった。

「ったく……部屋にいる時くらい制服じゃ無くてもいいよな……ジャージとか、ねえのか?」

寮も校内の延長だから私服は厳禁らしいのだが、学校指定のものでもそう言うものはもともと男女差はそこまで感じないだろう。
持ち込んだ荷物とは別に用意された学用品の入った箱を開ける。
いくつか包みをどけると出てきたのは体操着――惜しい。だがこれも下はごく普通のハーフパンツで助かった。
その下からようやく見つかったのは半そでのフード付きパーカー……の更に奥に長袖もあった。なんとなく色やデザインがかわいらしいのはこの際目をつぶる。スカートに比べれば小さな問題だ。
さーて忌々しい服装ともおさらばだ、と垣根は立ち上がるとサマーセーターを脱いでベッドに投げる。
屈んで下を向いたところで虚しくなってため息、スカートのホックも外す。
バサッと足元に落ちる布地の音。
その時、なんとなく背後で人の気配がした。
ふとふり返ったところで目に入ったのは見慣れない女の顔だった。自分一人の部屋の中に他人の姿、なんて安いホラー映画のようで。

「うわっ?!」

思わず大きな声をあげてしまったが、よくよく見れば正体は。

「ああ、なんだよ鏡か」

棚の上に置かれた小さな黒い冷蔵庫の扉に映った垣根自身の顔だった。点いていない真っ暗なモニタが鏡のようにものを映してしまうのと同じだ。
そんな、なんともカッコ悪い一人芝居の顛末に垣根が頭を掻いていると。

「亘木さんっ!」

「はあっ!?」

いきなり部屋のドアが開いて何者かがかけこんできた。
誰かと思えば朝のトンデモお嬢様だ。

「きゃっ? あ、ああわたくしとしたことが失礼しましたわ。お着替え中でしたのね?」

『……ノックくらいしたらどうですか。一体、なんの御用です』

素早く変声機のスイッチを入れると、垣根はわたくし大変おどろきましたわなノリで不躾な来客を静かににらむ。
まさか、垣根を尾行してきたのかと疑念がうかぶ。

「ごめんなさい。教室にお邪魔したんですが、クラスの方に亘木さんはお部屋に向かわれたのではとお聞きして」

そう言えば。
放課後になにか、となんだかそんな話をしていた気もする。

「丁度こちらにきたところで急に部屋の中から殿方の大声がしたので、もしや何かあったのかと……わたくしの、とんだ早合点でしたのね」

『あ、ああ……これで動画をみていましたから』

すかさず、床に落ちていたスマートフォンを指さすと婚后はそうでしたの、と素直にうなずいた。
何ともチョロいお嬢さまで助かった。
突然聞こえた謎の男の声が目の前の同級生の地声なんですよ、と言う発想はまず普通なら思い浮かばないだろうから一安心だ。

「あら。そちらにお着替えに? 何か運動のご予定がおありですの」

『少し汗をかいたので。動きやすい格好の方が楽ですから』

「それでしたら今度、シャワールームをお使いになったらいかがですか? 校外に出るときには『帰様の浴院』が近くて便利ですわ。なかなか使い勝手も悪くはございませんのよ。不都合と言えば……そうですわね、亘木さんにも扉が少し低――」

シャツのボタンを外しながら応対する垣根。
どうやらこのお嬢様、相手の着替えに配慮して部屋を出ていく気はないらしい。
同性同士(だと相手は思っている)ならまあおかしくもないかもしれない。
だが、言葉のとちゅうで振り返りかけた婚后はそこでなぜかはっとした顔をした。と思うと急に顔をそらして、ちらちらと様子をうかがってくる。
いったい何がそんなに気になるんだろう。
あまり見てはしつれいですわ~の微妙な線で、それでも横目で見られているのがわかる程度の視線を垣根も感じていた。
確かに着替える途中だが。
きゃーえっちー的な反応をしろと言われても急には無理だ。いや、同性に対してそのリアクションこそ怪しくないか。
だがまあ、ごく普通の女子生徒が、急展開で五割ほど生まれたままの姿を晒してしまっている垣根のボディ(おそらく女子仕様)に並々ならぬ興味があるとは思えない。
まさか何かおかしなところでもあったのか、なにかを感づかれたのか。

「いえ、その……亘木さんは意外と、大胆なものをお召しになりますのね?」

なぜか恥らいながらの、思ってもいなかった返事に驚く。
は? と思って垣根は視線を下に落としたが別に普段と変わらない。
変わらない……ように垣根には見えているのだが、この敷地内ではその常識は通用しないのだ。
頭の中を書き換えられている他の生徒達と、同じ視点に立つ手段が一つあることを垣根は思い出した。

『ちょっと、失礼します』

一応婚后に断ってからバスルームの前にある洗面台に向かう。
下着姿のままで鏡を覗いた垣根は次の瞬間、拳を洗面台に叩きつけた。

『食蜂!! あいつ……頭おかしいんじゃねえの?!』



次の朝。

寝不足気味で二割り増し怖い目つきになっている垣根は生徒たちと並んで食堂にいた。
昨夜はまた校内の巡回もした。成果は特にない。
昼夜フルタイムで任務にあたらせるなんてまったくもってリーダーづかいの荒い組織だ。
それでも起床後、三〇分で食堂へなんて常盤台のお嬢様たちのタイムスケジュールに従ってしまった。
かといって、逆らったところできっと昼食まで食いっぱぐれる。それも癪だった。

寝不足のイライラに空腹のイライラまであわさってついうっかり大惨事、巻き添えで正体露見の二次被害なんて冗談じゃないので生徒たちと食事を摂ることにした。
ここは校舎に近い内部寮だからいいが、学び舎の園より外の寮だとスケジュールはよりタイトになるらしい。
寮からの登校にバスを使う、と言うのもなかなかバカバカしいものがありそうだがお嬢さまには別におかしくない事態なのかもしれない。
起床までの朝の時間の貴重さを珍しく噛みしめながら。
垣根は世を忍ぶ仮の姿でサラダや野菜ジュース、シリアルが並んだ朝食セットを黙って口に運んでいた。

「おっはよぉ。なに? そんな顔して、朝からカワイクしてなきゃダメダメなんだゾ☆」

たった今この瞬間まで、隣で黙々と食事をしていたはずの名前も知らない女子生徒から頬を人差し指でつつかれた。
垣根は手にしていた銀製の食器を落としそうになったが。
不意打ちに固まった口元の筋肉を無理やり笑みの形におしやりながら振り返った。
ぶにっと人の顔に指をおしつけたままの女子の瞳には不自然な星が浮かんでいる。

『……食蜂操祈さんですか』

「少しは慣れたかしら。よく眠れたぁ?」

『安ホテルよりはましな寝心地でしたよ。もう二時間も寝れたら言うこと無しだったんですがね』

「今後の対策力を立てる為にもお話ししなきゃと思ってたのよぉ。この後、いいわよねぇ」

『せめて食事は済ませておきたいんですが』

「そんなに急かさないわよ。何かあったらまたこうやって声かけるからヨロシク。じゃあ後でねぇ☆」

そうして一方的に話し終えると謎のポーズをしてから食蜂――が操作していた生徒は急に静かになった。

「あの…何か?」

正気に戻ったらしい女子は、自分の顔を見つめている垣根に気付いて不思議そうにしている。

『……おはようございます』

「おはようございます」

お互い笑顔で顔を見合わせると会釈をしてそれぞれ食事を再開する。
朝から何をやってるんだ、と肩の力が抜けてしまった垣根は、小さく舌打ちした。

『(……ったく、もう一杯食うか)すみません』

午前中に必要な理想的な栄養バランスが取れたモーニングセットは女子力が高すぎたのか。
男子の胃袋には軽過ぎた。

食事を終えると生徒たちはそれぞれ授業の為に教室に向かっていく。
その中に混ざって入り口を過ぎると、廊下の少し先に今度は食蜂本人が待っていた。
取り巻きは……あえて外させているのか一人きりだ。
周囲の生徒たちは校内最大派閥の女王の姿にも目もくれず歩いていく。
もしかしたら見えていないのかもしれない。

「そうしてると……本当にうちの生徒みたいに見えるわね。点呼に遅れるとご飯が食べられなかったりするんだけど、迷子にはならなかったみたいでよかったわぁ」

『ええ。ここの配置も、昨日一通りは見せていただきましたから』

「あら。仕事が早いのねぇ」

大して意味のないことを喋りながら垣根は食蜂のあとをついていく。
ついでに女生徒のアバターの愚痴もこぼした。
ただでさえ不愉快な制服の下の虚像までわざわざ準備しているなんて、極度の凝り性か嫌がらせに違いない。
そいつも、なんだか状況に応じたバリエーションがありそうな気もしたが、聞いても余計にムカつきそうなのでそこは触れないでおいた。


「あらぁ。あのメーカーのはとってもいいのよぉ? あなたは鏡像の見た目だけでそれを実感出来ないのが残念なくらいなんだけどぉ」

『ってことはまさか……テメェとお揃いか? はぁあ? マジで頭沸いてんのかよ』

「昔はねぇ。デザインが少ぉし子どもっぽいじゃなぁい? 私は、今は他のブランドよぉ」

『止めろ。頭痛くなってきた』

女子中学生のアンダーウェア事情なんて知りたくない。
それも、自分が着ている設定になっているものなんて冗談じゃなかった。

「そんなに気に入らなかったかしらぁ。ていこちゃんはスタイルも良くしてあるから観賞力は高いと思うけど。なぁに? あんまり好みのタイプじゃなかったのかしらぁ?」

『止めろ。面白おかしい格好でそこの置物の仲間入りしてえのか』

校内に飾られた調度品とお友達にしてやろうか、と脅してみるも、

「あらぁ。私にそんなことしていいのかしらぁ?」と食蜂は無駄に良い笑顔でリモコンを見せびらかしてくる。
垣根がこの場で逆らえないのを良いことに開き直って逆セクハラを仕掛けてくる常盤台の女王。
互いにそれぞれの弱味は握っているが、彼女の場合は自分自身にダメージがないのだ。
それに対して垣根が失うものはあまりにも多すぎる。

「それともぉピンクが嫌だったのかしらぁ? そうね、放課後に一緒にお買い物でもしてあげましょうかぁ。もっとセクシーで露出力の高い方が好きだったり……ああっ、意外に清楚な方がグッときても引いたりしないからねぇ?! 遠慮しないでなんでも相談してくれればよかったんだゾ☆」

年下(恐らくは)と言うことを無視しても、男に対してここまで品も恥じらいも無いのは女としてどうなのか。
お嬢様としては致命的に問題有りな発言だ。


『そもそも、何が悲しくて自分と同じような女の顔を拝まなきゃいけないんだ。ったく、心臓に悪いんだよ』

「そんなに気にしなくても、折角一人部屋を用意してあげたのに」

『ルームメイトにまで神経使ってたら仕事の前にこっちがおかしくなるからな。それくらい当たり前だろ』

「大丈夫よぉ、今はちょっと口が悪いけどみんなにはちゃんと可愛く見えてるんだからぁ。でも、知り合いを作っておくのは便利よぉ? どうかしら、お友達でも作ってみたら」

『一応言っとくけど、テメェと違ってボタン一つで済むわけじゃねえからな』

なんてぶつぶつ言いながら歩いていくと廊下の曲がり角で生徒とすれ違った。
垣根は無視して通り過ぎようとしたのだが。
相手が突然立ち止まったので行く手を塞がれてしまった。

「へ?」

ぽかんと間抜け顔を晒して生徒は垣根を。
見上げた。
まるで自分より頭一つ以上背の高い相手にするようにして。

「ひゃああ? なっ、何?! なんなの!!」

いきなり挙動不審な女子が現れて垣根は首を傾げる。

『なんだこれ』

「あっ、いっけなぁーい」

「なっ、あ……食ッ……え? 何これ?」

目の前の状況が理解できないと言った様子で固まる不審者。
それはこっちのセリフと言ってやりたいところだが、食蜂と垣根を交互に睨むので忙しいらしい。

『何だよ』

「忘れてたけどぉー御坂さんにはぁー、わたしの改竄力が通じないのよねぇーーー」

『……つまり』

「やっぱ、へ、変態ッ?……もがっ!」

不名誉な大声を出そうとした生徒を壁際まで追い込み、押さえつけながら垣根は不自然に棒読みな食蜂を睨みつける。
もう片方の手で変声機のスイッチも切り替える。
声を出さないよう顔を掴まれた女子はなにやらバチバチ派手な音を立てて放電しているが、今は『未元物質』が働いているので垣根はどうと言うことはない。

「こいつには最初っから……俺が見えてるってことだよなぁ? みーさきちゃん?」

正体が見えている相手にばれないようこそこそ振る舞う意味はない。
そんな垣根の行動に、一瞬なにか、驚いて当てが外れたような顔をしていた食蜂だが、

「やだぁ、ていこちゃんったら顔が怖いゾ☆」

なんて元凶の癖ににっこり笑った。


ドーモドーモ。
やっと二日目ですね。今回の件は三日目でなんとかなる予定。日付は。


>>835
乙ありです!
みさきちゃんにもでてもらうぜー更にここで追加キャラみこっちゃんだよ!
今の常盤台のパワーバランスは
美琴>みさきち>ていこちゃん>美琴の三すくみですからな。
超能力者二人をからかえるのは心理掌握だけ!

>>836
ここでもう一度ぴょんぴょんしろコラ
こんごーさんはいいこだよな。いやー出来たおじょうさんだ。
ていこちゃんはこの安価のヒロインだからな、されるh
あれ、ヒロ、イン……?

>>837
乙ありですの
予想外にじわじわくるのになってます。
腹筋の健康の為には心の目で可愛い女子を補完するのをおすすめしたい。
はよはよ!アニレー三期なららっこさんもワンチャンあり!アニメ化すれば頂点もあるだろ『スクール』だって謎世界線で寸劇に混じれるだろそうだと言ってくれよ運営!
ていこちゃんボイスはお好きに再生すればいいと思うね?

クラス全員が一人一人くじ引きで決めた英語とフランス語とロシア語みたいに違う言語同士で会話する授業がある常盤台がごく一般的な高校なら追い越しているだと……?
どう考えても上級大学すら超えてませんかね(震え声)
ミコっちゃんは頭の体操にはなるとかのたまってましたが

そういえば存在しないていこちゃんの立派なおっぱいは揉めないのだろうか
それとも揉んだと錯覚するだろうか

俺男だけどピンクの下着くらい男の子でも着けると思うの


麦野「去年は何もしなかった癖にド派手にハロウィンパレードとかいきなり何だっつうの。脳がわいてんじゃないの?」

垣根「そのプロモーションに俺らを使おうとかいよいよお祭り騒ぎなんだろうな。頭が」

御坂「当日はパンプキンゲコ太も遊びに来るのよね……握手とか、してもいいのかしら」

食蜂「ずいぶんと衣装力があるのはいいけどぉ。サイズとか大丈夫かしらぁ?」

削板「おーし祭りだ祭り! お前らも根性いれろよ!」

垣根「なんだよ。第一位様はずいぶんと静かだなぁ?」

御坂「ちょっと、あんたの携帯。待ち受けにFUKIDASIの通知がすっごい出てるけど……『それじゃあミサカ達と一緒にパレードは見にいけないの? ってミサカはミ』……あちゃー」

垣根「あー」ニヤニヤ

食蜂「へぇー」

削板「なんだ一方通行。落ち込んでんのか? 根性出せ?」

一方「……人のを勝手に読ンでンじゃねェよ。誰がだァ削板」

食蜂「あらぁ。でも今日宣伝用の撮影が出来たら当日はそんなに拘束力がないんでしょぉ?」

垣根「馬鹿な格好でパレードカーで周回させるっつったらその日は出ねえからな」

削板「なんだそうか。一方通行、良かったな!」

一方「るせェ。大体なンでまた超能力者なンだよ。他にねェンですかァ」

垣根「まぁ俺たちも、今やそれなりの著名人だしな。だからって馬鹿やらせんのは向こうの正気を疑うが」

御坂「でも、なんでかしら……垣根さんってそう言うのなんだかんだやってくれそうよね」

食蜂「あらぁ。私もそう思ってたのよぉ。おまけに似合いそうよねぇ」

麦野「なーんかちょろそうよね。こいつら」

垣根「餓鬼を盾にされたら何でもホイホイ受けちまうのとは一緒にされたくねえ」

一方「オマエがそれ言うなって気分がすンのはなンでだろォな」

麦野「ハロウィンねぇ……何着ても馬鹿らしい気がする」

垣根「お。麦野、バニーがあるぞ。バニー。ウサ耳よりは…ムチの方が似合いそうだなお前」

麦野「死ねよエセホスト」バシュゥ

垣根「ああ。無理」チュイン

一方「こっちに曲げンな」カチッ

御坂「ちょっと。室内でそんなの撃たないでよ」ビリッ

削板「なんだお前ら喧嘩か? よーし表出ろ!」バシッ

垣根「おー。ナイスキャッチ」

御坂「『原子崩し』って素手でつかめるものなの?」

麦野「意味わかんないわ」

食蜂「なんでアナタたちは無駄に野蛮力が高いのぉ?!」ブルブル


垣根「麦野がそんなに嫌ならウサ耳はこっちだな」ポイ

一方「……あァ?」カチッ

御坂「えー」

食蜂「なんでそうなるのか理解力に苦しむわぁ」

垣根「ほら。あったあった。アリスのウサギの衣装だ。アルビノじゃまんま過ぎて面白くねえか? っつーかおい。耳どこやった」

一方「あっちだ」

食蜂「削板さんの頭に乗ってるわねぇ。すっごく似あわないわぁ」

削板「何だよ食蜂。他のやつみたく俺のことは呼び捨てでいいって言ったろ」ウサ

食蜂「いいわよぉどうせ年上なんだしぃ……距離力も置きたいのよねぇ」

御坂「そのへんならウサギ、アリス、チェシャ猫に。あとはハートの女王かしら」

麦野「女王って言ったら」

食蜂「私なんだゾ☆ でもねぇ。私は首なんてはねて欲しくないわぁ。そんなに傲慢力も高くないし。まぁ、御坂さんがウサちゃんならいいかもねぇ? 手下力を発揮してもらおうかしらぁ」

御坂「それ、前に着たからいいわ」

麦野「なんかどれも遊園地の衣装みたいな服ばっかねえ」

垣根「まぁベタなやつか童話の有名どころだよな。仮装ってのも」

一方「メルヘンだしなァ」

垣根「あぁ?」

一方「はァ?」

食蜂「御坂さんほら着ぐるみがあるわよぉ。ゲコちゃんだったかしらぁ?」

御坂「それは普通のカエルじゃない。いい? ゲコ太はね…………」

一方「じゃ、あれだ。さっきのシリーズで愉快な羽が欲しいンなら……パイプくわえた芋虫の進化形にでもしろ」

垣根「誰が繭だってこの野郎」

一方「蛾になる気満々じゃねェか。つゥか蝶じゃねェのかよ」

垣根「お。こっちにミイラ男の衣装があるが……お前はやめとけ。病人にしか見えねえからな」

一方「オマエは白っぽい服で背中に羽根で天使でいいじゃねェか。楽だろ」

垣根「仮装すんだぞ? それじゃいつもの俺と変わらねえだろって天使なんかじゃねえよ!」

一方「自分で言ってりゃ世話ねェよ」

削板「これにするか」

御坂「ねえこっちに着物もあるじゃない。すごーい何でもあるわね」

食蜂「ほんとねぇ。でも」

麦野「着るのに面倒なのよねぇ。この辺にこう…高低差があると」

食蜂「そうそう。胸囲力がない方が和服って似合うのよねぇ。ほら、御坂さぁんこれかわいいわよぉ」

御坂「アンタ達……そう。黒焦げになりたいのかしら?」

削板「おい。お前らまだ決めてねえのか? あんま遊んでんなよ」


垣根「ん? 麦野あれもやめたのか。ヘソ出しの悪魔の衣装。 エロかったのに」

麦野「エロさを求めてどうすんのよ。ハートの女王様でいいでしょ」

食蜂「御坂さんは魔女にしたのねぇ。小悪魔はよかったのかしらぁ?」

御坂「アンタとお揃いになっちゃうじゃない。こっちはオレンジだし。きっとパンプキンゲコ太に合うと思って。ふふ……一緒に写真撮ってもらおう♪」

一方「だめだコイツ、カエルのことしか頭にねェぞ」

垣根「見ろよこれ。俺こんな弱そうな狼男はじめてみたぜ。あれって基本パワー系のモンスターじゃねえの」

一方「オマエは……ああ、ぴったりじゃねェか」

垣根「だろ? やっぱほら、ファンタジーでも美形の代表格だろ吸血鬼。衣装も豪華で血と薔薇が映えるぜ」

一方「いや、中二臭いし無駄に仰々しいとこだ。あと活動時間が非常識だろ」

垣根「日焼けで死にてえのか犬っころ」

一方「その格好で体張ったギャグか蝙蝠野郎」

麦野「あんた達揃ってドラキュラと狼男って。『ワルプルギスの夜』かよ」

御坂「なにそれ」

食蜂「さぁ?」

麦野「じゃあ『アンダーワールド』は?」

食蜂「しらなぁい」

一方「オマエもなァ。なンでいきなり和風なンだよ」

御坂「甲冑って……似合ってるけどね」

削板「いいだろ! 根性みなぎるぞ!」

垣根「よーし麦野と並べ。ほら、首刈りコンビだ」

麦野「さぁ! その首吹き飛ばしてやるよ!」

削板「戦に必要なことは!根性のぶつかり合いだ!」

食蜂「途端に物騒力が上がったわぁ……」

一方「ガキが泣くだろォな」

垣根「いやお前ほどじゃないだろ。トリックオアスクラップとかトラウマになるから」

御坂「お菓子関係ないじゃないそれ」

垣根「だってこいつ辛党だろ? そうか……トリックオア! トリート!」

一方「ン?」

垣根「よっしゃあ俺の勝ちだ。三回回って『負け犬だワン』って言ってもらおうか一方通行!」

麦野「ハロウィンって命令していいルールだったあ?」

御坂「お菓子かいたずらか、って言うけどお菓子以外を選ぶ人もいないんじゃない?」

食蜂「少なくとも勝敗力もないわねぇ」

一方「ン」つ飴

垣根「なん……だと。何で、なんでテメェが菓子なんか持っていやがる?!」

一方「知らねェよ。着替えようと思ったらポケットに詰めてあったンだ」

麦野「そんなに驚くことかよ」



黄泉川「あれ? おーい打ち止め、ここにあったアメ玉知らないじゃん?」

芳川「飴なんてどうするの」

黄泉川「いたずら除けじゃん。ハロウィン前の週末だから浮かれた子どもたちに目を光らせなとかなきゃいけないじゃん」

打ち止め「ミサカもあの人とトリックオアトリートがしたかったのに…ってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」グス

芳川「あ、愛穂。缶コーヒーならあるわよ」


ドーモ。
時事小ネタ超能力者アイドルでハロウィンの仮装。
ハッピーハロウィン

>>845
追い越すにも程があるよな。常盤台はおそろしいところだ。
超能力者も平然と外国語使うし、とにかく普通にと教育を受けさせられている上条さんのような学生はとても不幸なんじゃ…だから英会話のべんきょうする!って見当違いなこといってロリシスコンに殴られるんだよ。

>>846
洗脳されていれば触った方はそのつもりなのでは?
見えるのになぜかどうやっても触れないというのも面白そうだが。
蜃気楼非実在おっぱい逃げ水エア乳。
どっちにしてもトライするとていこちゃんには冷ややかな目でみられることうけあい。

>>847
もともと本人に女の子バージョンを見せる意味ないのに下着姿まで無駄に仕込んであるのが頭おかしい。
みさきちがさり気に垣根の、女子の下着の趣味の話を振ってるのもいやがらせでセクハラだと言うことで?
垣根の普段の下着ならどうぞご本人に聞いて愉快な死体にドーゾ。


更新しなきゃ悪戯しちゃうゾ☆って書き込もうと思ったら更新されていた。

滝壺とかもロシア語話してたし常盤台でもまだ中1の湾内さんが当たり前のようにラテン語まで理解してたからな……


パズデックスで削板と麦野のハロウィンコスプレ拝めると思ったのは俺以外にもいるはず

似合わない女装男がお嬢様JCをしてる姿を見せられる御坂さん……
一人だけ笑ってはいけない常磐台開幕しそう
笑ったらケツ未元物質

>>855
ゴーグル君のケツに・・・!?ゴクリ

保守。垣根君とスクールは正義であり癒し。異論は認めない。

心配無用な気もするがお前ら超電磁砲だけじゃなくて偶像の方も単行本買っとけな
はいむらのスクール描き下ろし見れんぞ心理定規かわいい

>>858
ファッ!?こマ?
買う予定ないのに…

ウザイ誤字指摘でごめんね?でも読み返してたら気になったんだね?
>>243でパリ、グアム、ハワイと言ってるけど、「パ」リじゃなくて、「バ」リなんじゃないかな?
セーヌ川でシブブプレじゃなくてインドネシアでジャワカレーだと思うんだ。

クリスマスには小ネタという名のプレゼントがあるはず

垣根帝督(notていこ)のミニスカサンタを見たい


いきなり
「廊下の角を曲がったら突然現れた女装男子(おまけにデカい)に壁ドンされちゃった☆」
なんて言う意味のわからないイベントに巻き込まれた美琴は、食蜂達に使っていない教室に連れ込まれた。
どうやら何かあったらしいのは見てわかる、と言うかこれで何もなかったらそっちが問題だ。
意味もなくおかしなことがこの常磐台で起きているなんて美琴も考えたくない。
そんな風に。
このおかしな事態の説明を期待してついてきたのに、食蜂は先に下準備を済ませてくると言い残して出て行ってしまった。
おかしな事態……変態もとい不審者改め、制服姿のお兄さんと二人きりで残されてしまった。
謎の女装男子は暇そうに部屋の中をうろうろした後、その辺の椅子に座るとスマホを出してなにかしていた。

「あ。ったく、また死んだ。は? いや、今はちょっとな。ああ……多分な」

一人でブツブツ言うと、画面から視線をあげて美琴をみる。
そんな風にますますおかしさの増す不審人物をキッと見据えて。
あの女を待つまでもない、と美琴は意を決して口を開いた。

「アンタ……何してるの?」

「何かすぐ死ぬ生き物育てるアプリだ。こいつらも運がねえんだな、さっきから五回連続で死んでる」

身構えていたところに気の抜けきった答えが返ってきた。
予想外すぎる出鼻のくじかれ方に芸人並みのリアクションではなく実際にずっこけそうになってしまう。
そう言うことじゃないだろ! つうかゲームしてんのかこの状況で? ナメてんのかおんどりゃー!
と美琴も言ってやりたかった。

だが相手はこの常盤台の電撃姫、御坂美琴の電撃が通じなかった男だ。
ついでに常識面も通用しない程度にどうにかしているらしい。この状況でマイペースにもほどがある。
…しかも女子の制服を着てる。
あの馬鹿でもない、得体のしれない相手に問答無用で喧嘩をふっかけるのが名案だとも思えなかった。
しかも食蜂の連れらしいから手出しするとややこしいことになるかもしれない。
怒号たっぷりの質問を浴びせたくなるのを今はぐっとこらえる美琴。
喧嘩っ早い彼女にしては驚きの踏ん張りで相手を睨むにとどまる。
…その上女子中学生のコスプレをしてる。
わけがわからないからこそもう少し様子を見たかった。
……よく見るとサイズがぴったりなのが不気味だ。


「たっだいまぁ。ちょっと根回し力を発揮してきたから御坂さんもこの後の授業出なくても別に大丈夫よぉ。超能力者が揃って授業中に行方不明なーんて大騒ぎになっちゃうものねぇ」

「遅えよ」

戻ってくるなり、代返どころか記憶とデータの改ざんで堂々とサボリ宣言をする食蜂。
それに気軽に…と言うよりやけになれなれしく声をかける少年。
やっとおかしな空間に変化の兆しがあったことにほっとしたのもつかの間、んん? と何か引っかかる美琴。

彼女もその立場上、上級生や大人にも丁寧に仰々しい扱いを受けることがある。
学年問わず生徒を侍らせている食蜂も同様に、いやプライドの高そうな彼女なら美琴以上にその辺りのことを気にしておかしくない。
「私に向かってそんな態度はだめなんだゾ☆」なーんてリモコン一撃でとっくに矯正されていそうなのに操り人形にされている雰囲気がなかった。
そのままでいるのは、きっと何かある。
どうやら奴はただの変な人ではないらしい。



「紹介が遅れたけどぉ。御坂さぁん、こちら新しいおともだちのていこちゃん。ていこちゃん? こちらが御坂美琴さんよぉ」

「ああこれか。常盤台の超電磁砲な……テメェら……タメか?」

ふーんそうか、と呟く変態もとい訳ありっぽい男子は美琴と食蜂を見比べていた。
何を、とは言わないし深追いしたくない。
美琴は誰かれ構わずビリビリしてやるタイプでもないのだが、あんまりにも失礼だとバチッと一発お見舞いしてやっても許される気がする。
しかしこいつ何者なのか。
さっき出会い頭に、身の危険を感じてちょっと強めにバチバチしていたのだが本人はケロっとしている。
でも放電は出来ていたから、どっかの馬鹿みたいに電撃を打ち消されている訳でもなさそうだ。
人を待たせていたはずの食蜂は近くの机の前に座ると無駄に優雅に髪をはらう。
両手をあわせて長い金髪を追った指先を組むと。
ますます現状に不信感をつのらせて、ついでに興味も増している美琴に向けて女王様はニィッと笑った。

食蜂たちはこの学校の生徒たちが巻き込まれた事件を秘密裏に調べているらしい。
はっきりとは言わないが、偉い人たちに頼まれたのだと言うニュアンスが面倒臭さと一緒に話のなかにたっぷり込めてあった。
その件なら美琴にも聞き覚えがあった。
確か。
消灯後、深夜に部屋を抜け出した生徒たちが校則違反の注意や処罰の対象になったのに当の本人たちがみんな揃って容疑を否認。
防犯カメラの記録に現行犯での確保まで物的証拠は用意できたが、本人の証言も謝罪・反省も取れず。
ついには読心能力者までかりだされたが嘘の反応も出ずになんとも後味の悪いことになったらしい。
この学校の生徒の間では『夢遊病事件』なんて呼ばれていた。
今、話題にされるまで
「そんなこともあったなあ」程度でしか美琴も興味はなかったが。
身に覚えがないと言うのがもし本当なら、当事者はきっと嫌な思いをしただろう。
でもそれも含めて、済んだ騒動の割には後日談や噂の真相は話題に上らなかった。
お嬢様でも女の子は噂話が好きだったりするが、もしかしたら流行が早い分飽きられるのも早かったのかもしれない。

「それってもしかして先週騒ぎになったやつ? 解決したんじゃなかったの」

そう思っていた美琴は首を傾げて食蜂をみたが、ニマニマしている彼女の顔に気付いてハッとする。

(コイツの能力なら、不都合な記憶や情報はいくらでも好きに出来るはず、誰にも気づかれずに校内に箝口令をしくことだって……)

それと同時に話の重要さも浮き彫りになってくる。
常盤台、いや学園都市でも頂点に位置する精神系能力者がスイッチ一つで済むはずの調べものをわざわざ自分していると言う事実と。
事件の背後にあるのが最悪、『心理掌握』を出し抜けるかもしれない何らかの手段と言う可能性だ。

「実はぁ、まだなのよねぇ。他の人に知られるのは極力抑えたかったのよぉ。今こうしてるのも、彼女のことが御坂さんにバレちゃったから仕方なくよぉ? 不可抗力なんだからぁ」

カノジョ、と言いつつ食蜂は少年を指さす。
なんなんだと食蜂にも電撃付きでツッコミをお見舞いしてやりたかったが、一応まだ話をしてくれる様子なのでぐっと我慢する。

「年頃の女の子が夜中にふらふらしてるなんて危ないでしょ? おまけに本人が何をしてたかろくに覚えてないなんて……いやよねぇ?」

更にそれだけではなく。
操られた可能性のある生徒たちの起こした事件の中には常盤台のデータベースへ侵入しようとしたものもあるらしい。
それはすぐにセキュリティが働いて、アクセスした端末を探知し即現行犯で現場をおさえて捕まえたそうだ。
ただのいたずらでは済まないような大事の可能性があるが。
それを聞いた美琴はあからさまに不機嫌な顔をした。
そう言う話なら、彼女の方だって解決役として適任ではないのかと感じたらしい。

「何よ。外部に応援は頼めても私には話も出来ないっての」

「そうよぉ。この事件に関して校内で私が信用力を発揮出来るのは私自身だけだものぉ」

その言葉に頬杖をついていた少年は食蜂をにらみつけた。
どういう意味だ、といいたそうな視線が返されるのを待っていたかのように、食蜂はにっこり不敵に笑みを返す。

「アナタはまた別よぉ。じゃあ質問。超能力者である私が自分よりも劣る精神操作能力者の影響を簡単に受けるかしらぁ? 答えはノー。学園都市最高峰のこの能力を外部操作出来る手段が……そう幾つもあってはたまらないわぁ。対策力は万全よぉ」

何が面白かったのかはわからないが、常盤台の女王を自称する彼女はそのあだ名に似合わず自嘲気味にそう付け加えた。
それに校内の能力者は、風紀委員が一番最初に取り調べをしていたらしい。
それでも、食蜂が一番怪しんでいるのは精神操作の出来る能力者だと言う。
確かに、マインドコントロールの出来る機械なんてものが存在したら、不快力全開でとっくに潰していそうだった。


「御坂さんはたまたま、私の『心理掌握』を能力的な特性で防いでしまってるのよぉ。でも、他の能力者に対してはどぉかしらね。洗脳能力と一口に言ってもアプローチの方法力は人それぞれなんだけどぉ」

そう言って今度は食蜂の目が美琴に向けられる。
菓子パンの裏に貼りつけられた食品表示のラベルを読むような視線だった。
その上、そこに書かれていない情報こそが本当に知りたいことだとでも言いたげな、信用していない顔だ。

「私も……事件の黒幕に操られるかもしれないってこと?」

「或いは、既にね。だからわざわざていこちゃんを呼んだのよぉ。こんな格好までしてもらってもぉ大変」

「だからテメェはいちいち俺のカンに障りてえのか」

さっきから、彼女とかおかしなあだ名で呼ばれている男性は、食蜂にこうしてからかわれ続けているのだろうか。
今までのやりとりで常盤台のトラブルを解決する為にわざわざやって来た、と言うことは大体わかる。
この格好もその一環なのだろうと思うと、美琴も同情する気になった。
それにしても。
どう言い訳しても中学生にだって見えやしないのに、よく女子の制服を着せたものだ。

「ごめん。この人誰?」

「あらぁ知らなかったの? この人も超能力者よぉ。第二位のぉ」

「垣根帝督」

むすっとした少年は嫌そうな顔をして名乗った。

「今はていこちゃんよぉ」

やっと本名が出たと思ったらまた食蜂がまぜっかえしてしまった。
二人の話では、常盤台に在籍する第五位も第三位もあてにならないからそこまで話が上げられた、と言う事情らしい。
そう言われるとなんとなく経緯がわかるし納得する。
もし能力者の序列が元で呼び出されたのなら、本人はそりゃあ迷惑だろう。

「えっ。じゃあアンタの手にも負えなかったら第一位まで繰り上がったりするの?! 校内に変なのが増えるなんて嫌よ」

「なんだそれ。そんなん来たら笑い死ぬ自信がある」

「やだぁ。ここに悪趣味なオブジェなんて増やさないで欲しいわぁ。元イケメンでも死体はいやよぉ」

あの第一位、一方通行が女子の格好でやってきたらなんて恐ろしすぎてシャレにならない。
世にも奇妙な想像をしてしまった美琴はブンブン頭を振って更なる災厄の具現化を頭の中から振りはらった。
「鈴科百合子でェす」なんて裏声で言われた日には夢にまで出てきそうだ。

第二位だから第三位より頼りになるか、と言う単純な話かと思いきや。
理由はそれだけじゃないらしい。
常盤台関係者の風紀委員や警備員でも解決できず。
不審に思った女王が独自に手をだしたものの。
事件の目撃証言も、容疑者の身辺捜査もとにかくこれといった有力な情報が出ずに調査は難航。
ついには彼女たちの言う「偉い大人」の耳に入り、事件が表立って騒ぎになる前に食蜂たちが動くことになったらしい。

「私の調べた中で、数少ない犯行現場の目撃者がいたんだけど。そんな数少ない証拠なのに記憶も消されてないし、探っても改ざんや小細工の跡もなかったのよぉ。きれいにそのまま。痕跡を今までなんにも残さないようにして、きっとがんばっているはずの犯人さんはいったいどうしちゃったのかしら……って思うわよねぇ」

そこに突破口があると食蜂は考えた。
消さないのではなくしたくても出来なかったのだとしたら。
犯人の対処が及ばない例外、ちょうど食蜂にとっての美琴のような天敵があるとしたら。
利用しない手はないだろう。
それはどんな人でしょうか? ともったいを付ける食蜂。ヒントは……ここでは珍しいわよねぇ、と彼女はわざとらしく笑った。

「それって」

「男か?」

垣根と美琴は顔を見合わせる。

「正解。犯人さんが干渉力を発揮出来るのは女性か、他に何か理由があるんじゃないかと考えたのぉ。だからアナタのところの能力者では不十分だったんだゾ。協力者が取り込まれる可能性があったんじゃ意味がないでしょ☆」

なぜか垣根にウインクして見せる食蜂。
その目撃者、警備を担当していた人たちの証言がとれたのも最初の二件までで、すぐに次の犯行時刻は男性職員の見回りの時間からは外れたものになってしまったと言う。
対策のはやさからも相当慎重な人間の仕業だというのがうかがえた。
事件の首謀者への対抗策として男を使う……巻き込まれた可能性を含めた関係者が全て女性で、男性には一切関わりなし、と言われるとそう考えてもおかしくないのかもしれない。

「そうか。容疑者、いや被害者か? それを誉望のやつが見つけたのも……俺たちの仕事は正規の警備とは絶対にかち合わないようになってたからだろうな」

そう呟いた垣根はいきなり渋い顔をした。何か嫌なことでも思い出したのだろうか。

「ったく、食蜂テメェそれをもっと早く言えよ。聞いたからってはいそうですか、なんて気持ちよく返事もしねえけどな」

それにしてもあれだ。
第二位の超能力者らしいと言うのに垣根ときたら、格好のせいでいちいちしまらない。

「いっ、意外と似合ってるわよ? うちの学校はお化粧ダメなはずだけど、それスッピンよね? うん、美人美人」

「誰が化粧なんざするか。黙れ」


「裏で糸を引いてる犯人は自分の弱点もよくわかってるっての……だからって食蜂、これがアンタの作戦なの? 女装した協力者に捕まえてもらうなんて、こっちもかなりの問題じゃない?」

美琴がはっきりそう言うと本人も嫌そうに食蜂をにらんでいた。
彼だって、常盤台の偉い人から何か頼まれたのかもしれないが、それでも気分はよくないんだろう。
そんな、ごく当たり前だろう反応にも食蜂は
「御坂さんみたいな数少ない例外を除いて、私の改竄力は効果抜群よぉ。同系統の能力者でさえ、彼の姿を誤認させられてることにも気付かない筈だわぁ」
と、自信まんまんだった。
なら服もどうにかしてやればいいのに、と美琴も同情する。

「でもあんたが操れるのは人間だけでしょ? 電子機器は例外よね。ケータイでも写真や動画は撮れるんだし。探してる犯人じゃなくても、誰かに監視カメラや警備ロボの記録をみられたらすぐバレそうじゃない」

「そこも対策力は練ってあるわぁ。犯人さんは今まで、他の生徒や職員にコンピュータの操作をさせていたのよぉ。本人にそこまでの技術力は期待出来ないんでしょぉねぇ。他の人にもバレる前に尻尾を掴んじゃいましょぉ」

美琴の意見を聞いた垣根は。
改めて自分の様子を、と言うか主に腰から下に視線を向けて。
げんなりうつむいてしまった。

「こんなふざけた格好してんのが知られるなんざ、想像もしたくねえ」

「あらぁ? そんな顔しなくても大丈夫よぉ印象操作はしてあるわぁ。私の洗脳力下にある人間はアナタにカメラを向けるなんてことは思いつきもしないから平気平気」

「その言葉、違ってたらどうなるかわかってんだろうなテメェ」

「ま、話はわかったわ。知らない間にそんなことが起きてたなんてね」

そんなこんなで美琴も混乱の壁ドンから事態を把握した。

「本当に。迷惑しちゃうわよ。不本意だけど人手が増えたし、私も少しは楽できそうでよかったわぁ」

「アンタねぇ、しれっと人を巻き込む気?」

「その気がなかったらこんなに話をしてないわよぉ。それに御坂さんだって何かあると知った以上は首をつっこまずにはいられない性分力じゃない?」

そう言われて。
美琴の脳内に、とある巻き込まれ体質の首つっこみたがりで年中ひどい目にあっていそうなツンツン頭が自動再生された。
ちがうちがう誰があの馬鹿なんか……と美琴は無駄にあわあわしてしまう。
だが、食蜂はおかしな真似もしていないし今の美琴の頭の中も読めない(はずだ)。
もちろんそんな事情を知らない垣根からも、突然の奇行に冷ややかな目を向けられてしまった。

「でも……そぉねぇ。ここで御坂さんを押さえておけたのはある意味とっても幸運かも。学園都市最高水準の『発電能力者』、アナタにかかればその辺の電子ロックやセキュリティなんて鍵のささったドアみたいなものでしょぉ?」

確かに美琴なら発電能力で校内のネットワークやデータベースに力技でアクセスすることも可能。
敵の目的が何かわかれば相手を追い詰めることも出来るだろう。

「先手を打てたかもってこと?」

「こいつが操作されてなきゃ、の話だけどな」

垣根はそう言ってふん、と鼻を鳴らした。
食蜂と違って警戒している素振りではない。
そうなったらすこしばかり面倒だ、くらいの反応だ。
もし他の超能力者と敵対することになってもこの余裕……と言うか見下した態度は変わらないのだろうか。

「見た限り今のところは……だけど御坂さんは大丈夫だと思うわぁ。私が犯人さんで、もしチャンスがあるなら最初から一番強い駒を手元力に置いておくもの」

「まぁ、いかにも非力な弱者の考えそうなやり方だな」

「玉座についたら動かないのも強者の役割じゃなぁい? アナタ達二人みたいな野蛮力の高い人にはわからないかもしれないわねぇ」

「だが……大元の犯人、そいつは何度かしくじってるんだろ。リスクが上がれば当然焦りも出てくる。なら、こいつを餌に釣れるかもしれねえな。起死回生の一手にはもってこいの筈だ」

「あらぁ、お目が高いわぁ。御坂さんを使おうなんて容赦のない卑劣力ねぇ」

垣根と食蜂の二人は何やら悪い顔をして悪の参謀っぽい話をしていた。
超能力者たちによるこの集まりは、学校や生徒の為の正義の活動である、と祈りたくなる光景だった。
唯一まともな正義感をふりかざしてくれそうな美琴だったが、しばらく黙った後で何やら食蜂を手招く。

「ねえ。あの人に真面目な顔をされればされるほどおかしくってしょうがないんだけど。何とかならないの?」

「仕方ないでしょぉ? 御坂さんに妨害力があるのがいけないんじゃなぁい」

どうやら、笑いそうになって会話に加われなかっただけのようだ。
食蜂は既に慣れたのか大丈夫そう、と言うか何だか楽しんでいる節がある。
その点美琴はかわいそうだなあ、と思うと笑いの方も収まらなくなってしまう。
そんな時。
シャシンヲトッタゲコ! と美琴の携帯電話が喋った。


「あっ……えっとお、あははー……」

自分のしたことに気付いた美琴はにへらっと中途半端な作り笑いを浮かべた。
『心理掌握』の干渉を防いでしまう彼女はなんの抵抗もなく軽い気持ちでカメラを向けたのだが即座にそれを後悔することになる。
ずっと不機嫌そうだった垣根の目がものすごい勢いで美琴の動きを追っていた。

「は? 何してんだテメェ」

「きゃっ!」

勢いよく立ちあがる垣根。
美琴も慌てて席を立って後ろに逃げる。
とっさに、と言ってもそこまでしたのはそれくらいの危機感を感じてしまったせいだ。
武装無能力者の集団に囲まれたって余裕しゃくしゃくの御坂美琴サマをびびらせるとは流石第二位。
なんてふざけていられる余裕は無い。
すぐに追い詰められてしまう。
壁が砕かれるんじゃないかと言う勢いで壁ドン(本日二度目)が見舞われた

「私……その、好きなのよね? 男装とかそう言うの……それで、つい?」

と言うのはもちろん適当な嘘で、特に何も考えずに撮った。
おもしろいものをみつけるとついついカメラを向けてしまう、現代っ子の悪いところだ。

「ふざけんな?」

端末を美琴の手からもぎ取ると、垣根は眉間にしわを寄せて画面をにらむ。

「写真どこやった」

「ちょっと……待って。携帯貸して」

乱暴に扱われている緑の携帯が握りつぶされる前に、垣根の手から取り返した。
慌てて美琴は画像データの中から『風景』と名前の付いたフォルダのロックを解除してもう一度渡す。
一番上に撮ったばかりの垣根の写真。
あとはずらっと、煌びやかな衣装を着た舞台の上のスターの画像が並んでいた。

「……マジか」

「そう! そうなのよ!! なかなか男役にだってあなたほど美人でイケメンなんていないから! 我慢できなかったの!! ね! そうよね食蜂!?」

怒っていたはずの垣根にぽかんと目を丸くされた。
もちろん、美琴が能力で操作して一瞬で作ったおとりのフォルダだ。
検索に引っかかったネットの画像をそのまま数十枚放り込んだおかげでいろいろ微妙なものも混じっている。
とっさに食蜂も巻き込んだ。
でもこれに関しては食蜂も悪い、むしろコイツの悪趣味のせいじゃないか、と疑うくらいには美琴は彼女をよく思っていない。

「……人にはぜぇったい言えない、御坂さんの隠れた趣味力よねぇ」

こんな時、真っ先に美琴をからかいそうな食蜂だったが。
即興の誤魔化しにつきあっていた。
真剣な美琴の様子と、目の前の第二位の脅威に折れたらしい。


「仕方ねえな。こう言うのは、きちんと断るのがマナーじゃねえのか」

おかしな趣味の奴ってどこにでもいるんだな、と垣根は呆れ顔で頭を掻いていた。
美琴は美琴で、勝手に変な趣味の人にされていたが半ギレの超能力者の攻撃と引き換えならその程度は我慢してもいいだろう。

「あの、ごめんなさい」

頭をきちっと下げたら、携帯が投げ返された。
その時の垣根は何だかとてもかわいそうな、哀れな生き物を見るような目をしていた。
ふうーっと安心した美琴がそれをポケットにしまうと、垣根は首を傾げた。

「? 撮らねえのか?」

「断れば……いいのかしら。ねえ、この人よくわかんないんだけど。もしかしてアンタ何かした?」

「さぁ? 折角だから気が変わらないうちに撮影させてもらえばぁ」

常盤台の制服姿の第二位(この敷地の中で一番すごい能力者)はコキコキ首を鳴らしていた。
態度も姿勢もサイズ感も女子だとは言い繕えない雰囲気だ。
かと言って膝を揃えてお淑やかにされてもそれはそれで恐怖映像になりそうだが。

「わかっててもやっぱギョっとするわ。アンタよく平気ね……って自分に能力使えばなんとかなるのか」

「気にするほどかしらぁ?」

「笑っちゃったら失礼でしょ。私だけヒヤヒヤしてるのってずるくない?」

美琴が女装男子に耐えられなくなってきたので頭を直接洗脳してもらうことになった。

「えー、嘘でしょ? 本当に女の子にみえるわ」

改めて垣根を見た美琴ははしゃいで大きな声を出した。
女の子の姿の垣根……背は美琴とそんなに変わらないだろうか、同じ学年の女子にしては高い方だろう。
さっきまで目の前にいた実物と比べると随分小柄に思えた。

「ね、ていこちゃんはかわいいでしょぉ?」

「うるせえ」

「あ。でも喋ると男子ね」

美琴が指摘すると、垣根は何やらシャツの襟のあたりをごそごそしはじめた。
そう言えば、今は何もないがさっきは何かアクセサリーでも着けていた様な気がする。

『これならわかりませんか?』

「へー。おもしろーい!」

超能力者の精神操作は伊達じゃないらしい。
と。
さっきまでの笑ってはいけない常盤台空間を無事に乗り越えた美琴だったが。
今度は今度で、服装とは別の所が気になりはじめていた。

『……何だよ』

じろじろ見ていたらウザそうに文句を言われた。
それでもばっちり女子に見えるのだ。正体がわかっていても見た目はほぼ一〇〇パーセント女の子。

「これってさあ…どうなってんの? ちょっと…触ってみてもいい?」

好奇心に勝てずに両手をわきわきさせながら美琴は質問してみた。

「いいわよぉ」

『テメェが返事すんな』

文句は出たが別に断られなかった。
美琴は女子だし、垣根本人には実害がないからと言う問題なのだろうか?

「ふーん……へぇ? へー、ほー」

「御坂さぁん、こっちから見るとおかしなパントマイムみたいだけどそれってセクハラよねぇ」

『テメェが言うな。でもあれだよな……VRのゲームなんかすると、人間テメェが気付かねえだけですげえ馬鹿みたいなカッコするよな』

冷ややかな態度を通り越して、もうどうでもよくなっているらしい垣根の前で美琴は食蜂製脳内擬似おっぱい力を堪能していた。
自分も女子でこれが偽物だとわかっているからか、触り方に遠慮がない。
音で表すとワシッ、ガッ、グワッ! なんて少年漫画の効果音みたいなノリだ。

「意外とずっしり、いやいや! いくらなんでもこんな……ねえ?!」

『は? テメェ女の癖に何……いや』

「御坂さんじゃぁ……無理ないわねぇ」

「あっ、あ……ううううう」

ハイテンションで顔を上げた美琴だったが。
二人そろって視線が御坂の胸元に集まったあと、きまり悪そうに言葉を濁らせた。
がくっと一度落ちた肩が、下を向いた瞬間にもう一段深く下がっていった。

「おっほん! ところでさ」

「なぁに?」

「ひょっとして、アンタのそれも能力で……」

「私の干渉力をオートで弾いてる人に言われたくないわぁ」

『は? 何言ってんだお前。鏡ん中に他人がいるのって変な気分だぞ』

限りなく本物に近いかもしれない乳の革命に女子二人がやいのやいのしている横で、何やら耳元を押さえた垣根は一人でぶつぶつ言っていた。


垣根にあのステージや大階段はあんがい似合うかもしれない。羽根は自前のがあるし。
ごめんなていこちゃん、新刊読んだらミコッちゃんがすっかりおっぱい星人になってさ?だからってなんでもませてるんだろうな1もびっくりだよ。

>>846
多分もめるらしいということになってしまった。洗脳側の一方的エアーだがもめるっぽい。

こんなオチでもうしわけねーが今年もドーモドーモ。
あいさつ早めだが来年もよろしくおねがいしたい。


>>852
やったぜ。
トリックをトリートにしてもらえてよかった。
レベル5どもにおかしなことをさせるきっかけとしてはアイドル設定はできる子。

>>853
アニェーゼも妥協してベルベル語ーなんて言うしな。ギャグでも無茶振りすぎて。英語が出来ても何とかなるとは限らない禁書世界(の割に日本語の普及率がおかしい)

>>854
乙ありでーす
麦野は悪魔『アイテム』ガチャの方をやったけど削板は超能力者唯一のハブだったな。実装遅かったしサービス終了してなかったらあるいはワンチャンあったか。

>>855
ミコッちゃんが延々可哀想でしかない。
笑ったら未元物質って、笑うとJC女装+羽根でさらに爆笑の連鎖……それなんて大惨事。

>>856
ケツバットとばっちりすぎィ!
「元はと言えばあいつのせいでこんな目にあって笑い者になってんだ。御坂の笑った数だけ、後でゴーグルのケツを蹴り飛ばす」なんてリーダーも嫌だろ。災難じゃない、任務が済んだ頃には忘れてるよ。

>>857
保守ありっす。
裏技使わせてもらっちゃう暗部だけどな!
癒しなー、暗部組織の荒んだ日々の束の間アホなことをネタかましても許されたいね。癒されたい。

>>858
はぁあああ?はいむら?!って追ポチったありがとう。でもよお□木氏~もっと早くはいむら絵のかきおろし心理定規ちゃん見れたろ~何してくれてんのもう!

>>859
スクール層の購買も見越すとはやるな電撃、>>858のダイマに感謝。

>>860
おー!そうだな南国だもんな!唐突なオサレになっちまう。
あんな小ネタのすみっこでもちゃんと見てる人はいるんですねって1感動。
ここがSSスレじゃなかったらひとで投げつけてるわ。何さシルブプレw何だよカレーww

>>861
小ネタ……小ネタな。まとまってないのならたくさんあるのよな?書きたいのもたくさんあるんだな。小さいかきねや、プールの話もまだ誉望さんの話もいつかすいません寄り道の多い1土下座。

>>862
そいつぁ……逆に笑わないと怖そう。大火傷してるのにリアクションのひとつも取れなかったら悲しいやん?
トナカイの着ぐるみでソリ引いて空飛んで欲しいなあ。ペガサス仕様のトナカイそれなんてメルへン。

当SSのゴーグル君も、らっこさんが加入後も『スクール』ピラミッドの最下位に居続けることが確定しました合掌。ドリンクバー係永久就任。
しかしレベル4もあって原作唯一の見せ場であんな冷静に関係者を潰しちゃう、暗部の仕事出来そうなキャラなのにその実パシリ呼ばわれって誉望万化(しんのすがた)あまりにも不憫では?

弓箭さんはin学舎の園でナチュラルボーンお嬢様な気配がするから上げ膳据え膳仕方ないのかもしれない。
心理定規はレディファーストだしにっこりお願いされたらもう仕方ない。
リーダーに至ってはもう何もかもが仕方ないので。
やっぱり大能力者でも彼は焼きそばパンを買いに行かされてしまいそうだ。

誉望万化氏のパシリネタがありがたい限りでこの先遠慮せずに組織の先輩をdisいじるらっこさんが書けますありがとう。
偶像の方もありがとうございますございます。さすがはいむら圧巻のはいむら白くないのにどこか眩しい。でもなスナ子さんもといらっこさんのフロントも見たかったよぉおお本のページで切れる誉望さんさすが。

俺もおっぱい揉みたい
できればみさきちのを

らっこちゃんは可愛い
可愛い

おっぱいはおっぱいでも揉めないおっぱいはなーんだ!
正解は~!みことっぱいでしたwwwwwwwwww

あけおめ
今年も>>1のss楽しみにしてる

改めて読み返したけど、やっぱり面白いな
>>1すげぇなぁって思ってしまう


ドーモ。
いつかやっときたいのを1個人用にメモっとくと現行安価以降未消化のやつが
>>502 心理定規メイン
>>661,682 いつになってもどこでももう見れそうにない誉望過去話
>>729,733 ショタ垣根とスクール
かな?見返すのしんどいのよな。

某ロリショタスレでもていとくんだけハブだったのが残念だったなんてゴニョニョ
言い訳誤魔化しトンデモどうでもいい設定なら任せろ!!超能力者を幼児にしてやるぜ!!と言うことで今年も好き勝手話を投げていきたいなーと思います。おつきあいください。
今年も落とさずいくのが目標。出来たら次スレも。なるはやで。
ネタには困らないのよな、ネタには。安価もだめだはやくなんとかしないと頭につけたらSSが書けてる近未来アイテムどっかに売ってねえのよな。


>>870
布越しながら吸いついてくるような手触り(御坂談)
みさきちだって中一(おそらく)の時はちっぱいだったんだよな。それであの急成長はバストアッパーを疑うべき

>>871
らっこさんにはもう会えないんだろうか。情熱的なバイオリン弓箭さん萌えー。

>>872
美琴に足りないものはなーんだ?
おっぱいでした~!!
いやあれは無いからいいのかもしれないな、それに本人が言うほど無いわけじゃないよね?あんなに美鈴さんに似てるし大丈夫さ。

>>873
ことよろ!
わー!あざまーっすがんばりまっす

>>874
なっなによ!大げさにおだてても何にも出ないんだからね?!保守小ネタくらいよもう!

つーわけで
1ちゃーん、バカだから保守ですー♪
出しどころがなかったネタですよー。


誉望「こっ、これは……!!」

垣根「隠れ家に来たら置いてあった」

弓箭「何ですかこれ?」

心理定規「こたつよ。結構大きいわね」

弓箭「みなさんでここを囲んで座るんですか」

誉望「使ってみないんスか。あ、垣根さん靴脱ぎました?」

垣根「当たり前だろ」

弓箭「これがこたつですか…テーブルの裏にヒーターが付いてるんですね」

心理定規「そうね。今は暖房器具も便利になってるし、あんまりみないけど」

誉望「一人暮らしや寮の部屋でこんなのあると邪魔っスからね」

心理定規「そろそろ温まったかしら」

垣根「どれ」スッ

誉望「どうスか」

垣根「……うん?」

誉望「温度設定変えます?」

垣根「……」

「「「……」」」

心理定規「もう十分みたいね。入りましょう」

誉望「そっスか」

弓箭「えええええっよろしいんですか?!」

垣根「…あったけえ」


垣根「おい」

誉望「はいっ?!」

垣根「誰だ。さっきから人の足にぶつかってんぞ」

弓箭「ちちちちちちがいますっ」

心理定規「誉望君じゃない?」

誉望「おっ俺は違いますよ? 足伸ばしてないっス」

弓箭「えええええっわたくしも正座した方がいいんでしょうか?」

心理定規「そんなに気にしなくても平気よ」

垣根「まあ……俺の足が長いからか」

心理定規「そうね」

誉望「っスね」

弓箭「はわ~。あったかいですね……」

誉望「コタツにはやっぱ籠みかんが標準装備なのか」

弓箭「誉望さん、わたくしにも取ってください」

心理定規「じゃあ私もお願い」

垣根「おい」

誉望「はい、はいっス。垣根さんもスか」

垣根「ポテチとコーラ」

誉望「コーラは冷蔵庫…がここだと見えねえ……っ!」

弓箭「能力ではなくご自分で取ってくればいいのでは?」

誉望「一度入ったコタツからわざわざ出れるか。くっ、何とかいけるか?」プルプル


垣根「テレビのリモコン」

誉望「はいっス」ヒョイ

心理定規「誉望君、そこの雑誌取ってくれない?」

誉望「はいっス」バササ

弓箭「よぼーさん、もうふ」

誉望「何でみんな寛いでるのにゴーグル(本気モード)なんだろう俺……」パサ

垣根「だらだらテレビ見てんのもいいけど。ろくに見るもんがねえと暇だな。何かねえのか」

誉望「俺もゲームはもってますけど、単体で大人数同時にに対応したのは…今からDL
すれば何かできますけど」

弓箭「あちらにみかんの入ったダンボールと他にも何かございましたよ」

心理定規「そう」

誉望「……あーはい見てきます」

心理定規「あら。あなたってみかんの白いところまできれいに取るのね」

垣根「悪いか」

弓箭「心理定規さんは薄い皮は召し上がらないんですか?」

心理定規「別においしくないでしょ」

垣根「それ剥く方が面倒じゃねえの」

誉望「トランプにオセロ、あと小型端末のボードゲームなんかもありました。何スかねあれコタツセットっスかね?」

心理定規「随分用意がいいわね」


誉望「いっちにーさんしー……『開発』マスだ。あーっ能力開発失敗! 出た目にあわせてPSYポイントと資産を失う……ちくしょう! もう少しで大能力だったのに!!」

弓箭「残念でしたわね誉望さん。わたくしはもう強能力までレベルアップしましたわ」

心理定規「能力育成だけなら『大能力者』の彼がまだトップね。私は副業の方が順調」

弓箭「わたくしもそろそろ第一五学区のお店が買えそうです。コマの移動とステータス
管理はハードのパネルでしてくれるのにルーレットは手動なんですね」

誉望「やっぱ人生ゲームはこいつを回さないと。うわー次までに何か売らないと補填出来ねえ……やっとゲットした第六学区の大型ゲーセンがー」

垣根「事業展開大成功、『工場』を獲得」

弓箭「収入マスでルーレットを回して得られる収益が大幅に追加されます……すごいですね!」

誉望「垣根さん順調っスねー。所有物件はマンション、ショッピングモール、ファストフードチェーン……大能力者……工場長new!スか」

垣根「ここまでやっといて何だけどさ」

誉望「はい」

垣根「俺らが『学園都市すごろく』やる意味ってなんかあったか?」

心理定規「そう? ゲームで平凡な普通の人生を過ごすのも……何だか皮肉めいてない?」

誉望「まあ……内容も何となく、学園都市外部への土産もんっスよね」

弓箭「そうですか? わたくし人生ゲームははじめてです。みなさんで遊ぶと楽しいですね!」

誉望「そうかそうか。みかん食うか?」

弓箭「なななななななんですか誉望さん? えっ、そんなに積み上げないでください」

心理定規「『研究機関の強化』が成功したわ。ここまで手間とコストをかけたけど、能力開発の成功ポイントと関連事業の収入マスの結果が……やった。10%もアップ」

垣根「お前遊びでも手堅いよな」


誉望「結構みかんが減ったな。追加っと」ヒョイドサッ

垣根「そんなに手は黄色くならねえな」

心理定規「もっと食べればなるんじゃない。私はそろそろ止めておこうかな」

弓箭「見てください!皮がうさぎの形に剥けました」

誉望「すげえなんだこの躍動感。みかんアートか」

垣根「よーし。見てろ」

誉望「結構難しいっスね」

心理定規「わ…爪の間に入りそう。がんばってー」

垣根「誉望」

誉望「はい」

垣根「トイレ」

誉望「念のために確認しますがこっちに持って来るんスか、押して運ぶんスか」

垣根「面倒くせえな、代わりにいってこいよ」

誉望「……はいっス」

心理定規「おかえり。どうだった?」

誉望「俺はすっきりしました」

垣根「あっそ。遅えよ」スッ

誉望「……垣根さん、あれ言ってみたかったんスかね」

心理定規「男の子ってああ言うジョーク好きよね」ハァ


弓箭「あら、ちょうどそこに空のペットボトルがありますわ」

心理定規「ああ……男の子は楽で良いわよね。長時間の見張りとか大変なのよ」

弓箭「そうですよね! 車の中ならまだいいんですが。屋外のポイントで張ってる時は色々困ります」

心理定規「そうそう。日中は日に焼けそうだし」

誉望「ボケてるのかマジなのか判断に困る反応は止めてくれないか。何スか諜報活動あるある女子トークっスか?」

心理定規「もちろん冗談だけど、任務中でも止めてね?」

誉望「言われなくても。緊急事態でもそんな惨事は避けます」

垣根「あー。寒かった」ゴソ

誉望「暖房ガンガンで全面床暖、おまけにトイレの便座まであったかなんスけどね。なんか寒いんスよね」

心理定規「気分の問題なのかな。出たくないわね」

垣根「いや。やっぱここが一番あったけえ」フー

弓箭「ねむたくなってきますね」


弓箭「あの……みかんだけだとお腹空きませんか」

心理定規「もうそんな時間? 誉望君」

誉望「うえー? 今日はコンビニが遠いっスー外は寒いっスよー?」

垣根「デリバリーでいいだろ」

誉望「弁当でいっスか。注文とりまーす」

弓箭「ああああああああの」

心理定規「何?」

誉望「どした」

弓箭「座ってる今もとってもあったかいんですが、もう少し中に入るとどうなるんでしょうか」

誉望「弓箭……そこに気付いてしまったか」

弓箭「なっ何がです?」

誉望「それこそがコタツ最大の恐怖! じわじわと飲み込まれていき、最終的には首まで入って抜けられなくなる……!」

弓箭「えええええっ!」

心理定規「ほら。見て」

弓箭「え?」

心理定規「彼……もう胸のあたりまで見えなくなってるわ」

誉望「いつの間に」

弓箭「あああああああ垣根さんがこたつに捕らわれて?!」

誉望「ああなったら時間の問題だ。垣根さん、大丈夫っスか」

垣根「……みかん」

心理定規「もう考える力も無いのよ」

弓箭「そんな……」

心理定規「でもね、大丈夫。すごく気持ちいいから」ズルズル

誉望「ああ、心理定規までコタツの魔の手に」

弓箭「誉望さん……わたくしたちどうしたら」

誉望「……弓箭」

弓箭「はい」

誉望「残念だが……おそらく、このコタツに四人全員がおさまりきる余裕は無い!」

弓箭「そうはさせませんわ! 抜け駆けはずるいです!!」ガッ

誉望「ぐえっ」ゴン

弓箭「せめて順番にしましょう! わたくしも寝転がりたいです!」

誉望「痛っ、ちょ、わかった! わかりましたから引っ張るな」ガン

心理定規「ふわぁ…さわがしいわね」

垣根「んー……メシきたら起こして」



電話の男『お前たち、新しい暖房器具はどうだ。ずいぶんと満喫してるようだな』

垣根「たまにはやるじゃねえか」

弓箭「あったかいです」

電話の男『場の調和を保つことで組織としての和を高める目論見らしいんだが、それなりに効果はあったのか。さて。仕事の話だが――』

垣根「誉望」

心理定規「よろしくね」

弓箭「お願いしまーす」

誉望「えーここにいても済むやつっスか? んな訳ないですよね。無理っス」

電話の男『見事にグダグダだなお前たち。そのコタツは早急に撤去させる』

垣根「あ?」

心理定規「いやよ」

弓箭「わたくしたちからこの癒しを奪おうだなんて、許しませんわ」

誉望「よろしい。ならば戦争だ」


電話のP『お前ら、ちゃんと仕事しろ』

垣根「何言ってんだ? 今から下らねえ会議するって呼んだんだろうが」

誉望「垣根さんのアイドル活動の話っスよね」

心理定規「いつの話をしてるの?」

電話のP『……まあいい。各自端末を確認しろ。見てわかるだろうが、前回のイベントの反応も悪くなかった。CDの売り上げ、関連商品の売り上げも予算を無事上回っている。が、このところ集客やファンの応援数値の伸びが悪い』

誉望「それで戦略会議スか。人気も安定してきたってことなんスけど」

垣根「『絶対偶像進化』の推進にはまだまだ足りねえだろうな」

電話のP『そこで新しいファン層を獲得したい。改めて、それも大きく注目される必要があるからな。まずは垣根と言うアイドル像を分析、改善していく。そこで以前動画の視聴者に行った「簡単なアンケート」の結果を参考資料として送信する』

弓箭「『アイドル能力者・垣根のここがよかった』、回答数トップは『かっこいい、イケメン』などですか。つまり既存のファンの方々を含め『垣根さんがかっこいいアイドルである』と言うことはみなさんに十分に知れ渡っているんですね」

電話のP『次に多かったのが「パフォーマンス」と「羽・能力」に関する評価だ。この二つは重なった回答が多かったからまとめてある』

垣根「ああ?」

電話のP『好きに書いてもらうアンケートだったからな。そこから大きく分類しただけだ。作為的な選択肢も誘導もない、純粋なファンの声だぞ』

心理定規「音声だけでも表情の想像がつきそうなにやけ具合ね」

垣根「……」

誉望「あっあー、あの『ステージの盛り上がりで羽がみれるとうれしい』、『サービスショットごちです』、『羽の雨をふわふわ降らせてキャッチしたい』なんてコメがありますよ。セオリーのある演出がファンはうれしいんスね!? お約束がぐっとハマると一体感がっスね」ガタガタ

心理定規「確かに。アイドルとファンとの符牒、小さなコミュニティ内の共通認識は結束や好感に影響するわ。あなたとあの翼の印象が特に強いのかも」

弓箭「それにあの演出は垣根さんにしかできませんものね。迫力も華もございますもの」

電話のP『何だお前、気分で生やす癖にまだネタにされるのは抵抗があるのかw』

垣根「そう言うのが最高にムカつくんだよ!」

弓箭「そう言えばせっかく撮影したコマーシャル用のプロモーション映像が、きゅうきょ店頭のみの放映になったって聞きましたが何かトラブルでも?」

心理定規「しっ。ランドセルの話は彼の前では禁句よ」

誉望「んぶふっw」

垣根「……」バサッ

誉望「っあうあああ! すんませっ?!」ガターン

弓箭「ああ……それで。そしてああなるんですね」


心理定規「ええと、新規のファン層を獲得するための今後の活動だったわね? 意外性のある新しいこと…なにかあるかしら」

垣根「物珍しさで一旦目を引いてもたかがしれてんじゃねえのか?」

電話のP『それを惹きつけておくだけの実力は充分にある、と踏んでいるからこうした話が出ているんだぞ。出来もしない冒険をさせる意味はない』

垣根「……まあな」

誉望「Pがやけに持ち上げてるな……今日の公式からの一枚は、『会議中もドヤ顔』っと」ピロン

弓箭「垣根さんは相変わらず……お写真でも輝いていますのね」フフフウフフフフフフ

誉望「物理的にもな」

心理定規「今までの彼の活躍は……出来はともかくファンからの評価は高かった。でも、それだけじゃダメ。そう言う話なのよね」

誉望「今までは俺様路線だったじゃないスか。ここで、雨の日に子猫に親切にする不良効果を狙うのはどうスか? ギャップ萌えは女子にもうけますよね」

弓箭「垣根さんのファンの方は、むしろ突き離されると喜ぶ傾向にありませんか? あまり親しくされても、そちらには逆効果なのでは」

誉望「何でお前が知ってんだよ。垣根さんの分までエゴサしてんの? なんなのプロなの?」

垣根「俺らしさってなんだ」

心理定規「第一位は俺サマ路線だっけ」

誉望「第三位はファン媚び……っつうか徹底したキャラ作りが大成功したパターンだな」

心理定規「第五位はバックダンサーを侍らせる独自の女王様路線だったかしら? この前そんな演出があったんだっけ」

垣根「あれは単に本人が踊れないだけじゃねえの」

弓箭「ええええええーと、垣根さんは……若干第一位とはキャラが被りますよね」

垣根「あ?」

誉望「バっこの、いやーでもな、もう垣根さんのプロ意識の高さってば半端ないっスよね?! それこそ超能力者の中でも一番っつうか飛び抜けてるっつうか」

垣根「誰が飛んでんだって?」

誉望「すんませんー! そこかー!?」ズザー

電話のP『お笑い路線。これこそが我々の起死回生の一手だ。今まで、他のアイドルも正統派でやってきている。ここで意外性と他のアイドルとは隔絶した独自路線を開拓するなら、キャラを生かしたネタの方向にシフトして一気にレベルシフトを狙うことも……』

誉望「このP……今までの会話すべて、いやこの会議自体がこの話題のための布石に過ぎなかったと言うのか?」

弓箭「ネタと仰られましてもプロデューサーさん、垣根さんのその要素についてはまだファンの間でもごく一部の話で、もちろん一般には認知されていませんわよね?」

垣根「え」

電話のP『だからこそだ。ギャップの大きさはそのまま話題に直結する。逆にこの機会を逃すと意外性がなくなってしまうだろう』

心理定規「想定を裏切られるからこそ、人は面白いと感じるらしいけど。どうなの?」

電話のP『各自端末を注目、今から流す映像を確認しろ』

垣根「いや。何言ってんだお前ら……ってなんだこりゃ。第七位の削板じゃねえか」


空っ前絶後のぉぉぉ!! 超絶怒涛の超能力者!!

根性を愛し、根性に愛された漢ぉ!!

忍耐! 努力! 前進っ!
全ての根性の生みの親ぁ!
そうっ俺こそはぁぁぁ!!!

能力はよくわかんねえ! 
気合い入れときゃなんとかなる! 
貯金残高ぁ? 覚えてねえ!!!


キャッシュカードの暗証番号1217!!

財布は今そこに置いてあるぜ! お前ら、今がチャンスだぞ!!

もう一度言うぞ? 『1217(熱いな)』って覚えてくれよな!!!

そうっ全てをさらけ出した俺は

すごーーーーーい… 



 (バウーン)

板ぁぁぁ!!!

イエェェェ~~イ!!!


根!性!!(ヅバーン!!!)


弓箭「煙で何も見えなくなりましたわね」

誉望「こいつもセルフ特殊効果の使い手か」

電話のP『これが今ネットを中心に話題になってる。で、お前にもやってもらう』

垣根「はあ?」

誉望「NOとは言わせないアイドル垣根さんにまさかの…強引返し、だと……」

電話のP『お笑い番組での急な仕事だったそうだ。それでもやつは快く引き受けたぞ。もう一度再生する、よく勉強しろ』

垣根「はああ?」

……空前絶後の――


電話のP『そっちの三人、別ウィンドウの空欄は埋まったか』

心理定規「いきなり何をさせるのよ」

電話のP『こいつに同じことをただやらせても面白くないだろう。らしさは必要だ』

誉望「で、俺たちでコピペ改変スか。えっと俺はわかりやすく垣根さんの売りを前面に押し出しました」

電話のP『では誉望の案から転送する。読み上げろ』


垣根「『空前絶後の、超絶怒涛のカッコイー能力者』」

垣根「『己を愛し、天に愛された男』」

垣根「『俺様、決め顔、『未元物質』」

垣根「『全てのカッコイーの生みの親』……自分で言ってどうすんだよ」



心理定規「こんな感じでどう?」

電話のP『次が心理定規か』


垣根「『空前絶後の、超絶怒涛のセクシー能力者』」

垣根「『セクシーを愛し、セクシーに愛された男』」

垣根「『イケメン、高身長、素材の良さが物を言う』」

垣根「『ナチュラルボーンセクシー能力者』おいおい、これって笑えんのか?」



弓箭「ファンのみなさまのイメージを踏まえて考えてみましたわ」

電話のP『最後が……弓箭…お前、よくわかってるじゃないか』


垣根「『空前絶後の、超絶怒涛の能力者』」

垣根「『孤高を愛し、厨二設定に愛された男』」

垣根「『チェーン、翼、暗黒微笑』」

垣根「『全ての『未元物質』の生みの………」



電話のP『まさか弓箭がここまで優秀だったとはww嬉しい誤さnwwwwwwwwwwwwwww』

誉望「ちょっと待てネゴサの申し子! いくらお前が自意識過剰妄想型の中二病だからって垣根さんにそれはないだろ?!」

弓箭「でででででですが垣根さんの人気の一端には、こう言った要素が絡んでいるのも確かではございませんの? わたくしのリサーチは……」

誉望「否定はしない。だけどな? 俺だってほわっとさせてんのに…ストレートにもほどがある。このドKYめ!」

弓箭「誤魔化せばいいと言うものですか? 誉望さんのおためごかし!」

垣根「俺の魅力って……何なんだ」

心理定規「生まれ持った武器も才能の一つよ」


電話のP『残念ながら弓箭の案は没になってしまった。今回のネタは一般の新規層にもよくわかる、あるある路線で行こうと思う』

弓箭「そうですわね…みなさんにもわかりやすいものにしなくてはいけませんでしたのね」フゥ

誉望「マニアック以前の問題だ」

心理定規「あなたも、自分探しはほどほどにね」

垣根「ったく。一応まだ話は聞いてやるが、後半はなくていいのか」

電話のP『そっちは特別面白くもないからな。こちらで用意してある』



垣根「『そう、我こそは』」

垣根「『身長180以上、能力名『未元物質』、嫌いな奴は一方通行!』」 

垣根「『携帯の暗証番号11015』」

垣根「『スマホは今、楽屋に置いてあるぞ。テメェら今がチャンスだろうな』」

垣根「『もう一度言うぞコラ 「11015(いいおとこ)」だ覚えとけ!!』」

垣根「『そう。全てをさらけ出した俺は……

メルヘーーン 

垣~~~~~  

(バサァ)

根ーーー!!!

イエェェェ~~イ!!!

エンジェル!!(ここで決めポーズ)』

……テメェらまとめて死にてえらしいな?」


電話のP『まあ聞け。二匹目のドジョウはまだいい。だがそれに続く便乗の後追いほど、みっともなくなりがちだろう。幸いにして、我々「スクール」は情報が早い。あの動画の反響に注目している連中は多いが、あの一方通行でさえもアップロードはおろか撮影もまだだぞ』

垣根「何だと」

誉望「おおっと。じゃあ心理定規さんに後はお願いしてそろそろ……」

心理定規「彼のフォローならするけど。君には後でがんばってもらうんじゃない?」

弓箭「何故、まるで逃げるようにこそこそしてらっしゃるのかしら? ねえ誉望さん?」ニコォ

誉望「なんだかんだでいつものパターンでトンデモ企画がまとまりそうだからこそ! 今は見逃してくれ!!」

これはひどい(褒め言葉)

相変わらずこのSSは最高か

ソギーの声優候補にサンシャイン池崎も追加かな?

途中まではのんびりだらりまったりなスクールいいなぁって感じで和んでたけど
電話の男登場からじわじわ来て全ての未元物質の生みの親で>>1に完全敗北してしまった
サンシャイン池崎と並べると第二位未元物質(ダークマター)の垣根って表記が芸名にしか見えねぇ

レベル5さえも抗えないなんて実は炬燵って魔術なんじゃね?
きっと人間を全て炬燵に取り込んで学園都市の機能を麻痺させようというローマ正教あたりの策略……おのれ魔術師!

一方ローマでは神の右席がおこたで堕天していた

ドォーモーすみまっせーん保守しにきたんすけどぉー?cv平松


>>884
いつもだいたい大惨事ですねドーモ

>>885
ドーモありがとうございます

>>886
あんまりすごくなさそうなソギーw
アニメみてえなあ……爆風と瞬間移動で野菜人みたいになる削板みてえなあ

>>887
やったぜ
お笑い枠(ボソッ

>>888
脳と神経に作用する学園都市の最新科学技術も使われているのかも!!
遡ると民明書房の資料には炬燵が神道の流れを汲んだ拘束・弛緩に適した日本独自の魔術装置であることが書いてあるんだよ。『オコタデミカーン』や『スイアノクフーシ』、近代になって作られた強力な呪文についても研究が進められてるかも?

とある偶像さまの一日

『スクール』所属アイドルの朝は早い。
まだ寝ているうちからマネージャーの心理定規が今日のスケジュールを知らせる通知をよこす。
無視して華麗に二度寝を決め、現場入りが押してしまうなんてこともある。
そんな時はムカついたので、と理由をつけて控え室で既に待機していた誉望に蹴りを入れる。

おかしな仕事を取ってくるのはいつもプロデューサーだ。
断りきることは稀で、文句を交えて打ち合わせをするうちに何となくその気になって一仕事してしまう。
垣根の気分を乗せてしまうその懐柔策にはいつも驚かされる。
超能力者アイドルの苦労の成果をマネージャーやスタッフと確認。
必死になって笑いをこらえる誉望に無言で『未元物質』をお見舞いする。

とある取材で第一位の話題が出た。
いつか垣根さんも一緒にタイアップ企画をお願いしたい、と振られる。
垣根帝督・第二位は独自のブランドだ。抱きあわせてセット扱いなど冗談じゃない。
ふざけた野郎だがこれも仕事だ、と笑顔でやり過ごす。

うんざりしているところに心理定規が声をかけてくる。
マネージャーとしてフォローしにきたらしい。
垣根がいかに素晴らしいアイドルか、当たり前の賛辞をひとしきり聞かされる。
おいおい照れるだろもうその辺で止せよ、と垣根が制止すると、心理定規はあっさり向こうに行ってしまった。
ムカついたので誉望が座る直前で椅子をひっこ抜く。
転ぶ前に能力でふんばる空気イス誉望。
ちょっと面白いからと奴はそのまま放置されていた。

夜。
垣根が自室に戻る頃、仕事ざんまいだった一日の労を労う弓箭からの長文メールが届く。
どれだけスクロールしても終わりが見えないので放置していると今度はSNSの方にメッセージが来たらしい。
垣根さんから既読がつかないと騒ぐ弓箭に、今度は誉望が噛みつき二人のスタンプ合戦がはじまったようだ。
ちゃんと確認はしていないがグループの新着通知があまりにうるさいのでスマホをミュートにして就寝。
明日も仕事で早いのだ、『スクール』アイドルの一日は長い。



炬燵の変inローマ

右「なんだこれは。何故こんなところに小規模な和室が出来上がっているんだ」
後「ローラ・スチュアートがローマ正教に『コタツ』を寄越したのである。それを使うためにこうして『場』を整えてあるのである」
左「大元も恐らくは学園都市からの賄賂でしょう。それを我々に回してくるとはアレもいい面の皮ですねー」
右「ふん。誰か試してみろ」
左「嫌ですよー。何か細工がしてあったらどうするんですかー?」
後「なら、私が」スッ
前「おい、アックア」
後「……」
右「……どうした」
後「これは……暖かいな」
右「ふん」
左「ほう……」
右「悪くはないな。ヴェント、そんなところに突っ立ってないで貴様もあたれ」
前「嫌ね。私は科学が嫌いなんだ」
後「ならばこれがある。これは火鉢と言って炭に火を起こし部屋を暖める古くからの暖房器具らしい」
右「いつまでも見苦しいぞ。そら、そこに座っていろ」
後「こうして網を置き、この上でモチ……ライスケーキも焼けるらしいのである」
右「日本人と言うのは本当に多機能が好きな連中だな」
左「では私は神の血をいただきながら……神の肉をここで火炙りにしましょうかー」ワーイ
後「テッラ、冗談が過ぎるのである」
右「貴様は本当に小麦が好きだな」
左「嗜好品ではないんですがねー」グビグビ

右「ああほら、焦げるぞ。早くモチを裏返せ」
後「ではフィアンマに任せるのである。日本では古来から、モチは清貧な者に焼かせると良いと言う格言があるらしい」
右「ふふん。火に対応した俺様が直々に焼いてやろう。こんがりとな」
前「アンタ随分似合わないモン着てるわねぇ、それはナニよ?」
後「半纏と言う日本の防寒着だ。綿が詰めてあって暖かいぞ。お前の分もある」
前「私はやっぱり黄色なのねぇ…」
右「見ろ……俺様の聖なる右でモチが素晴らしく膨れてきたな。そら、焼けたものから救ってやる。これはどうやって食べるんだ」
後「日本では黄粉、餡、醤油……海苔や味噌などと食べるのが一般的らしいが」
左「豆の好きな猿ですねえ」グビグビ
右「豆を甘く煮るなどと…正気の沙汰とは思えんな。チェーチはどうだろうな?」
左「合うんですかねー?」モグモグ
前「あらぁ、ずいぶん伸びるのね。こんなのに甘いモノがあうの?」
後「チョコレートもあるのである」
右「うっ…」
左「これ小麦粉で出来ませんかねー」モッチモチ

右「こうも長いこと入っていると流石にうだりそうだ。テッラ、テッラ。俺様は冷たいものを所望する。ジェラートでも持ってこい」
後「テッラはさっき喉にモチをつめて神の国を見に行きそうになったばかりであろう。私がやる」
左「優先…する。フィアンマを下位に…コタツを、上位に……」グー
前「科学、は……」ウトウト


>>889
堕ちた!573コマンドじゃないよ右席さんだよ
ヴァレンタインがまた今度

重い女、ラッコ。

うえうえしたしたひだりみぎひだりみぎ

よぼうくんのいちにち
蹴られる、未元物質、空気椅子放置、スタンプ合戦
……充実してるね!

くそ、つい油断してスレの最初の方を視界に入れてしまったせいで時間が消し飛んだぜ
おのれ魔術s……>>1

読み返してて思ったけど垣根ちょいちょいアプリとかやってるよね
ゴーグル君の影響もあるんだろうなぁとか思うとちょっとニヤニヤする

餅焼いてる右方さんがアホですき

イベントデッキ10枚固定って頂点もしけてきたな。自属性じゃないURをそうそう持ってますかっての。
BP3とバトシ別だしなーんなことより引き換えUR垣根はよ残りのメンバーのカードもはよ
技誉望、思心理定規、力弓箭で
馬場でさえHRにいるんだから早くな

>>892
らっこさんもいい子なんです。人よりちょっと情熱が有り余ってるだけなんですきっと

>>893
BA

>>894
リーダー待ちの合間にゲーム、ゲーム、(ゴーグルで)アニメ、ゲーム、アニメ…が抜けてるぜ
いやー充実してるね


>>895
ドーモドモ。リピートセンキュー
おのれ魔…え>>1のせい? 全ては……>>1のせい
序盤のゴーグル君はガチオタじゃなかったのに…
…どうして、ここまでひどいオタク(能力とゴーグル駆使して複数ゲーム周回)になっちゃったのかな
>>1は誉望万化氏に申し訳ない気持ちになります。
ゴーグル君は元気ですきっと

>>896
紙の右席に祝福されし聖なる餅
テッラは萌えキャラ。異端は認める、異論も認める


二月某日、『学舎の園』内、枝垂桜学園

弓箭「(今回、調理の実習は一般的なバレンタイン文化に親しむための特別授業と聞きましたが。一体なにをするんでしょうか)」

教師「本日、皆さんにはチョコレート菓子を実際に作っていただきます。今回は特別講師として、パティシエのシゲハル・アカギ氏と映像での中継がつながっています」

教師「『チョコレート界に降り立った天才』の異名で有名なアカギ氏は弱冠十三歳のころから豊饒な才気と頭角をあらわし……」

弓箭「(そんなに有名な方から教えていただけるんですね)」

女子生徒「この中から作るものを選ぶんですのね。どちらになさいます?」

女子生徒「そうですわ、出来上がったら交換しましょうか! でしたら、わたくしは……」

弓箭「(どうせお菓子を作るなら、わたくしもどなたかに…)」

弓箭「(どなたに差し上げたら?)」

弓箭「(いっいえ、わたくしのチョコレートをめぐって、もしもクラスのみなさんに争いを生んだら大変ですわね! ここは、お世話になっている『スクール』のみなさんに……ごめんなさいわたくしこちらを差し上げる方が既に決まって、いいえあの特別な方と言うわけではないんですのよ? お知り合いの殿方に日頃の感謝を……)」ブツブツウフフ

アカギ『この勝負、気持ちも倍プッシュだ!』

教師「はい、それでは皆さん作るメニューにあわせて席を移動してください。ここからはそれぞれの作業工程を解説動画で確認してもらいます」


弓箭「ケーキもおいしそうでしたけどうまくできるか、公平にみなさんチョコレートにしましょう」

弓箭「心理定規さんには……そうですね。可愛い型と、食べられるお花がありますからこちらを使って」

弓箭「飾りも沢山ありますわね。金箔、銀箔……垣根さんのはシンプルなものにしてデザインで変化をつけましょう」

弓箭「誉望さんは……ええと? ううーん?」

弓箭「あら。これは何に使うんでしょう?」

女子生徒「そちらは食用の色粉だそうです。チョコレートに混ぜると色が着くそうですわ」

弓箭「ああああああああっ? あり、ありがとうございます!!」

弓箭「そんなものまであるんですね……あら、あちらにも道具がありますね」


弓箭「ここにチョコレートと粉がございますでしょう?」

弓箭「これをこうして……」

弓箭「あっ」

弓箭「……」アワワワ

弓箭「ま、混ぜれば何とかなりますわ」

弓箭「ええと、溶かしたものを一度冷ますんですか……加熱モードから冷却にして、適温を入力すれば」

弓箭「(順調、順調です! わたくし、こんなに上手く出来てしまってよろしいんでしょうか! しかし手作りの本命チョコをお作りになる方はこのように大変な思いをしてらっしゃるんですね……はっ! もももももももしかして、まるで本命のようなチョコレートを渡したら、誤解を招いてしまうでしょうか。これを召し上がったら皆さんわたくしのことをつい意識してしまうのでは。そっそこから深い仲に……? いっいけませんわそんな……わたくしに急なモテ期だなんて、ハーレム展開と言うやつですか? どどどどどっどうしたら、困ってしまいます!!)」

女子A「まあご覧になって。弓箭さんのチョコレートの見事なこと」

女子B「弓箭さんも嬉しそうですわね」

女子C「……もしや、弓箭さんはどなたか意中の方が?」

女子D「いつも以上に張り切ってらっしゃいますものね」

女子A「そんな! いいえ。いけませんわ、そんなことを詮索しては失礼ですわ」

女子B「そっそうですわね!」

女子D「バレンタインと言うのは殿方にチョコレートを渡す行事でしたよね? 皆さんは、渡す方が決まってるんですの?」

女子C「それは……」

女子B「うふふふ」

女子A「オホホホホ……」

後日、『スクール』のアジト

弓箭「先日授業で作ったものです。少し早いですが、バレンタインにどうぞ」

心理定規「すごいわね、可愛い。ありがと」

垣根「ふーん。お前作ったのか」

誉望「これ食えるのか」

弓箭「誉望さん。味が落ちてしまいますから、いつまでもとっておかないでちゃんと食べてくださいね?」

誉望「いや。食べても大丈夫なやつ? 何かそっちの二人のは店にあってもおかしくないクオリティなのに、俺のはブロックのおもちゃに見えるんですが」

垣根「見た目も色もプラスチックだな。それ」

弓箭「うふふふふ。驚かれたかもしれませんが、チョコレートで出来てますから召し上がっても平気ですよ。あ! あああああああの、もしこちらを召し上がられてわたくしのことがその……わたくしはそのような、ええと…………いえ。みなさんのお気持ちにまでこちらから口出しするのは、失礼でしたね。どうぞ召し上がって下さい」

誉望「正直に言え。何か入ってるのか? チョコにあってはならない不純物が入る……つまり……恐れがっ! わき上がる……圧倒的、不信っ」

弓箭「なんなんですかいきなり」

誉望「ネガ重い系のキャラは手作りで余計な『オマジナイ』に走るのがあんだよ! いいか、黒魔術はあてにならないしネットで売ってる怪しい物じゃ、恋人も友達も作れないんだぞ」

弓箭「わたくしああ言う胡散臭いものは信じてませんから。瓶に入った妖精さんは、お友達になってもくれませんでしたもの」

誉望「え。なんかごめんなさい」

心理定規「お喋りしてる所悪いけど、彼、早速食べてるわよ」

誉望「垣根さん…平気スか」

垣根「あ? 普通に食える」

弓箭「よかったです。プロの方に作り方を教わったんですよ」

心理定規「他にもずいぶんあるけど。こんなに沢山いいの?」

弓箭「ええ……クラスの皆さんと交換してもいいように頑張って作ったんですが……」ウフフ

垣根「その辺に置いとけば下部組織の奴らが食うんじゃねえの」

心理定規「……あ」

弓箭「心理定規さん? どうかなさいました?」

誉望「止めろ弓箭。いいか……本当に恐ろしいのは何も無いバレンタインじゃない、義理のあるホワイトデーだ。男にはお返しと言う超難関クエストが待ち受けてる」

弓箭「どう言うことでしょう?」

誉望「いくらお前でも三倍返しの伝説は聞いたことがあるな。そこで質問、下っ端入れた『スクール』の関係者の人数は?」

弓箭「お返しがたくさんですか?」

誉望「そうだな。そうなると、Xデー近くになったら…正規構成員でもハードルの低い俺のスマホは心理定規さんへの質問で通知が止まらなくなるかもしれない。俺も三次元はサポート適応外だが一つだけ言えるのは、女子に食べ物はやめておいた方がいい。やるなら量より質にしろ」

弓箭「なるほど。一つずついただいても大勢では沢山になってしまいますね。そんなに召し上がれませんし、いただいたものを悪くするのも失礼ですわ」

誉望「何だよ、食うよ。後でちゃんと食べる」

心理定規「私、プレゼントは普段から色々もらうけど女の子にチョコのお返しするのは初めてかもしれないわ」

垣根「ふーん。この時期はチョコ山ほど配ってんじゃないのか」

心理定規「そんなことわざわざしないわよ。貰う方も準備する方も面倒でしょ? そう言うのは期待値も低いし、ローコストハイリターンの方が好きよ」

誉望「心理定規クラスになると、有象無象のお返しは数に入らないのか……」

弓箭「心理定規さんのはじめてのホワイトデーがわたくしに? なんて光栄なんでしょう」

誉望「お前って、実はものすごく前向きだな」

弓箭「そそそそそんなに褒めてもっ……バレンタインは」

誉望「あ。そうだよバレンタイン! 早く来ないかなあ~」

心理定規「どうかしたの?」

誉望「日時指定でプレゼントがっスね! いやー学園都市の科学力もすごいっスねーとうとう次元の壁を超えて三次元のチョコがメクちゃんからもらえる日がくるとは……」

弓箭「アニメの女の子が贈り物をくれるはずはございませんのに……大丈夫でしょうか」

心理定規「そうね。きっと届いた荷物の伝票をよく見たら現実に帰ってくるわ」

ラッコちゃんがつくったチョコほしい、お近づきになりたい
ていうかラッコちゃんもゴーグル君も充分リアル充実してるよお

俺、チョコを二つも貰ったぜ・・・母親と妹から

アカギ+ネガ重らっこちゃん=血ョコレート
結局プラスチックチョコはまともな味なのかどうか

……あれ、ひょっとしてこの話って一年前にぼっちが言ってた調理実習…?

このスレにらっこちゃんが来てからもうとっくに一年たってたんだな

一応保守。好きだから続いて欲しい。

>>1 死んだ?

年度初めで忙しいだけさ。きっとそうさ


ドタバタの超能力者ミーティングを終えて、自分の授業に戻っていた美琴。
彼女は教室を移動している途中で見覚えのある姿を見つけて手を振った。

「あーっ! かき」

『……かき?』

美琴に駆け寄られてふり返った生徒は首を傾げる。
不思議そうな。
なんの話を振られたのかさえ、さっぱり思いつかない。
そんな態度で美琴の言葉が続くのを待っている。
何故か、とってもにこにこしながら。

それに一瞬はっとした顔をした美琴は慌てだした。
目をぱちぱちさせた様子は、罰ゲームつきのクイズをあてられたときみたいだった。
きっとそんなものがあるならとびきり難しくて、間違えるとうんとひどい目に合うやつだ。

「えーっと、かき、かき……柿は、確かアジア、アフリカを中心にだいたい五〇〇種類が分布してるのよ。国内だと甘柿、渋柿合わせて四〇〇から六〇〇くらいの品種が栽培されているらしいわ。もちろん食用だけじゃなくって木材としても利用されてるわよね。乾燥させると反発性に優れるし、昔は茶器や茶室にも使われてたって言うから日本ではなじみ深い植物よね! あとほら、あの村でよく柿渋を使ってるじゃない。ね、そうなんだって! あ、レポート! レポート書いてるのよね? 役に立つかしら? ねえ!」

何の授業の課題なのか意味不明だが、最初に言いかけたのは植物の柿のうんちくだと言うことにしたいらしい美琴。
そんなゴリ押しを亘木はにこにこしたままじっと聞いていた。

『……どうでしょうね。ありがとうございます御坂美琴さん』

「あは、あはは……ねえ、アンタも次音楽なの?」

『恐らく行先が同じなので、そうでしょうね』

「あははーそうねー」

『……どんな課題に取り組んでるんだか』

「うっうるさ……いいでしょ!」

傍目にはお上品に笑いあいながら二人は音楽室に入った。
校内に幾つもある中で特に広く、コンサートホールのような中で授業が行われる。
先に来た生徒たちで既に前の方の席は埋まっていた。

「御坂さま、亘木さんをご存じで?」

「ええっと……まあ」

お喋りしているところを同級生に挨拶される。
あいまいに笑い返しながら美琴は亘木の近くの席に座った。
食蜂たちがしていることに関係はないだろうが、わけあり部分を知っていると放ってもおけなくなる。

『ああ。先ほど図書室でお見かけして、課題についてお聞きしたら親切にしていただいたんですよ……ねえ?』

「あはは、ははは……そうねー」

美琴のテキトーなでまかせに乗っかった嘘をしれっと吐く。
何故敬語なのかはわからないが、亘木もこの状況で動じないのは流石中身が違うだけのことはある。
美琴にも今はただの女子にしか見えていない……はずなのだが笑顔がやけに怖く感じた。

選択制の音楽の授業は複数のクラスの生徒たちが集まっていた。
教師は実技の自由演奏に指名する生徒を誰にするかさっきから悩んでいる。
そんな時、行儀よく座っていた生徒たちの間から手があがった。

「はい」

「はい、何かございますか」

「ええ。先生、ここは亘木さんに弾いて頂いたらいかがでしょうか。転入された方の演奏もお聞きしたいですわ」

「ええっ」

恐らく、亘木と同じクラスの生徒はにこにこしてそう言った。
きっと輪の中に入れて交流を…なんてお優しいことを考えているんだろう発言。
それについ大声でリアクションをしてしまった美琴に生徒たちの目が一斉に集まった。
本人以上に驚いてどうするんだ、と彼女が気付いた時にはもう遅い。
教師も、静かな室内でいきなり声を出した美琴を不思議そうにみていた。

「御坂さん。どうかなさいましたか」

何か、と聞かれて美琴は眉を寄せた。
常盤台にいれば楽器の一つ二つ弾けて当たり前だ。
だが、「学舎の園」の外に友だちのいる美琴はよくわかっている。
ここの当たり前が普通じゃないこと。
その辺の高校生は外国語で日常会話どころか簡単な古文の問題に四苦八苦するし、その辺の女子中学生に持たせてもヴァイオリンは弾きこなせない。
おせっかいな彼女には、今日会ったばかりの相手でもそんな無茶を押し付ける気はなかったし。
目立ったりおかしなことでボロが出て。
そこから何かひどいトラブルが引き起こされるかもしれないと言う、妙な当事者意識もちょっぴり働いていた。


「彼…女は転入してきた人でしょ? まだ来たばかりだし、慣れないと色々大変じゃない」

「まあ。心配なさらなくてもこの常盤台に在籍を許される方ですから、きっとさぞや素晴らしい成績をお持ちなんですわ。ねえ皆さま」

別の女子生徒がそう言うと、その近くに座っていた生徒たちもくすくす笑っていた。
こっちは、さっきの発言とは雰囲気が違うのが美琴にもわかる。
露骨な態度で新顔の……もしかすると失敗するところを、期待している。
ああ、こんな奴らもいるのよね、と美琴はむっとしていたが。
渦中の少女は立ち上がった。

『曲は何でもいいんですか? なら、失礼して』

そのままの流れだけなら彼女が弾くことになりそうだったが。
引っ込みがつかなくなった、にしてはなんだか堂々としすぎている。
教師に一言たずねると。
まだ何か言いたそうな美琴をよそに、亘木は席を離れた。
棚を見て、しばらく探して考えてからある曲の譜面を手にしてピアノの前に座った。

リズムを捉えて左右の手が交互に踊る。
軽やかに動いていた左手がピアノのスコアにはない音を追っていることに気付いて美琴は肩の力を抜いた。
どうやら心配はいらなかったらしい。
ゆっくりと落ち着いたリズムで始まった曲は、次第に音の連なりを広げていく。
曲の盛り上がりに向けて一層テンポが増していく。
なめらかな運びだが、細い指先は力強く鍵盤をたたいていた。

盤上を大きく使った六分ほどの演奏はなりゆきを見守っていた生徒たちにほんの文句も囁きも挟ませずに終わった。
鍵盤から手を放した亘木がこれでいいのか、と言いたげに一同を振り返る。

『指がようやく温まりましたが。次はまだ、何か?』

「いえ大変結構でした。ねえ皆様?」

生徒からのまさかの返しに教師は一瞬驚いたがほっとした様子で亘木を下がらせる。
壇上から降りた彼女はやりきったことに満足したのか笑顔を見せた。
その口元は挑戦的にも見える角度で上がっていたが、生徒たちから素直に拍手が送られる。

「(アンタ……ピアノなんて弾けたの)」

『(俺が弾けたら悪いのか? あ?)』

戻ってきたところにひそひそ声をかけると亘木はさっきまでの澄ました顔が嘘のようなリアクションをした。
顔を斜めに向けて睨んでくる仕草が完全に柄の悪い男のそれだった。

「(その顔と声で凄むのやめてよ。せっかく私にもかわいく見えてるんだからね)」

流石に少しは緊張したのだろうか。
亘木はふーっと息を吐くと耳元の髪を弄りながら口の中でぶつぶつ言っていた。

「(いきなりあんなとこに担ぎ出されたから心配してやったんでしょーが。『パッヘルベルのカノン』かあ。あ、確かウィンストン版のスコアもあったわよ。長いしそっちにすればよかったのに。でも即興でアレンジしてくるとは…アンタやるわね)」

『(……ああ。あれ、元は弦楽の四重奏だろ。譜面通りじゃ単調すぎだ)』

一瞬、は? と言う顔をして目を丸くした亘木だが褒められて気をよくしたのかニヤリと笑ってつけたした。


[急にクラシックをかけて欲しいなんて言うからびっくりしちゃった]

『(ちょっとな)』

授業を終えて廊下を歩く亘木――いや、垣根は首元のスイッチで自分の声を消しながら返事をしていた。
イヤーピースから聞こえる本日の後方支援(話し相手)は心理定規だった。

さっきの音楽の時間。
垣根は楽譜を探しながら手本代わりになりそうな曲を流すよう心理定規に指示していた。
あの演奏のタネは、知っている曲を実際に聴きながらカラオケで歌うようなものだった。
ピアノなら垣根も触ったことくらいあった。
前に聞いたことのある曲を……なるべく構成がシンプルでわかりやすそうなものを選んだつもりだったが。
美琴のリアクションからすると、実際はそうでもなかったらしい。
おまけに原曲とピアノでは…当然だろうが同じ演奏ではない。
そこはちょっとした誤算だったが、曲の雰囲気をつかむだけの間でも演奏を聴いたのは役に立った。

垣根は譜面とそれにあわせた指の動きをその場で確認し、後はひたすら速度とタイミングを合わせてハンマーを叩き音符を取りこぼさないように追っていっただけだ。
知り合いの、バカで間抜けでオタクで音痴な構成員がシューティングじみたゴリ押しで音ゲーをやる時の手法に似ていると言えば近い。
なんだか両手の運指もめちゃくちゃで、あっちこっち無駄の多い演奏だったな、と振り返ってみれば思う。
あと。
美琴はアレンジ、と言ったがあれは耳元の曲と頭の中での音符の処理に困って逃がしただけのものだった。

楽譜にあわせてただ音を鳴らしたものは、演奏と言うにはレベルは低いだろう。
それでも、いちなり指名されて予行練習もなしに披露するにはじゅうぶんな出来だったはずだ。
危ないところもあったがひどいミスはなかったし、授業中にそれをつつかれはしなかった。
あの場をうまく切り抜けることが出来たのだから垣根もそんな風に思いたいところだ。
まあ、わざわざ指摘してご親切に指導するタイプの教員でなくてラッキーだったのかもしれない。

[少し意外だったわ。音楽のセンスもあったの? あなたも器用よね]

録音して貰えばよかったかしら、なんてからかって心理定規が笑う。
うるせえ、と返して垣根はこの後の予定に考えを向けた。
とりあえず腹ごしらえして……昼休みの後にもいくつか授業がある。
食蜂の根回しがあるとは言っても、こうして生徒として潜り込んでいる以上はそれらしく振舞うのが得策だろう。
生徒たちが学生生活を送っている間にあれこれ調べるのが目的なら生徒になる必要はなかった。
他の役割に垣根をあてはめればもっと自由に動けただろう、それをこんな格好まで……。
何とか納得させる言い分を頭の中で組み立てながら、常盤台二年の女子は自分のプライドと戦っていた。

「貴女」

「ちょっと、そこの貴女」

何だか背後から女子の声がしているが垣根は無視していた。
何しろここは石を投げればお嬢様に当たる常盤台、女だらけのこの場所で呼ばれているのが亘木とは限らない。
段々イラつき始めている声の主も知らない相手だろう。まあ昨日ここに足を踏み入れたばかりの亘木には知り合いの方が圧倒的に少ない。

「ちょっと! もう、貴女よ。二年に転入してきた…亘木さんでしたかしら」

名前を呼ばれてやっと振り返る。
後ろにいたのは予想外に、女子の一団だった。その中の一人、大声をだしてちょっと肩を震わせている女生徒はフン、と亘木をみつめた。

「貴女、能力は」

はあー、とため息。
いきなり何言ってんだコイツ、と吐き捨てたいのを我慢して亘木は首を傾げる。小さなムカつきを覆い隠す笑顔も忘れないよう気を付ける。

『なんでしょう。急にどうしてそんなことを?』

「いえ。新しく我が校にいらしたのがどんな方か、お聞きしてるだけですわ大したことではございませんわよね」

まあ、常盤台にいるような能力者は皆レベル3以上のはずだ。
一般的には強能力者はそれなりの実力者になるらしい。自慢してもおかしくないだろう。
お嬢様と言う生き物がそれをひけらかして歩く習慣があるかは知らないが。
しかしまぁ、亘木の場合は少し事情が違ってくる。
見た目は美少女でも中身は違う。
ありふれたその辺の能力者と違って、自分の能力だってホイホイ教えてやれない。
本当のことを言うとたちまち尻尾をつかまれてしまう。
二度目のうんざりした息と一緒に返事をしようとして。垣根は、ん? と眉を寄せる。

『(あれ。俺のここでの扱いってどうなってんだ』

[さあ……昨日の夜だったかな。誉望君が電話のあの人とキャラシートを作ってみようとか何とか言ってた気はするけど]

ふともれた呟きに心理定規がおかしな返事をする。
こんな時に頼りになるはずのサポーターじゃなかったのか、つっこみを入れる前に素早く質問する。

『(んな意味わかんねえ話じゃねえよ。書類上この女は何の能力ってことで話通してんだ?)』

[でもそこでは、貴方にはなるべく能力は使わせないって話になってるんでしょ? そんなことまでいちいち考えておくのかしら]

一応、偽造の身分でも『書庫』には一時的に登録されている可能性がある。
食蜂が伝え忘れたのか、単にそこまでは考えていなかったのか。
心理定規も知らないのではしょうがない。
ちっ、と短く舌打ち(これも心理定規以外には聞こえていない筈だった)して垣根は後で何とかしろよ、と言い捨てて首元のスイッチを操作する。


『じゃあ、ベクトルに対抗して…スカラー操作』

亘木が思い付きで適当なことを言うと、スピーカーのむこうで心理定規が小さく笑う声が聞こえた。
対する女子生徒たちは怪訝な目をして亘木をみている。

『ダメ? じゃあAIM拡散力場の読み取り』

[任務には便利そうな能力じゃない?]

心理定規は食いついたが、肝心の観客の反応が悪い。

『これならどうですか。時間操作』

[ふふっ。男の子ってアニメの主人公みたいな設定、好きよね]

「ばっバカにしてますの?!」

『もちろん。冗談です』

馬鹿にしているなりに考えてやった返事だが。
ぼくのかんがえたかっこいーちょうのうりょくは常盤台のお嬢様にはいまいちウケなかったらしい。

『……はぁ。「念動能力」でーっす』

めんどうになってしまった亘木はやる気なく答える。
多分、一番無難に。そして何かあっても言いつくろえる範囲の能力がこれだろう。
だが、それは思っていた以上に目の前のキレ気味お嬢様のお気にめしたらしい。
途端に女生徒は大袈裟に両手で手振りしてにっこり笑う。
いちいちアクションが芝居がかって仰々しいのはここの校風なんだろうか。

「貴女、幸運ですわ。こちらの切斑様はレベル4の『念動使い』でらっしゃいますの」

そう言われ、少女たちの間から一歩前に出てきたのはすらっとした女生徒だ。

「ここで冗談が言えるなんて随分と…いえ、骨のありそうな方ね。先の授業の際にも上手くやったと聞いてますわよ」

それでか、と亘木はもう一度声を掛けてきた生徒を見た。
多分、この女はさっきの授業に出ていてそれで目をつけられたと言うわけだ。おかしな新入りに他の生徒の方から接触してくるとは、パフォーマンスも無駄にならなかったのか。

切斑…恐らくはリーダー格、ショートヘアで気の強そうな彼女は亘木の方まで歩いてくると、尊大な態度で亘木の顔と言わずあちこちじろじろ眺めまわした。

「容姿も合格ですわ。そうね……わたくしの派閥に加えてさしあげてもよろしくてよ」

何でわざわざ呼び止めたのか、と言う疑問が解けて亘木はもう一度息を吐いた。
新入りへの警戒した対応から何か……任務に関係ありそうなことがあるのかと思いきや、派閥とやらの勧誘だった。
とんだ外れだったようだ。


『派閥、ですか。残念ながらそんな暇は無いんですよ』

「あら。切斑様に逆らえると思って?」

そう言って切斑一派の生徒がくすくす笑う。
すると。廊下の、近くの教室の。
あたりにあったものがガタガタと一瞬で積み上げられて行く手に壁を作った。
操作した本人は得意そうな笑顔で腕を組んでいる。
数メートル先を塞がれて、大能力者に追いつめられる。
だがそれも無視して亘木は立ち去ろうと一歩足を出した。

「ちょっと」

駆けよってきたのは最初に声を掛けてきた女子生徒だった。
彼女が怒った様子で亘木の肩を叩こうとした次の瞬間。
バシバシバシッ! と派手な音を立てて後方の窓ガラスが激しく揺れた。

「きゃあっ?!」

「な、なんですのこんなところで無礼な……」

自分たちがしたことはいいのか、突然の騒音に悲鳴が上がる。
そして慌てた少女たちがもう一度振り向いた時には即席の壁は内側から外に向かって、吹き飛ばされたようになぎたおされていた。
その囲いの外側にいつの間にか移動している亘木はぽかんとしている生徒たちに笑いかける。

『では、御機嫌よう』

切斑をじっと見つめてから彼女は会釈をした。
にっこりと、まるで張り付けたような柔和な笑みを浮かべていた。

「あ……あんな可憐な方が、ま、まるで寮監様の様な威圧感を……?」

亘木が背を向けて、やっと声をあげた切斑はぺたんと床の上に座り込む。
へなへな~っとすっかり体から力が抜けていた。

「切斑様、しっかりなさって!」


崩れ落ちる派閥のトップに取り巻き女子があわあわ群がっている間に、亘木はさっさとその場を後にした。

[ずいぶん賑やかね。どうしたの?]

『(あの女ども、物積んだだけで俺を足止め出来ると思ってたらしい。ウゼェから軽くふっとばした。あ、壁の方な)』

お嬢様らしくない態度でコキコキ首を傾けると、
『おい。声漏れてるぞ』と歩きながら文句をつけた。
他にだれもいない静かな廊下でも耳元の音はよく聞こえる。
リーダーVS女子生徒の音声中継を聞いていた心理定規の笑い声が一瞬こもって小さくなる。
口元を手で覆ったか何かしたらしい。

[かわいそうな子たちね]

『思ってもねえことよく言うな。同情してんのに笑うか普通』

[ついおかしくって。でも能力使ったの。そこまでしなくて良かったんじゃない? 平気なの?]

『窓に注意を向けて一瞬で済ませたからな。あれくらいならまぁ……気付かれないだろ』

[それもだけど。相手はか弱いお嬢さまでしょ、いじめることなかったんじゃない?]

心理定規の口調はからかうみたいだった。
自分以外の誰か、女の子が少しくらいひどい目に遭わされても怒るどころか面白がっているよう、いや今回のは被害者側の自業自得だろうが。
垣根もそれに乗ってふふん、と鼻で笑う。

『ちょっと邪魔なもんをどかしただけだろ。っつうか大能力者がか弱いってタマか?』

[そうね。貴方って紳士的]

棒読みで、いやセリフでも読むくらい感情移入なしで同じる心理定規。
その辺の人間も物あつかいなリーダーとおなじくらい、クールな答えだった。


『(能力のレベル、学力、家の財力、コネその他。更に女特有の要素をプラスした格付けか。下らねえ)』

食堂で本日のセットランチからメインが肉料理のものを選んだ垣根はフォークを動かす合間にぼやく。
学校生活のわずらわしさ、プラス意味の分からない階級わけが意味不明だったらしい

[トラブルを避けたいなら食蜂派だ、とでも言えばよかったんじゃない?]

『(たとえその場しのぎでもあんな奴の下についてるなんて言うかよ)』

[特に常盤台は序列が複雑そうよね。能力第一主義のどこかの学校は、もう少し簡単でしょうけど]

『(マウンティングだ? ふざけんな。ここのガキ共じゃ、組み伏せる必要もねえだろ。んな前に即「ステイ」だっつうの)』

新入りをけん制して上下関係を教えようとして大失敗した、さっきのかわいそうな
犬に「動くな」と指示を出すときの単語を使ってそんなことまで言う。
垣根のような超能力者なら、相手に何もさせずに下してしまうなんて芸当も出来るだろう。

[貴方の前では大概の人は犬猫と一緒かしら。いつもなら、だけどね。その便利な能力も気軽に使えないことを忘れないでよ]

心理定規はスピーカー越しに呆れたようなため息をついた。
垣根の、いつになく品位に欠けたような言い回しが気に障ったのか。
何か失敗でもして中学校に変質者が出たと騒ぎになったら大問題だ。
誰だって、風紀委員と警備員に連行される妙な格好のリーダーなんてみたくはないだろう。

『(さっきのは大能力者だっつったけど、単純な操作だけなら誉望の奴にも出来そうだよな)』

何を? と聞かれて垣根は大荷物の移動、と返事した。
映像が向こうに行っていない、と言うのは不便だった。
いちいち状況報告をしてやる優しさも習慣も、このリーダーにはない。
聞かれてもいないことまでよく喋っているのは、今話題になっている奴の方だ。

[彼は、一人でもそれなりの仕事はこなせるし並行作業も得意だからね。落ち着いていればそうかも知れないわ]

『(この前、「パソコンがガチのフリーハンドで動かせそうだ」っつってたぞあいつ)』

[それって電子制御になるんじゃない? それなら発電能力とか別の能力じゃないのかな]

心理定規の疑問に答える前に、垣根はサラダをフォークでつついていた。
彩りよく野菜がたっぷり盛られていて、味付けはどれもお上品な癖にかさはそれなりだった。

『(あのゴーグルに登録してる奴だからだろ。元々の能力も、BMIに理屈では近い筈だからな。相性の問題だろ。別に発火能力者じゃなくても火はおこせるっつうのと似たようなもんじゃねえか)』

フォークの先から逃げそうになるプチトマトを垣根は指先で押さえて刺しとめる。
こんなちょっとしたことにも、手を使わなくていいのが本来の『念動力者』の能力の使い方だ。


頭の中で考えたことを現実に引き起こす。
それを機械化で実現する仕組みが、たとえばブレインマシンインターフェイスのような技術。
そして、科学的にはあり得ない程の規模で適えたのが能力開発。
学園都市の能力の中では「念動能力」はある意味原始的な部類に入るかもしれない。

垣根が出した例、「火をつける」ならば。
機械ならライターやマッチで済む。
能力ならば光学操作による集光、摩擦係数を変化させる、温度変化、発電能力の火花……など工夫次第でやり方は色々ありそうだ。
発火能力の方も、それ以上に多彩な能力傾向の違いがあるだろう。

もし誉望の言ってたことが、ただのおふざけで終わらなかったら。
今までは手を使わなくてもスイッチを押せる、だったのが。
スイッチを押さなくても思っただけで起動できる、に変化するのかもしれない。
それだってある意味触れずに物を動かしている。
手順を簡略化していけば楽にこなせるようになるのは、演算式と一緒だろう。

そんな、垣根の仮説をじっと聞いていた心理定規はふーん、とあいづちを打った。

[そう。これから便利になるかもね]

『(Hey,Sissi! なんてスマホに言わなくて済むかもな)』

[ふふ。ハァイ、ゴーグル? にでもなるの?]

今だって使いパシリもといよく働いてくれている組織の一員(雑用係と読む)ポジションだが。
この二人、言うまでもなく他人を便利に使い倒すことに疑問のないタイプだった。


なんて。
二人で……はた目にはひとりぼっちでたまに笑いながら食事をしていた垣根だったが。
後ろから名前を呼ばれた。
振り向くと昨日の朝あった、婚后とか言う女子生徒が手を振っている。

「亘木さん! そちら、よろしいですか?」

『え、ええ』

急ににっこりそんなことを言われて、亘木はうなずく。
また何か心理定規が愉快そうに言ってくるのを聞き流しながら隣を譲った。
婚后は近くにいたメイドに声をかけると、元の席に物を置いたまま移動してきた。

「亘木さんは…いかがですか」

その後、と聞いて婚后は箸を持ち上げた。
和の懐石風御膳、がいやにぴったり似合う中学生がやけに真剣な顔している。
いきなり時候のあいさつ、ではなく学校生活の方らしい。

『ああ……皆さん、親切な方ばかりですね』

「よかったですわ。どうしてらしたか実は、少し気にかかっていましたの」

含みのある亘木の返事にも、おそらく純粋培養なお嬢様は嬉しそうにしていた。
親切の押し売りは得意なようだが、亘木が実際どう思っているかはばれていないらしい。
怪しまれるのも厄介だが。
これはこれで。

(めんどくせえ……)

と、内心ぼやいたところでうまくいきそうもない。
サポーターは、
[意外なところから情報が出てきたりするわよ。そこの超能力者以外にも人脈があると便利だし……よかったわね
お友達できて]なんて言って、助けるどころか恐らく楽しんでいる。



食事を済ませた美琴はこの後どうしよっかなー、と考えながら歩いていた。
ふと、前の方の席に同じ学年の婚后が座っているのが見えた。
隣に並んでいるのは湾内のふんわりヘアーではない。今日はよく見るエンジェルリングつややかヘアーだ。
それに美琴はぎょっとしてテーブルまで近寄った。
やっほー、と明るく内心ドキドキしながらあいさつする。

「婚后さんに……亘木さん? 二人で…お昼?」

「ええ。あら、御坂さんもご存知でしたの?」

婚后はにこにこして、こちら転入生の亘木さんです、と美琴に紹介した。
二人とも、食事は終わっているようだが食後の歓談に花を咲かせていたらしい。

『ああ、授業でお会いしたことがあるんですよ。御坂美琴さん、良かったらご一緒しませんか』

「う、うん」

なんだか亘木が必死な目をしてそう言うので、美琴も同じテーブルを囲んだ。
美琴としても婚后が心配だったので断る理由もない。


垣根が友だちと一緒にいる状況が見過ごせずに会話に加わった美琴だが。
二人は、普通に楽しそうにおしゃべりしていた。
予想外に垣根が何とか婚后にあわせて話をしてやってる。
なぜ敬語なのかは相変わらずわからなかったが。
好きな食べ物の話題から、亘木がここの食堂のラーメンを食べたはなしになった。

「らあめん、ですか?」

「ああ、限定のやつね。食べたんだおいしかった?」

『そうですね……』

美琴もちょっと興味があったメニューだ。
今度挑戦してみよう、と亘木にいろいろ聞いていたが、何だか気乗りしない返事ばかり返ってくる。
え、結局おいしくなかったの? と聞こうとしたとき。
婚后がひとり不思議そうな顔をして、会話にいまいち加われていないのに気付いた。

「まぁ、庶民的なお味に興味が?」

「私もそう言うの結構食べるかな。ホットドックとか」

『ハンバーガーもおいしいですね』

「それは…サンドウィッチとは違いますのよね? 恥ずかしながらわたくしあまり存じ上げなくて」

どうやら婚后はラーメンもファストフードも知らないらしい。
それを聞いて亘木は、ハンバーガーと言うのは、となんだか親切に説明し始めた。
常盤台の箱入りお嬢様たちと同じように、生まれついてのお嬢さま、な雰囲気の彼女ならしょうがないかもね、と美琴はそれをほほ笑んでみていた。

『飲み物は、やはりコーラをお勧めしますね。炭酸飲料はポテトの油とも相性がいいです』

脂っこい喉に流し込むのがたまらないのだ、と言う風にふるわれる熱弁を婚后は楽しそうに聞いている。

「それは、大変おいしそうですわ」

「そうねー。今度、食べにいこっか」

「ぜひご一緒したいですわ。できたら、湾内さんたちもお誘いしてみなさんで……」

それを聞いた亘木がすごく嫌そうな、というか不安そうな顔をして美琴をじっとにらんできたが。
目の前でにこにこ楽しそうなお友達をみていた美琴は無言の訴えはしらんぷりした。


垣根『お。御坂、コンビニ行くだろ?』

美琴「え? 行くけど何よ」

垣根『ラーメン買って来いよ。カップラーメン』

美琴「ええっアンタね、それくらい自分で行きなさいよ。だいたい何で人のスケジュール知ってんのよ」

垣根「…この敷地の外でなければ行っていますが」

垣根『こうなるんだろ。おわかりいただけただろうか、っつーの』

美琴「ああそっか。学校の外だめなんだっけ? アンタも大変ね。別にいいわよ行ってあげても。何がいいの?」

垣根『んー。ウルトラカップみてーなガッツリ系』

美琴「味は?」

垣根『味噌か醤油とんこつ。くどいやつにしろ』

美琴「はいは…あ、食べる所あったかしら」

垣根『は? カップ麺ってのはな、お湯入れるだけでいいんだぞ』

美琴「知ってるわよ。食堂以外で共同で使える所って言うとどうかしら。サロンスペースの紅茶飲んでる横でラーメンはやっぱ怒られるかな」

垣根『じゃあレトルトにしてあっためろよ』

美琴「は?」

垣根『電子レンジ、それくらいテメェなら能力で出来んだろ?』

美琴「アンタねえ、人をなんだと思ってんの?」

垣根『おかしな趣味の便利な能力者』

美琴「はー……もうさ、アンタ自分で作れば? 今なら麺とスープにサービスで片手鍋も買ってきてあげるから」

垣根『調理室が使えても給湯スペースはねえのかよ。どうなってんだ常盤台』

舞夏「おー、わたりぎ―。どうだラーメンはありつけそうかー?」

美琴「あ、土御門。アンタ今日はこっちなの?」

舞夏「手伝いになー。みさかみさかーその子の話は聞いたかー? 珍しいなー庶民のラーメンが食べたくって困ってるんだって。今日立ち読みにコンビニ行くだろー?」

美琴「はー、アンタの入れ知恵だったの」

亘木『たかがラーメンのハードルが高すぎるんですが、ここは海外か何かですか?』

舞夏「そんなに食べたいなら後で特製メイドラーメンでも出前してやろうかー? ご注文はー?」

亘木『もうそれでも構いません……味噌バターコーンもやし大盛りで』

舞夏「麺とスープはー?」

亘木『固めに濃いめ。あ、後胡椒とバター多め』

舞夏「うんうん。卵は味玉、半熟、固めがあるぞ。どうするー?」

亘木『んー。味玉』

舞夏「一つでいいのか? 他のトッピングはいいかー? オプションでおにぎり、白ご飯、他にもつけられるぞー」

亘木『いや。今はいい…です。ラーメンが食べたいので』

舞夏「まいどー。全部で三〇〇〇円になるぞー」

亘木『は?』


舞夏「メイドの特製だからなー。それともあっちの寮に遊びに来るかー? 源さんは気前がいいからリクエストも作ってくれるぞー?」

亘木『誰だそれ』

舞夏「料理長の源蔵さんだー。あ、心配しなくても大丈夫だぞ。源蔵さんは男だけど野郎趣味で女子には無害だからなー。怖くないぞー」

亘木『………は?』

美琴「う、うちの学校関係でも、技術が認められれば男の人も働けるのよね。指定の美容院にも男の人くらいいるし……って、土御門、外部寮に行くくらいなら学校の外にいくらでもお店あるじゃない」

舞夏「箱入りのお嬢様だと寮と学校の往復以外滅多に外にはいかないからなー。これでも気をつかったんだぞ。外なら兄貴おすすめの店が結構あるしなー」

美琴「あ、そっか。出来ればこの中がいいのよね(ねえちょっと顔が怖くなってるわよしっかりして)」

亘木『ラーメンって……そんなに苦労しないと食えないもんだったか…?』

舞夏「そうかー。『学び舎の園』の中は難しいかもな。特製ラーメンは違ったらしいし」

美琴「そっか。ありがと土御門。またなにかあったらお願いするわ」

亘木『はあ…』

美琴「そんなことで落ち込まないでよ。な、なーんか私も食べたくなってきちゃったしやっぱ買ってきて……んっ?」

白井「おっねえさまー! 何のお話をなさって」ヒュン

泡浮「御坂さま、ごきげんよう」

湾内「みなさまで何だか楽しそうですね」

亘木『あの…御坂さん、私はラーメンが食べたかっただけなんですよ』

白井「あらお姉さま、夕食の前にそんなものを召し上がると……」

美琴「何よ」

湾内「まあ! 亘木さんは電車に乗ったことがおありなんですの?」

亘木『ええ。普段は車を用意させているんですが』

湾内「わたくしはバスは利用したことはあっても電車はあまり。どんな風でしたか?」

亘木『専用のカードで精算するので、まずそれを用意するんです』

泡浮「まあ」

亘木『最初は改札など見慣れないものに戸惑うかもしれませんが』

泡浮「どうなさればいいんですか?」

亘木『他の人間と同じようにして、堂々と振舞えばいいんです。一般人が問題なく利用できているものが私に使えないはずありませんからね』

湾内「そうですわね」

泡浮「すごいですわー」

美琴「なんだかんだ、わかりあえてるっていうの…? って、アンタは何してんだゴルァ!」

白井「間食などなされておねえさまのウエストが変わるといけませんから、黒子がチェックして差し上げようと!!」

美琴「いらんわー!」

亘木『うっわ…』

美琴「素でドン引かないでよ馬鹿ー!!」

ドーモ。
おひさしぶりです。
「念動使い」ってひらがながなんかもったいなくないか。
テレキネシスよりサイコキネシスのが呼びも意味もかっこよくて好き。
表記ブレなのか違いあるのか、考えても答えはない。

>>900
『スクール』の下部組織にはいればワンチャン
らっこさんのぼっちは本人の思い込みが一因って言うから……きっと本人が知らないだけで、がんばり屋さんとしてご学友の方々にも愛されてるよね。そうだよね

ゴーグル君は「手作りチョコもらったったw」とSNSで自慢しようとするも、あまりに派手な色艶にお菓子だと信じてもらえず青ピつっちーあたりにネタ扱いされて悲しい思いをしたかもしれないって今考えた。
リアルが充実してる奴は暗部になんかおちないんだよ!

>>901
妹からのチョコだと。鼻血を出してしね~♪

>>902

そうか、アカギよろしく最初にあらかじめ足しておけば……!怖いわ!
きっと材料もお嬢様校の意識高いのだよなんか産地の違うチョコがどうのって「学舎の園」クオリティさ。きっと味もそう言うの。
誉望「香り高いレ◯ブロックに脳が混乱する」
季節イベントの関連性はあってないようなもんだよ!
すごーい!君はSSに詳しいフレンズなんだね!

>>903
な。もっとらっこさんの活躍は増えるべき。
1も増やしたい。一年ってのは……嘘だろマジかよそんなかよ!

>>904
ドーモ。1もすくーるがすきです
ほっしゅすまんね、ありがとうな。

>>905
感謝

>>906
まだ息がある。たぶん

>>907
いつの日かアニメの『スクール』を拝むまではしねな、舞い散る未元物質…ばっ、ご…
あとネタを書ききるまでは早々しんでもいられない

こどものひですね。いつかかきねを小さくしるっていったっけきのせいかな


かきね「えっとな。1がおはなしすすめないからおれにあうのはもうちょっとがまんだ。せってーとあんかとふるいはなしをちゃんとしょうかしてから……え、ちがう?」

誉望「(そこは読まなくていいんスよ。このカンペっス)」ペラリ

かきね「そっちか? んー、だいたいのあらすじ。『おれのなまえはかきねていとく! あんぶそしきのりーだーをしてるれべるふぁいぶだ。あるときなぞのまじち……まじゅち……まちゅ」

かきね「……」ムス

心理定規「(……悪い魔法使い)」

かきね「『わるいまほーつかいのわなにかかっておかしなくすりをのんでしまった。きがつくと……からだがちぢんでしまっていた!』ばばーん!!」

誉望「」ペラリ

かきね「『からだはこども、ずのうもこどもでぜんぶおこさまなおれがだいかつやくするとってもめるへんなばんがいへんは……たくさんかけたらこうしんよてい。
じょーちょーさいちょーきろくもこうしんよてい。かこさいこーでれきだいなんばーわん。ぜんれすがないた。ぜんぺんぎゃぐ、ぐだぐだのぎゃぐしかない、わらえない、よていです、まる』よーしよめたぞ。じょーちょーってなんだ?」

心理定規「上手にできました。それはね、無駄に長いって言葉よ」

かきね「さいちょーは? つよいか?」

弓箭「一番長いと言う意味です。え、強いんですか?」

誉望「ある意味破壊力は半端ないな。ぶっ壊れっスね……だって垣根さんがこれだぞ」

かきね「めいんのおはなしにゆみやがちゃんとでてきたらやるんだって。まだゆみやのごしょーかいしてないなんてだめな1だな。いいかゆみや。よぼーとでーとしてみんなでぷーるにいったら、おれがあそんでやるからな」

弓箭「はははははははい!」

誉望「……え?」


主役のヒーローさん達に大変なところは任せて、巻き込まれた状況だけ楽しんじゃうのが脇役SSの醍醐味だよね?!の予定。
『この物語に『スクール』のメンバーは存在しな……くても別に問題ないのでまあいいや』

待ってた
ひさしぶり乙

>>910
>それでも、いちなり指名されて

誤字ありがとう
ここも切れてたすまんね

>912
新入りをけん制して上下関係を教えようとして大失敗した、さっきのかわいそうな生徒たちのことを。

わーい!更新だー、嬉しー!!乙
垣根もしかしなくてもハーレム状態じゃないか

更新きてたああああああ乙です
垣根と心理定規の会話になんかニヤニヤしてしまった

乙乙
更新ある度にやっぱりこのスレ面白いわってなる

垣根が女装してにこにこしながら敬語でピアノの演奏してJCたちと歓談、洗脳無しの絵を想像してはいけない
ピアノをさらっと弾いたりとかの万能感はさすがだけど、それよりも女装潜入でここまで馴染んでる我の強さこそがさすがレベル5ということなのかもしれない…?
いつのまにか亘木派閥(ファンクラブ)とかできてる可能性がワンチャン

>よぼーとでーとして
ちょっとゴーグルのゲームのセーブデータ消してくる

こここここここ更新だぁ!ヒャッフウー!
常に自分のハートにクリティカルなSSだから素直に感謝ッスよ!

保守

ほしゅほしゅっと。
スレ立ったのが2014年だったからてっきりかなり前に完結したスレッドなのかな、なんて勝手に思ってたよん
まさか現行だったとは、この1ちゃんはどれだけ意外性を突き詰めてくれるんだこんちくしょうめ
あとここの1ちゃんは間隔空いててもなんやかんや更新してくれるからほんとに続きが楽しみです
垣根くん好きとしてはこのssはマジで堪らないぜへっへっへ

そろそろ次スレいきそうだけども、その辺はどうするのだろう。
垣根君の勇姿(女装とも言う)が見れるのはここだけだから、是非とも無理なく続けて欲しい。

すまん。

ええんやで(激怒)


誉望「『夏休み人気スポットランキングおでかけ最強決定戦』? なんでこんな番組見てんスか」

心理定規「別にみてたわけじゃないわよ」

垣根「かかってた」

弓箭「わあ、老舗の温泉宿! きれいですよ。素敵ですね」

誉望「一人だけ無駄に楽しそうだな。温泉……そうか?」

垣根「どうせ別々に風呂入んのに、なんでぞろぞろ出かけなきゃならねえんだ?」

心理定規「でも温泉は入ってみたいわね」

弓箭「でででですよね! 心理定規さんも行きたいですよね」

誉望「えー嫌っスわー。部屋のシャワーで十分っスわー。女子はなんでそんなにお風呂が好きなんだ」

弓箭「もう。誉望さんったら温泉はいいなってお話をしてるのに空気が読めませんね」

誉望「お前には言われたくないし、俺は行きたくない」

弓箭「わたくしは行きたいです。いいじゃないですか温泉! 風情があって。のんびりできそうですよ」

誉望「嫌だ」

弓箭「行きたいです!」

誉望「やだ。俺は被りまくったイベントのマラソンで忙しいんだ」カチャカチャ

心理定規「もし行くって話になっても誉望君はきっとスマホと遊んでるわよ」

弓箭「もう誉望さん、皆さんでお出かけする時は一緒に行動しましょうよ。お土産物屋さんも見に行きましょう!」

誉望「渡す相手もいない癖に……」カチャカチャ

垣根「なんで行く前提で話してんだあいつら」

心理定規「もしもの話だから楽しいんでしょ」

垣根「まぁ、実際行ってもどうもしねえよな」

心理定規「すぐ解散して個人行動になりそう。相手の都合を気にしながら、のんびり時間を気にかけない外出って両立すると思う?」

弓箭「わたくしだって、たまには門限も気にせずお買い物やお出かけがしたいんです! 旅行なんて楽しそうじゃないですか。温泉じゃなくっても構いませんよ」

誉望「お外は危険がいっぱいだぞ。ならお友だちといってこい」ポチポチ

弓箭「それは…わたくしだってご学友のみなさんとお出かけしたいですが。『スクール』のみなさんとご一緒するも楽しそうじゃないですか。誉望さんがいても我慢出来ます大丈夫です」

誉望「なんでそこまで上から見れるんだ? つきあわされる方の苦労は考えないのか。やれやれこれだからぼっちは……」トントン

弓箭「誉望さんこそ、いつも今みたいにゲームばかりして一人でお部屋にいるんでしょう? だから、むすーっとつまらなさそうなお顔になるんですよ。外に出た方がいいですよ」

誉望「失礼だな。地顔ですが? 俺だって友だちと遊びに出かけるし」カチャカチャ

弓箭「え?」

誉望「は? 本当だよ。なんでそんなに驚くんでしょうか?」トン

垣根「うるせえぞお前ら。聞こえねえだろ」

心理定規「はいリモコン。二人ともこんな所で言い争ってないで、そんなに暇ならどこか遊びに行ってきたら?」

誉望「は? こいつと?!」

心理定規「つまらないかどうか試してみれば解決するじゃない」

垣根「どちらがよりつまらない人間か、わざわざ知りたいのかよ」

弓箭「ううーん。そうですね……こう見えてわたくし、行動をシミュレートするのは得意です。追跡だけではなく、先導も得意だと言うことを思い知らせて差し上げても構いませんが」

誉望「俺だってデートは得意だぞ」


弓箭「ふふふふふ。わたくしのお出かけプランの素晴らしさにうっかり告白されてしまったらどうしましょう?」

心理定規「嫌なことは断ってもいいのよ」

誉望「いや。ないない。つーかこの暑い中そんなことで出かけないっスよ」

弓箭「プライベートではわたくしもちょっと……あ、次のランキングはプールですって。涼しそうですね」

垣根「風呂はもういいのか」

心理定規「そう言えばスパ風のレジャー施設なら学園都市にもあったわよね。天然温泉も……どこかの学区になかったかしら」

弓箭「本当ですか? でもどうせなら雰囲気だけじゃないきちんとした旅館に行ってみたいです。お部屋で舟盛りを食べて、浴衣で卓球するんですよね?」

誉望「うーん。そう言うのなら…マッサージチェアと風呂上がりの牛乳は有りだな」

弓箭「あ! 枕投げはするんですか?」

誉望「それは修学旅行だろ?」

垣根「……」

心理定規「……なに、卓球したいの? 枕投げ?」

垣根「別に」





頑張れゆみやさん負けるなゆみやさん。
いまいちやる気のなさそうな面々の中で唯一空気を読まずに突っ走ってくれそうなお嬢様に期待。
こいつらみんなおひとり様がすごい得意そうだけどもっと群れてもいいと思う。

>>920
ありっす。女子しかいないもんねToloveらなくてよかったなー!

>>921
あの空気感で無駄そうに駄弁ってるのが好きでな。原作のやりとりが至高だがもっと喋ってくれてもいいよ

>>922
ありがたいありがとうございます。
お嬢様にも負けない強さがあるからねさすがりーだーですね。
あれれー?おかしいなーでーとの予定が二回あるよ?まずはどのゲームからにしようか

>>923
あざーっす!
まだがんばりたいよろしくお願いしたいそしておひさしぶりっす

>>924
保守乙です

>>925
保守ありっす
誉められてるんだよな?ありがとうな
1もはやく更新しておわらせたいのよな

>>926
あともうちょっとで常盤台もおわるんだ。
もう少しおつきあいいただきたい。
ふつつかな1ですがまた次があってもよろしくお願いしたい

>>927-928
ありがとうな
スマンな

>929
ごめんって。1も謝る

生きていたか……!


らっこちゃんは癒し

ここの垣根は原作と比べて、態度から滲み出る無気力さ無関心さ、他人に合わせる気の無さが三割増しくらいに感じられるw 流石は唯我独尊(笑)の超能力者と言うほかありませんね!

常識が通用しないSS。これにはメルヘン君もにっこり

保守。
寒くなってきたのでリーダーの羽毛布団に包まって寝たいです><

アニメ3期やるってよ

やったねカッキー三期だよ!動くカッキーが見れるぞ!


マジかマジかよマジですか!!!!!
三木氏、三木氏、待ってた!
今度は遠慮せず描き下ろしに心理定規をおねがいしようぜ!!
最高にハッピーなニュースのお祝いにモバコインだけじゃない準備もしたんだ。
1、頂点で『スクール』のデッキくむんだあSSR復刻頼む


ネタが経過で長くなりすぎたから番外編の

かきね「すくーる?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507488194/)

を立ててみたんだ。
良かったらこっちも付きあってくれるとうれしいなって>>1は肝心の進捗からはプイっとしてみる

>>932
1、無事死亡

>>933
おつありっすらっこさんはかわいかったよな

>>934
そんな必要なさそうだもんな。実はツンッ………デレくらいのきもちでかいている

>>935
うそだ、それ恐い笑顔だろ?!

>>936
冷え込むこの頃、保守ありです。
それは…一括で?分割にしときます?今なら22回払いの高級布団が

>>937
な!!!!!!
ちくせう、け○フレ砲にすっかり霞んじまってたじゃないか力ド力ワァ!

>>938
えっ動、1、そんなんぱずでっくすいらいだよ?むり

真珠湾dayだし、奇襲的な発表とかないかな。
垣根主人公の公式スピンオフとか

15巻でなんで直接交渉権を得ようとしてたのか未だに分かってないしな~


放課後、コンビニに漫画を読みに行くはずだった美琴の予定は大幅に変更されていた。
途中でばったり顔をあわせた亘木にパシリ…じゃなく買い物を頼まれた、と思ったらいつのまにかよく合うメンバーが集まっていた。
みんなでキャッキャ喋っているうちに、最初に声をかけた目的を放っておかれた亘木は、
『コンビニ行くのかいかないのか、どっちです?』と怒っているのかすねているのか、はたまた脅迫でもしたいのかよくわからない調子になってしまった。
きっと文句を言いたいのを、他の生徒の手前我慢しているのだろう。
ずいぶんマイペースそうな奴よね、と美琴は中身の垣根のことを勝手にそう思っていたのだが。
もしかしたら他人のペースに持ち込まれるのは意外と苦手だったりするのだろうか?

とにかく、ラーメンがどうしても食べたいらしい亘木の愚痴につきあっているうちに、他の生徒も興味を示し……それじゃあみんなで作って食べてみよう!ってことになってしまった美琴たちは調理設備を借りてラーメンを作ることになった。
なんでそうなっちゃったのか美琴は急展開にちょっと戸惑ったが。
ちらっと亘木の様子を確認すると、予想に反して嫌そうな態度ではなかった。
こっそり、それでいいのか聞いてみると、
『みなさんで支度してくれるんですよね』とこれまた予想外な返事が返ってきた。

コイツ…少し待てばラーメンが食べられる、と言うポイントで折り合いつけやがった。と言うか常盤台のお嬢さままでうまいこと使おうとしてる?! とあまりの図々しさには美琴も開いた口がポカンだ。
でもこの人数でコンビニは行きづらいわよね……と美琴が悩んでいると、話を聞いていた土御門舞夏がどこからか材料を調達してきてくれた。
カップ麺ではなくてゆでるタイプの袋麺だ。
カップラーメンの話にも湾内たちは驚いていたから、これはもしコンビニに行っていたら未知の世界の解説に時間がかかって当分帰ってこれなかったかもしれない。
まさかコンビニエンスストアで買い物くらいは……したことがあるだろうと言いきれないのが「学舎の園」の怖い所でもある。
ジャンクフードだと言う以上にレトルトパックのラーメンの具は、食材の下ごしらえから吟味したいタイプのメイドさんには美学に反するらしいが。
要望をかなえるのも仕事の内らしくちゃんと揃えてくれた。
その割には具のチョイスが男子の好きそうなガッツリめの物まで押さえてあって、庶民的な料理までカバーする見習いメイドの力量に湾内たちは驚いていた。
そうして。
「なんか国民食ってことになってるらしいけどお嬢様は知らないゾ? な麺料理を体験してみる会」が臨時発足した。

作ると言っても麺をゆでて具材とスープを用意したくらいで、出来はまあ普通のよくあるラーメンだった。
それでも一人前をきれいに平らげた亘木は満足したらしい。
美琴や、ラーメンに縁のなかった湾内たちはみんなで少しずつ分けて試食した。
白井はハイカロリーなおやつにぶつぶつ言っていたが湾内たちは初遭遇らしいラーメンを楽しんでいる様子で、
(やっぱり普段から部活でハードな運動してるとカロリーとか気にしないのかしら……)と美琴は思いついてハッとした。
でも、下手なことを言うと飛び回って移動する=日ごろから運動不足なのでは? な疑惑のあるルームメイトが余計なリアクションをしそうだ。
聞いてみようかと思ったが我慢して静かにしていた。
体型やダイエットの話は白井にもタブーらしくたまにおっかない。
美琴は……どことは言わないけどもう少しくらいボリュームが出てきてもいいのになあと別ベクトルな悩みならある。


「ところで貴女、見ない顔ですけれどお姉様とはどう言ったご関係ですの?」

『ああ、先日転入してきたんですよ。御坂美琴さんには……まぁ、色々と良くしていただいてます』

「それはそれは。お姉様はどなたとでも分け隔てなく接される方ですから…で・す・が! その優しさにつけ込むような振る舞いをもしなさったらこの白井黒子、貴女が上級生といえども容赦はしませんわよ?」

『そんな。食器を下げてもらっただけでずいぶん大袈裟ですね』

フシャー、ガルガルなんて唸り声を後ろに背負っていそうな白井は、亘木を睨みつけるようにしてなんだか物騒な忠告をしてきた。
初対面でずいぶん嫌われたものだ。
亘木はそこまで敵視される覚えがないからか平気な様子だ。
白井が新顔をけん制している間、後片づけしている水泳部の二人と美琴は水道の前できゃっきゃと楽しそうにしていた。
湾内が能力を使うとあっと言う間に食器がきれいになっていく。

『あちらの方の能力は…『水流操作』ですか? へえ、便利なものですね』

「ええ。湾内さんったらまたお姉様のお役にたって、ううっ黒子くやしくなんかありませんわっ」

『そう言うあなたは…白井黒子……ああ、『空間移動』ですか。レベル4の? 風紀委員もなさっているんですね』

「そうですが。一体それがどうかしましたの?」

わざわざ妙な聞き方で生徒の間では有名だろう事実を確認してくるのに首を傾げる白井。
じいっと彼女を見ていた亘木は興味深そうにしていた目をひときわ細めて笑った。

『いえ、でしたらきっと御坂美琴さんも鼻が高いでしょうね。有能な後輩をもつと』

「それは……そうですわね? 黒子はいつだってお姉様のおそばに!」

わたくしもお手伝いしますわ!! とテンションが復活した途端に美琴につっこんでいく白井を、亘木は一人優雅に座ったままでながめていた。

そのあと湾内たちは用があると言って、白井は風紀委員の仕事があると言って泣く泣く、それぞれ美琴たちと別れた。
暇な二人があとに残ってひと騒ぎあった前のように戻る。

「よかったわね、ラーメン食べられて」

目的を達成しておまけに満腹だと機嫌もいいのか、亘木は少しにこやかに見えたから美琴も安心して声をかけた。
普通にしているときの亘木はしかめっつらをしている訳でもないのに不機嫌そうと言うか。
何を考えているのかよくわからない、そんな少し近寄りがたい雰囲気があった。

「アンタこの後はどうすんの」

『また校内をみて回る予定だけど……』

「なに?」


言葉の途中で亘木は何か気になったのか建物の先の方を睨んでいた。
つられて美琴がそっちを見ると廊下の向こうから誰かが歩いてくる。
多分三年生だ、二人の生徒は亘木を指さしながら何やらはなしていた。

「ああ、よかった。いらっしゃいましたわ」

「ええとわたりぎさんでしたかしら? あなた音楽はお好き?」

『何か用でも?』

「本日音楽鑑賞の集まりがありますの。よろしかったらご一緒にいかが?」

『そのお誘いは、私だけにですか』

相手の話をきいてから、横に居た美琴を示すように首を傾げる亘木の口調も表情も硬い。
何故か急によそよそしい態度になったことに、美琴は慌てて亘木の肩を引っ張った。
さっきは機嫌よさそうにラーメンすすっていた奴が一体どうしたって言うのか。

「何? アンタ急にどうしたのよ。ちょっと声掛けられただけでそれ、ないんじゃないの」

背後の二人に配慮してひそひそ話しかけると亘木はあからさまにムッとした顔をする。
一応、顔に出さないようにしていたのかと一瞬感心しそうになる美琴だが、そもそもその辺の女の子に問答無用でガンくれる方がおかしいはずだ。

『ああ? とりあえず目につく奴は全員容疑者だ。疑ってかかって何がおかしいんだよ』

ドラマ、いやマンガみたいな展開のおかげで女子中学生に混じって潜入捜査真っ最中のお兄さんは意外と真面目なことを言う。
顔をあわせてから何度か、のんびりドタバタ学園日常パートをしているから美琴はちょっと忘れかけていたが、本人はそうでもなかったらしい。

『この状況で有名人のテメェじゃなく俺に声かけてくるってのは、なんか裏があると見ていいだろうが。なあ?』

それにしても身構えすぎてないかと言うセリフを大真面目、いや当たり前のように言ってくる。
あえて意識してるのではなく普段からななめに物を見ているのか、と言うくらい自然な発言に美琴はちょっと引いた。

「ええー…アンタ実はネガティブだったりする? 近寄ってくる人に、『コイツは自分を利用しようとしてる』とかいちいち考えちゃうお年頃なの?」

[彼女面白いこと言うわね。確かに貴方はちょっと過敏すぎる気もするわよ]

んん?
とつぜん近くで女の子の笑い声が聞こえた気がして美琴は驚いて辺りを見回した。
だが、後ろの二人は美琴たちが相談している(ように見えるんだろう)のを遠巻きに伺っているし、今捕まえている食蜂カスタムで美少女モデルな第二位が声の主でもなさそうだ。

『(そうでもねえとやってらんねえだろ。ったく、とっとと終わらせたいんだこっちは)』

[別にいいんじゃない? 仕事への意識が高いのも結構だけど、お嬢様だらけの空間を満喫してきたら]

『(だーかーら。何でそう言う話になんだ?)』

よく見れば唇だけ動かして亘木――垣根は誰かと喋っていた。
このタイミング、至近距離で美琴が気付いた感覚から音源は能力ではなく通信機器だろう。
いくら第二位でもたった一人で常盤台に乗り込んできたんじゃなさそうだ。
女の子のふりをするんだし、相談相手でもいるんだろう。
そう言えばたまに一人でぶつぶつ言っていたようにみえたのは変なやつだからじゃなくてこのせいだったのか。

そんな風に、いままでもなんとなくあった違和感の正体がわかって美琴も納得した。

ちょっと混線したのか一瞬やりとりが聞こえたけどその後の会話の中身までは、はっきりわからなかった。
向こうの相手にも何か忠告されたのか。
むすっと面白くなさそうな顔をしている垣根に、美琴の怒ってやろうと言う気も先を越されて行き場をなくしていた。

「とにかく、その…元人殺しのアンドロイドみたいな迎撃態勢やめてよ。感じ悪いわよ」

『はあ? その辺の奴にも愛想をよくしろって?』

「うん。そっちのがかわいいわよ」

嫌味のつもりかにっこり笑って見せた亘木に美琴は親指をグッと立てて返した。
意味わかんねえ、と目で訴える亘木をもう一度ぐるっと振り向かせると、美琴は取り繕うように笑った。
待たせていた二人組に、
「この子は転入して来たばっかりで一人だと心配なのよね」と説明する。
後ろに立ってはいけないスナイパーみたいにあちこち威嚇しているやつを放っておくのはとても心配だ。
美琴も別に間違ったことは言っていない。
けど、それを聞いた女子生徒の反応は予想外だった。

「えっ。み、御坂様もご一緒に? ああ、わたくし以前からぜひお話したいと思ってたんですのよ? 御坂様夕食後、ご予定はございますか」

「え? えっと待ってね。アンタ行くの? なら……」

急に、あわあわしてはいるがものすごい勢いで美琴の発言にくいついてきた。
亘木を誘いにきたんじゃなかったのか、メインゲストのはずの当人にどうするか確認しようとしていると。

「会長? 今日は急に欠員が出てしまいましたから声を掛けましたけど。そちらの彼女がいらっしゃるならもう定員ですよ」

もう一人、隣の生徒にきっぱりお断りされてしまった。


鑑賞会の会長らしい方の少女はすっかり忘れていた、と言う顔をしたが美琴も加わりそうなチャンスが諦められないらしい。
さっきの美琴たちのように話し合って、何とか出来ないか食い下がっていた。
結局。
会長自らルール違反をしていいのか、ときっぱり断られてしまっていた。
どうやらこの生徒は集まりのリーダーと言ってもそこまで独裁的に無理を通すようなタイプではないらしい。

「もう、いつも怖いんですから。残念ですわ。あの、御坂様? もしまた機会がありましたら」

「そうねーありがとう。で、アンタどうするの? 折角だし」

『まったく……一人でも大丈夫ですよ、お優しい御坂美琴さん』

二人の上級生は亘木に場所と時間を説明するから、と美琴に礼をして離れて行った。
と思ったら何故か会長の方だけ戻ってきた
握手だけいいかしら? と言われて美琴は差し出された手を握る。
どこかのアイドルじゃないんだから、と思うが超能力者はいろいろと特別視されてもおかしくない。
この校内でさえ、上級生でも多くの生徒は年下の美琴にこの態度だ。

「うふふ、あの風紀委員さんに怒られてしまいませんかしら」

「黒子に? いや、あの子だってこれくらい……うん。見てないから大丈夫!」

変に隠してもいない。
常盤台では美琴と白井が仲がいいのは知っている生徒も多い。
もしかしたら、間違ってもいないがちょっと一方的で偏った誤解をしている人もいるのかもしれないが……そんなことしないわよ、ときっぱり否定できないのが悲しい。

一人になった美琴は、このあとどうしよっかなーと小さく伸びをした。
そろそろ自分の寮に戻ろうか。
ついでにコンビニに行きびれたから立ち読みをしてもいいかもしれない。
そんなことを考えながら廊下を進んでいくと、湾内とまたはちあわせた。
聞くと資料室に用があると言うのでおしゃべりついでに美琴もそこまでついていくことにした。
湾内は部活が無い日はこうしてよく自習していると言う、真面目だなあと美琴は感心した。

「先程はご馳走様でした。とても楽しかったです。」

そう言えば亘木はどうしたのか聞かれた。

「なんとかの夕べって言う音楽鑑賞会に参加するって三年生についてったわ」

あの二人が亘木に説明していたような気もするが、横で見ていただけだ。
美琴もちゃんと覚えていたわけじゃない。
すると、湾内はちょっと考えてから「プシュケー」確か……ギリシャ語で魂や心を意味する単語を頭につけて美琴の言葉を復唱した。

「それでしたら以前に耳にしたことがありますが、他の会員の方に声をかけていただかないと参加できないそうですわね」

わざわざ探してまで勧誘に来たのもきっとそのせいだろう、と美琴は話を聞いて納得した。
無所属の美琴は聞いたこともなかったが派閥は幾つもあるし、いろんな集まりがあるんだろう。
なんて話しているうちに資料室についてしまった。
すると今度は、近くに婚后が居るのをみつけた。
彼女も用があるのか扉の前で様子をうかがっているようだが中には入らないのだろうか。

「どうしたの?」

「あら御坂さん、湾内さん」

婚后に亘木を見かけなかったか聞かれて、上級生に呼ばれていったと教えた。
一瞬残念そうな顔をしたように見えたが。
あっと思った美琴が声を掛ける前に、もう婚后はにっこり笑っていた。

「なら良かったです。わたくし少しばかり考えすぎていたようですわ」

「あら婚后さんは亘木さんと仲がよろしいんですか? わたくしはつい先ほど御坂様のご紹介でご挨拶させていただいたんです」

「ま、まあ……よろしいと言えばよ、よろしいのかもしれませんが、いえその。お部屋で少しお話をさせていただいたんです。よろしければまた、と思ってましたが予定がおありなら仕方ありませんものね」

婚后は一人で空回りしてしまったことを恥ずかしそうにしていたが、わざわざ亘木が行きそうなところを見て探していたのか。
お昼の時に一緒に居たのももしかして気にして話しかけに行ったのか。
ふと思い出して気付いた美琴は、あの時のちょっと居心地悪そうにしていた亘木のリアクションが頭によぎって苦笑いした。
そりゃあ、女の子扱いどころかお嬢様扱いであれこれアドバイスや世話を焼かれたら男子はあんな風に、
「どうしろってんだ」みたいな態度になってしまうかもしれない。

「彼女、ご自身の能力にあまりよく思わないところがおありらしくって。そう言ったこともおひとりで悩まれてはよくないでしょう?」

どうやら、どんな能力を使うのか聞いてみたらそんなことを言われたらしい。
そう言えば私もよく知らないわね、と美琴も今更に気付いた。
第二位、と言うのも微妙なポジションで。
有名すぎる第一位や、研究や活動と忙しい第三位、常盤台と言う一勢力を牛耳る第五位、のあたりと比べるとそれ以外の超能力者は不思議とその実態が噂にものぼらない。
他の生徒たちを同じように『書庫』に登録されているだろうからきちんと調べれば情報はでてくるかもしれないが。
同じ超能力者の美琴でさえこうして会うまでどんな奴か、名前も性別も知らなかったくらいだ。

婚后はわけありで怪しい転入生をずいぶん気にしていたらしい。
あんな……見た目はその辺の子に負けないくらいかわいいし隠れ巨乳だけど、実は中身が男で裏表が激しそうなやつのことでも心配している。
ただ純粋に人を思いやれるそのまっすぐさにただただ美琴は感動していた。


「婚后さんって…ほんっといいひとよね!」

「お優しいですね」

「わっわたくしは、亘木さんのご学友の一人として当然のことを」

美琴と湾内に褒められて、片手で顔を隠しながら首を振る婚后。
なんて謙虚なのか。
同じ人間でも超能力者のアイツらとは大違いよね! と大きな人間性の差に美琴がぐっときていると。

「そういえば御坂さん? 寮監様がお探しになっているのを見かけましたが何か御用事が?」

「あーっ!! この前の門限破り、反省文書けって言われてたんだった!」

「そ、それは大変ですわね」

いい話の余韻をブチ壊す爆弾が降ってきた。
常盤台学生寮の寮監督、それは常盤台の秩序の象徴であり同時に最終兵器でもある驚異の存在だ。
お嬢さまが相手と言っても能力者には変わりない。
レベル3以上の能力者だけをあつめた学校では一般的な教師以上のものが教員に求められる。
寮監は警備員並みに、いやそれ以上に学生の鎮圧に長けた超のつくスペシャリストだ。
大能力者を一度に三人無力化したのは生徒ならだれでも知っている有名な話で、校則に非常に厳しい彼女に逆らおうとするものは学園内にはほぼ皆無と言っていい。
噂を含めて多少盛られているかもしれないが。
お嬢さま相手に容赦なく処罰(掃除など)を課したりお説教が怖いのは確かで。
事実、こればっかりは超能力者だっておっかないのが寮監だった。


二人と別れてから、なんとかそれっぽい言い訳……反省文をでっちあげた美琴は。
あわてて寮監のいる監督室に着くと、ノックをしてドアを開けようとした。
だが、丁度そのタイミングで一瞬早くドアが開く。
入れ違いに出てきたのは美琴より背の低い女子生徒だった。
彼女は人がいてびっくりしたのか、美琴を見ると目を見開いてぱっと頭を下げた。

慌てて通り過ぎる時に何か、花のようなにおいがした。
化粧品や香水は禁止されてるのに、と美琴は一瞬不思議に思ったがもしかしたらそのことで呼び出されたのかもしれない。

部屋に入った美琴はあれ、と拍子抜けした。
寮監は大体いつもピリピリしている(美琴がしょっちゅう怒られているからだが)のに、なんだか雰囲気が違っていた。
手に持っていたのはアイピローとちいさな置物だろうか。
おまけに黒い猫の形をしたずいぶんかわいいデザインだった。
実は女子力が高いのかもしれない、なんてちょっとおかしくなったがそこをつつくと余分に怒られるかもしれないので静かにしておく。

寮監は前回の違反についての説明を聞きながら反省文に目を通すと、

「よし。少しは生活態度を見直しなさい」

脅しめいた処罰のお話もなし。
何だかいつもよりあっさり解放してくれた。
やっぱりちょっとマイルドかもしれない、と美琴は最後に気になっていたことを聞いてみた。

「さっきのそれ。もしかして、寮監もかわいいものが好きだったり……します?」

「別に私の趣味じゃない、もらい物だ。こう言うのが好きなら猫野と話があうかもしれないぞ」

「……誰?」

さっき出ていった女子、彼女は一年の生徒で猫野緋十実。
学校生活で色々と悩みがあるらしく寮監によく話をしにくるのだと言う。
気になるなら今度声をかけてやりなさい、と寮監は話したが。
(寮監って、生徒の悩み相談とかもするんだ)
と、ちょっと違う所が気になってしまった。
ただおっかないだけの人ではないらしい。
その猫野さんは真面目なのか、話を聞いてもらったお礼にと寮監の肩をもんだり、リラックスするからと言ってああ言った小物をプレゼントしたりしていくそうだ。

「この仕事をしていると何かと疲れるからな、ありがたく使わせてもらっている」

「あー、私てっきりあの子もなにか違反してそれで呼び出されたのかと……」

そこまで言いかけて美琴はハッとした。
完全に藪蛇で、「規律をきちんと守っている生徒もいること」や「少しは他の生徒を見習い真面目に生活することで私の負担を減らしてくれるとうれしいのだが?」とせっかく少なく済みそうだったお説教は結局追加されてしまった。

ゲコ太に限らず少女っぽいものが好きな美琴は同年代でも少数派だが、別にこんなところで趣味の同輩探しがしたかったわけではない。
プレゼントだったとは、あっけないオチは少し残念だった。
寮監の意外な情報がゲットできたら黒子とちょっと盛り上がれたかも……なんて失礼なことを考えていると、

「どうした御坂。にやにやしていないで、早く寮に帰りなさい」

とキッとした目で言われてしまった。
来たときと同じくらい慌てて美琴は退散した。


紅茶、甘い菓子、うっすら混じる香草のようなにおい。
最初に気付いたのがにおい、次が音だった。
重い響きのクラシック、オーケストラか。
首を少し動かすと背中の方で柔らかい感触がした。
座りごこちのいい上質なシート。
コンサートホールにでも来たなんてずいぶんとらしくない夢を見ている……。
そう思っていた垣根は違和感に目をあけた。

『ん?』

思わず漏れたはずの呟きが聞きなれない女の声で、寝ぼけていた脳みそが一瞬混乱する。

[あら、目が覚めた? 貴方さっきからちっとも返事しないんだもん。しっかりしてよね]

『……るせ』

あくびで隠そうとする仕草で誤魔化しながら、聞こえないくらいの声で悪態をつく。

[呼びかけてあげてたのに随分ね? またモーニングコールが必要?]

向こうにはばっちり聞こえていたらしい。
まさか心理定規の声に救われるとは、少し悔しくて垣根は眉をよせた。
耳元の音声で瞬時に状況を思い出した。
そう。
今は『スクール』での任務の真っ最中だ。
生徒の誘いに乗って謎の集会に潜入中……だと言うのに
少しうとうとしてしまったのか、気づけば一度照明を落としていたはずの部屋は明るくなっていた。
ぼんやりまばたきをしている亘木をみて隣に座っていた少女はくすくす笑っている。

「お気になさらないで。緊張がほぐれたんですわ」

どうも、と愛想笑いと会釈を返した亘木は見えないように伏せた顔をまたしかめた。
まったく、とんだ失態だ。
誘われてやってきた、『プシュケの夕べ会』が使用している部屋は確かに居心地がよかった。
広さはわずか十二畳くらい、教室などの規模を考えると狭い方だろうが、ここが学校の中だとは思えない上質な寛ぎ空間が整えられている。
心地よい温度の空調、ソファのすわり心地、ついでに睡眠不足も垣根のガードを崩すのに一役かっていたのかもしれない。

肝心の活動内容の方は古いレコードを最新式のプレイヤーと音響効果で楽しむ、と言うなんとも現代のお嬢様らしい趣向だった。
およそ中学生らしい趣味ではなさそうだが常盤台なら…と言うやつだ。
次に流れてきたのはピアノ曲だった。
テンポが遅いわけではないが、なんだか余計に瞼の重くなりそうな曲だ。

「先日お話した曲です。ぜひみなさまの感想をうかがいたいわ」

「会長はご自分で曲もお書きになるんですの」

親切に聞いてもいない解説をしてくれるのはさっきとは別の少女だ。
集まっているのは亘木を入れて全部で十人。
この派閥未満の交流会は、「音楽と美しいものを恋人に」と言う趣旨で上流にふさわしく感性を磨くための集まりだと言っていたが。
新顔の居眠りを見逃すくらいには、そこまで格式ばったお堅いものでもないらしい。

「ケーキ召し上がりませんか」

「よろしければお茶だけでも」

テーブルに並んだ甘いものをすすめられるが、亘木は笑顔で断った。
おままごとじみたお茶会だなんてそんなつもりで来たわけではない。

「楽しんでいただけてるかしら?」

ここに呼んだ張本人、会長が寄ってくると横に座っていた少女が亘木の隣を譲った。

「亘木さん、聞いていた通りお可愛らしい方ね」

『そうですか』

「ええ。ここには美しいものしか置かないの」

そう言って、誇らしげに振り返ってみまわした室内は彼女の趣味なのか。
壁の絵、美術品のように並んだ食器……ドイツや中国の古い陶磁器が多い。
どれも十九世紀のフランス風の貴族趣味だった。
ここは他の小さな派閥と共同で使っている場所だから集まりの度にいちいち片づけてはまた持ち込むのだと言う。
授業以外の設備の管理担当や、設営に関わる使用人の様な立場の人間がいるらしい。
なるほど、生徒が主体で何かしているからと言って関係者が当人たちだけとは限らない。
垣根にとっての組織の下っ端のように黒子役…意識しない駒の役割をこなしている人間がいるのか。
そうなるとやはり調査の対象には生徒以外の人間も含めた方がよさそうだ。
今後こう言った派閥に目をつけて、水面下で調査をするならまた、あの女王の手を借りることになるかもしれない。
なんて、面倒なことを考えていた垣根だったが。
ふと目の前に置かれたカップに目をやった。
白いソーサーとカップは他に並んだアンティークのセットとは種類も価格もどうみても違った。
ワンポイントでプリントされた動物の足跡柄は場の雰囲気に浮きすぎるくらい子供っぽい。
急に用意したにしてもずいぶんなギャップがある。


「お気にめさなかったかしら。またいらして下さるなら貴女の分もちゃんと用意しますわ」

ぼんやり見ていると、それを不満だとでも受け取ったのか心配そうに声を掛けられた。

「会長。また食器を買うんですか」

「もう、綺麗なものはどれだけあってもいいんです。こちらのセットは今ぴったり揃っているの。次は何にしようかしら、亘木さんも何かお好みのものがあったら言ってくださいな」

既に亘木の分を買うつもりだろうか。
さりげなく、押しの強い勧誘に話を振ってくる。
自分の空間にいるからか初対面の印象よりもずいぶんと積極的だ。お嬢様と言うのはこんなものかもしれないが。
はあ、ええ、と適当に相槌を打っていると会長のコレクション自慢がはじまった。
この会のメンバーが使っているティーセットはペアカップが六組で一つのシリーズになっていて、色違い同柄で統一されているところもとても気に入っているとかなんとか。
意味のわからない話を流すのも亘木は慣れたものだった。

『ああ、こちらの会は十二人参加してるんですね』

カップの数から連想して、亘木が適当に呟いた言葉に会長は首を振った。

「いえ? 今日お休みの方を入れて今は十一人。ですから、亘木さんが来て下さると丁度人数も揃って素敵なのよ。どうかしら? 楽しい時間を共有する集まりですから。たまたまみなさんと好みがあって音楽をかけてますけど、ここでの活動は別にクラシック鑑賞に限らなくってよ?」

にっこり笑うと会長は最後に握手を求めてきた。
とりあえず亘木が出した手を両手でぎゅっと包むと、
「ぜひまた遊びにいらしてね」とずいぶん熱心に念押しされた。


お嬢さまの鑑賞会かお茶会か、もしくは両方が済んで亘木は自分の部屋に戻ることにした。
大きなあくびをしながら亘木は天井を眺めた。
注意深く様子をみていたが餓鬼のつまらない集まりにしか思えなかった。
なんだったんだ、と首を傾けて部屋に戻る。
何かあるのではと身構えていったのに何もなかった。肩透かしもいいとこだ。
悔しいが美琴の言った通り怪しんであれこれ考えすぎたのかもしれない。

『(そっちで話聞いてても何もなかったか)』

[そうね。ずっとクラシックがかかってたから……]

ふわぁ、と間抜けなあくびの音がして垣根は頭を左右に振った。
垣根の近くの音声を拾って聞いていただけの心理定規にも眠気を誘うような、退屈な集まりだったのは間違いなさそうだ。
時間は一時間半くらいだったか。
していたことと言えば、音楽をかけてそのあとお茶とお喋り。
念のため他の生徒の会話にもそれとなく気を配っていたが特に怪しい話題はなかったようだった。

『(無駄骨折っただけかよ。ったくめんどくせえ)』

と、垣根は手の中のカードをひっくり返した。
案内状は香水でもつけてあるのかハーブのような匂いがした。
文面には次回の開催日しか書かれていない。
時間も場所も決まっている内輪の集まりならこんなものだろうか。
熱心に勧誘していたが新入りの亘木がお友達クラブに参加する気も、機会ももうないだろう。


[はよざいまーっス]

朝。
嫌なものだが慣れはじめてしまった、制服への着替えをしている垣根の耳に呑気な声が聞こえる。
今日はゴーグルが担当らしい。
支度を済ませると校外の連中の調査報告なんかを聞きながら、他の生徒たちに混じって移動する。

[そう言えば垣根さん、昨日の夜中なんかありました?]

『(何が)』

昨夜、いや日付は今日か。
ゴーグルが夜中にアニメをみていたら垣根の変声機が使われている様子があったと伝えられた。
垣根は知らなかったが故障や不備に備えてこの装置の使用状況は常にモニタリングされていたらしい。

[なんかカッコイイんで、使用中は解析にあわせてステータスバーが出るようにしてもらったんスよ。今も垣根さんが喋ってるとランプとかついてます。で、深夜に誰かと話でもしました? あ。なんか心理定規が、垣根さんがもてて困ってるらしいって言ってましたけど…男だってばれてないっスよね]

『はぁ? 何言ってんだお前ま…で』

つい声に出してしまい垣根ははっとしたがもう遅かった。
周りはひそひそ、咳払い、目があった向かいの席の女は気まずそうに頭を下げてくる。
今は食堂で朝食の最中だ。
当たり前だが大声を出すと目立つ。

食事をさっさと詰め込むと亘木は食堂から出た所で一人立っていた。
もうすぐ朝の門限だが授業の方に構っている余裕はない。
そんなことよりもさっきの話題を詳しくさせているが、誉望の話も要領をえなかった。
もちろん深夜の異変の方だ。
亘木の同性間の交友関係には話すようなことは何もないのだから。

[いや、録音とかはしてないですよ。垣根さんにもプライバシーがあるんスから、その辺は俺達も配慮して……]

『(使えねえな)』

会話をしているのでは、と考えたなら音声データが残っていれば話は早い。
だが、解析結果のログも残していないからそもそもさかのぼって調べることができないと言う。
モニタリングしているのもあくまで垣根が使っている機器の状況把握のための機能なので、ごく個人の周辺と言っても音声を保存していると事前に常盤台側と取り決めた契約内容に問題が生じるらしい。
変声機の使用があったなら、その場で内容は確認しなかったのかと聞くと。
実際の声は聞いてもいないしスピーカーにもしていないからわからないと言われた。
ただ誉望がアニメ見ているときにランプが点灯しているのを見て、
「あれ、垣根さんなんかしゃべってんのかな」と思ったくらいだと言う。

仮に、確認したくても通信機器のメインマイクのオンオフは垣根の持っている端末に対応しているから、そっちが切られていたら無理だと返される。
確かに寝るときなど必要なさそうな時は直通の通信は切っていた。
何かあれば携帯に連絡がくることになっている。

[こっちもですね、俺たちイヤモニ隊がスタンバってる以外で四六時中マイクをオンにしてる意味ないじゃないですか]

『(役に立たねえな)』

[つっても垣根さんだって、任務だからって勝手に寝言まで聞かれてたらキモいっスよね? なんかあったら気まずいしおっかねえっス]

『(もうお前の勘違いなんじゃねえの)』

[いや~うーーん……あ。ちょっと待ってください]

そう断ると誉望は黙ってしまった。
少しして垣根の端末に画像の添付されたメッセージが届く。

[エンカとっておこうとして撮ってた中にありましたよ! ほら!]

嘘じゃないですよ! と騒ぐ奴と、もともとは中心になっていただろうアニメ画像の一部は無視しておいて。
確かにそこにはモニタの端に縮小されて映る装置の稼働状況と、解析イメージを可視化したウィンドウが一緒におさめられていた。
データの詳細はそれだけではわかりそうもないが、使用中らしい山形のバーの連なりは垣根の発声にあわせたものなんだろう、と言う想像は簡単についた。

『(やっぱただの寝言ってオチはねえだろうな)』

[寝言にしちゃあ長かったっスよ? ちょうど誰かと話してるくらいの間隔で……二時前って垣根さんなんかしてました?]

『(いや。昨日は見回りもなかったからさっさと寝たぞ)』

ゲームしながらぶつぶつ言っているような奴に、実は独り言激しい方ですか? なんて聞かれるのはなんだかムカついた。
だが、そう言われるとますます不思議になってくる。
垣根は確かにその時間寝ていたし、夜中にトイレに起きてもいないはずだ。
一応聞いてみたが、事前にいろいろ試していた時も呼吸やいびきくらいではこんなデータはでてこないらしい。
垣根がイラつきながら降ってわいた問題に頭を悩ませていると。

「ちょっと」

「何かあったのかしらぁ?」

キッとした顔とニヤニヤ笑い。
二人の中学生が垣根の前に立ちはだかった。


三人はまた空き教室に移動する。
椅子に座らせた『未元物質』を囲んで、『超電磁砲』と『心理掌握』が並び、まるで取り調べ現場のようになっていた。
この部屋はここ数日で、能力値やAIMのスカウターでもあれば一瞬で蒸発しそうなくらい能力者の濃すぎる空間と化している。
食堂での亘木のちょっとした挙動不審はいつの間にかこの二人にも察知されていたようだ。

二人はそれぞれお友達から亘木の話を耳にして、何かあったのかと探しているところを合流したと言う。
揃って、なにかあったのは割れてるんだ吐いてもらうぞと言った様子だ。
多分バックれようとすると余計にうざったいことになることうけあいだった。
朝っぱらから超能力者対抗鬼ごっこなんてやっている暇はない。

ちくしょう、と垣根は美少女の顔で毒づいた。

仕方なく。
心底嫌そうな態度で、二人にも事情を説明した垣根は最終手段に訴えることにした。
食蜂に昨夜の記憶を探らせる。
もうそれくらいしかこの疑問を解決する方法はなさそうだった。
任務中に出てきた疑問点を放っておくわけにはいかない。
何より手がかりが今現在もほとんどないのだ、当たれるものは潰していくしかない。

「あらぁ? おかしいわねぇ」

リモコンを自分と亘木の頭にそれぞれ向けて記憶情報の一時的な同期をしていた食蜂は首を傾げた。
該当時間の垣根の記憶を洗ってみても、誰かと話していたなんてものどころか部屋を出歩いた記憶もない。
つまり昨夜の垣根は確かに自分の部屋のベッドで寝ていたはずだと食蜂も言う。
今度こそ、『心理掌握』が頭の中を調べたのだから間違いない筈だ。
誉望がここで嘘の情報を持ち出してくる理由もない。

「待って…あんまり考えたくないけどぉ、これって他の容疑者の人たちと同じよねぇ?」

「垣根さんも誰かに操られてるってこと? いつ誰にそんなことされたのよ。て言うか! 男の人は大丈夫なんじゃなかったの?」

「あくまで仮説力の話だったから、確証があった訳じゃないのよぉ。でも……もしそうなら困ったわねぇ」

「俺、何でこんなとこにいるんだ?」

[垣根さんが記憶喪失に?!]

誉望が誰も聞いていないのをいいことにまたふざけているが、急な記憶障害でも哲学的な自分探しでもない。
ふざけた任務でふざけた格好をさせられて散々な目にあっているのにまさかの、前提から的外れ&自身が被害にあった疑惑。
この連撃は垣根にもこたえるだろう。
わざわざスカートを履かされた苦労が無意味だったとは思いたくもないはずだ。

少し時間をおいて。
「こうなったらさっさと解決してとっとと出てく。元凶のヤツはブッ潰す」と、垣根が物騒な方向に気分を持ち直したところで。
改めて問題にとりかかることになった。
仮に操作されているとして、なにか思い当たるような能力者との接触があったか、と言えば。
放課後ラーメンを食った連中か参加した音楽鑑賞会だろう。
それを聞いて美琴がいち早くPDAを操作する。

「……いないわよ。アンタが昨日会った中に、精神操作の出来る能力者なんて」

スペースの使用許可の為に学校側に提出している『プシュケの夕べ会』の名簿も引き出してきたようだが。
それもあわせて『書庫』で調べても一致しそうな人物はいないと言う。

「ほら。あの会長さんも気流操作よ。レベル3」

見てよ、と言った美琴から亘木は端末を奪い取る。
彼女の言った通りそこに並んでいた『書庫』の検索結果の中には洗脳どころか念話能力者でさえ見つけられなかった。
むしろ能力の面では生徒たちに共通点があまりない、学年もばらばらで本当にただのお遊びの会だった可能性が強まる。

「仕方ないわねぇ」

そう呟くと食蜂は肩からかけていたバッグのチェーンをおろした。
中から無数のリモコンを取り出す。
それを、まるで威嚇する拳銃のように亘木に向けた。

「はっきりしないってことは、疑惑力もゼロじゃないってことよねぇ。こうなったら……垣根帝督、アナタの頭の中徹底的に調べさせてもらうわ」

「ちょっとアンタ、そこまでする気?」

美琴は思わず、と言った様子で二人の間に割り入ろうとした。
食蜂は対象を完全に意識のない操り人形に出来るほどの精神操作能力者だ。
その彼女が…徹底的になんて言ったら、一体どんなことをするのかわかったものではない。

「事前に教えてあげただけ良心力あるでしょぉ? ここに最新で最重要の手がかりがあるのに放っておける? もし洗脳済みなら、私たちも危ないわぁ。今手を打たないといけないじゃない」

そう言われると、美琴も反論できなくなる。
もしも。
第二位の垣根が、常盤台で悪さをしているような誰かの操り人形になっていたら……第三位の美琴ではまず敵わないだろう。

「アナタにはちゃんと協力してもらうわよぉ。最初からそのつもりでここまで来てもらったんだしぃ?」


緊張しているのか、笑っているはずの口元が少しひきつっている。
もう一度リモコンを持ち上げる食蜂。
当の垣根は、と言うと、
「仕っ方ねえ。テメェに貸し作るみてぇで気は乗らねえが……やっとつかんだ手がかりだ。やれよ。そのかわり、成果が出なかったら覚悟しとけよ」

肩をすくめてそう言うと耳元と首に手をやる。
その時美琴には、何かの信号が途絶えるのがわかった。

「アナタの頭の中を丸裸にさせてもらえるなんて、私もとぉっても嫌☆ でもこっちも全開力でやらせてもらうわぁ。これ以上、私に恥をかかされちゃたまらないもの」

この件の黒幕に散々探査網を潜り抜けられているのは彼女も我慢ならないらしい。
最初に『心理掌握』で片がついていたら、そもそもこんな話にもならなかったのだ。
食蜂からすれば自身の力不足と言う評価にもつながりかねない事態は相当悔しいのだろう。

それぞれ覚悟を決めたらしい超能力者二人は互いに笑みを浮かべた。

垣根の能力の何が干渉して食蜂の能力に影響するかわからない、と言われて垣根は一瞬目を閉じて考えるような仕草をした。
目を開けて右から左、と視線を巡らせるといいぜ、と呟く。
彼の能力はもちろんその影響下にあるものへの解除はそれですんだらしい。
読心潜行005、幼児退行401……と呟きながら食蜂は次々リモコンを持ちかえてボタンを押していく。
そうして下準備がすんだのか。
食蜂はフフンと一仕事終えた様子で腕を組むと、
「あ、一応御坂さんは外に出ておいてねぇ。何かあった時に『忘れられないエピソード』は頭に入れたくないでしょ?」と言って美琴を振り返った。
これからいろいろ自白させられるだろう垣根本人はもちろん。
記憶の消去が完全に出来るかあやしい美琴にも気をつかったのか部屋から出ていくよう促した。

言われるまま二人を残して美琴は部屋を出る。
一応、気にしてドアの前でこっそり聞き耳を立てた。
何かトラブルがあった時にどちらも止められそうなのは美琴だけだ、何とかしなくてはいけない。
それくらいの責任はこの話に関わってしまった時にばくぜんと感じていた。
数十秒、数分、しばらくの間何か早口で話す垣根。
それに質問しているのか誘導しているのか声をかけているような食蜂の様子。
少し間を開けてなにか物音がする。
行動の再現でもしているのか、合間に二人の声が混じる。
一体何がおきているのかも外からはよくわからないまま、食蜂の取り調べは進んでいく。

「ああ。そう言うことねぇ」

ふと。
何か発見したのか食蜂がそれまでより大きな声で呟いた。

「きゃあ?!」

「何だよ」

「別になんでもないわぁ……ふぅん」

「今度は何だ」

「へぇ~~」

「何なんだテメェ」

余裕がでてきたのか、二人の雰囲気は最初の緊張感からはずいぶんゆるんでいるようだ。

「ふふふふふ…ねえ、アナタってぇ、意外と……ぷふふ」

「真面目にやれっつってんだろこの馬鹿、あ? なんだ? 何がそんなに笑えたか、テメェの頭に聞いてやろうか?」

「ちょっとぉ乙女相手に野蛮力にも程が、いたぁい!! みっ御坂さぁん、終わったから! もう終わってるからぁ! 早く助けてぇ!」

情けない悲鳴にげんなりしながらドアをあけると、亘木に拳骨でこめかみをえぐられている食蜂がいた。
見かけ上は少女の微笑ましいキャットファイトだが、中身のことを考えるとずいぶん大人しいおしおきだ。
意外に紳士的なのかしら、と美琴は思ったが。
普通は、特に男子は女の子相手にそう簡単に気軽な暴力に訴えたり電撃やドロップキックをかましたりしてこないはずである。

「どうせ大したことがなくても人をからかってくるんだから。まじめにこいつの相手すると疲れるだけよ」

「だからってクソ生意気なやつを放っといてやるほど俺は優しくねえんだよ」

どうやらガチのブレインウォッシュは無事に済んだらしい。
それを察して垣根も美琴も軽口を叩いている。

「もぉ! 二人とも、この先ずーっと私につき従いたくなる様にしてあげてもいいんだからねぇ?」

「いい度胸だなコラ」

「ふざけんじゃないわよ?」

「暴力反対よぉ!!」

リモコンを振りかざして文句を言っていた食蜂は、上位の二人から同時ににらまれてたまらず悲鳴をあげた。
かに見えたが、


「いいわよぉ。意地悪な人同士仲良くしてればいいんじゃないかしらぁ?」

「は? 痛っ?!」

バチン! と美琴の頭に何か弾いたような衝撃があった。
食蜂のやつ、懲りずに人にリモコンを向けたらしい。
いつもきかないって愚痴っているくせに何をしてるんだか…と呆れと痛みに美琴が頭を押さえていると。

「美琴ちゃーん!!」

「だぁー! なに、ちょっとー!」

「美琴ちゃーん! かわいい!」

「嫌ぁああなに!! なんなの!」

急に亘木が抱きついてきた。
おまけに頭をもしゃもしゃ撫でられる。
なんだどうした、と突然の奇行に美琴が引いていると、食蜂はニヤニヤしながら勝ち誇ったようにポーズをきめる。

「ふ、ふふふ……これでアナタたちは三分間は問答無用でラブラブよぉ!!」

「なんっ、なんで急に操作され……いた、いたたねえちょっと、頭おさえないで?!」

「さっきまで私の前にすべてをさらけ出していたていこちゃんの頭をちょっとお花畑にするなんて簡単よぉ。能力面のセキュリティも今は心配なさそうだし。無防備力全開でガバガバな割に前に仕込んでおいたセーフティとの競合でちょーっとおかしな結果になってるのは……さすが私の洗脳力、どっちもつよぉいってことかしらぁ?」

第三位に通用しない洗脳が第二位にあっさり通ってしまった。
ハイテンションなドヤ顔でタネあかしをすると食蜂は近くの椅子を引き寄せて座った。
ニヤニヤ楽しそうに混乱しきった状況の二人を眺めはじめる。
食蜂はラブラブと言ったが。
なぜか動物王国の主とそのおともだちのようになっていた。
一方的に亘木に頭を撫でられているが、もしも美琴も正気を失っていたらバカップルのようにいちゃつくことになっていたのだろうか。
中身はクールなお兄さんの超能力者が異様なハイテンションで構おうとしてくる現状でも十分に地獄絵図だというのにもしかしたらそれ以上に悲惨なことになる筈だったのか。
邪智暴虐『心理掌握』、相変わらずの鬼畜の所業だ。

「どう見ても女の子なんだけど、本当は違うのよね……垣根さんしっかりして!」

「じっとしてろって。ったくかわいいなーお前。よしよし」

女子とは思えない(実際違う)腕力で、抵抗しようとする美琴を押さえつけて亘木はにこにこしながら頭をなでなでし続けている。
超能力者三人しかいないからと音声の細工をやめているせいで声が元のままだから、見た目とあいまってとても怖い。
美琴は小柄な白井にセクハラされるのも嫌だが、綺麗なオカマにかわいがられているような状況も非ッッッ常に嫌なんだと知った。

「御坂さん、どうなってるかよく見えるようにしてあげましょうかぁ?」

「こんのお、外道!! あっそうだ、お願いがあるのよ。ちょっと聞いてくれる?」

「何だよ美琴ちゃんなんでも言えよ」

大型犬をよーしよししているモードにでもなってしまったような亘木は手を止めて返事をした。
残念ながら電撃は通じないだろうから攻撃できない。
うっかり怒らせるのも多分怖い。
それに一応食蜂の被害者だ。
そこで美琴は邪魔者を残り時間でまとめて排除する方法をひらめいた。

「この外道しいたけを今すぐプールに投げ入れてきてくれない? 頭が冷えると思うのよね。場所わかるかしら」

「任せろ」

亘木はとってもいい笑顔で食蜂を小脇に抱えて翼を生やすと、あっと言う間に飛び去って行った。
なんだろうあの羽、と新たな疑問はわいたがとりあえず美琴の平穏は戻ってきた。

それから少し経って、
「時間が経って無効になればとは思ったけど……何で食蜂だけじゃなくアンタまでそんなカッコなの?」

なぜか二人ともずぶ濡れで教室に帰ってきた。

「放り投げてから正気に戻ったからな。こいつ、このナリで沈んでくんだぞ。どうなってんだよ」

「ちょっ、ちょっとやり過ぎちゃったかしらぁ?」

「ん? テメェ、鼻から死ぬほど水飲んできっちり反省したんじゃねえのか?」

「グスッ、ごべ、ごぇんなさぁい」

びしょびしょでグシャグシャになった食蜂は、思い出したようにべそをかいて美琴に頭を下げた。
よくみると既に泣いた後みたいな顔をしていた。
溺れかけた所は助けてもらったが、それが自分がひどい目に遭わせたお兄さんだったのがよっぽど怖かったのか。
どうやら美琴の知らない間に一つ修羅場が片付いていたようだ。

「それで。肝心の昨夜の空白の謎は解けたの?」

美琴が話題を戻すと食蜂はうなずいたが、露骨に視線を逸らしていた。


「そうねぇ。何があったかはわかったわぁ」

「どうすんの?」

「そっからはこっちの話だろ。元々テメェは部外者だ。余計な首つっこむんじゃねえ」

それについて既に把握したらしい二人は美琴を突っぱねるような態度だ。
確かになりゆきで後から関わって首を突っ込んだのは確かだ。
でも。
何か困ったことが目の前で起きていて、ある程度でも知ってしまった美琴がそれを放っておく理由にはならない。
そんなことは美琴が手を貸すことの障害にはならない。
まあ……あんまり協力もしたくない相手だと言うことの方がそういう意味では重要なくらいだ。
おそらく。
この先また相対するのは超能力者二人がここまで振り回された、常盤台で起きたトラブル。
それに巻き込みたくない人が、ものがある。
美琴が首を突っ込むにはそんな理由で充分だった。

「最初は人におしつけて楽できるなんて言ってたくせに、それってずいぶんじゃない? アンタたちねえ、困った時くらい素直に誰かを頼りなさいよ」

自分に力があって、なんでも出来る。
自分でなんでも解決しなきゃいけない。
実際に、なまじ力があるとそう考えてしまいがちな悪い所があるのは、二人と同じ超能力者の美琴も嫌と言うほど身に染みていた。
そして。
その結果、巻き込まれてしまった誰かに感謝しきれないくらい救われたことも。
だからこそ、進んで巻き込まれてやろうじゃない! と大きく声をあげた。
そんな美琴の勝手な発言を聞いて。
垣根も食蜂も二人してぽかんとしていた。
簡単に美琴が引き下がるとも思っていなかっただろうが、それ以上にしゃしゃり出てきた様子に本当に驚かされたのか。

「まぁ…そこまで言うなら、当てにはさせてもらうわぁ」

「おーおー、使ってやるよ。そん時があればな」

二人とも呆れた様に笑っていた。


「まぁ、これでいよいよテメェらの顔を見なくてもよくなりそうだな」

「そうねぇ。ていこちゃんがからかえなくなるのはちょーっとさみしいかもしれないけどぉ」

「は?」

「ちょっと、やめなさいよ。アンタたちが喧嘩なんてしたら絶対ただじゃすまないんだから。あ、ところで水に入ってその通信機大丈夫なの?」

それを聞いた亘木が不自然なくらい、一瞬動きを止めたが気付かない美琴は話し続けていた。

「前に女の子と喋ってたでしょ? アンタも大変よね。女子校に来るからってガールフレンドにいろいろ聞かないといけないなんて……」

「テメェ、どっから人の話聞いてやがった?」

「何、なんなの急に? ねえちょっと、さっきより怖いんだけど……って、えっ……」

相変わらず見た目は女子のままでガンを飛ばして凄んでくる亘木。
もう何度、ちょいギレの第二位を見ているかわからない美琴。
彼女は知らないが実は危険度では今が一番ヤバい。
訳ありすぎて困ってしまうていこちゃんのちょっとまずいネタを思いがけず掴む寸前だった美琴だが。
まさか自分がそんなにピンチだとは気づきもしないで、ちょっとまずいことになってる掴めそうな眼前に釘付けになっていた。

「コイツとテメェどっちを潰した方が早く済むんだろうな」

指先でつまんだイヤーピースと美琴を見比べた垣根の声はちょっと真剣だった。


「……ねえ」

「ひゃぁ? 何よぉ。ちゃんと謝ったでしょぉ? やりすぎたのは、私だって反省力をみせたじゃない」

美琴に声をかけられて大袈裟にビビる食蜂。
彼女はちゃっかり取り巻きに連絡してタオルと替えの制服を持ってこさせていた。
髪を拭いてもらいながら、操られている生徒たちが床をきれいにして『女王専用お召し替えスペース』のカーテンの用意をするのを待っている。

「そうじゃなくて。アンタ、あんな所まで作ったの? ちゃんとていこちゃんのシャツが透けて見えるし……ってアンタもそんなところで脱ぐなーっ!!」

最初はひそひそ喋っていたのに、美琴はとうとう我慢できなくなって大声でツッコミをいれた。

「どうせそっちには俺の裸は見えてねえんだ。文句言うなよ」

どっかの大脳生理学の研究者みたいな堂々たる脱ぎっぷりで亘木は濡れたサマーセーターをその辺の机に放った。
こっちは替えまで用意がなかったようで、濡れたシャツのままタオルだけ勝手に借りて頭を拭いている。

「貸してちょうだい☆」

生徒の一人がそう言って亘木の制服を回収する。
ふり返ると、食蜂と少女は二人そろって同じ仕草でウインクする。
少女が濡れたセーターに手をかざすと濡れた服がだんだんとふわっとした状態に戻っていく。

「どうせなら他のもやれ。つうか運動着かジャージ、余ってねえのかよ。俺に風邪ひけって?」

「そうねぇ。なら、乾かす間着れそうなものを持ってこさせるけど……もしかして昨日と同じ服着てたのぉ? アナタも可哀想ねぇ」

「この状況でそこに同情すんのか」

文句を言いながら亘木はスカートに手をかけた。
スカートの下になにか履いているらしいので、常盤台生の目にはタイツでも履いているように見えている。
本来の状態から、適宜違和感のないように視覚情報が最適化でもされているようだ。
精神操作は本当に便利な能力だ。
散々あって、今更言うのもあれだが。
食蜂も亘木も濡れた服が透けたり貼りついてしまっているせいでなんかもう大変なことになっている。
本人たちはあまり気にしていないようだが、横から見ている方はそう言うわけにもいかなかった。

「あっアンタらはそれで中学生だって言い張る気なの?! どうなのよ! この……エロ下着共っ!!」

W濡れ透けに取り乱す美琴、彼女の対乳キャパシティはもういっぱいいっぱいだった。
うらやましいのか悔しいのか気になるのかおそらく全部だろう。
一人で叫んで落ち込んで、近くの机に突っ伏してしまった。

「御坂さぁん、虚像に負けたからってひがまないで欲しいわぁ」

「アンタねぇ…実は全然反省してないでしょ」

うつむいた美琴の前髪がアンテナのようにビリッとはねる。

「今電撃はそいつマジで死ぬぞ」

「あーっずるいわよぉ? ていこちゃんったら自分だけ安全力をキープしちゃってぇ!」

まだ少し伝導率がよさそうなていこちゃんは、自分の前に片側だけ翼を作り上げて呑気に呟いている。
その隣に入れてくれとふざけて駆け寄る食蜂。
きゃっきゃゆさゆさ見た目だけは天使っぽいのが並んでいるのを見て、また美琴は独り地獄に落ちそうな顔で凹んでいた。

おひさっすドーモ
途中で鳥に気付いて1は、
「ああ…とうとう自分のスレのトリップさえわからなくなってしまったのか…」と絶望に襲われましたがただスペースの空きだけでしたとさ。
よかったしょうじきちょっと泣くかとおもった

>>940
スピンオフはうれしいけどいろいろとこわいような

>>941
それと暗部落ちの原因とかな。余地はたくさんあるんだよ。
レールガンは結構敵サイドのバックボーンを掘り下げてくれてるみたいだけど、『スクール』はミコッちゃんと直接関わらなかったからやらなくて残念だな。
いや、いや!でもおかげでらっこさんに会えたじゃないか?よかったな?やったぜ超電磁砲、ありがとう超電磁砲

大変長らくお付きあいいただいた常盤台編も次回が最後の予定です。ていこちゃんも見納めだぜー
このスレで安価は終わりにしたいんだ…頼む、もってくれ!

乙今年最後の更新かな~

メリークリスマスイブ前夜祭(メリー天皇誕生日か?)。来年も楽しみにしてるわ


そういえば超電磁砲の外伝で常盤台生徒で、ラッコちゃんの親族らしき方が登場していましたね。

三期まで保守

ドーモ。常盤台潜入が仕上がったらきます。すいません

やったぁ!

垣根がスカート履き始めて2年経ったけど俺ここのss待つの全然嫌いじゃない
>>1ならエタらせない自信があるし

動くていとくん見た?

そういやスレ立てからもう四周年過ぎてたのか
面白くて何度も読んでるからかそんなに時間経ってる気しなかったな

最近たまに亘木ていこちゃんSSを妄想してる(形にはしない)

定期的に読み返してるが本当にここの垣根が一番好きだ

ss速報復活してた保守 三期始まったね帝督


終業のベルが鳴り教師が教室から出ていくと閉まるドアから一拍おいて、室内にざわざわとした賑やかさが広がった。
その辺りは世界有数の名門・お嬢様学校と言ってもここも学生、子どもの集まる場所だ。
控えめに、それでも開放感にはしゃいだ様子の生徒たちに囲まれて、美琴も席に着いたままぐーっと腕を上げて伸びをする。
食蜂たちと別れてあれから丸一日。
何かあったら、と美琴なりに不測の事態を想定して気を張っていたが拍子抜けするくらい何もなかった。
そして今日の授業もこれが最後。部活動のない美琴には放課後の予定もこれと言ってない。
ただ時間通り授業をこなしていく平和な時間割だった。専属の機関からの分析が割り込んでもいない、他の機関からの協力の要請もなかったし、とぷるぷる震える拳を伸ばしきって腕を下ろすと。
目を向けた先、廊下に立ってこちらを見る人影に気付いた。
普段ならツインテールの後輩が仕掛けてきそうな終業ジャストの出待ちアタックだったが、今日は相手が違ったらしい。
すらっとした足を軽く曲げて両手を腰に当てた姿勢で立っていた亘木は、くん、と顎を動かして廊下の先をさすとすぐに立ち去ってしまった。
それを見て美琴は首をかしげながらも荷物をまとめると鞄を掴んで教室から出た。
ちょっと帰りにお茶していきましょう、なんて雰囲気ではもちろんない。亘木はそんな奴でもない。
きょろきょろ見回していると教室から少し離れた所に亘木が居た。
不機嫌そうに眉を軽く寄せて、半分おりたような瞼で大きな瞳を隠した少女は、

『ちょっと来い』

やる気のなさそうな声で短く告げると亘木は美琴の返事も待たずに歩き出してしまった。
その後ろを慌てて追いかける。

(何よ。あんなこと言ってた癖に)

亘木のあの言い方。
丁寧口調のお嬢さまモードじゃないと言うことは用事があるのは垣根の方だろう。
美琴は当てにしないなんて昨日はそっけない態度を取っていた癖に、

(やっぱり頼りにしてくるんじゃない。素直に言いなさいよね)

と美琴は少しだけくすぐったい気分になって笑った。

やっとたどり着いた先はひと気のない校舎の間、教室二つ分はひらけた中庭だった。
そこで立ち止まっている亘木の背中に美琴は駆け寄った。

「どうしたの? こんなところまで」

美琴が見上げるが、亘木はちらっと目を向けただけで何も言わない。

「それで? 何の用よ。一言教えてくれてもいいんじゃない?」

やっぱり亘木の返事はなかった。
まだ何かあるのか、今度は無言で美琴の手を掴むとぐいぐい引っ張ってきた。

「え。ねえ! ちょっと!」

『うるさい。黙れ』

なにか変だ、と美琴はとっさに離れようとしたが腕をつかまれていて出来なかった。
美琴も短い付き合いだが、垣根の人間性もなんとなくわかっているつもりだった。
強引で話し方は乱暴でおまけに自分勝手。
それでも協力者に何も言わないなんてことはない。
むしろ聞いていなくても得意げにべらべら説明してくれそうだ。
それがここまで有無を言わせず返答もない状況、となるとやっぱり何かおかしい。

[ねえちょっと? さっきから、こっちには返事も無し?]

戸惑う美琴の耳に入ったのはかすかな、呆れた様な少女の声だった。
前にもあった感覚……至近距離での電磁的な混線、きっと亘木の通信機からだ。
垣根が怪しまれずに女子校で動き回るためにガールフレンドのアドバイスを受けている、と美琴は思っていた。

そこで美琴の疑問はある方向に向けて転がりはじめた。
この状況はきっと完全にイレギュラーだ。何か予定外のことが起きている。
それまでだって美琴や周囲の人間も構わずに無線で独り言みたいな内緒話をしていた相手にもだんまり。
おまけに相手がずっと話しかけてくるのを無視してまで。
耳元でうるさくされるくらいなら一言何か言って黙らせる、なんてことはやっていそうなのに。
そうして辿り着いた、確信めいた可能性にはっとして美琴は亘木の顔を見上げる。

「アンタ、操られてない?」

立ち止まって、無言で見返してくる亘木の顔は落ち着いてみえた。
慌てる美琴を前にして無表情、と言うのも変だ。
言い訳もしないし返事もない。
まるで。垣根にはそんなことよりずっと大事なものがあって。
それ以外のことは気にもならない、そんな風に美琴には感じられた。
ぱっとみた彼女……の見た目には、目に見えてわかりやすい変化はない。なにかアンテナとかアクセサリーが増えていたり、目や体に目印のようなマークがついている訳でもない。
でも、美琴はこう言った違和感に覚えがあった。
急に何か異質なものがさっきまでの景色に突然割り込んできたような感覚だった。
どこかちぐはぐさのある不自然な人間の動きにぞっとする経験は前にもあった。
そこまで頭を働かせた美琴は悔しげに眉を寄せた。
もしこれが食蜂の差し金じゃないなら、事態はおそらくきわめて悪い状況にある。


「ったくもう、正気に戻ってよね!」

バチン!! と大きな音を立てて二人の間で電撃が弾けた。派手な音と衝撃が走った。
亘木は顔の前に左手をかざしたまま首をかしげていた。
電撃は突き出された肘から腕に走ったのか。それともまた何か能力で防いだのか。
わからないが少なくとも本人はしびれた様子もけがをした様子もなかった。
めざましがわりにしては相当強めの一発を放った美琴がほっとしたのもつかの間、

『そんなに嫌か』

「へ?」

『そこまでする程嫌か、って聞いてんだよ』


美琴にとって何度目になるだろう、威圧と怒りの感情が向けられている。
亘木は……一体何が引っかかったのかはわからないが。
さっきまでのそっけない態度が嘘の様に、急に美琴に詰め寄ると手首を掴んで顔の近くまで持ち上げてきた。

『大人しく出来ねえ、ってのか? おい。それならこっちにも考えがあるぞ』

「いたっ、ちょっと!」

耳元に落ちる少女の声は怒っているのに低くて冷え切った様だった。
何か考えがあるなんて口ぶりだったのにやっているのは完全にただの力ずく、実力行使だ。
美琴もとっさに振り払おうとしたが亘木の手はびくともしなかった。
今の外見はともかく中身は男だ。
それも今度はきっと本気。加減なしで掴みかかられるとこんなに力の差があるのか。
それを体感して美琴はぞっとした。
きっと能力でも力でも、美琴が本気で抵抗してもコイツには敵わない。
それどころか、逆上されて今以上に怒らせたら一体どんな目に遭うのか。
第三位の超能力者は彼女がほとんど経験したことのない感覚に背筋を冷やしていた。
学園都市の中でも、御坂美琴にそんな敗北感や恐怖を与えた相手なんて……あの馬鹿と、第一位と……恐ろしい寮監くらいのものだった。
まずい、と危機感と焦りが美琴の中で膨らんでいく。


「そこまで期待はしてなかったのに大成功ね。新入りさんが本当に連れてこれるとは思ってなかったんだから」

いきなり割り込んできた少女の声に、亘木は急に腕の力を抜くとぼんやりとそちらを向いた。
少し離れた建物の陰から制服姿の生徒が一人、二人の前に姿を見せた。
美琴はその隙に腕を振り払ったが亘木はもう気にもしていない。

「そんな風に押さえつけてなくていいわ。彼女とは先にちょっとお喋りをしておきたいんだから」

満足そうにうなずく少女の姿を見ると亘木は美琴から離れた。
さっきまでが嘘の様、借りてきた猫の様に大人しくなって様子を伺っていた。

「こんにちは御坂さん、会いたかったんだから。ずっとね」

笑いかけてくるその顔に美琴は見覚えがあった。
ついこの前、寮監に呼び出された監督室ですれ違った少女だった。笑うと目がつりあがる様に細くなる。
美琴は隣の亘木をちらっと見たが、何だかぼうっとしていた。
催眠か洗脳か、どちらにしても操られていたからだろうか?
この様子では相手が何かしてきても対応できるかどうか。まず戦力としては期待できそうにない。

「その子には簡単なおつかいを頼んだの。『御坂さんを連れ出してあたしが来るまで引きとめて、後はいいこにしててね』ってお願いしてあるんだから」

それを聞いて、気になっていた悪い予感が当たった美琴は内心焦っていた。
まさか、騒動の助っ人に呼んだ相手がまんまと操られてる。
だが、この状況はこちらにとってもチャンスだ。
事件の黒幕本人がこうして今目の前にいる。

(コイツ一人くらい、私だけでもなんとかなるわ)

呼び出して連れてくるだけの指令に従ったにしてはちょっと乱暴だった気もするが、それでも幸運だった。
美琴たち以外には、亘木=垣根帝督として認識されていないと食蜂が言っていたのは本当だったらしい。
亘木……垣根がもし、「どんな手段を使っても御坂美琴を確保して主人の元に連れてくること」なんて命令を猫野に受けていたら。
第二位の超能力者は文字通り何をしてでも御坂美琴を確保しようと攻撃してきたかもしれない。
そうなったら美琴は抵抗できない状態でまんまと猫野の前に差し出されていただろう。
それでは相手の思惑通りになって、美琴たちには今回の問題を解決することはできなくなっていたかもしれない。
それどころか、二位、三位、五位、と超能力者たちがこんな事件を企んだ奴の好きにされる……操作されてもおかしくない状況に陥ったら一体どんなことになるやら。
それに比べたら現時点ではそこまで最悪の状況にはない。

おまけにこれ以上亘木が何かしてくる様子もない。
超能力者を相手にするよりは手下や駒に頼る謎の能力者の方がましだ、と事態を捉えた美琴は笑みを浮かべて猫野をにらみつけた。
そう言う回りくどい手段に訴えるのは、能力者本人に直接的な攻撃力がない場合が多い。
彼女の嫌いなあの女王様がそのタイプ、最悪の場合でも相手はその下位互換程度なら。
それほどの脅威だとは思えなかった。
パチパチと牽制の電撃を迸らせて相手を威嚇する美琴。
だが、目の前の小柄な少女はまだその余裕の態度を崩さなかった。
その様子に美琴は少し引っかかった。

亘木には期待していないと言った。ここに連れてくる時点で、彼女の目論見は成功しているとも。
今まで周到に準備していた人物が美琴の抵抗、いや反撃を想定していないとは思えないが……。


そこでふと美琴の思案は中断された。
すぐ近くに異変を感じて、悩むどころではなくなる。
ぼんやり俯いていた亘木の肩がびくびくと動いていた。
さっきまでただ立っていただけのはずの少女のシルエットがまるでわずかでも平衡感覚に異常をきたしたかの様に。
短い間隔で電気ショックでも浴びたように続く断続的なその動きに髪が小さく揺れていた。
電撃は通じないはず……と少しの間、その様子に首をかしげていた美琴だが、亘木の相変わらずぼんやりした目に変わりがないことに気付いて駆け寄ると顔を掴んで上げさせた。
瞳は真っ暗で焦点があっているかも怪しい。体の震えに対して呼吸は静かでそれが一層不気味だった。
さっきまでの操られている時よりよほどおかしな様子と何か発作でも起こしたかのような体の震えに異常な雰囲気が増した。

「ちょっと? 大丈夫……って、アンタ他にも何かしたの?」

「あっあたしは何も……」

怒鳴りつけてきた美琴の剣幕に、猫野はすくみあがった子猫の様に震えて首を横に振る。
彼女の仕業でないならこの異変には対処できないだろう。

『――ぁ、う……っく』

「しっかりしてよ!」

美琴が悲鳴を上げかけた瞬間。バシン! と大きな音がした。
亘木が自分の額を平手で強く叩いた音だった。

『……うるせえんだよお前ら。人の耳元で騒ぐんじゃねえ』

不愉快そうな呟きにあわせた様に、今度は美琴達の背後で靴音がした。
まだ驚いてひきつった顔の猫野が目を向けた先に現れた少女は手に持ったリモコンをライブ中のサイリウムのように振っている。
長い金髪を揺らし不敵に笑う彼女は、常盤台の頂点に君臨する女王。
食蜂操祈その人に違いなかった。

「おはよぉ☆ ていこちゃーん? 目はさめたぁ? ご機嫌いかがかしらぁ」

『おはようみさきちゃん♡ とでも言えば満足か? あぁ?』

顔を見合わせて笑う少女たち。さっきまで美琴が「敵」と対峙して張りつめていた緊張感はどこにいってしまったのか。
どこか気の抜けた空気に変わったことに美琴の肩からも力が抜けていた。

「アンタ大丈夫なの?」

『なーんかまだムカつくけどな。問題ねえ。だから、問題ねえっつってんだろ。お前もいいから静かにしてろ』

そう答えると亘木は乱暴に頭を振った。
後半の文句は、恐らく自分たちには向けていないことを察して美琴は改めてほっとする。
少なくとも普段の調子に戻っているんだろう。

「ここまでは予定通りなんだけどぉ。ていこちゃんったら私が直に弄ってあげないとダメなんだから困っちゃうわぁ」

『ならさっさとしろよ』

亘木が不満げに呟く。
食蜂の能力なら、様子がおかしくなる前に精神的なプロテクトを仕込んでおくことくらい簡単そうだと美琴も思ったが。
あえてそうはしないのが食蜂の狙いだったのか。
ともかく。こうして、一時的に共闘関係に身を置いた超能力者がずらりと揃うことになった。

『ったく。これでやっと面倒事が片付くな。とりあえずこいつ、拘束しときゃいいのか?』

「ああもぉ。野蛮力の高い人たちはすぐこれだから困っちゃうわぁ。犯人さんにはどう言うことかちゃあんと話してもらわないとねぇ」

『知るか。そんなもん後で好きなだけ吐かせりゃいいだろ。何ならテメェで洗えばいい』

ひとまずこっちの仕事を片づけさせてもらう、と言って猫野を見る亘木を美琴も慌てて止めた。
まだイラついているのか不愉快そうな表情に鋭い目をしている。
これは良くないやつだ、と美琴でもすぐに感づくヤバイ様子だった。

「私たちでもなんとかなるわ。アンタ、顔色悪いわよ。まだ他に何されてるかわかんないんだしちょっと様子見てなさい」

「あらぁ? なんとかするのは御坂さんだけよねぇ?」

「アンタもここまで来ておいて、面倒事はいきなり押し付けんのかーッ! 人を部外者扱いしといて都合よすぎるんじゃないの?」

「だってぇ。ていこちゃんに働いてもらえば手駒力は充分だしぃ。御坂さんに何もしらない餌の演技力なんて期待できないじゃない」

可愛い仕草で膨れてみせる食蜂だったが、あざといぶりっ子モードはこの場に居る誰にも通用しなかった。

『誰がテメェの駒だ』

唯一、性別の点では他より可能性のありそうな亘木でさえ目もくれずうざったそうにしていた。

「私に話があるって言うんだし、アンタも二人っきりじゃなくても構わないでしょ?」

「いいわ。まだ少し時間はあるんだから。昔話をしてあげる」

超能力者たちの勝手なお喋りを見せられていた猫野は諦めた様に首を振った。
カサカサとどこからか風に吹かれた木の葉が舞う音以外はあたりは静かだった。


常盤台、そして『学舎の園』では高い水準を誇る能力開発と同時に、その為の設備からなにから、必要なものはすべてその敷地内で生産と管理をしている。
学園都市でもトップクラスの門外不出の機密事項がそこらじゅうに使われた、異物と部外者を徹底して排除しようとする淑女の温室。
外部からも内部からも何か運び入れたり持ち出すのは難しい。生徒たちが何気なく利用している施設や物が、その敷地の外では貴重で重要である、と言うケースもあるので有形無形に関わらず、ほんの少しの情報でさえ取り扱いが厳重だった。
それでもいくつかの例外はある。
学業に必要なものに関しては、学校側の監査や検閲を通った上で許可が下りれば物の出入りに問題はない場合が多い。
例えば派閥の活動で使う物品や、研究に必要な学術資料もその一つだった。

「あたしのお父様は外の会社でマイクロシステムの研究をしていたの。発表した論文が学園都市で似た様な研究をしていた派閥の目に留まって意見交換会の話まで来たわ。もちろんテレビ会議だったけど。学生相手でもきっと楽しい話し合いが出来るって……お父様はとっても嬉しそうだったんだから」

そう言って目を細める表情は、家族との幸せな記憶に浸る少女のものだった。
だが、その表情が再び暗く沈んでいく。

「お父様の研究は順調だった。忙しくて、毎日が楽しそうだったんだから。それも去年……事故に遭うまで。後遺症で以前の様には生活が出来なくなってしまった。そしたら、会社の人たちはそれを理由にお父様を辞めさせて何もかも取り上げたの。手を回してそれまでのデータも功績も権利も全部自分たちのものにした上で。あれは、お父様のものだったのに」

怒りに駆られた声で話し続ける。少女の目に続いて浮かんだのは恨みの色だった。
温かいものを急に奪われた悲しみと理不尽な裏切りに残ったものまで台無しにされてしまった。
それに対する怒りに駆られる様な勢いづいた声で話し続けていた。

「あの人たちが手を加えていない、そんな真似ができないデータが残っているのはここだけだったんだから。だからあたしはそれを知ってすぐに新年度からの転入の為に行動をはじめたの。誰にも邪魔されない様に全部秘密にしてね」

少女は、何を思いこの『学び舎の園』の門をくぐったのだろう。
何かを取り戻したかったのか。
あるいは。彼女自身わからないままに、それでも何かしなくてはいけないと感じたのか。

「それでも大変だったんだから。派閥のことは知っていたから所属している生徒を調べて、お父様の話をすれば済むと思ったの。でもね、ここのお嬢さまときたらプライドと選民意識が高すぎてその辺の人間とは口も利かないなんて面倒な人ばっかりなんだから。おまけに……あたしの名前を聞いてもまだ……なんのことかもわからないようだったんだから」

いつのまにか。猫野の目はすっかり落ち着いていた。
揺らがないその様子は、諦めきった人間の表情に似ていたが。
まだ、獲物を狙うようなぎらつきがのぞいていた。

『そいつがテメェの動機か? ずいぶんとつまらねえな』

「ちょっと! そんな言い方ないでしょ」

それ以上馬鹿にする気にもならない、そんな風に亘木がやる気なく首を振って呟いたのを美琴が咎めた。

「他にあたしに何か聞きたいことはある? 今なら質問に答えてあげるんだから」

自嘲に似た冷めた笑いを浮かべて猫野は美琴に首をかしげてみせた。

「今まであった、生徒の徘徊騒ぎはアンタのしわざでしょ。一体どうやったのよ」

「御坂さんには悪いけど、それなら大体の見当力はついてるのよねぇ」

「え。そうなの?」

美琴が驚いて振り返ると亘木もうなずいた。

「だから……答えあわせをしてもらおうかしらぁ」


そう言って今度は食蜂が話しはじめた。
彼女も、亘木に身に覚えのない行動が見つかった時に、本人の記憶に手がかりがないか、洗脳による痕跡が見つからないかを調べていた。
だが、いつものように『読心潜行(カテゴリ005)』などを使っても該当しそうな記憶は見つからなかった。
そこで。食蜂が徹底的に亘木の頭の中を洗い、その時間帯の行動を全て再現させると。
確かに誰かと会って、話をしたような言動をとった。
そこから、本人の頭の中に関連するデータが無いかを更に深く探ってみると。

「出てきたのよぉ。御坂さんを今日の放課後、この場所に呼び出さないといけないって言うていこちゃんの意志力が。でもそれは普通の記憶とは別の所に保存されてたわ。見当違いの場所で探し物をしたって見つからないわけよねぇ」

「データの参照先が別だったってこと? 一体どこに」

美琴が自然と口にした疑問に食蜂は薄く笑うと、

「夢の中よぉ」

まんまと出し抜かれた、その割には面白そうに話を続けた。
夢を見るプロセスでは通常の記憶に関わる場所とは別の領域が使われていて。
そこに関わった「見た夢」の情報は強く定着はせず放っておけば自然と薄れて消えてしまうことがほとんどだ。
そして当たり前だが、現実に起こった出来事や実際の本人の経験とは区別される。
だが、脳が夢を構成する段階で現実の体験や経験はその中身に影響を与えるものらしい。

本来なら夢と現実を混同する人間はそういないが、その逆流を暗示によって行っていると食蜂と、話を聞いた垣根たちは仮定した。
さっきまでの亘木の例なら、あの夜の亘木は美琴に関する暗示を改めて施すためにどこかに呼び出され……事件に巻き込まれた他の生徒たちの様に操作された状態で徘徊した結果、記憶の空白が起こったのだろうと言うのが食蜂たちの意見だった。
暗示をかけられていた本人は何をしていたかを目覚めた後覚えていないが。
その間に得た『御坂美琴を放課後呼び出さないといけない』と言う次の指示はその後も頭の片隅に残っていたと言うことになる。

「単純に思考や記憶の表層をなぞるだけの読心能力者じゃ、まず何があったかなんてわからないわよねぇ。うまいところに仕込んだ、と言うより……かなり使いどころの狭い能力だわぁ」

「そう。やっぱり記憶だけ探ろうとしても簡単に痕跡は出てこないのね……ありがとう。いいことを教えてもらえたんだから」

手の内を明かされたはずの猫野は食蜂に笑い返した。
精神系最高位と言われる能力者の、その手を煩わせたことが嬉しかったのかずいぶんと得意げな顔だった。


「食蜂さんのお話はほとんど正解。あたしの能力は『催眠能力』よ。眠っている人間の脳の働きに干渉するわ。でも、レベルが低いから無理やり従わせるような強制力はそんなにないの。暗示をかけた内容を本人にそうしむける程度のものでしかないんだから。朝見た夢はいつのまにか忘れてしまうでしょ? 誰かが、夢うつつでしてしまったことに……あたしは関係ないんだから」

「それで今まで尻尾を掴ませなかったの」

「あたしのやり方は時間はどうしてもかかるものだから、とっても慎重に進めたんだから。派閥のメンバーを何人か確保して暗示をかけて話を聞き出したり、少しずつ材料を集めたわ。派閥内での情報の扱い、必要なパスやデータ。先週やっと十分な手がかりを掴んだんだから。後は狙ったデータを集めて書きだすか転送すればよかったんだけど」

「思ったようには進まなくて、夢遊病の事件が発覚したのね」

美琴の言葉に猫野は残念そうにうなずいた。

「そこまで進めるまでに、途中で何度か見つかったの。ここでつまづいたら台無しだもの。頼みたいことの他に『誰かに見つかったら逃げる』様付け加えたり、催眠の対象に読心能力者を選んで警備員を察知させたり……大変だったんだから」

『ああ。それであいつ、向こうに先に気付かれたっつったのか』

「でもぉ。ここでおかしなことが起きはじめて、風紀委員が真っ先に捜索力を駆使してたわよねぇ? この私を含めて、他人の操作が出来る能力者はみんな調べられてたはずでしょぉ。その捜査網はどうやって潜り抜けたのかしら」

「そんなの人を使って調べるまでもないんだから。少し調べるだけで十分にね」

そう言われて、美琴はポケットから取り出したPDA端末を操作した。
『書庫』にアクセスすると。検索した中から顔写真で判断してファイルを開いた。
「あった。鍋島緋十実……レベル3の……『予知能力』? それなら捜査の対象にはならないかもしれないけど。能力のデータが大元から改ざんされてるってこと? でも、そんなの転入前にだってすぐわかるはずだし、簡単に出来ることじゃないわよ」

美琴が驚くと猫野は今度は得意げにほほ笑んだ。

「猫野は父の姓。あたしが何をしたか、そこの女王様ならわかると思うんだけど」

「開発官の洗脳かしらぁ」

何でもないことのようにさらりと食蜂は言った。
似た様な能力をもつとその使い方や考え方の傾向まで近くなるのか。
猫野も否定しなかった。

「先生にはお世話になったんだから。必要な試験データの書き換え、身体検査の結果の偽造データの作成。そしてここへの転入手続きもね。『あたしのように優秀な生徒をぜひ常盤台に入れてあげなくちゃいけない』って、あの人とっても親切にしてくれたんだから」

誰かのための善意の行いに抵抗のある人間はそういないだろう。
自分は良いことをしているとそう信じている人間がたまたま不正に手を出す人間だったか、そこまで仕向けられていたのかは美琴たちにはわからないが。
きっとその開発官は自分のしたことになんの疑いもないまま、募金箱に多めに寄付をしてやったくらいのいい気持ちで今も過ごしているだろう。
そこに不幸な人間はいないかもしれない、でも美琴は何だか嫌な気分になって眉を寄せた。

「ねえ、他人を操作できる能力者ってみんなアンタみたいな下衆い考え方なの?」

「私は自然と傅きたくなっちゃう天性の崇高力を振りまいちゃってるけどぉ、あのおちびさんのは小動物の愛玩力じゃない?」

「人形を並べたお姫様ごっこと一緒にしないで。それにあたしは子猫ちゃんたちをうまく使ってるだけなんだから」

猫野はいきなりの小動物扱いが不満だったのか食蜂をにらみ返したが、食蜂の指摘通り彼女もどっちかと言えば、
「ぜんぜんそんなの興味はないけど仕方ないから付きあってあげますよ~」なんてノリで猫じゃらしをつついていたらそのうち全力で追いかけはじめてしまう子猫の方がタイプは近そうだった。
女王程のカリスマ性はなくても、下僕がそばに控えて進んでお世話をしている構図は近いかもしれない。

『テメェが世界の中心でそれが当然みてえなふてぶてしさは能力者の傾向ってより、女の特性じゃねえの』

「ていこちゃん……もしかして女子力の高さに自覚あった? やだ、いつの間にそんなとこまで女の子らしくなったの?」

『は? ふざけんなよ? っつうかその呼び方止めろ、ムカつく』

「なんで私にはそんな怒るのよ。食蜂はいいっての?」

「あらぁ、御坂さんたら嫉妬ぉ? やだぁ、全然嬉しくなぁい」

「女同士でいちゃつくのは止めてもらえる。不愉快なんだから」

脱線してきゃあきゃあ騒ぎ出した三人に、猫野はわざとらしい咳払いをしてから鋭い目を向けた。

「予知能力って言うのもまるっきり嘘じゃない、いい案だったんだから。あたしは子猫ちゃんたちの未来の行動がわかるんだから。おかげで誰にもばれなかったわ。今日まではね」

事前に操作した人間が暗示の通りに取る行動を予知だと言ってみせれば。
確かにはた目には、彼女の予言通りのできごとが起きた様にみえるだろう。
遅行性の記憶に残らない暗示は、ある意味未来を予見し操作する能力ともとれるかもしれない。
あらかじめ能力の有効な範囲や時間に制限がある、としておき「身体検査」があることがわかっていれば。
常盤台に入ってからも、それにあわせて準備をしてばれないようにしのぐこともできたのか。

「御坂さんはとっても頼りになりそうだから本当ならもっと早く落としておきたかったんだけど……あんなガードの固いルームメイトさんがいるとは思わなかったんだから」

「確かに、黒子なら深夜にベッドを抜け出す前にばれそうだし。誰かとこっそり会ってたなんて知ったら絶対つきとめそう。すごいめんどくさいことになりそうだわ」

自分でも驚くくらい、猫野が残念がる理由が納得できた美琴だった。
日頃からべったり張りついてくるちょっぴり面倒なルームメイトの存在に知らない所で助けられていたとは、美琴も夢にも思わなかった。


「あれ、それでも変じゃない? 亘木さんがお茶会に行っている間に最初の暗示をかける様な時間はなかったでしょ?」

能力のからくりを聞いていた美琴がまた疑問を口にした。

「ちょっとうとうとはしたんだったかしらぁ?」

『ぼんやりしてたのは長くてもせいぜい二〇分程度だ』

「眠ってから夢を見るまではノンレム睡眠からレム睡眠に切り替わらないといけないでしょ。それならどれだけ早くても九〇分はかかるはずじゃない」

「あら、超能力者なのに随分古い情報を信じているのね? 夢を見るのはレム睡眠の時だけじゃないんだから」

猫野はにやりと笑う。
人間の脳は器用で複雑だ。半分覚醒しているような二度寝のわずかな間にだって夢をみた経験はあるかもしれない。
最近の研究では脳が夢を見る仕組みには睡眠の深度以外の要因も調べられている。
他にもうつ病や精神疾患の患者が極めて短い時間で夢を見ていることも発見されている。
様は、脳が眠っていればいい。極論を言えばそう言うことになる。

「……ねえ、この匂い。どこかで」

その時美琴は異変に気付いて鼻の下を手でおおった。
甘さのあるハーブのような匂いがうっすらと辺りに漂っていた。

「ああ良かった。ここまでとっても大変だったけど、欲しかった超能力者が二人も取れそうなんだから。そしたらあの人たちに思い知らせてやることだって何だって、なにもかも全部あたしの思い通りなんだから。さあて……お話はこのあたりにして、そろそろ仲良くお昼寝の時間よ子猫ちゃんたち」

目を細めて嬉しそうに猫野は笑った。
もうすっかり勝ち誇った様な顔をしていた。
自分の目的や、復讐以上の可能性が目の前に並んでいたら無理もないだろう。
超能力者を味方に付けることができたら、学園都市の征服くらいは手が届く範囲の夢になる。
だが、そんな少女の夢物語は簡単には叶わなかった。
そこに水を差したのは彼女が一度は思い通りにした筈の亘木だった。

『効かねえぞ。テメェの回りくどい能力のうざってえ下準備の方も仕掛けはとっくに割れてんだ』

亘木は馬鹿にした様な目を猫野に向けた。
不意に、近くに吹き付ける風が強くなって髪が、スカートがひるがえり煽られる。
だが、相変わらずそんなことには注意を払う様子もない。

『「ヒュプノスの吐息」、あの仲良し会で使ってる吸入タイプの睡眠薬だな。主成分はアルカロイド系で、ベンゾジアゼピンに近い強い鎮静効果がある。超短時間で脳の機能を低下させる代物だ。だが、揮発性が高いもんは薄まるのもそれだけ早い』

「骨董趣味の会長さんの能力は確かレベル3の『気流操作』よねぇ? それでターゲットを一人ずつ眠らせていたってことでしょぉ。操作可能な状態にするのにだってこんなに手間をかけないといけないんだからアナタも大変ねぇ」

美琴たち三人が集まって立っているそばには点々と風の柱が噴出していた。
それは近く一帯の空気を巻き込んであっという間に撹拌してから吹き飛ばしてしまった。
おそらくは、時間稼ぎに話す間猫野がこっそり準備していた薬剤も一緒に。
風に髪をおさえていた食蜂は小馬鹿にしたが、いくらそう言う能力でもボタン一つの気軽さで他人を好きにできるのは彼女くらいのものだ。

「そんなに大したものじゃないのよ。それってほとんどアロマオイルなんだから。ホップ、ネロリ、カモマイルそれにベースが確かヴァレリアン……ギリシャ時代から使われていたハーブだったかしら。元は不眠症用に作ってたものらしいけど、よく効くのよ。あの人たちの悪趣味はわからないけどあたしには……ラッキーだったんだから」

紹介制の趣味の集まり、派閥以下の小組織なら面倒な書類も名簿も詳細な記録や申請も必要ない。
それは密かに生徒を呼び出して情報収集をするにはうってつけの隠れ蓑だったに違いない。

「あの人たちもあたしのことは知らないんだから。目的も、利用されていたことも。なんにもね。それどころか会長はあたしを利用しているつもりでいるんだから。美意識とこだわりはあるくせに、センスってものがないんだから。可哀想よね」

それを聞いて、亘木は馬鹿にした様な表情を口元まで広げて笑った。

『あの退屈な曲はテメェのか。あれじゃあ標的以外の人間も暗示に従っちまうんじゃねえの』

「曲に仕込んである催眠は、眠っている間に後日呼び出すところまでなんだから。お願いをするのは一人ずつ、何かあっても簡単に足がつかないよう用心はちゃんとしてるんだから」

猫野は嫌味にも丁寧に、自分のこれまでの周到さを自慢でもするみたいにかえしていた。

「じゃあそろそろ観念したらどう?」

亘木の暗示も解かれてしまった。
猫野の目標である美琴はまだ捕まえられていない。
邪魔者を排除することもできていないし超能力者に囲まれている。
なにもかも失敗したはずの猫野だったが。
彼女はまだ、諦めていない執念深い目をしていた。

「目立つことはあんまりしたくなかったのに。ここまで来たら仕方ないわ。こうなったら、先生に助けてもらうんだから」

猫野はそう言ってスカートのポケットから何かを取り出した。
子どもが使う小さなおもちゃの鉄琴のようだったが鍵盤部分の形が変わっていた。
音叉を幾つも並べたような造りになっている。
それを叩いて高く澄んだ音を奏でながら、歌うように語りはじめた。

「あたしの能力は眠っている人間に干渉するわ。鍵になるのは聴覚。眠っていても休むことのない感覚はあたしの命令を伝えてくれるんだから。特定の周波数をあらかじめ組みあわせておけばもっと簡単なのよ。一番厄介な御坂さんはあたしのとびっきり仲良しなお友達にしてあげるんだから。あなたたちもその後でゆっくり夢を見てもらうわ。大丈夫、目が覚めたらみんな……嫌なことは忘れてるわ」

それまで、そしてここまでの得意げな様子に美琴も納得した。
彼女の余裕がどこからきているのか不思議だったが……これなら仕方ないとさえ思ってしまう。


「眠ってる間に洗脳されてるなんて普通は考えないわよね……それも、友達や生徒になんて」


猫野の背後に静かに現れたのは。
普段通りにスーツにきっちりと身を包んだ……常盤台学生寮の寮監だった。
そこから感じるいつも以上のプレッシャーに美琴も身構えた。

「野蛮力のたかぁい人は御坂さんにお願いするわぁ☆」

「はぁ?! 何言ってんのよ!」

この局面で真っ先に戦線離脱を宣言した食蜂に美琴は思わず怒鳴った。
確かに、向こうの狙いは最初から美琴だ。
でもだからってこの速さで見捨てなくてもいいだろうと思う。
相手は寮監、できるなら美琴だって振り返らずに一刻も早く逃げたい。

「さっき触ってみてわかったけどぉ。これって無意識下に仕込まれてる時限爆弾みたいな暗示だから、ぱぱっと簡単に解けるような洗脳じゃないのよぉ。無理にして頭の方が壊れても困るし繊細な作業は落ち着いてやらせて欲しいわぁ。いくら私がとっっっても美人でパーフェクトで素敵な美少女でもぉ、直接やりあう野蛮力だけは持ちあわせてないしぃ」

「あー……もう。まさか寮監まで出てくるなんて。考えなかったわけじゃないけど。ねえ、本当にやる?」

猫野がここに現れてから。
能力の話が進んでいくうちに、彼女とどこで会ったのかを覚えていた美琴はその可能性にうすうす気づいてはいた。
それでも、人間認めたくないものがある。嫌な考えなら尚更だ。
まあ、常盤台生に対して一番効果のありそうな相手だ。
ぶつけてこない訳がない。
それすら見越して根回ししていたであろう猫野の慎重さが憎い。
ふと、美琴はちょっぴり期待を込めて亘木の方を見てみた。
流石の寮監も、第二位の能力者相手に無双できてしまったら……何というかもう、常盤台どころか世界でもトップクラスに強い生き物になってしまう。
そんなのは嫌だった。

(垣根さんだっていざと言う時は手助けくらいしてくれるわよね)

とでも思わなければこの場に救いも活路も無くなってしまう。
だと言うのに。

『俺の仕事はこっちの相手だ。そっちは勝手に好きにやってろよ』

「アンタたちは、本当にもう……」

亘木は美琴の方を見もしない。
ここに都合よくヒーローが助けに来てくれないか、なんてことを考えてしまうくらいには。
はじまる前から心が折れそうになる美琴だったが、泣いている余裕もなさそうだった。
静かに、だが確かに。
寮監は一直線に美琴目がけて歩いてくる。

追いついたー
こんな面白いssに四年間気づいてなかったなんて勿体無いことをしたぜ
今日は遂にアニメでスクール登場か

ブラウザの同期ズレか知らんが一ヶ月もスルーしちゃってたんだぜ!?
そして美琴ガン無視の垣根にワロタ

保守

平成

忘れがちだけど垣根はずっと女装してるんだよなぁ……
シュールかつユニークとしか言えない絵面

色々言いたいことあったけど一言で足りることに気付いた

このスレ好き

1生きてる?
心理定規オメ

遂に心理定規の本名判明したね

まさか心理ちゃんに姉妹がいるとは…

スレを読み返してるとこのスレができてからスクールに色んな動きがあったなと感慨深い

もうスレの残り的にも無理そうだけど常盤台潜入最後まで読みたかったな

いまだに更新されてないかなーと見に来てる俺がいる
まあでも1がどっかで元気にやってる事を祈ってる

保守必要?

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月21日 (日) 12:32:38   ID: 3Bpr9To3

タイトルから中身が想像つかないけどそこそこ面白い
ただ読みづらいし作者がキモいのが残念

2 :  SS好きの774さん   2015年07月18日 (土) 02:57:18   ID: 7BZdXb4n

ss以外ミュートにしたい

3 :  SS好きの774さん   2015年07月20日 (月) 14:27:58   ID: X7tZgXZR

つづきはよ

4 :  SS好きの774さん   2015年08月09日 (日) 01:09:25   ID: h8lPzRmW

はよ

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