【一日目:水曜日】
自「え? それってどういう」
ニ「こまけぇことはいいんだよ!」AA略
ニ「さーてまずはイオンだな」
自「今ウェストポーチしかもってないじゃん」
ニ「金と貴重品は入ってる」
自「親の金?」
ニ「先月まで派遣やってたじゃん、ってかお前に乗って通勤してたじゃん。その時のだよ」
自「ふーん」
自「先月までは毎日通ってたのに、半月も僕をほったらかしで……」
ニ「だから今こうして乗ってやってるだろ感謝しろよ」
自「感謝してる♪」
ニ「……」
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自「イオンついたよ」
ニ「んじゃ近くの古着屋でリュック買って、イオンで寝袋もろもろ調達だな」
自「ほんとに家出するの? 釣りかと思ってた」
ニ「お前を釣ってどうするっていうんだ」
ニ「寝袋、ソーラー充電器、カッターにライターっと」
自「本格的だね。でも着替えは?」
ニ「服はユニクロか何かでいいだろ、途中で見つかるさ」
自(結構アバウトなんだね)
ニ「とりあえず都心に向かっていくかな、よろしく相棒」
自「まっかせなさーい!」
ニ「疲れた……」
自「まだ1時間も走ってないよ!?」
ニ「昨日親父と仕事した疲れが」
自「半月ごろごろしてただけの生活が祟ったね、自業自得だよ!」
ニ「くっそこんなことなら筋トレしとけばよかった」
自「どうせ『明日から本気出す』とか思ってたんでしょ?」
ニ「むむむ」
自「とかいいつつも、JR天王寺駅まで来たよ」
ニ「駅でけぇーっ! 人多ーっ!!」
自「路駐なんてしないでよ撤去されちゃうから!」
ニ「とりあえず寝床探すか」
自「寝袋買ったってことは、野宿するの?」
ニ「しないよ! 今日は人生初、ネカフェに入るのだ!」
自「ふーん」
ニ「お前は有料駐輪場へ預けるからな」
ニ「12時までしか預けられないから、時間になったら迎えに来るわ」
自「はーい」
自「大丈夫かなぁ……」
店員「イラッシャイマセー」
ニ(うわネカフェ静か杉ww)
店員「ハジメテノカタデスカ?」
ニ「あ、ハイ」
店員「~トナッテオリマス、ゴユックリドゾー」
ニ「あ、ドモデス」
ニ(なんか無駄に緊張する寝れねぇwww)
【二日目:木曜日】
ニ「結局寝れなかった……おーい相棒」
自「やっと来た、どうだった?」
ニ「最高だったよ!」(ばれないよう振舞おう)
自「ふーん」
ニ「とにかく深夜だけど走ろう。次は京都でも向かうか」
自「夜風が涼しくて気持ちいね」
ニ「日中よりかなり走りやすいな、車もなくて」
自「快走快走♪」
ニ「おー朝日だきれー」
自「きれー」
ニ(うっ……眠気が)
ニ「は、腹減ったしマックでもよるか」
自「あいあいさー」
自「……いったい何分マックにいるつもりだろう?」
ニ「zzZ」
ニ「さて、少し寝れt……休憩できたし出発しようか」
自「寝てたんだね僕を寒空の下放置して!」
ニ「スミマセンデシタ」
自「……まぁ途中で倒れられても困るし、いいよ。許してあげる」
ニ「ここでお前に嫌われるとかしゃれになんないからな……」
自(まだ家出の理由を聞きだせる状況じゃない……もうちょっと待とう)
ニ「京都ってほんと碁盤みたいな道してんだなー」
自「そこ曲がらなきゃだめだったんじゃない?」
ニ「金閣寺まで上り坂しんどっ!」
自「また道まちがえてるよー」
ニ「金閣寺ついたー!」
自「AM7:30、まだ開いてないじゃん……」
ニ「京都御苑SUGEEE!! ここだけ異世界www」
自「砂利道つらいよ」
ニ「少し休憩すっか」
自「うん」
自「さっきからスマホでなにやってるの?」
ニ「2chにスレ立てしてた」
自「ふーん」
ニ「相手はどうかしらないけどさ、1レスだけでも反応あると元気が出るんだ」
ニ「『一人じゃないぞ』っていわれてるようでさ」
自「ふーん……」
自「次の目的地は?」
ニ「とりま琵琶湖みに行きたいな」
自「ねぇ、これって観光?」
ニ「いやぜんぜん。観光なら金閣寺に入るだろ普通」
自「だよねー」
ニ「とにかく琵琶湖までいくぞっ!」
ニ「山道疲れたしんどっ」
自「帰る?」
ニ「そんな事するか!」
自「なら元気だして踏ん張って!」
ニ「き、休憩は」
自「峠走ってるドライバーさんに迷惑だよ、ほら走って!」
ニ「結構酷なこというよなお前」
大阪→京都→滋賀
無茶すんな……
老「」ハァハァ
ニ「あ、コンチワ。塩飴とかいります?」
老「おぉ、すまんね。どこからきたん?」
ニ「大阪の、ちょうど関空近くから」
老「おお遠いとこからよく来たなぁー! でも標準語だねぇ」
ニ「性格なんです。おじさん(?)これからどちらへ?」
老「祇園祭に行く途中でな。気まぐれで走ってるんじゃよ」
ニ(かなり上り坂きつかったが、元気だな爺さん……)
ニ「失礼ですけどおいくつです?」
老「63じゃ。細胞年齢は40前後らしいがの」
ニ「めっちゃ若くみえますよ!(60に見えねぇ……)」
老「お前さんも旅を楽しむんじゃぞー」
ニ「すごいな、走っていったぞ」
自「元気なおじいちゃんだったね」
ニ「琵琶湖キターーーーーー!」
自「景色がガラッと変わって平地にもなったし走りやすい!」
ニ「ヒャッホー! こりゃ快適だぜ!!」
ニ「ネカフェ見つからないから野宿だぜ!!」
自「僕盗られちゃうんじゃないかな」
ニ「補導とか職質とかあるかなwww」
自「何のんきなこと言ってるの!」
ニ「んじゃ暗くなってきたし寝袋出して寝るわおやすみwww」
自「おやすみー」
【三日目:金曜日】
ニ「おい相棒、起きてくれ」
自「どしたのまだ12時だよ、寝だしてから2時間もたってないのに……」
ニ「トイレの裏に陣取ったのがまずかった、虫が酷くて寝れんww」
自「ちょっと走れば海岸沿いに公園か何かあるんじゃないかな」
ニ「そっちに移動しよか」
自「夜道で黙って、何考えてるの?」
ニ「……別に」
自「ふーん」
ニ「おおちょうどいい草むら、しかもでかい石がベッドみたい」
ニ「ここでもう一回寝るかな」zzZ
自(良かった、次はぐっすり寝れてそう……)
女「ねぇ暗くて怖いよー」
男「大丈夫だってライトつけりゃ」スマホピカー
ニ「うぅっ……?」
女「……なんかいるし帰ろうよ」
男「そ、そだな」
ニ「あーよく寝た。今は朝5時か……」
自「昨日不審者扱いされてたよ?」
ニ「知ってた」
自「あれ狸寝入りだったのね」
ニ(ちょっと怖かったなんていえない)
ニ「とりまこのまま進めば、彦根か」
自「ゆるきゃらの先人、ひこにゃんのいるところだね」
ニ「大して興味ないが行ってみるかー」
自「彦根の人に失礼だよそれ」
ニ「やってきました彦根城!」
自「AM7:50、なんか通学生が多いよ!」
ニ「そしてお城も開いてないね!」
自「次はどこへ行くの?」
ニ「……名古屋かなー。なんか2chの人に名古屋住みが数人いるっぽいし」
ニ「もしかしたら会って話できるんじゃないかと!」
自「ふーん」
ニ「さーて出発するとしますかーっ!」
ニ「いてて……」
自「腕大丈夫?」
ニ「日焼けで2トーンカラーになってるぜ……」
自「それ日焼けじゃなくて焼けどになってるよ! 早く水、水!」
ニ「もう少し! ここでとまったら名古屋に1日遅れる」
自「どうしてそこにこだわるのさ」
ニ「どうだっていいだろー」
自「……」
自「名古屋着いたよ!」
ニ「雨予報出てたけどギリギリか」
自「日焼け冷まさなきゃ、今日もネカフェ?」
ニ「いや今日はホテル予約した」
自「ちゃんと腕を冷やすんだよー」
ニ「はいはい」
自(駐輪場で待ってる時って、正直暇なんだよなー)
自(ちゃんと寝れてるのかな)
【四日目:土曜日】
自(日が昇った……昨日はもう走ってるころなのに)
自(AM7:00。まだこない)
自(AM9:00、まだこない)
自(AM10:00、来ない……)
ニ「おはよう」
自「おはよう、じゃないよ! なんでこんなに待たせるのさ!」
ニ「だってチェックアウト11時だったから」
ニ「できるだけ疲れは取るべきだろ?」
自「そりゃそうだけど、心配したんだよ?」
ニ「はいはい、すまんかったな」
自「もー……」
自(でもぐっすり寝れたなら良かった)
自「名古屋で会える人とかは?」
ニ「んまー、都合が悪いらしい。次いこ次」
自「……次の目的地は?」
ニ「東京」
自「またアバウトだなー」
ニ「ほら寝坊した分とりかえすぞ、出発ー!」
自「あいあいさー」
ニ「おかしいな、ホテルでも休んだしさっきマックにも入ったのに」
自「しんどいの?」
ニ「まぁなんとかなるでしょ」
自「あ、雨も降ってきそうだし、近くのネカフェ入ろうよ」
ニ「そか? 相棒がそういうなら……」
自(やっぱり様子がおかしい)
ニ「もう夜8時だし行こう」
自「無理しなくてもいいんだよ?」
ニ「財布に金もないし、走ってるほうが気が楽だ」
自「ふーん」
自「気づいたら峠越えだね」
ニ「だめだ足元ふらつく」
自「適当な場所見つけて休も、ね?」
ニ「いやまだ、もう少し」
自「事故っちゃったら終わりだよ!?」
ニ「それはそれでありかな、なんて」
自「そんなこと、いわないでよ……」
ニ「……」
ニ「悪かった。今日はもう野宿しよう」
【五日目:日曜日】
自「おはよ」
ニ「んぁ、もう日が出てるのか?」
自「まだAM5:00だけどね」
ニ「うぅむ、初めての野宿は日の出前に起きれたんだがなー」
自「そんなとこ気にしなくていいんだよ。さ、行こう!」
ニ「おう」
自「太平洋見えたよ!」
ニ「なんか子供がボートやっててすごいな」
自「子供のボート大会やるらしいね。見ていく?」
ニ「……パスだな、走ろう」
自「はーい」
ニ「寺がある、小休止するか」
自「なんかお祈りでもしたら?」
ニ「そだな」
自(二人揃って無事に家に帰れますように)
ニ(結果がどうあれ、答えが見つかりますように)
自「そろそろ休もうよー」
ニ「いあー海岸沿い走りやすいし、何より休憩場所みつからない」
自「腕また赤くなってるよ」
ニ「ど、どうってことはない」
自「強がっちゃって……」
ニ「御前崎か……暗くなったしここで休むか」
自「どうみてもオーバーワークだよ、ヒキニートがこんなことしたら体壊すよ」
ニ「こまけぇことはいいんだよ!」AA略
自「……よいこは早くねましょうねー」
ニ「がき扱いするなよ」
自「家出に自転車使う大人がどこにいるんですかねぇ」
ニ「グヌヌ」
自「ねぇ、なんで自転車で家出しようと思ったのさ」
ニ「……親父と喧嘩した。それだけだ」
自「えっ、前日は御父さんと仲良く仕事にでてたじゃないか!?」
ニ「相棒にはわからんと思うけど、俺は家族、とくに親父と仲悪くてな」
ニ「長男やってるが、家にいてもいなくても変わらん、むしろいない方が良いくらいの存在さ」
ニ「弟妹には悪いが俺はそんな家じゃやってられなくなった。それだけだよ」
ニ「さて、良い子は早く寝るよ。お休み」
自「ふーん……」
【六日目:月曜日】
自「起きて、起きてよー。AM6:00だよー」
ニ「……ん?」
自「大丈夫? なんか目が腫れてる気が」
ニ「やっぱオーバーワークかねぇ」
自「無理せずゆっくり行こう」
ニ「そだな、とりあえず静岡長いし」
ニ「そだ、拳骨ハンバーグってのがうまいらしい」
ニ「よーし静岡はりきっていくぞーっ!」
自「無理せずゆっくりって言ったじゃんかー!!」
ニ「絶望したぁ!」
ニ「バイパス自転車とおれねぇ! しかも歩行者用通路も工事中だぁぁ」
ニ「俺オワタ\(^O^)/」
自「ど、どうするの!? このまま座っててもしかたないよ?」
ニ「まだ昼前なんだが、野宿場所でも探すか」
自「気が早いよ! どんだけ寝るつもりだよ!!」
ニ「ヒッチハイク……は相棒がいるから乗せてもらえる車種も限られるしなぁ」
自「……ごめん」
ニ「そういう意味じゃない。あと俺が恥ずかしいってのもあるし」
ニ「とりまガソスタのおっちゃんに道でも聞いてみるか」
ニ「すいませーん」
男1「ん、兄ちゃんどうした」
ニ「この先自転車進めなくって、どうしたもんかなーと」
男2「それなら旧国道1号使うといいぞ!」
男1「そやな、それやったら信号2個先の交差点で右曲がって――」
ニ(なるほどわからん)
男2「メモ書き用意するからちょっとまってろ」
ニ「ありがとうございますっ!」
男1「いやーしかし兄ちゃんどこから?」
ニ「大阪から、自転車でここまで」
男2「へぇーたいしたもんだ!」
男1「昔トラックの運ちゃんやってたが、今の車が軽じゃなきゃ乗せてやるのに」
男2「地図書いた、この道進めば峠超えできるから」
ニ「すみません、助かります!!」
自「って早速道間違えてるし」
ニ「いやだって、信号二つ目を曲がってってあるじゃん」
自「突き当たりに岡部支所って書いてるよ?」
ニ「んじゃ支所さがそ支所」
ニ「ん、あれ男2さんじゃ……」
男2「兄ちゃんすまんな、地図書き間違えてたわ!」
ニ「それでわざわざ先回りして待っててくれたんですか?」
男2「ああ、この道まっすぐ行けば大丈夫だからな!」
ニ「ホントありがとうございます!」
男2「気つけてなぁー、旅たのしめよー!」
ニ「いい人すぎる……!」
ニ「さて峠超えたら市内だな!」
ニ「スーパー銭湯とネカフェと、拳骨ハンバーグの店に行くぞ!」
ハンバーグ店
ニ「人多すぎワロタwwwはいれねぇwww」
自「そういや今日は海の日、祝日だったね」
ニ「くっそ明日の昼にするおwww」
ニ「相棒のメンテもしなきゃな」
自「!?」
ニ「道中キャリア見るついでに店員さんが無償サービスで空気だのブレーキだのチェックしてくれたが」
ニ「雨の中走ってチェーンも油まみれだしな」
自「…ア…アリガト」
ニ「?」
自「なんでもない!」
自「メンテしてもらったし快調だよ!」
ニ「それじゃまた明日もよろしくな、相棒」
自「今日はネカフェでお休みなのね」
ニ「やっと使い方に慣れてきて、ようやく寝れるようになったからなぁ」
自「じゃあ、お休みなさい」
ニ「お休み」
ニ(明日で1週間か……)
子供「まってよお父さん、お母さん!」
父親「聞き分けのない子だな」
母親「早くこっちにおいでー」
子「そっちへ行かないとだめなの!? いやだ……怖い!!」
父「なら、ずっとそこで座ってればいい」
母「大丈夫よ、だから早く来なさい」
子「待ってよ、置いてかないでよ! 父さん、母さん……!」
ニ「!!」
ニ「夢、か」
【七日目:火曜日】
ニ「おはよ」
自「おはよう。すっかりおねぼうさんになったねぇ」
ニ「慣れかなぁ……フラットスペースなら寝れるようになったわ」
自「……今日はどこまで?」
ニ「箱根峠手前まで。もし気分が乗ったら、今日それを越える」
自「気分が乗らないことを祈ってるよ」
自「今日はペースかなり遅いね、大丈夫?」
ニ「大丈夫だ、問題ない」
自「お昼は何食べるの?」
ニ「一番いいハンバーグを頼む」
ニ「ハンバーグも食ったがいかんせん眠いな」
ニ「ネカフェ探そうにもグーグル先生は知らんらしいし」
ニ「足で探すしかないなー」
自「でもここさっき通ったよ?」
ニ「今はマック探してる」
自「ここもさっき通った」
ニ「コインランドリー見つけてね」
自「ここも通ったよ」
ニ「ちょっとイオンまで」
自「ふざけてるの?」
ニ「実はすでにネカフェ見つけてて、安心してる」
ニ「今は8時過ぎて料金下がるの待ちです」
自「えっ、じゃあ僕の心配はなんだったのさーっ!」
ニ「そうすねるなよ、言わなかったのは謝るから」
自「……時間あるなら、聞いてもいい?」
ニ「?」
自「家出のことだけど」
ニ「……」
自「喧嘩したって言ったけど、口げんかぐらいで出て行く人じゃないよね」
自「普段から喧嘩くらいやってるし、原因はそこじゃないよね」
ニ「……」
自「聞かせて、何があって、何を思ったのか」
ニ「……」
ニ「喧嘩の原因は、親父のしつけという名の暴力だった」
ニ「手を出すわけじゃないけど、飯抜きだとか言って圧力かける感じで」
ニ「普段はおとなしいくせに自分の思うとおりにいかないとキレるタイプだった」
ニ「当日も妹が、食事の準備を手伝わなかったせいで飯抜きになった」
ニ「ニートの俺は別部屋にいたが、そこへ妹が逃げてきて泣いてた」
ニ「親父の横暴さに納得いかない俺は、話をしに行ったわけだ」
ニ「親父は折れなかった。手伝いは義務で、手伝わないなら食う資格もない」
ニ「それなのに、普段ずっと手伝いしていない俺に、飯をすすめてきた」
ニ「妹のは取り上げておいて、まじめな妹の方がかなり上の状況なのに」
ニ「ニートの俺には飯を食えと言った」
ニ「こんな矛盾あるかよって最初は思ったが、よくよく考えてみたら」
ニ「親父の言うことを聞かない俺なんて、はなから対象外だったわけだ」
ニ「親父は自分の言うことを聞く子供にしか興味がなかった」
ニ「そして母さんは、親父をかばった……!」
自「……」
ニ「俺には守ってもらえる人も、守るべき人もいなかった」
自「でも妹ちゃんは」
ニ「妹は俺の物じゃない、両親の子供だ。俺がどう言おうと両親の判断が第一だろ」
自「……」
ニ「これでよかったんだよ、家に居場所なんてなかった、俺が帰るべき場所じゃなかった」
ニ「俺は愛されてない、必要とされてない、邪魔者だったんだよ!」
ニ「気づいてた……けど思いたくなかった、どこかで認められたくて一緒に過ごしてた」
ニ「そんな自分が惨めで、情けない……!」
自「……」
ニ「ごめん、つい熱くなっちゃったな」
ニ「もう8時だ。疲れたしネカフェ入って寝るよ」
自「……おやすみ」
自「……君の苦しみは僕にはわからない」
自「それでも、僕は――」
【八日目:水曜日】
ニ「おはよう……」
自「おはよう!」
ニ「朝から元気だな」
自「自転車って、走ってる間だけ立ってられるんだよ?」
ニ「?」
自「バックも、逆立ちもできないんだよ。ペダルを踏んで前に進むことしかできないんだ」
自「苦しくても辛くても、立ち止まって振り返る余裕なんてないんだ」
自「だからこそ前に進むんだ。立ち続けるために」
ニ「立ち続けるため……」
自「親がどうあろうと、環境がどうあろうと、自分で立って、走る」
自「立ち止まって座ってるより、絶対にいい方向に進むと思うよ」
自「でも、できれば君と一緒に走り続けたいなーなんて……」
ニ「……そうだな。走ろう」
ニ「今日は箱根峠を越えるからな、気合入れろよ!」
自「はーい!」
ニ「無理だわ」
自「無理だね」
ニ「延々のぼり坂って辛い」
自「僕がただの手押し車だね」
ニ「こりゃ峠中で野宿もありうるな……」
自「無理だよ!」
ニ「無理じゃない!」
自「やめてやめて! ブレーキかけずこの下り坂は危ないって!!」
ニ「登りでロスった時間取り戻すんだ!」
自「鬼ーっ、悪魔ーっ! 事故っても知らないからねーっ!!」
ニ「なんとか平地になったけど」
自「自転車使い荒いんだから!」
ニ「まぁまぁ……宿まで平地、いける?」
自「うん、でも無理しないでよ? 疲れてそうだし安全運転でね」
ニ「わかってるって」
ニ「日が暮れてきた……グーグル先生っ!」
先生「お呼びですか」
ニ「ネカフェへの道のりを教えて!」
先「……こちらのルートが見つかりました」
ニ「よしこれでいこう」
先「順路の再設定をしております……」
ニ「あれ道間違えた」
自「大丈夫? 暗くなってきたけど」
ニ「まぁ大丈夫だろう」
先「順路の再設定をしております……」
ニ「また間違えた」
自「もう夜になったよー」
ニ「まぁ大丈夫だろう」
先「順路の再設定をst」
ニ「ちくしょぉぉ!!」
自「お、落ち着いて」
ニ「毎回ポーチにしまってると道間違える! 大体わかりにくい道教えてんじゃねぇ!!」
ニ「こうなったら片手スマホで」
自「って前、前!!」
ニ「あ」ガッシャーン
ニ「あいててて……!」
車の運転手「大丈夫!? 私がぶつけちゃった!? 怪我は――」
ニ「いえ僕が不注意でポールにぶつかっただけです!」
運「そう? ならいいんだけど」
ニ「すみません、ご迷惑おかけしましたっ! では!!」
ニ「……ふぅ」
ニ「俺はリュックがクッションになってくれて平気だったけど」
自「うぅぅ」
ニ「大丈夫か? どっか壊れてるとこないか?」
自「前のブレーキ……」
ニ「う、これは、外れてるだけか?」
自「うわぁぁん! 怖かったよぉぉお!!」
ニ「うわ泣くな、泣くなって。今直してやるからな」
自「わあぁぁあん!」
ニ「もうスマホしながら運転しないから、な?」
自「うわあぁぁん!!」
先生「目的地に着きました」
ニ「くっそこいつぶん殴りてぇ……」
自「……」グスン
ニ「一応直したつもりだけど、明日メンテナンスしてもらおうな」
自「……うん」
ニ「それじゃお休み」
【九日目:木曜日】
自転車屋「問題ないよ、少しハンドルがぐらついてたのを直しておいたよ」
ニ「ありがとうございます」
ニ「よかった、変なところ壊れてなくて」
自「気をつけてよー、スマホ運転は危ないんだから」
ニ「はーい」
ニ「しかしとうとう、来てしまったな」
自「来ちゃったねー!」
ニ「東京タワー!」
自「スカイツリー!!」
ニ「長い旅だった……9日間も走り続けてたんだな」
自「初日はどうなるかと思ったけど、ここまで来れたんだね」
ニ「相棒、お前のおかげだよ」
自「あたりまえじゃん」
ニ「そういうところ可愛くないよな」
自「……東京にも着いたし、家出やめて帰るの?」
ニ「そういうわけにもいかんだろ」
自「じゃあ?」
ニ「次は北海道でも目指すか! 一緒に来てくれるよな?」
自「もちろん!」
ニ「それじゃ田舎者には息苦しいから、とっとと次の町へ行こうぜ」
自「あいあいさーっ!」
ニ「しかしツリーの下にある噴水、ロリっ子ショタっ子だらけの天国じゃないか」
自「へ、ヘンタイだーっ!!」
ニ「待て、これは紳士のたしなみで」カメラスタンバイ
自「ヘンタイな紳士さんは自ポ法違反で捕まっちゃえばいいんだ!」
ニ「この楽園に一秒でも長くいたい……ん?」
自「夕立きてるね」
ニ「ぬれる前に出発するぞ」
自「わー走れ走れーっ♪」
おわり
VIPで「チャリで家出したんだが」のスレタイでお世話になってる者です。
このSSは実話を基にしたフィクションです、一応。
旅はもすこし続けますが、大阪から東京までという
本来のゴールへたどり着いた区切りとして書きました。
SSは初めてで読みづらい所もあったと思いますが
読んでくださってありがとうございました。
乙です
まぁ本当なら大変だろうけど、何か見つかるといいな
乙乙
SSを投下する際には1行ずつ開けたほうが読みやすいから次投下する時があったらあけてくれるとありがたい
向こうの誤爆これかw
乙
乙
自転車ポルノ
乙
面白かった
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません