そしてデリヘル嬢に絡まれる(ラノベ風味) (119)
俺のSS処女作です。
先ずは今までに読んできた本の知識を全部引きずり出して書いていこうと思います。(参考サイトとか見ずに、先ずは独学で)
そこで皆からの反応を見て、今後の糧にしていこうかなと
---1---
ピピピピ…
ピピピピ…
うーん、うるせえなあ…
バチンッと俺は目覚ましのてっぺんを勢いよく叩いて目覚ましを黙らせた。
俺の名前は南雲旭。今日から高校生になる。
って…
ヤベッ!!
今何時だよ!?
慌てて目覚ましを見ると、時刻は7時キッカリになっていた。
ヤバイヤバイ、遅刻しちまう…!
俺は急いで着替えをすませて下のリビングへと向かう。
するとそこには、朝食を用意していた母の姿があった。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403867298
「もう、あきらったら初日から何グズグズしてんの!?遅刻するじゃない!!」
朝イチから母に怒られる俺は、急いで朝食にがぶりつく。
ああ、早くしないとホントにヤバイ!!
俺が食べてる最中にもグダグダと言ってくるうるさい母親を華麗にスルーしつつ、ようやく食べ終えた俺は急いで歯磨きにうつる。
そして、
「行ってきます!!」
と一言告げてドアから出た。
すると母親も俺の後に着いてくるようにドアから出てきて、
「いってらっしゃい。気を付けてね」
と言ってきた。
俺は自転車にまたがり、ペダルを強く踏みながら学校へと向かう。
朝からやれやれだ。
学校へ向かう道中には、警察官の寮や、魚屋など、色んな建物が並んでいたりする。
そして、俺がちょっと興味はあるけど、それと同時に少し恐れているのが…
性風俗店の並んだとある繁華街である。
この繁華街は、俺が高校受験する時に初めて知った場所だ。
高校に通うまでこの場所は全然知らなかった。
風俗の案内所の入り口に、
「ヘルス、イメクラ等、バッチコイ」等と書かれていたりしていて、
俺はその「ヘルス」だの「イメクラ」だのの意味が分からなかったので、前に調べたりした事があった。
そうして興味本意に調べていくうちに、俺はちょいとばかり風俗というものに興味を持ちはじめて居たのだ。
まあ勿論まだ15才だから、行ける筈が無いのだが。
風俗店の中は一体どんな風になっているのだろう…
そんな事を考えながら店をキョロキョロ見ていた、
その時だった。
店舗型ヘルスのドアから、俺と同い年くらいの少女が出てきたのだ。
「!?」
俺とその少女はバッチリ目が合ってしまった。
向こうもヤバそうな表情を浮かべて、近くにあった彼女の物と思わしき自転車に乗って、
俺めがけて追いかけてきたのだ。
「ヤバイ…!」
俺は慌てて学校方向へと猛スピードで突っ走った。
「ちょっと待ちなさいよあんた!!」
その少女に追いかけられながらも、俺は必死にペダルを回す。
やがて俺は学校の校門の近くへと来たのだが…
奴はまだ俺の事を追ってきてやがる!?
そして校門の近くの駐輪場に停めたのだが、彼女も駐輪場に自転車を停めたのだ。
「ハァ…ハァ…お前、なんなんだよ!?ここの学生じゃねえだろ!?」
「何いってんのよ、私も今日からここに入学するんだけど!?」
「はぁ!?」
俺はその事実に驚愕した。
「だから、私も今日から入学するんだって。」
「マジ…かよ…」
「あ、あんたねえ、私があの店から出てきた事、皆に言うつもり無いでしょうね?」
「だ、大丈夫大丈夫!!俺は誰にも言わないから!!」
なんなんだよ、なんで朝からこんな目に…!
---2---
そんなこんなで、俺はその少女とクラス表を見に行ったのだが…
「俺とお前同じクラスじゃねえか!!」
そう、俺はこの得体の知れない少女と同じクラスになってしまったのだ。
「ああよかった、これであんたが皆に言いふらさないか監視を出来るわね」
「だから言いふらさないっつってんだろ!!」
「それが信用出来ないのよ!!まあいいわ、早くクラスに行きましょうよ」
不幸だ…
今日は確か、皆の自己紹介とかだけして学校は午前中で終わるんだっけか。
「そうだな、じゃあ向かうとしますか」
やがて、学校の用事を全て終えた俺は、一人で帰ろうとクラスを出ようとした時、
ゴバッ!!
さっきの少女に首の襟元を掴まれ、後ろに引きずられるような形になった。
「いだっ、いだだだっ!!ちょっとお前、何するんだよ!?」
「何一人で帰ろうとしてんのよ、一緒に帰るわよ」
「はぁ、しょうがねえな…」
俺は仕方なく一緒に帰る事にした。
ま、帰るくらいなら別にいっか。
「なあ…なんでお前、あそこに居たんだよ?15才は普通風俗店では働けねえ筈だろ。」
「…理由、聞きたいの?」
「まあ、気になるけど…」
「じゃあ、ちょっと今日家に泊めてくれない?」
と。その少女はあり得ない言葉を放ったのだ。
「…なんだって?」
「だーかーら、今日あんたの家に泊めてって言ってるのよ。」
「ふざけんな!!誰が今日初めて合った少女なんか泊めてあげられるかよ!!」
「だって、聞きたいんでしょ?」
「とにかく無理、泊めるのは無理!!つかお前の親だって心配するだろ、なんで泊めなくちゃならねえんだよ!?別に上がらせるくらいなら構わねえけどさ」
「ホントに!?上がるだけなら良いの!?」
俺の言葉を聞いた途端、彼女の目が爛々と輝き始めたのだ。
「ま、まあ別に良いけどさ」
「ありがとう!!じゃあ帰ろうよ」
そんなこんなで、私こと南雲旭は少女を家に上がらせる事にした。
「お邪魔しまーす」
…しかしどうしよう、親にはなんて言えば良いんだ!?
初めて学校で会った奴と恋人同士になるなんてマトモじゃないし…
「あら…ちょっとあきら、誰なのこの子は!?」
「え、ええと」
「初めまして、私は旭君の彼女です。名前は山本南って言います、宜しくお願いします!」
「ま、まあ彼女さんですか!?でも初めて会ったのに、1日で恋人同士になるなんて…」
ハィィィ!?
ちょっと何いっちゃってんのこの子、そんなの誰も信じる訳ないでしょー!?
「あきら、本当なの?」
「嘘に決まってんだろ!!こいつとは今日たまたま学校で同じクラスになっただけで…ちょっと話があんだよ」
「そうなの?まあ深い事は気にしないわ、ゆっくりしてってね」
「ありがとうございます!!」
はあ…なんなのこの展開…
---3---
「これが俺の部屋だ。ちょっと汚いけど我慢してくれ」
「あ、別に気にしないわよ。へーきへーき」
「ありがとう。…でさあ、お前はなんであの店から出てきたんだ?」
俺はずっと気になっていた事を口に出す。
「あたしね、あの風俗店で働こうと思ってるのよ。以前にもあそこの店に応募して、今朝面接してきたってワケ」
「いやいやいや、15才は性風俗では普通働けないだろ。つか店側はお前の事なんも言わなかったのかよ?」
「…私ね、中学生の頃はJKリフレで働いてたのよ」
その少女は驚きの事実を次々と繰り出してくる。
「はあ!?なんで中学生をJKリフレが雇うんだよ!?誰が聞いたっておかしいだろうが!!」
「…私は周りから見て、容姿が大人びてるから、中学生だけど高校生くらいに見えてたんでしょ。」
そういえばこいつは確かに大学生っぽく見えるな。
確かに容姿は大人びている気がする。
「けど、働くには履歴書とか必要だろ?後、自分の身分とかも書かないといけないだろ。
そんなら、お前が今高校生だって事いずれかはばれちまうんじゃねえのか?」
「だから、生年月日とかも全部偽ってるのよ。結構めんどくさいんだけどね。
制服姿を街中で店員に見られるのも非常にまずいわ」
「めんどくさいって、そりゃ面倒だろうがよ…で、今のところ相手には素性はバレてないのか?」
「そうよ。だからこれからあそこで働くつもりなの」
と、その少女は何事もないかのようにいう。けど…
「なんで身分を偽ってまで風俗で働こうとしてんだよ!?お前まだ15才だろ?これからの人生は長い。そんな若くからそんな汚い店で働いてたらきっと失うものだってたくさんある!!なんで風俗なんかで働こうとしてんだよ!?」
「別に風俗店は汚くなんかないわよ?毎日清掃もちゃんとしてるし」
「そういう事を言ってるんじゃねっつの!!汚いの意味間違えてんぞ!!」
「?」
「…まあいい。なんでお前は風俗なんかで働こうとしてんだ?」
「……うちね、そんなにお金無いのよ。親も離婚してて、
今はお母さんが私を一人で育ててくれてるの。私もお母さんに迷惑かけたくなくて…だから…」
「バッカ野郎が…!」
俺はふつふつと心の底から沸き上がってくるものを抑えきれずにこう言う。
「そんな方法で得た金で養ってもらって、それでお前の母さんが喜ぶとでも思ってんのか!!」
「さっきからうっさいわね!!なんなのよ急に!!」
突然きれはじめたこいつに俺は思わず怯んだ。
「じゃああんたは風俗に興味は一ミリたりとも無いわけ?」
「えっ…」
俺はそこで口をつまらせる。そうだ。俺だって風俗には少し興味はある筈だ。
「そ、そりゃまあ、ちょっとは行きたいとか思った事はあるけど…」
「じゃああんた、私を糾弾する資格なんか無いんじゃないの?」
「はあ?俺は利用する側だぞ。お前らは経営者だ。利用する側は別に普通だが、
体を売ったりする側はマトモじゃないだろ。働いてるのはマトモな奴じゃない。でもお前はまだ若いし…」
自分でも言ってて無茶苦茶な理論だとは思ってる。けど…
「は?なにその低脳丸出しな無茶苦茶な理論は。」
彼女からもそれを指摘されてしまう。
「良い?性風俗店に限らず、店ってのは利用者と供給者が居て初めて成立するものなのよ。
これが総意かどうかは分からないけど、少なくとも私はあんたらに
介護みたいにサービスをしてあげたいとも思ってるのよ」
俺の部屋に彼女の声だけが響く。
「…」
「需要があるから供給する人が居る。てことはお互い様じゃない?片方に片方を糾弾する資格なんてないと思うけど」
正論だった。俺は何も言い返せないまま、彼女の言葉を聞き続ける。
「そして、そういう意思を持った人達に年齢なんて関係ないのよ。
働きたい意志があるなら、何歳が働いたって良いじゃない」
「そうだな。確かにそうかもしれない。俺も利用したいと思ってる以上は、お前の事を糾弾する資格なんざねえのかもな」
「分かってくれた?」
互いに落ち着き、俺達は冷静に言葉を交わしていく。
「ああ、分かったよ。」
「そう、ありがとね。あとさ…」
彼女はもじもじしながら何かを言いたそうにしている。
「な、なんだよ?」
「…あんた、風俗に興味があるのよね?」
「まあ、あるけどさ…」
「じゃあさ…」
彼女はまるで俺に愛の告白をしようかどうか迷っている調子で俺に話しかけてくる。
「…な、なんだよ?」
「私の店で、一緒に働かない?」
……
「はい?」
「だーかーら、あんたも一緒に働かないって言ってるのよ」
「無理に決まってんだろ!!第一俺は年齢とか身分偽って働く気はサラサラねえ!!」
「え?風俗では男性は他の普通のバイトと同様に15才からでも働けるわよ?」
「ミエミエの嘘つくな!!」
俺は呆れを通り越してついつい怒鳴ってしまう。
「大体、なんで俺なんかと一緒に働きたいんだよ?俺は利用したいとは言ったが、働きたいとは一言も言ってねえぞ」
「いや、別に働くのと利用するのは兼ねる事は普通に出来るのよ?」
「そりゃそうだけどよ…」
「いや、興味あるんなら、高校生が私だけだと心細いから一緒に働いてくれないかなーって…」
「無理!!俺は身分偽ったりするのは無理!!そりゃ、お前の事は少し心配だけどさ」
「あら、心配してくれるの!?」
「おう」
なんたって15才で年齢偽って働いてる奴なんか、
いつ身分がバレて警察につき出されるかを考えるとこっちまでビクビクせざるを得なくなるからな。
「ははは!!冗談よ冗談。あんたまで私の事情に巻き込むわけにはいかないしね…」
「…」
「なんか色々とありがとね。今日私早速18時頃から仕事入ったから、
いつまでもここに居るわけにはいかないわ。じゃあそろそろ帰るわね」
「お、おおマジか」
「うん。…私、中1からJKリフレで働いてたから、高校に入学したら大学生だと思われるわけだから、
高校に入学したら必然的にJKリフレで働けなくなるじゃない?風俗店って、JKリフレみたいに楽なのかな…
危なくないのかな…なんてたまに考えたりするのよね。本当は私少し怖いのよ。」
だろうな。やっぱり本当は怖かったんじゃねえか。
「でも、それでもお前は風俗を選んだんだろ?苦しい母さんを助けたくて…」
「うん。だからこんな事でビクビクしてちゃダメね!あ、じゃあ私もう帰るね」
「ああ、じゃあ玄関まで送ってくよ。」
「ありがとう。」
そうして俺達は階段を降りて玄関まで行った。
「お邪魔しました!」
すると台所で晩御飯の準備をしていた母さんが出てきた。
ってか俺達、昼飯まだ食ってないし。すっかり忘れてた。
「はーい、気を付けてね!」
「ありがとうございましたー」
俺と彼女は玄関を出た。
「なあ。確か山本だっけ?困った事があったらまた家に来て良いからな!!」
「うん!今日はありがとね!」
山本は自転車に乗って家に向かって行ったようだ。
…そういやあいつ、親にはちゃんと風俗で働いてる事ちゃんと伝えてるのか?
はあ疲れた。
昼飯まだだったし、ちょいと冷蔵庫で冷やしてある白米をレンジで温めて、フリカケでもかけて食うか。
そんなこんなで、飯を食べた後にゲームとかをやったりしているうちに、時刻は18時。
ゲームに飽きた俺は、暫くベッドの上でゴロゴロしていた。
…あいつ、確か今頃あそこで働いてるんだっけ?
今日は学校初日から大変だった。まさか15才の風俗嬢がクラスメイトだなんて。
世の中色んな奴が居るもんだな。
………
でも、風俗ってあいつが言ってた通り、結構危険な場所なんだよな。
あいつ大丈夫かな?
………
やっぱり普通じゃない。
どんな理由があったとしても、15才が身分を偽って風俗で働くなんてマトモじゃない。
そんなのダメだ。
今すぐに止めに行かなきゃダメだ!!
こんな事をしている場合じゃない。
俺は急いで下に降りて行った。
---4---
「母さん、あいつ財布を忘れてったみたいだから、俺今からあいつの家に届けてくるわ!」
「あら。でもその子の家の場所知ってるの?」
ウッ…
しまった。俺はあいつの家の場所なんか知らない。でも、ここは嘘を突き通さなければ…!
「あ、ああ、今日俺とあいつメアド交換してさ、確かにあいつん家分からないから学校で集合するわ!!」
「そう。気を付けてね」
「じゃ、じゃあ行ってきます!!」
俺は急いで自転車に股がり、通学途中にある例の繁華街へと向かう。
「ハァ…ハァ…」
あまりにも急いでいた為、俺はすごい息切れを起こしていた。
確か、あいつが今日出てきた店は…
…え?なんであそこにパトカーが沢山止まってるんだ?って…
パトカーが止まっているのは、今日彼女がドアから出てきた店だった。
嘘…だろ…?
なんでパトカーが居るんだよ!?
まさか、山本になんかあったのか!?
俺は急いでパトカーのもとへと走り寄る。
「すみません、お巡りさん、なんかこの店であったんですか!?」
「ああ、ちょっと客が女性にルールを破った行為をしてしまってね」
その警官は淡々と告げる。
「で?君になんの関係があるんだい?」
「あの、俺のクラスメイトがそこで働いてるんです!!まさか…被害にあったのは、山本って奴ですか!?」
「ああ、そうみたいだ」
なんだよ…
なんなんだよ!!
早速被害にあってんじゃねえか!!
「ん?ところで君、今クラスメイトとか言ったね?」
…!!!!
しまった!!パニクってつい事実を口にしちまった!!
「君、高校生くらいに見えるけど、あの人と同じクラスなのかい?」
「………」
どうする、どうすれば良いんだ!?
「クラスメイトか…君も、高校生が風俗で働くのは法律上禁じられてるって事ぐらいは知ってるよね?」
「いえ、俺は大学生です」
「とてもそうは見えないけど?まあいい、君にも一緒に来てもらおう」
マズイ…
このままだと、あいつは刑務所につれてかれちまう…!
俺のせいで…!
俺達は店の奥まで入っていった。
そして受付のところには、25才くらいの男性と…
山本ッ!!
25才くらいの男性は絶望にまみれた顔をして、警察官達をただ呆然と見ていた。
そうか、こいつが山本に被害に合わせた奴なんだ。
「…旭!?」
山本は何故此処に俺が居るんだ、といった調子で俺を見つめている。
「山本!!お前大丈夫か!?」
「ちょっと君!!静かにしたまえ、今から事情聴衆をするから!!」
警察官は俺達を遮るように言う。
「貴方が此処の店長かい?」
「はい、そうです」
警察官が発した言葉の先には、20才くらいの長身の男性が立っていた。
「で?彼がこの子に本番行為を強要したって事で間違いないのかね?」
「はい、間違いありません。個室から悲鳴が聞こえてきたので、慌てて店員が駆けつけたところ、
もう少しで彼女が彼に押し倒されようとしていたところでした。」
「…そうか」
警官は山本に被害を合わせたと見られる男性をきっと睨み、
「あのね君、店のルールに従わないとこうやって逮捕されるって事ぐらい分かっていただろう?
何故こうやってルールを破るのかね」
「…本当に申し訳ないと思ってる。自分の欲が抑えられなかったんだ」
「本番行為がしたいなら本番行為が可能な店に行けば良いだろう?住み分けはキチンとしてくれなきゃ困るんだよ」
「…分かってる」
随分と素直に認める男性だなと思いつつも、俺は男性をきっと睨みつける。
しかし。
「まあ、この被害者の子にも問題はありそうなんだけどね」
突如、今の今まで怒りに震えていた俺の心は一瞬で深い不安に落とし入れられた。
その警官の一言によって。
「え…?」
警官に身元はばれていない筈だと思いつつも、嫌な予感が頭をよぎり、不安な気持ちにかられる山本。
「君がこの少年のクラスメイトだというのは本当なのかな?
さっきこの少年が自分のクラスメイトだとかなんとか言っていたんだが」
「いえ、違います!!この人とはなんの関係もありません!!」
「うーん、話が食い違っているな…とりあえず、君の家に上がっても良いかな?
君が被害にあった事を君の親御さんにも伝えなきゃならないし、君が本当に高校生じゃないなら、なんら問題は無いと思うが?」
マズイ…それだけはマズイ!!
「あの…私、親には内緒で此処で働いてるんです。だからそれを親に伝えたら、
親だってどんな反応をするか分かりません!!だから、家には来ないで下さい!!」
こいつ、親に伝えてなかったのか。いや、それとも来てほしくないから嘘をついているのか?
「そうか…」
少し考える警官。
「しかし、この店の規約では、自分の親にも此処で働くことをちゃんと伝えるとあったが?」
何だって!?
マズイ、山本が慌ててボロを出しちまった!!
「行くぞ」
その警官は他の警官に合図を送った。どうやら本当に山本の家に行くようだ。
---5---
ここは山本の家。家の中にズカズカと警官達は入っていった。
どうやら中で事情聴衆をしているらしい。
俺は中の様子を知らされる事も無く、ただ玄関でぼうっと突っ立って居ることしか出来なかった。
「…ちくしょう」
俺があんな事を言わなければ、山本は逮捕されずに風俗で今後も働けていたかもしれない。俺のせいで山本は逮捕されちまう…!
いやでも、山本に風俗でなんか働いてほしくないからこそ俺はここに来たわけだし…
でも、だからって何もこんな形で山本の人生を終わらせて良いって事にはならねえだろうが!!
俺は頭の中で自問自答を繰り広げる。
と、その時だった。
山本の家のドアから、警官達と一緒に山本が出てきたのだ。
「まだ君はあそこで働いて1日しか経ってないから、今回は見逃してあげよう。その代わり、
もう二度と身分を偽ってまで働こうとしたりするんじゃないぞ。次はないからね?」
「…はい」
山本は顔はぐしゃぐしゃになっていて、泣きじゃくっていた。
待てよ?
って事は、今回はあいつは逮捕されないですむって事か!?
「…今後はもう二度としません」
山本はひっくひっく言いながら、それでも必死に言葉を紡ぎ出す。
「分かってくれたか。それじゃ、私達はこの辺で」
警官達はこっちに向かってくる。
警官達がパトカーに乗って見えなくなるところまで行ってしまった後。
山本はフラフラとこっちに近付いて来た。
「なんでよ…」
山本は目に少しだけ怒りを浮かべ、
「なんで私の身分をバラすような事言っちゃうのよ!!あんたのせいで…あんたのせいで私、
あそこでもう働けなくなったじゃない!!お母さんにもバレちゃったし!!」
「ごめん…つい口が滑っちまったんだ。けど俺、この結果で良かったと思ってるよ」
「何?どこが良かったと思ってるの!?」
「…俺、お前に風俗なんかで働くの、やっぱりやめてほしかったんだ」
「あんた賛成してくれたんじゃ無かったの!?何を今更ッ!!」
「なあ、お前風俗なんかで働かないでさ、別のバイト探したらどうだ?その方が普通の高校生らしいし、親だってきっと喜ぶと思うぞ」
「私は…私は」
彼女は震えながらも言葉を紡いでいく。
「私は風俗で働きたかったんだあああああああああああ!!」
彼女の大声が夜空に響いた。
行間あけてくれないとすげー読みにくい
内容は面白いけど読みにくいな
続きが気になる内容ではある。でも確かに読みにくい
擬音から始まっていきなり名乗りをあげるのは何の本から得た知識なんだ
---6---
ピピピピ…
ピピピピ…
うーん、うるせえなあ…
バチンッと俺は目覚ましに激しいチョップを喰らわせた。
ああ、なんか昨日の事があってか、全然眠れてない気がする。寝起きが最悪の状態だ。
あれから俺は、トボトボと自転車を転がしながら帰っていった。なんか、自転車に乗る気にはなれなかったんだよな。
ああ、今日も山本と顔合わせるのか…
気まずい、気まず過ぎるッ!!
「あきら、早く降りてきなさい!!また遅刻するわよ!?」
おっとやべえ、また昨日みたいに遅刻ギリギリに登校する真似は控えなくては。
「はーい」
俺は急いで着替え、支度をし、下に降りて行った。
「あんたも学習しないわね、ホラ早くしなさい!!」
「うん…」
俺は母さんに怒られつつも急いで朝食を口に書き込む。
「あんた目覚ましを設定する時間がギリギリなのよ、もっと早くに設定しなさい」
「うん…」
「どうしたの?なんか元気が無いみたいだけど…」
「え!?いやいやそんな事無いって!!ほら大丈夫!!この通りピンピンしてるから!!」
「いや、体の事じゃなくてね、あんたどよんとしてたからなんかあったのかなって」
「いや、何も無いって!!心配すんなよ!!」
「そう?なら良いんだけど…」
俺は必死に母さんを誤魔化し、洗面所へと向かう。3分後、歯磨きを終えた俺は自転車の鍵を手に取り、玄関のドアを開ける。
「行ってきまーす」
「はい、気を付けてね」
「…ねえ母さん」
「何?」
「…高校生が性風俗で働くのって…どう思う?」
俺は思いきって、心の中に溜まっていたモヤモヤを吐き出したいがために、母さんに聞いてみる。
「……は?」
母さんは少しだけ考えてから、
「普通高校生は風俗でなんか働けないでしょ。あんた何言ってるの?ってあんた、やっぱりなんかあったんでしょ!?」
「いや、やっぱりなんでもない!!今俺が言った事全部忘れて!!じゃ行ってきます!!」
「ちょっとあきら、待ちなさい!!あきら!!あきらったらあ!!」
俺は慌てて自転車に股がり、猛スピードで学校方向へと全力でペダルをこぐ。
はあはあ…
やっぱり母さんになんか聞くんじゃなかった!!
やがて見えてきたのは例の風俗店が並ぶ繁華街だった。
「……」
俺は、今日どんな面を下げて山本に顔を合わせりゃ良いんだよ…
---7---
「…休み?」
出欠を担任の有野先生が全員分とり終わった結果、山本は今日は欠席だという事が判明した。
あいつ、あの後親となんかあったんだろうけど…
欠席したって事は、まさか先生にも山本が風俗で働こうとしていた事を伝えたのか!?
無断で欠席するなんてのはあり得ないだろうし…
「はい皆さん、それでは今日は教科書とか配布物を配ったりしたいと思いますので、
数人先生と一緒に配布物を取りに来てくれる人、居ませんか?」
するとそこで5人くらいの生徒が手を上げた。
「皆協力的で助かりますー。でも後一人来てほしいなあ…じゃあ、南雲君お願いできるかな?」
「あ、はっはい!」
何故に俺!?
てか今はそんな気分じゃないのに…
「じゃあ6人の人達は私に着いてきてちょうだい」
そんなわけで俺は、他の5人と一緒に職員室へ向かった。
>>35
「ガッシ!ボカッ!」アタシは死んだ。スイーツ(笑)
我々の担任であるこの有野先生は、結構スタイルも良く、美人さんである。
頭の上では黒い髪を二つに縛ってあるところがまた可愛らしい。
数分後、職員室から出てきた俺達は、せっせと重いテキストや配布物を運ぶ。
教室に着いた俺達は、やっとこさ手の苦痛から逃れる事が出来た。
しかし、教室に来る途中に有野先生は、俺にこう耳打ちしてきたのだ。
「南雲君、後でまたちょっと職員室に来てくれる?」
「あ、はい」
…嫌な予感がする。
まさか山本の事か!?
「はーい、じゃあ皆さん席に着いて下さい」
有野先生の鶴の一声で、おしゃべりしていた生徒達は一瞬で席へと着いた。
「それじゃあ、今からこの配布物を順に配っていきますので、ペンで名前を書いたりして下さいねー」
先生が配布物を配るのか…
別に運んだ俺達がそこまでやっても良かったんだがな。
前から流れてくる配布物を俺は後ろに回しつつ、名前を書いていく。
そこで、あるプリントが目に入った。
「……」
これは…
この学校では、繁華街等の危険な場所に行く事は禁じられているらしい。
俺が目を通したプリントには、この学校のルールが書いてあった。
大学生になったらもっと開放的になるのかな…
「はーい、皆に行き渡ったかな?」
有野先生は配布物が全員に行き渡ったかどうか確認する。
どうやら大丈夫みたいだ。
「はい、じゃあ先ずはこのプリントを見てね」
先生が掲げたそのプリントは、俺が今見ていたこの学校のルールが書いてあるプリントだった。
「皆さんの大半が自転車登校だと思うんだけど、」
先生が口火を切った。
「この辺って危ない繁華街が結構あるじゃない?だからね、皆さんにもこういう所には近付いて欲しくないなっていうのが、
先生達のお願いであり、ここのルールでもあるのです」
俺達は黙って先生の話を聞き続ける。
「あのね、実は最近、風俗店で15才の女の子が働いてて、
それで警察に取り調べを受けたって事件があったんですよ」
クラス内がどよめいた。皆驚いている。
どう考えても山本の事だ。やっぱり山本の親は先生にあの事を伝えたんだ…!
「その子は年齢等を全部偽っていた訳です。で、その子は客の男性から被害を受けて、
そこで身分がバレてしまった訳なんですが…」
…完全に山本の事だ。
「まあ、その子はまだ働き始めたばかりだったので、逮捕はされなかったんですけどね。
警察官にはマークされているみたいですが」
…でも、この事と生徒達に繁華街で遊ばないように促すのは、なんか違う気がするんだが。
「まあ皆さんの中には働こうと考えたりしている女の子は居ないとは思いますが、
スカウトマンとかも居るので気を付けて下さいね。男子生徒も、風俗は勿論、繁華街には行かぬように。」
そう締めくくりますか…。
「というわけで、先生の話はこれで終わりです。じゃあ、後は大掃除をして、
またホームルームやって、今日は下校ですね」
先生の低めの声の話はこれにて終了。
そして、皆は用意されていた掃除の表を見て、自分達の掃除場所へと移動していく。
俺も行こうとした、その時だった。
「あ、南雲君はしなくて良いのよ。今から職員室に来てくれる?」
「あ、今からですか…」
…俺に一体何を聞くつもりなんだ?
俺はうっかりあいつがまだ高校生だって事を言っちまって…
そんな事を考えながら、俺は先生に着いていく。
職員室に入ると、有野先生と思われる机に案内された。
「大体話したい事の内容は分かってる?」
「…多分、ですけど」
だって、さっきの話からして明らかに山本の件以外に思い浮かばないだろ。
「…もしかして、今日休んだ山本の事ですか?」
「そう、それの事」
…やっぱりそうか。大体予想はついてたんだけどな。
「今日彼女が休んだ理由も当然分かってるよね?」
「はい、さっき先生は、皆に山本の事を話していたんですよね?」
「そうだね。で、南雲君も店に行ったみたいだけど…それはどうしてなのかな?」
「俺はあいつを止めようとしたんです。実は、昨日の朝にあいつがあの店から出るとこ見ちゃって、
それで学校が同じ事も分かって…で、あいつが今日から働くって言うから、一度は賛成しかけたものの、やっぱり止めに行って…」
「……」
先生は暫く黙って俺の話を聞いていた。
「そしたら、あいつの店の前にパトカーが沢山止まってて…」
「あのね、南雲君」
すると先生は、そこでようやく俺の話を遮った。
「なんで貴方は、最初から全力であの子を止めなかったの?そうしていれば、あの子が被害に遭う事も無かっただろうし…」
先生の瞳にはかすかな怒りさえ感じられた。
「俺も最初は必死で止めようとしたんです。でも、あいつの怒りに気圧されちまったっていうか、その…」
「気圧されてでもなんでも、とにかく全力で止めるべきでしょ、そこは。良い?これは貴方にも責任があるんだからね」
「は、はあ…」
…俺、そこまで言われるような事したか?
いやでも、しっかりと止められなかった俺にもやっぱり責任はあるか。
「15才が風俗で働くのは立派な違法行為です。あなたはそれを助長してしまったんですよ。
とりあえず今日、先生達と一緒に山本さんの家まで来てもらいますからね」
「え…山本の家に、俺も行くんですか!?」
「そう、貴方も来るの」
「…はい、分かりました!」
最初は躊躇っていた俺だったが、自分の責任感により、脳内のスイッチを切り替え、山本の家に同行する事を決意する。
「じゃあ、早速今から来てもらうけど、良いね?」
「今からですか、分かりました行きます!!」
…こうなったら行くしかねえ。行って先ずはあいつの様子から確かめる!!
---7---
ピンポーン。
玄関の前でチャイムの音がこだまする。
「はーい、どうぞー」
チャイム越しに出てきたその声は、山本の母さんの声だった。
どうやら俺達の事を待っていたらしい。
「お邪魔します」
そう言って俺達は山本の家に上がり込んだ。
「はい、いらっしゃい。あ、貴女が南雲君ね。私が南の母です。宜しくね」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。」
俺は慌てて頭を下げた。
この人があいつの母さんか。あいつに似て結構可愛いな。
「じゃ、今から私はお茶を用意するから、待っててね」
俺達はリビングルームへと案内され、そこで暫く寛いでいた。
山本は…どこだ?
「はーい、お茶が入りましたよ。」
暫くして、台所から山本の母さんがおぼんにお茶を3つのせてやって来た。
山本は…居ないのか?
「あの、山本は…?」
「ああ、あの子はちょっと今部屋から出たくないみたいなのよ。だからそっとしておいてあげてくれない?」
「はあ…そうですか」
仕方ないか。知らないおっさんから被害に遭ったり、母さんに風俗で働いてる事がバレたり、
散々な事があったんだからな。無理もない。
「じゃあ、そろそろ話に移りたいと思いますが」
そう言ったのは有野先生だった。
「先ず、私の考えとしては、南雲君が山本さんの今回の事件を助長してしまったと考えています。
なので、私は南雲君と山本さんを暫くくっつけて、仲良くしてもらい、
山本さんの男性恐怖症を予防したいと思ってます。既になってないと良いんですけど…」
な、俺と山本が暫くくっつくって…
それ絶対回りから誤解されんだろ!
「ちょっと待って下さい先生!!」
俺がそう言って立ち上がろうとした時だった。
「あら、別にそんな事しなくても良いんですよ?」
そう言ったのは山本の母さんだった。
「私も、なんとなくあの子が今まで風俗で働いてたんじゃないかなーって思ってましたもん」
…なんだって?
「過去に、働いていた…?」
しまった!!有野先生はまだ山本がJKリフレで働いていた事を知らない!!
「南雲君も、南から聞かなかったの?JKリフレで働いてた事」
「……」
なんだ?山本の母さんはなんで山本がJKリフレで働いてる事を知ってるんだ!?
「あら、JKリフレってのはテキトウに言ってみただけなんだけど、
まさか本当にあの子働いてたの?道理でいつも曇った表情してると思ったら…」
「……」
有野先生も思わず絶句している。
「…あんた」
俺はひしひしと怒りが込み上げてくるのを実感する。
「あんた、なんで山本の異変に気付きながらも風俗で働いてる事を聞いたり、
止めようとしなかったんだよ!?あんたあいつの親なんだろ!?だったらなんで…」
「だって…」
山本の母さんは俺の怒鳴り声にも怯まず、至って冷静を保っている。
「あの子がどうなろうと、私には所詮関係ないのよね。ああ、
なんであの親父といい南雲君といい、私を責めるのかしらん」
親父…
まさか離婚した山本の父さんの事か…?
「テメェ…」
俺はもう、止まらない。
「山本をなんだと思ってやがる!!あいつは…あいつは、テメェのたった一人の大事な子供じゃねえのかよ!!
そんなんだから山本の父さんともいざこざがあって離婚しちまったんじゃねえのか!?」
「ああもう、ちょっとうるさいわよ、南雲君」
それでも…
俺がどんなに怒りを訴えようとも、こいつは冷静さを崩さない。
「私も最初はあの子の事可愛がってたのよ?でもなんか年がたつにつれて面倒臭くなってきてさー…
まあ、確かに君のいう通りいざこざがあって別れたんだけど…要するにね」
こいつはちょっと間を空けてから、
「最初から私は、あの子の事をオモチャくらいにしか思ってなくてよ?」
奴がその言葉を発した瞬間、俺の目の前が光に包まれたように白くなった。
「この…クソ親がアアアアァァァァァァァァァ!!!!」
俺は真っ直ぐにこいつに突進し、握りこぶしを振り上げる。
と、その時だった。
「グァッ!?」
「南雲君、落ち着きなさい!!」
気が付けば、俺の体は有野先生の手によって羽交い締めにされていた。
「でも先生!!今のこいつの発言はどう考えたって許されるものではないでしょう!!」
「確かにそうだね。でも、だからといって暴力が許される事にはならないと思う」
有野先生は至って冷静だ。しかし、そんな有野先生もやがて俺の事を放してくれて、山本の親をきりっと睨んだ。
「あの、ひとつお伺いしたいのですが、山本さんが貴方にとってどうでもいい、
オモチャでしかないと言うのはどういう事でしょうか?
あの子を別に虐げてるようにも見えないし、さっきも山本さんの事を気遣っていたように見えますが?」
「まあ、私も一応南の親ですからねー。取り敢えず義務はちゃんと果たすつもりでは居ますよ」
ただし、とこいつは付け加え、
「まああくまでも機械的にですけどねー。あーあ、最初から赤ちゃんポストにでも入れとけば、
今頃こんな面倒な事にはならなかったかもしれないのに」
「おい」
俺は冷静モードからまた怒りモードへと突入していくのを実感する。
でも、今は冷静モードのふりをしている。何故なら、俺が怒っていると知った瞬間、
有野先生にまた羽交い締めにされそうだからだ。
「あんた、山本のことなんざどうでも良いんだろ?」
「え?まあそうだけど」
「そうか。でもな」
直後。
「世間一般ではあんたみたいな奴こそどうでもいいを通り越した、クズ野郎なんだよ、このクソ野郎が」
俺はこいつに強烈なビンタを喰らわせる。
「イダッ!!」
甲高いこいつの悲鳴が響き渡る。
「じゃあ俺は山本の部屋に行ってくるわ。」
そう言って俺は二階へと上がっていった。
コンコン。
「おい、山本、俺だよ南雲だよ。ちょっと入ってもいいか?」
暫くしてから、山本の部屋のドアが開いた。
「どうして…あんたがここに…?」
「山本、無事で良かった。お前大丈夫か?」
「うん、平気…」
なんだろう、なんか具合悪いっぽいぞこいつ…
「なあ、お前、男性恐怖症とかになったって、本当か?」
「いや、ちょっと男の人が少し怖いだけ。そんなに大袈裟な病気じゃない。
でも、旭とかみたいな顔見知りとかなら全然平気」
「そうか…」
やっぱり有野先生の言ってた事は本当だったんだ。
「なあ、もうひとつ聞きたい事があるんだ」
「なあに?」
「…お前、自分の母さんの事どう思ってるんだ?」
「え、どうって…?」
と、その時だった。
「はあ、南雲君とあの人と私で山本さんをどうにかしようと思っていたのですが…ダメみたいですね」
有野先生が入ってきたのだ。
「え、ダメみたいですねって、何がですか?」
恐る恐る尋ねる山本。
「あのねえ…山本さん、貴方、自分のお母さんの事どう思ってるの?」
「え?なんで旭と同じ質問を…?」
「あの人はね、貴方の事を単なるオモチャみたいな存在って言ってたのよ」
直後。
「…はい?」
何を言われたか訳が分からず、ポカンとする山本。
…やっぱりあのクソ野郎は、山本の前では一応普通の親の面してたのか。
「先生は何を言ってるんですか?私のお母さんは、そんな事は言いませんよ?いつも優しいし…」
「じゃあ、確かめてみる?」
「え…?」
またしてもポカンとする山本。
「まあいいわ、取り敢えず貴方と南雲君には、暫く一緒に行動してもらいます。その理由が、さっき増えたようですしね」
「…え?」
「と言うわけで、今日から早速山本さんは南雲君の家に泊まって下さい。この家に居ても、何も良い事はありませんので」
---8---
結局また泊まりに来るのか、こいつ…
あの後有野先生は、電話でこの事は俺の親にも伝えてあると言ってきた。
「ただいまー」
「お邪魔します…」
しかし、風俗で働いてた少女なんか、簡単に上がらせてくれるのか?
「あら、いらっしゃい」
母さんが出迎えてくれた。
「全く…昨日もなんか変だと思ったら、貴方風俗で働いてたのね。お母さんを助ける為に…
でも、そんなお金で養ってもらったって、普通誰も喜ばないわよ?」
「…私も、まさか自分の親があんな人だなんて思ってませんでした」
「え?どういう事?」
「いえ、なんでもありません」
そそくさと山本は階段を上っていってしまう。
「ああ、ちょっと待て山本!」
俺も慌てて追いかける。
先ずは、飯を用意しなくちゃなんねえな。部屋を片付けてからまた降りてくるか。
「大丈夫か?具合悪くないか?」
俺は山本を看病するような目で見つめながら言う。
「ううん、大丈夫。あっそうだ、私お金あるし、今から近くのコンビニでなんか買ってくるよ!」
「え?うちにひやごはんとかあるぞ?」
「良いの。なんか悪いし、私買ってくるね!」
「ああ、じゃあ頼む!おにぎりでもなんでも良いからな!!」
「うん!」
俺は悪いと思いつつも、つい自分の食べたいものの名前を口から発してしまう。
バタン、とドアが勢い良く閉まった。
なんか申し訳ねえな…
はあ、旭ったら私の事を心配して今日家に来てくれたんだあ…
なんか悪いな…
そんなことを考えながら私は近くにコンビニがないか辺りをキョロキョロ見渡す。
そういや私、ここら辺の事良く知らないのよね…
はあ…それにしても、お母さんからあんな事言われるなんて…
あれ?どうして私、泣いてるんだろう…
なんで?なんで泣いてるの?
と、その時だった。
「もしもしお姉ちゃん、どうかしたの?なんか悲しそうだけど」
見ると、そこには細身の長身の男性が立っていた。黒いスーツを身に纏っている。
「なんか相談にのってあげようか?」
「あの…」
しかし、どこの誰だかも分からないような人間に、こっちの悩みなど話す義務もない訳であり、
「貴方誰ですか?悩み事は確かにありますが、貴方には関係ありませんので」
「まあまあ、そう言わずに。他人に話すと楽になるよ?まあ、君が可愛いからナンパをしてるんだけどさ」
ナンパ…?
その言葉に山本南はハッと辺りを見渡す。気がつげばここはレストラン等が並ぶ繁華街にまで差し掛かって居たのだ。
ここはあの風俗街とは無縁だが、知っている。
ナンパ通りだ。
「あの、私すぐに用事を済ませて帰らなきゃならないので」
「いやいや、ちょっとだけ付き合ってくれないかな?」
しつこい、この男性は果てしなくしつこい。
「あの、私の事待ってる人が居るので。急がないといけないんですよね」
「ああそうなの?でも5分くらいで終わるからさ、ちょっとどっか寄ってかない?」
「嫌です」
どこかに食べに行くのに5分で済む訳がない。
そんなことは熟考せずとも分かる。
「それじゃあ、さようなら」
「ああ、待ってったら。てか君を待ってる人って、もしかして彼氏さん?」
そこでピタリと山本の足が止まった。
何故そんな事を聞くのだろう。
「確かに男ですけど、違います。というかなんでそんな事聞くんですか?」
「いや、彼氏だろうが彼氏じゃなかろうが、仲の良い男の子の事で悩んでるなら、
俺そういう悩み事聞くの得意だからさ?」
男性は意味不明な事を言う。
この男は、さっき山本をナンパすると言った。
それは、運良くば山本と交際する事を意味しているのではないか。
それなのに、今この男は山本と仲の良い男との仲を取り持つような事を言ってきた。
これはどういう事だ?
「…は?さっきと発言が矛盾してますけど。第一私は彼とは仲は普通に良いので。本当にしつこいですよ、それでは」
と、山本がスタスタと歩き出した時だった。
「いやいや君、俺に近付かれた時、なんかビクビクしてたっつーか、怖がって間を空けてたような気がしてさ…
もしかして男性恐怖症なんじゃないかなっておもってさ」
ゴバッ!!と。
背中から得体の知れない圧力が山本に襲いかかる。
山本は思わず振り返った。
「貴方…何故それを!?」
「あーやっぱり当たった?いや俺さ、そういうの専門だからさ、もしかして君が男性恐怖症なんじゃないかなーって思った訳よ。」
その男は微かに笑みを唇に浮かべながら続ける。
「で、君、その男の子は大丈夫なのかい?俺はそれをなんとかしてあげたいと思っててさあ…
どんなに仲が良くても、たまに恐怖を感じたりしない?」
「…ッ」
山本は少し考える。もしかしたら、この人は優しい人なんじゃないだろうか。
確かに、彼女自身、南雲に恐怖を感じる事も少しはあったのだ。
「本当に…」
彼女はやがて口を開く。
「本当に相談に乗ってくれるんですか?」
「勿論だよ」
その男性はニッと笑い、
「すぐそこに車がある。ついておいで」
---9---
車で連れられた先には、一見何の店だか分からない建物が沢山並んでいた。
しかし、風俗店のように、R-18のマークが店の外に貼り出されて居るわけでもなく、普通の店のようだった。
「ここで降りるぞ」
降りたのは公共の駐車場だった。
「さあ、こっちだ」
「あの…」
山本は恐る恐る尋ねる。
「ここ、本当に飲食店なんですか?」
「まあ、一応あるよ」
…一応?
「ここはマッサージ店の集まりさ」
直後だった。彼女の周りに大勢の男性が現れたのだ。
「…え?」
「今から君はマッサージ店の中に入ってもらう。なあに、食べ物もちゃんと用意してあるさ。さて、今から」
彼はすうっと息を吸い込み、
「面接の、始まりだ」
---10---
「あっちだ、あっちに曲がってくれ!!」
俺は山本をつれさらった車をタクシーで追う。
「クッソ野郎が…」
あの後俺は、山本がどこにコンビニがあるか分からず、迷うかなと思ったので後をつけていったのだ。
そしたらあろうことか、あいつは謎の男性に…!
「あ、あそこで止まった!!ありがとうございます、ここで降ろして下さい!」
俺はタクシーの運転手に料金を支払い、急いであいつの居る所に駆け寄る。
山本…山本ッ!!
山本達は謎の男性達に建物の中へと連れていかれた。俺も急いでそのあとを追う。
しかし、建物の階段の前には見張りが一人いた。
どうすりゃ良い…
どうすりゃ良いんだよッ!?
その男は金髪で、黒いTシャツを身に纏った、ガラの悪そうな奴だった。
「ん?なんかこの店に用か?」
その男に俺は話しかけられる。
「お前ら…」
俺はその男を睨み付け、
「お前ら、あいつをどうする気だ!!」
「あ?テメェになんの関係があるっつーんだよ」
「うるせえよ…」
「あん?」
「あいつはもう風俗からは足を洗ったんだぞ!!ここだって一見普通の店に見えるけど、
本当はマッサージ店を謳った風俗店だろうが!!雰囲気で分かるんだよ!!だから…だからあいつをここから早く出せ!!」
その男は少し考えたようにうつむき、やがて顔をこちらに向けた。
「あの子は杉本がスカウトして着いてきたんだぞ?なんでテメェの勝手な解釈で俺達を悪者にしてんだ?」
「うるせえよ…俺はあいつらの会話を全部聞いてたんだよ!!あいつは山本を騙したんだろうが!!」
俺の怒りは止まる事を知らない。
「大体、風俗店ってのは15才は働けないだろうが!!何平気でスカウトしてんだよ!?」
「そりゃここは、15才からでも働ける店だからな。」
直後。
俺の思ってもいない事をこの男は口にした。
「な…何を言っている?」
「つーかごちゃごちゃうっせえんだよクソガキ。お前にこの店の詳細を教える気もサラサラない。分かったんなら…」
男は間を空け、
「さっさと消えろ、クソガキ」
「ま、待て!!この店の詳細を教えろ!!潰してやる、この店を潰してやる!!警察に通報して!!そして山本を取り戻す!!」
「はあ?なんなのお前さっきから、可愛い女の子連れ戻して勇者気取りかあ?つか段々ムカついてきたわ…」
男はこちらを睨み付け、
「もう一度言う、とっとと消えろ」
「嫌だ…」
男は段々とこちらに向かってくる。
「嫌だ!!そこをどけ!!」
「どいてほしけりゃ…」
男は段々加速してこちらへ向かってくる!!
「俺を倒してからいけや、このクソガキィ!!!!」
「ウオオオォォォ!!!!」
互いの殴りあいが、今正に始まろうとしていた。
---11---
「マッサージ店を謳った…違法風俗店!?」
山本はその驚愕の事実に思わず狼狽える。
「そうだよ。何、そんなに珍しい事じゃないさ。風俗店を設置してはいけない場所でこっそり風俗店を営業してるなんてのも、
よくある話だしなあ」
「いや、そういう次元の話じゃないですよね?」
山本は姿勢を整えてから口を開く。
「そうやって違法に設置してある店だって、一応18才未満は働けないとか、
18才未満は利用できないとかって決まりがありますよね?でもここは、15才が働くのが可能な上に、
R-18の貼り紙すらしてない。なんですかここは、無法地帯ですか!?」
「まあ確かに無法地帯だな」
山本に冷静に話しかけているのは、杉本の部下の谷岸という男だった。
「元々ここら辺は、本当に足の裏や体などをマッサージする店だったのさ。しかし、
ある時店員が客に手コキや足コキをしている事が発覚してね…その店はまあ個室のマッサージ店だった訳だが…」
男は淡々と告げる。
「警察は勿論店員を逮捕したさ。しかし、その店はこれから気を付けろって事で、営業は続けて良い事になってな」
「だからなんなんですか!?」
山本は、自分が恐れていた男性達に立ち向かうように、怒りをぶつける。
「とにかくここでは私は働きません!!出ていき…!?」
しかし、彼女はとっさに数人の男性に取り囲まれてしまう。
「まだだ、まだ話は終わっとらんよ」
男は話を再開した。
「それ以来、その店には誰も客が来なくなった。当然かな…しかし、そこに目をつけた、
俺達現役の風俗店員は、そこを立派な風俗店に変えようと企んだ。そうすれば元々働いてた所と合わせて大量に金が入るからな」
「あんた達、早くここをどきなさい!!」
山本は必死に逃げようと辺りを見渡しながらも、敵を威嚇する。
「そこで俺達は、先ずは女子高生とかにマッサージ店で働かないかとここらの店に招き入れ、
今はすっかり性風俗として栄えた繁華街と化したって訳だ、ここら辺は」
「自分達が、金が欲しいからってマッサージ店をのっとって…」
彼女はふるふると震えながら、
「だからってなんで態々15才以下の人間を雇おうとしたわけ!?」
「決まっているだろう。というか、そんな事も分からんのかね、君は」
男は、小学校で習う足し算の問題をテキトーに答えるような調子で答える。
「世の中にはそういう趣味の奴らが腐る程居るんだよ」
直後。
彼女の背筋が一瞬で凍った。
「君はロリコンという言葉を知らないのかな?俺達は、そういう人達が望んでいるような風俗店を作りたいとも思っていてね。」
「……」
彼女の震えはまだ止まらない。
ロリコン。
その言葉は、彼女以外の女性でも嫌う言葉なのではないか。
少なくとも、今の彼女にとっては、不気味この上ない響きを持っていた。
「特に彼らは君みたいな可愛らしい女の子は好みだと思うようん。いやー、JKリフレだけじゃ満足できねえよなあ、普通」
「いや…」
「?」
「いやああああああああああああああああああああああ!!!!」
突如。
彼女は凍っていた背筋を一気に爆発させ、叫び散らす。
「誰か助けてええええええええええええええ!!!!」
「おい待て!!ここで暴れるな!!クソッ、お前ら取り押さえろ!!」
山本は複数の、杉本と谷岸以外の男性に取り押さえられてしまった。
「あきらああああああああああああああああああああ!!!!」
「落ち着け!!落ち着けと言っている!!」
--12---
自分の名前を…呼ばれた…?
俺はそんな気がした。
はあ、道路冷てえ…
いつの間にか雨が降ってきてやがった。
あの後俺は、こいつと殴りあいを繰り広げ、最終的にぶっ飛ばされ、今は道路に横たわっている状態だ。
まあ、最初からこうなる事くらい大体予想はついていたがな。
でも…それでも…
俺は山本を助けてやりたかった。
どんなに相手が強くたって、相手に勝てないと最初から分かっていたって、大切なものを守るために立ち上がりたい。
人間ってのはそういうもんだろ。
「ハァ…ハァ…このクソガキ、意外としぶといな…」
しかし、男の方も大分ダメージを喰らっている様で、大分疲れているようだ。
「おいクソガキ」
男は言う。
「あいつは男性恐怖症を治したいんだとよ。だから、男性と接する事によってあいつの恐怖症を治せるきっかけにもなるんだぜ?」
「ふざ、けんな…」
俺はよろよろと立ち上がり、言う。
「そんな方法で男性恐怖症を治したって、失うものの方が大きいんだよ!!あいつの…あいつの恐怖症は…」
俺は渾身の力を振り絞って叫ぶ。
「あいつの男性恐怖症は、俺の手によって治す!!!!」
直後。
俺はまっすぐど奴の懐へと猛スピードで飛び込んだ。
しかし、奴に顔面パンチを喰らわせようとするも、奴の左手によって俺の右手は封じられてしまった。
掴まれたのだ。
「おいクソガキ」
こいつは余裕の表情を見せながら言う。
「そんなトロイ動きじゃ、100年経ってもこの俺にゃ勝てねえんだよお!!」
グギギッ!!
俺の右手をこいつは左手でひねった。
「いでぇっ!!」
更に。こいつは俺の右手を掴んだ状態で、軽々と俺の体ごとこいつの後ろにと吹き飛ばしたのだ。
「ガァァッ!!!!」
地面にバタンと叩きつけられた時、俺は思わずうめき声をあげた。
「これで終わりだ…」
男はだんだんとこちらに近付いてくる。
マズイ、この格好は明らかに不利だ…!!
「お前にはもう勝ち目はねえ。だから…」
マズイ…マズイ…!!
「いい加減楽になれ!!」
「待って!!!!」
と、その時だった。
店の前には、複数の男性に取り押さえられた山本が立っていたのだ。
「ああ?」
男は不快そうに山本の方を見る。
「おいお前ら、なにこいつを外にだしてんだ?話はもう終わったのか?」
「そ、それが、こいつがいきなり暴れだして、店の外に出ようと…!!」
二人は何やら揉めている。
山本は無事なのか!?
「ところで、そのガキは…?」
「ああこいつか」
さっきまで俺と戦っていた方の男は言う。
「なんか、そっちのガキと同じクラスメイトで、風俗店に勤めさせたくないみたいだぜ。いやあ、熱い友情だこと」
こいつはニヤリと口に笑みを浮かべる。
「旭、大丈夫!?すごい怪我してるじゃない!!」
山本…
「だい…じょうぶだ…山本…。ちょっとこいつと争ってただけだからさ…」
「そんな…絶対大丈夫じゃないでしょ!!あんたら放しなさい!!」
山本は取り押さえられている人間のうちの一人の腕に噛みつき、一人無理やりに放した。
そして、自由になった右手を使ってもう一人の顔面へとパンチを喰らわせる。
「ギャアアアアイアアアアアアアアア!!!!」
更に、もう一人の男の股関節へと鋭い蹴りを放つ。
「グハァッ!!!!」
男の叫び声が聞こえる。
「旭!!」
全員から解放された山本は、倒れている俺の方へと駆け寄ってくる。
「ひどい…ひどすぎるわ!!なんでこんなひどい状態に!!」
「安心…しろ…俺は…大丈夫…だから」
「あんた…」
山本は怒った声をぶつけた。
俺にではない。こいつにだ。
「あんた、自分よりかなり年下の少年をこんな風にズタボロにして、どういう神経してんの!?なんでここまでするの!?
旭は…旭は、私の為にこんなズタボロにッ!!」
「く」
山本…そこまで俺の事を心配してくれてたのか!!
「クハハハハハ!!!!良いねえ、良いよこういう熱い友情の物語、俺こういうの大好きだからよォ!!」
こいつ…
「この…」
俺は、もう一度立ち上がる。
そして。
「クッソ野郎がァァァァァァァァァァ!!!!」
こいつの懐に、もう一度飛び込もうとする。
「待って!!もうやめて旭!!何度やっても結果は変わらないわ!!」
叫ぶ山本。
けど…それでも…
俺はこいつらをぶっ潰さねえ事には、山本は救えねえ!!
ただ、それだけを考えていた。
「おいクソガキ、確かに南の言う通り、お前にゃこの俺、山本亮太は倒せねえよ」
と、その時だった。
なんだ?こいつ何故山本の事を下の名前で呼ぶ?
そして、こいつの名字も山本…
いや、単なる偶然だろ。つかありえねえっての。
「…へ?」
山本の方も驚いているようだった。
自分が下の名前で呼ばれている事に。
「何故…私の事を下の名前で呼ぶの?」
「南…」
…なんだ?なんだこの展開は!?
「お前には、この店で働いてもらいたいんだ。それが…」
なんなんだよ!?
「それが、父さんのお前に対する願いなんだよ」
「………」
「………」
こいつが…
山本の父さんだってのかよ!?
「南…」
そういえば、こいつと山本の顔はなんとなく似ていたような…
「俺とお前の母さんは、お前が2歳の時に離婚したんだ。その事は、お前もお前の母さんから聞いているだろう?」
「父さん…?あんたが、私の父さんだっての!?」
俺も山本も、すぐには今の状況を呑み込む事が出来なかった。
それは無理もないだろう。
「何故かと言うとな、お前の母さんはお前を産んでから直ぐに、お前の事なんかどうでも良い、
お前の事は最初からオモチャくらいにしか思ってなかった。そう俺に言ってきたんだよ、お前が1歳くらいの時にな」
山本の父親は続ける。
「俺はその発言に対し、勿論激怒したさ。最初に子供が欲しいと言っていた癖に、
1年もしないうちから子育てに飽きたのか知らんが、そのような発言は親として許されるものではないからな…」
「…貴方が、本当に私のお父さんなの?」
「ああそうだよ。まあすぐには信じられんかもしれんがな…」
「うん、確かに信じられないわ…それで?」
「それでな、暫く喧嘩をしていて、長い期間俺達は喋らなかった。そしてある日、
あいつが風俗店で働いている事が発覚したんだ。結婚する前に、風俗では働かないと約束した筈なのにだ。」
「お、お母さんが働いてたの!?」
次々と明らかになる驚愕の事実。
マジかよ…
そうだったのかよ…!
「そうなんだよ。それが発覚して、今までの事も重なって俺は京子…お前の母さんと別れたんだ。」
「でも、何故私に風俗で働いて欲しいと思ってるのに、お父さんはお母さんに風俗で働いて欲しくないと思ってたの?」
「元々俺は、風俗というものがとても危険だと思っていたんだ。それは一般的に考えたら誰でも危険視するだろう」
そりゃ、確かにそうだけど…
「俺は京子と別れてからというもの、ずっとイライラしっぱなしで、
会社でもトラブルを起こしまくってしまったんだ。で、ついにクビになってね…」
「それで、ヤケクソになって危険だと認識する風俗で働こうと…?」
俺はそこでようやく口を挟む。
「まあそんなとこかな。なんだか無償に暴れたくなってね…風俗で働いたら、暴力団とも繋がれて、
大暴れ出来るんじゃないかなとか考えてたんだ。初めは本当にそんな事を考えて働こうとしたのさ。初めはね」
山本の父親は「初めはね」という部分にアクセントをつけて話す。
「しかし、働いていくうちに、色んな考えの人間、色んな嗜好の人間、色んな趣味の人間と知り合う事が出来た。
俺達は今までに色んな人間と関わってきたんだ。そこでね、俺は少し考えが変わったんだ」
考えが…変わった?
「最初は風俗で働く女なんてのはロクな奴が居ないと思ってた。でも、今は違う。」
山本の父親は続ける。
「最初は、ただのスケベな女ばかりだと思っていたが、男性達を介護してあげている…
そう捉えられるようになってきたんだよ。ちょっと嫌な仕事でも、自分の責任で、
自分の体を張って働く姿が素晴らしく見えてきてね」
働く姿が、素晴らしく見えてきた…?
「客も、最初はガラの悪い奴が沢山来るものとばかり思っていたが、意外とごく普通の人間がよく来るものでね。
ルールもちゃんと守ってくれる奴が殆どだし。まあたまにルールから外れた事をする奴が居るんだが…」
ごく普通の、客。
「俺は、次第に風俗に対する偏見が無くなっていくような気がしたんだ」
風俗に対する偏見が、無くなっていった。
「だから、今では俺は胸を張ってしっかりと風俗で働いてる。ロリコンの人間、メイド萌えだっけ?
そんな人間もちゃんと理解しているし、常連とは結構仲も良いんだぜ?」
おっさんは得意そうにそう告げる。
「つい最近、15才くらいの少女が風俗で働いてるのが発覚して、逮捕された事件があったと聞いてね。俺はそれが南だと暫くしてから知ったのさ。そして、
再び風俗で働かせようとして、杉本に南の顔写真を渡し、ナンパ通りに行かせたんだが…まさか直ぐに見つかるとはな」
「…話が見えてこないな。結局おっさんは、なんで山本に風俗で働いて欲しいと思ってるんだよ?」
俺は気になっている事を口に出す。
「それはな、父さんと一緒に、変わった…と言ったら差別になるのかも知れんが、そういったロリコンの人達をこの店で介護してみないか?
という事なんだよ。」
「けど、この店はマッサージ店をのっとった違法な風俗店なんだろ?そんなのモラルに反してるとかいうレベルの話じゃねえだろ。
あんたは、子供と一緒にそんな反社会的な行為をして、それで良いのかよ!?」
「しかしね、この世にはロリコン以外にも様々な嗜好を持った人間が居るのさ。
じゃあそういった人達はどう自分の欲望を発散したら良い?溜まりに溜まって、
犯罪に走るよりはずっとマシなんじゃないか?ちゃんとお金も払ってくれる、そういうちゃんとした商売なんだから」
「ちゃんとした商売じゃねえだろ」
こんな商売がそう長続きしない事くらい、俺にでも分かる。
「客がそのルールを破った行為をした場合、こっちだって違法な事してんだから、訴えたら自爆するだろ。
そういう場合はどうするんだよ?あんたらでリンチでもすんのか?」
「ああ、それについては大丈夫だよ。」
しかし、このおっさんは余裕の表情で言う。
「警察にはそういった客はちゃんとつき出すさ。この店はちゃんとしたマッサージ店という事にしてね」
「何?そんな事が出来るっつうのかよ!?でもどうやって!?」
「どうってそのまま、普通にだよ。この客がマッサージ店で女の子に性的なサービスを強要しましたって言うだけさ。」
…このおっさんは、常識というものを知らないのだろうか。
「そんなの絶対おかしいだろ!!いつまでもこんな店持たねえよ!!」
俺はつい我慢出来ずに叫ぶ。
例えそういう趣味の人達が居たって、こんな違法な風俗店がまかり通っていて良い筈がない。
「俺は山本がここで働くとか以前に、この店をとっとと潰した方が良いと思う。だから…」
「そうか…分かってくれないか…。」
俺はもう一度山本のこれからの事について真剣に考えてみる。
初めて俺と山本が会った時、俺はいきなりヘルス店から出てきた山本に対して、なんだこいつという印象を持った。
そして、今まで風俗店で働いていた事などを聞いて、こいつはヤバい奴だと確信した。
本当にこいつはヤバい奴さ。
でも…
それでも。
会ったばかりの人間だけど、それでも俺とこいつは、もう友達なんだ。
だからこそ、山本にはもうこんな違法な風俗店なんかで働いて欲しくない。
それが俺の願いなんだ。
「南は今まで風俗で働いていたんだろう?だったら、ここで働いても良いと思って、
君からも言ってもらおうと思ったんだが…ダメなようだな」
「……」
俺は黙ったまま考え続ける。
でも、何故だろう…
何故だか俺は、山本にこんなところで働くのはやめろと忠告する事にも躊躇いを感じた。
何故だろう…
何故俺は、山本を止めない?
「……」
しかし、頭の隅っこではそう考えつつも、何故か俺は山本がここで働く場合の事を考えてしまう。
何故、全力で止めなければならないのに、そんな事を考えてしまうのだろうか。
「そういえば、君の名前はなんだっけか?」
そこで話しかけられた俺は、ハッと我に帰る。
「俺?俺は南雲旭って言うけど…」
「旭君か…」
このおっさんは、さっきからため息ばかりつき、憂鬱そうに喋っている。
「旭君からも、南に働くように言ってくれたら、嬉しいんだがなあ」
「だからそれについてはさっき言ったろ。俺は…」
そこで俺は、また言葉を詰まらせてしまう。何故だ!?早く山本を止めろよ!!
「俺は、なんなんだい?」
「や、山本…」
俺は勇気を振り絞って山本に言う。
「な、なに?」
山本の方も大変どぎまぎしているようだ。
「お、俺は…」
さあ言え、勇気を振り絞って言うんだ!!
「俺は、お前とは知り合ってから間もないけど、短い期間に色々あったし、これからもお前の友達をやっていこうと思ってる。
俺達は、友達だ。」
友達。
その言葉に反応したのか、山本の頬は少しばかり赤くなっていた。
「旭…」
「だから、友達として言わせてくれ」
そうだ、その調子でどんどん言うんだ…
そして、早く決着を付けよう。
「……俺は、最初お前が風俗で働いていたと聞いて、正直ビビった。てか、会った時からヤバい奴だと思ってる。
ああそうだよ、お前はとんでもない奴だよ。だから」
俺は、遂に結論を言う。
「だから、今更風俗で働かないとか言って、一般人に戻る義理なんざねえんだよ」
そうさ…
こいつは、山本南は、今までJKリフレで働いてきた女だ。だから、これからもこの店できっと上手くやっていける。
「俺だって今さっきまでずっとお前の事について考えてたんだ。お前は俺の友達であり、風俗で働くべきか、
そうではないかとかな。でも、どんな違法な風俗店でも、確かにおっさんの言う通り、
特別な趣味の人達にとって役に立ってるんだ。問題があるなら、改善しちまえば良い。だから…」
だからこそ。
「俺は、そういった問題を解決できる、立派な店員になってみせるよ!!」
そうさ。もし山本を襲おうとする奴が居たら、俺がぶっ飛ばす。
つか、問題が事前に起こらないように対策を練れば良いだけの話じゃねえか。
「あ、旭、あんた本気なの!?」
「旭君!!それは本当なのか!?」
「ああ。だって俺と山本は友達だ。友達を一人で放っておけるかよ」
俺だって風俗業界についてまだまだ知らない事ばかりだらけだ。
でも、だからこそ。
俺はこれから、山本のパートナーとして、立派に修行していきたいと思ってる。
「それに…俺にも、そういう変わった趣味を持った人達の気持ちは多少は分かるんだ。だって…」
「…へ?ま、まさかあんたもロリコンなの!?」
「ち、違うって!!俺は、俺は…い、いやなんでもない!!今の発言は忘れてくれ!!」
「旭君、君ってやつは…」
「なんだよおっさんまで!!」
はあ…
なんつーか、やれやれだよな。
---エピローグ---
「おっす、おはよう南!!」
「お、おはよう旭…なんか名前で呼ばれると恥ずかしいな…」
なーに照れてるんだよ、こいつは。
あの後の俺は、またタクシーで大金を使って家に帰り、家に帰った途端に母親から「なんなのその傷は!?」と驚かれ、散々だった。
因みにあそこで働くために、これから手続きをする予定だ。
「なあ南」
「な、なあに…?」
おいおい、頼むからそんなにもじもじしないでくれよ。ここは教室内だぞ。結構皆の目を引いちまってるじゃねえか。
「…これからも宜しくな!」
「え?あ、う、うん!宜しくね!」
俺と南は教室内の後ろの方でバチンッとちょっとばっかし激しいハイタッチをした。
「俺も、最初は風俗には悪いイメージしか持ってなかったけどよ、自分の体を張って介護するのって、やりがいがあるのかもな。あと、実は俺…」
俺は昨日言えなかった事を思いきって言う。
「…俺、実はツインテール萌えなんだ」
「ぶふっ!?」
思わず驚いてしまう南。ってヤベッ、こいつ今日ツインテールに髪をしばってんじゃん!!
「ちょ、ちょっとあんた、ツインテールの私の前でそういう事言わないでくれる!?」
「ああ、すまん!!すまん南!!頼むから俺から二メートル離れないで!!なんでそんな怯えた顔すんのさ!?」
因みに、南の父親と母親は、やっぱり再婚するつもりはないらしい。というのも、父親の方がしたくないと言っており、
母親とは顔を合わせたくないから、今日の事は母親には秘密にしておいてくれと南に言っていた。
だから、俺と南はこれからも一緒に泊まり続ける予定なのだ。
「はーい、皆さん座って下さいねー」
と、そこで担任の有野先生の声が響く。
「これから帰りのホームルームをします。それでは、皆さんさようなら!」
皆は一斉に帰りの支度を始めていく。因みに今日は身体測定だけして午前中で学校は終了したのだ。
自転車での帰り途中、俺と南は会話をしていた。
「なあ南、ところでお前ん家の荷物とかはもうあれだけで大丈夫なのか?」
「うん、特に問題ないわ。元々そんなに無かったしね」
「そっか…あとさ、男性恐怖症の方はどうなったんだ?まだ怖いか?」
「多少はね…でも、旭と一緒だと、なんか落ち着くのよね」
「そっか…」
俺は南にそう言われて素直に嬉しかった。
「でももう大丈夫だぜ。もし今度お前を襲おうとする奴が現れたら、俺がぶっ飛ばしてやる。だからお前は、安心して働いて良いんだぜ。」
「…うん」
まだ、あそこには南の他にも女子高生は働いているのかとか、南は18歳を過ぎたら普通の風俗で働くのかとか、色々疑問はある。
でも、今は取り敢えず、今やるべき事をやろうと思う。
「旭」
「ん?」
「これからも宜しくね!!」
「おう!!」
再度、少しばかり激しいハイタッチの音が響いた。
これは、ごく普通だった少年南雲旭と、若い頃から風俗店で働いている変わった少女山本南の、少し変わった日常を描いた物語。
---完---
取り敢えず1章(短いラノベ1巻分)書き終わりましたー
SSだから短いけど。
処.女作だから色々と突っ込みどころはあるし、無理矢理完結させようとしたから完結の仕方が変だけど、取り敢えず書き終わったー
という訳で皆さん感想をこのスレで聞かせて下さい
というかまだ完結してない段階でまとめに載せられてしまってるし…
すっげーおもしろいよ!
VIPに晒してまで感想が欲しいのか…
つまんね
すげーおもしろかった!
続き早くしろ!
最後まで読むとなかなか微妙…
続きに期待
晒しスレから来たが、ちょっと素面じゃ読めない
努力は認めるがキツい
まずは超短編から始めようか
これを晒せる厚かましさだけは誇っていいよ
VIPで晒した結果です
まあ、要望があったから晒しただけであって自分の意思で晒した訳ではないんですけどね
どうでもいいから続きはよ
age
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません