咲「私に姉はいない。…妹ならいるけど」 (101)
南1局、1本場。私は親番だった。
――5,6,7....
河の一列目には既にリーチ宣言牌が曲がっていた。
――10,11,12....
連続上がりの代償。それに伴い必要となる打点の上昇。
私は打点を上げるため、迷わずリーチをかけていた。
――14,15,16....
早々に手を諦めベタオリ気配の2家とは別に、攻めてくるものが一人。
あの娘と同ランクの、牌に愛されし子の一人。
けれど、貴方の本質は分かっている。今回は貴方が海底でツモることはない。
「カン」
彼女のその発言で私の血の気は一気に引いた。
私から嶺上の上がり牌を抜き去った上で、海底を私に回すこのカンの意味は…
「…っ!」
暗刻持ちの、恐らく8枚目のこの筋牌を、私はカンすることも出来ずに河に置くことしかできなかった。
「ロン」
無表情を気取りながら点棒を渡す。彼女は酷く冷めた目で此方に眼差しを向けていた。
「嶺上の支配も劣る。本質を見抜くその力も既にあやつの方が上」
「お前は一体、何者なのだ?」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403463077
照「このSSは【照「私に妹はいません。…お姉ちゃんならいますけど」】の続編になります」
照「今回私は出てきませんので、お姉ちゃんの活躍をお楽しみください!」
照「…え?何かもう苦戦する予感しかしないって?」
照「お姉ちゃん実戦経験少ないからなぁ…」
照「あ、淡ちゃん。それロンだよ。12000」
<ずっこーい!何で私の支配回避出来るの!!
照「それでは本編をどうぞ!」
久「…なるほど。つまり、宮永さんはあのチャンピオンの妹で」
まこ「その打ち方についてどうしても納得がいかない」
優希「そこでうちの麻雀部に入ることにより」
京太郎「全国まで獅子奮迅の活躍を見せ!」
和「直接文句を言ってやる…ってところですか」
咲「まぁそんなところ」
これで理由付けとして通るのならそれで良い。
私と咲の複雑な事情については語るべきじゃない。
久「いやー、でも分かるわ。優しかった頃の姉の打ち方に戻って欲しいだなんて…」
まこ「わら一人っ子じゃろ…」
和「…気に入りませんね」
咲「…はい?」
和「直接文句を言いに行ったらどうなんですか?」
咲「…それが出来るのならそうしてる」
和「なんで清澄なんですか?この辺なら風越とか色々あるじゃないですか」
咲「……」
なんだこのおもち星人は。やけに突っかかってくるな…
久「ははーん」
久「さては、ポッと出の宮永さんに5連続トップを喰らって嫉妬してるな?」
そういうことか。可愛い。
和「…っ!違います!もう良いです、今日は帰ります!」
バタン
久「あっちゃー」
咲「…私、後を追ってもいいかな?」
優希「うむ!むしろそうしてくれ!」
咲「…じゃあ、私もこれで」
京太郎「じゃあなー」
優希「咲ちゃん今度来たらまた打とうなー!」
バタン
まこ「うーむそれにしてもインハイチャンピオンの妹か…」
京太郎「それも打ち方も全部似てましたよねー」
優希「嶺上開花を5半荘に3回とか勘弁して欲しいじぇ…」
京太郎「そりゃ俺と飯食わないでうんちくの自画自賛垂れるだけのことはあるわ…」
優希「なに!もう咲ちゃんと食事のデート済みだと!?咲ちゃんも私の嫁候補の一人だぞ!勝手に取るな!」
京太郎「お前こそ何勝手にデートとか嫁とか言ってるんだ」
ギャーギャー
まこ「まぁしかし即戦力の一年が入ってきたんは、良かったじゃろ?」
久「……」
まこ「ん?どうしたんじゃ?」
久「…いえ。何でもないわ。多分。…杞憂よ」
咲「原村さん」
和「…っ」
咲「今日は原村さんたちと打てて、楽しかったよ」
和「何しに来たんですか?勝てばそれは嬉しいものでしょう」
和「部長たちに言われて様子でも見てこいって言われたんですか?ご心配なく、私は―」
おもち星人がそっぽを向きながらまだ何か言いたそうだったけど、肩を掴みコチラに顔を向けさせる。
咲「喋る時はお互いの眼を見て喋りましょう。これ私との約束ね」
一応私の方が年上なわけだし。しかし何だその紅潮した頬は。風邪でも引いてるのかな?
咲「さっき答えられなかった事をまとめて答えるよ」
咲「私の父と母、別居中でね。なかなか会う機会がないんだ」
咲「それでも、私とさ…姉さんはとっても仲が良くてね」
咲「本当のこと言うと、姉さんの高校生活が終わるまでは大会に出るつもりはなかったんだ。だから麻雀部の有無も知らずにここに入ったの」
咲「でも、どうやら麻雀の対局を通してじゃないと言えないこともあるみたいで」
咲「だから、入部したの。私は絶対に全国に行きたい」
和「…そ、そうですか。あの…宮永さん…」
咲「ん?何?」
和「顔が…近…。…いえ、何でもないです」
むぅ。何か言いたそうだけど…。私も肝心の部分はぼかして話してるから同じか。
和「そうですか。…宮永さんにも色々あるんですね」
咲「も?」
咲「何にせよ、貴方にも全国に行かなければならない理由があるなら」
咲「一緒に頑張ろう?一緒に全国に行こうよ」
和「!!」
だからその紅潮した顔を見せるのを止めて。心配する。
和「…はい。勿論です。行きましょう、全国」
咲「うん」
和「部室では申し訳ありませんでした。…確かに私、貴方の麻雀に嫉妬していたのかもしれません」
知ってる。
和「でもそれ以上に、見惚れてしまいました。貴方の麻雀に」
それは知らなかった。
和「咲さん…と呼ばせてもらっても良いですか?」
咲「うーん…」
和「だ、ダメでしょうか?」
咲「いや、そういうのじゃないけど…。…うーん、まぁ良いのかな…?」
和「ありがとうございます!私のことも和と呼んでもらえると…」
咲「それはまだちょっと早い」
和「そうですか…」
咲「ただいまー」
界「お帰り。今日は玉の出が良くて大勝だったわ」
咲「まーたパチンコですか。良くまぁあんな煙たいところへ…」
界「まぁまぁ。プリンとかケーキとか色々貰ってきてやったから」
咲「GJ」
界「だから夕食早く頼むぜー」
咲「…はいはい」
咲・界「いただきます」
界「部活動とかやってるのか?高校で」
咲「…ん、麻雀部に入ることになった」
界「…は?」
界「マジかよ。この前あいつと飯食った時に言ってた話ってマジだったんだな」
咲「…そうだった。お父さんは姉さんと食事したんだったっけ」
界「いや?お前は多分麻雀部に入る事になるよーってな」
咲「…反対しないの?」
界「俺は自分の子供がやりたいことをやるのに反対なんてしないよ」
界「そのやりたいことをやった際に何かのアクシデントがあった時に、ケツを拭いてやるのが親ってもんだろ」
咲「珍しくカッコイイこと言ってる」
界「バカ言え。俺はいつでもカッコイイわ」
界「…もっとも、婿養子である俺には宮永家の色んなしがらみだけは、最後まで納得いってないけどな」
咲「ん?何か言った?」
界「何でもない。いやしかしあそこでああなってればな…」
咲「…………」
どうやら今日は話をぼかしぼかされる日みたい…
久「はいちゅーもーく!」
久「寝てる子もタコス食べてる子もプリン食べてる子も集まれ!」
咲「」モグモグ
優希「」モグモグ
和「ふぁ…」
京太郎「お前ら本当に自由だな…」
久「来月頭に県予選があります。良いわね?」
久「これがルールと県強豪県の牌譜。きちんと目を通しておくように」
咲「持ち点10万」
優希「五人交代制」
和「ウマオカなし、トビあり」
京太郎「ん?ここ赤線だな。えーなになに?」
咲「…大明槓時に発生した嶺上開花の責任払いをなくす?」
久「あー、元々珍しいルールだったんだけれどもね…」
部長が此方をチラリと見る。言いたいことは大体分かるけど。
久「チャンピオン、つまり宮永さんのお姉さんがこれを多発しててね…」
これは完全に咲一人を標的としたルール変更。
そもそも、ルールとはユーザを縛るためにあるもの。
だが、その現状のルールでは咲は計り知れない存在に既になっているということ。
何時の時代もルールを変えるのはたったひと握りの強者だけだから…
咲「姉さんがルールを変えたというのなら、それはそれで私にとっては誇らしい」
和「咲さん…!かっこよすぎます…!」
優希「まぁ咲ちゃんはちょっと関係があるかもしれないけど、うちらにはあんまり関係のない話だじぇ」
咲「…それよりも、この龍門渕の天江衣とか言う人」
久「ああ、その人はまた格別だからね…」
久「通称、『牌に愛されし子』の一人。あなたのお姉さんと同ランクの人よ」
久(もっとも、貴方のお姉さんはプロの見解では『牌に溺愛されし子』らしく、更に格が違うらしいけど…)
久「6年連続県代表だった風越が決勝で、去年一年しかいない龍門渕に惨敗を喫した。その中の一人」
優希「だが今年は私ら1年トリオがそいつらを倒ーす!」
京太郎「…ところで、染谷先輩は?」
久「あぁ、まこなら実家の雀荘のバイトが休みとか何とかで手が一杯らしくて…」
久「…ちょうどいいわ。和、宮永さん。貴方たち行って来てくれない?」
和「雀荘…?」
咲「雀荘!」
京太郎「部長は行かないんですか?」
久「いやだって私忙しいし。18歳になってないし」
和「私なんて15歳ですよ…」
咲「…2月にならないと」
まこ「おう来たか。はいこれ着てー」
和・咲「メイド服!?」
まこ「いやー、ネット麻雀が流行っとるけぇ。こうでもせんと、うちは客入らんのじゃ」
和「…良いですね、これ」
咲「……」
こういった服が似合うのは貴方のようなおもち星人やスタイルが良い奴だけ。
私のような体系でこれを着ても辱めを受けているだけ。早く帰りたい。
まこ「ほんじゃまー、二人にはお客さんと実際に打ってもらうだけじゃからな」
咲「レートは?」
まこ「アホか!うちはノーレートの健全なお店じゃ!」
咲「残念…」
まこ「お前間違っても赤入りで上がって1枚とか言ったら、ただじゃすまさんけぇのぉ…」
咲「善処する」
まこ「あああああああ人選ミスじゃろこれぇええええ」
しかし雀荘は空気が良くない。鼻が良いのが仇になる。
和「ロン。11600です」
まこ「雀荘では切り上げじゃゆーとんの」
和「そうでした…」
モブA「いやーお嬢ちゃんたち、強いねー」
咲「……」
おもち星人に任せて私は早く帰りたい。お腹空いた。帰っていい?
まこ「いらっしゃーい」
靖子「…ほう。今日のバイトは可愛らしいのね」
咲「!」
この感じ…!
靖子「いつもの出前特盛でお願い」
まこ「カツ丼ですねー」
咲「カツ丼!?」ガタッ
和(あ、これすごく見覚えがあります)
靖子「結局私が5連続トップね」
咲 計-25
和 計-89
靖子「…ふむ」
靖子(こいつらをボコボコにしてくれと久に頼まれたのはいいんだが)チラッ
咲「カツ丼…」
和「」
靖子(このショートカットの奴は何が何だか全く分からん)
靖子「まぁ何にせよ、今のままじゃ絶対に勝てないわ、県予選。それじゃ」
まこ「ありがとうございましたー」
咲「カツ丼…」
まこ「あー!頼んでやるから!今の対局意味あったんかこれ!?」
久「えー。私が色々と間違えました。はい」
久「知り合いのプロにボッコボコにしてもらって奮起して貰おうと思った私が馬鹿でした。はいはい」
久「和は宮永さんに夢中だし宮永さんはカツ丼に夢中だしで全く意味がありませんでした。はいはいはい」
咲「面目ない」
和「だ!誰が咲さんに夢中ですか!」
久「あんたら覚悟しておきなさいよ…!強化合宿先抑えたけど絶対しごいてやるからね…!」
咲「望むところ」
久「あんたはそれ以前に食べ物常備させておきなさい!」
――そして、強化合宿も終え、来たるは県予選初日――
久「やれるだけのことはやった!さぁ、行きましょうか!」
全員「はい!」
久「行っとくけど、会場で迷子にならないようにね!」
和「高校生にもなって迷子だなんて…そんなオカルトありえませんよ」
咲「」フラフラ
優希「パワーアップした私の力を見せる時が来たようだじぇ!」
まこ「わりゃー、そろそろ点差計算覚えた方がええぞ…」
ワアアアアアアア
久「おいでなすったわね…長野の名門、風越女子!」
<去年二位だった失態を今年のキャプテン福路はどう巻き返すのか?
美穂子(これいつまで言われるのかしら…)
久(何かどっかで見たことあるのよね…風越のキャプテン…)
オオオオオオオオオオオオオオオオオオ
まこ「そんで主役も登場みたいじゃな」
京太郎「あれが昨年度県代表の…龍門渕!」
<昨年の四天王は今年も健在だ!
透華(目立ってなんぼ…目立ってなんぼですわ!)
優希「四天王…って、四人しかいないじぇ?」
久「もう一人の天江衣は別格だからカウントされてないんじゃない?」
まこ「もしくは今いないのは迷子とか寝坊とかなんかで…」
和「そんなオカルトありえません」
久(あ、靖子も来たみたいね…解説かしら?)
順子「あ、藤田プロ!今日はどうしてこの会場に?」
靖子「解説プロとして呼ばれている」
順子「やっぱり今年も団体は龍門渕か風越でしょうね」
靖子「どうかな。決勝以外は半荘5回の短距離走だ」
順子「プロとしての見所はございますか?」
靖子「龍門渕の天江衣。毎年毎年、常識では考えられないレベルの打ち手が出てくるわけだが」
靖子「一昨年の牌に溺愛された子・宮永照、昨年の牌に愛された子・神代小蒔、天江衣」
靖子「…あ、ここ文章に纏めるなら宮永照も牌に愛された子の格付けにしておいてくれよ。何か上がうるさくて」
靖子「そういった常識では計り知れないレベルの打ち手が今年も出てくるかも知れない。今回初参加の高校や一年には要チェックかもしれんな」
順子「長野には今年、インターミドル優勝の原村和が出てきますが…あ、噂をすれば発見!」
靖子「…まぁ、そういった有望株にも期待ってところかな。じゃあこれで」
靖子(原村和…雀荘で実際に手合わせした時には全くお話にならないレベルだったが…)
靖子(それ以上に一緒に同卓したショートカット…。あいつの力がどの程度のものなのか…見ものだな…)
咲「ふむ」
咲「迷った」
咲「少し目を離すとコレ。やっぱり本来最上級学年の私がみんなをきちんと見てないとまずいのか…」
咲「かといって私、携帯持ってないし…」
咲「でも適当に行けばその内会えるだろう」
透華「衣はまた寝坊でしょうね…」
純「目覚ましセットしてやったのにこれだ」
智紀「ある意味予想通り…」
一「まぁ予選なら衣がいなくても…」
咲「…ん、次を右に…」
四天王「」ゾクッ
一「な、何今の…」
智紀「清澄高校の制服…」
透華「原村和ではございませんわ。もっと胸に脂肪がございますし」
純「衣とかと似たような空気を感じたが…まさかな…そんな奴にここで会うわけが…」
『あと10分で先鋒戦が始まります。各校の先鋒は所定の対局室へ…』
咲「うーん。これもう先鋒に間に合わないと思うんだけど」
でも私、基本ツイてるからこれで何かあるかもしれない。
久「だあああああああああああああああああああああああ」
まこ「あのアホはどこ行ってるんじゃああああああああああああああああ」
京太郎(そういやあいつ迷子属性持ちだった…)
久「あーもう!咲を先鋒にする予定がこれだもの!ちょっと変更申請してくるわ!」
優希「そうなると誰が先鋒になるんだじぇ?」
久「貴方よ優希!それじゃ頑張ってね!」
和「頑張って下さいね、優希!」
咲「優希、応援してる」
まこ「頑張りんさい…って…」
咲「?」
まこ「お前さんどこ行ってたんじゃああああああああああああああああ」
咲「それはこっちの台詞、まこ先輩」
まこ「あああああああああああああ」
京太郎(そんでひょっこり現れるんだよなぁ。慣れてるからいいけど)
優希「何にせよ咲ちゃんが無事で良かったじぇ!」
咲「私も優希の戦いを見逃さずに済んで助かった。頑張って」
優希「おう!任せろ!」ダダダダ
和「…あの、咲さん?」
咲「?どうしたの、原村さん」
和「それです、それ!呼び方です!」
和「優希のことは?」
咲「優希」
和「染谷先輩のことは?」
咲「まこ先輩」
和「部長は?」
咲「部長」
和「では、私は?」
咲「原村さん」
和「だから何でですかああああああああああああああああああ」
うん。この子、やっぱりからかいがいがある。面白い。
咲「ちなみに京ちゃんは京ちゃん」
京太郎「追撃しやがった!!」
久「ふー、大丈夫だったわ。何とか変更申請通った…って」
まこ「」
和「」
咲「あ、部長。どこで迷子になってたの?先鋒始まるよ?」
京太郎「主にお前のせいだけどな…」
久「なにこれ」
咲「え、私先鋒の予定だったの?あれだけ大将にしてって言ったのに?」
久「貴方の打ち方はどう見ても先鋒向きでしょうが…いつ合流できるか分からないから、結局大将にしちゃったわよ…ったく…」
やっぱりツイてた。全国に行けたとしても、咲と実際に同卓出来なきゃ意味がない。
久「一回登録したオーダーはずっと引き継ぐから、貴方ずっと大将よ?先鋒に次いで怪物が暴れるポジション、それが望みだったの?」
咲「望むところ」
久「…まぁ、もう変更しちゃったものは仕方ないとして…」
まこ「」
和「」
久「京太郎君、死んでるこの二人を観戦室に連れて行って叩き起して」
京太郎「…はい」
咲「京ちゃんガンバ」
久・京太郎「あんた(お前)のせいだからね(な)!」
何故かよく怒られてるけど全く理由がわからない…。
すみませんやっぱ眠いんで一旦軽く寝かせて下さい。
後金曜に上げるとかいって忙しくて上げられずに申し訳ないです。
おつー
常にわが道を逝くてるてる
続き来たか
衣「お前は一体何者なのだ?」
サキ「私がポチです!」
和『何で主人公いきなりお犬宣言してるんですか!』
憧『あっ、ホントだ。間違ってる』
和『間違いすぎです!』
憧『あはははははー』
憧『やっちゃったJE☆』
和『格好良く言わないで下さい。それよりもっとあるんですよ誤植!』
なんていうんだろうな、照を気持ち悪いモブにしないで欲しいんだが
乙つ
>>29
すみません。この照はあくまで咲として育ってきた照なので、インハイ準決勝で魔王化するような照でもないですし
かと言って原作の小動物の咲でもありません。
謎の大食い設定についての進言でしたら、原作の咲との差別化を図った際に追加したものです。不快に感じるようでしたら申し訳ございません。
というわけで続き行きます。
咲「おおう、優希が快調に点を稼いでいる」
久「うーん…これはこれで良かったのかしら…」
京太郎「せんぱーい、染谷せんぱーい…出番すぐ回ってきますよー」
まこ「うう…咲には首輪を付けてリードをして迷子にさせないように…」
和「咲さんに首輪!?」ガバッ
咲「チョーカーやネックレスじゃなくて首輪?遠慮しておく。…おお、流石優希。東場はお手の物」
和「だからいつの間に優希とは名前呼びする仲になったんですか!」
咲「合宿中に食トークで。あと諦めない姿勢」
咲「優希はずっと私たちと卓を組んでいてあまり良い成績を出せなかった。それでも文句をぶつくさ言いながらもずっと頑張り続けた」
咲「そういった姿勢もあって、私は彼女を優希と呼ぼうと決めた」
和「私も!私も頑張ってますよ咲さん!」
咲「まだ早い」
和「だああああああああああああ」
京太郎「ワンコインで2人抜き入りましたー」
久「起こして!今すぐに!!」
質問
この世界の照ってショートヘア?
だとしたら咲は長め?
――次鋒戦――
優希「たっだいまだじぇー!」
咲「お帰り、優希。どっちがいい?」
優希「おお。流石は我が嫁候補の一人、咲ちゃん。疲れた私にタコスの差し入れとは気が利いてるじぇ」
久「…なんかまこも荒れてるわね」
京太郎「お前が怒らせたせいだぞ…おーい、和、起きろー」
和「首輪を付けるのがダメなら私に付けてください…ハッ!」
咲「鬱憤を卓上で晴らせるなら良いんじゃない?」モグモグ
優希「染谷先輩なら心配は要らないじぇ」モグモグ
久「…これはかなり、まずいわね」
咲「美味しいけど?」
優希「だじぇ」
>>33
一応その辺は言及しないつもりだったんですが、自分の考えの中ではまんま入れ替わった先同士の髪の長さです。
――中堅戦――
まこ「うむ。なかなか良いストレス発散になったわ」
咲「まこ先輩、お疲れ様」
まこ「…主にあんたのせいなんじゃが、まぁもう終わったことじゃけぇの」
優希「今日はもう一試合あるから、そこでも爆発してほしいじぇ!」
和「部長は軽い手ばっかり上がってますね…らしくないといえば、らしくない」
京太郎「点数は圧倒的に上回ってるからこれはこれで良いんじゃないか?」
和「私はスタイルを変えるつもりはありませんから。咲さん見てて下さいね!」
咲「うん。頑張って」
――副将戦――
久「ふー。疲れた疲れたっと」
まこ「40分で1局終わらせておいて良く言うわ。らしくない」
久「…理由があるのよ」
優希「どうやら咲ちゃんの出番はなさそうだじぇ?」
京太郎「東福寺がトビそうだもんな」
咲「とか言ってる間にハコテン」
まこ「本気出しすぎたのぉ。まぁ次もこの勢いで行ければ楽じゃろ、部長?」
久「…ええ。楽かもしれないわね。…決勝以外は…」
おやじ「へい!チャーシュー麺お待ち!」
久「…にしても、本当に咲の出番なしに決勝まで行くとは…」
咲「みんな強い。見違えた」
まこ「そらーわらに言われても皮肉にしかならんぞ…」
優希「この調子で決勝もコマを進めて、咲ちゃんは全国への隠し玉にしてやるじぇ!」
和(美味しい…)
久「………」
優希「おやじ!タコスラーメンを作れ!」
おやじ「タコはねぇなぁ」
咲「ただいまー」
界「おうお帰り」
咲「部長に決勝進出祝いのラーメン奢ってもらっちゃった」
界「そうか。…ん?そうなると俺の夕食は?」
咲「………カップラーメン…とか?」
界「ねぇのかよ!というかお前が良くラーメン一杯で済んだな!」
咲「………おやすみー」
界(絶対1杯じゃねぇ!)
出番がなく決勝にまで来てしまった。
対戦相手はあの子と同格とされる天江衣…。
あの牌譜を見る限り、ある程度の打ち方は予想が付くけど…。
高い手を基本直撃していくスタイル…。しかし、その程度で咲と同格?
仮に隠している本質を探るとして、今の私だとどの程度の時間がかかるのか…。
…まぁ、やってみないことには分からないか。寝よう。
まこ「絶対的な経験不足?金銭不足じゃなく?」
久「ええ。…あ、そっちも咲ね」
まこ「うちら相手にとんでもない連対率を誇る咲がか?考えすぎじゃろ?」
久「…どうも咲がやってることはチャンピオンの模倣にしか感じられないのよね」
まこ「ほう」
久「チャンピオンだって一年目からあそこまでのポテンシャルを最大限に引き出せていたとは思えないわ。その背景には多くの経験があるはず」
まこ「なるほど。それもあって、わらー予選で飛ばしトップでの通過を危惧してたんじゃな」
まこ「咲にとって公式戦初の舞台が、県予選の決勝という大舞台になってしまうのが怖いと」
久「…将来的には間違いなく、県予選の決勝レベルなんてものは、彼女にとって大舞台ですらなくなると思うわ」
まこ「しかし、現状ではどう転ぶか分からない…か」
久「その驚異的な連対率だって、手の内が分かってる私たちだけのものよ?」
久「……結局チームとしての勢いにブレーキをかけさせない方が、あの時は良いと思って何も言わなかったわ。…それでも」
まこ「…本人には何で言わないんじゃ?」
久「こういうのって人に指摘されるより自分で気付いた方がいいかなーと思って…」
まこ「母親か何かか!」
久「まだピチピチの17歳よ?」
久「…それに、二連続で他校を飛ばしての勝ち上がりということで、否応なく目立ってしまっているはず。変に対策を取られなければ良いけど」
久「…まぁ、全部杞憂になれば問題ないけれどもね。明日」
久「さぁ。決勝よ!」
一同「はい!」
久「一人2半荘ずつの計10半荘。やはり点数は引き継ぐ」
優希「…ホントだ。咲ちゃんの言う通りだったじぇ…。タコス2個持ってきておいて良かった…」
咲「私も長期戦に備えて沢山のお菓子を用意してある。優希だけ空腹で打つのはかわいそうだと思った」
まこ「わりゃ鼻が良すぎるのと食に対する意識がデカいのが問題じゃの…」
和「ふぁぁ…」
久「あら和、おねむ?しっかりしてよね?」
『あと10分で先鋒戦が始まります。各校の先鋒は所定の対局室へ…』
優希「おっと出番か!行ってくる!」
まこ「頑張りんさい!」
『さぁ今年も始まりました、夏のIH全国大会へ向けて争われるたった一つの枠、長野県代表!』
『昨年は連続県代表記録を持つ風越女子がその椅子の座を龍門渕に奪われてしまいましたが、果たして今年はどうなることやら!』
『それではまもなく始まる先鋒戦のメンバーの紹介をしていきましょう!』
『快進撃中の新鋭!清澄高校1年、片岡優希!』
『王座を取り戻せるか!風越女子2年、池田華菜!』
『善戦中の無名校!鶴賀学園2年、津山睦月!』
『再びその力を見せ付けるのか!龍門渕高校2年、井上純!』
『実況は私・三科健太と、解説は麻雀プロの藤田プロでお送り致します』
『それでは藤田プロ、よろしくお願いします』
『あぁ、宜しく』
『決勝先鋒戦…まもなく開始です!』
優希(タコス2個持ってきておいて良かったじぇ…)
純「お、なになに?君俺のファン?差し入れ?サンキュー」パクッ
優希「」
優希(ま、まだ大丈夫だじぇ…。もう1個…)
華菜「違うし!これは華菜ちゃんへの差し入れだし!」パクッ
優希「」
優希「ううっ…ぐすっ…私のタコス…」
純・華菜「!?」
華菜「り、龍門渕!お前のせいだし!」
純「はぁ?違う、最後の食べたのはお前だろ!」
睦月(まず人のものを何の了解も得ずに食べるのがおかしいと思うんだが…)
―清澄高校控え室―
一同「あっ…」
京太郎「お、俺急いで何とかしてタコス探してきます!」
久「そうして頂戴…」
お前大将だろうが池田ァ!
『先鋒前半戦終了!5分の休憩の後、同じ面子で後半戦を開始します!』
純(物足りない)
華菜「ぬぐぐ…あの変な鳴きにどうもやられる…」
優希(タコス力がなければどうしようもないじぇ…)
鶴賀「うむ…」
龍門渕 116000
風越 102000
清澄 94000
鶴賀 88000
久「…まぁ見事なまでの焼き鳥だったわね」
和「…そういうこともあります!」
まこ「じゃがどうやら龍門渕の標的は風越になったようじゃのう」
咲「後半戦でタコス力を補充した優希が何とかしてくれる」
京太郎「おら、優希!探してきてやったぞ!」
優希「!お前は使える犬だ!偉いぞ京太郎!」ムシャムシャ
京太郎「誰が犬だ。…頑張れよ」
優希「任せておけ!」
『先鋒後半戦、開始です!』
優希(来たじぇ…配牌一向聴!)カシャッ
純(…チビに良い気配が)
優希「聴牌!リーチ!!」
睦月(現物…)
純「チー!」
華菜(…またその鳴きだし)
健太『どうも龍門渕の井上選手は謎の鳴きを見せることが多いですね』
靖子『雰囲気で相手の手牌が良いかどうか察知している感じ…といったところか』
健太『藤田プロはどうです?ああいった鳴きは』
靖子『私には無理。意味不明。【流れ】というものを信じるものにしか出来ない鳴きだろうな…』
健太『ですが結果として清澄高校の一発ツモを防ぐこととなりました』
靖子『ついでに鶴賀はリー棒付きのノミ手を上がれたな』
優希(何なんだじぇ…前半戦から思ってたけど、どう考えても上がりに結びつく鳴きをしてない…このノッポ…)
純「…さて、東2局だな」
華菜「」スウウ
華菜「にゃー!!!!!」
三人「!?」
華菜「おい、清澄」
優希「…な、何だじぇ?」
華菜「予選の牌譜は見せてもらった。お前も私と同じ、高打点を上がるタイプだろ?」
優希「…だったら?」
華菜「このノッポが変な鳴きをするとか、しないとか関係ない」
華菜「どちらが稼ぐか勝負といこうじゃないか!」
優希「…!」
純(言ってろ。捌ききってみせる)
優希「良いだろう。池田とか言ったな。…ここからは気合の入れ直しだじぇ!!」
優希(だじぇ…)
華菜(にゃぁ…)
純「!?」
純(風越と清澄の両方から良い気配が!)
華菜「リーチだし!」
優希「私もだじぇ!」
純(ぐっ…これは…)
華菜「ロン!」
優希「ツモ!」
優希「ツモ!」
睦月「それロンです」
華菜「ロン!」
優希「…やるじゃないか、池田とやら」
華菜「上級生には敬語を使え!ツモ!」
――清澄高校控え室――
久「どうやら龍門渕の先鋒は2人以上の対応には慣れていないようね」
まこ「そりゃー、1局で鳴ける回数は限られてるけぇのぉ」
咲「ずらして振り込みなんて最悪だからね」
和「そもそも流れとかいうのがオカルトです。ありえないです」
『先鋒戦終了!』
風越 126000
清澄 113000
鶴賀 90000
龍門渕 71000
純(…ぐっ、してやられた!)
優希「やるじゃないか、池田…」
華菜「敬語使えし…。でも、なかなか楽しみな一年だな!来年も楽しみだ!」
睦月「…ふぅ」
――清澄高校控え室――
久「この風越の先鋒は去年は大将だったのよね…」
咲「あれだけ高火力でノーガードの殴り合いをされたら脇はたまったもんじゃない」
まこ「ここまで読んでの配置転換なら大したもんじゃのぉ。さて、行ってくるか」
和「だからそもそも流れが…ふあぁ」
咲「はーい。おねむな子は寝に行きましょう。私も行くから」
和「え、咲さんと一緒に…?」
久(…もしくは、大将前にある程度のアドバンテージを得て、逃げ切りを図るための配置転換だとしたら)
――次鋒戦――
佳織「ツモですっ。裏ドラは…ありません」
まこ「…手牌は?」
佳織「ああっ。すみません!リーチツモ…トイトイ…でしょうか?」
未春「」
まこ「」
智紀「」
佳織「?」
――清澄高校控え室――
優希「…ああ上がった本人が申告してるんだし、親の染谷先輩は4000払いで良いんじゃないか?」
久「…ここは雀荘じゃないから…」
『次鋒戦終了!』
風越 124800
鶴賀 120600
清澄 93500
龍門渕 61100
――清澄高校控え室――
京太郎「…何があったんです?」
まこ「買い出しご苦労」
優希「染谷先輩が親の時ばっかりツモられたのだ。一つはリーヅモトイトイだじぇ」
京太郎「え?リーヅモトイトイって…四飜だから…」
久「…須賀君はもう少し勉強しないと、個人戦も全然良いところなく終わっちゃうわよ?」
和「…zzzz。咲さん…」
ようやく寝てくれた。手のかかる子。
さて、私は特に眠くもないから控え室に戻るか…。
咲「………」
咲「………」
咲「うん」
咲「迷った」
衣「はーなーせー」
靖子「可愛いなぁお前は。こんな子供が欲しい」
咲「ん」
靖子「お、清澄の大将」
衣「!!」
咲「カツ丼さん」
靖子「いやだから何だその呼び名は。こんな所で何してる?」
咲「うちの高校の控え室が何処だか分からない」
靖子「迷子?」
咲「そうとも言う」
靖子「そうとしか言わない…」
衣「………」
衣「清澄の大将。ちょっと良いか?」
咲「ん、良いけど…。どなた?」
靖子「ああ、こいつは龍門渕の大将。天江衣だ」
咲「!」
そんな気配どこにも…
靖子「対局中と敵意が向けられてない相手にはコイツはただの子供だからなー」
衣「こどもじゃない!ころもだ!」
衣「…少し二人きりで話がしたいのだが、大丈夫か?」
咲「構わない」
靖子(対戦校同士の馴れ合い…まぁ、悪くないか)
靖子「それじゃ私は退散するとするかな」
衣「…行ったか」
咲「話って、何?」
衣「そうだな。…宮永照、と言えば分かるか?」
咲「………インターハイチャンピオン」
衣「…そう固くなるな。私は数少ないお前たちの入れ替わりを知っている一人だ」
咲「!」
衣「一目で見てお前が咲が言っていた姉だと気付いたよ。血は争えないものだな」
咲「…なるほど。咲が喋ったのか。入れ替わりを知っているのは、母さん以外では菫さんだけかと思っていた」
衣「去年私がMVPを取った後、私個人の元に白糸台から便りがあった。昨年度に猛威を振るった打ち手を集めて合宿を行いませんかと」
衣「勿論衣にとっては莫逆の友と対局が出来るのは嬉しく思い、護衛付きではあるが二つ返事で参加したわけだが…」
衣「その中でも咲と一番意気投合し、唯一無二の親友とも言える存在となった」
咲「親友?…なら、咲の魅力を一つ挙げてみて」
衣「…そうだな。麻雀している時とそれ以外の時の格差がまたあいつの魅力とも言えようか」
咲「流石咲の親友。良く分かっていらっしゃる。間違いない。まぁそれ以外にも沢山あるけど」
衣「しかしながらあれは強い。間違いなく昨年の時点で高校生の頂点に達していただろう」
衣「衣も色々と咲から学ぶことがあった」
衣「無闇矢鱈に周囲を萎縮させるべきではないというものや、感覚を選択肢の一つとして対局を進めると言ったもの…」
衣「…まぁ、今年は衣が勝つけど!」
衣「そんな話の中で、長野に本当の姉がいると聞いてな。今年高校生になったと聞いて、対局出来るのを楽しみにしていた」
咲「…他の人には話した?」
衣「いいや。咲がその合宿中では私にしか教えてくれなかった秘密だ。教えるわけもない」
咲「…安心した」
衣「とにかくそれだけは言っておこうと思ってな。…大将戦での手合い、楽しみにしている」
咲「私も」
その場を去る天江衣を見ながら、私は考えていた。
咲と私の入れ替わり。それを知る者。
当然咲との親友ともなれば、最近の咲の打ち筋がおかしいことにも気付いているだろう。
万一、私が負けても…彼女がそれを…。
咲「…いやいや」
そんな考えをするのはよそう。
そもそもそれでは母さんの鼻っ柱を折れない。
とにかく今考えるべきことは…
咲「控え室への行き方!!」
――中堅戦――
久「リーチ!」
星夏(この人の牌譜とキャプテンの言ってることが本当なら…)
星夏(しかしリーチで満貫確定…すみませんキャプテン、一回だけ押させてください!)
星夏「…通れば」
久「通らないな」
久「ロン!12000!」
星夏(…やっぱり)
智美「…ワハハ。多面を捨ててドラの地獄単騎か」
一(…とんでもない打ち筋だ。バカなのか、それとも…)
久「リーチ!」
星夏(この人のリーチは悪待ちが多い!とにかくこれ以上はキャプテンの指示通りに…)
一「…」
久「ロン!」
一(また多面を捨てて単騎!?)
智美「…頭痛くなるぞ。そのひねくれた待ち方は…」
久「人間は一番弱いところに来るのよねぇ…」
まこ「龍門渕は去年沢山データを取られたのが痛かろう」
優希「……というか初見で部長に対応するのは難しいと思うじぇ…」
京太郎「その点風越は一回打ち込んだだけで対応してきましたね」
まこ「もしかすると部長の打ち方を知ってる人がおるのかものう…」
和「ただいま戻りました…」
咲「同じく」
京太郎「お前らどこ行ってたんだ?」
和「仮眠室です。咲さんとの添い寝のおかげか、短時間でも良い効果を得られそうですよ!」
添い寝してないんだけどね…。言わないでおこう。
和「それにしても良い感じに龍門渕を抑えてますね。現時点で一位ですし」
優希「このまま優勝だじぇ!」
『中堅戦終了!』
清澄 132600
鶴賀 102000
風越 93800
龍門渕 71600
――清澄高校控え室――
久「いやー。疲れた疲れた」
まこ「お疲れさん」
咲「部長、凄かった」
和「次は私ですね…」
優希「和ちゃん、ファイトだじぇ!」
和「咲さん、見ていてくださいね!」
咲「何だか途端に眠気が…」
和「があああああああ」
咲「大丈夫。ちゃんと見てるから」
しかし、からかいがいがある。
『ここで県大会決勝開始から6半荘が終わりました!』
『残るは副将戦と大将戦の4半荘のみ!ここからどう各校が戦っていくのか、見ものです!』
『それでは試合に挑む副将戦のメンバーを紹介していきましょう!』
『名門風越女子2年、深堀純代!』
『健闘中の無名校、鶴賀学園は3年生の加治木ゆみ!』
『前年度県優勝校、龍門渕2年、龍門渕透華!』
『そして清澄は昨年のインターミドルチャンピオン…原村和!』
『その力はインターハイにも通用するものなのか!』
『間もなく対局開始です!』
和「テンパイ」
ゆみ「テンパイ」
透華「ノーテン」
純代「ノーテン」
健太『流局が多い対局になっていますね』
靖子『4人全員が基本デジタルのようだ。…あくまで基本だが』
ゆみ「ロン」
健太『おっと、ここで清澄高校原村和選手の余り牌を狙った直撃が炸裂!』
靖子『どうやらこの鶴賀の部長はそういった細かいところが上手いな』
健太『と言うと?』
靖子『基本デジタルってのは相手がこれが要らんからその余った牌を狙うなんてしないんだよ。非効率だからな。それよりも受け入れや打点、残り牌数等を重視する』
健太『なるほど。…ちなみに、この鶴賀学園の副将の加治木ゆみ選手は部長じゃないです』
靖子『マジで?』
純代「ツモ」
透華「ツモですわ!」
健太『他校にも上がりが出始めましたね』
靖子『そりゃぁ他の3人は100%デジタルだからな』
健太『インターミドルチャンピオン、原村和についてはどのように思います?』
靖子『…ペンギンが胸で圧死しそう』
健太『打ち方とかなんかないんですか!?』
靖子『いや、打ち方も何も…こんな2半荘程度じゃ力は測れないんだがな…』
健太『しかし、高校生に年1000半荘クラスのロードは無理ですよ…』
靖子『まぁそれもそうだがな…』
ゆみ「ロン」
和「ロン」
透華「テンパイ」
三人「ノーテン」
『副将戦終了!』
清澄 135200
鶴賀 105900
風越 92500
龍門渕 66400
――清澄高校控え室――
優希「…地味だじぇ」
久「基本デジタルの4人が集まったらこうなるわよ」
まこ「流局も多かったけぇのう」
咲「…さて、私の出番」
久「ちゃんと食事取ったの!?」
まこ「お菓子はきちんと用意したんか!?」
咲「大丈夫。任せて」
和「…咲さん!」
咲「おお、原村さん。お疲れ」
和「頑張って下さいね!絶対、全国行きましょう!」
咲「うん」
優希「あとは任せたじぇ咲ちゃん!」
咲「行ってくる」
バタン
まこ「…後は、わりゃが不安に思ってることが問題にならなきゃ良いの」
久「…それを私も願ってるわ」
咲「あ、天江さん」
衣「おお、照。衣で良いぞ?本来はお前の方が年上なのだからな」
咲「…いや、それは良いけど。…照呼びは他に誰もいないときだけにしてね?」
衣「それは約束出来んな。しかし、大将戦…。大差が付いたとは言え、衣は負けないぞ?」
咲「……私も負けないから。咲と戦うためにも」
衣「安心しろ。私もそのつもりだ。遠慮なく掛かってこい」
衣「咲の姉がどのような麻雀を打つのか、とても興味深い」
咲「………」
『昨年トップの2校が無名の2校に抑えられるという番狂わせ!』
『勝負は遂に、大将戦へと突入します!』
『鶴賀学園からは、1年の東横桃子!』
桃子「お手柔らかにっすよ」
『昨年とはメンバーを変えてきた名門校、風越からは福路美穂子!』
美穂子「お願いしますね」
『現在トップの清澄高校、バトンを受けるは1年の宮永咲!』
咲「よろしく」モグモグ
『まさかの最下位、しかしながら大将にはこの人がいる!』
『昨年度インターハイ最多獲得点数記録保持者!』
『龍門渕高校2年、天江衣!』
衣「…では、始めようか」
東1局 親:咲
結局県予選では出番がなかったから初めての公式戦が大将戦になったけど…
美穂子「」タン
衣「」タン
桃子「」タン
やることは昔と変わらない。まずはこの3人の本質を見抜かせてもらう。
美穂子・桃子「」ゾクッ
美穂子・桃子(何、今の…)
衣(…ほう。姉の方もこれを使えるのか)
美穂子「つ、ツモ」
桃子「…ハイっす」
衣「はーい」
…やっぱり、今の私じゃ1局じゃ終わらないか…。
東2局 親:美穂子
美穂子(…清澄の子から感じた殺気は、未だに続いてるわ)
桃子(何かやってるんすよね…私みたいに…)
美穂子(何にしても、動こうとしないのなら私が上がらせてもらうわ)
美穂子「ツモ」
『風越女子キャプテンの連続上がりだーっ!』
…うん、何となく分かった。多分これ以上の解析は時間がもったいない。
美穂子(…殺気が消えた?)
桃子(何だったんすかね、今の…)
衣(…2局かかったか)
東2局 1本場 親:美穂子
美穂子「1本場です」
風越のキャプテン。相手を良く観察出来る眼を持っている。自力も高い。
怖いのは他家を操られることかな…。
桃子「…」
鶴賀の大将。…今の状況では発動してないけど、自分の存在感を希薄に出来る…と言ったところ。
これが発動するとどうなるかは実際に対応しないことには何とも言えない…。
衣「1本場1本場~♪」
そして龍門渕の大将。牌譜では高い手を直撃するタイプだったけれど…。
…どうやら、海底でツモることを今のところ隠している。海底さえ回さなければ何とか…。
それと場の支配力か…。…今の私に、これが破れるのかどうか…。
そもそも、リードはあるのだから冒険はしない方が良いのかもしれないけれど…。
咲「ツモ。300・500の1本場は400・600」
それは私の麻雀じゃない。
衣「きちんと衣の本質を見抜けたか?照よ」
咲「…だからそれは止めてって…。」
衣「案ずるな。この中継、対局の合間合間の音声までは拾っていない。まぁこの2人には聞こえているが…」
美穂子(照?)
桃子(お二人は一体何の会話してるんすかね?)
衣「私の口を塞ぎたくば、麻雀で見せてみよ。衣も次局から動く」
咲「…上等」
東3局 親:衣
美穂子(…おかしいわ)
桃子(鳴きを入れたのは良いけど全く手が進まないっす…)
…確かに一向に手が進まないし、このままだと海底が…
衣「リーチ」
美穂子(残りツモは一回しかないのにツモ切りリーチ?)
桃子(どういうことなんすか…)
………鳴きを入れられない…。
衣「ツモ」
『天江衣選手のリーチ一発ツモ、海底撈月が決まったーっ!』
衣「照には鏡で見透かされたかもしれないが、他の2人には初披露だったな?」
衣「去年の衣とは違うというところを、お見せしよう」
東3局 1本場 親:衣
美穂子(この子…去年はこんな打ち方していなかったわ…)
美穂子(あの口振りから察するに、この局も海底で上がる気なのでしょうけれど…)
美穂子(…果たして、今回は海底があなたに回ってくるかしら?)
衣(む。上家の風越の大将は早々に牌を絞ってきたか)
衣(衣の手牌構成をきちんと読んでないと出来ない芸当だ)
衣(確かにこの局、衣は親だから鳴きがないと海底は来ない)
衣(なかなか厄介な手合いが上家に座ったものだ。…面白い!)
桃子(…にしても、やっぱこの面子だと消えるのに時間かかりそうっすね…)
桃子(一向聴地獄だし流局でもいいんすけどね)
桃子(めんどいのはラス目の親に連荘されることっす)
…どうやら私たち三人の見解は一致で流局をご希望のようだ。
私も手が進まないレベルの支配力…。やっぱりこれが経験の差なのか…。
…いや、今経験がないことを嘆いても仕方がない。とにかくここは降りる。
衣「テンパイ」
三人「ノーテン」
衣「うむ。やはり面白い手合いだ。衣は皆と打ててとても嬉しいぞ!」
東3局 2本場 親:衣
美穂子(参ったわね…鶴賀の子の鳴きのおかげで海底が回っちゃうわ)
桃子(しょうがないっす。基本私は消えること以外はデジタルっすから)
桃子(消えてない状態で鳴いて満貫以上が見えるなら攻めちゃうっすよ!)
咲「カン」
美穂子(…これで海底がズレるわね)
桃子(カンドラ乗らないっすかねー)
咲「…ツモ。嶺上開花」
美穂子・桃子(!?)
美穂子(その形から役無しへの大明槓?…まるでやってることがインハイチャンピオンのそれじゃない!)
桃子(うわー何か超怖いっすよ清澄の人…)
衣「流石は咲の姉。…と言いたいところだが、打点が低くないか?」
咲「………」
衣「その形なら、咲ならまず間違いなく赤牌を引き入れてのツモ上がりだろうな」
言いたいことはわかる。咲の嶺上開花は私とは違う本家本元。色付きの花を咲かせるレベルにまで達している。
だが私にはそこまでのレベルに達していないし、嶺上の牌も分かる時と分からない時がある…。
衣「何にしても衣の大好きな親が流れてしまった!照、この恨みは絶対に返すぞ!」
魔鏡があるなら打点上がり続けもありなのかね
東4局 親:桃子
…連続上がりを決めに行きたいところなのだが…。またこの支配力が…。
桃子「あ、それロンっす。親で3900っす」
咲「!?…はい」
桃子(今テンで助かったっすよ!)
衣「ふふーん♪」
桃子「1本場っすよー」
…支配力の振り分けまで出来るのか。恐れ入る。
ちょっと短調になりすぎたかな…。
東4局 1本場 親:桃子
…また鳴きが入って海底が彼女に回るのか。そして私は一向聴地獄が続く。
そうはさせない。
咲「カン」
衣(…流局間近のカンによる海底ずらし!)
美穂子(…また嶺上開花かしら?)
桃子(今度は私もテンパイ出来てないし、親っ被りはごめんっすよー)
…有効牌じゃなかったか。
桃子・咲「ノーテン」
美穂子・衣「テンパイ」
衣「…え?一人ノーテンじゃなく?」
美穂子「さて、南入ね…」
桃子(まだ消えるのに時間かかりそうっすね…)
衣「……」
南1局。天江衣の支配から解放されたのか、あっさりと私は500オールをツモることに成功する。
1本積み、また私は即座に役無しテンパイを張ることに成功した。
役無しなので出上がりは効かないが、今回は嶺上牌を感じることが出来る。間違いなく上がり牌だ。
けれど、今回も大明槓での嶺上開花ではノミ手で打点が上がらない…。
やや躊躇した後、私はリーチ棒と共に宣言牌を横にした。
――5,6,7....
河の一列目には既にリーチ宣言牌が曲がっていたはずの先制攻撃。
――10,11,12....
連続上がりの代償。それに伴い必要となる打点の上昇。
間違った選択肢ではないつもりだった。
――14,15,16....
早々に手を諦めベタオリ気配の2家とは別に、攻めてくるものが一人。
あの娘と同ランクの、牌に愛されし子の一人。
けれど、貴方の本質は分かっている。今回は貴方が海底でツモることはない。
衣「カン」
彼女のその発言で私の血の気は一気に引いた。
私から嶺上の上がり牌を抜き去った上で、海底を私に回すこのカンの意味は…
咲「…っ!」
暗刻持ちの、恐らく8枚目のこの筋牌を、私はカンすることも出来ずに河に置くことしかできなかった。
衣「ロン」
咲「…はい」
無表情を気取りながら点棒を渡す。彼女は酷く冷めた目で此方に眼差しを向けていた。
衣「何だ?この麻雀は」
咲「」ゾクッ
この感じ…!まだ制御が出来なかった小さい頃の咲以上の圧迫感と悪寒…!
咲「う…あっ…」
美穂子「?」
桃子(ん?清澄さんが何か苦しんでるっすね)
衣「私の本質を海底でのツモ上がりと感じたか?カンすればツモれるし放銃を回避できると思ったか?」
衣「…本当に。何だ、この麻雀は。楽しみにしていたというのに」
衣「嶺上の支配も劣る。本質を見抜くその力も既にあやつの方が上」
「お前は一体、何者なのだ?」
私は、その返事をすることは出来なかった。
>>1に繋がるか
『大将戦前半戦、終了!』
鶴賀 109800
清澄 102300
風越 95100
龍門渕 92800
健太『圧倒的な龍門渕の追い上げがありましたが、未だに龍門渕は最下位に甘んじています!』
靖子『そりゃー牌に愛されし子の一人だからな。猛威を奮って当然だろう』
靖子『そんなことよりも、南入してからの清澄だな…』
健太『そうですね。精細を欠いたというか、振り込んでばかりというか…』
靖子『龍門渕に山越しの直撃を喰らってからは、まるで別人だ。その後風越にも鶴賀にも振り込んでいる』
靖子『私がメンバーの一人なら、ぶん殴ってやるけどな。何だあの気の抜けた打牌は』
健太『モニターから見ても心ここにあらずって感じでしたよね…』
靖子『あのままの状態で最後の半荘も行くのなら、清澄に目はないな』
…あれ、ここ何処だっけ。
…ああ、そうだ。私、逃げるように出て行ったんだ。
全ての真実を知っている者に非難されて、お前は誰だと問われて。
何も返す言葉がなくて、対局が終わって休憩時間になってすぐに逃げたんだった。
そのプレッシャーに押し潰される形になって…。
確信を突くその一言の後、直撃狙いの山越しにも全く気付かず…。
鶴賀にも風越にも振り込んで…。
頭の中が真っ白になって、気が付いたら半荘は終わっていた…。
せっかくみんなが稼いだ点を、吐き出しちゃったんだ…。
…何が大将しかやりたくない、よ。何が私が咲を助ける、よ…。
……はは。笑わせてくれるわ。
「…とりあえず、ゆっくり泣いて良いと思いますよ」
「…原村、さん」
「付き合ってあげます。休憩時間一杯、泣いてみませんか?」
咲「…ど、どうしてここが?」
和「勘でしょうか。多分、私たちがいる休憩室には戻ってきづらいんじゃないかなぁと思いまして」
和「迷子の誰かさんでしたら無意識に飛び出したらどこに行くのかなぁと予測したら一発目で当たってました。なかなか良い引きだと思いません?」
咲「…怒らないの?」
咲「私は!せっかくみんなで稼いだ点を!不甲斐ない打牌の数々で!失っちゃったんだよ!そしてその場から逃げるように立ち去った!」
咲「原村さんは…私を怒りにきたんでしょう?それでも大将かって!」
和「何言ってるんですか。大将だろうが何だろうが、勝負は時の運です。どんなに頑張っても悪い方向に行ってしまうこともありますよ」
和「まぁ不甲斐ない打牌には目を瞑るとして…実際、あのとんでもオカルトの塊の天江衣を相手にして、良くやってる方だと思いますよ」
咲「…良くやってるじゃ済まされないでしょう!」
咲「…私の力じゃ、彼女には抗えなかった。咲を救うために意気込んだつもりが、ただの井の中の蛙だった」
和(…………)
咲「…彼女に言われて気付いた。私がやってることは所詮咲の真似事でしかないことを」
咲「これ以上やったところで…きっと…」
和「…宮永さん」
咲「…え?」
両肩に手をやられ、私は原村さんと面と向かって向き合う格好になった。
和「話す時はお互いの眼を見て話す。約束でしたよね?」
のどっちマジヒロイン
和「宮永さん、一つだけ言わせてください」
和「私たちは常に誰かの為に戦ってきました。それこそ、団体戦ですから。応援してくれているメンバーや、清澄高校の人。何だかんだ5割引きにしてくれたラーメン屋の人…」
和「私個人で言えば、父との約束のため、あなた個人は、離れている身内との約束のため」
和「ですが、今はもうそれだけが戦う理由じゃないはずです。みんなのためだけじゃない、自分自身のためにここで戦いを投げちゃいけないはずです」
咲「自分自身のために…?…でも、私は…」
和「…自分のことは、自分で決めてください」
和「そして私は信じています。私が知っている宮永さんは、この程度の事じゃへこたれないと」
和「天江衣がなんです!?井の中の蛙がなんです!?」
和「…私にとって、あなたは!」
和「ちょっと意地悪だけども、自信満々で!」
和「少し食い意地が入っているけれども、それでいつも場を和ませている!」
和「…私を見惚らせた麻雀を打っていた、宮永さんでしかないです!」
咲「…………」
…全く、どっちが手のかかる子なのだろうか。
…どうする?
………どうするって、もう…決まってるじゃない。最初から答えは一つなんだから。
衣「…さて、休憩時間も終わるが、あの劣化コピーは戻ってくるのかどうか」
美穂子「劣化コピーって…天江さん、喧嘩はダメよ?」
衣「何を言うか、風越の大将よ。戻ってこなければ一人減るのだから其方にとっても都合が良いではないか」
美穂子「そういうことじゃないでしょう…」
桃子「…でも、どうやら三麻にはならずにすみそうっすよ」
咲「…遅くなりました」
衣「…ほう。死んでいた目に輝きが再び宿ったか。だがその精神がどこまで戻ったものか」
咲「…ここは卓上。言葉は意味を成さない」
衣「……おっと、それもそうだな。先ほどは衣がいささか多弁過ぎたようだ」
美穂子「何か言いたければ打牌で示せ…ってね♪」
桃子「そう。それが麻雀打ちのルールっすよ!」
『泣いても笑っても、これが最後の半荘!県予選大将後半戦…スタートです!』
健太『さぁ、大変なことになってまいりました!』
健太『長野県予選決勝、残すはオーラスの1局のみ!』
健太『親番は東横桃子!今そのサイコロを振るためのボタンが押される!』
健太『現在の得点状況はこのようになっております!』
龍門渕 103900
清澄 100300
風越 99000
鶴賀 96800
靖子『正直驚いた。ここまで善戦するとは思ってもいなかった』
靖子『まず清澄。前の半荘の動揺はもう見えない』
靖子『そして風越。こいつはセンスの塊だ。個人戦をやっても、多分全国で上位に食い込めるだろう』
靖子『鶴賀。点数は凹んでいるがかなり食らいついている』
靖子『この鶴賀の打牌による上がり牌の見逃しが故意なのか偶然なのかは分からないが、全体的にツモの上がりが多くなっているな』
靖子『そして龍門渕。圧巻の一言だが、若干物足りない気も…』
南4局 親:桃子
桃子(さー、オーラスっすよ)
衣「正直驚いたぞ」
美穂子「?」
衣「風越。お前は全体を見る目が素晴らしい。的確な鳴かせ方と衣への対応。そして隙あらば上がろうとするその打ち筋」
衣「お前が上家にいなければ衣は海底を連発出来ただろう。天敵と言って良い」
美穂子「あらあら、それは褒められてるのかしら?」
衣「鶴賀。もう既に満月の衣ですら、お前を見付けることは容易いことではない。よくぞここまで気配を断つ術を身に付けた。その努力は並大抵の物ではなかったろう…」
桃子(うーん、特に努力はしてないんすよね…)
衣「間違いなくお前たち二人と卓を囲んでいなければ、ここまでの接戦にはなっていない。面白い戦いであった」
美穂子「まだ終わってないわよ?」
桃子「そうっす!」
衣「…そうだったな。どうも珍しく多弁になってしまう。このような面白い手合いと打てたおかげか、衣は感情が高翌揚としているようだ」
衣「…問題は清澄、お前だ」
咲「………」
衣「個人的な支配は解いたと言え、ここまでノーホーラ。結局、衣が前の半荘で投げた問いに答えは出たのか?」
咲「………」
衣「…無言を貫くか」カチャッ
衣「!」
衣(…清澄の当たり牌!)
衣(掴まされたか。…得点は、1300と言ったところか)
衣(言葉は卓上では意味を成さない、お前はそう言ったな)
衣(…面白い。ならばこの上がり牌、どうするつもりだ?)
衣「…どうする、清澄。これで上がったら終了だろう?」タン
咲「…当然。カン!」
健太『おっとここで宮永選手、上がりを見送ってのカンだ!』
靖子『そりゃ1300じゃ直撃しても捲れないからな…』
靖子『確かにこれで5sをツモれば責任払いのタンヤオ嶺上開花で2000直撃で捲れる』
靖子『……責任払いがあればの話だがな』
健太『ああっとそうでした!今年から廃止になったんですよね、それ!』
靖子『そして赤5sは天江の面子にがっちり組み込まれている』
健太『清澄、万事休すかー!?』
咲「ツモ」
衣「…それでは衣を捲れまい。500・1000だろう?」
咲「いいえ」
衣「…はっ!」
『新ドラ表示牌が4sだーっ!!!』
咲「ツモ。嶺上開花・断幺九・ドラ1…1000・2000」
『優勝は清澄高校だーっ!!』
美穂子「………ふぅ」
桃子「…うえっ、うぐっ…!うわーん!!」
衣「…馬鹿な。咲は言っていたぞ。私の嶺上開花は上がっても新ドラが絡むことがないと…」
咲「…そう。それが咲の嶺上開花。全てのリンシャン牌が分かり、その殆どで色を咲かす」
『森林限界を超えた高い山の上、そこに色付きの花が咲くこともある』
咲「だから私は、色を咲かせる代わりに、照らした。そのリンシャン牌を。新ドラという名の、新しい光で」
『…そして、そこに咲いた花を照らす光もある』
咲「これが私の嶺上開花。…まぁ、嶺上開花自体は咲のそれだし、まだまだ嶺上牌の支配も及んでない。…たまたまといえばたまたまかもしれない」
咲「でも…」
咲「私は自分を信じた。だからこの結果が得られたんだと思う」
衣「…それは間違いないだろうな」
咲「?」
衣「自分を信じないものに牌は応えてくれない…。お前の妹の売り文句だよ」
靖子『…シュレディンガーの猫、といった所か』
健太『え?』
靖子『箱の中に猫を入れ有毒ガスを入れる。猫はどうなると思う?』
健太『そりゃ死んじゃうに決まってるじゃないですか!』
靖子『そう。それが常識的な話。しかし、猫がどうなったかどうかは実際に箱を開けて見なければ、推測は出来ても結論は出せない』
靖子『実際には量子力学の話だから詳しくは私にもわからん』
靖子『今回大将戦では嶺上開花と海底撈月というレアな上がりが何度か起こったが…』
靖子『果たして他の連中が全く同じ行為をした場合、同じことがきちんと起こるのだろうかと、ふと思ってな…』
健太『…それこそ、実際にやってみないと分からないのでは?』
靖子『………まぁ、そうなるよなぁ』
靖子(…それでも、清澄の大将は休憩を挟まなければあの上がりが起こることはなかったと、私は思いたいね)
和「…宮永さん!やりましたね!」
咲「…和、ありがとう」
和「え?今私のこと和って?」
咲「和に叱咤激励されなかったら危なかった」
和「わわわやっぱり今私のこと和ってあわわわ」
咲「…天江衣さん」
衣「…ん、答えは見つかったんだろう?」
咲「うん。あなたの問いに、今なら私は答えられる」
衣「なら、聞かせてくれ」
咲「和もきちんと聞いておいて。私からは決して話したことがない、宮永家の秘密」
咲「私は…」
「宮永咲だけど、宮永照だから」
To be continued...
乙
メル欄にsagaを入れるとフィルター解除できるよ
途中間が空いてしまって申し訳ありませんでした。
補足しておくと、照が別に豆腐メンタルな訳じゃなくて衣のプレッシャーがとんでもなかっただけです。原作規模のプレッシャーを全部まとめて照にぶつけたので流石の照でも耐えられませんでした。
まぁ何か多弁な衣とか多食な照とか龍門渕YOEEEとかあると思いますが、読んで頂いた方がいらしたらありがとうございました。シャワー浴びて読み直したらHTML化依頼してきます。
ところで華菜はどう考えても制約抜きに暴れられる先鋒向きで、キャップはどう考えても他家を操れて自力も高く点棒調整が上手い大将向きだと思うのですが、風越の監督は何を考えてるんでしょうか?
乙 咲さんサイドも見てみたいです
乙
和が宮永さん呼びに戻したけど咲ではないと気付いてたの?
>>70
この照は衣の支配化には完全には抗えないので鏡持ちでも連続打点上がりは難しいです。
そしてやっぱり連続打点上がりは大将向きじゃないです。久の考えは正しい。
>>89
咲さんサイドはインハイ準決だけ別枠でやるかもしれません。
リザベコンビだけは咲さんの格好の餌食だなぁと思ってますが残り2人の対応が全く思い付きません。
ただスペック的にこの世界の咲さんは鏡・連続打点上がり・赤入り嶺上開花・点棒調整の全てを使いこなす化物です。
真正面で戦っても何か普通に勝てそう。
>>90
実は衣も呼び名が照→劣化コピー→清澄と変わってたりします。
衣のそれは興味をなくしたそれですが、和のそれは混乱してる照への配慮です。
咲「…彼女に言われて気付いた。私がやってることは所詮咲の真似事でしかないことを」
咲「これ以上やったところで…きっと…」
和「…咲さん」
咲「違う、私は…」
こうなるので。 あの一瞬で配慮出来るのどっちマジヒロイン。ただ何かしら気付いたかもしれません。
和「レズノート…レズのノート…ということでしょうか」ペラッ
和「How To Use It…使い方…全部英語ですか…面倒ですね…」
和「…なになに、『このノートに名前を書かれた人間は…』」
和「『レズになる』」
和「」ガタッ
【宮永咲→原村和】
和「咲さん!結婚しましょう!」
咲「断る」
和「効かないじゃないですかこのノートおおおおおお!!」
知らぬ間にのどっちが好きになってる本物の咲さんぇ…
デスノは顔と名前が一致しないと無効だぜよ
本人認識の意味だと思われるから例えそっくりの双子だろうと無理な気が
レズノは知らんww
レズノスレの方でも顔と名前が一致しないと駄目って話だから多分意味ない
咲のリンシャンの真似事を辞めて腕グルグルコークスクリュー照に戻るのかと思ったら
また別のリンシャンの方に進むのか でもそれでもそこまで強く感じないな
明カンで即ノリってあんまり一般的ではないよね
咲ではどうなってたっけ
考察ブログによるとアニメで明カンから即ドラめくってるシーンが1回だけあり、
それ以外のシーンでは打牌後にドラめくりで統一されてるらしい
>>88
大将池田は来年を見込んでの判断じゃねーの?
キャップの全国も考えてやれよ個人で出たけど
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません