希「のんたんの冒険!」 (36)



希「じゃ~ん! ここに取り出したるは怪しげな水晶球」

 「えりちに誕生日プレゼントとしてもらったんやけど、今まで部屋の飾りと化しとったやつやな」

 「(直感で選んだ言うとったわりには、けっこう危なげな力を感じるから使ってなかったんやけど……)」

 「(……今は未来を知りたい!)」


希「ちゅうわけで水晶玉さん、未来を知りたいんやけど……?」

――汝、未来を知ることを欲すか?―――

希「おぉ、やっぱ本物やん。ウチが知りたいのは――」

――汝欲すならば、自らの眼で未来を見据えよ―――

希「(へ、光が溢れて……ひ、引き込まれる!)」

 「な、なんやこれぇぇ~~~……」

 ………



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ラブライブ!二次創作 希「のんたんの冒険」

※のんたん誕生日おめでとう!
※のんたん主人公です。のぞえりかもしれません
※1万字くらいなのでさっぱり終わります
※けっこう短く区切りますが仕様ですのでご容赦ください
※のんたんの秘密の花園にDancing stars on me! する展開はありません
※某曲をモチーフとしていますが、ネタバレになるので最後に説明します
※よろしければ少しの間お付き合いください




 ………

希「はっ、ここはどこや?」

 「(部屋の中におったはずなのに、ここは……近所の公園? 時刻も夕方くらいやんな)」

 「(携帯は……あかんか。まずは現状を把握せんと)」


 「……………」


希「驚いたなぁ……」

 「(近くのコンビニに来てみたはいいけど、日付が2016年の◯月☓日、まんま2年後やん)」

 「(ウチは……タイムスリップしてしまったみたいや……!)」


 「……………」


希「(とにかく元の時代に戻る方法を考えんと)」

 「(だいたいこの手のタイムスリップは、この時代のタイムスリップ装置に接触するか目的を果たすかが帰る手段)」

 「(ウチが願ったのは未来を知ることやから、それが目的やろね。とすれば何かが起こるのを待ってもええけど、やっぱりこの時代のウチに接触して……)」


「あ、希ちゃ~ん」





希「(このウチの未来ってことはタイムスリップの経験をしたってことやから、別に会っても問題は――)」

「ねぇ、希ちゃんってばぁ!」

希「ふぇっ?! な、なんですか??」

「なんですかって……」

穂乃果「穂乃果だよ?」

希「ほ、穂乃果ちゃん……?」

 「(い、いきなりこの時代に友達に会ってしまうなんて……これマズいんやろか?)」

 「(でも私服でよかったわ。2年くらいやから見た目も変わっとらんやろうし、このままこの時代のウチのふりをするべき……それとも?)」


穂乃果「どうしたの? 体調悪い??」

希「ん……いや、そういうわけやないんよ。ちょっと考え事しとってなぁ。堪忍やで」

穂乃果「ん~、そっかぁ。うん、それならよかった」

希「ふふ、心配してくれておおきにな」

穂乃果「別に当たり前のことだよ♪ ところで今日来たってことは、ごはん会来れるんだよね??」

希「えっと、ごはん会……」




穂乃果「えぇ~、まさか顔出しに来ただけとか言わないよね?? 今日多分来れそうにないけど、来れたら待ち合わせ場所に来るって言ってたじゃんかぁ~」

希「あ、えっと、せ、せやなぁ……」

 「(……これ相当あかんのちゃうか? このタイミングで未来のウチがここに来たら……ん、でも未来のウチは今ここにウチがいることを知ってる?)」

 「(いや……よくよく考えればパラレルワールドとかの可能性もあるんやね。やっぱこの時代のウチを当てにするのはやめよ。けどそしたら……どないしたらええんや?!)」


「すいません、お待たせしました」

「ごめ~ん。ちょっと遅れちゃった」

海未「しかし希は結局来れたんですね。よかったです」

ことり「えへへ、今日も騒いじゃおうね♪」

希「せ、せやな。せっかくやし楽しまんとなぁ」

 「(あかん、もうどうにかできる流れやない。もうあたって砕けろや!)」


・・・
・・




・・
・・・



穂乃果「んーっと、じゃあ飲み物何にする?」

海未「そうですねぇ」

ことり「ことりはこのトロピカル・マンゴー・スペシャルにしよっかなぁ♪」

穂乃果「それすごくおいしそう!」

海未「梅こんぶ茶は……ないですよね」

希「………」

 「(けっきょく着いてきてしまって、この時代のウチが合流するって問題は今のところ起こっとらん)」

 「(けど会話の内容とか着いて行けへんこともあるやろうし、しんどいなぁ)」


穂乃果「希ちゃんはやっぱりお酒? いいなぁ、穂乃果も早くお酒飲んでみた~い」

希「んん? お酒……そ、そうやねぇ」

 「(そっか、ウチもう20歳ってことになっとるんやね。けどウチ自身はまだ18歳やし、あかんやろなぁ)」

 「(別に捕まるとかはないやろけど、元副会長が飲酒とか、めっちゃ不良やん。でもどうしたら……)」


海未「穂乃果、昨日希がLINEで言ってたことを忘れたのですか?」

ことり「あした身体検査があるとかでお酒飲めないんだよね? 日付をうまく調整できなくてごめんね、希ちゃん」

希「ん? いや、ええんよ別に。……みんなと会えることのほうが大事やしなぁ」

 「(LINE……? よう分からんけど話をあわせるしかなさそうやね)」



穂乃果「でも希ちゃんお酒すきだよね?」

希「せやろか?」

穂乃果「そうだよぉ~。いっつもたくさん飲んでるし、ぜ~んぜん飲み慣れてる感じだし」

希「あはは、堪忍な」

 「(うわ~、予想しとったけどウチやっぱお酒飲んどるんやなぁ)」

 「(まぁ憧れはあったけど、ちょっと女の子としてはどうなんやろ。変な絡み方とかはしてないみたいやけど……)」


海未「穂乃果、私も決まりましたよ」

穂乃果「ん、分かった~。希ちゃんは?」

希「ウチも決まったよ」

穂乃果「了解! じゃあ店員さん呼んじゃうね」


・・・
・・




・・
・・・



穂乃果「でね、でね、初めて1人で全部やったんだけど、もう自由だーーっ!……って感じだったんだよ!」

海未「また想像もつかない話ですね……」

ことり「穂乃果ちゃん、やっぱり危なくないのかなぁ?」

穂乃果「だいじょ~ぶ、だいじょ~ぶ! いっぱい練習してるし、ちゃんと検査とかもしてるから!」

海未「ほんとに、穂乃果は――」

希「あはは」

 「(………)」

 「(今のところ問題はなかった。まだまだ3人とも大学1年ってことで、どの話題にも真新しさはあった。だからどうしてそれを知らないのって展開だけは、まだなんとか避けられとる)」


穂乃果「そういえばにこちゃんとこのライブって次はいつだっけ?」

海未「確か来月の上旬ではなかったでしょうか?」

ことり「うふふ、今回もちょっとだけ衣装協力させてもらうんだよ。楽しみだなぁ~♪」

穂乃果「えぇ~、いいなぁ~!」

希「……穂乃果ちゃんも参加させてもらったらええやん?」

穂乃果「もう希ちゃん、や~め~て~よぉ。それにこちゃんに言われる度に迷うんだから」

ことり「いまサークルが忙しいもんねぇ」

海未「まぁそれぞれがぞれぞれの道で充実している、それで何よりではないですか」

穂乃果「う~ん……そうなんだよねぇ。中途半端は嫌だし」

希「………」

 「(……みんなけっこう充実してるんやね。よかった)」

 「(ただ……いや、ええか。無理に聞こうとしても変に思われるやろうし。どうせならさりげなく)」

 「ん……この鶏のたたきおいしい! なぁなぁみんな、ちょっと食べて食べて!」


穂乃果「ほんとだ! おいしい!」

海未「どれどれ……本当ですね、おいしいです」

ことり「ことりも食べよっと♪ ……サークルだとね、ここでいつも共食いって言われるの……」

穂乃果「あはは、なんか新鮮だねぇ」

海未「私たちにとってはちょっと古いネタかもしれませんね、ふふ」

希「あはは」

 「(……うん、とりあえず楽しむことにしよか)」



・・・
・・




・・
・・・


穂乃果「ふ~、お腹いっぱい!」

希「穂乃果ちゃんほんとよく食べるわ」

穂乃果「ふふ、穂乃果の健康の秘訣だよ!」

希「いいことやな、うんうん」

 「(………)」

 「(とりあえずごはん会はお開き。いい時間やし解散することになったんやけど、家とかどうしよか)」

 「(お守りの中に予備の一葉さん入れとって支払いはできたけど、この額やとまともなところには泊まれんなぁ)」


海未「楽しかったですね」

ことり「また来てみてもいいかもねぇ~」

希「(………)」

 「(それに、まだウチには聞きたいことがあった)」

 「(……聞くとしたらこのタイミングだけやろな)」

 「――せやね。今度はみんなも来れるといいなぁ」

穂乃果「うんうん、そうだねぇ」

希「……そういえば」

穂乃果「ん~?」

希「最後にみんなで集まったのはいつやったっけ?」

 「(………)」

 「(……さて、なんて返ってくるか)」



穂乃果「う~ん、どうだっけ、ことりちゃん?」

ことり「えっとぉ、夏の旅行は全員揃ってたよ」

海未「ですがここ最近は凛たちが集まることはなかったですね」

ことり「受験だとしょうがないよね。冬の旅行も中止かなぁ」

海未「真姫は別荘だけ貸してもいいと言ってくれてましたが、それも申し訳ないですから」

穂乃果「う~ん、じゃあ6人でちゃんと旅館にでも泊まろっか。たまには」

海未「それもいいかもですね」

希「……考えてみたら、けっこう集まっとるんやなぁ」

海未「それはそうですよ」

希「ん~?」

ことり「だって、例え大学で新しい友達ができても」

海未「共に過ごせる時間が限られるとしても」

穂乃果「やっぱりμ’sのみんなが1番! だよ」

希「……ふふ、せやなぁ」

 「(そっか、2年後はそうなんや。よかった。ウチがずっと望んでいた場所は……)」

 「(……嬉しいなぁ)」


穂乃果「じゃあ、希ちゃんとはここでお別れになっちゃうか」

希「うん、今日はおおきにな。また誘ってな」

海未「もちろんですよ」

ことり「じゃあまた、希ちゃん♪」

希「ほなな~」

 「(……行ってしもた)」




希「(さて、宿をどうするかやけど……やっぱこの時代のウチに頼るしかないか。それかにこっちの家にでも行ってみるとか)」

 「(………)」

 「(……変わらないもの。ウチが望んだもの。高校を卒業してもあり続けるもの。これで目的を達成したとも言えるけど)」

 「(でも……)」

 「(十年後、二十年後も変わらずにいられるんやろか)」

 「(さすがにそこまで知るのはウチも怖い――はっ?!)」


希「あかん、この光はあの時の」

 「って、そっちに引っ張られるんかい?! わわっ――」

 「もう、なんなんやぁぁ~~~……」


・・・・・
・・・
・・




・・
・・・
・・・・・



……………

希「くぅ~……頭がふらふらする」

 「もうちょい優しくできんのかなぁ、しんどいわぁ」

 「……はぁ」


希「ここは、またあの公園?」

 「(時刻は夕方みたいやけど、まずは日付の確認って……2026年?!)」

 「(こないな公園の時計塔にホログラムて、ハイカラやなぁ)」

 「(しかしウチの時代から12年後、30歳になっとるんか)」


「げっ?! まさかホントだったとは……」

希「(μ’sのみんなもそんくらいやな。きっとみんな仕事を持ってて、もしかしたら結婚も)」

 「(そんだけ新しいことに囲まれとったら、μ’sの関係は……)」

 「(………)」


「ちょっとそこのあんた!」

希「は、はい?! なんですか??」

 「(うわっ、びっくりしたぁ。ウチなんかマズいことしたやろか)」

 「(小柄な人やけど綺麗な人やなぁ。顔とかちっさいし)」

 「(ん……? いやウソやん。でもこの気ぃ強そうな目は……)」


にこ「初めましてだったら悪いんだけどさ、あんた東條希って名前じゃないの?」



希「おどろ……きました」

にこ「それはこっちの台詞よ」

希「私が東條希だって信じるんですか?」

にこ「信じるもなにも、あんたから聞いたのよ。信じてなかったけどね」

希「そうですか……」

 「(ウチに話しかけてきた人は、なんとまぁにこっちやった)」

 「(30歳のはずなんやけど、恐ろしいことに見た目はほとんど変わっとらん)」

 「(綺麗なストレートの黒髪や佇まいとか、そういう雰囲気の違いで印象は全然違うけど。けっこう驚かされたわ)」


にこ「ま、私からすれば1番思い出深い時期のあんたがまさにあんたなわけだから、否応なしに信じざるをえないしね」

希「はい」

にこ「いやはいって……なんなのよ、その態度と敬語?」

希「いえ、さすがに年上ですので……」

にこ「ああぁん! なんつうか腹立つわねぇ。あぁもう、やめて。あんたにとってのにこのつもりで話して。おかげさまで見かけも性格もそう変わってないはずだしね」

希「……いや、めっちゃ綺麗になったわ、にこっち」

にこ「ん……なんか照れるわね」

希「あはは」



にこ「それで、あんたはどうして未来に来たのよ?」

希「来たというか、飛ばされたっちゅうか……ウチからそれは聞いてないん?」

にこ「まあ聞いてるけどさ。念のためってやつよ。あんた自身の口からも聞きたいし」

希「ん……」

 「(……まあ別に、ここまで事情を知ってくれてるならええか)」

 「(ウチが知りたいこと)」

 「(………)」


希「……にこっちは今、アイドルなん?」

にこ「ええそうよ」

希「や、やったやん! にこっち、やっぱり――」

にこ「そう、史上最高のアイドルと言われて、CDはオリコンで常に1位。ハリウッド進出もしててアカデミー主演女優賞も獲得してるのよ」

希「ふぇ?」

にこ「世界中でにこのことを知らない人はいないし、にこの力で平和が訪れた国もあるわ。どう、凄いでしょ?」

希「いや……ホントなん?」

にこ「当然ウソよ」

希「はぁ?!」


にこ「……ほんとはね。にこアイドルになれなかったの」

希「そ、そうなんや……」

にこ「それでね、ずっと諦めきれなかったからバイトしかしてなくて、もうちゃんとしたところには就職できなくて、ほとんど露頭に迷ってたの」

希「えぇ?!」

にこ「今は真姫ちゃんに拾われてほとんどヒモみたいな感じかな。真姫ちゃん、ちょっと人には言えないような性癖があったみたいで、そこは辛いけど……」

希「……ホント?」

にこ「ウソに決まってんでしょ」

希「もう! なんなんや!」

にこ「あんたはそれを聞いてどうしたいのよ?」

希「えっ……?」



にこ「未来を知ってあんたはどうすんの? 気に入らない未来だったら変えようとでもするの? それとも絶望でもするの?」

希「いや、そんなだいそれたつもりやなくて……」

にこ「どうして未来なんて知りたいのよ? 私には意味のあることとは思えないわ」

希「ウチはただ……μ’sのみんなのことが大事で、かけがえがなくて…。そんなみんなが未来でも幸せなのか、みんなで一緒にいられるのか知りたくて……」

にこ「はぁ……あのさ、希」

希「……な~ん?」

にこ「あんた……まぁ冬の服よね。予選は終わった?」

希「うん、つい3日前くらいに……」

にこ「そ。じゃあさ、むしろ今までよりずっと繋がってるって思えてるでしょ?」

希「そうや。だからウチは未来を――」

にこ「なんで信じないのよ?」

希「それ、は……」

にこ「いま確かだと思えるそれを、どうして信じないのよ?」

希「だって……だってそれは当然のことや!」

 「今が大切であるほどに、それが失われるのが怖くなる。そんな感情だってウチにとっては初めてのことで、怖くて……」


にこ「……はぁ、あんたってそういうところ、ほんとめんどくさいわよね」

希「きっついなぁ。それもいまウチ、12歳も年上の人に言われとるんよ?」

にこ「誰が三十路よ。ったく。……いい、希?」

希「ん?」

にこ「それこそ当たり前のことなのよ。どんなに確かと思えるものでも移ろって行ってしまう。変わらないものはあるかもしれない。変わってしまうものもあるかもしれない」

希「………」

にこ「未来は誰にだって分からない。……だから今を大切にしようとするんでしょ?」

希「……せやな」

にこ「そうやって不安がってる暇があったら1日でも多くみんなと遊びに行きなさいよ。帰ってから」

希「……う~ん」

にこ「本当はそうすることぐらいしかできなくて、未来への不安だってみんな受け入れて生きていくんだから」

希「……でも、ウチは」

にこ「はぁ……。だったら、もっと未来に行って見てくれば?」

希「え? そんなんウチの自由には……なっ?!」

 「(また光が……引っ張られる……!?)」


にこ「じゃあ、また12年後に。今日の日のことでも話しましょ」

希「う、うわぁぁ~~……」



……………


にこ「………」

  「ふぅ、行ったわね」


「にこちゃ~ん」

「あ、いたあそこ! にこちゃん!」

にこ「なによそんなに慌ただしい」

「なによってにこちゃん、トレーニングサボっちゃダメだよぉ」

「もうっ! 久しぶりに個人レッスンだって聞いて楽しみにしてたのに! 酷いよ!」

「昔からの知り合いだからあんまりそんな印象ないけど、けっこう個人レッスンの予約とるの大変なんだよ……」

にこ「マネージャーのあんたに緊急の連絡だって断ったじゃない」

「理由が書かれてなかったよぉ……」

「にこちゃん、きちんと説明してくれるんだよね?」

にこ「あぁそんなに怒んないでよ。今日は本当に大事な用事だったんだから。むしろそれで確実に抜けられるよう、あんたのトレーニング入れてもらったんだから」

「まぁ何かあったんなら仕方ないけど、それで何なの?」

にこ「……そうね。こんどまた飲み会があるでしょ? そんときに説明してあげるわよ」



・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・





・・
・・・
・・・・・
・・・・・・・



希「うわっ、はぁ、はぁ……」

 「(くぅ~……今度は長かったなぁ。しんどい、ほんまに)」

 「(それで今度は……うわぁ)」


希「すっごいわぁ……。もう完全にSFの世界やん」

 「あれ全部ビルなんやろなぁ。でっかいわぁ。なんか飛び交っとるし」

 「(これはもう数十年って年数で飛ばされたみたいやな。公園はあんまり変わっとらんあたり、不思議な感じやけど)」

 「(今回も取り敢えず現状把握。その後はイベント待ちかなぁ……)」


希「はぁ……」

「ん? ……ちょっと、そこのお嬢さん」

希「は、はい!」

 「(うぉ、やっぱアヴァンギャルドな格好やなぁ。逆にウチとか凄い服着とるように見えとるんやろか)」

 「(年配の人みたいやけど、色の抜けた髪が綺麗に整えられとる。それに……瞳の色)」


「ここであなたを待っていたのよ。東條希さんで、間違いないかしら?」

希「……はい」

 「(さすがに見かけだけやと判断できん。だけどウチのことを知っとる様子。なにより空を思わせる青い瞳)」

 「(まさかなぁ)」


「良かったわ。あなたのことを探していたのよ」

希「そうだったんですか。……あの、もしかして」

「ふふ、なにかしら?」

希「……えりちなん?」

「さぁ、どうかしらねぇ」

希「……教えてはくれないんですか?」

「そうね。若いうちは自分だけの答えをもつことも大事よ」

希「そうですか……」

 「(……やっぱりえりちやと思う)」



「少なくとも人生の中で1番大切と思えた人に、あなたがここに来ることを聞いていたのよ」

希「……その人とは、今も大切な仲なんですか?」

「それも秘密にしとこうかしらね」

希「教えて欲しいです」

「あらあら、困ったわねぇ」

希「ダメですか?」

「そうねぇ」


「やっぱりやめとこうかしら」

希「どうしてです?」

「結局のところあなたがこの未来にたどり着くのかも分からないし、影響は与えたくないから、かしらね」

希「……そうですか」

「感覚的な考えもあるのよ。そう、例えば……別に私があなたの言う“えりち”じゃなくても、別に構わないと思わないかしら?」

希「構います」

「そうでもないわよ。だって例えその人じゃなかったとしても、ここにその人の代わりとして私がいる。つまりあなたは、別の素敵な出会いを得たということなのだから」

希「でも……」

 「(それでもウチはμ’sのみんなと、えりちと……)」


「その人のこと、大切なのね……」

希「……とても大切な人です」

 「だからどうしても、気になるんです」

 「私の未来に私の望みは続いているのか、それを知りたいんです」


「未来を楽しみに待つのもいいものよぉ」

希「それでも……。お願いします、教えてください」

「そう。……ふふ、じゃあやっぱり本人に聞くしかないわね」

希「?……どういうことですか?」

「実は私があなたを待っていた理由はね、あなたにある場所を教えるためなの」

希「場所、ですか……?」

「そう。場所は西木野総合病院。形は結構変わったけれど、位置はほとんど変わらない」

希「……そこには誰がいるんです?」

「自分で確認してみるといいわ。そして未来を知ることが適切なのか、ちょっと話し合ってみなさい。部屋は906号室よ」

希「分かりました……行ってきます」

「気をつけて。この時代に合わせて慎重にね……」

希「はい!」



……………


「………」

「行ったわね」

「ふふ、懐かしい。あの頃はあんな髪型してたわね」

「ハラショー。……昔のあなたに一目惚れしちゃうって、浮気かしらねぇ」


・・・
・・




・・
・・・



希「(なんつうか凄いなぁ。もうほとんど高層ビルやん)」

 「(真姫ちゃん成功したんやなぁ……)」

 「(……それより今は906号室)」

 「(なんかロボットっぽいのが受付したりしとるけど、お見舞いとかの文化は変わっとらんやろ)」

 「(このままさり気なく……)」


「あ、ちょっとそこのあなた」

希「あ、はい。なんですか?」

 「(しもうたぁ……。このナースさんは人間……やろか?)」

 「(とにかくごまかしを)」

「病室の方にご用かしら?」

希「あの……祖母のお見舞いに」

「そう、じゃあ受付でIDチェックしてもらっていいかしら?」

希「あ、IDですね……えっと、あ、あぁ~……忘れたかもしれません」

「忘れる? えっ、IDって忘れたりできるの……えっと、取り敢えず受付に」

希「あぁその、えっと、うぅ……」

 「(な、なんか明らかにマズい展開やんかぁ~!)」

 「(このままやと大事になってしまいそうや、だ、誰か……)」


「ん……ちょっとあなた、その子をどうするの?」

「あ、院長先生、お見舞いだそうなので、とりあえずIDを――」

「あぁその子ね。私の友達の子なのよ。ごめんなさい。チェックも済ませてるわ」

「そうなんですか?? それは失礼しました」

「いいのよ。むしろきちんと伝えてなくて申し訳なかったわ。じゃあちょうど休憩時間だし、連れて行くことにしようかしら。希ちゃん、こっちにおいで」

希「は、はい!」

 「(これまた凄いべっぴんさんやなぁ。すらっとしてて、けど若作りしてるっちゅうわけやなく、本当に綺麗に年を重ねた感じ)」

 「(………)」

 「(院長先生かぁ……)」



「ふふ、羨ましいわねぇ。なんか1人だけ若返ったみたいで」

希「えっとその、さっきはありがとうございました。あの……」

「いいのよ。私もあなたを待ってた口だから。あ、これエレベーターね。乗るわよ」

希「あ、はい……。えっと、もしかしてあなたは――」

「う~ん……まぁ私は別に隠さなくてもいいのだけど、そういうルールらしいから、察しなさい」

希「……はい」

 「(………)」

 「(……真姫ちゃん)」


希「……病院、大きくなりましたね」

「そうねぇ。経営するのも大変よ。お役人とのやり取りとかもあるし。自由にピアノを弾けてたころが懐かしいわ」

希「そう、ですか……」

「……でも悪くはないわよ。この職業も」

希「……はい」

「地元の病院ということもあって、けっこう見知った人がやってきたりするのよ」

希「はい」

「ずっと仲の良い人。会いたいと思っても疎遠になっていた人。意外な人。病気になってやってくるんだから、あまり望ましいことではないけれど、まぁ懐かしいことには変わりないわね」

希「そう、なんですね……」

「この病室にいる人も、今言ったどれかに当てはまる、私にとって大切な人よ」

希「……ずっと、ですか?」

「……それはきっと、あなたが確認すればいいことよ。じゃあ、私はここまでね」

希「このボタンを押せばいいんですか?」

「ええ。……ふふ、あなただとコードも一緒でしょうしね」

希「はぁ」

 「(………)」

 「(この部屋の中にいるのは、たぶん……)」


「まぁショックを受けるかもしれないけど、気楽に話すといいわよ。あなたは、そういうの好きだったと思うし」

希「案内ありがとうございます」

「お礼は……ずっと後でお願いね。また会いましょう」

希「はい」

 「(……行ってしもた)」

 「(深呼吸しとこか。けっこう来るもんがあるって、よく小説ににも書いてあるしな)」

 「(……うん、行こか)」



………


希「お邪魔します」

「ん、あぁいらっしゃい。来たんやね」

希「………」

「そう複雑な顔せんと、こっちおいで」

希「………」

「凄いやろ。ちょっと入院しただけで、一昔前の重病人みたいな設備や」

希「しゃべり方……」

「ん~?」

希「しゃべり方、ずっとそれなんですか?」

「ん、……いや、親しい人の前でだけやな。なんか昔とは逆になったような気もするよ」

希「そうですか……」

 「(そういう言い方が適切か分からないけれど、可愛いおばあちゃんって感じ)」

 「(髪の毛はさすがに手入れが大変になったんか、肩口ぐらいで切りそろえられとるな)」

 「(あんま自分で目にすることはないけれど、写真の中なんかではよう見る、人懐っこそうな笑顔)」

 「……私ですか?」


「せやなぁ。……ま、そういうことになるな。ふふ」



希「病気なんですか?」

「あぁ~、その辺は答えんよ。なんや変にショック受けられても困るし」

希「……分かりました」

「まぁ他のことも答えるかは分からんけれど……さて、若いころのウチ」

希「はい」

「………」

希「………」

「………」

希「………」

「……ふふ、やっぱり何も言わんでええよ」



希「え??」

「言いたいことは分かっとるもん。今抱えてる幸せとか絆とか、それから……不安とか」

希「……はい」

「別に完璧な人生やなかった。絶対に失くしたくなかったのに、失くしてしまったもんやってあった。今ここでそういうの全部教えてあげたら、運命も変えられるんやろなぁ」

希「せやったら……!」

「でもウチが語るのはたった1つだけや」

希「そんな……」

「ふふ、これからきっとな、色んな出会いと別れを経験して、何度も何度も後悔して、何度も何度も傷つくことになる。そして泣くことになるやろな」

希「………」

「でもそんな悲しさだってな、嬉しかったことの表裏一体なんやから、時間が立てば立つほど手放し難くなって、いつかその全てがかけがえの無いものになるから」

希「……え? あれ??」

 「(光が……そんな、ここまで飛ばされたのにウチはまだ?!)」


「何も知らずに帰るのがええ」

希「待ってや! ウチは、ウチは……!」

「心配せんでいいよ。……ウチはちゃんと幸せや」

希「う、うわ、わぁぁ~~……」



……………


「ふぅ、これで運命の輪は閉じたってわけやな」

「なぁに? 結局何もアドバイスしてあげなかったじゃない」

「ん? もう、こっそり聞いとったん?」

「途中からね」

「恥ずかしいなぁ」

「それにしてもやっぱり可愛かったわね」

「ちょっとぉ、浮気はあかんで」

「ふふ、半分冗談よ」

「半分なん?」

「だって全部が全部ウソじゃないけど、私は歳を重ねて綺麗になったあなたのこと、もっと好きなんですもの」

「照れるなぁ……」

「ふふ」

「(……この未来はええもんやで。ここまで来てくれたら嬉しいなぁ。な、昔のウチ)」



・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・





・・
・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・



希「……ふぅ。さすがに慣れたわ」

 「あぁ~……部屋か、帰ってきたみたいやね」

 「(結局よう分からんかったか。幸せとは言うとったけど、本当に心からそうなのかは分からんし)」

 「(μ’sのメンバーとウチ、どうなるんやろなぁ……)」

 「(あかん、泣きそう……)」


「ちょっと、希ぃ~!」

希「(ふぇ? 何やろ? この声はたぶん……やけど。とにかく)」

 「はぁ~い……」

 「なんですか?」


絵里「ちょっと、なんですかじゃないわよ、もう!」

希「あ、えりちやん。突然どしたん?」

絵里「どしたんも何も、あなたが連絡なしで休んだから様子を見に来たのよ!」

希「休んだってえっと……」

 「(なっ?! 1日たっとる! こういうのは時間経ってないのが定番やろ……う~ん、困ったなぁ)」

 「(まぁとりあえず適当に言い訳するしかないか、うん)」

 「あぁごめん、急な用事でなぁ。バタバタしっとたんよ」


絵里「そんな説明で……ってどうしたの希?!」

希「ふぇ? いや別に何も……」

絵里「だってあなた……泣いてるじゃない?」



希「泣いて……? あれ、ウチ、そんなつもりじゃ」

 「(何なんこれ? えりちの顔見たら涙がとまらへん。え、あぁ、もう……)」


絵里「……希、上がらせてもらうわよ。ほら、こっちに来なさい」

希「いや、これはちょっと違くて、その……」

絵里「いいから……ほら」ギュッ

希「えりち……」

絵里「なんでもいいから、どんな話だって聞くから、ね、希?」

希「……うん」

 「(あかん、さっきまで未来にずっとおって、あれこれ考えさせられとったから、いざえりちを前にしたら感情をおさえられへん)」

 「(本当にウチらはこれからも一緒におられるのか、μ’sはどうなるのか)」

 「ウチ……怖いんよ」


絵里「ん……いったい何が?」

希「突然こんなん言われても驚くと思うけど、今が過ぎていくのが」

絵里「ちょっと難しいけど……卒業したりとかそういう将来のこと?」

希「うん」

 「今こんなに幸せで、みんなと一緒にいられて、なのにそれが未来もそうなのか分からんから……」

 「だから怖い。これからどうなるのか、ウチは……」



絵里「そう……」

  「………」

希「………」

 「………」


絵里「そうね、私も同じ気持ちだから、なんとも言えないわね」

希「えりちもそうなん?」

絵里「当然よ。……こないだは偉そうに希の願いなんて語っちゃったけど、私だって同じようなもんなんだから」

  「こんなに打ち解けられて、何でも話せるようになったのは初めて。μ’sが大事。とっても」


希「うん」

絵里「あなたともずっと一緒にいたいと思うけれど……それがどうなるかは分からない」

希「……うん」

絵里「でもね、希、私考えることがあるのよ」

希「……考える?」

絵里「そう、それは今大事と思える感情はきっと、何か変化が訪れるようなことがあっても、ずっと変わらないんじゃないかなって」


――例え大学で新しい友達ができても―――

――共に過ごせる時間が限られるとしても―――

――やっぱりμ’sのみんなが1番! だよ―――


希「(穂乃果ちゃんたち……)」



絵里「それにたぶん、そんな不安があるからこそ時間を大切にできるのだし」


――未来は誰にだって分からない。……だから今を大切にしようとするんでしょ?―――


希「(にこっち……)」



絵里「だから私たちは、きっと未来を信じて、祈るように生きていくしかないのよ」


――心配せんでもええ。……ウチはちゃんと幸せや―――


希「(信じる……か)」



絵里「……ごめんなさい。こんなことしか言えなくて」

希「……ううん、嬉しい。想いを伝えてくれようとする、えりちの気持ちが、ほんとにそれだけで嬉しい」

絵里「それならよかったけれど……」

希「うん……」

絵里「………」

希「………」

 「なぁえりち?」


絵里「なぁに?」

希「もし本当に嫌なことやけど、えりちとウチが離れ離れになっても、こうやって抱きしめてくれたこととか、音ノ木坂でのこととか、ウチは忘れんのやと思う」

絵里「それはもちろん、私もよ」

希「そしたらそれはきっと、ウチとえりちはずっと一緒ってことなんやろなぁ。今日のこの日から、伸び続けていく日々の中で」

絵里「ふふ、なんだかロマンチックね」

希「えへへ、そやろ?」

 「(……そしてμ’sのみんなも)」


希「なぁ、えりち」

絵里「今度はなぁに?」

希「……信じてもらえへんかもしれないけど」











聞いて欲しい話があるんや


はい、たったこれだけです;

改めてのんたん誕生日おめでとう!
のんたんにとって1番大事なものって、まさに「私の望み」ということで先日手にしたものだと思うんですが、今度はそれを失うのが怖くなったりしないかなと。
そういうのに対して、仕方がないことなんだよ、祈るしかないんだよみたいな妄想をしていたらこんなSSにw

読んでくださった方、本当にありがとうございました。

おつ



最後にこのSSは家の裏でマンボウが死んでるPさんの「【GUMI】クワガタにチョップしたらタイムスリップした【オリジナル曲】」を参考とさせて頂いています。
というかパロです。
たくさんの名曲を本当にありがとうございますと、こんなSSの最後ですが感謝など。

しかし誕生日SSを海未ちゃん、真姫ちゃんと書いてきましたが、今回はかなりぶっ飛んだ話となりました。
なんやねん、普通の誕生日でええやんと思ってスレを開いた方、本当にすいません。

乙、スピリチュアルなバースデーやったね

乙!
面白かった

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