姫「疲れたよね、おいで」
子供「ままっ♪」
< ぎゅっ
姫「んーん、どうしたの?」
子供「まんまっ♪」
姫「えへへ、そっかそっか♪」
勇者(帰ってきたけど微笑ましくて声をかけられねえ……)
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勇者「ただいま姫」
姫「おかえりなさい勇者、一人で帰ってきたの?」
勇者「ああ、メイドは町に買い物だとさ」
姫「ふーん」
勇者「子供は?」
姫「暖炉の前で撫でてたら寝ちゃった」
勇者「姫の手は優しくて温かいから」
< カチャッ…
< コトッ
姫「久しぶりに勇者のコーヒー飲むかもね」
勇者「まぁ最近はメイドに任せっきりだったもんな」
姫「いただきます…」
姫「……」ゴクッ‥
勇者「どうかな」
姫「美味しい、香りも凄く良い…けど」
勇者「けど?」
姫「ミルクが欲しいかもね」
勇者「はいはい」コトッ
姫「ふふ」
勇者「どうかした?」
姫「メイドが居ないと、勇者って安心しきってのんびりになるんだなって」
勇者「……そりゃなぁ」
姫「……」
< ナデナデ…
子供「すー…すー…」
勇者「可愛いな」
姫「ね」
< ナデナデ…
勇者「俺まで眠くなってくるよ」
姫「お膝に来る?」
勇者「うん」
< 「只今帰りました、姫様」カチャッ
メイド「……?」パタン
メイド(静かですね、もしかしていないとか?)
メイド「あ」
姫「……Zzz」
子供「Zzz」スーッ
勇者「Zzz」すぉーっ
メイド「……」
メイド「夕食のお支度、しておきますね」くすっ
メイド(さてと、今夜は坊っちゃんの為にも腕によりをかけて料理しようかな)
メイド(先ずは火を、こちらは魔力を抑えたメラで着けてから)ボッ
メイド(別の所では同時進行で汲んできた水を滅菌しつつ、っと……)
メイド「……」ピクン
< コソッ
メイド「誰か居るんですか?」
メイド(泥棒でないと良いけど……)
スライム「ぴっ」ヒョコッ
メイド「……」
メイド「おいで」
スラ「ぴー?」ピョコッ
メイド「姫様達には内緒ですよ……♪」
< スッ
スラ「ぴっ!」パクンッ
メイド(このスライム、お肉の薬草巻きが好きなんだなぁ……いつも来るし)
いいね
メイド(……慣れたなぁ、三年前はあんなにスライムも駄目だったのに)
メイド(……)
メイド(三年かぁ…もうそんなに経ったんだ)
━━━━━ 『姫はッッ!!俺が貰っていく!!』
━━━━━ 『あ、メイド』
━━━ 『はい?』
━━━━━ 『ルーラ!』
━━━ 『ひぁああああ!!?』
メイド(……成り行きとはいえ、私は…)
メイド(姫様と私を連れて消えた勇者さんに着いてきて、何だかんだあの二人と暮らして…)
メイド「…………くすっ」
━━━━━ 三年前、アレフガルド国家の中枢である『ラダトーム』で起きた事件。
━━━ 突然現れた『竜王』を名乗る魔王。
━━━ 彼等の圧倒的な力はそれまでの平和なラダトーム城を壊滅に追い込み、現代のロトの勇者すら殺害した。
━━━ 細かい所は、一介の女中でしかなかった私では分からない。
━━━ けれど、その後にラダトーム城襲撃に乗じて国王を殺害したメルキド辺境伯が後釜として国王に即位。
━━━ 実質上のアレフガルド国家の新国王として誕生した彼は、様々な謀略を城内に張り巡らせたせいで私の動きも封じられてしまった。
━━━ ・・・そんな『人間の争い』をしている裏で、一度殺害された勇者は復活しつつ竜王側を追い詰めていたのだ。
メイド(……)カンカンッ‥ジュワァァ…
━━━ 囚われていたラダトーム王女である姫様を助け出した勇者は、どんな思いであの数日を戦い抜いたのか。
━━━ 私から辺境伯が王になったのを聞かされても尚、何故この世界を救おうとしたのか。
━━━ 危うく、竜王との死闘の果てに自分すら再び死す事になる所だったのに。
━━━ いや、彼は確かに死んでいたのだ。
━━━ しかし死後の世界との『狭間』に近い空間……天界と呼ばれる場所で彼は神の龍と何らかの取引をした。
━━━ その結果が、姫様とそのお腹にいた子供だけでなく……ラダトームをも救う事となり、国王に座していた辺境伯は捕らえられた。
━━━ ・・・それからだ、その結末を迎えた日から私は彼ら『夫婦』と共に暮らしている。
━━━ ……何にせよ、この文字通りの伝説は今は平穏そのもの。
スラ「ぴー」
メイド「あ、まだ居たの?」
スラ「ぴー」ピョコッ
メイド「……不思議だよね」
スラ「ぴ?」
メイド「三年前に、あなた達魔物は竜王に取り込まれて……最終的に絶滅した」
メイド「でも二年前から急にスライム族が現れて、それから段々と元の世界に戻りつつある」
スラ「ぴー?」
メイド「……少し怖いんだよね」
メイド「また……悪いことが起きるんじゃないのかな、って」
勇者「ふぁあー、なんか久しぶりに寝たよ」なでなで
子供「Zzz」
姫「……この子、まだ寝てる」なでなで
勇者「可愛いな…姫みたいだ」
姫「えへへ」
勇者「ん…」なでなで
姫「♪」
メイド「夕食なので起こしたのにいつまでやってんですか」
誰の子供なの?
俺
姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」
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これの続きか、期待
子供「うー……」
メイド「どうされました?」
子供「これ、きらーい」
勇者「あー」
姫「ピーマンは私も嫌いだから大丈夫だよ?」ナデナデ
勇者「だーめ、二人ともちゃんと食べなさい」
メイド「そうですよ? 姫様も今は体調が良くても油断すると崩れるんですから」
勇者「そしてお母さんとしてちゃんと食べてあげなさい」
メイド「え?」
勇者「ん?」
< ドサッ!
勇者「うへぇ……」
子供「おくちにがい…」
姫「あぅぅ…」
メイド「食べていきなり寝る位なら、まずは歯磨きをして下さいね」
勇者「さっき怒られたばっかだから後で…」
メイド「だめです」
メイド(……さてと)
メイド(姫様達が歯磨きしてる間に私がお風呂入ろうかな)
子供「おねえちゃん」
メイド「きゃっ!」
子供「?」きょとん
メイド「坊っちゃん……どうしたの、姫様と勇者さんの所にいっておいで?」
子供「あのね、いつもありがとう」ニコッ
メイド「!」
< トトトッ
< 「おやすみなさい、おねえちゃん!」
メイド「……」
メイド「はぁあ……やっぱり、少しびっくりしちゃうなぁ…」
メイド(あれでまだ二歳……)
メイド「うーん」
メイド「まぁ、あの二人の子供だから今更かな」クスッ
━━ ラダトーム城 ━━
王様「ふむ……報告書はこれで全てか」
大臣「そのようですなぁ」
王様「全く、ようやく平和になったと思ったのだがな」
大臣「竜王がその身に吸収した魔物はアレフガルド全てではなかったのでしょうな」
王様「うむ」
大臣「それはそうと王様、姫様のご様子は」
王様「それならば先程頼んだところだ」
大臣「頼んだ、とは?」
王様「このラダトーム最強の兵士だ」
大臣「ああ、彼ですか」
王様「ちょうど腹が空いていたようでな、骨付き肉をやったら頼まれてくれた」
大臣「骨付き肉で?」
王様「うむ」
大臣「……どうも肉食ではなかったと思うのですが」
王様「彼奴はただの肉体ではないらしい、そしてそれは私もだ」
大臣「神が作られた特殊な肉体でしたか……この二年、チラチラと見てましたが……」
大臣「王様は特に変わった点はございませんな」
王様「一晩寝ればどんな傷も治ると聞いてもか」
大臣「……は?」
王様「ふ、冗談だ大臣」
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