麻理さんと北原 (27)




『麻理さんと北原』





作:黒猫






開桜社NY支社にほど近いマンションの一室。

さすがマンハッタンにあるということもあって家賃が高い。

しかし、通勤時間を考えると会社に近いほうが便利ということもあって

小さいながらもマンハッタンに居を構えている。

その辺は、居住者たちの性格が反映されていた。





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あれ 同時に進めんの



夕食というには、まだ早い時間。

しかし、朝食をとった時間を考えれば、・・・・・・、というか、

昼食をとった時間を考えれば、ほどよい時間といえる。

日本であっても、NYであっても、決まった時間に食事を取れることなんかない。



春希「麻理さん。もう少しで食事の準備ができますから、食器用意してもらえます?」

麻理「あぁわかった。こっちもきりがいいから、

   ・・・・、って、もう少し待ってくれる?」

春希「いいですよ。そっちやっちゃってください。

   食事の準備できましたら、呼びますから。」

麻理「すまないな。」

春希「お互いまさですよ。」




夕食というには、まだ早い時間。

しかし、朝食をとった時間を考えれば、・・・・・・、というか、

昼食をとった時間を考えれば、ほどよい時間といえる。

日本であっても、NYであっても、決まった時間に食事を取れることなんかない。



春希「麻理さん。もう少しで食事の準備ができますから、食器用意してもらえます?」

麻理「あぁわかった。こっちもきりがいいから、

   ・・・・、って、もう少し待ってくれる?」

春希「いいですよ。そっちやっちゃってください。

   食事の準備できましたら、呼びますから。」

麻理「すまないな。」

春希「お互いまさですよ。」


麻原に見えた

同時といいますか、『麻理さんと北原』は、一括アップの完結ものです


食事にかぎらず、掃除、洗濯、家事全般に関して、最初は時間があいている方が

やるという取り決めをしたが、結局は、麻理に時間の余裕があるわけもなく、

春希がほぼすべてをやることになった。

それでも、麻理は時間があれば家事を手伝ってくれる。

ただ、一人でやったほうが効率がいいのだが、その辺は

二人でやったほうがいちゃいちゃしながらやれるので、問題ない。

というか、普段の仕事べったりの日常を考えれば、

家事も一種のコミュニケーションといえよう。



料理が完成し、ワインの準備でもと考えていたら、麻理がやってきた。



麻理「なあ、北原。」

春希「なんです? なにか問題でもありましたか?」



麻理の真剣な表情をみると、いつもの条件反射で自分も仕事モードに

切り替わっていく。

前回アップした『ただいま合宿中』と同じくらいのテキスト容量の短編なので、アップの楽です



麻理「そういうわけではないんだけど・・・・・。

   いや、問題がないってわけでもないというか。」



しかし、いつもの麻理とは違い、歯切れが悪い。

仕事モードも、ゆっくりとリラックスモードに落ち着いてくる。



春希「・・・?」



落ち着かない麻理を見ても、どう反応すればいいかわからず、首を傾げるしかない。



麻理「あのさ・・・。その。」

春希「どうかしましたか? まさか、なにか大きなトラブル発生ですか?」

麻理「いや、そういうのではないんだ。いたってプライベートなことで。」



しばらく同じようなやり取りを繰り返すことしかできず、

普段の麻理との違いに困惑するしかない。

いつまでもこんな押し問答をやっていてもしょうがないと思い、

おもいきって切り込んでみると、



春希「麻理さん。はっきり言ってください。何を言われても驚きませんから。」

麻理「いやさ、、、、でも」



麻理の様子から、ある一つの結論が思い浮かぶ。

それだったら、切り出しにくいはず。



春希「もしかして、・・・・・別れ話ですか?」



麻理の顔から血の気が消えたかと思ったら、

一瞬で取り乱したようで必死に否定してくる。



麻理「な、な、な、なななななな、、、何を言ってる。

   別れるなんてあるわけないじゃないか!」

春希「でも、なかなか話を切り出せないところをみると、そう考えるのが妥当かと。」

麻理「それは、ぜったいに、ない。」



両腕をつかまれ、麻理のその必死で訴えかけてくる目をみれば、嘘とも思えない。

というか、腕が痛い。

マジで痛い、痛い、痛いったら!

爪が食い込んで、おそらく血も出ているはず。

それに、顔が近い。

今にも泣きそうな顔が目の前にある。

最初は涙目のようだったが、今はしっかりと涙が見えていた。

そして、腕の痛みなのか、麻理の顔を迫力なのか、それとも、その両方かもしれないが

自然と自分の重心が後ろに傾いていく。

麻理の最大級の必死さが伝わってくるが、その辺はあえて言わないでおこう。

ただ、そっと腕を離してもらったが、腕の爪の跡がずきずきと痛んだ。

了解した



春希「だったら、なんなんです?」

麻理「いや、そのな。」



ここまできてもはっきりしない。だから、つい強く出てしまう。



春希「はっきりしてください。」



こちらの顔をみて、これ以上は引き延ばせないと観念したのか、

一つため息をついてから、語りだした。



麻理「この前佐和子が来ただろ? それで、帰る時言われたんだ。

   相変わらず北原だなって。」

春希「それは、まあ、日本にいた時と代り映えしないってことですかね?

   もう少し仕事もできるように・・・。」

麻理「いや違う。そうじゃないんだ。」

春希「え?」

麻理「私のお前に対する呼び方が相変わらず「北原」だなって。

   それに、お前も私のことを「麻理さん」っていうだろ。

   だから、・・・・・いまだに名前を呼び捨てで言い合わないんだなって。」



最後の方はだんだんと小さな声になっていったが、かろうじて聞きとることはできた。

麻理さんの顔を見ると、これでもかっていうくらい顔が赤くなっている。

それにしても、名前の呼び方以上に恥ずかしい行為を夜に色々してきているのに

名前の呼び方でこうまで照れるとは。



春希「別に、人それぞれじゃないですか?

   俺は、麻理さんに「北原」って呼ばれるの好きですよ。

   ずっと「北原」でしたし、いろんな思い出もありますし。」

麻理「私もそう佐和子に言ったさ。でも、・・・佐和子のやつ。」



佐和子さんに言われたことを思い出したのか、表情が愚痴モードになりつつある。

それだけ気を許した相手ともいえて、ほほえましく思えるが、

それを今指摘すると、話が脱線する上に、

お小言が長時間続きそうなので言わないでおこう。



麻理「佐和子のやつは、私とお前に壁があるっていうんだ。

   そんなのはないっていってるのに、・・・・そしたら、

   そしたら・・・・・。」



どうも禁句を言われたらしく、愚痴モードから怒りモードに切り替わりそうだったので

話を進めるようにうながす。



春希「それで、なんて言われたんです?」

麻理「年の差のせいだって。」

自分でも言いたくなかったのか、今はしゅんとなっていて、かわいい。

春希「それは、佐和子さんがわざと言っただけですよ。

   麻理さんをけしかけようといただけといいますか。」

麻理「そうだよな。・・・・うん、やつはそういうところがあるからな。」



ぱっと明るい表情に切り替わったところを見ると、年齢問題はどうにか

麻理さんの中で処理できたらしい。

たしかに年齢差はあるけど、俺としては麻理さんが思ってるほど

気にはしていない。

俺が早く麻理さんの隣に立てるだけの男になればいいだけで、

今では年齢が直接問題になるとは思えないでもいる。

それでも、女性といしては、年齢問題は重要らしいので、

その辺の扱いの距離感はつかめてきたと思う。



春希「麻理さんは、「春希」って呼びたいんですか?

   俺としては麻理さんが好きなように呼んでくれればいいと思いますよ。」



どうもこの答えはご不満らしく、何も言ってこない。



春希「はぁ・・・・。麻理さんは恋人なんですから、

   自分のかわいい彼女が親しみをこめて呼んでくれるんなら

   なんだっていいんです。

   俺は、麻理さんが俺の名前を呼んでくれるという行為の方に

   意味があると思ってるんですから。」



まだ納得はしてはいないらしいが、どうにか合格点らしく

やれやれといった表情で答えてくれた。



麻理「お前らしい回答だな。

   でも、女心は分かってないから、再度検討しておくように。

   ・・・・・・・・・・それから、

   それとな・・・・・・・・・・・・・、

   は、は・・・・はる。」



ピピピピピ ピピピピピ ピピピピピ・・・・・・

けたましくなり響く携帯の着信音で会話は中断された。

素早く麻理が携帯を確認すると、仕事モードの顔つきになり携帯にこたえる。



麻理「Hello? This is KAZAOKA speaking.」


やはり仕事の連絡らしく、麻理は仕事部屋に行くと、しばらく戻ってこなかった。









麻理「悪い。ちょっと私じゃないと対応できないみたいだ。」

春希「食事をする時間もないですよね?」

麻理「すまない。」

春希「大丈夫ですよ。遅くなりそうですか?」

麻理「わからないけど、たぶんそうだろうな。だから、悪いけど一人で食べてくれ。」



そう連絡事項を伝えると、着替えに行ってしまった。

これがいつもの日常とはいえ、やはり麻理も久しぶりのゆっくりとした食事という

こともあって、残念そうだった。

顔には見せないではいるが、一緒に生活していくうちに、なんとなくだが

麻理の心はわかるようにはなっていた。

仕事とプライベートの切り替え。たしかに仕事ができる大人の対応だけど

それを繰り返すうちに、擦り切れて何も感じないようになってほしくはなかった。

もちろん俺も仕事とプライベートの切り替えは、しっかりできる。

でも、だからといって、日々のメンテナンスとして、心の安らぎは必要だと思う。

俺は、麻理さんの安らぎになっていきたい。









数分のうちにスーツに着替え戻ってきた麻理は、

そのまま足早に出かけようとしていた。



春希「ちょっと待ってください。これ持っていってください。」

麻理「これは?」

春希「弁当ですよ。どうせ、どんなに遅くなっても食事はすることになるわけですし、

   もし必要じゃなくても持って帰ってくればいいだけですから。」

麻理「・・・ありがとう。」



ちょっと意外だったのか、面をくらったような表情だった。

たしかに今まで、こんな風に弁当を渡したことはない。

だたそれは、今みたいに食事の準備をしていて、弁当の準備ができるタイミングの

ときがなかっただけすぎない。

いつだって、麻理さんの力になりたいという気持ちはあるのだ。



春希「さ、急いでください。」

麻理「そうだな。お弁当ありがたく持っていくよ。」

そう言うと、弁当を鞄にしまい、そして、玄関のドアを開けようとした。

春希「頑張ってきてくださいね。麻理。」

麻理「ああ、がんばってくるよ。・・・・え?」



ドアを半分ほど開けたところで動きが止まる。

そして、ゆっくりとこちらのほうに振り返ってきて、

さらにゆっくりと顔をあげてこちらを見上げる。



麻理「えっっと、「麻理」って言ったよね?

   聞き間違いってことは。」



どうも現実を受け入れられていない様子であった。

普段の麻理さんの脳の処理速度は、限界まで減速しているらしい。

もしかしたら停止寸前かもしれない。



春希「間違いじゃないですよ。」



ちょっといたずらをしたくなって、麻理さんが望んでいる言葉をあえて言わないで

おきたくなる。



麻理「だから、その。今、呼んだよね?」



上目遣いで、言ってほしい言葉を求める視線を送ってくるが、

それがかえって顔がにやついてきてしまい、さらに言葉にしたくなくなる。



麻理「嫌なやつだな、お前って。ニヤついて。

   ベットの上だけじゃ満足できなくて、ここでも私をいじめるんだな。」



これ以上じらしても麻理の機嫌を損ねるだけだし、

ご希望の言葉をささやくことにした。



春希「いってらっしゃい、麻理。

   でも、行く前に、俺にも言ってほしい言葉があるんですけど。」

麻理「そうだな。」



ようやくお預けが解除され満足したのか、晴れやかな顔で囁いてくれた。



麻理「春希、いってくる。でも、春希のせいで5分だけ遅刻する予定だ。

   5分くらいいいよな。ちょっとだけ春希を感じていたいんだ。」



そう言うと、きっかり5分だけ抱き合った。









終劇










あとがき




麻理さんです。

2番目に好きなキャラとあって短編に登場です。

ほんとうは長編書きたかったんですが、骨格作ってみたら

前回の長編『心はいつもあなたのそばに』の3倍のテキスト容量?ww

ccスタート~かずさcodaエンドで、しかもccでかずさの出番増量となると

軽く3倍はいくかなと・・・・・。

あとicの長編もあるけど、才能と時間が追い付きませんorz

ほかにも別作品の長編もあるし、どこかの西尾維新さん並みのスピードが欲しいです。

あと才能も、すっごくすっごく欲しいですww

まあ、そんなわけで、現実逃避の短編でした。







最後にタイトル説明




麻理さん(春希の声)と北原(麻理の声)って記載すれば、わかるでしょうか?

名前の人物をそのまま指すのではなく

春希が呼ぶ「麻理さん」と麻理が呼ぶ「北原」って感じで

ちょっとひっくり返した意味を含められればいいなと

いう誰も気がつかないであろう設定でした。







黒猫 with かずさ派



なかなかよかった乙

やっぱ麻理さんかわいいわー

黒猫--既出情報

WHITE ALBUM2


『ホワイトアルバム 2 かずさN手を離さないバージョン』長編
(かずさNのIFもの。かずさ・春希)

『心はいつもあなたのそばに』長編
(かずさNのIFもの。かずさ・曜子・春希)

『ただいま合宿中』短編
(かずさ編・雪菜編)

『麻理さんと北原』短編
(麻理ルート。麻理・春希)






やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。


『やはり雪ノ下雪乃にはかなわない』短編
(由比ヶ浜誕生日プレゼント後あたり。雪乃・八幡)

WA2とは珍しい

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