ディディー「ピカチュウは男の子だってわかってる。わかってるけど……」 (91)

スマブラXに登場するディディー×ピカチュウ♂のエロSSです。
ケモノ・ケモショタ・ケモホモ注意。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398613078

「なあ、ディディー」
「んっ? なに?」
「お前ってさ、もうディクシーとはヤったのか?」

 ドンキーがそんなことを聞いてきたのは、食後のバナナジュースを飲んでくつろいでいる時だった。
 それまで冒険してた時の話とか大乱闘の話で盛り上がってたのにいきなりそんなことを言い出したものだから、オイラは危うくジュースを喉につまらせそうになった。

「な、なに、いきなり」
「んーっ、最近気になってたからさ。お前とディクシーが付き合い始めてずいぶんたつし、もうセックスしたのかなって」

 『セックス』。
 それを聞いたとたん、オイラは顔がだんだん火照っていくのを感じた。
 ドンキーとやらしいことを語るのは今に始まったことじゃないし、セックスなんて言葉はもう聞き慣れた……はずなんだけど、面とむかって言われるとどうもダメらしい。
 ドンキーは飲みかけのバナナジュースをぐびぐびと飲み干すと、オイラの隣に腰をおろした。

「なに恥ずかしがってんだよ。おれとお前の仲じゃねぇか。言っちまえよ。昨日はセックスしたのか?」

 仲がいいからこそ言いにくいことだってある。
 でもそんなことを言ったらドンキーがますます調子づくのは目に見えてるので、なにも言わずにいた。
 横目でチラッとドンキーを見ると、ネクタイがほどけていることに気がついた。

「ほどけてるよ、それ」

 胸元を指さして教えてあげるとドンキーは「おっ、ほんとだ。いけねぇいけねぇ」と言って、緩んでいるネクタイを一旦ほどき、器用な手さばきで結んでいく。
 身だしなみには人一倍気をつかうのに、オイラの前だと下品な言動は一切慎まない。
 ドンキーとは長い付き合いだけど、いまだに理解できないことは結構あったりする。

「で、ヤったのか?」

 ドンキーはネクタイをギュッとしめた直後にまた同じことを聞いてきた。
 肩に腕を回し、顔を覗きこんでくる。
 オイラは帽子のツバをさげて顔を隠した。

「なーに照れてんだよ」

 ドンキーは声をたてて笑いながらオイラの肩を乱暴な手つきでたたく。
 本人は軽くポンポンしてるつもりなんだろうけど、ぶっちゃけ痛い。
 全くドンキーったら、力加減というのを知らないんだから。

「痛いんだけど……」
「おぅ、悪ぃ悪ぃ。ところでさ、お前ってデートの時、いっつもどこ連れてってんだ?」

 ドンキーは急に質問の趣旨をかえた。ストレートな聞き方だとオイラが答えそうにないと判断したのかもしれない。

「そりゃまあ、いろいろ」
「いろいろなのはわかってるよ。お前らがどんなデートしてるのか具体的に知りてぇんだよ、おれは」

 あいまいな答え方をするとすぐ“具体的に”って言うのはドンキーの口ぐせだったりする。
 今度は少し考えたあと、答えた。

「最近はトロッコ乗ったり、紅潮した海を高台から眺めたりしてるかなぁ。あとは……そうそう、木のてっぺんで一緒にバナナを食べたりしてるよ」

 言いながらオイラは、「これってドンキーと遊んでる時とたいしてかわらないじゃんか」と心の中で思った。
 口にしてから初めてそのことに気がついた。
 相手がちがうだけでやってることはいつもとほとんど同じ。果たしてこれはデートといえるんだろうか?
 楽しめたらそれでいいのかもしれないけど、オイラはふと考えこんでしまった。

「で、親密なムードになったらお持ち帰りすんのか?」

 ドンキーは顔をにやつかせなからオイラの耳元でささやく。
 嫌らしい言い方だ。こっちはデートの定義について真剣に考えてるってのに。
 オイラは呆れた顔をしてドンキーを見やる。

「ドンキー、ただそれが言いたかっただけでしょ」
「ははっ、バレたか」

 バレバレです。
 ドンキーってディクシーの話題になったらすぐエッチな方向に話を持っていこうとするんだ。
 オイラがデートに行く時だって毎回「真っ昼間からやるのはいいけどしげみの中でやれよ」ってからかうし。
 しかも真顔で言うものだからたまに冗談で言ってるのか本気で言ってるのかわからない時があるんだよね。

何か雰囲気が好き! 期待!

 とは言っても別に嫌いじゃないけどね、ドンキーのそういうところ。
 相手が誰であろうと決して気取らないし、時にはしょうもない冗談で笑わそうとする。
 それはドンキーの個性だと思うし、やらしい話題が好きなドンキーらしいっちゃらしいし。
 ただ、今日はやたら直接的な質問ばかりしてくるから返答に困っちゃうな。

「で、どうなんだよ。昨日はお泊まりデートだったんだろ? エッチしたのか?」

 ドンキーはやけにしつこく聞いてくる。
 昨日は確かにディクシーを家に泊めたけど、やらしいことはなにひとつしてない。
 それはドンキーだってほんとはわかってるはずだ。

 なのにそれをお泊まりデートと誇張するのは、オイラの口からディクシーと交尾をすませたかすませてないかをただ言わせたいだけなんだと思う。
 相棒という関係上、やっぱりそういうのって気になるものなのかな?
 そもそもそういう質問をこどものオイラにすること自体、間違ってる気がするけど。

「あのさぁ、ドンキー。オイラの年齢わかっててそんなこと聞いてるの?」
「もちろん。お前もそろそろ大人の仲間入りをしてもおかしくない年頃じゃないか。ニンゲンだったら思春期の真っ只中だぜ。精通だってとっくに終えてるだろ?」

 さらりと卑猥なことを言ってのけるドンキーに、オイラは一瞬たじろいだ。
 けれど、すぐさま言い返す。

「『おれから見ればお前なんてまだまだガキだよ』って普段から散々お子様扱いしてるのは誰だっけ」
「まあまあ。今はそんなのどうでもいいじゃないか。で、エッチしたのか?」

 ドンキーは皮肉っぽく言ったオイラの言葉を適当に受け流すと、同じ質問をまた繰り返した。
 結局聞き出すまで質問をやめるつもりはないってわけね。
 はいはい、わかったよ。言えばいいんでしょ言えば。

ワロタ
期待

開いた瞬間 ウェアア…って感じだわ

「なあ、教えてくれよ。昨日はエッチしたのか? したんだろ?」
「してないよ」

 オイラはあっさりと言い放った。

「えぇっ? ほんとかよ」

 素っ頓狂な声をあげるドンキーに、オイラは事実を明言した。

「うん、ほんと。まだ手をつないだことしかないって前にも言ったでしょ? っていうかオイラたち、まだチューすらしてないよ。だからエッチは……言わなくてもわかるよね?」

 ドンキーはひどく驚いた顔を浮かべていた。
 まさか、オイラとディクシーがすでに肉体的な関係にあると本気で思ってたんだろうか。
 オイラが顔を赤らめながら小さな声で「したよ」って言うのをなかば予想してたのかもしれない。

 そりゃオイラだって見栄はろうかなって最初は悩んだけど、オイラはうそをつくのがヘタだから、掘り下げて聞かれたらすぐにバレる。
 そう思ったから正直に言っただけだ。
 それにやっぱり、ドンキーにうそはつきたくない。

 きっぱりと言い切ったからか、ドンキーは疑うこともなく、すぐにオイラの言ったことを信じたようだった。

「ディクシーってそんなにガード固いのか。まあでも確かに言い寄ったら『不潔!』とか言ってビンタしそうだよな、あいつ」
「ビンタしたあと、ポニーテールで思いっきりはたくだろうね」

 オイラはバナナを彷彿させるあの強靭な髪で頬をぶたれる場面を想像し、身震いした。

「ははっ、ありうるな、それ。そういや彼女、今日はどっかにお出かけか? 朝から見かけねぇけど」
「妹と一緒に帽子を買いに行ったよ」
「帽子?」
「うん。ほら、このまえ試合を応援しに闘技場まできてくれたでしょ? そこのおみやげコーナーにかわいい帽子が売ってたんだって」
「へぇっ、帽子だけのためにわざわざあんな遠いところにねぇ」

 ドンキーは感心した様子で言った。
 この際なので、気になってたことを聞いてみることにした。

「でもさぁ、変だと思わない? あんなにあのピンク色の帽子を大事にしてたのに、新しい帽子に目移りするなんて。あれをかぶってからまだそんなに日がたってないのにね」
「よっぽどその新品の帽子が気に入ったんじゃないのか? もしくは人気があってみんなかぶってるから自分もほしくなったとか」

 やっぱり思うことは同じなんだね。

「オイラ、『今かぶってる帽子の方が絶対似合ってるよ』って何度も言ったんだけどね、ディクシーったらどうしてもおニューの帽子がほしかったみたい。新しいのってそんなに魅力的なのかなぁ……」
「流行りもんにすぐ食いつくからな、女っつー生き物は。そんなに個性をつぶしてまで自分をかわいく見せたいのかねぇ」

 ドンキーは半ば呆れ口調でそう言ったけど、まったくもって同感だった。

 女の子ってどうしてこう、揃いも揃ってミーハーなんだろうね。
 だいたい愛用するつもりがハナからないなら「どう? 似合ってる?」なんていちいち聞いてこなきゃいいのに。
 ある程度満足したらどうせまた新しいのに買い替えるんだから。

 価値観なんてみんなそれぞれちがうから否定するつもりはないけど、ディクシーのそういった考え方はオイラには正直理解できない。
 帽子にしろ服にしろ、長く大事にしているうちにだんだん愛着がわいてくるものだと思うんだけどな。

「でも、ひょっとしたらお前のためなのかもしれないな」

 ドンキーがぽつりと言ったセリフを、オイラは聞き逃さなかった。
 オイラのため? 帽子を買うのがオイラのため?
 新品の帽子がオイラと一体なんの関係があるんだろう。

「どういう意味?」

 オイラは率直にたずねた。

「きれいに着飾ってお前を振り向かせたいんじゃないのか? 雰囲気をがらりとかえてお前を魅了しようと目論んでたりしてな。買うのは帽子だけじゃないかもよ?」

 ドンキーは口元を歪めて笑う。
 その直後、「露出度の高い服も買うか悩んでるかもな」とつけ加えた。
 そんなことは考えてもなかったので、オイラは当惑した。

「まさか。それはないでしょ、さすがに」

 すぐに否定したけど、ドンキーは自分の説を曲げなかった。

「何故言い切れる? あいつにもしセックス願望があるのならお前のために自分を磨く努力くらいするだろ普通。女は好きな男のためならなんだってするんだぜ」
「そりゃそうかもしれないけど、だからってディクシーがオイラに隠れてそんなことしてるとは思えないんだよね」
「わかんねぇぞ。恋する女は時には大胆になったりするもんだぜ。清純そうに見える女が愛する異性のために自ら股を広げるのはよくある話さ」
「そうなのかなあ……」

 なんだか論破されてしまったような気がして自信がなくなってくる。
 でもいわれてみれば確かにここ最近、ディクシーはやたらと意味深なことばかり言ってオイラを誘ってた気がする。

 デートの最中に急に手をつないできて「わたし、あなたとならいいよ」と微笑んできたことがあった。
 星を眺めてる時に「夜空の下で仲良くするのも悪くないよね」って言いながら寄り添ってきたこともあった。
 昨日の夜だって「今夜は大丈夫よ」なんて言ってたし。

 「なにが大丈夫なの?」ってこともなげに聞いたら「……バカ」って言ってふて寝したんだよね、ディクシー。
 その時はなにをそんなに怒ってるのかちっともわからなかったけど、今になってようやくわかった。

 あれは「今夜こそあなたとセックスしたい」って遠回しに言ってたんだ、きっと。
 そう考えるとそのあとの彼女のそっけない発言もうなずける。
 オイラのあまりの鈍感さに呆れてたのかもしれない。

 ドンキーに言われなかったらオイラはずっと気づかないままのほほんと過ごしてたにちがいない。
 女心って難しいなぁ……。

「なにか心当たりがあるみたいだな」

 ドンキーはオイラの顔つきを見て察したようだった。

「……昨日、ちょっとね」
「話してみろよ」

 オイラはドンキーを見つめる。
 言おうかどうか悩んだ。
 からかわれるかもしれない。でも聞いてもらったらなにか得られるものがあるかもしれない。
 それに、ここ最近のディクシーの様子っぷりをドンキーは知らないんだし、相談ついでに話しておくのも悪くない。

 迷った挙げ句、オイラは話すことにした。

「ディクシーったらここんとこね……」



「――ふーん。じゃあ現状はほとんど進展なしってことか」
「うん」

 ドンキーはオイラから聞いた話の内容を頭の中で整理している様子だった。
 だいたいのことは話したので、なんでオイラが頑なに口をとざしてたのか、これでわかってくれたはずだ。
 しばらくしたあと、ドンキーは口を開いた。

「つまり、セックス願望を抱いてるのは彼女だけで、お前じゃなくて彼女がお前をお持ち帰りしようとしてたってわけか」

とんでもないスレを開いてしまった

 その結論はちょっと、いやかなり飛躍してるけど、いちいちツッコむのもめんどくさいので「そんなとこだね」と、おざなりな返事をした。
 それがいけなかったのか、ドンキーは変なことを言い出した。

「あいつ、寂しさを紛らわすために毎晩バナオナしてそうだな」
「バナオナ?」
「バナナでオナニー、略してバナオナ。お前とセックスしてる妄想しながら毎晩バナナで性欲満たしてるかもよ」

 その言葉の意味を理解するまでしばらくかかった。
 要するに、バナナをオチンチンに見立てて自分の性器に挿れてるってこと?
 想像したら絶句ものだった。

 仮にドンキーの言うとおりだったとして、そんなむなしい行為をして心が満たされるんだろうか?
 だいたいそんなことして中でバナナが折れ、抜けなくなったらどうするんだろう?
 オイラは彼女の精神状態よりもそっちの方が心配だった。

 ドンキーはオイラの肩にぽんっと手を添えると、うれしそうに顔を綻ばせた。

「にしても、彼女の気持ちに全く気づかないなんて、お前もかなりの鈍感だなあ。彼女は今までずーっと求愛に励んできたってのにお前ときたら、それをことごとくはねのけてきたんだもんなぁ」
「……」

 なにも言い返せなかった。
 まさにそのとおりだったからだ。
 オイラってほんと、自分のことになると鈍いなぁ……。
 ドンキーから顔をそむけ、うつむいて落ちこんだ。

 それに気づいたドンキーが「冗談だよ」と肩をポンポンして微笑みかけたので、オイラはほんの少し気持ちが楽になった。
 些細なことでもすぐ気にしてしまうオイラの人となりを憂慮したのかもしれない。

今日はここまでです。続きはまた近いうちに投下します。

「そもそもお前はさ、彼女とセックスしたいって思ったことはあるのか?」

 ドンキーにそう聞かれ、オイラは少し考えてから首を横にふった。

「全くか?」
「うん」

 その答えにうそはなかった。
 付き合い始めて結構たつのに未だにそういった行為に及んでないのがなによりの証拠だ。

「実に不思議だよ。普段あんなに仲がいいのにお前にその気がこれっぽっちもないなんて」
「ほんと、なんでだろうね」

 とぼけた風に受け取られたかもしれないけど、それは実はオイラ自身も常々感じている疑問だった。

 ――オイラってどうしてディクシーに肉体的欲求を感じないんだろう。

 無論オイラだってエッチなことに全く興味がないわけじゃない。
 オナニーだってほぼ毎日するし、時にはやらしい妄想にふけることだってある。
 それに、ドンキーほどじゃないけどそれなりの性欲だってあるのも自覚してる。

 なのにディクシーと一緒にいても、どれだけ親密なムードになっても、彼女と1つになりたいという気持ちは全く湧いたことがなかった。
 それがどうしてなのかは付き合って結構たった今でもわからない。

 そもそもオイラはディクシーのことを本気で愛しているんだろうか?
 異性としてではなく、単なるガールフレンドとしか見てないんじゃないだろうか?
 根本的な問題だとしたら、ディクシーと今以上の関係を築くのは絶対に無理なんじゃないだろうか?

 考えれば考えるほど疑問はますます膨らんでいく。

「ディクシーのことはもちろん好きだけど、なんか今はまだそれ以上の関係にはなれないっていうか……。愛してるというよりただ好きってだけかな、たぶん」
「友達以上恋人未満ってとこか?」
「そんな感じかな。ヒマな時は今日みたいにドンキーと一緒にいることの方が多いしね。デートよりドンキーと遊んでる時の方が楽しいっちゃ楽しいし」
「そうか」

 ドンキーはニコニコしながらあいづちをうつ。
 ガールフレンドよりも自分を選んでくれることに悪い気はしないのかもしれない。

「だからその、なんていうか、会いたい時だけ会えれば別にそれでいいかなって。毎日デートばっかだとお互い重いだけだろうし」

 ドンキーは黙って話を聞いているのでオイラは続けた。

「それに、今は他にやりたいことがいっぱいあるんだよね。ドンキーとも遊びたいし友達とも遊びたい。それに、身体を思いきり動かしたくなった時は乱闘にも参加したい。デートばっかり優先しちゃうとそういうのもできなくなっちゃうし……」
「まあ確かに彼女と趣味を両立させるのは難しいな」
「うん。だからやっぱり、デートはまだ1番には考えられないかな」
「なるけどな。今は自分のやりたいことをやっていたいってわけか」

 オイラは黙ってうなずいた。
 思いのたけを打ち明けたと同時に、オイラは自分の言動がいかに利己的であるかを思い知った。
 こんなオイラをドンキーは内心軽蔑しているんだろうか。

「……オイラの考え方っておかしいかな?」

 不安になって聞いてみる。

「いいや、全く。自分のために時間を使うなんて実に有意義で素晴らしいことじゃないか。それによ、お前のそういう愚直なところ、おれは好きだぜ」

 ドンキーは満面の笑みを浮かべながらオイラの肩を軽くたたく。
 安堵がオイラを包みこんだ。

 どんな時でもオイラの味方でいてくれるドンキー。
 親身になって真剣に話を聞いてくれるドンキー。
 ドンキーが相棒でよかったなとオイラは思った。

「ピカチュウとは最近遊んでるのか?」
「ううん。乱闘でも見かけないからおうちでゆっくりしてるんじゃないかな」
「そういや最近全然試合に出てねぇな、あいつ」
「気になる?」
「そりゃまあ、おれと一緒で昔からずっと出場し続けてるからな。急に見なくなったら気にもなるさ」
「だよね」
「っつってもあいつと仲がいいお前の方が気になってるだろうけど」
「そりゃまあ、気になるよ、もちろん」

 オイラは天井を見上げた。

 ピカチュウ――この島以外で初めてできた、同じ世代の友達。
 ここのところ全然会えてないけど元気にしてるのかな?
 試合には出てなくてもひょっとしたら観客席でオイラやドンキーの闘いを観戦してるかもしれないし、明日ドンキーに頼んで闘技場に連れてってもらおうかな。

「もしさ、帰ってきたディクシーが帽子しか身につけてなかったらどうする?」

 ドンキーはディクシーの話題に話を戻すと、またしても卑猥なセリフを口にした。
 オイラは外見がすっかり大人びたディクシーの姿を思い浮かべた。

 魅惑的な眼差しでオイラに迫り、「今夜こそ……いいよね?」と言いながらオイラを押し倒すディクシー。
 困惑するオイラの口に自分の唇を重ねてゆっくりと舌を侵入させ、濃厚なキスを交わす。
 お互い荒い鼻息をたてながら舌と舌を絡ませ、やがてディクシーの手がオイラの股間に伸びてチンチンを愛撫して……。

 ――オイラははっと我にかえり、変な妄想を頭から追い出した。

「うーん……それはそれで、ちょっと困るかなぁ……」
「困るって?」
「だってその気もないのに誘われても……って感じだし」
「でもそん時はさすがにチンポ勃つだろ?」
「どうかなぁ。そういうことされたら逆に冷める気がするけどね」

 てっきりまたからかってくると思ってたのに、ドンキーはなぜか急に黙りこんだ。
 訝しげな眼でオイラのことをじっと見ている。
 オイラ、今なんか変なこと言ったっけ。

「ディディー、お前って実は……どっちでもいけるクチか?」

 ドンキーは妙なことを言い出した。

「どういう意味?」
「彼女に全く欲情しないのはただ単に彼女に興味がないだけで、本当はオスもメスもいけるんじゃないのか? いや、そもそもメス自体に興味がないとか?」

 言葉の意味を理解した瞬間、オイラはどぎまぎした。

「なな、なに言ってんの。ドンキーったら。そんなわけないじゃん」

 平静を装ったつもりだったけど、声が上ずっていた。
 ディクシーに欲情しないってのは確かに当たってるけど、だからといって別に異性自体に興味がないってわけじゃない。
 でもドンキーはオイラが変わった嗜好の持ち主だとすっかり決めつけたようだった。

「いいっていいって。誰にも言わないから心配すんな。おれとお前だけの秘密にしとこうな」
「勝手に決めつけないでよ。ちがうってば」

 露骨なエロ話を始めたりオイラを異常性癖認定したりと、今日のドンキーはどこかおかしい。
 バナナの食べすぎで頭がおかしくなったんだろうか?
 いくら否定しても全然聞きそうにないので途中で言い返すのはやめたけど、心境だけはちゃんと伝えておこうと思った。

「ただ……やっぱり今は肉体関係は持てないなって思うんだ。この先そういう願望を持つのかも正直わかんないけど」
「でもそれだとデートの時困らね? ムラムラしてきたらどうすんだ? ションベンするふりして草むらでシコんのか?」
「今のところデートの時に抜きたくなったことはないから当分は大丈夫なんじゃないかな」
「ふーん。お前って案外奥手なんだな。まぁお前がノンケだろうとホモだろうと、おれがお前を愛する気持ちは変わらないぜ。どんなお前でも受け入れてみせるさ」

 すごくかっこいいことを言ってるのに途中のセリフで台なしだ。
 ドンキーはどうあってもオイラをホモ認定したいらしい。

「あのねぇ。オイラは別に――」


 弁明しようとした時、出入り口のトビラから突然コン、コンと音がした。
 反射的にドアを見やると、数秒後にまた同じ音が鳴った。
 オイラとドンキーは顔を見合わせる。

 最初は風が当たってるのかな?と思ってたけどそうではなさそうだった。
 どうやら誰かが外からドアをノックしてるようだ。

「ウワサをすれば彼女のおでましか。ディディー、この話はまた今度な」

 ドンキーはのそのそと立ちあがり、ドアに歩み寄った。
 ドアの向こうにいるのがディクシーだとドンキーは完全に思いこんでるみたいだけど、それは絶対にありえないことだった。

 ディクシーが帽子を買いに出かけた闘技場は海を渡った向こう側――つまり、ここから結構な距離がある。
 そんな遠くまで行ってるんだからいくら朝早く出発したとはいえ、こんな短時間で戻ってくるのは物理的に不可能だ。
 むしろまだ買い物を終えてすらないと思う。1回だけディクシーの買い物に付き合ったことがあるけど、呆れるくらい長かったから。

 とはいうものの、オイラが今いる場所はドンキーの家だ。
 今日はドンキーんちに泊まるって言ってあるからここにくることはたぶんないと思うけど、オフの日にここにやってくるのは大体限られるわけだし、ディクシーじゃないなら一体誰だろう?

 ――ひょっとしてクレムリン軍団だったりして。
 突拍子もない考えだけど、可能性はゼロじゃない。
 まあ仮にそうだとしても追い返せばいいだけの話なので、オイラは座っとくことにした。

「おっほぉっ、珍しいなぁ。どうしたんだよ」

 ドンキーはたずねてきた誰かとなにやら仲よさそうに話している。
 相当驚いてる様子からして、ディクシーでないのは明白だった。
 かといってクルールやクレムリン軍団でもなさそうだ。
 あれっ? じゃあ一体誰だろう。ますます気になってきた。

 ドンキーの背中がジャマで相手の姿が見えないけど、すごく聞き覚えのある声がオイラの耳にも届いた。
 声といっても鳴き声だ。
 この特徴的な鳴き声はもしかして……?

「ディディー、かわいいおともだちが遊びにきたぞ」
「あっ!」

 ドンキーに招かれて入ってきた黄色の生き物を見た瞬間、オイラはぱっと立ちあがって玄関口へと駆け寄った。
 予想は見事に的中したようだった。

「ピピーッ!」

 元気な声でオイラの名前を呼んだのはピカチュウだった。
 くりっとした大きな眼、あどけない顔立ち、赤いほっぺ、特徴的なギザギザのシッポ。
 紛れもなくオイラの友達のピカチュウだった。

「ピカチュウ、きてくれたんだ」
「ピカピッ!」

 ピカチュウはにこやかに返事した。
 この子がこの島にやってくるなんて思ってもなかったのでほんとにびっくりした。
 そういや以前、「いつかジャングルを案内するからヒマな時に遊びにきてよ。絶対だよ」と約束したんだっけ。
 ということは、ピカチュウはそのことをちゃんと覚えててくれてたらしい。

 なんだかオイラは妙にうれしさが込みあげてきて、ドンキーが横で見てるのにも関わらずピカチュウをギュッと抱きしめた。
 ピカチュウのギザギザのシッポが左右に揺れる。
 でもなんでここにオイラがいるってわかったんだろう?

今日はここまでです。

こわいです

「よくここにディディーがいるってわかったな。誰かに教えてもらったのか?」

 正にオイラの抱いている疑問をドンキーが口にした。
 ピカチュウは手に持っている紙切れをオイラたちに差し出す。
 見てみると、それには大きな円が描かれていた。

 円のど真ん中には“バナナジャングル”と書かれており、右には『遺跡』、左には『浜辺』とそれぞれ書かれている。
 そして円の上の部分にでっかく『×』と印されていた。

 それを見てすぐに思い出した。オイラが以前この子に渡しておいた、この島の地図だ。
 地図といってもオイラがこの島の形を思い浮かべながら大雑把に書いたものだけど。
 ご丁寧に×のすぐ上に『オイラが基本的にいるのはここ』とまで書いてある。
 我ながら律儀だなぁ、とオイラは思った。

「これ、お前が書いたのか? よくこんなんでここまでこられたなぁ」

 横から覗きこんだドンキーは、地図を見るなり呆れ口調で言った。
 そう言われても仕方のないことだった。
 自分で書いた地図を改めて見てみると、字が非常に汚い。
 ピカチュウ、よくこんなんで迷子にならなかったね。

「海を渡ってきたんだよね? 誰かに乗せてもらってきたの?」
「ピカッ、ピカピッ、ピカッチュ」

 ピカチュウは答えたけれど、なにをしゃべってるのか全くわからなかった。

 オイラやドンキーの言葉はピカチュウに通じるけど、ピカチュウの言葉はなぜかオイラたちには通じないんだよね……。
 でもジェスチャーで伝えようとしてくれてるので、「そっか。大変だったね」とにこやかに返事した。
 いつもは茶々を入れるドンキーも事情を察してるのか、なにも言ってこない。

 おおかた空を飛べる生き物に乗ってきたか、船に乗せてもらったかのどっちかだろう。
 どのみちそんなことは知らなくても困らないし、さほど重大なことではないので、オイラは深く考えないことにした。


「立ち話もなんだしむこうで話そうよ。さっ、こっちこっち」

 自分の家でもないのにオイラはそう言ってピカチュウの手を握ると、部屋の奥に連れていった。
 ピカチュウを真ん中にして横に3匹並んで座る。

「ディディー、よかったな。今日はデートの日じゃなくて」
「うん」

 やっぱり今はデートしてる時より友達といる時の方が楽しい気分になるな。
 オイラは心の底からそう感じた。

 心なしかドンキーの表情も若干綻んでいるように見えた。
 ディクシーだと気を遣うだろうからほっとしてるのかもしれない。

「ピカチュウ、ここまで歩いてきたから喉かわいてるでしょ? ねぇ、ドンキー。ピカチュウにもバナナジュース作ってあげてよ」
「ああ」
「あっ、ついでにオイラもおかわりしたい」

 オイラは残っているバナナジュースを全部口に含むと、空になった容器をドンキーに差し出した。

「よしよし、 ちょっと待ってろよ」

 ドンキーはコップを受け取って立ちあがると、鼻歌を歌いながらいそいそとバナナジュースを作り始めた。
 できあがるまでしばらく時間がかかるので、オイラはその間に冒険した時の話をピカチュウに聞かせてあげようと思った。

「ピカチュウ、オイラがクレムリンたちからバナナを奪還した話、聞きたくない?」
「ピカッ!」

 ピカチュウは興味ありげな様子でうなずいてくれたので、オイラはゆっくりと話し始めた。

 ピカチュウと出会ってからずいぶんたつけど、この子がこのドンキーコングアイランドにやってきたのは今回が初めてのことだ。
 ドンキーはピカチュウのことを昔から知ってたのに一度もこの島に連れてきたことがなかったから、オイラは乱闘に参加するまでピカチュウのことはモニター画面でしか見たことがなかった。

 ただ、画面に映ったピカチュウのチャーミングな笑顔や愛らしい仕草に釘づけになったことは多々あったので、いつか実際に会ってみたいなとはそのころからずっと思っていた。
 だから闘技場でピカチュウの愛くるしい動きを実際に見た時、この世界にはこんなにかわいい生き物がいたんだと本気で感動したものだ。

 「お前も出ようぜ」とドンキーに誘われて参戦することになった大乱闘は思ってた以上にエキサイティングで手強いファイターばかりだけど、冒険してた時とは一味ちがった新鮮さがあるので結構面白い。
 とはいえ、オイラはドンキーやピカチュウとちがってまだ全然バトル慣れしてないからチーム戦の時は味方の足を引っぱっちゃうことがほとんどだし、1対1の勝負だと負けちゃうことの方がはるかに多い。

 けれど、それなりに楽しめてるからつらいと感じたことはない。
 むしろ参戦してよかったなって思ってる。
 “憧れのピカチュウに会う”という念願の夢を叶えることができただけでなく、友達にもなれたから。



「――でね、クレムリンたちにさらわれたドンキーをオイラとガールフレンドで助けに行ったんだよ。コースターでレースに挑んだり、時にはともだちアニマルに変身したり。いろいろ大変だったけどすごく楽しかったなぁ」

 オイラがしみじみと語る思い出話を、ピカチュウは楽しそうに聞いてくれている。
 話してるうちにオイラはだんだん気分が高翌揚していた。

「またあんなスリリングな冒険したいなぁ。ピカチュウだって一度はそういう冒険したいよね?」
「ピカッ!」

 ほんとにそう思ってるからか、ピカチュウは即座に返事した。

「ねぇ、ドンキー。そういうわけだからまたクルールたちにさらわれてよ。今度はピカチュウと一緒に助けに行くからさ」
「おいおい、勘弁してくれよ。もう縛られるのはごめんだぜ」

 ドンキーはオイラを見て苦笑いを浮かべる。

「ちょっとの辛抱だよ。ピカチュウが電撃でドンキーもろともクルールを黒こげにするってさ」
「ピカピカッ」
「それじゃ助けにきた意味ねえじゃんか」

 ドンキーがすかさずツッコんだので、オイラとピカチュウは声をたてて笑った。
 ドンキーは「やれやれ……」とため息をついていた。

 今思えば、ポケモンという種族とただのサルであるオイラがこうして親しくしてるのって稀有なパターンなのかもしれない。
 ポケモンはポケモン同士で行動するのが一般的だというのを耳にしたことがあるから。

 とはいっても、オイラはどんなポケモンとでも仲がいいってわけじゃないけどね。
 一応この子の他にゼニガメやルカリオっていうポケモンのファイターもいるっちゃいるけど、前者はニンゲンに忠実なシモベって感じだし、後者は近寄りがたいっていうか、なんか苦手。
 あと頭に赤いリボンをつけた、ピンク色のまんまるなポケモンもいた気がするけど、ちょっと名前が思い出せない。

 ピカチュウは彼(彼女?)らと同じ種族だから全く関わりがないということはないと思うけど、普段試合とかで見てても特に親しい間柄というわけでもなさそうなので、紹介してもらったことはなかった。
 まあどのみちそのポケモンたちといまさら仲良くしようとは思わないし、親しくなりたいとも思わない。
 ドンキーとピカチュウがいてくれれば休憩中も退屈しないですむし、このままでいいやって思ってる。



「できたぞ、ほいよ」

 話にちょうど区切りがついた時、ドンキーはタイミングよく2つのコップをもってオイラたちの元へとやってきた。
 よっ、待ってました。

 ピカチュウは「ピカピッ」と短く鳴いてドンキーからジュースを受け取った。
 今のは「ありがとう」って言ったのかな?
 幼いのに礼儀正しいな。見習わないと。

>>29

×高翌翌翌揚
〇高翌揚

誤字すみません。

sagaを入れると大丈夫だぞ 佐賀

「ありがと、ドンキー」

 オイラもちゃんとお礼を言ってドンキーからジュースをもらう。
 オイラがいただきますを言う前に、ピカチュウは両手で持ったバナナジュースをゴクゴクと飲み始めた。
 すごい勢いでコップの中身が減っていく。
 思ってたとおり、よほど喉がかわいてたらしい。

「ピッカァッ!」

 ピカチュウは一気に半分ほど飲み終えるとコップから口を離し、歓喜の声をあげた。
 見ているこっちまでうれしくなるようなすばらしい笑みだった。

「『おいしい』だって」
「そりゃよかった。愛情をこめて作った甲斐があったぜ」

 ドンキーはうれしそうに笑いながらオイラの横に腰をおろす。
 オイラはピカチュウが再び飲み出したのを見届けてから2杯目に口をつけた。
 飲みこんだとたんに口の中に濃厚な甘みが広がり、オイラは至福の笑みをピカチュウに見せた。

 気分がハイになってる時に飲むバナナジュースは、普段とは一味ちがったおいしさを感じさせてくれるんだなとオイラは思った。

 飲み終えて一息ついた時、オイラはつい先ほどまでドンキーと猥談をしてたのをふと思い出した。

 ――もしまたドンキーがやらしいことを言い出したらどうしよう?
 そんな不安が頭をよぎる。

 オイラと2人っきりの時なら別に構わないけど、今はピカチュウがいるのでそうもいかない。
 オイラの恋愛事情の話を持ち出すのはまだいいとして、バナオナだのホモだの卑猥な用語を口にされたらたまったものじゃない。
 ドンキーだけでなく、オイラまでピカチュウに変な眼で見られること請け合いだ。
 フランクな性格は決して悪いことではないけど、時と場合によってはその場の空気が一変してしまうことだってある。

 となると、やっぱりここは釘をさしておいた方がよさそうだ。
 そうと決まったら早めに言っておかないと。
 オイラはカラになったコップをテーブルに置いて立ちあがった。

「ドンキー、ちょっときて。ピカチュウ、悪いけどここで待っててね」

 ドンキーの腕をむりやり引っぱって部屋の隅っこに連れていく。

「おいおい、なんだよ。どうかしたのか?」
「耳かして」
「?」

 ドンキーは怪訝な顔を浮かべていたけどオイラが「早く」と言ってせかすと、オイラの顔の前に耳を近づける。
 ピカチュウがこっちを見てないのを確認すると、オイラは声をひそめてドンキーに耳打ちした。

「わかってると思うけど、ピカチュウがいる間はエッチな話は一切しないでよ。下ネタもダメだからね。冗談でも絶対に『こいつ、実はホモなんだぜ。ピカチュウも気をつけろよ』なんて言わないでよ。言ったら相棒の縁切るからね」

 もちろん本気で縁を切ろうなんて思っちゃいないけど、ふざけられては困るのできつめに言っておく。
 ドンキーもそこんとこの良識はあるだろうからここまで言い含める必要はないかもしれないけど、念には念をだ。

「わかってるって。ったく、心配性だな、お前は」

 ドンキーは意に介する様子もなく、笑いながらオイラの背中を乱暴にたたいた。
 あまりの痛さに顔をしかめたけど、ピカチュウがこっちを見てたのでとっさに笑ってごまかした。
 さっとドンキーに目線を戻す。

「ほんとにわかってる? もっかい言うけど、ピカチュウの前で下品な用語は禁句だよ」

 自分のためというのもあるけれど、ドンキーのイメージ像を崩したくないという思いもあった。
 性欲にまみれたゴリラなんて知ったらピカチュウはきっと幻滅するだろうから。

「心配すんなって。今日はもう下ネタは口にしねぇよ。約束するさ」

 ドンキーは相変わらずのんきに笑ってたけどそう断言したので、オイラは胸を撫でおろした。
 けどまだ顔に不安が残ってたのか、ドンキーはオイラの肩に腕を回し、耳元で囁いた。

「いくらおれでもその辺は普段からちゃんと弁えてるつもりだぜ。その証拠に今までエロい話はお前と2人っきりの時にしかしてなかっただろ? それはお前が一番わかってるはずだぜ」

 それは確かにその通りだった。
 杞憂に終わってくれればなにも問題ないわけだし、ドンキーの言葉を信じよう。

「そうだね。いぶかしがってごめんね」
「気にすんな」

 ドンキーが肩に手を添えたまま微笑みかけたのでつられてオイラも笑った。
 不思議そうにこっちを見てるピカチュウになんて言おうか迷ったけど、ドンキーが「お前をどこに連れてくか相談してるだけだよ」と機転をきかせてくれた。

 安心してピカチュウの横に戻ろうとした時、

「まぁ、お前とピカチュウがじゃれ合ってるところは見てみたい気もするけどな」

 背後からそんな声が聞こえた。

「どういう意味?」
「そのまんまの意味さ。お前とピカチュウが掘り合ってるところを傍観しとくのも悪くないなって」
「えっ……」
「なんてな。冗談だよ冗談」

 ドンキーはあっはっはとおかしそうに笑っていたけど、オイラにはドンキーが冗談で言ってるようには聞こえなかった。
 ピカチュウと掘り合ってるところを傍観――その言葉の意味を理解した時、背筋がぞっとするのを感じた。
 ドンキーってまさか……ショタコン?

「ねぇ、もっかいおかわり」

 オイラは空っぽのコップをドンキーの顔の前に差し出した。
 
「ピカピッ!」

 ピカチュウも便乗してドンキーにコップを差し出す。

「おいおい、そんなに飲んで大丈夫か? あとでションベンしたくなっても知らねぇぞ」
「平気だよ。ねっ? ピカチュウ」
「ピカッ」

 うんうんと何度もうなずくピカチュウ。
 結局オイラとピカチュウはその後何杯もバナナジュースをおかわりした。

「あっ、いっけねぇ」

 思い出話に花を咲かせている時、ドンキーは急になにかを思い出したかのように声をあげた。

「どうかしたの?」

 オイラがたずねると、ドンキーは頭をポリポリ掻きながら言った。

「ディディー、ピカチュウ。悪いけどちょっくら留守番頼まれてくれねぇか?」
「えっ?」
「いや、今日じいさんに呼び出されてたのをすっかり忘れててさ。すぐ行かねぇとまたクドクド説教されちまう」
「そっか。それなら仕方ないね。いいよ、わかった。行ってきなよ」

 断る理由もないのでオイラは快く了承した。

「おう、悪いな。ピカチュウ、そういうわけだからなんかあったらディディーに言うんだぞ。あ、ここが自分の家だと思って遠慮せずにゆっくりしてってくれよな」
「ピカピッ」
「じゃあ行ってくるな」

 ドンキーはオイラたちに振りかえってにこりと笑うと、軽やかな足取りで出かけていった。
 姿が見えなくなるまで見送ったあと、オイラはピカチュウに向き直る。

 なにして遊ぶ?と聞こうとした瞬間、不意に激しい尿意がオイラを襲った。
 バナナジュースをがぶ飲みしたからだろうけど、さすがにちょっとおかわりしすぎたかな?

「ごめん、ちょっとおしっこしてくるよ。ピカチュウも一緒にどう?」

 ドンキーを連れションに誘う時と同じノリで誘うと、ピカチュウは「ピカッ!」と笑顔で二つ返事した。
 相手が女の子だとこういう時すごく気をつかうけど、同性ならこうして気軽に誘うことができる。
 よかった。ピカチュウが男の子で。

 安心して気が緩んだのか、尿意はより一層激しくなった。
 急がなきゃ。



 バナナ倉庫のすぐそばにあるしげみを掻き分けて奥へ奥へと進んでいく。
 ピカチュウはトコトコと後ろをついてくる。

「ピピーッ」
「んっ?」

 呼ばれて振りかえると、ピカチュウは「ピッ」と鳴いて左にある樹木を指でさす。
 あそこでしたいらしい。
 ピカチュウが落ちついてできるのなら場所はどこでも……というより早くおしっこしたくてたまらなかったので、オイラはピカチュウが指し示す方向に歩を進めた。

 樹木の真ん前で立ちどまったピカチュウの隣に並んで立ち、足を広げる。
 ポケモンもといピカチュウがどういう体勢でおしっこするのか興味があったので、横目で観察してみる。
 てっきり犬や狼のように足をあげて放尿するものだと思ってたけど、ピカチュウは2本足で立ったまま股間に手を伸ばし、“モノ”を取り出した。
 なるほど。ピカチュウのような2足歩行が可能なポケモンは立ったままするのが一般的なんだ。

 感心しつつ、オイラも素早く取り出した性器をつまみ、放尿の体勢をとった。
 早く出してすっきりしたい。



 ――2つのチンチンからほとばしる黄色の液体がチーーッと音をたてながら立ち木の根元を濡らしていく。
 
 ドンキーの警告を無視しておかわりしまくったのがやっぱりいけなかったのかな。
 一度出たらとまらない。とまらないどころか、放尿の勢いは弱まる気配を全く見せなかった。
 がまんが解き放たれたときの快感というのはバナナを貪ってるとき以上に気持ちがいいものだ。

 まさにそれを裏づけるかのように、放尿しているピカチュウにちらっと眼をむけると、気持ちよさそうな顔でおしっこしていた。
 オイラほどじゃないけど結構ジュースおかわりしてたし、がまんしてたのかもしれない。

 なにげなくピカチュウの股間に眼をおとすと、ちっちゃなオチンチンがあった。
 そこから依然としておしっこが勢いよく出続けている。

 初めて見るピカチュウの男の子のしるし。
 赤くて先っぽがとんがってるのはオイラのと同じだけど、おっきさはオイラのより少し小さい。
 顔がかわいいとなんだかオチンチンまで愛らしく見えちゃうな。そんな印象だった。

 放尿に夢中なのか、ピカチュウはオイラに性器を凝視されていることに全く気づいていないようだった。

 ――ピカチュウもオナニーとかするのかな?

 性器を見続けているうちにそんな疑問が頭をよぎった。
 握りしめたオチンチンを夢中でこするピカチュウの姿――想像するのは意外と抵抗がなかった。

「?」

 視線を感じたのか、ピカチュウが不意に顔をこっちにむけたので慌てて目線を前に戻す。
 いけないいけない。オイラったらなに考えてるんだ。
 たぶんドンキーとやらしいことを語ってたからだろうけど、だからってピカチュウに対してそんなことを考えるなんてどうかしてる。

 エッチな話題はダメって言ったオイラがエッチな妄想しちゃうなんて言語道断もいいとこだ。
 変なことを考えるのはやめよう。
 この子はきっとまだオナニーや精通にすら縁のない、無垢なこどもなんだから。


 もうピカチュウの方に眼をむけないと心に決めたオイラだったけど、今度は逆にピカチュウがオイラの股間をじっと見つめているっぽかった。
 横から突き刺さるような視線を感じるのは否めない。
 オイラはつとめて気づかないふりをしていたけど、はたしてそれがピカチュウにどう見えてるのかはわからなかった。

 オイラより先におしっこを終えたピカチュウは性器を体毛の中にしまいこむと、オイラの排尿が終わるのを横で待っていた。
 完全に身体をオイラの方にむけている。
 相変わらずオイラの股間をじーっと見つめてるみたいだ。
 普通に見られるだけならどうってことないけど、そんなに間近で見られるとさすがにちょっと恥ずかしい。

 ついさっきガン見してたオイラがいうのもなんだけど、自分以外のオチンチンに興味があるんだろうか。
 オイラのモノを見てこの子は一体なにを考えているんだろう……?
 結局ピカチュウはオイラが排尿を終えるまでの間、ずっとオイラの性器から眼を離さなかった。



 家にむかって引き返そうと倉庫の前を通りかかったとき、オイラは以前、ピカチュウが闘技場の控え室でバナナをおいしそうに食べてたのを思い出した。
 思い出したと同時にオイラのお腹がギュルルルゥっと鳴る。

 きっとピカチュウもお腹がすいてるにちがいない。
 遠いところからわざわざ遊びにきてくれてるんだし、精一杯のおもてなしをしてあげなくちゃ。

「ピカチュウ」

 前を歩くピカチュウを呼びとめる。

「そろそろおやつタイムにしよっか」
「ピカッ?」

 ピカチュウは振りかえるなり首をかしげる。
 口で言うよりモノを見せた方が早そうだ。

「ちょっと待っててね」

 オイラはダッシュで倉庫からいくつかバナナを持ってくると、ピカチュウに見せた。

「はい。お腹すいてるでしょ?」
「ピイカ……!」

 バナナを見たとたん、ピカチュウの眼が輝く。

「家の中で食べよっか」
「ピカッ!」

 ピカチュウは喜んだ様子でうなずいた。

 貴重なバナナを無償であげるなんて本来あってはならないことだけど、遠路はるばるきてくれたピカチュウのためならなんら惜しくはない。
 ドンキーだって毎日毎日在庫チェックしてるわけじゃないんだし、1本2本減ったところで気づきやしない。

 万が一バレて咎められたとしても、ピカチュウと一緒に食べたって言ったらきっと納得してくれるだろう。
 無断で持ち出したことをちゃんと謝っておけば、あとで嫌味を言われることもない。
 大体オイラの方が普段から倉庫の見張り番をすることが多いんだからこれぐらい許されて当然だ。

「ねぇ、ピカチュウ。今日はどうするの? 日が暮れる前に帰るの?」

 オイラはバナナを食べながらたずねた。
 ピカチュウは食べている口の動きをとめ、どうしようかなといった顔をしていた。

 すぐにうなずかなかったのをオイラはひそかにほっとしていた。
 考えてる様子からすると、いつこの島を出るかはまだ決めてなかったのかな。

「明日は試合に出る日だっけ?」
「ピカピッ」

 ピカチュウは即座に首を横にふった。
 それだったら話は早いね。

「じゃあ今日は泊まっていきなよ」
「ピィカ?」

 オイラの言葉にピカチュウは意外なほど反応を示した。
 バナナを持ったまま、眼をぱちぱちさせてオイラの顔を見ている。

 そんなことを言われるとは思ってなかったんだろうか?
 オイラはピカチュウの眼を見返してにっこりと笑った。

「オイラも今日はドンキーんちに泊まるんだ。だからピカチュウも一緒にどうかなって。きみだったらきっとドンキーも歓迎してくれると思うしさ」
「ピカッ……」

 ドンキーの名前を口にしたとたん、ピカチュウの表情がなぜか曇った。
 なんかまずかったっけと一瞬焦ったけど、すぐに理由がわかった。
 うつむいたピカチュウの顔を覗きこみながらたずねる。

「ドンキーが文句言ったらどうしようって思ってる?」
「……ピカッ」

 予想どおりというべきか、ピカチュウは弱々しい声で返事した。

 乱闘の時に暴れまくるドンキーを今まで見てきてるから、ピカチュウの中ではおそらくドンキーは野蛮なゴリラって印象なんだろうね。
 普段のドンキーを知っていればそんなの全く心配しなくていいことだ。
 オイラはつとめて明るい口調で言った。

「心配いらないよ。ドンキーは確かに戦ってる時はガサツだけど、普段は滅多に怒らないよ。元々温厚な性格だし。現にきみの姿を見たら喜んでたでしょ? あれが普段のドンキーなんだよ」

 オイラはピカチュウを安心させるために言葉をつないだ。

「オイラがピカチュウともっと遊びたいと思って誘ってるわけだし、遠慮しないでよ。万が一ドンキーに断られたらオイラんちに泊まればいいんだし」

 なんでいきなりこんなことを言い出したのか、自分でもよくわからなかった。

 すぐに帰ってほしくない。
 せっかく会いにきてくれたのにすぐ離ればなれになるなんて嫌だ。
 またしばらく会えなくなるなんて絶対嫌だ。

 もっと一緒にいたい。ピカチュウともっと一緒にいたい。
 そういった想念がオイラを駆り立てているのかもしれない。

 ピカチュウの心が若干揺らいでるようにみえたので、オイラは意を強くして続けた。

「ジャングルを案内するのだって今日だけじゃ無理だしさ。それに、陽が沈んでから海を渡るのは危ないよ。誤って落ちたらサメの餌食になっちゃうかもしれないし。だから、ねっ? 今日は泊まっていきなよ」

 ピカチュウは返事こそしないものの、どうするのか真剣に考えているようだった。
 オイラはもう言えるだけのことは言ったし、あとはピカチュウ自身が決めることだ。

 どうしても帰らなきゃいけない理由があるのなら仕方ないけど、そうでないのならぜひ好意にあまえてほしい。
 オイラは心の中でそう祈りつつ、ピカチュウの返事を待った。

 ――しばらくたったあと、ピカチュウはようやくオイラを見て「ピカッ」とにこやかに鳴いた。
 一応はっきりさせておきたかったので、もう一度たずねた。

「今日は泊まっていく?」
「ピカッ!」

 はっきりうなずいたので今のは「うん」と言ったのにちがいない。
 オイラは心の底から歓喜した。

「よかった。じゃあ今日はおそくまで遊べるね」
「ピカピッ」

 ピカチュウはニコニコしながらあいづちをうつ。
 眼にしたもの全てを魅了するような、あどけない笑顔。
 やっぱりピカチュウは笑った時の顔が一番かわいいな、とオイラはつくづく思った。

「ドンキーが帰ってきたらみんなでジャングルに行こっか。そうだ、一緒にトロッコ乗ろうよ。やみつきになるくらい楽しいよ」
「ピカピカッ!」

 ピカチュウの声に元気が戻った。
 なにはともあれよかった。これで今日も明日もピカチュウと一緒にいることができるわけだ。
 オイラはうれしさのあまり、小躍りしたい気分だった。

「食べてる最中だったのにごめんね。さっ、食べよっか」

 そう声をかけると、ピカチュウはバナナを再び口に入れ、モグモグと食べ始めた。
 ご機嫌なのか、シッポを左右に揺らし、さっきはだらりと垂らしていた耳をリズミカルに動かしている。
 それを見てなんだか楽しい気持ちになったオイラも、持っているバナナを一気に口に押しこむと、すかさず2本目に手を伸ばした。

 皮をむこうと芯を掴んだ時、オイラはそれを無言でテーブルに戻した。
 食べ過ぎるのはまずいと思ったからだ。

 ジュースをがぶ飲みして激しい尿意に襲われたように、バカみたいに食べまくってお腹を壊しでもしたら最悪だ。
 オイラから泊まってってよってピカチュウを誘ったんだからそれだけは絶対に避けたい。
 思わず勝手に動きそうになる手を引っこめるには、自制心を総動員する必要があった。

 つらいけどここはがまんだ、これもピカチュウのためだ、と自分に言い聞かせ、オイラは視界からバナナを追い出した。
 食べ終わったバナナの皮を懐にしまうと、気を取り直してこのあとのことを考えることにした。

 ――なにして遊ぼう?

 ピカチュウが今晩泊まることになったのはいいけど、ドンキーに留守番を頼まれてる以上、戻ってくるまでそう遠くへは行けない。
 トロッコに乗るには遺跡の方まで行かなきゃならないし、海を眺めに行くのだって時間的にはまだ早い。
 かといって家の中でゴロゴロして過ごすのはあまりにももったいない気がする。

 どうせなら普段あまりしないようなことをしたい。もっといえば、ピカチュウとしかできないことをしてみたい。そう思った。
 ピカチュウとしかできないこと……一体なにがあるだろう。

 真っ先に浮かんだのが手合わせだった。
 ピカチュウとは一度サシで勝負してみたいと前々から思ってたし、それが一番いいかもしれない。
 他にはなにがあるだろう。

 オチンチンの見せっこ――一瞬そんな邪な考えが脳裏をよぎり、オイラはすぐさま首をふって頭から消し去った。

 おしっこの時といい今といい、どうしてこうもピカチュウに対してなにかとエッチな感情を抱いちゃうんだろう。
 だいたいこの子のオチンチンなら連れションの時にばっちり見たじゃんか。
 それなのになんで……。

 たぶんドンキーのせいだ。ドンキーが変なことばっかり言うからオイラの頭は毒されちゃってるんだ。きっとそうだ。そうに決まってる。
 オイラは無理にでもそう思いこみ、再び思案を重ねた。


 結局手合わせ以外にやることが思いつかなかったので、とりあえずは倉庫の前にある広い空き地にピカチュウを連れだそうと決めた。
 ピカチュウが食べ終わったのを見届けたあと、オイラは言った。

「ピカチュウ、ちょっと外の空気でも吸いに行かない? 天気もいいし」
「ピカッ」

 ピカチュウはすぐに返事をして立ちあがった。
 外に出て晴れ渡った空を見上げる。

 開けっぱなしにしておいたドアをきちんと閉め、オイラたちは段差を駆けおりていった。
 太陽の光をたっぷり浴びた空き地の地面はとても熱く、素足では立てないほどだったので、オイラたちはかたわらにある木陰に避難した。
 いい感じにあったかくなっている地面に向かい合わせになって座りこむ。

「こう天気がよすぎるってのも考えものだね」

 苦笑いしながらぼやくと、ピカチュウは足の裏をさすりながら「ピカッ」と返事した。
 ピカチュウってほっぺ以外はほんとに黄色そのものだなぁと思いながら見ていると、とたんにバナナを食べたい衝動に駆られた。

 なるたけ考えないようにしてたのに、一度バナナが頭の中に浮かんでしまうと正直どうしようもなかった。
 ピカチュウがもはやバナナにしか見えない。

 そもそもバナナと同じ色をしたピカチュウと一緒にいるのに、バナナを連想しないように努めるのなんて土台無理な話だった。
 さっきはよく誘惑に負けなかったなぁと、オイラは自画自賛した。
 でも今回ばかりはちょっと勝てそうにない。

 バナナと同じ色をしたピカチュウ。バナナとピカチュウ。バナナ……ピカチュウ……バナナ……ピカチュウ……ピカチュウ……バナナ……ピカチュウとバナナ……ピカチュウのバナナ……んっ?

「ピィカピカ?」

 ぼーっとしてるオイラの顔をピカチュウが不思議そうに覗きこむ。
 ズームアップで映る無垢な瞳。

 さっき食べたばかりなのに、オイラの腹の虫が再びマヌケな音を出した。
 ちょっとでも気を抜くと理性を失いそうだった。
 この子の頭にかぶりつきたい。思いきりかぶりつきたい。

 ――はっと我にかえり、出そうになったよだれを慌てて飲みこむ。危ない危ない。
 でもこのままここに座ったままだと無意識にピカチュウの頭をガブッといってしまいそうだ。

 それこそカービィとかいうピンク色の生き物のように、まるごと口に入れちゃうかもしれない。
 ピカチュウにはなんの罪もないんだから、さすがにそれはまずい。
 再びバナナを食べる時までは極力ピカチュウを直視しないようにしよう。

 オイラは沸きあがってくる衝動を必死で抑えた。

「ピピーッ?」
「ごめんごめん。なんでもないよ。それよりさ」

 とっさに笑ってごまかし、話をそらす。

「ピカチュウ、オイラと手合わせしてくれない? きみの実力がどれほどのものなのか見せてよ」
「ピカッ?」

 ピカチュウは首をかしげる。オイラの言ってることの意味がよくわかってないらしい。
 オイラはピカチュウをガン見しないように気をつけながら説明した。

「ほら、オイラたちってよくよく考えてみたら1対1で戦ったことないでしょ? 乱闘の時だと中々サシで勝負できないしさ。だからこの機会に勝負するのもいいかなと思ってね。
 ドンキーもしばらく帰ってこないから周りに気をつかわなくてすむし、それに、ここなら思う存分動き回れるし。だから、ね? 戦おうよ」
「ピカッ」

 ピカチュウは納得した様子でうなずくとすっと立ちあがり、空き地にむかって走っていった。
 ある程度離れたところで立ちどまり、すばやくオイラに向き直る。
 オイラもすぐさま木陰から出てピカチュウと少し距離をあけて立つ。



「用意はいい?」
「ピカピッ!」

 ピカチュウはきりっとした顔つきでうなずいた。
 ほっぺの電気袋からバチバチっと電気が出ている。思いのほかやる気満々のようだ。
 きっと、ファイターとしての血が騒ぐのだろう。

「お手柔らかにね」

 オイラはそう言いながらバレルジェットを背中に装着し、ピーナッツポップガンを両手に持った。
 バナナの皮もすぐ取り出せるようにしてある。これで準備万端だ。

「先攻は譲るよ。どこからでもかかってきなよ」
「ピカッ!」

 上にむけた指をくいくいっと動かして挑発すると、ピカチュウはオイラめがけて全速力で突っこんできた。
 あっという間にオイラとピカチュウの距離が縮まっていく。

 『先攻は譲るよ』。
 カッコつけて言ったそのセリフは、すぐに後悔することとなった。

「ピカチュウ、ちょっとタンマ……」

 ――バトルを開始して数分もたたないうちに、オイラはすっかりへばっていた。
 しびれる足に鞭打って立ちあがり、さっき座ってた場所にやっとの思いで辿りつくと、武具をほっぽって寝転がる。

「いててっ……」

 電撃をもろにくらったせいか、じっとしてても全身にぴりぴりした痛みが走る。
 ちょっと動いただけで痛いのでしばらく立てそうにない。
 ピカチュウには悪いけど、しびれが取れるまで安静にさせてもらうことにした。

「ピカーッ……」

 横にたっているピカチュウは心配そうにオイラのことを見下ろしている。

「第2ラウンドはちょっと待ってね」

「ピカピッ?」

「んっ? あぁ、大丈夫だよ。ちょっとしびれてるだけだから。平気平気」

 強がってみせたけど、果たしてピカチュウにどう聞こえたかはわからない。
 バナナを食べればすぐ元気になるけど、あいにく今手元にないので自然回復するのを待つしかなかった。

 それにしてもピカチュウ、お手柔らかにねって言ったのに容赦ないんだから……。
 両足でお腹を蹴られ、シッポで顔をはたかれ、ずつきで怯まされ、さらには高圧の電撃を何度もお見舞いされた。
 シッポで真上に吹っ飛ばされた直後に上からカミナリが落ちてきた時は、一瞬世界が回ってみえた。

 幸い直撃は免れたから軽いダメージですんだけど、もしあのままお星さまになってたら……と想像しただけで慄然とする。

 でもバトルしようって誘ったのはオイラだし、最初に挑発したのだってオイラだ。
 ピカチュウに非はない。
 それに、ピカチュウの実力がどれくらいなのかがわかっただけでも大きな収穫といえる。

 オイラは上体を起こし、声を明るくして言った。

「ピカチュウってやっぱり強いね。オイラ、全然かなわなかったよ。素早さには結構自信があったのに動きに全くついていけなかったもん。でんこうせっかだっけ? あのシュッ、シュッて動くやつ。すっごくかっこいいよね」

「ピカァッ」

 ピカチュウは照れくさそうに笑う。

「あーあ、オイラもピカチュウみたいにいろんな技を使えたらいいのになぁ。オイラもポケモンに生まれたかったなぁ」

 オイラは羨望の眼差しでピカチュウを見つめた。

 道具がなければオイラはただのサル。
 素手だと遠距離攻撃もできないし自力で復帰もできない。

 そんなオイラとちがってピカチュウは多彩な技を使えるし、空中攻撃はバリエーション豊富だし、おまけにシッポの使い方だってオイラより断然上手だ。
 本当にうらやましい。

 オイラがリアルファイトの世界に仲間入りしてからずいぶんたつけど、まだまだ実戦不足であることが今回の戦いでよくわかった。
 もっと相手の動きをよく見て戦わなきゃダメだな、もっと鍛練が必要だな、とつくづく思った。

「ピピー。ピカッ、ピカピッ」

 ピカチュウが急にオイラの手を握って微笑みかけてきたので、オイラは首をかしげた。
 これは一体どういうニュアンスなんだろう?
 怪訝な顔を浮かべるオイラに、ピカチュウは笑顔のまま「ピカッ、ピカピッ! ピカッチュ!」としきりに鳴いた。

 どうやらなにかを言ってるみたいだ。

「どうしたの? あっ、わかった。さっき勝てたのがよっぽどうれしいんだね」

 ピカチュウは首を横にふった。ちがったらしい。
 一体なにを言ってるんだろう?

 こういう時テレパシーでも使えたら便利なんだけど、もちろんオイラにそんなサイコ能力はない。
 でもピカチュウがなにかを言ってるのは確かなので、オイラなりにがんばってピカチュウの心を読み取ろうとした。

「ピカッ、ピッチュ!」

 ファイト!的なジェスチャーをしてオイラを見つめるピカチュウ。
 オイラにはそれが「がんばって!」と言ってるように見えた。

「ひょっとして、励ましてくれてるの?」

「ピカッ!」

 ピカチュウはにこやかにうなずく。

「ピカチュぅ……」

 太陽のように明るいピカチュウの笑顔。
 今はそれがオイラの心を癒してくれた。

「ありがと、ピカチュウ」

「ピカピカッ」

 ピカチュウと眼があった瞬間、オイラは不覚にも胸がキュンとしてしまった。
 バナナに見えたのは言わずもがな、抱きしめたい衝動に駆られた。

 まただ……。オイラはまたピカチュウにたいして邪な感情を抱こうとしている。
 そんなつもりは全然ないのに、なにかあるたびにピカチュウを性的な眼で見てしまう。
 ピカチュウは男の子だと頭ではわかってても、胸の鼓動がやむことはなかった。

 手で涙をぬぐい、ピカチュウから眼をそらす。

 ――オイラはホモじゃない。ピカチュウのことはもちろん好きだけどそっちの意味で好きってわけじゃない。

 それを何度も自分に言い聞かせた。

「あははっ、すごいことになってるね」

 オイラは空き地を見渡しながら言った。
 広々としていたはずの地面は、そこらじゅうオイラが放ったバナナの皮だらけだった。
 よそ見して歩いてると仕掛けたオイラまで踏んづけて転んじゃいそうだ。

 ピカチュウと顔を見合わせて笑う。

「ドンキーが帰ってくるまでにきれいにしとかなきゃね。ピカチュウ、悪いけどあとで片づけるの手伝ってくれる?」

「ピカッ」

 ピカチュウは快くうなずいてくれた。

「ありがとう。じゃあもうひと勝負しよっか!」

「チュウ!」

 俄然やる気が出てきたオイラはすっと立ちあがり、再び武具を装備した。
 足のしびれはいつのまにか吹っ飛んでいた。



 ――それから日が暮れるまでずっと、オイラとピカチュウはバトルを繰り広げていた。
 ピカチュウに手伝ってもらって一度はきれいにした空き地は、再びバナナの皮が散乱していた。
 暖かかった風は若干冷えてきており、青かった空は鮮やかな茜色に染まりつつある。

 よほど面倒な用事でも押しつけられたのか、ドンキーはまだ帰ってこない。

「家に戻る前に片づけなきゃね。でもちょっと休んでからにしよっか」

 オイラは横に座っているピカチュウに声をかけた。

「それと、さっきはごめんね」

「ピカピカッ」

 ピカチュウは全然気にしてない様子で笑った。

 実はバトルの最中、掴みかかろうと股間に手を伸ばした時に誤ってピカチュウのオチンチンを掴んでしまったのだった。
 ピカチュウがいつもとちがう鳴き声で叫んだのですぐに気づき、慌てて手を離したけど、思いきり握ってしまったので相当痛かったにちがいない。
 オイラとしたことがとんだ失態だった。

 フグリを握った時の独特な感触が今でも手の中に残っている。
 いくら気合いが入ってたからとはいえ、慣れないことはするものじゃないなと痛感した。

 ピカチュウを一瞥すると、足を広げてリラックスモードに入っていた。
 笑って許してくれるピカチュウは寛大な心の持ち主だとオイラは思った。


「ピカチュウってさ、普段はなにして過ごしてるの?」

 休憩中、オイラはなんとなく聞いてみた。

「ピカッ、ピカッチュ」

「オフの日はトレーニングとか技を磨いたりしてるの?」

「ピカッ」

 ピカチュウはコクッとうなずく。

「そうなんだ。ゼニガメとリザードンだっけ、あのニンゲンに飼われてるポケモン。その2匹とは普段遊んだりするの?」

「ピカピッ」

 ピカチュウはすばやくかぶりをふって否定した。
 普通に聞いたのではやり取りできないので、一方的な質問になっちゃうのは仕方のないこと。

 ピカチュウはだいたいの質問にたいしてはうなずいたり首をふったりしたけど、思いきって聞いた「好きな子いる?」という質問にたいしては「ピカッ?」と首をかしげた。
 少し言葉を付け加えてもう一度言った。

「あ、いや、別に深い意味はないんだけど、ピカチュウにも彼女とか好きな子いたりするのかなぁって」

「ピカッ」

 意外なことに、ピカチュウは即座に返事した。

 好きな子いるんだ……。
 まだ幼いから恋愛には疎いとばかり思ってたけど、どうやら誰かに思いを寄せているらしい。

 ピカチュウだって生き物なんだから誰かを好きになるのはなんら不思議ではないけど、オイラはなぜか物寂しい気持ちになった。

「そっか。乱闘に参戦してるメンバーの中にいたりして」

 冗談半分のつもりで言ったそのセリフに、ピカチュウは敏感に反応を示した。
 ファイターの中の誰か――つまり、オイラも知ってる人物ということだ。
 おそらく5匹いるポケモンの中にいるんだろう。

 プライバシーに踏みこむのはよくないことだけど、ここまで知った以上、徹底的に知りたくなった。

「ひょっとして、ピンク色のまるいポケモン?」

「?」

「ほら、いるじゃない。えーっと、確か……」

 名前がわからないので他に特徴的なところがなかったか思い出す。

「そうそう、赤いリボンをしてる子だよ。バトル中に歌を歌ったりしてるあの」

 そこまで言ってやっと、オイラが誰のことを言ってるかピカチュウは理解したようだった。

「ピカチュピ」

 「ちがうよ」とでも言ったのか、ピカチュウは首をふった。

 女の子っぽいポケモンは他にいないし、 一体誰だろう?
 まさかニンゲンの女の子? いや、特に懐いてる感じはないしそれはたぶんありえない。
 となるとあとは誰がいるっけ?
 オイラは腕を組んで考えこむ。

「ピッ」

 ピカチュウはオイラを指さしてにこりと笑った。
 なにか言いたそうな顔をしている。

「顔になんかついてる?」

「ピピー」

 ピカチュウはオイラの名前を口にした。

「……えっ? オイラ? えっ?」

 オイラは初め、意味がわからなかった。
 ピカチュウがなんでオイラの名前を唐突に言ったのか、それを理解するのにしばらくかかった。

「好きな子ってまさか……オイラのこと?」

「ピカッ」

 ピカチュウははっきりと答えた。

「それはつまり、その……その……」

 言い淀むオイラの眼をじっと見つめるピカチュウ。
 想定外の答えに戸惑って、まともに焦点をあわせられない。

 オイラはなるたけ動揺してるのを悟られないようにしながら言った。

「あ、あれだよね? 好きっていっても友達としての好きって意味だよね?」

 ピカチュウは否定も肯定もせず、くりっとした眼でオイラを見据える。
 今この子がどういった想いでオイラを見つめているのか、まるでわからなかった。

 ――友達としての好きという意味で言ったんじゃないのなら、ぶっちゃけ答えは1つしかない。
 オイラとピカチュウはどっちも男の子だ。
 そのオイラをピカチュウは“好き”だと断言した。

 つまりピカチュウは同性であるオイラを……。

「あ、あのさあ!」

 オイラは必要以上に大きな声でピカチュウに話しかけた。
 自分から言い出しといてなんだけど、これ以上この妙な空気に耐えれそうにないので早急に話を終わらせることにした。

あげ

ほしゅ

ほしゅ

「そろそろ家の中に戻ろっか。この話はもうやめよ。オイラから聞いたのにごめんね――」

「ピカッ! ピカピッ!」

 オイラの言葉をさえぎるようにピカチュウが大きな声で鳴いたので、オイラはびっくりして眼を見開いた。

「ど、どうしたの?」

「ピカッ、ピカチュウ! ピカッ!」

 ピカチュウはオイラにむかって激しく鳴き続ける。
 嫌われたと勘違いして不安になってるんだろうか。

「ピカチュウ、誤解しないで。オイラのことを好きでいてくれてるのはもちろんうれしいよ。でもね、オイラ……男の子だよ?」

「ピィカ! ピカッ!」

 オイラがポケモンの言葉を理解できないことはピカチュウだってわかってるはずだ。
 それでもピカチュウは必死でオイラになにかを伝えようとしている。

 ピカチュウが今なにを言ってるのか知りたい。
 けど、それは所詮叶わないことだった。

 ――オイラもポケモンだったらピカチュウの言葉がわかるのに……。

 この時ほどそう感じたことはなかった。
 理解したくても理解できない。
 そんな歯痒さがオイラを苦しめる。

「……ピカチュウ、ごめん。なんて言ってるのかわかんないよ。オイラはポケモンじゃないんだし」

「チュウ……」

 ピカチュウは悲しそうな声で鳴いた。
 伝えたくても伝わらない。
 そういったもどかしさをピカチュウも感じてるのかもしれない。


 黄金色に輝く夕陽が、時間とともにだんだん海の彼方へと沈んでいく。
 お互い向かいあったまま、オイラたちは一言もしゃべらなかった。
 永遠と思われるような重たい沈黙。
 そんな膠着状態がしばらく続いていたけど、このままじゃいけないと思い、オイラは意を決して口をひらいた。

「ねぇ、ピカチュウ」

「ピカッ?」

「きみはオイラのこと、好き……なんだよね?」

「……ピカッ」

 ピカチュウは小さくうなずいた。

「それはただ単に好きってだけじゃなくて、つまり、その……愛してるってこと?」

 こんな質問、幼いピカチュウにする質問じゃないけど、この子の本当の気持ちを確かめるにはこう聞くしかなかった。
 ピカチュウはすぐには答えなかったけれど、なにかを言いたそうだった。

 ――やっぱりこの子はオイラになにか特別な感情を抱いてる。

 そう確信したとき、ピカチュウはまた「……ピカッ」と短い鳴き声を発した。
 肯定のニュアンスであることは明白だった。
 オイラはさらにたずねた。

「オイラは男の子だしポケモンでもないんだよ。それでもきみはオイラのことを……本気で好きなの?」

 ピカチュウは無言で首を縦に動かす。

 複雑な心境だった。
 思いもよらない同性からの告白。
 しかもそれは友達であり、オイラにとっては憧れの存在でもあるピカチュウなのだ。

 なんとも思わないと言えばうそになる。
 けれど、気持ち悪いとは微塵も思わなかった。
 むしろうれしかった。
 相棒のドンキーにさえ、ここまでストレートに好きだと言われたことはなかったから。

 でもまさかピカチュウがオイラのことをそこまで想ってくれてたとは全く気づきもしなかった。
 ドンキーが言ってたとおり、オイラはいたく鈍感なのかもしれない。


 よくよく考えてみれば、幾度となくピカチュウにたいしてエッチな妄想をしたり妙な気をおこしたりしてたのは、元々ピカチュウをそういう眼で見てたからじゃないだろうか。
 ピカチュウは男の子だ。
 それなのに立ちションの時にオチンチンを凝視したり、(バナナに見えたからってこともあるけど)かぶりつきたい衝動に駆られたりしたのは、きっとピカチュウに性的な魅力を感じてたからなんだと思う。
 それは言い換えれば、ピカチュウに恋愛感情を抱いてるということにもなる。

 ピカチュウのことが好き。

 その気持ちにもはや性別なんて関係ないんだ。

 だけど――。
 オイラはドンキーのことを思い浮かべた。

 相棒ゆえにもっとも付き合いが長く、常にオイラの味方でいてくれるドンキー。
 ホモだのバイだのとからかってた相手が、まさかほんとに男の子に恋してたなんて知ったらどう思うだろう。
 やっぱり幻滅したりするんだろうか?

 ――いや、ドンキーだってピカチュウがきてから何度か意味深な発言してたし、実はそっち系なんだ。オイラと一緒で。
 オイラはそう思い直した。
 それにドンキーならきっと事情を話せばわかってくれる。



 空が次第に薄暗くなっていく中、オイラとピカチュウはじっと見つめあっていた。
 こうして間近で見ると、ピカチュウってほんとに顔立ちが愛嬌そのものだな、とつくづく思った。
 つぶらな瞳を見続けてると吸いこまれてしまいそうな錯覚にとらわれる。

「……」

 オイラはなにも言わず、おもむろにピカチュウをぎゅっと抱き寄せた。
 密着した瞬間、ピカチュウの“せいでんき”が襲いかかり、思わず離しそうになったけど、ぐっとこらえた。

「ピ、ピィカ……?」

 ピカチュウは若干戸惑っている様子。
 なんで急にこんなことをしようと思ったのか、オイラ自身もよくわからない。

 でもなぜかピカチュウを抱きしめずにいられなかった。
 ピカチュウは相変わらず怪訝な顔を浮かべているものの、抵抗は一切しなかった。
 オイラはピカチュウの耳元に口を近づけ、ささやいた。

「ピカチュウ、ありがとう。オイラもピカチュウのこと、大好きだよ」

 難しく考える必要なんてない。
 男の子同士なのにとか、異種なのにとか、そういう理屈なんてどうでもいい。
 ピカチュウはオイラのことを愛していて、オイラもピカチュウのことを愛している。
 いわゆる相思相愛ってやつだ。
 おかしいことなんて何一つないじゃないか。

「ピカピィカ?」

 オイラの言葉を聞いて安心したのか、ピカチュウは普段の語調で質問してきた。
 どれぐらい好き?と聞いてるんだと勝手に解釈して、「そりゃあもう、食べちゃいたいくらい好きだよ」と答えると、

「チュウッ!」

「あぎゃぎゃぎゃっ!」

 ピカチュウはオイラを抱きしめたと同時に、全身から高圧電流を放った。
 悪気はないんだろうけどいきなりそんなことをされたので、ぶっちゃけ心臓が飛び出しそうなくらいビビった。
 でもこれはピカチュウなりの愛情表現なんだと考えると、不思議と痛みはそんなに感じなかった。
 ピカチュウの背中に手を回し、ぎゅっと抱き合う。

「ちゃあぁっ♪」

 満面の笑みを浮かべながら頬ずりをしてくるピカチュウ。
 フカフカした体毛が頬を撫でて気持ちいい。

 ――ほんとに好きなんだ、オイラのこと。なんだかうれしいな。
 ピカチュウの頭を撫でながら、オイラは自分にむけられた愛情をゆっくりと噛みしめていた。


 ピカチュウのほっぺの心地よさを存分に堪能したあと、オイラはピカチュウを抱きあげて自分の前に置いた。
 ピカチュウはニコニコしながらオイラのことを見ている。
 その顔を見ているうちに、オイラの心の中にある1つの欲求が芽生えた。

 ――ピカチュウとエッチしたい。

 こんな感情を抱いたのはもちろん初めてのことだ。
 ピカチュウが男の子だってことはわかってる。
 わかってるけど、肉欲が衰退することはなかった。
 衰退するどころか、そのことを考えれば考えるほど欲心は募っていくばかりだった。
 ごくりとつばを飲みこむ。

 ――言おう。お互い好きなんだし、別におかしいことじゃない。言っちゃおう。

 膨らむ欲望を抑えることができず、オイラは言った。

「ねぇ、ピカチュウ。エッチって知ってる?」

「ピィカ?」

 ピカチュウはイントネーションをあげて首をかしげた。

「好きな相手とやる行為のことをいうんだけどね、交尾とも言うんだけど……」

「ピカッ!」

 交尾という言葉を口にしたとたん、ピカチュウが「知ってるよ!」と言わんばかりに即座に返事したので、

「……ひょっとして、すでに経験ずみ?」

 おそるおそる聞いてみた。
 とうに経験ずみだったらそれはそれでショックだったけど、ピカチュウは首を横にふったので心底ほっとした。

 交尾の意味は知ってるけど経験はない。
 すなわち立場的にはオイラと同じというわけだ。
 オイラはありったけの勇気を奮い起こし、ピカチュウの眼を見て言った。

「バトルも終わったことだし、次は……エッチしようよ」

 オイラは返事もきかずに立ちあがると、脇にある草むらにピカチュウを連れていく。
 しげみをかき分けてできるだけ奥の方へと進む。
 誰かに見つかるのを避けるためだ。

 昼間おしっこをした場所の近くまで行くと、オイラは足をとめてそこに座った。
 ピカチュウもオイラの前で足を広げて座った。
 神妙な顔つきで周りをキョロキョロ見ている。

「ちょっとまってね」

 立ちあがり、草むらから顔だけ出して辺りを見渡す。
 ドンキーや他の誰かの姿は見当たらない。近くで足音もしない。
 よし、大丈夫。
 オイラは再び腰をおろすとピカチュウに声をかけた。

「えっと、じゃあ……エッチしよっか?」

 言葉にしたとたん、胸の鼓動が激しくなっていくのを感じた。
 オイラは今から初めての性行為をする。友達であるピカチュウと。
 ドキドキしつつも、ほのかな期待を心の中で膨らませるオイラがいた。

 バナナもといピカチュウの両肩に手をおき、ぐっと力をこめてそのまま後ろに押し倒す。
 ピカチュウはわずかに戸惑いの表情を見せたけど、拒絶することはなかった。

「ピカチュウ、いいよね?」

 身体と身体を密着させて小声でそうたずねると、ピカチュウは一瞬間をおいてから「ピカッ」と返事した。
 なにがいいのかわかった上での返事なのかはわからないけど、どのみちここまできたらやることは1つだし、あとは流れに身を任せるだけだ。
 お互い初めてだけど、ここはやっぱり言い出したオイラが全面的にリードするべきだろう。

 とは言ったものの、なにをすればいいのかわからないので、とりあえずピカチュウの首に顔をうずめた。
 胸の鼓動がより一層うるさく鳴り響く。

この狂気のスレまだ続いてたのか

SSというより小説だなこれ

ほしゅあげ

「ピカッ……!」

 軽く噛むと、ピカチュウは顔をこわばらせた。
 オイラの頭に添えられている小さな手に力がこめられる。
 ピカチュウはどこが特に敏感なのか、まずはそれを探ることにした。

 今噛んだところを口ではむはむしながら腰に手を回し、続いて胸部、腹部へとべろを動かして執拗に舐める。
 オイラの身体でいうと乳首やおへそがある部位……のはずだけど、いくら探してもくぼみや突起はどこにもなかった。
 ポケモンって哺乳類じゃないんだ。もし乳首があったらかわいがってあげられたのに。

 半ば残念な気持ちになりつつ、気を取り直してお腹の体毛に顔をうずめる。
 あったかくて柔らかくて心地がいい。
 上目でちらっとピカチュウの顔をうかがうと、若干恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

「こういうことされるの、初めて?」
「チュウ……」

 か細い声で答える。
 オイラもこんなことするのはもちろん初めてのことだ。
 ドンキーにだってしたことないし、されたこともない。

「オイラがなんでこんなことしてるか、わかる?」

 ピカチュウはなにも答えないのでオイラはあまり間をおかずに言った。

「好きだからだよ、ピカチュウのことが。でなきゃ男同士でこんなことするわけないじゃんか」
「ピカッ……?」
「好きな食べ物が目の前にあったら食べたくなるでしょ? それと同じ」

 我ながらうまいこと言ったなと思ったけど、ピカチュウには意味がよく伝わっていないようだった。
 でもこれでオイラがピカチュウを本気で好きだということはピカチュウも一応理解してくれたはずだ。
 再びピカチュウのお腹に顔をうずめてにおいを嗅ぐ。
 同時に手で股間をまさぐり、目的の“モノ”を見つけると、

「ピカッ!?」

 指で優しく包みこんだ。
 ピカチュウは上体をおこして声を張りあげる。

「おしっこのときオイラのこれ、ずっと見てたでしょ。気づいてないと思ってた?」

 チンチンの尖端を指でいじくりながらちょっといじわるっぽく言うと、ピカチュウはうろたえていた。
 どうやらほんとにオイラに気づかれてないと思ってたらしい。

「見入っちゃうほど別に珍しいものでもないでしょ? 自分にだってついてるのに」
「ピ、ピカッ……」
「平常心を装うの結構大変だったんだよ。危うくおしっこ手に引っかけるとこだったんだから」
「ピカァッ……」

 あれれ、しょげちゃった。
 冗談で言ってるんだから真に受けることなんてないのに。

「うそだよ、ごめんごめん。オイラもピカチュウのチンチンこっそり見てたからお互い様だし、気にしなくていいよ」

 ピカチュウはそれを聞いて少しほっとした様子を見せた。
 安心してるその隙に、オイラはピカチュウの性器に顔を近づけた。

 ――手の中で小刻みにふるえる、赤くてちっちゃなピカチュウのオチンチン。
 顔立ちがかわいいと性器までかわいく見えちゃうな。
 おしっこのときに見たときもそう思ったけど、間近で見るとより一層その印象は強まった。

 尖端にある小さな穴に鼻を近づけてクンクンにおいを嗅いでみると、わずかに漂うおしっこのにおいとピカチュウ自身の放つオスのにおいが鼻を通り抜けていった。
 尿の香りはだいたい予想はしてたけどオス臭いのは意外だった。

 まあバトルであれだけ激しく動き回ってりゃ汗だってかくか。
 ポケモンだって生き物なんだし。

 オイラは特に深く考えず、もう一度ピカチュウの性器のにおいを嗅いだ。
 決して芳しい香りではないけれど、思わず顔をしかめるほど臭いってわけでもなかった。
 一度嗅いだらもっと嗅ぎたくなる。そんなにおいだ。
 クセになるにおいってこういうにおいのことをいうのかな?

「ピ、ピカッ、ピカァッ……」

 さすがに見兼ねたのか、ピカチュウはオイラの頭を両手でつかみ、必死で引き離そうとする。
 顔は見てわかるほど真っ赤に染まっていた。
 そういうのを見ちゃうともっとやりたくなるのが心理ってものだよね。

「別に恥ずかしがることないじゃない。オイラが好きでやってるんだし」
「ピカァ……」
「こんなこときみと2人っきりでいるときにしかできないんだからさ、ねっ? もうちょっと嗅がせてよ」

 頭を押さえつけてくるピカチュウに構わず、オイラは握った性器をマジマジと眺めながら香りを楽しんでいた。
 自分がオチンチンのどの部分を刺激されたら反応してしまうか。
 それを考えながらピカチュウの性器を愛撫すればイかせることもさほど難しくはなさそうだ。

 尿道口を指の腹でいじくっていると 、ピカチュウは「ピッ…ピッ……」となまめかしい声で鳴いた。
 その鳴き声がまるで「あっ……あっ……」と小さく喘いでるように聞こえ、オイラはますます興奮した。
 それに伴ってだんだん頭をもたげていくオイラのオチンチン。

 興奮はやがて情熱へとかわり、オイラの心に火をつける。

「今まで誰かにこんな風にさわられたり撫でられたりしたことある?」

 ピカチュウは赤面したまま首を横にふった。
 乱闘のときには決して見せることのない色気たっぷりの表情に、オイラはすっかり魅了されていた。
 欲情している自分の性器を一瞥したあと、ピカチュウの口元をじっと見つめる。

 ――咥えてほしい。
 ピカチュウの口にオチンチンを入れたい。舐めてほしい。
 この状況なら誰だってそういった願望を抱くと思う。
 でもそれを口にするのは相当の勇気がいることだった。

  いきなりそんなことをお願いして拒絶されないだろうか?
 ドン引きされないだろうか?
 あからさまに嫌な顔をされたらどうしよう……。
 いくつもの不安が渦巻く中、オイラは口を開いた。

「ねぇピカチュウ。オイラにもやって」

 その言葉を聞いたピカチュウはきょとんとしている。
 オイラはピカチュウの横で仰向けになってからもう一度言った。

「今オイラがピカチュウにしてたこと、今度はピカチュウがやってよ」
「ピカッ?」
「胸とかお腹とか舐めてよ。オイラのことが好きならやってくれるよね?」

 やっぱりいきなりフェラを要求するのは気がひけたので、まずは上半身をかわいがってもらうことにした。
 こっちならさほど抵抗はないはずだ。

「ピ、ピカッ」

 自信なさげに返事したピカチュウはおもむろに身体をおこすと、寝転んだオイラの上で腹這いになった。
 この子とこんなに身体を密着させたことは今までなかったことなので、オイラは内心ものすごくドキドキしていた。

「えっと、どうしよっかな。とりあえず乳首舐めてよ」
「ピチュピ?」
「うん。ドンキーの胸んとこについてるアレだよアレ」

 見せた方が早いかなと思って服をめくろうとしたとき――

「ピッ」
「わわっ」

 ピカチュウはでんこうせっかのごとく、オイラが着ている赤色のベストに顔を突っこんだ。
 胸元でピカチュウの頭がもぞもぞ動いてとてもくすぐったい。

「あぁっ……!」

 ざらついた舌が乳首に当たり、全身に衝撃が走る。
 ピカチュウは今のオイラの声を聞くやいなや、乳首を執拗に攻め立てた。
 舌を転がすようにしてぺろぺろ舐めたり、赤ちゃんみたいにチューチュー吸ったりしてくる。

 気持ちいいというよりくすぐったい。身体から力が抜け落ちそうだ。
 でもいちいちそんなことを心の中で感じてる余裕はなかった。
 ピカチュウは服をばっとめくりあげると、あらわになった2つの乳首をそれぞれ口と指で愛撫した。

「んくっ……!」

 片方を指で挟まれ、もう片方を軽く噛まれた。
 あまりの強烈な刺激に耐えられず、オイラは腰を浮かせる。
 自分でさわることがあまりなかったからというのもあるけど、乳首をいじくり回されるのがこんなに刺激的だとは思わなかった。

「ピカッ、ピィカ」

 ピカチュウは胸をぺろぺろしながら空いてる手でオイラの服をグイグイと前に引っぱった。

「脱いだ方がいい?」
「ピッ」

 短く鳴いて返事するピカチュウ。
 言われたとおり服を(ついでに帽子も)脱ぎ捨てると、ピカチュウは小悪魔のような笑みを浮かべながらオイラのお腹にまたがり、今度は両手で乳首をいじくり回した。

「ぴかぁっ♪」
「ちょっ、く、くすぐったい……」

 さっきとは形勢が一変していた。
 敏感な部分を攻められて感じるオイラとは裏腹に、ピカチュウは楽しそうに乳首を翻弄している。
 さっきはあんなに艶っぽくしてたのに、今やすっかりおもちゃで遊ぶむじゃきなこどもそのものだ。
 乱闘のときもこうやって敵を笑顔で油断させ、電撃やシッポでダメージを蓄積させてたのかな。
 もしそうだとしたらピカチュウって意外と策士なんだなぁとオイラは乳首をいじられながら思った。

 ――と、オイラはお腹になんだか違和感をおぼえた。
 またがったピカチュウの股間に眼をおとすと、そこにはいつのまにかおっきくなったピカチュウのバナナがオイラのお腹の上――ちょうどおへそあたりにちょこんと乗っかっていた。

「ひゃっ……!」

 声をかけようとしたとき、ピカチュウはまるで見計らったかのように上体をかがめて乳首に吸いついてきた。
 今まで味わったことのない最高の快感が全身を突き抜ける。

 なんでこんなに気持ちいいと感じるのか、自分でもよくわからなかった。
 最初はただただくすぐったかっただけなのに。
 でもそんなことは快楽に溺れているうちにどうでもよくなっていた。

 すぐ眼の前にあるピカチュウの頭にそっと手を置き、ありがとうという意味合いをこめて撫でてあげると、ピカチュウはオイラの顔を見てにっこり笑った。
 よほどうれしいのか、シッポを横にふっている。

「ねぇピカチュウ、おへそも舐めて」
「ピカピッ?」
「お腹んとこにくぼみがあるでしょ?」
「ピカッチュ」

 ピカチュウはにこやかに二つ返事してくれた。
 乳首から口を離すと、胸の真ん中に舌をちょんと押し当ててそのまま腹部へと舌を這わせていく。

「っ… …!」

 舌先がくぼみに当たった瞬間、全身の毛が逆立つ。
 乳首とちがって普段から見せている場所なだけにちょっとだけ恥ずかしい。
 オイラはだんだん顔が熱くなっていくのを感じた。
 ピカチュウはそんなオイラの顔に時折眼を動かしながらおへそをチロチロ舐める。

 ――憧れの存在であるピカチュウとエッチをする。
 オチンチンを愛撫してあげて、お返しにおへそや乳首をかわいがってもらう。
 それを考えただけで興奮がとまらなかった。

 ゆっくり且つ丁寧に、舌先で撫でるようにおへそを舐め続けるピカチュウ。
 あまりのくすぐったさにじたばたしそうになるのをぐっとこらえる。

「?」

 ピカチュウは不意におへそから顔を離すと、オイラの局部に眼をむけた。
 お腹に固いものが当たって違和感でもあったんだろう。
 オイラのオチンチンの変貌っぷりに気づいたようだ。

 刺激を受けて満悦感に浸ってるうちに、オイラの性器はいつのまにかギンギンになっていたのだった。
 ピカチュウがなにか言いたそうにこっちを見る。

「えへへっ、バレちゃった」
「ピィカ……?」

 ピカチュウは怒張したオイラの性器を不思議そうに見つめている。
 バレちゃった以上、しらばっくれてても仕方ないよね。
 オイラは身体をおこしてピカチュウに質問した。

「これ、なんていうか知ってる?」

 ピカチュウは首をかしげたままなにも答えない。

「勃起っていうんだよ。オチンチンってね、興奮したり刺激を受けたりするとでっかくなるんだ。ほら、ピカチュウのも」

 ピカチュウの股間を指でさす。

「ピ、ピカッ……」

 自分のぺニスを見たピカチュウは眼を見開いて驚いた。
 交尾は知ってるのに勃起のことは知らない。
 ピカチュウったら一体どこで交尾の知識を得たんだろう?

「オイラのお腹にまたがってるときに勃起してたよ。ピカチュウったらすっごく楽しそうだったもんね。たぶんだけど無意識に興奮してたんじゃないかな?」
「ピカァ……」

 ピカチュウは納得した感じで首を軽くふったあと、小さな鼻をひくひくさせてオイラの性器のにおいを嗅いでいた。
 無垢なピカチュウをどんどん汚していく歪んだ性的快感が、さらにオイラの欲心を掻き立てる。

「ねぇピカチュウ。舐めっこしよっか」
「ピカピッ?」
「オイラのチンチン舐めてよ。オイラもピカチュウの舐めるからさ」

 それを聞いたピカチュウは驚いてこっちを見る。

「性器ってね、好きな相手に舐めてもらうとすごく幸せな気持ちになれるんだって。だからオイラ、ピカチュウにチンチン舐めてほしいなぁ」
「ピ、ピカッ、ピカッチュ……」

 なんて言ってるのかわかんないけど、鳴き方や表情からして肯定の返事じゃないことは明らかだった。
 やっぱりというべきか、すんなりと受け入れてはくれなさそうだ。
 まあいきなりオチンチンを舐めろなんて言われたら誰だって戸惑うよね。
 場所が場所だし。

 もちろんオイラだってオチンチンを口に入れることに全く抵抗がないわけじゃない。
 けど、せっかくピカチュウとエッチなことをしてるのにこのままなにもせず終わるのはどうしても嫌だった。
 どうせならフェラぐらいしてほしいし、してあげたい。

 おしっこや精子を出す場所だということはわかってる。
 それでもやっぱやめとこうという気にはならなかった。

「チュウ……ピカピッ……」

 ピカチュウは一人言をつぶやきながらオイラの性器を複雑な表情で見ている。
 やりたくないけどそこまで言われると拒否しにくい。どうしよう……。
 そんなことを考えているのかな。

「次はいつこういうことできるかわかんないし、どうせやるならとことんやろうよ。ねっ?」
「ピ、ピカ……」
「お願い、ピカチュウ。このとおり」

 葛藤しているピカチュウに追いうちをかけるかのごとく、オイラは両手を合わせて懇願した。
 攻めてるときは強いけど押しには弱いらしい。
 しばらくして、ピカチュウは渋々といった感じでうなずいた。

「ありがと、ピカチュウ!」

 オイラは満面の笑みを浮かべて歓喜した。
 ピカチュウにとっては不本意だったかもしれない。
 でもこれでいいんだ。
 こういうのはきっと、どっちかが折れないといけないんだから。

 滾る興奮をおさえつつ、オイラは再び地面に背をつけて寝転がる。

「ピカチュウ、おしりこっちにむけて」

 そう指示すると、ピカチュウはおずおずと身体の向きを反対にしてまたがった。
 むっちりとした黄色いおしりがバナナに見えて仕方ない。
 思わずかぶりつきたくなる衝動を抑制するのは大変だった。

(……んっ?)

 ピカチュウのおしりをなにげなく見ていると、シッポのすぐ下に小さなくぼみがあることに気がついた。
 それがおしりの穴であることは一目瞭然だった。
 首をおこして食い入るように穴を見つめていると、それに気づいたピカチュウがシッポでしりの穴を隠してしまった。

「ダメだよ隠しちゃ。これじゃオイラ、なにもできないじゃんか」
「ピ、ピカーッ……」
「オイラだって見せてるんだしお互いさまでしょ? ほら、シッポどけて」
「……」

 ピカチュウはなにも言わずにすっとシッポを上にやった。
 ちょっと強引だったかなと申し訳ない気持ちになったけど、またがったピカチュウの股間からぶらさがってるオチンチンが眼に入った瞬間、そんな罪悪感は消え去った。
 情欲をそそるピカチュウの男の子のしるしは、オイラにその存在をアピールしてるように見える。

「ピカッ、ピカァッ……」

 先っちょを指でいじくると、ピカチュウは身をよじらせて嫌がる。
 なおもオイラはピカチュウの性器をいじくり回した。
 ピカチュウが身体を動かすたびにオチンチンがまるで翻弄から逃れるようにぷるんぷるんと揺れるので、オイラの淫行はとどまるところを知らなかった。

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