流子「…マコと皐月と、はぐれた」(374)
最終話エンディング直後からです。
―繁華街―
流子(鮮血…)ボー・・・
流子(お前の嫉妬するような服は、あいにく持ってなかったから今日買っといたぜ…)フッ
流子(って、いけないいけない。皐月とマコとはぐれたら洒落になんねーからな。えーっと、二人はどこ行った?)
ガヤガヤ ザワザワ
流子「すごい人混みだな。さすが休日の繁華街…。おーい、マコー! 皐月ぃー!」キョロキョロ
―洋服屋の前―
マコ「ねっ、流子ちゃんっ! って、あれ? 皐月様、流子ちゃんは?」
皐月「む? さっきまで後ろに居たはずだが…」キョロキョロ
皐月(まさか、次に下着専門店に行ってどちらの胸が大きいかという問題をはっきりさせると同時に、いつものちょっと幼い縞パンやらの下着の代わりに大人向け高級ブランドの際どい下着を無理やり試着させようという、この鬼龍院皐月の策に気付いて逃げたのではないだろうな…?)モンモン
マコ「流子ちゃーん、おーい、流子ちゃぁーん!」トコトコ
―路地裏―
犬牟田「満艦飾マコの地点A通過を確認。今から誘導を開始する」
蛇崩「了解」
猿投山「了解」
蟇郡「りょ、了解…」
犬牟田「くれぐれも、逃げないようにね?」
蟇郡「む、無論だ! この蟇郡、敵前逃亡するほど臆病者ではないわぁっ!」キーン
蛇崩「声が大きいわよっ。ばれちゃうでしょ」
蟇郡「…すまん」
―洋服屋の前―
皐月(ん? 今、蟇郡の声が聞こえたような気が…。気のせいか)
マコ「流子ちゃーん! ほら、皐月様も一緒に探さなきゃっ」
皐月「あっ、ああ。おーい、流子ー!」
マコ「もー、流子ちゃんどこ行っちゃったのぉ…。って、あ! チーズだ!」パクッ
皐月「!?」
マコ「うーん、おいひいよチーズぅ!」もぐもぐ
皐月「ま、満艦飾! 拾ったものを食べては駄目だ。お腹を壊すぞ!?」
マコ「だって、まだ食べられるじゃないですかぁ。あっ、またチーズ! あっ、ここにも!」パクモグッ
皐月(…い、今さらながら、私が作った学園のシステムは、ここまで残酷なものだったのか…? これでは犬とさほど変わらん…)ガーン
マコ「あっ、こっちにも……。って、あれ!? チーズが動いてるよっ!?」ピューン
皐月(あ、違うな。満艦飾だからか。風紀部の報告によれば、NO遅刻デーのチーズトラップに、前回以外はすべて引っかかっていたし、他の生徒は、別にそんなことは……)
マコ「待ってー! 私のチーズ、待ってぇー!!」ピューンッ
皐月(…そういや、前回引っかかったのは流子だったな)
蛇崩「あれっ、皐月ちゃん! 皐月ちゃんもここに来てたんだ! わぁ、すごい偶然!」
皐月(意外と食い意地が張っていたということか…?)
蛇崩「…皐月ちゃん? さーつーきちゃんっ!」
皐月「んっ!?」
蛇崩「皐月ちゃんも、ショッピング?」
皐月「い、いや。私は、流子と満艦飾と約束していたデートを…。って、二人とも居ない…!」
蛇崩「えーっ! 信じらんないっ! 皐月ちゃんをほったらかしにするなんて! 劣等生も転校生も身の程知らずにも程があるわ!」
皐月「いや、もしかしたら迷子になっているのかも…探した方が」
蛇崩「そんなのいーわよ、二人とも子供じゃないんだし!」グイッ
皐月「し、しかし…」
蛇崩「二人とも高校生だもの。どうせ勝手にそれぞれ好きな店でも見てるんでしょー。そうじゃなくったって、遅くなったら勝手に帰るでしょ」
皐月「む。…そ、それもそうだな…」
蛇崩(よっしゃ、やったわ♪)
―どこかの抜け道―
マコ「はぁ、はぁ…チーズ、捕まえたぁっ!」パクッ
???「おい、そこの女ぁ!」
マコ「ほぇ? わ、私ですかぁ?」
???「かわいいな。俺とお茶しようぜぇ!」
マコ「奢りですか!? 行きます!」キラキラ
???「なにっ、断れよそこはっ! …はっ、いかんいかん。お、お茶は無しだ! 俺と付き合え!」
マコ「え? 猿投山先輩の何に付き合えばいいんですか?」
???「猿投山先輩ではないっ! 謎のナンパ野郎、Mtモンキースクリューだ!」
マコ「…えっと、猿投山先輩ですよね? 変な仮面付けてるけど」
???「ちぃっ! 面倒だ! 力づくで…!」ダッ
マコ「えぇー!? きゃー、助けて! マコ、大ピンチ!!」キャー
蟇郡「ちょっと待てぇええええ!!!」ばばーん!
マコ「あっ、蟇郡先輩!!」
蟇郡「本能寺学園の生徒をナンパする輩は、天が許そうとも、この風紀部委員長、蟇郡苛が許さぁああああんっ!!!」どがっ
???「ぐはあ。やられたあ。」ばたっ
マコ「蟇郡先輩、どうしてここに!?」
蟇郡「……お前が、ピンチだったからな」
マコ「え?」
蟇郡「満艦飾の有事の際には、どこに居ようが必ず、この蟇郡苛が駆けつけ、身体を張ってお前を守る!」ビシッ
マコ「ピンチの時に、来てくれる…?」
蟇郡「そ、それでだな…。その、もし、満艦飾、お前さえよかったら、俺と…」もじもじ
マコ「あっ、そうだ忘れてた! 流子ちゃんが!」
蟇郡「え」
マコ「流子ちゃんが迷子になっちゃったんです! ってあれ!? 皐月様まで居なくなっちゃってるよぉ。もー2人ともしょうがないなぁ」
蟇郡「いや、満艦飾? お、俺の話を―――」
マコ「蟇郡先輩も手伝ってくださいよぉ。マコ、背が低くてあんまり遠くまで見えないんですからぁ。……あ、そうだ!」ヨジヨジッ
蟇郡「むっ!!?」////
マコ「これで遠くまでよく見えます!」
蟇郡「なっ、何をしているか満艦飾ぅ! お、俺の肩の上から降り…」
マコ「だ、ダメですか…?」
蟇郡「降り…なくてもいい」ノッシノッシ
マコ「わぁいやったー! おーい、流子ちゃん流子ちゃーん! どーこーにーいーるーのぉー!!」
蟇郡「」//////
―繁華街をちょっと外れたとこ―
流子「だめだ…! 完っ全に二人を見失っちまった…」
流子「マコぉー。皐月ぃー。どこに居るんだよぉー…」
流子「どーっすかなぁ。ケータイも無いし…そもそもマコもケータイ持ってねェし…皐月のは番号知らねーし…」
占い師「そこの、あなた」
流子(ほー。道端で占いしてる人か…。声かけられる人居るんだな)
占い師「そこの、スカジャンでジーパンで赤マフラーのあなた」
流子「えっ。私?」
占い師「…最近、人生を左右する、とても大きな選択をしたでしょう?」
流子「えっ」
占い師「…誰か、大切な方との別れも、経験されたのでは無いですか?」
流子「えっ!」
占い師「見えます…私には見えるのです…あなたの、運命のオォーラが…」
流子「お、おぉーら?」
占い師「…あなた…一人っ子でしょう?」
流子「いや……」
占い師「…珍しい。兄弟が居ても、そのオォーラに影響されないとは…あなたのオォーラは、様々な可能性を持っている…」
流子「まぁ、確かに。ずっと一緒に居たわけじゃないしな…」
占い師「…親子関係が希薄…」
流子「えっ!?」
占い師「…あなたのオォーラ…少し、寂しさが混じっているように感じる…」
流子「…………」
占い師「…お代は取りません…この水晶玉で、あなたの運命を占って差し上げましょう…」
―繁華街の端っこのメガネ屋―
皐月「こ、こうか?」カチャッ
蛇崩「皐月ちゃんっ、似合う似合うっ! それ最高っ!!」
皐月「そ、そうか?」////
蛇崩「じゃぁ、二人一緒にこれ掛けましょー?」
皐月「パーティー眼鏡か…。いいだろう」
皐月「」スチャッ
蛇崩「」スチャッ
皐月&蛇崩「あっはっはっはっ」キャイキャイ
―メガネ屋の窓の外―
犬牟田「蟇郡は無事に満艦飾マコと合流。告白には失敗したものの、デートをすることに成功。これは作戦成功といってもいいんじゃないかな?」
猿投山「俺があんな猿芝居までしたんだ。それなりの成果はあってもらわなくちゃぁ困る。…それより、なぁ、どう思う?」
犬牟田「何を?」
猿投山「皐月様だよ。断髪すると聞いた時には泣きそうになったが、いざショーットカットになってみると…」
犬牟田「ああ。グッとくるよね」
猿投山「だよな。あと、私服もさぁ、神衣圧倒の時にあれだけ言っといて、ロングスカートにブラウスっていう。満艦飾より露出少ない、『清楚なお嬢様』っていう、このギャップ」
犬牟田「ああ。かなーり、萌えるよね」
猿投山「蛇崩もさ、自分の似合う服ちゃんとわかって着てるよ、ありゃ。甘すぎないように、帽子も黒いの選んでるし、靴もちゃんと合ってるし」
犬牟田「この流れだと、君が言いたいのはやっぱり…」
猿投山「やはり、犬牟田。お前も思っていたか…」
犬牟田「纏流子の私服…。あれはちょっとね」
猿投山「普段の制服とかジャージは着こなしてるからさ、普通期待するじゃん。何あれ。いや、似合ってんだよ。だからこそさ、他に服がなかったのか、あれを可愛いと思ってわざわざ着てるのか、判断つかないじゃん」
犬牟田「味気ないシャツに、スカジャン、ジーパンに赤マフラー。あれじゃコンビニに行く格好だ。できれば前者だと思いたいよね」
猿投山「それはそれで問題あるけどな…。まぁ、今回のデートで買ってたみたいだし、次はマシな格好で来ることを期待しよう…」
犬牟田「ほーう、君は、またあの三人のデートを尾行するつもりかい? 当然僕も混ぜてくれるんだろうね?」
猿投山「当たり前だろ…!」
ざわざわっ
「お、お客さん! どうしたんですか、お客さん!」
「おいっ、大丈夫か!?」
猿投山「なんだ? 街の外が騒がしいな…」
犬牟田「急病人でも出たのかね?」
蛇崩「うるさいわねー。何の騒ぎ?」
皐月「…む? なぜだか、胸騒ぎが…」だっ
蛇崩「皐月ちゃんっ!? ちょっと、どこ行くのよー!」ダッ
―もう少しで繁華街、惜しい。って位置の鯛焼き屋―
マコ「もぐもぐ!」
蟇郡「もぐもぐ…」
マコ「美味しいですね、蟇郡先輩!」
蟇郡「…うむ」
マコ「蟇郡先輩!」
蟇郡「む?」
マコ「なんだか、マコは、あの戦いの間、蟇郡先輩に三回も助けてもらっていた気がします! でも、どさくさに紛れて、まだ一度もお礼を言っていなかったような気もします!!」
蟇郡「いっ、いや、そんな礼には及ばんんんん!///// …む、三回? 二回の間違いではないのか?」
マコ「いえ、三回です。一回目は、COVERSに飲み込まれたとき。二回目は、流子ちゃんが真っ二つになっちゃったときに、私の帽子を拾って、被せてくれたとき。三回目は、言わずもがなです」
マコ「だから、私は、三回分きっちり蟇郡先輩に恩返しをしたいです! マコの恩返しです!」
蟇郡「…見返りなど、俺は求めん。お前が無事なら、俺はそれでいい」
マコ「いいえ、それではマコの気が済みません! だから、次は、マコが蟇郡先輩のピンチを助けますっ!」
蟇郡「ぬっ!!?」
マコ「もし、蟇郡先輩がピンチになったら、マコが助けますっ! 身体を張って!!」
蟇郡「なっ、ならん!! ならんぞ満艦飾!!! そんなことをして、もしお前が」
マコ「どうしてですか? 蟇郡先輩がしたことと同じですっ」
蟇郡「ならんっ!!!!!」グオッ!
マコ「」ビクッ
蟇郡「そんなことは、この俺が許さんっ!!!」
マコ「……蟇郡先輩、今、マコの言ったことを聞いて、どんな気持ちになりました?」
蟇郡「ぬっ?」
マコ「いい気持ちじゃないですよね。ええ、全っ然嬉しくないですよねっ! ……マコだってそうですよ。蟇郡先輩が、私を守って死んじゃったかと思ったとき、最悪の気分になりましたよ。悲しくて悔しくて、どうしていいのか分からなくなりましたよっ!!」ばんっ!
蟇郡「満、艦、飾…?」
マコ「……何が、学園を守る生きた盾ですか。何が、お前が無事ならそれでいい、ですかっ。…それで、もし、死んじゃったら、どうしようもないじゃないですか。そんなんで守られた方は、そっから、どうしたらいいんですかっ…!」ボロッ・・・
マコ「だから、お、お礼なんか、言いたかないですよぉ…。ふぇっ、いっ、いくら、変態だからっで、…なんで、がまごおり先輩は、ぞんなに自分を大事にしでぐれないんですかぁ~」ボロボロボロ
蟇郡「……」ハンカチ そっ
マコ「……ふぇっ、ふぇええっ」ゴシゴシッ
蟇郡「……俺が、悪かった。満艦飾。次からは、死なないように、守る」たい焼き そっ
マコ「…わかれば、よかですよっ」もぐもぐ…
ざわざわっ
「お、お客さん! どうしたんですか、お客さん!」
「おいっ、大丈夫か!?」
蟇郡「む、通りの向こうが、やけに騒がしいな…」
マコ「何かあったんですかね」もぐもぐ
「――流子っ!? おいっ、流子! しっかりしろ!」
蟇郡「これは――皐月様の声っ!?」だっ
マコ「――流子ちゃんっ!!?」ダッシュ
―五分前―
占い師「…この水晶玉に映るのは…あなたの未来…」両手ぐるぐるぐる
流子「えーっと、その、水晶玉の上で手を回すのは、何か意味が?」
占い師「この回転による螺旋力により…穢れを払い…宇宙のぱわぁーを込めるのです…」スーハースーハー
流子(なんかやっぱ騙されてる気がしてきた)
占い師「すぅうううっ、はぁああああああ……螺旋渦巻く宇宙のピエールよ、マミーなる草原より生まれたまいしこの聖なる玉に、この者の救われる道を指し示したまえぇえええ…」
流子(うわぁ……)ドン引き
占い師「…では、リラックスして玉の中を覗きこんでください…」
流子(どうせ何も見えないんだろ……)じーっ
流子「……ん?」
占い師「…何が映りましたか?」
流子「芋虫…?」
占い師「えっ!?」
流子「え?」
占い師「……コ、コホンっ…おお、それは、おそらく服を食べる虫…お気に入りの服を食い散らかすように、あなたの幸せを壊そうとする悪のぱわぁーの象徴…」
流子「あれ、なんか赤いのが…」じーっ
占い師「…そう、その赤こそ、救いの象徴であり…我々の信じる神の象徴でもある…」
流子「……! こ、これ、まさか……」ドクンッ
占い師「…そうです、あなたは救われるのです…空を覆う闇を切り裂き、人類を自由にした聖なるダカー…それを使わされた我らの神に仕えることによって…」
流子「…なんで、」ドクッドクッ
占い師「…理由などいりません…これは、運命なのですから…!」
流子(…なんで、羅暁が映ってるんだよっ……!)
羅暁『……人類に、救われる道など、残されてはいない……』フフフフ・・・
流子「!? ――うっ…」くらっ
占い師「今ならっ、裸神教の入団金三百万円のところを特別に三十万円に――って、え、お客さん?」
流子「」どさっ…
占い師「お、お客さん! どうしたんですか、お客さん!」ユサユサッ
―???―
流子「うっ…。ここは…」
流子「……!? 生命繊維に覆われた星…? でも、これは、地球じゃない…」
羅暁「…ああ。そうだ、ここは地球ではない、他の星だ」
流子「っ!! 羅暁、てめぇ―――」
流子「――って、えっ。鋏がねえ! し、しかも服もねえ!!!」
羅暁「慌てるな、愛しの娘よ…。ワタシは、ワタシであってワタシではない……」
流子「はぁ?」
羅暁「これはお前と、そしてお前の体に息づく生命繊維の『記憶』だ…」
流子「……記憶?」
羅暁「あれを見ろ」
流子「……!」
「キシャァアアア」「キシャッキシャッ」「キシャァアアアアアア」
流子「水晶玉で見たでかい芋虫みたいなのが、星の表面に!」
「キシャァアアアアア」ぶちっ ぐちゃっ
流子「何だ、あの虫! 生命繊維を……喰っているのか!?」
羅暁「気味が悪いだろう…? あれらは、虚維蛾の幼虫だよ、流子」
流子「コイガ…?」
羅暁「要するに、服の虫だ」
流子「マジかよっ!?」
羅暁「つまり、生命繊維の、最大の天敵ということだ……。あの、ゴキブリのような蛆虫のような姿を、気味が悪いと思い、憎悪する心は、人間が進化と共に原初生命繊維の本能をも植えつけられてしまった結果。虚維蛾は、原初生命繊維が到達した星の匂いを嗅ぎつけ、狙いを定める。その後何が起ころうとも、例えその星の生命繊維がほとんど消失していようとも、感知できる量さえ残っていれば、それを根こそぎ喰らいにやってくる」
流子「……そいつらが、何だって言うんだよ」
羅暁「奴らが生命繊維を喰らう理由。それは、彼らが生体からのエネルギーを得る仕組みを体内に持たないからだ」
流子「……?」
羅暁「生命繊維は、生体の電気信号、つまりエネルギーを吸って増殖し、その中に蓄え、触れたものにまた力を与える。奴らは、その特性を利用して生きているのだよ。卵から孵化してしばらくは親からもらった栄養でしのぎ、時期が来れば、死に物狂いで生命繊維を体内に取り込もうとやってくる。一度腹の中に生命繊維を収めてしまえば、後は、生命繊維がせっせと進化させてきた生命体を喰らい尽くせばいいからなぁ。…生命体と生命繊維のエネルギーを絞りつくし、奴らの体内の生命繊維はやがて死滅する。そうなれば、奴らはまた新しい標的を見つけ出す。その繰り返しさ。奴らの飛来した後には、死んだ星しか残らない」
流子「そんな…。ってことは、まさか」
羅暁「ああ…。さすがに呑み込みが早い。そのまさか、さ」
羅暁「鬼龍院家の一族は、選択を迫られていたのだよ。生命繊維の奴隷となり、例え肉体は死んでも、人類がそのエネルギーとして生き続ける道を選ぶか…
生命繊維を封じ込め、やがて飛来する蟲に喰われ、苦痛と共に果てる道を選ぶか……」
流子「それなら、なぜ、生命繊維に立ち向かおうとしなかったんだ? その理屈なら、原初生命繊維さえ始末できれば」
羅暁「お前たち姉妹がやんちゃをするまで、ワタシも破壊できるモノとは知らなかったのでなぁ。知っていれば、他の道もあったのだろうがね」
流子「でも」
羅暁「流子…聞こえるか? この星の生命体の、苦痛に満ちた悲鳴が……」
流子「…………っ!」
羅暁「ワタシには、他の選択肢が存在しなかった。少なくとも、生命繊維に滅ぼされるのであれば、人類は余計な苦痛を感じずに済む」
流子「…う………」
羅暁「妙だとは思わなかったか? いくら人口が70億に達しようとも、地球を覆うには少々足りなかった。隙間を埋めなければならなかったために、流子、お前に反撃の時間を与えてしまうくらいにな。人類が誕生する前から、何万年も待ち続けた生命繊維が、たかだか数十年、数百年をなぜ我慢できなかったのか。人口が増えきってしまっているのならまだしも、これからも増えるというのに、なぜわざわざ焦って、実る前の稲穂を刈ったのか…」
羅暁「…答えは簡単だよ、流子。敵が迫っていたからだ。だから、原初生命繊維は目覚め、そして、ワタシは生命繊維と融合した…」
羅暁「…しかし、まだ、時間はあった。できるだけ『その時』を伸ばそうと、ワタシは実験を繰り返した。そしてそれは失敗し、ワタシが、人類に終止符を打つこととなった」
流子「いつだ。……その、虚維蛾って奴が飛来するのは、いつなんだっ!?」
羅暁「今から、おおよそ十年後だよ、流子。ただ、100%来ると決まった訳ではない」
流子「どーいうことだ」
羅暁「現在、地球上に存在する生命繊維の量が、少なすぎるのだよ。虚維蛾が感知できるか、できないかくらいの、わずかな量しか生き残っていないのだ」
流子「……私のことか」
羅暁「ああ」
流子「……皐月は、このことを知っているのか?」
羅暁「いいや。話してわかることではない。このように、生命繊維に直接情報を流してもらわねば、恐怖は伝わらないからなぁ」
流子「……確率は」
羅暁「3%、といったところか」
流子「………もし、羅暁が、私と地球に帰っていたら…?」
羅暁「100%だ。間違いなく奴らは来た」
流子「倒せるのか、その虫は?」
羅暁「ふふっ。それをワタシに聞いてどうする、流子。親のいう事は、7割方は古過ぎてあてにならん。何しろ、ワタシは原初生命繊維は破壊できぬものと思っていたくらいだからな…」スゥゥ
羅暁「ふっ…大人しく、生命繊維の虜になっていれば…よかったものを…」スゥゥゥ・・・
流子「! 母さん、身体が…!」
羅暁「……何を驚くことがある……これは、お前の記憶、幻だ……」フッ
【La vie est drole 人生は、おもしろい】
流子「母さ――
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――流子っ!? おいっ、流子! しっかりしろ!
「なんで転校生がこんなとこに倒れてんのよっ!」
マコ「流子ちゃぁん、流子ちゃん流子ちゃん!!! ……死んだっ!?」
流子「…………マコ?」
マコ「生きてた! 心配したよぉもう~!!」すりすりっ
流子「お、おう! よかったぁー! また合流できて…。このまま一人で、はぐれたまんまかと思ってたよ」
皐月「流子、大丈夫か? どこか痛いところは無いか? 気分はどうだっ!?」
流子「え? なんで? 別に普通に元気だけど……」ぽやーん
占い師「いや、もう、びっくりしましたよもう。お客さん急に倒れるんだもん、ふう…」
流子「へ? 倒れた?」
皐月「とにかく、念のため病院で診てもらおう。歩けるか?」
流子「い、いやっ、そんな大げさにしなくても、そういうんじゃないし! 普通に走ったり歩いたりできるし、それに」
皐月「ならんっ! もしものことが有ったらどうするっ!」ぐいぐい
流子(相変わらず、皐月さまは心配性だな……)引っ張られ
マコ「あっ、マコも一緒に行く!」トコトコ
蛇崩「じゃぁ、私たちも解散としますか。そろそろ時間もちょうどいいしね」
犬牟田「で、結局、蟇郡くんは満艦飾マコに思いを伝えられたのかな?」
蟇郡「……わからん」
猿投山「わからない、だとぉ!?」
蟇郡「…ただ、満艦飾の気持ちは、しかとこの胸に焼き付けておいた……」
犬牟田「え、告白されちゃったの? やるじゃん」
猿投山「ひゅーひゅー」
蟇郡「いやそういう訳ではないが…」
猿投山「なんだよっ。俺のひやかし返せよ!」
犬牟田「ついでに僕の褒め言葉もねっ」
蛇崩「まぁ、また今度があるわよ。……明日も、学校はあるんだし」
蟇郡「う、うむ……!」
犬牟田「果てしなく当たり前のことだけど、同意するよ。告白のチャンスなんて、いくらでもある」
猿投山「そうだな。俺たちには、明日があるさ!」
蟇郡「…………」
犬牟田「…………」
蛇崩「…………」ペッ!
猿投山「え?」
明日があるさ 作詞:青島幸男 作曲:中村八大
歌詞:http://www.kasi-time.com/item-4420.html
読んでくれた方、もしいたらありがとうございました。
もうちょっと続けてみようか
もうちょっとだけでいいから
≫33読んでくれてありがとう!!
ナウシカみたいな世界観で、三十路直前でちょっと年齢気にしてる艶っぽい美人になった流子ちゃんがマコの子供を短槍使いのバルサみたいに助けつつ蟲を倒す話を書きたいとは思っているけど、どうだろうか?
まず書いてみようぜ!話はそれからだ
ただのいちゃこらssだとおもったらえらいことになってるな
再開します
でも、このまま『十年後…』とかすると唐突すぎるから
ちょっと長くなるけどしばらくいちゃこらssするよ
―翌日:学校の廊下―
美木杉「~♪」
流子「……あ、美木杉」タタタッ
美木杉「ん? あー、何だい流子くん。やたら真剣な顔してるけど」
流子「…話したいことがある。…二人きりで」
美木杉「……!」
美木杉「……流子くん、君と僕は、曲がりなりにも教師と生徒…。今までさんざっぱら露出してきたせいで君に誤解を与えてしまったかもしれんがそれは」
流子「あの変態モヒカン野郎も、できれば居た方がいいんだけど…」
美木杉「単に僕の趣味であって―――。……えっ!?」
流子「それ以外の奴には、絶対聞かせたくない話なんだ」
美木杉「…はぁ?」
流子「…頼む」
美木杉(一体、どんな話をする気だ流子くん……!!?)汗
流子「頼むっ!」ぺこり
美木杉「あっ、ああ、わかったよ。紬も呼んでおこう…。じゃぁ、放課後にいつもの場所でね……」
流子「…ありがとう、美木杉先生」たっ
美木杉「!!??」汗汗
―放課後:下駄箱―
マコ「流子ちゃーん! 一緒に帰ろうーっ!」ピュンッ
流子「わりぃ、マコ。今日は私、寄らなきゃいけないとこあるから。先に帰っててくれ」キャッチ
マコ「うんわかったよっ! 歯医者さんとか?」クルクルクルッ ストンッ
流子「……ちょっと、な」ニコッ
マコ「……流子、ちゃん?」アレ?
流子「じゃな、マコ!」ダッ
マコ「りゅ、流子ちゃーん! また明日、学校でねー!!」ブンブンッ
マコ「流子ちゃん、なんか思いつめたような顔してたなぁ…。まるで、こないだの戦いで、デートの提案する直前みたいな顔だったよぉ…。あっ、またデート申し込んどけばよかったぁあっ!」
マコ「ようしっ、今からでもダッシュで追いかければ、間に合うかもしれないっ! そうと決まれば早速―――あれ?」かさっ
マコ「下駄箱から、手紙が出てきたよぉっ!? うわぁ、マコ、人から手紙貰ったの生まれて初めてだよぉ! なになに……」
マコ「……の、……の、…にて、…つ。意味の分からない手紙だねっ! あっ、そんな事より流子ちゃぁーん!」ドピュンッ ヒラッ…
手紙《満艦飾マコ様 本日午後三時半、屋上の花壇の前にて待つ。蟇郡苛》
ちなみに現在時刻:午後三時十五分です。
―放課後:いつもの場所―
流子「――という訳だ。もう覚悟は決まってる。ハサミは貸すから、ひとおもいに私を切ってくれ!」スッ
美木杉&黄長瀬「まてまてまてまて」
流子「?」
美木杉「流子くん、ちょっと落ち着きたまえ! それは、君の夢の中の話だろう!? それに、もし仮に、それが本当だったとしても、君が死ぬ必要はないだろ!?」
黄長瀬「こいつの言うとおりだ。というか、そんな簡単にあの女の言う事を信じるな」
流子「信じるも何も、私は実際にその蟲を見て、」
黄長瀬「…考えても見ろ。あの女の最後の言葉は、『生命繊維はまた地球に到達する』だったろ?」
流子「あ、ああ。よく覚えてたな」
美木杉「再び地球に到達した生命繊維にとって、最も脅威となるのは、生命繊維と融合した《どっちつかずの存在》である流子くんだ…」
黄長瀬「生命繊維の繁殖を第一に考えている羅暁のことだ。お前を倒せないとわかってあえて自殺し、都合のいい情報を植え付けて、操ろうとしていると考えた方が自然だ」
流子「た、確かに……。でっ、でも、あの蟲が羅暁の作り話だったとは、とても思えないんだが……」ブルッ
美木杉「だが、現時点では、流子くんが居なくなって得をするのは、羅暁と生命繊維だけだ」
流子「…そうだけど、もし、万が一……」
美木杉「……もっと言ってしまうと、もし君が死んだら、皆はひどく悲しむだろうね。特に、君のお姉さんと満艦飾くんは…」
流子「…………」
黄長瀬「二つ、いいことを教えてやろう。一つ、わかったら、バカなことはもう考えるな。二つ、ガキは次のデートの日程でも考えとけばいい。……美木杉、俺は帰るぞ。お前と違って暇じゃないからな」ブルルルルルーンッ
美木杉「……僕も、暇ってわけじゃないんだけどなぁ。それじゃ、流子くんも帰んなさい」
流子(……騙されてる、のならいいんだけど…。…でも、あの恐怖は、作り物なんかじゃ……)カタカタ
美木杉「……えーと、だいじょうぶ?」
流子「……なぁ、美木杉」
美木杉「なに?」
流子「…今日、ここに泊めてくんない?」
―屋上:花壇前―
マコ「さっき会った蛇崩先輩に、流子ちゃんをここで見かけたって教えてもらったけど、まだ居るかなぁ…?」
蟇郡「っ!!」ビクリ
マコ「あれ、蟇郡先輩っ! どうしたんですかー、こんな所でっ!」ニコニコッ
蟇郡「……っ!? ま、満艦飾、貴様、手紙を読んで来たのではないのか…?」
マコ「手紙…? あーっ、あの、訳の分からないことが書いてある! あれ、先輩からのだったんですかっ!?」
蟇郡(訳の分からないこと、だったか……)ズーン
マコ「蟇郡先輩、流子ちゃん見かけませんでしたか?」
蟇郡「? いや、今日は見かけていないが…」
マコ「おっかしーなーっ…。流子ちゃーんっ」たっ
蟇郡「まっ、待ってくれ、満艦飾っ!」
マコ「ふぇ?」クルッ
蟇郡「…………」
マコ「…何、ですか?」首かしげっ
蟇郡「……いや、なんでもない。…どれ、俺も、纏流子探しを手伝おうか?」
マコ「いいんですかっ! わぁーいっ!」よじよじっ
蟇郡「なぜまた俺の肩の上に乗るのだっ、満艦飾ぅううっ!!!」////
マコ「だって、手伝ってくれるって言ったじゃないですかっ!」
蟇郡(『手伝う』=『肩に乗る』なのか…!?)
マコ「ガッンメッン二つ♪ かっがやくドリル♪ 行っけ行っけ♪ す、す、め~!!!」
蟇郡「満艦飾、何の歌だそれは」
生徒「見て見て、あれ、四天王の蟇郡先輩と、二年甲組の満艦飾マコよっ」
生徒「やだ、変な歌歌ってるわ!」
マコ「ぐーるぐーるぐーる♪ 目っが回るぅ~♪ へいっ!」
蟇郡「満艦飾、俺の肩の上で歌うんじゃないっ!」//////
生徒「おい、あれ見ろよw」
生徒「おまっ、ばかっ。指差すなよ四天王だぞ!?」
マコ「ら~ららら~♪」
蟇郡(…。あきらめるか…)/////
―???―
流子「……お前は、私を殺したいのか?」
羅暁「ふっ。ワタシには、そんなつもりは毛頭ない…」
流子「じゃぁ、何がしたいんだよっ! 昨日といい今日といい、勝手に人の夢ん中に出てきやがって…!!」
羅暁「お前の生命活動を停止させることくらい、容易いことだ…」キュッ!
流子「―――ぐぅっ!!?」ガクッ・・・
羅暁「ワタシは、ワタシであって、ワタシではない。お前の体内に息づく生命繊維の、大いなる意志そのもの…」
流子「ぐっ……、っ、うっ――」
羅暁「心臓や肺の繊維を収縮させれば、お前の命など五分で奪える」パッ
流子「――っ!! はぁっ、はぁっ、はぁっ……」ゼーゼー
羅暁「誰に何を吹き込まれたのかは知らんが、ワタシの言ったことも、蟲の記憶も、全て本当のことだ…。生かしておく理由が知りたいというのなら、教えてやろう。――虚維蛾は、生命繊維の天敵だ。今まで我々は、それに対抗する術を持たなかった…。しかし、流子。もしお前が虚維蛾の掃討に成功すれば、生命繊維は、寄生した生命体を進化させ、虚維蛾を退治させるという、新しい生存作戦を取ることができる…。これは、大いなる実験なのだよ…」
流子「こ、この……!」ギロッ
羅暁「倒したいか? このワタシを? 無理だぞ流子。ワタシは、代々鬼龍院家の当主に宿ってきた、大いなる意志だ…。今まで誰一人として、ワタシの虜とならなかったものは居ない…お前も、直に飲み込まれる…」
流子「投手、だと…?」(何言ってんだろ、こいつ…)
羅暁「ああ。皐月のような紛い物には任せられん。生命繊維と融合したお前こそが、現当主だ…」
流子「………くだらねーな」(なぜ急に野球の話に……?)
羅暁「くだらない? 分からないのか、流子…当主に選ばれ、大いなる意志と意思を疎通することの、素晴らしさが…」
流子「…だいたい、生命繊維だって言うんなら、何だって羅暁の姿で出てくるんだよ?」(いつまで野球を引っ張る気だ…? キャッチボールでもしろってか?)
美木杉「…それは、君の持つイメージの中で、もっとも近いものが羅暁だったからさ」
流子「――美木杉っ!!?」バッ
針目「他の子のもカワイーし、ボクが相手をしてあげてもよかったんだけど♪」
流子「っ!?」クルッ
マコ「でもっ、そしたら、流子ちゃんも混乱しちゃうよーっ! って、思って!」
流子「…マコの姿を使うんじゃねェっ!!!」ゴォッ
皐月「いいだろう。殴れ」
流子「………っ!!!」ぴたっ・・・
一身「…これで分かったろう、流子……」
流子「……ふざけんなっ!!」
羅暁「ふふふふ…ふふふふははははh」
――くん、りゅうこくん、
流子「やめ、ろ……」
美木杉「流子くん、目を覚ませ、流子くんっ!」
流子「――はっ!」ガバッ 鋏ジャキンッ
美木杉「……ひどくうなされてたみたいだけど…」
流子「く、来るな……!」ジリ・・・
美木杉「お、おいおい、まだ寝ぼけてるのかい?」ポワーッ
流子(あ。光った……)へなへな ぺたんっ
美木杉「……えっと、大丈夫?」ポワーッ
流子「だ、大丈夫だ…。こんなアホみたいな光エフェクト出すのは、本人しか居ない……」
美木杉(さりげなくディスられた…?)
流子「…美木杉、もし私が羅暁みたいになったら、お前どうする…?」
美木杉「えっ」
流子「……撃つのか? 神衣が暴走した時みたいに」
美木杉「…ありゃりゃ。あの時、気づいてたの?」
流子「……もし、もしそうなったら、私を止めてくれよ、頼むから…。殺してでもいいから、黄長瀬とお前で、止めてくれ……!」
美木杉「流子くん……?」ポワーッ
流子「頼むから、皐月には、止めさせないでくれ……」
美木杉「流子くん、君は一体何を」
流子「すー……」zzz
美木杉「寝てるっ……!?」ガビン
美木杉「参ったなぁ…。君は一体どうしちゃったんだい? ま、いいか」ゴソゴソ
(流子をソファーに寝かせ、自分は寝袋に戻る)
―満艦飾の家―
マコ「むにゃむにゃ……もう、流子ちゃんったら露出狂なんだからぁ…」zzz
蟇郡「………」ギンギン
又郎「ぐおー」zzz
薔薇蔵「がおー」zzz
好代「すやすや」zzz
蟇郡(ま、満艦飾と、その家族の寝息が聞こえる……)
蟇郡(なぜだ…なぜ、満艦飾が俺の隣に寝ているのだ…?)
ひとまずここまでです。
読んでくれてる人ありがとう!
乙ー
もっとイチャイチャしてもいいのよ
思ったより書けたから、もうちょい上げときます。
蟇郡「…………」モンモン
蟇郡(だ、だめだ…何も思い出せんっ!)
マコ「むにゃ…だ、だめだよそんな、皆の前で……もう、流子ちゃんのえっちぃ……」zzz
蟇郡(ふむ、パジャマ柄は一富士二鷹三茄か…よく似合っている)ジー
マコ「むにゃ? 次体育だから着替えは当たり前? マコすっかり忘れてたよー…どうりで女の子しか居ないと思っむにゃむにゃ……」zzz
蟇郡(って、そんなことを考えている場合では無いわぁあああ!!! なぜ、一体なぜこうなってしまったのだ…!? とにかく、覚えている記憶を辿って――)
―六時間前―
カァー カァーカァー カァッカァツ
マコ「――えっと、そこの角を右に曲がって、その次を左に曲がって、」
蟇郡「……満艦飾、そろそろ日が暮れる。帰宅した方がいいと思うが」ノッシノッシ
マコ「着きましたっ! ここがマコのお家ですっ!」ばーんっ
蟇郡「…!!?」
マコ「おかーさん、ただいまーっ!」ガチャッ
好代「あら、遅かったわね、マコ。ご飯、もうできてるよ♪」
蟇郡「そ、それでは、また明日学校で会おう満艦飾!」
薔薇蔵「…ちょっと待ちな、兄ちゃん!」
蟇郡「!」
好代「…せっかくだから、晩御飯、食べていきません?」ニコニコ
蟇郡「い、いや、この蟇郡苛、満艦飾のお母様にご迷惑をかける訳には」
好代「せっかくだから、晩御飯、食べていきません?」にこにこ
蟇郡「し、しかし……」
マコ「そーだよ、蟇郡先輩も一緒に食べようよっ! うちのコロッケは、なんだかよくわからないモノがいっぱい入ってるから美味しいよっ!」
蟇郡「むっ……」/////
薔薇蔵「今回は、船の上のシーフードとは一味違う。家の裏に生えてたキノコやら、そこらの虫やらが入った、野性味あふれる、更によくわからんコロッケだ」
好代「せっかくだから、ね?」にこにこにこ
蟇郡「で、では、お言葉に甘えて……」ノソノソ・・・
―現在に戻る―
蟇郡(そこからだっ! その後、コロッケを口に運んだら、わけのわからない良い気分になり、なぜか、そこからの記憶が無いっ!!!)
マコ「むにゃ……」zzz
蟇郡(満艦飾が俺の腹を枕にしている以上、このままこっそりと帰る訳にもいかぬっ!! し、しかし、このままでは一睡もできんぞっ!!!!)ギンギン
マコ「…ふへ…流子ちゃん……むにゃむにゃ」zzz
蟇郡(……枕にするには、俺の腹は硬すぎないか? 満艦飾……)モンモン
―翌朝:本能寺学園―
マコ「おはよーっ♪ 流子ちゃんっ!」
流子「んあ? おはよー、マコ…」ボー・・・
蟇郡「では、俺はここで。」
マコ「教室まで、送ってくれてありがとねっ! …苛くん」///
流子「苛くん?」ボー・・・
蟇郡「あ、ああっ! ま、満艦飾――」
マコ「」ツーンッ!
蟇郡「…じゃ、なくてだな、その…。…ま、マコ」//// ポッ
マコ「よく言えましたっ♥」
イチャイチャイチャイチャ
流子(はー、そうかぁ。マコが、蟇郡となぁ…。それにしても、やけに眠い……)ウトウト
マコ「お待たせっ、流子ちゃん!」着席っ
流子(……うん、マコが、蟇郡と、ねぇ……)ボー・・・
マコ「それでね、家の前の川の中にね、こーんなに大きい亀が居たから、お母さんが細かく刻ん」
流子「……マコが、蟇郡とぉ!!!??」ガターンッ!
マコ「うわっ、流子ちゃん、いきなりどうしたの?」びっくり
流子「驚いてんのはこっちだよ! え、なにっ、いつの間に!? っていうか、いつからだ、そんな兆候どこにあった!!?」
マコ「…いやん、そんな根掘り葉掘り聞かれちゃうと、マコ照れちゃうよっ」///
流子「っていうか、良いのかマコ!? 相手は、老け顔の変態どM野郎だぞ!!」
マコ「その言い方は無いよぉ流子ちゃん。そこまで老け顔じゃないし、ただの変態じゃないし、ただのどMでもないんだからぁ…!」///// 手ヒラヒラ
流子「それ、むしろまずくないか…?」
マコ「……それに、あんなに情熱的に『好きだ、マコ……!』なんて言われたら、…マコ、断れないよぉっ!」//// キャッ
流子「さ、さいですか……」
マコ「苛くん、言った後にすぐ寝ちゃったから、マコも夢だったんじゃないかと思ったけど、大丈夫だったよ流子ちゃん!」
流子「よ、よかったじゃん、マコ!」
流子(いいのか…あんな変態でいいのか、マコ!?)モンモン
―生徒会室―
皐月「……蟇郡」
蟇郡「……はっ。ここに。」
皐月「『満艦飾マコと蟇郡苛が暑苦しいくらいにイチャイチャしている』という噂が私の耳に届いたのだが…」
蛇崩(ガマくんと劣等生、いつの間にバカップルになったの…!?)
猿投山(まさか、校則違反とかで処罰されたりしないだろうな…!)ハラハラ
犬牟田(高校のカップルなんて、どうせすぐ別れるから校則の規定は無いと思うよ)カチャカチャ
蟇郡「……」
皐月「…あまり交際初期から飛ばし過ぎると、別れが早くなるらしい。気を付けろ」
蟇郡「…は?」
皐月「あと、付き合ってすぐにぺありんぐを購入したり、結婚宣言をしたりすると、成功しなくなるらしいからな。それも気を付けろ」
蟇郡「さ、皐月様?」
皐月「…ところで、今日は当然、満艦飾と二人で弁当を食べるのだろう?」
蟇郡「そっ、それはそのっ」///
皐月「食べるのだろう?」
蟇郡「は、はい……!」
皐月「ふっ…。ならばよい」カツ、カツ、カツ・・・
皐月(これで、今日のお弁当タイムは私と流子の二人きりという訳だ…。でかしたぞ、蟇郡!)
蟇郡(ゆ、許されたのか…?)
蛇崩「……なかなかやるじゃなぁい、ガマくん?」
蟇郡「ぬっ?」
犬牟田「シャイな詰襟の君が、満艦飾マコに告白できたなんてね。データを更新しておくよ」カチャカチャ
猿投山「で、どうやったんだ? どーいう風に告白したんだ、こいつぅ!」
蟇郡「そ、それが…。覚えていないのだ」
蛇犬猿「はぁ!?」
蟇郡「満艦飾マコの家で馳走になったことは覚えているのだが…その後の記憶がどうも曖昧で……」
蛇崩「どーゆーことぉ?」
蟇郡「朝になって、何が起こったか聞こうとは思ったのだが、マコのご両親が『昨日の、責任とってもらおうか』と突然すごんできて――」
犬牟田「何だい? その、『酔った勢いだったから覚えてないんです』みたいな話は」
猿投山「風紀部委員長ともあろうお方が…。落ちたもんだねぇ!」
蟇郡「その後も、『昨日の…返事なんですけど…。付き合うって、よくわかんないんですけど、とりあえずマコは苛くんって呼ぶので、苛くんはマコって呼んでくださいねっ!』と言われてしまい、ついそのまま……」
猿投山「満艦飾の声マネしてんじゃねえよっ! 似てないしキモイだろっ!」オエッ
犬牟田「鳥肌モノだね!」ブルルッ
蟇郡「い、いや、しかし今のは説明のために必要――」
蛇崩「…だからってマネしなくたっていいでしょうがアホガマ…」ウプッ
蟇郡「む、…す、すまん……」(そこまで言わなくても…)
今日はここまでです。
また明日書けるといいな。
乙です
期待
―???―
羅暁「大人しく生命繊維に身を委ねれば…楽になれるものを…」
流子「や、やめろ! 私は……!」
羅暁「無駄な足掻きを。もうすぐだ…直に…」
流子「あっ……」
―昼休み―
マコ「流子ちゃん、起きて起きてっ! もうお昼休みだよ?」
流子「――はっ!!」びくっ
マコ「なんだか、寝苦しそうだったよ? 食べ過ぎかな?」
流子「だ、大丈夫…。ありがとな、マコ」ドキドキドキ・・・
流子(…また、夢の中に…。羅暁の野郎、私が眠る度に現れやがって……)
蟇郡「…ま、マコぉ! 迎えに来たぞぉおお!」/////
マコ「ごめんね、流子ちゃんっ! 今日、私、苛くんとお弁当食べる約束しちゃったから……」
流子「お、おう。楽しんで来いよー!」
マコ「…お待たせ、苛くん♥」
蟇郡「う、うむ」////
イチャイチャイチャ・・・
流子「……どこで食べようかな、私は」ふぅ
皐月「………」ひょこっ
流子「さ、皐月?」
皐月「…お弁当、一緒に食べないか?」
―第五話でお弁当食べてた場所―
流子(皐月と二人きりになったのって…そういや、あの戦いのとき以来かもな)もぐもぐ
皐月「流子、お前はいつも菓子パンだが…栄養が偏らないか?」ぱくぱく
流子「うっせっ。そっちこそ、飲み物は、いっつも紅茶しか飲んでねーじゃねェか」
皐月「ふん。紅茶は体に良いのだぞ?」
流子「知ってるか? 紅茶は利尿作用があるから水分摂ったことにならねーんだぞ」
皐月「ほう…よく知っているな」
流子「調べといたんだよ。口で負けないようにさ…」もぐ、もぐ…
皐月「……なぁ、流子」
流子「んー?」ポンヤリ
皐月「私は、今の鬼龍院の屋敷を売って、家を買おうかと思っている」
流子「…え?」
皐月「会社も、すでに畳んでいるからな。小さめの家でも買って、普通に学校に通って、普通に働いて……」
流子「…いいんじゃないか? すごく…素敵だと思う、それ」
皐月「そしたら、流子。…姉妹で一緒に暮らさないか?」
流子「…!」
皐月「そもそも、流子は今どこで暮らしているのだ。満艦飾の家ではないようだし…」
流子「…いろいろ、さ。泊まれるとこに泊まって、銭湯やコインランドリー利用して…。元々、私は宿無しだから…」ボー・・・
皐月「ならば、できるだけ早く決めた方がいいな。――犬が飼いたいのならこっちの物件の方がいい、と確か犬牟田が言っていた。猫派なら、こっちか?」タブレット ピッピッ
流子「…うん…」ウツラ・・・ウツラ・・・
皐月「お、こっちの家は、庭が付いているのか…。なかなか、かわいらしい家じゃないか」
流子(……だめだ、寝ちゃいけない……寝たら、また…羅暁が……)カクンッ
皐月「どう思う? 流子――」ポスッ
流子「…すー…」zzz
皐月(…流子が、私の肩に頭を乗せて、寝てしまった……!?)
皐月(食事中、しかも話し中に寝てしまうとは……子供か!? ま、まぁ、ここ最近 無宿だったせいで、疲れていたのだろう…。昼休みの間くらいは、このまま寝かせておいてやるか…)
流子「…すー…すー…」zzz
皐月(…肩に、流子の頭の重みと温もりを感じる……。角度的に寝顔が見れないのが、ちょっと残念…)
皐月(最初にお前が転入してきたときには、こんな関係になるなど、思ってもいなかったのにな……。不思議なものだ…)
流子「……皐月」
皐月「あ、起こしてしまったか? 別に、このまま寝ていてもいいのだぞ」
流子「……ふふっ♪」
皐月「――っ!?」
ばっ
皐月「流子っ! どっ、どこを触って――! いや、待て、今の感覚は……!!」
流子「……ふぅん。やはり、お前からは生命繊維の反応を感じないなぁ…」ゆらっ
皐月「この雰囲気、羅暁……!? 何故貴様がそこに居るっ! 流子に何をしたっ!!!」
流子「…おかしなことを言うねぇ、皐月。私は、私だよ…」フフフッ
皐月「ふざけるなよ……」木刀 スッ
流子「ひどいねぇ。そんな目で見ないでよ、姉さん…」
皐月「――貴様に姉さんなどと呼ばれる筋合いは無い! 私をそう呼んでいいのは、流子だけだぁっ!」チャキッ!
流子「……身の程も知らぬ、愚か者が…」グッ・・・
マコ「あれーっ!? 流子ちゃんに、皐月様っ! ここで食べてたんだーっ!!」ダダダッ
流子「……っ!」はっ
皐月「何っ、満艦飾……!?」
蟇郡「む、皐月様。 ――マコ、そんなに走るなぁあ! スカートの中が見えr」
皐月「下がれ蟇郡! 満艦飾を連れて逃げろ!!」
蟇郡「皐月様!?」
マコ「流子ちゃーん!」ぴゅーんっ
流子「あっ、マコっ!」タッ
皐月「満艦飾、そいつは流子じゃない、近づくなっ!!」
マコ「ええーっ!?」
流子「へ?」
皐月「だぁあああああっ!!!」ぐおっ
流子「うわあああああっ!?」ヒョイッ
皐月(む。避けても、反撃はしない…?)
ザッ・・・
皐月「……流子、か…?」
流子「お、おう」
皐月「……戻ったか。そうか、よかった…」(抱き着く)
流子「……さ、皐月…。もしかして私、さっき寝ちゃってたんだけど、変なこと言ったか……?」
皐月「…気にするな。お前は何も気にしなくていい、流子…」ギュッ
流子(やっぱり、何かしたんだ……)サーッ
マコ「何? 何? 何、何の話???」
蟇郡「…?」
美木杉「…………」双眼鏡
―教室:窓際―
美木杉「……確かに、こいつは思ったよりも厄介そうだよ…」NBスマホ
黄長瀬『…このまま羅暁に近づいていくようであれば、早いうちに手を打ったほうがいい。本気で刃向われたら、誰も勝てない』
美木杉「随分簡単に言ってくれるねぇ、紬」
黄長瀬『…裸になる覚悟はあっても、17歳の小娘を手にかける覚悟は無いってか。まぁそうだよな』
美木杉「しかし、全人類の存亡とかわいい教え子と…。比べようのないものを、秤に掛けなきゃならないってことも事実だ」
黄長瀬『…本気か、美木杉』
美木杉「……ああ。だって、僕ら大人がやらなかったら、誰がやるんだい?」
黄長瀬『……わかった。今からそっちへ向かう。纏流子の確保は頼んだ』ブツッ
美木杉「……すまないね、流子くん…」
今日はここまでです。
読んでくれてありがとう!!!
乙ー
ハッピーエンドはまだ遠く…
再開します。
一気に書き溜めた分出すよー
―五時限目:世界史―
美木杉「えー、1967年6月、第三次中東戦争の結果、イスラエルの占領により多数のパレスチナ難民が発生した。この戦争は、イスラエルがエジプト・シリア・ヨルダンを先制攻撃し、六日間で圧勝したことから六日間戦争とも呼ばれ・・・」
ヒュッ スコッ
流子「ん……?」
流子(机に、美木杉の矢文ならぬ針文が……)ぺらっ
流子(『今日の午後四時、いつもの場所で 美木杉愛九郎』)
流子(…なんか違和感あると思ったら、サインにハート付け忘れてんじゃねェか、美木杉の野郎……)
―放課後:教室―
マコ「苛くん、ごめんね! 私、帰りは流子ちゃんと一緒って心に決めてるの!」
流子「あっ、マコ。私、今日用事あるから、蟇郡と帰っていいよ」扉 ガラッ
マコ「えっ?」
流子「……バイバイ、マコ」ひらひらっ
マコ「え、あ、待ってよ流子ちゃんっ! で、デート! また、皐月様とデートしようねっ! 山にも行こうね、海にも行こうねっ! ねっ!?」
流子「…………」ぴしゃっ
マコ「……流子ちゃん…」
蟇郡「どうした、マコ…?」
マコ「苛くんっ!」
蟇郡「なんだっ!?」
マコ「一緒に尾行しましょう、流子ちゃんをっ!」
蟇郡「ぬっ!?」
マコ「最近の流子ちゃん、やっぱりちょっとおかしいよ! だから私、親友として、流子ちゃんをほっとけないっ!!」
流子「マコ、もし つけてきたら絶交な」ガラッ ぴしゃんっ
マコ「……ひどいよ、流子ちゃんひどいよ絶交なんて…」イジイジ・・・
蟇郡「…安心しろ、マコぉおっ!」
マコ「苛くんっ?」
蟇郡「要は、つけなければいいのだぁあ! 後から追いつく分には、問題は無いっ!! …犬牟田に頼めば、監視カメラやら何やらで位置を割り出してくれるかもしれん」スマホ ピッピッ
マコ「い、苛くん……っ!!」キラキラ・・・
―生徒会室―
犬牟田「おっと、こんな時にメールが…」ピンッポンサッキュレイ~♪
猿投山「しかし、皐月様も何を考えておられるのやら…」
蛇崩「指令だけして、私たちに何も教えてくれないなんて…。なんだか昔に戻っちゃったみたいよ」
猿投山「内容も、内容だしな…。というか、なぜ蟇郡がここに居ないんだ?」
蛇崩「ガマくんの仕事は、劣等生のお守り、ってことでしょ…」
犬牟田「へぇ、面白いね…」カチャカチャ
猿投山「またユーチューブでも見てんのか?」
犬牟田「違うよ。蟇郡からのメール。土下座の顔文字付きで、『纏流子の居場所を教えてほしい』だってさ」カチャカチャ
蛇崩「…あら、すごい偶然。皐月様の指令と同じじゃない」
猿投山「ま、皐月様の方は、『自分が纏を止められなかったら』という条件付きだけどな…」
―本能寺学園:正門前―
皐月「……待っていたぞ、流子。…一緒に帰ろう」
流子「……でも、皐月お前、自動車通学じゃなかったか?」
皐月「だからこそだ。まだ家は買っていないが、屋敷にお前の部屋は用意しておいた。必要なものも、あらかた揃っている…」
流子「……なーるほどねぇ。閉じ込めて、監視しておきたいって訳か」
皐月「そういう訳ではっ…!」
流子「もし私が皐月なら、そうするね。…でも、それじゃ意味が無いんだよ。私が本当におかしくなったら、誰にも止められない」
皐月「…知っていたのか?」
流子「…皐月。私は、昼休みに、お前に何て言ったんだ……?」
皐月「…………」
流子「…ごめん、皐月」ダッ
皐月「待てっ、行くな流子っ! …それでも行くというのならば、力づくで――」
どごっ
皐月「かはっ…!」どさっ
伊織&揃「皐月様っ!!」
流子(ごめん、姉さん……。止めてくれて、ありがとう…)ダダダッ
皐月「…待て…行くな、流子………」ガクッ
―午後四時:いつもの場所―
流子「…遅くなった」ガチャ・・・
美木杉「いや、時間通りだよ。流子く――」ポカン
黄長瀬「どうした、美木杉――」アゼン
流子「……可愛いかな、この服」クルリッ
(コーデ例:http://zozo.jp/coordinate/?ts=&sid=183&st=&stid=&cdid=523711)
異論は受け付けるよー
美木杉「…あ、ああ。かわいいよ。それに、よく似合っている…」
流子「よかった。……鮮血との約束だったんだ」
黄長瀬「何がだ?」
流子「『鮮血より可愛い服を着て、嫉妬させる』ってことが」
美木杉「…流子くん」
流子「さぁ、これでもう、思い残すことは無い。……あ、あんたらに言い残したことは、あったな」
黄長瀬「は? 言い残したこと?」
流子「美木杉…」
美木杉「…なんだい?」
流子「私に他に頼れる奴が居なかったのをいいことに、半裸で謎の光を出しながら迫ってきて私を赤面させてたことを本気で訴えようかと思っていた時期もあったけど、もう許したから」
美木杉「え、え、え何それちょっと流子くん僕それ初耳」
流子「次、変態モヒカン」
黄長瀬(嫌な予感しかしない)
流子「初登場時から『うわっ、こいつ変態のくせに私と髪色被せてきやがったキモッ!』って思ってたけど、もう気にしてないから」
黄長瀬(……赤じゃなくて、ピンクに染めればよかった)
流子「…さぁ、鋏は貸すから、今度こそ頼む」チャキッ
美木杉「えっ!?」
流子「え?」
黄長瀬「…おい、美木杉。ちゃんと説明しとけって言ったろ!?」
美木杉「無茶だよ紬…。言っていたら、流子くんは今ここに来ていない」
流子「お、おい、何の話だ? 私を、始末するんじゃないのか?」
美木杉「…説明する前に、この資料を見てほしい」ドサッ・・・
流子「な、何だ、この分厚いファイルは…?」
美木杉「本能寺学園の全男子生徒の簡単なプロフィールと顔写真だ…。簡単に、でいいから、写真を重点的に目を通していってもらいたい…」
流子「わけがわからんけど、わかった。……」ペラッペラッペラッ
―小一時間後―
流子「お、終わったぞ…チクショー眠い……」ウトウト
美木杉「で、何か感じたかい…?」ポワーッ
流子「別に何も……」ウト・・・
黄長瀬「やはり、写真じゃ無理か…」
美木杉「…流子くん、君、恋をしたことはあるかい…?」
流子「…は?」
黄長瀬「お前が生命繊維に意識を奪われそうになったとしても、生命繊維の『繁殖しようとする意欲』よりも強い『人間の本能』が働けば、それを抑えることができる。…かもしれない」
流子「…はいい?」
美木杉「…もし、生徒で駄目だったら、僕がひと肌脱ごうと思っていたんだが…訴えられては困るからね」
黄長瀬「そっち系だった時のための女子生徒版もあるが…。見るか?」
流子「誰が見るかっ!!」
黄長瀬「念のため用意した、おじさん版と小学生版もあるが」
流子「用意すんじゃねえそんなもんっ!!!」
美木杉「ちなみに、おじさん版はファザコンの可能性をかんがみて、六十代以降の男性が中心となってい」
流子「その妙な細かさが気持ちわりぃんだよ!!!! 変態がっ!!!」
黄長瀬「とうとう疑問形じゃなくなったな」
美木杉「むしろ、今まで『変態か?』と聞いてくれていたことが奇跡だよね」
流子「っつーか、恋をしたら洗脳されないって…。どこのディ○ニー映画だよっ! わけわかんねーから!!」
美木杉「いやいや、この学説は、纏博士もちょっと言っていた物なんだよ」
流子「!? 父さんが…?」
美木杉「ことあるごとに、『ワシにもっと魅力があればなぁ…もうちょっと何とかなったかなぁ…』ってぼやいてたし」
流子「嘘つけぇええ!! 話作ってんじゃねえよ!!!」
黄長瀬「落ち着け纏流子。俺たちは、少しでも可能性のある方法は全部試すつもりでいる。…死ぬのは、それからでも遅くないだろ」
流子「……あんたらに相談した、私がバカだった」スッ
美木杉「待ちたまえ流子く」鋏ジャキッ
流子「どうせ、わかんねーよ。…口で言って、わかるはずもなかったんだ」
美木杉「紬…銃は下ろせ。そんなんで止められる子じゃない」両手バンザイ
黄長瀬「……」スッ
流子「自分の最期は、自分で決める。もう時間がねーんだ……」扉 ギィッ
流子「…じゃぁな」
カッ―――
流子「――眩しっ」
皐月「流子っ!!」
マコ「流子ちゃぁーん!!!」
蛇崩「転校生っ!」
流子ちゃんファン倶楽部「流子ちゃぁあーん!!!」
蟇郡「纏流子ぉおお!」
元部長s「纏ーっ!!!」
伊織「流子さんっ!!」
揃「流子お嬢様…!!」
犬牟田『纏流子』←監視中のためホログラム
流子「な、何人居るんだよ、これ……」
メガホン スチャッ
猿投山『纏ぃいっ! 貴様は完全に包囲されているっ! 大人しく投降しろぉっ!』キーン
流子「はぁ?」
マコ「流子ちゃんっ!」
流子「……絶交って言ったろ、何で来たんだよ、マコ…」
皐月「満艦飾は貴様をつけてきた訳ではない。監視カメラから犬牟田に割り出してもらったこの場所に、来ただけだ」
流子「……人数が多ければ、止められるとでも思ったのかい? 皐月さま」
皐月「いや。私は一人で来るつもりだったのだが……」
マコ「私が、『流子ちゃんが大ピンチだよぉー!』って言いながら走ってたら、皆ついて来ちゃったんですっ!」
流子「おい」
マコ「だって、流子ちゃん変だったんだもん! デートが終わってから、いっつも考え事してるっ。親友の私にも、お姉ちゃんの皐月様にも、何にも言ってくれないで、一人で抱え込んで、思いつめたような顔して、内緒でコソコソ何かやってるっ! そんなの、心配するなっていう方が無茶だよっ!」
流子「…言って、わかることじゃないんだよ。マコ」
マコ「何で決めつけるのっ!? わからないかもしれないけど、わかるかもしれないじゃないっ! そうやって勝手に一人で決めつけて、思い込んで、一人で流子ちゃんがどっかに行っちゃうなんて、私もう嫌だよっ!!」
流子「……思い込んで?」
マコ「流子ちゃんが何にも教えてくれないから、何でこんなとこに居るのかも、何でやさぐれてるのかも、私、わかんないんだよっ! でも、何があったって、流子ちゃんは簡単に負けたり、くじけたりなんかしないっ! だって、流子ちゃんには、私が、皆がついてるからっ! だから、教えて流子ちゃんっ!! 流子ちゃんを信じてる私を、流子ちゃんを大好きで集まった皆を、信じて!!」
流子「…信じる……?」
流子「……」
皐月「……満艦飾の説得でも、無理だったか…。やむを得ん。睡眠ガス用意――」
流子「そうかっ! 思い込めばいいんだっ!!!」
皐月「!?」
流子「マコ、わかったよ、マコっ! そうだよ、思い込めばいいんだっ!」マコの手ギュッ
マコ「えっ、あっ、え!? りゅ、流子ちゃんいきなり激しいよぉ」
流子「羅暁がなんだっ! 生命繊維がなんぼのもんじゃっ! っていうかそもそもあいつが言ってたんじゃねえか、『ワタシの話を信用するな』って!」
マコ「流子ちゃんっ、何の話――?」
流子「マコ、デートしようっ!」
マコ「えっ」
流子「それだけじゃねぇ…。花見して、山行って、海行って、お泊まり会して、プール行って、紅葉狩りして、イモ焼いて、スキーして、スケートして、餅ついて、とにかく、いろいろしようっ!」ピョンピョンッ
マコ「う、うんっ! しようよ、流子ちゃんっ!」
流子「あ、お前の結婚式にも、出るからな」
マコ「えっ」///
流子「相手は苛くんだろうが誰だろうが構わねェが、皐月が期待できない以上、マコの結婚式には絶対に出る! 『新婦の友人代表:纏流子様』だっ!…式は、当然挙げるんだろ?」
皐月「…期待できない、だと?」ピクッ
マコ「流子ちゃん、ちょっ、え?」
流子「……じゃ、おやすみ、マコ。続きは、起きてからで…」ふらっ
マコ「えっ、あっ、え? りゅ、流子ちゃ」ぽすっ
流子「……すー……」zzz
マコ「…寝ちゃってるよ…!?」ビックリ
―???―
羅暁「ふふふふ……どうだ、大いなる意志に意識を委ねる快感は……」サワサワ
流子「……くだらねーな」チャキッ
羅暁「――っ!?」
ガキィイインッ!!
羅暁「…ほう…断ち斬りバサミを出現させたか…」血ツーッ
流子「ここは、てめーの世界であると同時に、私の記憶の世界でもある。私の記憶にある物を、本気で『有る』と思い込めば、この世界にもそれが現れる…。そうだろ? 『大いなる意志』さんよぉ」ジャキンッ
羅暁「…ならば、こうなることも、当然予想していたのだろうなぁ?」シュワワァア・・・
流子「…っ!?」
羅暁「…裸のお前に、勝ち目はない…。絶望の果てに果てるがいい……!!」
羅暁「『神羅纐纈』! あっははははははぁっ」ドガドガドガドガァアアンッ!
流子「うわぁああああっ!!」
ドーンッ! モクモクモク・・・(土埃)
羅暁「……ふん、たわいもない。…大いなる意志は、たかだか人ひとりの意志で抗えるようなモノではないのだよ…」
「それは違うな。流子は、裸でもないし、一人でもない」
流子「…ああ、そうだ。私は一人じゃない…」
羅暁「…しぶといな。まだ意識を保てるか、愚かな娘よ…。だが、これで終わりだぁ!」ドガガガガッ!!
鮮血「流子っ!」
流子「ああ。…いくぞ、鮮血っ!!」
ピンッ
シュワァアアッ ギュッ ギュッ パチンッ!
流子「人衣一体っ、神衣、鮮血!!!」
ヒュッ
羅暁「速い……っ!?」
流子「うおらぁっ!」キンキンキンキンッ! バコンッ
鮮血「まったく…卒業したはずだったのにな」
流子「……この世界なら、死んでようが燃えてようが、記憶があれば復元できる!」
羅暁「なるほどな…そうきたか」ドドドガッ
流子「鮮血っ!」
鮮血「ああ!」
流子&鮮血「尖刃疾風っ!!」ギュンッ
流子「弩血盛武滾猛(どっちもぶった切るモー)―」
羅暁「……ふふ」ギュッ!
流子「――ぐぁああっ…!!」ガクッ
鮮血「流子!?」
羅暁「…心臓と肺を締め上げられて、さて何分もつかなぁ…?」ギュッ・・・
流子「…ぐっ、うっ……!!」
鮮血「流子、流子! 想像するんじゃない!」
流子「…つっ……っ!?」
鮮血「『絶対服従』の時と同じだ! お前の体内の生命繊維は、奴らの意志とは独立している。お前がそう思い込まなければ、勝手に収縮することは無い!」
流子「…んなこと、…言われたって……うっ!」
鮮血「……針目とのディープキス」
流子「はぁっ!!?」///
鮮血「生命繊維を吸収した際、針目の記憶の一部も流れてきた。……なかなか上手だったそうじゃないか」
流子「てっ、てめぇそういう事をなんで今」
鮮血「ほら、今、羅暁に言われたことを忘れていただろ。脈も呼吸も戻っている」
流子「……あ、ホントだ」
ドガガガガガガッ!
流子「おっ、わっ、よっと!」ヒョイヒョイヒョイッ
鮮血「さて、今回はどうやって倒すつもりだ、流子」
流子「記憶の中のお前まで消えるのは嫌だからな…。ここは宇宙みたいだけど、酸素もあることにしちまえば…」
鮮血「…なるほど。私に移らないよう気を付けてくれよ」
流子「できるだけ、自分で避けて欲しいけどな」
羅暁「何をごちゃごちゃ言っている…! 所詮、お前にあるのは、更衣でもないただの神衣に、硬化生命繊維からできた鋏だけではないか…。そんなもの、この纐纈の敵ではない!」棘ズラッ
流子「っ! ――鮮血疾p」ドスッ!
流子「がっ……!」ザクッ、ポタポタ・・・
羅暁「ふっ…。遅い、遅すぎるぞ流子…」
流子「う…」グッ・・・
羅暁「…抜いて逃げようとしても無駄だ…私の腕はそう簡単には外れんぞ? 流」
がちゃっ
羅暁「…何だそれは」
流子「映画で見て、一回使ってみたかったんだ。火炎放射器」
羅暁「」
流子「ふぁいやー!!!」カチッ
ぼわっ!
羅暁「ぎゃぁあああっ……!」
流子「うわっ、ホントに抜けねぇぞこれっ!? あちあちいっ!」ジタバタ
鮮血「流子ぉおお早くしろぉおお!!」アセアセ
流子「ぬ、抜けた…よかった…」ゼエゼエ
鮮血「…ちょっと焦げたぞ、流子」ブツブツ
流子「悪かったよ、鮮血」
ブシューッ…
羅暁「…小賢しい! ……こんなくだらない方法で、この大いなる意志が敗れるとでも思っ」
キラキラキラキラッ・・・・・・!!!
流子「断ち切りバサミ、弩血盛武滾猛怒!!!」
鮮血「うおおおおおおお」ガッキィイイインッ!
流子「おおおおおおおっ!!」ギリギリギリッ・・・
羅暁「…無駄だぁっ! そのハサミではこの纐纈を切ることなど――」ギリギリ・・・
流子「……無理でも、やらなきゃならねーんだよっ! 私は、マコと約束したんだぁあああああ!!」ギチィイッ!
鮮血「流子っ!」ギリギリギリッ・・・
流子「…だいじょうぶだ…もう少しっ!」ガキッ・・・
羅暁「無駄だと言っているのがまぁだわからんかぁっ! ――っ!?」ガッ・・・!
流子&鮮血「いっけえええええええっ!!!」グググ・・・グ
ずばぁああああああんっ!!!
流子「戦維、喪失っっっ!!!!!」シュタッ!
羅暁「」パアァアアンッ!
流子「……終わった…」
ごめん。真面目に書くつもりだったんだ。…でも、無理だったみたいだ。
こっからしばらく、流子ちゃんのキャラが崩壊するから、嫌な人はsageてる部分を無視して読んでほしい。
鮮血「……待て流子っ! 後ろだっ!!」
流子「おっ?」
ガツゥウンッ!
「――へぇーえ、今のを止めたか…。できそこないの神衣でも、ワタシが着ればそこそこやるもんだなぁ」
流子「う、嘘だろ……! 何で、私が!!?」/////
鮮血「純潔を着た流子か…! さすがに、鋏は持っていないようだが…」
流子「ど、どーいうことだコレ!?」
鮮血「これは、まずい…! かなりまずいぞ、流子!」
リュウコ「とまどってるみたいだなぁ、鮮血…。そうさ、ワタシは纏流子の記憶からじゃなく、鮮血、お前の記憶からできてる…自分じゃ自分の姿は見られないからねぇ」
流子「くっ…! お、思い出したくなかった…封印してたのにぃ……!!」ジタジタ
鮮血「流子、布団に顔を埋めてジタバタしている場合じゃないぞ、流子!」
流子「うるさいっ! ひ、人の黒歴史を再現しやがって……!」
リュウコ「たまんねぇぜ……純潔に着られる、カ・イ・カ・ン…♥」
流子「~!~!~~~!!!」///// ジタジタ
鮮血「流子! 敵の思うつぼだぞ、流子ぉお!」
リュウコ「隙ありぃいっ!」どがっ
流子「うわぁーーー!!!」キラーン
流子「ま、参ったな…これじゃ本気も出せない…」ヒューン
リュウコ「出したって、どうせ勝てやしねぇよ…」ゴゴゴ
流子「速っ―――!」
ばごんっ!
リュウコ「…前よりは、強くなってるみたいだなぁ、鮮血」ギチ・・・
鮮血「鮮血尖刃……! 地獄の淵より舞い戻った私を、なめるんじゃないっ!」
流子「え、地獄に居たのか? 鮮血」
鮮血「え」
流子「何も悪いことしてないのに、…地獄に居たのか?」
鮮血「」
鮮血「い、いや。今のは言葉の綾だ…。空からお前を見ていたぞ、流子」
流子「だよな! よかった!」ホッ
リュウコ「――服とくっちゃべってんじゃねェよ!!」ドコッ
流子「はんっ、う、羨ましいんだろ! 純潔は喋らないからなぁ!」ヒュッ チャキンッ!
リュウコ「別に羨ましくねーよ…バカか?」バキッ
流子「覚えてるんだからなっ! 私は羨ましかったぞ…! なんか、いきなり『疾風尖刃』とか新技出されたときはすごいムカついたんだぞ!! …ちくしょー皐月の野郎、鮮血の本命は私なのに!!!」
鮮血「流子、落ち着け」
リュウコ「黙れや、オラ」ドゴッ
流子「うぁっ…!」
リュウコ「オラッ」バキッ
流子「ぐぁっ…!!」
リュウコ「オラァッ」ゲシッ
流子「…かはっ……!」ガクッ、
鮮血「――流子っ!」
流子「へ、平気だ鮮血…。心はズタボロだけど…」
リュウコ「……その様子じゃぁ、神衣更衣は着れねーみたいだなぁ」
流子「!」ドキッ
リュウコ「あれを出せば確実に勝てるのに、それを出さねーってことは、記憶が少なすぎて上手くイメージできねぇんだろ?」
流子「だ、だったら、どうした!」
リュウコ「……はぁ。なら、もう飽きたわ。消えな」ばきっ
流子「がっ…!」
リュウコ「これで、終わりだ……」鋏チャキッ
流子「た、断ち斬りバサミが……」
鮮血「…流子っ! 私を脱げっ!!」
流子「えっ!?」
リュウコ「あん?」ピタ
鮮血「この流子は、私の、全く歯が立たなかった時の記憶からできている……。私を着ていては、いつまでたってもこいつには勝てん!!」
流子「そ、そんなっ! でも、そしたらもう打つ手が」
鮮血「常識を捨てろ、流子! この世界は、お前の思い込みでどうとでもなる世界だ…。神衣や生命繊維の力ではない、新しい基準で戦わなければ、こいつには勝てない!!」
リュウコ(なんか面白そうだから、ちょっと待っててやろう…)ジー・・・
流子「あ、新しい基準……?」
鮮血「ああ、そうだ! 手から波動を出したっていいし、愛の力で戦ってもいいし、石仮面で人間を辞めたっていい。――とにかく、服以外の方法で勝て!!」
流子「そ、そんなこといきなり言われても」
リュウコ「…そろそろ、いいか?」イライラ
流子「も、もうちょっと!」
リュウコ「待つかバカ」ヒュッ
鮮血「流子急げ早くしろっ!!!」
流子「――わ、私は、恥を捨てるぞっ、鮮血ぅうー!!!」
カッ―――!!!
リュウコ「!!?」
チャーチャチャッチャ チャッチャー♪
流子「プリティーウィッチー流子っちー♪」キュピィインッ♥
鮮血「」
リュウコ「」
流子「……」//////
リュウコ「……恥ずかしくねえのか?」
流子「うるせえええええ!!!」
鮮血「流子…なんだそれは」
流子「…鮮血。私はな、私と言うか、今の17歳はな、プリキュアじゃなくておジャ魔女どれみ世代なんだよ」
鮮血「……おジャ魔女どれみ、とは何だ」
流子「…魔法少女だよ。正統派の」
鮮血「正統派…?」
流子「まどマギとは違うってことだよ。普通に夢があるんだよ。最終話で泣いたのにその後『ナイショ♪』があってびっくりしたんだけど録画失敗して結局見れてねーんだよ」
リュウコ「いや、知ってるけどさ。わざわざそれ選ぶか、普通。ワタシが幼稚園の頃のアニメだぞ」
流子「黒歴史に勝てるのは、それよりもっと破壊力の高い黒歴史だけだ……!」
リュウコ「いや、わけわからん」
流子「それが私達ってことだよぉお!」
鮮血「流子、私を巻き込むんじゃない」
流子「み、見せてやるよ…17歳のピリカピリララをなぁ!!」
リュウコ「…ヤケになってねーか?」
流子「ヤケになるしかねーだろうがよぉ!! …行くぜ、どれみちゃん!」ステッキ すっ
(注・ステッキ っつーか ジュエリーポロン のつもりだけど、知らなくても大丈夫)
鮮血「流子、どれみちゃんとは誰だ」
リュウコ「あほらし…。というか、見てられねーから、ワタシが繊維喪失してやるよぉ!」チャキッ ダッ!
流子「ピーリカピリララ、ポポリナペーペルトー♪ 金盥よ、出ろぉっ!!」
リュウコ「あだっ」ガンッ
流子「出ろ!」
リュウコ「ふざけん、いでっ」ゴンッ
流子「出ろ♪」
リュウコ「しつけぇ、いてぇっ」ガツッ
流子「で――」
リュウコ「いー加減にしろやぁ……」ゴゴゴゴ
流子「わ、わぁー。困ったなー。……私って、世界一不幸な美少女だもんね♪」
鮮血「…魔法少女、ということは、魔法を使うのか? 流子」
流子「あ、当たり前だろ」
鮮血「……それならば、敵の存在そのものを消す魔法を使えばいいんじゃないか?」
リュウコ「…チート過ぎんだろ、それ」
流子「ちょ、ちょっと待て鮮血! 確かに、そりゃ禁じられた魔法じゃないが、私は魔女見習いなんだ! 水晶玉の魔力が足りるかどうか――」
鮮血「まずは、やってみろ流子。話はそこからだ」
流子「……わかった、鮮血!」
リュウコ「チッ……! させるかっ!」ばきっ
流子「危ねっ――!」ビュンッ
リュウコ「ほうきで飛んだか…。純潔旋風っ」ガコンッ ゴオオオオッ
流子「もう遅いっ! ピリカピリララポポリナペペルトぉ!! 『生命繊維の大いなる意志』を、消してっ!!!」
ぱっ―――
流子「……ホントに消えちまったぞ!! 良いのかこんなんでっ!?」
鮮血「流子のほうきと服も消えているな」
流子「え。――わああああ落ちてるぅううう」ヒューン
鮮血「流子っ!」
流子&鮮血「人衣一体、神衣鮮血! ……からの、鮮血疾風!」キラキラキラッ!
流子「服が消えたってことは…。やだっ、まさか私、女王様を怒らせちゃった!?」
鮮血「……流子、恥ずかしかったのはわかるが、そろそろそのキャラは止めてくれ。そういう風にしか見れなくなる」
流子「………鮮血」
鮮血「なんだ?」
流子「…穴が有ったら入りたいって、こういう気持ちなんだな…」ズーン
シーン・・・
鮮血「……どうやら、『大いなる意志』は本当に倒せたようだな」
流子「…よかった…。これで、洗脳される心配は、もう無い、よな…?」
鮮血「……流子」
流子「なんだよ?」
鮮血「……まぁ、さっきの服も可愛かったが」
流子「!?」
鮮血「私が嫉妬するような服は、あんなもんじゃないぞ。流子」
流子「…あー、そうかい」
鮮血「もっとフリルを付けろ…花柄もな!」
流子「そっんなもん私に似合わねーよっ!」
鮮血「そんなことはない。…流子なら着こなせるさ」
流子「…鮮血……」
流子「…なぁ、鮮血。あれ、見えるか?」
鮮血「…ああ。あの星と、その表面の蟲…。あれは何だ?」
流子「生命繊維の天敵だ。私の中の生命繊維を嗅ぎつけて、地球にやってこようとしている。…もし、あいつらが地球に飛来したら、地上に居る生命体は全部、喰われちまうらしい」
鮮血「なぜだろう…。あの姿を見ると、得体のしれない恐怖を感じる……」
流子「私もさ、鮮血。…多分、生命繊維の本能って奴なんだろうよ…。でも、だからこそ、今立ち向かっておいた方がいいと思うんだ」
鮮血「…いくら夢の中とはいえ、ここで死ねば、命の保証はできないぞ。…いいのか、流子」
流子「ああ。…だいじょうぶさ、鮮血! 私は、マコの結婚式で真っ先に泣くって決めてんだ。…それまでは、絶対死なない!」
鮮血「…流子、それは相手に迷惑じゃないか?」
流子「私が鮮血を着て、鮮血が私に着られている…。そうしたら、私達は無敵だっ! あんな蟲になんか負けやしない、そうだろ?」
鮮血「……! ああ、そうだな、流子!!」
流子&鮮血「疾風尖刃っ! 断ち斬りバサミ、弩血盛武滾猛怒!!!」ギュンッ!
ヒューンッ
「キシャァアア」「キシャ」「キシャアアアアアアア!」
流子「――やろうぜっ、鮮血!!!」
鮮血「ああっ! もちろんだっ!!!」
蟲「キシャァアアアアアア!!!」
流子「うおおおおおおりゃあああああ!!!」
ズババババアーンッ!!!
流子「私たちの戦いは、これからだぁっ!!!」
ご愛読、ありがとうございました。≫1の次回作にご期待ください。
↑あ、言ってみたかっただけです。まだ続きあるので 今日は終わりだけどまた書くのでもうちょっとお付き合いください。
読んでくれてありがとう!!!!
ナージャねえのか
まぁ、すしお三繋がりで出したかっただけだし、ナージャは母親を探して見つけて幸せになる話だからコスプレさせたらかわいそうかなと思って。
ごめん間違えた
ナージャ お母さんと別れて旅立ってたんだな。すまん、あんまり詳しく知らなかったから
ナージャのがよかったかなぁ…
誰か動画作ってくれないかなぁ
終わったかと思ってびっくりした…
とりあえず乙ー
見直してみたら、「疾風閃刃(しっぷうせんじん)」を間違えまくってた
ごめん
読んでくれている人ありがとう!再開するよ
―どこかの部屋―
流子「…………ん?」ぱちっ
皐月「…あ」
流子「…皐月?」
皐月「流子…よかった。三日も目を覚まさないから、もしやこのまま起きてくれないのかと……」
流子「み、三日も寝てたのか!? 」
皐月「ああ。満艦飾も心配していたぞ。早速、連絡をしてもらわねばな…」無線機ガチャッ
流子「普通に、電話すればいいだろ? 何だその無線機?」
皐月「正確に言うと、無線機でもない。ここは地下300メートルに作られた核シェルターだからな。普通の機器では地上と連絡が取れん」
流子「……は?」
皐月「万一、お前が羅暁のようになってしまったとしても、ここならば封じ込められるかと思ってな…」
流子「徹底してるな…さすがだぜ」
流子「……ってことは、お前がずっと付き添っててくれたのか…?」
皐月「無論だ。…まぁ、ただ付き添っていたのでは暇なのでな。他にもいろいろとしたが…」
流子「…いろいろって、何だ?」
皐月(何をしても起きないから、ブラッシングしたり、勝手に胸囲測ったり、髪結んでみたり、リスニング力向上のために英語のCDを流したり……)
皐月「……姉妹なのだからな」///
流子「しねえよっ…! 姉妹は絶対そんなことしねえよっ!!」
皐月「内容を聞いていないのによくわかったな流子。…しかし、貴様に兄弟の何がわかるというのだ?」
流子「お前には、わかるのか?」
皐月「わからん」
流子「だよなぁ…」
流子「……姉さん」
皐月「なんだ? 流子」
流子「話さなきゃいけないことがある」
皐月「……そんなに改まってどうした? 何でも言え。姉妹なのだからな」
流子「私の中の生命繊維が、教えてくれたんだ…。生命繊維は、生態系の頂点じゃない、上には上が居る、って」
皐月「…流子、それはどういう…?」
流子「私の生命繊維を嗅ぎつけて、地球にとんでもない化け物がやってくるかもしれないんだってさ。その化け物は、生命繊維よりも厄介で、到達した星の生命体を、根こそぎ食べちゃうんだと。……だから、正直言うと、…死のうかと思ってた」
皐月「バカなことをっ――」
流子「今は思っちゃいないよ。…みんなの顔を見て、マコに言われて、気付いたんだ。私が守りたい世界は、みんながバカやって、笑って、安心してお洒落ができる、そんな世界だ。……私が死んだら、皐月は白と黒しか着なくなりそうだしな」
皐月「……」
流子「あのデートの日から、眠る度に、『生命繊維の意志』が私の夢の中に出てきて、私の意識を乗っ取ろうとしてきてた。……あっ、でも、もう大丈夫だぞ! 私の方が二枚も三枚も上手だったからな。あっという間にやっつけたから、もう心配はいらない! 私は、私だ。もう生命繊維に指図はされねぇっ!」
流子「……その化け物は、今から十年後に、地球にやってくるかもしれないんだ。…確率は、たったの3%なんだけど、それでも、きっと準備はしておいた方がいいと思う。だから、皐月。私に協力してくれっ!!」
皐月「……」
流子「……皐月?」
皐月「……そんな大事なことを、なぜもっと早く相談しなかったっ!?」
流子「」びくっ
皐月「…二日間も……一人で抱え込んで…一体、どんな気持ちでっ……!」
流子「……黙ってて、ごめん…」
皐月「……流子のバカっ!」
流子「……」
皐月「大ばか者っ! 単細胞っ! がさつっ!」
流子「それは今関係ねーだろ!?」
皐月「ええい、悪口でも言わねば気が済まんっ! そんなに私は信用が無かったかっ、ああ!?」
流子「――べっつに、そーいうことじゃねえよっ! 察しろよこの太眉がっ!」
皐月「太くないっ!」
流子「鏡見てこいよ! 立派な眉毛が映ってることだろうさ!!」
皐月「ふんっ、貴様のそのメッシュも、何だそれはっ! 中途半端に髪を染めるんじゃないっ!」
流子「……コレ、生まれつき」
皐月「えっ」
流子「……このせいで、昔、遊びに混ぜてもらえなかった……」
皐月「」
皐月「……す、すまなかった。そういえば、そうだったな…」
流子「別に。気にしなくていいよ、太眉への字口」
皐月「……人が下手に出れば……!」ワナワナ
流子「……先に言い出したのはそっちじゃねえか……!」プルプル
がこんっ!
皐月「……よかろう。…五分以内に、相手に何発当てられられるか でケリをつけようではないか…?」木刀チャキッ
流子「上等だぁ…どっちが上かはっきりさせてやろーじゃねえか…」グッ・・・
皐月「…ちなみに、シェルターの破損は減点だ。私も、命は惜しいからな…」
流子「それには異存はねえぜ…皐月様のせいで生き埋めにさせられても嫌だからなぁ…」
皐月「…鬼龍院皐月、参るっ!!!」ダッ
流子「…纏流子、参るっ!!!」ドッ
ガキィイイインンッ!!!
―生徒会室―
犬牟田「!」
伊織「!」
犬牟田「……僕のデータが正しければ、君のその表情…。僕のトランプの数字は…8、といったところかな?」
伊織「そのしたり顔……。僕のトランプの数字は、8より小さい、ということかね…?」
犬牟田「はっはっはっは。教えてあげないよぉ。なんてったって、インディアンポーカーは心理戦と言う名の情報戦だからねぇ。俺が負けるわけにはいかない…」
伊織「…意地でも、勝たせてもらうよ……! 神衣着用時の、流子さんの動画をもらうためにね……!!」
犬牟田「その台詞を、純粋に神衣への情熱だけで言っているのが、君のすごいところだよ…。鮮血の方の動画は、画質大丈夫だった?」
伊織「すばらしかったよ…!……本当に、惜しい服を亡くしたものだ…」
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
伊織「なんだっ!?」
犬牟田「まずいっ! 緊急警報だ、地下のシェルターが破壊された!!」
伊織「そんなっ! ……大変だ、皐月様! 流子さん!」
犬牟田「勝負はお預けだね…。あ、ちなみに、僕のカードはダイヤの6で、君のはハートの10だったから」
伊織「えっ! 知ってたの!? すごい!」
犬牟田(ホントは、伊織、君のマスクに僕のトランプが映っちゃってるんだよね…。ま、教えないけど)
―校庭―
猿投山「ん? なんか、今、振動を感じたような気が……」
ズボッ!
猿投山「うおおおおおおっ!!?」
生徒「きゃぁああ! 地面から手が出てきて、猿投山先輩の足を掴んでるぅ!」
生徒「リアルゾンビだぁあああああああ!」
猿投山「こっ、この野郎、離せぇっ! む、この気配…纏か?」
ぼこんっ!
流子「…ぷはっ! おい、おい、皐月! 目ぇ覚ませ、おいっ!」ぺちぺち
皐月「……はっ! 貴様、流子!! あれほどシェルターを壊すなと言っただろうが」
流子「私じゃねーよ! 鬼龍院皐月さまが壊したんだろーがぁ!!」拳 グッ
蛇崩「皐月ちゃん、危ないっ!」ビュンッ ドロップキックッ!
流子「うおっ!?」
皐月「乃音っ!」
蛇崩「……さぁ、あんたは羅暁おばさま? それとも転校生?」バズーカー チャキッ
流子「わ、私は、纏流子だ!」両手バンザイ
マコ「…………りゅうこちゃぁああああんっ!!!!!」ドピュンッ
ドコッ!
流子「げふっ!」
マコ「流子ちゃんよかったよぉー!」スリスリ
流子「マコ……会いたかった! ありがとな、待っててくれて!!」抱きっ
マコ「わーい! あれ、流子ちゃん土まみれだねっ! まるで地面に埋まってた人みたいだよっ! って、皐月様まで!」
流子「ま、まぁ、実際埋まってたし…」
皐月「留守の間の規律維持、ご苦労だったな。蟇郡」
蟇郡「はっ。身に余るお言葉です!」
犬牟田「…あれ、急いで来たのに。なんか平気そうだね」
流子「……四天王、勢揃いか」
皐月「話すのか、流子」
流子「ああ。そうしなきゃ始まんねーからな」
マコ「ええっ? 何の話? マコにも教えてーっ!!」
流子「……よし、みんな、聞いてくれ。今から話すのは、十年後にやってくる、かもしれない敵についての情報だ。生命繊維の記憶に基づいた、特徴や攻撃手段や弱点だ――」
皐月「それが終わったら、これからの戦いに向けて、作戦会議を行う。……人類の生存のために、私達は、負ける訳にはいかない」
流子「ああ! …人は、服にも蟲にもならねー。人は、人であり続ける!」
蛇崩(話が見えないんだけど…)
マコ「」zzz
流子「……とは言っても、まぁ、確率は3%だからな。一応、何もしとかないと来たとき怖いってだけで、あんまりがっちり準備されてもそれはそれで――」
一同「いいからさっさと話せや!」
第一部 完
―ある可能性の話:残りの97%―
皐月「覚えているか、流子」
流子「ああ。恥ずかしいくらいにはっきりとね、姉さん」
皐月「……結局、来なかったな、蟲」
流子「そうだね。もうあれから二十年たってるしね」
皐月「……よかった、んだよな?」
流子「まぁ、皐月のしてくれた、いろいろな準備は無駄になったし、私も気が付けば三十代後半だ。…これから、どうしようかな」
皐月「……やはり、鬼龍院家は、呪われていたのだな…」
流子「…………」
完
書いてて思ったけどさ、やっぱりこれキルラキルじゃないよね
この先なんてもう原型とどめてない気がするんだけど、3%のほう書いていいんだろうか
続けてもいいのだろうか
よくわからないけど読んでくれた人ありがとう!!!
書いてくれ!いや書いてくださいお願いします
最終回後の話しなんだから、本家キルラキルと違ってるのは当たり前だろうが
ごちゃごちゃ抜かしてないでさっさと二部書けや
書いてくださいお願いします(土下座)
書かなきゃ!
ここまできたんだから!
むしろ書かずにどうする?
書けや下さいお願いします
ひとまず乙
羅暁が10年後とはいったけども、3%と つまり来るかどうか分かってないって事だから
「10年よりもっと早く来る」って事に変更してもいい訳だな。
不正確だったという事で
よ、よし書いてもいいんだな!
ありがとう皆!もうちょっと時間もらうけど必ず書くよ!
>>158
27才の流子ちゃんはさすがに厳しい……ということか?
1としてはアリなんだけどなぁ…
おうふ 誤解させてしまった
むしろ楽しみにしてるでござる
>>37を見て、10年後という扱いが難しいのかな?と思ったんや(杞憂だった)
みんなの期待に添えるかどうかわからないけど、とりあえずこんな感じでどうでしょうか?
ということで再開します。
―11年後―
蟲「キシャァアアア!」
蟲「キシャキシャキシャ・・・」
老人「…とうとう、この場所も嗅ぎつけられたか…」
子供「おじいちゃんっ…」
老人「……怖がることは無い、じいじも一緒じゃ」
ドゴォオンッ!!!
老人「なっ、なんじゃ!?」
子供「おじいちゃん、壁が!」
ガラガラ パラ パラ・・・
女性「…………」
蟲「キシャ?」カサッ・・・
蟲「キシャァアアアアアア!」カサカサカサカサカサカサッ!
女性「……二匹、か……」
老人「あ、あなた! 危ないですぞぉお!」
子供「きゃぁああ!」
女性「……一体、何人喰えば気が済む…」ハサミ チャキッ!
蟲「キシャァアアアア!!!」
ズバァアアンッ!!!
蟲「ギィイ・・・・・・ィ・・・・」ズゥ・・・ン
蟲「キシャァアアキシャァアアアア」カサカサカサカサカサッ!
女性「…喰いすぎて、動きが鈍くなってるな」くるっ チャキッ!
蟲「キシャァアアアアアアアア!!!」
シャキィイイインッ!
女性「……返してもらうぞ、腹ん中の人間、全部!」
蟲「ギィ・・・・・・ギ・・・・・・」ヒク、ヒク・・・
ボボボボカーンッ!
ボトッ ボトッ ボトッ ボトッ
老人「む、蟲の中から、赤い糸が…? その糸が爆発して、中から、人が……!?」
子供「…おじいちゃん、出てきた人、みんな裸だよ!」
女性「……やっぱり、居ないか…」ガチャッ ガー・・・
老人「そ、その、掃除機のようなものは…?」
女性「『生命繊維回収機』。ほっといたら、生命繊維は死ぬだけだからさ。これで吸っておけば、生きたままとっておける」
老人「…せ、セイメイセンイ…? それを、どうするのです…?」
女性「蟲は、生命繊維を追うから。…持っていれば持っているほど、引き寄せられて私のところにやってくる」
老人「ひえええっ…!」
女性「そこの、出てきた人間のこと、頼んだ」スッ
子供「ま、まって! まだ、お礼…。助けてくれて、ありがとう!」
女性「…………」
女性「…私は、自分の付けた火の後始末をしてるだけだ」
子供「えっ?」
女性「ごめんな、坊主。全部私のせいなんだ…」
老人「……あなたは、一体…?」
女性「…じゃぁな」シュタタッ!
―地上:砂漠―
タタタタタッ・・・
女性「……どこに居るんだよ、マコ…!」
― ひと月前―
指令室(地下){ 美木杉愛九郎・鬼龍院皐月・揃・伊織 }
見張り台(地上){ 大暮麻衣子・黄長瀬紬 }
前線(地上){ 纏流子・満艦飾マコ・又郎とその仲間たち・蛇崩乃音(飛び道具班)・犬牟田宝火(情報班)・蟇郡苛(歩兵・戦車・航空軍・元NBの指揮)・猿投山渦と北関東番長連合の仲間たち }
美木杉『十年後ぴったり、とはいかなかったけど…本当に来るとはねぇ』←無線
皐月『まさかと思いつつも、準備をしておいてよかった…。流子、大丈夫か?』
流子「皐月は、自分の心配しなよ。…私は大丈夫だ」カタカタ・・・
美木杉『…緊張、してるのかい…?』ポワー
流子「……あんたはいくつになったら脱ぐのを辞めるんだ…?」
美木杉『裸のヌーディストはね…生涯現役だよ…』ポワー
黄長瀬『ほかの奴らは服を着てる。中年にもなって半裸なのは、美木杉、お前だけだ』
犬牟田「――これが、衛星が撮った蟲の映像。確認いい?」
流子「ああ。…ん?」
皐月『どうした、流子』
流子「…なんか、色が違うなと思って」
美木杉『色?』ポワー
流子「私の記憶の中の蟲は、黒っぽい赤だったけど、こいつらは、白い色をしてる。まぁ、記憶の奴よりちょっと小さいし、形は同じだから大丈夫だと思う…」
美木杉『まさか、色によって種類や習性が違う、なんてことは無いだろうね…?』
流子「…色だけじゃ、そんな変わんないと思う。…それに、まだ、飛んできてるのはたったの五匹だけだ。私一人でも、瞬殺できるくらいの数しか来てないから、平気じゃないかな…?」
皐月『流子、くれぐれも無理はするなよ』
流子「ああ。そっちこそ、無理すんなよ。…指令室になんか居ないで、避難してた方がいいんじゃないか? 姉さん一人の身体じゃないんだから」
皐月『わかっているさ。だが、そんなに気を遣わなくてもいい。意外と、平気なのでな』
美木杉『それにしても、とんでもない時期に、とんでもないことになっちゃったねぇ、皐月様は…』ポワー
皐月『すまん…。言われていた十年がたったからと、つい油断してしまった…』
蛇崩「大丈夫よ。私たちがいるもの。皐月ちゃんに手出しはさせないわぁ」
流子「そうそう。むしろ、そういう希望があったほうが、やる気になるってもんさ」
マコ「流子ちゃんには、マコが付いてるから大丈夫ですよ、皐月様っ!」
流子「マコ、お前も避難したほうが…」
マコ「もーう、知ってるくせに! ちびのことなら大丈夫! 私は、流子ちゃんの側に居るよ!」
又郎「姉ちゃんトコのちびは、父ちゃんと母ちゃんと一緒に避難済みだぁ! 姉ちゃんには、この電光石火の又郎さまが付いてんだ、平気だぜ、流子の姉御!」
流子「でもなぁ…」
犬牟田「あれ? 纏流子の記憶によるデータよりも、この蟲の速度が速い」
蟇郡「そうだぞ、マコ。お前は母親なんだから、せめて地下に――」
マコ「あーら、蟇郡さん。お久しぶりですね!」
流子「おいおい、お前らまだ喧嘩してたのか?」
マコ「……入隊したいって言い出して、行ったら離婚だって脅したのに、勝手に書類送っちゃったんだよ!? そりゃもう、三行半叩きつけるしかないじゃないの、ねー流子ちゃん!」
流子「いや、私にふられても…ていうか、今はそんなこと言ってる場合じゃないって」
皐月『美木杉さん、駆虫砲の準備は整っていますか?』
美木杉『ばっちりだよ。いつでも撃てる』ポワー
蟇郡「――総員、配置につけぇええ!!」
ザザザザンッ! ビシィッ!
黄長瀬『――蟲が見えてきたぞ! トラップ、始動するか?』
大暮『まだですっ! まだ、…もう少しひきつけてから!』
犬牟田「あと三分で地表に到着するよ!」
流子「……さぁ、いつでも来い…!」カタカタカタ・・・
猿投山「…纏、怯えているのか」
流子「…はっ、武者震いだよ」カタカタ
猿投山「安心して、背中は任せろ。…お前を倒すのはこの俺だからなっ! あんな蟲なんかに倒させねぇ!」
流子「お前、まだ言ってんのかよそれ…」クスッ //
犬牟田「…あと一分、…三十秒、…十秒っ!」
大暮『今ですっ!!!』
黄長瀬『うおりゃぁああっ!』ポチポチポチポチッ!
どぉおおんっ!!!
大暮『よしっ! 作戦成功、対虚維蛾用蟲捕り網に引っ掛かりました!』
「キシャァアアア」「キシャァアアア」「キシャァアア」「キシャッキシャッ」「キシャァアキシャァア」
美木杉『う、こいつは…。思ってたよりキモイね。皐月様、大画面で見ていても平気ですか?』
皐月『む? 何か問題が?』
美木杉(……こういうの、平気な方なのね)
大暮『おーっほっほっほぉ、間抜けな虫けらどもめぇ! このおーぐれ麻衣子さまのトラップに、引っかからないモノなどこの宇宙に存在しないのよぉお!!!』
黄長瀬『おい、あの網の耐久性大丈夫か? まさかお前予算ケチったんじゃ――』
蟲「キシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
ばちっ ムシッ ぶちっぐしゃっ!!
大暮『バカなっ! 網を食い破って……!』
流子「……私も出るぞ、皐月っ!!」ダッ
皐月『わかった。気を付けて!』
蟲「キシャァアア」
蟲「キシャァア」
蟲「キシャァアアア」ガッ
流子「…へっ。やっぱり、私を追ってくるよなぁ…!」ヒョイッ
蟲「キシャキシャキシャァア」カサッ
蟲「キシャァアアア」カサカサ
蟲「キシャァアアア」カサカサカサカサッ
流子「…記憶のよりかは、速いみたいだが、所詮は蟲だぁ。スキさえつくれりゃ、」ヒョイヒョイヒョイ
流子「おらぁっ!!」ハサミ くるくるっ
ズバッ ヒュンッ ガキンッ!
蟲「キシャァアッ」カサカサカサカサカサカサカサカサ
流子「――!?」ビクッ
蟲「キシャキシャキシャ」カサカサッ
流子「このっ、」チャキッ
ズバァッ!
蟲「キシャァアアアア!」
流子「うわっ、…!?」ガキンッ
流子(へ、変だな…。普通、攻撃を喰らったら、動きが止まったり、無意識に逃げようとしたりするはずなのに…)クルッ ジャキッ!
流子「うらぁっ!」
ドコッ!
蟲「キシャァアアアア」カサカサカサ
流子「――はぁあっ!」
バキィインッ!!
蟲「キシャキシャキシャァア」カサカサカサカサ
流子(……まただっ。自分が斬られてもお構いなしで突っ込んできやがる…!)ガキンッ
流子「うおおお!」
ズバッ!
蟲「キシャッキシャッキシャ」カサカサカサッ ガチンッ
流子(こ、こいつら…なんで怯まない!?)
蟲「キシャァアアアッ」カサカサカサッ!
チッ―――!
流子「……ひっ!!?」
猿投山「纏っ!」ダッ
蛇崩「飛び道具班、用意っ! 撃て撃て撃ってぇえー!!」
ドンッ!ドカンッ!ドォオン!
犬牟田「―― 全発命中!」
美木杉『これぐらいで、倒せれば楽なんだけどね…』白衣 スルスル・・・
皐月(流子……!)ギュッ
蟲「キシャァアアアアアアア」グオッ
蛇崩「……嘘でしょっ!? 全然効いてない…!」
犬牟田「いやっ、ダメージは負っている!」
蛇崩「じゃぁ何で動きが鈍らないのよ! それどころか、砲撃したこっちを無視して妹ちゃんにばっかり――」
犬牟田「おそらく、彼らの中で、自身の損傷を防ぐことよりも、纏流子の体内の生命繊維を取り込むことの方が優先順位が大きいんだろうね」
美木杉『……攻撃しても、逃げないのか!? くそっ、想定外だ!』脱ぎっ
伊織(なぜ脱ぐんだッ!?)
皐月(流子が押されているようだが…だいじょうぶ、なのか…!?)ハラハラ
蟲「キシャキシャァアアア」カサカサッ
流子「…はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」フラッ・・・
蟲「キシャァアア」カサ・・・
蟲「ギシャァアアアア」カサカサッ!
流子「――うおおおおっ!」ジャキッ、
ヒュッ―― ガキィインッ!
流子(忘れてた…! こいつら、私を食えなきゃ死ぬから…それこそ、文字通り死ぬ気で襲ってきてやがるんだ…!!)ギリッ・・・
犬牟田「まずいね…! このままじゃ、纏流子が負ける」カチャカチャカチャッ!
蛇崩「はい、今! そこ! もういっちょっ!!」
ドカンッ ドンッ ダーンッ! バーンッ!
蟇郡「航空部隊、爆弾投下ぁああ!!」
ヒューン ヒューン ヒューン
ボカァンッ! ボンッ! バコォンッ!
猿投山「……俺を無視してんじゃねぇよっ!! 突きィイイイ!!」ズブッ!
蟲「キシャァアアアアアア」ガサカサカサカサ
猿投山「面、胴、小手ぇ! 面、胴、小手ェ!面胴小手面胴小手ェえええ!!!」ドドドドンッ!!
蟲「キシャキシャキシャ」ガサカサッ
蟲「キシャァアアアアアアアアア!」ガサカサカサ ガブッ!
流子「……このっ、……やぁっ!」
ズバッ シャキッ、バチィインッ!
蟲「キシャァアアアア!」カサカサ
蟲「キシャァアキシャァアア!!」
がぶっ!
流子「……うわっ!?」ビシュッ
キンッ ザクッ
蟲「キシャァアアアアアア」カサカサッ ガリッ
流子「…………ぐっ!」ヒュンッ ズバァッ
蟲「キシャキシャキシャキシャ」カサカサカサ・・・
流子(…こ、このままじゃ……!)ジリッ・・・
蟲「キシャァアアアアアアアアアアアアアア」カサカサカサ ガチンッ
蛇崩「…いい加減、こっちに注意を向けなさいよぉっ!」ドドドドカンッ!
蟇郡「戦車部隊、歩兵部隊、航空部隊、進めぇええええ!!!」
ダッダダダダダッダダダダダ♪
蟇郡「撃てぇえええええ!!!!」
ダダッダッドンッドンッヒュゥウウーンドカァアアンッ!!!
美木杉『全力で、蟲の注意を流子くんから逸らせ! 一対一ならばまだしも、囲まれている今のままでは、どうしようもないぞ!』 脱ぎっ!
大暮『最初っからそのつもりよぉお!!! 奥の手発進!!』
黄長瀬『うおおおおお』ポチポチポチッ!
大暮『…からの、駆虫砲発射ぁあ!』
美木杉『了解!』ポチッ!
ドドドドドォオオオンッ!!!
蟲「キシャアアアアアア・・・・・・」ドサッ・・・
蛇崩「一匹倒れた!」
蟲「ギッ・・・・・・・・・・・・」
皐月『鳴こうとしている…? ――仲間を呼ぶ気かっ!? 美木杉さ』
蟲「ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
蟲「ギシャァアアアアアアア」
流子「…はぁっ…はっ…はぁっ…げほっ…」ヨロ・・・
犬牟田「皐月様、三十体の蟲の地表到達を確認。後続の約五十体が、大気圏に突入しています!」カチャカチャッ!
伊織『赤い蟲から、生命繊維の反応が! 白い蟲の方からは、反応がありません!』
美木杉『気を付けろ! 赤い蟲は、生命繊維をすでに取り込んでいる。奴らの狙いは、生命体の捕食だ!』最後の一枚 脱ぎぃっ!!
マコ「流子ちゃんっ!」ダッ
蛇崩「妹ちゃんにたかってんじゃないわよ、この虫けらどもがぁあ!」ドドドドッッカーン!
蟲「ギィイイ・・・・・」バタッ・・・
蟇郡「全隊、離れろぉおお! 蟲に近づくなぁああ! ぬおおおおおおお!!!」グッ
バキッ ドコッ ベコッ!
蟲「ギィイイィ………」ゴロンッ・・・
犬牟田「…なるほどね、最初は白、生命繊維を取り込むと赤、生命体まで丸呑みすれば、黒くなるって訳か…」カチャカチャカ・・・
蟲「キシャァアアアアキシャァアア」カサカサッ
犬牟田「……おおっと、これは…。回避不能、だね」
蟲「キシャァアアアアア!」ばくんっ
又郎「このヤロッ、おりゃっ!」ガンッ
蟲「キシャァアアア!」
連合員「ぎゃぁああ…っ」
蟲「キシャキシャキシャ」ぱくんっ
猿投山「お前ら、蟲に近寄るんじゃねぇ! くそ・・・っ!」ヒュッ ズバッ!
蟲「キシャァアアアア」
連合員「…元番長連合の意地見せたらぁあああ!!!」
蟲「キシャキシャキシャァア」ゴクンッ
猿投山「……バカやろっ、」
蟲「キシャァアアアアア!!!」
猿投山「……面っ、胴っ、小手ぇええ!!」メンドウコテッ!
蟲「キシャキシャキシャ・・・」
蟲「キシャァアアア」
蟲「キシャァアアア」
蟲「キシャァアア」
蟲「キシャッキシャッ」
蟲「キシャァアキシャァア」
流子「………なんで……っ!!!」ジリッ・・・
「キシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
――それからたったひと月で、蟲は地球の表面にいる動物を食べつくし、わずかに残った人類は地下へと避難した…
―現在 地下:34番街―
薔薇蔵「ま、待て、ちびっ! 行くなって、行っちゃだめだってば!」
ちび「……」ノソノソッ
薔薇蔵「こ、のやろっ、排気口に潜り込みやがって……! 待てったら!」ゴッ
ちび「……」ちらっ
薔薇蔵「や、やべっ! つっかえた…! お、おいちび! 外に出るんじゃない、ちびぃ!」
ちび「……」ノソノソ
―地上:砂漠―
がこんっ、パカッ ノソノソ・・・
ちび「……」じーっ
蟲「キシャァアアアア?」
ちび「……返して」
蟲「キシャッ」ガサガサガサ
ちび「……おかあさん返してよっ!」木の棒 ブンッ、カランッ
蟲「キシャァアアアア!」ガサガサガサッ
ちび「ちびのおかあさん、返し」
女性「危ないっ! 伏せろっ!」だっ
ちび「てったらぁ! おかあさんかえ」
女性「おい。伏せろって」
ちび「して、おかあさんかえ」
女性「――だぁから、伏せろっての!」ぐいっ
ちび「してぇー!」ドテッ
女性「このっ、」銃 ガシャンッ
バンッ バンッ バンッ!
蟲「キシャァアァ」ギーギー
女性「…これだけ体色が黒いってことは、この蟲、相当 人を喰ってるな…」
ちび「……?」ポケッ
女性「お前、ここ動くなよ!」タタタッ
ジャキンッ!
女性「うおらぁあああっ!!!」ズババババァンッ
どっかぁああんっ!
ボトッ ボトッ ボトッ ボトッ!
女性「……よかった、飲み込まれてた奴も、まだ息はあるみたいだ…」ハサミ カシャカシャンッ
女性「ひい、ふう、みい…。十三人、か…。…あいつらは、やっぱり居ない、か」生命繊維回収機 ガーッ
メガホン スチャッ
女性『起きろー!!!』ガーッ!
人「……ん」
人「あ、あれ? 生きてる…」
人「…むにゃ」
人「……ここどこだ?」
人「…やべぇ俺裸だっ!!」
女性「おい、お前。そこの、体力有りそうな奴」
人「え、俺?」
女性「ここに一番近い入口の場所、書いといてやるから。…歩いて五分くらいかな。こいつら連れてそこ行け。保護してもらえるから」サラサラッ
人「え? え? え? 俺、配達してただけなのに…何これ、どっきり?」
女性「ああ、そうだよ。テレビカメラで全国放送。無事に誘導できたらあんたはヒーローだ。じゃ、よろしく」ペラッ
人「いや、そういうの別にいいんすけど…。……ところで、貴女、付き合っている人は居らっしゃいますか?」
女性「居ないね。作る気も無い。…ほれ、さっさと私から、というか、この場から離れな! 急がないとまた喰われるぞ!」
人「…わかりました。放送事故にならんよう頑張るっす。――えーと、みなさん、とりあえず二列に並んで……」
女性「ふぅ…行ったか」
ちび「ふぅ…」←真似してる
女性「……おい、何でここに居るんだ。さっきの奴らと帰らなかったのか?」
ちび「?」キョトンッ
女性「あー、もうどうすんだよ! 一人で返すわけにもいかねェし…かといって私と居てもそれはそれで危ないし…。…ん? あれ、お前どっかで…」じぃっ
ちび「はいっ、質問させてください!」
女性「? いいよ」
ちび「おばさん、いくつですか…?」キラキラ
女性「おっ、おばっ…!? っていうか、それが最初にする質問かっ!?」
ちび「?」
女性「ところで、お前の母さん、あの中に居たか?」
ちび「」首ふるふる
女性「…そうか。あれ、もしかして、っていうか、もしかしなくてもお前…」
ちび「?」
女性「ちびちゃんかっ!? マコんとこの?」
ちび「人に名前を聞く時は、まず自分から」
女性「えっ。あ、そ、そうだな。私の名前は――」
ちび「私は、蟇郡になって、満艦飾になった、あだ名はちびです。あなたのお名前は?」
女性「!?……?……? あ、ああ。わ、私は、纏流子だ」
ちび「じゃぁ、あなたが噂の流子ちゃんっ!」ピョンッ
流子「噂の?」
ちび「おかあさんが、一日中話してくれました! あなた、おかあさんの大大大親友で、強くて、かっこよくて、かわいくて、露出狂で、いっつも服に名前付けて話しかけてた、流子ちゃんですねっ!」
流子「は、ははは…。ま、まぁ、そうだな…。一年くらい前にも、会ってるんだけどな、覚えてねえか。小っちゃかったもんな…」
流子「いやぁ、それにしても、大きくなったなぁ…。いくつになったんだ?」
ちび「流子ちゃんは、おいくつですか?」
流子「……お前の年に、21足してみろ…」
ちび「28才ですか! お若いですね!」
流子「は、ははははは…。ま、まぁ、な…」ピキッッ
流子「って、こんなこと話してる場合じゃない。ちびちゃん、何だってこんな所に居るんだ!? 危ないから、早く地下に戻りな!」
ちび「いやです!」
流子「どうして?」
ちび「ちびはおかあさん探さなきゃ!」
流子「……」
ちび「前からそうだもん! 買い物でも、遊園地でも、ちびのおかあさんすぐ迷子になる! いっつも、ちびが見つけてあげるんだよ。おかあさん、美味しそうなモノ見つけるとそっちに夢中になっちゃうから、ちびが引っ張って連れてってあげなきゃおかあさんどこにも行けないんだよ! だから、ちびがちゃんと見つけてあげなきゃ」
ぽすっ ナデナデ・・・
ちび「…流子ちゃん?」
ちび(なんでちびの頭撫でるの?)
流子「……ごめんな…」
ちび「…ふにゃ…」
ちび(流子ちゃんの手あったかいなぁ…)
流子「お前のおかあさんが居なくなったの、私のせいなんだ。…でも、大丈夫だから。私が、絶対に探し出すからさ。安心して」
ちび「…にゃぁ…」
ちび(撫でられている…撫でられている…)
流子「……っ!!」
ちび(? …止めちゃうの?)
流子「まずい! 蟲が……。こっちにひきつけないと…!」ダッ
ちび「ちび、どうしよう?」
流子「あ、そうだったな…。えーと、生命繊維回収機は腹んとこに持ってきて、と。…これでよし、ほら、おんぶ」
ちび「♪」ぴょこんっ!
流子(くっ、かわいいじゃねえか)//
今日はここまで。今日っていうか書き溜めた分尽きたんで次はいつになるかわからないです
オチは決まってるんだけどね
読んでくれた人、応援してくれた人ありがとう!!!
乙ー
今回も面白かった
おつ!
ちびかわいすぎ!
さつきさまの相手だれやw
続き待ってます!
≫179と≫180の間に一個抜けてました。
無くても全然大丈夫だけど一応上げとく。
流子(か、かすった…!)ドクッドクッ
蟲「キシャァアア」カサカサ・・・
蟲「キシャァアアアアアア」カサ・・・
流子(な、何だコレ!? 鮮血と…頭の中で、戦った奴らと、同じのはず…なのに…っ!)鋏チャキッ
では、再開します。
―地下:研究施設:会議室―
皐月「蟇郡は、今日も見張か?」
蛇崩「ええ。『マコは俺が見つけ出す』って、毎日見張ってるわ…」
皐月「そうか。…せめてアレが完成してくれれば、もっと大規模に捜索できるのだが…」
美木杉「あれからもうひと月。流子くんも、まだ見つからないしね」
皐月「こちらも、全ての地域の状況を把握できている訳ではないからな。流子が地下に居ないとしたら、なおさらだ」
蛇崩「…ねぇ、こう言っちゃ何だけど、妹ちゃんはやっぱりあの時、蟲に飲み込まれちゃったんじゃ――」
大暮「逆に、そうじゃなかったら、どうだっていうのよ? 生きてるのなら、連絡くらい取ろうとするでしょ。ここの場所も、纏流子は知ってるんだし」
皐月「いや、地下に来れば蟲を引き寄せることになるし、無線も途中で壊れていたのだとしたら、連絡を取らないとしてもそこまで不思議はないが……」
黄長瀬「…普通は、喰われてると思うよな」
蛇崩「でも、妹ちゃんはそう簡単には死なないわよ。メガネだって食べられてたし…」
犬牟田「俺の場合は、回避不能とわかり、あえてミシンガンを持って飲み込まれたから、中で乱射して倒せたんだ。纏流子の場合は、体内に生命繊維の無い蟲が相手だったからね。対処できたかはわからない」カチャカチャ
黄長瀬「…あれだけ飢えてたんだ。丸呑みにしてくれたかどうかも怪しいだろ」
猿投山「はっ。蟲の姿を見ただけで逃げ出した奴に、何がわかるっていうんだ?」
黄長瀬「…俺は逃げてない」
大暮「緊急脱出したとき、アタシと同じ部屋に居たからね。結果的には、逃げてるでしょ」
美木杉「黄長瀬が、『俺たちを狙ってないか?』と言っただけで、脱出ボタンを押してたもんねぇ君は」
大暮「だって勝ち目なかったじゃない。纏流子だってほとんど役に立ってなかったし。あの場に居て、蟲のご飯になるなんてごめんだわ」
猿投山「なんだとっ――」
犬牟田「確かに、言い方は悪いが言っていることは的確だ。ああなれば、逃げた方が相手の養分にならずに済むし、こちらの戦力も減らさずに済む。纏流子の怯え方は普通じゃなかった。彼女が全力を出せなかったことで、作戦がうまく行かなかった部分もある」カチャカチャ
皐月「……もっとちゃんと、流子のことを見ていてやればよかったな…」
猿投山「…………」
扉 ガーッ
伊織「皐月様、まだ試作品の段階ですが、例の物ができあがりました」
皐月「ご苦労だった。極制服の方は、どうだ」
伊織「前回の戦いで得られた生命繊維では、三ツ星極制服ですと一着分しか…」
皐月「……ならば、蟇郡の分を作れ。試作品と共に、今回の駆除の際に持たせよう」
猿投山「皐月様、なぜ!」
皐月「蟇郡は、妻を蟲に喰われている。だが、そのせいで冷静さを失うこともない。『試作品の効果を試し、生命繊維を回収しろ』と命じて、それだけをして戻ってきてくれるのは、強靭な精神力を持つ蟇郡だけだ」
伊織「わかりました。今日中には完成させます」
皐月「頼んだぞ、伊織」
扉 ガーッ
犬牟田「…あれ、満艦飾薔薇蔵から連絡が。またちびちゃんは外に出ちゃったみたいだね…」カチャカチャ
美木杉「あー、またか…。蟲に遭遇してなきゃいいんだけどねぇ」スルスル・・・ポワー
蛇崩「…脱いでんじゃないわよ変態」
犬牟田「そんなこともあろうかと、ちびちゃんにカメラと盗聴器と発信機を付けておいてもらった。これで居場所も、かりに飲み込まれたとしても、飲み込んだ蟲も特定できる」カチャカチャ
皐月「…映像は、出せるか?」
犬牟田「……! おっと、これは……」カチャッ・・・!
大暮「食べられちゃってた?」
犬牟田「いや…。とりあえず、見てくれればわかると思う」カチャカチャ!
映像パッ
皐月「流子っ!?」
猿投山「纏! 生きていたか!!」
犬牟田「ちょっと静かにしてて。音量上げるよ」カチャカチャ・・・
『ここで止まるの?』
『ここまで近づけば、私の方にやってくるから…』ギュッ・・・
『流子ちゃん、どうしたの?』
『大丈夫だ、やればできるやればできる…羅暁に比べればマシ…!』ブツブツ
『流子ちゃん、怖いの?』
『こ、怖くないよ! 大丈夫、怖くない…やればできる…気合いだ、気合で…』
『流子ちゃん、来たよ! 蟲、見えたよ!』
『うひゃぁっ!! …っと、だ、大丈夫だ。しっかり捕まってろよ! 』
『うん!』
『――たぁああっ!』だんっ!
『わぁーーー』ひゅーん
皐月「よかった…無事だったか、流子…。よかった……」ホッ
蛇崩「もう、生きてるんなら連絡くらい寄こしなさいよ!」
美木杉「…ていうか、ちびちゃん、流子くんの背中から落ちちゃってるけど…」
『うおっ!?』
『…握力が、足りなかったのー』ひゅーん
『そういう事は早く言えっての!!』キャッチ!
――がしゃんっ!
ブツッ! ザー……
黄長瀬「…おい、画像が消えたぞ。どうした?」
犬牟田「さっきの、受け止めた時の衝撃でカメラと盗聴器が壊れたみたいだね…」カチャカチャ
皐月「だが、まだ発信機は生きている。ちびちゃんも、流子と一緒ならば大丈夫だろう。予定通り、極制服の完成を待ってから、蟇郡に迎えに行かせればよい」
大暮「お言葉ですが皐月様、纏流子を施設内に入れれば、引き寄せられる蟲が増えるのでは? いくら、極制服を作るために、すでに生命繊維を入れているとはいえ…」
皐月「む…」
犬牟田「じゃ、とりあえず位置だけ特定しておくよ…」カチャカチャ
黄長瀬「生命繊維の回収機を持っていたな…。道頓堀のNB基地跡から持っていったのか?」
美木杉「あの蟲から逃れていたとはね…さすがだよ」ポワァー
蛇崩「……中年にもなって光ってんじゃないわよ、変態」
―砂漠―
流子「あ、あれ? なんか、胸のブローチ壊しちゃったみたいだな…。ごめん」
ちび「いいよ。おじいちゃんが無理やりちびにくっつけたヤツだから、ちび要らなかったの」
流子「そ、そうか。ならよかった!」
蟲「キシャァアアアア!」カサカサッ
ちび「蟲きたぁ!」
流子「……!」(いやぁあああ来るな来るな来るなぁあああ!!)ダダダダッ
ちび「逃げちゃうの? 流子ちゃん、さっきはかっこよく倒してたのに」
流子「さっきのは、黒かったから倒せたの! 赤いのは無理なんだ。倒してもあんま意味ないし」ダッシュ
ちび「そうなの?」
流子「そうだよ!」ダッシュ
ちび「怖くないよ流子ちゃん! 流子ちゃんには、ちびがついてるよ!」
流子「ありがと。…怖くないけどな!」ダッシュ
ちび「流子ちゃん、白いのは」
流子「! そ、それは、もっと無理…」ビクッ
ちび「流子ちゃん、白いのが赤いの食べてる!」
流子「共食いしてるうちに逃げるぞ! もう五分はたったから」ダッシュ
ちび「そうなの?」
流子「そうだよ!」ダッシュ
ちび「どこに逃げるの?」
流子「走って走って、着いたところ」ダッシュ
ちび「今までも?」
流子「ああそうだよ」ダッシュ
ちび「これからも?」
流子「…ああ」ダッシュ
ちび「風の向くまま、気の向くまま?」
流子「……そうだなぁ」ダッシュ
ちび「ちび、そういうの好き。かっこいい」
流子「憧れるようなもんじゃないよ。私は、根無し草だから。流されるしかないんだよ」ダッシュ
ちび「根っこは、もとからあるものじゃないよ。生えるものだよ!」
流子「……そう、だな…。そうかもしれないな」ダッシュ
…ぴた
ちび「どうしたの?」
流子「もう、撒けたみたいだ。怖くなくなった」
ちび「虫がちかいと、怖いんだね」
流子「正直言っちゃうと、そうなんだよなぁ。ちびだってそうだろ?」
ちび「ちび、怖くないよ」
流子「お?」
ちび「だって流子ちゃんが居るもん」
流子「……うん。私が居れば、ちびは大丈夫だよ」なでなで
ちび「えへへ……」
流子「さて、私はお前を送ってかなきゃならないんだが…」
ちび「ちび、流子ちゃんとおかあさん探したい」
流子「だめ」
ちび「えー!」
流子「私は、地下の入口にはできるだけ近づきたくないんだ。地下は通路で全部繋がっちゃってて、そこに蟲を呼び寄せてしまうと大変なことになっちゃうから。だから、近くまで一緒に行って、後は一人で行ってもらわなきゃならないんだけど…できる?」
ちび「一緒じゃなきゃ、やだ!」
流子「うーん…そろそろ、日も暮れるしなぁ…」
ちび「日が暮れると、どうなるの?」
流子「蟲はさ、昼も夜も関係なく動くから…。あいつら、目も耳も鼻も利かないんだけど、獲物の動きを感知して襲ってくるんだ。だから、暗いところでものがよく見えないこっちにとっては、不利なんだ。赤い奴と黒い奴は、体内の生命繊維が光ってくれるんだけど、白い奴は暗いと本当に見えない」
ちび「いつもは、どうしてるの?」
流子「じっとしていた方が見つかりにくいから、あいつらの嫌いな火を焚いて、その周りで寝てる。蟲が近づいてきたら怖くなって目が覚めるから、そしたら、逃げたり、倒せそうなら倒したりする」
ちび「ちびも、それやりたい」キラキラ
流子「そんなに楽しいもんじゃないぞ? トカゲくらいしか食べるものないし」
ちび「ちび、もっとすごいもの食べてるもん」
流子「そ、そういや満艦飾家の娘だったな、お前は…」
ちび「お泊まりしたいお泊まりしたいお泊まりしたいよー!!!」じたばた
流子「わ、わかったよもう…いいよ、今日は泊まって、明日は帰れよ」
ちび「わーいわーい!」
流子(教育上、良くないんだろうなぁこういうの…。ごめんな! マコ)
―夜―
焚火パチパチ・・・
ちび「ちび、暇……」
流子「だから言ったのに…」
ちび「せっかく火があるのに、踊っちゃダメなんて…」
流子「動きを察知するって言ったろ? 踊りなんかしたら、見つかっちゃうかもしれない。ただでさえ、私と一緒なんだから…」
ちび「楽しいのになぁ……」
流子「……」
ちび「……」
パチ、パチパチ・・・
流子「……暇ならさ、昔話、してあげよっか?」
ちび「うん! してして! どんな!?」キラキラ
流子「大きなハサミを持った、娘の話」
ちび「流子ちゃんみたいな?」
流子「うん」
ちび「聞きたい!」
流子「じゃ、話すよ。
―――昔さ、十年以上昔…。父親を殺された娘が、その真相を知るために、本能寺学園っていう学園にやってきたんだ。そこに手掛かりがあると思った娘は、学園で暴れに暴れて、ついに真相に辿りついた。…でも、その娘はね、父親に言われていたんだ。『犯人を追えば、お前には過酷な運命が待つ。平穏な人生が送りたかったら、黙って去れ』ってね。結局、娘は父親からハサミを受け取って、代わりに戦うことにしたんだけど、その先に待っていたのは、父親の言っていた通りの、いや、それ以上にショックなことだった。…娘の父親を殺したのはね、殺しても死なないような、とんでもない化け物だったんだ。そして、その化け物は、娘に、娘自身もまた、同じような化け物だと、教えてくれたんだよ」
ちび「うん、それで!?」
流子「娘はね、それを知ってショックを受けたけど、最後には受け入れた。助けてくれる、家族や友達が娘には居たから、受け入れることができたんだ。そして、学園中の、外のみんなも巻き込んで、よくわからないいろんなモノに助けられて、守ってもらって、ついにその化け物を倒したんだ」
ちび「あっさりだねぇ」
流子「まぁ、省略してるから…。娘は、その後しばらく、幸せだった。普通の、幸せな生活を手に入れて、普通に学校に通って、普通に卒業して、普通に就職して、普通に暮らしていた。でも、今からちょうどひと月前に、地球に蟲がやってきたんだ」
ちび「今の、地球みたい」
流子「そうさ。この星のお話だもの。――娘は、蟲が来ることをそのずっと前から知っていた。だって、その原因は娘だったから。娘は、蟲を呼び寄せてしまう体質だったんだ。もちろん、知っていて何もしなかった訳じゃなかった。娘なりに、今度は化け物の自分が周りの皆を守れるように、準備をしていたつもりだった…」
ちび「つもり?」
流子「いざ蟲がやってきたとき、娘は気づいたんだ。自分がとんでもない思い違いをしていたことにね。認識が甘かったんだ。前みたいに、ただ突っ込んでいけば、それで何とかなると思っていた。でも、そう何度もうまくはいかない。娘が今まで相手にしていて、勝てると思い込んでいたのは、満腹で動きの鈍くなった、色の黒い蟲の記憶だった。娘は、空腹で、攻撃しても全く怯まずに、ただ自分だけを狙って死に物狂いで突っ込んできた白い蟲に、全く歯が立たなかったんだ。…いや、娘は、立てようともしなかったな。娘の本能が、…ううん、違う。娘の弱さが、娘の身体を動かしてくれなかった。後からやってきた赤い蟲が、みんなを飲み込んでいっているのに、娘は自分の身を守ることしかできなかった」
ちび「……?」
流子「……最後にはね、逃げたんだよ、娘は。自分可愛さに、その場から逃げたんだ。――我に返って、その場所に娘が戻った頃には、何も残っちゃいなかった。誰かは生き残ってくれているかもしれない、とも思ったけど、確かめたくても、娘がみんなが居そうな場所に近づいたら、蟲をそこに呼ぶことになってしまう。それに、一番の親友が食べられてしまうところを、娘は見てしまっていたから。だから、娘は一人で親友を探すことにした。……それから、娘は、ずっと黒い蟲を倒し続けているんだ。赤い蟲は、人を食べれば食べるほど黒くなっていくから。全部倒せば、みんながエネルギーを吸い取られて死んでしまう前に、助け出せるかもしれないと思ったから、斬って、斬って、斬りまくった。でも、いまだに、自分を守ってくれた誰一人、見つけられてないんだ」
ちび「…そうなの?」
流子「そうだよ。…だからね、ちびは、かっこいいって言ってくれるけどね、そんな綺麗なもんじゃないんだ。私のしていることは、自分が付けてしまった火の大きさに驚いて、ザルですくった水をぶっかけ続けているのと、同じようなもんなんだよ…」
ちび「?」
流子「ちょっと、難しかったかな?」
ちび「うん」
流子「あはは…」
ちび「王子様は出てこないね」
流子「うーん……出てきたよ」
ちび「いつ?」
流子「ずっと前から。でも、一緒にはなれない」
ちび「なんで?」
流子「娘の方が、王子様より強かったから」
ちび「別にいいじゃん」
流子「そういう約束をしちゃったのさ」
ちび「変なのぉ……」
流子「―――!」ピクッ
ちび「流子ちゃん?」
流子「しっ! 静かに……!」
カサカサカサ・・・ カサッ・・・
流子(三匹か…。どれも、動きが鈍いし、大きい…)
流子「――じっとしてろよ。ちょっと、行って倒してくる」チャキッ
ちび「流子ちゃ」
流子「じっとしてれば、見つからないから」ニコッ
タタタタッーーー
ちび「…………」
流子「……」ザッ
蟲「キシャ?」
流子「はぁあああっ!!」
くるっ チャキッ!
ズバァアンッ!
蟲「ギィイ・・・・・・ィ・・・」ズーン・・・
ボッカーン ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ!
人「」ドサッ
人「」ドサッ
流子「!」
人「……う…」
流子「こ、こいつら、もしかして、あの時飲まれたNBの奴じゃないか…!?」
蟲「キシャァアアアア!」グワッ
流子「――ってことは、もしかしてマコも近くに!?」クルッ・・・
ちび「うわぁああーん食べられちゃうよぉ流子ちゃん助けてぇえええ!!!」キャー
蟲「キシャァアア」ウネウネ
流子「ちび!? じっとしてろっつったろ!!?」
ちび「だ、だって気になっちゃったんだもん……はふぅ…!」ギュー
流子「触手で捕まえられちまってる…! ま、待ってろ今助けるから!」チャキンッ
ちび「ふ、ふぇえ……!」ギューギュー
ちび「……りゅ、 流子ちゃん…ちび、ちょっと気持ちいいかも……ふにゃ」///
流子「とんでもねーとこ遺伝してんじゃねェよ!!!」ずばぁあん!
流子(…やべっ! 浅すぎた! もっと深く切り込まないと!)
ちび「流子ちゃんありがとうー!!!」←流子にぎゅー
流子「はっ、離れろちび! 早く攻撃しないと」
蟲「ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
ちび「耳痛いー!」キャー
流子「やられた…っ! 逃げるぞちび!!」抱えてダッシュ
ちび「♪」
―五分後―
流子「………っ!」ザッ!
ちび「流子ちゃん?」
流子(まずい…前からも来る!)チャキッ
ちび「流子ちゃん、蟲来てるよ! 追いつかれちゃうよ!」
流子(前から、速いのが五匹…。後ろから、遅いのが二匹と速いのが八匹…。私だけでも、逃げ切れるかどうか…!)
ちび「流子ちゃん!」
流子「ちび、よく聞いて。あっちの方にまっすぐ、ひたすらまっすぐ行くと、NBって書いてある、不自然な岩があるから、そこでじっとしてるんだ。まだ機能していれば、誰か来てくれるはずだから」
ちび「うん」
流子「もしかしたら、夜通し歩くことになるかもしれないし、途中で誰かに会うかもしれない。万が一、辿りついても誰も来てくれなかったら、岩の周りをよく探して、レバーを見つけるんだ。それを引くと、地下に行けるから」
ちび「うん」
流子「じゃぁ、早く行くんだ! 私も、そこまで長く足止めできる訳じゃないから!」
ちび「一緒じゃないの?」
流子「…後から、行くよ」
ちび「ほんとに?」
流子「うん。ほんとに、後から行くから! 早く行って!!」
ポテ ポテ ポテ・・・
ちび「……流子ちゃ」くる
流子「早く! 走れっ!!」
ちび「……」テッテッテッテッテ
流子(…蟲全部、こっちに、ひきつけないと……!)カタカタ・・・
―研究施設:会議室―
美木杉「――確認するよ。皐月様には休んでいただいて、現在指揮は僕が取っている。蟇郡苛は、すでに出動済み。今回は、試作品を試して、ついでにちびちゃんと流子くんを回収するんだったよね?」
犬牟田「ああ。だが、ちょっと厄介なことになった…。蟲の断末魔が聞こえた地点と、ちびちゃんの発信機の地点との差がほとんどない。急いだ方がいいと思うよ」
蛇崩「言われなくても、フルスロットルで突っ込んでるでしょ、ガマさんなら…」
大暮「えー! この状況で纏流子なんか回収したら、蟲までくっついてくるじゃなぁーい! 一度に大量に来られたら、この大暮麻衣子さまのトラップも力パワー負けするわよぉっ!!」
美木杉「……ほんと、君は言いたいことそのまんま言うよね…」
大暮「だって、誰かは言わなくっちゃぁ。…実際どうすんのよ、大量に連れてくることになったら」
黄長瀬「確かにな…」
猿投山「そんなもん、来たときに考えりゃいいだろ、来たときに!」
大暮「それじゃ遅いでしょ…」
猿投山「くそぅ、ネガティブなことばっか言いやがって! 誰だよこいつも入れようって言い出した奴!?」
大暮「纏流子本人。生命繊維騒動の後、和解して仲良くなったのもあるだろうし…。それまでも、彼女が一番騙されてたからね、私に。…実力、買ってくれてたんでしょ…」
猿投山「…お前……」
大暮「あの間抜け、在学中に私がこっそりあの手この手で嫌がらせをしようとしていたとも知らずに友達ごっこでコロッと騙されるんだものおかしいったらあーりゃしないわあーっはっはっは」
猿投山「」
―砂漠―
くるくるっ、 だんっ!
流子「おりゃぁあああ!!!」ズバンッ!
蟲「キシャァアアアア!!」ぐいっ!
流子「しまっ――」
ぶちぃっ!!
流子「……うっ…!」ガクッ ポタ、ポタ・・・
蟲「キシャァアキシャァアア」カサカサッ
流子「……っ!」チャキンッ!
ズバァアンッ!
蟲「ギィイイ……」ズーンっ…
流子「痛っ…このやろ……!」ポタポタ・・・
蟲「キシャァアアアア」
蟲「キシャキシャキシャキシャァアア」
流子「…へえ。丸呑みにしないで、…仲良く分け合おうってか。…泣かせるじゃねぇか、おい…」ハサミ チャキッ!
ズバンッ!
蟲「キシャァアアアアア!」
流子「もういっちょ!」ひゅっ、
バサッ! ドッカーン!
ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ!
マコ「」ドサッ!
流子「! ……あ、見つけ」ヨロ・・・
蟲「キシャァアアアアア!!!」がぶっ!
流子「ぐぁっ……!!」キラッ・・・
流子(な、何だ…!? …力が、抜けて……!? 生命繊維が・・・・・!)キラキラキラキラキラッ・・・
蟲「キシャァアアア」
蟲「キシャァアアアアア」
蟲「キシャキシャキシャキシャ」
流子「う………っ!!」キラキラキラキラッ・・・
蟲「キシャァアアア」カサカサッ
蟲「キシャァキシャァキシャアアア」がぶっ
流子「――うぁあああああああああああああああっ!!!!」
キラキラキラッ、キラ・・・キラ…
どさっ…
蟲「……キシャァアア?」
―砂漠:ちょっと離れたところ―
ちび「ふっ、ふぇ…ふぇええっ、ふぇっ」ベソベソ
ちび「流子ちゃん遅いよぉ…暗いよー寒いよー怖いよぉー…」ベソベソ
「泣くなぁああああああ!!!」
ちび「ふぇええっ!?」ビクッ
ライト ピカー! 部隊ザザザッ!
蟇郡「この蟇郡苛の娘ならば、たとえ落涙しようとも、己の涙は己で拭けぇえええ!!!」
ちび「おとうさんだぁああー!!!」ぱぁあ
蟇郡「勝手に外に出るなとあれだけ言ったろうがぁあ!!!」・・・パコッ
ちび「うええええんごめんなさぁああいい」ビエー
蟇郡(…軽くはたいただけだが、強すぎたか…?)
ちび「……う?」
蟇郡「どうした?」
ちび「…なんか、ちび、もう一回やってほしいかもしれな」
蟇郡「ん? 纏流子は一緒ではないのか?」
ちび「なんかね、流子ちゃんね、後から来るっていってたのにね、来ないの」
隊員「蟇郡さん、前方から、蟲が来ます!」
蟇郡「よし! 対虚維蛾用縫散団子(対コイガ用ホウサンダンゴ)用意ぃいい!!!」
ガシャン ガシャン ガシャンッ!
ちび「おおおおー!」キラキラ
蟇郡「発射ぁあああああ!!!」
ポンッ ポンッ ポンッ!
蟲「キシャァアアア」パクッ
蟲「キシャキシャキシャ」ぱくんっ
ちび「おとうさん、発射したやつ、食べられちゃったよ!」
蟇郡「それでいいのだぁあ! …見てみろっ!」
ちび「にょっ!」
蟲「」プクー
蟲「」プクーッ
ドカーンッ! ボカーンッ!
パラパラパラ・・・ ドサッ ドサッ ドサッ
ちび「虫、爆発した!!」
犬牟田『――虚維蛾は、体内の生命繊維のエネルギーを吸って生きている…。そして、その生命繊維のエネルギーのもとは、生命繊維が進化させてきた知的生命体、地球で言うと人間だ。だから、倒す方法は大きく分けて二つある。一つは、纏流子のように生命繊維自体を切り裂いて中の人間を出したり、ジャミング弾で生命繊維と人体との接続を切断したりする、≪エネルギーの供給元を断つ≫方法。もう一つは、虚維蛾の体内のエネルギーの循環を乱し、爆発させる方法。この縫散団子には、微量の生命繊維と、エネルギーを遮断する糊状の物質が仕込まれている。虚維蛾がこれを体内に取り込めば、溜め込んだエネルギーが行き場をなくして、勝手に爆発してくれるという訳だ』
ちび「おとうさん、いぬむたさんの声がするよ!」
美木杉『無線だよ、ちびちゃん。ところで、流子くんはどこに居るのかな?』
ちび「あっちの方」
犬牟田『蟲が来た方向だ。まずいかもね』
蟇郡「生命繊維と人の回収、かかれぇえ!」
ガシャッ ガー ガー ガー
エッチラ オッチラ
ちび「流子ちゃんのと、同じ掃除機だ!」
蟇郡「ちび、お前は帰れぇ!」
ちび「えー!」
隊員「はい、帰るよー」ぐいっ
ちび「いーやーだーぁー……」ズリズリズリ・・・
―24年前:幼稚園―
園児「わたし、どれみちゃんねー!」
園児「わたしはづきちゃん!」
流子「…わ、わたしも、どれみちゃんがいい…」
園児「りゅうこちゃんは、オヤジーデって決まってるでしょ!」
流子「……」
園児「まじかるすてーじするよー!」
園児「りゅうこちゃんはおじゃまじょじゃないから、はいっちゃだめー!」
流子「」ぐすっ・・・
―21年前:小学校―
女子「流子ちゃん♪」
流子「」ビクッ
女子「流子ちゃんってぇ、全然話さないよねー。ねェ、『明○のナージャ』、みんな寮のテレビで見てるのに、なんで流子ちゃんは見ないの?」
流子「……す、好きじゃないから…」
女子「面白いのになぁー。ナージャちゃんがね、死んじゃってたと思ってたのに、実は生きてたお母さんを探して、旅に出るんだよ!」
流子「」ピクッ
女子「ナージャちゃん、お母さんと会えて幸せになれると良いなって思わない?」
流子「……別に、どうでもいい…」
女子「…流子ちゃんひっどーい!」
女子「もう、流子ちゃんなんかと口きいてあげないんだから!」
流子(…こっちから、口きいてって頼んだわけじゃない……)ぷいっ
……何だコレ。
え、何だコレ。何これ。
―現在:砂漠―
マコ「あ、あれ…ここどこ……」
蟲「キシャァアアアア!」
蟇郡「我心開放! うおおおおおお!!!」どかーん!
蟲「ギィ・・・・・・ィ・・・」バターン ドサッ ドサッ
ライト ピカーッ!
マコ「うわっ、眩しっ!」
蟇郡「マコぉおお!!! 無事かぁああ!?」
マコ「……苛くん…」
蟇郡「平気か!? 怪我は無いか!? 大丈夫か!?」
マコ「……また、助けられちゃいましたね…」///
蟇郡「…さっきの蟲の中に入っていたのか…。無事でよかった…!」ギュ
マコ「……」///
蟇郡「……」///
美木杉『あー、流子くんのことも、探してあげてね…』
―19年前:公園―
男子「お前のとーちゃん、引きこもりなんだってなー!」
男子「家から一歩も出ないんだってなー!」
流子「で、出てるよ。……多分」
男子「親がダメだから、子供もダメになるんだなー」
男子「髪なんか染めていいと思ってんのかよぉ」
流子「……染めてない。地毛…」
男子「嘘つけー!」
男子「嘘つきは泥棒の始まりなんだぞー」
流子「…ほんとだもん…」
男子「じゃーどうやって証明すんだよー」
男子「いつからそんな色なんだぁ? 何月何日何秒、地球が何回回った時ぃー?」
流子「……だよ」プルプル
男子達「ああ?」
流子「っうるせえんだよぉおおっ!!!」ダッ
男子達「えっ!?」
どこっ どかっ ばきっ どこぉんっ!
男子達「うぇえええーん」びーびー
流子(勝っちゃった…)ポカン
―寮―
先生「纏さん、相手が何もしていないのに、殴ったというのは本当ですか?」
流子「…私は悪くない…」
先生「きちんと、謝りなさい!」
流子「…謝るのはそっちだ。私じゃない…」
先生「……謝る気になるまで、一人で反省していなさい」
ドア ガラッ
流子「……」ドア ピシャンッ
流子「…悪くないのに、閉じ込められてしまったな、流子」
流子「そうなんだよ。悪いのは、あいつらなのにさ」
流子「先生も、流子の話を聞いてくれないものな」
流子「ひどいよね。こっちが悪いって決めつけてさ…」
しーん・・・
流子「……やっぱ、ちょっと空しいなぁ…」
流子「……」ごろんっ
流子「…服と、話せたらいいのに…」
……これ、アレか。昔の記憶か?
え、何で? 何のために?
―現在:砂漠―
美木杉『見つかったのか!?』
蟇郡「…見つかった。だが、これは…」
マコ「流子ちゃん!? 流子ちゃん、しっかりしてよ! ねぇ、流子ちゃん流子ちゃん!!」
猿投山『どういうことだ、 無事なんだろうな!?』
蟇郡「まだ息はある!しかし、傷がふさがっていない!!」
マコ「流子ちゃんの髪、メッシュが黒くなってる…なんでっ!?」
犬牟田『≪生命繊維が黒くなっている≫ということは…生命繊維の活動が停止したのかな?』
猿投山『? そうすると、どうなるんだ?』
大暮『どうなるっていうか、宿主が死んだから、生命繊維も死んだんじゃないの?』
猿投山『なんだとっ!!?』
蟇郡「いや、息はあるとさっきから言って」
マコ「……え、死んだっ!? 流子ちゃん死んじゃ嫌だよー!!」
美木杉『――とにかくっ、急いでこちらに運んできてくれ! この施設の設備なら、治療もできるはずだ!』
―14年前:中学校―
男子「あー学校だりー」ウダウダ
男子「! 全員整列ぅうー!」
ザザザザッ!
流子「…おっす」
男子「リーダー、今日は早いっすね」
流子「そうか? いつもこれくらいの時間だろ」
男子「聞いてくださいよリーダー。ウチの学校の一年、また二高の奴らにカツアゲされたらしーんすよぉ」
流子「えっ、またか?」
男子「今日シメに行くんすけど…」
流子「よし、わかった。私も加勢するよ」
男子「あざーっす! リーダーがいりゃ百人力だぁ!」
流子「よ、よせよ照れる…」///
男子(こいつ騙され易すぎるだろ…)
男子(強いから利用されてるだけなのにな…気づかねえもんだなぁ)
―その翌日:面談室―
教師「え、ええ、えーっと、ですね、その、」
流子「…何ですか?」
教師「うひゃぁっ! …そ、その、…やっぱり、暴力はいけないんじゃないかな、と、その」
流子「えーっと…?」
教師「…ま、纏さんは、女の子ですし、…もっと、その、女らしく、というか、なんというか、」
流子「えっと……」
教師「た、他校に乗り込んで、・・・上級生、高校生、を、…ボコボコにするっていうのは、…えっと」
流子「先生、聞き取り辛いんで、はっきり言ってもらえると」
教師「す、すんません!」
流子「いや、謝られても困るんですけど…」
教師「殴っちゃいや!」
流子「いや、殴りませんけど…」
教師(だから嫌だったんだー。だから纏流子の担任なんて嫌だったんだぁ…)ブツブツ・・・
流子「あー、…もう、帰っていいですか?」
……あー、そうか。コレ、もしかして
走馬灯って奴、なのか?
―マコと流子発見の翌日:研究施設―
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
流子「」(呼吸器)
伊織「やはり、流子さんからの生命繊維の反応がありません。…すべて死滅しているようです」
犬牟田「虚維蛾は生命繊維からエネルギーを吸収するからね。纏流子が虚維蛾に襲われ仮死状態になっていたとしたら、虚維蛾にエネルギーを吸い取られた上で、生命繊維がエネルギーの補給源を失ったことになる。死滅していたとしても、おかしくないよ」
皐月「…薔薇蔵さん、流子の容体は?」
薔薇蔵「傷はそこまで深くなかった。普通の人間に戻ってたとしても、すぐふさがるだろう。…ただ、他のことはさっぱりわからん」
皐月「…そうか…」
蛇崩「…皐月ちゃん、あんまり無理しないで、もう休んだら…?」
マコ「そうですよ、皐月様! 流子ちゃんは、私が見てますから!」
皐月「…そうだな。そうするよ。伊織と犬牟田も、ここはもういいから、次の戦いの準備に戻ってくれ」
伊織&犬牟田「はっ!」シュバッ!
蛇崩「私が送ってくわ、皐月ちゃん。じゃ、ガマくんの奥さん、あと頼んだわ」
皐月「いや、そこまで気を使わなくとも――。む、今動いたか?」さすっ
マコ「それは元気な証拠です! 大丈夫ですよ、皐月様っ!」
扉 ガーッ
皐月「……あ」
マコ「あれっ、学校のはずなのに!」
蛇崩「あんた、いつからそこに居たの…?」
ちび「………」チョコンッ
―研究施設:会議室―
大暮「縫散団子。蟲共を一網打尽にしたいんなら、最低でもこれだけの数を、これだけの範囲にばらまかないと」
美木杉「……これは、キッツいねぇ…」
黄長瀬「撒いてる途中で襲われて喰われるだろ、これじゃぁ…」
大暮「でも、どういう訳か蟲の母体数は減ってるから、前に比べりゃマシよ。共食いに共食いを繰り返して、一体一体は強くなっていってるから難しいことには変わりないけど」
猿投山「纏の集めていた分と、今回の掃討で集めた分の生命繊維で、極制服は作れるんだろ? んな蟲ども、極制服さえありゃ、俺一人で十分だ」
大暮「口だけなら、何っとでも言えるでしょうよぉ…そんなに甘くないのっ。そんっなに甘い話じゃないのよぉ。考えなしに突っ込んでいって倒せるなんて、あーま甘よ、甘スウィートよぉおん」
猿投山「何だとっ!」
美木杉「まぁ、各々言いたいことはあると思うけど、やることは一つ。できるだけ早いうちに、蟲の数を減らすことだ」
黄長瀬「物資のあるうちに決着を付けたいからな…。長期戦になれば、不利になるのはこっちだ」
美木杉「加えて、生命繊維を施設に集めているせいで、施設の周囲に集まる蟲の数も増えている…」
大暮「だから、これだけの数はばらまかないと」
美木杉「…うーん……」
大暮「ところで、極制服は四天王の分だけ?」
美木杉「え? 君も欲しいの?」
大暮「まさか! 今さら要らないわよ、あんな化け物じみた服」
美木杉「報告によれば、四天王と、歩兵部隊に入っていた元部長、満艦飾マコ、函館臣子、袋田孝治の三人。それに加えて、試験的に満艦飾又郎の分は作ってあるらしい。…他のメンバーは、極制服を着たことのない人達ばかりだからね」
大暮「ふうん…」
大暮(もう一着、伊織糸朗が作ってたのを見かけたけど…。誰の分かしら?)
ごめんなさいごめんなさい
×伊織糸朗 ○伊織糸郎
―12年前:高校一年―
―野原―
流子「こんなとこで何すんだよ? 何もねーとこじゃん」
不良「まぁまぁ。飲めよ流子」トンッ
流子「え、あ、いや、私は、酒とかは、ちょっと」
不良「…吸う?」プカー
流子「そういうのも…」
不良「んだよ、付き合いわりぃなぁ」プカー
不良「…まさか、ここに来ること誰かに言ってねーだろうな」
流子「言わねーよ。約束は守るさ」
不良(ほんとに、おめでたい奴だよな…)
流子「………」ポンヤリ
不良(…そろそろ、いくか?)
不良(こんだけ油断してりゃ、いけるだろ)
不良(女とは思えねえくらい強いからな、一斉にかかるぞ)
流子「……ん?」
不良達「うおらぁああっ!!!」ガシッ!
流子「――なっ、何すんだお前らっ!?」////
不良「そんなこともわかんねーの?」
流子「はぁっ!!? な、仲間だろっ――!?」///
不良「そんなの、フリに決まってんだろーがよぉ」
流子「えっ…」
不良「お前は強いからなぁ、ご機嫌取っていいように使ってた、だ、け、だ、よ!」
不良「でも、最近お前付き合いわりぃからさぁ…恨むんなら、自分のバカさ加減を恨みな!」
流子「……」
不良「さてどこから――うゴォッ!!?」ガシッ!
メキ・・・メキ・・・
流子「…教えてくれて、ありがとよ……」
不良「――こいつっ!」釘バット スチャッ!
流子「……おかげで、遠慮なくボコボコにできる……!!!」
不良「おらおらおらぁあああ!!!」
流子「」スッ――
どかっ ばきっ どごっ ぐしゃぁっ!
不良達「」ヒクヒク・・・
流子「…………」ゴゴゴゴゴ・・・
ははは…
ろくな記憶ねーな、私の走馬灯……
―マコと流子発見から五日後:地上―
ヒュゥゥウウ・・・・・・
蟲「キシャァアアアア」
蟲「キシャキシャキシャキシャ・・・」
蟲「キシャァアアアアア」
猿投山「……蟲共め。もう嗅ぎつけたか…」
大暮『縫散団子は、蟲をひきつけるようにできてるもの。当然でしょ』
犬牟田「まさか、三十路一歩手前で、再び極制服に袖を通すことになるとはね…」
蟇郡「…ブランクのせいか、変身後の動きが前よりも鈍くなっている気がする。気を付けろ」
犬牟田「気のせいじゃないよ。計測によれば、以前ほどのパワーアップができていない。…年のせいかもね」
猿投山「おいおい、何を弱気になってるんだ? 俺たちは四天王だぞ!」
蛇崩「あぁーら、そんなこと言って、実はおサルさんもびびってるんじゃないの?」
猿投山「ふっ。俺は臆してなどいないさ」
蟇郡「俺には、守らねばならぬものがある。気が強くなることはあっても、弱くなることなどありえんん!」
犬牟田「俺も、せっかく集めたデータを蟲に喰われるのはごめんだね」
蛇崩「私には、夫婦でオーケストラを演奏するっていう目標があるの。私が指揮者で旦那がコンマス、こんな蟲なんかに、ヨーロッパ横断公演ツアーを潰させてたまるもんですか!」
犬牟田「…旦那? 結婚してたっけ?」
蛇崩「まだよ。これから出会うの」
犬牟田「……」カチャカチャカチャッ
蛇崩「何入力してんのよっ!?」
蟇郡「む。猿投山、お前、それは…」
猿投山「ああ。纏のハサミだ」
くるくるっ ジャキンッ!
猿投山「……纏の意志は、俺が継ぐ…!」キラーン!
犬牟田「あれ、纏流子はまだ生きてるよね?」
猿投山「生きていても、意志を継いだっていいだろ、別に」
黄長瀬「そろそろ、出るぞ!」
美木杉『縫散団子は、置いておくだけでも蟲が食べるように作られている。無駄な戦闘は避け、割り当てられた場所に撒くことに専念してくれ。生命繊維の回収は、別働隊が行う』
皐月『全員、生きて戻ってくるように!』
蟇猿蛇犬「「はっ!!!」」
―11年前:高2始め―
―よその高校―
生徒「わーっはっはっはぁ! 本能寺学園の傘下に入る代わりに手に入れた、この一つ星極制服の力に敵う者など存在せんわぁあ! 生徒どもよ、俺の前に、ひれ伏すがいいー!!!」
生徒共「ははーっ」
生徒(あいつムカつくよな…)
生徒(でも、あの服の力は本物だ…。下手に逆らうと、俺らまで病院送りに……)
流子「そこ退きやがれぇええええ!!!」
どっかーん!
生徒共「うわぁああああっ!?」
流子「そこの高校の二年、纏流子だ」
生徒「誰だか知らんがぁっ、この一つ星極――」
流子「おらぁっ!」ドコッ
生徒「ぶふぅううっ!!?」ズシャァアアー!
流子「…お前、ちょっと偉そうだなぁ。この学校で一番偉い奴のとこに案内してくんない?」グイッ
生徒「い、いひばん…? 俺れすけろ…」ボロッ・・・
流子「えっ!? …う、嘘をつけぇ! お前みてーな弱い奴がトップな訳ないだろ」
生徒「トップだよ! 極制服もらったんだもんトップだよ!」
流子「ごく、せいふくぅ? 何だそれは」
生徒「こう、よくわかんないパワーがもらえんだよ!」
流子「……なんか、手掛かりがつかめそうだな。もっと詳しく教えろ」
生徒「それ以上知らねーよ! 俺ホントに下っ端だもん!」
流子「じゃぁ、もっと偉い奴はどこに居んだ!?」
生徒「俺は、本能寺学園の傘下に入っただけだぁ…よく知らねーよぉ…」
流子「そ、そうか。その、本能寺学園ってとこに行けば、いいのか」
生徒「行ったって、ガードが厳しくて他校の生徒は入れやしねェよ!」
流子「じゃぁどうしろっつーんだよ!」
生徒「…どーしてもっつーんなら、転入しちまえばいいんじゃね?」
流子「…まさか、転入試験とか無いだろうな?」
生徒「ない、はずっす…」
流子「よし。潜り込んで、探ってやるよ… 片太刀バサミの、もう片方の持ち主をなぁ…」グッ!
―現在:施設―
ピッ…ピッ…ピッ・・・ピッ…
流子「」(呼吸器)
揃「……」(編み物)
マコ「ちび、おいで」
ちび「……」テクテクテク
チョコンッ・・・(マコの膝の上に乗る)
ちび「…おかあさん、いっつも迷子になるね」
マコ「…うん。ごめんね、ちびを一人にしちゃって」
ちび「私がね、流子ちゃん置いてっちゃったの」
マコ「?」
ちび「流子ちゃんね、怖がってたの。勝てないって言ってたの。でも、ちび、流子ちゃん一人で置いていっちゃったの」
マコ「……」
ちび「ちびが…」
ソッ・・・
マコ「…ちび。ちびは、流子ちゃんについていてあげて。おかあさん、行ってくる」
ちび「……?」
マコ「おかあさんは、いっつも、守られてばかりだったから。たまには、おかあさんが流子ちゃんを守ってあげなきゃ!」
ちび「……迷子にならない?」
マコ「大丈夫だよ!」
ちび「ちび、もう探してあげないよ?」
マコ「おかあさん、強かったんだから! 今も、きっと強いよ! 元喧嘩部部長、満艦飾マコだもん!」
ちび「ほんとにっ!? 初めて聞いた!」
マコ「ええーっ、言ったよぉ!」
ちび「また話してよー!」
マコ「帰ってきたら、流子ちゃんの話、また全部話してあげるっ!」
ちび「うんっ!」
マコ「揃さんっ。すみませんが、よろしくお願いしますっ」
揃「はい。…皆さんの分の紅茶を用意して、お待ちしています」
マコ「」バイバイッ
ちび「いってらっしゃーい!」
―11年前:本能寺学園―
ああ、そうそう、こっからだよな…
又郎に会って、それから――
流子「頭を下げる奴は殴れねーな。…今回は許してやるよ」
又郎「ほっ…」
ガツーンッ
又郎「どっふぁあっ!?」
マコ「コラァーっ!」ピューンッ
又郎「ぐわっ、あだっ、いでっ!」ドコッ!
流子「!?」
マコ「まーた朝からカツアゲしてるね!?」
又郎「やっべ姉ちゃんだ」
マコ「逃がさぁんっ! カツアゲなんてしてないで大人しく小学校に行きなさいって何度言ったらわかるのっ!!」グイグイ・・・
又郎「ごめんなさいごめんなさい行きます行きます!!」バンッバンッ
流子「」ポカン
又郎「バーッキャロー義務教育にかまけるほどこっちは暇な身分じゃねーんだよなんだいチキショウめぇー!!」
マコ「もうあのバカっ!」
マコ「――あっごめんね大丈夫だった? っていけないいけない! 遅刻だー!乗せてー乗せてよー乗せてー乗せてよー!…あっ、乗れたっ!乗れたよー!!」
流子「…なんなんだぁ、この町は…」(唖然)
―現在:地上:別働隊―
マコ「――遅くなりましたっ!」バンッ!
又郎「いいや、丁度いいぜ、姉ちゃん!」
函館「今回のアタシらの仕事は、生命繊維の回収と、それを邪魔する蟲を遠ざけること」
袋田「そして、無駄な戦闘は避けることだ。他の部長が喰われちまった今、極制服を着こなせるのは俺たちだけだからな」
大暮『四天王が、蟲との戦闘を開始しました! 出撃してください!』
袋田「おyぁdせー!!! いkgぜええええええ!!!」
函館「あんた、興奮しすぎて何言ってるかわかんなくなってるよ」
マコ「流子ちゃんは、私が守るっ!」
又郎「電光石火の又郎さまの力ぁ、見せつけてやんよぉ!」
一同「「いくぜぇえええ!!!」」
―11年前:本能寺学園―
マコ「夜ぉー逃げぇーの歌ぁあー♪ 夜ぉー逃げぇーの、歌ぁーを」
流子「少し落ち着け。…それより、聞きたいことがある。この学園で、一番偉いのは誰だ?」
マコ「あっ、それはもう――」ピクッ
マコ「や、やばいよ流子ちゃん流子ちゃんお辞儀お辞儀っ!!」グイグイッ
流子「うおっ!?」
うわっ、懐かしいなぁここら辺。ふふっ、そうそう、この後だよ…
流子「…ということは、一番偉いのはその生徒会長か…」
マコ「そうそう。あっ、あれがその、皐月様よ」
……ほぉら、来なさったぁ!
皐月「……」カツン、カツン・・・
流子「あんたがこの学校で一番偉いんだって?」ザッ
皐月「」ピクッ
流子「だったら聞きたいことがある」
生徒「貴様っ、なんって無礼な!!」
流子「」すっ
ドカボコガスッ!
生徒「」チーン
流子「……」
クルクルクルッ じゃきーんっ!
皐月「!」
流子「会長。あんた、今こいつを見て驚いたなぁ…見覚えがあるんじゃないか?この片太刀バサミを!」
皐月「…だったらどうした」
流子「!」
流子「――その口ぶり、てめーが片太刀バサミの女
―いつものとこ―
美木杉「――さて、走馬灯はこのくらいにしておいて、説明に移ってもいいかな?」
流子「……は?」
美木杉「…あ、今、改めて見ると僕って若い頃かっこよかったんだなーって思ったでしょ。同じくらいの年になるとわかることって多いよね」
流子「うん、まぁ、確かに…。 って、え。そうじゃなくて、…え?」
美木杉「戸惑っているようだねぇ流子くん…。ちなみに僕は、僕であって僕でない、かといって生命繊維の大いなる意志でもない」
流子「は?」
美木杉「大いなる意志は君が消してしまったが、生命繊維の記憶自体は既に君の中にインプットされていたんだ…。羅暁のアレは、知識をアウトプットする作業だったんだよ」
流子「え? え? 美木杉? え?」
美木杉「心理学的には、人の心の中には自覚できる意識の部分と、自覚できない無意識と呼ばれる部分が存在する…。君の無意識が、虚維蛾の知識を必要とした結果、説明役として僕の姿が駆り出されたという訳だ…」
流子「???」
美木杉「羅暁だと、君、話を聞かずにぶっ飛ばしちゃうでしょ? 美木杉愛九郎なら、とりあえず話は聞いてくれるでしょ? そういうことだよ」
流子「…だったら、マコとか皐月でもいーじゃねぇか」
美木杉「……君、実はこの先公になついてたでしょ」
流子「えっ、」///
美木杉「僕は、今までの人生で頼れる大人なんか一人もいなかった君が、初めて出会ったまともじゃない先公だ。君の父親のことを知っていて、ある程度の秘密を共有でき、手助けまでしてくれる。君が僕の半裸を我慢し続けていた理由は、父親の仇を探すためだけじゃなかった筈だ。まめに課題を見てくれる先生に生徒がなついてしまうように、先公として、知らず知らずのうちに信頼を寄せてしまっていた……」
流子「…だったらどうしたよ」
美木杉「――さて、そろそろ本題に入ろうか。結論から行こう。生命繊維の力では、虚維蛾には勝てない」
流子「は? 黒いのには勝てたぞ!」
美木杉「今君たちが戦っているのは、虚維蛾の幼虫に過ぎない…。成虫になられたら、勝ち目はない」
流子「成虫…?」
美木杉「虚維蛾の幼虫は、生命繊維を感知して、その星に一斉に群がる。その星の生命体ではとても養いきれないほどの量が飛来してくる。それは何故か? 強い遺伝子を残すためだよ。生命体をほとんど食い尽くした虚維蛾は、生命繊維と生命体を取り合って共食いを始める。そうやって、最後に残ったオスとメスのつがいが蛹になり、繭を作り、羽化して宇宙に羽ばたき、産卵をしてその命を終える」
流子「何だよ、そりゃ…」
美木杉「一度蛹になられたら、虚維蛾の繭は君のハサミであっても貫くことはできなくなる。かといって羽化した後では、もう間に合わない。…だが、攻撃のチャンスはもちろんある。蛹になる最中、奴らは無防備になるからね。そこを狙うしかない」
流子「なるほど」
美木杉「その際、一つ問題がある」
流子「問題?」
美木杉「奴らの繭は生命繊維でできている。つまり、繭を作る過程で、生命繊維を振動させ硬化させる、特殊な音波のようなものを出すんだ。それが出ている最中、極制服や神衣は動けなくなり、無効化される」
流子「私の中の、生命繊維もか!?」
美木杉「…君の体内には、もう生命繊維は残っていないよ」
流子「……え?」
美木杉「虚維蛾に襲われた際に、全て死滅した。今後、再生することもないだろう。今の君は、普通の人間だ」
流子「――そんなっ、それじゃ」
美木杉「落ち着きたまえ。だからこそ、勝機は僕たちにあるんだ」
流子「だからこそ…?」
美木杉「……これ以上は、無理みたいだね。時間切れだ」
流子「ちょ、ちょっと待て美木杉! 一体、そりゃどういう――
―本能寺学園:壊惨総選挙―
ジャジャジャジャァーン♪ ジャジャジャジャァーーン♪
流子「どうした鮮血、反応が鈍いぞ……!」
蛇崩「私の極制服から発せられるリズムが、狙った生命繊維に共振し、時に操りダメージを与える…。それが奏の装、ダ・カーポの力!」
…また走馬灯に戻ってやがる!!!
犬牟田「纏は、蛇崩の放つリズムを、あのU字の腕で純音にしているんだ!」
マコ「純音?」
流子「そろそろ・・・お返しだっ! 鮮血無拍子!!!」夜明けのサンビカ~♪
蛇崩「あああああーっ!! うっそぉおお!!!」
流子「必殺、戦維喪失っ!!!」ズバァアンッ!
どうしろっつーんだよ、美木杉の野郎! …ん? 美木杉じゃねぇのか。無意識だっけ?
猿投山「…ようやく俺の番か」
流子「来い猿投山。さっさとこの間のケリ、着けようじゃねーか。今度は私も逃げやしねぇ」
あ、この記憶、
…こうして見ると、若いなー、猿投山…
猿投山「ふっふっふ…。それでこそ纏流子。俺の目を奪い、世界を与えてくれた女。今度こそ貴様を打ち倒す。やらせてもらいますよ、皐月様」
皐月「…いいだろう。第四回戦、開s」
流子「――ごめん猿投山。決着は、未来で付けよう」
猿投山「…は?」
流子「皐月!」
皐月「なんだ纏流子」
流子「未来で待ってて!」
皐月「…何を言っている…?」
流子「よっ、と!」ピョンッ!
鮮血「!? 流子、なぜ競技場から飛び降りているっ!?」
ヒュゥーーー!
猿投山「待て、勝負から逃げる気かまと――――」
プツンッ――!
流子「……」ヒュゥー・・・
流子(……真っ暗だな。どこまで落ちていくんだろ…)
流子(…ちび、無事に辿りつけたかな…。皐月は、…まぁ無事だろうな。マコは、あの後また食べられたりしてないだろうな…。四天王は、全員無事かな。変態二人は、生きてるかな…)
流子(……あいつ、無事じゃなかったらただじゃ済まさねぇぞ…)
ピッ・・・ピッ・・・・・・ピッ・・・
流子(……何だ、この音…?)
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・・・・
ピッ・・・ピッ・・ピッ・ピッピッピッピッ!
流子「……っ!」がばっ!
さすがに、流子ちゃんの過去を勝手に想像したのはやりすぎだった。反省はしています。
読んでくれた人ありがとう。
次回予告:ナージャ祭り
乙
次も待ってる
面白い!続き待ってるよ!
てか小清水繋がりか?>ナージャ祭
》288 そうだよー
ごめん袋田も間違えてた
》258
×孝治 ○隆治
まだまだ誤字あると思うごめんなさい
×本能寺学園→○本能字学園
ごめんなさい。素で間違えてました。
―少し前:地上―
―縫散団子ばら撒き隊―
四天王「「うおりゃぁあああ!!!」」
蟲「ギシャァアアアアア!!!」
蛇崩「奏の装・最終楽章っ!」キュピィンッ♥
蛇崩「虫けらのくせに、生意気なのよぉお!」
ドンドンドンドカーンッ!
蟇郡「縛の装・我心開放っ!」バンッ!
蟇郡「ぬおぉおおおお!!!」
バッコーンッ!
犬牟田「探の装・真理究明」ピピピッ
犬牟田「うじゃうじゃと、まぁよく集まったもんだよ」
シュンッ ズババッ!
猿投山「剣の装・奥義開眼っ! with纏のハサミ!!」
猿投山「めぇえーん!!!」 ドカッ!
蟲「キシャァアアアアア!!」
蛇崩「………やんっ!」ビクッ!
蟲「ギシャキシャキシャァア」カサカサッ
猿投山「……やはり、極制服を身に纏えば力は増すが――」
犬牟田「――ああ。纏が怯えていた理由がわかったよ。…生命繊維は、蟲への恐怖も増大させるみたいだね」
蟇郡「…ぬおおおおおお!!!」ドコンッ!
猿投山「だがっ! びびってばかりもいられない!」チャキッ!
犬牟田「エサを撒きに来て、自分たちがエサになったんじゃ洒落にならないからね」カチャカチャッ
蛇崩「私たちは、皐月様の手足! 皐月ちゃんの、鋼の砂の城の一角を担う者!」
蟇郡「たとえこの手足切れ失すともぉお!! いかで皐月様の命令に背くことあらんかぁああ!!!」
猿投山「――俺たちをっ、誰だと思っていやがる!!」
しーん・・・
猿投山「…ん?」
蛇崩「……それだけは言っちゃダメでしょ…。何考えてんのよ北関東のぼけ猿がぁっ!」
猿投山「え?」
犬牟田「散るんなら君だけにしてくれよ、コンニャッくん」
猿投山「き、北関東とコンニャクをバカにすんじゃねぇっ!」
蟇郡「…もめている場合かぁあああ!!!」
蟲「ギシャァアアアアア!!!」
猿蛇犬蟇「「鎧袖一触っ!!!」」ドカドカドッカァアンッ!
―縫散団子ばら撒き隊―
蟲「ギシャアァアア」
蛇崩「こんのクソ蟲共がぁあ!」
ドドドドーンッ♪
蟲「ギィイ…イイイ…!」
ドカーンッ! ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ
―別働隊―
蟲「キシャァアアァアア!」
袋田「運動特化型二つ星極制服。元ボクシング部部長、袋田隆治ぅ…。――俺の右stれーdおおを喰らぇっ! 鉄拳粉砕ぃいい!!!!」
ドドドドドドッッ!!!
NB兵「生命繊維回収始めっ!」
ガー ガー ガー
衛生兵「人員の回収急げぇっ!」」
エッチラ オッチラ エッチラ オッチラ
函館「運動特化型二つ星極制服! 元テニス部部長函館臣子っ! 喰らえ億千万本サァアアーブ!!!」
バコバコバコバコバコォオンッ!!!
蟲「ギシャァアアア!」
―縫散団子ばら撒き隊―
蟇郡「総員、構ぇええ!!!」
NB兵「いえっさー!」ジャキッ
蟇郡「縫散団子、発射ぁあああ!!!」
バンッ バンッ バンッ!
猿投山「面胴小手ッ! 突きぃいいい!!!」チョキンチョキンッ!
ヒュンッ、チャキッ、ばこっ!
蟲「キシャァアアアアア!」カサカサッ
猿投山「しまっ――」
蛇崩「でりゃぁあ!」
ドーン♪ バーンッ!
蟲「ギィイ・・・・ィ・・・」ドサッ
蛇崩「何やってんのよっ!」
猿投山「くっ…! 扱いにくいぞこのハサミ!」チョキチョキ
犬牟田「君の場合、片太刀バサミに分けて使った方がいいと思うよ」
蟇郡「猿投山、二刀流はできるか?」
猿投山「もちろんだっ! 竹刀ならな!」
蛇崩(できないんだ…)
又郎「……猿の兄ちゃん、その片方、この又郎に預けてくれねぇかい?」ヒュッ
蟇郡「義弟!」
猿投山「お前は…」
又郎「頼む」
猿投山「わかった。ちゃんと大事にしろよ! 借り物だからな!」
又郎「わかってらぁよ! 行くぜぇえ!!」
―別働隊―
マコ「うりゃぁあっ!」ミサイル発射!
ドドドドーンッ!
蟲「ギィ・・・イイイ・・・」ズーン・・・
蟲「キシャキシャァアア!」
マコ「たぁあっ!」
バキィッ!
蟲「ギシャァアッ!!」ギーギー
マコ「…喧嘩部特化型、二つ星極制服っ、蟇郡マコ! みんなの明日は、私が守るっ!!!」
―指令室―
蟲『キシャァアアアアアア!』グチッ ブチャッ
蟲『ギィイィイイイイイ!!!』
皐月「…予測よりも、集まっている数が多い…」
美木杉「共食いに共食いを繰り返して、急速に数を減らしてはいるが…。気を付けろっ! 今までの蟲とは段違いだ!」
大暮「蹴散らすわよっ! 駆虫砲用意ぃいい!」
美木杉「ラジャ――」ガタッ、――グキィッ!
大暮「…ん? 何の音?」
美木杉「ぐっ…っ! ふぁっ…!! …あだだだ…」
皐月「美木杉さん、どうしたんですか!?」
美木杉「…ぼ、僕には構わず…早く駆虫砲を……!」
薔薇蔵「あー、コリャぎっくり腰だな。派手にやったもんだ」
黄長瀬『美木杉っ、お前は 鍛え方が足りないからそんなことにな』グキッ!
黄長瀬『…ぐぁああああ!!!』
美木杉「つ、紬…お前もか……っ!」
―地上―
美木杉『…寄る年波には…勝てないか…ぐああっ!』
蛇崩「この非常時に何やってんのよ変態共がぁ!!!」
蟲「キシャァアアアアア!!」
蛇崩「!」
ドシャッ――!
犬牟田「ふうん…データも、もう取り飽きたよ」
どっかーん、ドサッドサッドサッ!
蛇崩「……犬くんにしては、やるじゃない」
犬牟田「それは、褒め言葉として受け取ってもいいのかな?」
大暮『トラップ起動っ!!――あポチッとな♪』ポチッ
ガガガガガガンッ!
蟲「ギシャァアアアアア!?」
蟲「ギシャキシャキシャァア!!!」
函館「これはっ…、ゴキブリホイホイ!?」
大暮『地下から檻を出したのよぉ! 甲羅が硬くて動きが素早いだけで、食いちぎれるのは局部的にエネルギーを吸ってゆるゆるにした生命繊維だけの、そんっな虫けらどもに、今回の超合金製の柵は食い千切れないわよぉおお!!!』
マコ「さすが麻衣子ちゃん! ちゃんとお金をかければ、それなりのものが作れるんだねっ!」
袋田「あじゃー!!! やるじゃねxげあかー!!!」
函館「また蟲が来るよぉ! 構えな、あんた!」
蟲「ギシャァアアアアア!!」カサカサッ!
袋田「おらおらおらぁあ! かかってきやが」
蟲「キシャァアアアア!!」ドコッ!
蟲「…ギィイイイイイ!!?」
袋田「……ふぁ?」
蟲「ギィ・・・ィ・・・」
蟲「キシャキシャキシャァアア」ブチッ モグッ グチャッ!
マコ「む、蟲同士で食べ合ってるよ!?」
函館「…こいつらだけじゃないよ! 周りの蟲共も、お互いに戦いあってる――!」
―縫散団子ばら撒き隊―
蟲「キシャァアアア!」グシャ
蟲「キシャキシャキシャ」ブチッ
蟲「ギィ・・・ィ・・・」
蟲「ギシャアァアアア!!」
蛇崩「――ちょっと! 蟲のくせに、あたしたちを無視してんじゃないわよっ!」
犬牟田「どうやら、俺たちを襲うよりも仲間を襲った方が効率がいいと思ったようだね。…そうなると、空腹な蟲は生命繊維を奪わなきゃいけないし、満腹な蟲は蟲から身を守らなきゃならない。微量の生命繊維と数人の人には興味がなくなったんだろう」カチャカチャ
蟇郡「蟲同士争うのに忙しくて、こちらに構う暇がないということか…」
猿投山「面胴小手ぇええええ――」
又郎「猿の兄ちゃん、待っておくんな! 逃げる敵を深追いすると、ろくなことにならねェぜ!」
猿投山「し、しかしっ、」
皐月『満艦飾又郎の言うとおりだ。無駄な戦闘は避け、しばらく様子を見ろ』
猿投山「…はっ!」
―指令室―
皐月「……おかしい…」
美木杉「…当人には…笑いごとじゃないんすよ……」
皐月「いや、そういう意味ではなく…蟲の行動が妙なのだ」
大暮「行動も何も、ただの虫じゃないの?」
皐月「生命繊維を感知してやってきた蟲にしては、多すぎる…」
犬牟田『把握できているすべての地域から、この場所に集まっています。下手をすると、地球上のすべての蟲がここに集結しようとしているのかも』
美木杉「…その一斉に集まってきた蟲たちが、共食いをして数を減らしてくれている…。しばらく待ってたら、そのまま最後の一匹とかになってくれるかもね」
大暮「生命繊維を感知したんじゃなかったら、一体何のために集まってきたっていうのよ?」
皐月「犬牟田、わかるか?」
犬牟田『今、データを分析している所です。結果がでるまでには、もうしばらくかかるかと――』
黄長瀬『…その必要も無いかもな。見ろよ、あれだけ居た蟲が、もう数えるほどしか残ってない…いでで腰が!』
美木杉「しっかりしろ紬! …あいでで…」
蟲『キシャァアアアアアア!!!』
蟲『ギシャギシャァアアア!』
皐月「……どういうことだ…?」
―その頃:施設―
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
流子「」(呼吸器)
揃「……」(編み物)
ちび「むにゃむにゃ…」zzz
流子「……」ピクッ
・・・ピッピッ・・・ピッ・・・
揃「…!」ハッ
ちび「おかーさん私のコロッケ…ガッツ二世が食べちゃ…むにゃ」zzz
流子「……っ!」がばっ!
揃「流子様! お気づきになられましたか。良かった――」
流子「? ここは…?」呼吸器ぽいっ 管 ブチッ
揃「ひと月前の戦いの後、皐月様と皆様で隠れていた研究施設です。流子様は、蟲に襲われ倒れていたところを、蟇郡苛様とマコ様に見つけられ、ここまで運ばれたのです」
流子「――揃さん! 姉さんと、皆は今どこに居る!? 伝えなきゃいけないことが」
扉 ガー
伊織「おじさん、何かあった――!?」
揃「糸郎!」
流子「義兄さん!」
伊織「よかった、目が覚めたのか…。心停止を知らせるブザーが鳴ったから、慌てたよ…」
流子(あ、管とか抜いちゃったからか…)
ちび「むにゃ…」zzz
―施設―
流子「大変なんだ! 蟲はこれから」
『キィイイイイイイイイイイイイイ――』
『ぬおおおおお!!! これしきでこの俺を縛れるとおもったかぁあああ!!!』
『さすが蟇郡。ヤケになったときの底力は凄まじいね』
流子「なんだっ!? 無線!?」
伊織「僕のだ」
皐月『――どうした!?』
犬牟田『蟲の発する音波が生命繊維を硬化させています。羅暁の≪絶対服従≫の時のように、極制服が全く使えない状態です』
流子「もう始まっているのか――。私も出る!」スタッ
伊織「流子さん、それでしたら、まずこちらに。渡す物があります!」
流子「…?」
―地上―
マコ「むむむむむ…っ! 動けないよぉお!」
函館「あの蟲…体から、生命繊維を出してるのかい!?」
袋田「繭でも作ろうっていうのか…?」
又郎「……こんなもん、気合でっ――。駄目だやっぱ動けねぇー!!!」
蟲「ギシャアァアアアアア!」
蟲「ギィイ・・・イ・・・」
キィイイイイイイイイイイイ――
袋田「…蟲が、とうとう二匹に」
函館「さっきのと、今生き残った一匹…」
マコ「両方とも、妙な音出してるよっ!」
―研究室―
流子「隣の部屋だったのか…」
伊織「もともと、あの病室も生命繊維の研究棟の一部ですから…。そして、これが流子さんの極制服です」
流子「極制服…」
伊織「残っている全ての生命繊維をつぎ込んでも、40%が限界でした。それに今の流子さんの身体にも、神衣は負担が大きすぎる。…神衣と同じで、何ができて何ができないかは、着てみないとわかりません。着るのは初めてですよね? 極制服は、血液を吸わせなくても気合を入れれば変身できるようになっています」
流子「わかった」
伊織「では、発射しますよ!」
流子「…頼む!」
伊織「」レバーがこんっ!
どびゅーんっ!
―施設―
ちび「むにゃ、あれ…流子ちゃんは…?」
揃「もう、行かれましたよ」
ちび「…行かせちゃだめだよっ!」
揃「どうしてですか?」
ちび「流子ちゃん、怖がってたよ! もう戦わなくていいよ! もう、流子ちゃん虫と戦わなくていいよ!」
揃「…ですが……」
ちび「流子ちゃぁあーんっ!!」
扉 ガーッ びゅんっ!!
揃「お待ちください、ちびさん!」ダッ、
揃「」
揃「……どちらへ行かれたんでしょうか…?」
―地上―
猿投山「くそっ、このっ、・・・動けんッ!!」
蟇郡「ぐぬぬぬぬ・・・!」
犬牟田「無理そうだね。無駄に力を入れて体力を削るよりは、じっとしておいて対策を練ったほうがよさそうだ」
猿投山「むっ…! 何か降ってくるぞ!」
ひゅぅうーん・・・
どかっ!!
蛇崩「クローゼットぉ? 一体誰が…っ!?」
マコ「もしかしてっ…!」
猿投山「この気配…まさかっ!」
バンッ!
「…対虚維蛾特化型、四つ星極制服…」
大暮「欺の装!」
マコ「」
↑大暮「やーいやーいだーまさーれたぁー!!!」
流子「舞闘の装!」
マコ「流子ちゃんっ!? 目、覚めたんだっ! よかったぁー!!」
蛇崩「この状況で、なに極制服なんか着て来てんのよ!」
猿投山「四つ星だとっ? …その上、レースがフリフリだとぉっ!?」
犬牟田「ありゃ、パニエだね。バレエでも踊る気なのかな?」
流子「細かいことは後だ! …いくぞっ、」
ちび『うわぁあああーんダメだよぉおお!!!』ビエー!
流子「っ!?」
マコ「わっ、ちびっ!?」
猿投山「ぐわぁっ、いきなりなんだぁっ!?」キーン
ちび『流子ちゃん怖がってたよぉ、もう行っちゃダメだよ、一人じゃだめだよぉ!!!』ポロポロ
大暮『美木杉あんたぁっ、扉の鍵くらいちゃんと閉めときなさいよ!』
美木杉『閉め忘れるのはいつも君でしょうが!』
蟇郡「こら、ちびぃっ!!」
ちび『流子ちゃぁーん』ポロポ
皐月『ええいうるさいっ! 誰か外に連れて――』
流子「ミュージック、スタァートッ!!」
カチッ!
しゃららららららららぁーんっ♪
大暮『…なに、この音』
ちび『…ふぇ?』ピタ
タンッタンッタンッタン♪
流子「――倫敦どんより晴れたら巴里♪ カルメン麺よりパエリヤ好き♪」
蛇崩「…何の歌、これ…?」
流子「スペードの女王~♪ 気まぐれ屋さん~♪」
猿投山「 ……纏、何を…?」
流子「きっと♪」タンッタンッタンッタンッ♪
小清水ボイス最高!↓明日のナージャed
https://www.youtube.com/watch?v=EWxhLH6aCLg
皐月『』
蛇崩「…」
猿投山「……」
蟇郡「」
犬牟田「」カチャカチャカチャカチャカチャッ!
流子「…なやんだッてムダよ♪ けせら・せら~せら♪ せら♪」クルクル
黄長瀬『あいつは何をやっているんだ…!?』ガビン
皐月『…歌って、踊っているようだな』
ちび『……』ジィーッ
美木杉(…あ、泣きやんでる)
流子「あしたなんていつもなるように~♪ なる・なる♪」
蟲「」ピクッ・・・
蟲「」ニョキニョキニョキ・・・
函館「蟲の周りの生命繊維が、棘みたいに――」
袋田「…まさか、あれをこっちに撃ってくるんじゃぁ」
蟲「」ドドッドドッドドッ!
蟇郡「まずいっ、棘が纏の方に!」
ギュイイイインッ!
マコ「――流子ちゃん危ないっ!!」
流子「……」タンッタタン♪
又郎「――鎌風アタァック!!」
シャキィインッ!
流子「世界カエル飛びコンクール♪ 優勝したよ♪ アマガエル~」
又郎「流子の姉御ぉ、歌ってる場合じゃないって!」
蛇崩「っていうか、あんた何で動けてんのよ!?」
又郎「…あれ!?」
流子「子猫ちゃんの足のうらは~♪ お天道さまのにおいだね♪」
蟇郡「…む? 身体が動くぞ!?」
流子「道草している♪ 場合じゃないね~」
蟲「」ドドッドドドッ!
ズバァンッ! シュタッ!
猿投山「…極制服が、また動けるようになっている! どーいうことだこれはぁっ!」
犬牟田「それだけじゃないね。先ほどまで感じていた恐怖が和らいでいる…。パワーアップも、十年前の全盛期以上の数値に上がっているよ」カチャカチャ
猿投山「なにっ!?」
犬牟田「――どうやら、この歌のおかげみたいだね。 纏の極制服から、蟲の音波を打ち消す特殊な波長が発せられている」
猿投山「そんなバカなっ!」
蛇崩「こんなアホみたいな歌詞の歌でぇ?」
伊織『驚いた…まさかこれほどとは』
蛇崩「あんた、何で蟲が生命繊維を無力化すること知ってたのよ!?」
伊織『いや、僕は流子さんの特性に合わせて極制服を作っただけだ。蟲のことは知らなかった』
美木杉『流子くんの特性?』
伊織『≪鮮血無拍子≫だよ。…塔首頂上決戦での、蛇崩乃音と流子さんとの戦いは、他の試合とは異質だった。相手の音を純音にし、自分の音に変えて弾き返す。音の衝撃波を生み出したのは神衣だったとしても、その発想力と、瞬時に最適なポーズを見つけ出したセンスとは、生命繊維とは関係のない、流子さん自身の才能だ!』
皐月『流子自身の……』
流子「きっと♪ きっと♪」タタタンッ♪
大暮『纏流子が歌っている間は、極制服が使えるってこと?』
伊織『それだけじゃない。…≪舞闘の装≫の本領は、これからだよ』
美木杉『本領…?』
ジャーンッ♪
ワーンワーンワーンワーンワー・・・
流子「……こっから先は、曲は要らねぇ! お前らのテーマだけで、十分だっ!」
蛇崩「はぁ?」
流子「――舞闘の装、バレエ!」アン・ドゥオール!
パーッパパパーッパパパーッ!
流子「わかる…お前らの鼓動……」アラベスク! アティチュード!
チャッチャチャチャラッチャチャッチャ チャチャチャ♪
蛇崩「…何これ!? 極制服が…力がみなぎってく!」
犬牟田「纏流子の極制服から発せられる音波が、蟲の発する音波を掻き乱しているね。…いや、それだけじゃない。狙った生命繊維の鼓動を掴み、最高のパフォーマンスを発揮させている…」
伊織『――これが、この極制服の変身形態こそが、今まで運命の手のひらの上で踊らされ続けてきた流子さんが、自分から踊ることを選択したあかs』
マコ「すごーいっ! 流子ちゃん、ナージャちゃんみたいっ!」
蟲「」ドドドドッ!
ギュゥウンッ!
美木杉『また棘が流子くんの方にっ!』
皐月『――流子っ!』
流子「舞闘の装、アイリッシュダンス(ステップダンス)!」タンタンタタタンッタンッ!
――バシュッ!
猿投山「……このっ、」ギリギリ・・・
流子「助かった、ありがと!」タンッ♪
猿投山「纏! なぜ攻撃しないっ!?」
流子「…だって、踊るの止めたら、また固まっちまうだろ!」タッタタタタンッ♪
伊織『……まさか、 流子さんの極制服には、攻撃形態も防御形態も存在しないのか!?』
蛇崩「はぁ!? 何それっ!」
伊織『蟇郡苛の極制服がSMプレイであるように、犬牟田宝火の極制服がポリゴンであるように、生命繊維は着用者の内面を露骨に表現した変身形態をとる。蛇崩乃音のように、才能や役割に合わせて発現する場合も、猿投山渦のように着用者の成長によって形態が変わることもあるが、基本的にそれは変わらない!』
犬牟田「今まで常に戦いの中心にいた纏流子の内面が選んだのは、サポート役だったということか…興味深いね」カチャカチャ
流子「…扉は、私がこじ開ける! ――あとは、お前らに任せたっ!!!」
美木杉『流子くん、この蟲の変化は一体――!?』
流子「繭を作って、蛹になろうとしてるんだ! 繭の中に入られたら終わりだ、時間が無いっ!」タンッ♪
大暮『もうあらかた繭に覆われちゃってんじゃないの!』
犬牟田「なるほどね…」キュイイッ!
蟲「」ドドドドドッ!
犬牟田「はっはっはっは。もうその攻撃はパターン化済みだよ」ズシャシャシャッ!
ピンッポン サッキュレイ♪
流子「舞闘の装、一人スクウェアダンス!」バンッ!
皐月『衣装が変わった…!』
ピンポンピンポンサキュレイッ♪
流子(跳んで、跳んで、回って、位置交換っ!)タンタンタンッ♪
蟲「」ドドドドドド――
猿投山「…突きぃいいい!!!」ドウッ!
チャーチャラーララーラララー♪ タータララーラーッ チャーララーラー♪
流子「舞闘の装、よさこいソーラン節っ!」セイヤッ!
チャラララーラーラー♪ チャラララララー♪
流子「ハーッ! サッ、ソレ! ハイッ! ヤーッ!!」
蟇郡「ぬおおおおお!!!」
ダッダダダラッダダダ♪ アアァアアアー♪
流子「――舞闘の装、ベリーダンス!」クネッ
又郎&猿投山「!!!」バッ!
大暮『そこぉっ! よそ見をしない!!』ポチッ
ばっこぉおおんっ!
蟲「」シーン
蟲「」シーン
大暮『…効かないっ!? どんだけ硬いのよ、あの繭…!』
犬牟田「硬化生命繊維でできているようだね。普通の爆弾じゃ傷も付けられない」カチャカチャ
流子「舞闘の装、フラメンコ!」ダンダダダンダダダンッ オレッ♪
皐月『犬牟田、蟲の弱点を分析しろ! 蛇崩と蟇郡は、繭を破れるかどうか試してくれ! 別働隊は流子の援護をしろ!』
猿投山「皐月様、俺は」
皐月『頼んだぞ、皆!』
犬蛇蟇マ又函袋「「はっ!」」
猿投山「皐月様、俺はっ!?」
蟲「」ビシュッ!
流子「…うわっ!?」ピトッ!
マコ「流子ちゃんっ!」ダッ
流子「な、なんだこれっ!? 触手みたいのが極制服にくっ付いて――」
ビビビビビビビッ!
流子「…うああああっ!」キラキラッ!
皐月『流子っ!』
蟲「」ビシュッ
蟲「」ビシュッビシュッ!
マコ「うわぁっ!? 私のとこにもくっついてるよ!?」
袋田「…って、俺のとこにもくっ付いてやが――」
ビビビビビ
マコ&袋田「うわあ!?」キラキラキラッ
流子「……うそだろ、極制服がっ!」下着姿
マコ「――そんなっ! 今日見せパンじゃないのに!」下着姿
袋田「…俺の極制服は、ボクサーパンツだからな…」まっぱ
美木杉『…蟲に吸収されたのか!? まずい、触手に触れるな!』
蛇崩「そんなこと言われたって、固まっちゃって動けないわよぉ!」ギシギシ・・・
蟇郡「ぬおおおおお…!!!」ギシッ・・・!
蟲「」ビシュッ ビシュッ!
NB兵「…生命繊維回収機にまで……!」ピトッ!
蟲「」ビシュッ ビシュビシュビシュッ!
ピトッ ビビビビビビビビ!
大暮『――極制服は、蟲にすべて吸収されました! 生命繊維回収機で回収していた分も、吸収されるのは時間の問題かと』
犬牟田「…極制服を吸収されて、動けるようにはなったけど…攻撃手段を失ったね」カチャカチャ
猿投山「何だこいつら、ハサミまで狙ってきてるぞ!」キンッキンッ、ビシュッ!
伊織『片太刀バサミは硬化生命繊維でできている。生命繊維を吸収するための触手だとしたら、ハサミが狙われるのも当然だ』
美木杉『…今は、蟲を貫ける可能性があるのはそのハサミだけだ! 吸収されるとまずい!』
又郎「くっ、この野郎っ! 服だけじゃなくハサミまで剥ぎ取ろうってえのか!?」カンッ ヒュンッ!
カンッ――
又郎「しまった! ハサミが――」
蟇郡「うおおおおおおお!!!」ダダダダッ
がしぃっ! ブチィッ!
函館「触手を、素手で引きちぎった!」
蟇郡「……」鋏くるくるくるっ
じゃきんっ!!!
蟲「」シュゥ・・・
蟲「」シュゥウ・・・
大暮『蟲が、ほとんど繭に覆われてしまっています!もう人一人分の隙間くらいしか…どうすんのっ!? 誰か突っ込むしかないじゃないっ!』
美木杉『これは…もう、打つ手が…』
犬牟田「皐月様! 分析の結果が出ました。弱点と言えるのは、繭を作るために糸を出している部分のみです。そこを塞げば、奴らはこれ以上繭を作れなくなります。少なくとも、時間は稼げるはずです」
大暮『でも、そんなとこ繭の内部に入らなきゃ届かないじゃない! 繭も、もうすぐ完成しちゃうわよっ!』
美木杉『――穴が塞がり始めている! 片太刀バサミを持った二人で、それぞれ二匹に突入し、ハサミを突き立ててくれ! 時間が無い!』
猿投山「よしっ、 いくz」ダッ、
流子「――猿投山!」
猿投山「ん?」
流子「ハサミ、必ず返せよ!」
猿投山「…おう!」
蟇郡「行くぞ猿投山ぁああ!!!」ダッ
猿投山「ああ! 行くぜぇえええ!!!」トウッ
突入っ!!!
蟇郡「うおおおおお!!!」鋏ブン投げッ!
猿投山「突きぃいいい!!!」
蟲「」ぐさっ!
蟲「」ぶすっ!
蟇郡「む!」
猿投山「…入ったっ!!」
蟲「ギシャァアアアアア」
蟲「ギイィイイイイイギイィイイ!」
ズボッ
猿投山「うおっ!? 蟲の中に引きずりこまれ――!?」
流子「猿投山っ!?」
又郎「流子の姉御っ、俺が出るかr」
皐月『いや、まだ待て。様子を――』
カッ――――――
流子「え」
皐月『――っ! 蟲から離れろっ、蟇ご』
ドドドッドドカァアアアアアンッッ!!!!!!
蟇郡「――ぬおおおおっ!?」
流子「…!!」
又郎「うわっち!?」
パラ…パラ…パラ・・・
蛇崩「蟲が、二匹とも爆発した…!?」
人「」ヒューン
人「」ヒューン!
猫「」ヒューンッ!
猿「」ヒュゥーンッ!
マコ「み、見て! 中の人が生命繊維に包まれたまま、バラバラに飛んで行ってるよっ!」
蟇郡「何がどうなっている…?」
犬牟田「――そうか、ハサミだっ!」
大暮『どういうこと!?』
犬牟田「」ぱかっ スゥーッ
犬牟田「片太刀バサミは、硬化生命繊維でできている。十年前、羅暁との戦いで纏が出した『絶対服従』の命令が、まだ片太刀バサミの中では有効だったとしたらっ。蟲が片太刀バサミを体内に取り込んだことによって、片太刀バサミから『すべての人間を、元に戻せ』という命令が蟲の体内の生命繊維に伝わったとしたら!」
伊織『それぞれの生命繊維が、包んでいる生命体の記憶に基づき、元居た場所に帰ろうとする…。それによって、虚維蛾の中のエネルギーバランスが崩れ、縫散団子と同じような効果が得られたという訳か…!』
美木杉『飲まれていた動物も、元の場所に帰っていくみたいだねぇ…。ゾウとかライオンとか取り残されたらどうしようかと思ってたけど、大丈夫そうだ…』
犬牟田「生命繊維にとっては、ヒトも他の動物も変わらないんだろうね。裸のサルとか、服を着た豚とか言ってたし」
黄長瀬「もう、蟲は地球上に居ない。…生命繊維も、見た感じ、あのまま全て燃え尽きるだろうな」
蛇崩「じゃぁ、これで、」
皐月『戦いは終わりだ。……これからは、片付けで忙しくなるな』
マコ「―――やったぁー!」
流子「……」へたっ…
マコ「流子ちゃんっ、やった、やったよぉ! これで、お互い普通の女の子に戻れるよっ!」
又郎「女の子って年じゃねぇだろ、姉ちゃん…」
マコ「女性に年齢のことは言わないの!」ギリギリギリ
又郎「ごめんなさいごめんなさい!」バンッバンッ!
流子「…な、なぁ」
蛇崩「どーしたのよっ、浮かない顔でっ!」ポンッ!
流子「…なんか、誰も言わないのが逆に不思議なんだが…」
蟇郡「マコ、その、離婚のことなんだが、考え直してもらえんか…?」
マコ「…苛くん!」
蟇郡「なんだ!」
マコ「今回、苛くんは、きちんと自分のことも守れました!」
蟇郡「う、うむ」
マコ「だから、…だから、マコが側に居てあげられなくても、きっと苛くんはもう大丈夫です!」
蟇郡「ぬ!?」
マコ「…軍なんかに行ったら、すぐに死んじゃうと思ってました。でも、きっと苛くんなら大丈夫です。マコは、苛くんのことを信じることにしました!」
蟇郡「そ、それはどういう…」
マコ「…すぐ近くで支えてあげられなくなるのが嫌だったの。でも、苛くんがそう決めたんだったら、私だって心決めるよっ! だから、もう一度、蟇郡マコになっても、…いいですか?」
蟇郡「…そもそも、まだ離婚をしていないではないか…!」がしっ
マコ「苛くん…」///
蟇郡「マコ…」///
流子「……猿投山、どこ行ったんだ?」
蛇崩「あ」
犬牟田「…そういや、居ないね」
大暮『…爆発で吹き飛んだんじゃないの?』
流子「え?」
大暮『あの規模の爆発に、あの至近距離でしょ。生身の人間じゃ、バラバラになってるのが普通よ。欠片も見つからなかったとしても、不思議じゃないわ』
皐月『いや、猿投山のスピードなら逃げられたはずだ。爆発も予見できていただろうしな』
犬牟田「…皐月様、残念ながら」カチャカチャッ・・・
皐月『む?』
犬牟田「さきほどの映像を解析した結果、猿投山は爆発を回避できていません。強く握っていたせいか、ハサミごと蟲の中に引きずり込まれています」
流子「…ハサミを?」
大暮『ハサミなんて、すぐ離しちゃえばよかったのに。何でそんなずっと握ってたりなんか――』
蟇郡「大暮、」
大暮『一緒に引きずり込まれるなんて、n』
蟇郡「それ以上言うな、大暮麻衣子ぉおおっ!!!」
大暮『ひっ! 蟇郡様っ…!』
流子「……」
マコ「流子ちゃん…」
流子「…は、ははは」
皐月『…流子?』
流子「あいつが、こんなんで死ぬ訳ないだろ。ったく、どうせどっかでひっくり返ってんだろ! 仕方ねぇ、探してやらねーとな!」
蛇崩「妹ちゃん、でも」
流子「おーい、猿投山ー! 居るんだろー!」
皐月『――ヘリを出せ。蟲が居なくなった今なら、使えるはずだ。爆発の衝撃で気を失っている可能性もある。付近を捜索しよう』
蛇崩「皐月ちゃん、でも――」
皐月『…気のすむまで、探してやろう』
黄長瀬(…まだ死んだと決まった訳じゃないと思うが)
流子「猿投山ぁー! さーなーげーやーまー!」
犬牟田「…あれ、この映像で、飛んでる人たちに混じってるこれってもしかして」
蟇郡「何をしているか犬牟田ぁ! 俺たちも探すぞ!」ぐいっ
犬牟田「え。あ、いや、でも、この映像の」
流子「猿投山ぁあー!!!」
ヘリ バラバラバラバラ・・・!
皐月『……惜しい男を亡くしたな…』
美木杉『…安らかに……』
黄長瀬(…あきらめが早すぎないか?)
大暮『…まぁ、こういうのに犠牲は付き物よ…』
蛇崩「…考えようによっては、良い散り方だったかもしれないわね…」
黄長瀬(むしろ、全力で死んだことにしようとしてないか…?)
犬牟田「……ま、いいや。誰も聞いてくれないし…気のせいかもしれないし…」
流子「どこにいるんだよぉおー! いい加減出てこいやぁー!」
―三日後―
…あの時。
「ハサミ、必ず返せよ」
「…おう!」
素直に、「ちゃんと戻ってこいよ」って言えばよかった。
―地上―
ちび「…流子ちゃん……」
流子「…どした、ちび」
ちび「……誰だったの? 王子様」
流子「…知りたい?」
ちび「なんかね。流子ちゃんが寝てた時にね、さなげやまさんがハサミ取りに来てね、あの話したの。そしたら、『だれのことだぁっ!?』ってすごい聞いてきたの」
流子「ははは…。あの話の王子様はね、」
ちび「うん」
流子「皐月さまだよ。学生のころに、『一緒に暮らそう』って言われてたけど、断ったんだ」
ちび「へぇー」
流子「…今なら、私の方が弱いかもなぁ…。まぁ、あちらさんには旦那も居るし、今さら一緒に暮らすも何も、ないけどな…」
猿投山「なにっ、そんなバカなっ! 期待しちまったじゃねえか!」
流子「んなもん、勘違いするほうがわりぃじゃねぇか…」
流子「……ん?」
猿投山「三日ぶりだな纏流子!」
流子「」
ちび「死んでなかったんだ!」
猿投山「…死んだことになってたのか!?」
ちび「みんな死んだと思ってるよ!」
猿投山「参ったな…。いやー、気が付いたら実家に居てさぁ。あ、これ、土産のコンニャぐふぅっ!!?」バキィッ!
猿投山「な、なぜ殴るまと――」
流子「…………」ゴゴゴゴ
猿投山「…ま、纏。怒っているのか…?」
流子「…ああ。ものすごく怒ってる」
猿投山「な、なぜ」
流子「へぇ、わからないんだー。わからないなら、わからなくってもいいよー」
猿投山「…なんか、怖いぞ纏。いつもと違う感じで怖いぞ」
流子「…そーいや、まだ付いてなかったなぁ…」ゴゴゴ
猿投山「な、何がだっ!?」ジリ・・・
流子「勝負の決着だ…いくぜっ!!!」ダッ
―会議室―
皐月「まず、宝多財閥に委託してここら辺の建物を――」
扉 ガーッ
ちび「さなげやまさん帰ってきたよ?」
マコ「あれ、ちび! 今日も学校さぼって」
ちび「今日はお休みだよ!」
蟇郡「ならばよし」
犬牟田「ふうん。やっぱり生きてたんだ」カチャカチャ
蛇崩「やっぱり?」
犬牟田「映像を分析したら、飛んでいっている人たちに混じって猿投山らしき人影も見えたんだよね」
美木杉「そういうこと、早く言ってよ…」
犬牟田「言ったけど、君たち聞いてくれなかったじゃないか」
黄長瀬「…で、そいつは今どこに居るんだ?」
ちび「外!」
大暮「カメラに写ってるかもね…。あポチっとな♪」リモコン ピッ
映像 ぱっ
『うおおおおおお!!!』
『メェエーーーン!!!』
――ガツゥウウンッ!!!
蛇崩「って、妹ちゃんとケンカしてるし」
黄長瀬「素手vs竹刀…。フェアなのか?」
『貴様の動きはすべて見切ったぁああ!』
『はんっ、どうだか!』
バキィッ!!!
『なにっ、竹刀が―――っ!!?』
犬牟田「竹刀が纏に折られたね。これで素手vs素手になった」
大暮「…なんか、二人とも楽しそうね。邪魔してやろうかしら」
美木杉「やめときなよ…」
『うらぁあああ!!!』
『おおおおお!!!』ドコッ!
『かはっ……!』
マコ「流子ちゃんっ!」
又郎「負けるな頑張れ流子の姉御ぉー!」
『…このっ、』
ゲシッ!
『ぐぁあああっ!!』
蟇郡「何をしているか猿投山ぁあああ!」
皐月「……」プルプル
ちび「…さつきさま?」
蛇崩「!? どうしたのっ、皐月ちゃん!」
皐月「…いや、・・・嬉しくて…」ぐすっ
大暮「…え、この光景のどこが?」
皐月「……こんなに楽しそうに暴れている流子は、久しぶりに見た…」ウルウル
美木杉「…確かに、生命繊維と融合していると知ってからの流子くんは、普通の人間相手に本気を出せなかったからねぇ」
『――だぁあああああ!!!』
『――でりゃぁああああ!!!』
ガッ――――――!!!
黄長瀬「…クロスカウンター!?」
皐月「…勝負、あったな」フッ
『……っ』どさっ
『……ふっふっふっふ…ふははははははっ!!!』
マコ「…流子ちゃんっ!!!」
『…うっ…』ピクッ
『ほう、気が付いたか! 早いな!』
『…負けた?』
『ああ』
『あー、そーか、負けたのかぁー!!!』ごろんっ
大暮「? パンチは同時だったじゃない。なんで纏流子が負けたの?」
犬牟田「勝敗を分けたのは、腕の長さだね。猿投山の方が、纏流子よりも若干リーチが長かった。僅差の勝利ってことさ」カチャカチャ
―地上―
猿投山「……初めて勝ったな!」
流子「初めて負けたな」
猿投山「さて、立てるか、纏」
流子「ダメ」
猿投山「…仕方ねェな。手貸すから――」サッ
流子「……」ギュッ・・・
猿投山「…纏?」
流子「もう少し、このままで」ギュウ
猿投山「仕方ねぇなぁ…」
流子「やっぱ、かなーり、悔しいな…」
猿投山「ん?」
流子「負けるの」
猿投山「だろうな!」
流子「…いろいろ落ち着いたらさ、また喧嘩しような」
猿投山「受けて立つ! …だが、次も勝つのはこの俺だぞ纏!」
流子「けっ、しゃらくせぇ。次勝つのは私だ!」
猿投山「そしたら、その次に、またお前を倒す!」
流子「その後、私が勝ち返す!」
猿投山「笑止っ! そしたら俺が――」
流子「――ぷっははっ! これじゃ、いつまで経っても終わらねーじゃねェか」
猿投山「人生はまだ長い。気の済むまで、死ぬまで二人で喧嘩したとしても、あと半世紀は楽しめる」
流子「……いいのか、私で」
猿投山「ん?」
流子「他にも、強い奴は居るだろ?」
猿投山「そうだな…。見つけた端からぶちのめしていきたい気持ちもあるが、今のところ、お前との喧嘩が一番楽しい。多分これからもな」
流子「…奇遇だなぁ。私もだ」
猿投山「…どうする? 纏流子」
流子「…売られた喧嘩は、買うのが信条だ。受けてやるよ、猿投山渦」腕ぐいっ!
猿投山「うおっ、」
猿投山「……」
流子「……」
皐月「…いつまでそうしているつもりだ?」
流子「――皐月!?」ぱっ
猿投山「これは皐月様。これ、土産の糸こんにゃくです」
皐月「ありがとう。…そうだな、今晩はみんなで鍋でも囲むか?」
マコ「いいですねいいですねっ!」
猿投山「皐月様、俺が腕によりをかけて絶品鍋を作りますよ!」
犬牟田「コンニャク以外の具も入れてくれよ。君ならコンニャクだけでやりかねないからね」
蛇崩「…冷えてきたわ。皐月ちゃん、中に入りましょーよ!」
皐月「そうだな。…ん」
流子「どうした、皐月…」ハッ
美木杉「…夕日が、きれいだねぇ」
流子「…ここ、元みたいな町に、ちゃんと戻るかな」
皐月「戻すさ。私達には、明日も、明後日も、明々後日もあるのだから」
猿投山「……そうだ、俺たちには、明日があるさ!」
蛇崩「……」ペッ!
流子「?」
明日があるさ-ジョージアで行きましょう編-
作詞:青島幸男 作曲:中村八大
http://www.kasi-time.com/item-25775.html
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、NBかっけー、って思ったのが始まりでした
本当は服着てなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので裸で挑んでみた所存ですw
以下、裸のヌーディスト 達のみんなへのメッセジをどぞ
美木杉「みんな、脱いでくれてありがとう…
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね…」乳首ポワー
犬牟田「いやーありがと!
俺のかわいさは二十分に伝わったかな?」カチャカチャ
蟇郡「脱いでくれたのは嬉しいが、ちょっと恥ずかしい・・・」///
蛹山「脱いでくれありがとな!
正直、作中で言った俺の気持ちは本当だよ!」
黄長瀬「・・・ありがと」
☆ファサ☆
では、
美木杉、犬牟田、蟇郡、蛹山、黄長瀬、俺「皆さんありがとうございました!」
終
美木杉、犬牟田、蟇郡、蛹山、黄長瀬「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり
…すみません調子に乗りました。読んでくれた方、ありがとうございました。さよなら…
衝撃のラスト
猿投山と流子のそれからをkwsk
正直、≫30で終わってればよかったと思います。
でももう遅いね。おまけ書いて去ります。
―1年後―
―中学校:一年三組―
流子「――その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。怪しがりて、寄りて見るに、」カッ カッ、
ガヤガヤ ザワザワ
流子「……はいはい、ここは動物園かなー? 静かにしなさーい」
生徒「纏先生ぇー、校門のとこに変な人が居るー」
流子「えっ!」
生徒「なんかこっちに向かって手ぇ振ってるみたい」
流子「…ちょ、ちょっと見せて――」窓ガラッ!
猿投山「」手ヒラヒラ
流子「あのヤロッ…! 時間にゃまだ早いだろ…!」///
生徒「…纏先生の彼氏ぃーっ!?」
生徒「お前、知らねェの? 旦那だろ」
生徒「この授業終わったら、式場見に行くんでしょー!?」
流子「――なっ! だ、誰から聞いたの!?」
生徒「学年主任がHRの度に言いふらしてんぞ」
流子「あんの野郎っ――・・・じゃなかった、んもう、学年主任の先生ったらぁ!」
生徒「纏せんせーがブリッこしてるー」
生徒「三十路直前なのにぃー」
流子「ぅるっせ! ほら、次の行まで終わらせるぞ!//// ――筒の中光りたり。それを」
キーン コーン カーン コーン♪
流子「あっ…授業が…」チョーク ポロッ
生徒「旦那さん待ってるよー」
生徒「今度なれそめ聞かせてー!」
生徒「おい、さっさと日直 号令しろよ誰だよ!…あ俺だわ」
流子「範囲が…試験範囲が…ただでさえギリギリなのに…」
生徒「きりーつ!礼!着席!」
流子「…行ってくる」/// ダッ
生徒達「「ひゅーひゅーっ」」
―校門―
タッタッタ・・・
流子「…お前、早すぎっ!」
猿投山「わりぃわりぃ。早く片付いたからさ」
流子「ったく…」
窓 ガラッ
生徒「纏先生ぇー! 幸せにしてもらえよー!」
流子「――あっ、高橋! このっ、次の授業で当ててやるからな覚えときなさ」
猿投山「おう! 幸せにするよ!」
流子「…お前…明日も授業はあるんだぞ…」///
猿投山「じゃ、そろそろ行くぞ。乗れよ流子」
流子「…おう」・・・ギュッ
自転車 チリーンッ!
流子「…なぁ、」
猿投山「ん?」
流子「私、今、すっっごい幸せだ!」
猿投山「…すまん風が強くてよく聞こえなかった!」
流子「――なんでもねぇよっ!」///
猿投山「お前重いぞー。食いすぎだ!」
流子「しっつれいなっ! 私はそんなに太ってねぇぞ!! ・・・あ」
猿投山「どうした?」
流子「……今のやりとり…」
猿投山「鮮血、か?」
流子「…うん。もう、12年も前なのにな」
猿投山「そうか。もう、そんな経ったか…」
流子「……」ギュッ
猿投山「……」
流子「……」ボソッ
猿投山「! ああ、俺もだ」
流子「…風が強くて聞こえなかったーっ! もっかい言ってーっ!」
猿投山「――好きだ流子ぉー!!!」
流子「バカ声がでかいっ!!!」/////
おわり
長々と付き合ってくれてありがとう。終わります。
≫365 これが精いっぱいだ。すまん。物足りなかったら乗っ取ってくれ。
キルラキルのss増えろー
素直な流子くっそかわいいな
いやいやこれを乗っ取るなんて恐れ多いわ ありがとう!!!乙!!!!
このSSまとめへのコメント
いい話だった♪
あとは乃音ちゃんと犬君がくっついてくれたらな(個人的願望)~