そんな彼は人当たりが良く村の人々、それも子供達は彼が作るお面を心待ちにしていました。

ある日、とある子供は何故いつもお面を付けているのかと問いました。

ツラオクは「お面を付けているとお面の心が分かるんだよ。それはお面を作るときにとても大切なものなんだ」

と答えました。

またある日、とある人は何故お面を作るのかと問いました。

ツラオクは「お面を作ることで自分でもお面に魂を込める事が出来るからさ。そうして出来たお面には心が宿るんだよ」

と答えました。

またまたある日、とある老人は何故そんなにも素晴らしいお面が作れるのか問いました。

ツラオクは「素晴らしいお面を作ろうとはしていない。お面の声に耳を傾ければ自ずと形が出来てくるものだよ」

と答えました。

そう言いながら作られたお面は狐でも天狗でもどこか嬉しそうに見えました。

そして素晴らしい腕前のお面職人がいるという噂を聞きつけたお殿様は何かお面を作れとツラオクに命じました。

どうやらお殿様はそれを自分のお屋敷に飾るつもりのようです。

しかしツラオクは「お面は被ってこそのものです。飾るものなどではありません」とこれを断りました。

それを聞いたお殿様は大笑いし、今度は自分が被るためにお面を作るように命じました。

これにはツラオクも快諾し火男のお面を献上しました。

これを被った殿様は酒の席で滑稽な舞を披露し、今までよりも親しみある君主となりました。

そして時は流れ、桜が三回ほど散った頃隣の国の大国が攻めてきました。

攻め込まれた小さな国は戦いましたがどうにも劣勢です。

戦火はツラオクが住む村にまで迫ってきました

心優しいお殿様は悩みました。

しかし終には民衆も戦いに駆り出されることになりました。

ツラオクは戦うことを頑なに拒みました。平穏を壊したくなかったからです。

全員で戦えば戦いには勝てるかもしれません。しかしそれは多くの犠牲が伴います

そんなツラオクを理解している心優しい村人達が兵士になり、戦い、倒れていきました。

戦いで村は荒れ果て、もう住むことは出来ないほどでした。

それでもツラオクはいつか建て直せばいいと思っていました。

しかしツラオクは気付いてしまいました。大人は皆戦場へ行き、残ったのは女子供に年寄りだけだということに。

さらに長い戦いで食べるものも無くなり、

自分を慕ってくれた子供も、

自分に良くしてくれた人も、

自分の才能を賞賛してくれた老人も

皆いなくなってしまいました。

このことにようやく気付いたツラオクは深く嘆きました。そしてもう一つ気付いてしまいました。

もう平穏は戻ってこないと、戦いがすべてを奪ってしまったと。

ツラオクは泣きました。声を上げて泣きました。一頻り泣いたツラオクはお城へ向かって歩き出しました。

その手には鬼の面がありました。

お殿様はあれだけ戦いを恐れていたツラオクが来たことにとても驚きました。しかし少しでも兵が増えるのならと

ツラオクを戦いへ送り出しました。

そして長きに渡り抵抗を続けた小さな国はどうにか勝利を収めることが出来ました。

敗北した大国では「鬼の面を被り涙を流しながら兵を切る兵」の噂が広がっていました。

この兵は戦が終わったと知ると暫く一人で佇んでいましたがふらりと歩き出すとそのままどこかへ行ってしまったそうです。

その兵が誰なのかを知っている今では唯一人の人物となってしまったお殿様はその兵を探し、あるお面職人の家を訪ねました。

しかしその家には誰もいませんでした、代わりに涙で赤色が落ち白色になってしまった悲しげな鬼の面が残されていました。

これを見たお殿様はたいそう悲しみ、この鬼の面を持ち帰りました。

その後の兵士の行方を知るものは誰もおらず、

ある人は別の所で暮らしてるのだろうと、

またある人は行き倒れてしまったんじゃないかと、

またまたある人は本当に鬼になってしまったのではないかと。

それでも彼のその後を知るものは誰もいませんでした。

そして彼の家に残されたお面は最初はそのまま家に置かれていましたが村を建て直した後に住み着いた人々が貰っていきました。

するとどこか悲しげだったお面達はどこか嬉しそうな雰囲気を出し、新しい村人の元へ貰われていきました。

しかしお殿様が持ち帰った鬼の面はいつまで経っても悲しそうです。

お殿様が年をとり、村人達の孫の代になってもその孫の代になっても

この鬼の面なのに悲しげな可笑しなお面はいつまでもいつまでも変わりませんでしたとさ。

くぅ～疲ｒｙ
見てる人もいないでしょうが一応終了です
般若のお面を見て突然この物語が浮かんできたんです
どうでもいいことですが
ツラオク
面→ツラ
屋→オクですね
また気が向いたら昔話で何か立ててると思います
それではまた何処かで

乙でした！
物悲しく優しい話だな…
戦ｲｸﾅｲ!!

乙