にこ「なんでチョンマゲつけてるの?」絵里「キャラ作りよ!」 (26)

にこ「なにそのチョンマゲ……」

絵里「ポニーテールかと思ったらチョンマゲ!
ちょっと面白いと思わない?」

にこ「………面白いわね。お笑い芸人でも目指してるの?」

絵里「そうそう、今度『ゴールデンちょんまげ』って芸名でデビューするのよー……ってんなわけあるかいっ!」

にこ「( ゚д゚)」

絵里「ふぅー」髪をファサァ…

にこ「………」

絵里「今の、どうだったかしら」ニコッ

にこ「ど、どうとは……?」

絵里「私の新しいキャラクター!どうだったかしら!」ドンッ

にこ「う、うーん……?」

絵里「コンセプトはお笑い芸人型アイドルよ!」

にこ「………えーっと」

にこ「キャラを変えたい、ってことでいいのよね」

絵里「そうよ」

にこ「……色々ツッコミたいところはあるけど、一ついい?」

絵里「?」

にこ「なんでキャラクターを変えようと思ったの?」

絵里「テレビに出てくるアイドルってみんな個性的な娘ばかりじゃない?
だから私にもそういう個性が必要かなって」

にこ「なるほど」

絵里「個性派アイドル達から一歩抜きん出るには、
今までにないアイドル像が必要だと私は思った!」

絵里「そして!このキャラに行き着いたのよ!」

にこ「……ふむ」

にこ「着眼点は良いと思う」

絵里「でしょ?」ドヤァ

にこ「でも、個性的なキャラで勝負するのって結構リスキーよ?
もしお客さんに本性を気づかれでもしたら、絵里のアイドルイメージが急落するのはもちろん、
そのままミューズの印象も悪くなってしまう」

絵里「確かに……んー、やめたほうがいいのかしら……」

にこ「でも」

絵里「?」

にこ「1つだけ、安全安心なアイドルキャラがある……!」

絵里「!!!」

絵里「そ、それはどんなキャラなの?!」

にこ「ズバリっ、」

にこ「私みたいなキャラになればいいのよ!!

絵里「……えっ」

にこ「私のキャラなら難易度もそれほど高くないし、最低限の可愛さは確実に維持できる!
リスクも負担も少ない安定したキャラと言えるわ!」

絵里「なるほどね」

にこ「どうかしら!」

絵里「でも、にこのキャラは気色悪いからやりたくないわ」

にこ「……………あ?」

気色悪いわろた

絵里「それで、さっきの私のお笑いキャラは有りなの?無しなの?」

にこ「………」

絵里(ワクワク!)

にこ「有りね。完璧だと思う。言うことなし」

絵里「ほんと?!やった!!」

にこ「あ。良いところに花陽ちゃんがいた。
さっきのキャラ見せてくれば?きっと大絶賛よ」

絵里「えぇ、見せてくるわね!」ダダッ!

にこ(笑われてしまえ……)

絵里「はなよーっ!」トンッ!

花陽「ふにゃぁ!?」

絵里「ハラショ~」手をヒラヒラ

花陽「か、会長?!び、びっくりしたぁ……」

絵里「………」

花陽「え?え?どうしました?怖い顔して」

絵里「……コラッ」でこぴんっ!

花陽「ひゃあっ!?ご、ごめんなさいっ!!
何か気に障るようなことしましたか!?」

これはポンコツえりち

絵里「名前で呼び合う、ってこの前決めたじゃない」

花陽「あ……」

絵里「それとも……私の名前忘れちゃった?」

花陽「忘れるわけないです!絵里ちゃんです!……あっ……///」

絵里「ふふっ!その調子その調子!
それじゃあテイク2、行くわよ?」

花陽「は、はい!!」

絵里「…………」

花陽「…………」

絵里「あら?花陽じゃない!ハラショ~」

花陽「絵里ちゃん!ハラショーです!」

絵里「ちがうっ!」バチコン!

花陽「ええっ!?絵里ちゃんって言ったのにっ!!」

絵里「ハラショーは前の方にアクセントが来るの!
『腹ッ!昇!』みたいなイメージ!わかった?!」

花陽「わ、わかりました!!」

絵里「もっかい行くわよ!」

花陽「はい!」

にこ(何やってるのかしらあの娘達……)

絵里「出会いのシーン、テイク3いきまーす」

花陽「はーい」

絵里「花陽、ハラショ~」

花陽「絵里ちゃん!腹ッ!昇!!」

絵里「そのお弁当箱は……もしかしてこれからお昼?」

花陽「はい!」

絵里「花陽のお弁当ってどんな感じなの?見せて見せて」

花陽「はい!こんな感じです!」

絵里「白一色!米しか入ってない!!」

花陽「お米大好きなんです!」

絵里「この~米キチめ~!」ツンツーン

花陽「ツンツンしないでください~」キャッキャ

にこ「………」

えりちかわいい

絵里「それじゃ、また練習でね」

花陽「はい!また放課後に!」

絵里「ハラショ~」手をヒラヒラ

花陽「腹ッ!昇!」手をヒラヒラ

にこ「………」

絵里「ただいまー」トコトコ

にこ「……おかえり」

絵里「ねぇ、にこ」

にこ「……なに?」

絵里「まずいことになったわ……」

にこ「何が?」

絵里「新キャラを試すのすっかり忘れてたわ!!」

にこ「………」

にこ「……あほーあほー。絵里のあほー」

絵里「なっ!私あほじゃないわ!」

にこ「アホの子エリチカ。略してアホチカね」

絵里「アホじゃないもん!!生徒会長だもん!!」

にこ「……優等生キャラが完全に崩壊してるわよ?」

絵里「エリチカはアホチカじゃない!!」

にこ「ねぇ、アホチカ。
さっきのあんた達のやりとりで気づいたことがあるんだけど」

絵里「アホチカやめてよ!……で?何に気づいたの?」

にこ「花陽ちゃん、最後まであんたのチョンマゲに一度もツッコまなかったわね」

絵里「んー……?」
絵里「ハッ!!確かに!」

にこ「なんでだろ」

絵里「何故かしら……」

絵里「こんなに不自然なものが立ってるのよ?
普通ならすぐに気づいてツッコむわよね」

にこ「……もしかして気付いてなかったんじゃない?」

絵里「気づくでしょ普通。だってチョンマゲよ?
チョンマゲした制服女子なんて違和感の塊だわ」

にこ「そうよねぇ……んー……」
にこ「お昼のご飯のことで頭が一杯一杯だった、とか?」

絵里「花陽の場合、否定しきれないのが悲しいところね」

にこ「あ!」

絵里「?」

にこ「絵里、私のこと見つめてくれる?」ぐいっ

絵里「え?あっ!キャッ!」

にこ「………」じーっ

絵里「………っ!」

にこ「………」

絵里「………っ///」もじもじ

にこ「………なんでモジモジしてるのよ」

絵里「な、なんとなく………」

にこ「……なるほど。原因がわかったわ」

絵里「ほんとに?!何が原因なの!?」

にこ「あんたのチョンマゲってさ」

絵里「うん」

にこ「なんか妙~…に馴染んじゃっちゃってるのよね」

絵里「………馴染むって、似合ってるってこと?」

にこ「そうとも言えるわね」

絵里「そう……」

にこ「チョンマゲが似合いすぎてて逆に違和感がない感じ」

絵里「そっかぁ……」

絵里「私はチョンマゲが似合う女子高生なのね……」

にこ(……落ち込んでる?悪いこと言っちゃったかしら……)

絵里「チョンマゲ……」

にこ(そりゃそうよね……。チョンマゲ似合ってる、って言われて喜ぶわけないもの普通)

にこ「……あ、あのね絵里。その……」

絵里「わたし、チョンマゲ似合ってるんだぁ………えへへっ!」

にこ「よ、喜んでた?!」

しえん

絵里「でもそれってインパクトがないってことよね」

にこ「まぁ……そうなるわね」

絵里「インパクトがないんじゃチョンマゲの意味ないわ……」

にこ「んー……
私がインパクトを感じないのは、
もしかしたら見慣れただけ、って可能性があるわね」

絵里「それじゃあ花陽は?」

にこ「それは……うーん……」

にこ「あ」

絵里「ん?どうかした?」

にこ「向こうを歩いてるのって海未よね」

絵里「んー……あぁ、あれは海未ね」

にこ「チョンマゲ気づかれるかどうか試してくれば?
あの娘なら流石に気付くでしょ」

絵里「ふむ……海未はミューズで一番の常識人だものね。
ちょっと行ってくるわね!」ダダダッ!

にこ「いってらっしゃーい」

にこ(……あれは完全に新キャラのこと忘れてるわね)

絵里「海未っ!」

海未「あ。絵里!」

絵里「ハラショ~」手をヒラヒラ

海未「ハ、ハラショー……???」

絵里「ハラショ~」手をヒラヒラ

海未「……こ、こんにちは?」

海未「あの、素朴な疑問なんですけど」

絵里「なにかしら?」

海未「ハラショーって挨拶にも使えるんですか?」

絵里「使えるわよ?」

海未「……辞書にそんな意味はないはずですが……」

絵里「ハラショーで挨拶するのはスラングに近いからね。
辞書には載ってないと思うわ」

絵里「日本語でいう「ヤバイ」と同じような感じね。
ハラショーの意味が若者言葉の中で変質しているのよ」

海未「へぇ~そうなんですか」

絵里「そうなの!」※そんなことはない

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