夏海「兄ちゃんは地味な主人公」 (34)
兄ちゃんを主人公にした恋愛物を書きたいと思います。
所々キャラ崩壊(主に兄ちゃん)がありますのでご注意ください。
それではよろしくお願いします。
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|,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ
〈´//´| `'t-t_ゥ=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ| 御託はいい、早くしろ
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まさか1レスでエタるとは
加賀山楓編 その1
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冗談だと思った。
きっと夏海あたりが唆してやらせたに違いないと、そう思った。
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そろそろ店じまいだな、と夕暮れも終わりそうな程ほどの薄暗さが出てきた午後7時。
雑貨屋という名の駄菓子屋を営む加賀山楓にとって店じまいのタイミングはおおよそ夕食の時刻だ。
何故なら、主な駄菓子屋としての客層はこの村の唯一の学生達であるため、それらが家に帰れば店を閉めるのは当然であり、合理的な判断なのだ。
「……」
「おっ、いらっしゃい」
どうしたら金持ちになれるだろうか……と毎日のように考えている妄想も一段落ついたその時の事。
音も立てずにぬっと男が入ってきた。まぁ、初対面ならまだしも、その男の事はよく知っていたので特に何の反応もせずに対応できたのだが……。
ただ、よく知ってはいたのだが、その中で気になったのが1人で来たという事だ。いつも来る時は大抵誰かの付き添いで、1人で来る事など長年の記憶の中でもあったかどうかを思いだせなかった。
「今日は一人か?」
「……」
男はその問いに、コクリと静かに頷く。
相変わらず物静かな奴だなぁ……何考えてるか分からんし……と、珍しい来客に肘をつき、手を支えに頭を傾けながら思い耽る。
そして、その対象はというと、そんな事はおかまいなしに、店に来たにも関わらず何も物色する事無くただその場に佇んでいた。
「ん? どうした?」
何も発する事無く、じっとこちらを見る男に対しそう問いかけるしかなかった。
夏海やれんげとは違い、何の目的も無く遊びに来る奴でもないだろうし……。
しかし、それならば何しに来たのだろうか……。
「……」
一口が開く気配は無い。
けれど、その男を注意深くよく見てみると、ギュッと拳に力が入り、心なしか体も強張っているように見える。
ますます意味が分からなく、何だ?……と思っていたその時。
――――!!
勢いよく発せられた言葉に更に混乱する。
普段との態度の違いにも、その発言から感じられる力強さもそうだが、一番にその言葉の真意を図りかねていた。
「えーっと……今、付き合ってほしいって言ったのか?」
冷静に対処するためにまず確認した。もしかすると、聞き間違えかもしれない。
聞き間違えでなくても、こちらが思っている意図と違うかもしれない。
相手は頷くばかりで分からなかったが、その挙動から思っている事は同じかもしれない。
「それは……私と恋人として付き合いたいって意味か?」
男は少しの間の後、ゆっくりと頷く。
静寂の中、いつしか辺りはこの場所にそぐわない、温かい情緒とは違ったむず痒い雰囲気に包まれていた。
(……冗談だろ)
夏海あたりが罰ゲームかなんかで唆して言わせたに違いないと思いたかった。
それを口に出さなかったのは普段からは考えられない初な女の子のように赤面した顔とガチガチに緊張しているその様子を見たからだ。
(……どうするか)
これまで1度も異性と交際した事は無い。
偶に街に出て、声を掛けられる事はあってもくだらなそうな奴ばっかりだったし、この村はこの村で若い男性1人だけ、つまりこの男だ。
そして、この男も色恋沙汰には興味が無さそうだったし、仮にあっても自分よりも歳の近い女子と何かしらあるのではないかと思っていた。
「その……気持ちは嬉しいんだが……」
断るつもりでいた。その男と交友関係はあり、それなりに親しんではいたが、それは田舎付き合いの範疇だ。
また、歳もそれほど近くはない。あの学校では歳の差なんてあってないようなものだが、卒業した今では違う。
それに、村ならではの色々な問題もあるだろう。
「……付き合う事はできない」
「……悪いな」
決して悪ふざけではないからこそ、こちらも真摯に対応し、気持ちを無下にしないよう慎重に答える。
分別を弁えているであろう人物であるからこそ、はっきりと誠実な対応を取る必要があった。
……っ
男が小さく発したその言葉は震えていた。
俯いた顔の様子は分からないが、ポタポタと、水滴がコンクリートに垂れる音から感情の沈み具合が感じられる。
(どうすればいいって言われてもな……)
「…………そんなに私の事が好きなのか?」
男は下を向いたまま手で顔を拭った後、軽く鼻を啜り、ゆっくりと頷いた。
(…………)
「…………分かった。付き合ってもいい」
男はゆっくりと顔を上げる。涙と鼻水で顔も服もひどい有様だ。しかし、言った本人はそんな事は歯牙にもかけずに言葉を続けた。
「ただし、条件がある」
相手が本気だったからこそ、飽く迄も真剣に対応したからこそ、仮の事を考えたからこそ、こんな所だからこそ、よく考える必要があったのだ。
優しい嘘でうやむやにしてはいけない。本当に相手の事を考えるのなら、避けてはならない率直な気持ちを伝える必要があるのだ。
「私を養えるようになる事」
本気で付き合って駄目ならそれでもいい。軽い気持ちでそれに応える事は私にも相手にとっても酷い結果をもたらすだろう。
ここはそういう場所だから。決して、テレビで見るような都会ではない、全てが真逆だからこそ、そこははっきりさせておかねばならない。
「甲斐性無しには興味がないからな」
表情はあまり変わらなかったが男は嬉しそうにコクコクと頷いている。
そんな様子を見てフッ、と僅かに口角をあげた。
「そうだな……10年……」
「10年待ってやるから、それまでに私を養えるだけの甲斐性を身に付けろ」
「その時にまだ私の事が好きだったら気持ちに応えてやるよ。いいな?」
男は真剣な面持ちで最後にコクリと頷き、そのまま急ぎ足で踵を返した。
「……ちょっと長すぎたな」
「まぁ、別にいいか」
取りあえずここまでです。色々ひどい所がありますが、御容赦お願いします。
それでは、また次回もよろしくお願いします。
すごくいい!
乙!
兄貴期待
なっつんがメインヒロインかな?
駄菓子屋×兄ちゃんとかスゲー俺得!
期待
それでも兄ちゃんならなんとかしてくれる
加賀山楓編 その2
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それ以降、卒業までそこに足を運ぶ姿を見る事は無かった。また、それ以降も恐らく見る事はないだろう。
何故なら、彼は東京の高校へと進学してしまうからだ。しかし、それには理由があったのだ。
彼には10年間の猶予があるかのように見えたが、実際はそうではない事を知っていた。
できる限り早く結果を出す必要があったのだ。だが、高校を卒業し、働くだけでは十分ではない。
けれども、大学を卒業してからでは時間が遅い。ならばと、彼はある1つの選択に賭ける事にした。
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バタバタと、いつかの木製の床に響くような喧しさではないが、今日の越谷家はどうにも騒がしい。
夏海はいつものようにそわそわと落ち着きが無く、小鞠も小鞠で今日ばかりはいつもの心掛けを忘れる程に子供らしさを取り戻しているようだ。
「母ちゃん! 今日兄ちゃん帰ってくるんでしょ!?」
「電話ではそう言ってたよ。今日はみっちり叱ってやらんとね!」
「お、おぉ……帰ってくるなり説教とは……兄ちゃんも災難だな……」
「お兄ちゃん一度も帰ってこないんだもん。そりゃあ怒られるよ」
「そりゃそうだ。まっ、仕方ないっちゃ仕方無いけど」
「でも、まさかこんな事になるとはねー」
「兄ちゃんはウチの兄ちゃんだしね。こんくらいやってもらわんと」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
同時刻で、宮内家もそれなりに盛況しているみたいだ。
れんげはうずうずと何やら奇怪な動きをしているし、一穂もそんな様子を眠る事無く見守っている。
「今日、兄にい帰ってくるって本当なん?」
「みたいだねー。夏海がはしゃいでたし」
「兄にいに会うの楽しみなん。サイン貰うん」
「まさか兄ちゃんがこんな有名人になるとはなー」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……」
かつて、足繁く通っていたその場所は強く鮮明に残る記憶と何一つ変わっていない。
鼻孔を擽る匂いは懐かしさを感じさせ、それはこの3年間の記憶が霞むほどに強烈に入り込んでいた。
「よう。久しぶり」
男はコクリと頷く。
相変わらず口は開かないし、無表情なままだが、背丈は伸びたようで、以前は同じだった目線も今では見上げるほどに成長していた。
逆に店の店主は見た目の上では何一つ変わらない。
ただ、何が変わろうとも、その接し方からよそよそしさも、ぎこちなさも見受けられる事は無く、久方ぶりにも関わらず2人の関係は以前と変わってないようだ。
「その荷物……駅からそのまま来たのか?」
手には大きめボストンバッグを持ち、背にはギッシリと詰まったリュックを背負っていた。
そのためか、背丈は以前より高くなっているものの華奢なままの体には幾分辛いものがあるのだろうか、体勢を辛うじて保とうとはしているのだけど、ふらふらと立つ事すらおぼつかない。
そんな事情も含めて、そして、積りにつもったものとは別にこれからする話は立談で済ませられるものではないだろうと思案し、その旨を伝えた。
「あー……まぁ、ここじゃなんだし……居間に行くか」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ほれ、お茶」
荷物を隅に置き、ちゃぶ台を挟んだ2つの座布団のうちの1つの上に腰を下ろす。
男は出された熱い茶をズズズと一口啜り、フゥ、と軽く息を吐いた。
「東京に行ってたんだろ? ひかげと同じ高校に」
もう1つの座布団に座る体勢に移りながらそう尋ねる。幾らなんでもいきなり本題に入るような肝っ玉は持ち合わせていない。
そして、男が頷く所を見て、さらに言葉を続けた。
「また、東京に戻るのか?」
その問いに対し、男は静かに縦に頭を動かす。
「そっか……」
「……」
「……」
他愛ない話しも終わり、聊かの沈黙が生まれる。まぁ、沈黙と言っても1人がそう思っているだけなのだが……。
「その……何だ……今日来たのは……やっぱり約束の事か?」
そして、その静寂の中から幾分のを整え、楓はポツリポツリと言葉を漏らす。それに対し、男は躊躇う事無く頷いた。
「……正直驚いたよ。初めて夏海に聞いた時はまさかと思ったけど……あんな一方的なもん私なら何様だつって反故にしてる。それをちゃんと守ってくれたんだもんな……」
ちゃぶ台の上で手を組み、顔を俯けながら呟く。
辺りにはどんよりとも重くとも無く、ただ静かな空気が漂っている。
そこには居心地の悪さはなく、風通しのよし空間ができあがっていた。
「……自分で言っておいてなんだが、本当にいいのか? お前はまだ若いんだし……まぁ、大して差があるわけじゃないけど……」
下ろしていた顔をゆっくりとあげて、力強い目で相手を見ながらそう話す。
男は口に表す事はなかったが、精悍な顔つきで首を縦に振った。
「……しつこいようだが、本当にいいんだな? いくら時代が変わったって言ってもやっぱり田舎だ。
都会とは違う、こんな狭い所じゃいつか周りに知られるだろうし、その時は覚悟を決めないといけないかもしれない。
重い話だが、そこをはっきり認識しておかないと大変な事になるからな」
決して嫌がっているわけではない。遠まわしに拒否しているわけではないのだ。
あの時、決して冗談で言ったつもりはなかったが、それでもどこか楽観的だったのかもしれない。
そんな楓を男は先ほどよりも真剣な眼差しで見つめ、コクリと答えた。
「……分かった」
「……それなら」
心のつっかえがとれたような気がした。拭いきれないへばりついた澱がすっと流れたように感じた。初めから期待はしてない、期待しなさすぎてもいけない。
中庸を心得る事は人生を上手く生き抜くコツであるが、思うところはそれだけではなく、あれだけ大層な決めごとをすっぽかされても、
思春期による気の間違いだと最初からなかった事にされても、決して相手を悪く思わないでおこうと、何があっても笑い話で済まそうと心に決めていたのだ。
そうじゃないと10年なんて期間を待ち続けられるわけがない。
そして、真情を吐露されたあの時から、この気持ちを触発されたあの時からのしかかっていた見えない何かは形を変え、だからこそ、楓は笑みを零して言う事ができたのだ。
「これからよろしくな」
今回はここまでです。まだまだ酷い所がたくさんありますが、目を瞑っていただけると有難いです。
それでは、また次回もよろしくお願いします。
おう、待ってるで
乙乙!
待ってる
兄ちゃんはいったい何をしたのだろうか?
駄菓子屋編終わり?
日影編やほたるん編、このみ編とかあると嬉しい
マダカナー
まだかおい
頼む来てくれ
ほ
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