フレンダ「結局、全部幻想だった、って訳よ」
このスレは、上記のスレの続きです。
その為注意書きは、前スレの>>1を参照して頂きたく、です。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366480786
ああ、自分は夢を見ているのだな。
彼女は瞬間的にそれを理解する。
空は快晴。 ジリジリと陽の光が地面を焦がす。
目の前には、少年が、そして少女がいる。
目の前、とは言ったものの厳密には遠目から。 まるで自分は保護者のように見守っているような心地なのだが。
彼らは二人きりで遊んでいた。
この年代は大体遊ぶ時には複数なのだが、それをまるで気にせず、楽しそうに戯れている。
懐かしい。
そして温かい。
じんわりと、心に染みこんで。 彼女はその感傷に浸る。
自身の事の様に、心を動かす。
当然だ。
これは、かつての再現。
十年にも及ぶ、長い長い旅路のその始まり。
過去を変えたい、なんて思ったことはない。
細かいことは変えたいと願ったことはあるかもしれない。
例えば、ちゃんと勉強すればよかった、夜更かしをせずに寝てればよかった、とか。 その程度のことだ。
しかし大きく、例えば根本から変えよう、などと思ったことはほんの一度たりともない。
そんなことをしたなら、否定することになってしまうから。
あの、今はツンツン頭になっている不幸な少年との全てを、要らないと切り捨ててしまうことになってしまうから。
けれど。
もし、仮に、万一。
ここで、少女と少年を無理矢理にでも引き離したら?
彼女は過去を目の前にして、そう思わずにはいられない。
もう二度と、少年と少女の未来が交差することはない。
そう言い切れるからこそ過ぎった考えだった。
二人で仲良く共に歩んでいく未来は幻想で、先に待つのは別れのみ。
それも、互いにとって何よりも辛い結末の、だ。
だからこそ、思ったのだ。
ここで二人を引き離せば、そんな結末は訪れない。
少女は救われず、少年は救われる。
それは、二人とも救われないよりはずっといい。
或いは少女も救われるかもしれない。
なぜなら、彼女が闇の底へ身を落としたのはそもそもとして、少年を追いかけたのが始まりなのだから。
そう思い。
彼女は彼らに近付くべく、その一歩を踏み出そうと。
踏み出そうと。
踏み出そうと――――。
『あれ?』、と。
そんな呆けた声が漏れた。
足が動かない。
足どころか、指先すら一ミリたりとも動かすことは叶わなかった。
嗚呼、と思う。
やはりこれは、夢なのだ。
ただの過去の再現であって、それを覆すことは出来ないのだ。
彼女はそれを察して、観念したように溜息を吐いた。
空は快晴。 ジリジリと陽の光が地面を焦がす。
目の前には、少年が、そして少女がいる。
遠目に、ではなく。 今度こそ、手を伸ばせば届く先に。
『っ!?』
思わず、驚いてしまった。
これは夢だ。
だから自分は彼、彼女に触れることは出来ないし、彼、彼女もまた自分に干渉することは出来ない。
そう思っていた。
しかし、そうではない。 そうではなかった。
純粋な、透き通った四つの視線がこちらを捉える。
『ねぇ、お姉ちゃん』
少年が尋ねる。
その声色と瞳には、不安そうな感情が浮かんでいた。
『どうして、泣いているの?』
言われて、気付いた。
彼女は、泣いていた。
年甲斐も無く、ただ溢れ出る涙を止めることができなかった。
視界を覆うそれを、彼女は隠すように手で拭う。
『ねぇ、お姉ちゃん』
少女が尋ねる。
その顔にはただ、不思議そうな表情だけが浮かんでいた。
『結局、どうしてここから動かないってわけよ?』
動かないのではない、動けないのだ。
そう言おうとして、言葉を失くす。
動けないわけじゃない。 干渉できないわけじゃない。
この世界はやはり夢である。
自分が望めば、出来ないことなどない。
けれど自分は動けなかった。
未来を変えることなどできなかった。
それは、これが過去の再現だからできなかったわけではない。
他でもない自分が望まなかったから、出来なかった。
現に、彼らは夢の主である彼女らを認識しているではないか。
現に、全く力の入らなかった腕が涙を拭っているではないか。
そしてその涙の訳など、今更言わずともわかる。
自分のことだ。 なによりも、誰よりも自分がよく知っている。
否定したくなかった。
想いを馳せた『例えば』すら認めたくなかった。
なかった事になどしたくなかった。
それ程までに、嫌だったのだ。
涙を流すくらいに、嫌だったのだ。
ただ、それだけの話。
ぼんやりと。
歪んだ視界が開かれる。
ようやく、少女――フレンダ=セイヴェルンは目を醒ました。
その手に抱いたままの二つのぬいぐるみ。
それらは若干濡れていて、染みになってしまっていた。
それを暫くの間眺めて、思考を整理する。
フレンダ「……夢」
そうだ、夢を見ていた。
懐かしい、昔の夢を。
全て何もかも鮮明に、とまではいかないが。
大体、自分が抱いた感情は理解できていた。
フレンダ「…………」
涙の跡があるぬいぐるみに顔を埋める。
どうしようもなく、自分が嫌になった。
愛した、恋した人の為と言いつつ、夢の中とはいえ、自分の為にそのチャンスを逃すなど。
否、それは昔からだ。
上条の為、フレメアの為、大切な何かの為と謳いつつ、結局は自分の為。
いや、彼女にとって気にかける、大義名分にする、そのことこそ大事にしている証でもあるのだが。
だが、フレメアを助けた時だってそうだ。 上条と再会した時だってそうだ。
前者に関しては助けなかったら命に関わる問題だったために問題ないとは言えるが、後者はどうだろうか。
高校生になった上条の世界に、フレンダは必要だったのだろうか。
彼の物語を眺めていた人は口を揃えて言うだろう。 彼女の存在は必要なかった、と。
記憶喪失後に再会したこともそうだ。 結局は、何もかも自分の為。
だから憧れた。
だから夢見た。
だから倣った。
だから――――上条当麻を好きになった。
どこまでも、自分は上条基準で。
しかしどこまでも、自分はやっぱり自分が大切で。
なんとか理性で抑えていたつもりだったが、それでも自分の気持ちを抑えきれなくなってしまった結果がこれだった。
どうしようもなく歪んでいる。
それが自分という存在。
今すぐにでも、昨日の決意を撤回したい。
上条に会いに行って、なんてことのない会話をして、戯れていたい。
けれど、今度こそそれは駄目だ。
それは昨日も確認している。
もはや自分は、十二分すぎる程に前払いを貰ってしまった。
それ以上に少年を傷つけてしまった。
だから、駄目。
それでも揺らぐ心に、心底嫌になる。
フレンダ「……最後ぐらい、ちゃんとして欲しい、ってわけよ」
その言葉は自分へ向けて。
いい加減、諦めてくれと。
幻想をいつまでも抱いているなと。
上条とは決別した。
そして自分にはまだ守るものがある。
それは姉としての自己満足と、妹を真摯に想う気持ちが複雑に混ざり合ったものなのだが。
ここで何もかもを放り投げてしまったら、本当に自分は自分でしかなくなる。
自分の中の上条当麻が消え去ってしまう。
だから逃げない。 上条への想いを否定したくないから。
そう考える少女は、やはりただひたすらに、歪だった。
最終章の序章はここで終わりです。
いいたいことは色々ありますが、ここでは兎角、謝罪のみをさせて頂きます。
遅くなってしまい本当に申し訳ありません!
完結するまでどれくらいかかるかはわかりませんが、暖かく見守って頂けると幸いです!
それでは、また。
復活キター
待ってる
おお
待ってるよー
待ってたぁー!!
復活乙。
よっしゃー復活キター!
待ってたよ、フレンダ
おお!来たか!待ってたよ!
焦らなくていいから>>1殿のペースで頑張ってくれ給え!
遂にキターーー!!!!
半ば忘れていたのに、たった今ふと思い出して検索かけたらこれだ
俺の勘も捨てたもんじゃないな
原作じゃこうなっちまったからなぁ…せめてこのSSでは幸せを掴んでくれフレンダ…
\ |
∩∩ 俺達のアイテムはこれからだ! V∩
(7ヌ) (/ / ___
/ / ∧_∧ || △ / /|
/ / ∧_∧ ∧_∧ _(´∀` ) ∧_∧ || (゚ω゚ ) |' ̄ ̄| |
\ \( ´∀`)―--( ゚ ∀` ) ̄ ⌒ヽ(´∀` ) // ( ) | フ | |
\ /⌒ ⌒ ̄ヽ、浜面 /‾⌒ ⌒ / )ノ | レ | |
| |ー、 / ̄| //`i 滝壺 / ( | ン | |
| 絹旗 | | 麦野 / (ミ ミ) | | ) l ダ | |
| | | | / \ | | | 之 l |_
| | ) / /\ \| ヽ /| 墓 |/ /|
/ ノ | / ヽ ヽ、_/) (\ ) ゝ | |二二二二二l/
鎌池先生の次巻にご期待ください。
AAずれてる上にsageないとかどうしようもないな
キタァァァー!!
待ってたンダよ!
朝イチで復活を見れるなんてラッキーだ
復活乙
待ってたぞォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
今日このスレを見つけた新参だけど待ってるよぉぉ
復活乙
開幕早々放置ですいませんです。
何の用事も入らなかったら、今日来ます。
乙
舞ってる
■ ■ ■
それに気がついたのは正午を僅かに過ぎたばかりの事だった。
彼女が起きた時間も既に十時を回っていたのだが、すぐに気が付かなかったのは痛い。
スーパーで今後の食事をどうするかを考え(暫く家に帰るつもりはない、というか会わす顔がないので主に缶詰類、特にサバの入ったもの)、物色していたフレンダは思わず声を漏らした。
フレンダ「うひっ」
運が良かったのは、集合時間からまだそんなに時間が経っていないことだった。
適当にサバ缶を籠に詰め込み、ご機嫌取り用のシャケ弁も一つ投げ入れる。
そして急いでレジを通し、急いでスカートの中にしまうと、脇目もふらずに走りだした。
いくらご機嫌取りはするとはいっても、このままだとお仕置きは避けられまい。 まさか上半身と下半身を分断されることはあるまいが、痛いことは避けたい。
それには果たしてどうすればいいのか。
答えは簡単だ。 誠心誠意を見せればいい。
全力疾走で走り、息を絶え絶えにして、すみませんごめんなさいと土下座をする勢いで謝ればあの流石の第四位も温情を見せてくれるはず。
そう、見せてくれるはずだ。
レベル五とは言え、仮にも人間なのだから。
さて、結果から言おう。
一言で言うと無理だった。 少し詳しくいうと、フレンダは仕事用の車の中で土下座をさせられていた。
狭いとは言わないまでも足を置くスペースが殆ど無い車の中で地面(車の中で地面というのもおかしな話だが)に正座をされると邪魔で仕方がない。
絹旗はリーダーと遅刻してきた同僚を一瞥し、超速く終わりませんかね、と面倒臭く思っていた。
麦野「私直々の収集に遅刻とか、一体何考えてるワケ?」
フレンダ「ごめんなさい」
フレンダの献上したシャケ弁はしっかりと食べつつ、麦野は小言を走らせる。
ぶつくさぶつくさといい、沈黙が一瞬流れたと思ったら麦野は溜息を吐く。
別にシュンとしているフレンダに毒気を抜かれたわけではない。 ただ馬鹿らしくなっただけだ。
麦野「ま、コレが本当に私からの招集ならオシオキフルセットじゃすまないんだけど。 今日は違うから許すわ」
フレンダ「……って、言うと」
麦野「そ。 向こうのヒト」
麦野が備え付けのマルチ機能ディスプレイを親指で指すと、ブツン、と起動する。
浮かび上がる画像や映像は無い。 ただあるのは『SOUND ONLY』の文字のみ。
それが示す通りに、スピーカーから声が聞こえてくる。
『やーやーメンゴメンゴ、つい寝坊で遅刻しちゃったてへ☆』
麦野「解散。 アンタら帰っていいわ」
『こいつときたら! 冗談と本気の区別もつかないっての!?』
一瞬本気で解散しようと立ち上がった麦野が面倒くさそうに座席に座り直す。
若干前屈みになって腿に肘をついて言う。
麦野「じゃーとっとと本題に入ってくんない?」
『はいはい言われなくてもそうしますよーっだ』
画面の向こうでアカンベーでもしてそうな口調でいう。
少しばかりの間があって、向こうから咳払いが一つ。
『えーっと、『親船最中を狙う不穏分子を除去せよ』……学園都市直々の命令よん』
絹旗「……親船最中って、統括理事会の、ですか?」
麦野「なんでまた、そんなビミョーなのを」
麦野の言う微妙というのは単純に統括理事会メンバーの中で、ということだ。
その話術、交渉術の手腕は眼を見張るものがあるが、最近はめっきり牙を抜かれ爪を切っている。
その為十二人の統括理事会メンバーがいる中で、とりたてて重要な役割を持っていない……即ち、『微妙』を指す。
それに対する『声』は呆れと煩わしさが混ざったような口調で軽く説明する。
『私が知るかっての。 上からはぁ、なんてったっけ……『グループ』? だかなんだかが、次に制裁するってことになってんだけさぁ』
フレンダ「……? その『グループ』っていうのは結局、不穏分子には入らないわけ?」
『そもそもそういうことに決まってたらしいわ。 問題は、それ以外の人間が親船最中に危害を加えることなんだって』
麦野「……なんていうか、面倒い仕事ねぇ。 そんなの『警備員』にでもやらせときゃイイじゃない」
麦野の言葉に他三人も声なくして同意する。
しかしそうは問屋が卸さないとばかりに『声』は憤慨した。
『こいつときたらー! そう出来ない理由があるし、そもそもアンタら『アイテム』の仕事は学園都市内の不穏分子の抹殺、除去だっつの!』
たまには真面目に仕事しろー! とはいうが、やはり麦野を含むアイテムは乗り気ではない。
確かに仕事と言われれば仕事をするが、そんなわざわざ『警備員』や、当の親船最中本人子飼いの警護でも出来る仕事を回されるのは甚だ不満なのだ。
学園都市直々の仕事ということもあり、ギャラもそれ程に高くはないだろうし。
麦野「……他になんかないの? ほら、前の拠点防衛的なやつとか」
『……アンタら、それ前に軽く不満漏らしてなかったっけか? 次にあったら考えとくけど』
声は一旦そこで区切って。
諦めたように一つの単語を漏らす。
『『スクール』』
それを聞き、物言わず立ち上がったのは麦野。
その表情は動揺しているようにも見え、また、今直ぐに問い詰めたいのを堪えているようにも見えた。
絹旗はその麦野を制するように先に言葉を割りこませる。
絹旗「『スクール』って確か、第二位の超私物的な組織でしたよね?」
『そうそう。 なんだ、アンタも知ってたか』
フレンダは麦野の様子を伺いつつ、そっと切り出す。
フレンダ「で、その『スクール』が今回の依頼に関係あるってわけ?」
『その通り! 一応確認で来てるのは所属のスナイパーの動きだけなんだけど、もしかしたら第二位が出てくるかもってことでここにお鉢が回って――――』
麦野「わかった。 それ引き受けるわ」
最後まで言わせず、麦野が言う。
それに対する反対意見はない。 ここにいる全員が麦野と第二位、垣根帝督の確執を知っている。
仮にそれを知らなかったにしても。
今の麦野沈利に反対意見を出そうなどという馬鹿な人間は、ここには存在しなかった。
『そう? そんじゃあ任せた。 時間は今日の夕方までだから大体三、四時間ぐらいが目処』
麦野「三時間? 誰に向かって時間制限を設定してるワケ?」
バキバキ、と指の関節を鳴らしつつ。
第四位、『原子崩し』は歓喜と狂気に満ちた表情で続ける。
麦野「一時間で十分」
かくして。
来る学園都市独立記念日の前哨戦が幕を開ける。
今回はここまで。
>>29の■ ■ ■は■ □ ■の間違いです。
あと収集も招集のミスです。 重ねてお詫び申し上げます。
次もいつになるか少しわかりません。
早ければ今日明日ですけど……多分来週の土日になるかと。
それでは、また。
乙
乙ぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!
乙
フレンダに / が近づいてる・・・
/
フレンダ
乙なんだよ!
フレ/ンダェ…
面白い!けど誤字脱字が多過ぎやしませんかねェ?
やばいフレ ンダが近い・・
>>1待ってましたぜ
ついに15巻の話か
上条さん、フレンダを頼むってわけよ
連絡を切った後、直ぐに麦野はスライドのドアも開けっ放しに、車から降りる。
黙って行われたその行動に、フレンダは続く。
フレンダ「麦野っ」
麦野「…………」
立ち止まる。 が、返事はない。
その背から彼女の感情を読み取ることは難しかった。
けれどなんとなくだが、予測は出来る。
きっとそれは、悦び。
同じ超能力者。 同じ暗部。 同じ化け物。
数多くの共通点があったというのに、終ぞ捉えることの出来なかった第二位。
それの理由は彼そのものの情報が手に入らなかったのと、奇しくも、地位という柵があったせいだ。
しかし、ここにきて。 ついに、その尻尾を?むことが出来た。
待ちわびたこの瞬間を悦ばずして一体いつその感情を抱けば良いというのか。
絹旗と滝壺も車内から二人の様子を伺っている。
この件に置いて、二人が口出しをすることはないだろう。
なぜなら彼女らがこの『アイテム』に入ったのは後だからだ。 そんな彼女らが知ったような口で、麦野に対して言葉を振れる筈がない。
故に。
フレンダしか、麦野に異を唱えることができない。
いや、そのフレンダも麦野の行動に逆らう気はない。
自らの目的に突っ走る麦野に逆らえば即敵と見なされるだろう。 誰だって銃弾の飛び交う戦場に自分から飛び込もうなどとは思わない。
そして何より、麦野のその感情をこの中で最も良く理解している。
だから彼女が麦野を呼んだ理由は、もっと別のもの。
『アイテム』として、どうすべきか、何をすべきか。
その指示を乞う為のもの。
麦野「……フレンダ、絹旗。 アンタらはこれからその狙撃手とやらを索敵、撃破。 終わったらゴミ掃除」
絹旗「超了解です」
フレンダ「わかった……ってわけよ」
麦野「滝壺は私と来なさい。 結果出せたらご褒美あげるわ」
表情の余り無い滝壺の顔が僅かに動揺を見せる。
麦野の口からご褒美なんて単語が飛び出すなんて夢にも思っていなかった。
別にそのご褒美に釣られたわけではないが、滝壺もわかった、と頷く。
麦野「ああ、それから」
そこで、麦野は初めて振り返る。
フレンダは息を呑んだ。
そこにあったのは、愉悦でも、狂気でも、はたまた憤怒でもない。
『何もない』。
『何もない』が、そこにあった。
麦野「くっだらないポカでもしたら、直々に焼いてやる」
それは、やる気を焚きつけるとか、そういうのではなく。
言い換えるなら、死ぬ気がないなら殺す、と。 そういう意味で。
麦野「精々、足は引っ張んないことね」
麦野が滝壺を連れて去った後の数秒、フレンダはその場から動くことが出来なかった。
今回はここまでで。
難産で量が少なくて、今回はもっと書く予定だったのですが……ああいえ、言い訳ですごめんなさい。
誤字は、できるだけ注意してはいるのですけれど……
申し訳ございません、脳内補完して頂くと幸いです。
それでは、また。
おつ
運命の時はもうすぐか
乙でした
「滝壺ぉぉぉ、俺の出番はカットか!?」
「・・・だ、大丈夫、出番はなくても私は、浜面を応えn・・」
「今、間が空いたよな!?やっぱり無いのかーーー!!」
「あ・・」
乙です
乙でした
そげぶの時間が近づいてきたなあ
part1からやっと追いついた!楽しみにしてます
このままじゃ身体も心も真っ二つか…!?
ふれんだ、かあ
期待
乙っす
一週間…
ヤバい!
>>1が早く続きを書いてくれないと…
ていとくんが冷蔵庫になってしまう!
>>55
殺 伐 と し た ス レ に 工 事 長 が ! !
ミ\ /彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
ミ \ / 彡
\ \ / /
ミ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ | | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄彡
/ ̄ ̄\|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i|/ ̄ ̄\
/ / ̄| || ̄\. \
/ / |〕 カブトムシ .|| ´\ \
/ │ ..| || | \
/ /│ |___________j| |\. \
彡 / │ ./..| -―- 、__, |ト、 | ´\ ミ
彡/ │ ../ | '叨¨ヽ `ー-、 || \ | \ ミ
│ / ..|〕 ` ー /叨¨) ..|| \|
r、 |/ ! ヽ, || \ \ ,、
) `ー''"´ ̄ ̄ / | `ヽ.___´, j.| ミ \  ̄` ー‐'´ (_
とニ二ゝソ____/ 彡..| `ニ´ i| ミ |\____(、,二つ
| 彡...|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i| ミ |
\彡 | .|| ミ/
|〕 常識は通用しねぇ ||
| ..||
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>>56
手遅れだったか
なにこれカオス
明日書きます
フレンダの声が内田真礼さんに決定したってわけよ!
絹旗は赤崎千夏さんに超決定しました
華麗にスルーされる浜面ww
浜面は日野なのに……
めっさねむいんよー
今から書きますが、来なかったら堕ちたとおもってくださいです
ほーい!
よしこい
「……これで、よし」
組み立てたライフルを地面に設置し、ようやく一息。
狙撃というのはまずは風を読むところから始まる。
場所はとある寮、その屋上。 今日の風は強かった。
けれど、彼はこの一発を外すつもりなど毛頭ない。
それはこの隣に置いた高性能の風速計があるというのもそうだし、そもそも外してはならないからだ。
彼には能力というものがない。
否、厳密には目に見えない程の効果のある能力者なのだが、それはこの際どうでもいい。
どうせあってもないようなものなのだから。
そう、故に彼には能力がなかった。 しかし、才能はあった。
それが狙撃。
狙撃というのはそもそも、殺人の技術だ。
例えそれが猟銃だとしても、気配を消し獲物を屠る、即ち暗殺に他ならない。
それに目を付けられたのが運の尽き。
彼はまたたく間に、学園都市の闇へと落ちることと相成ってしまった。
不幸中の幸いといえば、その赴任先が我らが第二位、垣根帝督を頭に据える『スクール』だったという点であろうか。
この計画が成功すれば、晴れて自分は自由の身。 それどころか、野望を持つことも許される。
「……しっかし、本当にここにくんのかねぇ」
スコープの先を覗くと、その先は児童公園。
予定では、この周辺にとある少年を引き連れて親船最中が来ることになっているらしい。
その少年は捨ておいておけ、というのが基本的にカタギには手を出さないリーダーの命令ではあるが、十中八九見られてしまうだろう。
だから殺す。 可哀想だが、それも目的のためだ。
揺るぎないその決心を新たにしたところで、風速計と繋いでいるパソコンにウィンドウが表示される。
「っと、連絡か」
時計を見ると、一時を僅かに過ぎたところ。
目標は昼から夕方にかけて来ると言われていたから、早めの狙撃場所入りだった。
どうせそのことだろうな、と思いつつエンターキーを弾き、通話を開始する。
『ガ、ガガ……―――ピピ――ビガ、ガ――……――――ザザビビ――――』
「あん?」
まず耳に入ったのはノイズ。
その耳をつんざく音に、思わず首を傾げる。
電波でも悪いのか? と思ったところでそれはないな、と否定する。
自分たちの使っている電波は、『風紀委員』『警備員』、その他の組織とも異なる、独立した電波だ。
だから本来ならすぐに、自分のチームメイトの声が聞こえてくるはずなのだが。
眉を顰めて、キーを数回叩いて発信先を表示する。
『No Signal』。
それに気がつくのと、もう一つの連絡が来たことを告げるウィンドウが表示されるのと。
そして。
『アイテム』の絹旗最愛が空から降ってくるのは、同時だった。
ズドン! と屋上の床をその自由落下の勢いで抉る。
彼は転がって余波を回避しつつも、その直ぐ横に置いておいたライフルを回収。
僅かに舞う砂埃、その真中に立つ人影に向かって迷うことなく撃った。
ターゲットと、その連れている少年を数秒のラグで撃つ為に反動の少ないライフルを選んだのが功を成した。
遠距離ならまだしも、至近距離ならば固定せずとも当てられる。
事実、その銃弾は確実にその少女の身体を捉えたのだ。
だが、彼は知らなかった。
絹旗最愛の能力は、大能力の『窒素装甲』であることを。
たかが一発二発の銃弾で、それを射止めることは絶対に不可能だったということを。
やったと思った時には既に、絹旗は彼の元へと駆け出している。
驚愕と、恐怖に満ちた表情を絹旗は捉える。
向かってくる絹旗を止めようと思ってか、或いは反射的にか。 それでも確実に頭を狙ってくる銃弾を絹旗は手をかざして握りつぶす。
そして、その拳を握りしめ、躊躇なく、振りぬく。
絹旗「――――ふっ!」
「み"っ」
その断末魔は、実にあっけないもの。
車すら持ち上げる『窒素装甲』の拳をまともに顔面で受け止めた彼は文字の如く吹き飛び、屋上からその身を舞わせた。
数秒遅れて、ドサッ、という音が耳に届く。
あれなら仮に生きていたとしても再起不能だろう。
絹旗「……ふぅ。 超ミッションコンプリートです」
タイマーを見ると、きっちり一時間内。
ギリギリでもないが後手に回っただけに少しばかり時間がかかってしまった。
時間内になんとか位置を特定できたフレンダを褒めるべきだろう。
絹旗(……ま、虱潰しでも超なんとかなった気がしますが)
絹旗は上空から、ヘリコプターで強襲を行った。
それは位置を確実に特定してから行ったのではなく、位置を特定したら直ぐに投下できるように、だ。
上空からでは見え辛いとは言えども特定することは出来ただろう。
そちらなら、それこそ時間内ギリギリだった可能性もあるが。
ふと周りを見渡したところで、コンクリートの破片を被ったパソコンを見つける。
おそらく使い捨てのものだろうが、連絡をとるためのプログラムは入っているだろう。
麦野に渡せばすぐにでも『スクール』のアジトを特定できるに違いない。
そう思い画面を覗きこみ、絹旗はふむ、と予想通りとでも言うように相槌を漏らした。
データの全削除。 その実行は既に八十%を超えていた。
精密機器操作の心得の無い絹旗にはお手上げ状態。 麦野とフレンダ、そのどちらかがいればまた変わったのだろうが居ないものは仕方がない。
小さな溜息を吐きつつ、下部組織に狙撃手の回収と自分の乗る車の手配をするために携帯電話を取り出し、出口へと向かっていく。
ピー、という電子音と同時にディスプレイがブラックアウトした。
第八学区にある、とあるマンション。
このマンションはそれぞれの階まるごとが一つの家となっている。
基本的に、各学校の校長クラスの人間が住むマンションだ。
その十一階。
そこに彼らは居た。
「残念、失敗したみたいね」
やれやれ、と呆れた様に言うのはドレスを着た少女。
しかし別段興味も無さそうに、ネイルを塗っている。
同じく特に反応を見せない部屋の主に、頭に土星の輪のようなヘッドギアをつけた少年は恐る恐るといった面持ちで尋ねる。
「えーっと、垣根さん? いーんスか、放っておいても?」
ワインレッドのスーツを身に纏った、ホスト風の青年。
第二位、垣根帝督は大きなソファーにどっしりと下ろした腰をあげずに、背後の少年へ軽く手を振る。
垣根「いいんだよ。 ムカツイたのは確かだが、そもそもアレはフェイクだ。 初めから成功するなんて思っちゃいない」
「フェイク、スか?」
垣根「ああ。 狙撃手なんてのは代わりがいくらでもいる。 それこそあれより腕のいいやつなんてのは腐るほどな」
垣根「だから、一回殺してもらって『狙撃の心配なし』って報告された方が好都合なんだよ」
運良く、予想通りに事が運んだけどなと付け足す。
はぁ、と少年は適当に相槌をうつ。
ただのチームメイトであっただけで、仲が良かったわけじゃない。 だから、『あー見捨てられたんだ、可哀想だな』ぐらいの感想しか抱かなかった。
ネイルを塗った爪にふーっ、と息を吹きかけつつ、少女も尋ねる。
「それじゃあつまり、『アイテム』は捨ておいていいわけね?」
少女の言葉に、何を今さらといった口調で垣根は答える。
『当然だ』と。
垣根「格下なんぞ、歯牙にかける必要すらねえよ」
かくして。
垣根帝督は現れず、麦野沈利はその苛立ちを募らせただけだった。
今回はここまで。
次回は、浜面加入予定。 あんまり物語上は関係無いけれど。
それでは、また。
乙
乙!
さっき前スレ一気読みしてきた、面白かったよ。
乙
乙
「やったぜ滝壺!次は加入だってよ」
「良かったね、浜面」
「その喜び方超キモいです」
「物語上関係無いんだから、期待すんじゃないわよ、どーせモブキャラなんだし」
「浜面はここでも、所詮超浜面ってことですね」
「・・・ひでぇ」
「(当麻と私の活躍が楽しみってわけよ・・アニメで動く私にも期待してほしいってわけよ!)」
上条「出番がどんどん減ってきている…」
復活してたのかよ、相変わらず面白いな
アニメ版のフレンダはロリぽかったなwwwww
もっと元気な感じだと思ってた。フレンダのぬいぐるみが欲しいぐらい
絹旗は残念
待ってた
,:'⌒ヽ
入___人
/ l l \
r、r 、/ ,l ! \ ,.-,-、
(\\\/'´l !´ヽ///)
(\` ,l ! ´/)
\ lr‐┐r ‐ 、l /
`┬‐'´ ゙l | 〉 ゚ 〈 `'‐┬´
\. |__|(__゚__) /
\⊂ニニ⊃/
,:'⌒ヽ
入___人
/ l l \
r、r 、/ ,l ! \ ,.-,-、
(\\\/'´l !´ヽ///)
(\` ,l ! ´/)
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`┬‐'´ ゙l | 〉 ゚ 〈 `'‐┬´
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\⊂ニニ⊃/
アニメでフレンダが可愛かったので続きよろしくお願いします
こっちはまだ放送してないんだよ!
フレンダ可愛かったけど
イメージより高かったな
内田さん、無理してだしてないか?
あの声・・
もうすこし素の声で良い気がしたけど・・
ランランルー
____
二二,イ-- .... ____ __
――/_________(_l_ )
―‐/:::/ _,ィ=x、
―/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ __{三≧ミx
-〈―――… '' " ¨  ̄ `
 ̄ , -―- 、 z≦三三
/ , ミ、ヽ \/三三三三
/ / l \ ヽ ヽ.三三三三
___ _ / /l | l l ハ三三三三
≦三三三三≧.、 ((____ノ / | | | |三三三三
三(:::::::::::::::::::::)三) /´ ̄ヽ / | | | | |ミ三三三
三三三三三彡'゙ ( ー 、 , ― / j | |
`¨¨¨¨¨  ̄´ 、__`フ (___ ノ / 八_ ,
` ー―ュ_  ̄) _ノ / /  ̄ノ
( , ― ,ノ / { ーく
 ̄ ̄ (  ̄ ̄`ヽ  ̄ ̄) ) )
 ̄ ̄ ̄ ヽ j / /
何この神スレ。
結局、アニメのフレンダがかわいすぎて上フレ探してたらこのスレに辿り着いたって訳よ。前スレ一気に読んできたけどめちゃくちゃ面白かった。第三部にも超期待してます。
荵吶?
ペースが遅くて待ちきれん!
某安価スレくらいのペースできればやってほしい
>>88
それはいいすぎ。書いてくれるだけでありがたいと思うレベルぐらいは考えよう
まあ、ペースを上げて欲しいのは同意。楽しみもあるがこないといなくなったかと心配になる
このクオリティならこのペースで充分だが、しかも今山場だからじっくり書いてくれてええで
>>1は留年したって言ってたから勉強で忙しいんだろ
書き手のことも考えてやれよタコ
下手に急かすぐらいなら待つわ
というか今まで通りだわ
本当、遅筆ですいません。
弁解もないです……
明日か明後日、やります。
予定通り浜面加入と、十五巻部分突入の予定。
舞ってます
追いついた
最後まで書いてくれるだけでも有難いので、自分のペースでオナシャス
全力で待ってます!フレ/ンダ回避頼むぜ上条さん
■ □ ■
麦野「ごくろー。 あんたらの功績は、適当に報告しておいたから」
合流してから集合地点に戻ったフレンダと絹旗を迎えたのは、麦野のやる気のない労いの言葉だった。
いや、やる気のない、というよりはそういう風に偽っているのだろう。
依頼自体はこなした。 けれど、それで来るかもしれないと考えていた人物は来なかった。
自分の思い通りにならない現実に苛立ちを覚えるがそれはそれ。
誰かにあたってもどうにもならないものであり、拍子抜けをした、という無気力でしか覆い隠すことの出来ないものだった。
しかし、麦野なら別段周りに気を使う必要もない。
この組織のリーダーというのもそうだし、文句を言われてもその能力でねじ伏せることが出来るからだ。
だから若干の違和感を覚える。
フレンダ「……ねぇ滝壺。 麦野、何かあった?」
そのリーダーと共に行動していた少女へ、ヒソヒソと問いかける。
が、返ってくるのは否定。
滝壺「ううん、特には」
強いて言うなら、と。
滝壺「電話を一回してたぐらいかな」
フレンダ「電話? それってなんの――――」
麦野「聞こえてるわよ。 本人目の前にしてわざわざ聞き込みすることも無いでしょうに」
はぁ、と嘆息が一つ。
それは同僚の馬鹿さ加減についてか、それとも説明をしなければならない面倒臭さによってか。
麦野「さっきも言った、報告。 そのついでに、向こうからなんか押し付けられたからこっちに回すーって話」
要領を得ないそんな投げやりな言葉。
向こうから押し付けられた? こっちに回す?
フレンダ(何を?)
フレンダの頭には幾つものクエスチョンマークが踊る。
これ以上は言うつもりはない、とでも言うように黙りを決め込む麦野と、自分とは違って大した反応を示さない絹旗。
そして平常運転の滝壺をひと通り見渡して考えるだけ損だと悟った。
フレンダ(結局、何か害があるんだったら麦野がぱぱっとなんとかしてくれるってわけよ)
時間は夕方。 親船最中への狙撃は無事に解決。
自分は影で学園都市の平和を守っている……というわけではないが、自分の働きでまた一つ、学園都市の事件は減った。
今回は微量な役割だったが、働いたことには変わりない。
くぅ、と小さくお腹が音を立てた。
『道具箱』にしまっておいたサバ缶(カレー)を取り出し、缶切りが無いことに気がつく。
フレンダ(まぁ、あっても上手く使えないわけなんだけど)
手先が不器用なわけではないのだろうが、それでも缶切りだけは何度やっても上手くいかない。
だから基本的にタブのついた物を購入しているのだが、今日は急いでいたため間違ってついてないものを買ってしまったらしい。
フレンダ「というか、結局学園都市の技術って十年単位で進んでるわけなんだから、こういうところも進化して欲しいって思うわけよ」
絹旗「そんなことをいったら、学園都市製の映画とかも超沢山作って欲しいです。 C級以下は何もかもがお粗末な出来と相場が決まってますが、大仰なエフェクトで誤魔化すB級も少なくはないので」
麦野「そんな下らないコトに手をつけてる暇があるなら、私らみたいなのは必要ないっての」
そんな取り留めの無い会話をかわしつつ、フレンダは手元を見ずに電気信号で発火する爆薬テープを缶の外周させる。
量が若干多いことには、気が付かない。
絹旗「そういえば、なんで親船最中だったんでしょうね」
麦野「あん?」
絹旗「ほら、親船最中って超微妙な立ち位置なので」
いてもいなくても問題はない。
いや、学園都市統括理事会という肩書きを持っている時点で十分に重要な存在だといえるのだが。
十二人いるその中で、『最も』という意味だ。
フレンダ「……結局、単純に狙えたからじゃないの?」
麦野「普通、ただチャンスがあるってだけで雇い主に弓引く?」
私ならありえない。 麦野はそう付け加える。
第四位がそう考えるものを、第二位が考えるわけもない。
即ち、そこには何かしらの裏が存在すると考えていい筈だ。
それが一体何なのか、アイテム全員が思考を巡らせて。
コンコン、とそれを遮るようなタイミングで部屋の扉をノックされた。
麦野「やっときたか」
滝壺「例の、回されてきた?」
その通り、と麦野は視線で返答して。
リモコンを手に取り、扉の電子ロックを解錠する。
そして扉が開く。
「……ええっと、ここが『アイテム』ってとこでいいんですかっておわぁっ!?」
扉をあけて顔を覗かせるやいなや、無様な情けない声を上げて少年は尻餅をつく。
それは金属の輪っかが回転しながら眼前に飛んできた為だ。
麦野「…………」
視線が他の同僚へと向く。
滝壺、絹旗、フレンダ。
それぞれ、コーヒー入りのマグカップ、映画のパンフレット、蓋の開いた缶詰を持っている。
特に缶詰は、今開けたばかりなのか僅かに白い煙が漂っていた。
フレンダ「てへっ」
やっちゃった、ごめんね! 的な雰囲気を漂わせて、自分の頭をポカリ。
見る人が見ればあざとい、麦野が見れば殴りたくなる。
その仕草を見て麦野は思ったまま、一発拳骨を食らわせようそうしようと考えて。
「ちょっ、なっ、何!? いきなりなんなんですか!? 俺ってばここに来たばかりで何かやらかしたつもりもないんですけど!?」
その言葉に、動きを止める。
というより、部屋全体の空気が凍った。
異物が侵入したことによる、例えばゴキブリが居間に出現した時の緊張の糸が張り詰めた空気とはまた違う。
文字として表すなら、生理的嫌悪。
一言で表すなら、そう。
麦野「……キモッ」
麦野の言った感想に、他の三人もああ、それか。と納得する。
気持ち悪い。 キモい。
なんというか、少年の見せたその言動は理性ではなく本能で否定してしまうものだった。
絹旗「そうですね、超キモいです。 なんなんですか麦野、この気持ち悪い生物は」
麦野「元スキルアウト、らしいわ。 小手先の技術は大したもんらしいから拾われて、ここに回されてきたってワケ。 直属で勝手にしていいらしいわ」
要約するなら、『使い潰して構わない。 煮るなり焼くなり好きにしろ』といったところだ。
そんな身も蓋もない紹介をされて反論をするのはやはり当の少年である。
「だっ、だから待ってくれ! 俺には何が何だかさっぱり、」
フレンダ「だから、結局その狼狽え方がキモいってわけよ」
滝壺「大丈夫だよ。 どれだけキモくても、私はあなたを応援してるから」
が、それもあっさりと封殺され。
少年はがっくしと膝をつく。
そのオーバーリアクションすらも彼女らにキモいキモいと口々に言われ、心に深い傷を追う羽目になったのだった。
これが『アイテム』と少年――浜面仕上の初めての接触と、その結末だった。
そんなファースト・コンタクトを振り返り、浜面は思う。
とんでもないところに来てしまった、と。
自分の行動が招いた結果なのだが、それでもとんでもないところには違いない。
折角の休日に自宅でのんびりしていたところ、電話一本で駆けつけなければならなくなったのだから。
浜面「いや、そりゃあ俺は雑用係だけどだな……」
過去の栄光……というわりには悪い思いでしか無い、スキルアウトのリーダー時代。
仲の良かった、故・リーダーが亡くなってから責任を押し付けるように持ち上げられた自分。
それでも、ほんの一時とはいえ、百人以上ものスキルアウトの頭に立ったというその事実は間違いない。
そんな自分を顎で仕える、気まぐれで呼び出せるあれらはどれだけ強いのだろうか。
浜面「……強いに決まってるよな」
なにせ、リーダーが超能力者だ。
簡潔な自己紹介しかしなかったため、麦野以外の能力は聞いていないがそれでもそういう組織の正式メンバーということは相当の手練なのだろう。
おそらくは自分が何人いても、それこそ自分の連れていた百人が束になっても決して敵わないレベルの。
浜面「……やるせねぇ」
自分は何のためにスキルアウトになったのだろう。
とある少年の姿が脳裏に過ぎる。
あの時にぶつけられた拳が、言葉が、未だに頭にこびりついてはなれない。
浜面「……行くか」
それを振り切るように、浜面は麦野に告げられた待ち合わせ場所の第七学区のファミレスへと足を向けた。
携帯を開いて、時刻を確認する。
その真上に小さく記されている日付は、十月九日。
学園都市の独立記念日、まさにその当日だ。
今回はここまでー
おやすみなさい
乙
乙
乙
乙です!相変わらずクオリティ高い
乙でごんす
フレンダはアニメ効果もあってか
今が旬だもんな
まだかなあ...
まだかなあ...
まだだよお…
まだだっつーの!
大人しく静かに待とうじゃあないの!
待ってるよー
待機って訳よ!
結局、上フレssはここが最高な訳よ
待たせてるよー(小声)
明日というか今日来ます。
来たか!…>>1だよな?
舞ってる
■ □ ■
昼前、親船最中が狙撃された事件が発生した後。
麦野沈利は苛立ちと共に狂喜した。
数日前に逃した、姿を見せなかったと思った獲物が思いがけず姿を表したのだ。
それに悦びを感じ得ないはずがない。
麦野沈利と垣根帝督の関係性は、至って単純だ。
親友の敵。
絹旗や滝壺が加入する前の『アイテム』に居た、ただ一人の親友。 その敵が奴であり、はたまた学園都市である。
だから麦野は力を求める。 序列を、学園都市にとって有益となる数字を注視する。
なぜなら数字が上になればなるほど重大な立場や役割を与えられ、自分の意見が通りやすくなるのだから。
それは奇しくも、垣根の考えた学園都市から逃れる方法と同じではあるのだが。
そのためなら、上位に立つ者を殺すことすらも厭わない。 自らの能力はただそれに向いている。
だから第三位――御坂美琴が自分の上に立った時は激しく感情を乱したし、実際に目の前に現れたときは自分の方が上だと証明しようともした。
第一位に関してはその時の絶対能力進化計画についてしか知らないが、いずれ倒さなければならないのなら倒すだろう。
つまり、御坂美琴は機会があれば殺す。 一方通行も同様に。
しかし、第二位だけはそうではない。
何が何でも殺す。 何をしても殺す。
最終的には学園都市そのものに対して復讐を誓ったが、この目的だけは絶対に達成しなければならない。
麦野沈利にとって、垣根帝督はそういう存在。
今までは、何をしても影も形も捕らえられなかった。
例えば、裏事情に詳しい人がターゲットになった時、その人を生け捕りにして知ってることをあらざらい吐かせる、とか。
そんなことをしてもどうしようもないほど、学園都市の闇は深かったのだ。
そして突然降って湧いた、千載一遇の好機。
奴らの目的もろとも、粉砕する。 それを邪魔するものはなんだろうと――例え仲間だろうと――葬り去る。
麦野沈利は、ただそれだけを考えていた。
■ □ ■
第十八学区、素粒子工学研究所。
霧ヶ丘学園のすぐ近くで、四角い形の建物。
そこに彼女ら『アイテム』は集結していた。
集結していた、とは言っても四人が四人同じ場所にいるわけではなく二人組、二箇所に分かれてだ。
勿論ペアは麦野と滝壺、フレンダと絹旗となる。 理由は言わずもがな。
絹旗「しかし……本当にこんなものを超狙ってくるんでしょうか?」
絹旗の目の前にあるのは、小型のクローゼット程の大きさの金属の箱。
超微粒子物体干渉用吸着式マニピュレータ。 通称『ピンセット』。
本来は物質から素粒子を抜き取り、わざと不安定化させて実験を行うためのものだ。
彼女らは入り口付近を陣取る麦野達に、敵の目的物であろうこの物体の護衛を頼まれている。
フレンダ「工場や植物園に、多数の研究所……その中から有力だったのがここだけだったってわけよ。 だったら結局、『スクール』は来るんじゃないかな」
絹旗「それでも、こんなものを使って一体何を?」
フレンダ「それは……素粒子を掴む?」
言って、何を馬鹿な、と思う。
この研究所自体有益な実績を残せているとは言い難いのに、その装置を利用して同じ事をしようなどとは誰が思うだろうか。
うーん? と頭を捻らせつつ、部屋の入口付近に人形やぬいぐるみを設置し、ツールを地面に走らせる。
絹旗「フレンダは、ここを超見つけたんじゃないんですか?」
フレンダ「結局見つけたには見つけたけど、最終的に決めたのは麦野だし」
その理由はわからない。 説明もしてくれなかった。
麦野は『スクール』の目的を学園都市の監視からの解放と看破した。 そのために仮説ではあるが、監視に『素粒子並みに小さいもの』を使用しているとしたのだ。
破天荒な仮説であるが検出された施設から一つ一つ仮設を立てるとこの仮説が最も現実的だった。
そんな仮説を態々言うほど馬鹿らしいこともない。
実際にはその推理は当たっているわけだが、発想がぶっ飛んでいる超能力者や大能力者上位陣と違って変に一般性を持っているそれ以下に言っても鼻で笑われるだけだ。
フレンダ「まぁ結局、来たら儲けもの来なかったら次の作戦に移行ってわけだしそんなに疑問に思わなくても――――?」
フレンダは言いかけて、止める。
天井から粉のようなものが降ってきた。
普通に考えれば天井についてた埃なのだが、同時に僅かに聞こえた、ミシミシという音がただの埃ではないと警鐘が鳴り響く。
瞬間。
天井が崩落する。
フレンダ「にゃっ!?」
絹旗「伏せて下さい、フレンダ!」
目を見開くフレンダに一瞬で詰め寄り、絹旗は彼女の元へ落ちてきた大きな破片を弾き飛ばす。
言われた通りに縮こまり、物理的に頭を抱えるフレンダを絹旗は守る。
崩落は瞬く間に終わった。 それはこの部屋が屋上に程近いということもあったのだろう、吹き抜けとなった部屋には真上から太陽の光が差し込んだ。
それに安堵する余裕すらなく、彼女らはそこから降りてくるものを目にする。
それは、天使だった。
魔術的な意味での天使ではなく、比喩的な意味での天使。
白い翼を六つも生やした彼は何の危なげもなく、瓦礫の上に降り立った。
「流石に今ので全滅出来るとは思ってなかったが、まさか両方とも無事とはな。 そこそこの能力者か」
絹旗「……『スクール』ですか」
ひゅう、と青年は口笛を鳴らし、称賛するように手を叩く。
「ご名答だ。 飴でもくれてやろうか」
絹旗「ご褒美をくれるっていうんなら、超お引取りを願いたいです」
「それはお断りだな。 なにせアレイスターの手駒が手元にいない絶好のチャンスだ、この機会を逃すわけにはいかねぇ」
「――――垣根帝督。 第二位、『未元物質』」
出し抜けにそう名乗る。
垣根「それが俺の名前と能力名だ」
絹旗「それはそれは、ありがとうございます。 こちらの能力も超教えましょうか?」
垣根「必要ないな」
なぜなら、と。
垣根はその態度で示す。
垣根「テメェらはここで無様な死体になるんだからな」
垣根は誇張するように、翼を羽撃かせ。
絹旗は腰を落とし、足に力を込める。
絹旗「それ、超似合ってませんよ」
垣根「安心しろ、自覚はある」
垣根がその羽を振りかざすのと、絹旗が地面を蹴るのは同時。
真上から降ってきた材質不明のそれを絹旗は転がるようにして回避する。
垣根「死に方ぐらいは選ばせてやる。 何がイイ?」
絹旗「それより超自分の心配からしたらどうです、かっ!」
地面に転がっていた大きいコンクリートの破片を垣根へと投げつける。
垣根は躱す素振りすら見せず、その翼で防御する。
垣根「オイオイ、人が折角善意で聞いてやってんだ、その態度はない――――」
絹旗「フレンダっ!」
垣根はこちらへ向かってくる絹旗ではなく、彼女が名を読んだもう一人――フレンダを見る。
すると彼女はスカートの下から、何やら顔の書いてあるミサイル状の何かを取り出し。
次の瞬間にはプシュッ、という軽快な音と共に煙を噴きながら垣根へと殺到する。
絹旗もまた、同時に跳びかかり――――
垣根を中心とした爆発で、それらは全て吹き飛ばされた。
フレンダの用意した爆発物ではない。
それは正真正銘、垣根帝督を中心とした爆発。
『未元物質』、その正体を知らない人間にとっては正しく正体不明の爆発。
絹旗「っ!」
部屋の壁にノーバウンドで打ち付けられ、息を詰まらせる。
なんとか地面には膝をつくだけで抑え、呼吸を整えながら思考を巡らせる。
絹旗(……多分、私たちじゃこの第二位に攻撃が超通らない)
勝てない、とは言わないけれど。
どう攻撃を展開しても、自分たちが勝てる未来が視えない。
絹旗(せめて、麦野がここにいてくれれば……)
大能力者が超能力者に勝てない、なんて言わない。
相性というものがある。 例えば『空間移動』能力者は奇襲さえ成功すれば我らが第四位にも勝利できるだろう。
それでもこの第二位と自分たちとの差は歴然としていて、勝ち目なんて見えなかった。
垣根「今のでも無事なのか。 相当丈夫な能力者だな」
それじゃあ、と。
先ほどの爆発で地面を転がったフレンダへと垣根は目を向ける。
垣根「先ずはテメェからだ」
フレンダ「ぃ…………っ!」
フレンダの表情が恐怖に歪む。
立ち上がろうとするが、慌てて足を滑らせて尻餅をつく。
ぽろぽろと、スカートの端からぬいぐるみがこぼれ落ちた。
腕だけで後方へ下がるが、それでも垣根の歩みよりは遅い上に限られた空間の中、彼女はあっという間に追い詰められてしまう。
フレンダ「やっ、やめて……こっ、来ないで……っ!」
対して、垣根は答えない。
ただ哀れだな、とでも言いたげな視線をして。
再び、爆発した。
垣根本人が、ではなく。
今度こそフレンダの爆弾が、垣根の足元で。
予め、床に発火用のラインは引いてあった。
そこの上に、偶然トラップ用のぬいぐるみが散らばった。
ただそれだけの話。
フレンダ「っし!」
思わずガッツポーズ。
が、煙を引き裂くように白い翼がフレンダへと伸びる。
フレンダ「にょわっ!?」
間一髪でそれを回避。 もう少し遅ければ、上半身と下半身を分断されていたかもしれない。
ぶわっ、と煙をかき消し、やはり無傷の垣根が姿を表した。
垣根「痛ってぇな」
全くの真顔で、本当に痛いのかもわからない口調で垣根は続ける。
垣根「そしてムカついた。 まさか爆発程度で第二位を倒せると思ってたなんてな」
今度こそ、フレンダは自分の命が確実に狙われた事を知る。
避ける術は無い。 『道具箱』に入っている武器も小手先のものばかりだし、爆弾は全く効かない様子だし。
どうしようもない。 そう思い、それでも、と視界を巡らせると。
扉に光点が映った。
垣根「!」
垣根もそれに気付き、手をそちらへと向ける。
光点のあった扉は一筋の線が貫き、その周辺一メートル強を溶かすように一瞬で穴を開ける。
「久しぶりねぇ、第二位」
コツ、コツ、と足音をわざと鳴らしながら。 バン、と使い物にならなくなった扉を潜り抜け。
第四位、麦野沈利は現れた。
そして。
麦野「いつかの借り、今ここで返してもらうわ」
垣根帝督を見て、明らかに獰猛な笑みを浮かべた。
今回はここまでー
空が明るみ始めてる……なんでか難産だった……
乙
朝チュンですね分ります
超追い付きましたwwww
すげーがんばって下さい!
おいついた!期待してます!
追いつけた!
前スレを更新終わったちょうど1時間後に見っけて今まで読み通しだあ!
更新乙でした
そしてリアル・SS頑張ってください!
ついに来たか・・
超電磁砲Sでも上条さんの出番が待ち遠しかったが
こっちでも超楽しみってわけよ
にしても、麦野がかなりまともに見えるな
ここまでは、だけど
更新きたああああああああああああああああ!!!!!!乙です!!!!!
フレ/ンダ回避本当に頼むぜ…
乙でした
フレ/ンダ回避ルートクルー!?
わたしいーつーわ。
まつわでもいーつーわ。
一日でパート1読んで、今追いついた。次も楽しみにしてるぜ
更新乙であります!
次が待ちきれん!
追いついたぜ!!
書きます。
寝落ちしたらごめんなさい。
だが、垣根はそれに一切の動揺すら見せない。
いや、する必要すら無いのだ。
なにせ彼は第二位であり、この場において絶対的な強者であるが故に。
しかしながら、だ。
動揺ではなく、垣根は若干の反応は見せる。
垣根「垣根帝督、だ。 覚えておけ、記号で呼ばれんのは好きじゃねぇ」
麦野「んなもん覚える必要すらねぇだろうが」
垣根の訂正に対し、麦野は感情をむき出しにして答える。
なぜならば。
麦野「ここで死ぬのが確定している奴の名前なんぞ覚える必要なんかなァ!」
瞬間。
数本の『原子崩し』が同時に垣根を狙う。
そのどれもが当たれば致命傷であり、避けることの出来ない一撃。
その威力を知っているフレンダは場違いながらも、『殺った!』と思う。
が、しかし。
垣根から生えている翼の一本がそれらを強引にねじ曲げる。
その流れ弾が、危うくフレンダの頭を貫きかけた。
フレンダ「ぃひっ!?」
麦野「チッ」
頭を抱えながら部屋の隅へ逃げるフレンダを尻目に、麦野と絹旗は僅かに視線を交わして垣根へと突撃する。
いくら超能力者と言ったって、本体は生身の人間だ。
人の能力には限界がある。 麦野はそれを自らの身を持って知っている。
であるからして、同じく人間の域を出ていない垣根帝督に、『原子崩し』が通じない訳がない。
実際には防がれてしまったわけだが、それは言い換えれば防がざるをえない攻撃だった、ということだ。
麦野(だったら――――)
防げない攻撃をするまで。
麦野が入って来る前から臨戦態勢だった絹旗の方が若干速く、垣根へ到達する。
また爆発するかもしれないとして僅かに身を強張らせるが、そんなことはなく。
真正面から受けて立ち、そして援護射撃に入った麦野の『原子崩し』を再びいなす。
垣根「邪魔クセェな」
相当のものでないと『未元物質』すらも吹き飛ばす『原子崩し』。
ではなく。
垣根「一回、死んどけ」
絹旗最愛。
絹旗「!」
気付いた時にはもう遅い。
コンクリートをも軽々と打ち砕く白の翼の切っ先が絹旗の腹部を穿つ。
普通の人ならその一撃で腹部を貫かれ、衝撃で吹き飛ばされ、その先に何かしらの物体があるならそれに激突し考える間もなく即死するのだろう。
先に結果から言わせてもらうと、絹旗は壁すらも突き破って場外に吹き飛ばされるが傷は腹部についたほんの僅かなものだった。
それは彼女の能力である『窒素装甲』の賜物でもあるし。
絹旗(麦野――――!)
麦野沈利がその必殺を携えて肉薄してきたお陰でもある。
最も、麦野的には垣根の攻撃が中途半端に止まろうが止まるまいがどちらでもよかったのだが。
先程も言ったとおり、垣根帝督も学園都市第二位であると同時に、人間である。
身体を吹き飛ばす一撃を受けて立っていられるほど人間をやめたつもりはない。
麦野はそうであるから自らの『原子崩し』を防ぐ、故に防げない攻撃を放つという結論に至ったわけだが。
普通に考えれば、半径一メートルに迫った人間の攻撃を、防ぐモーションに入っていない人間が防ぐことなど出来ない。
ただ殴りかかってくるだけなら衝撃を僅かにずらすことは出来ても、完全に躱すことは出来ないはずだ。
けれど。
彼の能力に苦手なことはあったとしても不可能はない。
彼自身、この能力の原義はどこにあるのか考えたことはないが、そういうものであるからして。
だから、彼はこう言う。
垣根「俺の『未元物質』に常識は通用しねぇ」
麦野がその腕を振り抜くよりも。
その拳に纏わりついている『原子崩し』が放射されるよりも速く。
麦野そのものの身体を、衝撃波が襲った。
麦野「がっ……!?」
まるで自転車が真正面から突撃してきたような衝撃に麦野は思わず体勢を崩して。
『原子崩し』はあらぬ方向へと飛び、空へと消える。
そして、翼の放つ突きの一撃。
咄嗟に『原子崩し』で防ぐことの出来たのは僥倖だった。
仕切り直しとばかりに麦野はステップを踏みながら数歩、距離をとる。
垣根はそれを追撃せず、ただそのスーツのポケットに手を突っ込んだまま不敵な笑みを浮かべる。
垣根「アブネェな。 そういう玩具は人に向けちゃいけませんって習わなかったか?」
麦野「生憎ながら、注意書きは無くしちゃってね」
垣根「なら使い方を教えてやろうか」
麦野「先にこの状況でも余裕ぶってられる自分の頭の方を何とかしたら?」
足音。
それは壁を突き抜けて言った絹旗の、慌てて戦場に復帰するためのものではなく。
余裕をもって来る、何か底冷えするようなそれ。
更新きたあああああああああああああああああ!!!!!!
寝落ちしてるっぽいかな?お疲れ様です!
部屋の隅で傍観していたフレンダは気付く。
彼女は慌てる必要がない。
それは何故か。
麦野「滝壺」
滝壺「…………」
一拍の間を置いて、彼女は麦野が開けた穴から身体を覗かせて。
答えるようにうん、と頷いた。
滝壺「大丈夫」
悪寒を感じたのは本能か。
垣根は最後に現れた、外見からすると最も弱そうに見える少女をともすれば、麦野沈利よりも『危ない』と判断する。
無論、負ける気などさらさらないが――――
垣根「流石に一対四は分が悪い、ここは引かせてもらうとするか」
そもそもの目的はアイテムを殲滅することじゃない。 この部屋の隅に鎮座している『ピンセット』だ。
それさえ手に入れれば後はどうとでもなる。
今の学園都市の守りはまるでないようなものなのだから。
麦野「させると思う?」
垣根「いいや? させるさせないじゃなく、せざるを得ないんだよ」
垣根はその翼をはためかせる。
ミシッ、と。
嫌な音がその場の全員に届いた。
麦野は垣根と相対するその機会を捨てて、滝壺の元へ駆け出す。
フレンダは、未だに垣根の言う『せざるを得ない』理由を理解していなかったが、次の瞬間には理解する。
地面が崩落するのと同時に。
だめだもう頭がはたらかない
今回はここまでです。
来週から二週間テストです。 なので大変申し訳無いのですが、予定では次回は二十七日辺りかなと。
勉強に余裕が出来れば二十日にも来るかもですけど。
それでは、また。
>>1乙って訳よ!
, l>くl、
l ノハハ }
从 ゚w゚从━━━━━━┓
c(,○つ ┏┛ ,. -―- 、
┏┛ (,ィ=、__〉
┏┛ ,{〈 レノ^")〉
┏┛ チキチキ. ノハソリ ゚ ーノ!、
┗━━━━━━━━iIコとlニL芥ノソ )
とく」」,}
,. -―- 、 ニ / _〃
(,ィ=、___,,〉 ☆ / ‐┐ _/
. ,{〈 jノ^"ヽ} )  ̄ ̄ オォオォォォ
,ハ'ソリ ゚ ーノソ ζ从从从从从人
ζ(,ムL芥|ニつ{フ 人从 ☆、 ゞ (⌒ヽr'⌒ヽ/, '
と'く」」,}、 从从 、\(⌒ゝ;((⌒⌒) ),_ ☆
〈_/ヽ.,) .从人 ,(⌒(;;;(⌒ヾ. |`〉
从从 (;;;;(⌒( ||゙)) ,,,、||∨|| |/ ⌒))
从从 人从从ゞ(⌒ ||~))(^))|| || 0 ∠、
人从从人从人从从 ☆⌒ _(´
'⌒/ ⌒ Y ⌒\`
乙です!無理はしないでくださいね。
乙!勉強大変そうですな!頑張って下さい!
勉強しなくてもできる俺は勝ち組
そりゃ中高のテストなんざ勉強しなくても余裕だろ
うおおぉぉぉぉ追い付いたああああぁぁ
>>150小学生が何してんだよ
追いついた~ 流石にぶっ通しで読むんじゃなかったって訳よ…
あと10日か・・・
遠いな、、、
あと一週間だぜ!!
こ・ここまで長かったて訳よ。一気読みはきつい・・・
何故上げたし
あと4日!!!
>>158
諸手を上げて歓迎、というわけではないですがとりたたて目くじらたてる程のものでもないです。
兎角、それでも気を使わせてしまい申し訳……と、ありがとうございますです。
さて、それでは。
寝落ち御免で、書き始めます。
例え地面が落ちても、垣根は揺るがない。
そもそもその羽を震わせて床を落としたのは彼自身であるし、支えていた足場が落ちたところでなんてことはない。
もし彼もそのまま、地に落ちていったとしたならきっと彼の管理者は嘲笑いながら言うだろう。
『そのメルヘンな翼は飾りか?』、とでも。
麦野「チッ――――!」
滝壺を犬でも抱えるように片腕で拾い、落ちる寸前に閃光を放つ。
無論、事無げに垣根はそれを払い、返す刀でとある一つの装置をその翼であらぬ方向へと弾き飛ばす。
それこそが、『ピンセット』。 先に現物を確かめていた彼女らはそれがそうであることを知っている。
落ちていく自分たちを優越感にでも浸っていそうな表情を認めて、麦野は歯ぎしりしながらも視点を下へと向ける。
麦野「滝壺。 一応確認しておくけど、もう覚えたんだよね?」
滝壺「うん、大丈夫。 『未元物質』は記憶した」
それならいい、と言わんばかりに麦野は着地面へと向けて『原子崩し』を放つ。
つまるところ、反作用だ。 ジェットの噴出口を右にすれば左側へ強い負荷がかかるように、下に向ければジェットそのものが浮くように。
麦野は『原子崩し』を真下に放つことで落下の勢いを相殺しようとしているのだ。
実際、そんな単純なものではないのだが。
麦野「っと」
思いの外スマートな着地をして直ぐ様、ビルの崩壊を危惧し、走る。 実際にはそれは起こらず、垣根が破壊した部分だけの倒壊で住んだのだが心配しすぎることはない。
フレンダや絹旗の心配などしない。 存外に図太いメンバーだ、生きているだろう。
麦野(例え、死んでても替わりは居るし)
その点、自分という存在や垣根帝督を確実に追うことのできる滝壺は替えられない。
厳密には替えることもできるが、面倒くさいし時間がかかるというのがネックだ。
それなら使える時まで使う、というのが彼女である。
例えるなら、消耗の激しいノートや鉛筆と、パソコン。 替えられないこともないが、交換してから一々設定するのは手間だから。
そして使い手である彼女は、そのあまり交換をしたくないものがあまり長くないことを知っている。
だが、しかし。
それでも、彼女は問いかける。
麦野「それじゃ滝壺、早速だけど――――」
あの憎き敵はどの方向へ逃げた? と。
乙でした
普通に寝落ち……すいませんです。
今日も、来ます。
ついにきたか…楽しみにお待ちしてます!!
舞ってる
■ □ ■
「垣根さん、遅いッスねー」
研究所の裏門。
そこに止まっているステーションワゴンによしかかるように、彼らは立っていた。
一人は頭に何やらよくわからない、輪っかのようなものをつけている少年。 その輪から伸びている数本のコードを手で弄る。
もう一人は少女。 その若干幼い体躯に一見似合わない派手なドレスを身にまとっているもの、彼女の魅力とでも言うのか、それによって似合っていると思えてしまう。
その少女は少年の言う言葉を半分に、携帯を操作していた。
「『アイテム』が居るのは確定してるわけだから、手こずってるんじゃない? ほら」
つい、と空いている手で指差すのは彼らのリーダーである第二位が突入したビル。
元は四角い、何の飾り気もない建物だったのだが今や半壊でビームまで飛び交う始末だ。
それには我らがリーダーと相手側の超能力者が関わっているというのは想像に難くない。
「まぁ、そうなんですけどねー……ってなんかこっちに……!?」
彼が驚くのも無理は無い。
なぜなら小型のクローゼット程の大きさの金属が真っ直ぐコチラにむかって物凄い勢いで飛んできたせいだ。
少女の方はあら大変、と然程大した問題でも無さそうにワゴンの影に隠れる。 そもそも彼女の能力に直接的な攻撃力はなく、あれを防ぐのは難しいだろう。
頼れるのは元より自分のみ。
「っ――――!!」
彼の能力は『重力操作』。
単純に物を重くしたり軽くしたりするのではなく、その実態は自分から重力を放出する、というものだ。
『万有斥力』とでも言おうか。 その向きや方向は自分で決めることも出来るし、使い勝手としては念動力とそう変わらない。
差異を上げるとするなら、こちらは念動力の様に物を自在に動かすことは修練を詰まないと難しいという点だろう。
彼はその飛んできた物体に対して真正面からの面での重力をかける。
突風に煽られたかのように、それはスピードを落としてバランスを崩す。 しかしそれでもまだ止まらない。
仕方がなし、とばかりに上から出力最大で重力を加える。
見の危険が迫っているし、このまま放っておいたら自分が無事だったにしてもワゴンが無事ではない可能性が高い。
そう判断した結果の行動だったのだが、それより先に。
見慣れた、覚えのある白い羽根が幾つも降り注いだ。
重力を加える。 が、その金属の塊は何事もなかったかのように一瞬空中で静止し、そしてふわりと地面へ落ちる。
トン、という音すら聞こえなかった。
垣根「おいおい、あんまり雑に扱うんじゃねぇよ、折角持ってきたのに壊れちまったら台無しだろう」
「か……垣根さん!」
垣根帝督はその六枚の翼を生やし、ステーションワゴンの上に立っていた。
いつこちらに戻ってきたのかはわからないが、自分がこの金属の塊――装置に気をとられていた隙に、だろう。
「飛ばしたものより速く戻ってくるなら、わざわざ面倒なことしなくても普通にもってこればよかったじゃない。 それよりも、それが?」
垣根「ああ、これが『ピンセット』だ」
垣根は手早く降りて、ワゴンの荷台の扉を開く。
どうやら自分に運び込めということらしいと気付いた少年は文句一つ言わずに能力で装置を持ち上げて車の中へと運び込んだ。
垣根も運び込まれたのを確認してから自分も同じように、荷台へと入り込む。
垣根「よし、じゃあとっととずらかるぞ」
「えっ、いいんスか? 前だけじゃなくて今回も見逃すなんて、珍しいことも……」
垣根「ああ? そうじゃな――――」
い、と。 言うより速く。
閃光が先ほどまで垣根と会話をしていたチームメイトを射抜いた。
それを見て少女は動揺すらせず、しかし急いでワゴンの助手席に乗り込む。
垣根「出せ!」
同時に垣根はそう叫び、躊躇なく少年を見捨てる。
そもそも今のは即死だ。 慟哭しても何の意味もない。
そうでないとしても足手まといになるだけ。 そんな人間をわざわざ手元に置いておく必要もない。
役に立たないなら精々、一秒でも時間稼ぎをしてもらうだけだ。
麦野沈利はその少年のゴーグルを剥ぎ取り、顔を覗き込む。
頭の半分は吹き飛んでおり、絶命しているというのは誰の目から見ても明らかだった。
短く舌打ちをして、麦野は滝壺の首根っこを掴んだまま追跡を再開する。
程なくして、ワゴンが猛スピードで通り過ぎた後に目を丸くしている下っ端と明らかにイケているわけではない女が並んでいるのを遠目に見た。
あの馬鹿、自分の仕事放り出してなにやってんだと殺意を抱きつつもここに来るときに乗ってきた四ドアの後部座席に乗り込みながら叫ぶ。
麦野「浜面! 下手なナンパしてないでこっち来い! あのステーションワゴンを追うの、早く!!」
浜面「ナンパじゃねぇよふざけんな!!」
浜面も叫び返しつつ車に乗り込む。
浜面が運転席に乗り込みエンジンをかけると何やら先ほど彼と一緒に居た女性が慌てたように声をかけてくる。
「ちょっと待った浜面! その車はどうしたじゃんよ!?」
浜面「見りゃ分かんだろ免許取ったんだよ!」
それ以上の追撃を振り切るように、浜面はアクセルを力一杯踏む。
急発進にエンジンとタイヤが不愉快な音を示し、しかしそれでも力は緩めず、加速力最大でその場を駆け抜ける。
そしてその場に残されたのは、何が起こっているのかわからない『警備員』の教師ただ一人だった。
本日はここまでです。
ここまでで三部3分の1ぐらいですかね。
夏季長期休暇中には頑張って終わらせたいです。
乙です!
3分の1か…>>1がこれからどのくらいの頻度できてくれるのかわからないけど毎日期待して待つってわけよ
乙でした
明日書く予定です。
若干纏まってないけどなんとか。
実に楽しみに心待ちにしている
ここまで上条さん出番無し
そろそろかな
更新wktk
サイドミラーをちらりと見て、小さく溜息。
「ねぇ、追ってきてるけど。 どうするの?」
その言葉は下部組織の運転手ではなく、壁を挟んだリーダーへとかけたものである。
彼が今どのようにして外の様子を伺っているのかは知る由もないが、それは彼女にはどうでもいいことだった。
重要なのは知る方法ではなく、知っているか知っていないか、だからだ。
垣根『当然といえば当然だが、向こうにも足はあったみたいだな。 本来なら追手を食い止めるのはアイツの役目だったんだが』
チッ、という舌打ちも、少々くぐもって車内に響く。
その役割を担っていた筈の少年は何をする間もなく死んでしまった。
それでも若干の――数秒程度だが、車が距離を取るには十二分な時間である――時間稼ぎは出来たが、予定通りならば追手を食い止めることすらもできたのだ。
それができなくなったのは痛い。
『スクール』には戦闘時におけるチームワークは無きに等しいのだが、それでも人数が一人居るのと少ないのでは敵と相対した時の有利不利に大きく関係する。
故に、余りカードは切りたくないのだが。
垣根『プランを変更する。 オマエが指揮をとってアイツらを食い止めろ』
「別にいいけれど。 あの光線を見るに、第四位もいるのでしょう? あんな馬鹿みたいな能力者が二人も三人もいたら困るけど」
垣根『その点は心配しなくていいだろ。 オマエの能力なら』
「確かに前はそうだったわね」
前、というのは『スクール』が旧『アイテム』を粛清した時のことだ。
幼い頃からその能力――『心理定規』を所持していた彼女は幼いという理由もあり、真正面から麦野沈利の前に立ってしまったのだ。
若き日の蛮勇、とでも言おうか。
しかし奇しくもそれは功をなし、第四位――あの頃は第三位だったが――は自分を射抜くことは出来なかった、のだが。
「今でもそれが通じるかどうかはわからないし、出来れば戦いたくないっていうのが本音ね」
垣根『やれ』
それを言ったきり、垣根は沈黙を貫く。
其れに対して二度目になる溜息を吐かざるを得ない。
人手が少ないのは理解できるが、それでも自分がやることではないだろうに。
幾度目にもなる角を曲がると大型の黄色いクレーン車が置いてある。
そこで少女は転がるように車から飛び降り、ステーションワゴンとは思えない加速力でまた角に消えるのを視界の端で見送った。
彼女は急いでクレーン車に乗り込み、予め指しておいたキーを回してエンジンをかける。
(そもそも、追手が来ていない可能性もあるのよね)
あのステーションワゴンは改造済みで同型のものでは絶対に追いつけない。
相手に優秀なナビゲーションでも付いていない限り、絶対に。
そうであるとした上でのこの作戦ではあるのだが。
「まぁ、来てなかったらそのまま私も合流先に向かうだけだし」
当然、独り言のそれ。
アクセルを思いっきり踏み込むと、車体を支える四を超えるタイヤが唸りをあげる。
(兎角、一度来た道を逆走して確認してみましょうか)
そう考えて車を走らせた後、数分も、いや数十秒もかからなかった。 なにせ、まさにその角に差し掛かる寸前だったからだ。
目の前に自分たちを追っていた四ドアが現れるのは。
「――――!?」
まさかこんなに近くに来ているのは予想外だった。 が、コレは好都合。
ハンドルを切る予定だった手は衝撃に持っていかれないよう固定し、そのまま強くアクセルを踏む。
真横からの衝突。 四ドアと大型クレーン車だ、どちらが優勢か、などと比べるまでもない。
四ドアを間に挟み、少女の乗った車はガードレールをぶち破り、歩道に乗り上げ、ビルに衝突する。
そこまでしてようやく、化け物じたクレーン車は動きを止めた。
運転席から覗く男――浜面仕上と目が合う。
どうやら生きているらしい、追撃をしなくては。
そう思い、少女は手元のレバーを弄り、本来の機能であるクレーンを操作する。
その先についているのは荷物を吊り上げる為の金属製のフックなどではなく、破壊のための巨大鉄球。
「さっきので歪んでるみたいだし、このままこれを振り下ろして――――?」
目の前の四ドアのフロントガラスが割れ、浜面が飛び出し、次いで麦野が出るところで彼女はヤバイと感じる。
迷いなく鉄球を放つ。 振り子の要領で放たれたそれは、大きな風切り音をあげながら四ドアを真横から襲う。
その時既に麦野はボンネットの上に踊りでており、逃げ遅れた滝壺も鉄球が衝突する直前に浜面に引っ張られて脱出に成功。
瞬間、事故だなんだと群がっていた野次馬も耳を劈くような轟音が襲った。 普通なら、驚きで身動きがとれなくなるだろう。
それから二拍遅れて、四ドアが爆発し、その炎を周辺に撒き散らす。
「……やって、ないわね」
今の爆発だ、一人ぐらい巻き込まれても不思議はなかったのだが。
運良く、鉄球衝突時の衝撃で車上から振り落とされて難を逃れたようだった。
牽制するように、エンジンを唸らせる。
すると麦野が短く何かを告げたかと思うと、三者三様の道へと散り散りに走りはじめた。
これには流石の彼女も舌打ちをする。
(分散して、追手を振り切る作戦、ね。 第四位を狙うのはチョット荷が重いし、多分男か女のどっちかが私達を追いかけて来たのでしょうけど)
二つの顔を思い浮かべる。
本命は生気の抜けたような顔をしていた少女のほうだが、順当に考えると運転手である馬鹿みたいな顔の男の方がナビゲーションを兼ねている可能性が高い。
(それに、弱そうだし)
即断して追いかける方を決めた少女は携帯電話で他二人の行き先を下部組織に告げて追い打ちを掛けるように命じつつ、ビルの間の路地へと逃げ込んだ浜面を追跡する。
今回はここまで。
次回は明後日辺りを予定しています。
それでは、また。
更新乙!!
乙ですー!
乙でした
乙です!!
やっと追いついた
■ □ ■
闇。
黒、墨色、涅色、漆黒、暗黒。
目が覚めた筈なのに、目の前に広がるのはただそれだけで、フレンダは若干動揺を見せる。
フレンダ「…………」
両手は地面に対して垂直に、同時に手枷をハメられている感触がある。 視界が開けないのは目隠しをされているからだろう。
そして文字通り、地に足がついていない。
ギシッ、と身体が揺れる。
どうやら自分は囚われの身となってしまったようだ、と悟った。
不意に頭痛がする。
衝撃を与えられて気絶したのではなくて、薬か何かで昏倒させられていたらしい。
自分を落ち着かせるようにゆっくりと息を吐き出しつつ、思考を巡らせる。
覚えているのは――確か、垣根帝督に床をぶち抜かれた直後から、だ。
そこから順番に、記憶を引っ張りだす。
フレンダ(ええと、確か……一瞬気絶してた、ってわけよ)
いきなりの床抜けに思わず意識を手放した彼女は、気がついたら人形の海に沈んでいた。
どうやら演算の暴走によりスカートから人形たちがこぼれ落ちてクッションになってくれたようだった。
いつもなら不都合しか生まない暴走であるが、この時ばかりは自分の能力に感謝した。
フレンダ(それで、人形を全部回収した後麦野達と合流しようとして……)
そこで、また意識が途切れる。
否、薄っすら、とは思い出せるのだ。 俗にいう靄がかかった状態、それに近い。
鮮明に思い出そうとすれば、先ほどから弱々しく響いいていた頭痛が酷くなる。 やはり薬の作用か何かだとフレンダは判断した。
フレンダ(しっかし……結局、コレはどういう状況なわけよ?)
手に力を入れようにも、足が地面についていないせいで上手く力も入れられない。
目を塞がれているから空間を把握するのも難しいし、自分が捕らえられてどのくらいの時間が経ったのかすらも予想がつかない。
だが間違いなく、今の自分は檻に入れられた猛獣などと大差ないということがわかっている。
いや、防御すらも出来ないとなってはそれ以下だろう。
「おーおー、どうやら目が覚めたみたいだな」
フレンダ「っ!」
声に反応して、思わず顔をあげる。
どうせ視えないのだが、それでも、だ。
なにせその声は、記憶上では先程まで対峙していた相手であるのだから。
フレンダ「垣根、帝督……!」
垣根「ご名答だ、フレンダ=セイヴェルン」
どうして名前を、と思ったが愚問だった。
少し調べればすぐわかることだ。 当の本人が目の前にいるのなら尚更すぐに判明する。
そして同時に、この事態に悪寒を感じないというのは無理な相談だった。
敵対している組織の人間で、そして殺し合いもした。 そして自分は今、身動きもまともに出来ない状態で無防備を晒している。
殺される。 その考えに至るのは当然だ。
フレンダ(……となれば、取るべき方法は一つ、ってわけよ)
死ねない。 死にたくない。 死にきれない。
自分には立ち止まってなどいられない、ここで生きねばならない事情がある。
それは彼女にとって数少ない、自分以外に大事に思う妹の為であり、最大の理由は無論、自分自身の為。
想い人の幻想に縋りつく、縋り続けたいという、最後の望みの為。
フレンダ(結局このまま黙って死ぬぐらいなら、一か八か、勝負に出――――)
瞬間、眼前を何かが通り過ぎる。
一歩遅れて、ストン、と目隠しが真ん中から二つになった。 そしてまた一歩遅れ、視界が開ける。
無機質な四角い部屋。 冷たい雰囲気の漂うこの場所は前時代の拷問部屋を感じさせた。 血塗られた跡や道具などなくともそうであるのが彼女には理解できた。
しかしそんな視覚情報は頭に入らず。 フレンダは目の前の人物から目を逸らすことが出来ない。
何故ならば。
垣根「余計なコト考えるなよ格下。 問答無用でぶち殺すぞ」
その右手に金属製の、二本の爪を装着している垣根帝督が居るからだ。
きっと、その言葉に偽りはない。 フレンダが何かをしようとするならば、その何かよりも先に彼の攻撃が彼女を絶命させるだろう。
緊張に、唾を飲み込む。
垣根「……よし。 まぁこっちも、無駄な殺しをするつもりはねぇ、こうして必要なモノが手に入った今となってはな」
言いながら、見せつけるようにその金属の爪を鳴らす。
それが『ピンセット』だと気がつくのに、フレンダは少しばかりの時間を要した。
垣根「それはいいんだ。 問題はここからだ、フレンダ=セイヴェルン」
コツ、と一歩。 その靴が地面とぶつかって音を響かせる。
フレンダは天井からぶら下がっているために垣根は少しばかり彼女を見上げた。
垣根「『アイテム』の隠れ家が知りたい。 今隠れているだろう場所を、だ。 今日は気分が良い、それを大人しく吐いたなら五体満足で見逃してやる」
フレンダ「隠れ家……?」
ああ、と垣根は相槌をうつ。
垣根「別に放って置いても構わないんだが、こっちは正規要員が一人やられてるんでな。 ちっとばかし全滅させないと気が済まない」
だから教えてくれるな? と垣根は言外に問いかける。
しかしフレンダは口を閉ざす。
その全滅というのは果たして、自分も含んでいるのでは? と。
五体満足で見逃すとは言ったが、この世界に信じられる人間などいない。 場所を吐いた瞬間、この場で切り捨てられるのではないか、と危惧するのは当たり前だ。
その沈黙をどう捉えたのか、垣根は口端を軽く釣り上げた。
垣根「イイね。 この期に及んで仲間を庇うとはいい度胸だ。 その度胸に感服して、一つ教えておいてやる」
ストン。
気がついた時には、それが通り過ぎていた。
垣根の背後には翼が六つ。 素粒子工学研究所で見たものと寸分の狂いもない。
はらり、と。 フレンダのブレザーのみが真っ二つになる。
弾け飛んだボタンの欠片が地面に転がり、音無き部屋に冷淡な音を響かせた。
その後を追うように、冷酷に怒気を含んだ口調で垣根は言う。
垣根「俺は自分の敵には容赦はしない。 テメェが黙りを決め込むっていうんならそれでもイイが、その時はテメェを外から順に引き裂いてやる」
服なら、まだいいだろう。
皮膚なら、まだ耐えられる。
だがそこから先は、もう考えたくもない。
ここにきて、フレンダはようやく気付く。
この部屋は紛うことなき拷問部屋だ、道具が無いのは目の前の彼一人で十二分にその役割があるからだ、と。
垣根「もう一つ言っておくが、隠れ家なんて別にお前に聞かなくても調べれば分かる。 こうしてるのは余計な手間をかけたくないからだ」
垣根は疲れたように、『ピンセット』をつけていない方の手で髪を掻き上げる。
そして息を荒くするフレンダを一瞥して、言う。
垣根「もう一度聞く。 ここで死ぬか、それとも未来に賭けるか――――『アイテム』の隠れ家を教えろ」
少女は選ぶ。
僅かな葛藤を引き起こし、やはり、と選ぶ。
より、生き残る可能性の高い方を。 仲間を信じる気持ちも僅かに含みながらも。
そして彼女は、小さく一つの高層ビルの名前を告げる。
おわーり。
おやすみです。
乙
エロが始まるのかと少し期待してしまった
更新きた!乙です。
待ちに待ったこの場面がきたわけよ…さーてここからだな。期待してます!!
更新乙です。
やっとフレンダのターンなわけよ。
乙でした
乙です
いよいよジャッジが下るわけか・・
上条さんはまだか・・!
【社会】「サバ缶」が売れすぎてスーパー品薄、売り切れ またもやTVのダイエット特集で買い物客が殺到!!!★2
>>194
おいマジかw
日本人騙されすぎだろw
>>194
アニメのフレンダ効果でサバ缶買い込んだ私は……?
>>196
ファン
明日書きますのだぜー
明日来るか
待ってるぜ
遅れたのだぜー
寝落ちごめんだぜー
それでは、いきます。
よしこい
■ □ ■
垣根帝督率いる『スクール』が『アイテム』の隠れ家を襲撃するのと同時。
念のために『アイテム』隠れ家付近まで連れて来られていたフレンダはようやく、その身を開放された。
最後に垣根が彼女に投げかけた言葉はといえば、次のようなものだった。
垣根『これより先、お前に人質の役割は与えない。 逃げるのも、俺達の邪魔をするのも勝手だが、邪魔をするなら覚悟はしておけ』
再度、迷った。
今度は先ほどとは違い、選べない選択肢ではない。
垣根の言った、『未来に賭ける』選択肢だ。
例えば。
麦野沈利が垣根帝督を退けたとしよう。
いや、退けなかったまでも敗北もなく、再起不能にならずまだ攻勢に移ることのできる。 最低でもそんな状態だとするなら。
自分は麦野の仕置をくらうに違いない。 それがどの程度のものかはわからないが、『アイテム』の損害によっては腕の一つや二つも覚悟すべきだ。
例えば。
垣根帝督率いる『スクール』が『アイテム』を再起不能にしたとしよう。
そうしたなら、恐らく、だが。 垣根はフレンダを敵とは見なさない。 戦意を喪失して背を向けて逃げる相手に追い打ちをかける人間ではないだろう。
こちらなら、逆らわない限り『スクール』からの命は保証される。
そして、後者なら。
もしかしたら、という可能性の話だが。
首輪つきで、いつ切り捨てられるかもわからない状態になるかもしれないが。
日常に帰ることができるかもしれない。 そういった可能性もある。
彼女がどちらを選ぶか。 即ち、戦うか逃げるか。
メリットとデメリットを比べてみれば、どちらがいいか、など。 一目瞭然だった。
そして少女は一目散に逃げ出す。
後ろに、『スクール』の襲撃する音を聞きながら。
その音にも全く振り返らず、逃亡した。
少ない『スクール』の下部組織の人間とすれ違う。
が、垣根の意向なのかフレンダを捕まえようとする人間は一人もいなかった。
しかし、フレンダにはそんなことに気を配っている余裕など一つもない。
彼女の頭にあるのは、『これからどうすればいいか』、ただそれだけだった。
フレンダ(まずは、逃げる。 逃げて、潜る。 結局麦野達が生き残るにしても何にしても、熱りが冷めるまで退避するのは常識ってわけよ!)
いくらなんでも、五体不満足になるのはごめん。
それには裏切ったわけではないことを証明しなければならない。
垣根が麦野に殺されたなら簡単にその偽装することはできる。
例えば、隠れ家の位置を吐いた後も『アイテム』の情報源として幽閉されていたとする。
しかし麦野達が『スクール』を撃退すると自分は幽閉されたまま放置される。
不穏な動きを見せるとやられそうだったから大人しくしていた、見張りがいなくなって速攻脱出してきたとでも言って彼女らの前に現れたら流石に大目に見てもらえるはずだ。
その時はきっと、麦野は敵である垣根を倒すことが出来て気分がいいだろうし。
そんな皮算用をしているフレンダの頭上、僅か十数センチ。
光線が降る。
フレンダ「――――ッ!?」
咄嗟、頭を下げて地面を転がる。
続けて地面に穴を穿つ二発目の閃光は、修正するように僅か下……つまりフレンダの頭があった場所を通過していた。
フレンダ(――むっ、麦野!? 早すぎ、ってわけよ!?)
あまりの出来事に、フレンダは混乱を隠せない。。
戦闘を終わらせたのか離脱したのかは知らないが、こんなにも早く迫ってくるなど完全に想定外だった。
だとすると、じっとなどしていられない。 何のつもりかは知らない、否、心当たりはあるが、殺しにかかって来ているのは今の攻撃で理解できた。
あの攻撃は、一度のそれだけでも致命傷になり得る。
故にフレンダは第三波を警戒しつつ、必死にどこに居るのか、どこから迫ってくるのかわからない麦野からの逃亡を開始する。
■ □ ■
少しばかり、時は遡る。
垣根が『アイテム』の隠れ家を襲撃し、絹旗が滝壺と浜面を連れて逃げた直後。
一瞬にしてごった返した部屋には超能力者二名のみが残された。
一触即発の状態、先に口を開くのは垣根。
垣根「やっぱ、あっちのが『アイテム』の要ってわけか。 そりゃそうか、アイツにはテメェにすら感じなかった悪寒を久々に感じたしな」
麦野「……馬鹿正直に答えると思う?」
垣根「いいや? そもそもテメェに聞いてる訳じゃないからな」
首を軽く振ってコキコキと鳴らしつつ、垣根は今度こそ問いかける。
しかし、答えは聞かない。 聞く必要がない。
垣根「つーわけで時間は余りねぇんだ。 とっとと終わらせてもらうぞ?」
麦野が答えるより先に、垣根が攻撃を仕掛ける。
上階と区切る天井を豆腐の様に切り裂く、縦に振られた翼が二つ。 左右から追い詰めるように横に振られたそれが二つ。
そして同時に残りの二つが震え、衝撃波を生み出す。
麦野は初めからそれらに立ち向かおうとはしない。 ただ防御に徹する。
真正面から勝てないことは既に素粒子工学研究所で既に理解している。
だから自分が今行うことは、『アイテム』の要である滝壺理后の逃げる時間を出来る限り稼いでから離脱、合流した後に次こそ奇襲を成功させることだ。
よって、今行うことは二つ、いや、三つ。
待ってたぜー
Part1をパラ読みして追いついたけど、これは名作だ。乙
上条×フレンダはあんまない気がするからな~
上条×アイテムはあったけど
というかフレンダはいじられ役というか雑に扱われること多いような...
おおぅ...sageうち間違えた...
すいません
超電磁砲Sのオープニングがかわったが、フレンダが、振り向くシーンの直後に当麻が出てくる。このスレの、どの時期なんだろうか、なんて思ってしまった。なんだかせつない。
一番早く迫る衝撃波。 それを抵抗せずに受け入れる。
ギチギチと身体が嫌な音を立てるが、許容範囲。 抵抗して踏ん張ると、余計に圧力をもった攻撃となりダメージは大きくなる。
それだけではなく上下左右の攻撃も防ぐ間もなく受ける羽目になる。 それを回避するための一手でもある。
次に、垣根に向かって『原子崩し』を放つ。
だが垣根は避ける素振りすらみせない。 そもそもそれが当たる軌道上ではないからだ。
しかし、それでいい。 麦野が狙ったのは垣根本人ではなく、その後ろから生えている翼の根本なのだから。
『未元物質』は『原子崩し』を通さない。 が、干渉する、衝撃を与えることはできるのだ。
垣根「!」
そして根本がズレると、切っ先もブレる。
縦に麦野を狙っていた翼の片方が、それによって大きく狙いを外す。
そして三つ目。
横に振られた翼は足元と胴体を狙ってくる。
足元の方は度外視し、胴体を狙ってくるそれに『原子崩し』の盾を合わせて。
そのまま派手に、場外へと吹き飛んだ。
空中に投げ出された麦野が見たのは、自分が先程まで居た部屋の崩落だった。
きっと垣根のあの性格だ、死体の確認は下部組織に任せるか、そもそも確認すらしようとしないだろう。
或いは知っていて見逃したなら、それは麦野が垣根にとって大した障害ではないと判断したということだ。
どちらにしても、奇襲はできる。 自分が死んでいると思われたとしても、甘く見られていたとしても。 その為に、あえて必要以上の抵抗をしなかったのだから。
つまり、麦野沈利は一対一では自分に敵わない、抵抗する暇もなくやられてしまう、そんな存在だと思わせた。
自分と同じアタッカーである絹旗が撃破されたとしても、滝壺と自分さえ生きていれば『アイテム』は再起可能なのだ。
麦野(っつっても、割とムカつく。 こりゃあこっから先ノーミスクリアだけじゃ許されんかも)
曲がりなりにも、麦野は超能力者だ。
彼女は知る由もないが、垣根と同じく割と強い序列へのコンプレックスを持っており、確実に倒すため、とはいえども敗走するのはプライドが邪魔をするのだ。
そんな時、見つけた。
麦野「あん?」
空から、偶然見えた。
太陽を反射する金髪を背負った人間が、自分たちのいた方向から全速力で走り去っていく姿を。
重力をその身に浴びながら、麦野は思う。
麦野(――――――――)
否。
彼女は、何も思わず。
ただそこには、怒りだけを込めて。
警告と、罰。 その役割を与えた二つの光線を打ち込んだ。
ごめんなさい、わかっておられるかと思いますがオチてしまいました……
とりあえず今回はここで終わり、次回は……火曜日か水曜日になるかと。
それでは、また。
乙
乙でした
乙
つぎも楽しみにしてるってわけよ!
乙
超電磁砲のop見たけど、やっぱオリストか
アイテムが出んのかな...?
いいじゃんオリジナル
あ、でも黒妻はイラネ
初春みたいにさらっと能力判明とかはやだなぁ……
何にせよ待ってます
フレンダは禁書では活躍しないから超電磁砲では出番増えてる~
18話も、ちょい役だけどアイテム出てた。フレンダ出てくるだけで嬉しい~
乙です!!
乙
フレンダのレベルはどうやら4らしいな
夏休み中に終わりそう?
>>223
フレンダの能力考察は正直必要ないと思うけどね~
Level4か…
頑張れー
ごめんなさい! 色々事情があり遅れました!
本日はちょぅと疲れがヤバイので明日、必ず更新します!
無理はしないでくれだぜ。楽しみに待ってる
>>225
強いてLevel4にする必要もない品
一応
品→しな
所で>>1、ここまで地の文がしっかり書かれてるんだから台詞の前にキャラ名はいらないぞ
○○「」みたいな形式は地の文がない時に誰が喋ってるかわかり易くするために使うものだから
>>230
今更杉ワロタ
そんなん百も承知でしょう
そうですねー、重々承知しておりますです。
強いていえばVIPの名残というか。
別になくてもいいんですけどね。 絹旗SSの続きの方では実際、括弧前の名前は表記してませんでしたし。
とりあえずこのスレではこのまま通します。
それでは、書き始めます。
ビルの角で注意深く、けれども素早くその先の様子を伺い、フレンダは移動する。
先ほどの『原子崩し』をどこから放ってきたのかは分からないが、狙いを定められたことは確かだ。
フレンダ「……どうしよう」
フレンダは焦燥する。
先ほどの攻撃は、明らかに殺しにきていた。
けれど麦野に殺される自分、というのが想像がつかない。
それは負けるビジョンが視えないというわけではなく、麦野はなんだかんだ言ってもオシオキ程度で許してくれる。
こちとら数年来のチームメイト。 多少の信頼はあれども、敵意はない。 利害の一致で結ばれていても情を移してはくれている。
そう思っていたのだ。
しかし、その甘い考えはつい先ほど覆された。
好意的、というより自分に都合よく考えるなら自分が回避することを前提とした警告。
逃げるな、と言外に込めた一撃。
もし仮にそれがあっていたなら、いつもより少しきついオシオキ程度で済むのだろう。
だが、それはない。
麦野はやるといったらやる。 特に、彼女の親友の敵の件ともなれば尚更。
フレンダ「……結局、選択失敗した……かな」
こうなれば彼女にとってフレンダも垣根と同じ扱いだ。
絶対に地の底まで追い詰めてくる。 それは想像に難くない。
説得、も恐らく難しい。 麦野が殺しにかかってくるのは予想外だった。 少し考えれば可能性としてありえたことだったというのに。
フレンダ(……結局、また夢見てた、ってわけよ)
恐らく、そうであろう。
自分主観のその可能性を一方的に信じ、少なからずありえる可能性を度外視する。
それが自らの失敗を招く要因になっていると今更ながら気がついた。
フレンダ(本当、今更)
どうせなら、もっと早く知っていたかった。
そうしたならやはりあの少年ともっと長く、一緒にいられたのかもしれなかったから。
その隣にはフレメアもたまにいて。
何もない日常を二人で、時々三人で、ただ、ただ――――
麦野「みっけ」
ブン、と。
何か機械の電源を付けた時のような音と共に背後から彼女の声が耳に届く。
フレンダは振り返りもせず、左へ直角に向きを変更する。
が、遅い。
靡く髪。 勢いで自分の後ろへ振られた右手。
それらを『原子崩し』はなんてことなく消し飛ばす。
そう。
読んで字の如く、『消し飛ばす』。
ジッ!と理解し難い音がして。
続いて、肉の焼ける臭いが周囲を襲う。
フレンダは転んだ。 ベレー帽が空へ舞う。
急いで起き上がろうとして、そして見た。
自分の右手首から先に何も無いのを。
やばいぞ…
カミやんはいつ来るんだ…
よし、頼むぞカエル医者
青ピでもいいから助けてあげてー
瞬間、フレンダは凍る。
ほんのつい数秒前までそこにあったものがない。
その事実を脳が認識しなかった。
赤黒いモノが止め処なく滴り落ちる。
これは、何だろう。 一体、何がおきているのだろう。
夢? 幻? それとも。
フレンダ(現実?)
ようやく、思考が事実に追いつく。
手が、足が、身体が震える。
そして。
フレンダ「っあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッっっっ!!!?!!?!!!!」
激痛と、認めたくない現実。
その二つが相まって、フレンダは絶叫する。
フレンダ「手が、手がっ!!? 私の手、どこ、何処ッ!!?」
周囲を見渡す。
が、其れらしきものは転がっておらず、おちているのは途中から無理矢理に焼けちぎれた少量の金髪と、点々とした血の跡のみ。
心臓がこれ以上ないほどに脈をうち、呼吸も定まらない。
この状況で落ち着けるか。 否、そんなことができるわけがない。
麦野「あーあー、ごめんごめん。 加減間違えたわ、もうちょい威力弱めて嬲るつもりだったんだけどにゃー」
わざとらしく足音を鳴らして、フレンダの後ろに立つ。
ひっ、と短い悲鳴を彼女は漏らし、脇目もふらずに逃げに入ろうと地面を蹴る。
が。
麦野「いやいや、逃がすわけねーだろ」
再び、ジッ!、と。
直径五ミリほどの光線が両足を一本ずつ射抜いた。
フレンダ「あグッ!?」
力が一気に抜けて、フレンダは無様に地面に転がった。
勢いよく顔面から転び、頬の皮も剥け、運動後の様に患部が熱くなる。
フレンダ「ハッ、ハッ、ハッ」
嗚咽をするように呼吸につまり、カチカチと五月蝿いほどに歯が鳴り響く。
恐怖。
垣根の脅しも恐ろしかったが、今まさに差し迫ったこれは死の恐怖そのもの。
有無をいわさず、弱者から命を奪う暴力に彼女は何することもままならず、怯えていた。
麦野沈利はそんな元チームメイトをつまらなさそうな表情で見下ろす。
麦野「フレンダぁ。 アンタ、つまんないことしてくれたわね」
麦野「折角、あのクソッタレを潰せるチャンスを態々不意にしやがって。 覚悟は出来てんだろうなぁ、アァ!?」
麦野はフレンダの頭を渾身の力で踏み潰す。
何度も、何度も、何度も。
その度に彼女はコンクリートに頭を打ち付けて息をつまらせる。
初めはまだ残っている左手で庇おうとしていた動きもなくなり、フレンダは細い息しかしなくなった。
抵抗もできない。 彼女ができるのは、精々意識をぎりぎりで保ちながら考えるだけだ。
その考えも、麦野の言葉への返答などではなく。
フレンダ(……フレ、メア)
数少ない、大切な存在である妹のこと。
自分はもう駄目だろう。 ならば考えるのはその程度のことだ。
結局、喧嘩別れになってしまった。
きっと、彼女は自分をまつのだろう。 あの二人で住むにしては広いマンションで、貯蓄の鯖缶でも食べながら自分のことをずっと待つのだろう。
それならせめて、別れの挨拶ぐらいは言っておきたかった。
麦野「てい」
フレンダ「――――!」
脇腹に衝撃。
もはや悲鳴すらあげられない少女はなされるがままに、地面を転がる。
その際にいくつかの人形やぬいぐるみ達が地面と自分の隙間から漏れ出た。
麦野「何寝てんだっつの。 まだ終わってな……あん?」
そのぬいぐるみに麦野は目を止める。
それはとある超電磁砲も好んでいるカエルの、ゲコ太のぬいぐるみ。
しかしフレンダにとっては特別な意味をもつぬいぐるみでもある。
そして麦野は、それを知っていた。
ここ最近のアジトで、彼女はこれを抱きしめながら寝ていたのだから。
しかしながら、それ以上のことは知らない。
ただのお気に入りだと言われてしまえばそれまでなのだが。
麦野がその二つのぬいぐるみに目をつけた瞬間、明らかにフレンダの表情が変わった。
ゆっくりとだが、左腕をそちらの方へ伸ばしつつ、フレンダは言う。
フレンダ「だ……め、やめ、て。 むぎ、の」
力と声を絞り出して、少女は懇願する。
それだけは勘弁してくれと。
それだけは見逃してくれと。
フレンダ「とうまを、とらないで」
聞いて、麦野は呆気に取られる。
とうま。 当麻。 上条当麻。
それを知って、麦野は迷いなくその二つのぬいぐるみに『原子崩し』を放った。
地面ごと抉られ、ぬいぐるみはこの世から消失する。
絶望にフレンダの顔が染まる。
あれは、昔と、そして今の上条との最後の繋がりだった。
それが目の前で消し去られたのだ、そうならないはずがない。
麦野「……ふー。 あのさぁ、フレンダ。 一体いつまで夢見てるつもり?」
呆れたように、麦野は続ける。
麦野「アンタはこっち側の人間。 どうしようと向こう側に行けないし、辿りつけない。 死んでも、誰も気にかけない」
麦野「それなのに『とらないで』だぁ? はなっからテメェのモンじゃねぇだろうが! それとも夢だけは見る権利はあるってか!?」
それに対し、フレンダは答えない。
答えず、ただ目から涙を零すだけだった。
思い出す。
幼稚園の頃。
高校一年生の頃。
そしてここ二ヶ月にも満たない出来事。
少年との、大切な思い出を。
自分は、多くは望んだつもりはない。
ただ、一緒にいたかった。 少年の傍に寄り添っていたかった。
何もない日常を二人で、時々三人で。
ただ、ただ。 ただそれだけが願いだったのだ。
麦野「……はぁ。 フレンダ、あんたもういいわ。 私はこれからあの第二位の野郎を潰しに行かなきゃいけないから、これ以上構ってる暇ないの」
麦野の声が聞こえる。
自分に、手を翳しているような気配。
終わるのか、とフレンダは思い。
麦野「んじゃ、死んで」
ここで、自分の一生は幕を閉じ。
結局。
少女の幻想は幻想でしかなかった。
■ □ ■
そして。
乾いた音が、辺りに響いた。
おやすみです。
おい……、おい……!!
おつつ
あ・・・れ?
お、乙です。
乙でした!
フレ………ンダ………?
乙です!
乾いた音は幻想殺しの音だよな?そうだよな?
大穴:PSPエヴァ2の青葉並に助けに来た浜面(そして死ぬ)
乙
でもスレタイ的には…
乙です。フレンダがヤバい助けて上条さん
やはり、運命は変えられないのか…
早く……ヒーロー!!!
という夢だったのか…
>>249
本来なら子安ボイスの所がネルフ職員Aの声になってるのを聞くと悲しくなってくる
フレンダに死んでほしくない
>>255
日野ちゃまに謝れよ!
>>250
確かにスレタイ的には…
フレンダを助けるか、フレンダを殺されて、仇をうつというか麦野にそげぶってかんじかな…
こんなに上条さんを待ち焦がれるとは・・
早く来てくれヒーロー
予定調和とかご都合主義的になるだけだからここでいきなり上条登場はいい
今は上条でなくていいからとにかく助けてやってくれ……
どうなる……!?
か、上条視点を……
>>257
なんで日野
追いついた
すげー面白い
ハッピーエンドがいいけどまぁ面白ければいい…のか?
ここまでの積み重ねを否定するかの如くとってつけた様に上条を出さなければ
というか出来過ぎた偶然とかなしに流れとして自然なら結末は別に
まあ全て>>1次第だが
今夏中には完結するのだろうか
上条は上条側描写があってからでも遅くないといえば遅くないな
所でフレメアの出番は……
続きが気になる
明日来ます。
夏期休暇中には終わらないかも……
明日か
待つ
ずっと舞ってる
そろそろか・・・?
■ □ ■
麦野「……あ?」
『原子崩し』は音を発しない。
音が鳴ったとして、それは何かを射抜いたり、使用直後の加速による空気との摩擦、それにより生じる音に他ならない。
しかしそれでも、『乾いた音』などというものは生じ得ないのだ。
そしてそれは、一般に『パン』となる音に対して用いられることが多い。
例えば、拍手。
例えば、平手打ち。
例えば――――
麦野(銃――――ッ!?)
急いで飛び退き、自身の無事を確かめる。
動けた時点で無事だというのは大体判断できるが、そうとも言えない場合もある。
あまりに不意を付かれると、致命傷を受けてもわからなかったりするものなのだ。
バイクに乗っている人間が、ガードレールに挟まった金属片に足を持って行かれても気付くのに数瞬遅れてしまうように。
結果的に麦野には傷一つなく無事だったわけなのだが。
足音が一つ。
足音が二つ。
左右の足音を順に鳴らすそれは、空に向けられた銃口をゆっくりと下ろしながら麦野へと近づいてくる。
服装はカジュアルなもの。 しかし真深く被られたキャップはその表情を完全に覆い隠し、黒を基調にした闇に溶け込むような服装をしていた。
その体型で男性だと判別できるのが唯一の情報、だろうか。
しかし麦野はそれに見覚えがある。
加えて銃の所持など、ただの人間ができるわけがない。
麦野(……『スクール』の下部組織か。 目的は私の生存確認ってトコか?)
と、いうのなら空に打ち上げた発砲は恐らく、自分の位置を示すための符号といったところだろうか。
予想通りなら、次々と下部組織の連中、或いは『スクール』の正規メンバーが到着するだろう。
ちらり、とフレンダを見遣る。
彼女はピクリとも動かない。
麦野がぬいぐるみを吹き飛ばした場所に手を伸ばしたまま、きっとその顔は涙に濡れて生気は果てているのだろう。
手首を切り落としたのだ。 恐らく放っておいても時期に死ぬ。 なればこのまま立ち去っても構わない。
の、だが。
麦野(……コイツは、私が直々にやらないと気が済まない)
裏切った。
その事実が、麦野沈利の感情の振れ幅を大きくする。
麦野とフレンダは、五年来の付き合いだ。
関係はリーダーとそのメンバー。 しかし、絹旗や滝壺よりはずっと深い関係であるだろう。
それの原因は過去。 チームメンバーを、仲間を、友人を、親友を失ってしまうという共通の苦渋を舐めたからこそ。
その敵である垣根に屈してしまったというのは、勿論彼女の怒りの要員ではあるのだが。
それだけではない。
それだけではないのだ。
麦野は親友が亡くなってからフレンダのことを、無二のパートナーだと思っていた。 オシオキとかそういうのはリーダーとしての勤めであり、それ以外の部分では若干の手心を加えていた。
同じ想いを持っているはずだ。
同じ怒りを秘めているはずだ。
そう信じていたが故に。
なのに。
フレンダはその信頼を、いともたやすく裏切った。
例えば、絹旗最愛。 彼女が裏切ったなら、それこそフレンダが予測していた通りに腕の一、二本で済んでいたのだ。
信じていたからこそ。
信頼を寄せていたからこそ。
彼女は、麦野沈利は、フレンダ=セイヴェルンを許すことなど絶対に出来ない。
直々にこの手で引導を渡し、その生涯を終わらせる。 彼女が抱えてきたその幻想と共に。
それが、彼女がフレンダに行う最後の友情の証だった。
麦野(っつーわけで)
麦野「まずはテメェからだクソガキがッ!!」
その引導を渡す瞬間を邪魔した男。
正規メンバーにすらなれない、大した能力もないくせに立ちはだかるこの人間を。
麦野は迷わず撃ち抜いて。
そして、その『原子崩し』は宙へ霧散した。
麦野「…………は?」
確かに、当たった。
真正面から、『原子崩し』はその男へと直撃したはずだ。
なのに。
どうしてコイツは、未だ無事で、こちらへと歩みを進めているのだ?
麦野「っ、チィッ!!」
何をしたのかはわからない。 もしかしたら、電気能力用の能力でも持っているのかもしれない。
幻影を見せる能力や、原子に干渉して無理矢理に『原子崩し』をねじ曲げているのか、とも考える。
だが、今度は回避不能のはずだ。
物質量で押し切る、特大のレーザー砲。
威力的には、かの『超電磁砲』をも凌ぐだろうその一撃。
それを、彼女は勝利を確信して放ち。
そしてまた、彼は傷一つなくそこに立つ。
待ち受けるように立ち止まり、その右手を翳すようにして。
麦野「な、――――ん」
ここにきて、麦野は理解する。
目の前のこの男は、『能力を打ち消す能力』を持っているのだと。
そうでなければ、説明がつかない。
あの圧倒的な力を持つ垣根帝督でさえ、相手の攻撃を無効化することは出来ても消すことなどできないのだから。
恐らく、能力上は第一位すらも。
ギリ、と歯ぎしりをして。
麦野沈利は口を開く。
麦野「……テメェ、何者だ」
馬鹿な言葉だ、とは思うが、麦野はそう尋ねずにはいられない。
其れに対して、男は――――
「『スクール』、新規正規メンバー」
否、『少年』は。
その帽子を投げ捨てて、告げる。
「上条当麻、だ」
間違うことなく、お前の敵だと。
浜面かと思わせてこう来るとは……
乙
乙
次はいつ頃だろうか
乙
上条△
更新されとるやん乙 まさかの上条さん
乙でした
地獄まで着いて行ってあげるのか、上条さん。
乙です
乙です
乙って訳よ!
なるほど次は上条さんかスクールに入った経緯か
乙です!
上条さんキタ━(゚∀゚)━!
予想外でもないかな?この展開は。
更新乙ってわけよ
乙
十分予想外なんだが
上条さん来たしどうにかなるか
あと手首くらいならカエル医者がどうにかしてくれるはず
待ってたぞ、上条さん!
意外にも麦野がフレンダを信頼していたとは・・
人間味があるなぁ
15巻は何も麦野の心理描写無かったから・・
乙
良かった
乙
なまじ信頼してた分裏切られた時の憎しみもより強かったってのはいいなぁ
そっちに来たか、乙ー
新鯖になったな
暗部の上条さんもなかなか
まだかな~
本日、これたらきます。
割合的には五分五分程度……
期待
期待してる
お期待
期待してるって訳よ!
結局幻想だったて訳よ
>>301
ここでタイトル奪還とは胸が暑くなるな
やかましわww
ゆっくりで良いから期待して待ってる
まだか
>>302我ながら良くやったと思ってる
うっはヤバスwwwwwwww
新刊も読んでないwwwwwwwwww
まぁ今更何が来てもどうしようもないでうsけど
明日絶対来ます。
少なくとも上条氏tん導入はやります。
>>305
落ち着け、待ってるから。
わろた
上条当麻が、『スクール』の正規メンバーとなった。
その理由を、その経緯を説明するにはまず数日前へと遡らなければならない。
■ □ ■
その日、上条当麻は指針を、自分を見失った。
そして同日に、闘志を再びその身に宿らせた。
それはフレンダが彼と決別した十月五日のこと。
ところがその翌日、彼はクラスメートの青髪ピアス、土御門元春とバニーガール談義で喧嘩騒ぎを起こし。
加え、吹寄制理と共に体育館裏の草むしりや一対一の野球に興じたり。
更には御坂美琴にメールをしただのしてないだのといった押し問答を繰り広げていた。
無論、彼には猶予など一刻もない。
フレンダは彼女が望んでこちら側を彷徨いていたのであって、潜ろうと思えばその闇の奥深くまで身を潜めることができる。
それこそ、記憶を失う前の上条が探索を頻繁に繰り返してもその影すら捕らえられない程に。
しかしながら、こうであるとも思うのだ。
日常を捨ててまでそのようなことをして、果たして本当に意味があるのか、と。
上条は数々の事件に巻き込まれている。 高校生にしては多くの死線を潜り抜けてきた。
その合間合間に彼は日常へと回帰し、束の間の休息を味わっている。
闇に片足のみならず、両足を突っ込んでいるのに必ずこの陽の当たる世界へと戻ってきているということ。 彼の特異な点は、まさにそこだ。
黒に染まろうと、染まらない。 決して白ではないにしても、白。
ここにきて、上条はそれが特別なことだと理解した。 あの少女の後を追いかける決意を持つのも遅すぎたということもまた認識している。
だからこうして、日常を全力で謳歌しているのだ。
きっと、多分、おそらく。 来るべき『不幸』が、彼を導いてくれるのだから。
そして。
上条「っと、すいません」
「いえいえ」
「謝るのは私の方ですから」
上条「あ、そんな、ぶつかったのはこっちなんだし」
「いえいえ、そうではなく」
「これからご迷惑をかける分について、ですよ」
その機会は、思った以上に早く訪れた。
ようやく>>1が幻想壊しに来たか
親船最中、と女性は名乗った。
話術、交渉術に秀でていて、『平和的な侵略行為』を行う程の手腕を持っている。
だがそれは知らずとも良い、知っていたとしてもどうしようもない情報だ。
上条が注目すべきはただ一点。
『学園都市の統括理事会』、その一人であるということ。
今更、統括理事会の説明は不要だろう。 上条も、基本的な知識は既に持っている。
上条(学園都市のトップ十二人の一人……っていうんなら)
無論のことながら、その裏で暗躍していることも知っているだろう。
いや、知っているどころか干渉していてもおかしくはない。
土御門元春は学園都市のスパイだ。 誰の、とは言っていないので恐らく『学園都市そのもの』のスパイなのだろう。
『妹達』の件だって、御坂美琴は言っていた。 『上は黙認している』のだと。
ここまで証拠が揃っていて、上の人間が知らない、というのもおかしな話だ。 絶対に、知っている筈だ。
しかし、彼女が本人だという確証が掴めない。
そんな彼女は、親船最中は。
上条当麻にローマ正教とのことを託し、土御門に撃たれた。
どうやら彼女は本物らしい。 彼女の複雑な、親族を人質にとられたも同然の事情を聞いて憤りを感じつつも、同時に。
上条にしては珍しく、打算的な行動にでた。
きっと今を逃したら、彼女を――――フレンダを捉えることは一生出来ないと思ってしまったから。
といっても、彼が求めたのはそれほど難しいことではない。
鬼畜なことといえば、死力を尽くした親船に願ったという、ただそれだけのこと。
そして彼は致命傷を避けているとはいえども息絶え絶えの、辛うじて意識にしがみついている彼女に対して囁いた。
曰く。
無事に今回の件を鎮圧することができたなら。
俺に裏へと入り口を作って欲しい――――と。
起きろ起きろ
起きろ起きろ
その後の一件、通称C文書事件は知っての通り上条の左方のテッラの撃破により解決の一途を辿った。
厳密には上条がC文書を破壊し、学園都市の機動隊が暴徒を制圧して、だが。
それでも上条達が戦線に加わらなかったなら今頃は、全世界のローマ正教の信者が科学そのものを敵と見做していたに違いない。
その点で、上条は誰よりも事件の解決に貢献したといえるだろう。
それの結果か、或いは上条の願いを聞いた時からそうすると決めていたのか。
今回の一件で少しばかりの怪我を負った上条がいつもの病院へと帰ってきた時、彼女は真っ先にコンタクトをとってくれた。
とはいったものの本人ではなく代理人であり、その言伝も手紙によるものであったのだが。
しかし、それも当然のこと。
本来なら親船最中は闇には関わらない。 否、関われない。
それを説明するにはまたもや複雑な事情があるので割愛させてもらうが、彼女が学園都市の闇、その一線を退かなくてはいけなくなった、ということだけは言っておこう。
守るべきものがあった。 それが危険に晒された。 だから引かざるをえなかった。
上条はその逆だ。 守りたいものがある。 それを取り戻すためには足を踏み出さなくてはならない。
だがそれには、彼の力だけでは不十分。 統括理事会の権限をもってすれば、それを把握し切ること自体容易い。
だから、ほんの少しの力添え。
代理人に頼んで、それを手配してもらう。 それが親船最中にできる最小の、同時に精一杯の手伝いだった。
彼が『スクール』の正規メンバーの座についたのは全くの『偶然』だ。
『偶然』闇に即戦力の能力を持つ人間が落ちてきて、そこには『偶然』欠員が出てしまった『スクール』があり、『偶然』人数合わせに上から手配されたに過ぎない。
最も、学園都市統括理事長であるアレイスター・クロウリーはこの時点で、『スクール』は最終的に再起不能になるというシナリオを描いていたわけだが。
手の上で転がされている彼、彼女らがそれに気付くことは恐らく未来永劫ない。
結果。
晴れて上条は『スクール』の正規メンバーとなって。
その正式な任に付く直前に垣根帝督が暴走し、学園都市の手を離れてしまって。
そしてここにきて.、彼はその『闇』に追いついた。
幸か不幸か、この一戦を乗り切れば全てが解決するという場面で。
ようやく、いよいよ、遂に――――
少年、『上条当麻』は、少女、『フレンダ=セイヴェルン』を捉えたのだった。
おわーり。
全ては理事長の手の平の上なり、と。
最も、上条が親船さんに言わなければこの結果は訪れませんでしたg,
遅くなってしまって、本当申し訳ないです。
結局夏期休暇でもあまり進まなかったというね……
せめて、年末までには……終わらせたいなぁ…………
あと>>308の最後の「」と地の文の間には改行がないですが、ミスです。 すいません。
それでは、また。
乙
まだ夏は終わってないのに年末…?
>>317
よっぽどの暇人でもなきゃSS書きなんて時間かかるから割と冗談とも言えない
仕事してりゃ暇な時間なんて限界あるんだから不思議はないな
ともかく、乙!楽しみにしてるよ!
待つのには慣れてるから気にしないでいいぜ
昨日は少し眠くて文章支離滅裂かもわかりませんがごめんなさい。
あと>>316がかまってちゃん臭いのも重ねてごめんなさい。
応援レスは励みになっています。
本当、ありがとうございます。
はわ
連レス&間違ってageスマソ
乙
いつも楽しみにしてるよ
だからかまってちゃん臭いとかは気にしない
報告もあるのだから全く問題ない
しっかり休んでください
やっと追いついた
乙です
舞ってる
乙です。完結までをどう持っていくのかが実に楽しみだ。
乙です
楽しみに待ってます
乙でした
乙です。最初のほうの話若干忘れてるのは秘密だ
>>327読み直してくればいい そうでもしてくれないと少し怒りそう
>>327
おれなんて最初の方時間無かったからパラ読みじゃい
そしてageんな
来たかと思ったじゃん
やっと追いついたよ
この密度の濃さ、そしてまだ完結してないという事実
遅れ馳せながらこれは、もう>>1乙としか言えねぇ
だめだ眠い
明日が駄目なら今週も駄目かも……
そうなったら、申し訳ないです。 とりあえず、生きてはいますので……
了解しました
乙。がんばれ!
リアル優先しても誰も文句は言わないから頑張って
乙
舞ってる
さあ 来週の到来だ!!
■ □ ■
麦野(スクールの新メンバー、だ?)
その肩書もさることながら。
麦野はその名前の方も見過ごすことができない。
麦野(上条当麻、だ?)
無論のこと、麦野はその名前を知っている。
班員の(普通の人なら調べることは容易な)人間関係を知っていないでどうしてリーダーが務まるだろう。
上条「…………」
ちらり、と上条はフレンダを見遣る。
か細く、それでも息をしているその少女を見て少年はそっと胸を撫で下ろす。
確かに間に合いはしなかった。 だが、取り返しがつかないわけではない。
麦野「……はっ」
嗤う。
少年を、少女を、茶番を。
麦野沈利は、嗤う。
麦野「何の余興だ、こりゃ」
麦野は驚きと苛立ちとを同時に覚える。
都合が良すぎる。
上条にしてみれば『間に合わなかった』。 だが、それにしても『追いついてしまうこと』そのものが『異常』なのだ。
『闇』とは理不尽だ。 都合のいい夢物語、なんてものは犬の餌にもなりはしない。
まるで誰かの用意したような劇を舞台の上で演じているような錯覚。
厳密に言ってしまえばこの状況は元から計画していたものではないのだが、この寸劇を用意した人間はそれすらも利用している。
その違和感に気付くとは、伊達に暗部に長いこと浸かっていないといえるだろう。
だが。
だが、そこじゃない。
麦野沈利が苛立ちを覚えたのは、そこじゃない。
麦野「……確かに、誰かの思い通りに動くだとか、格上だ格上だとか、あのクソッタレの第二位だとかは限りなくムカつくが――――」
あってはならない、『都合』。
闇はどこまでも理不尽で、凶悪で、不条理で、滅茶苦茶で、筋違いが罷り通る、そんな世界でなくてはならない。
決して、弱き者が救われる世界であってはならない。
麦野「一番ムカつくのは、テメェだクソガキがッ!!」
そう、つまるところ、これは妬みだ。
やっかみだ、僻みだ、羨望だ、ジェラシーだ、悋気だ。
そして、嫉妬だ。
自分は『届かなかった』のに。
第三位だった自分が、届かなかったのに。
どうして、他の人間が、今までぬるま湯に浸かっていた少年少女が手を取り合うことを見逃せるだろう。
だから、これは『幻想』だ。
助けに来た想い人はやはり理不尽に倒れ、そして少女は絶望により幕を閉じる。
それが真実、それが現実。
だというのに。
放たれた『原子崩し』を上条はまるで近寄ってきた虫でも払うようにたやすく弾き飛ばす。
麦野の抱いた固定概念こそが幻想だとでも告げるかのように。
麦野「…………!」
能力を無効化する能力。
それを持つということは先の能力でわかっていた。
そしてそれには何かしらの制限があるということも。
例えば、一方通行。
その能力は攻撃も防御も何の予備動作もいらない。
正確にいえばあるにはある。 が、使おうと思えば地球の自転すら利用できるこの人間には本来そんなものは必要ない。
ただ立っているだけで勝てる。 そんな存在。
例えば、垣根帝督。
彼も一方通行と比べ、勝るとも劣らない無敵な存在。
だが基本的に彼が資本にしているのはその六枚の羽根だ。 いわば能力を出力するためのデバイスといったところだろう。
実際にはなくとも多少なりとも能力を行使できるようだが、彼が能力を攻撃に使う際にはこれを漏れなく使用しているため『能力を使いやすくする』程度のものなのだろう。
立っているだけで圧倒はできるが、本気を出すには他の動作を加えなければならない。 そういう能力。
そんな彼らは、学園都市の誇る超能力者の第一位と第二位。
それ以下である人間が、例えば目の前の少年などが、第二位ですら必要な動作も条件もなく強力な能力を行使することなどありえない。
麦野の攻撃を二度防いだ瞬間を思い出せば、その条件は簡単に想像がついた。
手で触れること。
右手でも左手でもどちらでもいいのかはわからないが、手で触れる。 それが条件だと麦野は予想した。
だから放った『原子崩し』は、今度は最小に形成したものだった。
服を、皮を、肉を骨を内蔵を溶かし貫通するそれは致命傷にはいかなくとも、胴体に当たりさえすれば行動を不能にする程度の威力はある。
だから割と乱雑に、しかし上条の胴体を捉えるようにそれを放ったのに。
光速で放たれたそれに、反応できるわけがないのに。
一度目に防いだのは偶然じゃないとでもいうように上条当麻はまだそこに立っている。
上条(危ねぇ……こんなもん、いつまで防げるかわかんねぇぞ……!?)
対して、上条は内心戦慄していた。
確かに防いだのは偶然ではないが、幸運が混じっているということも確かだからだ。
無論、防ぐことの出来た原因に二つほど心当たりがないこともない。
一つ目は、御坂美琴の電撃に度々付き合っていたために眼が光速に慣れた、ということ。 そしてもう一つは、『原子崩し』は直線的な攻撃だということ。
自分の攻撃が届くというタイミングさえ知っていれば、防ぐことはそう難しいことではない。
しかしそれは発射される瞬間を察知できるという上条の無意識の能力があってこその結果、なのだが。
それでも、いつまでも片道キャッチボールよろしく投げっぱなしドッヂボールに付き合っていたらいくら上条とはいえども限界がくるだろう。
それは、勿論麦野もわかっている。
それにどうやら上条は先ほど撃っていた銃以外に遠距離攻撃を持たないようだ。 つまり、接近戦を仕掛けるしかない。
そして接近してくれば接近するだけ、攻撃を防ぐのは難しくなっていく。
麦野(つまり、これは)
上条(一瞬の隙が、命取りになる)
上条は、銃。
麦野は、格闘術。
互いに隙を見いだせる武器は持っている。
上条(……フレンダ)
丁度、上条と麦野の中央で倒れる少女を再び見る。
右の手首から先は無くなってはいるが、今直ぐ病院につれていけばきっと間に合う。
否。 間に合わせてみせる。
上条「だから、待っていてくれ、フレンダ」
過去の上条当麻。
そして、今の上条当麻。
そのどちらもが想うのは、ただひとつ。
上条「そこから、救い出してやるからな」
そして。
金髪の少女を中央に据えた、超能力者と最弱の戦いは。
少年が地面を蹴るその瞬間に幕を開けた。
今日はここまでです。
大変遅れて申し訳ないです。
ごめんなさい。 眠いです。
それでは、また。
乙
乙
よかった
乙
むぎのん素で強いからな
どうなることやら
乙
おっつ乙
乙
乙です
フレンダには幸せになってほしい
久しぶりの更新、とても面白かったです。先が楽しみだ
眼が、光速に、慣れる……だと?
上条さんて、ほんとパネェ
改めてそう思った。
眼が光速に慣れるとか人外すぎわろた
まぁ上条さんだからな
いつの間にか更新してた 。乙です
光速に慣れたらむぎのんもビリビリ中学生も一瞬で敵じゃねえなww
とにかく1乙
光速って慣れるものなのか・・・?さすが上条さんやでぇ(戦慄)
お前もそろそろ光速に慣れろよ
次はいつなんだ
違うスレだったかもだけど光速の超電磁砲とかあったし
光速と高速が曖昧になるのはあったかもね
このスレの描写は光の速さとしかとれないけど
光速について色々物議が醸しだされているようですので補足させていただくと。
一、そもそも超電磁砲に留まらず、電気自体理論上光速でなければおかしいこと。
ニ、前兆の予知や避雷針の役割で右手を突き出すことを含めて考えても『咄嗟』、『反射的』に上条は美琴の電撃を打ち消している。
この二点より、もはや光速に眼が慣れているといっても過言ではない、と判断しました。
ちなみに、一方通行や未元物質の高速戦闘に対応できるのか否か、というのはまた別の話で。
そして、今週もまたもや忙しく……
乙
気にせず自分のペースでいいと思います。
あと物理現象については原作もよく意味不な解説してるし気にする必要ないとおもいます
そんな物理的な話が読みたいわけじゃないし(電気の速度は光速じゃないけど)
えっ
電気≒電子で、理論上(=真空上)では3.0×10^8m/s=光速じゃ……?
講義でもそう習いましたし、一応調べても電気は光速とでてから書いたんですが……
真空で光速なのは電場
電子で満たされた導体中では光速のように伝わって見えるけど実際は蝸牛なみにゆっくり
あれま……
じゃあ単純にこちらのミスですね申し訳です
連レスすいません
後に該当部分に訂正入れて透過し直しますのでよしなに。
単純に反応が速いということを述べる程度で良いのでは
異能への反応が速いことと光速の現象全てに対応できることは一致するわけではないし
後者⇒前者は成り立つと考えるとしても
前者⇒後者は必ずしも成り立たない
とにかく待つ
>>1が非常に忙しいのは皆わかってると思うので
1乙
光速がなんたらかんたら言うのも原作も含め言うのが楽しいだけだから気にせず書いてて下さい
楽しませて貰ってます
無理しない程度に仕事頑張って暇潰し程度に書いてくれれば僕たちは問題無いです。
だがフレンダは俺の嫁。
残念、このスレ的には上条さんの嫁
上条さんが俺の嫁なのに
やっと今週末。
今日は疲れとって、明日来ます。
光速云々はまぁ、とりあえず若干修正しますです。
細けぇことはいいんだよ
>>1の気の向くままに筆を振るってくれい
おまたせいたしました。
前回の分をそのまま、その後今回の分を書きはじめます。
それでは。
■ □ ■
麦野(スクールの新メンバー、だ?)
その肩書もさることながら。
麦野はその名前の方も見過ごすことができない。
麦野(上条当麻、だ?)
無論のこと、麦野はその名前を知っている。
班員の(普通の人なら調べることは容易な)人間関係を知っていないでどうしてリーダーが務まるだろう。
上条「…………」
ちらり、と上条はフレンダを見遣る。
か細く、それでも息をしているその少女を見て少年はそっと胸を撫で下ろす。
確かに間に合いはしなかった。 だが、取り返しがつかないわけではない。
麦野「……はっ」
嗤う。
少年を、少女を、茶番を。
麦野沈利は、嗤う。
麦野「何の余興だ、こりゃ」
麦野は驚きと苛立ちとを同時に覚える。
都合が良すぎる。
上条にしてみれば『間に合わなかった』。 だが、それにしても『追いついてしまうこと』そのものが『異常』なのだ。
『闇』とは、『暗部』とは理不尽だ。 都合のいい夢物語、なんてものは犬の餌にもなりはしない。
まるで誰かの用意したような劇を舞台の上で演じているような錯覚。
厳密に言ってしまえばこの状況は元から計画していたものではないのだが、この寸劇を用意した人間はそれすらも利用している。
その違和感に気付くとは、伊達にこの世界に長いこと浸かっていないといえるだろう。
だが。
だが、そこじゃない。
麦野沈利が苛立ちを覚えたのは、そこじゃない。
麦野「……確かに、誰かの思い通りに動くだとか、格上だ格下だとか、あのクソッタレの第二位だとかは限りなくムカつくが――――」
あってはならない、『都合』。
闇はどこまでも理不尽で、凶悪で、不条理で、滅茶苦茶で、筋違いが罷り通る、そんな世界でなくてはならない。
決して、弱き者が救われる世界であってはならない。
麦野「一番ムカつくのは、テメェだクソガキがッ!!」
そう、つまるところ、これは妬みだ。
やっかみだ、僻みだ、羨望だ、ジェラシーだ、悋気だ。
そして、嫉妬だ。
自分は『届かなかった』のに。
第三位だった自分が、届かなかったのに。
どうして、他の人間が、今までぬるま湯に浸かっていた少年少女が手を取り合うことを見逃せるだろう。
だから、これは『幻想』だ。
助けに来た想い人はやはり理不尽に倒れ、そして少女は絶望により幕を閉じる。
それが真実、それが現実。
上条「――――」
だというのに。
放たれた『原子崩し』を上条はまるで近寄ってきた虫でも払うように容易く弾き飛ばす。
麦野の抱いた固定概念こそが幻想だとでも告げるかのように。
麦野「…………!」
能力を無効化する能力。
それを持つということは先の能力でわかっていた。
そしてそれには何かしらの制限があるということも。
例えば、一方通行。
その能力は攻撃も防御も何の予備動作もいらない。
正確にいえばあるにはある。 が、使おうと思えば地球の自転すら利用できるこの人間には本来そんなものは必要ない。
ただ立っているだけで勝てる。 そんな存在。
例えば、垣根帝督。
彼も一方通行と比べ、勝るとも劣らない無敵な存在。
だが基本的に彼が資本にしているのはその六枚の羽根だ。 いわば能力を出力するためのデバイスといったところだろう。
実際にはなくとも多少なりとも能力を行使できるようだが、彼が能力を攻撃に使う際にはこれを漏れなく使用しているため『能力を使いやすくする』程度のものなのだろう。
立っているだけで圧倒はできるが、本気を出すには他の動作を加えなければならない。 そういう能力。
そんな彼らは、学園都市の誇る超能力者の第一位と第二位。
それ以下である人間が、例えば目の前の少年などが、第二位ですら必要な動作も条件もなく強力な能力を行使することなどありえない。
麦野の攻撃を二度防いだ瞬間を思い出せば、その条件は簡単に想像がついた。
手で触れること。
右手でも左手でもどちらでもいいのかはわからないが、手で触れる。 それが条件だと麦野は予想した。
だから放った『原子崩し』は、今度は最小に形成したものだった。
服を、皮を、肉を骨を内蔵を溶かし貫通するそれは致命傷にはいかなくとも、胴体に当たりさえすれば行動を不能にする程度の威力はある。
だから割と乱雑に、しかし上条の胴体を捉えるようにそれを放ったのに。
並の人間では放たれたそれに、反応できるわけがないのに。
一度目に防いだのは偶然じゃないとでもいうように上条当麻はまだそこに立っている。
上条(危ねぇ……こんなもん、いつまで防げるかわかんねぇぞ……!?)
対して、上条は内心戦慄していた。
確かに防いだのは偶然ではないが、幸運が混じっているということも確かだからだ。
無論、防ぐことの出来た原因に二つほど心当たりがないこともない。
一つ目は、御坂美琴の絡みや、今までの戦闘で素早い攻撃を目の当たりにしたことがある、ということ。 そしてもう一つは、『原子崩し』は極めて直線的な攻撃だということ。
自分の攻撃が届くというタイミングさえ知っていれば、防ぐことはそう難しいことではない。
しかしそれは発射される瞬間を察知できるという上条の無意識の能力があってこその結果、なのだが。
それでも、いつまでも片道キャッチボールよろしく投げっぱなしドッヂボールに付き合っていたらいくら上条とはいえども限界がくるだろう。
対象が小さいものならば、尚更。
それは、勿論麦野もわかっている。
それにどうやら上条は先ほど撃っていた銃以外に遠距離攻撃を持たないようだ。 つまり、接近戦を仕掛けるしかない。
そして接近してくれば接近するだけ、攻撃を防ぐのは難しくなっていく。
麦野(つまり、これは)
上条(一瞬の隙が、命取りになる)
上条は、銃。
麦野は、格闘術。
互いに隙を見いだせる武器は持っている。
上条(……フレンダ)
丁度、上条と麦野の中央で倒れる少女を再び見る。
右の手首から先は無くなってはいるが、今直ぐ病院につれていけばきっと間に合う。
否。 間に合わせてみせる。
上条「だから、待っていてくれ、フレンダ」
過去の上条当麻。
そして、今の上条当麻。
そのどちらもが想うのは、ただひとつ。
例え、地獄まで堕ちていたとしても、その地獄まで追いかけて行って。
上条「そこから、救い出してやるからな」
そして。
金髪の少女を中央に据えた、超能力者と最弱の戦いは。
少年が地面を蹴るその瞬間に幕を開けた。
■ □ ■
フレンダ(とう、ま)
フレンダは、まるで夢でも見ているかのような心地だった。
それも当然だ、彼女の世界は瞬間的に、終わっていたのだから。
上条のくれたぬいぐるみを焼き払われた瞬間に、麦野がこちらへその掌を向けた時に、それは紛れも無く終わったのだ。
或いは、これは自分の妄想か何かなのではないか、とも思う。
もしも神様がいるとしたら、その神様が見せてくれている幸せな結末か何かなのではないかと。
肉体的にも精神的にも擦り切れそうな彼女の意識がそれでも捉えている光景は、何度瞬きをしても消えず、何度振り払おうとも終わらない。
そして彼女が声にならない、言葉にならない、しかし想う名前は夢にまでみたものだった。
麦野が『都合が良すぎる』と思ったのも無理が無い程、これは幻想じみている。
けれど、それは確かにそこにある。
トゲトゲ頭の、自分の全てを捧げても構わない幼馴染の少年は。
自分を殺そうとした、組織のリーダーである超能力者に対して拳を振るい。
一歩も引かず、五分五分の戦いを繰り広げている。
そしてそれは自分の為。
暗部という救いようのない闇から、地獄から、少女を救いだす為。
そんな信念を込めている少年を見て、彼女は想う。
フレンダ(どうか、どうか)
どうか、この夢――幻想は覚めないで、と。
少年との思い出も、抱いた感情も、全部幻想だった、なんて。 そんな悲しいことを言わせないで、と。
少女は、自らのヒーローたる少年に、ただ願う。
■ □ ■
上条「っ――――!」
避ける、避ける、防ぐ、防ぐ、避ける、防ぐ、避ける、避ける――――
上条は至近戦に置いて、麦野の体術と能力を相手に防戦一方だった。
否、それだけでも善戦している、というべきだろう。
実際、『幻想殺し』と自前の反射神経がなければ時折混ざる必殺に射抜かれて死んでいるのだから。
そうでなくとも捌ききれなかった体術に道を開かれて貫かれる、というのもありえないことではない。
上条(だとしても、これはマズイ……!)
攻撃に移れない。
上条の攻撃は、言うまでもなくその拳だ。
能力もない、習っている武術も特にはない。 力いっぱいその拳を振るうことでしか相手を倒す道はない。
いや、今回に限っては武器もある。 あるにはあるが、攻勢に移らない限り取り出すことも出来ないのだ。
銃というのは取り出し、構え、撃つの三動作が必要になる。 慣れていない上条には必要以上に時間もかかるだろう。
隙を付けば互いに懐に入り込むことのできるこの距離だと、恐らくどうやっても取り出した途端に弾かれるに決っている。
そうなってしまえば終わりだ。 後は距離をとって、安全圏から只管に『原子崩し』を放っていればいいのだから。
故に今は防戦しかない。 上条自身隙があっても使うつもりはないが、この銃は持っているだけで警戒をさせるカードなのだから。
だから防ぐしかない。 そうしていれば、きっといつかは勝機が見える。
の、だが。
上条(そんな悠長なことしてる暇はないんだ)
フレンダは重傷を負っている。
放っておいたら今直ぐにでも生命活動を止めてしまうかもしれない。
そうなってしまっては何の為に此処に来たのかがわからなくなる。
自分の目的は第四位を倒すことではなく、フレンダを助けることなのだから。
瞬間、麦野の攻撃が膨らむ。
誘われている。 上条は直感的にそう想う。
だが、時間に追われる上条に選択肢などなかった。
■ □ ■
麦野(こいつ……)
殴る、払う、撃つ、蹴る、蹴る、殴る、掴む、撃つ、撃つ――――
傍から見れば、きっと誰もが麦野の優位だと言っただろう。 だが、実際はそうではない。
確かに肉体的には麦野に軍配が上がるだろう。
しかし、だ。 麦野は幾多の戦いを繰り広げている。 その殆どは格下相手のものだが、いくつかは同じ超能力者を相手取ったこともある。
その戦闘経験をもってすれば、そこいらの喧嘩慣れのしているスキルアウト程度なら簡単に料理できるはずなのだ。
だというのに、目の前の少年は攻撃にこそ移れないにせよ大きな隙を見出だせない。
ただの無能力者如きに、だ。
能力を打ち消す特異な能力を持っていたとしても、この事実は麦野の精神をジワジワと蝕む。
麦野(仮にコイツが私並に戦闘慣れしていたって、これはムカつくわ)
恐らくこのまま絶え間なく攻めていけば、こちらが隙を作るよりも先に相手が疲弊するだろう。
攻撃と防御では圧倒的に攻撃をするほうが有利なのだから。
だが、それを邪魔するのが学園都市序列第四位という地位にいる、その自信。 無能力者如きに、そんな安牌的な戦法をとったら情けないと感じるプライド。
そして、差し迫る時間。
麦野(必要以上に、コイツに相手をしている余裕はない)
確かに『スクール』は皆殺しにするが、垣根帝督以外の人間は麦野にとっておまけみたいなものだ。
放っておいたら滝壺が捕まるかもしれない。 そうなったら奴を討つ手はなくなる。
今は千載一遇の好機なのだ。 こんな無能力者に構っている暇などない。
上条との戦いをさっさと終わらせて、そこに転がっているフレンダに手を下して、その後に垣根を斃す。
まずそのための一歩。 目の前の少年を倒す算段を立てる。
とはいっても、このまま手数で押して倒すのでは先程も苛立ちを感じた通りにプライドが許さない。
故に、誘い込む。
あえて能力を使わずに肉弾戦を挑んで、無力化する。 殺しはしない、そんな簡単に殺しても自分の苛立ちは薄れない。
その後、足先から順番に射抜く。 格上に喧嘩を売ったことを後悔させるように。
それで、終わりだ。
そして麦野は、あえて大きく膨らませたアッパーを放つ。
今日はおわーり。
シーンは思い浮かぶのに言葉が中々出てこなかった……もうちょい書く予定だったのに、すいませんです……
おつ
乙でした
乙
乙です
乙なのよな
乙です
乙でした。相変わらずの秀逸な文章
圧倒的乙
その文章力マジ欲しい
まってる
あー……筆が進まない……
数時間考えても一レス分も進まないとか……
頑張って書いてますけれど、多分日付超えたら今日はないと思います。
その時は申し訳、です。
ゆっくりおつ
そういう日もあるさ
このスレの多くは気長に待つことには慣れてるので気にしなくていいのでは?
■ □ ■
麦野の拳が空を切る。
女性の攻撃とは思えない程に鋭いそれは、上条の耳元に僅かな余韻を残して過ぎていった。
それに怖気を覚えながらも、上条は決意する。
上条(やるしか、ない!)
少し低い体勢で踏み込み、肉薄する。
一瞬の加速とその体重を乗せて、麦野の顔面に拳を放つ。
しかし、次の瞬間に上条の視界は、回転していた。
上条(な、)
麦野「――――ふっ」
思考する間もなく、腹部に強い衝撃が走る。
それは腹部から背中まで突き抜けて、空に浮いていた上条をふっ飛ばした。
上条「……っ!?」
気がついたら地面を転がっている。
顔や掌の皮膚が地面と擦れ、痛覚とともにじんわりと熱を帯びる。
拳を受け止められたと同時、足元をすくわれた。 その直後の横蹴りで吹き飛んだ、というのが上条の身に起きた出来事だ。
しかし、字面にしたら一行で終わってしまうことだが実際に行うのは中々に難しいだろう。
それぞれの技の威力は落ちているにせよ、相手が空中にいるというのに続けて技を繋げるのは格闘ゲームの域。
そもそもとして、麦野の攻撃は上条の攻撃を受け止めるその瞬間から始まっていた。
あのアッパーを回避した上条がとれる攻撃法は多くても片手で事足りる。
第四位としての演算処理能力をもってすれば、その全パターンに対するカウンターを考えて対応することは容易だった。
無論、基礎としてその運動能力があってこそ、だが。
上条の頭上に影が落ちる。
それに気がつくとほぼ同時に、飛び退くように避けた。
ズドン!と、飛び込んできた麦野の全体重をかけた脚が上条の頭が会った場所を撃ちぬく。
恐らく、上条が未だあそこに転がっていたとしたら彼の頭はスイカの様に割れていただろう。
上条「…………!」
戦慄する上条に、今度は麦野が距離を詰める。
麦野「避けんなクソガキがッ!」
そして再び、近距離での打ち合いが始まる。
だがそれは先ほどとは異なり、上条の圧倒的劣勢だった。
それは麦野の追撃が速すぎて、上条は完全には体勢を立て直せていないためだ。
均衡はここに来て、脆くも崩れ去った。 超能力者相手に五分の状況であることが、上条の唯一の優位だったというのに。
それを理解している麦野は獰猛に嗤い、対して上条は余裕なく追い詰められる。
麦野「ほらほら、ほらほらホラホラホラァ! どうした『スクール』! 救うとか吐かしておいてその程度かッ!!」
上条「くっ……!」
回避よりも、防ぐ割合が勝る。
やはり失敗だった、あのまま続けて一隅のチャンスを待っていればよかった。
そう悔いても時間は巻き戻らず、刹那で事態は急変していく。
急いで策を立てなければ、このままだと数分も持つまい。
上条(体勢を――距離をとるしかない!)
しかし、生半可な距離だとすぐに詰め寄られる。 体勢を立て直すどころか、逆に崩すことになりかねない。
ならばどうすればいいか。
上条の至る結論は一つだった。
それすらも、誘導された思考だと知らずに。
麦野の攻撃は一定の緩急をつけて行われている。
それはそうだ、常に全力疾走で長距離を走ることのできる人間などいないのだから。
上条はその次の緩急の緩を狙って、それを――銃を、引きぬいた。
上条(当たらなくてもいい、寧ろ場所が場所に当たったら困る。 だから牽制だけでいい――――!)
この時、上条が例え麦野を殺しても構わないと思ったのならまた結末は変わったのかもしれない。
互いに手を、足を伸ばせば届く距離。 狙わなくても当たってしまう。
だから上条は意図的に、向けたその銃口を外そうとして。
パン! と。
手に痺れが走って、その手は真上に打ち上げられた。
遅れて、カシャン、と、上条の手にあった拳銃は、彼の遥か後ろに落ちる。
麦野「これで、」
頭が真っ白になる上条の耳に、麦野の声だけが届く。
麦野「テメェの切り札は、その能力だけだ」
上条と麦野にある僅かな間。
そこにぼんやりとした光が現れる。
上条(や、ば)
思うよりも先に、身体が動く。
不格好でも、隙だらけになっても、その右手を振るってその光へ触れる。
無論のことながら放出しかけの『原子崩し』は霧散し、安堵するのもまた一瞬。
ズガン! と。
側頭部に強烈な振動が走る。
上条は自分の身体が傾いていくのを、ゆっくりとした意識の中で感じていた。
上条「か……」
上条(かか、と?)
後ろ回し蹴り。
隙の多いその技を放たせてしまったのは、紛れも無い自分だった。
脳が揺さぶられ、平衡感覚を失う。
それでもなんとか立ち続けようともがく脚を、麦野はダメ押しのように『原子崩し』で射抜いた。
上条「――――」
上条は、声にならない叫びをあげて。
先ほどのような一時的ではない、言うならば『ダウン』として、地面に倒れた。
今回はここまでです。
一度書き始めると割とすらすらいくんですけどね……
それでは、また。
乙でした
乙
乙です
乙!!
乙です
乙です
乙です
乙です
ここの上フレは最近知ってPart1速攻で読んで追いついてきた、感想言わせてもらうとめちゃくちゃ面白い、完結させてね……
今週は書く……予定でした。
率直にいって体調不良です。 その為生存報告のみとさせていただきたく……
いえ、明日治っていれば書きます。 多分。
ですが今日はキツイので、お休みを頂きます、申し訳ございませぬ……
あと、完結だけは絶対にします。 それこそ、死なない限りは。
書いてくれなくても生存報告だけでもうれしいんです(´;ω;`)
まあ、折を見てぼちぼち書いてくださいな
おだいじに
乙
乙
頑張って治してなー
やっぱり今日は無理かな?
>>1こないね…
単純に文体が素晴らしいと思う作品を教えてください。
誤爆しました!すいません!
先週はどうも申し訳、でした。
とりあえず今日は書きます。 眠気の限界まで。
悲鳴もあげられず、無様に転がる上条を見て麦野は嗤う。
その程度かと。
折角にも辿り着いたというのに、もうここで終わりかと。
麦野「つっまんねぇなァオイ!」
追撃をかけるように、腕の力で立ち上がろうとする上条の左肩を射抜く。
射抜いた傍から急激に腕の力が抜け、右腕だけで上手く支えることは出来ずに顎からまた地面に衝突した。
所詮は、ただの無能力者だ。
いや、特異な能力はあるし、多少の修羅場を潜ってはいたようだったが、超能力者の壁は超えられまい。
そんなものに期待を抱くほうが間違いだったのだ。
麦野(……あん?)
麦野は失望を実感し、それに疑問を持つ。
麦野(なんでガッカリなんかしてんだ、私は)
普通、それを抱くのはフレンダの方だろう。
格好良く……かどうかはわからないが、自分の危機に現れて救ってくれる筈のヒーローが目の前で無残にも敗北を迎えたのだから。
その原因に関して考えようとして、麦野はそれを放棄する。
麦野(やめやめ。 んなもん考えても意味ないし)
それよりも、目下。
ここで目の前に転がる、男女二人。
一体どう調理してやろうか、と彼女は思う。
予定通りにするなら、上条に痛みを少しずつ味あわせながら殺し、その後にフレンダを殺すというのが良いのだろう。
しかしながら、ここで麦野の嗜虐心が顔を覗かせる。
即ち、助けに来た上条に、より強い絶望を味合わせる。 その方法は至って単純。
麦野はフレンダへと歩みより、その頭元でしゃがみ、話しかける。
麦野「今の気分はどうかにゃーん、フレンダちゃん?」
フレンダ「…………」
その乱れた金髪で隠れた眼と表情では、彼女の心情は窺い知れない。
実際に見えていたとしても、その走馬灯でも見ているかのような虚ろな瞳からは何もわからないのだが。
何も答えずのフレンダに苛立ちを隠さない麦野はその髪を無造作に掴み上げ、苦痛にようやく、若干表情を歪ませたフレンダの顔を上条の方へと向ける。
麦野「なぁオイ! 今どんな気分だよ、テメェの希望が目の前で絶たれて! 大事な大事な奴が目の前で死ぬいく姿を見て! どんな気分かって聞いてんだよ!」
フレンダ「っ……」
その漏れてしまった声は、痛みによるものか或いは上条を嘆いてのことか。
それでもようやく反応を見られた麦野はそれで満足し、彼女の耳元で囁くように言う。
麦野「なぁフレンダ。 何も私は好きで殺すわけじゃない、テメェが裏切ったから殺そうとしてるだけ、それはわかるよな?」
でも、と彼女は紡ぐ。
別に返事は求めていないからだ。 ただの提案を言うための前置きなのだから。
麦野「ちゃんと忠誠を見せてくれたら、一度だけチャンスをやってもいい」
その忠誠、というのは土下座だ、とか小指を詰める、だとかそういうまどろっこしいものではない。
もっと、もっともっと単純なこと。
彼女の持つ大事なものを、自分の命令で切り捨てろと言うこと。
麦野「アレに、お前がトドメをさせ」
にべもなく麦野はそう告げた。
別に、フレンダが実際にそうするなんて思っているわけではない。
例えば、フレンダが麦野の言うことを聞いたとしよう。
少女は涙ながらに、許して欲しいといいながら少年を何らかの手段で殺し、これで命だけはと自分に懇願する。
そこを、自分が切り捨てる。
そもそもチャンスをやってもいい、といっただけで約束したわけでもなく、仮に約束していたとしても守る義理など麦野にはない。
自分の命で少女が助かるならと死の淵で思ったかもしれない少年も、その少女の断末魔を聞きながら絶望に塗れて死んでゆく。
例えば、フレンダが麦野の言うことを聞かなかったとしよう。
そうしたら、ただ単純に麦野がフレンダを瞬殺するまでだ。
慈悲もなく、温情すらなく。
助けにきた少女が目の前で死に、そして自分も死ぬ。 これもまた、絶望だ。
どちらに転んだとしても、麦野は愉悦を覚える。
他人の不幸は蜜の味、とはよくいったものだと彼女は思い。
そして少女へと、答えを迫る。
麦野「さぁフレンダ。 イエスかノーか、さっさと答えて」
麦野は気がつかない。
そのフレンダの瞳は、徐々に焦点を取り戻しつつあるということに。
フレンダ「もう、いい……ってわけよ」
麦野は気がつかない。
その原因は、一体何処にあるのかということに。
ユメ
フレンダ「もう、いい……全部幻想でいいから……」
麦野は、気がつかない。
否。 気が付きたくなかった、と言った方が正しいか。
フレンダ「もう、止めて……」
そして麦野はようやく気付く。
その身がボロボロになって尚諦めず、少女の言葉も聞かんとばかりに立ち上がる少年に――
フレンダ「当麻…………!」
――上条当麻に。
今日は、ここまでです。
一ヶ月ぶりでした、ごめんなさいです……
乙
次の投下楽しみにしている
ベネ!
>>1来てたぁぁぁ!
おつです!
乙です
乙
次回
投下
楽しみ
乙です
上条さん格好良すぎる
乙です
最近、悪質な荒らしが多数出現しています。
先日、
上条「麻利はいつ見てもかわいいなぁ」麦野「この親馬鹿め」
のスレにて、荒らしが発生。
無駄な書き込みをし、一気に1000まで到達させた事件が発生しました。
皆様お気を付けください
気をつけろ言われても、あっちが勝手にやってくるだけやでなー
まあ、とりあえず無視で努めましょうや
スレを埋めたりすると流石に焼かれるんじゃないか?
最悪逮捕まで
まあ、調子に乗りすぎたのかな
埋め立て程度で逮捕できるってどんなメルヘン国家だよ
もうちょい判例とか勉強しろよ
>>433
垣根「呼んだ?」
麦野(おいおい)
息も絶え絶え。
その身体を支える脚は小刻みに震え、今にも崩れ落ちてしまいそうな程。
そんな上条を見て、麦野は思う。
麦野(おいおいおいおいおい)
それは、決して動揺ではなく蔑み、嘲笑。
鼻で笑い飛ばしたくなるほどの、馬鹿馬鹿しさ。
友情、努力、勝利なんていう青臭いストーリーなんてありはしない。
突然血筋の力やら、隠されていた能力やらに目覚めて敵を倒す逆転劇なんてものも存在しない。
いつだって現実は無慈悲であり、そして残酷だ。
だからこそ麦野は嗤う。
負けが確定しているというのに。 ちょんと棒でつついてしまえば、ちょっと強い風が吹けば倒れてしまいそうなのに、どうしてそこまで頑張るのか。
もはや悲劇を通りすぎて、喜劇に近い。
この麦野沈利ですら、ほんの少しばかり、砂漠に落とした砂粒程度に情けをかけてもいいかな、と思う程に。
彼女は掴んでいたフレンダの髪を離し、獰猛な笑みを浮かべながら立ち上がる。
麦野「そのまま死んだふりでもしていればまだ生き延びられたかもしれないってのに、バカなやつ。 あんまりにもバカすぎて笑いそうだわ」
上条「…………」
上条は答えない。
ただその息を整えつつ、こちらをじっと睨むだけだ。
そのつまらない反応に麦野は僅か、眉間に皺をよせて舌打ちをする。
麦野(あーあ、つまんね)
手をかざす。
それに光が宿り、引き金を引く程度の意思さえ込めればそれは上条を射抜く。
きっと今度こそ、倒れたら二度と立ち上がれないだろう。 生きているか死んでいるかはまた別としても、だ。
フレンダ「むぎ、の」
麦野「あ?」
フレンダは身体を引きずり、麦野の足に縋りつく。
フレンダ「けっ、きょく。 当麻を殺すのだけは、止めて。 私は、私なら、私がかわりになるから、当麻だけは、お願いだか、」
言い切る前に、その顔面を蹴飛ばす。
振り払われたその手をヒールで踏みつけ、吐き捨てるように言う。
麦野「テ・メ・ェ・は、元から殺すのは確定してんだろーが! ふざけたコトぬかす暇があんなら私の手を煩わす前にテメェで勝手に死んでろっての!」
フレンダ「っ、痛……!」
フレンダは麦野の足から逃れようと懸命に左手をひこうとする。
麦野はパッ、とその足を退けてそのまま、再びフレンダの顔面を蹴り飛ばした。
怯み、半回転分転がるフレンダを尻目に、麦野は上条へとまた、手を向けた。
麦野「アイツはテメェの所為で死ぬ。 テメェが此方側に引きずり込んだから死ぬ。 それをしっかり、その眼に焼き付けてろ!」
それから数瞬の間もなく、『原子崩し』は上条当麻へと発射された。
高速で迫るそれに、上条は何を成すこともなく射抜かれる。
ぐらり、と。 上条の身体は傾く。
フレンダ「と、とう――――!」
ま、の言葉は紡がれない。
なぜならば、彼女は自分でも信じられないものを眼にしたから。
麦野「な……」
今度こそ、麦野も驚愕した。
上条の身体は傾いて、傾いた。
が、しかし。 倒れない。
確かに、致命傷は外れている。 が、最早身体の限界を超えている筈だ。
倒れないわけがない。 実際、半分以上倒れたのだから。
上条「…………っ!」
だが、上条当麻は倒れなかった。
歯を食いしばり、四肢に力を込めて。
ダメージの許容量を超えているはずの身体を、全身全霊で支えたのだ。
そして、更に。
上条は一歩、足を踏み出す。
その足は地面から離れず、歩いたとも言えるかどうか怪しいものだが、確かに彼は一歩踏み出した。
麦野から視線を逸らさず。 ただ、彼女を見据えて。
麦野(なんだ、コイツ)
さっきまで、この男はただの人間だった。
修羅場を潜った経験なら自分にも引けをとらない、対能力者とも言えるべき能力を持つだけの、ただの人間。
だというのに。
おかしなほどに、彼女は怖気を感じていた。
麦野(なんだ、コイツ……)
思わず握りしめていた拳には、汗が滲んでいる。
その事実を知り、麦野は初めて自分が圧倒されていたことに気がついた。
麦野「なんだ、テメェは……」
圧力。 プレッシャー。
それも、この第四位を蹴落とすほどのもの。
それを認めて、麦野には怒りと焦りと恐怖とが同時に溢れでた。
麦野「なんなんだよ、テメェはぁああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」
腕を一振り。
その線上から無数の『原子崩し』が上条を襲った。
が、それは上条の事も無げに振った右手の一振りで打ち消された。
『幻想殺し』。
それは、ありとあらゆる異能を、例え神様の奇跡であってすら打ち消す異能。
麦野「ブッ倒れろォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
絶叫。
麦野は手を休めず、『原子崩し』を放ち続ける。
それは時に、上条の右手をすり抜けてその身体に突き刺さる。
が、それでも上条は倒れない。
少しずつ、一歩ずつ確実に、麦野との距離を詰めてくる。
次第に、彼女の感情は焦燥一色に染まる。
フレンダ「なんで……」
ビーム群を一身に受けて、時に赤い液体を舞わせる。
フレンダは、その光景を眺めながら呟く。
フレンダ「結局、私は当麻を見捨てたのに……どうして、そこまでボロボロになっても、戦うってわけよ……」
上条「――――俺は」
その呟きに答えるように、上条は言う。
上条「俺は、記憶喪失になってから……ずっと不安だった」
禁書目録。
月詠小萌、土御門元春、吹寄制理、御坂美琴。
彼女らを始めとした、記憶喪失前の上条当麻の知り合い。
彼女らはもしかしたら、『記憶喪失後の上条当麻』ではなく、『記憶喪失前の上条当麻』を求めているのかもしれない、と。
勿論、記憶喪失後に知り合って彼を慕っている人間は沢山いる。
が、記憶喪失以前も以後も一緒くたにして騙している、という罪悪感はどうしても拭えなかった。
忘れたように思ってても、心の片隅に残っていた。
上条「けど、フレンダは……俺を『上条当麻』だって言ってくれた。 間違いなく、俺は上条当麻だって認めてくれた」
バチン、と右手でまた『原子崩し』を弾く。
心臓と頭だけを確実に止めて、どうしても止められないものだけは身体で受ける。
それの痛みは、既に感じない。 だが力が入らなくなりかけるのを懸命に押し留めて、また一歩踏み出す。
上条「そんな奴を、俺を好きだって言ってくれた奴を! 俺を巻き込みたくないからって泣きながら去る奴を見捨てられるわけねーだろうがっ!!」
それは、今の上条当麻だけではなく、昔の上条当麻も同じ気持ちだった。
きっと、記憶を失う最後の最後でも彼女のことを思っていたに違いない。
でなければ、こんなにも『失いたくない』なんて想いが、その比重が何より高いわけがないのだから。
上条「『スクール』だろうが、『アイテム』だろうが。 そんなのだってどうでもいい」
そもそも組織に入ったのは、フレンダを探し出すための手段にしか思っていなかったのだから。
上条「俺はただ、大事な奴を助けたいだけだ!」
だから、そこを退け。
言外の言葉を麦野は受け取り、そこで憤怒の感情が勝る。
麦野「フザケてんじゃねぇぞクソがァアアアアアアアアア!!!」
熾烈を増した、『原子崩し』の弾幕。
それを受けて上条はその場に釘付けになってしまう。
麦野はそれを全く収めることはせず、しかしその場に立ち尽くすような事はせず、フレンダの頭を踏みつける。
フレンダ「がっ……!」
麦野「コイツが! 何をしたと思ってやがる! コイツは、私達の仲間の! 親友の敵に! 私達を売りやがったんだぞ!!」
麦野「そんな奴が! 生きてる意味なんてねぇだろうがッ!! アイツの無念を! 私の怒りを解らねぇ奴が! 生きる必要なんてねぇだろうがッ!!!」
ガンガン、と繰り返しフレンダの頭を踏みつける。
それを押しとどめたのは、やはり、引きずるような足音だった。
麦野「……ッ!?」
『原子崩し』の出力は弱めていない。
もはや当たれば即死級のものを打ち出している。
それなのに、どうして奴は守ることに集中しないでこちらへとまた歩みを進めることができるのだろう。
上条「……お前とフレンダの関係は、知らねぇ」
上条「その親友の敵って奴と、どういう関係でフレンダがお前たちを売ったのかも知らねぇ」
上条「けど! 生きようとするのをお前が奪う権利なんてどこにもねぇだろうが!」
上条「確かに、その親友も生きたかったのかもしれない。 志半ばで倒れて、無念だったのかもしれない!」
上条「けどそいつは! 少なくとも敵を討とうと躍起になってお前たちが仲間割れをして欲しいなんて決して思ってなかったはずだ! 寧ろ、自分の分まで生きていてほしいと思ったはずだ!」
上条「仲間だというなら! お前達とそいつが仲間だって、親友だって言うなら! きっと、そう願ったはずだ!!」
麦野「うっせぇんだよぉおおおおオオオオオオオオオ!! テメェに何がわかるってんだ! 勝手にアイツの気持ちを代弁してんじゃねぇ!」
麦野「私はアイツの敵をとる! そのためなら、邪魔する奴はなんだって殺してやる! テメェだって、フレンダだって! 学園都市そのものでもだ!!」
もはや、麦野は聞く耳を持たない。
上条から見てもわかるほどに、復讐に取り憑かれている。 もはや解っていたとしても、自分でも止められないのだろう。
例え敵を討ったとしても、最終的に彼女に待ち受けるのは破滅だ。 フレンダも、その親友も、それを望んでいるわけがない。
それならば、道は一つ。
上条「……いいぜ。 テメェが、復讐のために何もかもを犠牲にするっていうんなら」
上条「まずは、その幻想をぶち殺す!!」
上条は『原子崩し』の射線上から躍り出る。
麦野達との距離はもはや五メートルもない。 最後の力を振り絞り、全力で地面を蹴る。
麦野「チィッ!!」
直ぐ様狙いを定め、『原子崩し』を射つ。
上条「ッ!」
右手を翳す。
ほんの僅かでも遅れていれば自らの命を奪ったであろうそれを、なんとか受け止めた。
が。
麦野「うぉおぁああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
その影になって距離を詰めた麦野が拳を振るう。
それには『原子崩し』が纏わり付いており、当たれば必殺。
麦野はそれを上条に向かって振り抜く。
が。
その拳は、上条の『幻想殺し』によって止められる。
次の瞬間、左手のアッパーカットが麦野に突き刺さった。
麦野「が……ッ!!」
よろよろと押し戻され、思考が一瞬吹き飛んだ。 所謂ノックバック状態。
それでも一撃では倒れず、再び前を向いたその瞬間。
その隙間を一歩で詰める、上条の最後の踏み込み。
麦野(や、)
瞬間。
麦野が何を思う暇もなく、彼女の顔面に上条の右ストレートが追いついた。
バキッ! と。 その身体が宙を舞う。
麦野(――――)
わかっていた。
復讐心に駆られ、我を失っていたことぐらい。
垣根を追うことに精一杯になって、フレンダが自分たちを売らなかったら殺される状況になってしまったことぐらい。
わかっていた。
フレンダに嫉妬していたことぐらい。
ここぞ、という時に助けにきた少年と少女をこれでもかというぐらい妬んでしまったことぐらい。
わかっていた。
自分が、過去の垣根になってしまっていたことぐらい。
少年は過去の自分で、少女は自分の親友で。 大切な人同士を分とうとしていたことぐらい。
麦野(一体、どこで間違えたのやら)
自分の行動を省みなくなったことからだろうか。
親友が垣根に殺されてしまうのを止められなかったところだろうか。
フレンダを自分の判断で『アイテム』に入れたところだろうか。
考えども、答えは出ず。
しかし、それを聞いていたかのように、少年は言った。
上条「これから過去のことじゃなくて、未来を見ていけばいいんだ。 そうすればきっと、正解は見つかるはずだから」
何度も間違えるかもしれない。
何度も挫けるかもしれない。
それでも立ち上がることさえすれば、きっと。
麦野(それでも――――)
たまには、間違ってしまった過去に思いを馳せることぐらいは許されるだろう。
麦野はあの親友とフレンダと。 まだ三人だった頃を思い出して、眠るように気を失った。
ここまでです。
おやすみです。
乙って訳よ
乙です
乙
乙おっつ
乙なんだよ
そげぶきた、これで勝つる!
おつです
乙です
流石上条さんや・・
多分今日か明日来ますです。
恐らく、あと2~3回で終わりかと思います。
>>1了解です
もうすぐ終わりか…
ぼちぼちいきますー
よしこい
上条「……ッ!!」
拳を振りぬいた上条は、麻痺していた痛みを感じてその身体の限界を知る。
勢いをそのままに、受け身すら取れずに無様に地へ激突した。
上条「っ、あいつは……」
それでもまだ終わってないとばかりに身を捩って麦野を探す。
その当の麦野は、長い髪を乱して地面に横たわっていた。 立つ気配は今のところ無い。
そこまで確認して、ようやく安堵する。
フレンダ「当麻」
遠のく意識の中、ハッとして見るとフレンダが地面を這って近づいてきていた。
その表情は上条と同じく動けば身体中を走る痛みに必死に耐えていた。
しかしその痛みを背負ってでも、彼女には確かめなければならないことばあったのだ。
少女は問うように手を伸ばす。
それは願うように、確認するように。
過去に選ばれなかった選択肢をもう一度再現するかのように。
少年は答えるように手を伸ばす。
記憶喪失前の彼が途中で引いてしまったその手。
それを上書きするように、或いは辿り着いたのかと確かめるように。
そして二人の手は重なる。
やっと。 ようやく。 今度こそ。
少年は、少女の元に追いついた。
それは長かったすれ違いの、その終焉。
手に伝わる暖かさ。
それを知って、フレンダは思わず綻ぶ。
フレンダ「当麻」
再び、彼女は名前を呼ぶ。
対する少年も、少女の顔を見て笑う。
自分が追い求めてきたのは間違いではなかったと。
過去の自分も、きっとこれを見るために追いかけていたのだと。
上条「フレンダ」
彼も名を呼ぶ。
そして合わせた手の指を絡めあった。
まるで恋人のように。
フレンダは思う。
きっと、彼も自分も助からない。
最悪の敵を倒したとはいえども、両者とも満身創痍で助けを呼ぶことすらもできないのだ。
けれど今はもう怖くない。
彼がいてくれるなら何処にだっていける。
傷の度合いからしてもしかしたら自分は助かるかもしれないがその時は跡を追おう。
その命を賭してまで助けに来てくれた彼にこそ、自分の命はあるのだから。
それをするときっと少年は怒るだろうし、残された妹もどうするのだという話になるかもしれない。
しかしながら少女はその問題に注意を向ける気など毛頭なかった。
少年の方はまだしも、少女の方はそれなりに手を打っておいたつもりではある。 主に金銭面のことに関しては。
それでも、肉親がいなくなってしまうのは心にクるものはある。
だが、やはり彼女は自分の決意を揺らがせることは絶対にないだろう。
このフレンダ=セイヴェルンという少女はやはり何処までも上条主体で、何処までも自分勝手であるのだから。
フレンダ(結局、ごめんね当麻。 きっと怒るってわけよ)
だとしても、だ。
フレンダ(私は、当麻と一緒にいきたい)
全てが偽物だった。
全てが幻想だった。
しかしその中のたった一つを、最後の望みだけを少年は真実へと変えてくれた。
それだけで、十分だったから。
フレンダ「当麻」
最後に、彼女はまた彼の名前を呼んで。
そして、いいたくても言えなかった、先を求めても求められなかったその言葉を告げる。
フレンダ「大好き、ってわけよ」
対して、上条は面食らったように一瞬動揺して。
それでもその言葉に回答する。
フレンダはそれに満足したように微笑み。
そして次に目覚めるともわからない、深い闇の中に意識を堕としていった。
■ □ ■
『十月九日 暗部組織の抗争についての報告書』
『ブロック』『スクール』『メンバー』『アイテム』及び『グループ』。
これらの組織による抗争により、学園都市は多大な損害を得ることとなった。
(彼、或いは彼女らの戦闘の場、また戦闘による損害は別紙を参照されたし。)
このうち、『ブロック』、『メンバー』は壊滅。
『スクール』は全滅こそ免れたものの、リーダーである垣根帝督を失って空中分解。
『アイテム』に至っては全員生存はしているが、リーダーの麦野沈利含む全員が負傷、再起不能状態に陥った為に解散。
後日、残った・回復した戦力による組織再編を求める。
(それに関しては『残存勢力による組織再編の願』に目を通して頂きたい。)
『グループ』は全員生存及び軽い治療により全員再起可能。
故に彼らはこのままの組織構成で後も稼働させ続ける。
(しかし、反乱の気配あり。
彼らを使用する場合はくれぐれも注意が必要。)
以上を持ってして、これを学園都市統括理事会及び学園都市統括理事長『アレイスター・クロウリー』への報告書とする。
今回はここまでです。
次のエピローグで終わる……かな?
乙
ついにこのスレも終わるのか………もう少し書いてもイインダヨ?
乙
いいスレだった
乙です
上条さんとフレンダが幸せに暮らすのを期待
遂に終わってしまうか・・
フレンダ、ようやくお前の戦いも終わるってわけよ
フレメアも出てきて3人で笑いあってくれる事を望む
■ □ ■
フレンダにとって、その瞬間は呆気無くやってきた。
フレンダ「…………え?」
そこにあったのは清潔感の溢れる白い天井。
二度と覚めないかもしれない暗闇に身を任せた矢先にこれだ。
思わず呆けてしまうのも無理はないといえよう。
部屋の中には眩しすぎるほどに明るい太陽の光が差し込んでおり、カチカチと時を刻む音だけが静かに響いていた。
ここが病院であることを把握したと同時に、フレンダはその身体を慌てて起き上がらせる。
すると、途端に身体の内部に鈍い痛みが走った。
フレンダ「……っ、痛っー……!」
思わず倒れてしまう。
ぼふっ、という柔らかな感触が身体を受け止めると同時に、またフレンダはそれがあることを知った。
フレンダ「……義手?」
目の前で吹き飛んだはずの、自分の右手。
それは傍目からして違和感は然程なく、しかし確かな異物感を自身で感じ取ることは出来た。
故に義手、と見抜く。
そしてよくよく周りを見渡してみればそこにあるナースコール。
少しだけ迷ったけれど、この処置をしてくれた人にあって確認しなければならない。
自分の嫌な予想。 それが本当ならと恐れるが、しかしそれでも、少女はその震える右手をボタンへと伸ばした。
「ふむ。 どうやら経過は大丈夫なようだね。 こればかりは患者自身でないとわからなかったから心配だったんだけどね?」
フレンダの様子を見て、医者(何やらカエルの様な顔をしている、一風変わった医者)は開口一番そう言った。 怪我の件だけでなく、それは義手のことを主に指す。
馴染んでいなければ、そのスイッチを押すことすらきっと出来なかったはずだと。
「異物感は暫くすれば慣れるかなくなると思うけど、君が望むなら元通りに手を生やすことだってできる。 僕としてはあまり薦めたくないけどね?」
その言葉にフレンダは考えておく、と返す。
が、きっと彼女はそれを選ばない。
これは代償として、甘んじて受け取るべきだと感じ取ったから。
フレンダ「そ、それより! 結局、聞きたいことがあるってわけよ!」
そう、確かに自分の身体の事も重要といえば重要なのだが。
少女にとってそれ以上に大切な事があるのだ。
医者はそれをすぐに察したのか、ふむ、と一度だけ頷いて問いかけてくる。
「それはもしかして、君と一緒に運ばれてきたあの少年のことかい?」
フレンダ「そっ、そう! 当麻は、当麻は一体どうなったってわけよっ……!」
詰め寄ろうとして、再び痛みが全身を駆け巡る。
それに怯んだフレンダをまぁまぁと医者は宥め、続ける。
「少し落ち着いたらどうだい? とはいっても、きっと彼の様子を聞くまで君は大人しくしないのだろうね……結論から言おう。 彼は峠は越したよ」
フレンダ「!」
少女の顔に光が宿る。
それを見て医者は少しばかり満足そうに表情を和らげた。
「まだ目は覚ましていないけれどね? 今日あたり、そろそろじゃないかなとは思ってるんだよ? 彼ももうここの常連だからね、大体のことはわかるさ」
気持ちが逸るあまり、痛みが全くとれていない身体で動こうとするフレンダを見て慌てて止める。
思わず医者を睨みつけてしまうが、彼はそんな抗議には屈しない。
「君の気持ちもわかるけどね? きっと彼のことだ、君の様態の確認をしに向こうからきっと来るんじゃないかな? なに、彼の怪我なら心配はいらないさ。 僕を誰だと思っているんだい?」
フレンダ(誰も何も、結局ただの胡散臭い医者にしか見えないってわけよ……)
フレンダのその思いを視線から感じ取ったのか、誤魔化すように咳払いをする。
そしてそれを合図にしたかのように、様子を伺うようなノックが部屋に鳴り渡る。
「どうやら予想よりもずっと早かったようだ。 さぁ、感動のご対面だね?」
ドアが開くと同時に、その影が病室内へと飛び込んでくる。
それは、予想に反してとても小さく、そして金の長髪で眼が碧い。 そして自分の持っているものとは色違いのベレー帽。
そして姿は数年前の自分に生き写しであり――――そう、つまり、彼女は。
フレメア「お姉ちゃん! にゃあ!!」
フレンダ「えっ、フレメあ"ッ!?」
自分の妹、なのであった。
一も二も無く、静止の声すら間に合わない子供の高速移動そのままに、フレンダの胸へと飛び込んでくる。
その衝撃に目覚めてから最大の痛みを味わい、フレンダは言葉を亡くした。
流石の医者も、そのカエル顔を変化させて苦笑いしていた。
「どうやら違ったようだね? すまないね、僕としたことがとんだ勘違いを……」
最中、医者はその口を閉じた。
何故ならベッドの上の少女が痛みを堪える涙目でこちらを見ていたからだ。
そしてその口がゆっくりと動く。 その気迫と合わさり、音がなくてもしっかりと理解できた。
曰く。 『早くでていけ、ってわけよ』。
その言葉を了解し、カエル顔の医者は降参するように軽く両手をあげて部屋から去っていく。
その間も『お姉ちゃん、お姉ちゃん』と腹部に頭をグリグリと押し付けてくる妹の悪意ない攻撃に悶絶しつつ、やっとのことで引き剥がす。
それでも脚のうえに跨ったままの妹。 その彼女と向き合って、患部を擦りつつフレンダは声を発した
フレンダ「っつつ……えっと、フレメア。 久しぶり……って、わけよ」
最後に会ったのは、街中で一緒に買物をしていた日。
喧嘩別れになってしまったあの瞬間を思い出して、フレンダは思わず顔を曇らせてしまった。
そんなフレンダの表情を見てフレメアはすぐさまベッドから飛び降りて腰を九十度折り曲げた。
フレメア「お姉ちゃん、ごめんなさいっ!」
その突然の謝罪にフレンダは目を丸くする。
息を継がせる間もなく、フレメアは一息に続けた。
フレメア「大体、当麻お兄ちゃんにも、フレンダお姉ちゃんにも事情があったんだと思う。 にゃあ」
フレメア「それなのに私は……何も考えないで、騙したお姉ちゃんなんて嫌いだって、当麻お兄ちゃんも大嫌いだって、思っ、思って」
フレメアの言葉に、湿り気が混ざり始める。
その瞳には涙をめいいっぱい溜めて、しかしそれでも泣くまいと、必死に抑えこんでいた。
フレメア「だから、お姉ちゃんが病院に運ばれたって聞いて、私は、私が悪いんだって、それで、それで……!」
フレンダ「……フレメア。 もう、いいってわけよ」
えっ、とフレメアが顔をあげると同時、フレンダの両腕が彼女を抱きしめていた。
その行動をするのに、きっとフレンダの五体は悲鳴をあげていることだろう。
しかし、今の彼女にとってそんなことは捨ておける些細なことでしかなかったのだ。
フレメア「フレンダお姉、ちゃん……?」
フレンダ「もう、いい。 もういいってわけよ」
フレメアが涙を流すのを見たのは、この数年間で片手の指で数える程だけだった。
利口で強い。 空気も読める。 そんな妹に甘えていたのだとフレンダは今この瞬間に自覚した。
いくら出来た妹であったとしたって、彼女はまだ小学生であるのだ。 我侭だって、年上に甘えたりだってまだしたりない年頃なのだ。
母と、父。 その二人を既に亡くしたも同然なのだから、尚更。
フレンダ「確かに事情があったけど、何も話さない、話せない私も悪かったから」
だから、言うのだ。
姉である自分が悪かったのだと。
全て自分の中で抑えこんで、自分が悪いと思い込まなくていいと。
もう、我慢しなくていいと。
フレンダ「だから、結局。 今までのこと全部ひっくるめて。 ごめんなさいってわけよ」
腕の中で姉のその言葉を聞いた瞬間、フレメアの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
そして、周りも憚らずに大声で啼泣した。
今まで泣かなかった分を、一度に放出するように。
ただ、ただ。
その泣き声は、部屋の中に反響していた。
■ □ ■
数分か。
十数分か。
はたまた、数時間か。
どれだけの時間が経過したのかわからなくなるぐらいの時を経て、ようやく少女の涙は枯れ果てた。
そしてその少女の姉は告げる。
フレンダ「もう一度、やり直そう」
フレンダ「もう一度、歩いていこう」
フレンダ「私と、当麻と、フレメアと。 それ以外の人たちとも」
フレンダ「その為の時間も機会も、これから沢山、沢山あるってわけよ」
崩れたら積み直せばいい。
壊れたらまた作りなおせばいい。
それは決して、もはや夢幻などではない。
それらは全て、少年が教えてくれた。
それらは何もかも、少年が守ってくれた。
故にこれは、決して幻想などではなく。
少女の、少女が望んだ、紛れも無い現実であるのだから。
フレンダ「だから、結局――――私達の思い出を作り直そう、ってわけよ」
例え、時が経っても。
例え、関係が変わっても。
例え、記憶を失ってしまったとしても。
きっと新しい思い出は、それ以上の思い出になるに違いないから。
そして。
部屋中に、ノックの音が突き抜けた。
おしまい。
本編はとりあえず終了です!
初めから見てくださった方々、途中から読み追いついてくださった方々も。
ご閲覧、ありがとうございました!
Part1から読んでたけど本当に乙!
本編は、ってことは番外編でもやるのかな?
とりあえずちょっと早いかもだけど良いお年を!
乙でした
後日談書いてもいいのよ?
お疲れ様でした
乙
乙
今までずっとROMだったけど乙って訳よ
ずっと楽しみにしてたせいで何故か虚しさの方が大きくなってしまった…
乙です
乙です
ぜひ後日談をみたい
良かった・・
おめでとう、フレンダ・・
後日談かぁ・・
3人で笑いあってるか、上条さんの学校にフレンダが・・
ってのがいいね
綺麗に終わったとはいえ、後日談でもう何も憚ることがない二人のイチャイチャを見たいもんだな
バレンタインのときは絹旗の後日談やってくれたし…
おつです、素晴らしかった
後日談に期待
…ついに…終わったのか………
長かったな~
ここまで根気よく書き切った>>1に拍手!
お疲れ様。
長い間おつでした
最初から追いかけてた身としては完結に感慨深いものがあるね
超超超乙です!!
あけましておめでとうございます。
改めまして、本編を御覧頂いてくださり皆さまありがとうございました!
ところで、やはり後日談の声が多いようで。
しかしながら自分も本編は終わりと言っておいてなんですが特に続きは考えていないのです。
続きは皆さまの心のなかに……ではありませんが、この後の話は愚問というか、無粋というか。 まさしく、取り留めの無い日常が待っているのでありまして。
ですが、番外編の方なら書かせていただけるのなら。
というわけで求:お題、です。 前スレ最後の小ネタのような感じで。
>>491
上フレで両親に挨拶にいこう
もちろんフレメアも一緒に
連投になりますけど
あけましておめでとうございます
今後の>>1のssに私も期待いたしております
今年もよろしくお願いします
両親って上条夫妻でいいんだよね。 このSSの設定上セイヴェルン夫妻は失踪してるし。
というわけで了解しましたー
結局番外編より後日談(というか本当のエピローグ)ということになりそうな悪寒……
あと、ご丁寧にありがとうございますです!
上条夫妻であってます
少し言葉足らずで申し訳ない
④
あけおめです!
番外編期待して舞ってます
良い話だった!!感動をありがとう!!
期待してる
あけましておめでとうございます。そしてお疲れ様でした。
最高です!感動しました!
完結お疲れ様でした。フレンダ・・・幸せになってね・・・・・。
お疲れ様でした。番外編期待しています。
追いついてしまった…
面白いSSをありがとう
乙!
乙!
面白かった!
番外編期待
乙
やっと追い付いたと思ったら終わったか・・・
面白かった
本編!!質、量共に、
安心して誰かにおススメできる良作でした!
兎にも角にも乙でありますッッ!!!
出逢えて良かった!
追いついた乙!
番外編待ってるぜ!
...雨が、降ってきたな
ご無沙汰してます。
念のため報告をば。
知っておられる方も居るかと思われますが、只今試験期間です。
来週末には終わる予定ですので、今しばらくお待ち頂けると幸いです。
報告乙
舞ってる
報告ありが㌧
試験がんばってね
了解!
書こうと思ってキーボードに手を置いたらシチュが浮かんでこんかった……
お題貰った当初は考えてた筈なのに……
すいませんが、今しばらく(数日)お待ちを。
報告乙
舞ってる
報告さんくす
舞ってる
なんとかまとまりました。
とはいっても……趣旨から外れてしまったような感じなので上フレの甘酸っぱい(?)挨拶を期待していた方はごめんなさいです。
題は、『とある少女の散策遊歩』とでも。
よしこい
来たのか?
休日。
彼女は、公園で一人ブランコに跨がる少女を見かけた。
小学校高学年程度だろうか。 だが年齢よりももっと目立つ特徴が彼女の目を引いた。
金色に煌めく髪に、透き通るような碧眼。
どうしても気になってしまい足を止めて彼女の様子を伺ってみると、その少女は所在なげにポツンとしていた。
時折、思い出したかのように地面を蹴って、ブランコを揺らす。 が、それだけだ。
どうしようか、と思うよりも先に彼女の身体は動いていた。
それはどうやら彼女の頭の隅を過った数年前のあの少女と一人で寂しそうにしている(ように見えた)この少女が重なって見えたからかもしれない。
理由はどうあれ、兎角彼女はその公園で一人佇む少女に近寄っていったのだった。
「ねぇ、あなた。 一人?」
にゃあ? とまるで猫のように相槌をうって顔をあげる。
努めて、笑顔を見せる。 仕事柄、子供相手に笑みを浮かべるのはお手のものだった。
「私も一人なんだ。 少し、お姉さんとお話してもらってもいいかな?」
少女は思わず、『お姉さん?』と口をついて出そうになるがそれをぐっと抑える。
多く見積もっても、三十五前後。 自分ではまだまだおばさんではなくお姉さんだと言い張りたくなる年頃。
口を滑らせたらろくな事にならない、と少女は経験上知っていた。 故になんとか言葉を飲み込み、コクリと一度頷く。
「ありがとう」
そういって彼女は少女の隣のブランコに腰を下ろす。
「それじゃあさっそくだけど、名前……は、いいかな。 ねぇあなた、お友達とかいるの?」
「沢山いる! にゃあ!」
元気よく言った少女は、その声に驚く彼女を差し置いて指折り数える。
小学校高学年に見える、とは言ったものの中身はまだまだ幼いようで、恐らく名前だろう名詞を言っては指折り数える少女をみて微笑ましくなる。
「そう。 虐めとか、そういうのは? あったこととかない?」
次なる問いかけに、少女は怪訝そうな顔を浮かべてないよ、と首を振る。
「大体、どうして? にゃあ」
そして今度はそれに投げかける。
生まれてこの方、虐め(近しい暴行のようなものは目にした覚えがあるが)にあったことのない少女に、その質問に繋がる意図がわからなかった。
言ってからしまった、と思ったのか彼女は少しばかり考える。
きっと、ここであったのも何かの縁。 あの少女によく似ている、というのもここでその贖罪をしろということなのかもしれない。
そう考えた彼女は、それでも笑みはなるだけ崩さずにゆっくりと語り始める。
「えっとね。 実は私は、幼稚園の先生をやってるの。 ああ、勿論今日は休みでこうしているんだけどね」
「かれこれ十年ぐらい前かな? あなたによく似た女の子が私の組に入ってきたんだけど……その子が虐められちゃっててね」
「それで、一人で寂しくしているあなたが重なって見えて、声をかけちゃったんだ」
ふぅん?と理解しているのかしていないのか、少女はキコキコとブランコを少しばかり揺らす。
「どうして、虐められてたの?」
少女の問いに、彼女は空を見上げる。
遠い雲を眺めて、記憶を辿る。
「さぁ……よく覚えてないの。 些細なことだったと思うんだけどね。 次第にそれもエスカレートしていって」
「私も先生だったからね。 なるべく、守ってあげようとはしてたんだけど、ちょっとした事情で守れなくなっちゃって」
「結局、私が仕事に復帰したのは彼女が卒園したずっと後。 だから、どうなったのかは知らないけど……それでも、守れなかったことが気がかりなの」
ごめんね、おかしな話をして。 と、彼女は重くなった空気を吹き飛ばすようにから笑いをした。
しかしそれでも、少女は考えるように首を少しばかり傾げ、今度は問いではなく自分の思ったことを告げた。
「大体、大丈夫だと思う、にゃあ」
「え?」
少女を見ると、その人形のように整った顔で綺麗な笑みを浮かべていた。
「私は寂しくないし、友達も沢山いる! だから、その女の子もきっと大丈夫! にゃあ!」
それは何の理屈もなく、何の根拠もない言葉。
しかし、それでも、そうだとしても――――。
クスリ、と。 彼女は今度こそ、笑みを浮かべる。
「ありがとうね」
「にゃあっ」
ぽんぽん、とベレー帽の上から軽く頭を撫でる彼女に、少女は答えるように鳴いた。
と、その瞬間だった。
『フレメアー! フーレーメーアー!』
「!」
何かを探すような声が聞こえたのと、少女が跳ぶようにその声に反応したのは。
少女は慌ててブランコから飛び降りる。 主をなくしたブランコは、その勢いで数回跳ねた。
「お母さん?」
「お姉ちゃん!」
走り去ろうとする背中に問いかけると、少女は顔だけ向けてそう返した。
そしてそのまま、見向きもせずに一目散に公園の出口へと向かっていく。
ということは、あの子の名前はフレメアっていうんだ。 名前まで似てるんだなぁと思いながら視線をそのままフレメアの走った方へと移して。
目を疑った。
フレメア「にゃあ! フレンダお姉ちゃん!」
フレンダ「もう、結局何勝手にはぐれてるってわけよ! 学園都市の外にでるのが久しぶりだからって、はしゃがない!」
にゃあ! と、またもやわかっているのかわかっていないのか判断に困る返事を受け取ってフレンダは頭を悩ませる。
なるだけ純粋に育ったのはいいけれど、こう手がかかるとおちおち二人でデートにも出かけれないと。
フレンダ「結局、もうはぐれないこと。 当麻も待ってるんだから、早く行くってわけよ!」
そして、そのまま金髪碧眼の姉妹は手を繋いで公園から遠ざかる。
こちらへの言葉は、何一つとしてなかった。
しかし。
こちらを一瞥したその瞬間。 笑顔を浮かべたのと、僅かに会釈をしたように見えたのは恐らく見間違いではなかったはずだ。
きっと。
彼女の背負うべき罪は、もう何もない。
■ □ ■
上条「…………不幸だ」
上条当麻は、不幸だった。
フレメアがいつの間にか、どこかにいってしまった。 それはいい。
フレンダもフレメアを探してどこかにいってしまった。 それもいい。
しかし、彼女らを待っている間にジュースでも飲むかーと思ったのが運の尽き。
三人分買っておこう、やっぱり学園都市の外のラインナップって普通なんだなーと思いつつ小銭の手持ちがなく千円札……ではなく、五千円札を投入したところ。
上条「呑まれた……なんなんですかもう自販機の故障って御坂とかが蹴っ飛ばしてるせいじゃないんですかね!?」
貧乏学生にとっての五千円札はとてつもなく大きい。
しかしだからといって自販機に当たることは出来ず、地面に向かって拳を叩きつけていたところ。
フレンダ「……当麻、一体何してるってわけよ」
実の彼女が、その光景に引いていたのだった。
そしてまた、上条当麻は呟く。
上条「……不幸だ」、と。
道すがら、上条から事情を聞いてフレンダは若干呆れたように言う。
フレンダ「結局、あっちでもこっちでも相変わらず、当麻は不幸ってわけね」
上条「とほほ……」
学園都市内部で使われているキャッシュカードなど外では使えない。
フレンダの方が金銭の類を持ってきているとはいえ、男の甲斐性すら見せられない。
元よりフレンダ自身、上条にそのようなものは期待していないだろうがそれでも、だ。
フレメア「当麻お兄ちゃん、大体大丈夫! 私も持ってない、にゃあ!」
フレンダ「フレメアには持たせてないだけってわけよ。 お金自体はちゃんと残ってるから」
フレメアの励ましも上条が希望を持つ前にバッサリと切り捨てる。
その光景にあれ?と首を傾げる妹にフレンダは本当に将来が心配になってくる。
追撃を受けて尚更落ち込む上条を見て溜息を一つ。
フレンダ「なんにしても、態々外まで来たんだからついでに打診してみればいいってわけよ。 一人息子が彼女をつれてきたとなれば幾らかは出してくれるはずじゃない?」
上条「……まぁ、首が回らなくなったらそうする……っとと、あったあった」
一度徹底的に破壊されたとは思えないほど立派な一軒家。
表札には『上条』。
世界を飛び回っている筈の父親も、事前に連絡しておいたため今日は居るだろう。
フレンダの言うとおり、彼女を連れてきたとなれば両親も喜ぶに違いない。
それも学園都市へ追いかけてきてまで想ってくれていた幼馴染だ。 反対は決してない。
上条にとって惜しむらくはフレンダの両親が行方知れずということだが、きっとそのうちこの右手が導いてくれるだろうと思っている。
なぜならこれは、確かに不幸を呼ぶが、大切な人の幻想も守ることのできる誇るべき右手なのだから。
その右手で、上条はフレンダの左手を握る。
逃げたりなどせず。
消えたりなどもしない。
確かにあるその温もりを握りしめて。
上条当麻は、チャイムへと手を伸ばした。
おしまい。
うーん、この無理矢理纏めた感……実力不足で申し訳なく。
……・兎角! 今度こそこの上フレは終わりです! これ以外の番外編は少なくともここではもう書きません!
改めて、二年と九ヶ月間ご精読頂きありがとうございました!
おつ
乙
終わりなのか、というかそんなに長い間やってたんだな
ものさみしさは残るが内容は本当に面白かった
乙
こちらこそいいもの読めた。ありがとう
乙
乙です
今まで本当に乙でした。
乙
これ読み始めてから上フレが好きになったぜ
また何か書いてくれ
長い間ほんとに乙でした
おつかれさまでした
乙です
乙、本当に素晴らしかった
結局、1乙って訳よ。
乙
駄目だ、
>>535がモンハンの
やつにしか見えない
すごく面白かったです!
このSSまとめへのコメント
感動