逆襲のロシア (93)

注意

このスレはもしかしたら起きるかもしれない第三次世界大戦を妄想で
書いたスレですので、鵜呑みにしないで下さい。


色々矛盾が出ますかもしれませんが、出来れば見逃して下さい。


オリキャラが出ます。


ロシアがクソ強くなってます。


体がダルイです。


それでも大丈夫という方はどうぞ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1365458426

全ての始まりは中国の崩壊だった。


中華民国が経済破綻して、中国は民族ごとに国が別れる事になった。

その中国を援助するべく、ロシアが動く。


しかし、ロシアが援助したのは、漢民族では無くその他の民族だけを
援助したのだ。


この援助で発言力が高まったロシア。


そして、ブルガリアやチェコが再びロシアに感心を持つことに……

それ以降は分からない。


突然、ロシアが力を持ち始め、アメリカと肩を並べる程までに
なっていた。





そして……

ypaaaaaaaaaaaaaaa

ネコチャンアカイをランダムに小さくして、負けてくる 罰ゲーム 消魔族をカセキサイで薙ぎ払う

中華民国は台湾やで

『アメリカ大統領が暗殺されました。犯人はロシア人だと——』


「ロシア連邦と軍事衝突が明日にも起こるだろう」



一時のアメリカとロシアは、かつてのアメリカとソ連の様に冷戦状態だったが
ロシア人によるアメリカ大統領暗殺がキッカケで、戦争が勃発した。
戦争が起こると同時に、ロシアは素早く南下を始めた。
中国は軍事力が弱ってある為、ロシアの進撃を簡単に通し
そしてアメリカはロシアを朝鮮半島で食い止める事になった。


ここで、大きな戦いが起きる。

—————————

辺は既に暗くなっており、ロシア兵を乗せた数台のトラックが半島目指して
走っていた。

トラックの中はしんっと静まり返っていた。


「ロシアは……日本を狙ってる様だな」

ポツリと大男のロシア兵が呟いた。

「だろうな。日本を制すれば、アメリカは腑抜け同然になるもんな」

目にクマがある窶れた男が答えた。

「いいや。アメリカだけじゃねぇ、ヨーロッパにも被害が出るさ」

大男は腕を組んで窶れた男に話す。

「……ママの母国を潰すのは嫌か?」

大男は隣に座っていた、迷彩服を着た東洋人の女に意地悪そうな声で
話し掛けた。

女は何も答えなかった。

「それよりよぉ、日本にゃニンジャが居るらしいじゃねぇか。ニンジャって強ぇーのか?」

大男は女にしつこく話しかけるが、女はずっと顔を伏せたままだった。

「何だよ、黙りかよ。……オイ、お前もさっきから何黙ってんだよ」

「え?」

突然話しかけられてビクッとした。

「あ、え、い、いや……その……」

何か話そうとしたが、いい言葉が思いつかなかった。

日本について話せばいいのか?しかし、僕は日本について何も
知らない。

何かを話そうとしたが、トラックが止まると、置くの座席に座っていた
サングラスの男が我先に出ていった。

「無駄話しはそこまでだ。早く出ろ」

トラックから降りると、サングラスの男は僕達に説明し始めた。


「私達は今から平壌に責める。確実に大きな戦いになる」

「私達の計画はこれから戦闘ヘリが————」


このサングラスの男……中尉はこれから始まる計画を説明始めた。

「———という訳だ、分かったな」

「折角、朝鮮半島統一したのに、また戦争するとはな」

大男…軍曹は回りを見回しながら言った。

「……これも戦争を終わらす為だ」

中尉は囁く様に言った。

「……中尉、大丈夫ですか?」

隣に居た東洋人の女……確か、伍長だ。
伍長は顔色が悪い中尉を心配した。

「大丈夫…私は大丈夫だ…それより———」


すると、ジェット機が僕達の頭上を通った。

数秒後、突然朝鮮半島の方向が轟音と共に大爆発が起きる。

回りのロシア兵達が一斉に走り出した。


「……行くぞ」

平壌に入ると、街は火の海と化していた。
ジェット機の攻撃に怯んでる隙に銃撃する。

「ロシア軍だ!」

「逃げろ!」

何を言ってるか分からないが、行動を見て大体分かる。

ここで、ロシア軍の戦車が数台介入した。
敵側の戦車は戦闘機からの爆撃で破壊されている。

戦車の攻撃が始まる。


一方的だった。
敵の兵は次々と薙ぎ倒されていっていた。

そこで戦闘ヘリも介入し———

「………これは、仕方が無いんだ…仕方が無いんだ……」


中尉は自分に言い聞かせる様にブツブツと言っていた。

「これは朝鮮が陥落するのも時間の問題だな……この勢いだと、日本も…」

その隣にいた窶れた男、上等兵が火の海になっていく朝鮮半島を眺めながらポツリと言った。

その言葉通り、朝鮮半島は早めに陥落した。


3日後。
僕と伍長は占領した半島に立ち寄った。


半島の状況は見るも無残な状態だった、人々はロシア兵士を見ると
ギョット目を見開き、逃げる様に立ち去って行った。

「………この人達は、何も関係無いのにね」

「え?」

伍長がポツリと喋ったかと思うと、すぐに黙った。

「ミハエル……『全人類ロシア人化計画』って聞いた事ある?」

数秒の沈黙の後、伍長が再び口を開いた。

「中尉から聞きました、確か、全ての国を侵略して考え方とかをロシア人を基準に教えたり……」

「そう、今回の戦争はその計画の為。つまりロシアは日本だけでは止まらないよ」

「…………」


そうかもしれない。

その計画の話しが出たのは大戦が始まる前に出た話しだ。
何かの冗談かと思ってたけど…ひょっとしたら伍長の言う通り、既にその計画は……

ロシア語だとミハエルではなくミハイルだと思う、細かいことですまんが

「ねぇ、大丈夫?」

伍長が僕の顔を覗き込む。

「あ、あぁ……スミマセン…」

「ねぇミハエル。ロシアの暴走を放っておいたら、どうなるか分かる?」

「え、えぇっと……」

「人々が不幸になる!」


ドヤ顔で人差し指を突き立て伍長は宣言した。

>>15

そうですか。指摘ありがとうございます、ですがミハエルで行かせて貰います。
申し訳りません。

「そ、そうですよね……」

「よし、じゃあ。ロシアに逆らっちゃおうか」

耳を疑った。
何かの聞き間違えだと思い、恐る恐る聞いてみる。

「あ、あの……何て?」

そう言うと、伍長はムスッとした。

「だから、ロシアに逆らっちゃおうかって、もう、何度言わせるの?聞かれたらどうするの?」

「……え、えぇぇぇっっ!!?」

「あ、馬鹿」

伍長は僕の口を手で塞いだ。


「あのね。キミ、聞かれたらどうすんのって」

ヒソヒソ声で伍長が話しかける。

「で、ですけど……そんな事したら、売国奴的な……」

「放っておいたら、ロシアが日本を攻めていくよ?」

「で、でも、中尉達に……」

「中尉は間違っている」

突然声が1オクターブ下がった。
伍長を見ると、真っ直ぐに僕を見ている。

「戦争をして幸せになるなんて間違ってるよ!」

伍長はミカイルの顔に指を突き立てて力弁する。
この人普段は無口なのに、何でこんな。


「でも、二人だけでは流石に危険だよね」

「いや何で僕も裏切る前提に」

後日僕は無理矢理伍長に連れ出された。
ちなみに僕達はシベリアで行方不明になってるらしい。


僕達が来た場所は台湾だった。
台湾はまだ、ロシア軍の手が伸びてないらしい。

しかし、テレビを見ると朝鮮半島がロシアの手に落ちた事を
ニュースで放送されていた。


「伍長。ここで何を……」

「私達の力になってくれる人達の所」

そう言うと伍長は路地裏の奧まで入って行った。

「あ、ちょ、待って下さいよー」

しばらくすると、自転車で作ったバリケードで道をとおせんぼしていた。

伍長は床にしゃがみこみ、地面にあった隠し扉を開けた。
下に続くハシゴが伸びていた。

「それじゃあ行くよ、あ、ここ閉めててね」

伍長はそう言い残すと、下に降りて行った、僕は躊躇したが
後に続いた。



真っ暗だ。
ハシゴを降りる音しか聞こえない。

「あの、伍長。どこに続いてるんですかこれ?」

「アルゼンチン」

「え?」

「冗談」

「はは……」


「よし、着いた」

たどり着いた場所は薄暗い廊下だった。
廊下にはダンボールやらなんやらが散乱していた。

薄汚れたドアに伍長はノックした。

「おーい、劉。開けてー!」


「あ!?その声はハルカか!?久し振りだな!北京戦争以来……うわぁ!」

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待って!コイツ!」

ドアの向こう側から物が落ちる音や何かが割れる音がした。
数人の男達の声が聞こえる、中国語で言い争いする声も聞こえる。

音が静まると、ドアの鍵が開いた音がして、ドアが数センチ開いた。

ドアの間から無精髭の男の顔が見えた。

「よく来たなハルカ」

「劉も。元気そうで何より」

「さ、入ってくれ」


そう言うと、ドアを大きく開けて伍長に続いて入って
行った。

「お茶しか出せないけど。それでいいか?」

「構わないよ」

「ところでキミは?」

無精髭の男は僕達に背を向けながら訪ねて来た。

「この子は私の部下」

「へー、って事はロシア人か」

「ま、まぁ」

無精髭の男はテーブルの上に二つのお茶を置いた。

「これでもか!」

「や、止めてくれ〜!助けてくれ〜!」


奧の部屋から声が聞こえた。

「……何やってるんですか?」

僕はそう聞くと無精髭の男は黙って立ち上がり、奧の部屋を開けた。


そこには革張りのソファーにガムテープで体をグルグル巻きに固定された
スーツの男と、ボロボロの服を着た男が3人取り囲んでいた。

「何してるんですか?」

「コイツが台湾を馬鹿にした」

小汚い男はスーツの男を指差しそう答える。

「離せ!離せ!私達は同士だろ!?」

スーツの男は暴れながら抗議する、しかしその抗議も虚しく男達はスーツの男に
小汚い男の手に持っていたエリマキトカゲの死骸で殴った。


「お前らなんかと一緒にするんじゃねぇ!ロシアにブルっちまって大人しく降参したんだってな!?」

吐き捨てる様にスーツの男を罵倒した。

「違うわ!戦争の経験もした事無いアホが何を抜かす!」

「その戦争の経験もした事無いヤツらに北京取られたのはどこのアホだ!」


男達はエリマキトカゲの死骸でスーツの男を袋叩きにした。

「止めてくれ!痛い痛い!」




20XX年

『中国がロシアと戦争になる前に降伏した後、台湾が中国の半分を取り、チベット民族も半分取った

これにより、中国は大国と呼べない程の国土になった』

「ま、そんな訳だ」

無精髭の男は扉を閉めて、僕達に向き直った。

「おっと、自己紹介がまだだったな」

「俺の事は劉と呼んでくれ」

僕は劉と握手した。

「劉。アンタらは何者なんだ?」

「俺達はアレだよ。民兵みたいなモンだよ、来るロシアの襲撃に備えて訓練とか色々してて……」

「まぁ、その訓練の御陰で中国から領土を取ってやったんだけどな!」

「もういいよ、劉の自慢話は」

ハルカ伍長はウンザリした表情で得意気な顔の劉にそう言った。

「馬鹿。これからが盛り上がるっつーのに」

興が冷めた劉は奧の部屋に入って行った。

—————————————

気が付くと眠っていた、部屋は相変わらず薄暗い。
周りを見渡すと、ハルカ伍長が居ない。

「伍長?」

微かに水の音がする部屋に口笛が聞こえる。

誰かが居るのかと思い、ドアを開けると一糸纏わぬ姿のハルカ伍長が
シャワーを浴びていた。

「ス、スミマセンでした!」

「え?ミハエ——」

驚いた僕はとりあえず謝ってドアを強く閉めた。
そして気を落ち着かせる為にソファーに座る。

しかし、気を落ち着かせようとしても自分の上司の裸体が脳裏に焼き付いていた。

—————————————

「それで、行方不明の兵士はまだ見つからないのか」

「はい、申し訳ありません大佐」

「ウラジーミル・サンダル中尉。兵士の管理がなってないよ」

「すみません……」

「今度は気を付けるんだぞ」

とりあえずウラジーミル中尉は大佐に謝罪すると、とっとと作戦会議室から
出た。

「……アイツら、何をしてるんだ」

ウラジーミル中尉は行方不明になった二人の部下を捜索していたが一向に
見つからなかった。

兵士が欠けた事に頭を悩ましていた。

キャンプに行くと、セルゲイ上等兵がコソコソと何かをやっていた。

「オイ、何をしている」

「あ、ヤベッ」

逃げようとしたセルゲイ上等兵を追いかけて、後ろから軍服の襟を掴んで
ぐえっと言って止まった。


「何故逃げたセルゲイ上等兵?」

「い、いや…ちょっと条件反射で……」

「本当か?」

そう問い詰めると、セルゲイ上等兵は目を逸らして上手くウラジーミル中尉の
腕を振り解いて、早足で去って行った。

もっと問い詰めてやっても良かったが、これから日本に攻めに行くのだから
変に士気を減らす様な真似はよしておこう。

そして、その頃。

ロシアからロケットを打ち上げられた。
ロケットは上手く飛び、衛星も上手く軌道に乗った。

その衛星に搭載された電子妨害装置が日本を捉えたと同時に
作動した。


これと同時に日本の電子器具は全て妨害された。

翌日。

世界は騒然としていた。

『日本が陥落』


完全に日本はロシアの手に落ち、日本人達はロシア兵に連れて
行かれていた。


「…………」

ハルカ伍長は新聞をジッと見ていた。


「あーあ、これで世界の主導権はロシアが握ったかもな」

劉が天井を見上げてそう言った。

「突然起きた電子妨害に慌てた所にロシアが攻めて来た、しかも真っ暗の夜にな」

「でもこれで、台湾やその他の攻める理由が無くなった」

「……やるよ」

ハルカ伍長が新聞をテーブルに叩きつけた。

「ロシアは全世界を制圧するつもりだよ」

「は?」

ハルカ伍長の言葉に耳を疑う劉は腑抜けた声が出た。

「全人類をロシア人にするまで、暴走は止まらないよ」

ハルカ伍長はラジオを取り出し、操作した。
部屋中に響くノイズ後、ようやく繋がった。

『全——世—の皆さん——ロシア軍——ーミル中尉です——』

「中尉!?」

ラジオから聞こえた声は、自分もよく知ってる人物の声だった。
ウラジーミル中尉の声だ、どうしてラジオ何かに?


『我々——シアは——世界——を——ロシア国に——統一する——』

『我々は争い事は———たくない——同意を——願う——』

『それを拒むならば——————』

『———武力行使で———してもらう』


ゾクッとした。

あのロシア軍にしては珍しい平和主義者の中尉の口から
堂々と『武力行使』なんて……。


そう中尉が言い残すと、ラジオからの声はピタッと止まり、
ノイズだけが流れ聞こえる。

ブツッとハルカ伍長がラジオを切ると、部屋は静まりかえった。

「ypa、だね」

「………」

「まぁ、そんな気分じゃないよね」


「………はい」

「共産主義の国が、ロシアの計画に加担してヨーロッパに進撃するみたいだよ」

ハルカ伍長は呟く様にそう言う。

「チッ……」

軽く舌打ちした劉は深くソファーに座った。

「じゃあ、ここを攻められるのも時間の問題だな」

「何もしなかったらね」

ハルカ伍長はそう言うと、コップ一杯分のお茶を一気に飲み干し
劉に向き直った。

「ねぇ、船か飛行機とか用意出来ない?」

「え?あ、あぁ…飛行機なら空軍のヤツのコネで用意出来るが、どこに行くんだ?」

「インド」

————————————
インド:デカン高原

ロシア軍の一隊が、北上していた。

インド軍による壮絶なゲリラ戦も予想されるが、進まないとパキスタンに進行
出来ない。

しかし、これは完全な奇襲攻撃なので警備は手薄だろう。
今現在、ロシア軍の大隊がアフガニスタンに向かっている。

アジアは殆どの国がロシアに降伏し、残りはインドとパキスタンとアフガニスタンだ。
中東を取れば、今後のヨーロッパ戦は有利になるだろう。

石油や資源を大量に手に入れば、日本戦に使った人工衛星はもう必要なく
心置きなく自動的に大気圏に突入して炭になれる。


ウラジーミル中尉率いる部隊はどんどん北上している。

「ん?」

異変にすぐ気付いた。

インド軍の兵士達がこちらに向かって来るのに兵士達が気が付いた。

「馬鹿な…殆ど奇襲のハズ……」


兵士達は一斉にバラバラになり隠れれる場所に隠れた。

中尉が後ろを振り向くと気が付いた、高原のド真ん中でモウモウと煙が
吹き出ている。飛行機か何かが墜落したのだろう。

「合図と共に、一斉に飛び出すぞ」

中尉が回りに居る数人の兵士達にそう指示し、兵士達は軽く頷く。

ロシアが強いというより、他国が無能になってるだけな印象。
普通、戦力増強に比例して他国も増強するはずだし。
そしてロシアは共産主義じゃないです。
今やバリバリの資本主義

「………今だ!」

中尉のゴーサインと共に、一斉に部下のロシア兵達が飛び出し
アサルトライフルを向けた。

インド兵は完全に不意を突かれ、同様している内に正確に相手を
銃殺した。

兵士達の血が地面一面に飛び広がり、パニックに陥ったインド兵達は背を
向けて逃げ出した。

中尉達の奇襲で隠れていたロシア兵達も一斉に飛び出し、インド兵達を追撃
し始めた。

「オイ!待て!無駄な追撃は……あぁもう!」

中尉の呼び止めを無視して一斉にインド兵を追撃した。

「うわぁ!」

「ぎゃあ!」

追いかけたロシア兵達はインド兵達が予め張っておいた罠に
引っ掛かっていた。


「………やはり完全じゃない……か!」

単純な罠に掛かった事に中尉は頭が痛くなった。

あっという間に一隊は壊滅状態になった。


「ヤツらも兵士だ、ずっと上手く簡単に倒せると思ってた私の甘さで部下を殺してしまったのか……!」

「中尉、どうします?」

「………とりあえず引き上げるぞ」

しかし引き上げようとした途端、無線がかかる。

「はい?コチラ、ウラジーミル部隊……」

『中尉。もしかして、撤退しようとしてるんじゃないかね?』

「え…!?」

中尉は背筋が凍りついた。
もしかして、衛星カメラから…?


『たった一回のトラップぐらいで撤退は無いだろ撤退は』

「ですが大佐…!このままでは兵達が…!」

『気合で何とかなる』

そう言い残すと無線が切れた。

「戦争狂が……!」

さすが人の価値が低い事に定評なロシアだ

中尉は無線を叩きつけた。

「何と…?」

「撤退するなだと…私達には最初っから期待してなかったのだろう」


沈黙した。予想通りの反応だった。

この数えれる人数でこの高原を抜ける前に全滅する可能性がある
あのトラップだって一個だけじゃないだろう。

アフガニスタンを攻めている大隊だって、来るのに何日も
かかるだろう。

「………クソッ」

「上層部は人の命を何だと思ってるんだ!?こんな戦争、いつまで続ければいいんだ!?」

「クソッ…!クソッ…!」

中尉は心の内に溜まっていた怒りを言葉にしてぶちまけた。
インド兵達に気付かれると思うぐらい大声が出た。


もう嫌だ。冗談じゃない、こんな戦争…
そもそも、全人類をロシア人にするなど狂ってる、その為に何人の犠牲
を払わなきゃならないんだ。

だが…私には逆らう力など…無い…

「ちゅ…中尉…撤退しましょう!」

一人の兵士がそう中尉に言った。

「無理だ…私は上層部に逆らえない……!」

「……ですよ、ね」

兵士達は一気に気が沈んだ。

「許してくれ…逆らう事も出来ない私を……!」

中尉の体は小刻みに震えていた。

————————————

もう何時間経過しただろうか、残り僅かの一隊はトラップに警戒しながら
高原を抜けようとしていた。

「………」

唐突に中尉の足が止まる。
そして、後ろを向き兵士達に向いた。

「……これから、インド軍の基地に突入する。多分、死ぬだろう」

「引き返すなら引き返せ……強制はしない」

兵士達は中尉に会釈すると全員その場から立ち去った。

「……それでいい。お前達は何も間違っていない……」

意を決して一歩踏み出した。と、その時。


地が裂ける様な轟音が基地から聞こえた。

———————————————

インドの基地に潜入した劉は、爆発をに気付いた
基地で大騒ぎしている隙に劉は出口に向かった。

武器庫か食糧庫が爆破されたんだろう。
そしてしばらくすると、銃声も聞こえた。

「ロシア軍か…?クソッ、さっさと逃げねぇと殺されちまう!」

「ハルカ?どこだー?おーい」

ゴミ捨て場に隠れていると、言ってたが……。
だが、どこにも居ない、というかあまりここに居たくない。

「ここだよ」

突然、隣の大きな鉄製のゴミ箱の中が開いた。
そこにはハルカが居た。

「おま……何て所に…」

「ここなら確実に見つからないと思って」

「そんな事より出て来いよ、何か臭うぜ」

「あぁ、本当だ」

「早く逃げよう。ロシア軍が攻めて来たみたいだ」

「それじゃあ早く逃げよう、ミハエルが表で待ってる」

そう言うとハルカは大慌てでゴミ箱から出て、早歩きで出口を目指しながら周りを警戒
した。

「インドの基地に何人かロシア兵のスパイを紛れ込んでたのかもな……これじゃあロシアの世界制覇は……」

「実現しないよ」

アッサリとハルカはそう言い切った。

「実現してもロシアは崩壊の道を全速力で走る事になるし。まぁ、今もそう何だけど」

ハルカは出口のドアが閉まってる事に気付くと、窓から出た。
劉もハルカに続いて窓から出た

外に出ると、ミハエルが呆然と立ち竦んでいた。
ミハエルの視線を辿ると、唖然とした中尉の姿があった。

「中尉……」

「ミハエル…ハルカ…お前達……どうしてここに……」

中尉は声が震えていた。

ミハエルが答えようとしたが、インド軍の基地が再び大爆発を
引き起こした。

「中尉。行きましょう、僕達と———」

ミハエルが手を伸ばしたが、中尉は手を掴まなかった。

「駄目だ…まだ、アフガニスタンと戦ってるロシア兵達は……」

ハルカがそう言うと、中尉はまた唖然とした。

「アフガニスタンに制圧しに行ったロシア兵は全てアメリカ軍により殲滅されました」

「さっき、ラジオで」


「そ、そんな……」

「それだけじゃありません、ロシア軍があまりにも西に力を入れていた為、東の方が手薄になり

日本がアメリカの手によって救われました」


ハルカは追い打ちをかける様に、中尉に非情な現実を突きつける。
もう中尉は口を開こうともしなくなった。


「……日本海戦争で一番死人が多かったのはアメリカ軍でもなく、日本ぐ…自衛隊でも無く

上層部の無理な突撃命令を出されたロシア軍だと言う事は、中尉もご存知でしょう?」


「ロシア…いや、世界が破滅に向かってるのは、中尉が良く知ってるハズです。ロシアの上層部が
腐り始めたのはウラジーミル・プーチンが死去してからです」


「……中尉、真にロシアの為に思うのならば。私達と共に、ロシアの暴走を止めましょう」


ハルカはいつもより低い声で中尉に言う。
当の中尉は完全に同様して唇が震えていた。

「中尉……」

ミハエルが中尉を真っ直ぐに見つめる。

「……私は、だが…私は……」

「中尉、出来れば早くご決断を。アメリカ軍がこの基地に到着するのも時間の問題です」

ハルカは中尉を急かした。
しかし、確かにこんな所でおちおちしていたらアメリカ軍に殺される。

だが、上層部が私を衛星……は無いか。何かで監視されている。
多分、発信機かもしれない。

「お前達……私に、私の手で……祖国を止めさせてくれないか…?」

「……はい!」


中尉は意を決して、ロシア、自分が愛する国に対して刃を向く事を決意した。

「それじゃあ、早く逃げま……て、何やってるんですか!?」

中尉は多分服に発信機が付けられていると思い、徐ろに服を脱ぎ捨てて
下着だけになった。

「早く行くぞ!」

中尉は持っている武器も全部その場に置いて、近くにあった軍用車両に
乗り込んだ。

「ミハエル!運転をお願い!」

「はい!」

「中尉。サングラスは取らないんですか?」

「これは駄目。高かったんだ」

パン一でグラサンとか
たむけんかよwww

「いや、嫌いじゃないぜ。その格好」

前の助手席に居る劉が結構真面目な声でそう言う。
ミハエルは劉の言葉を流し、バックミラーで下着とサングラスしか無い
あまり見られない中尉の姿に噴き出しそうになるが堪えた。

「なんつーか、こう、センスが感じられる」

また劉が何か言ってるが、中尉は黄昏れて、ハルカは外の景色を眺めていて
ミハエルは運転に集中していた。

それから何時間も劉は喋り続けた。

——————————

それから何時間のドライブをして、劉のコネを最大限に使い
ミャンマーまでたどり着いた。

ここもロシア兵は一人もおらず、アメリカ兵をチラホラ見かけた。


「よし。今日はここでお泊りだ」

劉はミハエルにボロボロの建物の前に車を止めた。
中尉が先に降りると、回りの人々が中尉に視線が集まった。

それもそうだろう。
途中、中尉が裸のままは流石に可哀想だと思い、バングラデシュに住んでいる劉の
友人から借りたメイド服を着ているのだから。

中尉がまだオジサマに見えないだけでもまだマシなのだが…。

「………私は車の中で寝る!」

「中尉!?」

当然の反応だった。

「大丈夫ですよ中尉!似合ってますって!」

「付き合ってられるか!」

こんなのだったら全裸の方がマシだ!と中尉はそう言い残し、車の中で
ふて寝した。

「…あーなってしまったら、中尉は頑固だよ」

「ロシアに刃向かう事を誓ったのに、こんな事になるなんて予想もしてなかっただろうな」


気が変わってしまうんじゃないだろうかと、心配したので、劉を車に残して
ハルカとミハエルで建物の中に入って行った。

建物の中は所々、穴が空いており、ロシア軍とアメリカ軍が争ったと思われる
傷跡が痛々しく残っていた。


さっきアメリカ兵がウロウロしていたから、ロシア兵は
殲滅されてしまったんだろう。


建物の窓の外を見ると、遠くに大きな壁が聳え立っていた。
恐らく、ロシア軍が作った壁だろう。

「あの壁を潰せば……」

「うん、とりあえず。それだね、壁を潰してアメリカ兵が侵入出来る様にしなきゃ」

「恐らく、あの壁の先は中国かも」

ハルカは壁を目を細くしながら見てそう言った。

「あの壁は並みの爆弾じゃ爆破出来ないね、それに警備もかなり強そうだし」

「どうするんですか?」

ミハエルが隣に居るハルカに聞く。

「そうだね…とりあえず、兵器の事に関しては、あの人に———」


ハルカが途中で話を止めた。
外が妙に騒がしいかった。

「ウラジーミル・サンダル中尉はここに居ると聞いた!出してもらおうか!」

軍用車両の前でアメリカ兵が騒いでいるらしい。劉はそのアメリカ兵を押し止めていた。


「だから!そのウラジーミル何とかってのは居ないんだよ!」

「俺の目は誤魔化せんぞ!その車の中に居るんだろ!」

アメリカ兵は劉を強引に押し退けて、車のドアに手をかける。

「待て」

「ここで争いは止めてもらおう。それに、私の敵はお前達では無い」

「久しいな、ロット・イエーガー大尉」


車の中から中尉が颯爽と出てきた。
服がちゃんんとしていたら格好良く決まっていた。

「ふ、ふざけているのか…!」

イエーガー大尉は中尉の奇抜な格好を見て、こめかみに
青筋が浮き出た。

「ふざけてなどいない」

そうだ、ふざけてなんかいない。
この格好は不本意だ、今すぐにでも車の中に戻りたい。

しかし、中尉はグッと堪えた。
とりあえず、イエーガー大尉に私達を味方だと言う事を
分からせなければ。

「イエーガー大尉。私の敵は我が祖国、ロシアです、ここであなたと争うつもりはありません」

「…………」

イエーガー大尉は中尉に疑いの目を向けた。

それもそうだろう、こんな格好では説得力もクソもない。
だが、耐えろ。ここは耐えろ、とりあえずアメリカ兵のでも何でもいいから
ちゃんとした服が欲しい。


「……本当だな?」

「え?」

「本当にロシアを…自分の祖国を敵に…?」

「は、はい……」

「気でも狂ったか…?」

イエーガー大尉は頭をガシガシと掻いた。

「中尉、何かありました……」

建物の中からミハエルが出てきた。

イエーガー大尉と中尉がミハエルに視線を移すと同時に、野次馬達の中から
悲鳴が聞こえた。

民衆に扮したロシア兵が機関銃を持って中尉達の所に走って来た。

「裏切り者共め!殺してや———」

一人のロシア兵が機関銃を中尉に向けた途端、中尉の背後から轟音が響くと
ロシア兵の顔面に穴が空いて、木が倒れる様にゆっくりと倒れた。

後ろを向くと、大口径銃を持った劉が立って居た。

「いや、その…撃たなかったら、撃たれてたからさ」

罪悪感を感じたのか
身振り手振りで何かを誤魔化そうとする劉。

さらに民衆に扮したロシア人が向かって来た。
今度は機関銃では無く、サブマシンガンを乱射した。

中尉と劉は車の陰に隠れ、イエーガー大尉は素早く近くの建物の陰に隠れた。
ミハエルも建物の中に戻った。

ロシア兵は見境なく乱射した。
民衆達は血煙を出しながら地面に薙ぎ倒されていった。

「クッ!やめろ!」

中尉は劉が持っていた大口径銃を取り上げて、ロシア兵の胸に大穴を
空けた。

もう一人のロシア兵が慌てて中尉に銃を向けるが、建物の中から騒ぎを聞きつけた
ハルカが飛び出して来て、拳銃で眉間を撃ち抜いた。

「逃げましょう、中尉」

ハルカが運転席に素早く乗り込み、劉が前の助手席に迅速に逃げ込んで
中尉、ミハエル、遅れてイエーガー大尉が後部座席に乗り込んだ。


「何でアンタまで」

怪訝そうな目で劉がイエーガー大尉に問いかける。

「アメリカ軍のキャンプまで道案内してやるよ、嫌ならロシア兵に殺されるのを待つか?」

中尉はイエーガー大尉に向かって軽く頭を下げる。
ハルカは全力でアクセルを踏み付ける。

「そうそう、そこから右……チッ、大人しく行かせてくれそうにないな!」

イエーガー大尉は窓から身を乗り出して、拳銃を構える。
何事かと思い、後ろを向くと、数台のバイクに乗ったロシア兵達が
追いかけて来た。

「ミハエル!拳銃!」

ハルカから拳銃を渡され、ミハエルも窓から身を乗り出してロシア兵達を
迎撃する。

「間違って自分を撃つなよ坊や!」

イエーガー大尉はミハエルにそう言葉を投げかけ、的確にロシア兵を
撃った。
しかし、相手はバイク、その上この塗装されていない不安定な道で狙いがブレる。

中々当たらない事にイエーガー大尉は思わず舌打ちした。

「下手くそ!」

劉は耳を塞ぎながら、イエーガー大尉を罵った。

「うるせぇ!」

劉の暴言に頭にきたイエーガー大尉は、今度は運転している人間ではなく
バイクを狙う事にした。

ミハエルは正確にロシア兵達を撃ち抜いていく。

「オ、オイ!少し安全運転———どわぁ!?」

ハルカの無茶な運転に恐怖を感じた中尉はハルカに安全運転をするように
願い出ようとしたが、突然の急カーブで、中尉は横に倒れた。


「お前も何かしろー!」

劉は耳を塞ぎながら愚痴ったり、ハルカは完全にカーチェイスを楽しんでたり
イエーガー大尉が弾を外す度にいちゃもんつけたり、中尉は車酔いし始めたり
ミハエルは黙々と迎撃していたり、ラジオが壊れ出したり、車内は完全に
大パニックになっていた。

「ラジオ壊れた!」

「直せ!」

「直せたら直してるっつーの!」

「だったら何故直さないんだ!?」

「道具が無いからに決まってんだろ!このタコ!」

「何だと貴様!」

「オイ!黙れ!」

劉とイエーガー大尉の罵声に耐えかねた中尉は、二人を
黙らせた。

ハルカは思いっきりハンドルを右に切り、車は大きく曲がり
車体と建物の壁がスレスレの道に入った。

アクセルを力入れて踏み込み、出来る限り接触しない様に走った。
しかし、ちょっとしたカーブを曲がると別の車が通せんぼしていた。

「もういい!突っ込んじまえ!」

後ろからイエーガー大尉がハルカに向かって指示するが、ウラジーミル中尉の方を
見ると、ハルカに懇願する様な目で首を横に振っていた。

しかしここでちんたらしていたら、バイクが来る。
そこで思いついた。

ハルカは車をバックさせ、強くアクセルを踏んだ。

「お、おいおい!何してんだわぁあああああ!!!!」

この状況だと、後ろの連中は一番怖いだろう。
ミハエルと中尉とイエーガー大尉に心の中で謝罪しながらアクセルを
強く踏み続けた。

すると、後ろから鈍い音が3、4回音がした。
元の通に戻りブレーキを踏み、車を止める。


「や、やるな……」

イエーガー大尉がポツリとそう呟いた。
前を見ると血を流した追ってのロシア兵が倒れていた。

「よ、よし…車を出せ、それから、回りを警戒しろ」

ミハエルとイエーガー大尉は拳銃の弾を入れ替え、辺りを警戒し始めた。 
さっきから静かだと思って隣を見ると、劉は呆然としていた。


「そう、そこを曲がるんだ」

イエーガー大尉が指示した所を曲がる、すると、イエーガー大尉の目が
大きく見開いた。

アメリカ軍の基地があったとされる場所は完全に荒地と化し、その辺りに
破片やアメリカ兵の死体が転がっていた。

「何て事だ!」

イエーガー大尉は大慌てで車から飛び出して、基地の跡地に
駆け寄った。

「チクショウ!ロシアの野郎共だ!」

イエーガ大尉は声を荒らげた。

「落ち着け、イエーガー大尉」

後から降りた中尉がイエーガー大尉にそう呼びかけると、イエーガー大尉は
中尉を掴みかかった。


「落ち着け!?落ち着ける訳ねぇだろうが!」

「このミャンマーからロシア兵を追い出すのに三日もかからなかったけどな!ここミャンマーで俺の部下達がロシア兵の

ヤツらに虐殺されたんだぞ!気力を落ちかけてる兵士達を奮い立たせ、必死にロシア兵達を何日もかけて追い出したんだぞ!

そして俺達はここに死ぬ思いで救援したミャンマーに一時基地を置いた!一ヶ月経ったら俺達はアメリカに帰れたんだ!

そして、ロシアが降伏してくれれば何もかもハッピーエンドで終われたんだ!」

「それがこのザマだ!もう何も無い!報復が報復を呼んだ!どうして負けが確定しているのにそれでも戦い続けるんだ!?

いい加減にしろ!もう戦争は散々だ!」


イエーガー大尉は泣き崩れた。

こんな弱々しいイエーガー大尉を見るのは初めてなのか、中尉は動揺していた。

「中尉……そっとしてあげましょう」

ミハエルが中尉にそう呼びかけると、その場から立ち去った。
もう一度、後ろを振り返ると、イエーガー大尉は瓦礫の前から動こうとしなかった。

「しかし誰がこんな……」

劉が瓦礫の山を漁りながら言った。

「ロシア兵と考えるのが妥当だろう。それに、これは……」

中尉は瓦礫に埋まっているアメリカ兵の死体を眺めながら、考査した。



『貴方は私が守る』


中尉の脳内に、ある女の声が再生される。
これをやったのは彼女かもしれない、いや、しかし…もしそうだとしたら
彼女はここに来るのを予想していた?アメリカ軍に保護させない為に?
……まさか、な。

「中尉?どうかしたんですか?」

ハルカが中尉の顔を覗き込む。ハッとした中尉は「何でもない」と
言い残し、獣の様にウロウロし始めた。

「あ、中尉」

「何だミハエル」

「その格好のままでいいんですか?」

「……忘れてた」

ロシア軍が作ったと思われる壁に突撃しに行くのだ、流石にこの格好は
まずい。

そう思った中尉は瓦礫の中からロッカーが埋まってる事に気付くと、中尉は
慣れた手つきで瓦礫をどかして、ロッカーの中を開けると、アメリカ軍の軍服が入って
いた。


中尉は着替える為に車に戻った。

「報復が報復を呼ぶ……ロシアを攻める時は、報復すら出来ない様に徹底的にやらないとな」

劉がイエーガー大尉の後ろ姿を見てそう呟いた。

——————————————

中尉達は車で巨大な壁に向かって走っていた。


「そう言えば、あのアメリカ兵はいいのか?」

「イエーガー大尉のあの様子じゃ、まともに戦えない」

中尉は外を眺めながら劉に答えた。

暫しの沈黙の後、壁の付近に着いた。その壁を遮る様に巨大な工場があった。
すると、劉はこの光景を見て直ぐに察した。

「この工場はロシア軍が建てた物の様だな、どおりでこの辺は人が少ないと思ったんだ」

「確かに、ここはあまりにも人気が少なすぎるから不自然に思っていたが……とりあえず、この工場もついでに破壊して

おこう。科学兵器とか作られてたりしたら厄介だ」

「よし……じゃあ行こう」

「早速、仕事の時間か」


車から降り、ミハエルがトランクを開けて機関銃やらサブマシンガンやらを取り出した。

「よし、早速襲撃開始だ」

「正面から行くのか?」

「全滅したかったらな……」

劉の冗談を中尉は冷たくあしらった。

「二班に別れて襲撃する、私と劉は敵を陽動する。お前達はその隙に工場内に入れ」

「分かりました」


すると、中尉はトランクの中から登山用のリュックサックを取り出し、それを
劉に背負わせた。

「合流地点は……あそこ、そう中央のあの建物の屋上だ」

「それじゃあ、工場潜入は任せたぞ」

中尉はそう言い残し、劉と共に工場に走り出した。

裏口から工場の中庭に潜入した中尉は、中尉達に気付いた兵を素早く
狙撃して、兵士達は血煙を吹いて地面に倒れた。

「侵入——」

もう一人の兵士が助けを呼ぼうとした瞬間、劉が眉間を撃ち抜いた。

「しまった!陽動にならねぇじゃねぇか!」

「大丈夫だ、こんな時の為にこれだ」

中尉は劉が背負っていたリュックサックを下ろさせ、中から何やらコード線がゴチャゴチャした
物を取り出した。

「まさか…これ、爆弾か!?」

「そうだ」

「そうだって……お前、俺にこんな物を……」

いちゃもんを付けようとしたが上手く言葉に出なく、劉は黙った。

中尉は時限爆弾をセットすると、建物の中に投げ込んだ。
窓ガラスが割れる音と共に、建物の中から叫び声の様な物が聞こえた。

中尉と劉は猛ダッシュで建物から離れる。

そしてしばらく離れると、建物は一瞬にしてオレンジ色の光に包み込まれ
粉々になった。

建物からは真紅の炎と黒い煙が吹き出ている。

すると、工場地帯全体にサイレンが響き渡る、


「ここからが本番か…!」

爆発音が聞こえると、外で待機していたハルカとミハエルはこっそりと工場内に
潜入した。

中は科学薬品か何かの臭いが充満していたので鼻に刺激が走る。

すると上から防護服を着たロシア兵達が一斉にワラワラと工場の外から出ていくのを
確認した。

「よし、行こう」

工場の中は異様に広く、兵器でも隠せそうなぐらい広い。
上を見上げると機械がゴチャゴチャ吊られていた。


「……?これなんだろう?」

ハルカは茶色大きな袋に手を伸ばすと、袋が落ちて床に白い粉が広がった。

「………?」

その白い粉に手を伸ばそうとすると、ハルカの目の前にあったタンクが突然小さな穴が空いて
透明の液体が吹き出た。

後ろから防護服を着たロシア兵が拳銃を構えていた、再び銃をハルカに向けようとしたがミハエルが
持ってたショットガンで素早くロシア兵を撃ち抜き、射的の景品の様に倒れた。

「ありがとう、ミハエル」

「いえ……その液体は?」

タンクの中から次々と透明な液体が吹き出ている。
その液体が白い粉にかかると黄色くなり、やがて黒くなった。

すると白い粉…いや、黒い粉から煙が吹き出ると、膨張し初めて
黒い塊と化し炭になった。


「……濃硫酸か?」

「……それはブルガリア軍が置いていった『土産』だよ」

上にあるキャットウォークに、ロシア軍の将校の制服を着た
女が立っていた。

手元にはサブマシンガンを持っていた。


「キラ少佐…!?キラ・アーヴェン少佐ですよね…?」

ハルカがそう尋ねるとキラ少佐は黙って見下ろしていた。

「何故あなたがここに…!?あなたは日本奪還に向かってたハズじゃあ……」

「……そんなの頼んでも行かないわ、日本は超警戒体制に入ってるから犬死するだけ」

キラ少佐はハルカ達を見下ろしながらそう言う。

「……もう一度聞きますけど、何故、あなたがここに?ブルガリア軍とルーマニア軍の援軍とかに

何故行かないんですか?」


「………彼、ヴォロージャを守る為に来た」

「中尉を?」

「ハッキリ言って共産主義国と付き合うつもりは無い、だから資本主義国家にせっかくなれたロシアを

共産主義国に逆戻りさせた上層部の命令も聞くつもりもない」

「この戦争の原因は強欲な上層部のせい……戦争を勃発させたのは客観的に見てもロシアのせい」

「おかげで、ヴォロージャが危険な所に放り出された………」

キラ少佐は淡々と語る。
無表情だが、言葉に怒りも含まれている気がする。


「つ、つまり……少佐もロシアに反逆しようと…?でしたら私達と……」

「断る。貴方達ではヴォロージャを守れない、ヴォロージャを守れるのは私だけ」

「ヴォロージャを渡しなさい」


少佐はマシンガンを乱射して、ハルカ達の回りにあったタンクから液体が吹き出てきた。
総毛立ったハルカ達は脱兎の如く工場から出た。

工場を抜け出すと、工場の中からキラ少佐がマシンガンをコチラに向けながら
一歩一歩、距離を詰めて来た。

ミハエルはハルカの前に立ち塞がりショットガンを構える、しかし銃を向けらてる
にも関わらず、キラ少佐は眉毛をピクリとも動かさなかった。


「………!」

謎の威圧感に圧倒されたミハエルの手は震えていた。

「怖いの?」

キラ少佐は小さな子供に対して言う様な優しそうな声でミハエルに尋ねた。

「……!……!」

そして最終的にはショットガンとの距離、わずか3Cmの所まで
詰め寄った。

ミハエルは必死に引き金を引こうとするが、指が思うように動かなかった。


するとミハエルの頬にキラ少佐の拳が接触し、ミハエルの腹部を鋭いキックで
三回バウンドしながら後ろに飛ばされた。


「……ミハエル!」

するとハルカはキラ少佐が裏拳をしてきた事に気付いて、身を反らした。
何とか拳を避けれたが、キラ少佐は再び殴りかかってきた。


ハルカは両腕でキラ少佐のパンチを受け止めるが、キラ少佐は左手を懐に忍ばせて
拳銃を取り出した。

その事に気付いたハルカは後ろに下がって、助走を付けてキラ少佐にショルダータックルを
した。

キラ少佐は後ろ倒れ、ハルカはキラ少佐の腕を掴みかかって左手に持っている拳銃を
奪おうとした。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom