宮藤「鋼の乙女」 (97)
「自体は極めて深刻よ」
窓からアドリア海が一望できる作戦会議室にミーナの声が静かに響いた。
部屋の中心に置かれた大きな机の上を占領する地図、
それを囲むようにして立っているのは
第501統合戦闘航空団体長である彼女の他に三名。
坂本美緒、ゲルトルート・バルクホルン、エーリカ・ハルトマン。
その誰もが僅かな疲労を顔に滲ませ深刻に地図を見下ろす。
「新型ネウロイの存在によって
国境警備・哨戒線が今となっては無意味
いつ、どこから、どれだけの規模のネウロイが来るかわからん」
「それもそうだけど、やっぱり補給だよ。
弾も尽きかけ、ユニットのパーツはない、食べ物も薬もない」
「人員の問題もあるわ。整備班医療班ともに現在はないのと同じ、
現状宮藤さんとシャーリーさんに負担が偏りすぎてる」
「サーニャもだ。連日の夜間哨戒・交戦。
このままの頻度でネウロイが出没し続ければ、近いうちにココも落ちる」
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三々五々、状況を言い合ってはお互いの顔を見渡してため息をつく。
ここ数日幾度となく繰り返されたこの部屋での作戦会議はまたも同じ所に着地した。
「四面楚歌の八方塞り……だな」
額に手を当て、吐き出すようにバルクホルンが呟く。
それを否定する人間はこの場には居なかったし、
なによりも覆しがたい事実だった。
「あ、でも!」
筈だったのだが。ふと、思い出したかの様にハルトマンが声をあげた。
「ウルスラが前に新しい兵器の開発に着手して、
完成配備も近いって……」
「……それはいつの話だハルトマン」
「再結成直後だから……二月前」
ハルトマンの言葉にため息をついてミーナが問う。
「それを何故今更、とは言わないわ。
けどねフラウ、仮に最新の従来の物とは比べ物にならない
ユニットができたとして、この状況下でも基地に届くことがあっても……」
「それを装着するウィッチがもう限界寸前なんだ、
この戦況を好転させられる材料としては足りない……」
部屋の空気は煮凝りの様に停滞し、
各人に重く圧し掛かる。
「そういえば扶桑から増員の話も来ていたな」
「それは私も聞いているわ美緒。
けど、それもいつの話?」
可能性に期待はしたい。けれど最前線を任されるウィッチ隊として
希望的観測に縋る訳にも行かない。
一体どうすれば打破できるのか、まるで検討もつかない。
そうして、結局は会議は沈黙の内に終わるのだった。
―――
過去の功績から伝説と化していた第501統合戦闘航空団の二度目となる再結成
その501功績の立役者とも言える宮藤芳佳少尉の復帰。
この二つの吉報に、ウィッチ隊に限らず各国軍は大いに沸いた。
しかしそれも束の間の歓喜であったことを人類は知る。
それは地中を移動し、川を湖を苦もなく移動する新型ネウロイに寄るものが大きい。
彼らネウロイは奮起する人類を嘲笑うように突然現れ、
その猛威を大いに奮っていった。それも過去とは比較にならない頻度で。
501が再結成されてから二ヶ月という短い期間に出撃したは三十を超える。
二日に一度以上の頻度である。これは以前までの三倍以上になる。
哨戒線が実質役に立たず、24時間体制で複数のウィッチを哨戒に出さねばない上
固体自体も強力になり、多くの補給経路が潰されてしまったこの時。
人類の劣勢は誰の目にも明らかだったと言わざるを得ない。
――― ウィッチとネウロイ。戦いの歴史
―――
「シャーリー……」
幼さの残る。否、幼さそのままの声が格納庫に小さく零れ落ちる。
金属の触れ合う音だけが何時間も続く機械油の匂いが染み付いた格納庫。
「大丈夫だルッキーニ、大丈夫だ」
自分を姉の様に慕ってくれる最年少の少女に、
シャーロット・E・イェーガーは疲労の色濃い顔で答える。
その顔には傍目にも明らかな隈ができ、不眠不休で作業を続けていることが伺える。
「もう少しで修理が終わるから、待っててくれ」
長い作業で酷使された指先はパーツに引っ掛けたのか多くの傷があり、
汚れたオイルが染み付いて真っ黒に染まっている。
「そんなのいいよ! もう、シャーリーずっと寝てない。
このままじゃシャーリー……死んじゃうよ!」
慕う女性の疲れきった姿に、まだ心身ともに幼い少女であるルッキーニが叫ぶ。
「……なぁルッキーニ」
それを受けて、初めて作業の音が止まる。
ルッキーニがそれに気づき床に落とした視線を彼女に向けると、
いつになく真剣な表情で、それでいて自分を安心させるような優しい顔で
こちらを見つめていた。
「これは、私にしかできない。私ならできる事なんだ
私がやらなきゃいけない、いまは一人でも多く飛べなくちゃいけないんだ」
諭すように言って頭を撫でようとし、
汚れた手に気づきその手を引っ込め「わかるだろ?」と微笑む。
「だったら! シャーリーのユニットを先にしたらいいじゃん!
その方が弄り慣れてるし、私よりシャーリーの方が強いんだから!」
それでも目にたっぷりと涙を溜めてルッキーニは目の前の女性に言う。
いつ見てもここで一人作業に耽っていた彼女を見続けていたルッキーニにとって、
それは怒りよりも懇願に近い、悲鳴だった。
「今の私が飛んでも、役には立たないよ。
いま空に必要なのは私じゃなくて攻撃魔法を使えるお前なんだ」
訥々と言い聞かせるような言葉。
「適材適所って奴だ。……それに」
「シャーリー……?」
ルッキーニから目を逸らし、滑走路の伸びた先、
いまは閉まったシャッターの更に向こうを見つめる。
「仮に私がこうして作業を続けていて、結果私の眼が腐って落ちたってさ、
自分の身を省みて整備を怠って誰かが怪我したり、命を落としたりするよりずっといい。
もしそんな事になったら、私は私を許せない。だから、さ」
小さくため息をつき、再び微笑む。
そうして区切った言葉の先を紡ごうとしたとほぼ同時に。
――基地内に大きな警報が鳴り響いた。
「なっ……」
「ネウロイっ!?」
警報と共に赤い警告灯がともり、壁も床も天井も紅く染まる。
それを受け、止めていた手を再び動かし始めるシャーリー。
「くそっ! なんでっ! なんであとほんの数分待ってくれねぇんだよ!」
―――
『現在地中海方面からタランド上空へ中型の飛行型ネウロイを確認。
哨戒任務中のリーネさん、エイラさんが交戦中。至急応援に向かってください』
ミーナ隊長の緊急放送が流れ、僅かな休息の時間が一瞬に緊迫した物に変わる。
先ほどまで物静かだった基地内が騒がしくなる。
「どうせ殆ど残ってないんだ! 弾はあるだけ持っていけ!」
「ペリーヌ・クロステルマンでます!」
「トゥルーデ! パラベラムってこれで終わり!?」
「MGの弾がまだある! そっちメインにしろ!」
警報の中大声が飛び交い残り少ない銃と弾を担ぎ、
疲労した身体に鞭打って一人また一人と空へと飛び立って行く。
そんな中一人が未だ作業中のシャーリーに近づく。
「シャーリー」
パンツァーファウストを背中に背負い、
MG42を片手に抱えたバルクホルンは中を開いた状態のユニットを見つめてから。
「まだ、無理か?」
と、躊躇いがちに聞いた。
無論彼女に負担をかけてしまっている事も、
無理を言っているのも十分理解している。
まるで急かす様なこの言葉を言うのも心苦しい。
が、それでも立場上聞かなくてはならない。
「悪い。あと十分はかかる」
「すまない……」
「なんだ? バルクホルンが私に頭下げるなんてな、珍しい事もあったもんだ」
軽口を叩くシャーリーにバルクホルンは再び小さく「すまん」と呟き、
自らのユニットを装着して飛んで行った。
―――
時間を僅かに遡って、カンパニアはナポリ上空。
高度3000ftを二人のウィッチが飛行していた。
一人は対装甲ライフルを、もう一人はスオミを構え
周囲に忙しなく視線を回す。
「……いませんね」
「必ずどっかに居る筈なんだけどなー」
「エイラさんの占いだとなんて?」
ライフルを構えたウィッチの言葉に
もう一人がウエストポーチからタロットカードを取り出す。
「つっても哨戒前にやったんだよなー」
ぼやきながら風に気をつけて手元に持ってきたカードを覗く。
「ほら、審判の逆位置だ」
苦虫を噛み潰したような表情でバディにカードを示す。
「逆位置って……悪い意味なんでしたっけ?」
「一概にそうとは言えないけど、審判に関してはそうだな。
この場合は悔恨とか行き詰ってるって意味だ」
それと、と付け加え。少女はスオミを前方に突き出す。
「悪い報せ、とかな」
示された先、ロマーニャの土踏まずになるタランド湾方面に広がる雲。
そこには何十キロと離れているにも関わらず僅かながらに目視できる程に、
黒い点が幾つも浮かんでいた。
「行くぞリーネ」
「はい!」
言いながらカードを仕舞おうとして、ふと気づく。
「あれ?」
「どうしたんですか?」
「二枚、重なってる……?」
敵に向かって加速していくなか、手の中のカードを再度確認する。
「……戦車の正位置」
「意味は?」
「……援軍、勝利なんだな」
「えっと……まとめると?」
正反対の意味を持つ二つのカードを聞いて
タロットに詳しくない彼女は首を傾げて要約を求める。
「あーつまりだな、めっちゃしんどいけど
最終的にはなんとかなる。って所だな」
そう言って二人顔を見合わせて笑い、
打って変わって引き締める。
みてるぞー
>>17
愛しています
俺も愛されたい
>>19
I LOVE YOU
そして複数の飛行型ネウロイが羽虫のように
飛び回る方向へ加速して消えていった。
―――
「って、本当にしんどいんだなー!」
中型サイズのネウロイに向けてスオミの引き金を引きながら叫ぶ。
貴重な9mmバラベラム弾がネウロイの表面に当たり硬質的な表層を削り取っていく。
「エイラさん! 地上の新型は多分これで全部です!」
超高々度から地中を移動する小型ネウロイを排出する新型を
黙々と狙撃し続けていたリーネが固有魔法の特性を生かして
囮をしていたエイラに声をかける。
「わかった! じゃあ一度基地方面に一定の距離を保ちつつ後退!」
言って高度を上げリーネの腰を抱いてその場を離れる。
「き、基地にですか!?」
「このままじゃみんなが来る前にへばっちゃうって!
こっちからも移動して合流を早めるんだよ!」
「了解! ってエイラさんなんで私抱きしめられてるんですかぁ!?」
「回避は私に任せろー!」
基地の存在するアブルッツォ方面へ飛行する二人。
その後ろを一定の距離を置いて追う黒い無機質な影は、
二人のウィッチに激しく紅い閃光を飛ばす。
「きゃあっ! こ、これ本当になんとかなるんですか!?」
身体ギリギリ、紙一重を閃光が通り悲鳴を上げるリーネ。
彼女は自分の意思で回避しているのではなく、
エイラに導かれるままに移動している為恐怖が拭えない。
「私の占いを疑うつもりかー?」
対するエイラはいつも通り。
攻撃を放つネウロイの方など見向きもせず、
味方の機影を探して前方を見つめる。
「……見えたっ」
―――
「よしっできた」
同時刻、501基地格納庫にて。
静まり返った空間に歓喜の声があがる。
「本当っ!?」
「あぁ! 少し遅れちまったけど、まだ間に合う筈だ!」
ハッチが閉められコードが外され、
カタパルトにセットされたG55Sストレーガ。
今まで弄られていてた為、機械油汚れが目立つものの、
破損していた部分はキチンと修復されている。
「ありがとうシャーリー、じゃあ私行ってくるね!」
礼を言いブローニングを担ぎ、直ったばかりのユニットに飛び乗る。
本当ならまだまだ色々言いたい物の、いままさに先に向かったみんなが戦っているかもしれない。
「っと、ちょっと待てルッキーニ!」
即座に魔翌力をエンジンに漲らせ飛び立とうとするルッキーニを、
慌てて呼び止め立ち上がる。一刻を争う状況で呼び止められ、
一体なにごとか、新しい問題でも見つかったのかとユニットを確認する。
「いくら全開でぶっ飛ばしても流石にこれだけ遅れると
普通に追いつくのには時間がかかる」
そんな最年少の少女を見て微笑みながら、
シャーリーは彼女のユニットに手を添える。
「いつもの、いくぞルッキーニ」
「えっ、でもシャーリー!」
「いいから、用意しろ」
言われて、慌て前を向きエンジンを回す。
それと同時にシャーリーの足元にも青く光る魔方陣が広がる。
「まだだ、まだ踏ん張れ……」
「……」
エンジン音が高まり、風が二人の周囲を吹き荒れる。
「よし、行けっ! 私の分までっ!」
「うんっ!」
爆発音が格納庫を震わせ、ストレーガはルッキーニを乗せ
とんでもない速度でぶっ飛んで行く。
「なっ、一体何事だ!?」
エンジン音に導かれた坂本美緒が
そのタイミングで格納庫へやってきて驚愕の声をあげる。
「……おいっ、シャーリー!」
暴風が収まり、顔にやっていた手をどかし
そこで美緒はカタパルト上に倒れたシャーリーを見つけ駆け寄る。
「んっ……少佐か……」
「さっきのはルッキーニか? 一体なにをしたんだ?」
「あぁ、……ありったけの魔翌力で加速魔法をかけてやったんだ。
まぁ勢いが良すぎて風に私も吹っ飛ばされちゃったけどさ……」
ははは、と乾いた笑いを零す。
「シャーリー……、すまない。よくやってくれた、いまは休んでくれ」
「そうさせて、……もらうよ」
言うが早いか、美緒の腕の中で寝息を立て始める。
疲労の色濃いその顔には、しかし満足気な物も見受けられる。
「なっ、一体何事だ!?」
エンジン音に導かれた坂本美緒が
そのタイミングで格納庫へやってきて驚愕の声をあげる。
「……おいっ、シャーリー!」
暴風が収まり、顔にやっていた手をどかし
そこで美緒はカタパルト上に倒れたシャーリーを見つけ駆け寄る。
「んっ……少佐か……」
「さっきのはルッキーニか? 一体なにをしたんだ?」
「あぁ、……ありったけの魔翌力で加速魔法をかけてやったんだ。
まぁ勢いが良すぎて風に私も吹っ飛ばされちゃったけどさ……」
ははは、と乾いた笑いを零す。
「シャーリー……、すまない。よくやってくれた、いまは休んでくれ」
「そうさせて、……もらうよ」
言うが早いか、美緒の腕の中で寝息を立て始める。
疲労の色濃いその顔には、しかし満足気な物も見受けられる。
saga入れんの忘れてたわぁ
「美緒……?」
シャーリーを抱き上げ、仮眠室に連れて行こうとすると。
背後から不意に名前を呼ぶ声がした。
「ミーナか」
振り向けば、ミーナが扉から顔を出している。
――彼女は戦闘には参加していない、
シャーリーの手には負えない程に以前の戦闘でユニットが大破した為だ――
きっと、自分と同じくエンジン音を聞きつけ、駆けつけたのだろう。
「……見ての通りだ。すまないが仮眠室に連れて行くのを手伝ってくれ」
「えぇ、わかったわ」
軽く頷いてこちらに近づいてくる。
「……戦況はどうなっているんだ?」
仮眠室に向かう廊下を二人で歩く途中、
ぽつりと呟くように聞く。
「ジャミングが多くて細かい事はわからないわ。
ただ、エイラさんとリーネさんが合流を急いで
こちらにネウロイをひきつけながら戻ってきているみたい」
「……芳しくないな」
「それはずっと前からわかっていた事じゃない」
ため息が二つ重なる。
「……ついたわよ」
「あぁ」
自然とお互いが無言になり、そのまま仮眠室へつく。
その部屋のベッドにシャーリーを寝かし、足早に部屋を去る。
「すまないミーナ、助かった」
「いいえ、べつに構わないわ。
……じゃあ私は管制室に戻るけど……」
「そうか、わかった」
「……あまり、思いつめないでね」
言って、お互い別の方向へ歩いて行く。
ミーナは上の階へ、美緒は来た道を戻り格納庫へ。
「……思いつめるな……か」
がらんとした格納庫。
いままさに皆が戦っている最中、
自分はただただ帰りを待つことしかできない。
「それは、……無理な相談だミーナ」
シャーリーはその知識と技術を使って、
いまのいままで働いてくれていた。
エイラはその固有魔法の特性上、
少人数でやらざるを得ない昼間の哨戒ででずっぱりだ。
リーネの射撃は弾を温存しなくてはならない現状で、
最小限の弾丸で確実に敵を仕留める大事な役割を持っている。
ハルトマン、ペリーヌ、ルッキーニの攻撃魔法を使える三人は
言うまでもなく戦闘の要だ。
サーニャは夜間哨戒を宮藤は怪我人の治療を一人で受け持っている。
バルクホルンは自分もミーナも居ない戦場で現場指揮を取っていて、
そのミーナも501の隊長として軍上層部やネウロイと戦い、ユニットが大破するまで働いた。
「私はっ、なぜ、飛べないんだっ!」
壁を力任せに殴る。鈍い音がして、拳に痛みが走る。
が、それよりもどうしたってこの心のほうが痛い。
「最小限の弾しか使えない現状!
コアの位置を見破れる私の眼が! 弾などいらぬ私の刃が!
必要な場面ではないのかっ!? なんで、なんで私はあそこへ行けないんだっ!」
二度、三度。やりきれない憤りを、
溢れそうな悔しさを、積もる罪悪感をぶつけるように拳を叩きつける。
「なぜ……」
やがてそれは嗚咽となり、
誰も居ない格納庫で美緒は壁に向かって誰にも知られずに涙した。
覚悟を決めた筈だった。
わかって戦い続けていた筈だった。
魔力が消え、ウィッチとして飛べなくなっても
それで空が飛べなくなったわけではないと。
「くぅぅっ……」
本当に”筈”だっただけ。
自分の覚悟とはこんなものかとみっともなくなる。
自ら全てを理解した上で手放した力が
こんなにも求めて止まない存在になるだなんて思っても見なかった。
けれど、いくら泣いて騒いで手を伸ばしても。
手の内に戻ってはこない。
それがわかっているから、また涙がこぼれる。
あぁ、そういえば>>1で言い忘れてたけど
この作品ってクロスオーバーがあるのよね
萌え萌え二次大戦というゲーム
マイナーだから二次大戦の戦闘機、戦車、戦艦が擬人化した
戦略シミュレーションということだけ知ってればよいかと
―――
「あれ?」
プーリア州に入りダウニア山地を越えた所で
エーリカが不意に不思議そうな声をあげた。
「どうしたハルトマン」
「あれもしかしてエイラじゃない?」
前方やや下方を眼を凝らしながら指を指す。
「まさか、まだタランドまではずいぶん距離がありますわよ?」
「もしかしてもうエイラさんとリーネちゃんがネウロイ倒して
帰還してる途中だったりして」
「もしそうならミーナから連絡が入っている筈だ、
奴等が居なければ問題なく無線が使えるんだからな」
言いながら眼を凝らせば確かに雲に紛れて曖昧ではあるが
黒点が複数確認できる。そして注意して見れば、時折紅い光が飛んでいる。
「……攻撃を受けている!?
そうか向こうからこっちに飛んできたのか。
数は確認できないが、敵は相当数いると推測できる
総員戦闘準備だ! ペリーヌはハルトマンの両機に入って
小型機を、宮藤は私の両機に入れ! 」
「了解!」
手早く指示を飛ばし、菱形編隊で飛んでいた四機が
二機ずつ二手に分かれる。
この間にも向かい合って高速で移動している影はあっという間に近づいてくる。
僚機
くそっ、こんな単純な誤字とかしにたお
全員が銃を改めて構えなおし、
高度を下げつつ二名の仲間とその向こうの敵に向かって飛んでいく。
「各機速度落とさずそのまま、エイラとリーネとすれ違うと同時に攻撃開始」
「了解」
言って、風の切る音が聞こえるのみになる。
向こうも早くにこちらに気づいていたようで、迷わずこちらに直進してくる。
そして二組の間をすり抜けるように過ぎ去り。
「攻撃開始!」
破裂音による四重奏が始まった。
それを背後に、大きく弧を描くように上昇し始めるエイラ。
「しっかり捕まってろ、このまま180度ロールして上空からみんなの援護に回る。
普段私がサーニャにやってるみたいに回避は担当するから
リーネは射撃に集中してくれればいいんだな」
「は、はい! わかりました」
途中雲を引きながら上昇し、
ポジションを確立させ紅い閃光と銃弾。
そしてネウロイと四人のウィッチが飛び交う戦場の全てを視界におさめ
スコープを覗き込む。
一方それをささえるエイラはおもむろに目を瞑り。
己の予知魔法が導くままに時折こちらへ飛んでくるビームを回避する。
目まぐるしく動く空の戦い。
特に小型機は小回りが利き、少ない弾丸で仕留めるのは難しい。
「行くよペリーヌ! せーの!」
故にこちらの人数が増えた事に反応して
あちこちに分散する前にできる限り数を減らしておきたい。
「Sturm!」「tonnerre!」
その為二人は戦闘が始まるや否や、
固まっていた小型機の塊に二人の攻撃魔法を同時に叩き込む。
風が渦となりネウロイを巻き込み、その渦に合わせて雷が走り
次々とネウロイを貫く。
「よしっ! 一気に削れた!」
「地上型はお二人が先に片付けてくれたみたいですわね」
「うん、さっさと終わらせるよ!」
―――
―――
早く、速く、そして疾く。
いままで感じたこともない速さでルッキーニは飛んでいた。
空気の壁を全身に感じて、それでも瞬き一つせず飛んでいた。
シャーリーが自分にかけてくれた加速魔法は途中で切れることもなく、
ルッキーニを亜音速で飛翔させ続けた。
あの身体でこれだけの魔力を使った彼女の事が気にならない訳じゃない。
けれど、ユニットにこびり付いた黒い油の手形が、振り向くことを許さない。
彼女はやるべき事をやりきり私を飛ばせてくれた。
なら私もやるべき事をやらなくてはならない。
自分の胸にたっぷりの魔力を集める。
到着と同時に最大の一撃を決める為に。
―――
―――
一方その頃、ロマーニャモリーゼ州近海にて
一葉の戦艦がゆっくりと北西へと進んでいた。
「もう少しで第501統合戦闘航空団基地かぁ……」
その甲板上に、二人の少女がぼんやりと空を見上げている。
「まさか本当に我々が501に配備される事になるとはな」
「ねー。喜び半分怖さ半分って感じ」
物々しい戦艦に似つかわしくない
端正な顔立ちをした二人の少女は顔を見合わせて笑う。
ただその二人の少女はそれ以上に似合わない、
金属製の羽を一対背中から生やし
一人は魚雷を、もう一人は日本刀を腰に携えていた。
「こういう時はふがくの大胆さが羨ましいよ」
「まったくだ。……で、そのふがくはまだ寝てるのか?」
「そうみたいだよ。もう少しで着くって言うのに暢気だよね。
私なんかもう緊張しちゃって昨日から寝れてないよ」
「はは、ナナは宮藤少尉のファンだからな」
「うん! 扶桑の誇りだよ!」
「テンション上がるのはいいが、我々に取っては直接の上官になる。
気をつけろよナナ」
「わかってるよ~レイ」
少女の外見と、戦艦という場所、
和気藹々とした会話とその装備。
どうにもちぐはぐな二人はまた笑う。
そこへ、一つの警報が飛び込んできた。
http://up2.pandoravote.net/img/pan2ji00163326.jpg
ふがく
http://up2.pandoravote.net/img/pan2ji00163327.jpg
ナナ
http://up2.pandoravote.net/img/pan2ji00163328.jpg
レイ
今日はここまで
今日はお休み
「うわぁっ!?」
「敵か!」
突然鳴り響く警報に二人は空を見上げ身体を強張らせる。
しかしいくら目を凝らしても敵の姿は目視できず、すぐに警報も収まった。
「なんだよぉ、もしかして誤報?」
一人がそう言いながら頬を膨らまし不満を漏らす。
『零式・九七艦攻・富嶽の三機は至急艦橋へ集合するように。
繰り返す―――』
その直後、僅かに罅割れた声がスピーカーから響く。
「……ただの誤報じゃないようだな」
「みたいだねぇ」
戦闘機の名前が呼び出された違和感のある呼び出しに、
二人の少女は肩を竦め走り出した。
―――
ノックを二回すると中から朗らかな女性の声で、
「はいってどうぞ~」と聞こえてきた。
「零式艦上戦闘機レイ入ります」
「同じく九七式艦上攻撃機ナナ入りまーす」
名乗って中に入ると机に腰掛けた男と
先程の声の主であろう大人の女性。
それに白髪の少女がいた。
「二人ともおそーい」
「ふがくを探してたんだよー」
「まさか先に来ているとはな」
「こほん」
と、机に座っていた男が咳払いをして談笑を止める。
「……これから、君達にダウニア山地へ向かってもらう」
あー。と小さく呟いてから少し言いずらそうに
三人の少女に向かってそう言った。
「出撃ですか。では、先程の警報は」
「無論誤報などではない」
「それならそのまま出撃命令だせばいいじゃん。
なんで一々呼び出されたの?」
「そうだそうだぁ」
「それは私から説明させてもらうわねぇ」
機を待っていたのか今まで黙っていた女性が一歩前にでる。
思ってた以上に鋼の乙女が動かしにくい
明日が二週間ぶりの休みなので
今日の夜からまたがんばります
「えーと、そうね。みんなをすぐ出撃させなかったのは理由があるの」
頭の中で言葉を組み立てながら話しているのか、
おっとりとした喋り方が一層際立ちどうにも場が締まらない。
「ネウロイの近くにウィッチの反応も複数確認できてね」
「……既に交戦状態という事ですか?」
「あぁ~、だからすぐ警報切れたんだ」
得心が行ったとばかりに頷くナナとレイ。
しかしふがくは少し唸ってから首を傾げ質問をする。
「そのウィッチの反応って、位置から考えたら501だよね?
じゃあ私達が出撃する必要なくない?」
「この船が運んでいるのはあなた達だけじゃないでしょう?
ユニット、武器弾薬。医薬品に食料に日用品に至るまで、
全てが底をつきかけている筈よ」
「そっか! じゃあ今501って」
「ベストコンディションからは程遠いという事か……」
それぞれが状況を理解したのを見て取って男が再び口を開く。
「うむ。だから君達に応援に向かってもらいたいのだ。
新米としてではなく、あくまでも戦力としてだ」
「……了解しました!」
「了解!」
「りょーかい」
三者三様。司令の言葉を受け、
敬礼をすると同時に部屋から飛び出し走り出していった。
「では、司令私も万一に備えて待機していますので」
「頼むよあかぎ君」
「はい」
そして部屋に残ったのは一人。
「……ウィッチにせよ。鋼の乙女にせよ、
少女に戦をさせねばならないとは……」
ぽつりと呟いた男の言葉を聞くものは居ない。
―――
「くそっ、硬い!」
「バルクホルンさん危ないっ!」
人数及び弾の少なさが焦りを否が応にも沸き起こす。
それは小さな焦りで、けれど大きな隙になる。
「すまない宮藤!」
「はいっ!」
目の前に広がる大きなシールド。
弾ける閃光。その向こうの中型ネウロイは攻撃をしながらも
貴重な弾丸で削り取った表面を再生していく。
「こんなとき……」
少佐が居れば、と口にしそうになり慌てて口を紡ぐ。
「うわっ、やばっ……。総員ネウロイから距離をとれ!」
そのとき、上空に居たエイラが大声で叫んだ。
「どういう事?」
「私に聞かないでください!」
「予知か!?」
「うわっ、向こうからなんかきます!」
轟音に混じって聞こえた声にそれぞれが困惑していると、
宮藤が遠くを指差す。それに続いて再び上空から。
「ルッキーニが突っ込んでくるぞーっ!」
遠くからこちらに向かって一直線に飛んでくるそれは、
光の尾を引いて弾丸そのものだった。
それを目視し、エイラの言葉の意味を理解した四人は。
「さ、散開!」
バルクホルンの言葉と同時にネウロイから距離をとった。
直後、光の弾丸は速度を落とさず中型ネウロイを貫き。
複数のネウロイが固まる中心に到達すると、
大きな光が全てのネウロイを巻き込んだ。
「なんていう威力だ……」
「ルッキーニちゃんすごい」
真っ白な、目も眩む光の奔流。
それがやがてゆっくりと晴れていくと、
先程まで居た黒い敵の姿は消えうせ。
「えっへーん!」
胸を張って嬉しそうにVサインを遠巻きに見ていたみんなに向ける
ルッキーニの姿だけがそこにあった。
「すごいよルッキーニちゃん!」
散開した面々が賞賛の言葉をかけながら、
最年少のルッキーニに駆け――という表現は
少々誤りではあるが――寄る。
「あんな事できたんですのね」
「にしし、なんかできちゃったー。
ってもう終わり? 来るの遅かった……?」
喜色満面という顔でなんとない風に言った後、
周囲を見渡して気まずそうに現戦闘指揮官であるバルクホルンの顔を伺う。
「いや、そんな事はないぞルッキーニ。助かった」
「そーそー、ナイスタイミングだったぞ」
ルッキーニの頭に手を置いてバルクホルンは笑い、
ハルトマンは背中を叩く。
「そっか、……ん~でもシャーリーにも頼むって言われたし、
もちょっと暴れたかったかなー」
四人に揉みくちゃにされ、嬉しそうに笑いながらそういうルッキーニ。
「そうか、じゃあそんなルッキーニには朗報だな。
私達には悲報だけどさー」
と、そこに遅れて高高度にいたエイラとリーネが顔を引き攣らせながら降りてきた。
「早々に第二陣の到着みたいだぞ」
エイラの憂鬱そうな声に
全員が同じタイミングでルッキーニを見ていた視線を空へ向ける。
「……総員、残魔力残弾の報告をしろ」
こちらへゆっくりと向かってくる
飛行型ネウロイの姿を確認し、バルクホルンが口調を厳かに改め指示を出す。
「み、宮藤芳佳! 魔力はまだ余裕があります!
残弾は……100ありません」
「ペリーヌ・クロステルマン。魔力は帰りを考えなければトネール4~5回程ですわ。
弾は宮藤さんと同程度かと」
「エーリカ・ハルトマン。両方ペリーヌと同文!」
「うにゅ、私はいまきたばっかりだから弾も魔力もいっぱいある!」
「あー、私とリーネは正直きっついぞ。
固有魔法の性質上戦闘中は発動しっぱなしだし、あと五分も全力戦闘は無理ダナ」
「ボーイズの弾もあと十発程しかありません……」
矢継ぎ早に上がってくる報告。
それは正面から受け止めれば絶望的の一言に尽きる。
「そうか。……ちなみに私は」
バルクホルン空に向けMG151の引き金を引く。
乾いた破裂音が二度して、すぐに沈黙した。
「これでめでたく完全に弾切れだ」
言って、肩をすくめる。
その顔にはしかし諦めは見受けられない。
「どう思う?」
やれやれ。と言いたげな表情で周りの部下達を見渡す。
「なんとかなりますよ!」
「と、言うよりしなくてはいけないんですのよ」
「敵は大型一体だし、なんとかなるっしょー。
ねぇルッキーニ」
「うん! 疲れてるみんなの分私ががんばるよー!」
「そうですね! エイラさんの占いでも最後にはなんとかなるってでてました!」
「お、おう。そういやそうだな。ま、帰りは歩くかもしんないけどなー」
誰一人、その顔に暗いものを浮かばせず鼓舞しあう。
「よし! フォーメーションを組んで速攻でかたをつける!
ルッキーニ! ハルトマンの三番機位置に入れ!
エイラは引き続きリーネのサポート頼む。……弾はまだ残ってるか?」
「まぁ多少は」
「なら宮藤に渡してやってくれ」
「了解」
「ハルトマン、ペリーヌ、ルッキーニの攻撃魔法が使える三人はネウロイの注意を引き付けてくれ。
私と宮藤でコア付近の外殻を削る。とどめはリーネ頼む」
「はい」
「トゥルーデ弾ないんじゃないの?」
「私だって攻撃魔法でこそないが弾が切れたからといって戦えない訳じゃないのでな。
……では、総員攻撃開始!」
「了解!」
音信不通ですみません
インターネットが止まってしまって
今日給料でたから払ってきました
悠々と雲を引き移動する要塞と言って過言ではない黒き巨体。
その流線型の異形に七人のウィッチが向かってゆく。
先行するハルトマン、ペリーヌがお互いの攻撃魔法をあわせて
雷の暴風を巻き起こす。旋風はネウロイの右翼部分を大きく削り、
周囲に淡く光る破片を撒き散らす。
その隙にルッキーニが下方へ回り込み7.62mm弾を惜しげなく打ち込む。
魔力を込められた弾丸は黒い表皮を貫きいくつもの穴を穿つ。
「ほーらこっちだよー!」
言って挑発するようにふらふらと飛ぶルッキーニに向かって
紅い閃光がネウロイの身体から放たれる。
が、それは追いついたハルトマン、ペリーヌのシールドに阻まれ周囲に飛び散るだけに留まる。
「食いついた!」
「このまま攻撃をこちらに向けますわよ」
「あーい!」
そのままネウロイの影に入る三人に自然と攻撃は集中し、
代わりに攻撃の手が揺るんだ上空から宮藤とバルクホルンの二人が距離を詰め。
「でぇぇいっ!」
気合一閃。バルクホルンが
MG151のノズルを持ち、銃底を力強く胴体中央に叩きつける。
その衝撃は大きなクレーターを胴体に作り、
さらにネウロイ巨体が大きく下に沈みこむ。
「ちっ、この辺りにはないか」
「あ、危ない!」
迎撃の為に近距離から放たれる閃光は宮藤の巨大なシールドによって弾け、
その間にもダメージは確実に修復されていく。
外側から修復されていくクレーター。
その中心、最も深く抉れた場所にシールドで身を守りながらスオミを撃ち込む。
そうして辿り着いた最深部に。
「あったっ! ありまし――!」
光輝くネウロイの動力源。
宝石のようなそれを見つけられ、必死になっての一撃か。
いままでで一番大きな閃光が宮藤を襲った。
「宮藤ぃっ!」
シールドで辛うじて防いだものの衝撃で宮藤は射程距離外まで吹き飛ばされる。
「だ、大丈夫です! それよりリーネちゃん!」
「うん!」
あーてすてす
次の休みは土曜日です
マジで時間ない
あーくそ
二転三転と回る視界。
追撃をギリギリで交わしながら上空のリーネに声をかければ、
力強い返答が聞こえてくる。
「あたって!」
乾いた火薬の破裂音。
エイラの未来予知による位置取りとリーネの弾丸操作。
誰もが命中と、ネウロイの撃破を疑わなかった。
「っ、やばい!」
しかし先読みのできる彼女だけは違った。
「きゃあっ!?」
絶対に回避のしようがない弾丸。
裏を返せば確実に自分のコアに向かって飛んでくる弾丸。
それを理解した上でネウロイが行動したのかは誰にもわからないが、
とにかくネウロイはリーネが引き金を引くのと同時に閃光を放った。
コアからリーネへ向けて、弾丸とまったく同じ軌道と使って。
いくら魔法力を込められているとは言え、鉛の13.9mm弾。
正面からぶつかり合って巨大な閃光を貫きコアに致命的ダメージを与える事は不可能に近く。
紅い閃光は弾丸を消滅させリーネとエイラの元へ一直線に向かっていく。
「二人とも無事かっ!?」
狙撃直後の硬直と緊張の解ける一瞬を狙われた一撃。
全員に同様が走る。しかしそれ以上に慌てた、顔面蒼白とも言える状態で叫んだ。
「……銃がっ!」
予想外の展開と同時にエイラに下方向へ強く引っ張られ、
リーネは持っていたボーイズを投げ出してしまったのだ。
結果、二人とも回避はできたものの、
空中に投げ出されたボーイズ対戦車ライフルは閃光によって消滅した。
あーてすてす
一秒、一瞬。
僅かな間にも限られた時間・魔力・弾丸で露出させたコア周辺の外殻は修復していく。
わかっていた筈なのに、しかし要とも言える戦力が突然と消失した事実に、
彼女達はしばし硬直してしまった。
「うわぁぁっ!」
「宮藤!?」
最初に我に返ったのは魔力も弾丸もまだ多少の余裕がある宮藤だった。
決め手となるリーネのライフルが消えた今、距離的に自分がいかなくてはと
震電の魔道エンジンに限界まで魔力を送り込む。
「くそっ、全員宮藤を援護しろ! 最後まで諦めるな!」
現状戦闘指揮を預かるバルクホルンが出遅れた自分に歯噛みしながら
指示を飛ばし、静止したウィッチ達が再び舞いだす。
けれど、誰もが間に合わない事を理解していた。
「でぇぇぇいっ!」
コアの半分以上が隠れ、なお射程距離外に存在するネウロイ。
さらにはネウロイ自身もここを凌げばと理解しているのか、
ゆっくりと距離をとり始める。そんな絶望的な戦況の中、
不意に上空から聞きなれぬ声が。
「な、なんだ!?」
そして戸惑うウィッチ達の頭上を800kg爆弾が通り抜け。
ネウロイに勢いよく着弾した。
その威力は戦艦の主砲にも匹敵するのではないかという威力で、
空気が戦慄き地面が震える。
「なんだこれ!?」
「応援ですのっ?」
「馬鹿な、こんな威力の兵器など」
ビリビリと痺れの残る空気の中突然の事態に場はまたも混乱する。
さらにもう一機。
おそらく先程の爆発を起こしたのとは別の機体が高速で
雲を引きながら上空を飛び、ネウロイの上で静止する。
「あ~、もう面倒」
ぼそりと小さく呟いた言葉は誰にも届かず、
その身体のどこに隠していたのかという量の爆弾を投下する。
悲鳴のようなネウロイの声。数え切れぬ爆発音。
衝撃に耐え切れずネウロイの巨体は大きく沈み込む。
「宮藤少尉! これを!」
目の前で繰り広げられる事態に、呆気に取られていると
さらに別の機体が大声をあげながら宮藤に近づき九九式を手渡す。
「あ、あなたは?」
「詳しいことは後ほど、いまはあれを!」
「……なにがなんだかわからないけど了解!」
雪で回線が切れる(物理)
雪で修理が遅れる
死ねよー
ちょっとこの天気なんなんですかね
直してもらったばっかりなんですけど
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