先輩「男くん、付き合って下さい」(647)

PCに以降

◆◇教室◆◇

男「あ、はい。どちらに行かれるんですか?」

先輩「えっ?」

男「えっ?」

先輩「……」

先輩「いや、そうじゃなくて、私と彼女彼氏の関係になってください」

男「そんな無理ですよ先輩」

先輩「無理じゃないよ、男君の事好きだもん」

男「俺も先輩のこと好きですけど・・・」

先輩「やった、じゃあ両思いだ!」

男「だめですって、だって先輩も男じゃないですか」

男「えっと……告白ですか?」

先輩「いいえ」

男「あー、からかっただけでしたか!」

先輩「違いますよ」

男「じゃあ、僕のこと本当に好きなんですか?」

先輩「全く。これっぽっちも。全然」

男「……」

男「そ……そこまで言われると応えるな……」

先輩「体面だけ恋人関係になってください、と言っているのです」

男「あー、なるほど」

男「でも……なんで?」

先輩「それは、秘密です」

先輩「そのうち言いますよ」

男「え、理由が聞けなかったら、フリだとしても付き合えませんよ?」

先輩「なに言ってるんですか? バカですよ」

男「断定……」

先輩「伏線もなかったら、誰も読まなくなりますよね?」

男「先輩こそ、なに言ってるんですか?」

先輩「より高次元の話です。ああ、そうでしたね、あなたはまだ『次元』を学校で習ってなかったでちゅね? クレヨン使えまちゅか?」

男「……」

先輩「ていうか、男くんは凄いですね」

男「え?」

先輩「だって、理由が無くても付き合いたいと学園中で話題のこの私を、理由がないからフるだなんて」

先輩「俗に言う爆発しろの対象になりますよ?」

先輩「そして、私を慕う後輩たち(笑)やファンクラブ(笑)(笑)があなたに刃を向けることになるんです」

先輩「ああ、可哀想。あっけなくて、つまらない人生でしたねぇ、ふふふ」

男「……」

先輩「さ、私と付き合ってください」

男「脅しですか……はぁ」

男(私と付き合って――か)

男「……」

男「……はぁ」

先輩「ため息、うざいです」

男(ま、バレるまでなら別に良いか)

男(バレても、いい風にころべば……)

男「うん、まあいいか」

男「お願いします」

先輩「――っ、ごほん」

先輩「まあいいか、とはなんですか」

先輩「それに、最初からそう言えば二行で済んだのに」

先輩「面倒臭い後輩ですね、全く」

男「……」

男「二行じゃ済みませんよ、だって一行飛ばしで書かれてますから」

先輩「『行』って何言ってるんです? あなたには何が見えてるんですか? やだ怖い……」

男「なんでそんな目で僕を見るんですか!?」

男「『伏線』とか『行』とか――先輩が言いはじめたんですよ!!」

先輩「わたし、『普通? なにそれ美味しいの?』って言うアブノーマルな男くんが大好きですよ」

男「言わないです」

男「ていうか、先輩がアブノーマルなんて言葉を言うと、いやらしいくなりますね」

先輩「セクハラです。訴えますよ」

男「……」

男「えっと……それで、ですね」

先輩「はい?」

男「了承はしましたが、期間は――」

先輩「大丈夫です。あなたに好きな人ができるまでにしておきますから」

男「な、なるほど」

先輩「ただ、急な不幸であなたの恋慕対象者がいなくなったら、恋人関係継続ですからね」

男「それ、前ふりですか!? もし、そうなったら絶対に先輩を疑いますよ!? 疑わざるを得ませんよ!!?」

先輩「ふふっ、証拠は残しません」

男「……」

先輩「あと、付き合う理由を男くんが知った場合も別れますから」

男「理由しりたいなあ」

先輩「ふふふ、ツンデレですね、男くんはっ」

男「ちがいますよっ!」

先輩「理由知りたくないんですよね? 別れたくないんですよね?」

先輩「本当はエッチするまでは別れないつもりなんでしょう?」

男「H目的……って、心象わるいなぁ……。先輩が僕をどんなやつと思ってるか、聞きたいです」

先輩「えっと……言いにくいのですが……そのぅ……キモイ変態?」

男「……」

先輩「ちなみに私の処女は1000ポイントと交換です」

男「へー。どうやったらポイント貯めれるんですか?」

先輩「いやらしい。ポイント貯めるつもりですか」

先輩「ちなみに男くんの命が1ポイントです」

男「ひっく!!」

先輩「あらあら、面倒臭い彼氏くん(偽)のせいで、もうこんな時間ですね」

男「あ、もう下校しなきゃですね」

先輩「さて、帰りましょうか、マイスイートハート;heart」

男「あはは(失笑)」

男「……はぁ」

男(今日はアイツに会わないといいんだけどなぁ)

先輩「何してるんですか、行きますよっ」

男「はい……」

…………
……

◆◇教室◆◇

男(昨日帰ってから今日の今まで、先輩からアプローチはない)

男(昨日の告白は先輩の気まぐれだったのかな)

女「男くん?」

男「ああ、ゴメンね」

女「ふふっ、もう」

男「でさ――」


先輩「……」すたすた

ザワザワ
「例の先輩だ」
「超絶美人だな」
「やべぇ、眩しい」
「きゅんきゅん」

すたすた
先輩「あの」

男「あっ」

女「っ!」

先輩「男くんはいますか?」

女「……う」

男「……あ、はい。僕ですが……」

先輩「あなたが男くんだったんですかっ!?」

男「意味わからん! なんで今知った風なんですか!!!」

先輩「冗談ですよ」

男「……」

男「冗談じゃなかったら困ります……」

先輩「彼氏の名前くらいは覚えられますよ、おとと君。エッヘン」

男「先輩のおたこ!! 間違えてますよ!」

先輩「えっ?」

男「えっ?」

女「えっ……えっと……」

男「あ、ごめん女さん」

先輩「ふふふ」

女「……」

女「あ、ううん。いつもと何かキャラが違うね、男くん」

男「あ、や、この人はアレだから……」

女「アレ……アレって……」

女「もしかして、先輩さんは特別ってことなのかな……」しゅん

男「女さん、どうかした?」

女「う、ううんっ! 何でもないよっ」

先輩「えっと、それで……」

先輩「男……君? おたこ君? この方は?」

男「わざわざ間違えるために言い直すな。えっと、クラスメートで友達の女さんです」

女「は、はじめまして……お噂はかねがね……」

先輩「はい。はじめまして、男くんの友人Aさん。男くんの先輩兼恋人の先輩です」

男「……」

女「……」

女「わたし、友人Aなんだ、はぁ。……じ、じゃなくてっ」

女「もっと突っ込むべき所がありましたっ!」

女「どういうことですかっ!?」

女「今、さっき、言、った、恋人て!?」

先輩「Oh, are you really a Japanese? 何言ってるかわからないのですが……」

男「先輩の方こそ何言ってんですか、また! ま、確かにハーフさん達みたいに可愛い顔してますけどね!」

女「か、可愛いだなんて。えへへ」カァ

先輩「……」

女「じゃなくてっ! 恋人ってどういうことですか!?」

先輩「そのままの意味――私と男くんが付き合ってるってことなのですけれど……」

先輩「それも理解できないなんて、日本人じゃないです。Are you really a Japanese?」

男「無限ループ怖い……」

女「えっと、じゃあ」

女「いつから、そういう関係なんですか?」

先輩「昨日からです」
男「昨日からだよ」

女「……」

女「……そんな……知らなかった……」

男(知ってたら、祝ってくれてたのかな。優しいなぁ。女さんは)

女「時間がないのに……障害大きすぎるよ……」ボソッ

女「……」

女「…………」

男「お、女さん?」


女「あぁーっ、よく寝た!」


男「……えっ?」

先輩「……」

キョロキョロ
女「あれ? 私教室で寝ちゃってたんだー」

男「お、女さん……」

女「あっ、おはよう。男くん」

男「あのさ、いきなりどうしたの?」

女「えっ、何が?」

男「何が……って……」


先輩「ああ、なるほど」

先輩「現実から目を背けたんですね」

男「……」

男「えっ、現実逃避?」

先輩「はい」

先輩「なので、そっとしてあげてください」

男「あ、はい……」

先輩「今日、部活休みにして一緒に帰りましょう。そう言いに来たんです」

男「休みにするの先輩次第なんですね……」

先輩「もちろんです。えっへん」

男「いばんな」

男「……はぁ」

男「わかりました。授業終わったら、先輩の教室に伺います」

先輩「それでおねがいしますね」

先輩「では」
すたすた

女「……お」

女「男くん! 今日お昼一緒に食べよー!」

男「えっ、ああ。うん」


……
…………
……

……
…………
……

女「今日もパンなの?」

男「うん、パン食だからね」

女「ふふっ」

女「……あのさ」

男「ん? どうしたの?」

女「その……先輩と本当に付き合ってるの?」

男「えっと……」

男「た、多分……ひょっとしたら……」

女「え」

女「多分ってことは、曖昧なの?」

男「うん。よくわからない」

女「付き合ってるかわからないって……」

女「こんな人で本当に良いの、私っ?」ボソッ

男「ま、女さんは気にしなくていいよ」

女(『気にしなくていい』って…………)

女(それって、私は関係ないってこと……?)

女(私は他所者ってこと……なのかな……?)

女「はぁ」

男「女さん?」

女「あ、やっ、何でもないよっ」

男「……」

女「……う」ぶつくさ

男「……」

男(あー、言った方が良いのかなぁ)

男(でも先輩に怒られるかな)

男「……」

男(……いや、言ってしまおう!)

男(だって、女さんは唯一の友達なんだから!)

男「多分、って言ったのはね……」

男「実は、『形だけ』の恋人だからなんだ」

女「っ!」

女「かか形、だけっ?」

女「形だけってことは――」

男「うん。お互いに好き同士じゃない」

女「えっそうなの!?」

女「よかっ――」

女(いや、でも、先輩はどうみても……)

女「でも、事態はあまり変わってないのかな」ボソッ

女(好転ととらえるには楽観的すぎだよね……)

男「どうしたの?」

女「あっ、えっ、ううんっ。何でもないよっ」

女「……う」

女(なんか、いろいろ考えてたら気分わるくなってきた……)

女「はぁ」

女「あ、あのさ、お腹空いてないんだぁ。あと食べてくれない?」

男「え、大丈夫?」

女「うん、平気だよ……。お箸もどうぞ」

男「う、うん。ありがとう」

男「いただきます」
ぱくぱく

女「……」
ジーッ

男「……」
ぱくぱく

女(なんだろうこの違和感)

女(何か大切なことを忘れている感覚)

女「……?」

女「あ」

女「…………っ!!!」

女「かかかか間接ギゃああああぁぁぁぁああッッッ!!!!!!」

男「っ!?」

女「……きゅうー……」ガクッ

男「おっ、女さんっ!?」

男「女さんしっかりしてっ!」

男「女さん!」

女(ごちそうさまでしたー……)

……
…………
……

……
…………
……

◆◇帰り道◆◇

先輩「ねぇ男くん、クレープ売ってますよ」

男「……」

男(良かった、今日は付けられてないな……)

先輩「……」

男「……」

男(ていうか、今日の女さん……いつもよりヘンだったなぁ)

先輩「……む」

先輩「男くん! 聞いてますか?」

男「あ、はい。もちろんですよ」

先輩「嘘だッ!!」

男「っ!?」びくっ

先輩「一度言ってみたかった台詞です」

男「び、びっくりしました」

先輩「こほん」

先輩「さぁて、男くんは何味のクレープが食べたいですか?」

先輩「あ、間違えたら好感度下がりまくりでビンタですよ」

男「……」

先輩「ちなみに話を聞いてないことで、今は既に絶対零度です」

男「じゃあ、これから下がることはないですね」

先輩「揚げ足とらないで下さい。生意気です」

先輩「ビンタしますよ?」

男「す、すみません」

先輩「で、味は? ①チョコバナナ ②フルーツミックス さあどっち!?」

男「ん~、①で」

先輩「うん」

先輩「ふふっ、正解です」

男「何が正解だよ」ボソッ

先輩「こら!」
バチーン!

男「イタッ!!」

先輩「あれだけ言ったのに、生意気なことを口にした罰ですっ」

男「……」

男「DVが原因で別れるカップル多いですよ」

先輩「いいえ。SMプレイです」

男「……」

男「ものはいいようですね……」

先輩「ものごとには多くの視点があるのです」

先輩「じゃあ、おね――おね、お、おねがいしてきますね」

男「え、あ、クレープの注文なら僕がしますよ」

先輩「あっ」

男「先輩も同じものですか?」

先輩「はい、お願いします」

男「了解しました」
すたすた



先輩「……ふふっ」

……
…………
……

男「……ふー」

先輩「美味しかったですね」

男「そうですねー」

男「でも……」

男「今日食べてばっかりだな」

先輩「えっ」

先輩「太ったらわかれます」

男「え、じゃあ太ってみようかな」

先輩「出たツンデレ!」

男「なんでもツンデレで補完される先輩の脳は幸せそうですね」

先輩「またビンタされたいんですか?」

男「いいえ、全く!」

男「いまのは幸せそうで羨んでいるんですよ」

先輩「……」ジー

先輩「まあ、いいです」

先輩「でも――」

先輩「男くんはガリガリじゃないといけないんです」

先輩「だって、ミイラにして私が学会で発表したいんですから」

男「切実に別れたい!!」

先輩「別れるなら、あなたを×して私は生きる!」

男「……」

男「先輩は生きちゃうわけですか」

先輩「私は大切です」

男「わー自分勝手ー」

先輩「よく、それが魅力だよね、と言われてきました」

先輩「何せ私は『持ってる』……いや『持ててる』のですから」

先輩「私はHavesですから」

男「ご立派ですね。きっとご親戚が聞いたら、引き出しに眠る青いハンカチで涙を拭きますね」

先輩「馬鹿にしないで下さい。蝦夷までぶっ飛ばしますよ?」

男「別にええぞ」

先輩「うっわー……さむすぎます……」

男「……」

……
…………
……

先輩「意外に一緒に帰るのも悪くないですね」

男「そうですか? 僕は遠慮ねが――やめてください! すみません! 手を振り上げないでください!」

先輩「ふん」

男「せ、先輩と帰るのたたたたのしいなー」

先輩「ふふっ」

先輩「では、さようなら」

男「あ、はい」

先輩「あー、そうそう」

先輩「明日はちゃんと部活に来るんですよ?」

男「いや、毎回ちゃんと行ってますよ!」

先輩「そうでしたか? 幽霊みたいに影が薄いので気づきませんでした」

男「部員二人なのに気づかないなんて、先輩は頭おかしいです!」

先輩「じゃあ、さようなら。おとと君」

男「男です、お・と・こ!」

◆◇家◆◇

男「さぁて学校行く――」

ピーンポーン

男「誰だろう?」

男(まさか……アイツ……)

男「なわけないか」

ガチャ
男「はーい」

先輩「おはようございます、おねぼう君?」

男(先輩だったんだ……)

男「おねぼうは無理があります」

先輩「おとおと……おとこまえ君!」

男「あ、あありがとうございます」

先輩「おべっかです。世辞です。flatterです」

男「……」

先輩「ところでブラザー!!!」

男「うぉっ、急にハイテンションですね」

男「きもちわ――じゃなくて、びっくりしました」

先輩「何か聞きたいことはないですか?」

男「あ、ああ、そうです!」

男「何でいらしたんですか? 朝なのに」

先輩「来ちゃだめなんですか」

男「まぁ」

先輩「ふー」

先輩「やれやれ、自覚に欠けるようですね、おとと君は」

先輩「私たちはカップルなんですよ?」

先輩「朝登校は当然じゃないですか」

男「あー、そういうことですか」

先輩「ま、上辺だけの付き合いです」

男「はい」

先輩「例えるなら――そうだ、ノー友みたいなもんです」

男「ノー友?」

先輩「ノートを見せ合うだけの友人のことです」

先輩「友人にはカウントされないということで、no友とも掛けています」

男「……ああ」

先輩「どうしたんですか? ノー友しかいないおとも君? まさにYou have no friends!」



男「……」

先輩「ごめんね。言いすぎた」

男「いや、いいです気にしてません」

先輩「……」ニヤ

男「先輩、今笑いましたか?」

先輩「いえ、全然」

男「……」

先輩「……」ニヤ

男(絶対笑った)

男「はぁ」

男「ゆっくり歩きすぎましたね。もう時間です」

男「急ぎましょうか」
すたすた

先輩「え、あ、はいわかりました」
すたすた


……
…………
……

◆◇教室◆◇

男「……はぁ」



女「男くん……昨日は先輩とは付き合ってないっていってたけど……」

女「今日も朝は……」

女「二人で登校とか羨ましい……」

女「はぁ」

女「よっし!」

女「私もアタックするしかないっ」

女「可能な限りっ」

ズイッ
女「男くーんっ!」

男「あ、女さん」

男「おはよう」

女「おはよ、男くん」

女「あ、あのねっ」

女「今日提出の宿題難しかったよね」

男「え、ああ、うん数学は難しかった……かな」

女「お願い、答え合ってるか見せて?」

男「ああ、じゃあノートを――」

男「ノート……」



先輩『どうしたんですか? ノー友しかいないおとも君? まさにYou have no friends!』



男「……」

男「その前に……女さん」

女「え、何? どうしたの?」

男「僕たち、友だちだよね?」

女(アタックしたけど……ナイスブロック!?)

男「単に友だちだよね? そういう関係じゃないよね!?」

女「友だち……単に友だち……」グサッ

女「そーゆー関係じゃない……」グサグサッ

男「女さん……?」

女「……」

男「女さん……まさか……」

女「……っ、く」

女「あっ、あはは……」

男「女さん……?」


女「そっうだよ、そう!」

女「私たちは友だちだよっ」

男「よ、良かったー。安心した」

女「あ、あはは……」

女(あ、安心って……)ズキッ

男「はい、ノート!」

女「あ、あはは……ありがとう……」

男「ううん、気にしないで!」

女(気にするよ!)

男「僕にだって、友だちいるじゃないかっ、ふふっ」


女「はあ」

女「友達としか思われてない……」

女「もうやだ……」


……
…………
……

……
…………
……

◆◇部室◆◇

ガラガラ
男「先輩、ちゃんと来ましたよー」

男「……ってあれ?」

男「誰もおらんやん」

男「ああ言ってたのに、先輩が来てないじゃないか」

男「…………」

男「……眠たくなってきたなぁ」

男「……」

男「昨日はあまり寝れなかったからな……」

男「……いろいろ、ありすぎて……」

男「……」ウトウト

男「…………」

男「……すー……」

……
…………
……

……
…………
……

?「気持ち良さそうに寝てるなぁ」
なでなで

男「…………」

?「……ふふっ」
なでなで

男(撫でられてる?)

男(まぁいいやぁ)

男「……スー……」

?「ふふふっ」


……
…………
……

先輩「起きてください、男くんっ」

男「んあ――ふぁっ」

男「え、僕寝てたのか」

先輩「もうかえる時間ですよ、土に」

男「なんで分解者のお世話にならなきゃいけないんですかっ!!」

男「僕はまだまだ地球の物を消費しますから!!」

先輩「まあ!」

先輩「ナイスツッコミです」

男「そ、それほどでもないですよ」

先輩「男は私が育てました」

先輩「今、立派なのは私のおかげです」

男「いえ、絶対に無いです。先輩からは悪影響しか受けてません。なので、良くは育ちません」

先輩「私は反面教師ですから」

男「あ、ご自分でもわかってらしたんですね」

先輩「自己分析は就活においては重要です。今の内に磨かないと」

先輩「ま、それはどうでもいいです」

先輩「時計、見てください」

チラッ
男「あー、もうこんな時間だったんですね……」

先輩「私が来たときには既に男くんは寝てましたよ」

先輩「不用心にも扉は開けっ放しでしたし」

男「そうでしたか」

男「……すいません、今日は活動できず……」

先輩「えっ、『すいません』って何ですか? 何を吸わないんですか?」

男「……すみません、の間違いです……すみません」

先輩「私が言うのもあれですが、日本語勉強した方が良いと思いますよ」

男「忠告、痛み入ります」

先輩「ふふひっ」

男「……ふひっ?」

先輩「いえ、忘れてください」

男「え、あ、はい」


……
…………
……

……
…………
……
◆◇帰り道◆◇

男「……っ」

先輩「今日何も出来なかった分、明日はきっちり働いてもらいますよっ」
すたすた

男「は、はい」

先輩「私の彼氏なんですから、キッチリしてもらわないと困ります」

男「はい」

先輩「……?」

男「……」

先輩「やけに物分りいいですね」

男「はい」

男(……はぁ)

男(あきらかアイツだよねー……)

先輩「……?」

先輩「もう着きましたね」

男「あっ、えっ、あの!」

男「先輩のお家はこの先でしたよね、送りますよ」

先輩「いいえ、大丈夫ですよ」

男(僕を一人にしないで、気まずい……)

先輩「さようなら、おとと君」

男「――先輩、また名前間違えてますよっ」

先輩「え? おたこ君?」

男「男です! おとこ!」

先輩「うーん……」

先輩「難しいから覚えられそうにありません……」

男「あんた、バカァ!?」

先輩「偏差値70超えてますが、何か?」

男「僕も超えてます」

先輩「さようなら、ぷしゃいく君」

男「ああ、はい、さようなら、ぷしゃいく先輩」





男「……はあ」

幼馴染「……」ジーッ

男「……」

男(はぁ……幼……)

幼「……」

男(とうとう見られてしまったか……)

男「どうかしたの?」

男(どうかしたの――なんて自分でもわかるくらいに、しらじらしいな)

幼「また女の人と一緒だった」

男「ま、『また』……って……」

幼「だって『また』なんだもん」

男「……はぁ。まあいいや」

男「で、どうしたの?」

幼「うん」

幼「返事聞かせて欲しいの」




男(私と付き合って――の返事、ね……)

男「例の返事は前に言った通り」

男「変わらないよ」

幼「う」

幼「なんで?」

男「だって、『幼は』僕のこと好きじゃない」

幼「はぁ? 何それ。男が決めつけないで!」

男「……」

男「――いや、事実だろ?」

幼「……」ウルッ

男「……はぁ」

男「ごめん、そういう訳だから。じゃあね」
ガチャ

バタン

男(たしか、誤りを指摘されたら黙って瞳を潤ませろ、だっけ?)

男(『私が彼を落とした100の方法』より)

男「……はぁ」

男「ベタだよなぁ」

男「あの本の存在を知ったら、萌えるものも萌えない」

……
…………
……

……
…………
……

◆◇家◆◇

男「ふぁ……」

男「……眠い」

男「今朝もよく眠れなかったな」

男「昼寝のせいなのか、幼のせいなのか……」

男「ま、連日睡眠不足でヤバイってのは確か」

ピーンポーン

男「はぁ」

男「き、今日も来たのか……」

男「はーい」
ガチャ

先輩「ナマステ~」

男「……は?」

先輩「ナマステ~」

男「……」

男(朝から面倒な人だなぁ、全く)

男「今日はどうしたんですか?」

先輩「いつも同じ挨拶だと飽きちゃうじゃないですか」

先輩「それに、世界にはこんなに挨拶の言葉があるんですから、使わないなんて勿体ないじゃないですか」

男「はぁ、なるほど」

男(朝からシンドイ人だなぁ、全く)

先輩「じゃあ一緒に挨拶しましょう――全部この社会がわりぃんだぁぁあ!」

男「……」



男「あんたイかれてるな」

先輩「お、男くん、口調、口調!」

男「――はっ!」

先輩「いつもの男くんじゃなかったです」

男「あ、あはは、睡眠不足なもんで……」

男「えっと、『全部この社会がわるいんだ』ってどういうことです?」

先輩「あ、それはウチの界隈の挨拶です」

男「界隈……」

男「だ、だいぶロックテイストなんですね」

先輩「パンクです」

男「あ、すいま……じゃなかった、すみません」

先輩「あらあら、学習できたんでちゅね、えらいえらい~」

男「はぁ」

男「時間ですし、行きますよ」

先輩「今日もあげぽよですね」

男「全然ですよ」

男「むしろ、さげぽよです」

先輩「ふふっ」

……
…………
……

◆◇教室◆◇

キーンコーンカーンコーン

担任「お前ら、席に着けよー」

担任「朝のホームルームを始める」

ガタガタ

女(クラスメートによると)

女(今日、一緒に学校来てたらしいなぁ、男くんと先輩さん)

男「……」

女(……はぁ)

女(本当につき合ってるのと変わらないじゃん、二人)

女(私負けちゃったのかなぁ)

女「……」ジーッ

男「……」チラッ

女「――っ!?」

男「……」ニコッ

女(う……ドキッとさせるなぁ、男くんは)

女「いいよね」

女(うん……悪あがきぐらいは……っ)

担任「――以上だ。授業に遅れるなよ」

担任「あ、そうそう」

担任「女、ちょっといいか?」

女「え、あ……」

女「はい」

……
…………
……

……
…………
……

男「――っと」

男「ようやく、昼休みか」

男「どこでご飯食べようかなぁ」

ちょんちょん
男「はい?」

先輩「この階の一番北に、個室型のご飯を食べる良い所がありますよ」

男「北の……個室……」

男「まさか便所飯っ!?」

男「――じゃなくて、先輩なんでここに!?」

先輩「ふふっ、こんにちは」

先輩「後輩の教室、突撃昼ご飯のコーナーです!」

先輩「パチパチパチパチ!」

男「は、はぁ」

先輩「というわけで」

先輩「一緒にご飯を食べますよ!」

男「え、えっと、かまわないんですが……」

男「その……」

「噂の先輩さんじゃん」
「なんでここに?」
「男君に用事なのかな」
ザワザワ

先輩「ん~」

先輩「そうですね」

先輩「今回は部室で食べましょうか」

男「はい」

男(今回ってことは、次回もあるのかよ……)



女「……うう」

女(先輩……)

女(私の男くんとのランチタイム(仮)にまで……)

女「……む」ジーッ

先輩「あっ」

先輩「ふふっ」ニコッ

女「っ!?」

先輩「女さんも一緒にどうですか? お昼」

女「私!?」

女「えっ、えと、はいっ!」

女「おおお邪魔じゃなかったらご一緒したいですっ」

男「お、女さん」

男「大丈夫なの?」

女「なんのこと? よ、よゆうだよっ」

男(女さんまでも、先輩にからかわれ無いとければ良いけど)

男「……」

先輩「ふふっ」

先輩「というわけで、行きましょうか」

男「はい」

女「は、はい!」

男(ま、杞憂で終わるだろ)

……
…………
……

すいません、少し席外します><

久しぶり――1年ぶり?のssスレ立て+ninjaのレベル1なんで、
不都合多いかもですが……すいません><

……ぷしゃいく知ってる人いてびっくりしたw

保守ありがとうございました!

今から投下していきます

◆◇部室◆◇

先輩「いらっしゃいませー」

男「女さん、こっち」

女「失礼します」

女「わぁ、中はこんな風になってたんですねぇ」

男「汚いでしょ?」

女「ううん、そんなことないよっ」

男「僕はいつも掃除してるんだけど……先輩が」

先輩「私がゴミみたいだなんて言わないでください」

男「被害妄想!」

先輩「まぁ!」

女(仲の良さを見せるために私は呼ばれたのかな……)

女(凄く凹む。……凹むって言うかむしろ_む)

男「――ご飯食べよっか、女さん」

女「うん」

……
…………
……

◆◇廊下◆◇

先輩「じゃあ、また部活で」

男「あ、はい」

女「……」

先輩「そうそう、今日は寝ちゃだめですよ」

男「う……」

男「は、はい、すみません」

先輩「ふふっ、では」
すたすた

女「…………」

男「お腹いっぱいだー」
すたすたすた

女「……んー」
すた

男「女さん?」

女「……」

女「あのさ」

女「男くんって、やっぱり先輩さんと仲良いよね」

男「え?」

男「どうしたの?」

女「……」

女「いや、みんなと接するのと、先輩に接するの少し違うと思って」

男「え、そうかな?」

女「そうだよ」

女「うん、絶対にそう……だよ」

男「んー、それは……」

男「それは先輩が『あんな人』だからじゃないかなぁ」

女「……っ」

女「あ、あんな人って?」

男「えっと……ボケ担当……?」

女「……」

女「じゃあさ」

女「私がボケたら同じ様にツッコミ入れてくれるの?」

男「多分……?」

女「……」

女「……はぁ」

男「?」

女(あー、私何意味のないこと聞いてるんだろ……はぁ)

女(絶対おかしいよね。おかしいと思われたよね)

女「あ、あのさ」

女「えー……うん、急にごめんね。ヘンな話をしちゃって」

男「あっ、いや、大丈夫だよ」

男「うん……」


……
…………
……

◆◇教室◆◇

男(あれから休み時間が気まずい……)

男(今はもう放課後だけど……)

女「ば、バイバイ男くん」

男「え、あ、うん、さようなら」

男「う」

女(よ、よし……今きめよう……)ゴクリ

女「あ、あのね、男くん」

男「どうしたの?」

女「ガ、ガチョーン」


ざわざわ


男「……えっ?」

女「――っ!!?」

女「ごっ、ゴメンねっ! 何でもないのっ! 忘れて!!」

女「さっ、さようならっ!!」
たったったっ

てす

……
…………
……

◆◇部室◆◇

男「はぁ」

先輩「ため息でアピールですか? かまってちゃんですか?」

男「……なんで女さんはあんなこと言ったのかなぁ」

先輩「うっわ、本物ですね」

先輩「で、何か言われたんですか?」

男「や、僕が先輩にだけ他の人と違う様に接するって言われて」

先輩「ふむふむ」

先輩「なるほど」

先輩「わかりましたよ!」

先輩「それは、女さんが私を心配してくれたんですね」

男「え?」

先輩「私への配慮が足りないのでは?――と」

先輩「そう言いたかったに違いありません!」

男「んー……」

男「そうなのかなぁ」

先輩「はい、そうですよ」

先輩「そうに違いないです」

男「ていうか、そんなに先輩にだけキツイですかね、僕」

先輩「最近キツイです」

先輩「特に付き合ってからは」

男「……」

男「で、でも、先輩だっていけないと思いますよ」

先輩「あー、男くんって……」

先輩「釣った魚には餌をやらないクチですか?」

先輩「ま、実は釣れても無いんですけどね、ふふ」

男「僕だって釣った記憶ないですよ!」

男「ていうか、さっきから聞いてたら……なんか僕心証が悪すぎです!」

男「ぼ、僕はただ――」

男「僕はツッコミに命掛けてるんで、ボケられたらツッコまないといけないんです!」

先輩「うっわ……おととくんがボケました……」

男「男です!」

先輩「ふふっ」

……
…………
……

◆◇帰り道◆◇

先輩「――で、ジョンにこう言ったんだ、あんたのシュレッダーよりましだ、ってね」

男「……」

先輩「どうですか?」

男「……わ、わぁ」

男「す、素敵な話ですねー」

先輩「凄い棒読みですね、大根くん」

男「ま、そうなりますよね」

男「あと、大根じゃなくて男ですから」

男「……」

男(また付けてきてるな……アイツ)

先輩「分かれ道ですね」

男「え、あ、はい」

男「先輩、では月曜日に」

先輩「えっ――」

先輩「あ、はい。さようなら」

男「さようなら」
すたすた

先輩「今日はもう暗いんだし……」ぼそっ

先輩「前みたいに家まで送ろうか聞いて来なさいよ、ばーかっ」


くるっ
男「あの」

男「先輩、何か言いました?」

先輩「――っ!?」

先輩「い、言ってませんよ、何もっ!」

先輩「一生童貞のキモテない男くんっ!」

男「なっ……!」

先輩「ふんっ」

先輩「さようならっ」
すたすたすたすた

男「ああ、はい、さよなら」

男「……」

男「ふー」

男「な、なんなんだ、いったい……」

男「はぁ」

男(よし、先輩行ったな)

男(暗いけど……ま、先輩なら大丈夫だろ)

男(さてと――)

男「……」
くるっ

幼「……う」

すたすた

男「はぁ……」

幼「どうしたの?」

男「こっちが聞きたいよ。どうしたの?」

幼「買い物を済ませて帰ろうとしてたら、たまたま男を見かけて」

幼「だから、隣に並んでみたの」

男(たしか、偶然を装いさりげなく接近せよ、だっけ?)

男(『私が彼を落とした100の方法』より)

男(ていうか僕まで詳しくなってきたよな、この本に……)

男「……はぁ」

男(実用性無いというのにな)

男「はぁ」

男「『たまたま』がよくあるね」

幼「気のせいじゃない?」

男「荷物重そうだから、持つよ」
すっ

幼「ありがとう」

幼「私に優しい男、たぶん私に惚れてるよね」

男「おいこら」

男「心の声聞こえてるんだけど」

幼「いやいや、むしろ聞かせてるんだけど」

男「だろうと思った」

幼「ふふっ」

男(また『私が彼を落とした100の方法』か……)

男(そもそも本当に効果があるのかな?)

男(でも、本の言葉を言われた僕が、疑問を持つくらいだから……底が知れるよね)

男「幼はさー」

男「僕を困らせるのが得意だね」

幼「えっ」

幼「女房褒めてどうする気なの?」

男「なんのつもりもない! ていうか褒めてない!! そもそも女房じゃない!!!」

幼「にょいぼう? ああ、男のアレか」

男「……」

幼「下ネタはスルーなのね」

男「……」

男「幼ちゃ――幼は僕を困らせてどうする気なの?」

幼「……」

男「今日だってさ、だいぶ早い段階で、僕と先輩が帰るのをつけてたじゃないか」

幼「うん」

男「気になった、ていうか怖かったよ」

幼「それは心外」

幼「私は男が大好きだから、付き合いたいの」

男「だからさ……ちがうってば……」

幼「え、突き合いたい?」

男「や、字に関して否定したんじゃないよ!」

男「あ、もちろん突き合うのもおかしいよ!!」

幼「う、うわー……」

幼「生殖活動がおかしいなんて……だから男は童貞なんだよ」

男「くそうくそう。先輩のさっきの発言、聞かれてたのか」

男「――じゃなくて……ああ……まぁいいか」

男(これに関しては、水掛け論……同じことの言い合いが尽きないからなぁ)

男「えっと、ところでさ」

男「聞きたいことがあるんだけど」

幼「ん?」

男「僕が特別扱いしてる人って誰?」

幼「――っ」

幼「……」

幼「それは現存の人物で?」

男「うん」

幼「じゃあ、えっとね……」

幼「木崎ゆりあちゃん」

男「っ!?」

幼「わ、すごい驚いてる……」

男「う、うん」

男「び、びっくりした」

幼「男のことは何でも知ってるんだよ、私は」

男「……はぁ」

男「それは家族も知らないことなのに」

男「じ、じゃあ」

男「ゆりまる以外では、誰が『特別』?」

幼「それは――」






幼「私かな」

男「……」

男「そっか、ありがとう」

幼「否定しないの?」

男「意見を聞いただけだからね。僕の考えには関しない」

幼「そう」

男「もう家に着いたね」

幼「気のせいよ」

男「いやいや、どう見ても僕の家だから!」

男「もし違ったとしたら、気のせいというより、むしろ気がどうかしてるから!」

幼「う、まあよく見たら男の家かも」

男(かも、じゃなくてそうだってば)

男「はぁ、じゃあまたね」

男「帰る――」

幼「待って!」

男「何?」

幼「あのさ、私が『男が好き』って言うのを否定したのはなんでなの?」

男「……」

幼「男にとって私が特別だ――って言ったときみたいに」

幼「『私の告白』を『私の気持ち』として受けとめないのはなぜ?」

男(あーまたこれの繰り返しか。でも、僕の方からは折れない)

男「だって――」

男「幼が本当にそう思ってるわけじゃないからね」

男「幼が言う『告白』は、幼自身の考えとか気持ちじゃない」

幼「は?」

幼「何言ってるのよ!」

幼「男に私の気持ちが、嘘かどうか判るわけないでしょっ!?」

男「ううん」

男「僕の特別な人だからね」

男「わかるよ」

幼「……」

幼「ね、どういう意味で特別なの?」

男「僕のことなら何でも知ってるんでしょ?」

幼「……はぁ」

幼「自分から言ったりしてくれないんだ」

幼「……」

幼「いじわる……」

男「それも知ってたんでしょ」

幼「はぁ。今日も負けた」

幼「引き留めてごめんなさい。じゃあね」

男「ああ、うん」


ガチャ

男「……こうなったのも……仕方ないのかな」


……
…………
……

徹夜で投下するつもりが、少し寝ちゃってました。
睡魔せん、すいまに負けて続けれそうにないです。

今寝落ちしま す…。

起きて残ってたら…書かせてもらいます…

保守ありがとうございました!!

投下していきます

◆◇部屋◆◇

男「あー、色々あったから、休みの日が嬉しいな」

男「もう引き込もっちゃおうかな」

コンコン

母「お兄ちゃん」

男「……うん」

男「どうしたの?」
ガチャ

母「買い物をお願いしたいんだけど。ドレッシングがきれちゃってて」

男「うん、わかった。行ってくるよ」

母「ありがとう」

母「これ、お金ね。あまりは取ってていいから」

男「うん。行ってきます」
すたすた


男「…………」
ガチャ


……
…………
……

◆◇スーパー◆◇

男「買い物よーし」

男「さっさと帰って、のんびりしようかな」

女「さ~て、帰ろ……」

女「――あっ」

男「あっ」

女「う……うっす」

男「やあ」

男「女さん今から帰るところ?」

女「う、うん…」

女「そうだよ」

男「送ろっか?」

女「あ、ありがとう」

男「……ほら」
すっ

女「えっ?」

男「荷物持つよ」

女「い、いやいや悪いよっ」

女「うん……、自分で持つから」

男「いや、女の子に重そうなもの持たせたままじゃ、僕が落ち着かないからさ」

女「じゃあ、えと…………ありがと」

男「どういたしまして」

……
…………
……


女「優しいよね」

男「えっ?」

女「男くんは優しいよね、って」

男「……全然そんなことないよ」

男「僕は優しくない」

女「……」

……
…………
……

男「着いたね」

女「う、うん」

女(私の荷物、最後までもってもらっちゃった)

女「ごめんね」

女「荷物ありがとう」ペコ

男「いえいえ」
すっ

女「お、男くんっ!」

男「ん?」

女「家にあがってお茶していかない?」

女「ここまでしてくれたお礼ということで……」

男「気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう」

女「わ、わかった」

男「……」

女「…………あ、あのさ」

女「月曜日、た大切な話があるの」

男「大切な話……?」

女「うん、そう」

男(なんだろ、いったい)

男「わかった」

女「色々ありがとう、じゃあねっ」

女「気をつけて帰ってね」

男「さよなら」

女「バイバイ」

女「行っちゃった、か」

女「……」

女「……はぁ」

女「男くんは形だけとはいえ、もう既に先輩さんと付き合ってる」

女「それに男くんと先輩、本当は――じゃないのかな」

女「勘だけど」

女「……でも」

女「私の気持ちはまだ伝えられてない」

女「きっとフラれるってわかってるけど」

女「――このままじゃいられない」

女「全部……そう全部、男くんが悪いんだよ?」

女「私に優しくしたんだからっ」

女「最初から、最後まで……」

……
…………
……

◆◇家◆◇

男「……ふぅ」

男「ただいま」
ガチャ

母「ありがとう、助かったわ」

男「はい」
すっ

男「……」

男「僕は――これで良いんだ」

男「そういえば」

男「女さんの話っていったいなんだろうなぁ」


……
…………
……

◆◇教室◆◇

男「……ふぅ、今朝も先輩……家に迎えに来て……もう……」

男「疲れるんだよなぁ」

女「お、おは、おはようっ」

男「おはよう、女さん」

女「う……」

女「今日、放課後、約束……」

男「ああ、うん、わかってるよ」

女「なならいいれす」
すたすた

男「……」

男「ああ、そうか」

男「きっと、あのことだろうな……」

男「じゃあ、用意しておかないとな」

……
…………
……

……
…………
……

先輩「……どうしたんですか?」

男「えっ?」

先輩「箸が進んでないですよ」

男「いや、少し考え事を」

先輩「ふふっ、わかりますよ。私のことでも考えてたんですよね?」

男「自意識過剰!」

先輩「あら、まぁまぁ!」

先輩「まさかハズレてしまうなんて!!」

男「いや、本当に意外なことみたいに驚かないで下さい!」

先輩「この学校には、朝から晩まで、私のことを考えて夜も眠れない人がいるに」

先輩「彼氏(笑)でもある、あなたが考えてないなんて……」

先輩「刺されますよ!?」

男「あー、やっぱり熱狂的な先輩のファンいるんですね……」

男(正体しったら驚くだろうなぁ)

先輩「ファンがいるのは当然です」

先輩「だって私は学校のアイドルですから、えっへん」

男「んー」

男「まぁ、何か腹立ちますが、否定はしませんよ」

男「ちなみに、例えば誰が一晩中先輩のこと考えてるんですか?」

先輩「私です」


男「なんだお前だったのか」


男「……うすうす気付いてましたが、先輩ってナルシストですよね」

先輩「自分に酔ってますのれすお~」

男「はぁ、そう思える先輩はやっぱり素敵ですよ」

男「だって、僕は自分が嫌いですから」

先輩「そんなこと言っちゃだめ!」

先輩「――……ですよ」

男「……」

先輩「貴方を愛してくれる人に失礼です」

男「先輩……」

先輩「や、まぁ『それっぽい』ことを言っただけです」

男「なんですかもう」

……
…………
……


◆◇教室◆◇

男「さて、部活――」

男「の前に女さんと話がある」

男(はぁ、とうとう……か)

女「あ、あの」

男「うん」

男「で、どこで聞けばいい?」

女「お、お屋上で」

男「わかった」
すたすた

女「ふー…………よし」

女(い、いうぞ……おーっ)

……
…………
……

◆◇屋上◆◇

男「それで、女さん」

男「話って?」

女「うっ」

男「う?」

女「前に、実は男くんは先輩と付き合ってない――って教えてくれたよね?」

男「うん」

女「今、彼女は?」

男「いないよ」

女「よ、よかった」

女「先輩とはまだ本当に付き合ってないんだ」ぼそ

男「で、どうしたの?」

男(あの話じゃなかったのかな……?)

女「鈍いなぁ」ボソッ

女「あ、あのね」

女「……すー」

男「……?」



女「ごほんっ、私と付き合って下さいっ!!」



男「――っ!?」

女「滑り止めの受験のときに、私が学校までの道に迷ってる所を、丁寧に男くんが教えてくれたのを覚えてる?」

男「えっと……ごめん」

女「そ、そっか」

女「まぁ、仕方ないよね」

女「でもね」

女「私……そのときからずっとずっと気になってて……」

女「そっ、それで、だからっ」

女「私がここに通うことになって、男くんと再会したとき、すごく驚いた」

女「だって、たまたま私立も公立も同じとこ受けてて、一緒に受かって、それでクラスまで一緒、初めの席はまさか隣同士なんて――」

女「凄い奇跡」

女「本当に嬉しかった」

女「それから仲良くなって、『気になってる』から、どんどん『好き』になっていったの……」

女「だから、その……男くん!」

女「好きです、私と付き合って下さいっ!!」

……
…………
……

男「え……」

男(話ってこういうことだったのか……)

女「……うう」

女「……」

男「ありがとう」

男「返事させて貰うね」

男「――ごめんなさい」


男「好きな人がいるんだ」


女「――っ!」

女「あ……あはは……」

女「そ、そう、だよね……いくら、いつわりの恋人同士だからって」

女「先輩が好きじゃない――なんてことないよね」

女「あは……」ぽろっ

男「いや」

男「先輩じゃない」


男「僕が好きな人は――幼なじみだよ」


女「お、さな、なじ……み?」

女「え、男くん、幼なじみ……いたの?」

男「うん」

男「たぶん見たことあると思う」

男(いつも僕をストーキングしてるし)

女「そっか」

女「私、先輩に負けたわけじゃないんだ」

女「……そ、なんだね……」

男「……」

女「そのことは――その幼なじみさんが好きなことは、先輩さんは知ってるの?」

男「いや」

女「先輩どう思うのかな……」ぼそっ

男「……?」

女「ま、というわけで」

女「フラれちゃったわけですから、私は去りますね」

男「……」

女「じゃ――」

男「ちょっと待って!」

男「あっ、あのさ」

女「ん?」

男「女さん、今までありがとう。仲良くしてくれて」

女「えっ、男くん、いきなりどうしたの?」

男「これ、受けとってくれるかな」

女「……えっ」

女「ほんと、どうしたの男くんってば――」


男「女さん」

男「引っ越し……するんだよね」

男「だからさ、その別れの前に……」

男「女さんは友だち……だから」

女「あ……あはは」

女「バレてたんだ」

女「っていうか」ぽろっ

女「ずるいよなぁ」ぽろぽろ

女「男くんは……ぐすっ」ぽろぽろ

男「……」

女「嫌いにもなれないよ、これじゃあ」ぽろぽろ

女「転校先で酷い男に惚れた――なんて『嘘』言えないよ……ふぇ……ぐすっ」

女「男くん……バカ」ズッ
ぽか

男「……ごめん」

女「バカっ!」ぽろ
ぽかぽか

男「…………ごめん」

……
…………
……

◆◇帰り道◆◇

男「……」

男(今日は部活サボってしまった)

男(僕は……)

男(……女さん)

男「はぁ」

男(またアイツか……)

幼「あのさ……」

男「はぁ」

男「幼……暇なんだね」

幼「暇じゃない。めちゃくちゃ忙しい」

男「なんで?」

幼「男を追いかけなきゃいけないから」

男「……はぁ」

男「で、どうしたの?」

幼「男、落ち込んでる」

幼「その理由って?」

男「……えっと」

男「一番仲良かった友達が転校するから、だよ」

幼「そっか……」
ぎゅっ

男「幼?」

男「急に抱きしめてきて……どうしたの?」

幼「う」

幼「男は急にいなくならないで」
ぎゅっ

男「……」

男「うん……わかってるよ……」

幼「あと」

幼「私だけは男から離れないから」

幼「――そう決まってるんだから」
ぎゅっ

男「……」

男(『決まってる』……か)

幼「……」
ぎゅ~っ

男「……えっと」

男「そろそろ離れてもらわないと、ご近所さんに勘違いされるからね」

幼「ふふっ、むしろ好都合よ」

男「おい」

男(『私が彼を落とした100の方法』より、周りにアピールせよ、だったか?)

男(いいかげん読むのをやめろと言った方が良いのかな)

……
…………
……

◆◇家◆◇

男(『私だけは離れない』、か)

男「はぁ」

男(僕はアイツに解放して欲しいのかな、欲しくないのかな)

男「どっちなんだろうな……」

男「ああ、そうか」



男「アイツに解放されて欲しいんだ」

◆◇家◆◇

男「ふぁあ」

男(女さんが転校して一週間が過ぎた)

男(僕を心配してくれる友人を)

男(僕を好きになってくれた女性を)

男(一度に失った)

男「僕が悲しくなるのも当然か……」

男「ふー……」

男「転校先で、女さんが幸せに暮らしますように……」

ピーンポーン
男「はい……」

ガチャ
男「あっ」

先輩「ふふっ」

男「……先輩……」

先輩「おはようございます、ぼっちゃん」

男「ぼっちゃんってなんですか」

男「まぁ、おはようございます……」

先輩「うーん」

先輩「ぼっちやん……の方がいいですか?」

男「ぼっち、やん……」

先輩「関*語ですね。日本語に訳したら『ぼっちですね』でしょうか」

男「……」

先輩「ふふっ」

男「先輩、僕をイジメて楽しそうですね」

先輩「ええ。心から、ふふっ」

男「……」

男「はぁ。行きましょうか」

先輩「そうですね、遅刻してしまい、授業が始まってから教室に入る――」

先輩「これは、みんなから注目を浴びちゃいますもの」

男「う……」

先輩「男くんには堪えられないでしょうね、ふふっ」

男「……」

先輩「……」

男「……」

先輩「ごめん、言い過ぎたね」

男「……くそう」

……
…………
……

◆◇学校◆◇

男「ふぅ、間に合った」

先輩「おっとと、おととくんがだらしないから、ギリギリになっちゃいましたね」

男「おとこ、です」

男「それに、おっととって、どっかのハムスターみたいな呼びかけやめて下さい」

先輩「我が儘ですね。これは減点対象です」

男「先輩は我が儘の意味をわかってないです」

先輩「あの……」

先輩「今日は」

先輩「ちゃんと部活に来てね」

男「――」

男「は、はい」

先輩「ふふっ、素直な所は加点ですっ」

先輩「じゃあ。放課後に、また」

男「はい、放課後に」

……
…………
……

◆◇部室◆◇

先輩「男くん、今日は何をしましょうか」

男「……あの」

先輩「……」

男「まさか僕たちが何部に所属しているのか忘れたわけじゃないですよね?」

先輩「えっ?」

男「えっ?」

先輩「……て、天文部?」

男「先輩、今までありがとうございました。今日でここを退部――」

先輩「冗談、冗談ですよっ」

男「……はぁ」

男「というわけで、各々読書に勤しみましょう」

先輩「えーええ、つまんないです」

男「はっ」

男「読書つまらんとか先輩退部してくださいよ」

先輩「冗談、冗談ですよっ」

男「……」

先輩「本当に冗談ですからっ」

……
…………
……

先輩「――今日はここまでにしましょうか」

男「……はい」

男「そうですね、帰りましょうか」

男(なんだかんだ言っても、やっぱり先輩は読書好きなんだよな)

男(かなり没頭してたみたいだったし)

◆◇帰り道◆◇

男(今日は久しぶりにちゃんと活動した感じがしたな)

先輩「お疲れさまです」

男「あ、はい。お疲れ様です」

すたすた

ぽつぽつ
男「あ、雨」

先輩「降ってきちゃいましたね」

男「傘ない……」

先輩「私は――」

先輩「か、傘ありますよ」

男「あ」

先輩「えっと……その……」

先輩「入りますか?」

男「お、お願いします」

男(このシチュエーション……)

男(ま、まさか『私が彼を落とした100の方法』……?)

男(いや、た、たまたま……だよね)


……
…………
……

先輩「馬鹿ですね、男くんは」

先輩「天気予報も見て無いのでしょうか」

男「す、すみません」

男(やばい)

男(先輩、凄く良い薫りがする)

男(くそう、先輩のくせに……)

男(こんな風に思うなんて、なんかくやしい!)

男「あ……あはは」
すたすた

幼「……っ」

男「あ……」

男(あ、あれは……幼……)

先輩「ん? おーとーとー君、どうかしましたか?」

ふるふる
男「や、なんでもありませんよ」
チラッ

幼「……」ギロッ

男(やば、なんか、今回は特にきつく睨まれてるし……)

先輩「男くん?」

男「ほんと、何でもないですって」

先輩「……?」

先輩「あっ、あの人見てたんですか」

男「っ!?」

先輩「じろじろ見ちゃって、いやらしい。ああいう子がタイプなんですか?」

先輩「ていうか、あの制服……中○生じゃないですか! ロリコンっ」

男「ロ……ロリコン」

男「ひ、一つしか学年かわらないから、ロリコンじゃないですっ」

先輩「……」

幼「……」

男「ていうか誕生日なんか一週間違いだし」

先輩「……」

男「……?」

先輩「……っ」

男「あ……」

先輩「何でそんなこと知ってるんですか?」

幼「……」
すたすた

先輩「て、ていうか、なんであの子がついて来てるんですかっ?」

男「さ、さぁ?」

先輩「知り合いなんですか?」

男「えっと……なんていうか……」

男「その……」

男「し、知り合いっていうか『幼馴染ストーカー』?」

先輩「新ジャンル!!」

男「あー、多分面白くないパターンです」


先輩「あの」


幼「っ」

男(幼に喋りかけた!?)

男(ずっと幼は距離を置いたスタンス――まぁあきらかに物理的距離は近かったけど――)

男(僕が誰かといるときは、絡んでこなかったのにっ)

男(先輩から、なんて……)

幼「……っ」

先輩「私の彼氏に何か用ですか?」

幼「その質問に答える前に――」

幼「オバサン、今、私の彼氏って言った?」

男「あー」

男「やばいコレ」

男「絶対嫌なパターンだわ……」

先輩「オバサン? ふふふふふ」

先輩「偉そうなガキですねー……」

先輩「男くんは彼氏です。男くんが彼女に見えますか? 私をオバサンと思うくらい、目は悪そうですからね」

幼「……」ギロッ

男「ひっ」

先輩「何睨んでるんですか? ふふ」

幼「だって」

幼「だって……男は、私のことが好きなはずなのに……」

先輩「うっわー」

先輩「ストーカーさんは自惚ればっかり――というのは本当だったんですね」

先輩「男くんが可哀想です」


先輩「ね、おとと君」

男「おとこです」

先輩「男くんは、『幼馴染ストーカー』なんて嫌いですよね?」

男「えっ……あー……えっと」

男「その……」

先輩「このカンジ……」

先輩「はっ、まさか嫌いじゃないんですか!?」

幼「ふふっ」

幼「男は私の恋人です。私は愛されてるんです」

幼「諦めて、潔く身を下さい」

男「や、幼と恋人じゃないよ」

幼「……っ!」

男「今までも、これ以降も」

幼「これ以降もって……」

男(今の幼と結ばれても、誰も幸せにはならない)

男「そのままの意味だよ」

幼「……なんで」

幼「私の何がいけないの……よ」

男「それは――」

男「幼が『幼』じゃないからだよ」

先輩「…………っ」

幼「でも! でもっ、私はっ――」

幼「男を、支えっ」

幼「支えていかないといけない、ぜったい」

幼「ぜったい、そうしないとだめなの……っ!!」

幼「うっ……う」ポロ

先輩「……っ」

先輩「この子……」

男(また幼を泣かせちゃった。この姿を僕は……)

男(……どうしようか……)

男「はぁ」

幼「うぐっ……グスッ……」ポロポロ

幼「もう……ヤダ……私が死ねば……」ポロポロ

男「……っ」

幼「グスッ…………」ポロポロ

先輩「…………」

男「あのっ」

先輩「……」ふるふる

先輩「わかってます」

先輩「その傘、男くんが使って下さい」
すた

先輩「じゃあね――」
タッタッ

男「……っ」

男(僕は……幼のために、友人も……先輩も……そして、妹……)

男(いや、僕は何を言ってるんだ!!)

男(……っ)

男(最低だ)

◆◇◆◇◆◇◆◇数年前◆◇◆◇◆◇◆◇

男「なぁ、妹」

妹「ん?」

男「好きな人いるか?」

妹「へ?」

男「いや、だから好きな人っているのか?」

妹「……」

妹「い、いるよ」

男「へ~」

男「で、誰?」

妹「ひっ、秘密だからっ、言わないよっ」

男「そっか。僕もいるんだけど」

妹「う、うん……」

妹「そっかぁ……そうだよね……」

男「告白しようかなって思っててさ」

妹「告白……」

男「ああ」

妹「やっぱり相手って……」ぼそっ

妹「はぁ、まだ大丈夫だと思ってたのに……」ぼそっ

男「どうしたの、妹?」

妹「うっ、ううん、何でもないっ! 何でもないよっ!」

男「そうか」

男「あのさ、それで何か良い案ないかな?」

妹「良い案?」

男「えっと、ほら、例えばシチュエーションやロケーションとか、タイミングとか、さ」

妹「……」

妹「私に、聞くかな、ふつー……はぁ」ぼそっ

妹「それなら、あの私たちが初めて遊んだ、あの公園とかどうかな」

男「私……たち?」

妹「そう。おにいちゃんと私、そして――」

妹「おさちゃん」

男「っ!」

妹「ねぇ」

妹「おにいちゃんが好きな子って」



妹「――おさちゃん、なんだよね?」

……
…………
……

……
…………
……

男「……うっ」

男「緊張してきたなぁ」

男「妹のアドバイスどおりに――」

男「ちゃんと夕陽、公園、ブランコ……ってシチュエーションにしたけど」

男「……」

男「大丈夫かな」

男「すー、はー……」

男「……ふぅ」

男「うん」

男「あとは……ちゃんと自分の気持ちを吐き出すだけだ!」

男「よっし、がんばろ!」

……
…………
……

すたすた
幼「男、どうしたんだろ。急に呼び出すなんて」

すたすた
妹「……」

妹「……大切な話があるんだってさ……」

幼「大切な話?」

妹「うん」

妹「あ、あそこにお兄ちゃんいるよ」

幼「あっ、ほんとだ」

幼「ここまでありがとう、妹」

妹「……うん……」

妹(どういう意味の『ここまで』なのかな……?)

幼「男っ」
たったったっ

男「あ、幼ちゃん」


妹「……」

妹「……あーあ」

妹「まぁ、私とお兄ちゃんは兄弟」

妹「だから、繋がりが切れることはないよね……はぁ」

妹「でも……やっぱり、おさちゃんズルイよね」

妹「だっておにいちゃんと……そーゆー関係になれるんだもん……」

だだだただだだだ
だだだただだだだだだだただだだだ

男「……っ幼ちゃん!」

幼「えっ」

妹「っ!!」

妹「――おさちゃんっ!! 危ないっ!!!」
たったったっ

なんでいきなり銃撃戦始まったん?

――――

男「……っ」

幼「い……妹」

妹「……あのさ、おさちゃん……」

妹「わ」

妹「私の『代わり』――」

妹「おにいちゃんを……お願……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

展開に追いつけない
先輩はどこ行ったんだ

すみません、いったん外します

皆が思ってる通り機関銃だろうな

え、マジで銃撃戦なの?

妹は幼が狙われてるのに気付いてとっさにかばって機関銃で蜂の巣になったんだな

>>389
>>366の一番上。

>>386 >>393 >>394 >>395
すみません、トラックが近づいてくる擬音語でした。

◆◇◆◇◆◇◆◇現在◆◇◆◇◆◇◆◇

◆◇家◆◇

男「ふぁあ。よく寝た」

男「……夢……」

男「……あっ」

男「今日、先輩来るかな」

男「昨日はああなったしな……」

男「ていうか」

男「部活どうしよう……。凄く気まずいことになりそうだな」

男「……」

男「やばっ、時間だ!」

男「早く準備して学校に行かないと!!」
すたすた

……
…………
……

◆◇教室◆◇

男(……う)

ざわざわ
「でさ――」
「うんうん」

「ありえねーよ」
「あははっ」
ざわざわ

男(僕って本当にぼっちだよなぁ)

男(女さん、元気にやってるかなぁ)

男(……いや、彼女のことだから、きっと直ぐに人気者になれるよな……)

キーンコーンカーンコーン

男(……はぁ)

男(部活どうしようかな)

男(ちょっと気まずいよな……やっぱり行かない方が……)

男(いや)

男(行こう)

……
…………
……

◆◇部室◆◇

男「こんにちは」
ガラガラ

先輩「あ、男くん。こんにちは」

先輩「今日来てくれて本当に良かったです」

男(すごく片付いてる……この部室……)

男(先輩の私物が整理された……?)

男「――え」

先輩「ほら、座って下さい」

男「あっ、はい」
ガタッ

先輩「むかしから、伝記とか言い伝えは、人から人へ口で伝えられ、それから紙に言葉を載せるようになり、そして印刷技術の進歩で速く複製されるように――」

男「……?」

先輩「今日の部活は、私が口でお話をして、それを男君が聞くのです」

先輩「つまり、原点回帰で今の文学を見直すのです」

男「は、はい」

先輩「といっても、話は何百、何千年も前の話――というわけではないです」

先輩「そして、おもしろくも無く、普通の話、ですよ」

男「……」

先輩「ある兄弟の――いじわるな姉と、いじめられっ子な弟の――話です」

……
…………
……

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

弟「あっ」
パリーン

姉「またなの?」

姉「またグラス割っちゃったの?」

弟「う……」

姉「本当、どんくさいなぁ」

弟「ご、ごめんなさい」

姉「おとーと君は、しょうもない失敗ばかりしますよね」

弟「……」

姉「なんでこんなに馬鹿なのかなぁ。私の弟なのに」

弟「……う」

姉「……ふふっ」

姉「おとーと君可愛い……ふふっ」ぼそっ


弟「……うう」

姉「ごめんね、言い過ぎたね」


……
…………
……

……
…………
……

ぱくぱく
弟「美味しいね、ごはん」
にこにこ

姉「そうだねぇ」

姉「でも、弟くんも美味しそうだよ……ふふふ」

弟「え?」

姉「何でもないよ」ニコッ

弟「ふーん」
ぱくぱく

弟「っ」
すとんっ

姉「おとーとくんっ?」

弟「あ、あれれ……ごめんなさい、箸落としちゃった」

姉「どんくさいなあ」

姉「ほんと、これじゃあ生きていけないよ」

姉「私が支えてあげないといけないなあ」

弟「お……お願い、します」

弟「お姉ちゃん、これから助けてね?」

姉「ふふっ、当然です。私はお姉ちゃんなんだもん」

弟「えへへ」

……
…………
……

姉「弟くん、一緒にプールに入ろっか!」

弟「えっ、プール?」

姉「そうだよっ! おとーと君の好きなプールだよっ!!」フーッフーッ

弟「お姉ちゃん、鼻息あらいよぅ」

姉「おっとと、失礼」

姉「じゃっ、用意してね!」

……
…………
……

弟「お姉ちゃん」

姉「はい」

弟「水着とタオルの用意できたよー」

姉「ん、よし」

姉「じゃあ、ついて来てね」

弟「うん」
すたすた

姉「……」
すたすた

弟「お、お姉ちゃん!」
すたすた


弟「なんでお風呂に向かってるの?」


姉「それは、そーゆーことだからだよ、おとーと君っ!」

弟「……そうなんだぁ」

……
…………
……

姉「さて、バスルームに到着しました」

姉「というわけで――」

姉「ほらっ、脱いで!」

弟「わっ、うっうう」
ザッ
ズバッ

姉「Oh...You have a cute sausage!lol」

弟「……」

姉「……えっと」

姉「下品なこと言ってごめんね」

弟「うん……」

姉「え、英語わかるんだね」

弟「そりゃあだって、お姉ちゃんと同じくらい向こうにいたからね!」

弟「ていうかお姉ちゃん、lolは口に出して言うものじゃないと思うよ!!」

姉「ナイスツッコミ!」

姉「ツッコミを叩き込んだ甲斐があったってもんだね!」

弟「……はぁ」

弟「はいはい……」

姉「さっ、入るよ!」

弟「ちょっと、お姉ちゃん! 裸なんだよっ、僕たち!」

姉「そりゃあね。だってお風呂だもん」

弟「あーそっかあ」

姉「そーだよ、おとーと君」

弟「そう納得しないからねっ?」

ぐいっ
姉「いいからっ!」

弟「ていうか、そんな格好――」

弟「恥ずかしくないの!? 弟の前でっ!」

姉「ぜんぜんっ。えっへん」

弟「いばんな」


姉弟母「――ただいま」

姉弟父「帰ったぞー」


姉「WTF!」

弟「か、帰ってきちゃったね……あはは」

弟「急いで服を着ようか」

姉「そ、そうね……」

姉「チャンスだったのに」ぶつぶつ

弟「お姉ちゃん?」

姉「何でもないよっ、ふんっ!」

弟「ま、また……今度」

弟「二人がいないときに……ねっ」ぼそっ

姉「っ!!」

姉「えへへ、うんっ!」

姉「弟くん、大す――」

弟「あ、あれれっ……」ふらっ

姉「弟くんっ!?」

弟「おね……ちゃ」バタンッ

姉「おっ」

姉「おとーさん! おかーさん!!」

姉「どうしよ……っ。弟くんがっ!!!」

……
…………
……

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

先輩「――そして、その弟は、入院してしまい」

先輩「そして憐れ、とうとう姉と会われなくなりましたとさ」

先輩「めでなくなし、めでなくなし」

男「……」

男「先輩」

先輩「どうでしたか、男くん?」

男「そ……その話、もしかして――」


先輩「ごめんね」


先輩「私、後輩の男くんと弟を重ねてたんだ」

先輩「無意識に、じゃなくて意識して」

男「……」

先輩「ちょうど、生きていれば男くんと弟くん同じ歳だから」

男「えっと……」

先輩「わかってる!」

先輩「もし生きてたら僕とキャラ被ってたじゃねぇか、って思ってるんでしょ?」

男「違いますよ!!」

先輩「ふふっ、うん。わかってる」

先輩「でもね、この話に感想なんていらない」

先輩「むしろして欲しくない……」

先輩「だけど、私は謝りたかったの」

男「先輩……」

先輩「ごめんね、『おとこ』君」

先輩「本当にごめんなさい」

先輩「それから、ね」

男「は、はい、なんですか?」

先輩「お願いがあります」

男「……」



先輩「別れてください」



先輩「つまり、私たちのこの関係を終わらせましょう」

男「――っ」

先輩「私、最初に言いましたよね」

先輩「理由を男くんが知ってしまったら、関係を終わらせるって」

男「……っ」

先輩「もう、これまでです」

先輩「男くんも、あの女の子の件でそう思ってますよね」

男(幼のことか……)

男「……はい」

男「わかりました」

先輩「ふー」

先輩「打ち明けられて良かった」

先輩「もし、付き合ってて、打ち明けなかったら――」

先輩「私は本当に酷いことを男くんにしてたことになるから」

男「先輩……そんなこと……」

先輩「ううん」

先輩「そしてこれから、改めて――」


先輩「私と付き合って下さい」


男「っ!?」

先輩「私がしたこと、わかった上で言ってるの」

先輩「そして、男くんが、これから私を振ることも」

男「先輩……」

先輩「私は男くんと一緒にいて楽しい。嬉しい」

先輩「それこそ、私自身がフリだってことを忘れるくらいに」

先輩「弟のことは今でも好き。でも、男くんのことも好きになっちゃったの」

先輩「弟と男くん――意識して重ねようとしても、やっぱり違う。男くんは頼れる。そんなところは弟には無かった」

先輩「私は男くんのそんなところに、ドキッとさせられた」

先輩「弟への『好き』とは少し違った『好き』になったんだと思う」

先輩「『男くん』の口から返事を聞かせてくれる……?」


男「すみません、大切な人がいるんです」

男「僕はその子のために生きたい」


先輩「うん」ニコッ

先輩「あなたは、とっても魅力的です」

先輩「私が保証します。あなたはきっと報われる」

先輩「そして、ありがとうございます。返事をしてくれて。今まで私につきあってくれて」

男「……先輩……」

先輩「――最後の部長命令です」

先輩「あなたは幸せになって下さい――」

……
…………
……

明日バイト早いのですいません、ここで落ちます…

…またヒロイン不人気…

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
たったったっ
男「幼ーっ幼ーっ」
幼「男…?」
男「幼っ!言いたいことがあるっ!私が彼を落とした100の方法でもなくって、幼。君が好きだ!」
幼「……っ!でも…男には先輩がいるでしょ。」
幼「それに黙っていたけど私は男よ」
男「何…だと?」

ていうか、スレタイが先輩で先輩を書きまくっといて
ヒロインじゃないだと?これはあんまりだろ
先輩EDか先輩ルートを別に書かなかったら
VIPPER総力を上げて>>1追い込むからな?

>>514

  じゃあお前書け           ___
               /     \
             / ─    ─ \
            /  (●)  (●) \
              |     (__人__)     |
           ,.゙-‐- 、  `⌒´   ,/
        ┌、. /     ヽ ー‐  <.
         ヽ.X、- 、   ,ノi      ハ
      ⊂>'">┐ヽノ〃     / ヘ

       入 ´// ノ        } ,..,.._',.-ァ
      /   `ー''"´      ,'  c〈〈〈っ<
     /          __,,..ノ ,ノヽー'"ノ
      {          ´    /  ``¨´
    /´¨`'''‐、._        ,'\

     ∨´     `ヽ、     ノ   ゙ヽ
      ∨      ヽ _,,..-'"    `ヽ
     ∨       〈-=、.__       }
      ヽ、     }   ``7‐-.  /
          ヽ     リ    /′  ノ
          /′  , {     /   /
        {     !   ,ノ  ,/′
          !    /  /   `‐-、
        !   ,/   ゙ー''' ー---'
          ',  /
        {   }
           ゙Y `ヽ、
            ゙ー--‐'

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

男「――幼!」

幼「! え……お、男?」

男「俺……決めたよ」

幼「きゅ、急に何よ?」

幼「それに……決めたって、一体何を?」

男「……」すーはーすーはー

男「俺は……」

男「俺は、大切な人のために生きるって、先輩に誓ったんだ」

幼「……?」

幼「…話が、見えないんだけど」

男「俺さ、考えてみたんだよ」

男「幼にストーカーされて、女さんに告白されて、先輩に告白されて」

男「けれど二人ともフッて、考えてみたんだよ」

男「俺の大切な人は、誰だろうって」

幼「………」

男「で、考えた結果、自分がどれだけバカだったのかに気づいた」

男「大切な人なんて、考えるまでも無く、ずっと近くに居てくれてたのにな」

男「俺の大切な……いや、大切だった人は…」


男「――妹だ」

幼「!!」

幼「え……それって、どういう…こと?」

男「そのままの意味さ」

男「俺は女さんよりも、先輩よりも、幼よりも」

男「誰よりも、妹が大切だったんだ」

幼「男……」

男「でも、妹はもう居ない」

男「妹に『代わり』を託されたお前も、妹の『代わり』であって、妹自身じゃない」

男「大切な人の為に生きようにも、初めから大切な人なんざもうとっくの昔に居なくなってたんだよ」

幼「男……一体何を…」


男「だからさ」

男「俺、妹の所にいくよ」


幼「!?」

男「俺は妹の傍で、妹の為に生きるんだ」

幼「ま、待ってよ! それってどういう……!!」

男「……そういう訳で、お別れを言いに来ただけだから」

幼「ちゃんと説明してよ男! 妹ちゃんもう死んじゃってるじゃない! しっかりしてよ!!」

男「じゃあな、幼」

幼「急に来て訳わかんないこと言って帰らないでよ! 解るように説明してよ! 別れの挨拶なんてしないでよ!」

男「………好きだった」

幼「いや……いやっ……! 行かないで! おとこぉーーーーーーっ!!!!!!!!ほしゅ」

>>545
こんなエンドもありだなww

>>1マダー?

お股せしました! バイトおわりました

今から投下していきます

……
…………
……

◆◇帰り道◆◇

男「……」

男(……先輩)

男(僕は……)

男「……ね」


幼「――っ」


幼「やっぱり気付いてたんだ」

男「当然だよ。他でもない幼なんだから」

>>554
あ?

幼「う、うわ」

幼「まさかいつも気がついてたの?」

男「逆に、気付かれてないと思ってたの!?」

男「さっきカッコつけたこと言ったたけど、普通の人間なら誰でも、この距離なら気がつくと思うよ!?」

幼「そ、そうだったんだ……」


男「はぁ、もういいよ」

男「また幼に聞きたいことがあるんだけど……」

幼「私に?」

幼「んー」

幼「あ、私の特別な人のこと?」

男「ちがうよ! それはわかってるよ! 言わなくていいよ!!」

幼「ふーん……じゃあ言ってみて? 間違えると思うけど」

男「……」

男「どうだろうな……」

キター

DEAD ENDだけは勘弁してください

男「ま、それはおいといて」

幼「……うん」

男「聞きたいんだけどさ――」

男「人が誰かの代わりになることってどう思う?」

幼「――っ」

幼「……えっとさ」

幼「その質問に意味はあるの?」

男「……」

幼「この私に、その質問をする意味があるの?」

男「意味?」

男「意味はあとから生まれる。意味があるとか無いとかじゃなくて」

男「意味があったか無かったかの問題だから」

男「幼の返答しだいで意味の有無がかわるよ」

幼「……ん?」

幼「どういうこと?」

幼「簡潔に言って」


男「いいから答えて――ってことだよ」

幼「私は――」

幼「そうしなきゃいけないなら、仕方ないと思う」

幼「悪いことじゃないと思う」

男「……うん」

男「そっか」

男「じゃあさ」





男「僕が誰か――例えば元彼女の弟――の代わりをしても?」

幼「えっ……え、えと」

幼「それって……どういうこと?」

男「幼は言ったよね――そうしなきゃいけないなら仕方ない」

男「必要性があれば、人が他人として生きるのも仕方ない、そういうことだよね?」

幼「……っ」

幼「で、でもっ、男はっ」

男「僕はなんなの?」

幼「男はダメ……だよ……」

男「なんでダメなの?」

幼「……」

男「……じゃあ」

男「逆に、幼は良いの?」

男「幼は誰か――例えば僕の妹――の代わりをしても良いの?」

幼「――っ」

男「よくないんだよ」

男「代わりをする、なんてダメなんだよ」

男「幼は妹以外の人にそうすることなんて、望まれてないんだよ……」

男「だから」

男「はっきり言うね」


男「妹のいったことは忘れてくれ」


幼「――っ」

男「このまま妹の言葉に従って」

男「幼が幼ちゃんじゃなくなったら」

男「……僕は」

男「僕は幼ちゃんまで失うことになってしまう」

幼「……お、男」

男「幼ちゃんは年下なのに、しっかり者で、引っ張って行く方――だった」

男「あの頃の幼ちゃんを……か」

男「返して……返してよ……」

男「ねぇ幼! あの幼ちゃんを返してよ!!」

男「妹なんか忘れてくれよ!!」

男「僕を……僕を幼ちゃんの特別にしてくれよ!!!」

幼「――男っ」

幼「私は――」

幼「それで……良いのかな……?」

幼「妹は……許してくれるかな……」

男「わからない」

男「でも、僕はこう思ってるんだ」

男「妹は『私の代わり』に『私の分』まで僕を頼む――って言いたかったんじゃないかな」

男「つまり、幼は妹の分も合わせて僕を――って」

男「でも、これは都合の良い解釈かもしれない」

男「だけど、真意は妹にしかわからないからね」

男「ま、違っても、怨まれるのは幼ちゃんだけじゃない……僕も一緒だよ」

幼「あのね」

男「うん」

幼「妹は男が好き」

幼「でも、あのとき消えた『私』も男が好きだった」

幼「だけど、私はそれを隠した」

幼「でも、これから私は――『私』は男を好きでいるね」

幼「『私』の好きが無いのが男を苦しめるなんて、嫌」

妹「それに、男を苦しめるのは妹も望んでいないよね」

男「幼……」

幼「ふー……」

幼「私たちの関係を変えたのが先輩なら、少しは先輩に感謝した方が良いのかな……」

男「あはは」


幼「あ、あのさ」

幼「あのとき……妹がああなった日、男は私に告白しようとしてたんだよね」

男「っ!? 気付いてたの?」

幼「普通の人間なら誰でも、あの雰囲気なら気がつくと思うよ!?」

幼「ま、いいよ」

幼「えっと、行動派の『私』は自分から言っちゃうね――」



幼「男、付き合って下さい」

妹蘇ったぞ

誤字くらい見逃してやれよ

>>583 >>584 あ


今から、先輩サイドを書きます。
すみません、少し外します。

男「幼、ありがとう。おねがいします」

男「……でも格好つかないなあ」

幼「ふふっ、数年前の男っぽくて良いと思う。個性だよ、個性」

男「やっぱり、ものは言い様なんだなぁ」

幼「ん?」

男「いや、何でもない」

男「それでさ――」



男「妹に会いに行かない?」



幼「――っ!」

……
…………
……

◆◇妹の病室◆◇

ガラガラ
男「……」

幼「……あ、い、妹」

男「全然変わってない」

男「もし目が開いても、数年の変化に追いつけなくて、浦島太郎みたいな気分になりそうだよね」

幼「……」

男「ずっと、あの事故から一度も目を覚ましてない」

幼「……うん」

男「妹はもうこの世界にいない、目の前にいるのは抜け殻なんじゃあって思うことがある」

幼「……うん」

妹「……」

男「妹、報告に来たよ」

男「あのね、僕たち、付き合うことにしたんだ――」

妹「……」

男「――っ」

男「わ、わらったようにみ、み見えなかった!? ね!?」

幼「う! うん!」

男「きっと、きっと許してくれたんだよ、妹も!」

幼「い、妹……っ」




男「幼、幸せにするからね!」


幼「うんっ」

これからは先輩視点の話です。

その前にご飯……

男が中心の話はこれで終わりです。
if√はするかしないか分かりません……。


これからのは先輩の中心の話で、if√じゃないです。
それと、内容は 『弟の入院』 からです。


※姉=先輩です

◆◇◆◇◆◇◆◇数年前◆◇◆◇◆◇◆◇

◆◇弟の病室◆◇

姉「……弟くん……」

姉(お父さん、お母さんはアレだし……)

姉(私くらいは元気に接しなきゃ、ね)

姉「よし……」

ガチャッ
姉「弟くん! きたよー!!」

弟「わ、お姉ちゃん」

姉「弟くん、暇そうだね」

弟「ううん、外を眺めてた……から」

姉「うっわ」

姉「く……暗い!!」

姉「弟くん、地の根暗があふれ出てるね」

姉「なんていうか、もう葬式かってくらい暗いね」

弟「…………」

姉(あー)

姉(もしかして私、病院で、しかも患者の前でスーパーNGワード出してる?)

姉(しかし、まぁ、傷ついてる弟くんも可愛いなぁ、えへへ)

弟「……う、う……」

姉「……ふふっ」ニヤ

弟「あ、あのさ、お姉ちゃん」

姉「何かな、弟くん!」

弟「今日もお見舞いに来てくれてありがと」

姉「ううん」

姉「今日はお見舞いじゃないです」

弟「……えっ?」


姉「お医者さんごっこをします」


弟「お、お医者さんごっこ?」

姉「うん、そうだよ」フーッフーッ

姉(弟くんの華奢な体……華奢な体……華奢な体……華奢な体……華奢な体……華奢な体華奢な体華奢な体華奢な体華奢な体体体……)

弟「お姉ちゃん、鼻息あらいよぅ」

姉「おっとと、失礼」

姉「っじゃあ、脱いでくれたまへ」

弟「う、え」

姉「さっさと脱ぐ!」
バサッ

弟「……うう」

姉「まぁ、がりがり!」

姉「男性としてどうなのよ! ねぇ!? 肉たべなさい、肉を!!」

姉(これ絶対に私より体重軽いでしょ……。……うう……)

弟「……うう……」

コンコン
看護師「弟く――」

姉「糞ババアが。じゃますんなや……」

弟「お、お姉ちゃん、口調、口調!」

姉「――はっ!」

弟「いつものお姉ちゃん男くんじゃなかったよ」

姉「ふぇ? はにゃにゃ?」

弟「ごめん、それは客観的に見ても可愛い」

姉「か、かわっ……かかかかかかかわ」

姉「――っ!?」

看護師「あの……」

姉「す、すみません! ちょっと出て行きますっ!!」
たったったっ

◆◇妹の病室◆◇

男「……妹……」

母「ぜんぜん意識もどらないね」

男「……」

母「いつ戻ってもおかしくはない、そうお医者様は言ったけど……」

母「もし、このまま」

母「寝……寝――ううん、なんでもない」

男「母さん……」

男「……えっと、あのさ」

男「ちょっと出てくるね」

……
…………
……

ガラガラ
男「……」

姉「――っ!」
くねくね

男「…………」

姉「ふふふひ」
くねくね

姉(やばかったよぅやばかったよぅ! 弟くん可愛すぎでしょ!! むっはー!!!)
くねくねくねくね

姉「でへでへ」

男「……」

男(あー……なるほど、道理で小児科医が不足するわけだ)

男(いろんな患者さんがいるんだなぁ……)

男(お……お大事に)

……
…………
……

……
…………
……

◆◇弟の病室◆◇

姉「弟くーん!」

姉「可愛いお姉ちゃんが来たよー!!」

弟「……」

姉「あー……あれ、れ」

弟「……」

弟「……すー……」

姉「寝とる」

姉「可愛いなぁ、本当に」

姉「気持ち良さそうに寝てるなぁ」
なでなで

弟「…………」

姉「……ふふっ」
なでなで

弟「……スー……」

姉「ふふふっ」

……
…………
……

ガラガラ
姉(ま、あのまま寝かせておくべきだよね)

姉(しかしまぁ、弟くんの寝顔、可愛いのなんのって……でへへへへへ)
くねくね

男「……」

男(うわ、この前の人に会ってしまったわぁ……)

男(くねくねしてて怖いなぁ)

姉「あ、こんにちは」ニコッ

男「こ、こんにちは……」

……
…………
……

……
…………
……

◆◇弟の病室◆◇

姉「来たよ――」

弟「あ、お姉ちゃん」

姉「って、弟くん! えらく髪の毛短くしたね!」

弟「えへへ、似合うかな?」

姉「う、うん、似合う似合うー」

弟「わ、凄い棒読みだね」

姉「き、気のせいなんじゃないの?」

姉「ま、本当言うと昭和初期かって――」

弟「……すー」

姉「お、弟くん?」

姉「……あ」

姉「あ、あれれ」

姉「もう寝ちゃったんだ」

姉「疲れてたのかな」

>>619
意味がわからん

>>619
>>633の「男くん」
は無いものと思ってください

……
…………
……

男「……」
すたすた

男(わ、またあの人だ……あれ、でもくねくねしてない?)

姉「……」

姉「……」ぺこ

男「……」ぺこ

姉(弟くん……あきらかに病気が……)

姉(神様、たすけて下さいっ)

◆◇弟の病室◆◇

姉「弟くーん」
ガチャ

医師「――あ」

医師「どうも……」ペコ

姉「……」ペコ

姉「……」

弟「お姉ちゃん?」

姉「ん?」

姉「あ、弟くんいてたの?」

弟「そりゃいるよ。僕の病室だからね」

姉「いや、どーでもいい」

弟「……う」

姉「弟くんの好きな食べ物を持ってきました!」

弟「本当!?」

姉「はーい、これでーす」

姉「bananaクレープ!! ……………………………………………………の絵」

弟「……えっ?」

姉「うん、そう絵だよ」

弟「……」

姉「ふふふっ、弟くん、バカだね。引っかかってるね」

弟「……うう」

姉(そうそう、この顔が見たかったのおおぉぉぉぉおお!!)

……
…………
……

姉「――じゃ、また来るね」

ガチャ

すたすた
姉「……はぁ」

姉(本当に医者ってケチ)

姉(クレープくらい、いいじゃん)

がさごそ

姉「…………」パクッ

姉「……」

姉(ひとりだと美味しくない……)

姉(弟くんのしょぼんってした顔は好き。可愛いからね)

姉(でも、でもやっぱり喜んでる顔の方が見たいのに……)

姉(もう一緒に食べられないのかなぁ)

姉「ていうか……一人でクレープ二つも食べられないよね……はぁ」

すみません。またちょっと落ちます

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