音無「ようこそ、この天上学園生徒会へ」(176)

生徒A「生徒会長、今日も格好いいよね」

生徒B「そうそう! 憂いを秘めた顔、伏し目がちな目…」

生徒C「なんかもう非の打ち所が無いよね~」

生徒A「あ、ほら。生徒会長が来た!」


NPC「せ~の、生徒会長ーーー!!」



音無「………」

(この世界に来て、本当に沢山の出来事があった)


(天使や影との戦い、戦線の解散、卒業式)

(振り返ればなんて短くて楽しい日々だったんだろう)

(『死んだ世界』でささやかな生き甲斐が見つかるなんて考えもしなかった)

(戦線のメンバーや、直井、ゆり、日向…そして、かなでとの別れ)

(みんな成仏して、もうこの世界には存在しない)

(俺もすぐに後を追って成仏するつもりだった)

(でも、消える前に様々な思いを巡らせていたら…)

(一つの疑問がふと浮かんでくる)

(その疑問というのは、誰しもが考える「もしも」の延長線上にあった)

(もし自分が消えた後に人間が現れて、この世界の秘密に気づいてしまったら)

(敵も味方も居らず、成仏以外では漫然とした永遠を過ごすしかない
 そんなこの世界のシステムに気づいてしまったら…狂ってしまうかも知れない)

(静かに壊れていくのか、それとも激昂と共に病んでいくのかは分からない)


(ただ、もし万が一その人間が狂ってNPCを次々と屠っていくような人物だったら)

(あまり考えたくは無いが、小さな地獄が出来る可能性がある)

(それを回避する為にも…)

(何よりこの学園に来てしまう程の悲しい生前を歩んできた人たちの為にも)

(誰かが幸せへと導いてやらなくてはならない)


(そう考えて俺が思い浮かんだのは、卒業式での皆の晴れやかな顔だった)

(艱難辛苦の生き方をしても、最後は笑顔で消える事の出来たあいつらの顔を俺は忘れない)


(そう…どんなに辛い人生でも、この学園で幸せの名残を見つける事は出来るんだ)

(卒業させてやりたい、この世界に来た悲しい人たち全てを)

(願わくば、彼らが迎えるその瞬間にありがとうって、言ってもらえるように…)

(俺はここで誇らしく生きていたい)


(『人生を素晴らしいと思い出させる』存在でありたい)

(そう思った瞬間、自分の選択肢から「成仏」の二文字が消えた)



(そして俺は今、生徒会長としてここにいる)


――放課後 生徒会室――


音無「……これで今日の分は終わりだな」

生徒「生徒会長、お先に失礼します」

音無「ああ、お疲れ様」

生徒「生徒会長はまだ上がらないのですか?」

音無「今のうちに資料をまとめておきたいから、もう少し残っておく」

生徒「それでしたら私も手伝いますよ」

音無「いや、いいよ。今日の定例は長くて大変だったろう。
   臨時で生徒会の手伝いをしてくれる生徒に無茶ばかりはさせられないさ」

生徒「そ、そうですか…」

生徒「では、改めて失礼させて頂きます」

音無「分かった」

生徒「生徒会長も根を詰めるのは結構ですが、どうぞご自愛なさってください」

音無「分かった」

生徒「もう、いつもそんな空返事ばかりなんだから」

音無「気遣いありがとな。……え~と」


生徒「マミです。巴マミ」

音無「ああ、そうだったか」

マミ「全く…生徒会長はいつになったら名前を覚えてくれるのかしら?」

音無「はは、悪い悪い。今日もご苦労さん」

マミ「いえいえ。…それでは」

音無「じゃあな。気をつけて帰れよ」



音無「NPC相手に何をやってるんだかな、俺は」

音無「……あの子と話していると人間相手の反応みたいで、つい人恋しくなっているのか」

音無「さて、生徒会の仕事はこのくらいでいいだろ」

音無「…日が暮れる前にアレやっておくか」


――植物園――


音無(せっかくあいつが育てたんだし、枯らすのは勿体無いよな)

音無(それに、こうして土をいじるのも意外と悪くない)

音無(というか、案外こういう作業って俺の性に合っているのかも知れない)


音無(……どんな気持ちで過ごしていたんだろう)

音無(少しくらい、俺はお前に触れることが出来ているのか)


音無「……なぁ、かなで」

音無「…腹は減ってないけれど、そろそろ夕食でも食べに行くか」



「おい」

音無「ん?」


「おい、そこのアンタ」

音無「!?」

○○「色んな奴に聞きまくってようやく見つけたよ」

音無「お、お前…」


○○「アンタさ、生徒会長だろ?」

音無「あ、ああ……」

○○「よし、ビンゴ! ようやく鍵持ってそうな人と遭遇できた!」


○○「それじゃあ単刀直入に伝えるよ。ここは『死後の世界』ってやつ?天国なのか?」

音無「お前、なんでここにいるんだよ…?」

○○「変な事を聞くんだな。そもそも、今はアタシからの質問の番だ。
   質問を質問で返すってのは非礼じゃないか?」

音無「あ、ああ。 確かにそうだった、悪いな」

○○「ん、分かればいいんだよ。 それで、回答はどうなんだい?」


音無「ここは『死んだ世界』の天上学園。
   お前の考えているとおり、死後の世界だ」

○○「なるほどね、やっぱりアタシは死んだワケか。
   死んだ原因やここにいる理由は分からないけれど、
   何となく死んだってのは理解していた」

音無「そうか…」

音無「この学園に来る人には一つの共通点がある」

○○「共通点?」

音無「『前世に青春を謳歌できず、何らかの悔いを残して死んだ』という事だ」

○○「悔い、ねぇ」

音無「まぁ、例外もあるがそこは割愛させてもらうぞ」

○○「ここって凄い人数の生徒がいるけれど、そいつら全員前世で悔いを残して死んだの?」

音無「それは違う」

○○「は?」

音無「この学園の大半の奴は、人間じゃない」

○○「じゃあ何? 幽霊か幻覚の類だっていうのか?」

音無「彼らはNPC、まぁゲームで言う村人その1みたいな存在だ。
   淡々と日常を送り、この世界が『死んだ世界』であることに何の疑問も持っていない」

○○「ふーん。張りぼてみたいなヤツらだね」

音無「だがNPCにも感情は存在する。
   殴ったりすると怒るし、優しくすると懐かれるぞ」

音無(だからこそ、人間なのかNPCなのか見分けが非常につき難いんだが…)


○○「へぇ…。今度試しにくすぐってみるか」

音無「ちょっかいは程ほどにな」

音無「…ここまで説明しても分からないか?」

○○「何のことを言ってるのか、さっぱりだね」


音無「いや、正確には『思い出せない』のか?」

○○「……」



音無「おい」

○○「…何だよ」


音無「久しぶりだな、岩沢」

岩沢「い、わ、さわ…? それ、アタシの名前なのか?」

音無「本当に覚えていないと来たもんだ」

岩沢「……悪いかよ」

音無「いや、別に悪いって言ってるつもりじゃないんだが」

岩沢「そもそも、なんでアンタは私のことを知ってるの?
   生前の友人? それとも、この学園で知り合ったの?」

音無「落ち着けって。 矢継ぎ早に質問されても答えにくいだけだ」

岩沢「わ、悪い」

音無「……」

音無「記憶を失うってのは、凄く不安だからな。気持ちは分かる」

岩沢「……何が分かるっていうんだ」

音無「分かるさ」

岩沢「え?」

音無「俺も、ここに来た当初は記憶喪失だった」

岩沢「そ、そうなんだ…」

音無「お前からはMr.記憶喪失みたいなニックネームも貰ったんだぞ」

岩沢「どんなセンスをしてたんだよ、当時の私」

音無「頭部に強い衝撃を伴ったり、脳にダメージがある状態でこの世界に来ると
   それが要因で記憶喪失になることがある」

岩沢「それじゃあ頭に怪我して死んだって事になるのか」

音無「言い切れるわけではないが、可能性としては充分に在りうるな」

岩沢「……なんかその話を聞いたら妙に頭の中がぐわんぐわんしてきた」

音無「ま、それは多分さっきの話からのプラシーボ効果って奴だ。
   人の話をあまり鵜呑みにするもんじゃないぞ」

岩沢「そんなモンか。まぁ気のせいって言われちゃそれまでの話だけど」

音無「ま、色々聞きたい話もあるだろ。 その前に、とりあえずメシでも食べるか」

岩沢「ちょっと待て、死んだ身なのに何か摂取しなくちゃいけないのか?」

音無「この世界にいる人間の肉体は不死身だから摂取しなくても何とかなるんだが…」

岩沢「思わせぶりな言い回しだね」

音無「食べ物を取らずにいると、当然餓死する。
   そして餓死する前の状態に戻って、それでもまた食べ物を取らずにいると餓死する」

岩沢「…つまり、何か胃にモノを詰めないと嫌な永続ループが待っているわけだ」

音無「そういうこと。 栄養は摂って悪いものじゃないしな。
   ほら、さっさと行くぞ」

岩沢「お、おい、ちょっと待てって」


――学食――


音無「さって、と。お前は何食うんだ?」

岩沢「胸がいっぱいで、とてもじゃないけど何か食べる気にはならないよ」

音無「そうか、そりゃ仕方ないな」

岩沢「それよりもアンタさ」

音無「なんだ?」

岩沢「何その真っ赤な食べ物。…ていうか、食べ物?」

音無「ああ、マーボー豆腐だよ」

岩沢「また禍々しい色合いしてるね……」

音無「言っとくがやらんぞ」

岩沢「頼まれても食べやしないから安心して」

音無「さて、まず何を聞きたい?」

岩沢「この学園からの脱出条件」

音無「脱出条件、か。言い得て妙だな」

岩沢「それで、この箱庭から出れる方法はあるの?」

音無「ある」

岩沢「!」

音無「しかし、今のお前ではかなり難しい条件になるだろうな」

岩沢「…どういう事さ」

音無「この学園は『生前に悔いを残した人だけ』が来れる、というのは話したよな」

岩沢「さっきの説明の焼き増しは結構だよ」

音無「つまり、本当の死を迎えるまでのモラトリアムを設けた場所でもあるワケだ」

岩沢「……」

音無「この学園からお前が出る方法は、一つ」

岩沢「……言わんとしている事は分かった。つまり、悔いを晴らせばOKって事か」

音無「そういうことだ」

岩沢「なるほどね、そりゃ確かに出るのが難しそうだ。
   何せ私はその『悔い』自体が思い出せないんだからな」

音無「まぁ、別に悔いを晴らさずとも学生生活を続けるうちに自然と成仏できたりもするが」

岩沢「成仏ってアンタ…」

音無「死人未満で、生者未満。それってつまり幽霊みたいなモンだろ?
   あえて言うなら成仏って単語が一番しっくりくるワケだ」

岩沢「な、なんか変な気分だね…」

音無「それに学園からの脱出ってのも少し違う」

岩沢「?」

音無「一般的に学園から去るときは退学以外に何があると思う?」

岩沢「……『卒業』、か」

音無「その通り」

音無「つまり、お前の悔いが無くなれば晴れて天上学園卒業ってわけだ」

岩沢「卒業したらどうなるのさ?」

音無「知らん」

岩沢「…随分と投げっぱなしだね」

音無「俺は神様や仏様じゃないからな。
   大まかな予想だと転生して、多分次の人生を歩み始めるんだと思うぞ」

岩沢「へぇ、アンタって仏教的な考えを持ってるんだ」

音無「転生先が人間なのかフジツボなのかは神のみぞ知る選択でもあるがな」

岩沢「フジツボ!?
   そ、そんなのに生まれ変わる可能性があるなら、流石にちょっと躊躇うかも」

音無「これはほぼ9割受け売りだから、あまり信用しなくてもいい」

岩沢「受け売り?」

音無「ああ。 ……卒業生の一人からの受け売りさ」

音無「なぁ」

岩沢「何?」

音無「ゆり、って名前に聞き覚えは?」

岩沢「…悪いけど」

音無「じゃあ、ガルデモ」

岩沢「がるでも?」

音無「Girls Dead Monsterの略称なんだが」

岩沢「…それもピンと来ないね」

音無「ひさ子、関根、入江、ユイ」

岩沢「……アンタが知ってる、私の知り合い?」

音無「ああ」

岩沢「悪い、どれも思い出せない」

音無「……そうか」

岩沢「でも、さ」

音無「?」

岩沢「なんだろう、その名前を聞くと」


岩沢「懐かしい気分になるね。 もしかしたら、心のどっかで覚えてるのかも」

音無「…そうか」

岩沢「…何アンタ変な顔してんのさ」

音無「いや、お前はやっぱり…岩沢なんだなって思っただけだ」

音無「何か覚えている事は?」

岩沢「そうだな…音楽が好き、だったような気がする」

音無「具体的には?」

岩沢「まず外せないのが『SAD MACHINE』だな」

音無「ほぅ」

岩沢「そのバンドの特徴としてベースとドラムの土台作りが完璧な点にあるんだ」

音無「お、おぅ」

岩沢「そして歌詞のメッセージ性。
   コレを語らずして何を語る、ってなくらいに歌詞に色がついているバンドさ」

音無「な、なるほどな…」



音無(なんか嫌な予感がする……)

~二時間後~


岩沢「それでだな! その曲の転調がまたメロウでたまらないんだ!」

音無「あ、ああ…」

岩沢「何だよ、お前から話を振っておいて呆れ顔とは失礼な奴だな」


音無「おい」

岩沢「何、まだ聞き足りないの?」

音無「お前はやっぱり岩沢だよ」

岩沢「突然なにさ」

音無「いや、なんでもない……」

音無「そ、そろそろ食堂も閉まる時間か」

岩沢「結局聞きたいことはほとんど聞けなかったね」

音無「誰の所為だ、誰の」

岩沢「はは、あんまりカリカリするなって」

音無「全く…とりあえず当面の事柄について軽く説明しておくぞ」

岩沢「よろしく頼むよ」

音無「まず今後の生活についてだが、明日にでも事務室に奨学金が用意されているから
   ちゃんと受け取るようにしておくこと。いいな」

岩沢「奨学金って…返す充てなんて無いんだけれど」

音無「別に返さなくてもいいんだ。そこまで生きていた頃のルールに縛られなくてもいい。
   月に一度払われるからそれを当面の生活資金にしておけば問題ないだろう」

岩沢「そっか」

音無「次に就寝場所だが、この学園は基本全寮制となっている」

岩沢「げ。まさか男女一緒に寝ているワケじゃないよな」

音無「当然だ。女子寮にお前の部屋も準備されていると思うから
   しっかり確認して部屋を間違えないように」

岩沢「アンタ…ひょっとしておせっかい?」

音無「生徒会長として困った生徒を助けるのは当然だ」

岩沢「ああ、アレか。 なんて言ったっけ、ツンデレ?」

音無「記憶無いのに余計な知識は持ち合わせているんだな、お前…」

音無「時間も時間だ。今日はこの辺で切り上げてもいいか」

岩沢「ああ、充分さ」

音無「悪いな、あまり疑問に答えてやれなくて」

岩沢「気にするなって。 脱線した原因はアタシにあるんだし」


音無「困った事があれば生徒会室に来い。俺はそこで待っているから」

岩沢「はいはい、了解」


――食堂前――



岩沢「そうだ」

音無「?」

岩沢「帰る前に一ついいかい?」

音無「ああ、いいぞ」

岩沢「アンタの名前、教えてよ」

音無「…音無」

岩沢「ふーん。下の名前は?」

音無「結弦。 弦を結う、って書いて、結弦」

岩沢「そっか」

岩沢「今日は助かったよ、生徒会長サマ」

音無「気にすんな」

岩沢「アタシは記憶が無いから実感湧かないけれど、せっかく再会できたんだろ?
   ま、どんな縁かは知らないけれど気楽に頼むよ」

音無「ああ、お前の記憶が戻る手伝いくらいなら気楽にいつでも請け負ってやる」

岩沢「はは、そりゃ頼もしいや」


岩沢「んじゃ、おやすみ」

音無「ああ、おやすみ」



音無(おやすみ、か……本当に、いつ以来だろう。ちゃんと芯のある挨拶を告げたのは)


~翌日~


――生徒会室前――



音無(…昨日は懐かしい奴と会えたな)

音無(…いくつかの疑問は残るが、それは追々考えることにしよう)


音無「ん? ……空いてる」


ガチャ



岩沢「よぅ、生徒会長サマ」

音無「お前…もう来たのか」

岩沢「なんだよ、昨日はお前から来てもいいぞって言ってたじゃないか」

音無「朝一番に来るのは流石に予想外だったよ」

岩沢「いいだろ、別に」

音無「はぁ…ま、別に構わないが」

岩沢「そうだ、せっかくだから昨日言ってた事務室まで案内してよ」

音無「案内?」

岩沢「これだけ広い学園だろ、迷子になる前に保護するのも生徒会長の務めじゃないのか」

音無「…分かった。今日は特に公務も無いから案内くらいしてやるよ」

岩沢「そうこなくっちゃ!」



音無「それじゃあ行くか。ついて来いよ、記憶無し子」

岩沢「何だよその呼び名……」


――事務室――


先生「はい、それじゃあ奨学金を許可します」

岩沢「ありがとうございます」

先生「いえいえ。生徒会長からのお墨付きなら問題ないでしょう。
   これからもしっかり青春を謳歌するように」

岩沢「は、はぁ……」


先生「ところで生徒会長」

音無「はい」

先生「貴方はまだ一人で生徒会を続けていくつもりなんですか?」

音無「はい。特に人員を増やす必要性も感じないので」

先生「貴方がよく頑張っているのは先生方も生徒も充分知っています。
   しかし、流石にこれから一人でずっと仕事を切り盛りしていくのは疲れますよ?」

音無「…言葉の真意が測りかねますが」

先生「岩沢さん、でしたね」

岩沢「はい」

先生「どうでしょう?生徒会に入って生徒会長の補佐をお願いしたいのですが」

岩沢「…え?」

音無「先生、何を急に!?」

先生「入学早々でこんな事を頼むのは不躾だと重々承知しています。
   それに、何も無償でお願いしているワケではありません」

岩沢「と、言うと?」

先生「もしも生徒会に尽力してくれるのなら、
   幾分か学園で動きやすくなると思いますよ」

岩沢「具体的な例を挙げていただかないと難しいですね」

先生「そうですね、特例の一つとして学校の備品を自由に使っても結構ですよ。
   その他にも貴方たち生徒会が企画する事柄は全面的に学園からもプッシュする事にします」

音無「そんな特例は初めて聞いたんだが…」


岩沢「学校の備品、か……」

岩沢「分かりました。生徒会に入ります」

音無「おい、岩沢!?」

岩沢「何、アンタは私が入ることにそんなに否定的なわけ?」

音無「い、いや…そういうワケじゃないんだが」

岩沢「ならいいじゃないか。決まり決まり♪」

音無「本当にいいのかよ…」

先生「承諾ありがとう、岩沢さん。 生徒会長を宜しくね」

岩沢「はい」

音無「俺が宜しくされる立場なのか…なんだろう、この胸のモヤモヤ感」


――事務室前――


音無「その、なんだ…本当にいいのか?」

岩沢「いいって言ってるだろうが」

音無「心の整理をつけたり、記憶を思い出す時間を生徒会の仕事に使う事になるんだぞ」

岩沢「そんなのアンタも一緒だろ」

音無「俺はいいんだ。…目的があるから」

岩沢「ふ~ん。 ま、何にしてもさ。
   記憶を思い出すのは以前のアタシを知っているアンタの傍にいるのが一番だと踏んだ」

音無「……」

岩沢「それにさ、アンタ以外はNPCって奴なんだろ。
   そんな奴らと関係を築いても空しいだけだし」

音無「本当にいいんだな?」

岩沢「くどいよ、生徒会長サマ」

音無「分かった。これ以上は暖簾に腕押しって感じだしな」

岩沢「分かればいいんだ」

岩沢「それと一つ、以前の私を知っているからこその頼みがある」

音無「何だ?」

岩沢「アンタは昔の私を知っているみたいだけれど、
   それをアンタから私に告げるのは無しにしてくれないか」

音無「……分かった」

岩沢「サンキュ。自分の事くらい自分で思い出したいんだ。
   人から言われて思い出すような漫然としたものじゃなくて、
   しっかり私が生きていた人生を」

音無「お前の考えを否定できるほど俺は高飛車じゃないよ。
   そこまで言うならしっかり自分で思い出すんだな」

岩沢「ああ、分かった」

岩沢「よし、そうと決まれば早速さっき貰った権限を生かすとするか」

音無「権限?」

岩沢「学校の備品使ってもいいんだろ?
   とりあえず音楽室にでも置いてありそうなギター借りて弾いてみたいんだ」

音無「ギターの弾き方、覚えているのか?」

岩沢「さぁね。 ただ、何となく弾けるような気がするんだよ。
   それに、何となく私の記憶は音楽に関係してそうだし」

音無「なるほどな」

岩沢「ま、直感だからあんまり当てにならないんだけど」

音無「いや…その直感は信じてもいいぞ」


音無「岩沢」

岩沢「どうしたの、改まって」

音無「え~、おほん」

岩沢(わざとらしい咳だな……)


音無「生徒会長として新メンバーのお前に一言」




音無「ようこそ、この天上学園生徒会へ」

キリも良いからこの辺りで一旦〆
遅筆の身なので読んでくださる皆様をヤキモキさせて申し訳ありません。

今から少々出かけるので、このスレの行方はお任せします。
帰宅した際に残っていればちょっとした続きを書かせてもらいますし、
dat落ちした時は致し方ないといった感じで宜しく願います。

読んでくれて感謝!


http://www.youtube.com/watch?v=as6aE9nQQWo


――生徒会室――


音無「ギターの種類は色々あったけれど、使い古されたアコギでいいのか?」

岩沢「ああ。なんだかコレが一番しっくりくるんだ」

音無「お前が良いならそれで構わないが」

岩沢「何それ、お兄さん発言?」

音無「なんだそれ…」

岩沢「年下をあやすような言い草だったって事さ」

音無「ああ、気に障ったら謝るよ」

岩沢「別に気に障ったワケじゃないんだけど。
   そういう言葉が普通に出るってことはさ、生前のアンタって弟か妹でもいたの?」

音無「……妹が、一人」

岩沢「可愛かった?」

音無「まぁな」

岩沢「うわ、即答か。こりゃ重度の兄バカだね」

音無「放っとけっての」

~~♪ ~~♪


音無「普通に弾けてるな」

岩沢「ああ」

音無「相変わらず上手いな、お前」

岩沢「アンタの『相変わらず』には賛同しかねるけど、
   その口ぶりだと前のアタシもギター演奏してたっぽいね」

音無「ああ。心振るわせる、って言葉が似合う演奏だったよ」

岩沢「そりゃ弾いてる方としては冥利に尽きる言葉だ。
   …ま、礼くらい言っとくよ」

音無「ホント素直じゃないな…」

岩沢「何か言った?」

音無「いいや、別に」

音無「そろそろ予鈴だ。岩沢も授業受けてこい」

岩沢「やだね。 私はここでギターを弾いておく」

音無「お前なぁ……」

岩沢「別に授業は受けても受けなくても問題ないんだろ?」

音無「確かにそうだが…」

岩沢「じゃあいいじゃん。
   私にとっての優先順位は授業よりギターが上だったってだけの話だろ」

音無「生徒会長として、不真面目な生徒を放っておくわけにはいかない」

岩沢「こうしてギター弾き続けていると記憶思い出しそうなんだけどな」

音無「ぐっ……!」

岩沢「なんだか懐かしいフレーズが頭をよぎるんだけれどなぁ」

音無「………」

音無「まぁ、たまにはちゃんと授業受けに来いよ」

岩沢「当然だろ。気が向いたらいつだって行ってやるよ」

音無「気が向かなければずっと来ないつもりだろ、お前……」

岩沢「ところでアンタはいつも授業受けてるの?」

音無「午前中は学園の見回り。基本的には午後から出席している」

岩沢「ふーん」

音無「事務室や音楽室やら巡ってみたら、もう昼前か。
   今日の見回りは簡潔に済ませておくとするか」

岩沢「何だい、今のは独り言? また随分長く呟いたね」

音無「…一人が長いと悪癖しか生まないってのは本当らしい」

無「それじゃあ、生徒会室の鍵はかけずに預けておく」

岩沢「あいよ」

音無「ま、記憶はふとしたキッカケで戻るときもある。
   あまり焦らずにここでゆっくり過ごせばいいさ」

岩沢「はいはい」


岩沢「とっとと行ってこいよ、生徒会長サマ」

音無「言われなくても行くよ、記憶無し子。
   ちゃんと放課後にはギター弾くの止めておくようにな」

岩沢「……さて、行ったか」

岩沢「しかして、心が弾むとはよく言ったもんだよ」

岩沢「楽器を鳴らしているとき、アタシの胸の鼓動は凄く高まる」

岩沢「この気持ちを歌にしたらどうなるんだろう」



岩沢「………ハミング程度に声を出してみるか」


岩沢「あー、あー、あー。 ……よし!」



~~♪ ~~♪ ~~♪

~昼休み前~


音無「今日も学園に怪しい影は無し、か」

音無「そういやアイツ、昼はどうするんだろう?」

音無「駄目で元々と思って誘ってみるか」




音無「ん?」




ザワザワ……  ザワザワ……  ザワザワ……



音無(生徒会室前に凄い人数が集まっている…何事だ?)

生徒A「おいおいおい! 何だこいつ、メチャクチャ上手いぞ!」

生徒B「テクだけで終わらせないこの魅力、一体何者なんだ!?」

生徒C「綺麗…そこに立って歌っているだけで華みたい……」



音無「い、一体何なんだ!?」

マミ「あ、生徒会長!」

音無「え~と、確か巴マミだったか」

マミ「あら、ようやく覚えてくれたんですね」

音無「そんな事はどうでもいい。これは一体どういう事だ?」

マミ「それが…どうやら生徒会室から聞こえてくる声に皆集まってきたみたいで…」

音無「まさか!」

~~♪ ~~♪ ~~♪


岩沢「ん~ん~ん~♪ るらららるらら~♪」


バタンッ!


音無「おい、岩沢!」

岩沢「うわ、びっくりした! そんなに勢い良くドア開けてどうしたのさ?」

音無「どうしたもこうしたもあるか! 廊下を見てみろ!」

岩沢「廊下がどうしたんだよ…って、凄い人だかりだね」

音無「なんで他人行儀なんだよ、お前が集めたんだろ」

岩沢「あ、アタシが…?」

岩沢「そんな馬鹿な。だって、ただギター弾いて適当に歌っていただけだよ」

音無「自覚無しってのも相当だな」



~~

生徒A「アンコール! アンコール!」

生徒B「名前知らないけどファンになったぞー!」

生徒C「アンコール! アンコール!」

生徒D「歌上手い人ー! 私だー! 一緒の墓に入るのを前提に結婚してくれー!」


~~


音無「ていうか、どうすんだよこの現状」

岩沢「いや、面目ない」

音無「だったらせめてもっと面目なさそうな顔くらいしてくれ」

音無「……ったく。 ほら、お前を呼んでるぞ。 何か答えてやれ」

岩沢「そうは言っても何をすればいいんだ?」

音無「さぁな。手くらい振ったら喜ぶんじゃないか?」

岩沢「こ、こうか?」


~~

生徒A「うおおおおおお! 俺に向かって手を振ってくれたぞ!」

生徒B「自意識過剰もいいところだぞお前! 俺に決まってんだろうが!」

生徒C「馬鹿が二人もいるわね。 皆に向かって手を振ったに決まってるでしょう。
    …キャー! こっち向いた! こっち向いてくれたーーー!!」

生徒D「お姉さまー! 今晩、今晩くらいなら私…私ぃーー!!」


マミ(なにこの人たちこわい)

~~


音無「さ、最近のNPCは随分とアクの強い奴が多いんだな…」

岩沢「………」

岩沢「あいつら、私の歌を聴いてくれたんだよな」

音無「その結果が今の現状だ」

岩沢「喜んでくれている…のかな?」

音無「さぁな。ただ、あいつらの顔を見る限りでは少なくとも悲しんでいる風ではないだろ」


岩沢「あのさ、さっき『NPCと関係築いても空しいだけ』って言ったよね」

音無「ああ」

岩沢「あれさ、撤回する」

音無「……ああ」

音無「とりあえず、このままだと色々支障をきたすから解散させるぞ」

岩沢「分かったよ」


岩沢「あー、なんだ。聞いてくれてありがとう。
   また何か歌ってたら適当に足向けてよ」

~~

< アンコール! アンコール!

< アンコール! アンコール!

< アンコール! アンコール!


~~


岩沢「………」

岩沢「へへ、それじゃあ仕方が無いね!
   次の曲のリクエストは何かある!?」


音無「うおおおおおおい、岩沢さん! だから支障きたすって言ってるだろ! 
   何いきなりノリノリで客の声に答えてんだよ! アホか、アホなのかお前!?」

音無「ったく……」

音無「お前ら、もう授業始まっているだろう! さっさと指定の教室に戻れ!」


~~

生徒A「へいへい、言われずとも帰りますよ」

生徒B「…まだ始まって十分も経ってないのに。相変わらず厳しい会長だな」

生徒C「そういう所も素敵なんだよね~!」

生徒D「音無さんって彼女いるのかな?」

生徒E「もしかして、さっきギター弾いてた人が彼女だったりして!?」

生徒C「うっそ、それ超強力なライバルとかいう次元じゃないんだけど」

生徒D「お、お姉さま…恋に落ちた直後にハートブレイクだなんて……!」

~~


岩沢「モテモテだね、アンタ」

音無「……お前もなんか凄い奴に好かれているようだけど大丈夫なのか?」


――学食――



音無「ようやく昼休みか……」

岩沢「なに急に老け込んでるんだよ」

音無「久しぶりに声を荒げたのが原因としか考えられない」

岩沢「大変だね」

音無「よぅ元凶。素知らぬフリは楽しいか?」

岩沢「何のことやら」


マミ「……あの、そちらの席空いていますか?」

音無「ああ…アンタか」

マミ「名前は覚えてくれましたか?」

音無「巴マミ、だろ」

マミ「ふふ、また忘れられたらどうしようかと思ってました」

音無「どうもせずに放っておいてくれたら助かるんだがな」

マミ「あら、つれないですね」

岩沢「おい生徒会長、誰なんだこの子は」

音無「最近生徒会の仕事をボランティアで手伝ってくれる一般生徒だよ」

マミ「初めまして、荘厳たる水晶のような澄んだ声を持つ歌姫さん。巴マミと言います」

岩沢「え、な、なんだって……?」

マミ「巴マミです」

岩沢「いや、そこじゃなくて……」

岩沢「ま、まぁいいや。岩沢、だと思う。宜しく」

マミ「だと思う?」

岩沢「……名前忘れちゃったんだよ。不確定名称みたいだってのは自覚してる」

マミ「……生徒会長」

音無「本当だ。彼女は記憶を無くした状態で転校してきているんだ」

マミ「そう、だったんですか……そうとも知らずに不躾に名乗らせてしまって御免なさい」

岩沢「いいよ、気にしないで」

マミ「それに、記憶を失った『神が歌いし鎮魂歌の代弁者(ゴッド・ディーヴァ)』だなんて
   なんだかとても素敵でいいと思うわ」

岩沢「え、えと、何、だって……?」

マミ「とても素敵でいいと思うわ、岩沢さん」

岩沢「いや、そこじゃなくて……」

音無「岩沢、あまり聞き返してはいけない」

音無「また今日はどういった風の吹き回しだ?」

マミ「あら、何事も勘ぐるのはあまり宜しくないですよ。生徒会長。
   珍しい御方が学食にいたからつい話しかけた、それだけの話じゃないかしら」

音無「俺はいつも学食なんだが」

マミ「あら、そうなの? 私は普段お弁当だから道理でお昼に見受けないと思った」

音無「……今日は弁当じゃないのか」

マミ「そういう日もあるんです」

岩沢(おい、生徒会長)

音無(なんだ? 眼前に誰かいるときにヒソヒソ話は失礼だろ)

岩沢(……この子、本当にNPCか? 人間くさくて仕方ないんだが)

音無(NPCは普通の人間と区別がつかない。
   大方、さっきの弁当話もどうせプログラミングされているんだろう)

岩沢(アタシはどうにもNPCとは思えないんだけれどね)

音無(それはお前がこの世界に来て短いからこそ思う事柄だ)

岩沢(…じゃあ、もし仮に人間だったらどうするよ?)

音無(有り得ないことを前提に話すんだな、お前)

岩沢(いいから答えろって。 もしこの巴マミが人間だったらどうするよ?)

音無(そうだな…一つ何でもお前の言うとおりにしてやるよ)

岩沢(よし、だったら賭けようじゃないか)


マミ「………?」

岩沢(もし人間だったらアンタは自分の生前の恥ずかしい秘密を暴露してもらうよ)

音無(もし巴マミがNPCだったら?)

岩沢(ああ、やっぱりね。 で済ませればいいじゃないか)

音無(何だそのハイリスクノーリターン!? 賭けとして成立しないだろうが!)

岩沢(もう、仕方ないね。じゃあ……手でも繋いで校内デートしてやるよ)

音無(……それは俺が喜ぶこと前提で言ってるのか?)

岩沢(アタシからはこれ以上まかり通らないよ)

音無(色々とひっくるめてもさして深い意味の無い事柄だ。それでいいか)

岩沢(……妥協ってのが何か引っかかるけど、まぁいいや)

マミ「あの、そちらの話は終わりましたか?」

岩沢「あ、ああ! 悪いね!」

マミ「何やら随分と話し込んでいたようですが」

音無「つ、次の予算議会に関するレジュメ作成の仕方を教えていただけだ。気にするな!」

マミ「このタイミングで、ですか…?」

音無「す、すまないな! 何せ早急に伝えたかったもんで!」

音無「と、ところで巴マミ…」

マミ「マミでいいですよ、生徒会長」

音無「それじゃあマミ、突然だが一つ聞きたい事がある」


音無「この世界について、お前は疑問を感じているか?」

マミ「……随分と哲学的なことを聞くんですね」

音無「変なことを突然訊ねているというのは承知だ。
   それを見越した上で答えてほしい」


マミ「………」

音無「………」

岩沢「………」



マミ「結論から言うと、イエスです」



音無「!」

岩沢(やっぱり、人間…なのか!?)

マミ「まずこの天上の世界のような澄んだ空。
   『青よりも蒼く碧い空』とでも言うのかしら。
   どうやって形成されているのかが不思議で仕方ないわね」

音無「……へ?」

岩沢「……は?」


マミ「そして人が生きて死に逝く、存在そのものの咎。
   円環の理に触れられずに考察することしか許されない私たち人間のこと」

音無「……」

岩沢「……」


マミ「何よりも、アルファとオメガ。
   物事には何故最初から『終焉』(ティロ・フィナーレ)へと向かうベクトルが定められているのか。
   考えれば考えるほど、世界そのものに疑問は浮かんでくるわ」


音無「……岩沢」

岩沢「……なに?」

音無「……どうしよう」

岩沢「……その言葉、そっくり返すよ」

マミ「でも一番の疑問は」

音無「あ、ああ。 もういい、もういいんだ…」

岩沢「アンタがどれだけ個性的を地で進んでいるか分かっただけでも充分だよ…」


マミ「この世界そのものからどうやって抜け出せるか、が当面の悩みかしら」


音無・岩沢「!?」


音無「お、お前…気づいていたのか!?」

マミ「気づいていたも何も、この世界で目覚めてからずっとそればかり考えてたわ」

岩沢「おい、生徒会長」

音無「何だ?」

岩沢「……楽しみにしているよ」


マミ「あら、何の話?」

岩沢「ああ、いや」

音無「こっちの話だ、気にしないでくれ」

音無「巴マミ、お前は人間だったのか」

マミ「ご覧のとおりよ、生徒会長。既に死んでいる身ではありますが」

岩沢「気づかないとか鈍くさいにも程があるだろ…」



音無「なぁ、マミ」

マミ「はい」

音無「こうして俺とコンタクトを取っているという事は、何か思う節があるんだろう?」

マミ「無い、と言えば嘘になりますね」

音無「……ついでだ。 この世界に学年差なんてほとんど関係ないから敬語は必要ないぞ」

マミ「あら、本当? 正直そっちの方がフレンドリーな感じでいいわね」

岩沢(なんだろうな…こいつから滲み出るお姉さんっぽさは)

音無「まだるっこしい話は抜きだ。
   俺はこの世界の在り方に気づいた人間に情報提示をする義務がある。
   お前の聞きたいことには答えてやるよ」

マミ「あら、情報の出し惜しみが無いなんて太っ腹ね」

岩沢「顔に似合わず豪快なんだな、アンタ」

音無「岩沢、一言余計だぞ」


音無「それで、何が聞きたい」

マミ「まずは基本となる三つが聞きたいわ」

音無「話してみろ」

マミ「この世界とは何なのか。
   どうやったら抜け出せるのか。
   人間以外の存在とは一体何か」

音無「なるほどな」

岩沢「アタシが抱いた疑問と丸被りだね」

音無「…それだけ基本にして基盤となる情報になっているんだろ」

【音無説明中…】


マミ「なるほど、分かりやすい回答をありがとう」

音無「納得は出来たか?」

マミ「ええ、理解は正直あまり出来ないけれど納得はしたわ」


マミ「気がついたら見知らぬ学校で見知らぬ制服を着て、
   素知らぬ顔で授業を受けていたときは気が動転したけれど…。
   貴方たちのような人が居てくれて、ようやく心に平穏が訪れそう」

音無「そんな風には見えないけどな」

マミ「あら、これでも打たれ弱いのよ?」

岩沢「寝たら忘れそうな情報極まりないね」

~~♪ ~~♪



マミ「あら、もう予鈴?」

音無「おっと、こんな時間か」

岩沢「いつの間にか昼休み終わりそうだね」


音無「それじゃあ積もる話は放課後、生徒会室で」

岩沢「了解」

マミ「分かったわ」


音無「それじゃあ解散。いい学園生活を。くれぐれも悪さするなよ」

岩沢「引率の先生か」(ボソッ

音無「何か言ったか?」

岩沢「生真面目な生徒会長だな、って言っただけさ」

――放課後 生徒会室――


音無「二人とも集まってるようだな」

マミ「あら、集まっているか否かは一目瞭然じゃない」

岩沢「見て分からないようなら重度の近眼だね」


音無「……さて、今回集まってもらったのは他でもない」


岩沢(無かった事にしたな)

マミ(無かった事にしたわね)


音無「もう一度言う。今回集まってもらったのは他でもない」

岩沢「はいはい…」

音無「今後の生徒会としてはお前たち二人を、正式にメンバーとして任命したいと思う」

岩沢「へぇ」

マミ「あらあら、役職が与えられるのかしら」

音無「現状では『生徒会長』・『雑務』・『ボランティア兼書記』の
   なんとも締りの無い状態になっているからな。
   ここいらで一つ、しっかり職務を与えることで天上学園の生徒として自覚を持ってもらう」

マミ「それじゃあ私は繰り上げで書記になるのかしら」

音無「ああ、それで構わない」


岩沢「それで、アタシは何になるわけ?」

音無「とりあえずは生徒会長補佐という事で、副会長を担ってもらう」

岩沢「…ギターをちゃんと弾ける時間くらい設けてくれているんだろうな」

音無「どうせお前、授業に出ないんだろう」

岩沢「今のところはね」

音無「授業に出ない日はギターくらい好きに弾けばいい。
   ただし、ちゃんと生徒会の定例に出席することが条件だ」

岩沢「なんだ、それくらいならお安い御用さ」

音無「副生徒会長、岩沢まさみ」

岩沢「あいよ」

音無「生徒会書記、巴マミ」

マミ「はい」


音無「以上二名を正式に生徒会として迎え入れる」


岩沢「で、その仕事内容は?」

音無「学園の治安維持・人間の発見、及び成仏に尽力すること」

マミ「了解」


音無「いつか来る別れも、今は忘れて公務に励むように」




           END
    ___∧ _ _
          ∨

特別編の音無さんは少々寂しすぎるから一番最初に消えた人+αで賑わせてしまえ、というのが書くキッカケでした

さるさんやら何やらで後半が駆け足になってしまい、読みづらい内容で申し訳ありません
何かと説明不足な点があるとは思いますが、そこまで書ききれなかった自分の力量の無さが全てです

保守や支援など有難うございました
もしまた次の機会がありましたらその際もどうぞ宜しく願います
それでは、解散!

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