佐城雪美「…にゃー…」関裕美「ペロ?」 (22)
お昼を過ぎて太陽が少し傾く時間帯。
私と雪美ちゃんはお仕事の帰りに公園に寄り道をしていた。
『みゃぁ』
私の目の前には真っ黒な毛にキョロっとした目の黒猫が一匹。
ベンチに座ったまま、膝の上にペロを乗せる雪美ちゃん。
綺麗に手入れされた毛並みに小さな手が触れる。
「……裕美は…猫…にがて…?」
そしてもう一人、腰を降ろして黒猫の頭を撫でる女の子。
「あはは、ペロも知らない人にペタペタ触られちゃったら疲れちゃうから…」
「……大丈夫…私の…お友達だから…」
雪美ちゃんは少し首を傾けてペロの背中を撫でながら呟く。
「…ペロ……ごー…」
すると、不思議なことに丸まっていた黒猫はすっくと立ち上がり私の膝の上に滑り込む。
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「……やっぱり…ペロも…友達だって…」
雪美ちゃんが口元に小さく笑みを浮かべる。
「……猫って暖かいんだね」
膝の上に陽だまりのような暖かさを感じる。
「…ペロ、暖かい…?」
期待したような目で私を見る雪美ちゃん。
「雪美ちゃんはペロ、大好きだもんね」
私はペロの頭に手を伸ばすとあっけなく柔らかい感触。
『みゃ…』
スルリ、と逃げられてしまう、なんてこともなくて少し安心した。
「…わっ、サラサラで綺麗な毛並み…」
思っていた以上に心地良い感触に少しビックリする。
「……ペロも…気持ちいいって…」
「そっか」
「……うん…」
少し強い風が吹いて、雪美ちゃんの長い髪が少しだけたなびいた。
「…雪美ちゃんもペロみたいに綺麗な髪の毛だよね」
「……ペロと一緒…だったら嬉しい…」
「…ペロ…おいで…」
膝の上から陽だまりが去っていくのを少し寂しく感じる。
…猫って…いいなぁ…。
「…ふふ、ペロと……お揃い……」
雪美ちゃんはペロをヒョイと抱えて顔の隣に持ち上げる。
「…にゃー…」
『みぁ♪』
ペロも負けじと誇らしげに一言鳴く。
「ペロもお揃いが嬉しいんだね」
「…裕美も…わかるの…?」
「何となく、かな?」
「そう……なかよし…うれしい…」
雪美ちゃんがそっと自分の膝の上にペロを降ろす。
「…もっと…なかよし…」
「裕美とも…一緒…たのしい時間…すごしたい……」
「Pも…言ってた…」
「プロデューサーさんが?」
「もっと…ずっと…これからも…居たいって気持ち…大事だって…」
「きっと…もう少し大きくなったら……分かるって……」
『みゃー』
「Pもペロも裕美も……みんな…一緒…嬉しい……」
「雪美ちゃんは可愛いなぁ」
「…そう…そうだったら…うれしい…」
雪美ちゃんはペロをぎゅっと抱きしめる。
「…ペロといつも一緒…Pは……まだまだ子供っぽいって…」
「子供っぽい?」
「…うん……お別れした時が…って言ってたけど…良く、聞こえなかった…」
「…P、ちょっと…寂しそうだった…」
雪美ちゃんは少し俯く。
「…そっか」
お別れ…、ペロとも、いつかお別れする時が来る。
猫の寿命について詳しく知らないけど、いつか、来る。来てしまう。
「考えすぎ…だよね」
大丈夫、なんとなくそんな気がする。
「……裕美…どうしたの?」
「ううん、何でもないよ」
「でも、子供でいい……Pと……約束したから……」
「…約束?」
「…みんなで一緒……たくさん…遊んで、連れて行って…くれる……」
「お祭り……花火も…」
「今度は……裕美も…一緒がいい…」
「そうだね、私も今度は連れて行って貰おうかな」
『みゃー』
「うん、ペロもだね」
『みぁ』
私がそう言うと再び雪美ちゃんの膝で再び丸くなるペロ。
「……みんなで浴衣…楽しみ…」
「それで…Pにまたおんぶ…して貰う…」
「お、おんぶ!?」
「…大人になったら……できない…」
「子供の…特権……」
左手をぐっと握りしめて胸に当てる雪美ちゃん。
「…裕美は……子供…?」
「えっ?」
え、私……?
子供って…むしろいくつからが大人…?
「お、大人…成人してから…?」
でも愛梨さんっていくつだっったかな…?
子供……お、おんぶ……。
「あ、あれ?」
「…裕美……大丈夫……?」
頭の中がぐるぐる、混乱してきました…。
「おーい!二人共、遅いから心配になって迎えに来たぞ」
「プ、プロデューサーさん!?」
こちらに向かって駆けてくるプロデューサーさん。
「…裕美、なんか顔赤いぞ、風邪引いたか?」
「え、あぅ……」
どこからが大人…?いつまで子供…?
子供は……おんぶ……?
『わ、私はおんぶはいいからー!』
あらん限りの声で声をあげて逃げる。
―
全力で走り去っていく裕美の後ろ姿が小さくなっていく。
「…おんぶって何のことだ?」
「…ん…分からない…」
同じく首を傾げる雪美。
『みゃ』
「ペロも居たのか」
「……ペロ…いつも一緒…」
「はは、そうだな」
「ん、まぁ、もうすぐ夕方になるし、そろそろ帰るぞ」
「……うん…」
「…P、おんぶ…」
「…裕美もおんぶって言ってたな、流行ってるのか?」
「……子供だけ…だから…」
「まぁ、大人は流石におぶれないなぁ」
まぁ、酔っぱらいを担ぐのは別だけど…。
「だから……おんぶ……」
「…事務所までだぞ?」
「……うん、約束……」
「よし、約束だ」
膝を曲げて雪美の届く高さまで背中を降ろすと、背中にあたたかな感触。
「…立つぞ、捕まってろよ?」
「……うん…」
その言葉を聞いてから、雪美の足を抱えてゆっくりと立ち上がる。
「よし、今度こそ帰るか」
「……うん…ペロ、おいで…」
『みぁ!』
「…ペロも…おんぶする…?」
「危ないから駄目」
「…残念……」
「また今度、な」
「…約束?」
「約束だ」
「…じゃあ……我慢する…」
「というか何で裕美は逃げたんだ?」
地味にショックだ…。
嫌われるようなことはしてない…と信じたい。
「…ん……裕美は……大人…?」
「まだまだ子供だろ?」
「…私と…一緒……?」
「ん、まぁ、大体な」
「…おんぶ……する…?」
「誰を?」
「……裕美…」
「子供扱いしないでって拗ねそうだな…」
「……大丈夫…」
「妙に自信満々だな」
「……友達…だから…」
『みぁ♪』
いつの間にか足の周りをペロがくるくる回っていた。
「…ペロとも…友達……」
「良かったな、ペロ」
『みゃぁ』
「……ペロ……嬉しいって…」
「…P…一緒だと…わくわく…それと……どきどき……」
「……きっと…裕美も……」
「楽しかったか?」
「……楽しかった…」
「…よし!帰りにコンビニで菓子でも買って帰るか」
『みゃぁ!』
「……ペロも…猫缶……」
「はいはい…後、コンビニ着いたら一旦降りろよ?」
「………」
背中から返事が帰ってこない。
「…返事は?」
「……分かった…」
「宜しい」
「…きっと…裕美も…おんぶ……気に入る…」
「そうしたら雪美のおんぶは減るかもな」
「……それは…困る…」
「冗談だよ」
「……ん……安心した…」
俺は足元に猫を、背中に雪美を乗せて、コンビニに向けて足を急ぐ。
END
終わりです。
見てくれた方に感謝。
雪美をおんぶしたかっただけです。
雪美誕生日おめでとう!
指摘ありがとう。
Pの一人称をどうするかで迷って結局使わなかった結果がこれです。
次はもうちょい差別化したいね。
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