ある日。公園にて
上条「お、ビリビリ。こんなところで会うなんて奇遇だな」
美琴「……」
上条「…ん? どうした? 以前のように勝負しろって言ってこないのか?
なんだか今日は静かじゃないか」
美琴「前から言おうと思ってたんだけどね。私、あんたのこと
嫌いだから。あんたの顔、見てるだけで吐き気がしてくるわ」
上条「な…」
美琴「二度と私に話しかけてこないでね。さよなら」
上条「……!? ……!?」
美琴は呆然とする上条を置き去りにし、その場を去ってしまった。
上条「なんで……? どうして俺が美坂に嫌われる?」
地面に両手をつく。
上条「うそ……だろ? 俺……どうして涙が止まらないんだ?」
あふれ出す涙が頬を伝い、地面に落ちていった。
上条「……そ、そうか……俺……もしかしてあいつのこと…
好きだったのかもしれない…。
こ、……こんなに悲しい気持ちになるのは初めてだ…」
そのまましばらく泣き続け、失意のまま家に帰る。
上条「ただいまぁ。遅くなってごめんな。インデックス」
禁書「遅いんだよとうま! もうお腹ペコペコなんだよ!」
禁書「ちゃんとスーパーで買い物してきてくれた?
もう冷蔵庫の中身が空なんだよ」
上条「…それどころじゃないんだよ。俺、美坂に絶交された」
禁書「へ?」
上条「美琴に嫌われちゃったんだよ!!」
禁書「……ひぃ!?」
上条は怒り、その辺にあるものを手当たり次第に投げ始めた。
禁書「と、とうま。落ち着いて」
上条「はあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
禁書は脅えて縮こまるが、上条の怒りは収まらず、
気がすむまで家の中で大暴れした。
禁書「だ、誰か助けてえええええええええええ!!」
上条「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
禁書「いやああああああああああああああああああああああ!!」
数分後、部屋の中は滅茶苦茶になってしまった。
散乱した家具などが転がり、その中には台所にあった包丁も含まれていた。
上条「……はぁ。もう生きていてもしょうがない。そろそろ逝くか」
暗い顔で包丁を手に取り、自身の手首に当てようとした瞬間。
禁書「ちょ…何してるの!? 死んじゃ駄目だよおおおおお!!」
上条「ぐ…」
インデックスのタックルを食らう。
上条「…っ。…はぁ…」
床に背中を強く打ちつけ、一瞬だけ呼吸が止まった。
倒れている上条に、禁書がおおいかぶさる態勢。
禁書は吐息がかかる距離で、
「とうま。たんぱつに絶交されたくらいでそんなに落ち込まないで。
今日のとうまはちょっとおかしいんだよ? 私が直してあげる」
「インデックス……ぁ」
禁書のうるうるした目で見つめられ、上条さんの股間はフルボッキしてしまった。
「もうたんぱつのことは忘れて?
とうまは私だけを見てくれればいいの」
インデックスの顔が近づいてくる。その熱っぽい眼差しに
(はああああああああああああああああああああああああああああ)
覚醒しそうになる上条だが、
「な~んて言うと思った?」
それは聞き間違えではなかった。
「あはははははははっはあははははははははははははっは!!
ばーーーーーーーか!! 私がとうまのこと好きなわけ無いじゃん!!」
高笑いするインデックスの顔は、上条が初めて見るのもだった。
「中学生にに嫌われて泣くとかwwwwwwwwwww
ダサすぎて涙が止まらないよwwwwwwwwwwwwwwwww」
「あ……あ……もう……やめ……」
上条の声は震えていた。すでに砕けてしまいそうなガラス細工の
心が悲鳴をあげていた。だが、禁書は容赦しない。
「私一人も養えないような甲斐性なしのくせに!!
じょうばんだいのお嬢様に好かれるわけないじゃん!!
身の程を知るといいんだよ!」
偉そうに人差し指をくるくる回す禁書目録。
「そ……そんな。インデックス? おまえ、いままで俺といて
楽しいって言ってくれたじゃないか…」
「あー。何泣きそうな顔してんの?
うざいんだよ? もう私イギリスに帰ろうかな。とうまと
いるとこっちまで辛気臭くなるから」
その一言で、上条は暴走した。
「うわあああああああああああん!!」
まるで女の子のように泣きながら、部屋を出て行ってしまった。
「あははははははっはははははははははあひいいいいいい!!」
部屋の中から狂ったように笑い続ける禁書の声が聞こえるが、
そんなものは無視しして走り続けた。
「はぁ……はぁ……俺は……俺は……う……うあ……ぐ……」
自称正義の味方は、気が付いたら公園に来ていた。
今日美琴に絶交された場所だ。
何故ここに来たのかは自分でも分からない。
「あれ? そこにいるのはもしかして……上条さんですか?」
声をかけられたのではっとして顔を上げると、そこにいたのは
頭に花飾りをつけた女の子。
「初春…さん?」
「わあ。覚えててくれたんですね! そうです。私初春飾利です。
ジャッジメントやってます! 今日はこんなところで何してるんですか?
野外露出プレイの練習ですか?」
「ち、違う! 今日はちょっと落ち込んでたから一人になりたかったんだよ」
泣き顔を見られ、赤面した上条が返す。
「俺、御坂に嫌われたんだよ」
「WOW!」
「ふざけるな。俺、たぶんあいつのことが好きだったんだよ。
いつもは俺に電撃を食らわしてくるやかましい奴だと思ってたけどさ。
でも、失って初めて気づいた。俺はあいつといられる時間が好きだったんだって」
上条は体育座りしながら独白した。
「……なあ。初春さんなら分かるかな?
最近の御坂、何か変な様子はなかったか?」
「え? なんですか? もう一度最初から言ってください」
初春は逆立ちの練習をしていたので話など聞いていなかった。
「……泣くぞ?」
上条が肩を震わせる。
「分かりました。もうふざけるのはここまでにします。私とてジャッジメント。
一般市民の悩み相談くらい乗ってあげます」
「……」
あきれた様子の上条。
「そうですねぇ。御坂さんなら、最近新しい自分に目覚めたとか言ってましたよ?」
「新しい自分だと?」
上条が話題に食いつく。
「はい。なんでも、もう当麻を追いかけるのを止めて、自分に素直になろうって
言ってました」
「どういう意味だ?」
「私にも詳しいことは分かりません。どうしても知りたいなら、女子寮で
ルームメイトの白井さんにでも聞いてみればいいんじゃないでですか?
もう夜遅いので私は帰りますね。それじゃあ」
そう言い残し、初春は去っていった。
ちょうどその頃、美琴と黒子の部屋は地獄と化していた。
「黒子。今日からあんたは私のものよ。ふふふ。今日は私とあんたの
アニバーサリーになるわね」
美琴は黒子を愛しそうに見つめながら言った。
「……」
「黒子。どうして黙ってるの? いつもみたいに喜びなさいよ。
あんたの大好きなお姉さまがここにいるのよ?」
「……」
「……あんた……いい加減にしなさいよ」
美琴が微量の電流を発生させて黒子を脅すが、
「……」
黒子は今も沈黙を続けている。
「あなたなんて……死ねばいいんですわ」
黒子が、まるで唾を吐くような勢いでつぶやく。
「あんた!!」
憤慨した美琴は、遠慮のないビンタを放った。
「……っ」
「……どお? 痛いでしょ?」
優越感に満ちた顔で微笑む美琴。
「……あなたなんて。私の知ってるお姉さまではありませんの」
「へえ? この状態でもまだそんなことが言えるんだ?」
美琴が倒れている黒子を見下ろす。
黒子は全身を縄で縛られており、衣服を一切見につけていなかった。
「うふふふ。しつけがたらなかったかしら?」
そう言うと、美琴がムチを取り出した。
黒子が顔面蒼白になる。
「お、お姉さま……なんですのそのムチは……
まさかそれでこの黒子を……?」
「うん。泣くまで痛めつけようと思う。何か言い残したことがあれば
聞いてあげるよ?」
まるで聖母マリアのように慈悲深く微笑む美琴だが、
その内面に悪魔を宿していた。
「だ、誰か助け…」
「行くわよ!!」
「ぎゃああああああああああああああ!!
あああああああああああああああああああああ!!」
「ああああああああああああああああ!!
いやあああああああああああああああああ!!」
黒子の叫び声は寮内に響き渡る。
「うああああああああああああああ!!
誰かああああああああああああああああああ!」
「あー。いぃ。人の叫び声って最高だわ……」
美琴はだらしない顔でよだれを垂らしていた。
「ぴyがああああああああああああああ!!」
黒子は痛みと恐怖で泣き叫ぶ。
早くこの苦痛から逃れたい。その一身で拷問に耐えていた。
「いぃ……その顔……気持ちいよぉおおお!」
美琴がスカートの中に手をつっこみ、オナニーを始めた。
ルームメイトをいじめるのが楽しくて、刺激的で、我慢できなくなったのだ。
「こらあ!! 貴様ら何を騒いでいる!!」
鬼の形相の寮監が扉を開ける。
「あー、寮監じゃないですか。ちわー。今黒子にお仕置きしてまーす」
明るく答える美琴は年齢以上に幼く見えた。
「りょ、寮監様……助けてくださいまし……お姉さまがキチガイに……」
「……」
寮監は腕を組み、しばらく考えて
「すまんが、私はSMプレイは専門外だ。
消灯時間までには終わらせろよ?」
それだけ言い残し、扉を優しく閉めてしまった。
なんと、助けるつもりは微塵もないらしい。
部屋には猟奇的な美琴と、哀れな黒子だけが残された。
「黒子。続き、がんばろっか♪」
「ひいい!」
風呂入る。
「くーろこ? ほらほら。そんなに震えちゃってどうしたのかなぁ?」
「ぁ……ぁ……やめ……」
現在の時刻は深夜の2時。
真っ暗な部屋の中で、黒子の身体に微量に電流が流れている。
「ん? 何が言いたいの? もっとはっきり言わなくちゃわからないよ?」
「ぁ……だ……だめ……ですのぉ……」
電流がバチバチと点滅し、部屋をかすかに照らす。
黒子は椅子に座らされており、両手両足を縛られていた。
「も……もう……殺して……」
黒子は長時間続いたムチ打ちに耐えたが、それだけでは
拷問は終らなかった。現在では眠ることも許されず、
断続的に弱い電流を流され続けていた。
「うふふふふふふふふふふふふ」
冷酷なるサディスト・御坂美琴は口元をにやけさせる。
「くぅぅ……うぅぅぅぅ………」
激しい頭痛と、全身にまとう電流の痛み。
黒子は身体をくねくねさせて逃れようとしたが、
その仕草は美琴を喜ばせるだけだ。
「うふふふふふふふふふふふふふふふ」
美琴はかれこれ一時間近くも不気味に笑い続けている。
その瞳の奥には、計り知れないほどの深い闇が宿っている。
(もういっそのこと殺してくださいまし……
どうしてお姉さまはこんなに狂ってしまったんですの?)
黒子は地獄の苦痛の中でさえ、お姉さまのことを考えていた。
(黒子の知っているお姉さまはこんな最悪なイジメをするような
人ではなかったですの……)
美琴が変わってしまったのは最近のことだ。
以前から好意を寄せていた上条に気持ちを伝えられず、
毎日イライラしていた。勝負では連戦連敗。素直に告白しようと
しても、ツンデレな性格が邪魔をする。もう限界だった。
そこで、黒子でストレスを発散することにしたのだ。
『お、おねえさま…!?』
初めて美琴に暴力を振るわれた黒子の顔は最高だった。
まさか慕っているお姉さまに殴られるとは夢にも思っていなかっただろう。
『黒子。ごめん。殴らせてもらうね』
『や…やめてくださいまし… あぁ!!』
『うふふ。たのしーな!』
一方的に暴力を振るわれる黒子は激しく動揺し、テレポート
する余裕すらなかった。殴られた痛み以上に心の方が痛かった。
『人の苦しんだり泣いたりする顔ってこんなに素晴らしいんだね』
にっこりと笑う美琴。足元にはボロボロになった黒子がいた。
そうして味を占めた美琴は、大好きな少年の動揺する顔が見たくなり、
冒頭のシーンで罵倒してしみたのだ。上条が泣き出すとは予想外の
結果だったが、彼の悲しむ顔は十分に堪能できたのだから良しとした。
「とうまぁ……待っててね。私が癒してあげるから」
美琴は焦げてしまった黒子を踏みつけながら、明日上条に
会いに行くことに決めたのだった。
次の日。
学校帰りの美琴は、上条の家に直行した。
「とうまぁ? お邪魔するわね」
返事を待たずに玄関を開け、ずけずけと中に進入する。
「た、たんぱつ!? 何しにきたの!?」
インデックスはするめを食べていた。
「うん。ちょっと当麻に昨日のことを謝りにきたの」
「と、とうまならまだ帰ってきてないんだよ」
「そうなんだ。ところで、禁書ちゃん」
美琴の目が細くなる。
「な、なにかな? 目が怖いんだよ、たんぱつ」
「あんた、当麻のこと罵倒した?」
「したよ! たんぱつに言われたとおりにちゃんと罵倒したんだよ!!
とうまったら、泣きながら部屋を出て行ったんだよ!!」
「そう……」
美琴は目を閉じてため息をついた。
禁書はその妙な雰囲気に脅える。
(た、たんぱつはどうして怒ってるのかな? 私はちゃんと指示通りに
動いたんだよ? 大好きなとうまを傷つけたんだよ?)
「禁書ちゃん?」
美琴は禁書の肩に手を置いた。
「な、なに?」 ごくりと唾を飲み込むインデックス。
美琴はにやけながら
「あんたってさ。殴りやすそうな顔してるよね?」
「な…!?」
「動いたら殺すから。抵抗しても殺す。余計なことを口にしても殺す」
「あ……そ、そんな……」
上条の部屋が魔界と化しているころ、
「あーくそ!! どうして取れないのよこれ!!」
佐天さんはゲームセンターにいた。
「むかつくぅぅぅう!! なんでギリギリのところで取れないの?」
ゲシゲシと下品にユーフォーキャッチャーを蹴り飛ばす。
その姿は店員からマークされており、隣で見ていた初春が口を挟む。
「さ、佐天さん! そんなに叩いたら壊れますよ」
「いいから好きにさせてよ! どうしてもこの商品が取りたいの」
佐天が欲しがっているのは猫のぬいぐるみだった。
黒と白がペアになっており、名前のプレートには『黒レン』『白レン』と
書かれている。
「こらこら。君たち。ここは上条さんにまかせなさい」
「え?」
突然現れた上条はマシーンにコインを投入し、
あっという間にヌイグルミをゲットした。
「ほらよ」
佐天さんに手渡す。
「あ、ありがとうございます…上条さん。
恥ずかしいところを見られちゃいました」
顔を真っ赤にする佐天。
上条とは初春経由ですでに知り合っていた。
「きにするな。俺だって昔はゲーセンで暴れたものさ。
あ……そういえば昨日も家で大暴れしてしまった…」
落胆する上条。佐天は不思議そうな顔で
「何かあったんですか?」
「ああ。ミサカの奴に絶交されちゃってさ。腹が立ったんで
家で八つ当たりしちゃったんだよ。最低だよな俺…」
「ええ!? あの御坂さんとそんなことが!?」
「もう俺の顔も見たくないとさ。はは」
上条はうつむき、くやしそうに唇をかんでいた。
肩を震わせ、今にも泣きそうになったそのとき、
「泣かないで下さい! 上条さん」
叫んだのは初春。大胆にも上条の手を握り、
彼の顔をまじまじと見つめる。
「う、ういはるさん?」
「上条さんはとても素敵な人です。レベルゼロなのに悪い人たちを
やっつけようとするし。正義感が強くて髪の毛がツンツンしてるところも
可愛いですよ? おかしいのは御坂さんの方です」
「そ、そうかな…?」
照れくさそうに顔を赤らめる上条。
「はい! 私も昨日は酔ってたので変なことを口走ってしまいましたが、
本当は上条さんのこと大好きです」
初春はひまわりのような笑顔でそう言った。
「私も上条さんの味方ですよ!」
佐天さんが上条の腕に抱きつく。
「ちょ……」
上条は激しく動揺したが、佐天さんはむしろ
その反応を楽しみながらさらに強く抱きしめた。
「上条さんの良さが分からないなんて、御坂さんは損してますね。
私と初春はいつだって上条さんが大好きですからね」
「あ……あうあう……」
「上条さん。これからデートしませんか?」
「デ、デート!?」
その魅惑の単語にさらに動揺する。
「はい。デートです。初春もいいよね?」
佐天さんの提案に、初春は乗り気の様子。
「もちろんです。映画でも見に行きませんか?
今ちょうど割引チケットを持ってるんですよ」
そのまま話はとんとん拍子で進み、三人は映画館に足を運ぶ。
「平日だから人が少ないですね」
上条の片腕に抱きついている佐天が言う。
「そ、そうだな。これなら人に見られる心配もなさそうだ」
上条は緊張しながら答えた。昨日は地獄が訪れたが、
今日は一変して天国のようだった。
「あそこに座りませんか?」
も片方の腕に抱きついている初春が空席を指さす。
そして三人は寄り添いながら席に座る。
(あはは……俺って意外と年下に人気あるのかな…)
上条は緊張して顔を引きつらせながら、映画が始まるのを待っていた。
上条が映画を見ているころ、
「とうまぁあああ! たすけてえええ!!」
「うっさいのよ。騒いだら人に聞こえるでしょうが!」
美琴が禁書に愛のあるお尻たたきをしていた。
「ほらああ! もっといい声で鳴きなさい!」
「あ! あふ! いやあ!! やだあ!!」
「きひひひひひひひ そうよ!ほおおら」
「あん! やん! だ、だめ! やめ」
禁書はすでに涙目だ。いつか大好きな上条が助けてくれること
を願いながら、お仕置きに耐えていた。
インデックスが地獄を見ているとき、上条らは
映画を終えてファミレスに来ていた。
「上条さん。あーんしてください」
佐天さんがパフェをすくったスプーンを差し出す。
「あ、あーん」
上条もこのハーレムに慣れてきたのか、割と自然な感じで
それを口に含む。
「おいしいですか?」
「ああ。とってもおいしいよ」
「佐天さんばっかりずるいです! 私のも食べて欲しいです。
あーんしてください」
対抗した初春がスプーンを上条に差し出す。
上条は照れながらも二人分のパフェを食べさせられていた。
口の中にクリームの風味が広がり、確かな満足感を得ていたが、
それも長くは続かなかった。
「何やってんのあんたたち?」
突然掛けられた声。
「「「!?」 」」
驚愕した一同が振り返ると、そこには怒りの形相の御坂
美琴が立っていた。上条が唾を飲みこんだ後質問する。
「な、なぜ御坂がここに!?」
「さっきまで禁書ちゃんで遊んでたんだけどね。私のビリビリセンサーが
警報を鳴らしたのよ。今、当麻が悪い女の子達につかまってるんだってね」
「禁書で遊んでいただと…!? まあそれはいい。なんでおまえが
俺に話しかける? 昨日もう話しかけるなと言ったじゃないか」
「ああ。あれはただの冗談よ」
「はい?」
上条は困惑した。
「意味が分からないって顔してるわね?
いいわ。説明してあげる」
美琴は腕組した。
「私はずっと前からあんたのことが好きだった。
それは今も変わらない。昨日のあれはただのお遊びよ。
あんたの動揺する顔を見て楽しんでただけ」
「なん……だとぉ」
それは上条にとって驚愕の事実だった。
元来朴念仁として定評のある人物である。
昨日の一見以来、二度と御坂に関わることはないと思っていた。
その矢先にこの告白である。動揺するなという方が無理がる。
「ぷ…ぷひぃ」
呂律が回らず、上条は一方通行のような顔をしてしまった。
上条はそのまま固まってしまった。
美琴は彼の両脇にいる二人の少女達に視線を移す。
「あなたたち。私の当麻にずいぶん慣れ慣れしいじゃない?」
美琴が寮監も真っ青になりそうな目つきで脅しを掛ける。
「……!!」
それはまるで質量を持ったかのような勢いがあった。
美琴が殺気を放つだけで、店内の雰囲気は一変し、
近くで皿を回収していたウエイトレスはそれを派手に落としてしまった。
「黙ってないで、なんとか言いなさいよ」
美琴がさらに凄む。空気がさらに
『うわあああああ!!』
厨房では、どういうわけか火災が発生していた。
美琴の放つ凄まじい空気に動揺して手元が狂ったのだろう。
消火器を持った店長が慌しく消火活動を始めていた。
阿鼻驚嘆の騒ぎと化すファミレス。
「三秒あげるわ。今すぐ当麻からハナレナサイ」
美琴がコインを取り出した。
「…!」
佐天さんと初春さんは、あれがレールガンを射出するための
準備であることを正しく認識していた。美琴が本気で元友人達を
殺す覚悟なのは、あの狂った目つきを見れば分かることだ。
だが、
「……っ」
二人は上条にしがみついたままだ。
動けないのだ。恐怖で足がすくみ、一歩もそこから動けない。
真の恐怖とはこういうものだ。
「ぷふふふふふうひいい」
一方の上条はカッパのような顔をして呆けている。
「さん……にぃ……」
美琴が死のカウントダウンを開始する。
その無機質な声がさらに恐怖をあおる。
(このままじゃ殺される)
佐天さんは母から貰ったお守りを握り締めながら
「上条さんは渡しません!!」
悪に対してはっきりと意思表示する。
それは願いだった。
美琴には力ではどうしても適わない。
だが、この上条に対する思いは本物。
たとえどんな危機に陥ろうと、これだけは曲げたくなかった。
「ふぅん…」
美琴の目がさらに温度を失っていく。
「死のっか。佐天さん」
美琴が致死量の電流を放とうとしたが……
「いい加減にしろよ、てめえ」
上条が立ちふさがる。右腕で美琴の手を強く押さえていた。
「…? どうして邪魔するの?
当麻も一緒に電流浴びせようか?」
美琴は心底不思議そうな顔をした。
そして苛立ちを見せた。美琴の行動を邪魔するものは
全て悪であり、排除する対象だ。
上条でさえ、多少の罰を与える必要があると考えていた。
「御坂。おまえは最低だ」
上条がつぶやく。
「…?」
意味が分からず、美琴は首をかしげた。
疲れた。少し休ませて
上条は得意の説教を始めようとする。
「だいたいな…おまえはいつもそうやって短絡的にものを
考えすぎなんだよ。確かに俺がおまえの気持ちに気が付かなかったの
も悪かったと思う。だがな、罪のない女の子たちを…」
「うるさい…」
「な…!?」
上条が全て言い終わる前に、美琴が電流を放った。
近くにあったテーブルとイスが跡形もなく吹き飛ぶ。
「当麻。あんた自分の立場が分かってる?
私はレベル5だよ?」
美琴は上条の左手を握った。
(こいつ……まさか俺の幻想殺しを知ってるのか…)
上条が懸念するとおり、イマジンブレイカーは右手でのみ
使用できる能力。左手から電流を直に流されれば終わる。
「私と付き合いなさい」
美琴は強い口で言う。
「……」
「これは命令よ?」
「分かった。おまえと付き合うよ。その手を離してくれ」
上条は五分ほど考えてから結論を出した。
今の美琴を止める術はもはやない。
佐天さんたちの命がかかっている以上、少しでも犠牲の
少なくする条件を考えた末、
「それと、頼むから佐天さんたちには手を出さないでくれ」
「うふふふふ。当麻がいい子にしてくれたらね♪」
美琴は鼻歌を歌いだしそうな雰囲気だった。
先程までの殺意が消え、今では安心しきった顔で
上条の腕にからみついている。
ヤンデレールガンおいしいです
こうして、上条は不本意ながらも美琴と恋人関係なった。
少しでも美琴を怒らせれば自身はもちろん、
周りの人間にまで危害が及ぶ危険な関係だった。
そんな生活が一週間も続き、上条は神経をすり減らしていた。
学校帰りは美琴に強制デートに誘われ、夕飯時になると
毎日上条の家におしかけて作りに来た。
エプロンをして料理を作る美琴を見て、
最初は、まるで夫婦のような関係だなと思ったものだ。
だが、美琴が異常であることに変わりはない。
特に気の毒のなのがインデックスだった。
ある日、上条は学校帰りにスーパーで買い物して帰宅した。
「禁書目録、上条さんは今帰ったぞ」
くたびれたサラリーマンのように玄関を開ける上条。
「……」
禁書目録は返事せず、無表情で座っていた。
テレビをつけているが、その内容は頭に入っていないようだ。
「なあ、禁書目録……? うれしくないのか?
おいしいものが食べられるんだぞ?
上条はもう泣きそうな声。
「……」
禁書目録は端正な顔を変化さえることはなく、
人形のようにボーっとしている。
「どうして黙ってるんだよ?
今日はおまえの大好きな料理をたくさん作ってやるぞ!」
「……」
しかし、上条当麻の魂の叫びは禁書へ届かない。
「哀れな禁書目録……。まだ……失語症が治らないんだな……。
なんでだよ……なんでこんなことに……」
「……」
「うっ……ううう……」
上条は目録を抱きしめ、声をあげて泣いた。
インデックスが失語症になったのは、美琴の拷問のせいだった。
常に上条の部屋に居続けるインデックスは美琴に目をつけられ、
気が向いたら痛めつけられた。
上条と共に楽しい同棲生活を謳歌していたが、いきなり地獄の底に
突き落とされたのである。美琴の拷問はインデックスの精神を破壊した。
「あんた。また禁書ちゃんとイチャイチャしてるの?」
訪れた美琴があきれた様子で立っていた。
「その子が悪いのよ? 私がイギリスに帰るように何度も忠告したのに
言うこと聞かないんだもん。見上げた根性よね」
「く…!」
禁書のことを侮辱された上条が苛立つが、
「何よその目は? 言っておくけど、抵抗したら禁書ちゃんを
丸焦げにするわよ?」
「ち…ちくしょう」
上条が悔し涙を流しそうになる。
圧倒的な力に屈服する哀れさは絶筆に尽くしがたかった。
「とうまぁ。泣かないでよぉ。私が癒してあげるからぁ」
「お…おい」
とろんとして目つきの美琴が迫る。
彼女は上条を押し倒し、ゆっくりと顔を近づけた。
「んん……」
美琴の舌が上条の口腔に侵入する。
(ちくしょう……受け入れるしかねえのかよ……)
上条は全てをあきらめ、美琴とのキスに没頭した。
ちゅ
ちゅ ちゅうう
ちゅぱ
「うふふふふふ」
キスするときの美琴の目は据わっていた。
濁った闇の色をしていて、まるで飲み込まれてしまいそうだった。
「当麻の唾液、おいしいよ?」
上条の頭をつかみ、激しく唇をむさぼる美琴。
「ぷは」
たっぷりと時間をかけたあと、美琴がようやく唇を離す。
口元にしたたる透明の液体を舐めながら、
「当麻。うれしそうじゃないね。本当は私のこと嫌いだもんね?」
「…!?」
「隠さなくてもいいよ。そのことは後でゆっくりと聞かせてもらうから。
まずはお夕飯作っちゃうね。テレビでも見ながら待ってて」
美琴は立ち上がり、キッチンで野菜を並べ始めた。
>>1は天使と屑無のSS書いてた人かな?
>>121 いかにも。クズ無は俺のおすすめSS。
_________________________________
まもなくして夕飯ができた。
「「いただきます」」
「……」
禁書を交えた三人で食卓を囲む。
夕飯の間、しばらく無言が続いたが、やがて美琴が
「当麻。あーんして」
美琴がフォークで刺したミニトマトを差し出す。
「ちょっと恥ずかしいな」
首を振る上条。
「ふーん……私を怒らせるつもりなの?
初春さんたちとは楽しそうにやってたくせに。
トマトの代わりに禁書ちゃんの生肉でも食べる?」
「っ…。すまん。冗談だよ。いただこう」
「はい。あーん」
「…あーん」
目をつむって咀嚼する。味など全く感じなかった。
「大丈夫? ずいぶん冷や汗をかいているわね」
「まあな。こんなに緊張する食事は生まれて初めてだ。
一歩間違えれば俺は殺されるんだろ?」
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。私を殺人兵器と勘違いしてない?」
不満そうに唇を尖らせる美琴。
「ところで話は変わるけどさ、あんたの周囲には
たくさんの美少女がいるけど、ぶっちゃけ誰が一番可愛いと思う?」
「なぜそれを聞く?」
上条の手は震えていた。
「いや、今後の参考にしようと思ったの。あんたが私のこと
好きじゃないのはよく分かってるから、逆に他の子たちの魅力を聞こうかなって」
「……」
上条は真剣に考えて結論を出した。
「井口裕香だ」
「当麻」
「なんだ」
「死にたいの?」
「すまん」
美琴はオレンジジュースを飲み、一息ついた。
「もう一度聞くわね。誰が一番可愛いと思う?」
美琴は真剣な顔で言ったが、どういうわけか、
上条を中心に、テーブル全体が揺れ始めた。
「ちょっと、震えてるのよ。動揺しすぎでしょ」
「うるせええ!! 今真面目に考えてるんだよ!!」
上条が机を勢いよく叩いた。
(どうすればいい?) 上条は考え続ける。
上条「み・・・」
御坂「!」
上条「・・・御坂妹」
上条は苦肉の策を打ち明ける。
「美琴。明日までに考えておくよ」
「は? いっぺん死ぬ?」
「……わーったよ!! 答えればいいんだろ答えれば!!」
上条は再び机を叩いた。
「声ならインデックス。総合的には佐天さん」
「なん……ですって……」
今度は美琴が動揺した。
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´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´
「なぜに禁書ちゃんの声が好きなの?
ってか私の声は好きじゃないってこと?
こんなふざけたクサレシスターの声が好きなの? 頭大丈夫?」
美琴は自然な動作で禁書ちゃんの首を絞めようとするが、
「あああああああああああああああ!!」
上条が咆哮(ほうこう)をあげる。
「禁書の声を馬鹿にしないでくれ。俺は大好きだぞ」
「ふーん」
美琴が目を細める。
「当麻」
「なんだ」
「私、嫉妬しちゃったんだけど、どうすればいいと思う?」
美琴は禁書の首を思い切り絞めようとする。
「落ち着け」
「じゃ、今すぐ撤回してよ。
こいつは地獄の淫乱のファッキンシスターだって言って。
そしたら許してあげてもいいよ」
「さっきから苦しいんだよ。たんぱつ」
「「な!?」」
上条らは驚きを隠せない。
「とうまが私の声を好きって言ってくれたこと、すごくうれしいんだよ」
禁書は美琴の手を振りほどき、なんと上条に抱きついてしまった。
「とうまぁ~ とうまぁ~ 」
まるで猫のように上条の胸の中で頬すりする。上条は動揺しながら聞いてみる
「ちょ……おま……失語症は……」
「もう直ったよ。とうまの愛の力でね」
「そ、そうなのか。なんかよく分からんけど、とにかく良かったぁ。
よかったなインデックス! これからはおまえとたくさん話せるぞ」
「うん! 私もとってもとってもうれしいんだよ」
仲の良い兄妹のように抱き合う二人。
だが、
「うふふふふふふふふふふふふふふ」
鬼のレールガンが不気味に笑っていた。
「まずはぁ……テアシを焦がしてぇ……さいごにアタマだけノコシテぇ」
美琴から放たれる殺気はレストランの非ではなかった。
「あわわわわわわわっわ!!」 脅える禁書。
なぜか局地的な地震が発生しており、部屋全体が揺れている。
ドドドドドドドドドドドドドド
例えるなら戦車がすぐそこまで迫っている感覚。
(これはやばいことになった……)
百戦錬磨の上条さんでも、この戦場のような雰囲気には
耐えられそうもなかった。
(おいおい、下手したら学園都市ごと吹き飛ぶぞ!)
危機的状況に対し、上条は即断した。
「美琴。不安にさせてごめんな? 本当はお前のことが大好きだよ」
「え…?」
美琴は上条に抱きしめられていた。
「禁書目録は…俺の妹みたいなものだ。恋愛対象じゃない。
でも美琴は違うぞ? 毎日おまえと過ごしてすごく楽しかった。
いつしかおまえのことが本当に好きになってることに気づいたよ」
「本当に?」
美琴がいぶかしむ。
少し書き溜めたので投下する。
>>143
「ああ。本当だ」
「嘘ばっかり。さっきは佐天さんが本命だって言っててじゃない」
「ふ…あれはイタリア風のジョークだ。お前は常盤台のお嬢様。
そしてレベル5の超能力者だ。おまけに器量もいい。
おれがおまえに惚れないわけないだろう?」
「……でも」
「美琴。好きだ」 ←イケメンAA
「……」
その後5分ほど沈黙が続いた。
抱擁した姿勢のまま、美琴は言葉を発しようとしない。
(まずい……ものすごく気まずい雰囲気じゃないか。やはり駄目なのか?)
上条が背中に嫌な汗を流しながら別の作戦を考えようとしたが、
「とうま。信じていいの?」
「…!」
ようやく聞けた美琴の言葉。
上条が即答する。
「もちろんだ。俺にはおまえだけだ。俺に以外におまえを
幸せにできる奴なんていないよ」
「……」
「改めてもう一度言わせてもらうぞ。美琴。愛してる」
次の瞬間、美琴の瞳から涙が零れ落ちた。
「…………とうま……。私もとうまのこと…大好き…」
美琴はぎゅっと力を込めて当麻に抱きつく。
「と……とうまぁ……とうまぁ……う……ひぐっ……」
嗚咽交じりで彼の名前を呼び続ける美琴。
当麻から告白されるのは始めてだった。
今までツンツンしていたせいで気持ちを伝えられなかったことも
重なり、この喜びは大きかった。
「いい子だな。美琴……」
当麻は慈悲深い顔で美琴の頭を撫でていた。
(ふふふ……くくく……)
だが次第にその表情が変貌していき、口元を醜悪にゆがめる。
(思い通り…!!)
この抱き合った姿勢なら、悪に染まった顔を見られなくて
すむので幸運だった。
, /〃ハヾ / ∧∨〃、ヾ} l| :}ミ;l\
/〃// / 〃l lヽ∨,〈ヾ、メ〈 }} ;l リ ハ l`!ヽ.
//' /,' ,' 〃 l l川/,ヘ丶\;;ヽ/:'/〃∧ l ト、:l !
〃,'/ ; ,l ,'' ,l| レ'/A、.`、\;;ヽ∨〃/,仆|│l }. |、
i' ,'' l| ,l ' l. !| l∠ニ_‐\ヽ;\,//,イ| l | l ト/ λ! 、
. l ; :|| ,'i:/ l| |:|: |``'^‐`ヾ∨`゙//|斗,l ! | ,タ /l.| l 三__|__
l ' l |」,' l' lハ |'Ν  ̄´ /` ,|l_=ミ|! ly' ,〈 :|| | 口 |
|l .l H|i: l | ゙、| l _.::: ,!: l厂`刈/ /!} :l| ‐┬‐
|! :l |)!| ! | ヽ '´ ’/'_,. ノイ.〃/|! │田│
l|l |l 「゙|l |`{ .. _ |}/,ハ l  ̄ ̄
|!l |l、| !l :|. ‘ー-‐==ニ=:、__j:) l'|/|l リ 、 マ
ヽ ̄ニ‐、__.」乢!L!lヱL」__ ー、 `'''´ 从「 / 了 用
\ `ヽ\ /l | / ̄´ // '"`ー‐
. ,、 l ゙、 / ' |、 { /l/ ,
'} l ゙, / |:::\ } ,.イ/ レ |
l l l ,.イ l:::::::::\__ `'-‐::"// |′ ノ
l ! K ヽ,、 \「`''''''''"´:::::::;;:" //
. l l ト、\( _.... ヽ .:.::::::::;;″ /' _
\ | l| 八、ヽi´ | .:.:::::::::::::i' .:/'"´ ̄ ̄ ̄ ,.へ\
その後、美琴が泣き止むまで待ち、遅くなる前に帰らせた。
夜はインデックスと二人きりである。
美琴による武力侵略を受けた上条家において、二人の仲はますます深まっていた。
卑劣極まる悪の制裁と暴力により、死と隣り合わせの生活をしていた
上条達は、いつのまにかお互いを意識するようになっていた。
今では一つのベッドを共有している。
「とうまぁ!」
インデックスが上条の腕の中で丸くなる。
「とうまの腕の中ってとってもあったかいんだよ?」
まるで猫のように目を細めて甘えている。
「失語症も治ったし、これからはいつでもとうまとお話できるんだよ?」
「ああ。ただし美琴にばれないようにしないとな」
「うん。大好きだよとうま」
インデックスは目を閉じて上条に顔を近づけた。
「ん…」
上条の嬉々としてそれを受け入れる。
言うまでも無くこの行為は、美琴に対する裏切りである。
美琴に発覚すれば即抹殺されるに違いないが、それでも
二人は、一緒にいられる時間を大切にしたかった。
「とうまぁ。私にも好きって言って」
キスを中断したインデックスが求める。
「大好きだよ。インデックス。ちなみにこれは嘘じゃない」
「うれしい……すごくうれしいんだよ」
ちゅ
「んんn」
ちゅー ちゅば ちゅば
インデックスと情熱的に舌を絡める。
「大好きだよとうまぁ」
禁書が失語症になって以来、上条はいつも以上に優しくなった。
禁書は、それが上条から向けられる愛情なのだと思っていた。
こんな出来損ないの自分でも面倒を見てくれる彼のことが大好きだった。
病気が治ったら、いつか上条に恩返ししたいと考えていた。
ちなみに、美琴に対して嫉妬心は全く無い。
上条が美琴に向けている感情が偽りであることに気がついているからだ。
同時にそれは、自分が上条に愛されているという自信の表れだった。
(とうまは私だけを見てくれてるんだよ…)
禁書はキスに夢中になっていた。
電気を消しているので彼の顔は見えないが、きっといつもの
ように優しく微笑んでくれているのだと思っていた。
(ふふふふ)
上条は心の中で笑っていた。
禁書目録の可愛い声を聞くだけであそこがうずいて仕方が無かった。
あの甘い声で自分の名前を連呼して甘えてくる。
これこそが上条の望んだ日常だった。不幸体質の彼は、
家の外では散々な目に会ってきた。特にビリビリ中学生の
ヤンデレ化による圧政をしかれ、せっかく仲良くなった佐天さんと
初春さんと疎遠になってしまったのは許しがたいことだった。
「インデックス…」
つぶやきながらインデックスの髪の毛を触る。
細くて柔らかい彼女の髪は触り心地が最高だった。
軽く掴んだそれに鼻を近づけるとシャンプーの匂いが漂った。
そんな彼のストレスを解消してくれるのが、インデックスだった。
確かに、傍若無人な彼女の振る舞いに苛立つ日もあったが、
それでも女の子と同棲生活は楽しかった。
おいしい料理を作れば褒めてくれるし、何より寂しさを紛らわせてくれる。
高校生の身で女の子一人を養うのは大変だと最初は思っていたが、
今では彼女無しの生活など考えられなかった。
なぜなら
「あぁ はぁああ……やああ……ああん……」
「痛いか? インデックス」
「だいじょうぶ……だよ……もっと……強く突いて……」
インデックスが四つんばいになって彼のモノを受けいれていた。
上条は彼女の腰を掴みながらピストン運動に励む。
「ああ んあああ はあああ ああああん いいいよおおお!!」
「ふふふ。可愛いなぁインデックスは」
「もう……イキソウだよ……」
「ああ。だけどもう少し我慢してくれ…」
行為の最中なのに、上条は妙に冷静だった。
実を言うと、上条はインデックスのことをそれほど
好きではなかった。大切な存在であるのは確かだが、
美琴に言ったとおり、それは恋愛対象としてのそれではなかった。
上条が好きなのは……
「インデックス。俺にも好きって言ってくれ」
事後。上条がそばで寝ている禁書を揺する。
「ん……」
心地よ眠りから覚まされた禁書が寝ぼけながら応じる。
「なぁに、とうま?」
「おまえは俺のこと好きだよな?」
「うん。とうまのこと、だぁいすきだよ」
まるで脳みそがとろけてしまいそうな声で言う。
上条は興奮し、
(……うぉ!! すごい破壊力!)
心中で暴走したが、現実では
シマウマモードになるのを何とか我慢していた。
「そうか。安心したよ。聞きたかったのはそれだけだ。
おやすみ。インデックス」
「ふぁあい。おやすみぃ」
インデックスは上条の腕の中ですやすやと眠った。
つまり一言で言うと、彼はインデックスの『声』を愛していた。
週末。
上条は公園で待ち合わせをしていた。
「ち…!」
携帯を見ながら思わず舌打ちをする。
画面には以下の内容が表示されていた。
『電話帳、登録件数 1件 御坂美琴』
以前登録されていた友人達のアドレスは全て消されてしまった。
美琴の嫉妬深さにより、上条と仲良くしている人間は全て罰せられるのだ。
それは携帯に登録されているデータとて例外ではない。
(ったく、佐天さんと初春さんの番号まで消しやがって。
こんな生活がいつまでも続くと思うなよ。いつか復讐してやる)
闘志を燃やす上条。
そこへ美琴が駆けて来た。
「当麻。遅くなってごめんね。待った?」
「いや大丈夫だよ」
「そっかぁ。それじゃ映画見に行こうか」
「おう」
テンプレート的な会話を経て、二人は劇場に足を運ぶ。
そこは以前、上条が佐天さん達と一緒に訪れた場所だ。
そのことを知った美琴は激怒したが、上条になんとかなだめられた。
そして美琴は佐天さん達に対抗するため、ここを選んだのだ。
「……」
真剣に映画を見ている美琴だが、隣に座っている上条には
どこが楽しいのかさっぱり分からない。
上映しているのは『ゲコ太戦隊・ゲコレンジャー』という戦隊ものの
映画で、どう見ても対象年齢が幼稚園程度のものだ。
「美琴。おまえ。本当にゲコ太が好きなんだな」
「う、うん。だってゲコ太は私のアイドルなんだもん。この年で
こんな子供っぽい映画を見るのは変だとは思うけど…
それでも好きなものは好きなの!」
子供っぽく頬を膨らませる美琴は可愛らしかった。
(やはりこいつは腐っても美少女だ…)
上条は映画よりも美琴を観察していた。
館内特有の暗がりの中で、上条は八神月の顔をしながら考えた。
(美琴とはいつかは縁を切るつもりだが、その前に少し
仲良くするのも悪くは無いか…何せお嬢様だからな)
美琴に愛を伝えて以来、彼女の雰囲気は変わった。
ヤンデレであることには変わりないが、以前のように
他人に暴力を振るうことは無くなり、上条に従順になった。
「美琴」
「ひゃ!?」
上条は美琴の肩を抱き寄せた。
「動くなよ」
「な…ナニをするのいきなり! ん……」
それは強引な口付けだった。
「ちょ、ちょっと…」
嫌がる美琴が口を離す。涙目になりながら、
「こんなことろで、そういうことするのは良くないよ…。
どうしてもしたいなら映画が終ってからしよ?」
「うるせえよ」
「…え?」
美琴は呆然とした。あの優しい上条にこんなに怖い目で
睨まれるとは思わなかったからだ。
「おい。美琴」
「は、はい……」
「俺、もう帰るわ」
上条が冷たく言って席を立ち上がった。
美琴は悲痛の叫びをあげる。
「ま、待って!! どこ行くの!」
「帰るんだよ。もうおまえといても楽しくないからな。
おまえは俺よりゲコ太の方が好きなんだろ?」
「そんなことないよ!! 私は当麻のことが一番好き!
お願いだから行かないで」
「……」
美琴は無言で佇む上条の足にすがり付いていた。
「ねえ。お願い。私、当麻がいないと寂しくて死んじゃうの。
お願いだから一緒にいてよ…」
美琴はうるうるした瞳で上目遣いで見上げてくる。
(ほう。これはなかなか…)
上条が冷たく接したのはもちろんわざとだ。美琴のヤンデレ属性が
どれほど変化したのかを確認したのだ。
あの告白以来、上条は意図的に美琴といる時間を増やした。
美琴を上条依存症にするためだ。最初のうちは美琴のわがままを
なんでも聞いてやり、信用させる。そして仲良くなった所で、
一気に絶望に落とすことによって不安にさせる。
「と、当麻。どうして黙ってるの? もしかして怒ってる……?」
美琴は今にも泣きそうだ。
まるで先生に叱られる子供のような顔で震えている。
(……計画通り)
上条が八神のセリフを模倣する。
思惑通り、美琴は上条に依存するようになった。
彼女にとって上条に嫌われることは死に等しい苦痛だ。
「美琴。今のは冗談だ。不安にさせてごめんな?
仲直りしよう」
作り物の笑顔で美琴を抱きしめる。
その温もりを感じた瞬間、
「あ……」
美琴の顔が弛緩し、もう何も考えられなくなってしまう。
「俺がおまえのこと嫌いになるわけないだろ?
大好きだよ。美琴」
「うん。うれしいよぉ。当麻ぁ」
映画などそっちのけで、二人は熱いキスを交す。
まもなくしてトイレに移動した。
「美琴。お前の胸、小さくて可愛いな」
ここは男子トイレの個室。
上条は美琴の背後から胸を揉んでいた。
「ん……」
上半身裸の美琴は顔を赤らめながら、上条の機嫌を損ねないようにしていた。
「大きさ的にはAカップってところかな?
さすがのレールガン様でも胸までは恵まれてないようだな」
ビンビンの乳首をつねる。
「い、痛い…そんなに強く触ったら痛いよ…」
美琴が涙目で訴える。
「ああ。ごめんな。お前を見てるとつい、いじめたくなるんだよ」
「あっ…」
上条の手がスカートの中に侵入した。
「ここをこんなに濡らすなんて、美琴は変態さんだな?
パンツまでびっしょりだぞ?」
「あっ んん」
上条の指が美琴の膣に差し込まれ、中をかき回す。
「あ だ、だめぇ そんなに…」
「何が駄目なんだ? 言ってみろよ」
「あふ……んんん…」
美琴は目をきつく閉じて耐えていた。
正直、美琴はこういう事は望んでいなかった。
常磐台中学で英才教育を受けている彼女は、そこいらの
学生よりは貞操観念が強かった。
幼き頃から良妻賢母となるべく育てられてきたので、
公共の場所で犯されているこの状況は最悪だった。
まして美琴はまだ中学2年生だ。常識的に考えても
性の関係をもつには早すぎる。
だが、
「あああ!! んあああ! あっ ああっ はぁっ」
美琴は荒い息を吐いていた。
立ったままの姿勢で上条から犯されている。
いわゆる立ちバックの態勢だった。
「どうだ? お嬢様?」
「あぁああ…だ、だめよ……こんなことしちゃ……」
「いいじゃねえか。俺とおまえの仲じゃないか」
「ああっ んあああ いやあ いやああああ!!」
悲しみの涙を流す美琴だが、上条の運動が休まることは無い。
突付くたびに弾けるような水温が響く。
美琴は恥辱に耐えながら、早くこの苦痛が終わることを願っていた。
事後。
「美琴。痛かったか? 酷いことしてごめんな」
「ぐすん……」
上条は、泣きべそをかきながらふてくされている美琴を慰めていた。
「そんなに泣かないでくれ。悪かったよ。でもな、俺がこんなことするのは
美琴にだけなんだぞ? 美琴のことが一番好きだからな」
「ほ、ほんとう?」
またしても美琴の上目遣い。上条は暴走しそうになるのを我慢し、
(ぐぉおお!) 深呼吸して、「もちろん。愛してるよ。美琴」
愛をささやき、美琴を抱きしめる。
もはや完全にワンパターンだが、ヤンデレには効果抜群だ。
「私も愛してるよぉ。とうまぁ」
インデックスのようなだらしない顔をして上条に
身を任せる美琴。
(ふふふふふ。くくくくく。攻略完了だな。
もう美琴は俺の奴隷だ)
上条は今すぐ笑い出したくなるのを我慢していた。
(いよいよ初春さん達と仲良くなれるぞ。
さっそく計画を立てよう)
______________________________________________
すまんが休憩をかねて書き溜めさせてほしいんだよ。
たぶん次は初春さんか黒子あたりが登場する。
鬼畜成分は抑え目にして純情恋愛にしようかな。
どうしようか悩むな。
保守ありがとう。
__________________________________
そして次の日。
学校の帰り道にて。
上条は自己嫌悪に陥っていた。
「はぁ~~~~~」
盛大にため息をつく。
それもそのはず。正義の味方であるはずの上条さんとも
あろう者が、二人の女の子と体の関係を持ってしまったのである。
(俺はやっぱり鬼畜なんだろうか? 美琴に恨みがったとはいえ、
映画館で犯すなんて我ながら最低だ…)
肩をがっくりと落としてうなだれており、その後ろ姿は
くたびれたシマウマを連想させる。
(俺は真人間になりたい。そして、普通の恋愛がしたい。
そのためには……)
と、そこまで考えた所で、
『きゃあああああ!!』
路地裏から悲鳴が聞こえた。
「ほらあああああああああ!!」
上条はいきり立ち、そこへ足を運ぶ。
待ち構えていたのは不良という名の鹿たち。
「あんだてめえは!?」
「邪魔するつもりか? あああああ!?」
「ぷふいいいいいいいいい!!」
敵は全部で三人。鹿らに囲まれて脅えている女の子が一人。
女の子は下校途中なのか、カバンを抱きながら震えている。
(三対一か。少しやっかいだが、やってやるぜええええええ!!)
正義のシマウマ(上条)が助走を開始する。
「ちょ…!?」
鹿Aが発したセリフは短かった。
タックルされそいつは激しく吹き飛び、路地の外を走る
トラックに激突してしまった。
「な…?!」 「ぶ、ぶひ?」
その一瞬の惨事に、不良諸君らは立ち尽くす。
「他所見してんじゃねええぞおおおおおおおお!!」
その後は余裕だった。戦意を失くした彼らをタックルで
50メートルくらい吹き飛ばしてやった。
(ふふふ。今日も人助けをしたぜ…!
見ろ。俺はどう見たって正義の見方じゃないか。シマウマだけど)
上条はガッツポーズして力が鈍っていないことを実感した。
「あ、あの……助けていただいてありがとうございます…」
おずおずと頭を下げる女の子は気品に満ち溢れていた。
(ん? 見覚えのある制服だな。美琴の学校のものか?)
上条はそう思ったので聞いてみる。
「君はもしかして常磐台中学の生徒さんかな?」
「はい。ご存知なんですか?」
「知り合いが一人いてね。御坂っていうんだけど」
上条が頭をぽりぽり掻きながら言う。
「まあ。あのレールガンの御坂様とお知り合いだったのですね。
すごいですわ。あの……失礼でなければ…お二人はどういう関係なのですか?」
「あー、えーっと……」
上条が言葉を選ぶ。まさか主従関係にあるとは口が裂けてもいえない。
「くされ縁だよ。いっつもあいつが勝負を仕掛けてきて
それに巻き込まれてるだけ」
「あの御坂様が勝負を…? うふふふ。
信じられませんわ。学園では粛々としてらっしゃるのに」
「そうなの? 俺の知ってるあいつは結構バカだよ? あはは」
その後しばしの雑談を挟み、最終的にアドレスを交換した。
上条にとってその少女の名前は知らないものだったが、
とにかくこれで御坂美琴以外の新たなメアドをゲットしたのだった。
真人間への復帰・第一歩である。
「ただいまぁ」
上条は堂々と胸を張って帰宅する。
「おかえりなんだよ、とうまぁ」
甘い声のインデックスが抱きついてくる。
その柔らかい感触といい匂いに惑わされ、暴走しそうになる。
「っぐぐぐぐぐぐぐ」
「とうま? 険しい顔してどうしたの?」
「い、いや、大丈夫だ。ちょっと発作が起きそうになってさ」
上条は内部に潜むシマウマと戦っていた。
それが発動すると鬼畜モードになってしまうわけだが、
今は抑えることが出来た。
「あれ? 今日は美琴は来ないのか?」
いつも夕食を作りに来る彼女がいないので疑問に思った。
インデックスはくりくりの瞳をしながら答える。
「うん。なんか調子が悪いからしばらく来れないんだって」
(美琴の奴……具合でも悪いのか? 健康管理には気を
使っている方だと思っていたが……まあいい。
後でこれからも家に来ないように命令しておこう)
上条は思考を中断し、
「そうか。じゃあ今日は二人だけでご飯を食べような!
たぶんこれからはずっと二人だけで生活できるぞ!」
「うん!」
こうして二人だけの愛の夕食を堪能した。
純真無垢な禁書を見ていると、こちらの心まで
洗われる思いがして心地よかった。
上条は、鬼畜を卒業して真人間になることを誓ったのだった。
その次の日。
「か、上条さん……?」
クレープ屋の前を通った際、気まずそうな顔で
こちらを見てくる佐天さんと初春さんの姿があった。
「あ……よ、よう、元気か?」
上条も同様に罰の悪そうな顔をしている。
会うのは、ヤンデレ美琴によるレストラン襲撃事件以来だ。
あの日からすっかり疎遠になってしまった。
「あ、あの…私たち、もう行きますね。御坂さんに見つかると大変ですから」
初春さんが佐天さんの手を引いて立ち去ろうするが、上条が呼び止める。
「待ってくれ! 御坂ならもう大丈夫だよ!
俺があいつを説得したんだ。
もう初春さんたちには手を出させないから大丈夫だよ」
「……」
上条の必死の叫びが通じたのか、彼女達は足を止めてくれた。
しかし、まだ背中を見せたままだ。
「もう御坂に脅えなくていいんだぞ? さあ仲直りしようぜ」
「……か、かみじょうさん……!!」
佐天さんが泣きながら上条の胸に飛び込んでくる。
「うわあああん!!」
今度は初春さんだ。今までの寂しさが募ったのか、
恥も外見も関係なく上条の腕に抱きつく。
「はは。これで、元通りだな……」
上条は二人の少女の泣き顔を眺める。
そこにはかつて存在した温もりがあった。
鬼畜サイドに落ちてしまった上条であるが、それは
悪の美琴が原因であり、本来は優しい少年である。
そうでなければ、純情な二人の女の子達に好かれるわけが無い。
なお、上条は彼女たちの身の安全を保障させるため、
美琴宛に『俺の周りの女の子達に手を出したら絶交するから』
という内容のメールを送信しておいた。
しばらく待ってもメールの返事はもらえなかったが、
美琴は上条の奴隷であるから、逆らうような真似は
しないだろうと判断した。
「上条さん。あーんして」
「こっちのも食べてください」
現在の彼らはベンチに座り、クレープを食べていた。
というより上条が食べさせられていた。
初春 上条 佐天 という順で座っており、腕を組んでいる。
いつかのハーレムフォーメーションの再現だ。
上条はいちごとバナナの二種類のクレープを味わいつつ、
その腕に感じる柔らかい感触に暴走しそうになる。
(こ……これは……特に佐天さんのほうが大きいな……
まずい……だが…ここで興奮するわけにはいかん…)
強く押し付けられた胸の感触は確かに気持ちよかったが、
シマウマモードをキャンセルする術はすでに心得ていた。
(ふぃぃぃ。俺は人間……)
明鏡止水の心で目を閉じる上条。
これぞ真人間上条が会得した、シマウマキャンセラーだった。
理性を制御し、幸せを謳歌する上条だが、それも長くは続かなかった。
「あら、ずいぶん楽しそうですわね。上条さん。女の子二人を
連れて軽いハーレム状態ですの?」
通りかかった白井黒子が声をかける。上条は少しカチンときつつ、
「し…白井? 別にどうしようと俺の勝手だろ」
「ふうん。そうでしょうか? 誰にでも優しすぎるのは
時として罪になるのですわよ。昨日は我が校の先輩が
お世話になったそうで…」
「…? ああ、昨日のあの生徒さんのことか…」
黒子が話しているのは、昨日上条が助けた女子生徒のことだ。
「あの方は二年の先輩ですの。その件ついてはお礼を言っておきますわ。
でも、ずいぶんお姉さまに対してずいぶんと冷たいようですわね。
こんなに堂々と浮気なさるなんて…」
黒子は冷たい目つきで上条を見下ろした。
「うわ…き?」
佐天さんが疑惑の目で上条を見つめる。
黒子が得意げに語る内容は、上条の闇の記憶を暴露するものだった。
「そうですわよ。上条さんが佐天さんたちと仲良くしてるのは偽りの姿。
彼は本当はお姉さまとお付き合いしているはずですの」
「……あいつとは脅されて付き合ってただけだ。もう別れるよ」
「…そうですか。なら美琴お姉さまのことはもうなんとも思ってないのですね?」
「ああ」
上条がそう答えると、黒子は捨てゼリフを吐いた。
「別に上条さんを責めようとしているわけではありませんの。
お姉さまにも非はありますから。ただ上条さんの気持ちを確かめたかっただけですの」
踵を返し、去っていく黒子の後姿は次第に小さくなっていった。
そして残された三人の間に気まずい沈黙が訪れる。
「あの、上条さん。御坂さんとは……」
初春が慎重に口を開く。
「ごめんな。まだ二人には話してないけど、あいつとは色々あったんだ。
本当に色々なことが。はは。やっぱり俺は最低だ。初春さんたちと
いる資格はないのかもしれない」
上条は自嘲気味に笑い、中年サラリーマンのような顔で
その場から去ろうとするが、少女達に引き止められる。
「上条さんは最低なんかじゃありませんよ! 何があったのかは
聞きませんけど、どうせ御坂さんに脅されてたんでしょ?
悪いのは御坂さんです」
「そうです! 御坂さんが異常だったのは明らかです。
白井さんだってそれを認めてたじゃないですか!」
佐天さん、初春さんの順で慰めの言葉をかけてくれる。
「ひぐっ…ぐす……う……お、俺は……二人と一緒に…
いても……いい……のか……?」
上条のセリフは嗚咽交じりだった。
「もちろんです! 私たちは上条さんとずっと一緒にいますよ」
「もう御坂さんのことは忘れてください」
地獄を経験した上条にとって、彼女らの言葉は温かかった。
恐らく美琴もこうしてストレートに思いを伝えられる子だったら、
過ちを犯すことはなかったのかもしれない。
家に帰ると、インデックスがまたしても抱きついてきたが、
彼女は笑ってくれなかった。
「とうまから女の匂いがする。これはたんぱつのじゃないね」
「……!?」
上条は顔面蒼白になる。
禁書は間違いなく佐天さんと初春さんのことを指摘していた。
今日あれだけ密着していたので無理はない。
「もしかして、誰かとうわきしてる?」
「……!?」
上条の顔に冷や汗が流れた。
「さっきから黙ってるのはどうして?
とうまは……『私だけ』を好きでいてくれるって言ったよね?」
部屋の空気が張り詰める。
=、..,,,ニ;ヲ_ ヾ彡r''" _f⌒ o ⌒Y .イ__ノ て ヽf⌒ o⌒ヽィ..,,_辷弋ー''゛''゙r(,,、/
``ミミ, i'⌒! ミミ=-人_ノゝ、‐'`‐ァ´ 人 ヽ_ノ弋___ノィr 人゛ミ_ッ _ヲ;ニ,,,.
= -三t f゙'ー'l ,三 7,、r‐´`ァ'´レ':ゝし':::::::::ー'::::::::::::::::::レハゝ‐く`イノ ミミ !⌒'i ,ミミ
,シ彡、 lト l! ,:ミ... f'⌒Yノし':::::::::::::::/::::,:::::::::::::ヾ:::::::::::::::::::レ'⌒ヽj `三, l'ー'゙f t三-
/ ^'''7 ├''ヾ! ( う:::::::::/:i!::::/|::::::::::::::::ハ::::トi:::ト:::::::::::|::::( ¦ ''ミ:, !l イl 、ミ_シ
/ l ト、 \. ( ぅ:::::::::〃::i!ィ:|‐_、:i|::i!::::| !:::ィ:ニ=ト:、!::::|::::::::ゝイ ッ''┤ 7'''^ \
〃ミ ,r''f! l! ヽ. 'Y|:::|::::::::||::ィL::j L:_jLiL:/ L::j Lj L:::ヽ:|:::::::i!::::| / 、ト l
ノ , ,イ,: l! , ,j! , ト、 i:| |:::|::::::::|レ ,ォ ≠ミ ィ ≠ミ、`|::::::,:::::.′ ,r' !l !f'ヽ
/ ィ,/ :' ':. l ヽ. i:| |:::|::::::::| 〃 yr=ミ:、 !/行ミt ハ :::/:::/ ,.イ ,. !j, , !l :,ト,
/ :: ,ll ゙': ゙i V从::::从iイ {_ヒri}゙ ゙ ヒrリ.》 从:/::: .,r' l .:' ': ゙i,ィ ゙i
/ /ll '゙ ! イ::人:::::iゝ  ̄´ j:人::::ヽr',i゙ :'゙ ll,
/' ヽ. リ 弋_彡f⌒ ' r_'_ノ`⌒ ! ゙' ll゙i
/ ヽ / `ーハ {ニニニィ /:/ リ .,r' '゙
/ r'゙i! .,_, / ヾ:ゝ. ∨ } ィ::/ ゙i ,r'
/. l! イ )::::> ゙こ三/ , イ:从 ゙i ,_,. !i゙'
/ ,:ィ! ト、 'イ:::::_::_| ` r <ト、:/ ト !l
「だれと浮気したの?」
「…!!」
上条は激しい動悸に襲われ、気絶しそうになった。
(なん……だと……まさかの……ヤンデレ第2号発生か…?)
美琴に襲われたときの衝撃がよみがえる。
過去の残虐な記憶が脳内で再生され、
うずまきのようにぐるぐると回り始めた。
「どの女の子と仲良くしての? 黙ってないでしゃべりなさいよ。
本当のことを言わないと……」
禁書はここでためを作り、大声で宣言する。
「もう二度と、とうまと口を聞いてあげないんだからね!」
(……!?)
その言葉を聴いた瞬間、上条は酸欠に陥った。
それほどショックは大きかったのだ。
(禁書の声が聞けない………だとぉ!?
うああああああああああああああああああああ!?)
上条は頭を両手で押さえながら床の上をのた打ち回った。
「うああああああああああああああああああああ!?」
ゴロコロと冗談のように転がり続ける。
恐らく下の階まで響いていることだろう。
だが、止まるわけにはいかなかった。
(禁書目録の声は……俺の宝だ……ゆかち……)
上条はブリッジを始めた。
こうしないと頭がおかしくなるからだ。
ここで冷静な意見を述べさせてもらえば、禁書目録は
ただ怒ってるだけで、別にヤンデレ化はしてない。
したがって、いつものように適当なことを言って目録ちゃんを
なだめればいいのだが……
「はあああああああああああああああああああああああ!」
上条は逆立ちを始めた。
彼にとって、インデックスの声は生きがいに等しいのだ。
美琴による圧政下に耐えられたのも、明日が来れば
禁書の声が聞けると考え、それを支えにがんばったからだ。
それが今、禁書自身の判断により失われようとしている。
これでどうして落ち着いていられようか。
散々暴れた後、上条は土下座しながら佐天さんたちのことを話した。
そしていかに禁書のことを愛しているかを原稿用紙20枚分に書いて
朗読したが、機嫌を直してくれなかった。
(とうまはひどいんだよ……。乙女の純情をもてあそんで…)
頬を膨らます禁書さん。
禁書は、とうまだからこそ身も心も許したのだ。
諸事情によりこの家に引きこもる彼女は、上条が
外で何をしているか知らない。
よって上条の話を信用するしかないのだから、
それが裏切られたとなっては怒るのも当然だ。
結局、朝になるまで禁書は口を聞いてくれなかった。
ちなみに、禁書が膨れている頃、常磐台中学の女子寮のある部屋では……
「お姉さまぁ。今どんな気分ですの?」
「うぅぅ……もう許してぇ…………」
黒子はベッドの上で足を組んでいた。
片手にワイングラスを持ち、優雅に美琴を見下ろしている。
「黒子ぉ……私が悪かったからもう許してよぉ……」
美琴は後ろ手に縛られ、檻の中に入れられていた。
全身ゴム製の服を着せられている。
もう何日も食事をさせてもらえず、飢えと乾きが極限まで
達しそうになっていた。
「駄目ですの。お姉さまにはたっぷりと反省していただきますわ。
ところで、今日上条様にお会いしましたの」
「え? 当麻と!?」
美琴が上条の話題に食いつく。
「お姉さまのことをどう思っているかと聞いたら、もう別れたいと
答えられましたわ。お姉さまに脅されて付き合っていただけだと、
隣に寄り添う佐天さんと初春にも伝えてました」
「な!? なんで佐天さんたちと…? そんなの許せない…!!」
「ふん。あなたがどう思っても、もう関係ないんですの」
黒子は凍りつくような表情でムチを取り出した。
「ははは……黒子……まかさそれで私を叩こうっての…?
言っておくけど……私はレベル5よ? ただで済むと思ってるの?」
「黙りなさい」
「~~~~~~~~~~~~~~~!」
振り下ろされたムチがしなる。
美琴の痛みは想像を絶し、叫びは言葉にすらならないほどだった。
黒子のスキルは上級者のものだ。
数分後。
「お姉さま? 体中血だらけになってしまいましたね。
お塩を塗って差し上げますわ」
「ssddfklkklf~~~~~~~~~~~~~~~!?」
黒子の蓄積した恨みは相当なものだった。
激痛のあまり美琴が何度も気絶するが、冷水を顔にかけて起こしてやった。
「うふふふ。お姉さまが愛した当麻様は私がもらっていきますわ」
なにやら怪しい宣言をする黒子。こうして二人の愛の夜はすぎていく。
話は再び上条サイドへ戻る。
上条は翌日の学校で地獄を見た。
昨晩は一睡も出来ず、授業中は猛烈に眠かったので、
教師に注意されぬよう巧みなトリックを用いて事なきを得た。
休み時間や昼休みは全て睡眠に使い、
青ピや土御門に怪訝な顔で見られた。
夜を徹してエロゲーをプレイしたと伝えたら簡単に納得された。
彼らにとって上条の認識はその程度なのである。
計り知れない声フェチである上条は、世間的には普通の学生だった。
そして全ての授業が終わり、スーパーで買い物して家に帰った。
静粛に玄関の扉を開ける。
「た、ただいま帰りましたよ。インデックスさん」
「……」
禁書はそっぽを向いている。
「あの……まだ怒ってますか?」
「……ち。うざいんだよ」
禁書は舌打ちした。
「……」
「……」
沈黙したまま5分が経過し、上条は泣きながら寮を飛び出した。
全力疾走し、気がついたら公園に来ていた。
「うぅ……ぐ……ぐふ……うえ……えっぐ……ひぐ……」
いつかのように四つんばいになり、子供のように泣き続ける。
まるで誰かが慰めてくれることを期待した幼児のような姿。
そこへ通りかかった淑女がいた。
「あら。上条さん。ごきげんよう。今日はどうされたんですか?
泣いてらっしゃるようですけど…」
涼しい顔の黒子だった。 上条に近寄り、
「大の男が大泣きしてみっともないですわよ。
ハンカチで涙をを拭きなさいな」
「え?」
差し出された上品なハンカチ。
上条は感動してさらに泣きそうになった。
「おまえは…俺をなぐめてくれるのか?」
「うふふ。わたくしとてジャッジメントの端くれ。
お悩みがあれば相談に乗りますわ。遠慮なく話してごらんなさいな」
にっこりと笑う黒子。上条にとっては聖母のようだった。
書き溜めを使い切った。しばらく休む。すまん。
物語は上黒になるかも。
どうでもいいけどゴムの服着せられたぐらいで美琴無力化できるの?
シマウマネタが出たら暴走してスレ消滅が定説だったのに…
さ、さてはシマウマを語った別人だな!?
美琴が奴隷ならなんでもいいwwww
>>309
いや、シマウマSSは俺の専門だから。
こんなアホなネタ考える奴他にいないでしょww
保守してくれた人たち、ありがとう。再開する。 >>292から
______________________________________________
上条は全てを話した。黒子の前で嘘をつく理由が無いからだ。
黒子は相槌を打ちながら真剣に聞いてくれた。
一通り聞き終わると黒子は立ち上がり、
「話はよく分かりました。つまり上条さんは禁書ちゃんと
仲直りがしたいというわけですのね」
「ああ。でも中々機嫌を直してくれなくてさ」
「同棲しているだから喧嘩することはよくあるでしょう?
その時はどうやって仲直りしてますの?」
「そうだな……」
上条が顎に手をあてる。
「あいつは食べるのが好きだから……おいしいものを
作ってやったら喜ぶかも」
「それですわ。では、さっそく食材を買いに行きましょう」
黒子は上条の手を引いて歩き出す。
「え? え? まさか…手伝ってくれるのか?」
「もちろんですわ。わたくし、困ってる人を見たら
助ける性質ですの。あなたのようにね」
黒子がウインクしたので、上条はドキッとしてしまった。
「おそいんだよとうまぁ!! もうお腹すいて死にそうなんだよ!!」
帰宅後、開口一番に怒声をあびせる。インデックスは怒っていた。
「こらこら。居候ちゃん。あなたが怒るのもわかるけど、
普段から骨を追っている上条さんの苦労も少しは考えなさいな」
買い物袋を持った黒子がたしなめる。
「え……だれ。このひと…。もしかしてとうまの浮気相手?」
インデックスが眉間にしわを寄せるが、黒子は冷静だった。
「わたくしは上条さんの友達ですの。はじめまして。白井黒子と申します」
「え…? えっと……インデックスって呼んでほしいんだよ。よろしく…」
黒子が優雅にお辞儀したので、インデックスが慌ててしまった。
だがすぐに不機嫌になる。
「ちょっと、どういうこと! また別の女を連れてくるなんて節操がないんだよ!!」
彼女の怒りは当然だった。上条は久しぶりにインデックスと
会話できることをうれしく思いながら話した。
「いや。おまえにおいしいものを食べさせてあげようと思ってさ。
白井って料理が得意らしいぞ。それに今日、すげえ食材を買ってきたから
きっと気に入ると思うぞ」
「……ふーん。おいしいものってどんな?」
「高級和製ステーキ肉」
「!?」
インデックスは気絶した。
それからしばらくして…
「できましたの」
テーブルに用意されたのはステーキ定食。
肉の乗った皿にはサラダとポテトが添えられている。さらに専用のたれまで。
ご飯と味噌汁はごく普通だが、ステーキの存在感が凄まじい。
むしろ乗せられている皿がしょぼいほどだ。
「「い、いただきます」」 「召し上がれ」
上条と禁書は慎重にステーキ肉を食べる。
口に入れた瞬間に漂う風味と触感は最高だった。
まず、一口噛んだだけで普通の肉と弾力が違うのが分かる。
さらに専用のたれと肉汁が合わさって絶妙の味をかもし出している。
「……」
上条たちは無言で食べていた。普段のもやし炒めなどとは比べ物に
ならないセレブの味に絶句してしまったのだ。
落ち着いているのはそのセレブの黒子だけだった。
「禁書さん。お口にソースがついてますのよ」
ナプキンで禁書の口元を丁寧に拭いてやる。
食事中の黒子は姿勢をピンと正し、ナイフとフォークを
使いこなして粛々とステーキを食べていた。
(さ、さすがはお嬢様だぜ。住んでいる世界が違うな…)
上条がそう思うのも無理はなかった。
椀に乗せられたご飯と味噌汁があって幸いだった。
もしパンやスープなど出されたら、完全な洋食になりそうだった。
(おいしいんだよ…こんなおいしいもの食べたことないんだよ…)
禁書は密かにこの料理を絶賛していた。
黒子が家に押しかけてきたのは腹が立ったが、こんな
豪華なものをご馳走されては文句は言えない。
「禁書目録ちゃん。私のお肉を少し分けて差し上げますわ。
本当はマナー違反ですけど。どうぞ召し上がれ。あーん」
「あーん」
禁書が黒子が差し出したフォークに噛り付く。
黒子は早めに食べ終えて暇そうにしていたインデックスに気を利かせたのだ。
「ところで、当麻様」 と黒子。
「な、なんだい?」
上条はつい緊張してしまった。
「明日のご予定は空いてます?
もし良ろしければ、わたくしとデートしませんか」
「デート? ああ。もちろんオッケーだよ」
断る理由は無かった。今日は夕食まで黒子に世話になったし、
好意を向けてくれる女の子を無下にすることなどできない。
その後も上条たちは恐縮しつつ、その日の夕食を終えた。
黒子は片づけをした後すぐに帰った。
そして約束の休日。
上条は公園の自販機の前で叫んでいた。
「前から思ってたけどさ! この自販機で販売されてる飲み物って
おかしくないですか!? 何このイチゴおでんって!?」
喉が渇いたので珍しくジュースを買おうと思ったのだが、
そのあまりのふざけたラインナップにブチ切れたのだ。
「カツサンドドリンクとか! ガラナ青汁とか何これええ!?
誰得だよ!! 消費者を馬鹿にしてるとしか思えません」
むしゃくしゃしたので、自販にワンパン食らわそうとしたが、
通りすがりの女子中学生が声をかけてきた。
「そうかしら? 意外といけるわよ? カツサンドドリンク」
「なぬ?! お、おぬしは!?」
「久しぶりね。当麻」
女子中学生は常磐台中学の制服に身を包んでおり、髪型は
茶髪のショートカット。爽やかに微笑むその美少女は
間違いなく御坂美琴だったのだが……
「うわあああああああ!?」
上条は情けない声を発しながら尻餅をついてしまった。
一見するとただの奇行だが、もちろん理由はある。
「うふ。そんなに驚いてどうしたの?」
上条に手を貸して起こしてくれる美琴は、この上ないほど気品に満ち溢れている。
香水でもつけているのか、いい匂いが漂っていた。
(え…? だれ? この可愛い女の子?)
上条の顔はなぜかシマウマになってしまった。
優しそうに微笑む美琴からは邪気が全く感じられない。
未知の生物との一時接触に等しいこの興奮は、
どう表現したらいいか分からないほどだった。
「当麻。この後暇かしら? 良かったら一緒にかいも…」
美琴が言い終わる前に、
「当麻様ぁ~~。お待たせしてすみませんの!」
可憐なるジャッジメント・黒子嬢がツインテールを揺らしながら走っている。
「はぁ……はぁ……ちょっと野暮用が入って遅くなってしまいました」
黒子が息を切らしている。それだけ急いでいたのだ。
なお、黒子とのデートの待ち合わせ場所がこの公園である。
「あら、黒子じゃない。あんたも当麻に用があるの?」
美琴が変わらぬ笑顔で話しかける。
「ええ。わたくし、当麻様とデートの約束をしておりますの」
対抗するように黒子も笑顔。
「へえ。そうなんだぁ。ちなみにどこへ行くの?」
「ショッピングモールまで」
「それなら私も一緒に行ってももいいかな?
ちょっと買い物する用事があるんだけど」
「それは遠慮していただけませんか。わたくしは
大好きな当麻様と二人きりで行きたいので」
黒子は強気な姿勢だ。美琴は苛立ち、髪の毛にわずかな電流が流れる。
「黒子ってさ。もしかして当麻と付き合ってるの?」
「いいえ。まだ友達の関係ですが。かなり親密ですわよ。
先日は食事をご一緒させていただきました」
「私だって何度もあるよ。てか私は当麻の彼女なんだけど。
そうだよね? 当麻」
妙な迫力の美琴が尋ねる。
「ほえ?」
上条は突然話を振られたので驚き、間抜けな反応しか返せない。
ここで黒子が間髪いれずに口を挟む。
「とにかく! 当麻様はわたくしと買い物に行く約束を
しておりますの。それではごきげんよう」
黒子が強引に上条の手を引っ張るが、美琴は食い下がる。
「当麻ぁ。今日は私と一緒にお出かけしようよ」
反対側の手を握る美琴。
(ちょ……これ何年前のギャルゲーですか?
二人とも目が全く笑ってないよ!? 俺びびるよ? 泣くよ?)
シマ条さんは心の中で盛大に突っ込みを入れたが、
取り急ぎこの状況の改善に努めなければならない。
「よしよし! 分かったよ。ここは間を取って皆で買い物に行こうじゃないか!!
それなら平和ですむ。うん。そうしよう」
シマウマのような顔をしている彼だが、基本的には平和主義者だ。
やむをえない事態には武力を振るうが、犠牲が出ない方法が
あるのならそれに越したことは無い。
「仕方ありませんね。当麻様がそうおっしゃるのでしたら…」
「さすが当麻ね。話が分かるわ」
唇を尖らす黒子と、上機嫌な美琴が対照的だった。
ちなみに、なぜここに美琴がいるのかというと、話は数日前にさかのぼる。
監禁されていた美琴は見回りに来た寮監に発見され、拘束を解かれた。
そして『過激なSMプレイは教育に悪いからほどほどにするように』と
なぜか美琴が説教を喰らうことになった。さらに食堂の清掃を命じられ、
泣きながらそれをやり通したわけだが、美琴の内面で何かが目覚めようとしていた。
掃除を終えると、美琴はある種の悟りを開いた。
黒子に虐待され、数日間に及ぶ断食と拷問を経て、
頭の中がすっきりしてしまった。つまり今まで持っていた邪な考えが
消えうせ、真人間に生まれ変わろうとしていた。
過去、天邪鬼な性格が災いして上条につらく接してしまったが、
今では自分の素直な気持ちを伝えること出来る。もう二度と
あの時の過ちは犯さないと誓った。
そして冒頭の自販のシーンへと進むわけである。
一同はショッピングモールの洋服売り場に来ていた。
「このお洋服はわたしに似合いますでしょうか。当麻様」
試着室でノンスリーブのワンピースを着た黒子。
シックなデザインが彼女の雰囲気にマッチしている。
細い手足がすらりと伸びて健康的だ。
上条を熱っぽい目で見ながら問いかけていた。
「ああ…いいな。清楚な感じで白井にすごく似合ってるんじゃないか」
上条は顔を赤くしながらそう答えた。
女の子の服選びをするのは初めてだったので緊張していた。
「うふふ。遠慮なく黒子と呼んで下さいまし。
お姉さまには下の名前で呼んでらっしゃるのに……」
黒子がそう言って微笑むが、なぜか上条の背筋が凍った。
バイバイさるさん喰らってた。歯がゆい。もう一度再開。
また規制されたら待たせてしまうが、スマン。
_______________________________________________
「とうまぁ! こっちで私と一緒にパジャマを選んでよ」
数メートル離れたところから美琴の声。
「おう」
上条はそちらへ近寄る。
「このパジャマのデザイン、どうかな。子供っぽくないよね?」
「うん。割とシンプルな感じだし、悪くないかな」
「うふふ。そっかぁ。それじゃあ試着してくるから待っててね」
嬉々として試着室へ消える美琴。
まもなくしてカーテンを開き、パジャマ姿の美琴が
「どうかな…? 似合ってる?」
夏物のパジャマを身に着けた美琴が恥ずかしそうに足をもじもじさせていた。
薄い生地が彼女の身体のラインを強調させ
て妙に色っぽく、またゲコ太のような
子供っぽいプリントは一切存在しないその柄に上条は……
(ふぉおお……ふぅう。俺は人間だ)
シマウマキャンセラー(略してシマキャン)を発動させて落ち着く。
「なんていうか。美琴らしくて素敵だと思う。
俺はそのパジャマ、好きだよ」
「本当? うれしいわ。これ買うことにするわね」
レジに足を運ぶ美琴だが、上条とすれ違う際に耳元でそっと…
「私のパジャマ姿を見て興奮したでしょ?
黒子に飽きたら、いつでも私に乗り換えてね」
人を惑わすようなことをつぶやくのだった…。
そして華麗にウインクして上条の視界から去っていく。
(あれが本当に御坂美琴なのか……?
やばい…マジで惚れそうなんだけど…)
上条は口を開けて立ち尽くした。
そんな感じで二人の淑女に連れまわされ、
モール内のあちこちを回った上条である。
やがてお昼時になったのでレストラン街へ足を運ぶ。
訪れたのは安価なファミリーレストランだ。
ドリンクバー付きのイタリアンレストランのチェーン店。
「三名様でよろしいですか?」
ウエイトレスに四人用のテーブルへ案内された。
上条の対面に黒子と美琴が座る。
すると、さっそく口論が始まった。先端を切るのは黒子。
「お姉さまがこんなに執念深いとは知りませんでしたわ」
「……なんのことかな?」
「当麻様に対してです。実質的にあたなは一度振られたような
ものでしょうに。なぜまだ付きまとうのです?」
振られた、という単語に美琴の眉がわずかに動く。
「本当にそうかしら? まだ当麻の口から直接聞いてないから
分からないな。人の感情って揺れ動くものよ。まして私達は
まだ学生だしね。たった一日夕飯を共にしただけじゃ
すぐ飽きられるんじゃない?」
黒子が涼しい顔で冷水を飲んだ後、会話の応酬が開始される。
「付き合った時間はともかく、人付き合いをするには礼節が必要ですの。
当麻様の家にいらっしゃるあの可愛らしい居候さんは、私のことを
とても気に入ってくれましたのよ。もっとも、禁書さんが
お姉さまに対してどうゆう感情を抱いているかは知りませんけど…」
「聞いた話によると、昨晩はずいぶん高いご馳走を振舞ったそうじゃない。
強引に恩の押し売りをするのが礼節といえるのかしら?
そんなのお金にモノをいわせればどうにでもなるじゃない」
「お姉さまがどこでその情報を仕入れたのかはあえて聞かないで
おきますね。…確かに私は多額の出費をしましたが、
暴力で人の心を支配するよりはずっとましだと思いますよ」
ここで両者は無言になり、場の空気が凍りつく。
「ふうん。言ってくれるわね?」
「お姉さまこそ」
わずかな沈黙をはさみ、どちらからともなく笑い始める。
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
ファミレスは魔界化した。
(ちょっと、なにこれええ!?)
上条は先生に説教をされている生徒のように
うつむき、縮こまるしかなかった。
「お待たせいたしました」
ここでウエイトレスが恭しく料理を配膳する。
注文したメニューがすぐにやってきたのは
客足が少ないので店が暇だからだ。
「ご、ごゆっくりどうぞ」
従業員は怖気づいたのか、ご注文は以上でよろしいでしょうか、
というお決まりのセリフすら省いて逃げるように去ってしまった。
「当麻。私のドリアを食べてみない?」
と美琴の声。
(ほら! やっぱりこのパターンだ!)
予感が的中した上条の背中に冷や汗が流れた。
美琴は上条の返事を待たずにドリアをすくい、
スプーンを差し出してくる。
「当麻様。こっちのピラフはいかがですか?」
同じように黒子のスプーンも伸ばされる。
二人のお嬢様はテーブルから身を乗り出して当麻に決断を迫っていた。
(はい……どっちを選んでも死亡フラグの完成です!)
上条は今にも泣きたかった。
例えるなら、怒れる二人の淑女と一匹の哀れなシマウマの図である。
彼は、『誰もが望むハッピーエンド』を望む症候群に罹っている男だ。
二者択一のこの状況ほど悲しいものはない。
「お姉さま。あなたがしつこいから当麻が困ってますわよ」
「黒子こそ。私に対抗してるのが見え見えじゃない?」
シマ条の眼前の二人は火花を散らしている。
「おーい! それなら両方交互に食べるってことでどうだ!?
それなら文句無いだろ?」
「……」
上条の提案に不満そうな二人だったが、最終的には納得してくれた。
緊張感のある食事は異常に長く感じられた。
レストランを出た後も色々な場所を訪れたが、
そのたびに美琴と黒子は言い争いをしていたので
上条の神経が極限まですり減らされた。
二人はまるで噴火寸前の火山のようだった。
__________________________________________________
ふぅ。とりあえずここまで。また書き溜め作業に戻るぞ。
物語的には黒子をプッシュしたいと思ってる。
みんな保守ありがとう。ちょこっと再開。>>373から
_______________________________________________
そして日が暮れて開放され、上条は家に帰った。
「ただいま。インデックス」
「…」
だが、いつもの返事は帰ってこなかった。
「あ、寝ていたのか」
禁書目録はベッドの上ですやすやと眠っていた。
無防備な顔で寝息を立てているその姿は、
健全な男子高校生の性欲を刺激する。
(っふぉお。っと、俺は人間…)
即シマキャン発動である。
上条は座禅を組んで10分ほど瞑想した後、
昨日買ってきた食材で適当な料理を作って禁書に振舞った。
日付が変わって翌日。
「ふぁああ。だり」
朝のホームルーム前の時間。
上条は机の上でだらけていた。
昨日は休日だというのに精神的に疲れ果ててしまった。
「カミやん。また女の子とフラグを立てたのかにゃー?
女関係で苦労してそうな顔しるぜよ」
金髪のグラサン野郎が適確な指摘をしてくる。
「土御門。誰に聞いたのか知らねえけど、
複数の女の子に迫られるのは楽じゃないぞ?」
ここで青ピ登場。
「はは。カミやんは無意識のうちに女の子と仲良くなるから
罪なんやで。最近では常磐台の生徒さんの一部がカミやんの
ファンになってるって噂やん。腹が立つからいっぺん死んでみては?」
「それこそ悪い冗談だ。俺がお嬢様たちに好かれるわけないだろ」
「そうかなぁ? 昨日、中学生二人と楽しそうにショッピングしてる
カミやんを見た人がおるんやけど」
「……たぶん気のせいだよ。別人だ」
上条は適当に誤魔化した。
そして授業を適当にやり過ごし、帰宅する。
今日は補修があったのでいつもより遅くなってしまった。
成績が悪いのは自業自得なのだが、それでもストレスは溜まる。
(あー。今日は夕食作るのだりぃな。
誰か変わりに作ってくれればありがたいんだが…)
と考えながら玄関を開けると、
「おかえりなさいませ。当麻様」
「…!?」
上条は激しく混乱し、扉を閉めてしまった。
「ふぅ」
深呼吸して落ち着き、もう一度扉を開ける。
「どうしたんですの、当麻様?」
「……!?」
やはり動揺してしまうわけだが、何度目をこすっても
目の前にいるのは白井黒子だった。なぜかエプロンをしてる。
「ほら、あなたも挨拶しなさいな」
黒子に促され、禁書も当麻を迎える。
「おかえりなさいなんだよ」
禁書に口を聞いてもらえただけで上条は飛び上がりたいほど
うれしいのだが、今はシマウマになっている場合ではない。
「な、なななんああ…なぜ白井がここに!?」
「今日は非番の日ですので、当麻様にご飯を作りにきましたの」
黒子はエプロン姿だった。
上条はの気持ちはうれしさ半分と驚き半分だった。
「そうかそうか。それはありがたいな…」
「ご飯ができるまでもう少し時間がかかりますので、
先にお風呂にいたしますか?」
「…風呂できてんの?」
「はい。事前に準備しておきましたの」
にこにこと笑っている黒子。
見ているだけで癒されてしまうほどだった。
上条はお言葉に甘えて汗を流すことにした。
着替えをしながら、
(黒子はどうして俺に尽くしてくれるんだろう?)
これは上条がずっと疑問に思っていたことだが、
今は考えても分からないので湯船につかる。
「はぁ……」
ぼーっとしながらため息をつく。
もくもくと湯気が立ち上がり、視界を曇らせる。
お湯の温度はちょうどよくて心地よかった。
(誰もが望むハッピーエンドか……)
浴槽に背中をあずけながら両手を広げ、天井をあおぐ。
(そんなもの、ありえないって分かってる。
俺は子供のようにピュアだ。まだそんなことを信じて生きている…)
風呂は上条が一人きりになれる貴重な場所だった。
他の場所だと居候のインデックスがいるからだ。
ここは疲れを癒すだけではなく、考え事をする場所でもあるのだ。
(土御門たちの言葉を借りれば、俺はたくさんの女の子たちと
フラグを立てまくっている鬼畜野郎らしい……。
だが、俺は意識してやったわけじゃねえ)
ゆらゆらと揺れる水面を眺める。
黒子が気を利かせてくれたのか、入浴剤が入っている。
心地よい香りのおかげで気持ちがやすらぐのだった。
(だが、女の子たちに好かれているのは事実だ。
いつかは誰か一人を選ばなければならないのだろうか……)
そこまで考えた後、贅沢ものにはもったいないほどの
例のセリフを吐こうとしたが、
「お背中を流しますの」
「!?」
黒子が入ってきた。
衣服は着ているので邪な考えはないのが分かる。
だが、上条は大いに困惑した。
「そんなに驚かないで下さいまし」
「はわあわわわ」
「そんなに脅えた顔をされるとショックですわ。
エッチなことは考えてませんから安心して下さいな」
「ほ、ほおおお?」
上条は呂律が回らなくなったが、
成り行きで黒子の言いなりになった。
黒子はナイロンタオルにボディソープをつけて泡立てる。
「殿方の背中って大きいですわ」
そんなテンプレなセリフをつぶやきながら丁寧に洗ってくれる。
(はは。まるで夫婦のような関係になってしまったな……)
上条は口には出さないが心の中でそう思った。
しばらくして落ち着きを取り戻したので、
気になっていたことを黒子に聞いてみることにした。
「なあ黒子……。 おまえが俺に優しくしてくれるのは…」
そこまで言ったところで黒子は全てを察したのか、
「別にお姉さまに対抗しようとしたわけではありませんの。
わたくしは……上条さんを慕っていますわ」
黒子は手を休めて語り始めた。
くそが…おれのせいかよ
待望の黒子パートがきてもwktkしちゃいけねえっていうのかよおおおおおおお
またしてもさるさん規制喰らった。今日2回目だからさすがに腹立った。
待たせてしまってすまない。今日投下する分は残り少ないけど許して
>>420 基本的に書き込みの内容で機嫌は損ねませんから存分にwktkしてください。
_______________________________________________________
内容はこうだ。
以前は美琴お姉さまを追いかけるのに夢中だったが、ある日を
境に豹変した美琴に虐待され、その忠誠心を完全に失った。
あの想像を絶する苦痛により極限までストレスが
溜まり、黒子の内面を変えてしまった。
「お姉さまに殴られたときはショックでされるがままでしたけど、
きちんと復讐しましたわ。それはもうたっぷりと…」
黒子はテレポーターだ。能力者である以上、精神的な苦痛で
集中力が途切れると支障が出る。だが、いつまでもやられるだけ
ではなかった。ジャッジメントとして緊急時の訓練を受けているのだ。
「次第にお姉さまのことを敵と認識するようになりましたの。
今まで大切にしていたモノが憎しみの対象に変わるのは滑稽でしたわ」
そして一通り仕返しをした後、黒子の頭は真っ白になった。
殺意の赴くままに美琴を監禁して痛めつけたが、残るのは空しさだけ。
あれだけ必死でムチを握っていた自分の手がガラクタのように思えた。
「しばらく誰とも話さない日々が続きました。そしてある日、
私は生まれ変わりました。同性愛者を卒業して真人間になりましたの」
昔から群れることを嫌い、周囲の女の子と関わろうとしなかったが、
次第にその考えが変わった。
女の子達は噂話が好きだ。女子校ともなれば自然と学外の男子の
噂話が飛び交う。彼女達は素敵な出会いに飢えているのだ。
「当麻様の噂話をする子もいましたわ。
あなたが以前助けた常磐台の女子生徒を覚えてらっしゃいますか?
あの方が当麻様の武勇伝を語っておられましたの」
「? ああ。あの子のことか」
上条は最初誰のことか分からなかったが、やがて合点がいった。
彼は人助けを日常的にやっているので、いちいち助けた人を覚えていないのだ
「お恥ずかしいことなのですが、わたくし、まだ殿方とお付き合いを
したことがありませんの。当麻様のお話を聞いてすごく興味を持ちました」
さらに付け足すと、黒子はジャッジメントとして働いているので
正義感は人一倍強い。そして同様に正義を貫こうとする上条の姿に憧れを持ったらしい。
「でもわたくしと当麻様はまだ知り合ったばかり。
きちんとお話すらしたことがない仲でしたわ」
そこで上条と親睦を深めるため、禁書を怒らせて
困っていた上条の悩み相談に乗ったわけだ。
だが、上条には負に落ちない点があった。
「俺は今でも他の女の子達と仲良くしているわけだが、
それでもいいのか?」
「別に気にしません。わたくしは殿方を自分に縛りつけようとは
思いませんわ。力で屈服させても心は離れていきます。それよりも
殿方に尽くして振り向かせる努力をするよう心がけておりますの」
少しの沈黙の後、
「……例えば俺が禁書と仲良くしても嫉妬しないのか?」
「しないといえば嘘になりますけど、怒ったりはしませんわ。
最終的に当麻様に選んでもらえればそれでいいですの」
そうして黒子は話を切り上げ、上条の背中をシャワーで流して去っていった。
(やべえ……本物の淑女だぞあいつは……。
ノーマルな黒子にこれほどの破壊力があるとは……)
風呂場から出たとき、上条の顔は色々な意味で真っ赤になっていた。
美琴とは全く異なる魅力を持つ黒子に、本気で惚れそうになっていたのだ。
_____________________________________________
何度も規制喰らってごめんな。今日はここまで。また書き溜めする。
内容予告すると黒子とムフフなシーンを用意する。
黒子が感想をぼやく。
「さ、最近は痴漢が多いですわね。特に教職員などの公務員の方々が目立ちます」
「そ、そうだな。まったく、これだから大人って奴は…。
黒子も狙われないように気をつけろよ」
「……私を心配してくれますの?」
二人は目をあわす。
「もちろんだよ。だって黒子は……か、可愛いからな!」
「…!」
言い終わった後に真っ赤になる上条。それは黒子も同様だった。
両者の間で時間が止まってしまった。
キャスターは淡々と罪状を読み上げ続ける。
『また、ステイル氏は「自分は14歳だからロリコンではない。あんまり僕を
舐めてると魔術を使うぞ」などと発言しており、警察ではステイル氏が
容疑から逃れるために年齢を詐称している可能性が高いとして、
身元を調べることに全力を注いでいます』
「……」
ロリコンティウスの異名を誇るステイルが大変なことになっている頃、
黒子は上条の膝の上に乗っていた。
「黒子の髪、きれいだな」
「褒められると照れてしまいますわ。
毎日お手入れしてますから。気がすむまで触ってくださいまし」
黒子は髪の毛を下ろしてた。
ウェーブがかかった髪が肩まで垂れている。
「……」
二人は静かだった。それだけ緊張していたのだ。
髪も身体の一部というが、上条は黒子の茶色い髪を触るだけで
信じられないほどドキドキしていた。
床でぐーすか寝ている禁書がうらやましいほどだ。
なお、上条はシマキャン発動済みだ。でなければ大変なことになっている。
鬼畜を卒業して純情になると誓ったので、年相応のピュアな状態なのだ。
沈黙に耐えられなくなりそうなので、上条が口を開く。
「もしかして、髪を下ろした方が似合うんじゃないか?
いつもより大人っぽくて…その……可愛いかな…」
「ま、まあ。それでしたら明日からこの髪型にしようかしら!」
「……」
「……」
またしても静寂に包まれる。
『とうまぁ!! 私のおかずが少ないんだよ!!』
「!?」
突然聞こえたインデックスの大声で飛び上がりそうになる。
『ふがー ふごごごごー』
彼女は大の字で寝ている。今叫んだのは寝言のようだ。
「と、とうまさま…その…手が…」
黒子が顔を赤らめているのは、上条の手が胸を触っていたからだった。
禁書の寝言でびっくりしたので思わず触ってしまったのだ。
彼の名誉のために言っておけば、これは不慮の事故である。
「あ、悪い…わざとじゃ…」
上条が罰が悪そうな顔で手を引っ込める。
これは筆者の余談だが、この初心さはとても元鬼畜とは思えない。
「いいですわよ?」
黒子は恥ずかしそうに声を絞り出した。
「え?」
「ですから、もっと触っていいですわよ」
またしても時が止まりそうになった。
上条は念のため確認してみた。
「本当に?」
「はい。当麻様ならいいですの。
胸だけではなく、好きなところを触ってくださいまし」
「……」
上条のシマキャンは、もう発動しなかった。
10分後。
『うーん… もっと食べたいんだよ…』
インデックスはまだ夢の中だ。
下品にお腹をぽりぽりかきながら歯軋りしている。
一方、上条達は椅子の上で絡み合っていた。
「あっ んん はぁ はぁ」
「できるだけ声は出すなよ。インデックスが起きたら面倒だからな」
「ん……大丈夫ですの…あの子の…飲み物に…あん……眠くなる薬を…」
「そんなこと……してたのか。お前も……悪だな?」
「それは……お互い様ですの……あっ……」
態勢は対面座位。上条の上に乗った黒子が上下に揺れ続ける。
そそり立つモノが黒子の狭い膣口で締め付けられていた。
「く…黒子。乳首が立ってるぞ……?」
「はぁ……あん…………やん……」
黒子は上条の首に両手を回し、体重をあずけてる。
互いの吐息を鼻先で感じるほどの至近距離だ。
(俺は……本当にこれでいいのだろうか…?)
行為の最中に考え事するのは彼の悪い癖だった。
上条は、すでに美琴禁書と関係を持った。
そして今は黒子だ。真人間になったはずなのに
女の子漁りをしているのに変わりはない。
(……)
心の中に感じる、わずかな嫌悪感。
「はぁ……すごい…ですの……当麻様の……おおきくて……」
淑女としてあるまじきことだと思いながらも、
控えめに開いた開いた黒子の口からはしたない言葉が発せられる。
「はぁ……はぁ……とうま…さまぁ……」
性の快感から生じる特有の吐息。
黒子の息は甘くてせつなくて、上条の心をかき乱す。
「黒子…!!」
ピストン運動を中断し、黒子を抱き寄せて唇を奪う。
「んんんんん……」
すると黒子の方も舌を絡めてきた。
上条が何もしなくても、黒子が巧みに舌を動かしてリードしてくれる。
「ちゅ……ちゅう……ん……」
黒子の口の中は子供のように小さい。
重ね合わせた唇からわずかに唾液がこぼれる。
「とうまさまぁ…」
彼女は何度も何度も上条の名前を連呼する。
その声を聞くだけで頭が狂ってしまいそうな錯覚に陥る。
(俺は……)
上条はまたしても自分の世界に入った。
それは迷路のような思考の渦の中だった。
(何をしているんだろう……こんな可愛い女の子と…)
これは黒子との同意の上で行っている行為。
脅したり暴力に訴えてはいない。二人の好意の延長にあるものだ。
それが分かっていても、上条は罪の意識から逃れることはできなかった。
原因不明の毒に犯されたようなものだった。
さる喰らってた。待たせてしまってごめん。残りあと少しだけ投下。
___________________________________________________
「はぁああ あああん あああああ」
今度は正常位だ。
黒子の大きく開いた股の間に上条のモノが挿入されている。
「黒子……ごめんな……」
上条は彼女の腰を掴みながら激しく腰を動かす。
性的には気持ちよくなっているのだが、それほど乗り気ではない様子。
はかなげな表情で黒子と目線を合わせる。
「いいんですの……あっ……私は……うっ……
いまだけは…あなたの……ものですわ……」
「…」
黒子の目はとろけていて、ひたすら快楽に飢えていた。
いつまでもこんなことを続けてはいけないと判断し、
上条はピストン運動をさらに激しくした。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
聞こえるのは互いの荒い息遣いだけ。
その後、まもなくして二人は絶頂を迎えた。
シャワーを浴びた黒子が帰った後、上条は死んだように眠りに落ちた。
_____________________________________________________________
よし。黒子パート終わりだ。また書き溜めに戻る。
次回予告すると憂鬱な上条が見られるかも。
>>459
マジ、初春は変態
>>503
まじ? くわしく教えて
保守ありがと。 憂鬱上条編が始まります。 497>>から再開
________________________________________
翌日。
インデックスは早い時間に目を覚ました。
今日も日課の掃除をしなければならないのだ。
以前はグウタラな生活を送っていたが、黒子に教育された。
ただ飯食らいではみっともないから、せめて家の中で上条を
手伝うようにと、一通り洗濯や掃除の仕方を教わった。
「…!!」
インデックスの顔が引きつる。
洗濯機に入れようとした上条の上着から女の匂いがしたからだ。
安価ミスった。 >>497から
______________________________________
「……っ!!」
今すぐ怒鳴りたくなるのを我慢した。
これが黒子の匂いだと理解しているからだ。
美琴ならともかく、黒子には世話になっているので文句はいえない。
淑女たるもの、易々と取り乱してはいけないのだ。
「……」
黙々と洗濯機を操作する。その次は清掃だ。
掃除機を用意してコンセントを伸ばそうとした時、
テーブルの上に書置きがあるのを発見する。
『インデックスへ。今日は早めに学校行ってくる。
ご飯は冷蔵庫の中に入ってるから』
インデックスの紙を持つ手がかすかに震えていた。
確かに、今朝目覚めた時に上条はベッドの上にいなかった。
てっきり早朝の散歩でもしているのかと思ったが、そうではないらしい。
「とうま…」
つぶやきながら時計を見る。
まだ始業のチャイムが鳴るまでずいぶん余裕がある。
インデックスは、昨晩こっそりと目を覚まして
上条の顔を見たところ、彼は泣いていた。
今までに見たこともないほど悲しそうな顔をしていたので
ショックを受け、優しく抱きしめたのだった。
インデックスはしばらく立ち尽くした後、上条の
携帯に電話をかけるが、電源が切られていた。
「……はぁ」
肩を落とし、無言で掃除を続けた。
その日の上条は、傷ついたシマウマを連想させた。
「……」
下を向きながらとぼとぼ歩いている。
別に行き先があるわけではない。
背後に朝日を浴びながら、学園都市の町並みを眺めていた。
「……」
それから数分ほど歩くと、いつもの公園にたどり着く。
困った時や、機嫌の悪い時はいつもここにやって来るのだ。
それは動物の習性のようなものだった。
「よいしょっと」
ベンチに腰掛ける。
そのまま無気力の状態が続いたが、遠くから柄の悪い声が聞こえた。
『おらあああ!!』 『逃げんなよこら!?』 『離してください…』
相変わらず治安の悪い都市である。
こんな朝っぱらから不良たちが騒いでいるのだから。
「……ったく」
上条が獣のようなフォームで駆け出す。
「ぐはぁ?」
振り向きざまに上条のタックルを食らった不良Aが飛ぶ。
「ごふ?」
同じ手順でタックルを食らい、不良Bも吹き飛ぶ。
「ふぉおお!?」
不良Cが一番飛距離があった。なぜなら…
「必殺・シマウマパンチ……!」
という名の必殺技が炸裂したからだ。
得意げな顔で技名を発音する上条だが、
そのイントネーションはアポロ(月面パンチ)にそっくりだった。
この場所に残されたのは、
歴戦の猛者(シマウマ)と不良に襲われていた通学途中の女子生徒だけ。
「……」
仕事を終えた上条は静かにその場から離れようとするが、
「あの! せめてお礼を言わせてください」
奏でられた美しいソプラノで止められる。
「助けていただいてありがとうございました。
粗暴な殿方に話しかけられて困っておりましたの」
それは聞き慣れたお嬢様口調だった。
上条はその生徒が常磐台中学の制服を着ていることを認識しつつ、
「気にするな。俺も苛々してたからちょうど良かっただけだよ。
おかげで必殺技の練習にもなった。シマウマパンチ。
略してシマパン。語呂もいいし最高だろ?」
「シマウマ…?」
女子生徒はその単語に反応する。
「あなたはもしかして…上条当麻様ではありませんか?」
「知ってるの?」
「有名ですよ。正義を愛し、悪を打つ最強のシマウマといえば
上条様しかおりません。上条様の名はわが校でも知れ渡ってますのよ。
そういえば、あのジャッジメントからもお誘いがきているのでしょう?」
「はは。ま、まあね。入隊する気はないけど」
適当に答える上条だが、あまりにも変な名前で
知れ渡っていたので自殺したくなった。
しばらく雑談をした後。
「私はもう行きますね。上条様はまだここにいるのですか?」
「今日はやる気がないからね。少し休んでから学校に行くよ」
「……そうですか。今日は本当にありがとうございました。
では、ごきげんよう」
急ぎ足で歩く女子生徒。お嬢様校は時間厳守なのだろう。
「……」
ダルそうな上条はベンチに座り、腕を組みながら目を閉じた。
それから数時間が経過した。
「…………どうしたの?」
通りかかった美琴の心配そうな声。
下校途中の彼女は通学カバンを片手にさげている。
「……」
上条はベンチに腰掛け、死人のような顔でうなだれている。
まるで敗戦直後のボクサーのような面持ちだ。
「当麻!」
美琴の叫びが届いたのか、上条がわずかに肩を揺らした。
「……おう。みことか」
「そんな辛そうな顔して…一体何があったの…? 」
「……俺は黒子に釣り合わないと思う。所詮俺はただの野生動物さ」
「何言ってんのよ突然……。あんたらしくないじゃない。
……黒子と何かあったのね?」
「……」
上条は黙ったままだ。
美琴は沈黙を肯定と受け取って話を進める。
「私でよければ相談に乗るわよ? ふさぎこむのはよくないわ」
「……」
「当麻…」
「……」
美琴は上条を優しく抱きしめた。ほのかに香る少女の匂いと
温もりに安心し、上条は事情を話し始めた。
昨日黒子が家にやってきたこと。そして夕食後に体の関係を持ったこと。
美琴は真っ青になりながら聞いていた。
「俺は最低だ。美琴や禁書を裏切った。もう二度と女の子たちと関わらないy」
「それって黒子が迫っただけじゃない! 当麻は最低じゃないよ!」
当麻の言葉を遮って叫ぶ美琴。
「しかし俺は…」
「いいの! 悪夢だったと思って忘れて。当麻には私がいるよ?
黒子は無駄に頭がいいから影で何企んでるか分からない女なのよ?
でも私なら当麻を純粋に愛せるわ。誰よりも当麻のことが好きだもん」
「……お前は俺を嫌いにならないのか?」
「愚問ね。私は……当麻の彼女よ?」
「……っ!」
その一言で上条の心が揺らいだ。
ところで、上条から見て白井黒子は完璧すぎた。
品行方正・良妻賢母・才色兼備の三拍子揃った黒子は
仲良くなるには最高の存在だが、それゆえに負い目を感じていた。
食事の時に強く感じたのは、彼女がまぎれもなく上流階級の
生まれだということ。幼少時のときから英才教育を受けて
きたのだろう彼女とは、何もかもが違いすぎる。
上条は、黒子がまだ男をよく知らないから、
自分などに興味を持っているのだろうと思っていた。
元同性愛者だった彼女にとって、男性そのものが珍しい
存在なのだろうと。そして女子中学に通っていることも
それに拍車をかけているに違いないと考えていた。
「当麻は寂しいんだよね? 不安で不安でしかたないんだよね?
私が癒してあげるから…」
愛しそうに彼の顔を押さえ、甘言をささやく。
「……ちゅ……ん……」
そして軽く唇を重ねる。
「……」
凍りついた上条の心に、暖かい何かが生まれようとしていた。
美琴はお嬢様の割には庶民的なところがあり、変に高いプライドを
持っていないところも好感が持てた。それに怒りやすくてて子供っぽい
性格は禁書に似ており、親近感を感じていた。
「寂しくなったら、いつでも私に甘えてくれていいんだよ?」
美琴はなおも誘惑していた。
彼女の胸に顔を埋めている上条は、自分がどうすれば
いいか分からず、ただされるがままだった。
客観的に見て、上条は自身を過小評価していた。
事実として複数の女の子達に好かれている以上、彼に魅力があるのは確かだ。
彼は謙虚な性格であり、仲良くなった女の子達には、
自分よりもっと相応しい相手が見つかるのではないかと常に考えていた。
それは今目の前にいる美琴に対しても同様なのだが、彼女の優しさに
つい甘えてしまう自分が嫌だった。
「まあまあ、ずいぶんと熱々ですのねぇ。こんな公衆の面前で」
それは黒子の声だった。
「美琴お姉さま。こんなところで当麻様をたぶらかすなんて、
はしたないですわよ」
「あんたに言われたくないわ。昨日は当麻の家で
お楽しみだったそうじゃない。この淫乱」
美琴が言い返し、舌戦が始まる。
「人目のある公園で熱い接吻をする人よりはましですわ。
当麻様も嫌がってるんじゃなくて?」
「へぇ、そう見える? 私と当麻はいつだって仲良しよ。
だって私は当麻の彼女だもん」
「……!」
黒子が額に青筋を立てながら言い返す。
「人の気持ちは揺れ動くものでしてよ。それは以前お姉さまが
おっしゃってたことではないですか。私は当麻様が振り向いて
くれるまで静かに待ちます」
「そうやって気取った態度取ってるけどさ、あんたの腹のうちは
分からないものよね。軽々と当麻に体を捧げちゃってさ」
「あれは当麻様の方から迫ってきたんですの。
わたくしを情熱的に押し倒してきましたわ。それはもう激しく」
「……へぇ?」
頭にきた美琴が冷静さを失い、口論が激しさを増していった。
「~~~~~!!」
「~~~~~~~~~!!」
罵声が飛び交う中、上条は一人だけ冷静だった。
(……はぁ)
精神的に疲れていた。
あちらを立てればこちらが立たず。どんな選択肢を選んでも
厄介ごとに巻き込まれることばかりで、平和が恋しかった。
「とにかく、わたくしこれからジャッジメントの会議がありますの。
お姉さまと話をしていたら時間がもったいないですわ」
黒子はしきりに腕時計を確認した後、
「それではこれで失礼いたします。見苦しいところをお見せして
申し訳ありませんでした、当麻様」
最後に上条の頬にキスして去っていった。
美琴は黒子の後姿を忌々しそうに見つめた後、
「当麻。これから時間ある? もし良かったらわt」
言い終わる前に邪魔が入る。
「上条様~~~!」 「まあ、あれが上条様ですの?」
「思ってたよりも素敵ですわ!」 「シマウマ様~~~!」
なんと、四人の女子生徒達が現れ、上条の周りを囲んでしまった。
「なななな、なんだね君たちは…?」
上条はあたふたした。
「覚えていませんか? わたくし、先日上条様に助けていただいた者です」
常磐台の制服を着た女子生徒Aがそう言う。他の子も同じ制服を着ていた。
「お、おう。もちろん覚えているとも。久しぶりだね。あはは」 (あの時の女の子か…)
上条は突然の事態についていけないので空返事した。
よく見ると、女の子達の中には今日助けた子も含まれていた。
「それで…今日は何の用かな…?」
控えめに質問する。
「助けていただいたお礼に、お茶にでも誘おうと思っておりますの。
迷惑でしょうか?」
そう言うのは今日助けた女子生徒Bだ
「へ…? いや迷惑だなんてことはないけど、むしろ俺なんかでいいの?」
「もちろんですわ! 上条様のシマウマパンチ…男らしくて痺れましたわ」
頬を赤く染めながら回想する生徒B。
すぐ後ろにいる生徒CとDもにこにこしていた。
上条が彼女達のことについて聞いてみると、同じ部の後輩らしい。
四人は水泳部に所属していて上条のうわさを共有しおり、
お礼を兼ねたデートを模索していたらしい。
「さあ、こんなところで立ち話もなんですから、
日が暮れる前に早く行きましょう」
生徒の一人が上条の手を引っ張ると、他の生徒がもう片方の手を引く。
上条はされるがままで、そのままどこかの高級喫茶店まで案内されるのだった。
まるで嵐のような出来事だった。
「……え?……何これ………? 意味わかんないんだけど……?」
一人残された美琴はしばらくそのままフリーズしていた。
______________________________________________________
ふぅ。今日はここまで。規制されなかったのが奇跡だ。また明日会おう
>>1へ、今度はアマガミのやつ書いてみたらどうだろ?
このスレの作者だが。ID変わったかな?
俺の過去作↓ (けいおんss)
http://teraharuhi.blog84.fc2.com/blog-entry-752.html
http://teraharuhi.blog84.fc2.com/blog-entry-738.html
他にも見つかったらさらす。
>>571
アマガミは内容知らないから無理かも。
みんなの保守と支援に感謝しつつ、>>562から再開。
____________________________________
そして夕方。
上条は帰宅した。
「ただいま…」
「おかえりなさいなんだよ! とうま!」
元気よくインデックスが抱きついてくる。
「……」
「あれ、なんだか元気ないね?」
「……」
しずんだ顔の上条は無言だった。
禁書は先程から感じていた違和感を口にする。
「とうまは…今日も女の子とイチャイチャしてたの?」
消え入りそうな声だった。
禁書がそう思ったのは、彼が女子中学生たちといるのを見たからではない。
彼の服から複数の香水の臭いがしたのでそう思ったのだ。
「……まあな。おいしいケーキと紅茶をご馳走してくれたよ…」
「……うれしくないの?」
「そうだな…。うれしくないと言えば嘘になるかもしれない。
だが、俺はもうこういうのはたくさんだ」
「え?」
「………すまん。一人にしてくれ」
上条は持っていたコンビニの袋を禁書に渡して床に寝転がった。
禁書は、まるで中年オヤジのようにだるそうに寝転ぶ彼を見て
一抹の不安を覚えつつも袋の中を見る。
「…」
中にはいたのは一人分のコンビニ弁当。
今日はこれを食べろと上条は言っているのだ。
年中お腹がすいている彼女にとっては量が足りない
ので少し不満だが、文句を言っていい雰囲気ではない。
「買ってきてくれてありがとう。いただきます」
一人静かに手をあわせ、静粛に食事を始めるインデックス。
いつもより食べ方が上品なのは、黒子に受けた手ほどき
を決して忘れないからだ。
(とうま、すごく苦しそうなんだよ…。
見てるこっちまで辛くなるよ…。
何か私にできることはないのかな……)
もぐもぐとカツを租借しながら考える。
元気のない同居人をはげましてやろうと考えるのは当然である。
そして色々考えた末、とりあえず今日はそっとしておいてあげようと思った。
インデックスは、自身が騒がしい性格であることを自覚している。
だから少しでも静かにしてあげるのが上条にとってベストだと判断した。
「ごちそうさま」
食べ終わるのに時間はかからなかった。
空になった容器を燃えるゴミとして分別した後、
お風呂場に行ってお湯を沸かすことにした。
上条に疲れを癒してもらうためだ。
しばらくして
「とうま。お風呂沸いたよ?」
「俺は後でいい。先に入れ」
「……うん。分かった。……元気出してね?」
「……ああ」
それが本日彼と交わした最後の会話だった。
上条はそのままベッドで深い眠りについた
翌日。
上条は一日ぶりの教室に入ると、そこは異空間と化していた。
「裁判官。被告人が来たようです」
麗しき巫女・姫神が言う。
「分かりました。それではこれより裁判を開始します」
厳かな雰囲気で教団に立つ土御門が机を叩く。
「諸君。上条被告が登場したので、これより
第一回・シマウマ裁判を初めようと思うと思う」
そう宣言すると、教室から拍手喝采が起きる。
「待ってました!!」 「ぱふぱふ~!」 「ついにシマウマが裁かれるか」
(……!? ……? ……!?)
上条は頭の中に多数の疑問を抱きながら、教室を観察した。
部屋中の机の配置が変わっており、上条が座らされたのは中央のイス。
その両サイドには弁護側・検察側の机が用意されている。
弁護側に座っているのは一方通行と打ち止め。
検察側は青髪ピアスとステイル。
後方の傍聴席には姫神や小萌教諭、クラスメイトらが着席してる。
今日は授業を放棄したのだ。
用談だが、明らかに部外者や前科者がいるように
見えるだろうが、それについてはあえてスルーしてもらいたい。
また、裁判の描写にも多数の矛盾や筆者の知識不足を露呈
するかもしれないが、これも容赦していただきたい。
「上条被告は不特定多数の女子生徒たちをたぶらかしたとされている」
土御門が得意げに話す。
「被告人は少なくとも御坂美琴氏、白井黒子氏、禁書目録氏や
他多数の女子生徒とイチャイチャしておきながら、
その中の誰と付き合うこともなく、さらに交友関係を広げている。
これは不健全、不自然な現象であり、意図的に女心を
もてあそんでいたのではないかとされている」
ここで一方通行が手を上げる
「意義あり!」
「弁護人の発言を認めます」 と裁判官の土御門。
「はい」
一方氏は猫背のまま立ち上がり、反論を始める。
「まず前提として、上条氏は極めて鈍感であり、正義感が強い。
彼は人助けを日常的に行ってフラグを立て続けている。
例えば彼が助けた女子生徒が、それをきっかけに恋に
落ちるとしたら、それは自然の流れである。不健全ではない」
ここでステイルが手をあげる。「意義あり」
「許可します」 と裁判官。
「はい」
厳かに立ち上がるロリコンの脱獄犯。
「一方通行氏の発言どおり、確かに上条氏は日常的にフラグを
立て続けてる。しかし、仮にそれらの女性生徒から言い寄られた
としても、懇意にしている女性の存在を示せば済む話である。
それをしないのは、彼が意図的にハーレムを作ろうとしているから、
と考えれば説明はつく」
このタイミングで土御門裁判官が質問する。
「検察側は彼が鈍感であり、正義感が強いことは認めますか?」
「はい。それは認めます」
検察官のステイルと青ピは共に異論なし。
次に魅惑の幼女・打ち止めが挙手して発言許可をもらった。
裁判なので真面目な口調だ。
「上条氏は非常に多くの女性から、ほぼ同時期に好意を向けられている。
みな容姿端麗な若い女性ばかりであり、その中から特定の一人を
選ぶのは困難である。彼は心が揺れ動く思春期の学生だからだ」
打ち止めちゃんはここで一息入れて発言を続ける。
「参考として、彼に好意をもったとされている女性を列挙したい。
禁書目録氏、御坂美琴氏、白井黒子氏、佐天涙子氏、初春飾利氏、
常磐台中の生徒A氏、B氏、C氏、D氏。客観的に見てももかなりの数である」
「意義あり」 と控えめに手を上げる無駄にイケメンのステイル。なぜか顔が赤い。
つっちーから許可を貰ってさっそく発言。
「特定の一人を選ぶのは難しいかもしれないが、その曖昧な態度が裏目に
でた事例がある。御坂氏は以前から上条氏に強い好意を抱いていたが、
異常な鈍感さによって気づいてもらえず、性格が豹変した。最終的に、
彼女は暴行や脅迫などの手段で上条氏と強引に交際を迫った」
衝撃の事実に、場がしんと静まる。
「……!」
傍聴側の姫神さんが固唾を呑んで裁判の行方を見守っている。
それは他の生徒達も同様だった。
ステイルは発言を続ける。
「その御坂氏の凶暴性を体験した証人として佐天涙子氏をお呼びしている。
裁判官、入室の許可を」
「いいでしょう」
金髪のグラサンがうなずく。
佐天さんは緊張しながら入室してきた。発言を始める。
「○月×日、○○レストランにて上条さんと友人の初春の三人で
食事をしている時でした。突然乱入してきた御坂さんに脅されました。
彼女は目が血走っていて、レールガンが発射されるあと一歩のところで
上条さんに助けられました」
「具体的に、御坂さんに何と脅されましたか?」
ステイルが質問する。
そして佐天さんが答える。
「今すぐ私の当麻から離れなさい。三秒あげるわ、と言って
レールガンのコインを発射するそぶりを見せていました。
一歩間違えれば命を落としていたと思います」
「分かりました」
と言ってステイルが話のまとめにかかる。
「以上の内容は、御坂氏が上条氏を思うばかりに生じた奇行である。
仮に上条氏が早期に御坂氏と交際するか、そうでないにしても
気持ちをはっきりと伝えて断っていば、この事態は未然に防げたといえる!」
その発言を聞いた一方通行が 「異議あり!!」 と大きな声で手を上げる。
「検察側では御坂氏の奇行が上条氏の鈍感さが原因だとしているが、
これは明らかな誤謬である。御坂氏がツンデレであるのは周知の
事実だが、彼に気持ちを伝えられないばかりか、幾度となく勝負をしかけている」
ここで一呼吸入れてから続ける。
「また、御坂氏はその勝負の際に公共施設や電化製品に被害を及ぼしており、
普段から○○公園の自動販売機に蹴りを入れるなどの素行の悪さが目立つ。
これらには複数の目撃者がいる。したがって、彼女は潜在的に
犯罪に手を染める可能性のある人間だったと考えることが出来る」
一方氏の発言はまだ終らない。
「それを裏付けるように、御坂氏はヤンデレ化して上条氏の住んでいる寮に
おしかけ、氏の同居人の禁書目録氏を虐待し、失語症にさせたとされている。
常磐台女子寮のルームメイト・白井氏に対しても電気ショックを与えるなどの
拷問を実施しており、御坂氏が異常者なのは疑いの余地がない」
長いセリフだったが、一方通行氏は噛むことなく言い切ることが出来た。
小さくガッツポーズする一方さんだったが、周囲は騒然としていた。
「うぅ……ぐすっ……ひどすぎるわ……
どうしてそんな酷いことができるの……」
傍聴席に座っている姫神がハンカチで涙を拭いていた。
心優しい彼女は、親しくしていた禁書が虐待されたと死って心を痛めたのだ。
「なんて奴だ…」 「レールガンはキチガイだ…」 「僕も叩かれたいんだお」
姫神の近くに座っているクラスメイト達(1名以外)もどよめいていた。
それだけ美琴の異常性が際立ったのだ。
一方通行の陳述は確かな効力を発揮していた。
_____________________________________________
裁判の途中で恐縮だが、午後の投下はここまで。規制が怖いしね
書き溜め作業に戻るから、また夜に会いましょう。
>>619から続くよ。裁判編です。保守ありがとね。
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これで観客たちの心情を上条側優位に
させることができたと思われたが…
「異議あり!」
今まで沈黙を保っていた検察官・青髪ピアスだった。
悪友の裁判官から発言許可をもらう。
「御坂氏の異常性について異論はない。だがそれはあくまで一例である。
上条氏が意図的にハーレムを作りだしていることの否定にはならない。
ここで例をあげよう。上条氏は数日前から白井氏と懇意の関係になった。
スーパーで夕食の食材を買っている彼らを見たと証言するものは多い」
青ピは身振り手振りを加えながら話し続ける。
「その関係にありながら、先日、上条氏は昼下がりの○○公園で御坂氏と
接吻を交わしていた。そしてその場に白井氏が訪れて御坂氏と激しい
口論となった。にもかかわらず上条氏は悪びれるそぶりを見せないばかり
か、常磐台の女子中学生らと喫茶店に行ったとされている。
なお、この事例の目撃者は通行人や店員など多数である」
青ピは気分が乗ってきて興奮し、
傍聴席側の方を向きながら大声で話し始める。
「そもそも、彼は禁書目録氏という同居人がいながら、
御坂氏や白井氏と不健全な関係をもったことに注目してもらいたい!
打ち止め氏の言うとおり、確かに誰か一人を選ぶのは大変だろうが、
悩む時間は充分にあたったと考えられる。それにもかかわらず…」
青ピはオーケストラの指揮者のように両手を広げて陳述を続行する。
「今現在も特定の恋人を作ろうとせず、ハーレム状態を維持している!
ちなみに、公園で御坂氏が接吻した際、以前のような脅迫は
一切用いず、自然な会話の中から生まれたとされている!
証人の入室の許可を…」
すぐに土御門が許可を出したので、初春飾利が入室した。
「昨日、上条さんが公園のベンチでうなだれていました。
そこへ現れた御坂さんは上条さんを励ますようなことを
口走った後、抱きしめてキスしてました」
さらに続ける。
「上条さん達は少なくとも7、8分ぐらいは抱き合っていました。
上条さんは嫌がるそぶりを全く見せず、御坂さんの胸に顔を
埋めて喜んでいました。そこに脅迫や暴力は一切存在しませんでした」
初春の発言はここまで。
青ピが引き継ぐ。
「証拠品もある。通りすがりの中学生が撮影したものだが、
確かに上条氏と御坂氏が抱き合っている写真だ」
その写真がプロジェクターの大画面に映し出される。
「まじかよ……」 「何て節操のない奴だ…」 「あれがシマウマか…」
一同はまた騒然とし始める。
傍聴側のクラスメイトらは青髪ピアスの陳述に動揺しているのだ。
青ピは彼らの反応に満足しつつ、さらに熱を入れて発言する。
「浮気行為は罪であり、多くの人を不幸にさせる!
まともな人間であるならば、最低限の秩序は守ってしかるべきである。
だが、上条氏は稀代の女垂らしであり、これからも多くの女性を
巻き込み続けるだろう!」
青ピがデスノートの夜神月(最終話)のような顔で必死に叫ぶ。
「想像してみてください! 小学校を卒業したばかりの
女の子が、上条氏の餌食になる姿を!! 純真で初心なその子たちが
彼のハーレム目的のために騙され、欺かれる姿を!!
本日証人として参加していただいた二人の女性も該当するのですよ!!」
熱い発言を終えた青ピは肩で息をしており、たしかな充実感を得ていた。
ほどよい汗をかいており、スポーツのあとのようだった。
ピアスをつけた検察官の発言内容は、
野球でいえば逆転満塁ホームラン級の勢いがあった。
「上条君……最低だわ……!」
吐き捨てるように言うのは姫神。彼女とて恋する乙女。
上条の卑劣さに憤慨するのも無理はない。
「最低なシマウマだな…」 「奴は逮捕された方がいいんじゃないか」
「これほどの悪党はみたことがない」 「美琴タンにビンタされたいお」
クラスメイト達も怒りを隠せない(1名以外)
教室中が凄まじくどよめき、異様な空間となってしまった。
「もう……やめろよ」
発言したのは上条被告だった。
「!?」 「!!」 「…!?」 「な!?」
裁判官を含めた全員がそちらに注目する。
「もうたくさんだ!! そんなに俺を悪者にしたいのかよ!!」
上条は悪態をついた後、
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」
奇声を上げながら脱走してしまった。
シマウマらしい素晴らしい疾走であり、背後からステイル達が
追いかけるが距離は開くばかりで、上条はまんまと逃げ切った。
「もういやだあああああああああ!! 不幸だああああああ!!」
上条が玄関を思いっきり開けた後、急いで鍵をかける。
「血相変えてどうしたの、とうま?」
禁書ちゃんは割りと冷静だったが、上条は焦りまくっている。
「もう俺は二度と学校に行かないぞ!!
どいつもこいつも俺をバカにしやがってえええええ!!」
言いながら暴れ始める。
とにかくむしゃくしゃして仕方なかった。
「あわわわ、お、落ち着いてよ、とうまぁ」
禁書は縮こまって震えていた。
涙目になっているのがとっても可愛かった。
数分後。
「上条さん!! 開けなさい! 裁判はまだ終わってませんよ!」
「裁判を拒否するつもりですか、被告人!」
裁判官らが玄関を叩き続けていた。
まるで借金取りのようだ。
「あーうぜー。あいつら全員くたばれ」
上条は布団にくるまり、現実逃避している。
彼らの話に応じるつもりはなかった。
ところで、
あの裁判は、一方通行が企画したものだった。
以前から上条の異常性に気がついていた彼は、
愛しの打ち止めに手を出されることを恐れていた。
そして上条に不満を持つ有志を集わせ、今日の
裁判を開いたのだ。獄中にいたステイルを脱獄させたのは彼だ。
なお、裁判とは名ばかりで、最終的には上条の有罪が
確定していた上で実施されていた。一方通行が弁護側に
回っていたのも、首謀者であることを隠すためのポーズである。
担任の小萌先生はビールで買収し、授業を乗っ取った。
「……」
上条は床の上に踏ん反り返り、黙ったままだ。
不機嫌オーラが全身から発せられており、
その背中は『俺にかまうな。話しかけるな』と無言で訴えている。
ちなみに、しつこい裁判官達は徹底的に無視した。
数十分もすると彼らは諦めて帰っていた。
「……よいしょ、よいしょ」
禁書は部屋の後片付けをしていた。
上条が派手に暴れたため、投げつけられた物品の数々が
その辺に転がっているのだ。
倒れた棚や本を一通り元に戻した後、
丁寧に掃除機をかけて清掃を終えた。
「ふぅ」
ここでちょっと一息。
汗をぬぐいながら、一仕事終えた後の爽快感にひたっていた。
「あー、うぜー。うぜー、うぜー。おらおら」
愚痴をこぼしながらDSをプレイしているのが上条。
差し込まれているカートリッジには、「ドラクエⅤ」と書かれている。
密かに溜めたバイト代で買ったのだ。
ピコ ピコ ピコ ppp
「おらおら、喰らいやがれ」
上条は初期のダンジョンでスライムを倒しまくってストレスを解消していた。
ちなみに主人公の名前は、「シマウマ」である。
「とうま…」
禁書は彼を哀れむような目で見ていた。
同時に恐怖も感じていた。
こんなにやさぐれた上条を見るのは初めてだった。
今の彼はまるで思春期の中学生のようである。
思えば、今まで本当に色々なことがあった。
美琴のヤンデレ化と一連の襲撃事件。
禁書の失語症とその闘病生活。
淑女・黒子の丁寧なもてなしや、インデックスへのお嬢様教育。
美琴・黒子との険悪な三角関係。
そして今回のシマウマ裁判。
まさに波乱万丈の人生である。
どれも普通の高校生が体験するものではない。
上条が精神的に参ってしまうのも無理はない話である。
(私がなぐさめてあげるからね……。
大丈夫だよ。私はとうまの味方だから…)
インデックスは何とか彼を立ちなおさせるべく、
四苦八苦することになるのだった。
_______________________________________________
今日はここまで。これから上条ヒッキー編が始まるぜい。
ネタがつまっているから、投下は明日の夜になるかもしれないけど、
気長に待っててくださいな。んじゃ、明日会おうぜ。
保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 40分以内
02:00-04:00 90分以内
04:00-09:00 180分以内
09:00-16:00 80分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内
保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 210分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内
お待たせ。それと保守ありがと。本日午後の投下を始めます。
上条ヒッキー編の始まり始まりぃ。>>669から
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その日から、上条は家に引きこもるようになった。
学校は無断欠席し、鳴り続ける電話がやかましいので
電話線を抜いてしまった。
彼はベッドで踏ん反り返りながら、ドラクエに没頭し続けた。
毎日夜遅くに寝ては昼に起きる生活。
炊事洗濯は一切行わず、全てインデックスに任せている。
以前の正義の味方はどこへ消えたのか、彼にはもう
人としての感情が失われつつあった。
禁書はキッチンでお茶を淹れ、湯のみを盆に乗せてとことこ歩く。
「とうま、お茶淹れたよ?」
テーブルに二人分の湯のみを置くが、
「……あぁ。サンキュな」
上条の反応は淡白だ。今もDSの画面から目を離さない。
(うう。反応がすごく冷たいんだよ……。
どうしたら機嫌を直してくれるのかな……?)
禁書ちゃんは少し泣きそうになりながらも、
退屈しのぎにテレビをつけた。
ピッ
ちょうどニュースの時間だった。
女性アナウンサーが淡々と読み上げる。
「まずは数日前、学園都市内の高校で開かれたシマウマ裁判の経過について、
一部始終を撮影したビデオの映像が各国に流失した事件についてです。
欧州や中東など各国の首脳陣や人権団体の間で話し合われ、
大きな社会問題に発展しています」
ここで画面が切り替わって、ロシアに移る。
「わたくしは本日、ロシアのサンクトペテルブルクに来ております」
現地の男性キャスターが話す。眼鏡をかけており、知的な印象だ。
「冬宮殿前の広場では、ご覧の通りたくさんの市民が集まっており、
デモ行進をしています。彼らは白井黒子氏のファンで構成されており、
上条氏のあいまいな態度に強い不快感を示しております。
彼らは上条氏に対して、白井氏の名誉を守るため交際するべきだと
主張しており、ロシア警察は、各地で暴動が起きないよう警戒しています」
そして画面がイラクに切り替わる。
現地キャスターがはきはきと話す。
「ご覧下さい。現在、首都バグダードでは、多くの露店や道路などが
爆弾テロの被害にあって混乱しています。イラク内の若い男性らは、
美琴派と黒子派に分かれて対立しており、激しい銃撃戦を展開してます。
その中でも美琴保護戦線を名乗る過激派集団が活発にテロ活動を
行っていて、町は騒然としてます」
インデックスは画面は見ながらお茶を吹いてまった。
「ぶーーーっ! な、何が起きてるの!?
何かの冗談だよね!? 意味わかんないんだよ!?」
次に画面はイタリアに移る。首相のインタビューだ。
「現在、EU各国では上条氏に対する不満が広がっているが、
私はあえて上条氏を支持したいと思う。彼のハーレム願望は、
思春期の男子学生として当然の欲求であり、非難するほどの
ものではないからだ。ちなみに、私は愛人が五人ほどいる」
その次に映し出されたのはドイツだった。
スーツを着た偉そうなおじさんが記者会見をしている。
「先程議会で話し合ったところ、上条氏の性欲の強さは獣並で
あるという考えで一致した。でなければ大規模なハーレムを
作ったことの証明にならないからだ。また、今後の被害予想
についても話し合い、上条氏は次に打ち止め氏を狙う可能性が
高いと判断された」
さらに別のおじさんが映し出される。
ごつい顔で軍服を着ており、軍の司令官のようだ。
「打ち止め氏が至高の幼女であり、保護対象であるのは
ドイツ国民の総意である。もし日本国政府から要請があれば、
軍の主力を出動させる準備がすでに整っている。
また、我々の見解は一方通行氏と共通しており、近日にも
彼をドイツ国防軍司令部に招待し、今後の展開について
くわしく協議したい」
インデックスは、茶を噴いたせいでびしょ濡れになった
テーブルを拭きながらあきれていた。
「何で国際問題にまで発展してるんだよ……?
みんな絶対に頭おかしいんだよ……?」
次に映し出されたのはアメリカだ。
映画監督が記者会見している。
「すでにインターネットなどで報じられているが、私が次に製作するのは
上条氏のドキュメンタリー映画に決定した。彼の波乱万丈な人生は
非常に刺激的であり、かなりの興行収入が見込めると考えている。
特に御坂役は物語の鍵であるので、俳優は慎重に選ぼうと思う」
画面が切り替わってイギリス。
アナウンサーが原稿を読み上げる。
「ここ数日、イギリスのオークションでは上条氏と御坂氏が
公園で接吻した際の写真などが高値で取引されています。
特にその時彼らが座っていた公園のベンチが人気商品となり、
オズウェル,E,スペンサー男爵が、ベンチとしては史上最高価格で落札しました」
ここまで報じたところで、上条は切れた。
「どいつも……こいつも……」
DSをぶん投げて、静かに立ち上がる。
「ふざけやがってえええええええええええええええええええ!!」
吼えるシマウマ。すでにストレスは限界まで達しようとしていた。
無理もない。個人的な女性関係が世界中に公開されているのだ。
上条のプライバシーが存在しないのさすがに酷すぎる。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!」
叫んでも、どうにもならないのは分かっていた。
だが、こうせずにはいられなかった。
今まで本当に様々な事件に巻き込まれてきたが、
ここまで腹が立ったのは生まれて初めてだった。
「とうま。お願いだから落ち着いて…」
禁書が控えめに言いながら、上条の近くをうろうろするが…
「うるせえ!」
「あっ……」
頬を叩かれてしまった。
「……」
「……」
重い沈黙が訪れる。
「……」
「……ごめんね。とうま」
「…え?」
謝ったのはなぜかインデックス。
彼女は涙を堪えながら話した。
「いっつも私が迷惑かけてから悪いんだよね?
とうまが他所の女の子たちに癒しを求めちゃうのも分かるよ。
でも、これからは私がとうまに尽くしてあげるから…」
インデックスは上条に抱きつき、
「私だけを見て…。私はとうまが何やってたとしても受け入れるよ」
「……!」
上条が感じたのは強烈なデジャブ。
美琴や黒子の時と全く同じパターンだ。
上条はよく考えた後、禁書を押しのけた。
「よしてくれ。俺はもう女の子と仲良くなりたくない」
「……とうま」
「言っておくが、おまえに出て行って欲しいわけじゃないぞ?
これからもこの家に居てくれてかまわない。だが、必要以上に
べたべたするのはもうやめよう」
「……うん。分かった」
肩を落としたインデックスが頷く。
こうして微妙な関係のまま、さらに数日が経過した。
上条は相変わらず学校に行かず、DSをプレイしていた。
その世話焼きがインデックスの仕事である。
清掃は一通りこなせるようになったが、まだ料理までは
万全ではない。ご飯だけを炊くことは出来るので、
あとはスーパーで買った簡単な食材を調理するか、
出来合いの惣菜を購入するなりしていた。
「ポイントカードはお持ちでしょうか?」
スーパーのレジで店員に聞かれる。
「はい……って、あれ? あ、すみません。
家に忘れてきてしまいました」
財布の中を探すが、目的のカードは見つからなかった。
しょんぼりしながら会計を済ませる。
「…」
帰り道を歩いていると、主婦たちの噂話が聞こえてきた。
「まあ、あの子なんでしょ? あのシマウマの男の子ど同居してるのって」
「本当だわ。世界的に有名人になってる女の子よね」
「へぇ。結構可愛い子じゃない。年は小学生くらいかしら?」
「まだ彼と同居してるって噂じゃない。あんな男いい加減諦めればいいのに」
歯に衣着せぬ言い方とはこのことである。
彼女らの勝手な話はインデックスの心を深く傷つけた。
「うぅ…」
禁書は泣きそうになるが、必死で堪える。
今日も大好きな彼が家で待っているからだ。
早足でその場から去ろうとしたが…
「あなたが禁書目録さんね」
腕を組んでいる地位の高そうな女性。
「私は、ジャッジメント・第177支部所属の固法美偉よ。始めまして」
そう言って握手を求めてくる。
眼鏡の奥に知的な瞳を備えている女性だった。
インデックスは緊張しながら手を伸ばした。
「よろしく…」
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。今日はあなたに話があるだけ」
「話…ですか?」
「ええ。少し話しが長くなるから、喫茶店にでも行きましょうか」
そして場所を移動した。
案内された喫茶店は洒落た雰囲気の店だった。
固法氏は適当に二人分の紅茶を注文した後、話を始めた。
「上条君は一週間ほど学校を無断欠席してるわ。
まあ、あれだけ有名人になってしまっては無理もないわね。
彼に同情する人も実は多いの。今回の報道は彼の
プライバイシーをずたずたにしたのよ」
話し始めると、固法氏は割とフランクな印象だった。
現在、上条氏のハーレム問題について大きな社会問題と
して扱われているが、その件について学校側やアンチスキル
と協議し、ある妥協案を検討したのだという。
「それがこの誓約書よ。これは浮気防止とハーレム撲滅に
同意するための書類なんだけど、上条君がこれに特定の
女性とお付き合いすると誓ってもらうために用意されたの。
署名したら各国語に翻訳して世界に好評するわ」
テーブルの上に乗せた用紙を見せる。
「……」
「…で、この誓約書を上条君に渡してもらえるかしら。今すぐ
決めろといってるわけじゃないわ。彼が立ち直るまで時間は
かかるでしょうけど、いつかは決断してもらうわ」
「……」
禁書は黙って話を聞いていた。その暗い表情を読み取った固法氏は…
「私はね、上条君が誰を選ぼうと興味はないの。それはジャッジメント
のほとんどの人がそう思っているわ。ただこれだけの大騒ぎになって
しまった以上は仕事としてやってるだけ。あなたも巻き込まれちゃって
大変だとたと思うけど、まあがんばって」
固法氏は禁書の肩を優しく叩いた後、踵を返して去っていった。
インデックスは複雑な思いでしばらく考え事した後、
口をつけていなかった紅茶に手を伸ばす。
「冷たい…」
紅茶はもう、すっかり冷めてしまった。
帰宅。
「ただいまなんだよ。とうま」
「……」
念のため一分ほど待ってみたが、やはり上条からの
返事はもらえなかった。
彼は相変わらずDSに没頭していて、禁書を見ようともしない。
(はぁ…)
少し憂鬱になりながも、インデックスはテーブルで
買い物袋を広げる。
今日は料理するのが面倒なので、スーパーで安売りの弁当を二人分買ってきた。
最近の弁当は本当に安いので重宝している。
それを食べる前に、こっそりと固法氏からもらった誓約書に目を通す。
(もし、とうまが私のことを好きになってくれたら、
本当の恋人になれるんだね)
誓約書によると、上条が浮気をした場合は法により罰せられると
書いてある。言い変えれば彼に一途な恋愛を強要させるものだ。
(私はくろこ達よりもずっと長くとうまと過ごしてきたんだよ。
私だってチャンスはあるはず…)
これはチャンスだと思った。
心を閉ざしてしまった彼をなんとかして救ってやればいいのだ。
シマウマ裁判が公になって以来、美琴や黒子らはすっかり現れなくなった。
理由は分からないが、彼女達にも色々と事情があるのかもしれない。
ちなみに、上条は携帯はもちろん、電話線を遮断して玄関にも施錠している
ため、可能な限り外部との接触を遮断している。
さるだった。
__________________________________
インデックスは密かにガッツポーズした後、
上条攻略作戦に打って出るのだった。
「あー、腹減ったなー」
夜の八時。
今までずっとゲームしていた上条だが、
さすがにお腹がすいたのでお弁当に手を出そうとしていた。
だが……
「あー? 箸がねえじゃん。ったく」
付属してあるはずの割り箸がないので文句を垂れる。
ここで待ったました、と言わんばかりにインデックスが…
「とうまぁ。今日は私が食べさせてあげるんだよ!」
にっこり笑顔で割り箸を持つ禁書ちゃん。
一方の上条は氷のように冷たい表情でこう言った。
「おい。やめろ」
「え?」
「そういうの、もうやめろって言ってんだよ」
「え……えっと……」
禁書はあたふたしたが、彼に物凄い顔で睨まれていた。
「俺は女の子と必要以上に仲良くしないって言ったろ?
もう懲り懲りなんだよ! いいから割り箸貸せよ」
「はい。ごめんなさい。怒らせるようなことして…」
「……」
禁書が申し訳なさそうな顔で謝った後、上条は特に
気にした様子もなく無言で食べ続けた。
インデックスは暇になったので、テレビをつけてみた。
内容はまたしてもニュース番組だ。
美人アナウンサーが原稿を読み上げる。
「今回のシマウマ裁判の結果から、常磐台中学では学生の
品格を守るため、不必要に異性と恋愛をしないよう
校則が一新されました。女子寮の寮監の話によると、
寮生のみ原則として男女交際は禁止させるとして、
今後も厳しく生徒を指導していく考えを表明しました。
禁書が呆けながら感想を述べる。
「へえ。くろこ達も苦労してるんだね…。
だから最近姿を見なかったんだ…」
画面は切り替わって国際ニュースだ。
なんと、ドイツ国防軍司令官と握手している一方通行の姿があった。
「今回の裁判で弁護役を勤めた一方通行氏は、日本時間の本日夕方、
訪独先のベルリンで国防軍・最高司令官のマンシュタイン氏と
会談しました。会談では、打ち止め氏の写真集や音声データなど
と引き換えに最新の軍事技術の提供が検討され、両氏は打ち止め氏を
保護する立場上、必要不可欠の措置だということで意見が一致しました」
ここで一方通行がインタビューに答える。
「この取引が成立すれば、日本国にとって多くの利益を
生むことになるだろう。また、幼女を守りたいという気持ちに
国境は関係ないということを改めて認識させられた。
打ち止めが、日本とドイツを結ぶ架け橋になることを期待している」
アナウンサーが続ける。
「次に芸能ニュースです。米国で製作中のドキュメンタリー映画、
『SHIMAUMA』について、
米国人監督のスティーブン・リンチ氏の記者会見の映像です」
リンチ氏が画面上に現れる。
「製作にかける費用は膨大なものになる。特に女子生徒役の俳優
に間しては世界中から応募が殺到しているため、かつてないほどの
クオリティーが期待できる。ロケ地は米国内で行う予定で、
学園都市を模倣した町を建設している」
ここで上条が切れる。
「えええい! 今すぐテレビを消しやがれえええええええええええ!!」
「は、はい! ごめんなさい!」
禁書が急いでテレビを消す。
「ったく、どいつもこいつも俺をバカにしやがって…」
上条はベッドに横になり、すぐに寝てしまった。
「…」
禁書は密かに作戦を立てることにした。
今のニュースのせいで上条が腹を立ててしまったが、
黒子達が動けない状態である以上、チャンスに変わりはない。
それから毎日、禁書は上条に近づいてみた。
ある日。
あぐらをかいてDSをプレイしている彼の背後に忍び寄り、
さりげなく抱きついて密着してみるが、
「邪魔。どけ」
と淡白に言われて撃退された。
別の日の夜。
禁書はパジャマ姿で枕を抱きしめて涙目になりながら、
「とうまぁ。今日は寂しいから一緒に寝てほしいんだよ?」
と言っても…
「うっせ。一人で寝ろ、ボケ」
あえなく撃沈する。
その次の日。
湯上りで一枚のタオルを身に纏った禁書が、
「おーっと、足が滑っちゃったぁ!」
わざとらしく言って上条に抱きつこうとするが…
「危ねえな」
軽く回避され、床に顔を打ち付けてしまった。
(うぅ……痛いんだよ。どうすればとうまに振り向いてもらえるの?)
インデックスは涙目になりながらも諦めてはいなかった。
(もう正攻法は通じないんだよ。かと言って過激に責めても駄目。
どうすれば……。あっ、そうだ!!)
痛めた鼻をこすりながら何か閃いた。
(とうまは動物が好き。いっつもシマウマの話を聞かせてくれたもん。
なら……私がすることは一つなんだよ……)
インデックスは勝利を確信し、あるものを買うために夜の街に繰り出した。
さらに翌日。
お昼過ぎに上条は目を覚ました。
「ふぁああー」
あくびして伸びをした後、ベッドの横に不審な
ダンボールが置かれているのに気がつく。
「なんだこりゃ。宅急便か?」
大きなダンボールだった。
人が一人くらい入ってしまっても不思議ではないほどだ。
上条がそれを開けようとしたとき…
「にゃ~~!!」
なんと……『ネコミミ』をつけたインデックスが姿を表したではないか!!
「!?……!? ……っ!? ……な!?」
上条にとってはこれ以上ないほどの驚愕だ。
寝起きにこんなものを見せられたのでは無理もない。
思考回路がいかれてしまって言葉が発せられなかった。
次に……インデックスは歌い始めた!!
『んでっ!んでっ!んでっ にゃ~んでっ! かまって かまって 欲しいの~♪』
『イイ子じゃない時のワタシ カワイイとかって ありえな~い♪』
『ソレ!ソレ!ソレ! LOVE! もらって もらって ください~♪』
それを聞いた瞬間、上条の中で人間らしい感情が生まれようとしていた。
(何この歌!? か、かわいい!? いや、確かに可愛いけど…
それ以上に…うぜええええええええええええええええええええ!!)
インデックスは笑顔で歌い続ける!!
『はっぴぃ にゅう にゃあ はじめまして キミにあげる 最初のオーバーラン♪』
『逃げるから 追い掛けて まぁるい世界♪』『ラッキー ニュー フェイス 近づいてる♪』
『わたしだけ~ 見つけなさい~ 拾いた~いなら 拾えば~い~じゃん♪』
その頃、上条の心の中で大きな変化が生まれた。
(何なんだこれは……聞いてるだけで元気が沸いてくるぞ……。
そう。この気持ちを例えるなら……うざ可愛い!! うざいけど可愛い!!
何これえええええええええええええええええええええ!?)
(拾えばいいじゃんだと!? 私だけを見つめなさいだと!?
見つめちゃうよ!? いいの!? いいんだよね!?
はあああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!)
上条は悟りを開いた。
インデックスを優しく抱きしめながら、感情のこもった声で話しかける。
「おまってやつは……どうしてここまで俺に尽くしてくれるんだ?」
「私がとうまのこと大好きだからだよ」
「でも、俺はおまえに冷たく接してしまった。嫌いにならないのか?」
「そんなことあるわけないんだよ。とうまは行き倒れの私を拾ってくれた。
お腹がすいたらご飯食べさせてくれた。だからこれは恩返しなんだよ。
とうまのことはずっと大好きだったから…」
「インデックス……」
上条の瞳に暖かい涙が生まれた。
同じようにインデックスも泣いていた。
二人はしばらくそのまま抱き合い、本当の恋人になったのだった。
その後、上条はジャッジメント本部の第一会議室へ出向いて
浮気防止の誓約書にサインし、インデックスとの交際を正式に認めた。
各国語に翻訳されたそれが報道期間によって全世界に公表され、
一連のシマウマ騒動は鎮静化した。
インデックスとの交際宣言はすぐに美琴や黒子の知ることとなったが、
反応はまともで、「当麻(様)が選んだのならそれでいい」として
二人の交際を肯定した。
また、米国製作の映画「SHIMAUMA」が世界中で大ヒットし、
後日販売された製品版のBDは、初回限定版を中心に大いに売れた。
上条は多額の報奨金を手に入れ、裕福な生活をするようになった。
彼らはシマウマとネコ。いわゆるシマネコ・カップルとして、
世界中の人々から暖かく見守られたという。
終わり。
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