唯「パワプロやろーよ!」(179)

律「お~、いいな~!」

梓「……!」ピクッ

紬「ぱわぷろ?」

澪「野球ゲームのことだよ、ムギ。しかし唐突だな……」

唯「えへへ~、実は最近ハマっちゃってて……かなり上達したと思うから、誰かと対戦したいんだよ!」フンス!

律「ああ、サクセスやマイライフも面白いけど、やっぱり対人戦が燃えるもんな」

紬「えと……さくせす……まいらいふ……?」

澪「簡単に言えばサクセスはオリジナルの野球選手を作るモードで、マイライフはプロ野球選手を疑似体験するモードだな」

梓「……」

唯「おお~、澪ちゃん詳しいね!」

澪「まあ、な……」

律「へへ~ん、私と澪は昔っからやってるからな!にわかの唯なんかには負けないぜ~?」

唯「何ですと~?ふっふっふ、今の言葉……後悔することになるよ~?」

澪(私は律に付き合わされてただけだが)

紬「みんなやってるのね……私もやってみたいわ!」

唯「お、ムギちゃんやる気だね~」

梓「……」

律「よーし、それじゃあ今日は唯の家でパワプロ大会だーっ!」

唯「おーっ!」

紬「お~♪」

澪「うおおおーい!?今日はちゃんと練習するって約束だろ!?」

唯「あっ、せっかくだからみんな泊まって行きなよ!明日休みだし」

律「お泊まりパワプロ大会か。いいな、それ!」

紬「私、友達の家に泊まってみんなでゲームするの夢だったの~♪」

澪「ナチュラルに無視!?」ガーン

梓「……」

唯「あずにゃん、さっきから黙ってるけどどうしたの?」

澪「そ、そうだ梓!お前は練習に賛成だよな!?」

律「ちっ、真面目コンビめ~」

唯「ええ~あずにゃ~ん……」

梓「……いいんじゃないですか?」

澪「……え?」

律「お?」

唯「あずにゃん……!」パアアッ

紬「まあまあまあまあ!」

梓「たまには息抜きも大切だと思いますよ。私も賛成です、パワプロ大会」

律「おおっ、梓もこちら側か!」

唯「いえ~い、あずにゃんゲット~♪」ダキッ

梓「苦しいです」

紬「うふふふ」

澪「ああ、まさか梓まで……」ズーン

律「どうした澪~?来たくないなら来なくてもいいんだぞ~?」ニヤニヤ

澪「う……」

唯「え~、澪ちゃんもおいでよ~」

紬「澪ちゃん」

梓「澪先輩」

澪「うう……」

律「もういいから真面目な澪ちゃんは置いていこうぜ~♪一回家に戻って準備したいし」

唯「ええっ、でも……」

紬「澪ちゃんが……」

律「いいからいいから♪ほれ、梓も行くぞ~」

梓「あ、はい」

澪「……!わ、私も行くうぅ~!」ガタッ

律「よ~し、これで全員参加だな!」ニヤニヤ

澪「はっ!?」

唯「おお、さすがりっちゃん……!」

紬「澪ちゃんの扱いを心得てるわね……」

律「それじゃあ一度それぞれの家に戻って、準備してから唯の家に集合な!」

唯・紬「お~♪」

澪「お、お~……」

梓「……やってやるです」ボソッ

……

唯の家!

唯「うい~、ただいま~」

憂「お姉ちゃんおかえり~♪今日は早いね、どうかしたの?」

唯「うん、これから軽音部のみんなが泊まりに来るんだ~」

憂「えっ、そうなんだ!それじゃあ準備しないと……」

唯「今日は私も手伝うよ、憂!」フンス!

憂「え……」

唯「美味しい料理を振る舞って、みんなの英気を養ってあげないと!」

憂「お、お姉ちゃんが料理……」

唯「あっ、でもパワプロの準備もしないと……」

憂「……!お、お姉ちゃん!それだったら私一人でお料理しちゃうから、お姉ちゃんはそっちに専念して!」

唯「でもそれじゃ憂が」

憂「大丈夫だよお姉ちゃん!私に任せて!」

唯「う~ん……じゃあ憂に任せるよ。いつもゴメンね?」

憂「ううん、気にしないで。私は料理好きだから」

唯「ありがとう憂~♪」ギュウッ

憂「えへへ……」

憂(危なかった……お姉ちゃんと一緒にやると、いつもの倍の材料と時間がかかっちゃうからなあ。お客さんが来るなら厳しいよ……ごめんね、お姉ちゃん)

憂(それにしても……パワプロ?)

律の家!

律「ふっふ~ん♪唯め、このチームを見て度肝を抜いてやるからな~」

律「……」

律「う~ん、でもこいつらだけじゃ少し心許無いな」

律「どうするか……そうだ!」

律「お~い、聡~!」

ガチャッ

聡「何だよ姉ちゃん」

律「お前のパワプロの選手、ちょこ~っと貸してくれないか?」

聡「ええ~……」

律「何だその嫌そうな顔は~!お姉さまがこうやって頭を下げてやってるんだぞ~!?」

聡(駄々こねると聞かないからなあ……騒がれる前に従った方がいいか)

律「こら、何とか言え~!」

聡「分かったよ、貸すよ」

律「本当か!?いや~、良い弟を持つ姉は幸せだな」

聡「よく言うよ……はいこれ」

律「サンキュー!ふっふっふ、これで完璧だな!」

聡(何やってんだか)

律「こいつとこいつと……おっ、この投手強いな!おおっ、こいつは4番を任せられるな!」

聡「あまり変なことに使うなよ?」

律「分かってるって。さ~て、チームを作り直さなきゃな!」

ムギの家!

紬「みんなでゲーム大会……うふふ、楽しみ~♪」

紬「……」

紬「準備って言ってたけど、お泊まりグッズ以外に何を持っていけばいいのかしら……」

紬「ぱわぷろのことはよく分からないけど、お菓子とかは持って行ったほうがいいわよね?」

紬「いつも憂ちゃんにはお世話になってるし、お土産がてらいっぱい持って行きましょう」

紬「うふふふ、楽しみ~♪」

澪の家!

澪「はあ……今日は練習するはずだったのに」

澪「……」

澪「まあいいや、切り替えよう。さて、パワプロかあ……」

澪「そういえば、律以外とやるのは久しぶりかも。……よーし、せっかくだから私のチームの素晴らしさを知らしめてやろう!」

澪「律には馬鹿にされてたからなあ」

澪「ふふふ……」

梓の家!

梓「……」

梓「ふ、ふふ」

梓「ふふふ……」

梓「ふふふふふっ!ついに来た……私の時代!」

梓「悪いですが先輩方、ことパワプロにおいては私の右に出る人はそうそういませんよ……?」

梓「中学最強のパワプラーだった私の実力、見せつけてやるです!」

再び唯の家!

律「ぷはー、食った食った!」シーシー

澪「オヤジかお前は……」

梓「お腹いっぱいです」ポンポン

唯「デザートも美味しかったね~」

憂「紬さん、色々と頂いてありがとうございました」ペコリ

紬「うふふ、いいのよ」

律「よ~し、それじゃパワプロやるか!」

澪「後片付けが先だろ!憂ちゃんだけにはやらせられないよ」

梓「そうですね、じゃあ……」

憂「あっ、いいんですよ!私一人で大丈夫です」

紬「でもそれじゃあ憂ちゃんに悪いわ……」

憂「いえ、皆さんはお客様ですからゆっくりして下さい♪皆さんに手伝ってもらったら、逆に心苦しいですよ」ニコッ

律・澪・紬・梓(出来た子だ……!)

律「唯、憂ちゃんくれ!」

唯「や~だよ♪憂は私の妹だもんね~」ギュウッ

憂「キャッ!?も、もうお姉ちゃんってば……///」

澪「まったく、妬けちゃうくらいだな」

紬「うふふふ、美しい姉妹愛ね~」

梓(唯先輩、ちょっとくっつきすぎです)

律「ちぇ~。まあいいや、それじゃあパワプロやるか~」

……

律「さて、どうする?」

澪「5人だからな……プロ球団で総当たり戦するか?」

梓「もしくは一人シードでトーナメントをするか、ですね」

唯「私は何でもいいよ~」

紬「あっ……私はまだよく分からないから、最初は見学させてもらっていい?」

律「そうか、いきなり試合は厳しいよな」

紬「ええ、ごめんね?」

澪「オートやロックオンを使えば初心者でも出来はするけど……」

唯「あんまり楽しくないもんね、あれ」

梓(ロックオンなんて廃止されればいいのに)

律「じゃあ……総当たりは時間かかるからトーナメントにするか」

澪「プロ球団使うか?」

梓「アレンジチームでもいいんじゃないですか?皆さん自分のチーム作ってるんでしょう?」

唯「私はあるよ~」

律「私と澪ももちろん作ってるぜ!」

澪「じゃあアレンジチームでのトーナメント戦だな」

唯「ふっふっふ、負けないよ~?」

紬「みんな頑張れ~♪」

……

紬「くじ引きの結果……」

一戦目:唯対澪
二戦目:律対梓

紬「以上のように決定しました~♪」

唯「澪ちゃんよろしく~♪」

澪「ああ、よろしくな唯」

澪(唯は経験浅いみたいだし、勝てるかな?)

律「梓、運がなかったな」ニヤリ

梓「お手柔らかに」

梓(律先輩こそ、自分の不運を呪うがいいです)ニヤリ

唯「細かいルールはどうするの?」

律「そうだな、操作設定はデフォでいいとして……」

澪「とりあえず一試合6回まで、延長ありコールド5点でどうだ?」

梓「妥当なとこですね。あまり長引かせてムギ先輩を待たせるのも悪いですし」

唯「よ~し、それじゃあ……」

紬「一回戦、唯ちゃん対澪ちゃんスタート~!」

……

唯「ふっふふ~ん♪」

律「さ~て、唯のチームを見せてもらおうかな!」

唯「あ~、スパイ禁止!」

梓「スパイって……今から試合するんだから見ないのは無理ですよ」

唯「そっかあ、それもそうだね!じゃあとくとご覧下さい!」フンス!

澪「どれどれ……」

律「一番ショート憂、二番センターギー太、三番サードりっちゃん……何だこりゃ?」

唯「えへへ、みんなの名前を借りてるんだ~」

紬「あら、私4番?」

梓「ムギ先輩は力持ちですからね」

律「ムギだけパワーAか~」

澪(全体的に基本能力は低そうだな。やっぱり唯は、あまり育成は得意じゃなさそうだ)

唯「先発は……好調のさわちゃんかな。うん、これでオッケー!」

梓(軽音部で私だけスタメンじゃなかった……)ガーン

唯「次は澪ちゃんだね」

紬「澪ちゃんはどういう名前をつけているのかしら?」

律「ああ~……澪のはあまり期待しないほうが」

澪「何でだよ!?結構自信あるんだぞ、見ろ!」

紬「一番セカンドましゅまろ、二番レフトぴゅあぴゅあ、三番キャッチャーくまちゃん、四番ファーストまろん☆……」

律「あちゃ~……いや、中学時代よりはマシか……」

梓(うわあ……)

澪「な、何だよ可愛いだろ!?」

律「……」

梓「……」

澪「な、何だよぅ……何か言えよう……」グスッ

唯「さっすが澪ちゃん!すごく可愛いね!」

律・梓「え?」

紬「澪ちゃんらしいわね~♪」

澪「唯、ムギ……!」パアアッ

律「理解できない」

梓「えっと……選手はミートと守備力が高い選手が多いんですね」

澪「ああ、パワー野球なんて野蛮だよ!技術で勝負しないと!」

律「バッカだなあ、野球はホームラン打ってなんぼだろ?」

澪「野蛮人の律には分からないんだよ」

律「何だとー!?」

梓(ああ、何か納得)

唯「ピッチャーはエリザベス……変化球投手だね!」

澪「ああ、ウチのエースだよ。よし、これでいいや」

紬「いよいよ試合ね!」

プレイボール!

唯「私の先攻だね」

澪「よし、行くぞ唯!」

唯「いつでも来~い!」

澪(唯の操作能力は未知数……まずは様子見だな)

ボール、ボール…

律「澪の奴、変化球を2球続けて外して……相変わらず慎重だなあ」

梓「カーブとスライダー……結構曲がってますね」

カキンッ!

唯「ありゃ、引っ掛けちゃった!」

澪「よっし、セカンドゴロ!」アウトー!

梓(ノーツーから低めのボール球に手を出すなんて……やはり唯先輩は警戒するほどじゃないな)

紬「唯ちゃんも澪ちゃんも頑張れ~♪」

唯「もらったー!」キインッ!

澪「残念、レフトの守備範囲内だ」アウトー、チェンジ!

唯「ちぇ~……りっちゃんも頼りにならないなあ」

律「おいっ!ゲーム内の私に文句付けるな!」ビシッ

紬「澪ちゃん上手ね~。あの選手、転びながらキャッチしてたわ」

梓「転びながらって……あれはスライディングキャッチですよ」

澪「えへへ……守備には自信あるんだ」

唯「よ~し、今度は私が守備だね!行くよ、さわちゃん!」

澪「さわ子先生か……」

律「どんなピッチャーで作ってんだ?」

唯「ええいっ!」ビュッ

澪「はや……!?」ストラーイク!

紬「152km/h……すごいわ!」

律「しかもこの体感速度……ノビ4を持ってるな!?」

律「しかもこの体感速度……ノビ4を持ってるな!?」

唯「えへへ、なかなか鋭いですなありっちゃん!」

梓(好調・連打なしでこの球速……マックスは160ってとこかな?)

澪「ぐ……速球派投手は……」

律「くくっ、澪の苦手なタイプだよな?」

アウトー、チェンジ

唯「えへへ、三者凡退!」

梓(澪先輩の打球、ほとんど外野に飛ばなかった。重い球もあるのかも)

律「う~ん、これは互角か?」

澪「ふん、点をやらなければ負けない!行くぞ唯!」

唯「お~!」

ゲームセット!

唯1-0澪

澪「ば、馬鹿な……」ガーン

律「唯が二回にムギとトンちゃんの連打で入れた一点が大きかったな」

紬「唯ちゃんすご~い!」

唯「えっへん!」

梓「おめでとうございます、唯先輩」

唯「ありがとうあずにゃ~ん♪」

梓(唯先輩が上がって来たのは予想外だったけど、これで優勝への道は楽になったかな。というか澪先輩は打撃下手すぎ……)

律「澪~、やっぱパワーC以上の選手も入れたほうがいいって」

澪「う、うるさい!私はコツンと当ててヒットを狙うんだ!」

律「でかいミートの端っこに当たっての打ち損じばっかだったじゃん……」

澪「くうう……」

梓「唯先輩が作ったさわ子先生は、速球にカットボールとチェンジアップを織り交ぜてましたね」

律「あれは打ちにくいよなあ。唯にしては本格的な投手だったな!」

唯「えへへ~」

梓(まあ継投なしで抑え込まれる澪先輩もどうかと思うけど)

紬「じゃあ次はりっちゃんと梓ちゃんね♪」

律「ふっふっふ、真打ち登場だな!見よ、我がチームを!」

唯「おお~!」

梓「一番センター最強、二番ショート龍神皇、三番ライト破壊神、四番キャッチャー阿修羅……」

梓(うわあ……澪先輩とは別の意味でうわあ……)

澪「何だよこの選手名……」

律「へっへ~ん、強そうだろ?」

紬「……?」

唯「か、かっこいいよりっちゃん……!私感動した!」

澪「何いっ!?」

律「だろ~?唯は分かってるな!」

梓(ムギ先輩はよく分かってないみたいだなあ。それにしても唯先輩って……)

律「調子はみんな悪くないな……先発も魔王だし、これでよし!」

唯「あっ、ずる~い。選手の能力まだ見てないよ?」

律「へっへ~ん、出来るだけ隠すのも作戦のうちさ!」

澪「どうせ野手全員パワーAなんだろ?」

律「あっ、ばらすなよ澪!」

澪「守備力FやEの選手がいるチームなんて信じられないよ」

紬「りっちゃんのチームはみんな力持ちなのね~」

梓(予想通りすぎる)

律「さ、梓ちゃんの選手をじっくりと見させて頂こうかしらん?」

澪「こいつ、自分のは見せないくせに梓のは見る気なのか……」

唯「卑怯だね、りっちゃん!」

律「うるせー!勝てばいいのよ!」

紬「まあまあ♪」

梓「……」

澪「梓、無理して見せなくてもいいんだぞ?」

梓「いえいえ、構いませんよ。どうぞご覧になって下さい」ニヤッ

律「ほほう、いい心がけだな梓。どれどれ」

唯「えっと……」

紬「一番サードあずにゃん5号、二番セカンドあずにゃん4号……」

澪「三番センターあずにゃん8号、四番ファーストあずにゃん3号……」

唯「ピッチャー……あずにゃん1号……」

梓「どうですか、私のチームは」エッヘン

律「うわあ……」

唯「……」

澪「……」

紬「……」

梓「ちょっ何か言って下さいよ!?」

律「え~と……ギャグか?」

梓「違いますよ!」

唯「あずにゃん……何か悩み事があるなら、いつでも相談に乗るからね……?」

梓「唯先輩まで!?」ガーン

澪「梓……」ポンッ

紬「梓ちゃん……」ニコッ

梓「そ、そんな生暖かい笑顔で私を見ないで下さい!」

律「しかし凄いな……スタメン全員あずにゃん~号かよ」

澪「番号も守備位置と対応させてるんだな」

唯「パワプロ9のあかつき大付属みたいだね!」

紬「能力はどうなのかしら?」

梓「そうです、能力を見て下さい」

律「こんなふざけた名前の連中、どうせ大したことない……って何いっ!?」

唯「おおお~っ!」

澪「あずにゃん5号……ミートA・パワーC・走力A・肩力B・守力A・エラー回避A!?」

紬「こっちのあずにゃん3号って子は、パワーが250を超えてるわ!」

唯「ほわあ~、このあずにゃんはパワー以外全部Aだよ~」

律(な、何だこのチーム……まさか梓の奴!)クルッ

梓「……♪」フフンッ

律(くっ、こいつかなりパワプロをやり込んでやがる!)

澪「凄いなあ、特殊能力も豊富だ」

唯「アベレージヒッター、パワーヒッター、守備職人、威圧感、キャッチャー◎、広角打法、守備信頼感……色々あるね~」

梓「ええ、それぞれの役割を考えて特殊能力を持たせてあります」

澪「私や唯の選手たちより数段上だな……律、勝てるのか?」ニヤニヤ

律「う、うるせー!パワプロは操作能力で決まるんだよ!」

梓「じゃあ始めましょうか」

プレイボール!

紬「梓ちゃんが先に打つのね?」

唯「頑張れあずにゃ~ん♪」

澪「手加減しなくていいからな」

律「ちくしょうお前らみんな敵か!」

梓「いいから早く投げて下さいよ」

律「くそっ、生意気な後輩め……私のエース・魔王の力を思い知らせてやる!」

律(本当は聡が作ったんだけど)

律「行くぜぇ!」ビュッ

ボール!

唯「おおっ!?」

澪「外れたけどこれは……」

紬「150km/hのボール……しかも、少し浮いてたわ!」

律「へっへ~ん、どうよ!これが魔王の決め球……ライジングショットだ!」バーン

梓(ライジングか……)

紬「らいじんぐ……って何?」

澪「サクセス中のイベントで教えてもらえる、オリジナルのストレートだよ。猪狩守ってキャラの球だな」

紬「へ~」

律「どんどん行くぜ~!オラオラオラアッ!」ストライク、ボール、ストライク!

梓「結構散らしてきますね……!」

澪「コントロールは良くないみたいだけど、逆にそれがいい感じに荒れ球になってるな」

律「ツーツーだな……まずは先頭打者、これで三振だ!」ビュッ

梓(高めのボール……いや、遅い。落ちる変化球だ!)

梓「貰いましたよ!」ブンッ

律「ふっ」ニヤッ

ググッ

梓「なっ!?」ストラーイク、バッターアウッ!

唯「す、凄い!揺れながら斜め下に落ちたよ!?」

澪「ああ、今のは……」

梓「ナックル、ですか」ギリッ

律「ああ、それも変化量7だ!」

梓(律先輩に不覚を取るなんて……)

紬「ナックルって凄いの?」

澪「ああ、現代の魔球って言われてる変化球だよ。パワプロではさっきみたいに揺れながら色々な方向に落ちてくるから、打つのが難しいんだ」

唯「ライジングショット&ナックルかあ。りっちゃんもやりますなあ」

律「へへん、見たか梓!」

梓「……」

梓(ええ、よーく見せてもらいましたよ)ニヤリ

律「よっしゃ~、どんどん行くぜ~!」

……

一回表終了
梓4-0律

律「」

唯「うわあ、一気に4点差だよお」

澪「あと1点でコールドだな」

紬「梓ちゃんすご~い!」

梓「ふう……最後は当たりが良すぎましたね。抜けていればあと2点は取れたのに……残念です」

律「こ、こら梓!どんな卑怯な手を使ったんだ!?」

梓「……?何がですか?」

律「とぼけるな!何であんなにパコパコ打てるんだよ!」

唯「確かにあずにゃん凄かったねえ」

澪「ああ、ロックオンしてるのかと思ったよ」

紬「まるでりっちゃんがどの球種で来るのか分かっているようだったわ」

律「本当なのか梓!?どんなチートを使っているんだ!」

梓「別に大したことではありませんよ。ただ、ナックルは変化始めが早い上、最近のパワプロでは真下に落ちてくることが多いので……」

澪「なるほど、着弾点の真下で構えて飛び込んでくるのを待てばいいのか」

梓「そうです。変化量7ならボールの見極めもやりやすいです。さらにナックルはかなり軽い球なので……対人戦にはあまり向きませんよ?」

律「ぐぐ……」

唯「でも、あずにゃんライジングショットも打ってたよね?」

紬「割合的にはそっちのほうが多かったかも」

梓「ああ、ライジングショットは正直棒球ですよ」

澪「そこまで言うか……」

梓「強芯で叩けば軽くホームラン打てますし。だいたいサクセスで散々見慣れてますからね」

律「そ、そんなあ」

梓「あともう一球種……シュートはミート打ちなら問題ない程度にしか曲がりませんし、律先輩はスローボールは使いませんからね」

唯「え~、私もスローボールはあんまり使わないなあ」

澪「私も……」

梓「まあストライクゾーンに投げ込むのは多少勇気が要りますね。でも上手く使えば結構役に立ちますよ?」

紬「梓ちゃんは詳しいのね!」

梓「いえ、それほどでも」

律「くっそ~、いつまで話してるんだ!試合中だぞ!」

梓「おっとすみません。では投げますね」

律「よし来い!取られたら取り返す!」

唯「あずにゃん1号はどんなピッチャーなのかな?」

澪「そういえば詳しい能力は見てないな」

梓「行きますよ律先輩!」ビュッ

律(一球目はとにかく見る!)

ズバーン!ストラーイク!

律「っ!?」

澪「速い……けど」

紬「148km/hしか出ていない……?」

唯「今までの投手より断然速く見えたのに」

律「こ、これはまさか……」

梓「ふっ……そう、ジャイロボールですよ」ニヤッ

澪「そうか、ジャイロボーラーだったのか!」

唯「ふえ~、初めて見たかも」

梓「それも球持ちと重い球も取得させてます。140台だと思ってると痛い目を見ますよ?」

律「くっそ……」

律(いや、でも速球派なら大丈夫。打てる!)

梓「どんどん行きますよ!」ビュッ

ボール、ストライク!

澪「コーナーを丁寧に突いてるな……ボール球もボール半個分くらいしか外れてないし……」

紬「すごいコントロールね!」

唯「私なら振っちゃいそうだよ~」

律(追い込まれたか。ここまで全て直球……変化球も見たかったが仕方ない。次は打つ!)

梓「……」シュッ

律「真ん中!?よし、もらった!」ブンッ

グググッ

律「何っ!?」ストライク、バッターアウッ

唯「おお~!」

澪「スローカーブか」

紬「真ん中から一気に曲がって右下へ外れたわね!」

律「スロカか……くっそ!」

梓「真ん中になんて不用意に投げませんよ」ププッ

律「中野おおおおぉっ!」

梓「あと、予め言っておきますがあずにゃん1号は速球派ではありませんよ?スライダー、スローカーブ、SFFを操る本格派です」

澪「つ、強い……」

唯「むむむ……」

梓「さあ続けましょうか」ニヤリ

律「お、おのれえ……」

……

紬「回は進んで4回裏。りっちゃんチームはあずにゃん1号の前にソロホームラン一本に抑え込まれてます」

紬「対する梓ちゃんは2回表に1点を追加したものの、3回4回は無得点。ランナーは出し続けてますがホームが遠い状況です」

紬「その辺は打たれる度に投手を代えるりっちゃんの継投策が効いているのでしょう」

紬「では1-5、りっちゃんの4点ビハインドの攻撃から再開で~す♪」

澪「ムギ、さっきから誰と話してるんだ?」

紬「うふふ、内緒よ♪」

律(4回か……そろそろ点を取らないとまずい)

律(しかし未だにヒット一本、それも失投を叩いたソロだけってのもキツイな……)

梓(意外と粘るな律先輩)

梓(でも投手もいなくなってきたみたいだし、次の回には決める)

律「うっしゃー、来い!」

梓「行きますよ律先輩!」

唯「おおう、俄然盛り上がって来たね二人とも!」

澪「押してるのは梓だけどな」

ストラーイク!

律(来た球を打つだけじゃダメだ。もっと、もっと考えるんだ)

ボール!

紬「りっちゃん考え込んでるわね」

唯「りっちゃんのキャラじゃないよ……」

澪「律はかなりの負けず嫌いだからなあ」

律「!」ピクッ

ボール!

律(あっぶねえ、振っちまうところだった。でも今のは……)

梓(ちっ、外れたか。あそこは微妙なんだよなあ……それなら)ビュッ

律「ストレートだっ!」キンッ

唯「打ったあ!」

紬「センター前、綺麗に運んだわね~」

律(何か……掴みそうだ!次も見るぞ)

梓(ノーアウトのランナーを出しちゃったか。でも律先輩はバントは仕掛けてこないだろうし、バッター勝負で十分かな)

ストライク、ボール、ストライク!

梓「よし、追い込んだ!」

律(追い込まれたか……だが、私の読みが正しければ)

梓「ふっ!」ビュッ

律「……!」ボール!

唯「りっちゃんやるう!」

澪「今のSFFは絶妙だったな……よく見たよ、律は」

律(よっし、分かった!くっくっく、覚悟しろよ梓~?)

梓「ふむ、今ので決めようと思ったのですが……ならばこうです!」シュッ

律「ふんっ」キンッ

紬「ショートフライね」アウトー

梓(これで一死一塁。いつも通りに行けば余裕だね)

律「ふふふ……」

澪(律の奴、何か掴んだな)

梓「ふんっ!」シュッ

律「もらったあ!」ガキンッ

紬「わあ、打った!」

オオキイ、オオキイ!ハイッターホームラン!

唯「ツーランホームランだあ♪」

澪「初球から思い切りいったな」

律「よっしゃあっ!」グッ

梓「そ、そんな……狙い通りだったのに」

律「ふふふ、一気に行くぜ~」

梓「まぐれは続きませんよ!?」ビュッ

律「甘いな梓」ニヤッ

キンッ、カアンッ、ギインッ!

梓「」

唯「りっちゃんすご~いっ」

紬「連打で一気に1点差ね!」

律「これで押せ押せムードだな」

澪(打ったのは全部初球と三球目か。なるほど)

梓「な、何で……?」

律「ふふふ……はっはっは!梓、お前の投球には致命的な弱点があるんだよ!」

梓「致命的な、弱点?」

唯「りっちゃん何だか格好いい……」

紬「いいぞ~りっちゃ~ん♪」

澪(まさか自分からばらしたりはしないよな……?)

律「ははは、もっと誉めろ!」

唯「りっちゃん天才!イケメン!」

紬「きゃ~、りっちゃ~ん」

律「ふふ、いいか梓!お前の配球は毎回同じなんだよ!」

梓「配球……?」

律「初球はコーナー、少し甘いところにストレート。二球目は低めの変化球でストライクからボールになる球。三球目は初球より厳しめの高めコーナーへストレート!」

梓「!?」

律「三球目が決まったら、再びストライクからギリギリボールになる変化球!外れたらボールからストライクになる変化球!」

唯「おお~!」

紬「この短時間でそこまで見切るなんて……!」

律「それ以降はランダムっぽいけど、これだけ分かれば十分!一球目のストレートを強芯で、三球目のストレートをミートで狙えばいい!」

梓(なるほど……よしんば三球目が外れたとしても、僅かなズレくらいならパワーAの力で内野の頭は越せるというわけか)

梓「くっ……さすがです律先輩。私のその配球はサクセスでのコンピュータ戦を素早く勝ち抜くために無意識に身についていたものです。まさかそれを見破るなんて」

律「はっはっは、私の力を思い知ったか?もっと敬え~」

澪(はあ……馬鹿だこいつ)

梓「対人戦をあまりやらずにサクセスばかりやってた弊害ですね……教えて頂いてありがとうございます」ペコッ

律「感謝しろよ~?」

梓「ええ、これで意識的に配球を変えれるので、もう打たれませんよ?念のためピッチャーも変えますね」ニコッ

律「……え?」

唯・紬「あ……」

澪「はあ……」

ゲームセット!

梓8-5律

律「」

梓「勝利です!」

紬「結局りっちゃんはあれから一人もヒットを打てなかったわね……」

唯「りっちゃん……あずにゃんに弱点を教えなければ勝ててたのに」

澪「基本的に馬鹿なんだよこいつは」

律「何だとーっ!?」

梓「さあ、いよいよ決勝ですね唯先輩……」

唯「あずにゃん、やる気だね!」

律「気をつけろよ唯、今の梓は強いなんてもんじゃないぞ……」

澪「お前のおかげでな」

唯「あずにゃん、勝負だよ!」

梓「ええ、軽音部ナンバーワンパワプラーの座をかけて!」

紬「うふふ♪(パワプラーって何かしら?)」

プレイボール!

紬「どちらも初戦とは変更なしね」

澪「ああ。でも唯のチームは梓のチームより選手能力が低い。そこをどう補うのか……」

律「と言っても、梓は操作も上手いからなあ。正攻法じゃ勝ち目がないぞ」

唯「ふふふ……大丈夫だよ。我に秘策あり!」キュピーン

梓「唯先輩強気ですね。でも負けませんよ!」

……

3回終了
梓3-0唯

澪「3点差か……やはり差がついたな」

紬「でも唯ちゃんもよく守ってるわね」

律「絶好調のあずにゃん1号からあんまり打ててないな」

梓「唯先輩、やりますね!」

唯「あずにゃんも思ったよりやるね……。でもそろそろ準備は整ったから、秘策を行かせてもらうよ!」

梓「む……」

紬「唯ちゃんの秘策……何かしら?」ワクワク

律「そういえば唯は今までほとんど打ちに行ってないな」

澪「ああ。まるで何かを観察しているようだった」

梓(唯先輩の秘策、か。上位打線からだし、ここは少し警戒しよう)

ボール!ボール…

紬「梓ちゃん、ストライクが入らないわね」

律「おいおい、びびってんのか梓~?」キシシ

澪「妥当な判断だけど、ちょっと慎重すぎだな。ほら……」

ファール!ボール…フォアボール

梓「しまった……先頭打者を歩かせるなんて」

唯「ふっ」ニヤッ

澪「これも唯の作戦か?」

律「まさか……な」

紬「でも唯ちゃんは本気になると凄いし……」

梓「ふう……」

梓(落ち着け私。ランナーを一人出しただけ、バッターは非力な2番。小フライ、あわよくば内野ゴロゲッツーを狙う)

唯(タイミングはばっちり。ここからだよ、あずにゃん♪)

梓「……」ピッ

セーフ!セーフ!

澪「ランナーを警戒しているな」

律「ああ、ランナーは憂ちゃん……かなりの俊足のはずだ」

唯「憂は走力15、盗塁5持ちだよ~♪」

梓「……」

梓(揺さぶられちゃダメだ。それに私のあずにゃん2号は強肩……ストレートを投げておけば、コースは関係なく刺せる!)

梓「バッター勝負!」ビュッ

唯「やはりストレートだね、あずにゃん!」バッ

梓「!?」

紬「一塁ランナーが走ったわ!」

澪「盗塁予約じゃない……最速スタートだ!」

律「まさか唯の奴、あずにゃん1号のモーションを盗んだのか!?」

唯「それだけじゃないよ!」コツン

梓「バントエンドラン!?」

紬「ラインギリギリ……絶妙な位置ね」

梓「くっ、一塁に!」

セーフ!

律「バッターも早いなっ」

澪「っ!梓、まだだ!ランナーが三塁を狙っているぞ!」

梓「なっ……!?」

セーフ!

紬「す、凄い」

律「あっという間に……」

澪「ノーアウト一三塁、だな」

梓「不覚でした……足でかき乱されるなんて」

唯「ふっふ~ん♪」

梓(無死一三塁、バッターは3番のりっちゃん……。仕方ない、一点は諦めよう)

梓「行きますよ!」ビュッ

唯「甘いよあずにゃん!」

紬「また走ったわっ」

律「スクイズ……いや、一塁ランナーの単独スチールか」

梓(さっきよりはるかに遅い……タイミングを誤りましたね、唯先輩)

梓「刺せる!」

澪「待て梓、罠だ!」

梓「えっ?」ビュッ

唯「隙あり♪」

紬「ああっ、梓ちゃんが二塁に投げた隙に三塁ランナーが走った!?」

律「ディレイドスチールだ!」

梓(しまっ……いや、落ち着け。あずにゃん5号も強肩、ホームで刺せる!)シュッ

唯「ありがとうあずにゃん♪」

梓「あ!?」

紬「三塁ランナーが……戻ってる」

律「一塁ランナーは送球の間に余裕で二塁到達、か」

澪「唯の……トリックプレーだな」

梓(しまった……一点を与えて一塁ランナーをアウトにしておけば、一死走者なしにできたのに!)

梓(判断を誤ったっ!無死二三塁で4番を迎えるなんて最悪だ!)

唯(あずにゃん焦ってるね。もう一押し、かな?)

澪「梓の奴、冷静じゃなくなってきてるな」

律「あ~、足でかき回されるとウザイんだよなあ……」

梓(スクイズの可能性もあるけど、長打は絶対に避けたい……どうすれば……)

唯「あずにゃん、早く投げてよ~」

梓「は、はいっ」

梓(仕方ない、ここはとにかくバッターに集中して……)シュッ

唯「ここっ」コツン

律「またバント……スクイズか!?」

澪「いや、また三塁線ギリギリだ!唯は一塁もセーフにする気だぞ!」

梓(いや、これは……切れる!)

コロコロ…

梓(切れろ切れろ!これはファールだ!)

…ピタ

梓「ぐうう……」ガクッ

澪「切れなかったな……オールセーフで一点だ」

律「しかもまだ無死一三塁」

唯「ふふっ、ムギちゃんはバント職人だから、そうそう失敗しないよ~」

紬「あらあら」

澪「4番にバント職人か。何というか、唯らしいな」

唯「えへへ~♪」

……

紬「その後も唯ちゃんの執拗なバント攻勢は続き、梓ちゃんはミスを連発してしまいました」

紬「驚くことに唯ちゃんはプッシュやバスターを巧妙に使い分け、梓ちゃんにシフトを敷くことを許しません」

紬「しかし梓ちゃんもさる者。投手のタイミングを完璧に把握されていると悟った彼女は、なんと80km/hピッチャーや6球種ピッチャーを繰り出し、唯ちゃんを抑え込みます」

紬「試合は進み6回裏……5-6で一点ビハインドの梓ちゃんの最後の攻撃です」

澪「ムギ、誰と話してるんだ?」

紬「気にしない気にしない♪」

律「しっかし、唯バント上手すぎだろ……セーフティの成功確率8割は行ってるんじゃないか?」

澪「それより私は前進していたとはいえ、プッシュで内野の頭を越した技に驚きだよ」

唯「えへへへ、何か私って普通に打つよりバントのほうが成功しやすいんだあ。タイミング取らないといけないから、すぐは無理だけど」

律「なるほど……だから澪の時は使えず、あずにゃん1号には使えたのか」

澪(使われなくてよかった……守備には自信あるけど、すごくストレスが溜まりそうだもんな)

紬「私は梓ちゃんがあんなに色んな投手を持ってるのに驚いたわ~」

律「ああ、あずにゃん10~14号か」

澪「80km/h投手なんてどうやって作ったんだ?」

梓「……企業、秘密です」

梓(まずいまずいまずい。この回に点を入れないと負ける……パワプロには絶対の自信を持っていた、この私が)

梓(落ち着け、冷静になれ。打順は上位から……必ず逆転できる!)

唯「ふっふっふ、このまま一気に行っちゃうよ~」

梓(唯先輩の投手は中継ぎの和ちゃん。持ち球はドロップとシンカー。変化量の少ないシンカーなら変化後でも十分に対応できる)

梓「よし、唯先輩勝負です!」

紬「梓ちゃんが燃えてるわ……!」

唯「私もだよムギちゃん!いっくよ~!」ビュッ

梓「うりゃあっ!」キンッ

……

律「盗塁成功で一死二塁か……」

澪「ゲッツーの可能性はなくなったな。1打同点のチャンスだ」

唯「やるね、あずにゃん……!」

梓「唯先輩こそ……!」

梓(唯先輩の配球、どんどん良くなってる。初回とはまるで別人だよ……認めたくないけど、試合中に成長してる)

唯「ここは最後の切り札を使わせてもらうよ!」

梓「っ!?」

律「唯の奴……まだ切り札を隠し持っていたのか!」

唯「抑えのエース・あずにゃんをね!」バーン

紬「おお~!」

梓「……」

梓(私だけ作ってなかったわけじゃないんだ……よかったあ)ホッ

梓(って気を抜いちゃダメだ!今は試合中!)ブンブン

澪「唯の切り札か……どんな投手なんだ?」

唯「ふふふ、見れば分かるよ。あずにゃんの凄さが、ねっ!」ビュッ

ドオンッ

梓「なっ!?」

律「ひ、162km/hのストレート……?」

唯「それだけじゃないよ!」ビュッ

グググッ

澪「ナックルカーブ……?何て変化量だ!」

紬「それだけじゃないわ!見て、梓ちゃんのミートカーソルが」

律「小さくなってる……威圧感持ちか!」

梓「つ、強い……!」

唯「えへへ、あずにゃんは天才型&ダイジョーブ博士の手術に成功したからね!」

澪「すごい強運だな」

ストラーイク、バッターアウッ

唯「いえ~い♪」

律「三振……」

澪「あと一人、か」

梓「……」

紬「梓ちゃん……」

梓「ふ、ふふ、ふふふ……」

澪「ど、どうしたんだ梓」ビクッ

梓「……さすがです、唯先輩。まさかここまでとは思いませんでした」

唯「お!?あずにゃんまさかの敗北宣言!?」

梓「まさか……嬉しいんですよ、私は。本気でぶつかり合える好敵手と巡り会えて!」ゴゴゴ…

律(何言ってんだこいつ)

梓「切り札は……最後まで取っておくものですよね?」ニヤリ

澪「なっ!?梓にも隠し玉が!?」

梓「バッターあずにゃん3号に代わって……唯にゃん!」バーン

澪「……」

律「……」

紬「……」

梓「ちょっ!?せっかく盛り上がっているんですから黙らないで下さいよ!」

唯「あ、あずにゃん……私だけ、特別に作ってくれたの?」プルプル

梓「へ?」

唯「ありがと~あずにゃ~ん♪」ガバッ

梓「にゃあっ!?」

唯「えへへ~、愛い奴愛い奴」ナデナデ

梓「ふにゃあ……」

梓(澪にゃんを作成予定なのは黙っておこう……)

律「お~い、いちゃついてないで試合を再開しろ~」

唯「あっ、は~い」パッ

梓「あ……」ショボン

紬「唯にゃんってどんな選手なのかしら……」

澪「ああ、詳しく見れなかったから気になるな」

梓「唯にゃんはミート・パワー・走力がマックスで、チャンス5・代打○・サヨナラ男などを持った私の切り札ですよ」

唯「私『男』じゃないよ~」ブー

梓「そんなこと言われても……。本当はスタメンで使いたいんですけど、ここぞという時のために取っておいたんです」

梓(スタメンにしちゃうとあずにゃん軍団じゃなくなるしね)

律「へ~……強いなあ。でもいいのか?」

梓「何がです?」

律「いや、そんなこと教えたら敬遠するんじゃないか?一塁空いてるし」

澪「なるほど……律にしては的を射た意見だ」

律「何だとー!?」

梓「ふふっ、心配ありませんよ」

唯「そうだよ!敬遠なんてしない……私とあずにゃんの勝負の決着は、劇的でないと!」

梓「その通りです。唯先輩……私はホームランしか狙いませんよ?」ニヤリ

唯「奇遇だね、あずにゃん!私は三振しか狙わないよ?」ニヤリ

ゴゴゴ…

紬「二人とも、燃えているわ……!」

律「でも操作しているキャラが唯の操るあずにゃんと、」

澪「梓の操る唯にゃんってのはどうにかならないのか」

唯「行くよ、あずにゃああああああんっ!」

梓「返り討ちにしてあげますよ、唯にゃああああああああんっ!」

律「どさくさに紛れて何叫んでんだ」

……

梓7-6唯

紬「サヨナラホームラン、ね!」

律「ツースリー……追い込まれてから6球目」

澪「唯の配球は悪くなかった。でも梓の執念が……上回ったんだな」

梓「はあ、はあ……勝っ、た……」

唯「あずにゃん……」

梓「唯、先輩……」

唯「負けたよ、あずにゃん。さすがだね」スッ

梓「いえ……唯先輩も強かったです」ガシッ

紬「二人とも凄かったわ~♪」パチパチ

律「パワプロで深まる絆、か」グスッ

澪「何泣いてるんだよ律」グスッ

律「へへへ、澪こそ」

唯「よ~し、今度はムギちゃんも入れて総当たりしようよ!」

梓「いいですね!」

律「よ~し、じゃあプロ球団を使うか」

澪「うん、そうだな」

紬「私頑張る!」フンス!

唯「じゃあ私は楽天!いわくマー君がいるからね♪」

律「私は巨人!ボッコボコにしてやるぜ!」

梓(ダルビッシュ無双は基本だよね)

澪「おいおいお前ら……先にムギに選ばせてやれよ」

唯「あっそうだね!それじゃあムギちゃんどうぞ~♪」

紬「うん!えっと……あ、じゃあこの可愛いお星のチームにするわ!」

律「え……?」

澪「そ、それはやめたほうが」

梓(まさかのベイスターズ)

紬「そう……?あっ、じゃあこの子にするわ!赤いヘルメットを被った……」

唯「そ、それもやめたほうがいいかなあ。あ、あはは……」

紬「ええ~?」

梓(何だろう、ムギ先輩は弱小に惹かれるのだろうか)

唯「よっし、チーム決まったら早速試合だよ!夜は長いからね♪」

律「今度は負けないぜ梓あっ!」

梓「ふふん、何度来ても返り討ちですよ」

澪「打撃を向上しないとな……」ブツブツ

紬「えっと……こうかしら?」ガキインッ!


唯「パワプロやろーよ!」

終わり♪

~おまけ~

憂「お姉ちゃんが、負けた……?」

憂「……」

憂「ふふ、梓ちゃん……覚悟してね?」ニコッ

ガチャッ

憂「お姉ちゃん?」

唯「あっうい~。どうかしたの?」

憂「お風呂の準備出来てるから、そろそろ」

唯「あ、そうか!じゃあみんな、ちょっと行ってくるね~」

律「おお、ゆっくりしてこい」

澪「唯が戻ってくるまで休憩だな」

紬「そうね~」

梓「じゃあ私はチーム編成を……」

律「元気だな~、梓は」

憂「……」

澪「憂ちゃん、どうかしたの?」

憂「いえ、私もパワプロやりたいなあ~って///」テレテレ

律「おっ、そうか!憂ちゃんなら大歓迎だよ!」

紬「ここに座って♪」

憂「ありごとうございます!」

梓「じゃあ憂、私とやろうよ!」

憂「うん♪私もアレンジチーム持ってるから勝負しようよ!……本気、でね」

梓「!?」ゾワッ

澪「どうかしたのか梓?」

梓「い、いえ……(何今の……憂から?)」

憂「うふふ……」

律「憂ちゃんのチームか……」

紬「どんなチームなのかしらね?」

1、お姉ちゃん二
2、お姉ちゃん右
3、お姉ちゃん中
4、お姉ちゃん一
5、お姉ちゃん遊
6、お姉ちゃん左
7、お姉ちゃん三
8、お姉ちゃん捕
9、お姉ちゃん投

律「」

澪「」

紬「」

梓(突っ込んじゃダメだ、突っ込んじゃダメだ)

憂「え~と、このお姉ちゃんよりこっちのお姉ちゃんのほうがいいかな?外してゴメンね、お姉ちゃん……」

梓(突っ込んじゃダメだ、突っ込んじゃダメだ。選手全員A以外の表示が見えなかった気がするけど、突っ込んじゃダメだ)

憂「よし、さあ勝負だよ梓ちゃん!」

梓「う、うん」

プレイボール!

ゲームセット!

憂11-0梓

梓「」

律「い、一回コールド……」

澪「つ、強すぎる……」

憂「ふう。お疲れ様、梓ちゃん♪」

梓「う、うい……」

憂「どうかしたの?」

梓「い、いったい何が起こったの?憂の選手が圧倒的に強いのは分かってたけど……」

憂「うん!お姉ちゃんだからね、み~んなオールA以上だよ♪」

律(パネエ)

紬「それにしても……まるで梓ちゃんの投げる球が分かっているような攻撃だったわね」

梓「そ、そうだよ!私が憂の球を打てなかったのは分かる。だって先発の唯先輩は165km/hで4球種、それも全部変化量5以上だったし……」

澪(信じられん)

憂「あはは、簡単だよお。梓ちゃん、投手にリリース○をつけてないでしょ?」

梓「え?ま、まさか……」

憂「それじゃダメだよ、全然ダメ。直球か変化球か……バレバレだよ?」

律(マジか)

憂「それと球の回転が分かりやすい変化球は投げちゃダメだよ?決め球を設定するのも論外」

梓「そ、そんな……」ガクッ

紬「えっと……どういうこと?」

澪「つまり憂ちゃんは、投げるモーションで直球か変化球を見抜き、さらに実際の球の回転で変化球の球種を見破っていたんだ……」

律「か、勝てるわけねえ」

ガチャッ

唯「ふい~、いい湯じゃった!……あれ、みんなどうしたの?」

憂「何でもないよ、お姉ちゃん。……それじゃあ私は失礼しますね?」ニコッ

澪「あ、ああ」

憂「梓ちゃん、再戦いつでも待ってるよ」ボソッ

梓「!?」

憂「ふふ……」

梓「……」

梓(……負けた。中学最強、そして軽音部最強のパワプラーだったこの私が完膚なきまでに、負けた)

梓(再戦待ってるよ、か)

梓「……ふふ」

紬「あずにゃん?」

梓「ふふふふ……あはははは!」

澪「ひっ!?あ、梓が壊れたあっ!?」

梓「……やってやるです!目標は高ければ高いほど……超える価値があります!」ドーン

律「お、おい……まさかお前、憂ちゃんに勝つ気か?」

梓「当たり前です!さあ皆さん、今から徹夜で特訓ですよ!」

唯「ほえ~、あずにゃん燃えてるねえ」

紬「頑張って梓ちゃん!」

澪「憂ちゃんを倒す、その日まで……か」

終わり!

こんなに時間かかるとは思わなかった…
さるさん4回も喰らったし。まあそのおかげでおまけ書く時間ができたけど

もっと細かいテクニックや安打製造機和ちゃん、改造厨純ちゃんとかも書きたかったけど、限界なんでこの辺で

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