咲「洋菓子店リッツ」 (88)

ID:UBif9s5t0の代行やで~

咲「ありがとうございましたー」

咲「ふう…」

美穂子「お疲れ様。はい、お茶」コトッ

咲「ありがとうございます。材料はまだありますか?」

美穂子「大丈夫だとは思うけど、一応補充した方がいいかも」

咲「クリスマスですからね。足りなかったら明日の分を使って、夜までに予備を仕入れておきます」

美穂子「そう、お願いね」

咲「ケーキやお菓子作りは美穂子さんの方が多くやってるから、こっちは任せて下さい」

美穂子「あら、そうだったかしら」

池田「にゃー……」カランカラン

咲 美穂子「「いらっしゃいませ」」

池田「キャプテン!」

美穂子「あら、華菜」

咲「池田さん、これですよね?出来てますよ」

池田「おお、よくやったし!」

美穂子「あ、いけない!スポンジが焼ける時間だわ!それじゃあ、また今度ね、華菜」

池田「はい!」

咲「1300円です」

池田「んー……」

咲「どうしたんですか?」

池田「これだけで足りるか心配だし。ほかに小さいのでいいから何かないか?」

咲「小さいのですか?えっと、傷みやすいから余ったら駄目ですよね……それなら」

咲「このチーズケーキはどうですか?これなら食後やケーキの後でも全部食べられますし」

池田「なんか軍艦巻みたいだし……」

咲「あはは…よく言われます」

池田「気に入ったし。これを六個頼む」

咲「はい。1600円です」

池田「600円?」

咲「家族は大切にして下さいね?」

池田「…言われなくても分かってるし!」

池田「丁度」

咲「ありがとうございました」

池田「……受けが良かったら…来年も頼む…」

咲「はい、お待ちしています」ニコッ

池田「うっ……フン!」

池田「……宮永、早くしないと誰かに奪られるぞ」カランカラン

咲「……言われなくても分かってますよ」

―――――
咲「もしもし、有珠農場さんですか?はい、はい。そうです」

咲「夜までに追加で仕入れたいんですけど、大丈夫ですか?そうですか。はい、お願いします」ピッ

咲「美穂子さん、仕入れの電話しておきましたよ」ガチャ

美穂子「きゃっ!?あ、ああそうなの、ありがとう。誰かお客様は来た?」

咲「ええ、二人ほど。ケーキとクッキーを買っていかれました」

美穂子「そ、そう」ササッ

咲「…何してたんですか?」

美穂子「な、何もしてないわよ?ケーキを作っていただけ」

咲「そうですか……?まあいいですけど。少し休憩したらどうですか?今日はまだまだ来そうですよ」

美穂子「そうね、もう少ししたら休憩するわ」

咲「あの、それと…今日の夜は、何時までですか?」

美穂子「今日は十時まで開けておこうと思ってるけど、予定があったの?それなら別に私が」

咲「い、いえっ!大丈夫です、前もって今日は空けておいたので」

咲「それより、夜ご飯はどうするんですか?」

美穂子「お弁当を作ってきたから、それを食べようと思っていたのだけれど」

咲「そうなんですか」

美穂子「宮永さんはどうするの?」

咲「私も、遅くなるかもと思ってお弁当を」

美穂子「あら本当?それじゃあ、一緒に食べましょうか」

咲「はい!」

―――――
久「さて……」カランカラン

咲「いらっしゃいませ…部長」

久「久しぶりね、咲」

咲「ですね。最近来ませんでしたね」

久「仕事が忙しくてねー…ねえ、相談があるのだけど」

咲「どうしたんですか?」

久「実は告白されちゃって…色々用意されてたみたいだし…今ちょっと待たせてるのだけど」

咲「相変わらずモテますね」

久「言ったら悪いけど、好きでもない人から告白されても…少しは嬉しいけど、困るのよ」

咲「それで、相談って何ですか?」

久「断るのだけど、向こうの用意とかもあって、ただ断るのも気が引けるから贈り物もしようと思うのよ」

久「それでここに来たの、何かいいものは無いかしら」

咲「うーん……無難に…クッキーとか…ですか?」

久「そうよねえ…そんなところよね…あ、でもクッキーにもう一アクセント欲しいわね」

咲「それなら、お花の付いたセットはどうですか?」

久「あら、そんなのがあるの?」

咲「はい。これなら、妥当なところで収まると」

久「まあ、そうねえ…期待させないけど軽くもない…妥当ね。よし、それにするわ」

咲「はい。五百四十円です」

久「カードでいい?」

咲「はい。ありがとうございました」

久「ありがとう。あ、それと」

咲「はい?」

久「…やるんでしょ?今夜」

咲「……はい」

久「だと思った」

咲「超能力者ですか?」

久「まさか。勘よ」

久「頑張りなさい。あ、成功率だけど、私の見立てでは……」

咲「半々でしょう?」

久「あら」

咲「成功するか失敗するか、告白したらどっちかの回答ですから」

久「なんだ、つまらないわね。まあいいわ、必ず半々にしなさい」

咲「はい。必ず今夜で決めます」

久「私が言えたことじゃないかもしれないけれど…応援してるわよ」

咲「ありがとうございます」

―――――
咲 美穂子「「いただきます」」


咲「美穂子さんのお弁当おいしそうですね」

美穂子「宮永さんのもおいしそうね」

咲「今は白菜がおいしいので、冬瓜と一緒に中華風の炒め物にしてみました。どうぞ」

美穂子「あら、ありがとう。じゃあ卵焼きをどうぞ」

咲「ありがとうございます」

美穂子「あーん」

咲「!?」

咲「あ…あー、ん///」パクッ

美穂子「どうかしら?」

咲「おいしいです///」

美穂子「良かった」

美穂子「白菜おいしいわ」

咲「はい」

咲 美穂子「「ごちそうさまでした」」

咲「もうそろそろで材料が届くと思うので」

「こんばんは、有珠農場です」ガチャ

咲「噂をすれば…はーい」

咲「お店の方をお願いします」

美穂子「ええ」

―――――
由暉子「遅くなってすいません。卵と牛乳の入手に手間取ってしまい」

咲「いえ、別に…って由暉子ちゃん!どうしたの?」

由暉子「お久しぶりです。少し前からこちらに異動していたので」

咲「そうなんだ、お疲れさま。お仕事大変だよね」

由暉子「いえ。薄農場では農作物にシーズンがありますし、畜産は私の部門ではないので」

由暉子「それよりは洋菓子店の方が大変そうです。ところで、クリスマスケーキはまだありますか?」

咲「うん、あるよ。見て行って」

由暉子「ブッシュ・ド・ノエルやダンディーケーキ…本格的で種類もありますね」

咲「教会が近くにあるんだ。基本的に年毎に同じものは出さないんだけど、これは要望が多くて…」

由暉子「そうですか。きっととても手間と愛の込められたおいしいケーキなのでしょうね」

由暉子「皆さんの分と…クリスチャンでない方もいらっしゃいますから…」

由暉子「ブッシュ・ド・ノエルとシュトレン、それとこちらの普通のクリスマスケーキをお願いします」

咲「ありがとうございます。3900円です」

由暉子「どうぞ」

咲「はい、丁度ですね」

由暉子「また今度休みの日に来ます」

咲「うん、また今度ね。ありがとうございました」

由暉子「……」

由暉子「あなたの行いは必ずや花を咲かせ幸福の果実を結ぶでしょう」

由暉子「あなたに神の祝福があらんことを。メリークリスマス」

咲「メリークリスマス」

―――――
咲「8時……予約分はだいたい捌けたけど、まだ来るかなあ」

優希「頼もー!」ガランガラン

咲「優希ちゃん。どうしたの?」

優希「うっかりケーキ買い忘れたんだじぇ。余りはあるかい、咲ちゃんや」

咲「大丈夫だよ。でももう少し後だったら売り切れてたかも。良かったね」

優希「ギリギリだったか……お、これがいいじぇ。親爺!一丁!」

咲「私は親爺じゃないし、ラーメン屋さんでもないよ。1300円ね」

優希「安いな!…おや、花があるじょ?」

咲「うん。最近、一緒に置くようになったんだ」

咲「焼き菓子とのセットにしたり、たまにゼリーに入れたりするかな」

咲「今日も部長がクッキーとのセットを買っていったんだよ」

優希「部長…どうせキザったらしく振るのに使うんだじぇ」

咲「私が薦めたんだけど…目に浮かぶなあ」

優希「これもらうじぇ。おいくら万円になるのか?」

咲「いいよ、あげる」

優希「いいのかい?遠慮しないじぇ…?」

咲「うん。特別に、ね?」

優希「じゃ、もらっていくじぇ。あ、おねーさんとはどうなったんだじぇ?」

咲「う…き、今日だよ、今日///」

優希「!」

優希「楽しみにしてるじぇ~。ほいじゃな、咲ちゃん」

咲「うん、じゃあね、優希ちゃん」

―――――
咲「あと六つかあ…作り過ぎちゃったかな」

まこ「うーす」カランカラン

咲「まこさん。どうしたんですか?」

まこ「ケーキ追加じゃ。三つ買っていくけえ」

咲「昼の分じゃ足りなかったんですか?」

まこ「今年はさまよえる孤独な男共が予想外に来てのう。ストックが尽きそうなんじゃ」

咲「はいどうぞ」

まこ「助かる。一万でええかの?」

咲「大丈夫ですよ。はい、6100円」

咲「24時間耐久青天徹麻でしたっけ?お疲れ様です」

まこ「……眠気覚ましは」

咲「コンビニでどうぞ」

まこ「はぁ……そっちも頑張りんさい、ほいじゃあの」

咲「メリークリスマース……背中が煤けてるなあ……」

―――――
裕子「開いてますかー…?」カラン

咲「いらっしゃいませ」

マホ「こんばんは!ハッピーメリークリスマスです宮永先輩!」バッ

咲「メリークリスマス、マホちゃん、裕子ちゃん」

裕子「メリークリスマスです…うわぁ、殆ど売れてる」

咲「二人とも、こんな遅くまで街にいていいの?」

裕子「私は帰ろうって言ったんですけど、マホがどうしてもって聞かなくて…」

マホ「一日中二人でお出かけしてたんですー」

咲「そうなんだ。良かったね、マホちゃん」

マホ「はい!」ニコニコ

裕子「まったく……」

咲「二人ともルームシェアだっけ?」

裕子「はい…朝から晩までつきっきりで世話させられて…」

咲「あはは、お疲れ様」

マホ「宮永先輩、アレは…」ヒソヒソ

咲「バッチリ、よく出来てるよ」ヒソヒソ

マホ「ありがとうございますっ!」ヒソヒソ

裕子「遅くなったなあ…あ、宮永先輩、折角なんで私もこのダブルチーズケーキとふくたまの九個箱を」

咲「ありがとう、裕子ちゃん。960円ね」

裕子「えーと…あちゃあ……1000と10円でお願いします」

咲「はい、50円。ふふふ、相変わらずの性格で安心しちゃった」

裕子「なんですか、それ」クス

マホ「宮永先輩宮永先輩っ!」

裕子「お、おいマホ」

咲「はいはい、どうぞ。落とさないように、出来るだけ揺らさないように気を付けてね」

マホ「むー、マホはもうあの頃のマホとは違います!」プンスコ

裕子「逆にどこが違うんだ?」

マホ「ぜ、全部ですよ全部っ!」

裕子「ほーぉ?」ニヤニヤ

咲「まあまあ」

咲「頑張ってね、マホちゃん」ヒソヒソ

マホ「はい!マホ頑張ります!」ヒソヒソ

咲「二人とも、もう遅くならないうちに帰った方がいいよ」

裕子「あ、そうですね。ほらマホ、帰るぞ。宮永先輩、失礼します」

咲「うん。二人とも気を付けてね。メリークリスマス」

マホ「メリークリスマスです!失礼します!」カランカラン

咲「頑張ろうね、マホちゃん」

―――――
咏「やっほー」カランカラン

咲「いらっしゃいませー…」

咏「そんな尻すぼみだと、招かれざる客みたいになるからやめてくんねえかなぁ」

咲「ごほんごほん、失礼しました。何にします?」

咏「酒に合う感じのクリスマスケーキをホールで二つ」

咲「お酒に…もう少し詳しく絞りたいんですけど、日本酒等ならこのロールケーキとか」

咲「クリームが多いケーキならさっぱりとした日本酒は全般合うんじゃないでしょうか」

咲「まあ、そもそもクリスマスケーキはここにある三品しか無いんですけど」

咏「んー…片っぽはウィスキーとか?もう一つはワインとかシャンパンとかの軽めで考えてんだけど」

咲「ウイスキー等の洋酒なら、チョコケーキでどうでしょう。丁度ありますし」

咲「シャンパン系なら断然、このフルーツがたっぷり盛りつけられたケーキですね」

咏「んじゃあそれで。ほいカード」

咲「はいどうも。プロの皆さんと飲み会ですか?」

咏「まあねぃ。こんな時間でもないと都合が取れないんだよねぃ…参った参った」

咏「それにいざ始めようと思ったらノヨリさんケーキ買えてねえでやんの、まあ仕方ないけど」

咏「しかもかいのんときたら年代物の洋酒ばっかかき集めてきたもんでねぃ……」

咏「こちとらそろそろアルコール受け付けない体になってきてるってのにさー」

咲「大変ですね……あれ、じゃあもう一つは……まあまあお幸せそうで」

咏「んー?まあねぃ……羨ましい?ねえ羨ましい?」

咲「羨ましいです」

咏「だろうねぃ…ま、その様子じゃ今夜辺りリーチかけるんだろうけど…おっと、意外と重っ」

咲「大丈夫ですか?二つも持てますか?」

咏「大ぁい丈夫だって…それより、頑張れ…ってのもアレだけど、成功するといいな、知らんけど」

咲「ありがとうございます……そんなに分かりやすいですか?」

咏「一言で言うなら……聴牌してリーチかける雰囲気?」

咲「そんなに……」

咏「んじゃあお疲れ……あ、そうそう。いつでも門戸は開いてるぜぃ」カランカラン

咲「…………期待なんてしないで下さいよ……」

―――――
咲「クリスマスケーキはあと一つ…」

美穂子「9時と30分過ぎ…もうそろそろ潮時かしら」

咲「そうですね。幸いケーキも残ったのは2つ、これなら分けて持って帰れる量ですね」

咲「クリスマスケーキがホールで残ってますけど……」

美穂子「そうね…どうしようかしら」

照「咲!」ガランガラン

咲「わっ、お姉ちゃん!?どうしたの、慌てて」

照「良かった…いつもより遅いから心配で…父さん達も心配してた」

咲「連絡忘れてた…ごめんね。ありがとう」

照「咲が無事ならそれでいい……何時に帰ってくるの?」

咲「11時は過ぎると思うから、先に帰って、皆寝てて」

照「分かった。……そのケーキ」

咲「?」

照「予約分なの?」

咲「ううん、店頭分だよ」

照「頂戴」

咲「え…まあいいけど……1300円だよ」

照「はい」

咲「はい……ケーキ買ってなかったの?」

照「……うん。余ってて良かった…じゃあ咲、帰ってくる時は気を付けて」

咲「うん。お姉ちゃんも気を付けてね」

照「うん。福路さん、お願いします」

美穂子「はい。お気を付けて」

―――――
照「ということ」

父「そうか……まあ、何事も無くて良かった…しかしな…」

父「……3ホール目だぞ?」

照「余ってたから…………それに、私にはもうこれぐらいしかしてあげられないから」

父「成程……」

母「……」

父「……3ホール目だぞ?」

照「……1人1ホールで」

母「……」

―――――
咲「クローズド、っと。美穂子さん、明日の分の生地作りはどうしましょうか」

美穂子「今日はもう遅いから。明日の開店を遅らせて、その間にやりましょう」

美穂子「一晩寝かせなきゃいけないものは、仕方ないから明後日ね」

咲「はい」


咲「和ちゃんからメールが来てる。今オーストラリアにいるんだっけ」

和『部長から話は聞きました。頑張ってください』

咲「……これだけ?まあそっちの方が和ちゃんらしいかな」

咲(頑張るよ)

咲「美穂子さん、話があります。5分後、お店の裏で待ってます」

―――――
咲(私の青春……私が争って、卑怯な手を使ってまで手に入れたかった権利……)

咲(これまでの努力、時間、想い……全部ここまで)

咲(ここからは、ただあの頃のままで……好きな気持ちを伝えよう)グッ

咲(部長……和ちゃん……池田さん……)

美穂子「宮永さん」

咲「美穂子さん」クル

美穂子「話って、何かしら」

咲「はい……実は、お願いがあるんですけど」

美穂子「お願い?ええ、私に出来ることなら」

咲「……今から、告白します。聞いてくれますか?」

美穂子「っ!」

咲「駄目なら帰ります」

美穂子「え、ええっと……その…………」

咲「……」

美穂子「……」

咲「……すいませんでした」スタスタ

美穂子「ま、待って!」

咲「……」ピタ

美穂子「ご、ごめんなさい、少しビックリしただけなの」

美穂子「聞きます……告白……」

咲「ふぅ……これを断られたらどうしようかと思いました。ありがとうございます」ニコ

美穂子「……」

咲「好きです。ずっとそばにいて下さい」

咲「狂おしいほど好きです。もう美穂子さんがいないと生きていけません」

咲「あの日からずっと好きです。ずっとずっと好きです」

咲「誰よりも好きです。この想いの強さには自信があります」

咲「笑った顔が好きです。一生懸命な姿が好きです。奇麗な目が好きです」

咲「ケーキを作る美穂子さんが好きです。作らなくても好きです。どんな時でも好きです」

咲「優しいところが好きです。あったかいところが好きです。しっかりしたところが好きです」

咲「その性格が、美穂子さんを美穂子さんにする全てが好きです」

咲「ずっと一緒にいたいです。隣にいたいです。笑って笑わせて笑い合っていたいです」

咲「一緒にお菓子を作って一緒に売って、一緒に笑顔になって一緒に皆を笑顔にしたいです」

咲「楽しいこと嬉しいことを一緒に楽しんで嬉しんで、悲しいこと辛いことを一緒に背負いたいです」

咲「何もかもを二人で一緒にして、味わって、受け止めたいです」

咲「絶対に幸せにします。絶対に絶対に幸せにします。私なら出来ます」

咲「美穂子さんが私を選んで良かったって心から思える以上に幸せにします」

咲「絶対に後悔はさせません。幸せにします」

咲「……好きです。私は、あなたが好きです」

咲「好き、なんて言葉が表せないぐらい好きです」

咲「だから、私と一緒にいてほしい。私が隣にいたい」

咲「私と、け

美穂子「待って」ピトッ

美穂子「ごめんなさい。私…甘えてばかりで、自分からは何かしようとか言おうとか……」

美穂子「自分より年下の子に言わせるなんて、駄目ね。ごめんなさい」

美穂子「あの日……私が勇気を出して、失敗した時に慰めて……」

美穂子「私の眼を綺麗って言ってくれて…それからも私についてきてくれて、お店も一緒にやってくれて」

美穂子「自分の進路を蹴ってまで私のために……悲しかったけど……嬉しかったわ」

美穂子「宮永さんのことを、私は好きになりました」

美穂子「今も、きっとこれからもずっと好きです」

美穂子「私と、結婚を前提にお付き合いして下さい」

咲「…はいっ」

咲「こちらこそ、喜んで」ニコッ

美穂子「……本当はね、昨日までは、今日、告白しようと思ってたの」

美穂子「でも今日になって怖くなって…もし万が一、自分の勘違いだったらって思うと…」

美穂子「だから、告白の代わりにこれを作ったの。受け取って?」スッ

咲「これは…ケーキですか?それと…マフラーと手袋」

美穂子「手作りだから、気に入ってもらえるか分からないけれど…」

咲「そんな……美穂子さんの心のこもった手作り、気に入らないわけないですよ」

咲「似合いますか?」

美穂子「ええ、とっても」

咲「あったかい……ありがとうございます」

美穂子「どういたしまして」

咲「えっと……お…お返しに…これ、受け取ってください!」チュッ

美穂子「!」

咲「また明日!おやすみなさいっ!」

美穂子「おやすみなさい…」

―――――
咲「あれ、開いてる」ガチャ

咲「ただいまー……」

照「おかえり、咲」

咲「お姉ちゃん、どうしたの?」

照「咲を待ってた」

咲「寝てて良かったのに……ありがとう」

照「…何かいいことでもあった?」

咲「うん。とってもいいこと」

照「そう…ケーキ一緒に食べない?」

咲「うん、いいよ。けど私は余ったのと貰ったケーキとあるから、お姉ちゃんは全部食べちゃっていいよ」

照「え……う…うん…」

―――――
照「寒かったでしょう。はい、ミルクティー」

咲「ありがとうお姉ちゃん」

照「……」ズズッ

咲「……」ズズッ

照「……ケーキ、おいしかったよ」

咲「そう、良かった」

照「一番に食べたよ。余りにおいしいから、全部食べちゃった」

咲「そう…え?」

照「ん?」

咲「全部食べたの?」

照「うん」

咲「ケーキがあるって言ったよね?」

照「あっ…それはその…父さん達が買ってたの知らなくて」

咲「あんな時間にお店に来たのに?」

照「え……っと」

咲「お姉ちゃん、どうしてケーキを買っていったの」

照「それは……」

咲「それは……私のために?」

照「…………うん……」

咲「売れ残ると私が困るだろうから、お姉ちゃんが買っていったの?」

照「……」コクリ

咲「お姉ちゃん、私はお姉ちゃんに何かしてほしいわけじゃないよ。こんな気遣いは、ちょっと……」

照「だって…………もうこれぐらいしか出来ないから」

照「一番大切な時期に…一番一人にしちゃいけない時に…私は咲を…………」

照「今はもう、昔に咲がしてほしかったこと、必要だったことは、もうしなくていいし、不要だし……」

照「……咲に何かしてあげたくても、もう……」

咲「お姉ちゃん……」

咲「……やっぱりケーキは後。今からお風呂に入るから、お姉ちゃんも一緒に入って」

照「……うん」

―――――
照「目を瞑って」

咲「んー」ギュー

照「流すよ」ザー

照「はいおしまい」

咲「ふう…背中流して」

照「うん」


照「はい終わり。前は自分でやってね」

咲「うん」


咲「お姉ちゃん、後ろ向いて」

照「?」クルッ

咲「背中流してあげる」

照「……ありがとう」

咲「前洗おうか?」

照「いや、いいよ……さっき入ったし」

咲「このまま頭も洗うよ」

照「うん……え」


咲「~♪」ワシワシ

照「……」


咲「お湯掛けるよー」

照「ん」

咲「はい、終わり。湯船に浸かって」

照「先にいいよ」

咲「お姉ちゃんが先に入って」

照「分かった…………これでいい?」

咲「うん」

咲「おじゃまします」ザザー

照「え、ちょ」

咲「一度、こうして入ってみたかったんだ」ギュム

照「……」

咲「気持ちいい…このまま寝ちゃいそう…」

照「このまま寝る?」

咲「駄目だよ、明日もお店があるんだから……はふう……お姉ちゃん」

照「何?」

咲「お姉ちゃんの鼓動が伝わってくる」

照「少し恥ずかしい…」

咲「……子供みたいにこうやって仲良くしてたら、それでいいんだよ」

咲「変な気を回したり、物で何かをどうにかしてほしいんじゃない」

咲「こうやって、素直な気持ちをあげて、もらって……それが、いいの」クル

咲「大好きだよ、お姉ちゃん」ギュッ

照「咲…うん。私も」ギュゥ

咲「……悲しいね」

照「こんなことが、分からなかった……咲との距離をまだ掴めてない……」

咲「悲しいよね……言葉にしないと分かってもらえない。意識しないと分からないって」

照「行動で示さないといけない…それさえ間違える…」

咲「声に出さないといけない……気持ちが気持ちのまま伝わればいいのに……」

照「……でも、今だけは分かるよ」

咲「お姉ちゃん……!」

照「うん……今度は間違えないから…………」

―――――
咲「そろそろ出ようか」

照「うん」


照「ケーキ……」

咲「あとどれぐらい残ってるの?」

照「一ホールの4分の1ぐらい」

咲「…………うん、頑張って。私はこっちを食べるから」

照「うん……お店の余り?」

咲「そうだよ。それと……」

照「それと?」

咲「大切な…貰いもの」

照「…そうなんだ」

咲「あげないよ」

照「貰わないから……美穂子さん?」

咲「分かる?」

照「なんとなく、そうかな、って。良かったね」

咲「うん。いただきます」

照「いただきます」

―――――
咲「ごちそうさまでした」

照「……ごちそうさま…………でした………………うっ」

咲「大丈夫?」

照「大丈夫……多分」

咲「紅茶淹れてあげるね」

照「お願い……」


照「ふう……」

咲「おいしい?」

照「うん……上手になったね」

咲「練習したからね……本当に大丈夫?」

照「なんとか……」

咲「1ホールと半分食べたんでしょ?そんなに無理しなくても……」

照「お店の人達は皆今日食べるために作ったんだから、残したら悪い……それに」

照「やっぱり、咲のケーキがおいしかったから、1ホール食べられたんだ」

咲「お姉ちゃん……」

照「さて…咲はそろそろ寝た方がいいんじゃない?」

咲「ううん。お姉ちゃんが寝るまで待ってる」

照「無理しないで……」

咲「もうひとつだけ……してほしい事があるの」

照「…分かった。もう少し待って」

―――――
照「入ってきていいよ」

咲「おじゃましまーす……」モゾ

咲「あったかい……お姉ちゃんっ」ダキ

照「寒かった……でも今は温かい」

咲「嬉しいなあ……今日はいっぱいいいことがあったんだよ」

照「そうなんだ……何があったの?」

咲「知り合いや友達がお店に来てくれたんだ」

咲「優希ちゃんは友達とクリスマス会、楽しそうだったよ」

照「そう」

咲「染谷先輩は雀荘の経営で忙しそうだった。苦労人なのは変わってなかった」

照「うん」

咲「由暉子ちゃんも来てくれたんだよ。北海道で農場に就いてたけど、こっちで新規に開いた農場に異動だって」

咲「荷物の配達ついでに同僚の人達にケーキを買って行って…優しいところはずっと同じだった」

照「そうなんだ」

咲「和ちゃんは今オーストラリアで家族旅行なんだって。向こうのサンタは半袖らしいよ」

咲「メールは簡潔で、でも私の応援してくれてるんだって思うと、優希が湧いてくるんだ」

照「良かったね」

咲「うん。部長は部長だった。でも、もうすぐ課長になるかもって」

咲「今日も告白を断るんだ、って言ってた。そろそろ良い人を見つけたらいいのに」

咲「でも仕事が楽しいんだろうなあ。それと、私を元気づけてくれた」

咲「部長はいつも私の味方だった。あの時も……優しい人」

照「うん…そうだね」

咲「そうそう、三尋木プロも来たんだよ」

照「三尋木プロが?」

咲「うん。おなじみの皆さんで宴会やるんだー、って。でも今頃は二人きりなんだろうなあ」

照「アナウンサーの人と…」

咲「それ用のケーキを買って行ってた。食べきれるのかな……」

咲「……それと、まだ待っててくれてる……どうしよう、お姉ちゃん」

照「咲のやりたいようにしたらいいよ」

咲「でも……お店をやっていたいし、麻雀もしたい」

照「どっちか選ばないと……それまでは皆に相談して、沢山悩むといいよ」

照「そうやって出した答えには……多分、最後にどんな結末になっても満足するから」

咲「うん……ありがとう、お姉ちゃん」

照「ううん……」

咲「それでね、裕子ちゃんとマホちゃんが来たんだ。一日中デート」

咲「マホちゃんは予約してたケーキを取りに来て……きっと今夜、頑張ったんだと思う」

照「うまくいってるといいね」

咲「多分大丈夫だよ。あの二人なら…お似合いだし」

咲「それと、池田さんが来て……家族のために、頑張ってるみたい」

咲「ケーキを取りに来て、他にも買って行って……わたしを動かしてくれた」

咲「だから……頑張ったよ」

照「そう……」

咲「そうしたら…告白されちゃった…結婚を前提にお付き合いして下さい、って」

照「!」

咲「嬉しかった……ようやく始まったんだ…って思った」

照「……良かったね……おめでとう、咲」

咲「ありがとう……誰よりも、お姉ちゃんにその言葉を言ってもらえたのが、嬉しい」

咲「今日が一番幸せな日だったよ……こうしてることも…………」

照「私も、幸せだよ……咲が幸せを掴み取ってくれた……これからもっと幸せにね、咲」

照「おやすみなさい、咲……」

咲「おやすみなさい、お姉ちゃん…………」

――――――――――
咲「あ、お、おはようございます…美穂子さん///」

美穂子「ええ、おはよう」

咲(あれ……普通)

咲「昨日のケーキ…最高でした」

美穂子「あらそう?言ってくれたらいつでも作ってあげるわよ」

咲(うーん……私が意識しすぎてるだけなのかな……)

美穂子「今日も頑張りましょう、みや……さ…………咲///」

咲「!……は、はいっ!頑張りましょう!」

美穂子「今日も、今日からもよろしくお願いね、咲」

咲「はい。ずっと一緒です、美穂子さん」

咲「これから相談とかもしますから、お願いします。美穂子さんも何かあったら」

美穂子「ええ、勿論、分かっているわ。さて、今日の分を作りましょうか」

咲「はい!」


咲「洋菓子店リッツ、あなたの気持ちを応援します。いらっしゃいませ!」

終わり

いつぞや投下したSSがアレ気で、あまりに咲さんに申し訳ないので
多く粗はあるけれども投下した次第

設定として、マホ裕子が大学生、それ以外は社会人
一応、東京を舞台にしています

あと、リッツというお店は実在したり

(今頃「やべっそういえば名前が池田になってた」とか言えない……)

いつぞやのSSって照「せめて、胡蝶の夢」これ?

>>86
そうそうそれです

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月14日 (土) 16:25:52   ID: 6DDHqMzR

なんでこんな高評価なのか意味がわからん

作者が自分で入れてるの?

2 :  SS好きの774さん   2014年02月02日 (日) 04:23:04   ID: 9SMskVc-

自分がツマンネって思ったss=ツマンネssって…
どんだけ自分の目に自信があるんだよ

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