男「彼女の記憶を忘れられたらなー」 (10)
2013年9月4日
老人「その願い、叶えてやらんこともない」
男「え?」
男「ホームレスか…?」
老人「ふぉふぉふぉ、人はそう呼ぶのう」
男「…なんだよ」
老人「まあ、ちと儂の昔話に付き合ってくれ。それが条件だ」
面白そうだと思ってしまった。
きっと彼女というものに絶望しているからか、
気を紛らわせてくれるなら何でも良い。
老人「その前に…」
そういうと老人は妙な身振り手振りをし始めた。
男「え?」
老人「酒とつまみじゃ」
男「図々しいな…」
老人「金ならあるぞい」
男「いいよ、自分より稼ぎの低いやつに出させるのは癪だ」
老人「ふぉふぉふぉ、損する性格じゃ」
男「よく言われる。買ってくるから逃げるなよ」
老人「こっちのセリフじゃ、逃げるなよ」
男「逃げねーよ」
―15分ほどで買い物を済ませて老人の元へ戻る
男「…いない」
老人に遊ばれたか、何か癪だな…。
老人「何か癪だなと思っておるな?ふぉふぉ」
男「えっ?」
老人「トイレへ行ってただけじゃよ」
男「…こいつ」
男「ほら、買ってきたぞ」
老人「ふぉふぉ、うむうむ、これじゃこれ」
そういうと老人は日本酒の入った小瓶を開ける。
老人「さて、なにから話そうかのう…」
男「もったいぶるな」
老人「まあまあ、この歳だものでな」
――――――30分後
老人「というわけでな、若者は無事に結ばれたんじゃよ」
男「…それだけの話?」
老人「うむ、他にあるか?」
男「…」
老人「どうじゃ、儂が話している間、彼女のことは忘れられただろう」
男「…」
老人「ふぁふぁふぁ、冗談じゃよ」
老人「して、お前さんの彼女は今何をしておるんじゃ?」
男「さあね、メールも来ないし電話をかけてもでない。浮気でもしてるんじゃないかな」
老人「儂がお前さんの彼女ならそんなこと出来んのう」
男「気持ち悪いこと言うな」
老人「そういう人柄ってことじゃよ」
男「…はぁ、でも俺の彼女とは関係ないだろう」
老人「何故、忘れたいんじゃ?」
男「…」
老人「楽しい思い出ばかりだからじゃろ?」
男「…」
老人「最初から出会わなかったことにすればいい」
男「ああ…」
老人「期限は1年じゃ」
男「1年?」
老人「1年間だけ忘れられる。彼女のことだけすっぽりとな、但し1年後に全ての記憶が蘇る」
男「へぇ…」
老人「いいかの?」
男「いいよ」
老人「では目を瞑っていろ」
老人が俺の額に指を当て、妙なことをぶつぶつと言い出す。
急に頭が痛くなってその場に倒れこんだのがわかった。
男「う…」
男「寝てたのか、何か変な夢だったな」
夢、そう、夢だった。
携帯を手に取る、携帯のディスプレイの光も寝起きには眩しい。
メールが着ていた。
男「誰だっけ…登録してあるってことは知り合いなんだよな…」
メール:女「今日メール返せなくてごめんね!電話もしてもらったのに、残業してて出れなかった…」
男「…何の話だろ」
男「そもそも誰だろな…」
男「とりあえず返そう」
メール:男「えーと、誰かと勘違いしてます??今日あなたにメールを送った覚えないんですけれども」
男「う…」
男「寝てたのか、何か変な夢だったな」
夢、そう、夢だった。
携帯を手に取る、携帯のディスプレイの光も寝起きには眩しい。
メールが着ていた。
男「誰だっけ…登録してあるってことは知り合いなんだよな…」
メール:女「今日メール返せなくてごめんね!電話もしてもらったのに、残業してて出れなかった…」
男「…何の話だろ」
男「そもそも誰だろな…」
男「とりあえず返そう」
メール:男「えーと、誰かと勘違いしてます??今日あなたにメールを送った覚えないんですけれども」
連投ゴメン
しばらくしてこの女とやらからメールが返ってくる。
メール:女「え?ふざけてんの?」
男「何で怒ってんだ…?」
メール:男「いや、本当に…というかあなたが誰かわからないです。」
メール:女「今から家行って良い?」
メール:男「場所知ってるんですか?」
メール:女「当たり前じゃん!行くからね!」
その後メールをしたが返事が来なかった。
20分くらいして家のチャイムが鳴る。
男「本気か…?」
黙っているとドアが何度もノックされる。
女「男ー!いるんでしょー!開けて!!」
男「こわ、無視しよ…ゲームしよ…」
ふいに、ガチャッという音がしてドアが開いた。
男「え?」
女「やっぱりいるんじゃん!つーか何ゲームしてんの!?」
男「何で入って来れたんですか…」
驚くとこんな質問しか出来ないんだなぁ。
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