和久井留美「シン・仮面ライダー」三船美優「鑑賞後に」服部瞳子「反省会」 (16)

美優「良かったですね。シン・仮面ライダー」

瞳子「特撮映画は初めてだったけど、楽しめたわ」

留美「……」

美優「血の出る描写も多かったですけど、それほど凄惨ではなかったし」

瞳子「疫病をモチーフとする相手を意外とあっさり倒したのはアフターコロナへ向けての、メッセージかも知れないわね」

留美「……違うわ」

美優「え?」

瞳子「なにが、かしら」

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留美「2人とも感じなかった? あの映画を見ていて感じた、違和感を!」

美優「違和感?」

瞳子「どういうこと?」

留美「いいえ違和感じゃない……はっきり言うわ。あなたたちも感じたはずよ! そう、既視感を!!」

美優「既視感……つまりデジャブですか?」

瞳子「既視感なんてそんな……うっ!」

美優「と、瞳子さん!?」

留美「思い出したようね。過去の自分を」

瞳子「2人きりの出発……状況もわかにないのにいきなり囲まれて、周りは敵ばかり……」

留美「そうよ。あの冒頭部は、不穏な船出と2人の向かう先は困難な道となることを暗示しているのよ!」

瞳子「ああ……あ……!」

美優「え、でも、あの……ロードムービーってそういうものじゃないです?」

留美「自分は用意周到な人間だと思っていたのに、次々と予想外の事態にまきこまれる……」

美優「はうっ!」

留美「同行者の男はなんとなく頼りにならなく感じて、でも段々と頼りにし始めて好感までもってしまって」

瞳子・美優「あああーーー!!!」

留美「私たちも経験したはずよ」

美優「友達とまでは思っていなかったけど親近感を持っていて、でも自分とは違うと感じていた同姓の知り合い……」

瞳子「でも親しげな口調からは信じられないような敵意を向けられて……」

留美「そして忘れてはならないのが、ちょっと好意を持ち始めた男の行動」

美優「そうなんですよ、なんで彼女の実家に行く前なのにいつもの格好で、それも私が言わないとシャワーも着てるものの洗濯もしないんですか!?」

瞳子「実家に案内しているのにあの人、手ぶらだったわよね? 普通なにか手みやげとか持参するものではないかしら!?」

留美「身内は身内で、ジョークで場を和ますつもりかも知れないけど『もう妹とは寝たのか?』とか質問するデリカシーのなさ!!」

瞳子「カレシもそれを真剣に受け取って『そんな関係じゃない!』とか叫んでガチギレして兄につかみかかるし!!」

美優「そうですよ! そんな関係じゃないってどういうことですか!? 寝たじゃないですか一緒に!! だだっ広い場所で!!!」
※映画内での話です

留美「しかも久々に実家に帰ったら、自分はそれまで引きこもりだったくせに、お前もそろそろ身を固めたらどうか……とか言い出して、別の男を紹介しようと呼んでるし!」

瞳子「しかもその人、地味にスペック高いのよね! カレシより」

美優「そんなの修羅場になるに決まってるじゃないですかぁ~」グスッ

留美「なるわよね。男って単純な生き物だから」

瞳子「しかもひとしきり殴り合うと、なんだか急に仲良くなったりするし。カレシと」

留美「なるわよね。男って単純な生き物だから」

美優「それで私はのけ者で、3人だけでなんか会ってるんですよ~」ジタバタ

留美「わからないわよね。男のああいうところ……」

瞳子「しかもまたなんか3人だけで仲良くなってるのよ!」

留美「わからないわよね。男のああいうところ……」

美優「心配して連絡して、合流しましょうか? って聞いたら~」

瞳子「ここは狭いからとか適当なこと言われてやんわりと断られて!」

留美「今回、このシン・仮面ライダーで私たちは多くの気づきを得たわ」

美優「そうですね」

瞳子「この映画で描かれていたこと、他山の石にしなくてはならないわ」

留美「そう。プロ……いえ、男の人を家族に紹介する時、私たちは万全を期さねばならないわ」

美優「自分は用意周到とか慢心せず」

瞳子「そして男の人にも万全の注意を払うのね!」

留美「そうでないと泡と消えてしまうかも知れないのよ。私たちの未来が」

美優「映画の中の2人のように……」

瞳子「繰り返せないわ。もうあんなことは……」

神谷奈緒「ん? あれ、留美さんに美優さんに瞳子さん」

荒木比奈「奇遇っスね」

関裕美「もしかしてみんな、映画を見た帰り?」

留美「え?」

美優「そ、そうだけど」

瞳子「もしかして、あなたたちも?」

奈緒「ああ! シン・仮面ライダーは外せないだろ、ってさ」

比奈「オタクの聖典っスからね庵野秀明監督は」

裕美「私も、奈緒さんと比奈さんが楽しみにしてるから、一緒にって思って」

留美「駄目よ!」

奈緒「え?」

美優「3人にシン・仮面ライダーはまだ早いわ!!」

比奈「いや、シン・仮面ライダーはPG12指定っスけど、アタシたち3人とも大丈夫っスよ?」

瞳子「3人には、まだ……恋愛に憧れや夢をもっていて欲しいのよ !!!」

裕美「言ってる意味が……え? ええ?」

留美「知ってる? 男の人に夢を持つとね、時々すっごく切なくなるけど、時々すっごく熱くなるらしいの。私には男運がない。だけど、あなたたちのその夢を守ることは出来る」

比奈「ちょ、ちょっと押さないで欲しいっス!」

瞳子「人が映画を勧めていいのは、自分の手が直接届くところまでなんじゃないかって」

裕美「えー? え、映画見たいよー!!」

留美「男の人のために! これ以上誰かの涙を見たくない! みんなに笑顔でいてほしいんです! だから見ないでいてください。庵野秀明監督の!! シン・仮面ライダー!!!」

奈緒・比奈・裕美「ええええええーーーっっっ!?!?!?」


-おまけのそのあと-


奈緒「いや、まさか一旦事務所まで連れ返されるとは思わなかったよな」

比奈「まあそれからまた行って、無事に見られたわけっスけど」

裕美「面白かったよね。こう、パンチとかキックとか」ブンブン

奈緒「あはは、様になってるぞ裕美ちゃん」

比奈「裕美ちゃんはカンフー映画を見たら、アチョーとか言って盛り上がっちゃうぐらいノリがいいっスもんね」

裕美「えへへ。あ、でもちょっと気になったんだけど」

奈緒「お、なんだ? 映画鑑賞後の考察会か?」

比奈「いやーオタク冥利に尽きるっスね。こういうの」

裕美「あのね、蝶オーグの人が言ってた『妹とはもう寝たのか?』ってどういう意味?」

奈緒「え……?」

比奈「う……?」

裕美「なんで本郷猛さんはそれで怒っちゃったの?」

奈緒「えっと……」

比奈「それは……」

裕美「なんで『そんな関係じゃない』って言ったの?」

奈緒「……」

比奈「……」

裕美「寝てたよね? 2人で。なんかひろーい所で」

奈緒「あ、そろそろ帰らないとな!」

比奈「一旦、事務所に戻ったから遅くなったっスしね!」

裕美「え? あの」

奈緒「帰るぞー!」

比奈「明日もロケで早いっスからねー!」

裕美「え? あの、その前に妹と寝たのかってどういう意味なのかを……」

奈緒「あたしは帰る。人間として、アイドルとして!」

比奈「さぁ、帰宅タイムだ!

裕美「妹と寝たのか、ってどういう意味なのーーー!?!?!?」


シン・終

以上で終わりです。おつき合いいただきまして、ありがとうございました。

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