プリンセス・ウタ「私を置き去りにした時に腰掛けていた財宝の山はなんだったの?」 (8)

「全部知ってたよ……シャンクスがエレジア壊滅の罪を背負ってくれたこと」
「昔のことだ……気にするな」

歌の王国、エレジアの壊滅。
太古から伝わる禁断の楽譜、トットムジカを私が口ずさんでしまったことで引き起こされた悲劇。ずっとシャンクスに謝りたかった。

「でもそのせいで懸賞金が跳ねあがって……シャンクスは何も悪くないのに」
「にしし。気にすんなって、ウタ」

現実世界でシャンクスに謝罪した私の肩を、夢の世界でルフィが叩いて励ましてくれた。

「シャンクスはもともと海賊なんだ。懸賞金が上がって喜ぶことはあっても困らないさ」
「そうかな……」
「ああ。それよりそこにシャンクスがいるなら訊いてみてくれ。なんで見聞色の覇気でエレジア壊滅を見通せなかったのかってよ」

ケンブンショク? ハキ? 外の世界のことを知らない私にはさっぱりわからない単語だ。
とりあえず言われたままに訊ねてみよう。

「ねえ、シャンクス」
「なんだ、ウタ」
「どうしてケンブンショクのハキでエレジアが壊滅することを見通せなかったの?」

その瞬間、シャンクスの顔つきが変わった。

「……ルフィの入れ知恵だな?」
「う、うん。ルフィが訊いてみろって」
「まったく……まあいいさ。全てを話そう」

シャンクスは語り出す。あの日の、真実を。

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「トットムジカという魔王は誰でも従えられるわけじゃない。ウタウタの実を食べ、心身ともに実に追いつく必要がある。ウタ、お前のようにな。これを悪魔の実の覚醒と呼ぶ」

悪魔の実の覚醒。私は覚醒していたらしい。

「エレジアに太古の魔王が眠っていたことは調べがついていた。あとはお前が育つのを待つだけだった。しかし俺も少々焦っていた。仕方がないんだ。若さ故の過ちってやつさ」

少しも悪びれた様子もなく、大海賊は語る。

「本来ならもう少しウタが成長して歌の魔王を制御出来るようになるまで待つべきだった。たしかに見聞色で危険信号を感じ取ってはいたが、どうにでもなると思った。実際、どうにかなっただろう?」
「だ、だけどエレジアは滅んで……!」
「だから仕方なかったんだ、ウタ。たとえ国が滅びようとも、いずれ俺が支配することになる世界のほうが大切だった」
「シャンクス……もうひとつ訊かせて」
「ああ、なんでも訊くといい」
「私を置き去りにした時に腰掛けていた財宝の山はなんだったの?」
「海賊が手ぶらじゃ帰れないだろう?」

シャンクスは笑ってる。否、嘲笑っている。
ようやく、私は彼の本性に気づいた。怖い。
目の前に居る男は海賊。赤髪のシャンクス。

「おい、ウタ。大丈夫か?」
「ルフィ……シャンクスが別人みたい」
「シャンクスはシャンクスだろ。あいつは昔っから海賊だ。卑怯も糞もねェ海賊なんだ」

卑怯という言葉が通じない無法者。海賊だ。

「だけど安心した」
「ルフィ……?」
「これで遠慮なくシャンクスをぶちのめせる。にしし……なあ、ウタ。伝えてくれよ」

ルフィが凶悪に嗤った。そう、彼も海賊だ。

「くれてやった腕の代償は高くつくってよ」

ド ン ッ ! という衝撃と共にその挑発は私を代えさずともシャンクスに伝わったらしく。

「恩を仇で返すか……よく来たな、高みに」

見ればたしかに片腕が無くなっているシャンクス。因縁があるらしい。でもルフィ、恩を仇で返すのはよくないよ。私が言えたことじゃないけど。ルフィはゲラゲラ笑って呟く。

「あっはっはっはっ! あーよかった。シャンクスのことだから食われた右腕の代わりに俺に右腕になれって言うかと思った」
「シャンクスもそこまでは……」
「するよ。海賊なんだ。絶対服従しろって言われてもおかしくねェ。それをしないってことは別の企みがあんだろな」
「別の企み……?」
「俺にそのつもりがなくても、これから俺がすることが結果的にシャンクスの助けになるかも知れねェ。まあ、別に構わないけどな」

シャンクスの帽子に触れて、ルフィは嗤う。

「俺は俺の好きにする。自由なのが海賊だ」
「ああ、好きにしろ。それでこそ、海賊だ」

見聞色で通じ合っている2人。自由な海賊。

「んじゃあ、ウタ。俺は今から脱糞するよ」
「え?」
「悪いな、ウタ。俺も少々脱糞させて貰う」
「ええっ!?」

いきなり何を言い出すのか。止められない。

「俺は、俺のしてェ時に糞をする……!!」

バリバリバリバリバリバリバリバリ……!!

「見せてみろルフィ。新時代のうねりを!」

バリバリバリバリバリバリバリバリ……!!

ぶりゅっ!!っと、天が割れた。

「フハッ!」
「きゃあっ!?」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「きゃあああああああああああっ!?!!」

ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ~!

覇王色の脱糞と共に新時代が幕を開ける。
この世界は、まさしく、大"脱糞"時代。
漏らせェ! この世の全てを置いてきた!!


ド ン ッ ! !


【ONE PIECE FILM SHIT】


FIN

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