アイドルマスターミリオンライブ!のSSです。
地の文がありますので予めご了承ください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1646565043
「あ、あれ……?」
「ボールが、消えた……?」
私たちがこの不思議な現象に相対したのは、もうすぐ春の便りが届く2月末のこと。
私こと七尾百合子が、劇場のエントランスで昴さんとキャッチボールをしていた時でした。
……えぇ、分かっています。劇場で野球が禁止されていることは。
私だって一度は断りました。
そんなことは止めましょう。また琴葉さんに怒られてしまいますよ、と。
でも、しかし、だからといって。
「今日は百合子に女房役やってもらおうと思ったんだけどなー」
と、昴さんに言われて断れる生物は存在するでしょうか。いえ、存在しないでしょう。
反語です。国語の授業で習いました。
すみません、話が逸れてしまいましたね。
とにかく私は昴さんと野球……本人曰くキャッチボールは野球ではないらしいのですが、とにかく球投げに興じていました。
昴さんが投げる球って、なんだかギュワッて感じで怖いんです。
しかも絶対に私に向かって飛んでくるんですよ。そんなの避けるに決まってるじゃないですか。
私のことを文学少女と侮りましたね。何回も逃げていれば嫌でも上手く避けれるようになってくるというものです。もしかして私、野球が上手くなってきたのではないでしょうか。
このようにして私の命を奪わんと昴さんから放たれた白球は、その勢いを遮られることなく、一直線にエントランスの壁へと向かっていったのでした。
劇場の壁にぶつかるはずのボールが、そのまま消えてなくなりました。
場所的に、エントランスの大扉の少し横くらいでしょうか。いえ、細かい場所なんてどうでも良いですね。
何かオブジェクトがあってボールが見えなくなったわけではありません。私たちと劇場の壁の間に、視界を妨げるものはありませんでした。
文字通り、ボールが「消えた」のです。
なんなら、消える瞬間までハッキリと見えたくらい。
そして、これがいつもの私の妄想ではないことは、昴さんの反応からも明らかでした。
「これは、トンネル効果、それとも時空の歪み? いや、9と4分の3番線への招待状……?」
「やっべー、ボールが無いとキャッチボール出来ないじゃん」
「昴さん!」
うわっ、なんだよビックリした。と昴さんは驚いてみせました。
私は必死に昴さんに説明しました。因果律の乱れ、超時空生物の侵攻、JKローリングがロバード・ガルブレイズ名で執筆した『私立探偵コーモラン・ストライク』シリーズ……。
しかし、いずれも昴さんの心には響かないようでした。しきりに首を傾げています。
しまった。東野圭吾あたりから始めるべきだったでしょうか。
違いました。そんな場合ではありません。
「とにかく、こんな超常的な現象が起きている以上、私たちだけで対処するのは危険です! 援軍を呼ぶべきです!」
「お、おぉ……?」
「今日はChrono Lexicaのメンバーでレッスンでしたから、皆さんまだ遠くまでは行っていないはずです。私は杏奈ちゃんに連絡しますから、昴さんは瑞希さんとロコちゃんに!」
「えー……?」
「早く!」
緩慢な動きを見せる昴さん。
そんな昴さんを先導するように、私は素早くスマホを操作して杏奈ちゃんに電話をかけます。
もしもし杏奈ちゃん、今どこにいる? 事務室でゲームしてたの、ゲーム中にごめんね。でもちょうど良かった。ちょっとエントランスに来て欲しいの。なんでって、詳しく話すと長くなるんだけど、エントランスの壁にぶつかった昴さんのボールが急に消えちゃったの! これはきっと私たちの劇場と、ウェザリングワールドが繋がって、私たちは魔法界から招待状を……あぁ、待って待って切らないで! お願い杏奈ちゃん。とにかくエントランスに来てもらえる? うん、別にここでゲームやってても大丈夫だから、あぁでも少しは私と一緒にこの世界の謎を解き明かしてくれると嬉しいかな……うん、うんセーブしてからで良いよ。トロフィー集め中だから時間がかかるかも? うん、うん、分かった。じゃあ待ってるね。
ぽちっ。よし、なんとか杏奈ちゃんは来てくれそう。
私の横では昴さんが
「もしもし瑞希? 今エントランス来れる? なんか百合子がさー、うん。そうそう事件かなんかそんな感じ。うん、サンキュー」
「もしもしロコ? ちょっとエントランス来いよ。ん? 何言ってるか分かんないけど、暇なら来てくれよ。うん、サンキュー」
という会話だけで二人を呼び出していた。私の努力って一体……。
「事件が私を呼んでいます。真壁瑞希です」
「ペイントのオイルをエイジングしてる間だけなら、アカンパニーしますよ」
「あれ、杏奈は?」
「あのゲーム、ボス倒すまでオートセーブにならないから、結構遅くなるかも……」
失礼しました。名探偵リリーが集めることが出来た人数はゼロ人です。ここは中学生探偵スバルに席を譲りましょう。
私はすごすごと身を引きます。お陰で昴さんは至極面倒くさそうに説明を始めてくれました。私とキャッチボールという名の虐殺行為をしていたこと、ボールが壁にぶつかりそうになったところで消えてしまったこと。
皆が昴さんの指さした方向に目を向けます。確かに、そこにはボールが隠れるようなものはありませんでした。斜め移動でめり込むようなデバッグの穴もありそうにありません。
「あのぅ……」
意外なことに、真っ先に発言したのはロコちゃんでした。
「ロコも、エントランスのウォールでグラフィティしていたら、ちょっとルックアサイドした隙に、一瞬でクリアランスされていたことがあります」
「グラフィティってなんだ?」
「スプレーでウォールにペインティングすることですね」
驚きました。きちんとした犯罪行為です。
琴葉さんに禁止されるまでもなく、ちゃんとした器物損害罪です。いや、劇場の所有者である高木社長が訴えなければ大丈夫なのでしょうか? 先の昴さんのキャッチボールの件も合わせて、この劇場がこんなに綺麗な状態に保たれているのが不思議でなりません。気分はもうイーストエンドのスラム街です。
「つまり、ここの壁には特別な何かがある、ということでしょうか……?」
そう言いながら、瑞希さんがエントランスの壁を指でなぞります。
きっとこの後、瑞希さんが「むっ」と言って隠し扉のスイッチが探し当て、金銀財宝が眠るピラミッドの深部への道が開かれるに違いありません。
「特に何もないようですね。一般的な壁と違いはありません」
違いありませんでした。
むむむ……と手詰まりの様子の御三方。
ふふっ、ここはこのリリー警部の助言が必要でしょうか。
チラッ、チラッ。
目で訴えるも誰にも気付いてもらえません。仕方ないので声を張ることにします。
「この一件なんの変哲も無い壁に起きた超常現象。これを調査するためには、捜査の基本、再現検証をすれば良いんですよ!」
「なるほど、流石七尾さん、慧眼です」
瑞希さんはノリが良くて素直に褒めてくれるから好きです。
「そうと決まればワトソン君、さっそく準備を」
でもそのセリフはホームズの立場の人が言うセリフです瑞希さん。私の立場が奪われてしまいました。私は一体誰なんですか。
「え、オレ? 何すれば良いの?」
「ボールをウォールに向かってスロウすれば良いんじゃないですか?」
「そのボールが無くなったんだろ、何を投げれば良いんだよ」
再び私に皆さんの目が集まります。どうにも、注目を集めようとした時以外のタイミングで注目が集まるのは苦手です。しどろもどろになってしまいます。
私は必死に視線を右往左往させて、投げられそうなものを探しました。運の悪いことに、今日は公演日ではないので売店に物は置いてありません。
「……あの花瓶とか?」
「悪魔かよ。律子が泣くぞ」
これです。注目を集めた後に発した自分の発言でみんなの温度が下がる感覚。これが嫌なんです。
瑞希さん、ロコちゃんという劇場きっての秀才コンビからも「それはアカンやろ……」という視線が向けられます。
そうです、アカンのです。分かっていますごめんなさい。
「それでは、物を投げるのではなく、グラフィティを再現してみては如何でしょう」
「わぁ、倫理観がイーストエンド……」
「まぁ、琴葉と律子にバレなきゃなんとかなるだろ」
「うーん、今日のロコのモチベーションはオイルペインティングだったのですが……まぁ、スプレーを持ってきますね。……あれ?」
画材を取ってこようとして歩き出したロコちゃんがピタリと止まりました。歩き出した時はあまり気にしていなかった私たちですが、その気の抜けた声に思わず振り返ります。
「こんなところに、ウォールなんてありましたっけ……?」
エントランスから入って右手側、ステージの脇を抜けて事務室へ向かう廊下。
そこに、私たちが良く知る廊下はありませんでした。
本来廊下へと続くべき道には、周りと同じく真っ白なレンガ調の壁。
まるで初めからそうであったかのように、廊下なんてなかったかのように。
「まずい」
咄嗟にそう思いました。口にも出ていました。
すぐに左側の廊下も確認します。同じように壁で塞がっていました。
「瑞希さん、すぐにエントランスの大扉を開けてください。私は二階の様子を!」
「分かりました」
「えっ、えっ?」
昴さんが狼狽えていますが、説明している時間はありません。
ロコちゃんの脇を駆け抜けて、素早く正面階段を登ろうと足をかけたところで瑞希さんから「ダメです、開きません」という声が上がりました。この分だと、こっちもおそらく……。
階段を上がりきってすぐ、私は事態を把握しました。
二階も同じように、左右の廊下に続く道が壁で埋まっていました。
ステージに入るための扉は残っていますが、この様子では……。やはり、開かない。鍵が引っかかってガチャガチャと鳴るような感じではなく、不思議なチカラでビクともしないといった様子。
私が階段を降りようとする頃には、ロコちゃんと昴さんも大扉に集まって、こちらの様子を伺っていました。
何かに期待しているかのような顔です。ですが、私はこれから皆さんの期待を裏切らなければなりません。
「私たち、閉じ込められてしまったみたいです……」
とりあえず皆で大扉の前に集まって、持っていたスマホの様子を確認します。
が、一種のお約束のように、全てのスマホが「圏外」の表示になっていました。昴さんとロコちゃんはすごく狼狽えていましたが、私は「きっとこういう状況なら圏外になっているだろう」と思っていたので、冷静沈着です。瑞希さんも冷静でした。まさかのライバル登場……?
そんな風に、一か所に集まって現状確認をしている時のことでした。
「ねぇ、何してるの……?」
不意に聞こえた声に、ロコちゃんが「ぴえっ!?」と鳴きます。
これには流石に私も瑞希さんも動揺を隠せないまま、声が聞こえた方向、つまりエントランス向かって左側の廊下があった場所に目線を向けると。
「杏奈ちゃん。……と、誰?」
杏奈ちゃんと、その横に立つもう一人の女の子。身長は私と同じくらいでしょうか。
どうしよう。どこから聞けば良いんだろう。
「誰って、げき子だけど……。百合子さん、それで、何の用……?」
「その前に望月さん、どうやってここに入ってきたのですか?」
「え、普通に歩いて……。あれ、壁がある……?」
「そんなこともあるよ。ね、杏奈ちゃん」
「そっか……」
そんなこともあるよって、そんなことある⁉
杏奈ちゃんもそれで納得してるし、結局どうやって入ってきたか分からないし、げき子って誰⁉
なにも分からない私たちを尻目に、杏奈ちゃんと女の子は私たちにゆっくり近づいてきます。
当然身構える私たち。
どうする? 闘う? 逃げる? どうやって? 杏奈ちゃんは? 本物?
某RPGならコマンドが四つ表示されるところでしょうが、私の脳内には次々と新しいコマンドの雨あられ。到底選択することなんて出来ません。
言葉も碌に交わすことも出来ず、私たちは目と目で会話します。
わたしはたまたま杏奈ちゃんたちに一番近い位置にいたので、なぜか私が先頭のような形になってしまいます。なんでぇ。
「私は、げき子。劇場を思う人々の夢のカケラが集まって生まれた、劇場の魂」
「ええぇぇぇヤバいよヤバいよ。オレ今の状況全然分かんないんだけど!」
「ロコもコンヒューズです~! どういうことですかユリコ~!」
「わ、わわわ私も全然分からないけど、でも、杏奈ちゃんが……!」
「げき子さん、初めまして。私はあなたを知りませんが、あなたは私たちを知っているのですか?」
スッと前に出て、正体不明の女の子に話しかける瑞希さん。
あぁイケメン。心なしか横顔もいつもより凛々しく見えます。
何を隠そう、過去に瑞希さんが演じたミルズさんは劇場の支配人です。劇場の魂やらなんやら知らないですが、支配人の方が偉いに決まっています。私には見えます、彼女に蓄えられた立派なヒゲが。
「もちろん知ってるよ。瑞希ちゃん、百合子ちゃん、昴ちゃん、ロコちゃん」
「……瑞希さん、どうしたの? げき子は、げき子だよ……?」
杏奈ちゃんは暴走しちゃった私の妄想を聞いている時のように、様子を伺うようにこちらを覗き込んできます。私たちの言っている意味が分からないといった顔です。
対して、元々エントランスにいた私以外の三人も、訳が分からないといった顔をしています。私はこちら側です。つまり、杏奈ちゃんは何らかの認識改変を受けているということ……?
「あ、杏奈ちゃん! いますぐその人から離れて、こっちに来て!」
「どうしてそんな、酷いこと言うの……? 本当に、げき子のこと忘れちゃったの……?」
悲しそうな目でこちらを睨みつけながら、げき子という女の子に抱き着く杏奈ちゃん。
まさか、杏奈ちゃんにそんな目を向けられるなんて。何かのラノベで読んだことがある。これが「寝取られ」という感情……?
「大丈夫だよ、杏奈ちゃん」
杏奈ちゃんの頭を優しく撫でるげき子ちゃん。
やめて! 私の杏奈ちゃんに酷いことしないで!
いや、別に酷いことはしていないのか。
やめて! 私の杏奈ちゃんに優しくしないで!
いや、違う。優しくする分には杏奈ちゃんも気持ち良いから大丈夫なのか。
やめて! 私の杏奈ちゃんを気持ち良くしないで!
うん、なんだかエロティック・サスペンスな雰囲気になってきた。
いやいや、落ち着け私の小さな桃色の脳細胞。
「落ち着いて。私はみんなと争う気は無いの。ただ、もう少し劇場を大切に扱って欲しいだけ」
劇場を、大切に……?
すぐ後ろの二人の表情から「ギクリ」というオノマトペが鳴る。
昴さん、ロコちゃん。そうだね、きっとあなたたちのことを言っているね。
「それでは、私たちをここに閉じ込めているのも貴女ということでしょうか」
「そうだね。みんなにはしばらくエントランスで反省してもらおうと思う」
「学校の宿題もありますので、出来れば早めに解放してもらいたいのですが、私たちはどうすれば解放してもらえるのでしょうか」
瑞希さん、ただ怯えるばかりの私と違って、しっかりと相手との対話を試みています。頼れる女性はかっこいい、恋してしまいそうです。
あぁ、だめよ百合子。今は苦しく辛い戦争の真っ只中、恋愛ごとに現を抜かす訳には……。
でも私は、もうこの気持ちを抑えることが出来ないのです。この燃え上がる情熱は、何人たりとも止めることが出来ません。
瑞希さん、この戦争が終わったら、私と……。
「もうちょっと待ってもらえば……。そうだ、杏奈ちゃん。ごめん、ちょっと体を借りるね」
「んっ」
「うぇっ⁉」
「ゲ、ゲキコが、あぁぁぁアンナのボディーにインしました!」
げき子ちゃんが杏奈ちゃんにぶつかったと思ったら、そのまま杏奈ちゃんの身体の中にスゥっと入っていって、目の前には杏奈ちゃん一人になってしまいました。
どうしよう。杏奈ちゃんが、知らない女の子に乗っ取られちゃう。
私はふざけた妄想を止めて、思わず駆け出しました。
いえ、駆け出そうとしました、確かに。
ですが、私の身体は金縛りにあったかのように動きません。まるでヘビににらまれたカエル、もしくは朋花さんに本気で怒られた時の私のようです。
私の他の三人も同じ様子。そんな私たちを眺めながら、杏奈ちゃんはゆっくりと目を開けて、ゆっくりとスマホを取り出して私たちに見せてきました。
ピコン。とLINEの通知音。
天海春香
杏奈ちゃん、まだ劇場にいるかな?みんなのスケジュールを見て、劇場にいそうな人に声を掛けています♪
これから劇場に行くんだけど、スコーンを焼いてきたんだ。全員分は無いから今日劇場にいる人だけで食べちゃおうかなって思います。もし良かったら事務室に!
「こ、これは……春香さんがスコーンを……?」
「まさか、げき子、嘘だろ……?」
見せられたメッセージ、今の状況、反省というワード。
これらの情報から、私たちは最悪の事態を想像しました。
「みんなには、スコーンが無くなるまでここにいてもらうね」
「ノオオォォ!! ゲキコ、プリーズです。ロコに後生をプリーズです!!」
ロコちゃんが変な外人みたいになってる。
「はい。げき子さん、提案があります」
あくまでも冷静に、瑞希さんがスッと手を挙げた。
「私は無罪です。解放して頂けませんか」
「あっ、ずるいぞ瑞希! Chrono Lexicaは運命共同体じゃないのかよ!」
「法律に強い女だぞ、瑞希」
「じゃあ私も! 私は昴さんに付き合わされただけです!」
「ユリコォ!」
「百合子ちゃん」
杏奈ちゃんの姿で、にっこりと笑うげき子ちゃん。いや、げき子さん?
「昴ちゃんと一緒にキャッチボール、したもんね?」
「ゔっ……」
「そうですよ七尾さん。非常に残念ですが……」
「瑞希ちゃんも、さっきロコちゃんにグラフィティさせようとしてたよね? 私、ちゃんと聞いてたんだから」
「そんな……!」
完全にとばっちりである。
昴さんとロコちゃんは半ば諦めているのか、いかに私と瑞希さんを道連れにしようかと模索しているようです。なんたる憎しみの連鎖。
ん、とばっちりと言えば。
「杏奈ちゃんは、どうなるんですか⁉」
「ふふっ、心配しなくても大丈夫」
そう言ったと思ったら、杏奈ちゃんの横にまたげき子ちゃんが現れて。
また杏奈ちゃんの目がゆっくりと開く。心なしかさっきよりもトロンとした目になっている気がする。
「ん……、あれ……?」
「杏奈ちゃん、春香ちゃんがスコーン持ってきてくれたんだって。一緒にもらいに行こっか」
「うん、行く……」
「あぁっ、ずるいぞ杏奈! オレも食べたいのに!」
「ふふっ、ごめんね。終わったらちゃんと出してあげるから。私を見たことも、きっとそのころには忘れてるだろうから……」
「えっ、あっ、待って杏奈ちゃん。お願い!」
「誰か―! ヘルプ、ヘルプですー!!」
そうして、杏奈ちゃんとげき子ちゃんが壁の向こうに行ってしまってから自由に動けるようになった私たちでしたが、叫べども叫べどもエントランスの扉を叩く者は無く、私たちのティータイムは儚い夢のようにお流れとなってしまったのでした。
「もう二度と劇場で野球しないからさー! 許してくれよげき子―!」
「ロコもウォールにペインティングしませんからー!」
おわり
おわりました。HTML依頼出してきます。
げき子とChrono-Lexicaを絡ませたかったんです。
このSSまとめへのコメント
今夜セックスしたいですか?ここに私を書いてください: https://ujeb.se/KehtPl
今夜セックスしたいですか?ここに私を書いてください: https://ujeb.se/KehtPl