右京「鬼滅の刃?: (132)
相棒×鬼滅の刃のクロスssです。
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とある薄暗い場所。
不気味な雰囲気を漂わせながらもその中央には場違いにも洋風のテーブルと幾つかの椅子が置かれていた。
テーブルにはこの時代としてはまだ珍しい英国風のポットにそれとティーカップがあった。
ポットから注がれたお茶はこの不気味な雰囲気に似合わず香ばしさを漂わせていた。
「う…あ…ぅ…」
カップに注がれた紅茶を一人の青年が必死に飲み込もとしていた。
黒装束に背中には『滅』の文字を記した服装の青年。彼は手を震わせながらカップを持っているが明らかに動揺している。
それもそのはず、この場で動揺するなというのは無理というものだ。
この奇妙な光景…何故こんなことになったのか…?
それには少しばかり時を遡ることになる。
………また増えてる。」
時は令和。ここは警視庁組織対策5課の片隅にある特命係の部署。
この特命係に所属する冠城亘は相棒の杉下右京のデスクを見て呆れ果てていた。
それもそのはず、杉下右京のデスクはある作品の書籍やグッズで埋め尽くされていた。
「よ、暇か。ところで冠城、呆れた顔をしてどうした?」
「そりゃ呆れますよ。見てくださいよこの鬼滅の刃の山を…」
冠城は隣の部署からひょっこり姿を見せた角田課長にこの有様を説明した。
ちなみに鬼滅の刃とは現在コミックス1億部を突破した大人気漫画のことである。
既に連載は2020年で終了したがその人気は今も衰えることもなくその後10月に公開された映画も興行収入が日本映画記録を更新して更なる活躍を見せていた。
「まあしょうがないだろ。あの鬼滅だぞ。警部殿がここまで激ハマりするのも無理ないな。」
「だからっていい歳したおじさんがこんな入れ込むなんて異常でしょ。どうなっているんですか。」
「そうか?うちのカミさんも鬼滅にハマってるぞ。DX日輪刀持って水の呼吸!壱の型!てさ…」
鬼滅の絶大なる人気は主婦にまで伝わっていることを知らされて冠城は改めてその人気の絶大さを思い知らされた。
だがそんなことはどうだっていい。それよりもいい加減この鬼殺グッズの山をどうにかしてほしいところだが…
「おやおや、どうかしましたか。」
すると鬼滅グッズの山からひょっこりと姿を現したのはこの部屋の主でもある特命係の杉下右京だ。
「右京さん今日こそは言わせてもらいますけど…」
「またその話ですか。キミもいい加減しつこいですねぇ。」
「いやいや!右京さんこそ…職場をなんだと思ってんですか!」
毎日冠城からの注意を受けても今や悪びれる様子も見せずに開き直るばかり。
隣で課長もコーヒーを頂きながら眺めているが今やこれが日常化している有様だ。
そんな折、時計の針が業務終了の定時を差した。
「これで特命係本日の業務は終了ですね。」
定時終了と同時に右京はすぐに帰り支度を始めた。
警察官であれば本来は定時を過ぎようとも残業なり夜勤なりが発生するものだが特命係は窓際部署であるため残業など滅多に発生しない。
ちなみに去年の10月から右京は勤務時間を終えるとすぐに帰宅する傾向があった。その理由は…
「右京さんまた映画観に行くつもりですね。これで何度目ですか。」
冠城がまたもや呆れ気味な様子を見せるが右京が早々に帰宅する理由は鬼滅の刃の映画にある。
2020年10月から公開している鬼滅の刃・無限列車編は今や国内No.1の記録を打ち立てた。
興行収入も前人未到の興行収益400億に達した。実写でもないアニメ映画が日本記録を打ち立てた。これはまさに快挙といえるだろう。
「まったくよく飽きもせず何度も観ますね。同じ映画を延々と観て面白いんですか?」
「ええ、面白いですよ。ちなみに映画はもう終わりました。今日は予約しておいた鬼滅の映画のDVDを買いに行くつもりです。」
右京は冠城からの皮肉など体よく交わしながらそう自信たっぷりに言ってのけた。
ちなみに右京だがもう十回以上は映画を観に行っている。
それだけの回数を行っているのにまだ観に行こうとしていた。
傍から見ていた課長も「暇な部署は定時で帰れていいねぇ」と嫌味を言い残してさっさとデスクへと戻るなどその行動にみんなから呆れる様だ。
「そういえば最近青木くんを見かけませんねぇ。いつもならこのくらいの時間になると突っかかってくるのに…」
「青木は右京さんとは反対に鬼滅を嫌っていましたからね。まあ右京さんを目の敵にしているあいつらしいですけどね。」
帰り際にふと青木のことを思い出す右京。
ちなみに青木は鬼滅の刃を嫌っている傾向があった。その理由は二つある。
それは目の敵にしている右京が鬼滅推しという理由も含まれているがもうひとつは…
「あいつあの漫画をまだ推しているんですよね。確かタイトルはナントカカントカって漫画だっけかな?
もううろ覚えで忘れちゃいましたけどね。」
「鬼滅の刃の原作が最終回と同時に連載開始された漫画ですね。最初の頃は鬼滅の後継者など言われていました。まったく…失礼極まりない話ですよ。」
先程まで上機嫌に鬼滅の刃について語っていた右京。
だがこの話になると右京は決まって不快な表情を見せた。その理由は…
「けどあの漫画三ヶ月足らずで打ち切り。確か偶然だけど去年の8月31日の今日がある意味命日でしたね。」
「そうでしたねぇ。わざわざ鬼滅の刃の最終回という誰もが注目している中での新連載という破格の待遇を受けながらあの体たらく。
そもそもあの漫画を少年誌で掲載すること自体が間違いだったのです。
ダメ出しされてばかりな漫画家志望の主人公が電子レンジから未来のジャンプが送られてきてそれを盗作する。
盗作されたヒロインの女子高生は何も知らず主人公のアシスタントを務めるなど…
そんな不届きな行いを作品内では誰もが疑いもせず肯定してこんな不快な要素しかない漫画がどうやって読者の人気を得るというのですか。」
「確か主人公も最後までろくに報いを受けないままで終わったんですよね。」
「一応番外編で盗作したヒロインの女子高生にお金を返して危うく命を失いかけそうになったらしいですが
それでも最後までヒロインに真相も打ち明けずおまけに謝罪もしなかったそうです。
あのような漫画が鬼滅の最終回に少年ジャンプの表紙に掲載されたこと自体が僕は許せませんよ。」
まるで深い恨みでもあるかのように愚痴る右京。
理由は鬼滅の原作最終回の表紙をその漫画が飾ったせいだ。
ジャンプ本誌で鬼滅の最終回を読む際にはどうしてもあの漫画の主人公を直視しなければならない。それだけがどうにも不快で我慢ならなかった。
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