【アークナイツ】フロストリーフ育成計画【安価あり】 (58)

本スレはタワーディフェンスゲーム『アークナイツ』の二次創作です。
一部、本編とは相違のある部分、本編で明瞭になってない部分があるため、パラレルワールドのようなものだと思ってください。

PS:エイヤの新スキンをください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1611065039

燃える街を抜け出し、雪の中をよろめき進む。

後ろに視線を移せば、通った道には赤い染みが存在を主張していた。

(俺の今までは、何だったんだ)

戦って、闘って、殺して、奪って。

大切なものを手にしても、何一つ護れず、また全てを喪った。

上手くいっていたから、驕っていたのだろう。

形だけの力に、溺れていたのだろう。

だから俺は、罰を受けたのだろう。

手を汚した者は、決して幸せになってはならない。

その言葉が、脳内を埋め尽くす。

「…五月蝿い」

一歩、前に進む。

「五月蝿い」

また一歩、前に進む。

「五月蝿いッ!ぐうっ…」

足は動かず、地面に倒れた。

「く…そ…!」

身体に力が入らず、視界が霞む。

それでも。

「ぐ…ッ」

俺は、生きなければならない。

死者の分まで生き続けるのが、残された者の責任だから。

戦いというものは、どんな場所でも起こり得るものだ。

クルビアの辺境、戦火の近付く小さな町では、戦力補充のために、貧困層の少年少女をクルビア政府が掻き集める。

用途は勿論、少年兵として戦場に投入するためだ。

アーツさえ使えれば、子供であろうと多少なりとも戦力になる。

「ついにここも、戦場になるんですかね?」

日用品を荷台に乗せながら、青年が疑問を呈した。

「だろうな…。孫と同じくらいの子供が駆り出されるとは、嘆かわしい…」

商人の老人は、悲しげに頷いた。

トラックのコンテナに載せられる子供たち。

その中の、一人のヴァルポの少女が目に入った時、青年の身体は動いていた。

「ちょっといいですか?」

軍刀を携えた兵士に、物怖じせず声をかける。

「ん?」

くるりと振り向いて、兵士は眼前の青年を品定めする。

服装から見るに、付近に居住する民間人のようだ。

警戒を解き、兵士は青年に対応した。

「何か用があるのか?」

「いえね、随分と大勢の子供を連れてくなぁ、と思いまして」

「あぁ。今は少しでも戦力が欲しくてな。可能な限り人を掻き集めろ、との命令だ」

「こいつらは皆、孤児(みなしご)だったり親が生きるために已む無く政府に売った奴らだ」

軍帽を深く被り、暗い表情をしていることから、彼も今回のことは不本意のようだ。

「で、そんなことを聞くために呼び止めたのか?俺はそろそろ出発したいんだが…?」

兵士が言い切る前に、宝石やアクセサリーが入った袋を渡す。

「なにこれ?」

「換金用の宝飾品です。これを全て差し上げるので、子供を一人、いただきたく思います」

「………」

ふむ、と兵士は顎に手を当て思考する。

青年と宝石を交互に十回ほど見た後、袋の中身を少し摘んで、袋を中身ごと返却した。

「…こいつらの装備を整える必要があるから、これだけは貰っておくよ。一人、だったな」

兵士はコンテナを開錠し、扉を開く。

そして、コンテナの中を指差した。

「好きな子を連れていけ。で、残った宝飾品はその子と暮らすのに利用しろ。その方が有効活用出来るだろう」

「ありがとうございます」

先程目に映った少女の手を引き、コンテナから出す。

「ここに乗ってくれ」

荷台を整理しスペースを開け、そこに入るよう促す。

少女を乗せた後に、荷車を引いて帰路に着く。

そして、自嘲の意を込め、少し笑った。

(…分かっている、リーゼ。これは、ただのエゴに過ぎない)

(…でも、もう関わってしまったから。もう、後戻りは出来ないから)

(だから)

"今回こそ"は、何があっても護り抜いてみせる。

家に戻った青年は、ランプに火を灯し、ミルクを温める。

「散らかってるが、気にしないでくれ」

「ああ」

家に入るや否や、少女は部屋の片隅に座り込んだ。

自分の人生を買い取られたことを、子供ながらに察しているのだろうか。

「………」

「………」

先程の返事から、無言が続く。

聞こえるのは、ミルクをかき混ぜるスプーンと鍋の当たる音とミルクの水音だけ。

「これくらいなら、飲めるだろ」

人肌程に温まったミルクをマグカップに移し、少女に渡す。

それを受け取っても、少女は微塵も動かない。

「私は、何をすればいい?」

「ミルクの見返りに、か?」

青年の問いに、少女は頷いた。

「…とりあえず、それを飲め。話はそれからだ」

「わかった」

少女がミルクを飲み干すまで、会話は一度もなかった。

空になったマグカップを洗っている間も、少女は部屋の片隅というポジションをキープしている。

その視線は、真っ直ぐと青年に向けられている。

洗い物が終わった青年は、折れた剣と手斧を両手に持ち、靴を履いた。

「ついて来い」

青年の指示に従い、少女はボロボロのサンダルを履き、青年の後を追う。

林に入った青年は、手斧を少女に渡し、徐に木を斬り倒した。

「俺の家には電気が通ってないから、薪が必要なんだ。お前には薪集めの手伝いをしてもらう」

「わかった」

青年は、斬り倒した木を一定間隔で切り分ける。

少女は、切り分けられた木を割り、薪を作る。

そんな作業が、数十分続いた。

青年が薪をロープで纏めている間、少女は切り株に腰掛け指示を待つ。

「お前、名前は無いのか?」

「…え?」

不意の質問に、少女は反応が遅れる。

質問の意味を理解した少女は、ゆっくりと頷いた。

「…ない」

「それは困るな。これからどう呼べばいいのか困るじゃないか」

「好きに呼べばいい」

「そう言われてもな…」

ひらりと落ちた木の葉が、少女の髪に乗る。

鬱陶しそうに、少女はそれを摘む。

刹那、手に持たれた葉は紅葉し、鮮やかなオレンジの色に変わった。

「…あ」

名前が無いのなら、付ければいい。

目の前の光景が青年に一つの名前を閃かせた。

名乗るにしても、呼ばれるにしても、少し不格好だが、無いよりはマシのはずだ。

「フロストリーフ」

「それが、お前の名前だ」

霜が降りた葉、または、寒さで紅葉した葉。

それが、彼女の名前。

「フロスト…リーフ…か…」

「…いいんじゃ、ないか?」

そう言って、フロストリーフは笑った。

「私は、お前を何と呼べばいい?」

薪を持ち帰る道中、フロストリーフが疑問を呈す。

ある意味、意趣返しとも言える。

「俺は、他人に名乗るべき名前は持たない」

「…そうだな。呼ぶとするなら、ブランク、とでも呼んでくれ」

名無しに名前を与えた人の名前が空白(名無し)とは、何と皮肉なんだろう。

そんなブランクの自嘲は、フロストリーフに気付かれなかった。

↓1 フロストリーフと何をするのか、または、ブランク単独で何をするのかを記載。

安価とは別に質問等ありましたらご自由にどうぞ。

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