「本を読みながら泣く癖、直しなさいよ」
「だって……」
本を読むと、泣けてくる。
プロの作家の精緻な文章が羨ましいから。
私に文才はなく、本物たちには到底及ばない。
それが、悔しくて、悲しくて、切なくて。
ポロポロ、ポロポロ、涙が溢れて。
シクシク、シクシク、みっともなく。
鼻をすすりながら、鼻をかみながら。
ペラペラ、ペラペラ、ページをめくる。
「はあ~……面白かった」
「はい、お水」
「ん……ありがとね」
読み終わると、私は沢山、お水を飲む。
ゴクゴク、ゴクゴク、お水を飲むと。
その水はおしっこになって、トイレに向かう。
「んっ……ふぁっ」
「変な声を出すなって言ってるでしょ」
「だ、だって……んあっ」
チョロチョロ、チョロチョロ、排尿する。
そんな私を見て、お友達は呆れ顔。
それでも彼女は、優しく抱きしめてくれる。
最後の一滴まで、尿を、搾り取ってくれる。
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「今日はおしっこだけでいいの?」
「毎回、期待されても困るよ」
「き、期待なんて、してないし!」
ソワソワ、ソワソワ、落ち着かないお友達。
それを見て、クスクス、クスクス、私は嗤う。
すると、プンプン、プンプン、彼女は怒る。
「生意気」
「あぅ」
お仕置きのデコピンをされて。
ズキズキ、ズキズキ、額が痛む。
また、涙が溢れそうになって。
優しく、そっと、額に、キスをされた。
「泣かないの」
「だって、痛くて」
「もう1回?」
「うん……もっと、キスして」
何度も、何度も、キスをされて。
私の涙は引っ込んで、痛くなくなる。
フワフワ、フワフワ、気持ちが浮ついて。
ドキドキ、ドキドキ、胸が高鳴る。
「それではご期待にお応えして」
「だから、期待してないってば」
「見ないの?」
「……見るけどさ」
素直になれないお友達の手を引いて。
トイレの個室に誘って、下着を下ろす。
ゴクリ、ゴクリと、お友達が生唾を飲んで。
ムクムク、ムクムク、便意が促進される。
「手、繋いで」
「あ、うん……気が利かなくて、ごめん」
「ううん。そんなところも、好きだから」
そう言って朴念仁なお友達に微笑みかけると。
顔を真っ赤にして、きゅっと手を握ってくる。
キュンキュン、キュンキュン、胸が熱くなり。
私はその機を逃さずに、プリプリ、プリプリ。
「フハッ!」
プリプリ、プリプリ、うんちを、プリプリ。
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
お友達は、私のうんちを見て、高笑い。
フハハハ、フハハハ、愉悦に包まれて。
ガンガン、ガンガン、耳鳴りがすごくて。
お腹に響く哄笑を聞きながら、プリプリ。
まだまだ、プリプリ、プリプリ、プリプリ。
もひとつおまけに、プリプリ、プリリリン。
「ふぅ……全部出たよ」
「お疲れ様」
「うん……見てくれて、ありがとうね」
スッキリした顔で感謝すると抱きしめられた。
「……好き」
「私のうんちが?」
「……バカ」
ドキドキ、ドキドキ、お友達の心音が伝わる。
「また懲りずに本を読むの?」
「うん……好きだから」
排泄を終えて、私はまた本を読む。
シクシク、シクシク、泣きながら。
ポロポロ、ポロポロ、泣きながら。
ペラペラ、ペラペラ、ページをめくる。
「……私よりも、本が好きなの?」
そう言われて、一旦、読書は中断する。
「おいで」
「いいよ……邪魔しちゃ、悪いし」
「それなら、私がそっちに行くね」
パタパタ、パタパタ、駆け寄って。
精一杯、思い切り、力一杯、抱きしめる。
思いが伝わるように、想いを伝えるように。
私は文章を書くのが下手くそだから。だから。
こうすることでしか、気持ちを伝えられない。
「好きだよ。大好き。大切なお友達だから」
「……トイレを見られたから?」
「……バカ」
それも含めて、私はお友達が大好きだった。
「涙が冷たいよ」
「ごめんね」
「でも、あったかい」
嬉しくて、ポロポロ、ポロポロ、涙が出る。
珍しく、お友達も、ポロポロ、ポロポロと。
綺麗な涙を流して、泣き合って、泣き疲れ。
眠ってしまったお友達を、胸に抱きながら。
私は懲りずに、また本のページを、めくる。
【大切で大好きなトイレのお友達】
FIN
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