南光太郎vs仮面ライダークウガ (158)

仮面ライダーBLACK×仮面ライダークウガのssになります。
よろしければどうぞお読みください。

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1988年9月某日―――


四国の瀬戸内海・播磨灘にある小豆島

その日、僕たちのヒーロー南光太郎はこの小豆島を訪れていた。

何故彼が遠路遥々この島を訪れたのか?それはある人物と会うためにあった。


「光太郎さん。よく来てくれたね。」


「いらっしゃい。光太郎さん。」


小豆島を訪れた光太郎をある親子が暖かく出迎えてくれた。

大門明とその息子の輝一。

父親の明は有名なオートレーサーで息子の輝一も相当な腕の持ち主だ。

そんな大門親子が何故この小豆島にいるのか?

その事情は今から一年前まで遡る。

大門明の父であり機械工学の権威でもある大門洋一博士が何者かによって殺害された。

大門博士を殺害したのは暗黒結社ゴルゴム。

博士はゴルゴムから文明破壊用バイク・ロードセクターの改造を任されていた。

だがその企みに反対した博士はロードセクターの在り処を息子の明に託して

ゴルゴムの要求には決して応じなかった。そのせいで博士はゴルゴムに殺害された。

生き残った明と輝一の親子はロードセクターを打倒ゴルゴムに燃える南光太郎に託した。

それから自分たちはゴルゴムの追っ手から身を隠すためこの小豆島に逃れていた。



「大門さんご報告します。遂にゴルゴムを壊滅させることに成功しました。」


「ありがとう光太郎さん!よく父の敵を討ってくれた!」


「これで世界は平和になるんだね。」


「ああ、ゴルゴムは滅んだ。もう恐れるものは何もないんだ。」


光太郎からゴルゴム壊滅の報せを受けて明と輝一はようやく念願が叶ったと大喜びした。

肉親の敵であるゴルゴムが討ち果たせた。これであの世にいる父も安らかに眠れるだろう。

ところで光太郎だがゴルゴム壊滅の報告以外にも大門親子に用事があった。

彼はあるモノを持ってきていた。それは一台のバイク。

これまでゴルゴムとの戦いを支えてくれた頼れる仲間ロードセクターだ。


「大門さん、僕がゴルゴムに勝てたのはロードセクターのおかげです。」


「その言葉、死んだ父に聞かせてあげたいですな。きっとあの世で親父も喜んでますよ。」


「それでなんですが…このロードセクターをお返しに上がりました。」


光太郎の申し出に大門は思わず驚いてしまった。

何故ならロードセクターは並の人間に乗りこなせるマシンではない。

このマシンは元々光太郎に譲るつもりで託したものだ。それを何故…?

そんな光太郎だが俯いた表情であることを語りだした。



「僕にはロードセクターの他に頼れるバトルホッパーという仲間がいた。けれど…」


ゴルゴムとの最終決戦時、バトルホッパーは傷つき倒れた。

仲間の最期を見届けた光太郎はゴルゴムを壊滅することに成功した。

だが…彼には何も残らなかった…

平和を取り戻しても…愛する人も…戦友も…誰も…

彼にとってこの勝利は虚しいものでしかなかった。


「それならせめてロードセクターだけでも…これはキミのものだ。」


「いや、ロードセクターは元々あなたから借りたモノだ。
それに僕の身近にいればロードセクターもいずれは…だから…」


光太郎の意思を大門は察した。

このまま光太郎の手元にあればいずれロードセクターもバトルホッパーの二の舞になる。

大事な戦友をこれ以上失いたくない。だから彼はロードセクターを返却すると望んでいた。



「わかりました。ロードセクターは私がこの手で守ります。」


「ですが覚えていてください。」


「こいつはあなたの相棒だ。いつの日か必ずあなたの元へ還るはずだ。」


そう言うと大門は光太郎からロードセクターを預かった。

戦士にも休息の時が必要だ。彼はもう十分戦った。

今はこれでいい。こうしてロードセクターは大門明の所有するガレージに収容された。



「光太郎さん!こっちだよ!」


その夜、光太郎は明と輝一に連れられてこの小豆島で行われている祭りに参加した。


「そいやっ!そいやっ!」


大門親子は先に祭りの広場にある神輿を見ようと行列を潜っていった。

まるで世界に平和が戻ったことを表すかのように祭りは活気だっていた。

街道には屋台が出店して

半被を着た若衆が神輿を担いで賑わい大人も子供も盛り上がっていた。


「これが平和なんだな。」


この様子を見て今まで暗く俯いていた光太郎の心に少しばかりの明るさが戻った。

親友秋月信彦の死を未だに受け入れずにいるがそれでも落ち込んでばかりはいられない。

この平穏な一時を自分たちも楽しもう。

光太郎もまた気持ちを切り替えて会場の中央広場と足を運ぼうとした時だ。



………うわぁぁぁぁぁッ!?


それはこの会場にいる人たちの耳には誰も伝わらない叫び声。

だが南光太郎は改造人間だ。彼は通常の人間では聞き取れない音を感知することができる。

祭りの会場を抜け出した光太郎は急いで叫び声のする方へと向かった。

そこは祭りの場から近い断崖絶壁の岩ばかりが立ち並ぶ海岸。


「誰かぁぁ!助けてぇぇぇぇっ!?」


この海岸に助けを求める声が響いた。

襲われているのは大門の息子の輝一だ。どうやら父親とはぐれてしまったようだ。

そんな輝一だがなにやら誰かに襲われようとしていた。

この様子を目撃した光太郎はすぐにこの輝一の元へと駆けつけた。


「やめろ!何をしているんだ!?」


すぐに輝一を逃がした光太郎は

この正体不明の何者かに何故こんな真似をするのかと問い質した。

すると夜空に浮かぶ月明かりにより照らされこの者の正体が暴かれた。



「お前は…怪人…?」


なんとそこにいたのは明らかに人間ではない異形の姿をした怪人だ。

まるでサメのごとく獰猛な魚類の姿に腰元に金属のベルトらしきモノを装着させた怪人。

この怪人を一目見て光太郎は察した。ヤツは人間を躊躇なく殺すと…


「答えろ!お前はゴルゴムの怪人か!?」


まさかゴルゴムの怪人が生き残っているのか?

いや、ありえない。ゴルゴムは創世王諸共光太郎がこの手で滅ぼしたはずだ。

だが現に怪人はこうして光太郎の目の前にいる。それではこの怪人は何者なのか…?

それでも今は怪人の所在については後回しだ。こいつが人間を襲うのは明らか。

そうなる前になんとしても倒さなければならない。

覚悟を決めた光太郎は拳を握り締め体内にある神秘の石キングストーンを発動させた。



「変…んん…身っ!」


その掛け声と同時にキングストーンの力により

光太郎の身体を強化皮膚リプラスフォームが包んだ。

光太郎の姿から緑のバッタ人間へと変わりやがて黒い戦士へと変化していく。

そして変身の際に使ったエネルギーが身体の関節部から蒸気として吹き出しながら

彼は自らの名を叫んだ。


「仮面ライダ――――ッ!BLACK――――ッ!!」


仮面ライダーBLACK

かつて暗黒結社ゴルゴムは南光太郎に改造手術を施した。

光太郎は世紀王ブラックサンに改造された。

だが囚われの身となった親友の信彦を救うため

彼は人類の自由と平和を守る戦士、仮面ライダーBLACKとしてゴルゴムと戦った。

そして戦いが始まった。怪人は自らの爪と牙を用いてライダーに襲いかかる。

その獰猛さはゴルゴムの怪人たちと引けを取らない強さだ。

だがライダーも負けてはいない。

これまで多くのゴルゴム怪人を倒し歴戦の勇者でもあるライダーは

得意のジャンプ力を活かして怪人の繰り出す攻撃を難なく交わしてみせた。

次第に苛立ちが募りだしたのか怪人は腹いせにこの海岸にある岩をぶち壊しこう叫んだ。


「クウガ…ギベ…クウガ!」


正直この怪人が何を言っているのかライダーには理解が出来ない。

どう聞いても日本語でもなく他国の言語ですらない。恐らくこの怪人特有の言語だろう。

唯一わかったのは自分のことを『クウガ』と呼んでいることくらいだ。

このクウガという言葉が何を指すのかはわからない。

だが怪人がクウガという言葉を忌み嫌っているのだけは理解できた。

この苛立ちで怪人に僅かな隙が生じたことによりライダーは攻撃に転じた。



「ライダーチョップ!」


そして鋼鉄をも切り裂く鋭利なライダーチョップが怪人の胸元を切り裂いた。

このダメージを受けて怪人は思わず怯んでしまう。今こそ仕掛ける時だ。

仮面ライダーはベルトに埋め込まれているキングストーンの力を発動。

その力はライダーの拳に漲った。


「ライダ――――ッ!パ――――ンチッ!!」


仮面ライダーのライダーパンチが怪人に命中!

その威力は凄まじく怪人はすぐに吹っ飛ばされてしまう。

なんとか立ち上がろうにも今の一撃で怪人は身体の自由を奪われ思うように動けない。

まずい…なんとしても動かなければ…そうでないとやられる…

そんな怪人の意思とは裏腹にこのチャンスを逃すライダーではない。

すかさずトドメの一撃を与えるために大地を蹴って大ジャンプを繰り出す。

そして空中で回転すると全パワーを自らの足へと集中させ渾身の必殺技を放った!


「ライダ――――ッ!キ――――ック!!」


そして仮面ライダーBLACKの必殺技ライダーキックが決まった。

必殺の一撃を受けた怪人は断崖絶壁のこの岸から海へと吹っ飛ばされた。


戦いが終わり変身を解いた光太郎は先ほど怪人が落ちた周囲を見渡した。

既に怪人の身体はどこにも見当たらない。どうやら海の底深くに落ちたのだろう。

こんな真夜中だ。これ以上の捜索は不可能。

それにライダーの必殺技を受けたからにはもう助かりはしない。

ところであの怪人は一体何者だったのか?

ゴルゴムにしてはどうも異質過ぎる。それでは別の組織の怪人か?

まさかゴルゴムの他に改造人間を作る技術のある組織がいるとは思えない。

それにこんな小島で怪人が何を企むというのか?

どう考えてもこの島で悪事を企む理由がない。

とにかくもう終わったことだ。光太郎は今もまだ賑わう祭りの会場へと戻っていった。


ここは小豆島の人間でもほとんど知る者がいない海岸の洞窟にある祠。

いつ誰が作ったのか不明だがもう何千年も…

いや、ひょっとしたら何万年も前から存在している古の時代から続く秘密の祠だ。


「ア…ウゥ…」


そこへ先ほどの戦いで傷ついた怪人が命辛々帰ってきた。

ここは彼の住処。もう何万年もこの地に居続けている。

本来なら彼はこの地の住人ではなかった。

だが一族の長に逆らい故郷を追放されこの地へとたどり着いた。

彼は人を狩ることをゲームの遊びのように愉しむ残酷な一族の出身だった。

故に彼もその習性に従いこの地で人を狩ろうとしていた。

そんな時、彼はこの祠を見つけた。



「バ…ミ…ジョ…」


この祠にはあるモノが納められている。彼はそれを祭壇として称して奉っていた。

祭壇は彼がこの地を訪れるよりもさらに前の時代から存在していた。

怪人の力が備わっている彼にはこの祭壇に神秘的な力が宿っているという直感があった。

この祭壇には神が宿っている。

それまで信仰心を持たなかった彼は唯一この祭壇に宿る神の存在を信じた。

ある日、試しにこの地にいる人間を襲いその者の血肉を祭壇に宿る神へと捧げた。


『………』


すると祭壇から声が聞こえてきた。

不気味さな気配を漂わせるがそれでいてどこか神々しさを感じさせる唸り声だ。

この声を聞いて彼はこう思った。神は自分が生贄を捧げてくれたことを悦んでくれたと…

このことがきっかけで彼はこの地で生きていくことを決めた。そしてある行いを始めた。

それは彼の一族が古来から行ってきた狩りだ。

自ら掟を作りそれに従い狩りを行う。彼も一族の掟に従い狩りを行った。

彼が決めた掟とは一年に一度だけこの島で行われる祭りの時だけ人を生贄として拐うこと。

生贄を祭壇の前で殺してその血肉を供物として捧げる。

そしていつの日か祭壇に祀られている神が自分の想いに応えてくれると信じていた。

だがライダーとの戦いに敗れてその命は風前の灯…

この長い歳月を掛けて大勢の命を祭壇に捧げたというのに応えることは決してなかった。

それだけが心残りと自らの命が朽ち果てようとした時だ。



『………』


声だ。どこからともなく声が聞こえてきた。

誰が発しているのかわからないが明らかに声が頭の中に響いてきた。

この声は聞き覚えがある。あの日、もうずっと昔一度だけ聞いた神の声だ。

まさか…神がようやく自分に応えてくれたのか…?

その期待に応えようと最期の力を振り絞り祭壇の前まで駆け寄った。

するとどうだろうか?祭壇の中から何かが自分の身体を包み出した。

このまとわり付くモノはなんだ?だが不思議と甘美な心地良さを感じてしまう。

怪人は思った。きっと神が自分に力を与えてくれるのだろうと…

ああ、これでゲゲルを続けられる。

古の時代、かつて自分たちグロンギと呼ばれる一族が行ってきたリントを狩るゲゲル。

かつて自分を追放した一族の長。ン・ダグバ・ゼバ

以前は一族から追放されたことを深く恨んでいた時期もあった。

だが今は一族から追放してくれたことを感謝すらしている。

そのおかげで自分は神と出会えた。そんな満足していると深い眠気に陥ろうとしていた。

どうやら強靭な身体を得るのに長い年月を費やさなければならないようだ。

いいだろう。いつまでも待ってみせる。伊達に何万年も待ち続けていたわけじゃない。

待ち続けてやる。そして神の力を得た時こそあの黒いクウガを倒す。

彼はそう心に誓いながら深い眠りについた。

それから12年の歳月が流れた。

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とりあえずここまで
続きはぼちぼちやっていきます
それではよいお年を…

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