【艦これ】ジョンストン「あたし、提督と寝たの」 (36)

親潮「そろそろですね」

提督「あぁ。向こうからの連絡だと、もう着いてもおかしくないはずだが……」

親潮「それにしても相手方の鎮守府、いくら何でも酷過ぎませんか?」

提督「確かに俺もそう思った。ブラック鎮守府ほどでは無いにしろ、バリバリの実力主義で少しでも戦果を稼げなかったら余所に追い出すだなんてなぁ……」

提督(仕事の一環で向こうの鎮守府を何度か訪れた時、どの艦娘もフラフラだったからな。恐らくブラックの基準スレスレで活動させているんだろう)

親潮「きっと心身共に疲れているでしょうから、私達で支えてあげないといけませんね!」

提督「そうだな」

コンコンコン

親潮「……来たみたいです」

提督「あぁ。どうぞ」

ガチャ

ジョンストン「……失礼します」

提督「……!」

親潮「……!」

提督(案の定、やつれた顔をしてるな……)

親潮(目が死んでる……)

ジョンストン「フレッチャー級USSジョンストンよ……全ての弾が尽きるまで、艦隊を守る為に全力を尽くすわ……」

提督「……よろしく頼む。とはいえ、いきなり出撃しろとは言わない。まずはここの雰囲気に慣れてもらうことが先だ」

提督「来てもらったばかりで悪いが、早速君の部屋に案内する。親潮、頼めるか?」

親潮「はい!」

ジョンストン「Thanks……はぁ……」

提督(……これは重症だな)

親潮(余程辛いことがあったのかな……)

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


深海棲艦「全員……沈メル……!」

ジョンストン「くっ……!」

ジョンストン(ここでちゃんと仕留めないと……また役立たずって……!)

ジョンストン「お、Open fire……!」ズドン!

深海棲艦「アアアアアッ!?」ゴボゴボ…

親潮「やった!これで……」

旗風「いえ、まだです!」

空母棲姫「ヴヴ……マダダ……!」

ジョンストン「あ……」

ジョンストン(し、仕留めきれなかった……あたし、また……!)

親潮「司令!夜戦突入の許可を!」

提督『分かった!だが絶対に無理だけはするな!』

親潮「了解!」

ジョンストン「……!」

ジョンストン(そ、そうだ……まだNight battleがあったんだ……!今度は必ず……!)

ジョンストン「……も、More Shells!」ズドドドドッ!

空母棲姫「ガアアアアッ!?」

旗風「今ので大破まで追い込みました!」

ジョンストン(大破……?それじゃダメ!絶対に撃沈しなきゃいけないのに……!)

深海棲艦「グッ……コノォッ!」ズドドドドッ!

旗風「きゃあっ!?」

ジョンストン(でも、まだチャンスはある……!)

提督『どうした!?』

親潮「ざ、残党の攻撃が激しすぎて……!」

提督『仕方がない、ここは撤退する!』

ジョンストン「なっ!?」

親潮「分かりました!皆さん、急いでここから離脱します!」

ジョンストン「ちょ、ちょっと待って!?まだあいつらを全員仕留めて無いのに!」

親潮「今は攻撃より安全の方が重要です!」

ジョンストン「だ、だけど……!」

深海棲艦「逃ガスカ……!」ズドドドドッ!

ジョンストン「くぁぁ……っ!?」

旗風「ジョンストンさん!」

親潮「しまっ……ジョンストンさんが中破しました!」

提督『何だって!?』

ジョンストン「う、ぁ……」ガクガク

ジョンストン(やっちゃった……!私のせいで、自軍に損害が……!)

親潮「こうなったら引き摺ってでも連れて帰ります!」ガシッ

ジョンストン「あっ……」

親潮「死にたくなければ急いで下さい!」

ジョンストン「……っ!」

バシャシャシャシャ…!

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


提督「……そうか」

親潮「はい。申し訳ありません……」

ジョンストン「………」

ジョンストン(どうしよう……あたし、また役立たずの無能扱いされて……ここを追い出されて……)ガクガク

提督「いや、親潮達が無事で何よりだよ」

ジョンストン「……え?」

提督「今回は敵勢力の実力を見余った俺のミスだ。本当にすまなかった!」ペコッ

親潮「し、司令!?そんな、私達の実力不足が原因で……」アセアセ

ジョンストン「……ちょ、ちょっと待ってよ」

提督「うぐっ、本当にすまない……次の出撃では同じミスを犯さないようにするから……」

ジョンストン「そうじゃなくて……責めないの?」

提督「……責める?どういうことだ?」

ジョンストン「だって、あたし達は敵を沈めるどころか、こっちが傷ついて帰って来たのよ?なのに貴方は、それを咎めず謝罪するなんて……」

提督(……なるほど。だからジョンストンはさっきまで、必要以上に敵を沈めることばかり考えていたのか)

親潮「ジョンストンさん……」

提督「……少なくとも、俺は戦果より皆の命や安全を優先している。皆が危険だと思ったら、迷わず撤退する。例え周りから臆病者のレッテルを張られたとしても」

ジョンストン「……!」

提督「って、皆を戦場に送り出している奴が言っても説得力無いよな……すまない。せめて俺も前線に出ることが出来れば……」

親潮「いえ、それこそ仕方ないですよ!私達は元々、深海棲艦と戦う為に生み出されましたし、司令の指示があるお陰で私達はまともに動けるんです!適材適所ですから!」アセアセ

提督「……ありがとうな」

ジョンストン「………」

提督「とにかく、今日はゆっくり入渠して体を休めてほしい」

親潮達「はい!」

ジョンストン「………」

親潮「ジョンストンさん、行きましょう。あ、ドックまで案内しますね?」

ジョンストン「……うん」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


カポーン…

親潮「はふぅ……♪疲れた体にお湯が染み渡ります……♪」

ジョンストン「……ねぇ」

親潮「……?」

ジョンストン「親潮の所の提督は……いつもあんな感じなの?」

親潮「はい。司令自ら仰ってましたが、戦果を稼ぐことよりも私達の安全を重視してくれるんです」

親潮「それだけじゃなく、出撃後は必ず休暇を与えて下さって……出撃時以外は、皆リラックスしているんですよ?」

ジョンストン「………」

親潮「……ジョンストンさんがいた鎮守府は、過酷な環境だったんですか?」

ジョンストン「……えぇ。出撃すれば敵の全滅は最低条件。味方が少しでも被弾したり、敵を少しでも仕留め損なったら……」

親潮「……激しく叱責された、と」

ジョンストン「………」コクリ

親潮「やっぱり……一応、ブラック鎮守府の基準を満たしてはいないみたいですけど、居心地が悪いことには変わりありませんね」

ジョンストン「だから、かな……さっき貴方の提督が自分のミスを謝罪した時は、本当に驚いたもの」

親潮「司令、いつも『自分が未熟だから艦娘に辛い思いをさせてしまう』と悩んでましたから……いや、ちょっと待って下さい。『貴方の提督』?」

ジョンストン「だって、左手の薬指に……」スッ

親潮「あっ……そうでした。私、この前ケッコンカッコカリしまして……」モジモジ

ジョンストン「……単なる戦力の向上の為、という訳では無さそうね」

親潮「……はい。司令が『君にはずっと支えられてきた。これからは、俺が君を支える……いや、支えさせて欲しい』と言って下さって……えへへっ♪」

ジョンストン「………」

ジョンストン(前の提督なら、重婚は当たり前であたし達への愛情なんて無かったけど……ここの提督は、違うのかな……)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ジョンストン「………」スタスタ

提督「お、ジョンストン。どうだ?この前の出撃の疲れは取れたか?」

ジョンストン「……えぇ。お陰様で」

提督「なら良かった。でも、例え体の傷が治っても、疲労感が残っていたらすぐに言ってほしい」

ジョンストン「どうして?損傷が無くなったのなら、すぐにでも出撃出来るのに……」

提督「心の疲れはバケツや入渠でどうにかなるものじゃない。皆には、出撃の辛さを引きずって欲しくないんだ」

ジョンストン「それって、次の出撃でミスが増えるから?」

提督「確かにそれもあるけど、それ以上に……出来る限り、皆には出撃以外の時は普通の人間と同じ生活を送ってもらいたいからな」

ジョンストン「……!」

提督「艦娘は深海棲艦と戦う為の存在とは言っても、心は普通の人間と変わらない。だからこそ、一部の鎮守府のように皆を武器として扱うのは……嫌なんだ」

ジョンストン「………」

提督「ま、俺個人の考えに過ぎないんだけどさ。でも、そのスタンスを変えるつもりは無いんだ」

ジョンストン「……物好きなのね。あたし達のような恐ろしい兵器のことを、そんな風に考えるなんて」

提督「そう言うなよ。いや、俺が物好きかはともかく、皆は嬉しい時は喜び、悲しい時は泣いて、楽しいことがあれば笑う……ほら、立派な人間じゃないか」

ジョンストン「………」

提督「ただ、この話を大本営のお偉いさん達に話したら大笑いされたっけなぁ。ははっ……」

ジョンストン「………」

ジョンストン(立派な人間……)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


提督「よし、今日の演習終わり。各自解散して休憩ー!」

艦娘達「はい!」

ジョンストン「えっ、嘘……」

提督「ん?どうした?」

ジョンストン「たったこれだけ!?まだまだ時間はあるのに、もう終えるだなんて……」

提督「いくら演習と言えども、無理をさせて想定外の事故が起こったら大変だからな」

ジョンストン「だけど……」

提督「焦らなくて良いさ。ここは君が元々いた鎮守府とは違って、戦果を稼ぐことを強制するつもりは無い」

提督「かといって、出撃で失敗したとしても皆を責めるつもりも無い。それは皆に指示を出す俺の責任だからな」

ジョンストン「………」

提督「……あまり自分を追い詰めるようなことを考えるな」ポンッ

ジョンストン「んっ……」

提督「敵を倒すことより、生きて帰ることの方が何十倍も重要なんだ。最悪、勝てないと思ったら敵前逃亡しても良い」ナデナデ

提督「もちろん国を守る組織である以上、出撃を避けることは出来ないが……それでも、国民だけじゃなく皆の命も凄く大切なんだ」ナデナデ

ジョンストン「………」

提督「こんなこと、大本営のお偉いさん達に言ったら怒鳴られるだろうけど……」ナデナデ

ジョンストン「………」

提督「……あっ、す、すまん!つい手を……セクハラだったよな?嫌だったよな?本当にすまない!」

ジョンストン「……ううん、別に、気にしてないから」

ジョンストン(……提督の手、あったかかった。こんな風に、撫でて貰ったことなんて……向こうでは、一度も無かったけど)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ジョンストン「……親潮」

親潮「何ですか?」

ジョンストン「あたし、鎮守府なんてどこも艦娘に厳しい場所だと思ってたわ。どんな提督も、あたし達を兵器としか見ていなくて……」

親潮「………」

ジョンストン「だけど、ここは違う。誰もが生き生きとしていて、戦う時でも……上手く言えないけど、活力に満ち溢れているというか……」

親潮「……それは間違いなく、司令のお陰です」

ジョンストン「やっぱりそうよね……提督からあんなに優しくされたこと、今まで一度も無かったもの」

ジョンストン「本当に、あたしの中の今までの常識が破壊されてばかりだわ。しかも、新しく入ってくる常識は……あたしにとって、嬉しいことばかりで……」

親潮「ふふっ、そうでしょう?」

ジョンストン「……何で親潮が胸を張ってるのよ」

親潮「だって奥さんですから!と言っても、まだカッコカリですけどね……えへへっ」

ジョンストン「………」

ジョンストン(あたしも、最初からこの鎮守府で活動していれば……親潮達のように、辛い思いをしなくて済んだのに……)

ジョンストン(それだけじゃない。提督にも、もっと遠慮なく撫でてもらったり……って、何を考えてるのあたし!)フルフル

親潮「……ジョンストンさん?」

ジョンストン「……負けないわよ、親潮。すぐに追いついてみせるわ!貴女はあたしのライバルだからね!」

親潮「あ……はいっ!とはいえ、私だって簡単には追いつかせませんよ?」

ジョンストン(提督は焦るなって言ってたけど、やっぱり提督の力になりたいもの。今はまだ実力不足でも、いずれは……!)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


親潮「てーっ!」ズドン!

ジョンストン「Open fire!」ズドン!

提督「………」

提督(二人とも、凄いな……親潮はもちろん、ジョンストンも短期間でメキメキ実力を付けてきている)

提督(それにどことなく、最近のジョンストンは初対面の時よりも元気だ。ここの雰囲気に慣れてくれた結果だろうか)

親潮「司令!」タタタッ

ジョンストン「貴方ー!」タタタッ

提督「お疲れさん。二人とも、随分強くなってきたなぁ」

親潮「司令のお陰ですよ」ニコッ

提督「そんなことないさ。親潮達の努力の成果だって」

ジョンストン「これなら戦闘でも十分役に立てるわよね?」

提督「あぁ。でも、無理はするなよ?実力を過信するのは危険だからな?」

ジョンストン「もうっ、分かってるわよ。ずっと同じことばかり言うんだから……」

提督「ははっ、すまんすまん」

親潮「し、司令……それで、あの……いつものを……」モジモジ

提督「……相変わらず甘えん坊だな」ポンッ

親潮「あっ……」

ジョンストン「……!」

提督「よしよし、偉いな~」ナデナデ

親潮「んふぅ……♪」

ジョンストン「……っ」ズキッ

ジョンストン(……そうよね。提督と親潮は恋人同士だし、それくらい……普通よね。うん……)

ジョンストン(だから、あたしの胸が痛いのは気のせい……気のせいに決まってる。だって、提督には親潮が……)

ジョンストン「………」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ジョンストン「……はぁ」

ジョンストン(やっぱりダメ……どれだけ自分を誤魔化そうとしても、想いに嘘はつけない……)

ジョンストン(あたし、提督のこと……好きになっちゃった。だって、しょうがないでしょ……?)

ジョンストン(前の提督と比べて拍子抜けするくらい優しくされて、普段の生活でもあたしのことを労わってくれて……)

ジョンストン(出撃や演習で良い結果を残せば褒めてくれるし、失敗しても無事に帰って来てくれたと心配してくれる……)

ジョンストン(心が弱ってる時に、こんなことされちゃったら……そ、そういう気持ちを抱いちゃって当然じゃない……!)

ジョンストン「……っ」ズキッ

ジョンストン(でも、それはダメ。提督には……あの人には、親潮がいる。あたしがここに来る前から、想いを通じ合った人がいる……)

ジョンストン(そんな中に、あたしが割り込んで想いを断ち切るだなんて……許されることじゃない)

ジョンストン(だけど……日に日に、提督への気持ちは強くなっていく一方で……我慢しようとしても、心が提督を求めて……)

ジョンストン「親潮さえ、いなければ……」ボソッ

ジョンストン「……ハッ!?」

ジョンストン(あたし、今、何を言って……!仮にも提督と一緒にあたしを気遣ってくれた相手に、何てことを……!)

ジョンストン「………」

ジョンストン(頭では分かってる。親潮は提督の恋人で、あたしの親友だって……だけど、それと同じくらい……)

ジョンストン(あたしが提督に付け入る隙を作らない、邪魔な存在だと思ってしまってる……あたし、最低ね……)

ジョンストン「………」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


親潮「えっ、出張ですか……?」

ジョンストン「……!」

提督「あぁ。友人が大本営から大規模作戦を任されたのは良いが、所属している艦娘だけでは戦力的に厳しいらしい」

提督「だから俺の鎮守府からも、何人か助っ人を出して欲しいと頼まれてな」

親潮「でも、それならどうして司令は……うちは大本営から作戦を任されなかったんですか?」

提督「……多分、うちの戦果だと戦力が不安だと思われたんだろう」

親潮「あー……」

提督「そこで親潮を含む、うちの練度上位組の何人かを向こうに送ろうかと思う」

提督「相手については心配いらない。向こうと俺は昔からの友人だし、艦娘にも俺と同じように接してくれるはずだ」

提督「それにあくまでも出張だから、作戦が終わればここに戻って来られる。本当にすまないが、頼めないか?」

親潮「………」

提督「どうしても嫌なら、他の艦娘で代役を立てるが……」

ジョンストン(お願い、親潮……出張に行って……!)

親潮「……いえ、行きます」

ジョンストン「あ……!」パァッ

提督「ありがとう。助かるよ」

親潮「いえ、司令にはいつもお世話になっていますから。何より恋人として、司令のお力になれるなら頑張ろうと思えます!」

親潮「ただ、鎮守府に帰って来た時は……出張していた分、沢山甘えさせて下さいね?」

提督「それくらいならお安い御用だ!」

ジョンストン「………」

ジョンストン(親潮がいなくなるということは、提督に堂々とアピール出来るチャンスってことよね……)

ジョンストン(ごめん、親潮……貴女がいない間の時間、存分に利用させてもらうわ。だって、もう……耐えられないから……!)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ジョンストン「はい、どうぞ」コトッ

提督「おぉ、美味そうなサンドイッチだ。いつもすまないな、秘書艦を名乗り出てくれた上に、こんなことまでしてもらって……」

ジョンストン「気にしないで。あたしを拾ってくれた恩返しみたいなものだから」

提督(その言い方だと捨て犬や捨て猫みたいだな……)

提督「それじゃ、いただきます。はむっ……うん、美味い!」

ジョンストン「ふふっ、良かった」ニコッ

ジョンストン(まずは胃袋から掴む!親潮は確か和食が得意って言ってたから、あたしは洋食で勝負よ!)

提督「手が止まらない……!本当に美味いな、これ……!」

ジョンストン「だってあたしの手作りだもの」

提督「えっ!?そうだったのか……何だか申し訳無いな。ただでさえ秘書艦としてサポートしてもらっているのに……」

ジョンストン「だから気にしないでって言ってるでしょ?あたしがしたくてしてることなんだから!」

提督「そ、そうか……」モグモグ

提督(親潮の料理とはまた違った美味さがある。甲乙つけ難いな……)

ジョンストン「………」ニコニコ

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


提督「そこまで!各自解散して休憩に入るように!」

艦娘達「はい!」

ジョンストン「お疲れ様。皆どんどん強くなってきてるわね」

提督「あぁ。指示している立場から見ても、みるみる動きが良くなっていくのが分かる。その分、慢心しないか心配だけどな……」

ジョンストン「大丈夫よ。普段からあれだけ『安全第一』だとか『少しでも危ないなら即撤退』と言ってるんだし」

提督「だと良いけどな……はぁ……」

ジョンストン「……無理してない?」

提督「え?」

ジョンストン「だって、今……暗い顔してたから」

提督「……あぁ、違う違う。今回も無事に演習を終えられて良かったなって」

ジョンストン「本当?」ジー

提督「本当だって……」

提督(ず、随分と顔が近……くも無いか。頑張って背伸びしてるのがちょっと微笑ましい)

提督(それに、今の溜息の理由を話すのもなぁ……まさか『親潮に会えなくて寂しい』なんて、恥ずかしくて言えないって)

ジョンストン「なら良いけど……」

ジョンストン(嘘ね。きっと、親潮と会えないのが寂しくて……)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


提督「……これで良し、と」

ジョンストン「……いつもこれだけの書類を片付けてるの?」

提督「まぁ、それが提督の仕事だからな」

ジョンストン「大変ね……」

提督「いや、実際に海に出て戦う皆と比べたら……この程度で参っていたら、それこそ皆から罵倒されても仕方ないくらいじゃないか?」

ジョンストン「そんなこと無いわよ。貴方があたし達の為にいつも頑張ってくれてるのは知ってるもの」

提督「ありがとうな……」

提督(ジョンストンがいつもいてくれるお陰か、俺も寂しさを感じなくて……いや、全く感じないというのは無理だな)

提督(けど、それでも……誰かが隣にいてくれるというのは、やはり心が安らぐな。決して彼女を親潮の代わりと見ている訳じゃないが)

ジョンストン「……やっぱり、親潮がいなくて寂しい?」

提督「っ!?」ギクッ

ジョンストン「………」ジー

提督「そ、そんなこと無いぞ?いくら恋人とはいえ、ずっと依存しているようでは親潮に迷惑がかかるからな!」

ジョンストン「………」ジー

提督「……すまん。正直に言うと、少し寂しい。だけど、仕事に私情を挟んでミスするようなことはしないよう努めるから」

ジョンストン「……そっか。でも大丈夫……あたしがいるから。愚痴でも弱音でも、何でも受け止めるから!」

提督「いや、そういう訳にはいかないだろ。心配してくれるのはありがたいけど、流石にそこまで面倒見てもらうのは……」

ジョンストン「………」

ジョンストン(う~ん、中々ガードが固いわね……でも、あたしに『本当は寂しい』と言ってくれたということは、かなり信用してもらえてる証拠よね?)

ジョンストン(この調子なら、後少しで……!)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


親潮「はぁ……」

友提督「もう何十回目だ?その溜息」

親潮「あっ……す、すみません」

友提督「いや、俺は別に構わないけどさ。よっぽどあいつと熱々なんだなって」ニヤニヤ

親潮「うぅ……」カァッ

友提督「……ごめんな?俺があいつに無理言ったばっかりに」

親潮「……いえ、私が司令と話し合い、自分の意志で出張に行くと決めた結果ですから。友提督さんが責任を感じることはありません」

友提督「そう言ってもらえると気が楽になるけど……」

親潮「ところで、この作戦は後どれくらい続くんですか?」

友提督「そうだな……今の進行具合だと二、三ヶ月くらいか?奴らの強さ次第で多少前後すると思うけど」

親潮(後二、三ヶ月……先は遠いけど、司令の為に頑張らないと……!ただ……)

親潮(司令が心配なんです。私と会えなくて寂しい思いをしているのかなと思うと……)

親潮(あぁっ!出来ることなら今すぐにでも司令に会いに行きたい!そして抱き締めて貰って撫でて貰いたい!)

親潮(だけど司令と約束した以上、ここでの仕事をやりきらないと……うぅ~っ!)

友提督「………」

友提督(やっぱり、相当あいつに会いたいんだな……こっちでも頑張って作戦を早く終えられるよう努力するか)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


提督「………」スタスタ

提督(最近、どうしても親潮とジョンストンを重ねて見てしまう……)

提督(もちろんそんなことでは男として失格だし、親潮とジョンストン二人に対しても失礼だ)

提督(けれど、親潮と会えない日が続くことは……俺にとって、かなりのダメージだったらしい)

提督(まさかここまで親潮と一緒にいるのが当たり前になっていたとは……その結果がこれだ)

提督(今では仕事をしていない時はいつも親潮のことを考えている。それほどに俺は寂しさを感じていたらしい)

提督(でも、ジョンストンと話している時だけは……寂しさを感じずに済んだ)

提督(これって、まさか……いや、そんな訳ないよな?俺には親潮がいるんだ。他の女性をそういう目で見るなんてことは……)

提督「………」スタスタ

提督(しかし、このタイミングでジョンストンは俺を自室に呼び出した。何やら大事な話があるらしく、一人で来て欲しいと言っていたが……)

提督(本当は、恋人に黙って他の女性と二人きりになるのは不味いと思うが、彼女は事情が事情だからな……)

提督(もしかして、前の鎮守府で虐待を受けていたとか……?あの様子はただ事では無かった。提督として、ちゃんと話を聞かないと……)

提督「………」コンコンコン

「……提督?」

提督「あぁ。約束通り、一人で来た」

「……Thanks。鍵は開いてるから、中に入って?」

提督「分かった。お邪魔します」ガチャ

提督「………」キョロキョロ

提督(親潮の部屋と比べても、それほど違いは無いな……家具の種類が違うくらいか)

ジョンストン「………」

提督(おっと。部屋を見回している場合じゃない。ジョンストンの話を聞かないと……!)

提督「……それで、話とは何だ?」

ジョンストン「……うん。あのね……?」

提督「………」

提督(どんな話でも驚くな。彼女は恐らく、俺に一定の信頼を置いてくれているからこそ話してくれるんだ)

提督(だからこそ、彼女の話を真剣に受け止めないといけない。そして……真剣に考えないといけない)

ジョンストン「……あたしが前にいた鎮守府のことは、もう知ってるわよね?」

提督「……あぁ」

ジョンストン「バリバリの実力主義で、冷血な提督で……ずっとストレスを感じ続けていたわ」

ジョンストン「どんなに頑張っても、結果が伴わなければ罵倒され、役立たず扱い……そんな毎日で、あたしの心は潰れそうになった」

提督「………」

ジョンストン「でも、そんな時……あたしはここに追放された。けど、結果的にそれは正解だったの」

ジョンストン「戦うことよりも、あたし達のことを大切にしてくれる提督……貴方と出会えたことが、あたしの人生を変えたわ」

提督「………」

ジョンストン「親潮達もお互いに思いやっているし、あたしはここに追放されて良かった。心の底から嬉しかった」

ジョンストン「でも、一番嬉しかったのはね……?」スッ…

提督「……ん?」

ジョンストン「………」

提督(お、おい。俺の頬を両手で掴んで何を……まさか!いや待て!まだそうと決まった訳じゃ……でも彼女の顔がどんどん近づいてきて……)

ジョンストン「……んっ」チュッ

提督「……っ!」

ジョンストン「……ふぅ」

提督「じょ、ジョンストン……?何を……」

ジョンストン「……提督」









ジョンストン「あたし……貴方のことが好きなの。好きになってしまったの」

提督「……!」







ジョンストン「………」

提督「だ、だが、俺には親潮が……」

ジョンストン「分かってる。そんなこと……分かってる、けど……!仕方ないじゃない……!」

提督「……!?」

ジョンストン「あんなに温かく迎え入れられて……人として、大切に扱ってもらって……」

ジョンストン「それに加えて、優しく労わってもらえたら……好きになるに決まってるでしょ!?」

ジョンストン「貴方はあたしに人の温もりを与えてくれた!優しさで冷え切った心を溶かしてくれた!」

ジョンストン「貴方が親潮と付き合ってることなんて関係無い!どうしてくれるの!?あたしの心はもう、貴方のことで一杯なのよ!?」

ジョンストン「もう、我慢出来ないよ……!この気持ち、どうすれば良いのよ……!」ジワッ

ジョンストン「いっそ、恋人以外には冷たい態度だったら良かったのに……貴方はあたし達にも平等に接してくれた……」ポロポロ

ジョンストン「でも、好きになることは許されない……ずっとこの気持ちを抑えてきたけど、もう無理なのよ……!」ポロポロ

提督「……ジョンストン」

ジョンストン「提督……貴方が好き……好きなの……!親潮よりも、もっと……!」ポロポロ

提督「………」

ジョンストン「どうしても、ダメなの……?」ポロポロ

提督「………」

ジョンストン「黙って無いで、何か言ってよ……!振るなら、あたしが貴方を憎むくらい……こっぴどく振ってよ……!」ポロポロ

提督「………」

ジョンストン「ねぇってばぁ……!」ポロポロ

提督「………」

ジョンストン「……こういう時、否定も肯定もされないって……凄く、残酷なことなのよ……?貴方だって、分かってるでしょ……?」ポロポロ

提督「……それ、は」

ジョンストン「でも……貴方が否定しないってことは、まだチャンスがあるってことよね……?」スルッ…

提督「……っ!?」

ジョンストン「ねぇ、あたしを……抱いて?」

提督「な、何を言って……」

ジョンストン「親潮よりも、あたしを見て……!」ギュッ

提督「うっ……」

提督(親潮よりも大きい胸の感触が、ダイレクトに伝わって……)

ジョンストン「あたしの気持ちを受け入れる気が無いのなら、今すぐあたしを引き剥がして?」

ジョンストン「でないと、あたし……貴方が受け入れてくれたって、思い込んじゃうわよ……?」

提督「……ジョン、ストン」

ジョンストン「……貴方だって、寂しいんでしょ?親潮と会えなくて……」

提督「……!」

ジョンストン「だったら、親潮を捨てて……あたしを愛して?あたしは貴方の傍から絶対に離れたりしないわ」

ジョンストン「いつ帰って来るかも分からない出張で、貴方に寂しい思いをさせたりはしない……!」

提督「う、ぅ……」

ジョンストン「……んっ」チュッ

提督「んむっ……」

ジョンストン「んはぁ……ねぇ、しよ……?親潮のことなんか忘れて、あたしを見て……?あたしを愛して……?」スリスリ

提督「………」

提督(俺は……親潮がいない寂しさを、ジョンストンで埋めようとしていた)

提督(だが、たった今……彼女の気持ちを聞いて、俺はそれが間違い……いや、とんでもない誤解だと気づいた)

提督(確かに彼女に親潮を重ねて見ていたことは否定出来ない。それほどまでに、俺は親潮と離ればなれになってしまったことが辛かった)

提督(でも、それ以上に……彼女を気にかけていたのも事実であり、いつしか仲間以上の意識を抱いてしまっていた)

提督(かつて彼女が所属していた鎮守府の実情は当然把握していた。だからこそ、俺は彼女を元気付けようと頑張った)

提督(それがあろうことか、恋人を差し置いて……彼女に特別な意識を抱いてしまうことになってしまうなんて)

提督(だけど、それを否定したくても……出来なかった。彼女の真っ直ぐな告白は、俺の心に入り込んできた)

提督(数ヶ月間とはいえ、彼女と二人きりで過ごした時間……そして、辛い思いをした彼女を労わる気持ち……)

提督(この二つが、俺の中で彼女の存在を大きくしてしまった。今はもう、彼女がいないことに寂しさを感じるようになってしまっている)

提督「………」

親潮『司令!』

提督「………」

ジョンストン「貴方ぁ……」ギュッ

提督「………」

提督(すまない、親潮……俺は……俺、はぁ……っ!)

提督「……っ!」ガバッ

ジョンストン「あっ……♪」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


提督「………」

ジョンストン「………」

提督(やってしまった……まだ、親潮とも一線を超えたことが無かったのに……)

ジョンストン「……貴方」

提督「……すまない」

ジョンストン「もう、謝らないで……」ギュッ

提督「………」

ジョンストン「あたし、嬉しかったの。貴方が親潮よりも、あたしを選んでくれたことが……」

提督「………」

ジョンストン「ふふっ……痛かったけど、貴方が初めての相手で良かったわ」ニコッ

提督「……ジョンストン」

ジョンストン「何?」

提督「今更言い訳する気は無い。やってしまったことの責任は取る。でも……本当に、俺で良いのか?」

ジョンストン「どうして?」

提督「だって……恋人を裏切るようなクズ男だぞ?」

ジョンストン「誘ったのはあたしの方だし、親潮を悲しませるという意味ではおあいこよ」

提督「……そうか」

ジョンストン「うん、そう」

提督「……っ」ギュッ

ジョンストン「……♪」ギュッ

ジョンストン(親潮……あたしにチャンスを与えてくれて感謝してるわ。貴女が恋人より仕事を選んでくれたお陰で……)

ジョンストン(こうして、あたしは提督と一つになることが出来た。恨むなら、自分の選択を恨みなさいよ?ふふっ♪)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


数ヶ月後

親潮「司令!戻りました!」ガチャ

提督「……っ!あ、あぁ。お帰り……」

親潮「……?」チラッ

ジョンストン「♪」

親潮「………」

親潮(ジョンストンさん、司令の上に座ってる……司令もそれを気にせず仕事してるし……ただのスキンシップ、かな……?)

親潮(それに司令も少し様子がおかしいような……私ともあまり目を合わせようとしませんし、どこか余所余所しい感じが……)

親潮「作戦は大成功です!友提督さんも『提督のお陰で助かった!』と喜んでいましたよ!」

提督「そ、そうか……皆に出張してもらった甲斐があったな」

ジョンストン「そうね。流石じゃない!」スリスリ

親潮「………」イラッ

提督「お、おい。あまり引っ付くのは……」

ジョンストン「これくらいアメリカでは普通よ?ふふっ♪」スリスリ

親潮「……ジョンストンさん。その、あまり司令を困らせるのは……」イライラ

ジョンストン「あ、ごめんなさい。でも、あたし秘書艦だしこれくらいは良いでしょ?ね、貴女♪」ギュッ

提督「……ま、まぁ、その、うん」

親潮「………」ピキッ

親潮(やっと司令に甘えられると思ったのに……ジョンストンさん、どういうつもりですか……?)ジトッ

ジョンストン「貴方……♪」スリスリ

提督「………」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


親潮「………」

親潮(あれから私は全くと言って良いほど司令に甘えることが出来なかった)

親潮(司令が仕事を終えるタイミングを待っていたら、ここぞとばかりにジョンストンさんが割り込んで来る)

親潮(ジョンストンさんは『秘書艦の特権』と言って司令から離れないし、司令もそれを嫌がる素振りを見せない)

親潮(いや、司令はお人好しだから、もしかすると内心では困っていてもジョンストンさんを拒絶出来ないだけかもしれない)

親潮(いや、そうに違いない。だって、私はこの数ヶ月間……司令と会えず、ずっと寂しさに耐える日々だった)

親潮(自惚れじゃなければ、司令もきっと……私と会えなくて、寂しがってくれていた……と思いたい)

親潮(だったら、私のやるべきことは決まっている。司令に甘える為、そしてお人好しな司令の代わりに……私がガツンと言う)

親潮(これ以上司令の負担になるようなことはやめてほしい、と。こちらも少し……いや、かなりイラついているので、言い方は辛辣になるかもしれない)

親潮(だけど、久々に司令と会えたのに……ずっと邪魔され続けてきたのだから、それくらいは許してほしい)

コンコンコン

親潮「どうぞ。鍵は開いています」

ジョンストン「突然呼び出してどうしたの?」ガチャ

親潮「……心当たりはありませんか?」

ジョンストン「質問に質問で返さないの」

親潮「………」イラッ

ジョンストン「ま、そうね。心当たりなら……あるわ」

親潮「……そうですか。なら、言わなくても……分かりますよね?」

ジョンストン「そうやって言外に意味を含ませるのはやめた方が良いわよ。言いたいことがあるならハッキリ言いなさい」

親潮「………」ピキッ

ジョンストン「………」

親潮「……えぇ。なら言わせてもらいます。それはもう直球で。ジョンストンさん、これ以上司令に迷惑をかけるのはやめて下さい」

ジョンストン「へぇ……」

親潮「な、何ですか……」

ジョンストン「いや、直球と言う割には回りくどく言ってきたなって」

親潮「どういう意味ですか?」

ジョンストン「貴女の言いたいことって、そんな社交辞令みたいなことじゃないでしょ?」

親潮「っ!」

ジョンストン「………」

親潮「……もしかして、喧嘩を売っているつもりですか?」

ジョンストン「貴女がそう捉えるならそうじゃないかしら」

親潮「……分かりました。なら遠慮なく言わせてもらいます。私の司令とイチャつくのはやめて下さい」

ジョンストン「やっと本音が出たわね」

親潮「貴女が言えと言ったんでしょう」

ジョンストン「ま、確かにね。でも……ふふっ」

親潮「……何がおかしいんですか」

ジョンストン「だって、あれだけ提督を放りっぱなしにしておいて、未だに恋人面してるのがおかしくって……」クスクス

親潮「こ、恋人面……?」ピキピキッ

ジョンストン「ねぇ、親潮。提督を見ていて、何か気づかない?」

親潮「………」

ジョンストン「この前、貴女が鎮守府に帰って来た時……提督の態度が少し余所余所しく感じなかった?」

親潮「っ!?な、何を言って……」ズキッ

ジョンストン「まるで自分とは同じ空間にいるのが気まずいかのような……」

親潮「やめて下さい!司令と私は恋人同士なんですよ!?そんなはずありません!あり得ません!」

ジョンストン「……まだ分からない?」

親潮「だから何がですか!」

ジョンストン「私ね、提督のことが好きなの」

親潮「え……」

ジョンストン「それもLikeじゃなく、Loveの方でね」

親潮「い、いきなり何を……」

ジョンストン「いいから聞きなさい。良い機会だから話しておくわ。私はここに来て、提督と過ごす内に……彼に惹かれたの」

親潮「……!」

ジョンストン「だって、心が弱ってる所をあんなに優しくしてもらったのよ?前の提督や鎮守府とは何もかもが違う」

ジョンストン「彼には貴女がいることだって分かってた。けど、それでもあたしは彼のことが好きでたまらなくなったの」

親潮「………」

ジョンストン「だから我慢した。ずっと我慢した。どうして親潮なの?あたしじゃダメなの?そう思いながら……自分の気持ちに蓋をし続けた」

親潮「……やめて」

ジョンストン「でも、絶妙なタイミングで貴女は出張に行った。大事な彼よりも仕事を取って、この鎮守府に彼を置き去りにした」

親潮「もう、やめて……」

ジョンストン「あたしにとっては願っても無いチャンス到来だった訳。秘書艦として彼を傍でずっと支えたわ。薄情な貴女の代わりにね」

親潮「それ以上、言わないで……」

ジョンストン「で、彼は貴女と会えない寂しさで精神的に参っちゃってたから……あたしは言ったの。貴方のことが好きだって」

親潮「お願いだから、やめて……!」

ジョンストン「続けて言ったわ。貴方のことを置いていった親潮とは違って、あたしは貴方の傍にいるって。親潮じゃなくて、あたしを選んでって……!」

ジョンストン「するとね?彼は悩んだ末にあたしを選んでくれた。あたしのことを押し倒してくれた。その後は……」

親潮「や、やめ……」









ジョンストン「あたし、提督と寝たの」

親潮「っ!!」







パシーンッ!

ジョンストン「………」

親潮「はぁはぁ……っ!」

ジョンストン「……痛いじゃない」

親潮「どうして……どうしてぇっ……!」パシーンッ!

ジョンストン「………」

親潮「私の恋人だと知っていながら……どうして司令を……っ!」パシーンッ!

ジョンストン「………」

親潮「この、泥棒猫ぉっ!よくも、よくも私の司令を……っ!」パシーンッ!

ジョンストン「………」

親潮「はぁっ、はぁっ……!」

ジョンストン「……言いたいことはそれだけ?」

親潮「なっ……!?」

ジョンストン「泥棒猫だなんて、よくもまぁそんなことが言えるわね。大事な恋人を置き去りにして、寂しい思いをさせた癖に」

親潮「それは司令からの指示で仕方なく……!」

ジョンストン「断ることも出来たはずよね?実際に提督も『嫌なら他で代役を立てる』と言ってたじゃない」

ジョンストン「本当に提督のことが大切なら、迷わず『離れたくない』と言うところでしょ?あたしなら間違いなくそうしてるわ」

親潮「……っ」ギリッ

ジョンストン「大好きな恋人と数ヶ月間も離ればなれになったら、愛想が尽きてしまってもおかしくないわよね」

ジョンストン「増して貴女の場合、体の繋がりさえ無かったらしいじゃない。そんなことで本当に提督を好きだなんて言えるの?」

親潮「……ッ!」パシーンッ!

ジョンストン「………」

親潮「今すぐ出て行って!私の視界から失せなさいっ!」

ジョンストン「……はぁ。分かったわよ。自分から呼び出しといて……」

親潮「いいから出て行って!」

ジョンストン「………」スタスタ

親潮「っ、ぁ……」ヘナヘナ

親潮「どうして……どうして、こんなことに……」ジワッ

親潮(私が司令を置いて行ったから?仕事を優先したから?体の繋がりさえ無かったから?)ポロポロ

親潮(あの泥棒猫が言っていたことは、結果的に全部正しかったとでも言うの?そんなことって……!)ポロポロ

親潮「ぐすっ……うあぁっ……司令……しれぇ……!」ポロポロ

親潮(ごめんなさい……!寂しい思いをさせて、ごめんなさい……!)ポロポロ

親潮「うわぁぁぁぁっ……しれぇっ……捨てないでぇ……!嫌……嫌ぁっ……!」ポロポロ

親潮(だからお願いします……!私を捨てないで……!私は、本当に司令のことを愛しているのに……!)ポロポロ

親潮(それを、あんな泥棒猫に盗られてしまうだなんて……嘘だと言って……お願いだからぁ……!)ポロポロ

親潮「えぐっ、いやぁぁぁぁっ……しれぇ……うぐっ、うああああっ……!」ポロポロ



ジョンストン「………」

ジョンストン(完全にマジ泣きモードに入ってるわね。てっきりあたしから『司令を取り返す!』と燃えるのかと思ったけど……)

ジョンストン(この調子なら無理そうね。でも、貴女が悪いのよ?あたしというライバルがいる状況で、恋人を置き去りにしたんだから)

ジョンストン(しかも、その恋人は貴女と離ればなれになって悲しそうにしてたんだから……むしろ彼を元気付けたあたしに感謝してほしいくらいよ)

ジョンストン「……っ」ズキッ!

ジョンストン(痛た、まだヒリヒリするわね……後で提督に頼んで頬を撫でてもらおうかしら。ふふっ♪)スタスタ…

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


数日後

「ジョンストン……ジョンストン……!」

「あっあっ!貴方ぁ!もっと……んんぅっ!」

親潮「………」

親潮(扉の向こうで声が聞こえる。一人は最愛の人、もう一人は……心の底から憎い泥棒猫)

親潮(この先でどんなことをしているかなんて、想像もしたくない。きっと、一目見た瞬間……私の頭が怒りで染まるだろうから)

親潮「………」キランッ…

親潮(だけど、それももう終わり。私は考えた……三日三晩、一睡もせずに考え抜いた)

親潮(どうやったら最愛の人ともう一度やり直せるのか。どうやったら泥棒猫から最愛の人を引き離せるのか)

親潮(最愛の人の心はもう、泥棒猫に掴まれてしまっている。だから私が無理矢理引き離そうとしても、きっと失敗する)

親潮(だったら……取るべき手段は一つだけ。簡単で、確実な方法がある)

親潮「……ここがあの泥棒猫の部屋ですね」

親潮(最愛の人の心が盗られてしまったのなら、盗人を排除してしまえば良い)

親潮(そうすれば、盗まれた心は……私の手元に戻って来る。そしてまた私を見てくれる)

親潮(私はまた、最愛の人と……司令と結ばれることが出来る。同時に泥棒猫とも永久に引き離せる)

親潮(左手には司令から貰った指輪がある。これがある限り、私と司令が恋人だった証が消えることは無い)

親潮(そして右手に持っている物で、泥棒猫を二度と戻れない場所へ叩き落してしまえば良い)

親潮「……司令。今、行きますから……また、私の恋人になって下さいね……?ふふっ……」ハイライトオフ








































秋雲「どーよ!自信作なんだけど!」フンス

提督「………」

ジョンストン「………」ニヤニヤ

親潮「………」イライラ

提督「何だよこれ。俺がただのクズ男になってるじゃないか……」

秋雲「いや、だって修羅場モノなら男と女のどっちかは酷い奴にしないとね~。今回は男女ペアで酷い奴になってるけど」

親潮「で、どうして私はひたすら不遇なヒロインになってるの?ねぇ?」ジトー

秋雲「いや、まぁ……ノリで」

親潮「ノリ!?そんな理由で貴方は姉を不幸にしたの!?」

ジョンストン「………」ニヤニヤ

親潮「そしてジョンストンさんはいつまで本を見てニヤついてるんですか!」

ジョンストン「えっ?いや別に『本の中であたしと提督が恋人になってて嬉しい』だなんて思ってないわよ?」ニヤニヤ

親潮「語るに落ちましたね」ジトー

秋雲「で、この本のアダルト版を次のコミケで」

提督「却下っ!!」

秋雲「ありゃりゃんりゃん。やっぱし~?」

提督「当たり前だろう!?お前一度肖像権について調べてみろ!」

ジョンストン「ねぇ秋雲。この本三冊貰って良い?保存用、観賞用、布教用にするから!」ニヤニヤ

親潮「いい加減ニヤつくのをやめて下さい!」

秋雲「良いよ~。後でコピーして渡すから」

提督「だからやめろって言ってるだろ!」

ジョンストン「なら早くあたしと付き合ってよ」

親潮「それについてはジョンストンさんと同意見です。私とお付き合いして下さい!」

提督「前から散々言ってるじゃないか。俺には心に決めた人がいるって」

秋雲「とか言いつつ全然指輪渡さないよね」

提督「いや、だってまだ練度足りてないし……」

ジョンストン・親潮「「なら私が先に練度の限界まで辿り着けば」」

提督「だから無理だって。俺、重婚する気無いし。もしそんなことしたら、さっきの本に描かれてた俺と同レベルになるじゃないか」

ジョンストン・親潮「「ぐぬぬ……!」」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


秋雲「結局ジョンストンも親潮姉も三冊ずつ貰って行ったけど、やっぱり愛しの提督を本で眺められるからだろうな~」

秋雲「………」

秋雲(顔を書かなかったら提督とバレる心配は無いよね?大丈夫だよね?よし!そうと決まったら早速執筆に……)

「「秋雲さーん!」」

秋雲「うわっ!?じょ、冗談だってば!だからそんなに怒んないで……って」

ルイージ「ぜぇぜぇ……」

旗風「はぁはぁ……」

秋雲「ルイに旗風?脅かさないでよ~!てっきり提督が激おこで飛んで来たのかと思ったじゃんか~!」

ルイージ「そ、そんなことより……」

旗風「ジョンストンさんと親潮さんから聞いたんですけど……」

秋雲「え?それってあたしが書いた同人誌のこと?」

ルイージ「そうそうそれそれ!」

旗風「実は秋雲さんに書いてほしい本があって……」モジモジ

秋雲「へ~、珍しいね。二人とも、そーゆーのに興味無さそうだったから。で、どんな本書いて欲しいの?」

ルイージ「あたしが那珂ちゃんから提督を寝取る本!」

秋雲「えっ」

旗風「私も同じ物を……」

秋雲「えっ」

ルイージ「あっ!ついでにあたしと旗風さんはピアノの天才ってことにして!」

旗風「そして那珂さんはヒトカラが大好きという設定で……」

秋雲「………」

秋雲(そのチョイス絶対狙ってるよね。何がとは言わないけど色々と分かっててやってるよね)

アメ津風は緒方理奈可愛い。ネットでジョンストン=緒方理奈が散々話題になってて我慢出来ずに書いてしまった
ぶっちゃけアメ津風に「提督と寝たの」って言わせたかっただけ
由綺ポジはどうしようかと思ったけど見た目と礼儀正しい性格でとりあえず親潮にした。ごめん親潮
そしてヒールっぽい役にしてごめんアメ津風

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