【鬼滅の刃】 子供を殺す話 (10)

「キシャァアアアアア!!!」

「ぐっ! 待てぇ!!」




『子供ばかりを食い殺す鬼を討伐せよ』

カスガイ烏より達せられた指令をもって炭治郎と禰豆子は鬼狩りの任務に身をやつしていた
炭治郎の嗅覚により鬼は早急に見つけ出せたが、前の任務で負った骨折が痛み倒せず逃げられてしまう

「まだ近くにいるはずだ……」

時刻はまだ昼を回ったばかりだがあいにくの曇り空で日の光は差さない
基本的に日光に当たれば死んでしまう鬼は夜に活動するものだが、曇り空の場合は雲が切れない限り鬼でも昼間に活動できる
早く見つけ出さなければ、また犠牲者が出る




「どしたの?」

「!?」

さっきとは別の鬼!

「ガァ!」

飛び出した禰豆子に驚く声の主

「わっ」

鬼だが敵意や悪意の匂いがない
禰豆子も首を傾げ戻ってきた

「迷ったの?ならうちに来なよ」

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「今は雲が厚いからいいけど」

「病気でいつもは昼間でちゃいけないんだ」

少年、いや少年の姿の鬼は話す
偽りの匂いはない

(本当に病気だと思って…? だけど、人の血の臭いがする)

(この子は人を食っている…! なのに、戦意がない……?)


「何してたの?」

「…鬼と戦ってた 」

「鬼?何それ」

「…!?」

嘘の匂いはしなかった

着いた小さな家で休む

「うーっ むーっ」

「ねずこかわいいね!」

血の臭いを警戒してた禰豆子もすっかり気を許していた
今まで子供の姿の鬼とは何度か会った
でもどれも姿だけの歪んだもの

ーーしかし目の前の彼は違う


「…君 いつも何を食べてるんだい?」

「?鹿の肉だよ 母さんがたまに獲ってくる」

「まだ干したのがあるよ」

奥から持ってきたのは、人の肉だった

「…お母さんはどこ?」

「昼間なのに鹿獲りにいった」

ピシャ!
戸を開ける音

「帰ってきた!」

部屋の匂いで分かっていた嫌な予感は確信に変わる
姿を現した女の鬼は





先程戦っていた、子供ばかり喰う鬼だった



「おかえり、母さん!」

「…!! ぼうや…その方々は?」

「お客さん!」

「そう…なら母さん、お客さんとお話があるから仏間で遊んでなさい」


子供が去ると女の鬼は頭を垂れた

「鬼狩り様、どうかあの子を見逃してください」
「あの子が鬼になったのは、私の腹の中です
あの方の血が入った時、私は臨月でした」

「きっと臍の緒から血が入った
あの子は鬼になって産まれました」
「でも誰も殺してない!殺したのは私です全部私
飢えさせたこともないから人を襲ったこともない
鬼とも、人を喰ってるのすら偽り育てました
あの子何も知らないんです!」

「殺すのは私だけに…お願い」




「……それは、できません」

「あなたは子供を殺したから斬らなければならない」
「あなたの亡き後あの子はいずれ飢え人を襲います」
「だから、見逃せません」

「…」

「そう、ですよね わかっていました
いつかこうなるって」

彼女は禰豆子を撫でた

「臭いがしない
人を喰べたことがないのね」


「よかったーー。 どうかそのままで」

「母さん、どしたの?」

泣き声に驚いた子供が戻ってきた

「ぼうや、ぼうや」

母は子供をひし、と抱きしめ
俺たちに深々と頭を下げた後

「ぼうや」
「今から私の言う言葉を繰り返すのですよ」

「…?はい!」

「無惨様」
「むざんさま!」


止める間もなく
太い腕が体内より2人を貫いた

「?ーっ ??っ」

分けた血の量が僅かな為か
子供の方はしにきれずにいた

刀を抜く


「水の呼吸 伍ノ型 干天の慈雨」


すうっ、と首が落ちた



わーん わーん
禰豆子の泣く声で我に帰った
2人の着物に泣きついている
そうか、家族に見えたのか


涙は流さなかった
ただただ、鬼舞辻無惨が、許せなかったーーー

ゴオォ ゴオォ

「母さん」

「ごめんね 一緒にいけないの」
「ぼうやは河原で石を積むのよ」
「積み終わったら素敵な所にいける、だから」

「迎えにきてくれるの!?」


「…そうよ だから辛抱してね 頑張って」
「うん!」

ゴオォ ゴオォ

「私、最後まで嘘つきね」
「それでもあなたを愛していたの」

母親は…子供を殺した鬼 倒さなければ
彼女もそれを分かっていた


でもあの子は?


人を殺しもせず、鬼であることも知らず死んでいった

答えは出ない

「…いこう」

泣き疲れて眠った禰豆子を背負い後にする
2人の着物を埋めた所に
一房柘榴を供えた


「次は…人を喰わずに生きられますように」






おわり

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