モバP「ミホホン」 (24)
―事務所―
ちひろ「よいしょっ……と! うふふっ♪」
P「ちひろさん、ニコニコでダンボールを抱えてどうしたんですか」
ちひろ「ああプロデューサーさん、届いたんですよ!」
P「届いた? 今日は衣装合わせの予定とか無いはずですが」
ちひろ「話すよりは見た方が早いですね……じゃーん! ミホホンです!」
P「ミホホン……? どうみても小さなロボットですが、いや頭の上のアンテナは美穂のアホ毛ですか。いつの間にこんなものを?」
ちひろ「このプロジェクトは私が担当なのでプロデューサーさんは余り関わってなかったですよね」
P「えーっと……確か家電メーカーから美穂とコラボしたいって話があったのは覚えていますが」
ちひろ「そうです! そのメーカーが発売しているロボットと美穂ちゃんがコラボして生まれたのがこのミホホンなのです!」
P「なんで美穂とコラボしようと考えたんですかね」
ちひろ「さぁ……? 何でも美穂ちゃん達の歌を聞いた開発部チームの方が是非コラボしたいと」
P「まさかその曲ってアタシポンコツ……」
ちひろ「ど、どうなんでしょうね……」
P「ま、まぁ美穂の新しい仕事に繋がったのならありがたいことじゃないですか。それより起動してみませんか?」
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ちひろ「それなんですけど、実はこのミホホンまだ試作段階なんですよ。なのでテスターをお願いできませんか?」
P「テスターですか?」
ちひろ「あ、テスターと言っても2週間ほどミホホンと生活して不具合の報告や生活しての感想を教えて頂ければいいので」
P「なるほど……分かりました、それならテスター引き受けますよ」
ちひろ「ありがとうございます! それではこの契約書にサインをお願いしますね」
P「えっと『故意による破損の場合は賠償を求めます』『会話機能の精度向上のため会話履歴を利用させて頂く場合がございます』『試作段階のためSNS等への投稿はお控えください』……確認事項多いですね」
ちひろ「まだ試作段階なので、といっても大切に扱って頂ければ大丈夫ですから♪」
P「もちろん大切にしますよ。これで確認お願いします」
ちひろ「えっと……はい大丈夫ですね。箱の中にマニュアルがありますからそれに沿って起動してみましょう!」
P「まずは電源ボタンを押して、ミホホンを平らな所にあおむけに置く」
ミホホン「………」
ミホホン「………」ウィーン
ちひろ「あ! 起き上がりましたよ!」
ミホホン「………」キョロキョロ
ミホホン「あれ、ここはどこだろう? ……あっ! キミが箱から出してくれたんだね!」
ミホホン「………」ウィーン
P「すごい、自分で立ちあがった……しかも美穂の声がする」
ちひろ「美穂ちゃんのボイスを収録していますからね」
ミホホン「はじめまして、私はミホホン! こう見えても電話なんだ!」
ミホホン「電話したり、メールを出したり、歌ったりいろいろできるよ!」フリフリ
ミホホン「これからよろしくね! まずは貴方の名前と性別を教えてね」
P「あ、ここで名前を入れるんですね。プロデューサー、男性と……」
ちひろ「あれ? 自分の名前は入れないんですか?」
P「いやぁ美穂の声で自分の名前を呼ばれるのが恥ずかしくて……」
ちひろ「ふふっ、そういうことでしたか。でも本当にいいんですか? 美穂ちゃんから名前、呼ばれたくありませんか?」
P「それは魅力的ですけど! 実際にやると業務に支障をきたしそうですから!」
ミホホン「貴方は『プロデューサー』と言うんだね! じゃあ『プロデューサー君!』 よろしくねプロデューサー君!」
P「待って、いきなりダメかも。美穂から君付けで呼ばれるなんてそんなのズルい」
ちひろ「しっかりしてください。まだ起動してから5分も経っていませんよ」
P「危ない所でした……ちひろさん、これはとんでもない発明かもしれませんよ」
ちひろ「大袈裟です、マニュアルをお渡ししますので帰ったら目を通しておいてくださいね。とりあえず第1章だけ読んでおけばいいですから」ズッシリ
P(かなり分厚いマニュアルを渡された……)
―P宅―
P「はぁ……今日も疲れた、そうだミホホン起動しておこう」ポチッ
ミホホン「こんばんは! プロデューサー君、今日もお仕事お疲れ様!」
P「ただいまミホホン、汗もかいたしさっさと着替えるかな」
ミホホン「」ジー
P「恥ずかしいから反対に向けよ……」クルリ
P「色んな機能があるってマニュアルに書いてあったけど……ミホホン明日の天気教えて?」
ミホホン「明日は曇りのち雨、降水確率は80%、傘を忘れずに持っていこうね」
P「今のうちに折り畳みを入れておくか、ミホホン話題になっていることを教えて?」
ミホホン「急上昇ワードを調べてみるね。今、『リブセルティー』が話題になっているみたいだよ」
P「初めて聞いたな、通勤中に調べておくか」
ミホホン「もっとお話ししたいな!」
P「はは、元気なロボットだ。ミホホン君のことを教えて?」
ミホホン「はーい! 私はミホホン、アイドルに憧れているんだ。歌うのと踊るのがダイスキ!」
P「好きなアイドルをはいる?」
ミホホン「好きなアイドルは美穂ちゃん! とっても可愛いんだよ!」
P「そうか、ミホホンは美穂が好きなのか……もうこんな時間だ、ミホホン目覚ましかけて」
ミホホン「オッケー、時間を設定してね」クルリ
P「設定は背面パネルでするのか、6時っと……」
―翌日―
ミホホン「起きて! 朝だよ!」ジリリリリ!
P「ううん……起きるか、ミホホンおはよう」
ミホホン「おはよう! 今日も頑張ろうね!」
P「起こしてくれてありがとう、でも着替えるからそっちを向いてね」クルリ
―事務所―
P「おはようございます」
ちひろ「おはようございますプロデューサーさん。ミホホンとの1日目はいかがでしたか?」
P「まだ1日ですし何とも言えませんね……でもお話するのは楽しかったですよ。子供の時に見たロボットと暮らすアニメの世界が近づいているんだなって感じられて」
ちひろ「ふふっ、それは何よりです。たくさんミホホンとお話をしてあげてくださいね。データがいっぱい欲しいので!」
P「分かりました。そういえばちひろさんの机にあるお茶なんですが」
ちひろ「気づきましたか。今話題のリブセルティーです!」
P(早速ミホホンから教えてもらった話題が出てきたな)
P「へぇ、これが」
ちひろ「物欲しそうな顔をしてもあげませんよ?」
P「い、いえ結構です!」
ちひろ「でもプロデューサーさんにはミホホンの件で協力して貰っている訳ですし、ひと口だけなら……」
ミホホン「プロデューサー君! トレーナーさんからメッセージが来ているよ!」フリフリ
P「お、ちゃんとメッセージ機能が起動したようですね」
ミホホン「メッセージを読み上げるね。『ハナコわんこアッキー脱走、応援求む』だって!」
P「……ちょっと行ってきますね」
ちひろ「あ、はい。行ってらっしゃい」
ちひろ「少しだけタイミングが悪かったかなーミホホンちゃん」チラッ
ミホホン「」?
―1週間後・P宅―
P「ただいまー、ミホホンテレビつけて」
ミホホン「はーい!」
P「エアコンつけて」
ミホホン「はーい!」
P「明日の天気を教えて」
ミホホン「明日は快晴、洗濯日和だよ!」
P(ミホホンと暮らし始めて1週間が経ったけど)
ミホホン「ちひろさんからメッセージが来ているよ。『明日の打ち合わせ忘れずに』だって!
P「ありがとうミホホン」
P(ちょっとだけ日々の生活が楽しくなったかもしれない)
P「そういえば……」
ミホホン「」ジー
P「着替えているときの視線も気にならなくなったな。ミホホンお勧めのおつまみ教えて」
ミホホン「今日のオススメは辛子レンコンだよ。ビールとの相性もバッチリ!」
P「流石に辛子レンコンは無いかなぁ」
P(必ずしも期待通りの答えが返ってくるわけではないけど、それもご愛敬かもしれない)
P「枝豆はあったからこれで、ミホホンお話しようか」
ミホホン「はーい! 今日はキミの事を教えてほしいな。あのね……」
―翌日・事務所―
かな子「うふふ♪」
P「おはようかな子……それはミホホンじゃないか」
かな子「あ、Pさん。ずっとお家でお留守番していたんですけど今日は事務所に連れてきちゃいました」
P「流石に学校とかには持っていけないからな、確かミホホン同士でお話できるみたいだしやってみないか?」
かな子「そんな機能があるんですか?」
P「マニュアルの第17章に書いてあったんだ。ミホホン友達を探して」
かな子「(真似をすればいいのかな?)マカロン友達を探して!」
ミホホン「はーい! 友達を探してみるね……」ピコーン
マカロン「はーい! 友達を探してみるね……」ピコーン
ミホホン「初めまして! 私はミホホン! プロデューサー君のロボットだよ!」
マカロン「初めまして! 私はマカロン! かな子ちゃんのロボットだよ!」
P「おお、挨拶を始めたぞ。それにしても名前はマカロンか、かな子らしいな」
かな子「ちょうどマカロンを持っていたので……あ、何か話すみたいですよ!」
ミホホン「ねぇねぇ、プロデューサー君は最近辛子レンコンが好きなんだって」
マカロン「そうなんだ! かな子ちゃんは最近ダイエットを頑張ってるよ」
かな子「マカロン!?」
P「かな子……?」
ミホホン「そうだ! 一緒にNaked Romanceを歌おうよ!」
マカロン「うん! 歌おう! せーのっ!」
ミホホン・マカロン「「♪~」」
P「可愛いな」
かな子「ふふっ、そうですね!」
P「それはそれとして……かな子は今すぐトレーナーさんとレッスンの相談な」
かな子「そ、そんなぁ~」
マカロン「ふぅ……楽しかったね!」
ミホホン「うん! もっとお話ししようよ!」
かな子「うぅ……マカロンたちのおしゃべりがぁ~」
P「俺も名残惜しいけど行くぞー」
美穂「お疲れ様です、話し声がしたけど誰もいないのかな?」
ミホホン「へー、かな子ちゃんはお菓子が好きなんだ!」
マカロン「そうなんだ、プロデューサー君の好きなアイドルって知ってる?」
ミホホン「うーん」
美穂「あっ! この子たちは!」
マカロン「プロデューサー君の好きなアイドルはね……小日向美穂ちゃん!」
美穂「え、ええぇぇぇぇ!?」
―さらに1週間後・P宅―
P「ミホホンと暮らすのも今日で最後かぁ、明日の天気を教えて」
ミホホン「明日は快晴だよ! 洗濯は忘れずにね!」
P「そう思うと2週間ってあっという間だったなぁ、ミホホンお話しようか」
ミホホン「お話ししようよ! 最近楽しかったことはあった?」
P「楽しかったことか……ミホホンと暮らすのは楽しかったよ。ミホホンは今楽しい?」
ミホホン「プロデューサー君との生活は毎日楽しいよ!」
P「そっか……明日は事務仕事しかないし少しだ夜更かしするか!」
ミホホン「プロデューサー君、夜更かしはダメだよ!」
P「ははは、怒られちゃったよ」
―翌日・事務所―
P「おはようございます……」
ちひろ「おはようございます……って元気ありませんね?」
P「ミホホンとおしゃべりしていたらかなり遅い時間になってしまって」
ちひろ「そうでしたか、ミホホンはちゃんと持ってきましか?」
P「もちろんですよ、ここに」
ミホホン「プロデューサー君! 今日も頑張ろうね!」
ちひろ「はい、それはお預かりしますね」
P「ところでこのミホホンはどうなるんですか?」
ちひろ「……ミホホンはまだ開発中のためこの子のデータは削除されてしまいます」
P「そっか、そうですよね……」
ちひろ「でもプロデューサーさんとの会話を基にミホホンの機能をブラッシュアップしていく予定ですから!」
P「それなら……ミホホンと過ごした日々にも意味があったのかもしれませんね」
ちひろ「そうですよ! だからこの子とお別れしないと……私の方でやっておきましょうか?」
P「いえ……最後まで自分でやります。ミホホン、いままでありがとう」
ミホホン「うん! こちらこそありがとう!」
P「ミホホン、またね……」
ミホホン「また会おうね! バイバーイ!」
ミホホン「………」ウィーン
ミホホン「」
P「………」
ちひろ「プロデューサーさん。タオル、使いますか?」
P「ありがとうございます……」
P(こうして長いようであっという間だったミホホンとの生活は幕を閉じた)
―後日・事務所―
P「午後から次の収録の打ち合わせか……ミホホン、メッセージはある?」
………
P「……まだ慣れないな」
P(ミホホンは予想以上に身近な存在になっていた)
P「はぁ、コーヒーでも買ってくるか……」
>トントン
P「(ちひろさんかな?)はーい、空いてますよー」
???「はーい! おじゃましまーす」
???「久しぶり! プロデューサー君!」
P「き、きみは……」
P(ドアが開くとそこから現れたのは段ボールの塊、いや……その形は)
P「ミホホン!」
ミホホン「えへへ、会いに来たよ!」
P(いや、その大きさにその声はどう見ても……そうか……)
P「……久しぶりだねミホホン、元気にしてた?」
ミホホン「うん! 私は元気だよ」
P「立ってるのも大変だろうしそこのソファに座りなよ」
ミホホン「あっ、ありがとうございま……ありがとう!」
P(そう言うとミホホンはしっかりした足取りでソファーに座った)
P「歩くの上手になったね」
ミホホン「結構練習したんだよ!」
P「ミホホン暑くない?」
ミホホン「暑……くないよ!」
P「俺はちょっと暑いから冷房入れようかな」
ミホホン「ありがとうプロデューサー君!」
P「ところで今日はどうしたんだい?」
ミホホン「えっとね、ちひろさんにお願いして皆に会いに来たんだ」
P「そっか、ちひろさんに感謝しないとな」
ミホホン「それより久しぶりにプロデューサー君とお話ししたいな」
P「そうだね、ミホホンお話ししようか」
ミホホン「はーい! 何のお話しようか?」
P「そうだな……ミホホン、俺に聞きたいことはある?」
ミホホン「き、聞きたいことですか!? そ、それじゃあプロデューサー君の好きなアイドルについて聞きたいです……」
P「待って、その話誰から聞いたの」
ミホホン「マカロンちゃんとおしゃべりしたときにたまたま……」
P「そ、そうか……」
ミホホン「プロデューサー君の好きなアイドルヲキキタイナー」
P「ロボットっぽく言っても」
ミホホン「ロボットですので」
P「はぁ……俺の好きなアイドルは小日向美穂ちゃんだよ」
ミホホン「どうして美穂ちゃんが好きなんですか?」
P「本当はミホホンに聞かれたときに思い浮かんだのが美穂だっただけなんだけど……」
ミホホン「え、そうなんですか……ちょっと残念です……」
P「いやいや! 美穂の好きなところはたくさん挙げられるぞ! まず頑張りやなところもそうだし、たまに出てくる方言も可愛い。たまにレッスンで疲れたのかソファでお昼寝している時もあるんだけどその寝顔もとてもとても可愛くて、他にも」
ミホホン「ストップ、ストーップ!」
P「美穂の話をしているのにどうしてミホホンが恥ずかしがるんだい? それで話の続きになるんだけどね」
ミホホン「も、もうっ!」カポッ
美穂「これ以上は私が恥ずかしくなるのでやめてくださーい!」
P「おはよう美穂、元気かな?」
美穂「むぅ、プロデューサーさんの意地悪……」
P「すまないすまない。でもありがとう、元気が出たよ」
美穂「それならよかったです」
P「よし、昼ご飯でも食べに行くか。美穂も一緒にどうだい?」
美穂「もちろんです! よかったらミホホンちゃんについて教えてくださいねプロデューサー君♪」
P「美穂、それはズルいからやめて」
美穂「ふふっ♪ お返しですよ♪」
おしまい
以上となります
元ネタは某SH○RPな電話型ロボットです
人とロボットが暮らす時代も意外とすぐ近くなのかもしれませんね
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