桐乃「アタシの兄貴がゲイなわけがない」 (166)
BL注意
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「ふひひ..ひ..久しぶりのりんこちゃん..今までごめんね?寂しかったでしょ?た~っぷり..かわいがって上げるからね...ふひひ..じゅるり」
アタシ高坂桐乃..学業優秀、スポーツ万能な上容姿端麗な完璧美少女中学3年生!
海外留学から帰ってきたばかりのアタシはベッドの上でエロゲーを機動させて、りんこちゃんの裸体をたっぷりと堪能しているの
あ~もう!りんこちゃんかわいすぎる..愛しのマジエンジェル..はぁはぁ(*´Д`)
海外留学中はエロゲをプレイできなくてエロゲ中毒を起こしていたアタシは画面の中のりんこちゃんで妹成分を五臓六腑にたっぷりと染み込ませているの♡
「あちゃ..もうこんな時間か..夜更かしはお肌の大敵なのに..今日はこの辺にしておくか..ふひひ..りんこちゃん..またちゅっちゅしよーね♡ふひひ♡」
時計を見ると深夜の2時を回っていて、そろそろ眠くなってきたアタシはエロゲを終了しパソコン画面を閉じて、ベッドで眠ることにした
「...あのバカ..さすがにもう寝ちゃってるよね..」
パソコンを閉じたことでシン..となった部屋になんとなく落ち着かなくなったアタシは隣の部屋で寝ている兄貴の様子を確かめるために壁に耳を押し付けてみた
べ、別に変なこと考えてるわけじゃないし!!
た、ただ..兄貴の寝息を聞けば..落ち着いてグッスリ眠れるかなって..ってちがう!
ア..アイツが..何かエロい夢でも見てキモイ寝言でも呟いていたら、上に飛び乗ってたたき起こしてやろうと思っているだけなんだから!!
「ふぅ..我ながら自分の才能が怖い..俺って..天才かも知れないな..」
あ、あれ?兄貴まだ起きてるの...?
寝言の代わりに薄い壁越しに聞こえてきたのは自分に酔ったキモイ声だった
「フフフ..アイツら..きっと驚くだろうな..俺がこんなシナリオを書けるようになったなんて知ったら..」
なに?シナリオって..そういえば..兄貴と黒いのがゲームを作る部活に一緒に入ったって聞いたけど..もしかしてソレ関係の?
「おっと..もうこんな時間か..続きはまた今度にしてそろそろ寝るか..」
カチャ..パタン..というペンを置く音とノートを閉じる音がしたあと、兄貴がベッドにもぐりこむゴソゴソ..という音が聞こえてきた
兄貴..ゲームのシナリオなんて書いてるんだ..どんなの書いているんだろ...
「zzz..zzz...」
はやッ!もう寝ちゃったの?
アタシなんか妹空書いていた時は神経が昂っちゃってなかなか寝付けなかったっていうのに..ある意味すごいわ..
「ラブリーマイエンジェルあやせたん..ふひっ」
キモッ!アイツあやせの夢みてる!! キモッ!!キモキモキモキモッ!!
何アイツ..妹の親友を夢にまで見て興奮しているっていうの!? こんなかわいい妹が隣の部屋にいるのにふざけんな!
海外留学から遥々私を連れ戻したっていうのに..他の女の子を夢に見るなんて何考えてんのよ!
あ~ムカつくッ!ムカつくムカつくムカつく!どうせならアタシの夢を..って何考えてんのよアタシ..
(こんな気分になったのは全部アイツのせいだ!!)
アイツがあやせの夢を見ていることにいてもたってもいられなくなったアタシは部屋を飛び出して兄貴の部屋の前へとやってきた
カチャ..キィ..
カギのかからないドアを開けると、ベッドの中でだらしない寝顔を浮かべる兄貴の姿が目に飛び込んできた
「グオー..グオー..ふひひ..あやせたん..」
兄貴は毛布を抱き枕のごとく抱きしめて、チュッチュと口づけを交わしている..マジキモイ
「キモっ...夢の中であやせに刺されて死ねばいいのに..」
親友のあやせを夢の中で慰み者にされていることに怒りを覚えた私は、兄貴の頭にティシュボックスを叩きつけて部屋から逃げようと考えた
「アレ..これってもしかしてさっき兄貴が書いていた..」
ティッシュ箱を振り上げた時、机の上に3冊のノートが置きっぱなしになっているのが目に入った
兄貴がシナリオを書いていたと思わしき数冊のノートが机の上にあることに気が付いた私は、ティッシュを投げるのを中断してその中の赤いノートを手に取った
「ふーん..どうせ素人の兄貴が書いたシナリオなんて読めたモノじゃないだろうけど..妹空作者の理乃先生が添削してあげようじゃないの..どれどれ..?」
ペラ..何気なくノートをめくり、兄貴が作ったシナリオが目に飛び込んできた..
「な..なにこれ..」
アタシはページをめくったことをすぐに後悔した..なぜならそこに描かれていた内容はというと..
『なぁ..いいだろ..?高坂..』
『や..やめろ...何をするんだ赤城!?』
『暴れんなって...ローションを入念に塗っておかないと痛いからな..ジっとしてろよ..』
『や..やめろ..ウワッ!』
な..なによ..これ..お、男の人同士で..何をやっているの?
そこに描かれていたのは兄貴とガチムチマッチョの男のBLシナリオだった。
右のページには全裸にひん剥かれた兄貴がベッドに手足を拘束され、ガチムチマッチョの親友に尻の穴にローションを塗られている挿絵が描かれている
アタシの頭にガーン!という強烈な衝撃が走り、足元に根っこが生えたかのようにその場から動けなくなってしまった
「あ..アイツ..一体何を考えて..」
アタシはペラペラとノートをめくっていき、兄貴が脳内で創り出した物語をドンドンと読み進めていった
「部長..お、俺..初めて会った時から部長のことが...」
「高坂..お前もか..俺も一目見た時からおまえのことが...」
「部長..」
「高坂..」
兄貴と臭そうな眼鏡の男が狭い部室の中で全裸になって抱き合い...
二人は床に倒れ込んでそのまま...
「あ..あああ...」
アタシの口からうめき声が漏れ出す...
これ以上はもう読んではいけない..これ以上は..
頭ではわかっているのに...指が勝手にページを次々とめくってしまい...
「真壁君...キミ..かわいいよね...」
「か..からかわないで下さいよ高坂先輩...」
「子犬みたいな潤んだ瞳で俺を見つめないでくれよ...興奮するじゃんか...」
「こ、高坂先輩..だ..あ...」
兄貴は真壁という男の顎を指先でクイと摘まみ、口をゆっくりと近づけていき....
「~~~~~~~~~!!!」
心に大きなショックを受けたアタシは声なき悲鳴を口から漏らし、茫然とその場に立ち尽くしてしまった
「う...うーん...」
「や、やば..」
兄貴が寝返りを打ち布団の中でモゾモゾと動きだす
焦ったアタシはそのまま部屋を飛び出し、自分の部屋へと逃げ帰った
「ハァ..ハァ...ハッ!!し、しまった..持って帰ってきちゃった!!」
混乱していたアタシはうっかり兄貴の部屋にあったBLシナリオを手に持ったまま部屋に戻ってしまった
「ど..どうしよう..戻したほうが..いいよね?」
兄貴の部屋に戻ってノートを元の場所に戻そうか迷っていると..
ガチャ..バタン
「ふぃ~..トイレ...」
兄貴の部屋の扉が開き、トイレへと向かう兄貴の足音がスタスタと廊下に鳴り響いた
兄貴が起きてきちゃった..どうしよう..これじゃあこっそり戻すのは無理だよ..
兄貴の部屋に再度忍び込むのを諦めたアタシは、BLシナリオが書かれた赤いノートを両腕に抱きベッドの上に座り込んだ
(もしかして..アタシのせいなのかな..アタシがエロゲばっかりやらせていたから..兄貴は変な性癖に目覚めちゃったんじゃ...)
(でも..アタシはホモゲーなんて一本も持ってないし...それじゃあこれは兄貴の性癖...)
アタシは混乱する頭と悶々とする情緒を引きずったまま布団の中へと潜り込んだけど..結局一睡もすることができずに次の日を迎えてしまった
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「ない..ない!..ない!!..ない!!!」
俺は高坂京介、自分で言うのも悲しいが特に目立った特徴のない平凡な高校3年生だ。
そんな俺はいまかつてないほどの焦りに襲われていた
「どうしたのかしら?先輩..」
俺の後ろからあまり感情の籠らない声で問いかけるコイツは黒猫
桐乃のオタク仲間にして、俺の大切な後輩だ
「く..黒猫..ない..ないんだよ!!」
「ないって...なにが?」
「瀬菜のシナリオがだよ!!まいったな~..自分の作品を失くされたなんて知られたらアイツ怒り狂うぞ..」
「何をやっているのかしら..これだから下等な人間は..家に置いてきてしまったんじゃないの?」
「おまえも人間だろーが..それにしてもまいったな..今日は皆が書いたシナリオを踏まえて、皆の前でシナリオの良かったところと直すべきところを発表する場だったのに..これじゃあ瀬菜に怒られちまうな..」
俺はゲー研の部員だが専門的なスキルは何も持っていないので、みんなが書いたゲームのシナリオを読んで、思ったことや感想を述べるという役割を最近になって担うようになった。
もちろん、俺も自分も物語を作ってみたいという気持ちがあるから、みんなの書いた話を読んで勉強させてもらっているという目的もある。
正直言って読むのもキツイ作品も多々あったが、皆が心の中に持っている世界観の片鱗を覗くことができて中々面白くもあった。
部長の作品はエロや2次元のキャラが中心の作品が多かったが、さすが部長というべきか..なかなかに完成度の高い話が多く大変参考になった。
真壁君が書いたシナリオは巨乳の女がやたらと出てくるお話で、思春期の男子高校生が抱く健全なエロがふんだんに盛り込まれていた。
そして...瀬菜が書いたシナリオは
「まあいっか...瀬菜の書いたシナリオはホモばっかりだったから、流し読みしかしてないんだよな..」
「あの女が聞いたら怒るでしょうね..」
「だって..アイツの今回の作品って..俺がメインキャラになっていてさ..俺が赤城やゲー研の皆に犯される内容がノートの隅から隅まで描かれているんだぜ?」
「そんじょそこらのホラー小説よりもよっぽどホラーね...」
黒猫の額に一筋の汗がツ..と流れ落ちた
「たく..なにが悲しくて俺と周りの男どもが交わっている話を読まなければならんのだ...しかも、挿絵の完成度が滅茶滅茶高くて、脳内にそのシーンが妙に生々しく浮かんでしまうところがまた...」
俺は肩をすくめると、やれやれと頭を横に振った
「あの女の頭には腐海が詰まっているようね..アナタごとき人間風情がその一端に触れるだけでも邪悪な瘴気に身も心も侵食されて、正気を保てなくなるのも当然ね」
「役割とはいえアレを読まされる俺の身にもなってくれよ..なにが悲しくて俺が赤城や部長に犯されているシーンが描かれている話を読まにゃならんのだ..正直言って吐きそうになったぜ」
「そ..それなら..私が代わりに..読んであげてもいいのよ?」
黒猫は頬をわずかに赤く染め、体を落ち着きなくモジモジとさせた
「お..おまえ..俺が男に犯されているのをみたいっていうのか?変態!変態!変態!通報しますよ!?」
「バ..バカにしないでちょうだい!!た、ただ..私はあなたが読むのが辛いのなら、代わりに読んであげてもいいっていっているだけじゃない..」
「それにしてもだな~!!」
俺が黒猫に追い打ちをかけようとしたとき、部室のドアが勢いよく開いた
「おはようございまーす♪高坂先輩!!アタシの作品読んでくれましたか~!?」
瀬菜が部室に飛び込んでくるなり、俺がメインのBLシナリオの感想を聞いてきた
「気持ち悪くて吐きそうになったよ!!..というより..よくもまあ俺が周りの男子にホモられる内容のシナリオを当の本人に手渡せたな!?この変態!!」
「な...人聞きが悪いこと言わないでくださいよ!!今回のお題は各々の書きたい内容のシナリオを描いていいっていう話だったじゃないですか!!」
「だからって..なんで俺が皆に犯されてんの!?おまえの頭の中はどうなっているんだ!?」
「だって...」
俺と大声で瀬菜を糾弾すると、瀬菜は突如顔を赤らめて照れを隠すように体をモジモジさせた。
そんな女の子らしい仕草をしたって騙されないからな!!
「し..仕方がないじゃないですか!!先輩を見ていると..インスピレーションが沸いてきちゃったんですから..」
ポッ..と顔をさらに紅潮させて、恥じらうように俺から目を反らす瀬菜..仕草はとても可愛らしいが内容が最悪だった
「どんなインスピレーションだ!!どんな!!」
「ウチのお兄ちゃんと先輩って..絶対できてるよね..とか...真壁先輩と高坂先輩を絡ませたら...絶対新しい扉が開けるよね..とか..」
「開かんでいいそんな扉!!」
「どうしたんです?そんな大声だして..廊下まで響いていますよ?」
大声を出した俺を嗜めるように真壁君が部屋の中に入ってきた
「聞いてくださいよ~真壁せんぱ~い!!高坂先輩ったらひどいんですよ~?あたしが書いたシナリオをボロクソにこき下ろしてくるんですもん!」
「ああ..大体のことは今の言葉でわかったよ...」
真壁君の頬から一筋の汗がツ..と流れ落ち、瀬菜の視線から逃れるように真壁君は目を横にそらした
「そういえば..僕のシナリオは読んでくれましたか?」
真壁君は話題を反らすために俺に話題を振ってきた。真壁君グッジョブ!!
「ああ..中々に良かったよ..真壁君はどれだけ巨乳を愛しているのかという気持ちがヒシヒシと伝わってきたよ..」
ぶっちゃけると気持ち悪かったんだけどな
「おお!!高坂先輩が僕のシナリオを褒めてくれた!!具体的にもっと言ってくれるとうれしいです!!」
「それは皆が揃ってからにするよ..赤ペンで誤字脱字とかも添削してあるから後でノートを渡すよ」
「おお..高坂先輩と真壁先輩がイイ感じになってる..次の作品は高坂先輩を攻めで続投するか...いやいやそれとも、真壁先輩を攻めに回らせてみるっていうのもありかも..」
「書かんでいい!!」
「書かなくていいから!!」
俺と真壁くんの気持ちがシンクロし二人の叫びが一体となって部屋に響き渡った
「おお!!先輩たちの声がハモった..!!やっぱり高坂先輩と真壁先輩は心の底では惹かれ合っているんですね!!」
「おまえなー」
「おー!おまえら元気でやってるかー!?」
俺が瀬菜に追撃をしかけようとしたとき、またもや部室のドアが勢いよく開き、部長が室内に入ってきた
「部長..また遅刻ですか..僕たちのリーダーなんですから、皆の手本になるような行動を心がけてくださいよ..」
真壁君が遅れてやってきた部長に苦言を呈す
「おースマンスマン!!徹夜でエロゲーやっていたらすっかり遅くなっちまってな!!ひと眠りしてさっき学校に来たところだ!!」
「部長..また留年しますよ?イヤですよ僕..部長と同級生になるなんて..」
「や..やっぱり部長と真壁先輩はできていて..部長が留年ばっかりしているのは真壁先輩と一緒になりたいから...ヤバい!!興奮してきましたー!!」
「やれやれ..こんな変人だらけで部として成り立っていられるのは、やっぱりこの部で唯一の常識人の俺の存在があってこそなんだろうな..世話が焼けるぜまったく..」
「バカばっかりねこの部活は..」
「さて..それじゃあ部の活動を始めるぞー!高坂、みんながお前に渡したシナリオ全部目を通してきたか?」
各々落ち着きを取り戻したところで、部長が部の活動を始めるための音頭を取った
「ああ、全部読んできちんと添削もしてきたんだが...スマン瀬菜!!お前からもらったシナリオだけ家に置いてきてしまったみたいなんだ!!」
「ええーー!?ひどいですよ高坂先輩!!私のだけ忘れてくるなんてあんまりです!!」
「ホントにスマン!!明日必ず持ってくるから!!」
俺は瀬菜に謝罪すべく両手を合わせて米つきバッタのごとくペコペコと頭を下げた
「もう..しょうがないですね高坂先輩は...」
瀬菜は呆れたようにため息をつくと、俺を許してくれた
「しかし..珍しいな高坂が忘れ物とか」
「そうですね..高坂先輩は変態ですけれどこういう所はいつもきちんとしてますもんね..」
「ハッ..もしかして..先輩もホモに目覚めたんですか!?それで、私にシナリオを返すのが惜しくなって家にわざと置いてきたんじゃ..」
「断じて違う!!おれはホモになんか目覚めてねえ!!」
「もう..それならそうと言ってくださいよ..そうですね..入門者向けの本をコレクションの中から見繕って明日持ってきますね」
「持ってこんでええ!!俺はホモじゃねえって言ってんだろ!!」
おいおい..勘弁してくれよ..俺は健全でノーマルな性癖を持った普通の高校生なんだよ..ぐすん
「まあいい..赤城の作品は明日検分するとして..高坂、他の部員の作品の感想と直すべきだと思った部分をあげてくれ」
「はい!!まず部長の作品をみて思ったことは...」
俺は皆が書いてくれたシナリオのコピーを一同に渡し、感想と直すべきところを挙げていった
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「ふぁ...」
あのバカのせいで..結局一睡もできなかった...授業中にあくびしているのを先生に怒られたし..チョー最悪..
それより..なんで兄貴はホモになんか目覚めちゃったのかな...男が好きになっちゃたら...女のアタシなんて眼中に入らなくなっちゃ...いやいや何考えてんのよアタシ..
「桐乃..眠そうだね..大丈夫?具合悪いなら保健室に行く?」
「ニシシ...桐乃~..授業中にあくびなんかしちゃって..せんせーに怒られてやんの..ダッセー」
「あ..あやせ..加奈子..大丈夫..ちょっと寝不足なだけ...」
くぅ~..加奈子の奴~バカにしてくれちゃって~!全部アイツのせいだ!!後でとっちめてやるんだから!!
「桐乃が寝不足なんて..何か心配事?困っているなら相談に乗るよ?」
「い..いいよ..別に困っていることなんて...」
「お!その顔はありますって感じじゃん..なになに~?完璧超人の桐乃様はどんな悩みを抱えているわけ~?」
「加奈子..茶化しちゃダメだよ..でも桐乃..悩みがあるなら相談してほしい..わたしたち..友達でしょ?」
「あ..あやせ..だから悩みなんてないって...」
兄貴がゲイかもしれなくて悩んでいるなんて口が裂けても相談できないよ...あやせはともかく加奈子に知られたら、面白がられて何をされるかわかったものじゃないし...
「そう..桐乃がそういうのならいいけど..でも..いつでも相談に乗るからね?」
「うん..ありがとあやせ」
「ふーん..ま、別にどーでもいいけど~」
「あ...桐乃!そんなことより数学の宿題写させてくれよ!!アタシやってくんの忘れちゃってさ~」
「かーなーこ!!宿題は自分でやらないと意味ないでしょ!?」
「あやせにはかんけーねーべ!?な~桐乃~お願いだよ~あたしこの前も宿題やってこなかったからさ~」
「今回もやってこなかったってなったらやべーんだ!数学の先生おっかねーべ!?なーお願いだよ桐乃~」
「はぁ..しょーがないなー今回だけだよ?」
アタシはしぶしぶとバッグから数学で使っている赤いノートを取り出すと加奈子に手渡した
「サンキュー桐乃~やっぱ持つべきものは学業優秀な友達だぜ~!...て、おい..なんだよこれ...」
「へ?どうしたの加奈子...ッ!?き、桐乃..これは一体..どういうこと?」
「え?どういうことって...!!」
赤いノートの中身を見た加奈子とあやせの表情が見る見るうちにこわばっていく...自分が何を手渡してしまったのか気が付いた瞬間..
サァーという音を立ててアタシの血の気が引いていく音を確かに聞いた
『ハァ..ハァ...高坂..で..出そうだ..おれ..もう..!』
『ウ..!ハァ..!いいですよ..部長!出してください!!部長のピーを俺のケツの中にブチまけてください!!』
加奈子が広げた赤いノートには数式の代わりに、アタシの兄貴と臭そうな男が裸で交わっている文章が記されていた
しかも右のページにはクオリティの高い挿絵が描写されており、イキ顔を浮かべた兄貴が臭そうな男に後ろから犯されていた
『受け取れ高坂ーー!』
『部長ーー!!』
兄貴と臭そうな男の交わりはクライマックスを迎え..
『アッー!』
『アッー!』
兄貴の中にピー!がたっぷりとぶちまけられ物語は幕を閉じた..
最後のページには右と左のページをフル活用した挿絵がデカデカと描かれており、兄貴はアタシが今まで見たことのない恍惚の表情を浮かべていた
「いやああああああああああああああああ!!!!!!」
ノートの中の兄貴に負けないくらいの音量でアタシの叫び声が教室中に鳴り響いた...
動揺していたアタシは数学のノートと兄貴の部屋にあったゲイシナリオを間違えてカバンに入れてしまったみたい..
「き、桐乃!!落ち着いて!!」
「なんだよこれ..おい!なんなんだよこれぇ...!」
比較的冷静なあやせとは対称に、心に多大なショックを受けた加奈子は(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルという顔文字がピッタリの表情で震えていた
「おい、どうした!大丈夫か!?」
「高坂さん大丈夫!?なにかあったの!?」
叫び声を聞いたクラスメイトたちがわらわらとアタシの席の周りに集まってきた
まずい..!こんなものをクラスのみんなに見られたら社会的に死ぬ!!ここは逃げないと!!
「桐乃が体調悪いみたいだから、わたしと加奈子が保健室に連れていきます!!」
「あ..あやせ!?」
「え?おいなにす..ぐえ!?」
あやせはそう叫ぶと私の手首と加奈子の襟首をつかみ上げて、アタシたちを廊下まで引きずっていった
「なにす...グエーー!!く、首が絞まるーー!!は..離ぜーー!!」
あやせ..窮地に追い込まれたアタシを助けるために...ごめん加奈子....
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「ってーなブス!!なにすんだよ!!死ぬかと思ったじゃねーか!!」
あやせはアタシたち二人を誰もいない資料室まで連れてくると、ようやく手を放してくれた
「ごめんね加奈子..でも、桐乃のピンチだったし..しょうがなかったの」
「しょうがなかったの..じゃねーよ!!加奈子まで連れてくる必要なかったろ!?」
「だって..あの場に加奈子を残したら..みんなにいらぬことをペラペラとしゃべられるかもしれないじゃない...桐乃の名誉のためにも..それは...ね?」
「ヒッ..!わ、わかったよ...もういいよ...」
あやせの光彩がドス黒く濁ったことに気が付いた加奈子は怯えの表情を浮かべて、それ以上はなにも言わなかった
「桐乃..説明してくれる...?これは一体どういうことなの?」
あやせはBLシナリオを手に取ると真剣な表情でアタシの顔を覗き込む..うう..どう説明すればいいのこの状況..というかあやせ..なんでそんなにグイグイ来るの..
「これっていわゆる..BL小説って奴だろ?姉貴の持っている資料でチラッと見たことがある...まさか桐乃がソッチ系の性癖を持っていたなんてな~」
「ち..違う!!これは兄貴が..」
「お兄さん...?」
「あっ...」
うっかり兄貴の名を口走ってしまい、アタシの顔が見る見るうちに紅潮していくのが自分でもわかった
「どういうこと?桐乃...まさか..あの変態が桐乃にまた何かしているの?....この本に写っているの...桐乃のお兄さんだよね?」
あやせはBLシナリオをペラペラとめくり兄貴がマッチョの男のソレを咥えている挿絵を私に突き付けた
「お..おい..マジかよ桐乃..お前自分の兄貴でホモ小説を書いていたのかよ!?マジきめー!!」
加奈子はドン引きの表情を浮かべると、私から半歩後ろに遠ざかった
「違う!!これはアタシのじゃなくて兄貴の部屋にあったヤツ!!あたしはBL小説なんて書いてないし、そういう性癖もない!!」
「おまえなー..言い訳にしても苦しすぎんだよ..大体なんでホモ小説を学校に持ってきてんだよ..」
「そ、それは..私が使っている数学のノートとこのノートが同じタイプのノートだから間違えちゃって...」
「間違えるか?フツー」
「兄貴の部屋でこのノートを見つけたのが昨日なの!!慌てていたからこのノートを持ったまま兄貴の部屋を出ちゃったの!!」
「この話はたぶん兄貴が書いたもので...私は兄貴がゲイなんじゃないかってずっと悩んでいたの!!」
「怪しーなー..自分がそういうのを好きなのを兄貴のせいにしているようにしか聞こえねえよ」
「うう...」
加奈子はジト目で私を覗き込み尋問の言葉を投げかける
アタシは加奈子に対して言葉を返すことができずに、制服の裾をギュッと握りしめていた
「待って..桐乃はウソをつくような人じゃないのは加奈子も知っているでしょ?わたしは桐乃の言い分を信じるよ」
「あ..あやせー」
よかった...あやせは信じてくれるんだ...兄貴でBL小説を書いていた変態なんて、あやせにまで誤解されたら私もう学校に来れなくなるとこだったよ..
腐女子疑惑をうまく晴らすことができずにいたアタシは、あやせのその言葉に心の底からホッとするのを感じた
「ごめんね..桐乃..気付いてあげられなくて...」
あやせはアタシを優しく抱きしめると、ホロホロとあやせの涙がアタシの肩に伝い落ちてきた
「あ..あやせ?」
「桐乃はあの変態に強要されたんだよね..俺をネタにしてBL小説を書けって..」
「ハ...ハァ!?」
「妹だけでなく..男にまで手を出すなんて..あの変態..とうとうソコまで...」
あやせはギリッと奥歯を噛み締めると、アタシを抱きしめる力を強めた。...ちょっと痛い
「ち..違..アタシはBL小説なんて書...」
「あの変態にこんなに高度な文章が書けるはずないもの..お兄さんが桐乃を脅して無理やり書かせたに決まってる!!許さない..わたしの桐乃を汚したあの変態は..絶対に許さない!!」
や..やばいッ!!あやせがまた変な勘違いしてる..!でもどうやって止めればいいの!?
「桐乃の兄貴ってマジやべー奴なんだな..ウエッ..」
ヤバい!アイツの名誉がドンドン汚れていく..!なんとか止めなくちゃ!
「あ..あのねあやせ..私は別にそんなことされて...」
「今日の放課後桐乃の家にお邪魔させてもらうから!!わたしが直々にあの変態鬼畜お兄さんを成敗して桐乃を助け出す!!
や..ヤバい..こうなった時のあやせは誰にも止められない..ど..どうしよう!
「ヒヒ..なんだかオモシロそーなことになってきたな..加奈子も付き合ってやんよ!!桐乃の兄貴の正体を暴いてやるぜ!!」
ああ..もう知らない..!!どうにでもなれ..!
ーーーーーーー
ーーーーーーー
「....とまあこんなところだ」
俺は瀬菜以外の作品の論表を終え、ふぅと一息をついた
「いや...なかなか良かったぜ?中立的な目線がきちんと出来ていたし、俺の独りよがりになっていた部分に気が付くことができて中々有意義だった」
「ほ..ホントっすか?ありがとうございます部長!」
発表が褒められたことが素直にうれしくて俺は部長に頭を下げて礼を言った
「すごい良かったですよ高坂先輩!!でも..もうちょっと褒めてくれるとうれしかったなー..なんて..」
真壁君は少しだけ拗ねたように、俺から顔を背けた
「すまんな真壁君..俺なりの感想を言ったんだが..少し言葉が過ぎた部分があったかもしれない..気分を害したなら謝る」
「いいんですよ..作品の作り手としてきちんと批判されることは逆にありがたいことなんです..高坂先輩に言われたことを踏まえて今度はもっと完成度の高い作品を作ってみせます!!」
「ああ..期待してるぜ!!」
真壁君と俺は笑顔で向かい合うと、ガッシリと手を組み男と男の握手を交わした
「真壁×高坂..イヤ次も王道の高坂×真壁で行ってみるか...高坂先輩に作品を酷評されているところを、高坂先輩が真壁先輩を慰めに来てイイ感じになってそのまま...(/ω\)イヤン」
「(/ω\)イヤンじゃねえ!!即刻その腐りきった妄想をドブ川に捨ててこい!!」
「なんてことしてくれるんだよ赤城さん!!爽やかな男の友情が台無しじゃないか!!」
「爽やかな男の友情...そそりますね~!!ジュルリ..ハァハァ..やば..興奮したら鼻血が出てきました..」
瀬菜は口から涎を..鼻から血を垂れ流して、俺と真壁君を食い入るようにみつめていた
「ちょっと先輩...私の作品の論表が他の人に比べると大分短かったと思うんだけど..私の作品だけ手抜きをしているわけじゃないでしょうね?」
「あ、ああ..別に手を抜いたわけじゃねーよ..俺なりに思ったことはきちんと述べたつもりだ...」
黒猫が手をあげて俺に対して抗議の言葉をぶつけてきた。黒猫にイタイ所を突かれた気がして俺の心臓が少しだけビクッと飛び跳ねる
「ウソね..先輩は私の作品に対してはワザと評論を避けていたように思ったわ..」
黒猫はジ..と睨むように俺を見据えてきた..うう..そんな目で俺を見るなよ..
正直なところを言うと俺は黒猫の作品に対しては、大分言葉を選んで当たり障りのないことを言ったよ...なぜかって?
「う~む...俺の目で見ると五更の作品は..少々読むのがシンドイな..この分厚い設定資料を読んでからじゃないと物語で何を言っているのかわからないというのは...プレイヤーにとって酷な話だぞ?」
「そうですね..プレイヤーっていうのは基本的に短気で即物的な人が多いですから...これではプレイをする前にソッポを向かれてしまうと思います。」
「そ..それは..ふ..フフ..これは選ばれたモノだけがプレイすることができる魔導書なのよ...我が魔力に導かれた我が眷属に値するモノだけがこのゲームをプレイすることができるのよ」
ドラキュラかお前は...黒猫の言葉を聞いた部長や瀬菜たちの表情はますます険しいモノになってゆく..
「まあ..要はやたらと分厚い説明書ってところですかね..でも..これはダメですね..」
瀬菜はペラペラと魔導書もとい説明書をペラペラとめくり、遠慮の一切ない言葉で黒猫の作品を切り捨てた
「な...ダ、ダメですって...?」
「はい..ダメダメです..言っちゃ悪いですけど..読むに値しないレベルでひどいです..」
瀬菜の容赦ない言葉に黒猫の顔がみるみるウチに赤くなっていく...ほらな?こうなることがわかっていたから俺はできるだけ黒猫を傷つけないように、ポジティブ気味の当たり障りのない論表をしたんだ..
「まず第一に...この分厚い設定資料を読まないとゲームを進めることができないのなら...この設定資料もデータに取り込まなくてはならなくなります..」
「確かに..この分厚い資料をテキストに直すとなると..それだけで膨大なリソースを取られてしまうな...」
「時間もパソコンの容量も限られてますしね...この分量だとキャパオーバーかな..」
「そ..そんな...」
部長と真壁君も瀬菜の言葉に賛同し、黒猫の顔色は赤を通り越して青へと変わってゆく..、
「まさかこの分厚い資料を量産してプレイヤーの人に郵送で届けるなんてできるわけないでしょう?」
「ッ!」
瀬菜の言葉が追い打ちとなり、黒猫はスカートの裾をギュッと握りしめてその場に立ち尽くしてしまう....
顔面蒼白になって目に涙を浮かべている黒猫を一瞥し、俺はやはりこうなってしまったかと内心頭を抱えていた
瀬菜の言う通りこれをパソコンに取り込むとなると膨大な容量になってしまうということは、この分厚い資料集をみた瞬間に俺もそう思っていた。
「それに...設定が複雑な上に...中二セリフのオンパレードで読むのも正直言ってシンドイです...恥ずかしくなってくるというか...」
瀬菜の遠慮の一切ない評論が続く...
黒猫の作品に対する俺の感想は瀬菜とまったく同じだった。
俺は一通りあの分厚い資料にも目を通して、黒猫の作品を一読したけれど...相変わらず独自の設定や複雑な言葉が多すぎてまったく頭に入ってこなかった..
登場キャラクターたちの痛々しい中二セリフを読み続けるのも...趣向の全く異なる俺にとっては苦行以外の何物でもなかったのだ..
だが...この設定資料集には黒猫の情熱が籠っていることは一目で伝わってきた...
素晴らしいモノを作ろうと思って時間と手間暇をかけてこの作品の制作に打ち込んだ黒猫の気持ちを考えると...
俺の口からはどうしてもコイツを否定する言葉を吐くことができなかったんだ..
「.....ヒック」
悔しそうに目に涙を浮かべる黒猫を見て、部長や瀬菜たちはしまったという表情を浮かべる
「す...すいません五更さん...つい熱くなってしまって...ちょっと言葉が過ぎました...」
瀬菜は黒猫を泣かせてしまったことに負い目を感じひたすら詫びの言葉を口にした
すすり泣く黒猫の姿を見て、俺の脳裏に黒猫と共に出版社に乗り込んだ時の記憶がよぎる..
「妹空」の作者が桐乃だということを証明するために二人で出版社に乗り込んで...
熊谷という編集者に自分の作品を酷評され泣いていた黒猫..
俺の妹のためにネチネチと作品を酷評されて、辛い思いをしている黒猫を見て俺はとても苦しい気持ちになった..
チッ...もう二度と..黒猫を泣かせたくなかったんだけどな...
俺は黒猫を傷つけたくないから卑怯な手を取った...
黒猫を傷つける痛みに俺が耐えることができない..黒猫に本当の感想を告げるのを恐れ、うやむやにしてしまおうとした..
本来だったら瀬菜の役割は俺が担わなければならなかったんだ...俺は卑怯な奴だ..
「いえ..いいの..私も勝手に泣いてごめんなさい..」
黒猫は袖で涙を拭うと瀬菜と部長に丁寧に頭を下げた
「客観的な感想をくれてありがとう...今後の作品を作るときの糧にさせてもらうわ」
「まぁ..これだけの分量の設定を練ることができるんだ。きっとすごい大作を作ることができるさ...次に期待してるぜ!!」
部長は笑みを浮かべると右手の親指を立てて、黒猫に激励の言葉をかけた。
「黒猫...」
「なにを情けない顔をしているのかしら?私を見くびらないでちょうだい...」
黒猫は凛とした表情で俺の顔を見据えてきた
「アナタの気持ちなどお見通しよ...この程度の批評に私の心が折れるとでも思ったのかしら?情けをかけたつもりなのかもしれないけれど...クリエイターにとってそれは侮辱になるわ」
「スマン...」
俺は心底すまないことをしたと思い、黒猫に頭を下げて詫びの言葉を告げた
「べ..別に..怒っているわけじゃないわよ..アナタが優柔不断な性格をしていることなんてわかっているし..その..私を傷つけないようにしているんだなって..その気持ちは少しだけうれしかったし..//」
黒猫は顔を紅く染めると、プイと俺から顔を反らしてしまった
「さて..後は私のだけですね..高坂先輩!!明日はちゃんと持ってきてくださいよ!?」
「あ..ああ..わかってるよ..」
瀬菜のBLシナリオをみんなの前で評論するのか...黒猫の時以上に気が重い...絶対荒れるだろうなコイツ...
「さて、それでは今日の部活はこれで終わりに...」
「ああ、ちょっと待ってくれ..俺からもう一点だけ伝えたいことがあるんだ」
「なんだ高坂?」
「実は俺もシナリオを書いていて..今日中には書き終える予定だ..瀬菜の作品とついでに俺の作品も見てもらいたいんだ」
「ほぉ..高坂がシナリオをねぇ...興味深いな..」
部長は指で眼鏡の縁をクイッ..と持ち上げるとシゲシゲと俺の顔を見つめてきた
「高坂先輩がシナリオなんて書けるんですか?」
「俺を見くびるなよ瀬菜..この中の誰よりも素晴らしいシナリオを描いているという自負が俺にはある!!」
「それに..黒猫..五更にもイラストを描いてもらっているから、これは俺と五更の合作だ..!!五更と俺の熱い力作をしっかりとその目に焼き付けやがれ!!」
俺は胸を張って高々と宣言した..何をそこまで俺を駆り立てるのか自分でもわからないが...胸の奥から根拠のない自信が溢れてくるのを感じるんだ
「すごい自信ですね..そこまで言うとどうなモノなのか見てみたくなりますね!!」
「期待していてくれ真壁くん...最高の物語を明日君たちにお見せすると約束する..!」
「あ..あのシナリオには改善しないといけない問題点が残っているから..そ、そんなにハードルを上げない方が..」
黒猫が不安げな目で俺をジッと見つめてくる...
「俺と五更でお前たちをあっと言わせて見せる!!覚悟しやがれ!!」
俺は黒猫の不安げな声を押し殺して、部長たちに啖呵を切ってやった
黒猫が酷評されて泣いているのを見て、ますます俺の炎が熱く猛ったのだった
「まあいい..楽しみにしてるぞ高坂..それでは今日はこれで解散だ」
部長のその一言で今日の部活動は終了となった
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「さ、上がって...お父さんもお母さんも今日はいないから遠慮しなくていいよ」
「おっじゃましまーす!!」
「お邪魔します」
家の中に加奈子の元気のいい叫び声が響き渡る...
「お兄さんもまだ帰っていないみたいだね...今のウチにお兄さんの部屋を調べよう?」
「ち..ちょっと待って..勝手に部屋を引っ掻き回されたらさすがに兄貴も怒るって..!!」
「今更ソレはねーべ?それにアタシは桐乃のこと完全に信じたわけじゃねーんだからな?」
「だからアタシはBL好きじゃないってば!!」
どうしたら信じてもらえるの?
確かにアタシはエロゲーが大好きの変態女子中学生だけど、BLなんかにはこれっぽっちも興味がないのに...
アタシが心の中で途方に暮れているのを無視して、あやせと加奈子は2階へ続く階段をズンズンと上がっていった
「ちょっと待ってったらー!あやせー加奈子ー!!」
2階へ上った二人を追いかけると、あやせと加奈子は神妙な面持ちで兄貴の部屋の前に佇んでいた
「いい?開けるよ加奈子...」
「おう..準備はできてるぜ..何が出てくるかわからねえ...気をしっかり引き締めろよ..」
あやせと加奈子はアイコンタクトを送るとコクンと頷いた。セーブ無しでラスボス戦の扉までやってきた時のような緊迫感が廊下に張り詰める..
アタシの家は魔王の城か!!
ガチャ...ギィィィ...
カギのかからないドアノブを回すと扉が軋む音を立ててゆっくりと開き...
とくに何の変哲もない兄貴の部屋が姿を現した
「なんだよ..特に何もない普通の部屋じゃん...マッチョな男が前面に写っているポスターがいっぱい壁に貼ってあると思ったのに..拍子抜けだぜ」
「わぁ...//ここがお兄さんの部屋...」
勉強机と本棚..ちょっと大きめのベッドがあるだけの簡素な部屋だけど、年頃の男の人の部屋に入るのが初めてなのか、あやせはちょっと恥ずかしそうな顔をしていた
あー...アイツの部屋に女なんて本当は上げたくないんだけど..事情が事情だし..仕方ないか...
「ウヒヒ..桐乃の兄貴はどんなエロ本を持っているのか...加奈子さまがチェックしてやんよ~....」
「ちょ..ちょっと加奈子!!」
加奈子はベッドの下に手を伸ばすと、兄貴が隠し持っているエロ本を引きずり出した
「へへ..!加奈子の読み通り...やっぱりここに隠していたな..どれどれ..うぇ..どれも眼鏡の女ばっかり..桐乃の兄貴は眼鏡フェチか...お..おい..これ...」
「どうしたの?...そ、それは...」
「へ?なに?どうしたの..ッ!!」
加奈子が引きずり出したエロ本の中に、あやせの水着の写真集が混じっていた
「し...信じられない..あ、あいつ...あやせの写真集をエロ本と一緒の場所に...帰って来たらコロス!!」
「ふ..ふふ...そう..お兄さんにとってわたしの写真集はエッチな本と同じ扱いなんだ...フフ...フフフフ....」
あやせの光彩がドス黒く濁っていき部屋の中に狂気を孕んだ笑い声が鳴り響く...
「お、おい...桐乃の写真集も混じってんぞ!?お、おまえの兄貴...マジやべー奴じゃん!!!」
「~~~~~~~~//////」
恥ずかしさのあまり私の顔から湯気が出そうな気がした。あ..アイツ..妹の写真を使って毎晩ナニしてるわけ!?
しかも黒猫と一緒にメイド服で写った写真も混じってんじゃん!!あ..アイツ..妹の友達を片っ端から...信じられない..最ッ低!!
「桐乃の写真まで..フ...フフフフ...これは..キツイお仕置きをしてあげないとダメね...」
あやせの瞳に燃え盛る闇の炎が猛りを増していく...
「よく見たら..加奈子の記事も混じってんじゃねーか!!これって..メルルのコスプレでステージで踊った時の写真..ブリジットのまである..!!桐乃の兄貴マジきめぇ!!」
「え...?メルルって..このメルルのコスプレしてるのって加奈子なの!?」
「んぁ?あ、そーか..桐乃には言ってなかったっけ..最近アタシの仕事にコスプレをして踊ってくれっていう案件があってさ~!ガキのアニメに出てくるキャラのコスプレして踊ってるんだよね」
「そ..そうなんだ...これって..加奈子だったんだ...じゅるり...」
「あ?なんで桐乃よだれ垂らしてんの?なんか加奈子を見る目つきが気持ちワリーんだけど..」
「な、なんでもない..なんでもないから!!!」
あ..アタシ..親友の加奈子のコスプレに欲情していたんだ..やばい..どうしよう..これから加奈子の顔まともに見れないかも...
やばいやばいどうしよう..!!うぇひひひひひ!!!
「桐乃...」
ヤバッ..あやせがなんか心配そうな目でアタシを見てる..ちゃんとしなきゃ
「それにしても..ブツはねーな..どれもこれも女の裸ばっかりで..肝心のホモネタがねーじゃねーか...これじゃあ、桐乃の兄貴がホモ小説を書いたっていう証拠はどこにもねーよ」
「そのホモ小説..やっぱり本当は桐乃が考えて書いたものなんじゃねーの?」
「違う!!アタシはホモ小説なんか書いてない!!」
無実の罪を着せられそうになったアタシは自分の名誉を守るために大声で否定した
「つってもな~机の中にも...本棚にも...」
加奈子は無遠慮に兄貴の勉強机の引き出しや本棚の中をガサゴソと漁る..
引き出しの中から出てきたのは筆記用具などの特に変哲の無いモノばかりで、BL小説などの類は一切出てこなかった
「やっぱりなんにもねーよ...桐乃~..そろそろゲロしちゃえよ?誰にも言わないから加奈子にだけ言ってみ?」
加奈子は見下すような笑みを浮かべてアタシを見つめてきた..
「う~~!!だーかーら!!アタシはそういう趣味はないって言って...」
「ただいまー」
アタシが大声を出して加奈子の疑惑を否定しようと瞬間..兄貴が家に帰ってきた
「ウヒッ!ちょうどいいタイミングで兄貴が帰ってきたみたいだな...よっしゃー!!こうなったら兄貴に直接問いただしてみっか!!」
「ばッ..!!」
「むご!あにひやはる..はなへー!(何しやがる!放せー!)」
アタシは暴挙に及ぼうとした加奈子を羽交い絞めにすると、掌で加奈子の口を塞いだ
どんな顔をしてアイツにこの事を問いただせっていうのよ!?
アタシの脳内で京介にBL小説を突き付けている構図が思い浮かぶ..
「ねえ、アンタって..ゲイなの?男の人が好きなの?」
京介は隠していた秘密を突き付けられたことに驚きの表情を浮かべる...
バカじゃん!?こんなこと聞いたらアタシの心が死ぬってーの!!そ、それに..もしも兄貴がゲイだったら...
「ああ...今まで隠していてすまなかった..実は俺...ホモが好きなんだよ!!妹ゲーよりBLゲーの方が好きなんだ!!よく聞け桐乃..俺は..ホモが大好きだーーーーーーーーー!!!」
アタシの想像の世界の中心で兄貴はホモへの愛を叫ぶ...
ひいいいいいい!!!も、もしもこんな展開になったら、この先どんな顔をして兄貴に会えばいいのかわかんないじゃん!!
あまりにもおぞましい妄想にアタシは心底震えあがった
「ねえ、桐乃..大丈夫?顔色悪いよ?」
あやせがアタシを気遣って声を掛けてくれた..
「だ、大丈夫..とにかく今は様子を見たいから...問い詰めるのは後にしよう..そ、それより部屋の中を元に戻して!!兄貴に気付かれたらまずい!!」
「え~?お前の兄貴をとっちめて吐かせたほうがはえーじゃん...」
「加奈子..ここは桐乃の言う通りにしよう?ほら、私は文房具を机の中に戻しておくから、加奈子は本をベッドの下に戻して」
「さりげなく加奈子に汚いモン押し付けんなよー..チェッしゃーねーなまったく...」
「あれ?おーい桐乃ー帰ってるのかー?誰か来てるのー?」
玄関から兄貴の大声が聞こえてくる...しまった..あやせと加奈子の靴を見られたか..これじゃあ二人にどこかに隠れていてもらうわけにもいかない..どうしよう..
ちょっと..下で兄貴の足止めしてくるから、今のうちに部屋片づけといて..アタシたちが兄貴の部屋を物色したってことは絶対内緒だからね!」
「わーたよ!早く行ってこい!」
「わたしたちが片づけておくから桐乃は早くお兄さんの所へ..わたしと加奈子は部屋の片付けが終わったら桐乃の部屋にいるからそこで合流しよう」
「わかった!ありがと、あやせ!加奈子!」
部屋の片付けを二人に任せアタシは兄貴のいる下の階へと駆け下りた
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ーーーーーー
「おい..ほんとに俺んちに来るのか?」
「ええ..腐った脳みそしか頭に詰まっていないくせに、私の崇高な作品をコケにしてくれたあの女に復讐をしないと気が済まないわ」
「ハァ..もう少し仲良くやれないモノかねぇ..」
先を思いやられる気分になった俺は深くため息を吐いた
先ほどゲー研の活動で瀬菜に自分の作品を酷評されたことに腹を据えかねた黒猫は、明日瀬菜のシナリオをボロクソに酷評するために、俺の手元にある瀬菜のシナリオを読ませろと言ってきたのだ。
瀬菜のシナリオは俺の部屋にあるはずなので、黒猫と仲良く自宅を目指して歩いているのだった。
「まぁ...別にわざわざ予習しなくても..瀬菜のシナリオは他の部員にボロクソに叩かれると思うぜ?なぜならウチの部の連中はホモに生理的嫌悪感があるんだからな」
「わかってないわね先輩..私はヤラレタことは100倍にして返さないと気が済まないの...あの女の心を完膚なきまでに叩きつぶすために、的確な呪いの言葉を考えておく必要があるのよ」
「ようはあらかじめ、作品の粗を探しておいてより辛辣な悪口を考える時間が欲しいってことね..イイ性格してるぜ...」
「なんとでもいいなさい..アナタは黙って呪いの書物の在処に私を導けばいいのよ..」
「へいへい..」
俺はブツクサ愚痴をいいながらも、黒猫をわが家へと誘導する..
黒猫の奴..わかっているのか?瀬菜が書いた今回のシナリオは主に俺が男連中に犯される話だ..
すなわち..俺は自分の部屋で、俺がホモられる作品を女の子に読まれるということになる...なにこれ?なんで俺こんな辱めを受けないといけないんだ..?前世でなにか悪いことしたのかな?
などと前世の悪行を考えていると、俺たちは自宅へとたどり着いた..
「ついたぜ俺んちだ..つっても..お前はもう何度も来ているから今更言うまでもないか..最近は俺のシナリオを作るのを手伝ってもらってるからな..」
「アナタが俺にはイラストが描けないから黒猫手伝ってくれ..と言ってきたから手伝ってあげてるのよ?感謝しなさい?」
「ああ..シナリオが完成したら何かおごらせてくれ..ん?」
俺はドアノブに手をかけた時..背筋に冷たいモノが走るのを感じた。
なんだ?ただ..自分の家に帰ってきただけなのに..なぜこんなに嫌な予感がするんだ?
「なにをしているの?早く入りましょう」
「お..おう..」
黒猫に促され俺は自宅の限界を勢いよく開け放った..
「ただいまー!」
長男の帰宅を知らせる大声が家の中に響き渡る..
まだ親父も仕事から戻っていないはずだし、お袋も今日は用があるから出かけると言っていた..
すなわち、今日は俺と桐乃だけになるはずなのだが、玄関には女の子物の革靴が3つ並んでいた。
「あれ?靴がずいぶん多いな..桐乃はもう帰っているみたいだな..おーい桐乃ー帰ってるのかー?誰か来てるのー?」
大声で桐乃を呼ぶと上の階からドタドタという慌ただしい足音が階段を下りてきた
「なに~?今友達呼んでるんだからそんな大声出さないで...て..なんで黒いのも一緒にいるわけ?今日は約束してないでしょ?」
桐乃は俺と一緒に玄関に立っている黒猫をギロッと睨みつけた
階段を下りてくるなり、辛辣な言葉を投げ捨ててくる妹..か~かわいくねぇ~
しかもなんで黒猫を睨んでいるんだよ..黒猫はお前の大切な親友だろーが...自分の親友を俺にとられるのが面白くないのか?
まったく..嫉妬深い妹を持つと兄貴は苦労するぜ...
「フフ..別に今日はアナタに会いに来たわけじゃないのよ..?さ、行きましょう先輩...私たちの愛の巣へ..」
黒猫は俺と腕を組むと挑発的にそう言い放った
..心なしか黒猫の頬が赤く染まっているのは俺の気のせいだろうか..?
「ちっ..キモッ..なにが愛の巣よ..邪気眼電波女が..」
桐乃は軽く舌打ちをすると、汚物を見るような視線を俺たちに投げつけてきた
「おいおい..その辺にしとけよ..どうしておまえたちは顔を会わせるたびに喧嘩ばかりするんだ..」
俺が二人の仲を諫めようとするも..
「誰のせいだと思ってんのよ!!」
「誰が原因だと思っているの?」
「えええ!?お、俺のせいなのか!?」
桐乃と黒猫の両方に罵声を浴びせられた俺は驚きのあまり身を竦めた
「とにかく..学校の友達部屋に呼んでいるから..アンタたちは外で遊んでよ!」
「今日は先輩と大切な用があるの..先輩の部屋じゃないとできないことよ..別にやましいことじゃないからすぐに終わるわ..」
部屋じゃないとできない..やましいこと..という単語を聞いて恥ずかしくなった俺はほんのりと頬を赤らめる
大切な用って..俺が犯されているBLシナリオを読むこと..なんだよな..
十分すぎるほどやましいことだと思うんですが...
「うっさい!!とにかく今日はアタシの部屋に他の友達がいるから、どっか別の場所へ...」
桐乃が俺と黒猫を外に追い出そうとしたとき..
「こんにちはお兄さん!お邪魔しています」
「ちーす!..お邪魔してるぜー桐乃の兄貴ー!」
あやせと加奈子が階段を下りてきて姿を現した
「あ..アンタたち..なんで..アタシの部屋で待っていてって言ったでしょ?」
「桐乃がなかなか戻ってこないから心配になったんだよ..」
「なんだ、あやせと加奈...おほん...え~と..来栖さんだったっけ?いらっしゃい」
俺はマネージャーとして加奈子と面識があるのだが、加奈子はマネージャーと桐乃の兄貴が同一人物だとは知らない..
あやせとの約束で加奈子に正体を明かすわけにもいかないので、俺は加奈子に正体を隠しているのである..
うっかり加奈子の名前を呼びそうになったのを訂正し、記憶の中から苗字を絞り出したという体を装い加奈子の苗字を口にした
「あん?アンタにアタシの苗字教えたっけ?」
「桐乃が時々話しているから..」
「ああ、なるほど...でも..アンタの声どっかで..」
加奈子は顎に手を置き俺の声をどこで聞いたのか思い出そうとする..
「そ、それより..そろそろ部屋に戻ろうよ..私まだ桐乃とおしゃべりしたいよ..」
加奈子の言葉を遮るようにあやせは口を挟み桐乃の部屋に戻ろうと促した。いいぞあやせ、ナイスジョブ!!うっかり加奈子に俺の正体がバレるとこだったぜ
「それじゃあ先輩...私たちも行きましょう?」
「あ、ああ..あやせ、来栖さん..ゆっくりしてってな?」
「はい、どうぞお構いなく..」
俺と黒猫は3人の女子中学生の合間を縫って階段を上りだ
「待ってください..」
そうとしたとき..あやせに再び呼び止められた
「アナタは..どちら様ですか?」
あやせは初対面のハズの黒猫を敵意を剥き出しにした目で睨みつける
「私?私は..フフ..そうね..ここにいる桐乃の真の親友にしてこの男の性奴隷といったところかしら?」
「人聞きの悪いことを言うんじゃない!!!」
とんでもない爆弾発言を口にした黒猫に俺は全力で突っ込んだ
こ..この邪気眼中二病女..な、なんてことを言いやがるんだ!?お、俺を社会的に抹殺するつもりか!?
「せ..性奴隷..!?」
あやせの目が驚愕で大きく見開き、ズザザザ...と猛スピードで後ずさりをして俺から距離を取った
「そう..この京介は私たちの学校ではセクハラ先輩の異名を持つ性獣なのよ..京介は学校で後輩の女子の胸を揉もうとしたり、私なんかエロゲーを作らされそうになったわ」
「お前は俺になんの恨みがあってこんなことを言うんだ!?あやせも真に受けるんじゃない!!こいつは俺の学校の後輩で桐乃の友達なだけだ!!」
事実も一部混ざってはいるが、俺は自分の名誉を守るために黒猫の発言を全力で否定した。
「ちょっと..これはどういうこと?アンタ学校でナニやってるわけ?」
桐乃が殺意の籠った目で俺を睨みつける..
「おい、桐乃!!それが実の兄貴を見る目か!?なんちゅー目で俺を睨みつけるんだ!!小便ちびりそうになるわ!!」
「キモッ!!早く死んでよもう!!友達の前で恥ずかしい思いをさせて信じられない!!」
「イテッ!!こら兄貴を蹴るんじゃない!!イテテテッ!俺が悪かった!頼むからやめてくれ!グワッ!」
「死ねッ!!死ねッ!!」
桐乃は怒りに身を任せて俺の足をゲシゲシと蹴り上げる..
なにこの仕打ち!?なぜに家に帰るなりこんな目に合わらなければならんのだ!?
「ふふ..さあイキましょう京介..アナタの部屋で闇の儀式を行い、私とアナタの魂が交じり合った暗黒の申し子を生み出しましょう?」
「おい!!今とんでもない文字を使わなかったか!?聞き違いだよな!?おい!!」
「あ..アンタ..妹とその友達がいるっていうのに..一体なにをおっぱじめるつもりなの!?」
「誤解だ!!黒猫と一緒にゲームのシナリオを考えるだけだよ!!」
「いいから行くわよ..」
「おい、黒猫!!おいってば!!」
こうして俺は黒猫に手を引かれて強引に俺の部屋へと連れていかれたのだった
ーーーーーーー
ーーーーーーー
「まあ、とりあえずゆっくりしていけよ..後で下からお茶持ってくるからさ」
「お気遣いは無用よ..」
黒猫は俺のベッドの上に腰掛けると、さっそく瀬菜が書いたBLシナリオを要求してきた
年頃の女の子が俺のベッドに腰掛けて..男と男が交わる本をリクエストしてくる..なんだよこの状況..
「ちょっと待ってろ..え~と..どこに置いてあるんだったかな~」
俺は瀬菜のBLシナリオが描かれているノートを見つけるために、ノートが閉まってありそうな場所を探し出した。
「ああ、あったあった..机の引き出しに入ってた..だが妙だな..?俺はこんなところに仕舞った覚えはないんだが..まあいっか」
仕舞った覚えのない場所からノートが出てきたことに違和感を感じたが、そんなこともあるだろうと思い直すとノートを黒猫に手渡した
「な..なんて禍々しい瘴気なの...このノートからあの女の邪悪な念がヒシヒシと伝わってくるわ..」
「おいおい..見た目はなんの変哲もないノートだろうに..中身は呪物と呼ぶにふさわしい内容が描かれているが...」
黒猫はごくり..と唾を飲み込むと、恐る恐る表紙をめくろうと指を伸ばした
「お、おい..本当に読む気なのか?これに何が描かれているか..お前も知っているハズだろう..?一生モノのトラウマになるかもしれないんだぞ?」
「フ..愚問ね..この千葉の堕天聖(せんようのだてんせい)黒猫にトラウマになるですって?...ずいぶんと見くびられたモノね..あの女の持つ邪悪ごとき我が器の前では塵に等しい..」
「強大な魔力を持つこの私があの女の創り出した邪悪を飲み込んで従えてみせよう!!」
黒猫はそう言い放つと、バ..と勢いよくノートのページをめくった
「高坂...高坂..!!」
「う..赤城..赤城..!!」
初っ端の一ページ目には俺と赤城が裸になってベッドで交わっているシーンがデカデカと映し出される..
筋肉質な身体の赤城が華奢な俺を後ろからシッカリとホールドして、犬の交尾のごとく俺のケツの穴に腰を打ちつけていた
「ッ...くっくっく..この程度なの?ガッカリさせないで頂戴..」
黒猫は余裕の笑みを顔に浮かべるも、しっかりとジャブが効いているようで声に若干の震えが混じっていた
「グオ...ッ」
俺の精神にも強烈な負荷がかかり、腹の底から吐き気がこみ上げてくるのを必死になって抑えた
「臭いだろう..なあ高坂..7日間風呂に入ってない俺の汚いピーをしっかり舐めてきれいにしてくれよ..」
「臭い..ヒック..臭い..臭い..」
2番手は部長と俺が交わっているシーンで、部長の足元に跪いた俺が腐臭を放つ部長のピーを舌を使って丹念に舐め挙げていた..
「いいぞ..高坂..ウッ..!そ、そろそろ..で..出る..」
「いいですよ..部長..部長の汚いピー!を俺の口の中に出してください..俺..部長のピー!を体に取り込みます..」
「高坂..高坂ーーーーーーー!!!!ウオッ!!」
「んんん!!」
部長のピー!が俺の口の中に発射されノートの中の俺は恍惚の表情を浮かべて、一滴残らずソレを飲み込んで体内へと取り入れた
「ハァ...ハァ...く..くく..中々ね...でもまだまだ..我が器を満たすには程遠い...」
黒猫の顔色は血の気が引いたように真っ青になっている..
「ウェ..ウエエ..!」
どちらかというと俺への精神ダメージの方が大きく、嘔吐感が喉元にこみ上げてきた俺は大きくえずいてトラウマを吐き出した。
「でもこの程度の作品では..私を屈服させることなんてできないわよ..さあ..おまえの次の闇を吐き出しなさい..」
黒猫は震えの止まらない指で、ペラ..と次のページをめくりあげた
(どうせ隣の部屋であの小娘どもが聞き耳を立てているんでしょう..いいわ..聞かせてあげる..私たちと一緒に闇の世界を彷徨いましょう...)
黒猫は何を血迷ったのか、本に書いてある内容を声にハッキリと出して音読を始めた..
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ーーーーーーーー
「ムカつく!!ムカつくムカつくムカつく~~~!!!あのクソ猫ふざけたマネしてくれちゃって~~~!!!」
「あの泥棒猫...わたしの桐乃をたぶらかしただけでなく、お兄さんの心も惑わせるなんて..絶対許さない!!」
「お..おい..なんでそんなに怒ってんだよお前ら...」
地団太を踏んで怒り狂うアタシと、光彩がドス黒く濁っているあやせの変貌を見た加奈子は動揺した声を上げる..
「あやせ!加奈子!アタシたちも行くよ!!」
「うん!!」
「へ?行くってどこにだよ?」
「決まってるでしょ!?アタシの部屋で兄貴たちの会話を盗み聞きするのよ!!もしも変なことやってたらとっちめてやる!!」
「あの女はお兄さんと一緒にシナリオを作るって言っていた..きっと例の..B..BL小説にもあの女が関わっているに違いないよ!!二人の会話を傍受して真相を確かめよう!!」
「お..おい..加奈子は別にどうでも...」
「いいから行くよ!!」
「わかったよ...」
アタシたちは兄貴と黒猫の会話を盗み聞きするために、アタシの部屋へと飛び込んだ
アタシの部屋と兄貴の部屋の境を繋ぐ壁は薄い..
兄貴の部屋から聞こえる物音や声は、もれなくアタシの部屋にも聞こえるの..
兄貴と黒猫の会話を聞き取るべく、アタシとあやせは壁に耳を押し付けた
(なにやってんだコイツラ...)
加奈子はそんなアタシとあやせを呆れたような表情で後ろから眺めている
加奈子からの好感度の低下を気にもとめず、アタシとあやせは京介の部屋から聞こえる会話を残さず聞き取るために聴力を研ぎ澄ませた
「まあ、とりあえずゆっくりしていけよ..後で下からお茶持ってくるからさ」
「お気遣いは無用よ..」
兄貴と黒猫の会話が壁越しにアタシたちの耳に聞こえてくる..
なによ..アタシがアンタの部屋に行ったときはワザワザお茶なんて持ってきてくれないくせに..
黒猫にデレデレしちゃって気を使ってさ..キモイっつーの..
「それより、さっそく例の呪われし書物を見せてくれるかしら?」
「ちょっと待ってろ..え~と..どこに置いてあるんだったかな~」
兄貴が例のBLシナリオを探す音が聞こえてきた
「や..ヤバッ兄貴の部屋にBL小説を戻しておくの忘れてた!」
「心配しなくていいよ桐乃..わたしがお兄さんの机の中に戻しておいたから」
「え?そうなの..?よかった..ありがとあやせ..」
「おい、しゃべんじゃねーよ..アイツらの声が聞き取れねーだろ?」
ああ、あったあった..机の引き出しに入ってた..だが妙だな..?俺はこんなところにしまった覚えはないんだが..まあいっか」
あやせの活躍のおかげで無事兄貴はBLシナリオを見つけることに成功したみたい..
どうでもいいけど..あやせってBL小説なんて見るのも汚らわしいとか言いそうなのに、なんか積極的だよね..
「ウ..クソ..気持ち悪くなってきた...」
「フフ..この程度の邪悪で根を上げるなんて..まだまだね...日ごろから魔力を貯める器を養う訓練を怠るからよ..
黒猫と共にBLシナリオを読んで気持ちが悪くなったのか、兄貴のうめき声がアタシの部屋に聞こえてくる..
自分が書いたシナリオで気持ち悪くなるとか..バカじゃん?
「アナタも我が眷属の末裔なんだから..我に恥じない程度の器に育ってもらわないと困るわ」
「お前はドラキュラかっつーの!!なんだ魔力を養う器って!?訓練って何すんの!?」
黒猫の言葉に対する兄貴の突っ込みが大きく響き渡った。
あのバカ..隣の部屋にアタシたちがいること忘れてんの?
アンタの突っ込みって声がデカいのよ..近所中に聞こえてるかもしんないっつーの
「器を養う..我が眷属の末裔...そういうことでしたか...」
黒猫の発言にあやせがポツリと口を開く...
「お..おい..あやせ..なんで光彩が濁ってるんだよ..な、なんか..怒るようなことでもあったか?お、おまえ..体から魔力が出てんぞ..」
「加奈子が何を言っているのかわからないな...話に集中したいから静かにしていて」
あやせは怯える加奈子を冷たく突き放し、部屋の壁により深く耳を押し付けた
すると..黒猫の声がさっきよりもなぜかハッキリと聞こえるようになり、黒猫の口から紡がれる呪いの物語が私たちの部屋に聞こえてきた...
「高坂先輩..僕たちが付き合い始めてから..もうけっこう経ちますよね?」
「そうだな真壁君..そろそろ君のご両親にもご挨拶にいくべきかと思っているんだが..俺たち..将来は結婚するつもりだってな..」
「高坂先輩..僕..うれしいです..先輩が僕との将来をちゃんと考えてくれているなんて..」
「真壁君..俺たち..高校を卒業するまでは清い付き合いでいようって約束したけど..俺..もう我慢の限界だよ!!いますぐ君を犯して犯して犯しまくりたいんだ!!」
「先輩..僕も先輩と同じ気持ちです...高坂先輩と...一線を越えたい..」
「真壁君..」
「先輩...」
京介と真壁君は固い抱擁を交わし、口づけを交わそうと抱き合う...
「あ..アイツら..一体なにやってんの!?」
「あ..あのおぞましい本を..口に出して読んでいる..し..信じられない!!」
兄貴の部屋から例のBLシナリオを音読する黒猫の声が聞こえてくる...
「なんかキメーの始まったな...加奈子ピー!したいからトイレ行ってくるな」
驚愕で固まっているアタシと桐乃を尻目に加奈子は部屋を出ていった
「あ、ちょっと..!!加奈子..!!」
便意を催した加奈子はそそくさと部屋を出ていってしまい、部屋の中には戸惑いの表情を浮かべたアタシと光彩をドス黒く染め上げた無表情のあやせの二人だけが取り残された
アタシの戸惑いをよそに黒猫の口から更なる呪いが解き放たれる..
「高坂!?俺との仲は遊びだったのか!?俺を捨てるなんてひどいぞ!!」
「げげ!?あ、赤城..!?」
「おい高坂!!あれほど俺と愛し合ったじゃないか!!真壁と浮気なんて..絶対に許さないぞ!?」
「ぶ..部長..!!どうして!?」
京介と真壁君の唇が触れ合おうとした寸前..
前の章で京介と愛し合った赤城と部長が、京介と真壁君の間を割くように乱入してきた
二人ともスッポンポンで路上に立っており、極限まで勃起したピー!がビクン..ビクン..と小刻みに脈打っている
「ちょっと..!!この章では僕と高坂先輩のラブストーリーを描くんですよ!?突然乱入してこないでください!!」
「うるせえ!!俺は高坂の親友だ!!何人たりとも俺の嫁は渡さん!!」
「ウホッ!!イイ男..ガチムチとはやったことがねえからな..おい、お兄ちゃん..後で俺とヤラないか?」
「おえ..生ごみが腐ったような匂いの奴はお断りだ..それに俺は高坂一筋!!高坂の穴は俺のモノだ!!」
「あ..赤城..お前そんなに俺のこと..」
「高坂ーー!!」
「赤城ーー!!」
欲情した赤城に地面に組み伏せられた京介は、ビリビリ..と豪快な音を立てて衣服を破り捨てられてしまう..
京介の黒いトランクスがヒラリと宙を舞い赤城は京介の体を固く抱きしめた
「ち..ちょっと..ヒドイですよ!!今は真壁編なんですよ!?僕の高坂さんを取らないでください!!」
「うるせえ!!自分の男を取られるのがイヤだったら力ずくで取り返してみろ!!お前も男だろうが!!」
赤城は真壁君の抗議の声を一喝して黙らせ京介の体を貪るように蹂躙する..
「い..言ってくれましたね..僕だって漢だ!!高坂さんは力づくで僕が奪い返す!!」
真壁君は素早く服を脱ぎ捨てると全裸になってしまった
「高坂先輩から離れろ!!」
「ウオッ!!」
全裸になった真壁君は赤城にタックルをお見舞いし、赤城の筋肉質な身体がコンクリートの路面に投げ出される
「ハァ..ハァ..高坂先輩は..僕のモノなんだーー!!」
「来い!!真壁君!!俺はおまえのすべてを受け入れてやるぞ!!」
京介は立ち上がると背を向けて、ケツの穴を真壁君に突き出した..
「高坂..せんぱーい!!!」
ズブリ..!!
「ウオッ!!」
真壁君の極限まで勃起したピー!が京介のお尻の穴をぶち抜いた...
「先輩!!先輩!!」
「ウ..グオ..!」
真壁君は犬が交尾するかのごとく、何度も京介のケツに腰を打ちつける..
「ふ..ハァ..ハァ..」
「う..く..ウオッ!!」
京介と真壁君は一つに繫がり二人を快楽が包み込んだ
「へへ..やるじゃねえか..モヤシヤローのくせに中々いいタックルだったぜ..気に入った!!お前のケツの処女はおれがもらう!!」
真壁君を漢として認めた赤城は真壁君の背後に回り込むと、勃起したピー!で真壁君のお尻の処女を奪い取った
「う..ウワアアッ!!」
ガチムチマッチョな赤城に後ろから貫かれた真壁君は悲鳴にも似た快感の叫びをあげる
「ヘヘ..初めてだったのか?お前のケツの中..キツキツだぜ...」
「ハィ..♡僕..初めてなんです..優しくしてください♡」
「任せろ..!!」
赤城はピストン運動をするかのごとく、真壁君のケツに勢いよく腰を打ちつけていく...
「うわ..あああ!!」
ガチムチマッチョな赤城の攻めに真壁君は恍惚の叫び声をあげた
「ヘヘ..こんなおいしそうなモノを見せつけられて..俺だけ除け者なんてそりゃなしだぜ...おい..お兄ちゃん..引き締まったいいケツしてるな..俺の好みだ..たっぷり..開発してやる..」
赤城の筋肉質な身体に興奮した部長は体から腐臭を放ちながら赤城の背後へとにじり寄っていく
「お、おい!!やめろ..!!俺はお前みたいな臭い男は趣味じゃないぞ!?」
部長に尻の穴をロックオンされた赤城は恐怖の叫び声を上げる
「ヘヘ...逃げてもいいんだぜ?逃げられるモノならなぁ..」
「クソッ!真壁の尻の穴が気持ちよすぎて..動けん!!」
「ウァッ!!アアッ♡」
赤城は真壁君の尻を突くスピードを速め、真壁君は涎を垂らして恍惚の表情を浮かべた
「貴様!卑怯だぞ!男とヤッテいる最中に襲い掛かってくるなんて!!」
「へへ..人間は食っている時と寝ているとき..そしてヤッてる最中が一番無防備になる生き物だからな..さて..入れるよぉ...」
「や..ヤメ...ウォッ!!」
口から涎を垂らした部長が赤城のケツの穴にゆっくりと..極限まで勃起したピー!を挿入した
「く..臭い!!でも..気持ちいい!!」
「ヘヘ..イイだろう..だてに歳はくってねえんだぜ..?たーーぷり..可愛がってやるからな..」
部長の臭いに赤城は吐き気がこみ上げてくるも..
部長のテクニシャンな性技によって快楽が突き上げてくるのを感じた
「き..キモチ悪い..で、でも..キモチ良い..なんだこれ..俺..こんなの初めてだ..!!」
「臭いだろう..いいんだぜ..お前を俺色に..汚してやるからよ...」
「ヒャウ♡」
部長は赤城の耳を甘噛みし、赤城は今まで上げたことのない女の子みたいな悲鳴をあげた
不快感と快感が交互に赤城の身に降りかかり、清と濁を混合した快感が赤城の身を包み..
赤城は自分の身も心も汚れていくのを感じていた
4人はでんしゃごっこのような体制で繋がり..
道路の上には漢たちの喘ぎ声が轟き渡り...
道行くサラリーマンや作業員の男たちは若者たちをニタニタと下卑た笑みを浮かべて見守っていた
「おい..お兄ちゃん..前が寂しいだろう..俺がおまえのを咥えてやるよ..」
「な..なんだアンタ..ウオッ!?」
でんしゃごっこの先頭で真壁君に尻を蹂躙されている京介の前に、見ず知らずのハゲデブのおっさんがしゃがみこんで、京介のピーを口に咥えこんだ
それからどのくらいの時間が経ったのだろう..
永遠とも思える宴の時間にも終わりの時がやってきた..
「高坂先輩..出ます!!」
「真壁..行くぞ!!」
「受け取れ..赤城!!」
「お..そろそろ出るな..いいぞ..おっちゃんの口の中に出しな..」
ドクン...!!
『アッー!』
『アッー!』
『アッー!』
『アッー!』
4人は快楽の波に溺れながら、体の中に溜まりに溜まった衝動を...それぞれの相手の中にブチまけた...
オオオオーーーーーーー!!!!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!!
最後までやりきった4人にギャラリーのおっさんたちが惜しみない拍手を送る...
今まで生きてきた中でこれほど充実した瞬間はなかった...
ホモは...いい...
全ての呪いを受け止めた後..
アタシとあやせは何も言わずゆらりと立ち上がり、ゆっくりと部屋の出口へと歩き始めた
ーーーーーーー
ーーーーーーー
「ハァ..ハァ..ッ..ギリギリだったわ...これ以上の魔力が注ぎ込まれたら..私の器がもたなかったかもしれない...」
乱交シナリオを読み終わった黒猫の顔は恥ずかしさのあまり真っ赤になっている..しかし、その顔はやり切った女の顔で清々しさすら感じることができた。
「くっくっく...なんて稚拙な話だったのかしら..物語としてこれ以上ないほど破綻していたわ..」
「前の章のキャラクターたちが予定調和を押しのけて出張ってきたり..往来のど真ん中で乱交を始めたり..ギャラリーが全員ホモで乱入してくるモブがいたりと滅茶苦茶だったわ」
「ウッ!!!」
対する俺は吐き気を抑えきることができず、部屋を飛び出して廊下を駆け出した
トイレに駆け込もうとドアノブを思い切り捻るも、ガチャガチャ..という音を立てるだけでトイレのドアが開くことはなかった
誰だ!!この非常時にトイレを占有している不届き者は!?
「誰?桐乃?それともあやせ?あ~ワリー~今ピー!してる最中だから待ってて..もう少しで出そうなんだけど..あ~うぜー!!ちゃっちゃと出て来いよてめー!!」
かーなーこ!!!なぜこのタイミングでトイレに入っているんだおまえは!?
それに女の子がピーしてる最中とかいうんじゃない!!
クソッやむを得ん!!
「オエッ!!オロロロッ!!!!!!!!!」
近くにあった窓に駆け寄ると庭に向かって胃の中のモノをぶちまけた
「しょうがなかった..しょうがなかったんだ!!」
しょうがないという言葉を繰り返し、自分を納得させようとしていると..
ジャー...ガチャ..
「お..おい..おまえ..一体なにやったんだ!?ま..窓の外にゲロ吐いてんじゃねーよ何考えてんだ!?」
ようやくトイレから出てきた加奈子が道路に嘔吐している俺の背中に追い打ちの言葉を投げかけた
「し..仕方がなかったんだ..仕方が..なかったんだよ..」
加奈子に対して言い訳にもなっていないセリフを返すと、あまりにも情けなくて目からポロ..と涙が一滴滴り落ちた
「コラーーー!!!京介ーーー!!!アンタ何やってるの!!?」
「ゲゲッ!!お袋!?」
窓の下からお袋の怒鳴り声が響き渡る..
道路の真ん中にお袋が仁王立ちしており、鬼のような形相で俺の顔を見上げていた
どうやら俺が2階の窓からゲロを吐くところを見られてしまったらしい..
ちくしょー!!なんだってんだ今日は!!厄日なのか!?
2階の窓からゲロしているところを加奈子とお袋に見られてしまい、俺のプライドと尊厳は粉々に砕け散ってしまった..
「フフ..トイレには間に合わなかったのかしら?無様ね...先輩」
ドン引きの表情を浮かべている加奈子と、涙目になっている俺の背後に黒猫が姿を現した
黒猫の手には瀬菜のBLシナリオが握られており、顔面蒼白になりながらも勝ち誇ったような笑みを浮かべていた
「あー!!オメーさっき大声でホモ小説読んでいた変態女だろ!?何考えてんだよマジきめー!!」
「な..誰が変態ですって!?ビッチ3号め!!」
「誰がビッチだこのヤロー!!あんな小説大声で読んでいるお前の方がよっぽどビッチだっつーの!!」
「グ..ぐぬぬ..」
加奈子に正論を言われた黒猫はぐうの音も出ないようで、悔し気に唇をかみしめていた
「こらー!!京介ー!!アンタ後でお父さんに叱ってもらうからねー!!」
窓の外からはカンカンに怒ったお袋の叫び声が聞こえてくる..
ひえええ!!窓からゲロを吐いていたことが親父にバレたら絶対恐ろしいことになる!!
ちくしょー!!なんだってこんなことになっちまったんだ!?
「黒猫!!おまえのせいで俺は気持ち悪くなって吐くことになったんだぞ!?そもそもなんでわざわざ口に出して読むんだよ!?何を考えてんの!?」
「あら..口から涎が垂れているわよ..?ゴックンした方がいいんじゃないかしら?」
「ゴックンじゃないっつーの!!もうホモの話はやめろ!!」
だが..2階からゲロを吐くところを加奈子やお袋に見られたことなど..これから起きる不幸に比べれば前座に過ぎなかったのだ..
なぜなら...
ギィィィ....
桐乃の部屋の扉が軋む音を立てゆっくり開き..
スタ..スタ..という静かな足音が俺たちに迫ってきた
「な、なんだ!?」
「き..桐乃?」
突然の来訪者に驚き固まる俺と黒猫..
「アンタ...何やってるの?」
「あなた..だったんですね..全ての元凶は...」
俺たちの退路を断つかのごとく..鬼神を思わせる憤怒の表情を浮かべた桐乃と、光彩がドス黒く変色し妖艶な笑みを浮かべたあやせが現れた
「アンタ..なに自分が書いたホモシナリオ黒猫に読ませて興奮してるの..?キモッ..!」
「は..はぁッ!?お前何言ってんの!?」
桐乃は心底軽蔑している目つきで俺を睨みつけた
「アナタが..あの小説の作者だったんですね..あんな小説でお兄さんをたぶらかし..桐乃を苦しめたアナタを許すわけにはいきません...」
「な..なにアナタ..ちょ..ちょっと落ち着きなさい...私はあのシナリオの作者じゃないわ..!な、なんという邪悪を器に宿しているの..こんな禍々しい魔力..現世では見たことがない!!」
光彩がドス黒く濁ったあやせの瞳に射抜かれた黒猫は神話に登場するメデューサに石にされてしまったかのごとく、その場から動けなくなってしまった
「な..なんだお前突然..!!ま、まさか..さっきの黒猫の朗読..聴いていたのか!?」
「聴いていたのか?じゃないでしょ!?あんなデカい声で朗読されれば嫌でも聞こえるっつーの!!どうせアンタが黒猫に声に出してあのキモイ文章読んでって頼んだんでしょ!?」
「違う!!俺はそんなこと頼んでないし!!そもそも..ホモの話で興奮するわけないだろ!?」
「ウソつくな!!!」
「ひぃ..!!」
桐乃の怒鳴り声が2階の廊下に響き渡る..鬼気迫る表情で俺を糾弾する桐乃の気迫にすっかり俺の心臓は縮み上がってしまった
「汚らわしい..アナタのすべてが汚らわしい..その醜悪な心で醜い文章を創り出し..お兄さんと桐乃を堕落させようとするアナタは..駆除しなければなりません...」
あやせはスカートのポケットの中に手をゆっくりと差し入れるとスタンガンを取り出した
「ま..待ちなさい!!アナタは誤解してるわ!!あの文章は私が創りだしたものじゃないって言っているでしょう!?」
「嘘つくな!!あの作品がアナタのモノでないのなら、あんなに楽しそうに読めるはずがない!!」
「そ、それは..桐乃をからかうためにわざと大きな声で...」
「ほらやっぱり..桐乃を困らせるためにやっていたんじゃないですか..お兄さんと桐乃にこれ以上害をもらたそうとするのなら..本当に駆除しますよ!?」
あやせはスタンガンの電源を入れるとバチバチという青白い火花が廊下に撒き散らされた
「ヒッ..!!」
あやせの怒りを買ってしまった黒猫は恐怖で縮み上がってしまった
黒猫の手からBLノートが滑り落ちバサッ!という音を立てて床に叩きつけられた
「おいその辺にしとけよあやせ!!桐乃もだ!!人んちで殺し合い始める気かテメーら!!」
悪鬼と化した桐乃と暗黒面に堕ちたあやせを一喝する加奈子の叫びが廊下に響き渡った
加奈子ーー!!お前だけは信じていたぞ!!俺の周りの女子で麻奈実を除けば何気にお前が一番の常識人だもんな!!
「た..助けて!!」
「わ!!暑苦しーんだよ!!しがみつくなキメーな!!」
あやせの狂気に心底震えあがった黒猫は加奈子の背後に隠れ、雨に打たれた捨て猫のようにブルブルと震えていた
「お..俺もだ!!匿ってくれ!!」
「なんだテメー男だろ!?女の子の後ろに隠れてんじゃねーよカス!!」
咄嗟に俺も加奈子の背後に隠れた。
笑いたきゃ笑えばいーさ!!それほど桐乃とあやせがおっかねーんだもん!!
「加奈子どいて!そいつ殺せない」
悪鬼を思わせる表情を浮かべた桐乃が加奈子を威嚇する..
「お..おま..!!仮にもおれはお前のお兄ちゃんだぞ!?それにそのセリフはお兄ちゃんに向けるモノじゃ..」
「うるさい!!ホモは死ね!!」
桐乃は黒猫が落としたBLノートを拾い上げると、俺めがけて勢いよく投げつけた
「ぶべぇ!?」
空中でノートのページが開き、俺がホモ電車の先頭で犯されている挿絵のページが顔面に叩きつけられた
「加奈子..手癖の悪い泥棒猫のしつけをしないといけないからどいて..」
あやせはスタンガンを握りしめると、井戸の底のようなドス黒い瞳で黒猫を睨みつけた
「ッ!!」
殺意の波動に目覚めたあやせの迫力に黒猫は怯えの表情を浮かべるも..
ゾクゾクッ..!と何かに興奮したように体を震わせた
「だーかーら!!その物騒なの仕舞えつってんだよ!!いいかげんにしろよテメーら!!」
二人の悪鬼を毅然とした表情で一喝する加奈子を俺たちは羨望の眼差しで見つめていた..
「く..黒猫ぉ..!!」
「せ..先輩..!!」
俺たちはそんな加奈子の背後に隠れると、嵐が過ぎ去るのを願うように身を抱き合って震えることしかできなかった..
「アンタ!!なに黒いのと抱き合ってんのよ!!離れろ!!」
「桐乃とお兄さんをたぶらかす魔女め..!!わたしがこの手で成敗してくれます!!」
「お..落ち着けおまえら!!暴力は何も生み出さない!!話せばわかる!」
「私とアナタはきっと同胞になれる..さあ..来なさい..アナタの内に秘める邪悪を我が器に注ぎ込むがいい..!!」
「突然お前は何を言い出すんだ!?死にたいのか!?」
黒猫の奴..恐怖で頭がおかしくなったのか!?
桐乃とあやせが牙を剥き場の空気が極限まで張り詰めたその時..
「京介!!アンタ2階の窓から嘔吐するとか何を考えてんの!?」
お袋がドスドスという大きな足音を立てて階段を上ってきた
「ご近所さんに見られていたらどうしてくれるの!?お母さん恥ずかしくて表を歩けなくなるじゃ..あら?桐乃帰ってたのね..あら、お友達も一緒で..お、おほほ..いらっしゃい♪」
「お母さんただいまー!!今友達来てるからさ..何かお茶菓子を用意してくれない♪」
「桐乃のお母さんお邪魔してます♪」
にこやかな笑みを浮かべた桐乃とあやせが愛想よくあ袋にあいさつした
怖えええええーーーー!!!なんだコイツら!?二重人格か!?
俺と黒猫を追い詰めていた二人の鬼気迫る表情が一変し、普段通りの桐乃とあやせに一瞬で戻ったことに俺の背筋にゾクゾクッ..と悪寒が走った
女って..やっぱり怖え...
あ、だからって俺はホモには走らないからな?勘違いすんじゃねーぞ?
「お..おほほ..待っててね..今お茶とケーキを準備するから..!!」
娘の友達に汚い言葉を聞かせてしまったことをごまかすようにお袋は作り笑いを浮かべると、お茶菓子を準備すべく下の階へと降りて行った..
お袋..よくぞこのタイミングで来てくれた..初めてアンタに感謝した気がするよ..
ーーーーーーー
ーーーーーーー
「な...なーーんだ..これはアンタが書いたものじゃなかったんだ..そうならそうともっと早く言ってよね~!!」
「も..もう..そそっかしいんですから..もっとはやく言ってくれれば私もあんなに怒らなかったのに...」
「何度も言ったよ!?大体なんで俺がホモ小説を書くんだよ!?」
「この本は私が書いたものじゃないわ..これはウチの部活の脳みそが腐りきっている女が創り出した呪いの書なのよ..」
桐乃とあやせはバツの悪さをごまかすように笑みを浮かべ、俺と黒猫の分のケーキやお茶の準備をしていた
「このケーキうめー!!おばちゃんもう一個食っていいか!?」
「どうぞどうぞ♪..好きなだけ食べてって頂戴..!!あ、私ちょっと急用を思い出したからでかけてくるわね~」
そういうとお袋はそそくさと家を出て行ってしまった..年頃の娘たちに嘔吐という言葉を聞かせてしまったのがよっぽど気まずかったようだ..
騒動の発端になった本の裏表紙に赤城瀬奈という作者の名前が記されており、桐乃とあやせの誤解はあっけなく解けたのだった
俺たち一同は場所を下のリビングへと移し、和解の印としてテーブルを囲んで和やかにケーキを頬張っていた
「それにしても..なんでおまえらあんなに怒ってたんだよ?黒猫がちょっと卑猥な小説読んでいたからって過剰反応しすぎじゃねえのか?」
「ハ..ハァ!?あんなキモイ文章の朗読を聞かされたら怒るにきまってんじゃん!?」
桐乃は顔を真っ赤にしてそう叫んだ。コイツ..何か隠してやがんな?
「桐乃..お兄さんと黒猫さんに迷惑をかけてしまったんだから..隠すのはもうやめよう?ごめんなさいお兄さん..黒猫さん..実は私と加奈子は桐乃に相談を受けていたんです」
「相談?なんの..」
俺は何げなく紅茶が入ったティーカップをくいっと傾けて、中の紅茶をズズ..と啜った
「今日ずっとコイツ悩んでいたんだぜ?自分の兄貴がゲイなんじゃないかって..」
ブーーーーーッ!!!!
俺は口に含んでいた紅茶を盛大に吐き出した
「うわ!!汚ね!!ちょっとかかった!!」
「桐乃..今日ずっと元気なくて..数学のノートと..この..B..BL小説を間違えて学校に持ってきてしまうくらいに..お兄さんは桐乃を悩ませていたんですよ!?反省してください!!」
な、なに..!?コイツら今なんて言った!?
お..俺がホモ疑惑をかけられていて..しかもこのBLシナリオを桐乃..学校に持っていったの!?なんでどうしてWhy!?
「ま、待て..!!そもそもなんで桐乃がこのBLシナリオを持っているんだ!?そこからしてまずおかしーだろーが!!」
「アンタ..昨日の夜中..こんな素晴らしいシナリオが書けちゃう自分が怖いとか..キモイこと言ってたじゃん」
「お..おまえ..あの時の俺の独り言を..聞いていたのか?」
「べ..別に聞きたくて聞いてたわけじゃないし...壁が薄いから..聞こえちゃっただけだし..」
桐乃は頬を赤らめると、きまりが悪いのか俺から顔を背けた
「そ..それで..どんなシナリオ書いたのか添削してやろうと思って..アンタが寝静まった部屋に入ってこっそりこのノートを手に取ったら..こんなのが書かれてて..」
事情は理解した..あの時机の上に置いてあった3冊の本は部長のシナリオ、真壁君のシナリオ、そして瀬菜のシナリオだった。
桐乃はその中の瀬菜のシナリオを俺が描いたモノだと思い込んでしまったのだ。
「で..でもよー..なんでそのままBLシナリオを部屋に持って帰ってしかも学校にまで持っていくんだよ..意味わかんねえよ..」
「あ..アンタがゲイかもしれないって思ったら..ショックで..うっかり部屋に持って帰っちゃって..数学のノートと間違えてカバンに入れちゃったの!!」
「どんなうっかりだ!!俺はゲイじゃねえ!!それに製作途中のシナリオを勝手に読もうとするんじゃねえ!!」
「わ..悪かったわよ!!そんなに怒んなくてもいいじゃん!!」
まったく..寝ている隙に部屋のモノを勝手に持ち出されるんじゃたまったものじゃねえな..
しかも..友達連中に俺のホモ疑惑を打ち明けるとは..もうお兄ちゃんのライフはとっくに0だぜ..
もうライフポイントが0になってこれ以上俺のライフが削れることはないと思っていたが..
「加奈子は桐乃の兄貴はゲイじゃないって最初からわかってたぜ..だってベッドの下のエロ本の中にゲイの本がなかったからな」
加奈子が俺の心にさらなるダイレクトアタックを仕掛けてきた
「んなーーーーーー!!!!お..おおおおおおまえら!!!!ベッドの下を覗いたのか!?」
恥ずかしさのあまり俺の顔は真っ赤になり、思わずイスから立ち上がった
「あ、やべ..これ言っちゃいけない奴だった?わりーわりー」
加奈子は右手てボリボリと頭を掻くとテヘペロ♡と言わんばかりにかわいく舌を突き出した
「おい!!なんで俺の部屋勝手に漁ってるんだよ!?じ..人権侵害だ!!」
「う..うっさい!!アンタがゲイじゃない証拠を見つけるために仕方ないことだったの!!つーかなに?アンタ..どうしてエロ本の中に、アタシとあやせと加奈子と黒猫の写真が混じってんの!?」
「~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」
攻撃力4500は超えるであろう強烈な一撃が俺の心を殴りつけた
ピピピピピピピピ..!!という俺のライフポイントを勢いよく削っていく電子音が聞こえたような気がした。
「加奈子は桐乃の兄貴はゲイじゃないって最初からわかってたぜ..だってベッドの下のエロ本の中にゲイの本がなかったからな」
加奈子が俺の心にさらなるダイレクトアタックを仕掛けてきた
「んなーーーーーー!!!!お..おおおおおおまえら!!!!ベッドの下を覗いたのか!?」
恥ずかしさのあまり俺の顔は真っ赤になり、思わずイスから立ち上がった
「あ、やべ..これ言っちゃいけない奴だった?わりーわりー」
加奈子は右手てボリボリと頭を掻くとテヘペロ♡と言わんばかりにかわいく舌を突き出した
「おい!!なんで俺の部屋勝手に漁ってるんだよ!?じ..人権侵害だ!!」
「う..うっさい!!アンタがゲイじゃない証拠を見つけるために仕方ないことだったの!!つーかなに?アンタ..どうしてエロ本の中に、アタシとあやせと加奈子と黒猫の写真が混じってんの!?」
「~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」
攻撃力4500は超えるであろう強烈な一撃が俺の心を殴りつけた
ピピピピピピピピ..!!という俺のライフポイントを勢いよく削っていく電子音が聞こえたような気がした。
「そ..そうだった!!変態変体変態!!私の写真集だけならともかく..実の妹である桐乃の写真をナニに使っていたんですか!?」
「ご..誤解だ!!お前たちは誤解をしているぞ!!」
「どう誤解だっていうのか..ちゃんと筋道を立てて聞かせてもらえるかしら?」
黒猫がジ..と蔑むような目で俺を見つめてきた
「アンタの抜きネタの中に加奈子がコスプレして踊ってんのもあんじゃん?アンタ...妹の友達がアニメキャラのコスプレしてんのに興奮すんのかよ..」
「違うんだって!!だから俺の話を聞いてくれ!!」
「ホモ疑惑は晴れたけどよ..実の妹やその友達に片っ端から欲情するとかマジきめぇ..これからアンタのことエロ大魔王って呼ぶからな」
「やめんか!!わかった!!俺がお前たちの写真やエロ本を何に使っていたのかちゃんと説明するから..!!変なあだ名で俺を呼ぶのはやめろ!!」
「じゃあ説明してよ!!エロ以外の目的にアタシたちの写真を何に使っていたっていうわけ!?アタシだけでなく皆の写真まで..このシスコン!変態!!」
「だから誤解だっつってんだろ!!俺は自分のシナリオの資料にお前たちの写真を参考にさせてもらっていたの!!」
「シナリオの資料?それって..兄貴がキモイ声で傑作だって自賛してたやつのこと?」
「キモイは余計だ..ああ、そうだ..俺たちゲーム研究会は女の子をメインとしてシナリオを描くことが多い..」
「おまえやその周りの友達はモデルもやっているし女の子としてのレベルが高い..だからシナリオで女の子を描くときにお前たちを参考にさせてもらっていたのさ」
「レ..レベルが高い..//おほん..言いたいことはわかりましたが..わたしたちの許可を取らずに勝手にシナリオに使おうとしたのは問題です..」
「罰としてお兄さんが書いているシナリオをわたしたちに見せることを要求します!!」
あやせが顔を赤らめて俺にシナリオを見せろと要求してくる..
「いや、言いたいことはわかるが..あのシナリオはまだ未完成で今日一気に完成させるつもりだったんだよ..未完成の作品を人に見せるのはちょっと..」
「何いっちょ前に作者気取ってんのよ..これだけ人を騒がせて大事にしたんだから責任もってみせろ!!」
「お前が俺の部屋に勝手に入って部屋にあったモノを無断で持ち出すからだろーが!!」
「うっさい!!いいから見せろ!!」
恥ずかしさを隠すために桐乃は大声を張り上げる..
「ちっ..しゃーねーな..そんなに言うんじゃみせてやるか」
俺はやれやれとため息を吐くと、学生カバンの中から一冊のノートを取り出した
「ほらよ..これが俺のシナリオが書いてあるノートだ..読みたきゃ読め..」
無造作にテーブルの上にノートを放り投げると桐乃たちは興味津々といった感じで、ノートの周りに集まった
「どれどれ...タイトルは..きりりんの冒険?なにこれ..?あれ..?この主人公っぽいかわいい女の子..アタシにそっくり..」
「桐乃似の女の子の隣にいる黒髪の子はわたしそっくりです!!」
「なあなあ..このメルルみたいな服着てる女..加奈子にそっくりじゃね?」
登場するキャラクターたちのイラストを見て桐乃たちは戸惑いの声を上げる..
「ええ..登場するキャラクターたちは私がデザインしてアナタたちに似ているように書いたから..本人に似ているって言ってもらえてうれしいわ..」
黒猫は口元に手を添えて満足げにクスクスと笑みを浮かべた
「え~となになに..?世界を支配し人々を苦しめる闇の魔王べルフェゴールを倒す旅に出た勇者きりりん、魔法使いあやか、遊び人かなかなを操作して冒険の旅を繰り広げよう!」
「なんかベタな設定だけど..王道RPGみたいな感じね...」
桐乃は渋い顔をするもペラペラとページをめくってゆく
「あ..でもなんだか面白そうですね..舞台となる森や洞窟とかもCGみたいにキレイだし..設定もよく練られていると思います..」
「これってアタシたちを参考に描いたんだろ?さっすが加奈子をモデルにしただけあってかわいいじゃねーか!!」
「ふ~ん...アンタが作ったシナリオにしては面白いじゃん..あ、キャラごとの一枚絵もある..あにこれ!?ちょーかっこいいじゃん!!」
勇者きりりんがモンスターたちと果敢に戦闘を繰り広げる一枚絵に桐乃は感嘆の声を漏らした
コイツがこんなに褒めてくれるってなかなかないことだよな..
「あ..あやかが仲間の傷を魔法で癒している一枚絵があります..きりりんをしっかりサポートしていて..偉いですねあやかは..//」
膝小僧から出血しているきりりんを魔法で懸命に治療しているあやかの一枚絵を見てあやせは満足げな笑みを浮かべた。
ゲームの中とはいえ、桐乃似のキャラの役に立てているのがうれしいんだな。やっぱりあやせは優しい奴だな。
「ふ~ん..桐乃の兄貴の割には冴えない奴だなと思ってたけど...けっこうやるじゃん..!」
加奈子も自分とそっくりなキャラクターが仲間のために奮闘する挿絵を見てまんざらでもなさそうな顔を浮かべた。
俺たちはシナリオブックの話に花を咲かせながら穏やかな時間が流れていった...
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ーーーーーーー
はずだった
「キモイ..マジキモイ!!信じらんない...最ッ低!!!」
「お兄さん...黒猫さん...これはどういうことか..説明してもらえますか?」
「死ねよ」
桐乃は怒りのあまり目に涙を貯めて俺たちを罵っている..
あやせは光彩をドス黒く染めて今にも俺たちをピー!してしまいそうな面持ちだ..
加奈子はゴミを見るような目で俺に死ねと命令してくる..
俺と黒猫は江戸時代の罪人のごとく床の上に正座をし、力なく頭を垂れている
桐乃たち3人は罪人を裁く奉行のような面持ちで俺たちを見下ろしていた
「さっきまで..みんな笑顔であんなに幸せな時間が流れていたのに..どうして..こんなことに...」
ポタ..ポタ..という音を立てて俺の目から零れ落ちた涙が床に滴り落ちてゆく..
「どうして?じゃないでしょ!?これは一体なんだって聞いてんの!!」
うっかり自分の気持ちを口走ってしまった俺のひざ元にバンッ!!という大きな音を立ててシナリオノートが叩きつけられた
シナリオノートには服をビリビリに破かれたきりりんががオークにリンカーンされているシーンが繊細に描かれており..
涙目のきりりんは「くっ...殺せ!」と言わんばかりの生意気さが残る表情でオークを睨みつけている
「なにって..戦闘に敗北したときのバッドエンドシーンの構想じゃん..」
「フッ..!我ながら力作に仕上がったと自負しているわ!!」
バン!!!
「ヒィッ!!」
「キャッ!!」
あやせがにこやかな笑顔のまま手に持った竹刀を思いきり床に叩きつけた
竹刀は警察官の親父が庭で素振りをするために部屋に置いてあったものだ
「お兄さん..黒猫さん..こんなふざけたモノを世に送り出そうとしていたんですか?あやかだけでなく..きりりんにまでこんな狼藉を働いて...ブチ殺しますよ!?」
「すいません!すいません!すいません!お、俺は反対だったんです!!創作とはいえ、妹とその友達を参考にしたキャラにこんなことするなんて!!」
「ちょ..裏切るつもり!?アナタが敗北した後の展開とか考えたほうがいいのかな?なんて言ったから私が気を利かせて書いてあげたんでしょ!?」
「俺はモンスターに慰み者にされろなんて一言も言ってないぞ!?ただ、ちょっとエロいシーンがあった方がユーザー受けがいいんじゃないかって言っただけで..」
「どっちも同罪です..!!醜い罪の擦り付け合いなんてみたくありません!!黒猫さん..アナタに聞きたいことがあります!!」
「な..なにかしら..?」
黒猫は恐怖で目に涙を浮かべるも..どことなくゾクゾクとした様子であやせの尋問に対応した
「このシーン..あやかは一体何をされているんですか?しかもこのシーン..強制敗北で必ず流れるシーンなんですよね」
あやせはドス黒いスライムたちがあやかの身体を弄び..あやかが闇に汚れていく様子が鮮明に描かれているページを黒猫に突き付けた
「このシーンはシナリオの構成上必要不可欠なシーンなのよ..あやかはきりりん達を守って闇の魔王ベルフェゴールの手に落ちてしまうの」
「そしてあやかは敵に凌辱されて純潔を失ってしまうの..闇に堕ちたあやかはダークエンジェルとして覚醒し、闇の魔王ベルフェゴールの配下としてきりりん達の前に終盤の強敵として立ちふさがるのよ」
柱に縛り付けられたあやかにベルフェゴールがけしかけたモンスターたちが襲い掛かる..なぜかこのベルフェゴールという魔王..麻奈美に似ているような..いや、気のせいか..
あやかの口からスライムたちがドロリとした魔力を注ぎ込み、慈愛に満ちていたあやかの瞳が闇に染め上げられていくシーンを黒猫は得意げに語った
「あなたを今この場で凌辱してあげましょうか?」
「や..やめてくださいお願いします」
殺意に満ちたあやせの言葉を聞いた黒猫はキレイな土下座を作ると、闇に落ちたあやせに許しを請うた
「しかもなんだよこのシーン..敵になったあやかとの戦いで敗北するとパーティ全員があやかに凌辱されるんだべ?」
加奈子はあやか戦での敗北シーンをペラリとめくった
そこには..あやかが召喚した大量の触手がかなかな..そしてブリジットちゃんを参考にしたと思われるキャラにあんなことやこんなことをしている一枚絵が記載されていた
きりりんの凌辱はあやかが直々に行っており、恍惚な表情を浮かべたあやかがきりりんの身体を堪能していた
「あやかはきりりんたちを捕らえて自分の仲間にしてしまおうと考えているの..この凌辱シーンによって主人公たちは全員闇落ちしてしまい世界は破滅を迎えるというバッドエンドよ」
「ブリジットにまで目を付けていたのかよ..ほんときめえ..死ねよ」
「すいません..」
加奈子はゴミを見るような目で俺を見下ろした...やべえ..死にたくなってきた..
「ブリジットじゃなくて、ブリジッタよ..この子はあやかの代わりにパーティに入ったメンバーで、条件が揃えば他の隠しキャラと交代されることもできるのよ」
設定資料集には沙織バジーナを参考にしたと思われる大柄の女性キャラや、赤城瀬奈を参考に創ったと思われるセナチーという名前のキャラの設定が記載されていた
「わ..わたしが桐乃とあんなことやこんなことを...///じゃなくて..こんなものは認めません!!」
「わ..わかってるよ..!!そもそもここにあるシーンはすべて没ネタだ..!!さすがにこういうシーンを作品に載せるのはマズいと思っていたから使う気はなかったんだよ!!」
「な..なんだ..そうだったんですか...」
あやせはホッとしたような、なぜかガッカリしたような微妙な表情を浮かべた
「アンタ..アタシたちにこんなキモイ物見せて..どうなるかわかってんでしょうね?」
「ど..どうすれば気分を直してくれるのでしょうか?」
「ノート貸して..アタシがこの作品のキモイ部分を全部修正して名作にしてあげる..」
桐乃はそう言うとノートを拾い上げサラサラとペンを走らせていった
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「ひっぐ..ひっぐ...どうして..どうして皆私の芸術をわかってくれないんですか...!」
ゲー研の部室に瀬菜のすすり泣く声が響き渡る..
泣きじゃくる瀬菜をゲー研の部員たちは鋭い目で取り囲み、罪人を断罪するかのような厳しい面持ちを浮かべていた。
「どうもこうもねえだろ..?なんだよこの作品は!!なんでゲー研の部員たちとお前の兄貴がホモ電車してるんだ!?ボツだこんなの!!」
テーブルの上には件のゲイシナリオが置かれており、怒りのあまり眉間に血管を浮きだたせた部長の雷が瀬菜に落ちた
「ひっどーい!!これ書くのに何時間掛かったと思ってるんですかー!?ま、真壁先輩なら..この作品の良さをわかってくれますよね!?」
「ごめん..ちょっと僕には無理かな..」
「そ、そんなー!!」
「ごめん..ちょっとトイレ..」
瀬菜に対して思いを寄せている真壁君でさえこのシナリオはキツ過ぎたようで..
気分が悪いのか青い顔で部屋を出ていった
「そんなー真壁先輩まで...ん?トイレ...?ハハァ..そういうことですか..もう!真壁先輩ったら..恥ずかしがることないのに..//」
瀬菜は顔を赤く染めると、ホモシナリオを手に真壁君を追いかけた
「真壁せんぱーい!!忘れ物ですよーー!!トイレのお供に私の作品を使ってもいいですよーー!!」
「え!?い、いらないよ..僕はそんなもの..ウッ!!オロロロロロロロッ!!!」
「きゃあ!!真壁先輩が吐いた!!吐くほど興奮したんですね!!次回作も楽しみにしていてくださいね!!真壁先輩♡」
「ウエッ!!」
ひでえ会話が廊下から聞こえてきた...真壁君..安らかにな...
「せっかくあの女に浴びせる辛辣な言葉をたくさん考えてきたのに..私が出る幕もなく終わってしまったわね..」
「だから言ったろ?お前がワザワザ手を下すまでもなく、あのシナリオはボロクソに酷評されて没になるって..」
ガッカリしたように肩を落とした黒猫に俺は労いの言葉をかけた
昨日俺が味わった苦行は一体何だったんだ...
「真壁と赤城が出ていっちまったが..まあいい..次は高坂..おまえのシナリオを見せてくれ」
「はい!!これです..!!」
「ほお..どれどれ..おお!なかなかいいぞ!!正統派RPGとは..悪くねえな!!」
「本当ですか!?」
「ああ..シナリオの完成度も高いし..キャラクターデザインもよく描けている..!!次のゲームはこれで決まりだ!!」
「あ、ありがとうございます..!!部長!!」
「よかったじゃない先輩..おめでとう」
「ありがとう黒猫..おまえが手伝ってくれたおかげだと..本当にありがとう!!」
「べ、別に私は..」
黒猫は照れくさいのか頬を赤く染めると顔を背けてしまった
「おいおい..これからが大変なんだぞ?よし..真壁と赤城が戻り次第作業に取り掛かるぞ!!全員気を引き締めて各々の役割に打ち込めー!!」
オーーー!!と他の部員たちの雄たけびが上がり、こうして俺と黒猫の合作「きりりんの冒険」が正式に制作されることが決まったのだった。
そして少しの時が流れ..
「先輩..「きりりんの冒険」なかなか評判がいいみたいよ?」
「おお..そうか..皆の力のおかげだよ..なかなかいい作品ができて俺もうれしいぜ!!」
「ネットに上がったコメントをいくつか読み上げていくわね..シナリオのテンポがよく、ゲームバランスも適正で面白かった」
「キャラのデザインがかわいく、小物などの細かいところも良く書き込まれていて、本当にダンジョンの中を冒険しているような気持ちになれた」
「闇落ちしたあやかちゃんとのバトルは燃えと萌えが合わさった名バトルだった。きりりんの友情パワーであやかちゃんが闇から救い出されて、仲間に戻ってきたときは涙が出た..」
「まさかベルフェゴールの正体が道具屋の看板娘だったなんて..何食わぬ顔できりりんたちに道具を売りつけて探りを入れていたとか怖すぎ..」
「回復薬を使ったら時々毒を受けることがあったからバグかと思っていたらそういうコトだったのか..」
黒猫はコメントをいくつか読み上げると満足げな笑みを浮かべる。コイツがこんな顔をするなんてよっぽどうれしかったんだな。
「ふふ..絶賛されているようでなによりだぜ..」
「でも..不満に思われている点もあるみたいね..敗北したあと凌辱エロシーンがあると思ったら、画面が暗転して宿屋から再スタートになるのはどういうことなんですか?という質問が来ているわよ?」
「そこは桐乃が修正したポイントだから..実を言うと俺も理由は聞いてないんだ..」
俺はゲームを起動させると敗北イベントのシーンが画面に映し出された
「や..やめろ!!バカッ!!」
「ち..近づかないで!!私たちになにをするつもりなんですか変態!!」
「きりりんとあやかには手を出すな!!やるならアタシからやれ!!」
戦闘に敗北したパーティがゴブリンやオークなどのモンスターたちに囲まれて怯えたように身を震わせている..
ゴブリンやオークは下卑た笑みを浮かべて、ジリ..ジリ..とヒロインたちににじり寄っていく..
「や..やだ..」
きりりんが絶望しギュッと目を瞑る..そして画面が暗転し...
「よお..気分はどうだ?」
次の瞬間パーティは宿屋のベッドの上で目を覚ましていた
「ハッ..あ、あたしたちは..それにここは..」
「ちゃ..着衣に乱れはないようですね..」
「誰だテメー!?アタシたちは敵にやられて気を失っていたハズだろ!?」
「敵?なんのことだ?夢でもみていたんじゃないのか?おまえたちはずっと俺の宿に泊まっていたんだぞ?」
「あ、あれ..そうだっけ?」
「そう言われれば..そんな気も..あれ?私たちって何をしていたんだっけ?」
「アタシたち..夢でもみていたのか..う~んよく眠ったな..元気いっぱいになったし、みんな冒険に出かけようぜー!!」
「やれやれ...」
元気いっぱいになったきりりん一行は冒険の旅へと出ていった
「あの女はバッドエンドのエロシーンを全部カットして戦闘に敗北したら強制的に前の宿屋に戻されるみたいね..」
「セーブポイントからやり直しっていうのはRPGの鉄則だけど..ゲームオーバーの表記もなく前の宿屋に戻されるっていうのは斬新な仕様ね..」
「エロを求めていたユーザーからは受けが悪いけどな..まあ、でもそれ以上に肯定的なコメントが多いな。」
コメント欄にはきりりんたちが無事でよかったとか、かわいそうな女の子たちなんていなかったんだ..などの擁護コメントが記載されている。
「まあ..俺個人としてはあやかたんの闇落ちシーンだけはあのままの方がよかったんだが..仕方ねえか..」
「変態」
「んな..!!お、おまえ..俺の心が読めるのか!?」
「考えていることがうっかり口に出ていたわよ..」
「ググ..!!」
あやかの闇落ちスライムシーンは桐乃監督の手によってエロなしの設定に差し替えられており、ベルフェゴールが直々にあやかに魔力を注ぎ込んで配下にしてしまうという設定になっていた
「まあ..でもなかなかいい作品に仕上がったと思うぜ!シナリオ原案の俺も大満足だ!!」
「それにしても..あの子たちには資料として使うためだ!といってごまかしたけれど..桐乃やあやせの写真集をエロ本と一緒の場所に隠してあったことは..本当にそういう目的がなかったのかしら?」
「な..なんのことだ..アレを使ったことなど..ない..」
「本当かしら..私がメイド服を着ていた写真も混じっていたけれど..本当に使ったことがないの?」
「な...ない..!!」
俺は顔を赤くすると黒猫の視線から逃れるために顔を背けた...ちくしょー!!これじゃあバレバレじゃねーかー!!
「フフ..まあそういうことにしておいてあげる..1つ貸しよ..今度は..写真なんかじゃなくて..もっとリアルなモノを使ってみる?」
黒猫は顔を赤らめると、俺の手の上にそっと掌を置いた
「な...!!お、おまえ..それはどういう..!!」
「冗談よ..イヤらしい雄ね..」
「ぬぐぐ..!!」
黒猫にからかわれたことを悟った俺は悔し気に唇をかみしめた
ちくしょー!!年頃の男の子の純情を弄びやがってーー!!今夜は妄想の中でお前をめちゃくちゃにしてやる!!
「おい高坂!五更!!これから打ち合わせを始めるぜ!!今回の作品の反省点を踏まえて、次の作品のシナリオを作ろうぜ!」
「はい!!」
「ええッ!」
部長の呼びかけに俺と黒猫は元気な返事を返すと、俺たちは次の作品についての構想を話し合った
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
「ふふふ~ん♪」
「桐乃..ご機嫌だね?」
「え?そ、そんなことないよ~もうやだなぁ~あやせったら~♪」
「どうせあれだろ?桐乃の兄貴が作っていたシナリオがゲームになって、ネットで好評されてんのがうれしいんだろ?あのシナリオの総まとめは桐乃が関わってたしな」
「もう加奈子ったら~♪違うって言ってんでしょ~♪」
「機嫌が良すぎて全然隠せてないよ..ねえ、桐乃..どうして戦闘で敗北したらゲームオーバーにもならずに宿屋から再スタートになるの?」
「そうだな..アタシもそれはおかしく思った。凌辱エロシーンをカットしたなら普通はゲームオーバーになってタイトルに戻るのが自然じゃね?」
「しょうがない..二人には特別に..アタシが考えた裏設定を教えてあげる..」
「う..裏設定?」
「なんだよそれ?」
「これは兄貴も黒いのも知らないアタシだけの秘密..特別にあやせと加奈子にだけ教えてあげるね?他の人には絶対しゃべっちゃだめだよ?」
「う...うん..」
「いいからさっさと教えろよ」
「実はね..?この宿屋の店主って、かわいい女の子を見つけるとコッソリその後をくっついていくストーカーなの」
「えええ!!?」
「な、なんだとぉ!?」
ウヒヒ..あやせと加奈子びっくりしてる..
「この店主は宿屋に泊まったきりりん一行のことを気に入ってその後をずっとつけてきたストーカーなの..きりりん達のことを隠れた所でずっとみていて、ハァハァと興奮している変態っていうわけ」
「でも女の子に手を出す度胸はないから、ただ隠れて見ているだけで絶対に手は出さない変態紳士っていうところかな」
「きりりんたちがモンスターにやられてしまったら、ヒドイことをされる前にさっそうと現れて、モンスターたちからきりりんたちを命がけで救出して近くの宿屋まで連れて行ってくれるっていうわけ..」
「ずいぶん親切な変態だな..」
加奈子は呆れたような表情を浮かべた
「で、でも..どうしてきりりんたちは誰もこの人のことを覚えていないの?命がけで助けに来てくれるんだったら..絶対にその人のことを覚えているはずでしょ?」
「ああ..それはコイツが実は作中最強の能力を持っていて、あらゆる魔法を使いこなすことができるエキスパートなの」
「コイツは恥ずかしがり屋だから..女の子に好意を持たれちゃったらどうすればいいのかわからなくて..」
「ヒロインたちを救出したら記憶を改ざんする魔法を使って、自分の宿屋に最初から泊まっていたことにしちゃうの」
「なんだそれ..そんな強さがあるんだったらもうお前が魔王倒しにいけよって話だな...」
「コイツは世界の平和とか全然興味なくて..自分の気に入った女の子が幸せだったらそれでいい変態だから..仕方ないの!」
「.....」
「.....」
あやせと加奈子は呆れたような顔を浮かべている..そんな二人の様子に気が付かないアタシはさらに解説を続けた
「アタシね..RPGとかやっているとずっと思ってたんだ..戦闘に負けて敗北するとゲームオーバーになって、セーブしたところからやり直しになるのが普通でしょ?」
「RPGの主人公たちは幾多のゲームオーバーの末にラスボスを倒して平和な世界を享受するけれど..それは魔王に勝つことができた世界戦の主人公たちだけのハッピーエンドなんだよね..」
「でもね..敗北した世界の主人公たちは、負けた後に敵にひどいことされて殺されちゃって終わりなんて..あんまりだと思わない?」
「アタシはゲームオーバーっていう言葉が大嫌いなの..負けた世界戦の主人公たちが悲惨な運命で終わりなんて許せない..」
「だからアタシは兄貴のゲームの設定を改ざんしてでも、ゲームオーバーという定義を無くしたかった..」
「ゲームオーバーという言葉に殺されてしまう主人公たちを誰かが必ず助けてくれる..そんな救いのある世界を創りたかったの」
「桐乃...優しいんだね桐乃は..」
「ずいぶん小難しいこと考えているな..イチイチそんなメンドクサイこと考えてゲームしたことなんてねえよ..」
「きりりんの冒険というゲームはゲームオーバーという名のバッドエンドが存在しない、ハッピーエンドの1ルートしかない世界なの..」
「アタシはシナリオのクソな部分を修正して素晴らしい作品に昇華してあげただけだよ」
「そうだね..桐乃の考えは素晴らしいと思う..!お兄さんたちのゲームが名作に生まれ変わって私も自分のことみたいにうれしいよ!!」
「ま、考え方は人それぞれだからな..桐乃がイイならそれでいいんじゃねーの?」
フフ..あやせと加奈子もわかってくれたみたい..
他のプレイヤーの人たちもアタシの考えに共感してくれる人がたくさんいるといいな..
「ねえ..桐乃..最初に見た時から気になってたんだけど..この助けに来てくれる宿屋の店主のデザインって..」
「どことなく桐乃の兄貴に似てるし..絶対このキャラのモデルあの変態兄貴だろ?」
「うぇ!?そ、そんなわけないじゃん!?何言ってんの二人とも!?」
「自分の兄貴を救いの救世主に無理やり設定して、自分そっくりなキャラを助けに来させるとか..桐乃ってブラコンだったのな」
「ハァ!?な、なに言ってんの!?アタシはブラコンなんかじゃないってば!!ね!?あやせもそう思うでしょ!?」
「お兄さんは..いつも私たちのことを助けてくれるから..」
「いざというときはお兄さんが助けてくれるハズ..っていう桐乃のお兄さんに対する信頼と愛情の気持ちがヒシヒシと伝わってくるね..」
「そんな~~!!あやせまで誤解だってば~!!」
「ヒヒ...ゲイな兄貴が大好きなんて..桐乃もとんだ変態だな~!!」
「はぁ!?アタシの兄貴がゲイなわけがないし..それにアイツは..」
妹大好きなシスコン兄貴...なんだからね//
おしまい
「黒猫さん..こんなところに呼び出して..何の用ですか?」
「フ..よくぞ逃げずに来たわね..ほめてあげるわ..ダークエンジェル..」
「誰がダークエンジェルですか..!!おほん..あの..わたしモデルの仕事とかあって忙しいんで..用件があるのなら手短にお願いします。」
先日の騒動の件と桐乃とお兄さんを巡るライバルということもあって、黒猫さんに対してついツンケンした態度を取ってしまう..
わたしってまだまだ子供なんだなぁ...
「そうね..まずはこれを見てもらえるかしら?」
「なんです...ッ!?」
怪訝な表情を浮かべるわたしに黒猫さんは一枚のスケッチブックを差し出してきた..そのスケッチっブックに何が描かれていたのかというと...
『いい..いいわ..ダークエンジェル..あなたの殺戮衝動を..この私に叩き込みなさい..!!』
『ハァ..!ハァ..!!気持ちいい..!!他人を痛めつけるのって..こんなに気持ちのいいモノだったなんて..!!』
地面に寝転がる黒猫さんを私がグリグリとお腹を踏みつけている一枚絵が描かれていました。
黒猫さんはなぜか恍惚の表情を浮かべており、黒猫さんのお腹を踏んでいるわたしもまんざらではなさそうです...
パーン!!
「フグッ!!」
「な..なななななんてものを見せてくるんですか!?この変態!!ぶち殺しますよ!?」
激情に駆られた私は手に持ったスケッチブックで黒猫さんの顔を殴りつけていました。
ちょっと力を入れすぎたせいか、黒猫さんは地面にズテンという音を立てて転んでしまいます。
「くっくっく..口より先に手が動くのね..さすがよ..さすが我が魔眼に魅入られし逸材..!!」
「なにを言いたいのかさっぱりわかりませんが..あなたがとんでもない変態だということだけは伝わってきました。」
「新垣あやせさん..折り入ってお願いがあります..聞いていただけますか?」
黒猫さんは急に素の態度になると地面の上にきれいに正座し、私を濁り切った瞳で見上げてきました。
「な..なんですか?」
「アナタに一目あったときから惹かれていました..どうか...私を踏んでください!!」
「へ?」
黒猫さんが地面に頭を擦りつける見事な土下座を私に披露し、自分を踏んでくださいとお願いしてきたのです。
困惑と同時に..嗜虐心が私の心に湧き上がってくるのを感じ..
私の口から思いもがけない言葉が飛び出していました。
「いいですよ...私もアナタのことを壊したくなるほどイジメてあげたいと思っていたんです..これから私の部屋に行きましょう...たっぷりと..かわいがってあげますよ♪」
「....ッ!!」
光彩の濁ったわたしを黒猫さんはパァァッ!!という擬音が似合う笑みを浮かべて見返してきました..
この時から私と黒猫さんは心の奥底で惹かれ合う親友になり長いお付き合いが始まったというのはまた別のお話です
本当におしまい
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