【禁書】佐天「家が……燃えてる……」 (89)
初SSです。
原作との齟齬、一人称の間違い、セリフの違和感なども多々見られるかと思われますが、長い目で見守っていただけると幸いです。
三日にいっぺんくらいのペースで更新していければなと思っております。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1594901194
佐天「(こんにちは、佐天涙子です。突然ですが、どうか聞いて欲しい事があります)」
佐天「(何を言っているのかわからないと思うのですが、夕食の買い物から帰ってきたら家が燃えていました)」
佐天「(正確には家ではなく学生寮なのですが、家である事には間違いないはずです)」
佐天「(確かに学園都市では物騒な事件が多々発生する事は身を持って知っています。ですが)」
佐天「(何も……こんなせっかくの大型の休みが始まってすぐにこんなことになるなんて……)」
佐天「まさか、こんな事になるなんてね……どーしよっかなー……」
佐天「(という事で、現在絶賛夜のファミレスにてドリンクバーを頼みながら、今後の身の振り方を考え中というわけです)」
佐天「(学生寮が完全に復元されるまでには凡そ一か月かかるそうで……いや、一か月で学生寮を建て直せる学園都市の技術力は半端ないと思いますが)」
佐天「住むところは臨時的に学園都市が提供してくれるとはいえー……燃えちゃったから服とかはまた新しく色々買いなおさないといけないし……かと言ってお金があるわけじゃないから……せっかくのタイミングだから、実家に帰るのもアリ……かな? 久々に弟に会いたいっていうのもあるし」
佐天「でも流石に昨日の今日で実家に帰るのは難しいし、今日は初春に電話して家に泊めてもらおう」
prrrrrr
佐天「そんなことを言ってたら初春だ。はーい、もしもーし」
初春『佐天さんっ! 無事だったんですね!?』
佐天「うんへーきへーき! 幸運にも死傷者は0って初春の所にも情報が行ってたでしょ?」
初春『それでも私、心配で心配で……』
佐天「初春は心配性だなぁ。でも、ありがと。とりあえずあたしは大丈夫だから安心して」
初春『良かった、良かったですぅ……』
佐天「もー、泣かないの! それより初春、ちょっと頼み事があって」
初春『グス、はい、なんでしょう?』
佐天「今日、初春の家に泊めてくれる?」
初春『はい、佐天さんなら大歓迎ですけど……臨時の学生寮が提供されているんじゃないですか?』
佐天「そうなんだけど、今回の件、なんだか能力者による放火って話じゃん? 話聞いて、あたしもちょっと心細くなって……」
初春『わかりました! じゃあ寮長にお話してきますね!』
佐天「ありがとー初春! 愛してるっ!」
初春『もー佐天さんったら……じゃあ、待ってますからね』
佐天「うん! じゃあまた寮で!」
佐天「さて、と」
佐天「(電話を切り、纏める荷物もない……というか燃えてしまったので、早速初春の住む学生寮に赴こうとした時でした)」
???「佐天涙子だな?」
佐天「へ?」
佐天「(立ち上がったあたしの前に、あたしより一回り大きい、黒いローブのようなものを着た男が立っていました)」
???「一緒に来てもらう」
佐天「いやっ、あのっ」
佐天「(掴まれた右腕を振り払おうとした瞬間、男の手刀が首筋に入り、あたしの意識は落ちていくのでした……)」
---数時間前---
土御門「カミやん、ちょっと真面目な話をするぜい」
上条「(学校の屋上、昼飯を食べている最中。土御門が神妙な顔で話を切り出してきた)」
上条「(土御門がこういった顔をするときは大抵……)」
土御門「知ってるかどうかだけ答えてくれればいい。この子の事を知っているか?」
上条「(そう言って見せられた写真に映し出されてのは、黒髪ロングでどこかの中学校の制服を着た……)」
上条「ん……」
土御門「見覚えがあるのか?……さっすが歩くフラグ製造機のカミやんですにゃー」
上条「いやそういうのじゃねぇよ!? ……あー、思い出した。ビリビリの友達だ。確か名前は……佐天さん、っつったかな」
土御門「直接に話したことは?」
上条「そんなに多くはねぇよ。ビリビリが絡んできて、たまたま一緒にいる時に、『あ、どーも』みたいな感じで」
土御門「なるほどな……」
上条「この子がどうしたんだ?」
土御門「……いや、そこまで親しくないのならいい」
上条「おい、答えろよ。ここまでもったいぶっておいて、そりゃねーだろ」
土御門「話せない事情がある。……察してくれ」
上条「(それなりの付き合いだ。これが土御門にとって"そういった"事であることは薄々感じていた。それでも)」
上条「俺の大切な友人の友人なんだ。それは俺にとって大切な友人であると同義だし、もし何かあるのなら知っておきたい」
上条「(あいつにも、御坂だけじゃない。御坂の"周りの世界"も守るって約束したからな)」
土御門「……むう、カミやん、そういうとこだぞ」
上条「話せるところまででいい。教えてくれ。……ただ、もし彼女に土御門が、いや、お前の仲間だろうが、危害を加えるのであれば、俺は戦う」
土御門「そう言われてもな……そうだな、俺たち『は』彼女に危害を加えるつもりはない。今言えるのはそれだけだ」
上条「(土御門のそれは、言外に『自分たち以外の脅威が彼女に迫っている』ことを示していた。そして、同時に———これは流石に俺の深読みのし過ぎかもしれないが———『自分たちにとって、彼女は保護対象である』であるとも、感じ取れた)」
上条「わかった。ありがとうな土御門」
土御門「さて、何のことかにゃー。俺は何も言ってないぜい。というか感謝してるなら……その唐揚げを俺によこすぜよっ!」
上条「あーっ!!! 上条さんの大事な大事なたんぱく源が……」
土御門「駄賃だぜい、駄賃」
上条「不幸だ……」
———しかしその数時間後。
上条当麻はたまたま目にしてしまう。
写真の少女が、巨漢の魔術師と思しき存在に連れ去られる場面を———
上条「くそっ、どこ行った!」
ファミレスで少女が連れ去られる場面に出くわした少年は、その後を走って魔術師を追いかけていた。
しかし相手はこちらに気づいていないとはいえ、移動にも簡易的な魔術を用いてたため、"不幸にも"当然見失う事となる。
だが、少年には"幸運にも"あまりにもな人徳が存在していた。
上条当麻は携帯電話を取り出して、昼間会話を交わした悪友へとコールする。
上条「土御門っ!」
土御門「このタイミングでの電話……まさかとは思うけど、カミやん」
上条「多分そのまさかだよっ! 俺の目の前でその佐天さんが魔術師に誘拐された! 今必死で追ってるけど、見失っちまった!」
土御門「チッ、入って一日二日じゃ行動なんて起こせないと踏んでいたんだがな……巻き込むつもりはなかったんだが仕方ねい! カミやん! 今から携帯にそいつの位置情報を送るぜよ!」
上条「助かる!」
土御門「けど俺らが着くまで絶対に無理するな! ……っつっても無理か、もう電話切れてるし……俺らも急ぐぜよ!」
少年の預かり知らぬところで"幸運"は続く。
上条当麻は困っている人間を見つけると助けずにはいられない、といった性格である。
そのため、"不幸にも"年がら年じゅう不良に絡まれ、裏路地を走り回っており、当然、どこからどこへたどり着くまでの最短ルートも無意識のうちに頭に入り込んでいる。
つまるところ、魔術師が逃走経路に人目に付かないその場所を選んだのは間違いであった。
上条「追いついたぞ……その女の子を離せ!」
外へ外へと逃げ続けていた魔術師の前に、その少年は立ちふさがっていた。
魔術師「……幻想殺し」
上条「俺の事、知ってんのか」
魔術師「危険人物の一人とされている。しかし、今回ばかりは出会う事はないと思っていたが」
上条「あいにくと、お前の"悪運"が強ぇんじゃねぇの」
魔術師「……全く、面倒ごとを増やしてくれるな」
言葉の応酬が終わる。
そして少年と魔術師は、お互いの獲物を構えた。
他方は、全ての異能を消し去る右腕を。
他方は、かの学生寮を燃やし尽くす炎を生み出す術式を内包した、鉄杖を。
そうして戦いの火蓋は切って落とされた。
土御門「カミやーん、無茶すんなっつったよにゃー???」
二日後。
先の魔術師との闘いで再び軽傷を負った上条当麻は、いつもの、と評されるほど寝慣れたベッドの上にいた。
上条「いやいや、今回は上条さんはかなり軽傷なわけですよ。実際、今日中には退院できるみたいですし。しかしお医者様が念のためと……ね?」
土御門「まぁいつもに比べれば軽傷だが……それでも一般人からしたら割とすげーケガだって忘れるんじゃねえぜい」
上条「……わかったよ。それで、あの子は?」
土御門「戦いがかなり至近距離だったから顔に軽い火傷はあるけども、別に大したもんじゃない。痕も残らないみたいだぜよ」
上条「そうか……よかった。顔は女の子の命だからな。痕が残るなんて可哀そうだ」
土御門「……とか言ってカミやんは結構女の顔も殴るよにゃー」
上条「あれは! ……うう、今後は善処します」
土御門「俺じゃなくて今まで殴った奴に謝れよー」
上条「そうするよ……っとそうだ。なんであの子が狙われたのかは分かったのか?」
土御門「ああ……関係者になっちまったお前にだから話すが」
土御門「佐天涙子。柵川中学に通っているレベル0……だったが」
上条「俺みたいに何か特殊な能力があったのか?」
土御門「いや、そういうわけじゃない……が、ここからは俺たちの推測も入るが、あの子は特定の魔術に対して強い抵抗力を持っている」
上条「特定の魔術?」
土御門「記憶領域に関しての魔術……ついさっき、アンチスキルに扮した俺の仲間があの子と少し話をしたんだが、どうも意識が途中から戻っていたらしく、カミやんの戦いを見られちまってた」
上条「おい、それって」
土御門「ああ。ほんの僅かだろうが、隠蔽できるのであればした方がいい。だから、簡易的に記憶を取り除く術式を施した」
上条「あの子に危害を加えたわけじゃねぇだろうな」
土御門「もちろんだ。だがな、カミやん」
土御門「消えなかったんだよ」
上条「……術式を施したのにも関わらず、か?」
土御門「ああ。おかしいと思って彼女の健康、精神上負担のかからない様々な術式を試した。取り除くだけじゃない。忘れさせる、思い出せないように封印するとかな」
上条「おい」
土御門「負担のかからない、って言ったぜい。それに、上からの指示だから俺たちは従うしかない」
上条「……佐天さんに、何もないならいい。お前らの事情もあるんだろう」
土御門「すまない。だけどな、やはり『消えなかった』」
上条「……インデックスのような、完全記憶能力?」
土御門「いいや、そういうのじゃないみたいでな……強い術式を試してみないことにはわからないが、俺たちはさっき言ったように『記憶領域に関しての魔術への強い抵抗力』を彼女が持っていると推測づけた」
上条「それが彼女が狙われた理由か?」
土御門「どう連中が知ったのかは分からないが、恐らくな」
上条「……それだけじゃ、こんなリスクを負ってまで誘拐する理由には思えない」
土御門「考えてみろよカミやん。もし彼女の抵抗力が幻想殺しのように、ほとんどの記憶領域に関する魔術を無効化するほどのものだったら?」
上条「それは……」
土御門「魔術による記憶操作が不可能。その上で家族や友人を使って拷問されても吐かないように脅してやれば、他の魔術勢力に捉えられても安心できて、科学にも精通している、有用な簡易スパイの完成だにゃー」
上条「だからってそんなの……許せるわけねぇだろ」
土御門「だから今回、カミやんが救ってくれてこっちとしてはめっちゃ助かったぜい。……記憶が消せないってのはちょっとこっちも予想外だったが」
上条「あの子はこれからどうなるんだ?」
土御門「……今迄みたいにってのは難しいかもな。いつまた彼女が狙われるかわからない。……せめて事情を知りつつ、こっちも信用できるボディーガードでもいれば……いれば……」
上条「?」
土御門「(悪いことを思いついた顔)」
土御門「なー、カミやん?」
上条「壮絶に嫌な予感がするんですが、なんでせうか」
土御門「さっきも言った通り、彼女には事情を知ってるボディーガードが必要なんだにゃー」
上条「おい、まさかとは思うが」
土御門「でもそんな都合の良い存在を、こっちもすぐに用意するのは難しいんだぜい」
上条「土御門さん、ちょっと」
土御門「だ・か・ら」
土御門「こっちが用意できるまで彼女のボディーガードに……具体的には近くで見守れるよう、一緒に住んでくんないかにゃー?」
上条「いやいやいやいやいや」
土御門「勿論、ただでとは言わない。彼女に関する生活費はこちらで出すぜよ。それにステイルにも連絡して、インデックスはイギリスの方で保護してもらうようにする」
上条「そういう問題じゃなくてですね」
土御門「いやー、頼れる友人がいて助かったぜい。ちょうどいいじゃないか、彼女も住むところが燃えて困っていたみたいだしにゃー」
上条「その、男女の問題があるでしょう?」
土御門「え、カミやんは警護対象を襲うのか?」
上条「紳士な紳士な上条さんはそんな事しませんけれどもっ! それに、佐天さんの意思もあるでしょう?!」
土御門「んー、それについてはこっちで何とかしとくぜよ。……とは言え、そんなに苦でもないような気もするけどにゃー」
上条「はい?」
土御門「カミやんの活躍のおかげで、説得にはそんなに時間がかからなそうだって事ですたい」
上条「はぁ……」
土御門「とにかく、カミやん的には向こうの了承さえあれば構わないって事だろ?」
上条「(そんなうまくいくわけねぇだろうけどな)」
上条「ああ」
土御門「言質は取ったからにゃー。じゃ、明日を楽しみにしとくぜよ」
上条「……いや、ありえねぇだろ。ほぼ初対面に近い男の部屋にそうそう簡単に」
翌日 昼
佐天「ほ、本日よりこちらに住まわせていただく佐天涙子と申します! よろしくお願いしますっ!」
上条「(インデックスは朝早くからステイルに引き取られていったから、まさか、とは思ったけど)」
上条「……どうしてこうなった?」
佐天「その、上条さんの御学友の土御門?さんが病室にいらっしゃいまして」
土御門『今回、佐天ちゃんはカミやん……上条当麻に命を救われたんだぜい。それは覚えてるかにゃー?』
佐天『は、はい。その……誘拐されそうになったあたしを助けようと、超能力者の人と戦って……』
土御門『佐天ちゃんは、カミやんに恩返しがしたいかい?』
佐天『もちろんです! もしかしたら、私、二度と友達に会えなくなるかもしれなかった所を助けていただいたんですから!』
土御門『実はな、カミやんがこの前、こんなことを言っていたんだにゃー』
土御門『……カミやん、生きてるかにゃー?』
上条『……不幸だ』
青ピ『朝から一体何があったんや?』
上条『いやな、聞いてくださいよお二人さん』
上条『毎朝同居人より早く起きて、毎朝同居人のために食事をつくり、学校までの短い時間で洗濯もこなし……帰れば買い物に炊事、毎日毎日、上条さんは頑張ってるわけですよ』
青ピ『カミやんはあのシスターちゃんと同居してるんやもんな。爆ぜろ』
上条『……変わってやってもいいぜ』
青ピ『あー……すまんな。その様子だと冗談抜きで辛そうやなぁ』
上条『そうなんです。上条さん的には限界ですことよ』
土御門『なら……家政婦でも雇ってみるかにゃー?』
上条『家政婦、家政婦ねぇ……魅力的な提案だけど、生憎、うちの家計は火の車だからなぁ……そうだ土御門、舞』
土御門『却下』
上条『だよな……はぁ、どこかに俗世に疲れた上条さんを癒してくれる素敵な家政婦さんはいないものか』
土御門『つまりな佐天ちゃん。カミやんは今、疲れてるんだ』
佐天『あ、あたしっ、家事には自信があります! これでも一人暮らしが長いので!!』
土御門『(喰いついたっ!)』
土御門『そこで提案なんだが……カミやんのとこで、数日間住み込みで、カミやんを手伝ってあげてくれないかにゃー?』
佐天『す、住み込みですか?』
土御門『聞いた話によれば、佐天ちゃんの住んでた学生寮が今回その能力者によって放火されちまったって話じゃないか』
佐天『そうなんです。それで、昨日は友達の家に泊まろうとして、それで……』
土御門『事件に巻き込まれたと。つまり佐天ちゃんはこれから寮の再建が終わるまでは住むところに困っているんじゃないかにゃー?』
佐天『それは、まぁそうなんですけど、臨時の寮は提供されてますし、住み込み……』
土御門『佐天ちゃん』
佐天『は、はいっ』
土御門『学園都市は広い。それにカミやんはその性格のせいで、いつも何か面倒ごとに巻き込まれてる』
佐天『それは……なんとなくわかります』
土御門『その面倒ごとの中には、カミやんの命に関わるようなことだってある。今回だって少し間違えればカミやんはただじゃ済まなかったかもしれない』
佐天『……』
土御門『次、いつカミやんに出会えて、恩返しができるかなんて、誰にもわからないんだぜい』
佐天『……す、少し考えさせてください』
土御門『覚悟が決まったら、俺からカミやんには話をつけとくから、ここに連絡してくれ』
佐天『わかりました』
佐天「……というわけで、えへへ」
上条「ほ、本当にいいのか? そんな、昨日今日出会ったような男の家になんて」
佐天「昨日今日、じゃないですよ。それに上条さんの事は私、御坂さんや白井さんからも聞いてますし、あの二人がある程度信頼を置いてるって事は悪い人じゃないと思いますし」
上条「そんなにあの二人に信頼されてるのかな、俺」
佐天「されてますよー。あの二人から出る男の人の話って、殆ど上条さんの話ですし」
佐天「何より、昨日あたしを助けてくれたじゃないですか! それだけで、十分です!」
佐天「それに住むところに困ってたのは本当だから……」
上条「……佐天さんがいいっていうのなら、甘えさせてもらおう、かな? 毎日の家事で少し疲れてたのは本当だし」
佐天「ぜひぜひ、一家に一台佐天涙子って感じで、精一杯頑張りますね!」
上条「(元気でいい子だなぁ……)」
上条「とりあえず上がってくれ。詳しい話は中でしよう」
佐天「はい、お邪魔しまーす……」
佐天「(そういえば男の人の家に入るの、これが初めてだっけ)」
今日はここまでで。
次は三~四日後の同じ時間くらいに投下します。
>>1です。今見直してみたところ、佐天さんと初春はルームメイトでしたね……すいません。というわけで>>5を以下のように修正お願いします。
初春『良かった、良かったですぅ……』
佐天「もー、泣かないの! それより初春、ちょっと頼み事があって」
初春『グス、はい、なんでしょう?』
佐天「今日、初春のとこの臨時寮に泊めてくれる?」
初春『はい、ルームメイトだった佐天さんなら大歓迎ですけど……佐天さんにも臨時の学生寮が提供されているんじゃないですか?』
佐天「そうなんだけど、今回の件、なんだか能力者による放火って話じゃん? 話聞いて、あたしもちょっと心細くなって……」
初春『わかりました! じゃあ寮長にお話してきますね!』
佐天「ありがとー初春! 愛してるっ!」
初春『もー佐天さんったら……じゃあ、待ってますからね』
佐天「うん! じゃあまた寮で!」
>>1です。
wikiなどと睨めっこしながら書いているため、上部のような間違いに間違いを重ねてしまうことがあることをお許しください……記憶の方が正しかったみたいです……
予告通り本日の9時ごろに更新いたします。よろしくお願いいたします。
更新します。
関係あるかもしれないし、ないかもしれない話なんですが、先ほど某SSで知ったサイドテール黒子の現物を初めて拝見いたしまして、何とか登場させたいなぁと考えている次第でした。
上条「へー、佐天さんも一人暮らしをしてたのか」
佐天「そうなんですよー。あ、苦手な食べ物とかありますか?」
上条「上条さんは好き嫌いはありませんことよ。というか、いきなり悪いな」
佐天「いえいえー。あたしもおなかすいてましたし、最初から作るつもりで材料も買ってきましたから」
上条「あ、材料費はちゃんと後で請求してくれよ。ちゃんと払うからさ」
佐天「そんなの悪いですよ。とりあえず今日はお試し一日目って事で、あたしの家政婦力を見てくださいって」
上条「家政婦力って……」
上条「(それにしても……エプロン姿で料理する女の子というのは、いつ見ても素晴らしいものなのですよ。しかもポニーテールッ!……でもなぁ)」
上条「やっぱ俺も」
佐天「だーめーでーすー! それだとせっかくあたしが来た意味がないじゃないですか」
上条「しかしなぁ、こう、体がムズムズして」
佐天「ならお皿とかの準備をお願いしてもいいですか? どこに何があるかはあたし、まだわからないので」
上条「お安い御用でございますよ。あー、うちには来客用の箸がないし、佐天さんは割りばしでいい?」
佐天「はい、大丈夫ですー! そっか、後で色々また買い出しに行かないとなー」
上条「(と、いつもはインデックスのやる仕事を行う上条さんなのでした。……インデックスもこんな気持ちで俺を……いや、ねーな)」
佐天「できましたよー」
上条「お、ではでは早速佐天さんの家政婦力を見せてもらいましょうかね」
佐天「ふっふっふー。では、見るがいい! これが佐天涙子特製親子丼だーっ!」
上条「お、おお……卵が、卵が輝いて見えますことよ」
佐天「スーパーで卵と鶏肉が安かったので親子丼にしてみました。ささ、冷めないうちにどーぞどーぞ!」
上条&佐天『いただきます!』
上条「……うまい、旨いよ佐天さん!」
佐天「それは何よりです、うん、いい感じ」
上条「こりゃあ佐天さんの家政婦力は……そんな……53万……?!」
佐天「もちろんこれがまだフルパワーではないことをお忘れなく……ってちょっと違うか」
上条「……ふふっ」
佐天「あははっ、上条さんってすっごくノリがいい方だったんですね!」
上条「いやぁ、佐天さんが話しやすいっていうのもあると思うよ。それにしても、すげぇうまい。なんつーか、安心する味っていうか」
佐天「本当は佐天涙子特製、というよりはお母さん直伝なんですけどね。そう言ってもらえるとすごく嬉しいです」
上条「なるほどなー、いやー、佐天さんは将来いいお嫁さんになるな」
佐天「む、もしかして上条さんそういう事を平気で色んな人に言うタイプですか?」
上条「な、なんか気に障ったなら謝る」
佐天「そうじゃなくて、そういう事を言われると女の子は勘違いしちゃうんですよ。……もしかして御坂さんには言ってませんよね?」
上条「あー、どうだったかな。覚えてねぇや。それに勘違いって?」
佐天「もう、何でもありません。なるほど、これがうわさに聞く超鈍感……」
上条「???」
佐天「さて、食べ終わったら少し買い物に行ってもいいですか? 燃えちゃった中でもこれからの生活に必要なものを買わないといけないので」
上条「ああ、それなら俺もついていくよ。荷物持ちにでも使ってくれ」
佐天「いいんですかー? 私、下着とかも買うつもりなんですけどー」
上条「う、それはですね」
佐天「……なーんて、冗談ですよ。実家に電話して事情を話したら、お母さんのお下がりとか、実家にあるものをここに送ってくれるそうなので。多分夕方には届いてるんじゃないかなぁ」
上条「思春期真っ盛りの上条さんにはきつい冗談なのでございますよ」
佐天「ごめんなさーい。……もしかして、想像しちゃいました?」
上条「なにをでせうか」
佐天「言わないでもわかってるくせにー。掃除する時、あまり本棚とか覗かない方がいいですか?」
上条「年上をからかうのはやめなさい」
佐天「ふふ、楽しいですねー」
上条「全く……というかそれでも多分俺はついてくぞ」
佐天「え?」
上条「またいつどこで佐天さんがこの前みたいなのに狙われるかわからないだろ。いざという時、傍にいられないと困る」
佐天「……」
上条「佐天さん?」
佐天「……もー、女の子はそういうのに弱いんですからね。ドキっとしちゃったじゃないですか」
上条「そりゃあ男冥利に尽きるな」
佐天「心配してくれて、ありがとうございます。ぜひ、お願いします」
上条「お、おう。俺に任せろ……っつっても荷物持ちだけどな」
佐天「えへへ」
ToRデパート
御坂「うーん、これも違うわよねぇ。あ、これ可愛いじゃない」
白井「お姉さま、流石にそれは子どもっぽすぎますの」
御坂「い、いいでしょ別に、可愛いんだから!」
白井「はぁ……それにしても面倒ですわね、寮の整備のせいでこの大型の休み、一時的に引っ越しとは」
御坂「仕方ないでしょー。佐天さんの学生寮が燃えた件で、発火能力者への対策も兼ねて寮を修繕するって話になったんだから。そのおかげで生活に足りない物とかにも気付けて、こうやって買い物に来れてるんだし……」
御坂「(それにあそこの寮監さんは何というか緩い人だから、それも都合がいいかも。あいつと夜のデート……なんてっ、なんてっ!)」
白井「お姉さまとデートができるという事には感謝しなければなりませんが……あら、あそこにいらっしゃるのは佐天さんじゃありませんの?」
御坂「ほんとだ佐天さん……と……」
白井「あのツンツン頭は……間違いありませんの」
御坂「アイツッ、なんで佐天さんと一緒にいるのよ!?」
白井「お、落ち着いてくださいませお姉さま。……大方、助けてもらったお礼に、という事ではありませんこと?」
御坂「あ……そっか。佐天さんを助けてくれたのもアイツだったっけ。そこはちゃんと感謝しないといけないわね」
白井「同感ですわ。ですから、今からお茶にでも誘いに行ってはいかがでしょう?」
御坂「ナイスアイデア、黒子。そうと決まれば善は急げよね。おーい!」
上条「ん? あれは」
佐天「みっ、御坂さんに白井さん!? あちゃー……」
上条「よう、ビリビリに白井。二人も買い物か?」
御坂「ちょっと、なんでアタシだけビリビリなのよ。ちゃんと名前で呼びなさいよ」
上条「あー、すまん癖でな、御坂」
御坂「わかればよろしい。それで二人『も』ってことは」
上条「ああ、とはいえ俺じゃなくて佐天さんの買い物がメインなんだけどな」
佐天「あ、あははー。実はそうなんです」
白井「(……んん? 佐天さんの方の買い物がメイン……?)」
御坂「大方、あんたは荷物持ちってところかしら」
上条「さすが御坂さんご名答。そもそも上条さんの家計の事を考えると、なかなかこんな立派なところには来れませんことよ」
白井「……ちょっとお尋ねしてよろしいでしょうか?」
上条「なんだ?」
白井「先ほど、佐天さんの買い物がメインとおっしゃっていましたし、上条さんが荷物持ちとの事でしたが……普通は逆ではありませんこと?」
御坂「逆って?」
白井「いえ、助けてもらった佐天さんがこの類人……上条さんに何かをお礼としてプレゼントするのでしたら、先ほどの言い方は変だと思いませんこと?」
佐天「(うっ、白井さん鋭いっ!)」
御坂「……確かにそうね、ねぇ、佐天さん、何を買いに来たの?」
佐天「あーえっと、生活雑貨をですね。ほら、色々燃えちゃったじゃないですか」
御坂「そういうこと。それでコイツが荷物持ちやるって言いだしたんでしょ」
佐天「そんな感じですねー」
白井「(……怪しいですの。佐天さんの目が取り締まりの後に尋問されている方々のように泳いでいますの。……ここはひとつ)」
白井「佐天さん」
佐天「はいっ!?」
白井「実は本当にたまたま、本日午前中私がパトロールをしていてそちらの上条さんのお宅の付近を通ったのですけれど」
佐天「嘘っ、だってあたし上条さんの家に行ったのは12時、過ぎ……あ……」
上条「」
御坂「……ねぇ」
佐天「は、は、はいっ」
御坂「これから時間あるわよね?」
佐天「いやー、実はこの前みたいなことがないように初春からきつーく」
御坂「あ・る・わ・よ・ね?」
上条&佐天「……ハイ」
喫茶店
白井「(まさかここまでうまく行くとは思っておりませんでしたの)」
御坂「コイツと同棲ィ!?」
佐天「わっ、御坂さん声大きい! 大きいです! それに同棲じゃなくて、家政婦ですって!」
白井「お姉さまに飽き足らず、今度は佐天さんにまで手を出しましたの? この類人猿は」
上条「勘違いすんなよ!? 俺だって佐天さん自身が良いって言わなけりゃ頼まねぇよ!」
御坂「どうだか……助けてもらった恩にかこつけて、っていうのもあるでしょ」
上条「なっ、そんな事しねぇよ!」
御坂「佐天さん、どうして言ってくれなかったの。無理やりコイツにそんな事させられるならアタシが変わって」
佐天「違いますっ!」
御坂「……佐天さん?」
白井「(……おやおや、まぁまぁ)」
佐天「あたしが、あたしからやるって言ったんです」
御坂「そ、そうなの? でもほら、こいつの人助けって、色んな人に」
佐天「それはなんとなくわかります。でもそのお礼をしないっていうのも違うと思います」
御坂「それは……そうだけど、でも何も住み込みの家政婦なんて」
佐天「住む場所もなかったからちょうどよかったんです。それに家事炊事ならあたし、自信ありましたから」
御坂「でも」
佐天「御坂さん!」
御坂「は、はいっ!?」
白井「(佐天さんがお姉さまを圧倒するなんて、珍しい光景ですの。……お互いの意思を尊重して、私は黙っておきましょう)」
佐天「ある人から言われたんです。恩は返せるうちに返しておかないと、いつ、返せなくなるかわからないって」
御坂「……」
佐天「上条さんはあたしの命を救ってくれました。御坂さんも、もしかしてそうなんじゃないですか?」
御坂「アタシ、アタシは……」
佐天「でもそのせいで上条さんはケガをしちゃいました。命に関わる事はありませんでしたが、それでも、死んでもおかしくなかったんです」
上条「いやぁ、あれぐらい上条さんにとっては軽い」
佐天&御坂「上条さん(アンタ)は黙ってて(ください)」
上条「はい……」
佐天「もし今後も同じような事があって……それで、上条さんに恩を返せないまま、上条さんがいなくなったら、あたし、すごく後悔すると思うんです」
御坂「……アタシも、後悔すると思う」
佐天「だから、あたしも覚悟を決めたんです。だからこれに関しては御坂さんにどういわれようと、曲げるつもりはありませんからっ」
白井「(佐天さん、強くなられましたの。……その恩を返す相手というのが、類人猿だというのだけが気がかりですけれど)」
御坂「……分かった。佐天さんの意思や、覚悟も」
上条「納得してくれた……のか?」
白井「(そして当の本人は何故浮気を咎められた夫のような顔をしていますの)」
御坂「さすがにまだ納得はできないわよ。……でも、理解はできた、うん」
佐天「(……な、なんかあたし、今すごい恥ずかしい事言ってた気がする!?)」
白井「(こっちはこっちで我に返って真っ赤になっていますの)」
御坂「(そっか……コイツもいつかは……)」
御坂「ごめんね、なんか」
佐天「い、いえいえっ。その、御坂さんの心配する理由はごもっともですし、心配してくれるのはすごく嬉しいので!」
御坂「その上でさ、提案させてもらっていい? このお茶の後、二人の買い物に付き合ってもいいかしら」
白井「ちょっ、お姉さま!? 黒子とのデートは」
上条「俺は構わないけど……佐天さんは?」
佐天「もちろん! 大人数の方が買い物は楽しいですしっ!」
御坂「ありがと。というかコイツ一人じゃ心配なのよ」
上条「と、申しますと」
御坂「女の子にしか買えないものとかわからないものもあるでしょ、朴念仁」
上条「……すまん、助かる」
御坂「いいのよ。というかアンタを助けるんじゃなくて、佐天さんのために言ってるの!」
上条「重ねて、だよ。さっきの話もだけど、御坂は友達思いのいいヤツだなって」
御坂「っ……分かればいいのよ、分かれば」
白井「不幸ですのぉぉ……お姉さまとのデートがぁぁ……」
御坂「あーはいはい、また一緒に買い物でも行きましょ」
白井「……約束ですのよ。あと、そこの類人猿」
上条「俺のことでせうか」
白井「せいぜい、私や初春の手にかからないようにするんですのね」
上条「だからそんな事しねーって!!」
佐天「しないんですかぁ?」
上条「ちょっ」
佐天「なーんて、冗談ですよっ」
上条「全く佐天さんは……」
御坂「……いいなぁ、ああいうの」
白井「(……なんだかすごく嫌ーな予感がしますの)」
というわけで今回の更新はここまでで。
Next Conan's hint
・普段の女子寮は点検中
・新しい女子寮の寮監は緩い
・佐天さんの説得
次回はもしかしたら一週間後などになってしまうかもしれません。予定ができ次第、また書き込みに参ります。
投下いたします。
夕方 外
上条「ありがとう、今日はすげー助かった」
御坂「いいわよ別に。……くれぐれも、佐天さんに手を出したりなんかしないようにね」
上条「出さねーよ! どうして誰も上条さんを信用してくれないんでしょうか……」
白井「普段の行いの所為ですわね」
佐天「あ、あたしは上条さんを信用してますよっ!」
上条「佐天さん……ではその、背中に背負った金属バットはなんでしょうか……? 明らかに日用品では……」
佐天「……け、警護用?」
上条「不幸だ……」
御坂「とりあえずまたね。下校時刻も近いし、あたし達は寮に戻るわ」
上条「今日から新しい寮なんだっけか」
佐天「御坂さん達も大変ですねー」
白井「そうなんですの。せっかく部屋中に仕込んでおいた監視カメラを……はっ」
御坂「……黒子、その話は帰った後にゆーっくり聞かせてもらうからね?」
白井「ちょっ、待って、待ってくださいませお姉さま!! 誤解です、私はただお姉さまの成長日記を」
御坂「何のよっ!! 余計にタチ悪いわっ!!」
佐天「……行っちゃいましたね」
上条「俺らも帰ろうか」
佐天「そうですね。それにしても夕食だったり、一部雑貨買ってもらっちゃってお金、大丈夫だったんですか?」
上条「今の上条さんは財布に余裕がありますからね、これぐらいしませんと。それに佐天さんに変なもの食べさせたら、それこそあいつらに怒られちまう」
佐天「ふふ……って、家政婦なんだから夕食も当然あたしが作りますよ?」
上条「いーや、上条さんはもう限界だね。夕食は俺が作らせてもらう。俺の家政婦力を見ろ!」
佐天「それじゃああたしが来た意味がないじゃないですかー」
上条「どうも上条さんはそういう星の元に生まれてきたいみたいなんですよ。ああ、なら当番制っていうのはどうだ?」
佐天「うーん……仕方ありません、それで妥協しましょう!」
上条「それじゃ代わりに明日の朝ごはんはお願いします」
佐天「ふふーん、任されました!」
上条「上条さん特製の肉じゃがだ! どうぞ召し上がれ!」
佐天「わーっ、上条さん、結構家庭的なんですね?」
上条「誰も、当麻さん特製とは言ってないぞ」
佐天「……あ、もしかして」
上条「そう、佐天さんがお母さん直伝の親子丼を出してくれたんだから、俺も母さん直伝の料理で、と思ってさ」
佐天「なるほどなるほど……では早速、上条さんの家政婦力を見せてもらいましょうか」
上条「どうぞどうぞ、じゃあ」
上条&佐天『いただきます』
佐天「んーっ、安心する味、ですね。これがお袋の味ってやつですかね」
上条「(……そのお袋の味を知ったのも、つい最近なんだけどな)」
佐天「というか普通に料理の手際もよくて、女としてはあたし少し落ち込んじゃいますよ」
上条「まぁ一人暮らしが長い上に、最近まで同居人がいたからな……」
佐天「あ、そうそう。その同居人さんって、どういう方だったんですか?」
上条「あーえっと……一言で表すなら、大飯食らい、かな……」
佐天「大飯食らい、ですか」
佐天「(何だろう、お相撲さんとかと同居してたのかな?)」
上条「主にそいつの食費のせいで、上条さん家は常に火の車だったわけですよ。俺はレベル0だから奨学金も多くはないし……」
佐天「えっ、上条さんってレベル0なんですか? 御坂さん達と知り合いでしたからてっきり……あれ、でも助けてもらった時、能力者の人の炎を消してたような……」
上条「あーえっと、レベル0なのは間違いないんだけど、俺の右腕には『幻想殺し』っていう、超能力とはまた違う力が備わってたみたいで」
上条「それが超能力であろうが、もっとよくわからない力であろうが、この右腕で触れればそれらを全て打ち消せるんだ」
佐天「……それって、例えば御坂さんの電撃も、ですか?」
上条「そうなるな。アイツと初めてあった時に、アイツの能力を打ち消した結果、会うたんびに追っかけられる羽目になって……不幸だ」
佐天「……」
上条「佐天さん?」
佐天「ごめんなさい」
上条「へ?」
佐天「あたしもレベル0なんです。上条さんみたいに何かがあるわけじゃない、本当のレベル0」
佐天「だから、今上条さんがレベル0って聞いて、仲間なのかなって勝手に思っちゃって」
佐天「でもやっぱり、上条さんは特別な力を持ってて。勝手に落ち込んじゃって。失礼でしたよね」
上条「……あのなぁ」
上条「さっきの料理の手際云々もだけど、比べる必要はないだろ、別に」
佐天「う」
上条「佐天さんは料理上手なだけじゃなく、フランクで話しやすくて、ノリがよくて……周りにいつも笑顔があって、いい子だよな。今日御坂と白井と一緒にいる様子見ててそう思ったよ」
上条「そんな佐天さんだから、あの二人も……俺だってそうだ。こうやって一緒にいるんだろ。そこに超能力があるかどうかなんて関係ない。佐天涙子っていう一人の人間を、俺たちは見てるんだよ」
上条「まー、超能力とかそういうのへの憧れや劣等感があるのも分かる。すげーわかる。俺も右手以外はなんもないしな。でもさ、俺たちはそこで佐天さんを見てるんじゃないし、佐天さんはどうなんだ? 二人を超電磁砲だから、空間転移者だから、御坂と白井だって認識してるのか?」
佐天「違います。あたしは」
上条「そういう事だよ。少なくとも俺たちはそんなことで佐天さんを見てない。佐天さんは佐天さんなんだからさ比べる必要なんてないと思うぜ」
佐天「……」
佐天「(こういうところなんだろう、なぁ……)」
上条「さ、冷める前に食べちゃおうぜ」
佐天「はいっ! ご教授ご鞭撻、ありがとうございましたっ!」
上条「これでも将来の夢は一応教員ですからねー。その前にこの成績をどうにかしないといけないけど……」
佐天「上条さんならきっといい先生になれますよ……上条先生!」
上条「はい、何でしょう佐天さん」
佐天「先生は彼女はいるんでしょうかっ!」
上条「ぶっ、先生にそんな事聞いちゃいけませんっ! ……まぁいないんだけどさ」
佐天「意外ですね~。てっきりいるかと思ってました」
上条「残念ながら上条さんは全然モテませんことよ……」
佐天「……んー、少なくともあたし、上条さんの事気になってる女の子、二人ぐらい知ってるんですけど」
上条「ほ、本当か? 誰だ?」
佐天「それは流石に秘密、ですっ。でも楽しみにしてていいですよ!」
上条「そうか……ついに上条さんにも春がくるのか……いよしっ」
佐天「ふふ……」
上条「お風呂沸いたから先に入っちゃってくれ」
佐天「いいんですか?」
上条「レディファースト、というかその方が上条さん的には都合がいいのですよ」
佐天「都合がいい……まさかっ、あたしが入ったお風呂で」
上条「引かないでっ!? あー、いや、佐天さんは今日から住み込みだから、ここで寝るんだよな?」
佐天「そうなりますね」
上条「そうなると流石に俺と一緒の部屋で寝るっていうのは流石に不味い」
上条「と、なると上条さんは普段から寝慣れているバスタブで寝ることになりますことよ。そうなると水滴を拭いたりする関係で、後の方が都合がいいんだ」
佐天「なるほどー……ん、普段から?」
上条「同居人がいる時はいつもバスタブで寝てたからなー」
佐天「……あのー、つかぬ事をお聞きしますが、その同居人さんっていうのは女の方ですか?」
上条「そう……だな」
佐天「ひどいっ、さっき彼女はいないって」
上条「あいつはそういうんじゃねぇよ。ただの大飯食らいだ」
佐天「そういう関係が一番怪しいんですよねー。ほんとに何もないんですか?」
上条「ねぇってば……」
佐天「……上条さんの交友関係に少々の不安を抱きつつ、佐天は佐天はお風呂に入る事にします」
上条「なんだよ不安って……行ってらっしゃい」
佐天「(もやもやするなぁ、女の人と同居してて、御坂さんにも好意を向けられてて、しかも土御門さんの台詞的にああいう事はいつもやってるっぽいし……)」
上条「タオル洗面所に置いておくなー」
佐天「ありがとうございまーす!」
佐天「(うーん、あたし自身の気持ちもよくわからないからなぁ……気には、なってるけど)」
佐天「(とりあえず明日の朝ごはんについて考えよう、そうしよう)」
佐天「あがりましたー」
上条「おう、それじゃ俺も入りますかね」
佐天「……変な事しちゃだめですよ」
上条「あまりに信用がなくて、上条さんは泣きそうですよ……あ、それよりほい」
佐天「わっ、アイス、ですか?」
上条「お風呂上りのアイスは最強だぜー……前まではなかなかそんな贅沢もできなかったんだが」
佐天「そんなに同居人さんは食べるほうだったんですか?」
上条「……学校から帰ってきたら、朝6号炊いておいたお米がなくなってたって言ったら信じる?」
佐天「それは……」
上条「実際には俺も朝は食べるから1号はなくなるんだけど……残り5号が、夕食前になくなってるんだよ」
佐天「お米代だけでも半端ないですね、それ」
上条「プラスでもちろんおかずとかも作らなくちゃいけないからなー、奨学金の殆どは食費と入院費とかで消えるのですよ」
佐天「……入院費って事は、やっぱりあたしを助けるみたいに、いろんな人を助けてるんですか?」
上条「不幸体質っていうのもあると思うけどな、どうしても、困ってる人を見過ごせないんだよ」
佐天「その同居人の女の人も」
上条「そう、だな。困ってた、はずだ」
佐天「……」
上条「じゃ、風呂入るから」
佐天「か、上条さん!」
上条「はいっ!?」
佐天「少なくとも、少なくとも……あたしはすごく感謝してます、あたしを助けてくれたこと」
佐天「だから、その……この家の中で起きる不幸は、この佐天涙子が退治してあげますからっ!!」
上条「はは、そりゃ頼もし———っとと!?」
佐天「あっ、上条さん、あぶな———」
上条「い、いてて、大丈夫か佐天さ……ん……」
佐天「あ……」
上条「(転んだ俺に、覆いかぶさるようにして佐天さんが乗っかってきていた)」
上条「(お互いの顔の距離は数センチ、傍目から見れば、俺が佐天さんに押し倒されたような形に)」
上条「うわわっ、ごめん、ごめんなさい佐天さん!」
佐天「い、いえ……あたしも支えられるなんて思っちゃったから」
上条「ケガ、ないか?」
佐天「ケガはありません、けど」
上条「そうか……」
上条&佐天『……』
上条「お、俺改めて風呂に……』
佐天「い、行ってらっしゃいです」
上条「(不幸……いや、よく考えれば不幸、なのか? これは)」
上条「反応に、困るな……」
上条「そろそろ寝るか」
佐天「そうですねー。上条さん、明日のご予定は?」
上条「俺はないけど……佐天さんは?」
佐天「あたしは、ルームメイトの事が心配なので、ちょっとそっちに顔出してきます」
上条「ルームメイトっていうと……君と一緒にいた、あの、花飾りの女の子か?」
佐天「初春っていうんですけどね。あの日も、その子の臨時寮の方に泊まる予定だったんです」
上条「なるほどな。……仲がいいんだな」
佐天「はいっ、一番の友達です!」
上条「なら大切にしろよ。おやすみなさい」
佐天「もちろんです! おやすみなさい、上条さん!」
本日はここまでで。
今日から天賦夢路編ですね。また動く可愛い可愛いフレンダが見られるって訳でめちゃくちゃワクワクしてます。
次の更新は恐らく早くても一週間前後になる予定です。
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