二年目の留年 (3)
「はーあ、嫌になっちゃうよなあマジで。」
駅のホームを歩きながらそうつぶやいた。
最寄り駅は改札が一カ所にしかなく、それはホームの端にある。
だから下手に後方車両に乗ってしまうと長々とホームを歩く羽目になる。
「ついてないよマジで。こっから改札行って出たらまた逆方向に歩いて、マジで時間のロスだもんなあ」
一人でそんな事を言いながら歩く。
周りには人がいたが特に気には留めない。
いや、寧ろ聞いて欲しかったのかもしれない。
誰かに「トホホ」って感じで苦労している俺を見て貰いたかったのだろう。
「トホホ」
なんて自分で言ってみるが、違和感を感じた。
「現実は漫画じゃないのよ」
なんて知り合いに最近言われたりしたが、トホホって言葉は漫画の中だけなのかな。
そんな事をしている内に改札に着いた。
改札を抜け外に出ると、何やら珍しいものを見かけた。
古いビルの一階に「語学カフェ」と暖簾が出ていて、その前でおばさんがチラシを配っていた。
(あれ?ここって前まで何だったっけ。古着とか売ったりしていたんじゃ)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1598547601
〇語学カフェ
「あら、どーも。良ければどうぞ、これ」
そう言ってそのおばさんからチラシを渡された。
というのも俺が物珍しそうな顔で眺めていたからだろう。
「あ、どうも」
「他にもね、中国語もやろうと思っているんです。本当に、これから中国語はどんどん必要になるから」
「でも僕の取ってるのドイツ語なんですよ。でもそっちも全然で。」
「だったらドイツ語も教えに来て下さいよ。お互いに教え合った方が楽しいから」
「はは、そうですかね」
こうやって思い返すと、初対面なのにそんなに話したというのは驚きだ。
多分、向こうのおばさんの朗らかで、裏表の無さそうな部分が話しやすくしてくれたのだろう。
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