橘ありす「大好きなパパの次に好きだよ!?!?!?」 (28)


〜橘ありす・自室〜


橘ありす「ふぅ……レッスンの復習も、学校の宿題も終わり……」

ありす「もうこんな時間ですか。明日の準備だけして、早く寝ないと……」

ありす「えっと、いらない物をカバンから……あれ? これは……」

ありす「あ、そうでした。梨沙さんと晴さんの新曲の音源をいただいていたんでした……」

ありす「5分程度でしょうし、軽く聞いておきましょうか」

ありす(ビートシューターで歌う、初めての歌……レッスンも頑張っていましたからね)

ありす(私も負けていられません……)カチッ

〜♪

ありす「なるほど……」

ありす「ふたりの歌声が綺麗に合わさっていますね……」

ありす「決して同じ系統ではありませんが、時にハモり、時に掛け合って……」

晴『オレのキックと〜♪』

ありす(え? 梨沙さん、パンチするんですか?)

梨沙『アタシのダンス〜♪』

ありす(あ、よかった……そうですよね、プロレスラーの入場曲じゃないですからね……)



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ありす「お淑やかと男勝り……」

ありす「確かに正反対……だからこそスペシャル……」

ありす「いい歌詞ですね……」

ありす「って、『さぁロリコンども』なんて歌詞に入ってるんですか……攻めますね……」

ありす「まあ、総じておふたりらしい曲ですね。明日、感想を伝えて……ん?」

晴『照れくさいけど〜♪』

梨沙『大好きなパパの次に好きだよ〜♪』

ありす「大好きなパパの次に好きだよ!?!?!?」


ありす「えっ!?!?!?」

ありす「だ、大好きなパパの次に好きだよ!?!?!?」

ありす「ええ!?!?!?」

ありす「こ、こんなの……」

ありす「梨沙さんにとっての『大好きなパパの次に』なんて……」

ありす「こんなの……」

ありす「こんなのもう、告白じゃないですか!?!?!?!?」


〜翌日:事務所〜


ありす「……」ソワソワ

ありす「……」ハラハラ

ありす「……」ウズウズ

ガチャ

的場梨沙「お疲れさまー」

結城晴「お疲れーっす」

ありす「!!!!!」

梨沙「あら、ありすだけ?」

ありす「!!!!!」

晴「ん? どうしたんだ? ありす」

ありす「!!!!!」

ありす「!!!!!」

ありす「……」

ありす「!!!!!」

梨沙「本当にどうしたのよ」

晴「何か言えよ」


ありす「す、すみません、ちょっと焦ってしまって……」

晴「?」

ありす「それより……ええっと……ライブまでもうすぐですが、調子はどうですか?」

梨沙「もちろん絶好調よ!」

晴「おう! 完璧なシュートを決めてみせるぜ!」

ありす「それは……よかったです……」ソワソワ

梨沙「……なーんか様子おかしいわね」

晴「んー? ハラ減ってるんじゃねーの? ありす、この後梨沙とメシ食いに行くんだけど、一緒にどうだ?」

ありす「い、いえいえ! わ、私がふたりの時間を邪魔するわけにはいかないので!!!」

梨沙「はぁ?」


晴「別にライブの打ち合わせとかするわけじゃねーから大丈夫だって」

梨沙「そうよ。それに、晴の顔なんて最近見すぎてて、ちょうど飽きてきたところよ♪」

ありす「み、見すぎてて……!?」

晴「さっきまで(レッスンで)汗だくになってたやつのセリフとは思えないけどな」

ありす「汗だくに……!?」

梨沙「それはアンタが変に(ダンスをアレンジして)動きすぎるからでしょ! アタシのペースに合わせて動かないのが悪いの!」

ありす「動きすぎる……!?」

晴「ったく……本番では上手くやるっての」

ありす「本番……!?!?!?」


梨沙「……で、さっきからアンタはなんでオウム返しばっかりしてるのよ」

ありす「オウム返し……!?!?」

晴「いや、そこは驚く要素ねーだろ。……今までもなかったけど」

梨沙「なんか顔も赤くない?」

晴「熱でもあんのか? ほら、ちょっとデコ触るぜ」ズイッ

ありす「だ、ダメですよっ!!! そういうのは梨沙さん以外にしちゃダメです!!!」

晴「はぁ……?」

ありす「梨沙さんもなんで黙って見てるんですか!? そういう(NTR)趣味ですか!?」

梨沙「アンタ本当に大丈夫?」


ありす「ね、熱とかはないですから……!」

晴「でもなあ……」

ありす「わ、わかりました、ええと……」モジモジ

梨沙「?」

ありす「昨日、おふたりの曲の……『輝け!ビートシューター』のデモ音源をいただいて、聞いたんです……」

晴「お! そうだったのか!」

梨沙「アタシたちの曲、どうだった?」

ありす「ええと……すごく良かったです……!」

梨沙「ま、トーゼンよね♪」

ありす「ですが、少し……えっと……」

晴「どうした?」

ありす「き、気になる歌詞があって……!」

晴「歌詞?」

梨沙「『さぁロリコンども!』とか?」

ありす「あ、そこは大丈夫です」

晴(大丈夫ではねぇと思うけどな)


ありす「そ、その……」

ありす(直接該当の歌詞を言うのは恥ずかしい……)

ありす「『照れくさいけど』の次の部分の歌詞について……!!!」

晴「『照れくさいけど』の」

梨沙「次の部分?」

ありす「は、はい……」

晴「っていったら……」

梨沙「そうね……」

晴(『ホントのライバル』のとこだよな……)←コーラスを歌詞と捉えないタイプ
梨沙(『ホントのライバル』のとこよね……)←コーラスを歌詞と捉えないタイプ


ありす「……」ジーッ

晴「いや、すげぇ見てくるんだけど……」

梨沙「! なるほどね……!」

晴「わかったのか!?」

梨沙「ありす! ちょっとだけ晴と相談する時間をくれる?」

ありす「相談……」

ありす(そうですよね、今は様々な性的志向が認められるようになってきつつありますが、それでも偏見というものは絶えません……)

ありす(たとえ事務所の仲間であろうと、私がそういう恋愛観に理解を示すか否かは別の問題……)

ありす(今後のおふたりの立ち回りも含め、どのようなスタイルで臨むのか、これは重大な選択です……)

ありす(本来なら包み隠さず伝えていただきたいのが本音ですが、仕方のないことでしょう……)

ありす(私は一人の人間として、隠したいモノを無理やり暴くような、下劣な行動はしたくありません)

ありす(ゆっくり、ふたりの間で結論を出してほしいものです……)

ありす「もちろん、大丈夫ですよ」ニッコリ

晴「なげーんだよ許可降りるまでが」


〜ちょっと離れた場所〜


晴「そんで、ありすが気になってることって何なんだ?」

梨沙「ありすの言ってた部分……『照れくさいけど』の次っていうのは、たぶん……」

晴「『ホントのライバル』ってとこだよな?」

梨沙「なによ、アンタもわかってるんじゃない」

晴「いや、それとあの態度が結びつかないんだって……」

梨沙「いい? アタシたちとありすは歳も同じだし、事務所に入ってからずっと一緒にレッスンしてきたわよね?」

晴「お、おう……」

梨沙「確かに、デビューはありすの方が早かった。でも、アタシたちも負けじと頑張って、今回のユニットライブと新曲を勝ち取ることができた。そうよね?」

晴「そうだけど……」

梨沙「そんな中で、この『ホントのライバル』って歌詞を見たありすはどう思う? きっと『私だってふたりのライバルです!』って、そう思ったんじゃないかしら!」

晴「おお!」

梨沙「これはアタシたちの曲だから仕方ないにしても、ありすとしてはずっと共に切磋琢磨した自分の存在が無かったことになっているんじゃないかって、不安になったのよ! 間違いないわ!」

晴「なるほどな! やっぱ梨沙はすげーや!」

梨沙「そうでしょうそうでしょう! そうとわかったら、ありすにもちゃんと伝えてあげないとね!」

晴「おう!」


〜〜〜〜〜~~~~~


梨沙「待たせたわね!」

ありす「い、いえ! ゆっくり話していただいて大丈夫なので……」

梨沙「ありす!」

ありす「は、はいっ!?」

梨沙「確かに、アタシと晴はそういう(ライバルの)関係よ」

ありす「やっぱり、そういう(恋人の)関係……」

梨沙「でもね」

ありす「?」

梨沙「アタシは、アンタのことも同じくらいに(ライバルだって)思ってるわ!!!」ババーン

ありす「何言ってるんですか!?!?!?!?」


ありす「えっ!? し、正気ですか!?」

梨沙「はぁ? 決まってるじゃない。誰にでもそんなこと言うわけじゃないけど、ありすは特別よ!」

ありす「さ、最低じゃないですか!!!」

梨沙「?」

ありす「は、晴さんはそれでいいんですか!?」

晴「ん? 当然だろ。ふたりがそういう(ライバルの)関係だと、オレも嬉しいよ!」

ありす「何さわやかに言ってるんですか!!!!!」


ありす「おかしいですよ! 梨沙さんと晴さんはそういう(恋人の)関係なんですよね!?」

梨沙「当然じゃない! アタシと晴はずっとそういう(ライバル)関係よ! 今までもこれからもね!」

ありす「なんで私も同じ関係(恋人)になってしまうんですか!?」

晴「だって、そういう関係はいくらいたっていいだろ?」

ありす「いいわけあるか!!!」

晴「サッカーやってる時なんて、オレ以外の全員がそう(ライバル)だぜ?」

ありす「性の乱れ!!!!!!!!!」


梨沙「逆に、ありすはアタシたちのこと、そう(ライバルだって)思ってくれてないの? 結構ショックなんだけど」

ありす「え゛っ……!? な、なんで私まで引き摺り込むんですか……!?」

晴「そりゃ確かにありすの方がデビューとかソロとか早かったけどさ? 一緒に夜まで(レッスン)やってた仲だろ?」

ありす「一緒に夜までヤってた仲!?」


梨沙「それとも何? 自分の方が(仕事の)場数は踏んでるからって、(アイドルとして)リードする立場のつもり?」

ありす「り、リードなんて、そんな、わ、私はそういう知識とかないですし……場数も踏んでませんから!」

晴「おいおい、そりゃないだろ? ありすがでっかいハコでみんなと(ライブ)やってた時、オレと梨沙でうらやましく思ってたんだからさ」

ありす「さっきからヤってたヤってたうるさいですよ!!!」


晴(なぁ……やっぱり今日のありす、おかしくないか……?)

梨沙(そうね……)

晴「ありす、疲れてるならちょっと休憩していった方がいいんじゃないか?」

ありす「き、休憩って……! 誰にでもそんなこと言ってるんですか……!」

晴「はぁ? そりゃ言うだろ。レッスン終わりとかはみんな疲れてるからな。倒れてたら勝手に(休憩室の)ベッドまで運んで行くこともあるし」

ありす「勝手にベッドに!? そ、それで、どうするんですか……!?」

晴「いや、なんもしねーよ……強いて言うならマッサージくらいならするけどさ」

ありす「マ ッ サ ー ジ(意味深)」

梨沙「今日のありす、本当になんなの?」


ありす(酔った女性を無理やり運んでマッサージ(意味深)……!?)※酔ったとは言ってない

梨沙「アンタのマッサージ、悔しいけど気持ちいいのよね〜」

晴「当たり前だろ? サッカーやってるとそういうの上手くなるんだよ」

ありす「性の乱れ!!!!!!!!!」

晴「さっきから何なんだよそのフレーズ」


ありす「ふぅ……正直に言います……!」

梨沙「はぁ……」

ありす「おふたりが健全な関係なら何も口を出すまいと思っていましたが……! こんなに乱れた関係を見過ごすわけにはいきません……!」

晴「いや、どこも乱れてなかっただろ」

ありす「まだシラを切るつもりですか!!!」

梨沙「逆に、どこが乱れてるのよ?」

ありす「それを私に言わせるつもりですか!!!!!」

晴「詰んでんじゃねーか」


ガチャ


南条光「みんな、おはよう!」

梨沙「あら、光じゃない」

晴「おっす」

ありす「こんにちは……」グッタリ

光「ありす、どうしたんだ……?」

ありす「お気になさらず……」


光「あ! そうだ、聴いたぞ! 『輝け!ビートシューター』! いやあ、ふたりにピッタリの熱い歌じゃないか!」

梨沙「当たり前じゃない!」

晴「さんきゅーな!」

光「特にあの部分! 『大好きなパパの次に好きだよ』のところ!」

ありす「!!!!!」

光「梨沙の口からそんな言葉が出るなんて、ふたりは本当に……」

ありす「ひ、光さん!」

光「……熱い友情で結ばれてるんだな!!!」

ありす「そ、そんな大きな声で……!!! ……え?」

晴「トーゼンだろ?」

ありす「え?」

梨沙「ユニットなんだから、家族と同じくらい想っててもおかしくないでしょ? ま、『切磋琢磨する仲間として』だけど♪」

ありす「」

晴「梨沙のお父さんと比べられるなんて、ちょっと怖いけどな……」

梨沙「アタシも最初に歌詞を見たときはびっくりしちゃったわよ?」

晴「ま、オレだってキライじゃねーからな、その負けん気とか」

梨沙「そんな減らず口を叩いてる間は、アタシのパパに勝とうなんて100年早いわね!」

晴「別に勝とうなんて思ってねーよ……」

ありす「」


光「うんうん! 熱い友情! これこそがユニットの絆だな!」

ありす「」

光「ありすもそう思うだろう!」

ありす「ハイ……ソウデスネ……」

光「ありす……!?」

ありす「……シテ……コロシテ……」カァァァァァァ

光「ありす!?!?!?」


晴「っておい! やっぱ顔赤いぞありす!」

梨沙「やっぱり熱とかあるんじゃない? 今日は帰りなさいって」

ありす「私にかまわないでください……そっとしておいてください……タスケテ……コロシテ……」

梨沙「?????」

晴「?????」


梨沙「まあでも、ありすはまだまだ、私たちのことをライバルとして認めてくれてないみたいなのよね……!」

ありす「い、いえ、そうではなくて……」

晴「オレたちはここがスタートだから、マンシンしないで頑張れってことだろ?」

梨沙「あら、慢心なんて言葉、よく知ってるわね」

晴「そ、そこはどうでもいいだろ! オレだってたまには使うっての!」

梨沙「ま、そうね。でもいつか、ありすにもちゃんと、濁さずに言ってもらうわ。『ホントのライバル』ってね!」

ありす「『ホントのライバル……』ああぁぁぁ……! いえ、そこでもないんです……! 今更どうでもいいんですが……!!!」


〜橘ありす・自室〜


ありす「今日は酷い目にあいました……」

ありす「いいえ、私は悪くないです。あんな歌詞を採用する方が悪いんです……!!!」

ありす「ともあれ、邪な気持ちを消し去って、もう一度あの曲を……」

ありす「って、誰が邪ですか!!!」


ありす「えっと、音源は……あれ?」

ありす「あ、これ、おふたりのソロバージョンも入っているんですね……」

ありす「コーラス部分に変更が入るみたいです。せっかくなので、聞いてみましょうか……」

ありす「晴さんの方から……」カチッ

晴『ライバルだけど~』

ありす「うんうん」

晴『一番深いとこで繋がってる~♪』

ありす「一番深いとこで繋がってる!?!?!?」



おわり






ありがとうございました。

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