ボクっ子「....なにか、用?」 (10)

女「さっきから部室の前、うろうろしてるけど…」

女「…あ、入部希望の人か…!」

女「へ?ああ、ボクも今年からなんだ…部長じゃなくて」

女「入部届けは部長さんにわたしてね」

女「渡しといてくんね?って…えー?なんでボクが渡さなきゃなんだよー」

女「やだってば。自分でだしなよ。」

女「…よろしい。」


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女「…あ。また来た。」

女「今日から入部なの?…そっか。」

女「軽音部へようこそー。よろしくね。」

女「…あ、ところで何担なの?」

女「あー、何の楽器メインにしたいかってことだよ。ベース少ないしそれにしとけば?」

女「…え。ギターやるの…?今年3人目なんだよねー。」

女「そ、そんなへこまないでよ…分かった分かったから。」

女「まあ確かに嫌々やってもつまんないか…」

女「んで、楽器は?今日は持ってきてないの?」

女「…えっ、買ってすらない?どれ選べばいいかわかんない?」

女「どれって…好きなの選べばいいじゃん…知らないよキミの好みなんて…」

女「へ?着いてきて欲しい?…キミ、ほとんど初対面のボクによく頼もうと思えるね…」

女「あーもー仕方ないなあ…ボクの負けでいいよ。最初だけだからな」

女「今日の放課後、5時に〇△駅ね。」

女「…は!?でーと!? キミ、何いってんの??」

女「どこ行くのって…ギターの試奏に決まってんじゃん!…変なヤツ」

女「遅れたりバックれたりしたら穀すからね…」

女「ちゃんと来るんだよー?キミがそんなに言うから付き合ってあげるんだからさ」

女「…うん、じゃ、また後でね。」

女「あ、見つけた。 おーい、ここだってば!」

女「ちゃんと来たことは褒めてあげるよ…キミ、何となく」抜けてそうだし?

女「ちょっ、そんな怒んないでよー…冗談だってば、ごめんごめん。」

女「さて…楽器やさんはあのビルの4階だね。早速いこっか」スタスタ

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女(やっぱ気まずいな…)

女「あ、あのさ…どしてギターがやりたいの…?」

女「…!アベホソシさん知ってるの!?実はボクも大ファンなのー!」

女「かっこいいよね…!あのカッティングとかサイコーすぎ!黒いスーツも似合うしさ…伝説のギターヒーローって感じだよねー!」

女「…あっ。…ごめんね。ちょっと熱くなっちゃったよ…こーゆーとこだよね、ボク…」

女「へ?熱く語れるのはいい事だって?…そ、そうかな…」


女「あ、じゃあ今度はためになる話しよっか。ギターって種類あるの知ってる?」


女「そーそー。ストラトキャスターはツノがついてて…」

――――――――――――――――――――――――――――――

女「ふー。ひととおり弾いてみたけど…なんかいいのあった?」


女「最初の赤いやつ?あー、あれもなかなかいい響きだったよね。」


女「ワインレッドってカラーリングも渋くてカッコイイよね!」ニコニコ


女「…ぅえ!?ギター弾いてるオマエもかっこよかった…って…」


女「やっ、ほんと、そんな事ないってば…だいたいボクはキーボード担当だし…ギターもちょこっとしか弾けないもん…お世辞言わないでよー。」


女「ふつーにうらやましい?…あ、ありがと。」


女「んな!赤くなってないってば!ほんとちがうー!あっほら!夕焼けのせいだ、ってやつだよ!」


女「からかうのやめてよねー。音楽歴でいったらボクの方が先輩だかんね!」


女「ふふっ。キミもいつか絶対上手くなれるよ。きっとボクよりも…」


女「あ。駅着いたね。…色々ありがとうって?ま、まあ初心者には優しくしないとだし…いーよ、別にそれくらい…。」


女「それに…ちょっとボクも楽しかったし…?」


女「あ、ギター買ったら見せてね!じゃあまたねー。」

女「あ」


女「お、おはよー…」


女「って…その背中に背負ってるのはひょっとして…ていうかひょっとしなくても…キミの新しい相棒?」


女「おおー!やっと買ったんだね…!大事にしろよー」


女「…キミよりボクの方が嬉しそう?そ、そりゃまあ…弟子の成長は嬉しいものでしょ…」


女「あはは。ボクにとっては弟子みたいな感じだよ。」


女「やばっ。予鈴なるからもういくねー。またね」


――――――――――――――――――――――――――――――

女「…なんでボクより先に教室にいんの。 気合い入りすぎでしょ…」



女「…ま、それはいいとして。どんなやつ買ったの…?早くみせてよ!」ワクテカ



女「おー…赤いストラトかぁ…!えっ、Fander製!? こんな高いもの買う余裕あったんだねキミ…」


女「いいなー。…あ、じゃあ練習も今日からするんだ?」


女「うんうん…って、どうやって練習するかは自分で調べてね!?」


女「…アドバイスないのって?うーん、そーだなあ…運指とリズム感は鍛えた方がいいかもね…後は好きな曲の楽譜みつけて1曲弾き切るとか…」


女「…てか、ほとんど教えてんのと一緒じゃんコレ…。甘やかさないようにしてたのに…」


女「お、お礼とか全然いいから!そーゆーつもりで教えたんじゃないし!…とりあえず練習すれば?時は金なりっていうじゃん?」


女「あ、それと…部活には毎日来るんだよ…?」


女「はぁ!?ボクが1人とかはいーの!慣れてるし!1日サボるとダレちゃうでしょってこと!さみしいからじゃないし!」プンスコ


女「…ったく、キミといるとボクもおかしくなっちゃいそうだよ…」


女「あーもう!ほらっ!さっさと練習する!ボクに構うなー!」

女「くあー。」


女「…うわ。なんでいるのさ…」


女「嫌そうにするなって言われても…いや、嫌ではないんだけどさ…。ってか、いつもここからバス乗ってるの…?」


女「そーなんだ。全然気づかなかったよ…。」


女「てことは…毎朝鉢合わせる可能性があるってことだよね…。うう…ボクの静かな朝がぁ…」


女「わっ、ごめんってば!ホンキで嫌なわけないじゃん!?ボクそーゆの得意じゃなくて!ね…?」


女「え、もともと気にしてないって?…それなら最初にそういってよ…びっくりするじゃん…」


女「…あ、バスきた。乗る準備しないと」
――――――――――――――――――――――――――――――

女「…んで、部活にもしっかり居ると。…まあ、毎日来いっていったのはボクなんだけどね…」


女「そーいやキミが入ってからちょうど3ヶ月くらい?どう?ちょっとくらいは上手くなった…?」


女「なんか弾ける曲あるの…?…曲は弾けないけどフレーズだけなら弾けるんだ。聴きたい聴きたい!」


女「そんな恥ずかしがらなくても…。てか、ボクも試奏のときに弾いてみせたじゃん!お互い様ってことでさ。いーでしょ?はやく弾いてよ!」

~♪

女「…」


女「…へ、へー。なんだよ。ふつーに上手じゃん。…正直予想以上かも、なんて…」


女「う、チョーシのんな!まだボクの方が上手いんだからな…!」


女「…まあでも、その様子なら文化祭には間に合いそうだねー。あ、もちろんキミも出るんだよ?」


女「ライブにはたくさん出た方がいいよー。モチベあがるし、緊張にも慣れるし…って、聞いてんの?」


女「ギターのこと考えてた…?…ほんと変なやつだねキミは」


女「そこまでのめり込んでるならいっか。楽しそうで良かったよ。すぐ辞めちゃわないかと思ってたんだけど」


女「ばか!心配してたんじゃないよ!部員がへったらやりづらいだけだもん…寂しいとかじゃないってば…」


女「あーもーうるさいうるさい!なにもきこえませーん。はいっ、雑談おわり!練習にもどる!」


女「…なんかいっつもアイツのペースにのせられてる気がする…。」

女「~♪」シャカシャカ

女「…?なんだよ。今はボクの安らぎの時間なんだから邪魔しないでよー。」


女「誰の曲聴いてるのって?ああ…King Gyuってバンドの『白日夢』って曲だよ。」


女「…King Gyu好きなの!?いいねぇー。分かってるねキミー!…どのメンバーが好きなの?」


女「田口さんなんだ!綺麗なファルセット聴き入っちゃうよねー。…ボクは誰が好きかって?うーん…迷うけど、常山さんかな…。」


女「分かる!?あの世界観がほんと好きでさ…ギターもバリバリ弾けちゃうし…憧れるよね…!」


女「…意外と趣味合うんだね、キミ。」


女「や、嬉しいっていうか!びっくりしただけだよ!意外とコアなんだなって思っただけ!」アセアセ


女「あ、もう5時40分じゃん。片付けしなきゃだね…ドラムは直すの時間かかるからなあ」


女「…手伝ってくれるの?大丈夫だよー。ボク1人でできるし…っ…お゛も゛っ゛…」


女「う…やっぱ手伝ってくれない…?」

女「おっ。今日も今日とてがんばってんねー。」


女「…だいぶ上手くなったよね、キミ。前に聴かせてもらったときよりいい音してるんじゃない?」


女「ほんと楽しそうに弾くよねー。自分の世界に入り込んでる、って感じ。」


女「ねぇ、一瞬だけ弾かせてよ。ほんとにちょっとでいいから貸してほしいなぁ。いいギターだし弾きやすそうだよねー。」


女「やったー!ふふふ…お礼にボクの超絶テクニックをお見せしよーう」


~♪


女「…へへへ。まだまだ負けるつもりないからねー。」


女「あ、そーいえばそろそろ文化祭だけど…キミはバンド、もう組んだの…?」


女「そ、そうなんだ。まだ組んでないんだ…」


女「じゃあさ…ボクとあと2、3人でさ、組むのはどうかなー、
キミが断るなら他の人さそうし?どっちでもいいけどなー」


女「…!ほんと…!?組んでくれるの…?やった…!」パァァ


女「じゃあ決まりってことで!…あ、べつにキミが入ってくれるのが嬉しくて喜んでるんじゃないよ?!いや、キミが入ってくれるのはうれしいけどさあ!ほんと、そーゆーんじゃなくて…」


女「顔赤くないよ!!これも夕焼けのせいだし!!」


女「と、とにかく当日に向けて練習しないとだから、そこんとこ頼むからね…!」


女「んじゃ、明日から改めてがんばろーってことで」


女「ボク先にかえるね。まったねー。」

女「やっほー。今日も来たね。」


女「…もうバンドの練習には慣れた?…そっか。目標決まってると練習しやすいよねー。」


女「いやいや、足でまといなんかじゃないよ?キミのギターの音、バンドのグルーヴの中でハッキリしてていいとおもうけど…?」


女「なんというか…音の集まりの中でよく通ってるけど、他の楽器の音にも馴染んでる、みたいな?…むずかしいなあ」


女「とにかく!キミはちゃんと出来てるから気にすることないよ!」


女「…うん。ちょっとでも自信もてたんならよかった。引き続き頑張りたまえー。」


女「…なぐさめるの上手?ま、まあ…キミにやめられちゃったら困るし?えっとあとは…うん…ふへへ、そうだね」


女「こまったことあったら、いつでも聞いてきていいよ。」


女「後輩の面倒みるのも先輩の役目だからね!…ホントは同級生だけど。」


女「あー、なんか偉そうだよね、ボク…。ごめんね?気づいたらこうなっちゃうんだよね…治さないといけないんだけど」


女「人と喋るのニガテなんだよねー。あーあ。クラスのみんなにもキモがられてるんだろーな。」

女「昔はもっと喋ってたんだけど…最近は仲良くしてくれる人としか話してないんだ」

女「みんなボクの事どう思ってるか分かんないしさ…仲良いと思ってた子に陰口言われてたとかもあったし…」


女「仲がいい人ができるから、そういうことで傷つくわけじゃん?…だから、今仲良くしてくれる人とだけ自分から話すようになっちゃったんだよね。」


女「でもそんな生活長く続くわけなくて…幸い勉強も運動も人並みにはできたから、1人でやっていけてる?んだけど」


女「それでどうしようもなくなった時、軽音部に入って…やりはじめたんだよね、音楽」


女「音楽っていーよね。言葉じゃなくても、メロディとかコードとか…よーするにやんわりしたもので聴いてる人にキモチが伝わるからさ。」


女「だから音楽すきなんだよね、ボク。」


女「なんだかんだいって、やっぱり自分のことみんなに知ってもらいたいだけなのかもね…。情けないよね。ほんと」


女「えっ?ボクの演奏、気持ちこもってるかな?…そうかな。」


女「ふふっ。…ありがとね。キミを元気付けるつもりだったんだけどなぁ…」


女「はいっ!辛気臭い話はここまで!もういつものボクだから!」


『午後6時になりました。校内に残っている生徒の皆さんは、直ちに準備をして帰るようにしましょう。』


女「…あ。もう時間か。…話し込んじゃってあんまし演奏できなかったねー」


女「今日は息抜きの日ってことにしよっか。また明日から練習しよー」


女「うん…また明日、ね。」

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