メリーさん「今、隣の部屋に居るの」 (26)
男「うん、さっき聞いた」
メリー『貴方に、お願いがあるの』
男「何?」
メリー『隣の部屋との壁から、背中を離して』
男「何で?」
メリー『……』
男「……」
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メリー『もしもし、私メリーさん』
男「うん、何度も聞いた」
メリー『貴方、いつまでそうしてるつもりなの?』
男「その部屋の住人、ロリコンって噂があるんだ」
メリー『!?』
男「そろそろ帰ってくるんじゃないかな?」
メリー『……!?』
メリー『もしもし! 私メリーさん!』
男「ははっ、声でけえ」
メリー『今、隣の部屋に居るの!』
男「お、階段登る音が聞こえるな」
メリー『!?』
男「俺とお前、どっちがピンチだろうか」
メリー『……!?』
メリー『もしもし! もしもーし!』
男「大丈夫だ、俺が側に付いてるぞ」
メリー『……!?……!?』
男「あ、その部屋と反対側の住人だったみたいだ」
メリー『……!』ホッ
男「凄く美人のOLさんでな!……聞いてる?」
メリー『……』
メリー『せめて……背中を反対側の部屋の壁に』
男「えっ? そしたらOLさんの部屋に行くだろ?」
メリー『これをきっかけに、仲良くなれるの!』
男「う~ん……ちょっと、一人で考えさせてくれ」
メリー『えっ、一人でっ』
男「……何ですぐかけなおしてくるの?」
メリー『もしもし! 何で通話切るの!?』
男「考え事は一人でしたいタイプなんだ」
メリー『早く! 壁、背中!』
男「いや、でもなぁ」
男「は……恥ずかしいじゃん?///」
メリー『照れてる場合じゃないの!』
男「大声出すと隣の部屋の人に迷惑だぞ」
メリー『隣の部屋の人が貴方なの!』
メリー『早くして、お願い!』
男「なら、ちょっと待っててな……よいしょ、っと」
メリー『! うん!……うん!』
男「お待たせ、漫画持って来た」
メリー『もしもし!? 漫画!?』
男「あっ、今俺実はピンチだった?」
メリー『……ああっ!?』
メリー『もしもし! もしもし!』
男「まあ、そう焦らなくても」
メリー『早くして欲しいの! お願い!』
男「ロリコンっての、あくまでも噂だから」
メリー『白いスク水が飾ってあるの!』
男「……聞かなかった事にするよ」
メリー『今後の近所付き合いを気にしないで!』
メリー『よく見たら、そういうのがいっぱいあるの!』
男「あんまり他人の部屋をジロジロ見るなよ」
メリー『ひっ……あ、あれは何なの……!?』
男「……頑張れ!」
メリー『応援とか、そういうのはいらないの!』
男「壁薄いから、ヘッドホンしといてやるから」
メリー『そういう気遣いもいらないの!』
メリー『もしもし! 私、メリーさん!』
男「……ん、階段を登ってくる音がする」
メリー『!?』
男「あ、そろそろ切るな?」
メリー『待って! 切らないで!』
男「切らないでって……聞かせる気か?」
メリー『違うの! そうじゃないの!』
メリー『ひいっ!? か、鍵を開けてるの!』
男「出かける時、鍵をかけるなんて普通だろ」
メリー『あっ、あっ、あっ、あっ……!?』
男「ちょっと寝っ転がるか」
メリー『もしもし! 私、メリーさん!』
メリー『今、貴方の部屋の――下の階の部屋にいるの!』
男「……ははは、このギャグ漫画は何度読んでも面白いな」
メリー『聞けや!』
メリー『でも、助かった……助かったの……!』
男「今、下の部屋の何処にいるんだ?」
メリー『……トイレに隠れてるの』
男「花子さんじゃねえんだから」
メリー『……家族三人で、お鍋やってるの』
男「それは、ちょっとお邪魔出来ないな」
メリー『……なの』
メリー『もしもし、私メリーさん』
男「うん」
メリー『早く、貴方の後ろへ行きたいの』
男「俺の後ろへ来てどうするんだよ」
メリー『待って! 誰か、トイレに向かってきてるの!』
男「そりゃまずい、隠れろ!」
メリー『何処に!?』
メリー『トイレじゃ、隠れる場所なんて無いの!』
男「しょうがない、待ってろ」
メリー『何か、いい考えがあるの!?』
男「ほれ、移動しろ」
メリー『もしもし、私、メリーさん』
メリー『今、貴方の部屋の……ベランダに居るの』
男「よし、セーフだな」
メリー『あの……風が凄く冷たいの』
メリー『もしもし? もしもし?』
男「ん?」
メリー『なんだか、雨が降ってきそうなの』
男「風もあるから、ベランダに居ると濡れるぞ」
メリー『……あ、降ってきたの』
男「どんどん強くなるって予報だったな」
メリー『……』
メリー『本当に雨が強くなってきた……最悪なの』
男「……部屋、入るか?」
メリー『! 良いの!?』
男「な、何もしないって……約束してくれる?///」
メリー『照れ臭そうに言わないで欲しいの』
男「いや、だって……なあ?///」
メリー『ぶっとばされたいの?』
メリー『濡れた服を乾かして、シャワーが浴びたいの』
男「……ほら、移動しろ」
メリー『その……一応、お礼を言っておくの』
男「ロリコンに見つからないよう、静かにな」
メリー『!?』
男「俺の部屋に入れるとは言っていない」
メリー『……!?』
メリー『もう、浴室に移動しちゃったの!』
男「大声を出すと見つかるぞ」
メリー『早く……! 早く、違う所へ……!』
男「濡れたまんまじゃ風邪ひくぞ」
メリー『そんなの良いから早く……!』
男「そんなの? 自分を大切にしろよ」
メリー『大切に思うからこそ、早く……!』
メリー『貴方は、私に恨みでもあるの……!?』
男「いや、幸せになって欲しいだけさ」
メリー『えっ?』
男「お隣さんに」
メリー『もしもし? 私がどうなっても良いの?』
男「命を狙って来る相手を気遣うとでも?」
メリー『……ぐうの音も出ないの』
メリー『今日の所は帰って、また出直してくるの』
男「結果は同じだと思うぞ」
メリー『……』
男「それじゃあ、また明日な」
メリー『……また明日』
男「……はぁ、このやり取りも何度目だ?」
男「いつになったら諦めてくれるんだろうか」
おわり
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