絵里「亜里沙がボランティア先の養護学校でパワー系池沼にレイプされた……?」 (83)

絵里「うそ……」

理事長「………」

亜里沙の通う中学校では「ボランティア学習」という行事がある。

その行事では、様々なボランティアを通じて社会を知る、いわゆる「総合的な学習」の一環として行われている活動だ。

亜里沙からは「亜里沙は養護学校へボランティアしに行くんだ!」って聞いていた。

私は「養護学校」についての知識がなかったから、亜里沙が帰ってきたときのボランティア体験談を楽しみにしていたのだけど。

まさか、亜里沙がそんな目に遭っていたなんて、思いもしなかった。

ライブが近かったこともあり、私たちμ'sはいつものように屋上で練習していた。

そこに、理事長が訪ねて「綾瀬さん、ちょっといいかしら?」って言った。

私は生徒会長だから、理事長及び他の先生から生徒会関係で呼び出されることには慣れていた。私は、今回もその類の呼び出しかと思っていた。

理事長は、私に「一緒に理事長室へ来て」と言って、何も言わず、無言で、身体を震わせながら私の前を歩き、理事長室へ先導した。

理事長室へ入った私たち。理事長の震えはおさまっていなかった。

理事長「綾瀬さん……」

理事長「落ち着いて……落ち着いて聞いてね……?」

絵里「……?どうしたんですか?」

身体の震えが声に伝染しているんじゃないかと思うくらい、理事長の声は弱々しかった。

そして……

ライブが近かったこともあり、私たちμ'sはいつものように屋上で練習していた。

そこに、理事長が訪ねて「綾瀬さん、ちょっといいかしら?」って言った。

私は生徒会長だから、理事長及び他の先生から生徒会関係で呼び出されることには慣れていた。私は、今回もその類の呼び出しかと思っていた。

理事長は、私に「一緒に理事長室へ来て」と言って、何も言わず、無言で、身体を震わせながら私の前を歩き、理事長室へ先導した。

理事長室へ入った私たち。理事長の震えはおさまっていなかった。

理事長「綾瀬さん……」

理事長「落ち着いて……落ち着いて聞いてね……?」

絵里「……?どうしたんですか?」

身体の震えが声に伝染しているんじゃないかと思うくらい、理事長の声は弱々しかった。

そして……

理事長「亜里沙ちゃんが……ボランティア先の養護学校でパワー系池沼に性的暴行をされたと、その養護学校から連絡がありました……」

絵里「………」

絵里「……え?」

絵里「うそ……?」

理事長「………」

絵里「どういう、ことですか……?なんで、なんで亜里沙がそんなこと……!?」

理事長「……詳しい話はまだ聞いてないの。ただ、絢瀬亜里沙ちゃんの保護者に連絡しておかなくていけない状況で……」

理事長「綾瀬さんは姉妹で2人暮らしだと中学校から連絡を受けて、そこであなたの通学先である音ノ木坂宛てに連絡が来て、あなたに伝えてくれっ頼まれたの……」

絵里「そんな……そんな……亜里沙……」ポロポロ

理事長「絢瀬さん……これから、私があなたを連れて、その養護学校へ行きます……辛いとは思うけど……」

絵里「……よろしくお願いします」ポロポロ

養護学校

絵里「亜里沙!!!!」

亜里沙「……おねえちゃん」

絵里「亜里沙……!私、今、理事長から連絡を受けて……」ポロポロ

亜里沙「……おねえちゃん……うぅ……」ポロポロ

亜里沙「うわあぁああああああああ!!!!!」ポロポロ

絵里「亜里沙……亜里沙……」ギュッ

亜里沙「亜里沙……お嫁にいけなく……うぅうううううう!!!!」ポロポロ

絵里「亜里沙……大丈夫、忘れなさい……!」ポロポロ

養護学校校長「絢瀬亜里沙さんのお姉さんですか……?」

絵里「……はい」

養護学校校長「……この度は、まことに申し訳ありませんでした」

絵里「………」

亜里沙「うぅ……ヒッグ……」ポロポロ

理事長「………」

養護学校校長「絢瀬さんは、この学校のボランティアに一番熱心で、うちの生徒としっかりと向き合ってくれていました……」

養護学校校長「本当に優しくて、素晴らしいお嬢さんです」

養護学校校長「ただ……その優しさを……うちの生徒が思い走らせてしまったせいで、踏みにじるような結果になってしまい……本当に申し訳ありません」

絵里「誰が……誰が亜里沙をこんな目に遭わせたんですか!!?」

養護学校校長「……こちらへどうぞ」

絵里「………」

亜里沙「おねえちゃん……」ギュッ

理事長「絢瀬さん……」

理事長「差し出がましいようだけど……あなたはここで亜里沙ちゃんと一緒にいたほうがいいわ」

理事長「あなたが良ければだけど、私がまず話を聞いて、亜里沙ちゃんが落ち着いてからあなたが話を聞いたほうが、いいと思う……」

絵里「……本当にすみません理事長……お願いして、いいですか?」

理事長「ええ……」

養護学校校長「こちらへ」

理事長「………」

亜里沙「おねえちゃん……怖かった……痛かった……」ポロポロ

絵里「亜里沙……」ナデナデ

私と亜里沙は、校長室の前で待たされた。

おそらく、この中に、亜里沙をこんな酷い目に遭わせたパワー系池沼がいるのだろう。

そして、理事長が私の代わりに話を聞いてくれている。

理事長の優しさが身に染みる。私の学校の代表は、こんなにも慈愛に満ちた、素敵な女性なんだ。

亜里沙はまだ体を震わせながら、泣きじゃくっている。

私がしっかりしないと……

私も、ついさっきまでショックを受けていて、今もそのショックを拭いきれていない。あの扉の向こうでどんなことが話されているんだと思うと、気が気じゃなかった。

それでも、亜里沙には私しかいないんだ。私が、この子を支えなきゃ。だから、この場でも、平常心を保たなければ……



パリィイイイイイイン!!!!!

絵里「!!!?」

亜里沙「ひぃっ……!!?」

校長室の中から、何かが割れる音……

そして……

ぎゃぁうあおうあじゅぴうぴうぴふぁおうtぱああああああ!!!!!!


わけのわからない奇声。

絵里「な、中で何が……」

亜里沙「……いや……たかし君が来る……」ポロポロ

絵里「亜里沙……?」


ガタンっ!!!!

絵里「!!!!!?」

(^q^)「ヴぁぁああああああああああああああ!!!!!!!」

絵里「ひぃいっ!!!!?」

亜里沙「あ……あ……」ガクガク

校長室から出てきたのは、身長180cm超えで肥満体系の、酷く醜い男だった。

その男は、奇声を発しながら廊下を駆けずり回る。

(^q^)「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあ!!!!!!!」

絵里「な……なんなの……!?」

理事長「絢瀬さん!!!妹さんを連れて非難して!!!!」

理事長に言われるがまま、亜里沙の手を取り、その場を離れた。

そして、「事務室」へ逃げ込んだ。


あの醜くブクブク太った身体、そして、醜悪な顔立ち。

まさに「池沼」そのものだった。

絵里(まさか……)

絵里(亜里沙はあんな男に犯されたっていうの……?)ポロポロ

亜里沙「うぅ……おねえちゃん……」ポロポロ

理事長「失礼します。絢瀬さん……?」

絵里「!!?理事長!!」

理事長「ごめんなさいね、びっくりさせちゃって……亜里沙ちゃん、平気?」

絵里「はい。まだ少し震えているけど、なんとか大丈夫です。ね、亜里沙」

亜里沙「うぅ……はい……」ポロポロ

絵里「あの、まさか……さっきの男が亜里沙を……」

理事長「………」

絵里「亜里沙……」ギュッ

理事長「あの男子生徒の保護者と話しがもつれていて……ごめんなさい、絢瀬さん。一緒に来てくれないかしら」

理事長「亜里沙ちゃんは、ここに身を置かせてもらって、あの男子生徒に見つからないように手配してくれたから」

絵里「………」

絵里「……わかりました」

校長室

絵里「失礼しま……」

池沼母「まあ!!!!?あなたがわたくしのかわいいかわいいたかしちゃんを誘惑したメスブタの姉かしら!!?」

絵里「!!?」

池沼母「あなたの妹がたかしちゃんを誘惑したせいでたかしちゃんがあらぬ疑いをかけられたじゃないの!!!?」

池沼母「どうしてくれるのよ!!?たかしちゃんを強姦魔みたいに扱って……!!!」

絵里「え……?」

絵里(何を……何を言ってるの?この人は……?)

養護学校校長「お母さま……ですから……」

池沼母「あなたには聞いていないザマス!!!!この女の謝罪がない限り、わたくしは被害届を取り下げないザマス!!!!」

絵里「わ、私の妹が悪いって、どういうことですか……?」

池沼母「言葉通りよ!!!?あんたの娘がたかしちゃんにちょっかいかけて!!おたくの妹さんが誘惑したのよたかしちゃんを!!!!」

絵里「あ、亜里沙はそんなことする子ではありません!!!」

池沼母「まぁ!!!!なんという女狐……!!!」

池沼母「たかしちゃんがちょっと愛情表現したくらいでまるで痴漢に遭ったみたいに……!!!よくもまあそんなことを!!!」

絵里「こちらのセリフです!!亜里沙がどんなに……どんなに辛い思いをしたと思ってるんですか!!!」ポロポロ

池沼母「ふざけないでちょうだい!!!これは差別よ!!!障害者差別!!!!訴えてやるザマス!!!!!」

絵里「……っ!!?」

絵里「この……!!」グッ

理事長「だ、ダメよ、絢瀬さん!!」

絵里「理事長……でも……!!」ポロポロ

理事長「今は我慢して……」ギュッ

理事長「ここであなたが手を出すと、こちらも悪くなってしまうから……我慢して……」

絵里「く……くっ……!」ポロポロ

その後、事の発端含め、大まかな被害状況を、養護学校校長と池沼の担当教諭から聞いた。

事件が起こったのはプールの時間だった。

ボランティアをしていた子たちは、みんな障害者のことを気持ち悪いと言って近寄らなかったようだった。

そんな中、亜里沙だけはこのボランティアに熱心で、障害者の子供たちと向き合って、打ち解けてもらおうと努力していたとのことだった。

もちろん、たかし君(池沼の名前らしい)にもその優しさは向けられた。

1日通して行われるボランティアの最後の授業、つまり「6時間目」に値する授業は「体育」の水泳だったそうだ。

亜里沙は水着に着替え、障害者の子たちと浅いプールで遊んでいたのだが、そこへたかし君がやってきた。

たかし君は亜里沙のスク水姿を見るや否や、亜里沙に抱きついたらしい。

亜里沙は驚いて逃げようとしたが、たかし君は離してくれなかったらしい。

そして、そのままたかし君の勃起したちんこが、亜里沙の膣内にブチこまれたとのことだった。

教諭が他の生徒とコミュニケーションをとっていた一瞬の出来事だった。

この学校では障害者が叫ぶことも珍しくなかったため、教諭は「またたかし君が騒いでるな」程度にしか思っていなかったようだが、障害者と距離を置いていた亜里沙の同級生の女の子が報告したことで、事件が発覚。

しかし、時すでに遅しで、亜里沙の膣からは大量の血が。

そして、その血と同量の濃厚白濁汁が亜里沙の下半身を包んでいたそう。

そして、精液が垂れたちんこを露出させたたかし君が、元気いっぱいにはしゃぎまわっていたとのことだった。


絵里「………」

理事長「………」

理事長が、私の震えている肩を抑えるようにスッと手を寄せてくれた。

絵里「酷い……!酷すぎる……!」ポロポロ

絵里「亜里沙が……あの子がなんでこんなことに……」ポロポロ

理事長「絢瀬さん……」

養護学校校長「……本当に、申し訳ありませんでした」

養護学校教諭「申し訳ありませんでした……!」ポロポロ

絵里「……そのたかし君は、どうなるんですか……?」

絵里「なんの、お咎めもないんですか……!」プルプル

養護学校校長「……その件につきましても、こちらで厳密に決定させていただきたく思っています」

理事長「同じ教育者として、お気持ちは充分理解できます……」

理事長「でも……これは立派な犯罪です……!」

理事長「もちろん決めるのは、絢瀬絵里さんと絢瀬亜里沙さんですが……私はこちらで被害届を出すことを勧めるつもりです」

養護学校校長「………」

理事長「私としては、今、加害者も加害者の母親もいる今この状況で、警察を呼ぶべきだと思っていますが……」


バァアアアアアアアン!!!!

理事長「!!?」

絵里「!!!?」

事務員「た、大変です!!!たかし君が!!!たかし君が!!!」

絵里「!!!?」

理事長「ま、まさか、さっきの男子生徒が……!」

絵里「亜里沙っ!!!!」

私は、亜里沙のいる事務室へ走った。


事務室

(^q^)「ありさちゃ!!!!!ありさちゃ!!!!!」ハァハァハァハァ

そこには、巨体を思う存分に揺らしながら亜里沙を探し回る池沼の姿が……!

驚くことに、ズボンとパンツを履いていなかった。ちんこ丸出しである。

そんな状態で亜里沙を探しているわけだ。彼が考えていることはひとつである。

絵里(亜里沙を……また犯そうとしている……!!)

絵里「こら!!!!やめなさい!!!!」

(^q^)「ありざちゃ!!!!ありざちゃ!!!!!」シコシコシコシコ

絵里「うっ……汚い……!」

絵里(でも……ここで引いたら亜里沙が……!)

絵里「それだけは嫌!!!」

理事長「絢瀬さん!!!駄目!!!」

絵里「この……出て行きなさい!!この池沼!!!」

(^q^)「あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

池沼母「この女!!!また障害者を差別して……!!!!もう許せないわ!!!」

絵里「亜里沙に近寄るな!!このクズ!!!死になさいよ!!!」ポロポロ

絵里「あなたのせいで亜里沙は……!!!」ポロポロ

池沼母「きぃいいいいい!!!!!わたくしのたかしちゃんを侮辱するなぁああああああ!!!!」

(^q^)「ありさじゃ!!!ありさぢゃ!!!!」ドピュ



私は池沼母から掴みかかられたが、事務員の人が池沼母を抑えてくれて、どうにか事なきを得た。

そして、池沼のたかし君も、自身のちんこをいじって射精したおかげで、賢者タイムに入る。

その後、たかし君は大人しくなり、池沼母と共に家に帰した。

亜里沙は事務室の奥に隠れていて、今回は無事だった。

失った処女は、もう戻ってはこないが……

―――――――――――――――

絵里「……うん、早く帰ってきてね……それまで亜里沙は私が見守るから……うん……」

絵里「……おやすみなさい」

その後、理事長から「今日はゆっくり休んだほうがいい」との助言を貰い、私と亜里沙は理事長に送ってもらい、自宅に帰った。

亜里沙は家に着くまで何も言わず、ただずっと泣いていた。そして、自宅へたどりつくと、そのまま眠ってしまった。

私はご飯を食べる気にもなれず、お風呂に入ることもなかった。そんなことをするよりも、ただ、亜里沙から離れたくなかった。

私が亜里沙から離れたら、亜里沙は壊れてしまうのではないかと思うくらい、亜里沙が小さく見えたから。

亜里沙を見守ること以外で私が出来たことは「両親に連絡すること」だった。

私の話を聞いたお母さんは、電話越しで泣いていた。亜里沙の辛さが伝わったのだろう。

お母さんとお父さんは、ロシアでの仕事に区切りをつけて日本に戻ってくるとのことだった。

もちろん、それで一安心するわけではない。亜里沙の傷が癒えるわけではないのだから。

まるで不安に押し殺されそうな亜里沙の吐息。

いつもは安らかに眠ってくれているのに、今日は違う。悲しみを次の日に引き継がざるを得ないかのような表情をしている。

まさにその通りだ。今日、亜里沙が受けた心の傷は、本当に大きい。

絵里「……私も寝ましょう」

絵里「μ'sのみんなからもラインが来てるわ……」

明日は理事長から「学校を休んでいい」と言われている。言われなくてもそのつもりだった。

亜里沙と寄り添っていたからったから。

絵里「ごめんね、みんな。しばらく、学校へ行けそうにないわ」

絵里「ごめんね、亜里沙……私、なんにもできなくて……」ポロポロ

本当なら、あの池沼を殴り飛ばしたかった。

あのケダモノを野放しにするあのクソババアも、出来ることなら、あの時殴りたかった。

それができないのが、本当に悔しくて、でも、理事長の言っていたことも間違ってはいなくて。

結局、私が亜里沙にしてあげることができたことは、こうやって寄り添うことと、ぎゅって抱きしめてあげたことだけ。

根本的な解決にはなっていないのだ。

絵里「ごめんなさい……亜里沙……」ポロポロ

次の日

目覚めは最悪だった。

目覚めた時間は5時30分。いつもより少しだけ早い。

そして、亜里沙ももう目覚めていた。

亜里沙「おはよう!おねえちゃん!」

絵里「亜里沙……おはよう……」

起きてすぐ驚いた。亜里沙は昨日の朝と変わらない元気だったからだ。

亜里沙「おねえちゃん、昨日は迷惑かけて、ごめんね。亜里沙、もう大丈夫だよ」

絵里「………」

空元気だって、すぐにわかった。

「作り笑い」といえば他人行儀かもしれないが、その笑顔が心の底からのものとは、私にはとても思えなかった。

絵里「亜里沙……」ギュッ

絵里「今日は、学校をお休みしましょう……」

絵里「無理なんか、しなくていいから……ね?」ギュッ

亜里沙「おねえちゃん……」

亜里沙「ううん、亜里沙は大丈夫だよ。気にしてないわけじゃないけど、いつまでもこんなことで落ち込んでいられないよ!」ギュッ

亜里沙「まだおまんこのところ、結構痛いけど、体調が悪いわけじゃないし、雪穂や他の友達にも「亜里沙は大丈夫」だって教えてあげたいから」

絵里「亜里沙……」

亜里沙は間違いなく無理をしている。でも、私や雪穂ちゃん、他の友達に心配かけないように、自分を偽っているのだろう。

それが「本当の強さ」なのかは私にはわからない。

でも、一番辛い状況にある亜里沙が「前を向きたい」と願っている。

だから私は、亜里沙を力強く抱きしめて。「わかった」と返答した。

本当は、自分の不甲斐なさを亜里沙に謝りたかった。昨日、池沼たちに何もできなかったからだ。

だけど、ここで私が謝ったら、亜里沙の前を向く気持ちに杭を打つのではないかと思って、謝らなかった。

そして、亜里沙はぎこちない歩きで、リビングへ向かった。下半身が痛んでいるのは目に見えている。

それでも弱々しく一歩ずつ歩く亜里沙を見て、声を押し殺して泣いた。

絵里「……私も、学校へ行こう、亜里沙がここで前を向こうとしているもの」

絵里「私がこんなんじゃ、ダメよね……!」

下半身を痛めている亜里沙の代わりに、簡単な朝食を作り、私と亜里沙で食べた。

会話は、いつも通り。しいて言うなら、私がぎこちなかったくらい。

私を安心させたいのだろう。

私と亜里沙は、いつもより少し早く家を出て、亜里沙の通う中学校へ亜里沙を送り届け、私も音ノ木坂へ向かった。

結局、μ'sのみんなが朝練を開始するであろう時間に、音ノ木坂へ着いてしまった。

私は自分の教室にも、アイドル研究部部室にも行かず、理事長室へ直行した。

まずは理事長に昨日の謝罪と感謝を伝えたかった。そして、今後のことも相談したかった。

元々理事長のことは素敵な女性だと思っていたのだけれど、それは間違ってはいなかった。

ことりは最高のお母さんに育てられたからこそ、あんなにいい子なのだろう。

絵里「失礼します」

理事長「絢瀬さん……!?今日は休んでよかったのに……」

絵里「ええ、そのつもりでした。でも、亜里沙が、「私は大丈夫だから、雪穂や他の友達に顔を見せたい、くよくよしたくない」と……」

理事長「……強いのね、亜里沙ちゃん……」

絵里「……はい」

亜里沙の行動が本当に「強い」ことに値するかどうかはわからなかったが、話を合わせておいた。

絵里「あの……昨日は、本当にありがとうございました」

私は深くお辞儀をする。

理事長「そんな……顔を上げて、絢瀬さん。あなたのご両親が海外赴任なのは知っていたから、あなたが通う学園の責任者として当然のことをしたまでよ?」

絵里「はい……本当に、ありがとうございます……」ポロポロ

理事長「お母さんたちには連絡した?」

絵里「はい……近々、帰ってきてくれるみたいです……」ポロポロ

理事長「お母さんたちが帰るまで、いいえ、帰ってきてからもなんでも協力するつもりよ、絢瀬さん」

理事長「だから……また、対策を……」


ぷるるるるるるるる

理事長「あら、内線だわ、絢瀬さん、ちょっとごめんなさいね」

絵里「はい」

理事長は内線の電話を手に取る。内線ということは、職員室や事務室からの連絡だろうか。

理事長「はい、理事長室です……はい……」

理事長「原翔中学校から……?はい、つなげてください」

絵里「原翔中学校……?」

原翔中学校……亜里沙が通う中学校のことだ……

昨日、理事長が対応してくれたから、それのお礼の電話だろうか……

理事長「え……本当ですか……?」

理事長「はい……はい、私も同行して、本人も連れてすぐに向かいます、はい……」

絵里「……?」

理事長は、なんの電話をしているのだろう……

「すぐに向かう」。理事長はそう言った。

「本人」とは、誰のことだろう……

いや、本当はわかっている。きっと、私のことだ……

理事長「………」

絵里「あの……理事長……今の電話……」

理事長「絢瀬さん……深呼吸をして……」

絵里「え……」

理事長「心を落ち着かせて、気を確かにして聞いて欲しいの……」

絵里「………」



理事長「亜里沙ちゃんが、3階の教室の窓から飛び降りたって連絡が、亜里沙ちゃんの通う中学校からあったの―――」

絵里「え―――」

西木野総合病院―――

絵里「亜里沙……亜里沙はどこですか!!」

受付「急患で運ばれてきた絢瀬亜里沙さんですか?2階の緊急手術室です」

絵里「亜里沙……!!」

理事長「受付は私が済ませるから、あなたは2階へ……!」

絵里「わかりました……!」

亜里沙……やっぱり、私が間違っていた。

今日、ずっと一緒にいてあげるべきだった―――

どう見ても空元気だった。亜里沙の素の表情じゃなかった―――

涙が止まらない。悔しさと、自責と、亜里沙のことを思う気持ちが交差する。

私は泣きながら、そして、心の中で亜里沙に何度も何度も謝りながら、必死に二階までの階段を駆け上がる。

二階の手術室はすぐに見つかった。

その手術室のすぐそばに、スーツ姿の男性がベンチに腰かけていた。

その男性は駆け寄る私を見て、立ち上がる。

男性「絢瀬亜里沙さんのお姉さんですか?」

絵里「はい……!あの、亜里沙は……!!」

男性「いま、緊急手術を受けています……!」

きっとこの男性は、亜里沙の担任の先生だろう。

私に話しているのだろうけど、心ここにあらず、といったところだろうか。

でも、その心は手術室の先にいる亜里沙の方に向けられているだろうことはすぐにわかった。悪い先生ではなさそうだ。

絵里「あの……!亜里沙は……亜里沙はどうして……!」

亜里沙の担任「今日絢瀬さんは、まっすぐに私の元へ来ました。昨日、心配かけたことへの謝罪のためでした」

亜里沙の担任「その後、少しだけ話をして、たまたま職員室へ来ていた彼女の友人の女の子と一緒に、絢瀬さんはそのまま教室へ向かいました」

亜里沙の担任「その、教室で……」

ちょっと前の亜里沙の教室―――


雪穂「亜里沙……その、気にしちゃだめだよ……」

亜里沙「うん!全然平気!命を取られたわけじゃないもん!」

女子1「亜里沙は強い子だね、そこが亜里沙のいいところだよ」

女子2「ねぇ、今日どこかへ寄って帰ろうよ!」

雪穂「いいね。この間亜里沙と行ったクレープ屋さん、みんなで行こうよ!」

亜里沙「ハラショー!いいね!行こう行こう!」


ガラガラ

男子1「おーっす」

男子2「おーーーっと!!?そこにいるのは池沼とファックした亜里沙ちゃんじゃないですかああああああ!!!!!」

亜里沙「!!!?」

雪穂「………!!ちょっと!!!あんた、何言ってんの!!?」

男子1「ぎゃははははははwwwwwwwwwwwwあれマジだったのかよwwwwwwwwwwww」

男子2「マジマジ!!俺昨日絢瀬と同じボランティアだったから一部始終ばっちりwwwwwwwwwwww」

女子1「ちょっと、本当ふざけないでよ!!なんで本人の前でそんなこと言えるの!?」

男子1「だってよぉ、汚ぇじゃん、レイプ被害者が教室にいるなんてさwwwwwwwwww」

亜里沙「―――っ!?」

男子2「おい翔太くぅん、お前絢瀬のこと好きだったんだろwwwwwwwwどんな気分だ、池沼に絢瀬の初めて取られたのはよぉwwwwwwwwww」

翔太くん「バカいえwwwwwwwwwwこんな便器もう好きじゃねーよwwwwwwwwwwww」

翔太くん「池沼なんかに抱かれた女好きになれるかよwwwwwwwwwwwwwwww」

男子1「ブフォ!!!翔太くん最低じゃねーかwwwwwwwwwwww」

雪穂「この……!!」ガンッ

翔太くん「痛っ!!!てめぇ、何しやがる!!!」

亜里沙「………」ポロポロ

亜里沙「うぅ……うわぁああああああああああああああ!!」ポロポロ

ダッ

女子1「亜里沙……どこ行くの!!そっちは窓よ……!!」

女子2「だめ!!亜里沙、やめて!!!」

亜里沙の担任「……私がその場にいたわけではありませんが、生徒の話だと……こんなことが……」ギリリッ

絵里「あ……あ……」ポロポロ

絵里「ああぁああああああああ!!!!!」ポロポロ

絵里「亜里沙……!!!亜里沙……!!!」ポロポロ

私は、溢れる涙を抑えることができず、人目も考慮せずそのまま泣き崩れた。

亜里沙の担任「申し訳ありません……!あのとき、教室になんか行かせなければ……!一旦保健室に行かせておけば……!」

絵里「うわあああああああ!!!!!!」ポロポロ


そんなの、私だって同じだ。

今日、亜里沙を学校へ行かせなければ―――

無理を言ってでも、亜里沙を休ませて、少しでも、ほんの少しでも、私が心のケアをしていれば―――

全部、私が悪いんじゃないか―――

私は、亜里沙の姉じゃないのか―――亜里沙の不安や恐怖を、悲しみを、痛みを、わかってあげられる立場にいたはずじゃないのか―――


私は、なんのために存在するのだ―――

その後、西木野総合病院の外科医の総力をもってして、亜里沙は一命をとりとめた。

落ちるときに左腕から落ちたみたいで、左腕は骨折。他にも、全身打撲が原因で出血が激しかったらしい。

危ない状況だったようだが、亜里沙の意識はある。コミュニケーションを取る分には問題はない。

最も、目は虚ろで、今日の朝のような空元気すらない状態ではあるけれど。

亜里沙「……おねえちゃん」

絵里「……なあに?亜里沙」

亜里沙「亜里沙……汚いの……?」

絵里「……っ!!?」

亜里沙「亜里沙、便器なの……?」ポロポロ

亜里沙「汚いから、誰からももう好きになってもらえないの……?」ポロポロ

絵里「そんなことない!!!」

絵里「そんなことない……あなたは私の妹で……かけがえのない存在で……」

絵里「汚いわけ……ないじゃない……」ポロポロ

亜里沙「………」

本当は、亜里沙を抱きしめたかった。

でも、亜里沙の怪我があまりにも大きすぎて、抱きしめることができない。

理事長「絢瀬さん、今日はここに泊まるのね?」

絵里「はい……亜里沙から、離れたくありません……」

理事長「……おやすみなさい。また明日、来るわね」

絵里「……ありがとうございます、理事長」

翌日、亜里沙は意識があるとはいえ、大怪我人であることは変わりはない。

しかし、障害が残るようなことはなく、順調にいけば半年後には完治するだろうとのことだった。

朝には、雪穂ちゃんや女の子の友達がお見舞いに来てくれた。

みんな泣いていた。心の底から亜里沙を心配してくれていたことがわかる。

亜里沙は、雪穂ちゃんや友達に笑顔を見せることはなく、昨日、私に問いかけた言葉をそのまま、雪穂ちゃんたちに問いかけた。

「亜里沙は汚いの―――?」って。

その言葉を聞いて、雪穂ちゃんが一層泣きだしてしまう。

私と同じだ。

そして、友達全員で亜里沙のことを「汚くない」「亜里沙は亜里沙」「大好き」というように言葉を投げかけるのだけれど、亜里沙の心には届いていないようだった。

元気のない「ありがとう」を返すので精一杯だった。

きっと、心の底で自分のことを否定しているのだろう。

できるだけ、亜里沙には前を向いて生きてもらいたい。

しかし、今は無理なのかもしれない……

私は、亜里沙の手を握ってあげることしかできない。

いつもなら、私と亜里沙、2人きりだと会話が弾むはずなのに、今日はそんなことはない。

これから先、亜里沙が笑えるようになるのだろうか。私が寄り添って、亜里沙を元気づけることができるのだろうか。

その行き場のない不安は、私の神経全てを支配する。

亜里沙が学校から飛び降りたのは、間違いなく私のせい。

それを心の奥底では認めているのだけれど、認めていたところで何も起こらない。

亜里沙がレイプされて、辛い思いをして、前を向こうとがんばっていた矢先、学校の男子から意地悪されたことは事実だからだ。

私に出来ることはないだろうか。

亜里沙に寄り添う以外で―――

昼過ぎには理事長がお見舞いに来てくれた。

仕事の方は学校長に任せているとのことで、私たちのために時間を作ってくれた。

理事長「そう……命には別条はないのね。そこだけは、よかった」

絵里「はい……」

理事長「ねえ、絢瀬さん」

理事長「亜里沙ちゃんが完全に安心したらでいいと思うんだけど、やっぱり私と一緒に警察に行かない?」

理事長「あの親子を法で裁いたとしても、この現状が打開できないことは確かだけど」

理事長「でも、それでも形のある報いがないと、亜里沙ちゃんはきっと安心できないわ」

絵里「………」

やっぱり、理事長は大人だ。

すごく視野の広い考えを持っている。

そうだ、全てはあのパワー系池沼が悪いんじゃないか。

あの醜いブタ男が亜里沙をレイプしなければ、亜里沙はこんなことにはならなかった。

養護学校の思い出を振り返り、私と談笑していただろう。雪穂ちゃんたちと、おいしいクレープ屋さんで美味しいクレープを食べていただろう。

亜里沙の笑顔が消えることは、なかっただろう。

絵里「ありがとうございます、理事長」

絵里「今日の放課後、雪穂ちゃんと友達が来てくれるみたいです」

絵里「その時に、亜里沙を雪穂ちゃんたちに任せて、警察に行きたいと思っています」

理事長「今日の放課後、ということね」

絵里「もし差し支えがなければ、理事長も来ていただけませんか。警察に訴える方法がよくわからなくて」

理事長「ええ。もちろんよ。放課後、また来るから、その時に連れて行きますね」

絵里「よろしくお願いします……」

亜里沙「………」

そして、そのまま放課後になり、駆け付けてくれた雪穂ちゃんと友達に亜里沙を見てもらい、私は理事長と共に音ノ木坂警察署を訪ねた。

受付のようなところで事情を説明すると、「少年課に相談するよう」に言われたので、その足で少年課へ向かった。

そこで警察に事情を全て説明しなくてはいけないのだけれど、なぜか私だけが少年課の一室に連れられた。

非常に狭い一室。ここが、刑事モノのドラマでよくある「事情聴取の場所」なのだろうか。

目の前にいる警察は、40代程度の男性。

どこか面倒そうに話を聞いている印象で、私の話に本気で耳を傾けているのか疑問が残る。

喋り方も、あまり好印象ではなかった。

私は、亜里沙が受けた一連の被害状況を説明し終えた。

警察「……なるほどねえ」

警察「つまり、妹さんは養護学校のボランティアで、パワー系池沼からレイプされたと、そういうことだね」

絵里「はい……」

警察「んー、難しいパターンなんだよね」

絵里「……どういう、ことですか?」

警察「だって相手は池沼でしょ……?」

絵里「……!?」

警察「しかも話を聴くと、その養護学校の生徒は未成年のようだし」

絵里「何が言いたいんですか……」

警察「被害届出しても仕方ないと思うよー」

絵里「………」

一瞬、この刑事が何を言っているかわからなかった。

「だって相手は池沼でしょ……?」

この発言は、相手が「池沼」だから法律で裁けないと言っているようなものだった。

そして、相手が「未成年」だから、責任も取らなくていい。

そう言っているのだろうか、この刑事は……

極めつけは「被害届を出しても仕方がない」ということ。

被害届が受理されないということだろうか。

いや、そんなことはない。被害届は原則として不受理は許されないはずだ。情報元がテレビなので、所詮付け焼刃の知識だが。そこだけはわかっていた。

私は被害届を出そうと思えば出せるはずだ。

でも、この刑事は被害届を出させようとしない。

つまり、「パワー系池沼を逮捕することが難しい」と言っているようなものだった。

絵里「……なんでですか!!」

絵里「私の妹は、強姦されたんですよ……!」

絵里「これは立派な犯罪であるはずです。いかに未成年だから、池沼だからって、そんなことは関係ないはずです!」

絵里「未成年だから逮捕できないというのなら、なんで少年課なんてものがあるんですか!!」

警察「そんなこと言ってもねぇ、池沼は自分の判断能力がないんだよ」

警察「だからどうせ逮捕しても無罪で釈放になるよ。相手に責任能力がないんだからね」

絵里「それはおかしいでしょう……!!亜里沙の人権はどうなるんですか!!」

警察「あのねぇ、日本では責任能力さえなかったら罪には問えないの」

警察「だいたいね、池沼なんかと関わるお宅の妹さんも悪いよ。犯してくださいって言ってるようなもんでしょ」

絵里「な……っ!!?」

警察「はいはい、話は終わり。さ、帰った帰った」

絵里「ふざけないで……!!私は被害届を出します!!」ポロポロ

警察「チッ……これ以上わめくと公務執行妨害で逮捕しますよ」

絵里「―――っ!!?」

警察「ほら、出てけよ、俺らも忙しいんだよ」

絵里「………」

その後、理事長に事の顛末を話し、担当した刑事の実名開示を求めたが、まともにとりあってはもらえず、結局、その刑事の名前すらわからなかった。

私は、ただひたすら泣いた。

私の悔しさが、亜里沙の無念が、わずか30分足らずで無下にされてしまったのだ。

相手が未成年だから。

相手が池沼だから。

責任能力がないから罪に問うことはできないから。

相手だって同じ人間、亜里沙だって同じ人間。

それなのに、私と亜里沙に「我慢しろ」といった。泣き寝入りしろといった。

警察のことを「腐っている」と言う人は多い。その理由が、はっきりとわかった。

もちろん、池沼を訴えることが難しいのが事実なのだとしたら、今回担当した刑事だけが悪いのではなく、根本的なシステム自体がおかしいのだろう。

「池沼は女の子をレイプしても許される」という認識自体が、間違っているんだ。

午後6時。

私は西木野総合病院の亜里沙の病室へ戻った。

理事長は私を送って、そのまま帰宅した。ことりにご飯を作ってあげるつもりとのことだ。

病室には、亜里沙だけしかいない。

亜里沙「……おかえり、お姉ちゃん」

絵里「ええ、ただいま。亜里沙」

気づけば、雪穂ちゃんから「今日はもう帰ります。明日また来ます」という旨のラインが来ている。どうやら、20分前に帰ったようだ。

しかし、亜里沙は雪穂や友達のことを何も言わない。

それほどまでに、亜里沙の心は病んでいる。

大好きな友達のことを話せないほど、亜里沙はまいっているのだろう。

絵里「亜里沙……」ナデナデ

亜里沙「………」

自分の無力さが恨めしい。

亜里沙がレイプに遭った日、亜里沙を支えると誓って、私はこの子に何をしてあげれた―――?

亜里沙と寄り添うこと自体は、誰だってできる。雪穂ちゃんや友達でもできたことだ。

でも私は、この子のおねえちゃんとして、それ以上のことをしてあげたい。いや、できるはずなのだ。

でも、できない。それどころか、この子を苦しめてばかりいる。

学校に行かせてしまったのも、私のせい。

池沼を逮捕してもらおうとしてうまくいかなかったのも、私のせい。

絵里「………」ナデナデ

誰でもできることのひとつである「亜里沙の頭を撫でること」。今はこれに徹することにした。

気持ちだけは誰にも負けていないと、自分に言い聞かせるように―――

そして、「この子の笑顔が一日でも早く戻るように」と願って―――

コンコン

絵里「………?」

ノックだ。

もう午後7時を回ろうとしている。こんな時間に誰だろう。

絵里「亜里沙、ちょっと出てくるわね」

亜里沙「………」コクン

本当は、ノックに応じる時間すらも勿体ないくらいだったが、こればかりは仕方がない。

亜里沙を心配して、お見舞いに来てくれた人かもしれないし、待たせるのはさすがに悪いだろう。

絵里「はい、今出ます」

ガチャ

絵里「あ……」

希「やっほ、エリチ」

海未「こんばんわ」

絵里「希……海未……」

亜里沙「!!?」

希「ずいぶんやつれてるね、エリチ……亜里沙ちゃん、大丈夫?」

海未「すみません……真姫から話を聞いて、いてもたってもいられず、来てしまいました」

絵里「そうだったの……」

私は真姫、いや、μ'sの誰にもこのことを話していない。おそらく、院長づたいで聞いたのだ。

あの真姫がこんなことを多人数にしゃべるとは考えにくいから、おそらく、私の親友の希と、亜里沙が慕っている海未にだけこのことを伝えたのだろう。

海未「亜里沙……」

亜里沙「う、海未さん……」ポロポロ

希「よかった、しゃべれるくらいには回復してるんやね、亜里沙ちゃん」

亜里沙「いや……見ないで……」ポロポロ

絵里「亜里沙……?」

亜里沙「見ないでください……海未さん……希さん……」ポロポロ

亜里沙は、かろうじて動く骨折していないほうの右手で、布団を持ち上げ、ゆっくりとぎこちない動きで潜り込んでしまった。

海未「亜里沙……話は聞きました。私たちはあなたの味方です!」

希「そうよ、亜里沙ちゃん、うちら、どうしても亜里沙ちゃんに一言声をかけたくて……」

亜里沙「いや……だって亜里沙……」

亜里沙「汚いんです……!」ポロポロ

亜里沙「男の人に犯されて……便器にされて……汚いんです……亜里沙……!」ポロポロ

海未「………」

絵里「亜里沙……」

希「エリチ、亜里沙ちゃん、ずっとこんな調子なん?」

絵里「……昨日、意識が回復して、全く同じことを言っていたわ……」ポロポロ

希「………」ギュッ

希が、私の隣で手を握ってくれる。

一番辛いのは亜里沙だ。でも、私も同様に辛い気持ちと、亜里沙に申し訳ない気持ちで、心が張り裂けそうだった。

それを見越しての行動だろう。

希は、そういう視野の広い思いやりを持っている人間だ。

亜里沙「今の亜里沙が、海未さんたちの目に入ったら……汚れちゃう……」ポロポロ

海未「……誰がそんなことを言ったのですか?」

亜里沙「………」ポロポロ

海未「………」

絵里「……海未、ごめんなさい」

海未「……もう少し、もう少しだけ、亜里沙と話をさせてください」

希「………」

亜里沙「……グスッ……ヒッグ……」ポロポロ

海未が、そっと亜里沙に近づく。亜里沙は布団を被っているから、海未の姿は見えない。海未にも見えない。

でも、気配は感じているのだろう。時折、布団越しの亜里沙が小さく動いていたから、きっと布団を抑えたんだろう。

本当なら抑える気力も、体力もないはず。ないはずなのに、顔を隠す行動をやめない。

それほどまでに、亜里沙が自分自身のことを「汚い」と思っている証明だった。

海未「亜里沙、そのままでいいから、私の話を聞いてください」

亜里沙「………」ポロポロ

海未は、優しく亜里沙に問いかける。

そして、亜里沙が寝ているベットの真ん前で正座をした。

布団越しで、亜里沙からは海未がどこにいるかはわからないはずだが、海未の声が近くなったことを、亜里沙自身もわかっているはずだ。

私は、そんな2人を見守ることにした。

本当なら、亜里沙の気持ちを汲んで、海未と希に精一杯の謝罪と感謝を私から伝えて、帰ってもらったほうがいいのかもしれない。

でも、海未と希が亜里沙を心配する気持ちだって、間違いなく本物だ。

だから、私は海未を止めなかった。亜里沙に、海未の話を聞いてもらうことにした。

海未「この話を聞くと、あなたは私を軽蔑するかもしれません」

海未「「亜里沙の知っている海未さんはそんな人じゃない!」って、ショックを受けるかもしれません」

海未「それでも、あなたにこの話を聞いていただきたいんです」

海未「この話が、亜里沙にとって一番大切なものだと、私は思っています」

亜里沙「………」

海未の背中は、いつもよりも大きく見えた。

元々頼りになる女の子だったけれど、今の海未は、さらに芯の強い女の子であるように感じた。

私と希からは海未の背中しか見えないが、きっと、決意を秘めた、強い表情をしているのだろう。

海未の背中が小さく伸び、そして縮む。おそらく、深呼吸をしたのだろう。


海未「亜里沙……私は……」

海未「今までの人生で、100人弱の男性と性行為を行っています」


絵里「!!?」

亜里沙「!!?」

希「………」

絵里「え……海未……?え……?」

希「………」

今、海未はなんて言った……?

100人弱の男性と性行為をしている……?

亜里沙の身体が少しだけ動いた。きっと、亜里沙も私と同じ気持ちなんだろう。

海未は布団越しの亜里沙を見て、続ける。

海未「私は、100人弱の男性と性行為を今日まで続けてきて、今日まで変わらない私なりの考えを持っていました」

海未「セックスは最高、おちんぽこそ至高、と」

絵里「ちょ、ちょっと海未……!一体何を……!?」

希「……エリチ」ギュッ

絵里「希……?」

希「海未ちゃんを、信じるんや……!」

絵里「で、でも……」

海未が何を伝えたいか、全くわからない。

海未はまだ高校二年生。それなのに、100人弱の男性とセックスをしていることが本当なら、ただのビッチだ。

そのことを例えば、「μ'sのお泊り会」などで暴露するのならまだギリギリではあるが理解はできる。

でも、今は状況が全く違う。

海未は、自分がビッチであることを、言い換えるならば「海未ビッチ」であることを、レイプされた亜里沙に伝えている。

その意図が、全くわからない。

しかし―――

希「カードがうちに告げてるんよ、根拠は全くない」

希「なんでかわからんけど、海未ちゃんのビッチさが、亜里沙ちゃんを救うカギになっているような気がするんよ……」

絵里「そんな……そんなわけ……!!」

例え海未が本当に海未ビッチで、いかにセックスが素晴らしいものだと思っていたとしても、それは今の亜里沙に必要な情報なのだろうか。

私にはとてもそうには思えない。むしろ、亜里沙の傷を深くしてしまうだけなのではないだろうか。

海未「いいですか、亜里沙、そのままでいいから、聞き続けてください」

海未「セックスは、人間の三大欲求である「食欲」「睡眠欲」「性欲」のうち「性欲」に分類される行動です」

海未「そして、その「性欲」は、本来なら誰しもが持っているもの。私の場合はそれが顕著に現れていました」

亜里沙「………」プルプル

布団越しではあるが、亜里沙が震えているのがわかる。

絵里「海未……!本当に何を言い出すの!!?」

海未は、私の問いかけに応えない。

しかし、先ほどと変わらない背中が「大丈夫です」と応えている気がした。

もちろん、何が大丈夫なのかはさっぱりわからないわけだが……

海未「毎日毎日、穂乃果やことり、μ'sのみなさんに隠れてこっそり、中学時代の同級生や先輩後輩、道場の方々、果てはそのへんにいたおじさんと中田氏セックスに明け暮れる日々に、私は「充実感」を感じています」

海未「もちろん、アイドルとしては許されない行為です。私が、海未ビッチだということは、μ'sのみなさんにとっては、裏切りに近い行為なのかもしれません」

海未「でも、私は今の生活に満足しています。なぜか、わかりますか……?」

亜里沙「………」

海未「セックスという行為自体が、「おかしなもの」ではないからです」

亜里沙「………」

亜里沙の身体が、震えなくなったようだ。

海未「亜里沙、あなたは先ほど自分のことを「汚い」と言いました」

海未「私には、とてもそうには思えません」

海未「あなたが経験したその行為が、あなたの望まないものだったとしても、です」

海未「なぜなら、レイプだって、一種の「セックス」なのだから」

海未「レイプだけではない、和姦、青姦、輪姦、イチャイチャ、SMプレイ、アナルファック、首絞め、死姦、ヘマトフィリア……」

海未「私は、全てのセックスが「穢れではない」と声高らかに尊重することができます」

海未「所詮、その中のひとつである「レイプ」を経験した亜里沙が、汚いと思えるはずがありません。誰がそんなことを言ったのかはわかりませんが、それは絶対に間違っています……」ポロポロ

海未「あなたは、人間として正しい行為を強要されただけなんです……!なぜ、そんなあなたが汚くなるんですか……!なぜ、そんなあなたのことを便器と罵ることができるのでしょうか……!」ポロポロ

海未「あなたが便器なら……私なんか……海未ビッチじゃないですか……!」ポロポロ

亜里沙「………」

絵里「………」

希「………」

海未「亜里沙……あなたに聞きます」

海未「今の話を聞いて、私のことを「汚い」と思いましたか……?」

亜里沙「………」

亜里沙は答えない。

でも、身体は震えている―――

私が亜里沙の立場なら、間違いなく「汚い」と返答するだろう。

それをしないのは、亜里沙の優しさなのだろうか……

海未「もし、私のことを「汚い」と思うのなら、「私は海未さんよりマシな人間だ」と思ってください」

海未「あなたより、私のほうが汚い人間であるはずです。私は、最大8人同時の乱交プレイをしたことだってあります」

海未「もし、私のことを「汚くない」と思ったんなら、私よりも明らかに性経験の少ないあなたが、汚いわけがありません……!」

海未「その場合、あなたもわかっているのでしょう。人間の価値が、セックスなんかでは測ることができないということを」ポロポロ

亜里沙「………」ポロポロ

亜里沙「……グスッ」ポロポロ

絵里「亜里沙……」

絵里「ねえ、海未、もういいでしょう……!」

絵里「なんなのよ……今の話は……!」ギリッ

希「エリチ……待って!!」

絵里「待たないわよ……ふざけないで……!亜里沙は、レイプされて傷ついているのよ……!」

絵里「それが、レイプされて傷ついている子に対する言葉なのっ!!!?」

希「亜里沙ちゃん、見て……?」

絵里「え……」

亜里沙の動きが小さすぎて、遠目からはわからなかった。

亜里沙は、顔を出そうとしている。布団から、顔を出そうとしているのだ。

海未「亜里沙……」

亜里沙「………」

ぎこちない動きのせいで、亜里沙は布団から出ることができない。でも、懸命に、全身の痛みをこらえながら、必死に顔を出そうとしていた―――

亜里沙「……海未さん」ポロポロ

亜里沙の顔が半分出てくる。亜里沙は泣いていた。

ひどい顔だった。涙はもちろんのこと、鼻水まで出ている。

亜里沙「海未さん……もう一度、もう一度でいいから、言ってください……」

亜里沙「亜里沙は……亜里沙は……汚くないんですか……」ポロポロ

亜里沙は、声を震わせながら、海未に問いかける。

涙いっぱいの蒼い瞳は、海未の顔をしっかりと捉えている。

海未は、亜里沙の問いかけに、こう答えた。


「汚くありません。亜里沙は亜里沙です」……と―――

亜里沙「……海未さん……ヒッグ……」ポロポロ

亜里沙「海未さん……海未さん……!」ポロポロ

亜里沙「うわあああ……!」ポロポロ

身体が痛むのか、亜里沙は小さな声で、泣いた。

泣き叫ぶような声ではないが、亜里沙からは「泣き叫びたい」という気持ちが伝わる。きっと、身体中が痛くてうまく泣き声を出せないのだ。

海未「亜里沙……あなたは……亜里沙です……園田海未を慕ってくれた、μ'sを好きになってくれた、絢瀬亜里沙です……!」ポロポロ

海未「そんな亜里沙のことを、汚いなんて……思ったことはありません!!」

亜里沙「海未さん……!ごめんなさい……ごめんなさい……!」ポロポロ

絵里「………」

海未が何を言いたいかさっぱりわからないまま、謎の感動が病室を支配する。

海未も亜里沙も泣いている。亜里沙の涙は、池沼にレイプされたことを悔いる涙でも、同級生の男子から汚いと罵られたことに対する辛さを表わす涙でもない。

ある種の安心を示す涙だ。

声には出していないとはいえ、大泣きしている。その零れ落ちる大量の雫と一緒に、亜里沙の不安も落ちていくようだった。

希「……結果オーライやね、エリチ」

絵里「………」

亜里沙が安心してくれたことは嬉しい。

海未を聞いたとしても、亜里沙の状況が変わるわけでもないのに、それでも亜里沙は泣き続けている。

海未に、自分を否定したことへの謝罪と、時折感謝の言葉を、小さな声で呟いていた。海未も、それに応えている。

でも、すごく複雑だ。心がモヤモヤする。

このモヤモヤの原因はわかっている。

「なぜ、海未が亜里沙を安心させることができて、私にはできなかったか」を考えているからだ。

本来なら、私が「海未」であるべきだ。私は、亜里沙のおねえちゃんだから。

だけど、亜里沙を支える役割までも、海未に、いや、海未ビッチに取られてしまったように感じてしまう。

亜里沙に、声をかけようか、それとも、ただただ見守っていようか。

心情としては、今すぐこの場を離れたかった。

でも、それをしてしまったら、私は本当に亜里沙のおねえちゃんではなくなってしまう気がする。

亜里沙が安心した事実自体を否定してしまうのだから。

行き場のなくなった私は、亜里沙の元へ歩み寄ることにした。

安堵の涙を流している亜里沙。それに釣られるように泣いている海未。

私は、亜里沙の頭を撫でた。

亜里沙は優しいから、私の手を受け入れてくれる。不甲斐ないおねえちゃんのてのひらを、受け入れてくれる。

いや、受け入れてくれているだけではない。亜里沙が、私に何かを言いたげだ。

亜里沙「おねえちゃん……ごめんなさい……!」ポロポロ

亜里沙「心配ばっかりかけて……ごめんなさい……!」ポロポロ

亜里沙「……あんなことで……飛び降りちゃって……!ごめんなさい……!」ポロポロ

絵里「………」

あんなこと、か。

亜里沙の言う「あんなこと」とは、「池沼にレイプされて、そのことをからかわれた男子の言葉に傷ついたこと」のことだろう。

でも、その要因は、海未が大したことではないと証明してくれた。最も、私にとっては「だからなに?」といったような感想しかないわけだが。

今の亜里沙にとっては、その不安は拭われた。だから、「あんなこと」なのだ。

いつも前を向いている亜里沙が、此処に戻ってきてくれた証明でもある。

絵里「……いいのよ、亜里沙」

絵里「辛かったわね……」ナデナデ

亜里沙「……おねえちゃん……!」ポロポロ

海未「す、すみません、絵里……亜里沙を慰めることとはいえ、このような卑猥なことを唐突に言ってしまい……」ポロポロ

絵里「いいのよ、海未。ありがとう」

海未「絵里……亜里沙ぁ……」ポロポロ

海未の流している涙は、もはや貰い泣きだ。

でも、私がその涙を貰うことはできなかった。

亜里沙が元に戻ってくれたのに―――

あれから、30分。

心は元気になった亜里沙。しかし、当然のことながら身体はまだ全くといっていいほど動かない。

そんな亜里沙と、今日一日語り合いたいといって、海未は今日、病室へ泊ることにしてくれた。希も一緒だ。

本来の海未なら、「迷惑になります」といって帰るところだろう。でも、今日の海未は違った。それほどまでに、亜里沙とたくさん話をしたいのだ。

だが、肝心のその話の内容は……


海未「ある日、私が早朝ランニングをしていたときですが、公園で初々しい高校生カップルがセックスをしているのを見かけました」

海未「セックスをしている女子高生のほうの腰使いがあまりにもお粗末だったので、私はこう言ったんです」

海未「『やる気はあるんですか!!!今すぐ私に変わってください!!!』と」

亜里沙「わぁ……!さすが海未さん!かっこいいです……!」

亜里沙はあまり大きな声を出せないから、感情表現だけで、海未の会話についていこうとしていた。

その姿は本来なら痛々しいものだろうが、海未は亜里沙への話を止めない。亜里沙も、話が終わることを望んではいない。

海未「私は、無理やり高校生カップルのセックスに乱入し、園田流道場秘伝のおまんこダンスを、その男性にまたがり、披露しました」

海未「こう……ほっ♥ほっっ♥うほぉおお♥」カクカクカクカク

海未「ってね……!」ドヤァ

亜里沙「そのダンス、亜里沙が動けるようになったら教えてください……!」

海未「ええ、もちろんですよ」ニコッ

亜里沙「わーい!」パァア

絵里「………」

希「どうしたん?エリチ、疲れてる?」

絵里「希……いいえ、私は大丈夫よ」

希「んー、なんとなく心ここにあらず、って感じよ?」

絵里「そうかしら……」

心ここにあらず……その通りだ。

なぜ、亜里沙を慰め、元気づける立場が、私ではなく海未ビッチなのか、ずっと考えていたからだ。

私と希は、海未と亜里沙の猥談をBGMに、自動販売機で購入した紅茶と希が持ってきてくれたきのこの山をつまんでいた。

私はたけのこ派なので、このお菓子を見た瞬間希の味覚障害を疑ったが、きのこの山も食べてみると案外悪くはない。

海未「そして、私のおまんこダンスを披露して10秒後、彼は射精しながら潮を吹き、失神したんです。10秒ですよ!?すごくないですか!?」

亜里沙「すごいです!海未さん!」

海未「あまりの腰遣いに感動したんでしょうね。彼女の方なんか、涙を流していましたよ」ドヤァ

彼女からしたら、突如現れた謎のビッチ女に彼氏を絶頂させられて、悔しいことこの上なかっただろう。

きっと、そのカップルはもう別れている。これは賭けてもいい。

希「亜里沙ちゃん、元気でたね」

絵里「……ええ」

絵里「ねえ、希」

希「んー?」

絵里「私は、何か、亜里沙にしてやれたのかしら」

絵里「辛くて、悲しくて、自分を否定するしかなかった亜里沙に、何か、してあげることができたのかしら」

希「………」

希「できてたと思うよ」

絵里「……例えば?」

希「優しさを、あげることができたやん」

希「家族の暖かみを、何があっても味方してくれるエリチの優しさを、亜里沙ちゃんに伝えることができたやん」

絵里「………」

それは、その通りだと思う。

私は、精一杯亜里沙に寄り添ったつもりだし、何度も頭を撫でた。

でも、それは、私でなくてもできたのではないだろうか。

例えば、今亜里沙の目の前にいる海未は、間違いなく亜里沙を元気づけた張本人だ。私以上の功績だろう。

海未は、私よりも亜里沙を支えることができている。

絵里「今日ね……警察へ行ってきたの、理事長と一緒に」

希「……うん」

絵里「そしたらね、「池沼の犯行だから責任能力がない」といって、門前払いだった」

絵里「すごく……悔しかった……」

希「………」

絵里「亜里沙が受けた悲しみも、辛さも、絶望も、私が一番近くにいたから、私が一番わかっているつもりだった」

絵里「でも、私では、警察の人を納得させることができなくて―――」

絵里「いま、亜里沙の隣にいる海未なら……警察にもっと上手に気持ちを伝えることができたんじゃないかなって思って―――」

絵里「そもそも……亜里沙をあんな目に遭わせたパワー系池沼や、その母親に亜里沙の絶望を伝えることすら、できなくて―――!」

絵里「亜里沙が学校から飛び降りたのだって……!私が亜里沙を学校へ行かせず、休ませておけば、絶対に起こらなかったのに―――!」

絵里「だから……私は……」

絵里「私は、亜里沙の形だけのおねえちゃんじゃないのかって」

絵里「何もしてあげることができない、亜里沙を元気づけることもできない、亜里沙を支えてあげられない、最低なおねえちゃんなんじゃないかって……」

泣くわけにはいかない。亜里沙を心配させてしまう。

だから、私は希にだけ聞こえる小さな声で、気持ちをぶつけた。

希「……そんなこと、ないよ」

絵里「………」

希なら、そう言うに決まっている。あなたは、優しいのだから。

希「亜里沙ちゃん、エリチが隣にいて、ずっと励ましてくれたこと、エリチも無念に思ってくれていること、絶対に気づいてるよ」

希「だって、さっき亜里沙ちゃん、エリチに謝ってたやん」

絵里「………」

希「確かに、自分自身が汚いからといって自分を否定して、顔を見せてくれなかった亜里沙ちゃんをあそこまで持ち直したのは、園田さんのおかげや」

希「でもそれは、たまたまやん?」

希「たまたま園田さんが、亜里沙ちゃんの不安を取り除くだけの話をすることができた、それだけやん?」

希「エリチがもし、絵里ビッチだった場合は、エリチでもできたことやと思うで」

希「たまたま園田さんが持っていただけや」

絵里「………」

絵里「……ダメよ、私なんか」

絵里「私だって、亜里沙に「あなたは汚くない」って言ったわよ……」

絵里「でも、亜里沙は前を向いてくれなくて、私も、何を言えばいいかわからなくなって……頭を撫でるしかなかったのよ……」

希「………」

絵里「このまま海未が来てくれなかったら……ずっと、亜里沙はあのままだったかもしれない……!」

絵里「そう思うと、悔しくて―――」

絵里「こんなこと思うべきじゃない、亜里沙が前を向いてくれたことを喜ぶべきなのに―――」

希「エリチ……」ギュッ

絵里「希……」

希「少し、疲れてるんよ、エリチは……」

希「亜里沙ちゃんも大変だったけど、それはエリチだって同じや」

希「今日は少し休み?」

希「もし、休んでも、自分が亜里沙ちゃんのおねえちゃんとして失格だと思うんなら……」

希「これから先、また頑張ればええやん?」

絵里「………」ギュッ

希「亜里沙ちゃんは、間違いなくエリチを必要としている。こんなん、カードを使わなくてもわかる」

暖かい。

これが、母性というものだろう。

この母性も、私は持っていない。

本当に、私はダメなおねえちゃんだ。

足りない物ばかりで、人に助けられてばかりで、肝心なときに、何もできない、ポンコツだ。

でも、希の言うことは、客観的に見ても一理ある。

私だって疲れているし、亜里沙が私のことを「必要ない姉」だと感じていることも、ないはずだ。

今は、海未のほうが頼りになる存在なのかもしれないが、私のことも、慕ってくれているはずだ。

わかりきっていることだ。でも、どうしても不安になってしまうのだ。

希は「また頑張ればいい」と言ってくれている。

その通りだろう。

今の自分が至らないと感じるのなら、至らない部分を改善し、次のステップに進めばいい。μ'sのダンス指導で、いつも私が言っていることだった。

ただ―――


私が亜里沙のおねえちゃんとして、何をすればいいか―――


わからないことも、事実だった―――


今日はもう寝よう。

そして、明日考えよう。

続く

1 名前:名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@無断転載は禁止 [sage] :2017/03/11(土) 00:24:27.16 ID:DV9Bek1G
アニメ本編とは別時空です
>>2
梨子「はぁ…転校して来た途端変な人に絡まれるし付いてないな…私…」

曜「ん?あっ、転校生の子だ♪」

梨子「あ、どうも」ペコリ

曜「千歌ちゃんに追いかけられてばっかりで大変そうだね」アハハ

梨子「千歌ちゃん…あぁ、うん…そうですね…」

曜「んーと…同い年だからタメ口でいいよ?」

梨子「そっか、じゃあそうするね
えーっと…」

曜「あっ、私?私は渡辺曜!曜でも曜ちゃんでも好きに呼んでね♪」

梨子「ふふっ、じゃあ曜ちゃんて呼ぼうかしら」

曜「了解♪じゃあ私は梨子ちゃんって呼ぶね!」

曜「でねでね!」

ルビィ「はは…(本当に日が暮れちゃった)」

曜「あれ、暗くなってきちゃったね」

ルビィ「うん、そろそろルビィも元の場所へ帰るね」

曜「えっ待って!」

曜「舟、乗ってよ!誰もいない静かな空に眺める星空…本当に綺麗だから一度見てほしいんだ。お願い、あともう少しだけ付き合って!」

ルビィ「…!うん!」

ルビィ『舟が行くよ』

理亞『了解!海に出た1分後に奇襲かけるから!』

ルビィ(ああ…始まっちゃうんだ。魔女狩りが…)

理亞『〈舟釣り〉が人魚と呼ばれる所以は独特な魔法の使い方にある』

理亞『水中に溶けている元素を分解して酸素や窒素を取り出して呼吸、潜水を行うことからまるで魚のように自在に海を泳ぐの。水中に逃げられたら厄介だからなるべく陸へ誘導させて』

ルビィ『了解です!』

曜「んっ?どうしたのー?」

ルビィ「ああ、ちょっとね…」

>>10
>理事長に言われるがまま、亜里沙の手を取り、その場を離れた。

>そして、「事務室」へ逃げ込んだ。


>あの醜くブクブク太った身体、そして、醜悪な顔立ち。

>まさに「池沼」そのものだった。

>絵里(まさか……)

>絵里(亜里沙はあんな男に犯されたっていうの……?)ポロポロ

>亜里沙「うぅ……おねえちゃん……」ポロポロ

>理事長「失礼します。絢瀬さん……?」

>絵里「!!?理事長!!」

>理事長「ごめんなさいね、びっくりさせちゃって……亜里沙ちゃん、平気?」

>絵里「はい。まだ少し震えているけど、なんとか大丈夫です。ね、亜里沙」

>亜里沙「うぅ……はい……」ポロポロ

>絵里「あの、まさか……さっきの男が亜里沙を……」

>理事長「………」

>絵里「亜里沙……」ギュッ

>理事長「あの男子生徒の保護者と話しがもつれていて……ごめんなさい、絢瀬さん。一緒に来てくれないかしら」

>理事長「亜里沙ちゃんは、ここに身を置かせてもらって、あの男子生徒に見つからないように手配してくれたから」

>絵里「………」

>絵里「……わかりました」
リ´・-・) あーもっぺん穂乃果の時代こねえかなぁ ほの18

216 名前:名無しで叶える物語(たこやき)(ワッチョイ 27f7-zmX4) :2018/09/08(土) 18:25:49.11 ID:Ut5ZcKC/0
特に問題がなければほのうしに適当な名前付けてLINEスタンプで出そうと思ってる

>>16
>理事長「私としては、今、加害者も加害者の母親もいる今この状況で、警察を呼ぶべきだと思っていますが……」


>バァアアアアアアアン!!!!

>理事長「!!?」

>絵里「!!!?」

>事務員「た、大変です!!!たかし君が!!!たかし君が!!!」

>絵里「!!!?」

>理事長「ま、まさか、さっきの男子生徒が……!」

>絵里「亜里沙っ!!!!」

>私は、亜里沙のいる事務室へ走った。


>事務室

>(^q^)「ありさちゃ!!!!!ありさちゃ!!!!!」ハァハァハァハァ

>そこには、巨体を思う存分に揺らしながら亜里沙を探し回る池沼の姿が……!

>驚くことに、ズボンとパンツを履いていなかった。ちんこ丸出しである。

>そんな状態で亜里沙を探しているわけだ。彼が考えていることはひとつである。

>絵里(亜里沙を……また犯そうとしている……!!)

>絵里「こら!!!!やめなさい!!!!」

>(^q^)「ありざちゃ!!!!ありざちゃ!!!!!」シコシコシコシコ

>>26
>ちょっと前の亜里沙の教室―――


>雪穂「亜里沙……その、気にしちゃだめだよ……」

>亜里沙「うん!全然平気!命を取られたわけじゃないもん!」

>女子1「亜里沙は強い子だね、そこが亜里沙のいいところだよ」

>女子2「ねぇ、今日どこかへ寄って帰ろうよ!」

>雪穂「いいね。この間亜里沙と行ったクレープ屋さん、みんなで行こうよ!」

>亜里沙「ハラショー!いいね!行こう行こう!」


>ガラガラ

>男子1「おーっす」

>男子2「おーーーっと!!?そこにいるのは池沼とファックした亜里沙ちゃんじゃないですかああああああ!!!!!」

>亜里沙「!!!?」

>雪穂「………!!ちょっと!!!あんた、何言ってんの!!?」

>男子1「ぎゃははははははwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあれマジだったのかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

>男子2「マジマジ!!俺昨日絢瀬と同じボランティアだったから一部始終ばっちりwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

>女子1「ちょっと、本当ふざけないでよ!!なんで本人の前でそんなこと言えるの!?」

>男子1「だってよぉ、汚ぇじゃん、レイプ被害者が教室にいるなんてさwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

>亜里沙「―――っ!?」

>>34
>警察「んー、難しいパターンなんだよね」

>絵里「……どういう、ことですか?」

>警察「だって相手は池沼でしょ……?」

>絵里「……!?」

>警察「しかも話を聴くと、その養護学校の生徒は未成年のようだし」

>絵里「何が言いたいんですか……」

>警察「被害届出しても仕方ないと思うよー」

>絵里「………」

>一瞬、この刑事が何を言っているかわからなかった。

>「だって相手は池沼でしょ……?」

>この発言は、相手が「池沼」だから法律で裁けないと言っているようなものだった。

>そして、相手が「未成年」だから、責任も取らなくていい。

>そう言っているのだろうか、この刑事は……

>>42
>亜里沙「今の亜里沙が、海未さんたちの目に入ったら……汚れちゃう……」ポロポロ

>海未「……誰がそんなことを言ったのですか?」

>亜里沙「………」ポロポロ

>海未「………」

>絵里「……海未、ごめんなさい」

>海未「……もう少し、もう少しだけ、亜里沙と話をさせてください」

>希「………」

>亜里沙「……グスッ……ヒッグ……」ポロポロ

>海未が、そっと亜里沙に近づく。亜里沙は布団を被っているから、海未の姿は見えない。海未にも見えない。

>でも、気配は感じているのだろう。時折、布団越しの亜里沙が小さく動いていたから、きっと布団を抑えたんだろう。

>本当なら抑える気力も、体力もないはず。ないはずなのに、顔を隠す行動をやめない。

>それほどまでに、亜里沙が自分自身のことを「汚い」と思っている証明だった。

>>53
>本来なら、私が「海未」であるべきだ。私は、亜里沙のおねえちゃんだから。

>だけど、亜里沙を支える役割までも、海未に、いや、海未ビッチに取られてしまったように感じてしまう。

>亜里沙に、声をかけようか、それとも、ただただ見守っていようか。

>心情としては、今すぐこの場を離れたかった。

>でも、それをしてしまったら、私は本当に亜里沙のおねえちゃんではなくなってしまう気がする。

>亜里沙が安心した事実自体を否定してしまうのだから。

>行き場のなくなった私は、亜里沙の元へ歩み寄ることにした。

>安堵の涙を流している亜里沙。それに釣られるように泣いている海未。

>私は、亜里沙の頭を撫でた。

>亜里沙は優しいから、私の手を受け入れてくれる。不甲斐ないおねえちゃんのてのひらを、受け入れてくれる。

>いや、受け入れてくれているだけではない。亜里沙が、私に何かを言いたげだ。

>亜里沙「おねえちゃん……ごめんなさい……!」ポロポロ

>亜里沙「心配ばっかりかけて……ごめんなさい……!」ポロポロ

>亜里沙「……あんなことで……飛び降りちゃって……!ごめんなさい……!」ポロポロ

>絵里「………」

>あんなこと、か。

高校の時池沼の養護学校にボランティアにいったんだが、
水泳の時間に池沼が女の子押し倒して腰カクカク。
俺たちの唖然、5秒くらいでTさんが取り押さえる
(^q^)のああああああああああ!!!
って言って離されて、Tさんに消し飛ばされた
それで女の子泣きながら外にあるシャワー行って洗おうとしたら
見学に着てた70くらいの池沼母が日傘で女の子をボコボコにしようとしたが
すかさずTさんが日傘をガシリと掴んで握り潰した
母「うちの池沼ちゃんの精子がそんなに汚いっていうの!?
うちの池沼ちゃんの精子がそんなに汚いっていうの!?」
Tさん「基本的に誰のだって汚いだろ、破ぁぁぁっ!!」

粉微塵になって消し飛ぶ池沼母

寺生まれって本当に凄い、改めてそう思った

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