ミナミの帝王 棋士の魂 (32)

ちょっと言葉が変なのはお許しを。
あと少し気分悪くされるかも。

大阪・ミナミ萬田事務所
「それじゃ萬田クン今回の分ね」

「はい、毎度あり」

「兄貴ただいま帰りました」

「これが噂の舎弟クンかぁ、気合い入っているねぇ…それじゃ10日後のこの時間かな、こっちに来る用事があるから、またね今度は一緒に人妻でもナンパしようよ。ナンバでナンパってね…ほなご機嫌よう」がちゃり

「兄貴、あのジジイ誰でっか?」

「ああ、会長や」

「へぇ、けったいな会長ですな」
複雑な駒組をした盤面の将棋盤だが萬田の玉は詰んでいる

「兄貴、あの会長と将棋してはったんですか?あれ、珍しい兄貴の負けやないですか?」

「そりゃ会長やからな」

「会長やと将棋強いんでっか?兄貴」

「日本将棋協会の会長やからな」

「へぇって、それ凄いんですか?」

「あの羽流さんがおる組織で、あの人も若い頃はタイトルぎょうさん取って、名人にもなった人や」

「へぇ…そんな人には見えませんでしたけどな。そんな人が何しに来はりました?」

「お前にはアノ凄さ分からんか…まあそりゃ、うちの事務所に来るんやからカネでんがな」

「会長はん、借金でっか?どえらい額とか?」

「ゴセンや」

「ゴセン万でっか…10日置きに500万でっか」

「ちゃうわ。ただのゴセンや」

「へ?ゴセン円って樋口さんでっか?」

「そうや」

「んなもん、会長はんなら直ぐに返せまっしゃろ」

「まあ十年近くジャンプのままや。まあ半分は遊び相手と息抜きかな、あとなんやかんや人間の繋がりやろな」
「へぇ、けったいな会長でんな」


米川さん、アンタ会長になる前からも、なってからも偉い人や思われて損得抜きに付き合える友達がおらんのかもしれませんなあ。
まあ、ワイくらいやったら何時でも遊び相手になりますわ。

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~~回想約10年前~~
百駄ヶ谷将棋館
「はいちょっとゴメンやっし」

「すみません、どちら様でしょうか?こちらより先は関係者様以外は入室禁止です」

「ワシも仕事やから、はいそうですかと帰られへんのや。後川っちゅう奨励会員がおるやろ?そいつに用があるんや」

「仮に後川がおりましてもアポの無い方は駄目です。対局中でしたら尚更お引き渡し出来ません」

「ほうテンゴ言いまんやな?でしたら100万はオタクが払ってくれるんか?」

「100万?」…

「どうしたの受付先で、お兄さんも大きな声出しちゃ駄目だよ、もう少し落ち着いて」

(このジジイやり手やな)(この、兄さんは本物だなあ)

「ここは私が受けるからね。後川は私の門下だよ。何か粗相したかね?」

「へぇ。後川さんがホステスに入れ込んでワシから100万借りましたんや。それを返す日になっても返させんので確実におる奨励会の定例日に来たんですわ」

「事務員さん、後川呼んできて。時間切れ?そんなもん関係なく負けで良いよ」

「萬田クンと言ったかな?とりあえず会議室へ」

会議室
「後川クン、お金借りたの?」

「米川先生すみません」

「借りたの?」

「はい、借りました」
「いくら?」

「100万です」

「水商売の女に?」

「はい、すみません」
「良いオンナだった?」

「少なくともボクは好きでした」

「ヤったの?」

「いえ…」

「なんで?」

「ホステスを辞めてたんです」

「情けないねぇ…いつも言ってるだろ?オンナにさせて下さいと頼む内は二流。オンナからさせて下さいと言わせなきゃ。100万もあれば、友達三人くらい呼ばせて楽しめただろうに情けないねぇ。愛人の1人も作れなかったのかい?」

萬田(なんちゅうジジイや…)

「萬田クンだね?それじゃ100万円渡すよこれで良いかな?
あ、後川クンは今日で破門ね。奨励会も辞めなさい」
「先生…」

「100万で愛人作れないヤツはプロ棋士になれないよ」

「分かりました…」

「じゃ出ていって。後の手続きはボクがやるから」

「はい…」去ろうとする

「後川…」

「はい」

「お前が必死なら、アマチュアからでもプロにはなれる。その時は師匠役だけはしてやるからな」

「し、失礼します」

……

……
「さてと、キミがミナミの萬田クンかあ。わざわざ千駄ヶ谷までねぇ。顔を気にする鬼というわけだ」

「いや、天下の米川先生に知っていただくほどのもんじゃありませんわ」

「なんだ、ボクを知ってるの?」

「そりゃ天下の米川先生でっせ」

「キミは金貸しだよね?もう現役も終わりで儲けも少ない老人が貸してくれって言ったらいくら都合つく」

「天下の米川先生なら上限いっぱいまで貸しまっせ」

「それじゃゴセンお願いして良いかな?」

「ゴセン万でっか?」
「いや、ゴセン。新渡戸、ゴセン円だよ」

「へい分かりました。では10日に1割になります」

「うん分かったよ。申し訳無いが仕事柄10日きっちりというわけにもいかないんだ。早かったり遅かったりするかもしれないけど、10日に一回は関西に行くからその際に事務所によらせてよ」

「10日後に1割でジャンプでも全額でも」

「良い様にさせてもらうよ」

~~~

掲載拒否云々は最後に

~~現在~~
「おい竜一」

「へい兄貴」

「これから新幹線で東京やワレもついてこい」

「へい。兄貴、目的はなんでっか?」

「金主の藤澤保社長に挨拶と百駄ヶ谷の将棋館や」

「あの会長、とうとうゴセン円返せへん様になりましたんか?」

「いや、病気でな、あまり遠出したくないそうや」

「毎度の五百円の為でっか?」

「ど阿呆!米川会長に飛車落ちで月三回指していただいて五百円もらうなんて知らん人が聞いたら卒倒するで。ワイはもうゴセン円なんてもう回収する気はあらへんのや。もう人間的な繋がりしかあらへん」

「あんな下ネタジイサンが凄い人にはワシには見えませんわ」

「それはお前が足らんからや…ほな行くで竜一」

~~百駄ヶ谷~~

「米川先生お久しぶりやす」

「おうおう萬田クン。わざわざ済まんね」
(会長痩せはりましたなあ。髪の艶も落ちて…けど眼光の鋭さは変わりませんなあ)

「申し訳ないね。アソコのガンでね。やっぱり体力落ちちゃって。でもね、この前は人妻と出来たんだよ。嬉しいねぇ」

「御変わり無い様で、少し痩せはったんちゃいまっか?」

「頑張り過ぎたかね?おうおう舎弟クンも付き添いかい?相変わらず気合い入ってるねぇ。ボクももう少し若かったらやって見ようかな?そういえばね若手棋士の1人が似た様な髪型に紫の特攻服着てね対局したんだよ。しかも天下のMHKで。しかも負けてるんだから世話無いよね」
(無理して明るう振る舞ってますけど、調子悪そうでんな米川さん)

「舎弟クンも見るばっかりじゃつまらんでしょ?今日は対局は無いけど棋士の一人二人はいるだろ?私も応援するから対局してみないかい?」
言うやいなや受付に電話

『今日って誰かプロ棋士来てる?八段以上か有名な子………うん、亘辺明夫虎王と新浦クンか…新浦クンにね会長室に来る様に言ってくれない?うんいつもの会長のワガママ………うん、じゃよろしくね』

萬田「虎王じゃなく新浦先生でっか?」

「そう。知名度なら虎王だけどね。新浦クンの方が面白いからね」

(ワシ、何されるんやろ?兄貴に付き添ってプロ棋士先生といきなり指せって…)

コンコン「新浦です、失礼します」
(なんやヌボっとした兄さんやなあ。ホンマ強いんかいな。もしかしてワシでも勝てるかも)
(ほう、これが三浦八段か…テレビで見る物腰の割に芯の強そうな兄さんや。流石、米川先生は人を見る目がある)


(何だろうガラの悪そうな人が二人、1人は羽流先生みたいなオーラが…)

「新浦クンいきなり悪いね。この眼鏡かけた人が萬田クンって言うんだけど十年近く将棋を教えて来た弟子みたいなもんだよ」

「萬田です。よろしゅう」

「その弟子の舎弟クンだ。今日はね、この舎弟クンと対局してくれないかな?晩御飯はボクが持つから」

「対局ですか?明日、ボクはA級順位戦があるんですが…」

「何を言ってるんだいアマチュア相手に指したくらいで調子崩す様じゃ駄目だよ」

「ボクはね、名人戦の前日に女性と五局挿(注・誤字ではありません)したことがあるんだよ。アマチュアと指したくらいで駄目になる様じゃ駄目だ。会長命令だ舎弟クンと指しなさい」

(((むちゃくちゃなジジイだ)))

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