上司「なんだその態度は! いつまで学生気分でいるつもりだ!」
新人「無論、死ぬまで」
上司「…………ッ!」
上司(うぐっ……なんというフレッシュな眼光……!)
上司(このフレッシュさ、新入社員というより学生……まさに果汁100%っ……!)
上司(この新人ならば、あるいは……!)
上司「ふ、ふふ……面白い」
新人「!」
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上司「やれるものなら、いつまで学生気分でいられるか、挑戦してみるがいい!」
上司「私も協力してやろう!」
新人「よろしくお願いします」
上司「おいおい、そこは違うだろう。学生ならば……」
新人「おっと、そうでした」
上司&新人「ウェーイ!!!」
上司「悪いが、この書類を総務課長に届けてくれ」
新人「総務課は何階でしたっけ?」
上司「おお、そうだった。まだ教えてなかったかもしれんな」
上司「じゃあオフィス……いやキャンパス内を案内してやるよ!」
新人「お願いしまーす!」
上司&新人「ウェーイ!!!」
上司「例の書類は出来たかね?」
新人「いえ……まだです」
上司「おいおい、頼むぜ~!」
上司「あの取引先の部長……いや教授は提出期限にうるさいんだからよ~!」
新人「サーセン! 機嫌を損ねたら……いや単位落としたらまずいですもんね!」
上司「よく分かってんじゃねーか! 頼むぜ! ちゃちゃっと終わらせてくれ!」
新人「ラジャーです!」
社員A「じゃ、今日は飲み会やりましょうか」
上司「おいお~い、飲み会なんてシケた言い方しないでくれよ。コンパだろ、コ、ン、パ」
社員A「はぁ……」
上司「新入りィ! 幹事やってくれ! しゃれた居酒屋チョイスしてくれよ!」
新人「任せて下さい!」
上司「新人のいいとこ見てみたい!」
上司「イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ!」
新人「…………」グビグビッ
新人「イッキいかせていただきました!」プハッ
上司「よくやった!」
上司&新人「ウェーイ!!!」
社員A「どうなってるんだ、あの二人は……」
社員B「さぁ……」
上司「あ~……課の会議、いや講義めんどくせーな」
新人「ええ……かったるいですね」
上司「ゴホッ、ゴホッ!」
上司「あ~……体調わりぃし、今日はサボるわ。適当に仕切っといてくれ。じゃあな」
新人「あっ、ちょっと……!」
新人(う~む、仮病を使うとは、実に学生気分だ。負けてられないな……)
上司「栄養ドリンク買ってきてくれ」
新人「分かりました!」シュタタタタッ
新人「……どうぞ!」
上司「お、これはレッドブル! なるほど~、分かってんねぇ~」
新人「あざーっす!」
新人(よし……なかなかの学生気分を返すことができた)
上司「この後、取引先との打ち合わせか……だりーな」
上司「バックレちまうか!?」
新人「え”!?」
上司「なんで? バックレようぜ!」
新人「いや、さすがにまずいっすよ! あれは……必修科目ですから!」
上司「アハハ、だよなぁ! 必修落としたらさすがにまずいわな!」
新人(まさか、本当にバックレるつもりだったのか、この人……)
上司「あのさぁ、頼みがあるんだけど」
新人「なんですか?」
上司「課長会議があるんだけど、代わりに出席しといてくんない? 座ってるだけでいいから!」
新人「え”!?」
課長A「えーと……なぜ課長会議に新人君が?」
新人「代返を頼まれまして……」
課長B「そ、そうなのか……」
新人「今日も仕事疲れましたね~!」
上司「おいお~い、仕事なんて堅苦しい言い方するなよ! バイトだろ、バイト」
新人「そうですね~! 今日もバイト疲れました!」
上司「月から金までみっちりシフト入ってるからなぁ」
上司「今日は飲もうや! 花金だしよ!」
新人「いいですね~! パーッとやりましょう!」
新人「あ、だけど今時の学生は花金なんていいませんよ!」
上司「いっけね!」
上司&新人「ウェーイ!!!」
――
――
新人「いやぁ~、学生気分でい続けるってのも結構キツイですね?」
上司「お、弱音か? やめてもいいんだぜ?」
新人「まさか……まだまだこれからですよ! 僕は学生気分でい続けますよ!」
新人「ところで、一度聞きたかったんですけど」
上司「なんだ?」
新人「なぜ、あなたは学生気分でい続ける宣言をした僕に協力してくれるんです?」
新人「普通、叱らないとダメじゃないですか?」
上司「それはだね……」
上司「君が……羨ましかったからさ」
新人「羨ましい?」
上司「私も新人時代、こんなことがあった」
上役『いつまで学生気分でいるんだ!』
上司(新人時代)『もちろん定年までですよ!』
新人(まるで僕じゃないか……)
上司「しかし、私は社会の荒波に飲まれ、五月になる頃には立派な社会人になってしまっていた」
新人(早っ!)
上司「だから……『無論、死ぬまで』と宣言した、君の若さと無謀さが羨ましかったのさ」
新人「……僕にかつての自分を見出したわけですね」
上司「ああ、それと――」
上司「ゴホッ、ゴホッ!」
新人「!? ……だ、大丈夫ですか!?」
上司「私は……難病に体を蝕まれている……」
新人「なんですって!?」
上司「そろそろ、ごまかしがきかなくなってきた……」
上司「もうまもなく、この会社を去らねばならなく、なるだろう……」
新人「そ、そんな……!」
新人(時折、つらそうに咳をしたり、仕事を休みたがってたのは、冗談や演技じゃなかったのか!)
上司「無念だよ……志半ばで会社を去らねばならないのは……」
上司「だが、最後にほんのわずかの間だが、君と学生気分でいられて……楽しかった」
新人「…………!」
新人「あ、あのっ、僕っ、僕っ!」
新人「ずっと学生気分でいますから! あなたの分まで! 僕が死ぬまで! 学生気分ですから!」
上司「ふふ……ありがと、う……」
上司「これで、私は安心して、会社を……去れるよ……」
上司「あとは……頼んだよ」
新人「ううっ……!」
新人(それから程なくして、僕の上司は一応は休職という形で会社を去った)
新人(しかし、みんな予感していた)
新人(あの人が会社に戻ってくる日は来ないであろうことを――)
新人(そして、時間はあっという間に過ぎていった……)
――――――
――――
――
中堅「ウェーイ!!!」
中堅「今日もみんなでコンパ、盛り上がろうぜ~!」
中堅「イェイイェイイェイウェ~イ!!!」
若手A「あの人もすっげぇよな。もう中堅社員なのに、未だに学生気分だもん」
若手B「しかも、欠点どころか、個性として完全に成立しちゃってるからな。すっかり名物社員だ」
若手C「あのキャラを気に入って契約してくれた取引先も多いらしいしな……」
中堅「みんな、じゃあなー! また明日、キャンパスでバイトしようなー!」
中堅(ふぅ……今日も学生気分でいられることができた)
中堅(年々体力的にきつくなっていくが、あの人の分まで……)
中堅「……あ」
上司「やぁ」ニコッ
上司「相変わらず……学生気分でいるようだね」
中堅「あ、あああ……!」
上司「驚いたかい?」
上司「難しい治療と辛いリハビリを乗り越えて、やっと会社に復帰することができたよ」
上司「ブランクがあるから以前と同じ待遇・ポジションというわけにはいかないが」
上司「受け入れてくれた会社には本当に感謝している……」
中堅「戻ってきて……下さったんですね」
上司「ああ、明日からまた一緒に仕事をしよう!」
中堅「よかった……本当によかった……!」グスッ
上司「おいおい、泣いてくれるのはいいが、学生気分を忘れてしまっては困る」
中堅「あっ、そうでしたね……」
上司「では、久しぶりに二人であれをやろうではないか」
中堅「はいっ! せーのっ!」
上司&中堅「ウェーイ!!!」
~おわり~
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