「からかい下手の高木さん」 (36)

やあ、オレは西片。どこにでもいる中学一年生。


ここは学校、いつもならオレはもう10回は高木さんにからかわれてもおかしくないけど…


どうやらオレは今、夢を見ているらしい。


え?何で夢だと分かるって?


それは、普段ならありえないことが起きてるからさ。


確かにいつもと同じ授業、同じ教室、そして隣には高木さん。


これらは何ら不自然なことではない。


では、なぜそれだけで夢だと結論付けたのか?その答えはすぐに分かるだろう。


高木さん「あ…あれれぇ?おかしいぞぉ…?」


この高木さん…ちょっぴりおバカさんなんだ。

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≪消しゴム≫


高木さん「あれぇ…ほんとにこわれちゃったの!?にぃぃ…このっ!このっ!」

西片「高木さん…」


朝から元気はつらつな高木さん(この時点で何かがおかしい)は、こちらをチラチラ見ながら仕掛けがうまくいくか試そうとしていた…のだろう。


よく分からないけどオレの夢だからなのか、ここではオレが体験した(からかわれた)ことがそっくりそのまま、この夢に反映されているらしい。


…高木さんを除いて。


西片「高木さん、貸して。開けてあげるから」

高木さん「いや、まだ無理だから!ただいまチェック中だから!」

西片「まだ無理って…」


覚えている…覚えているぞ。筆箱でオレを引っかけようとした時だ。びっくり箱でからかってやろうとするオレを逆にからかってきたやつだ。


うまく決まれば、びっくりすること間違いなしだ。


だからって本人の前でやろうとしなくても…


高木さん「んん~~!」

高木さん「ふふん…」


準備オッケーと言わんばかりにこちらにどや顔してきた高木さん。しかしよく見れば筆箱から紙がはみ出している。


西片「…下手だなぁ」

高木さん「むっ…そう言っていられるのも今のうち…」


高木さん「ああっ!筆箱が開かなくなっちゃった!どうしよう!ねえどうしよう西片!」


わざとらしいな!さっきと言い方変えただけじゃんか!


高木さん「ああーこまったなー、私の力じゃ開けられないなー。こんな時、力の強い男子が助けてくれたらなー」


遠回しにオレにやれって言ってるな…


なら…ん?ちょっと待てよ?

西片「…木村にでもやってもらえば?」

高木さん「えっ!?」

西片「オレよりは力あると思うし」


どうだ、反撃してやったぞ!


高木さん「いやいやいや!それは違うんじゃないかな!!西片、隣の席なんだからさ!助け…」

先生「うるせーぞ高木!」

高木さん「…すみません」

先生「ったくお前はいつもいつも…」

高木さん「…西片ぁ…!」

西片「ははは…」


えええ!?高木さんが怒られた!?からかったのはオレなのに!それと、いつもいつもってことは…


この世界では、オレと高木さんの関係が逆転しているのか…?


高木さん「バカ!西片のバカ!」

西片「ごめんごめん…」

高木さん「西片め…」


やった!夢とはいえ、こんなに高木さんをからかってやったのは初めてじゃないか!?


ひょっとしてこれは、神様がいつもからかわれているオレに与えてくれたサービスなのでは!?


西片「むふふ…」

高木さん「…なに笑ってるのよ西片」

西片「へ!?なんでもないよー!?」

高木さん「ふーん…」

ちょい休憩

西片「た、か、ぎ、さーん…」

高木さん「な、何…?」


相手が狼狽えた隙にすかさず距離を詰める!高木さん、あなたが教えてくれた技だよ…


西片「どうしてオレに筆箱を開けてほしいのかな?」

高木さん「そ、それは…隣の席だから…」

西片「それにしては様子がおかしくないかい?」

西片「まさか、“また”オレをからかおうとしたの?」

高木さん「ううっ…」

西片「いやぁ、だとしたらまだまだだねぇ!オレに勝つのは十年早いんじゃないのぉ!?」

高木さん「うううっ…!」

気持ちいい!夢だけどあの高木さんに完全勝利だ



そうだ…チャンスは今しかない!こうなったら、やれるだけのことやってやる!


西片「高木さん、消しゴムを貸してくれるかい?」

高木さん「…はい」

西片「ありがと。…そういえば知ってる?高木さん」

高木さん「何を?」

西片「消しゴムに好きな人の名前書いて、使い切ったら両想いになれるんってやつ」

高木さん「!!」

西片「高木さんはどうなのかな~?そんな子供っぽいことしてるのかな~?」


よし、もしこの世界のオレが高木さんなら消しゴムには何も書いてないはず!


でも高木さんは書いているかもしれないと思って取り返そうとする!そこをからかうんだ!


西片「沈黙は肯定の合図だよ高木さん?見ちゃおうかな~…」


高木さん「ダメ!!!」

西片「え…」

高木さん「絶対!見たらダメ!」

西片「な、何か書いてあるのかな…?こ、子供だなぁ高木さんは」

高木さん「見たら本気で怒るから」

西片「…」


そうだ、冷静に考えれば高木さんが消しゴムにからかう言葉を書いてるのだってありえる…


見るな、と言って見た瞬間にからかうつもりだな…


やるじゃないか、高木さんめ!


西片「そこまで言うなら…はい、返すよ」


高木さん「ん」


では、作戦その2!ついさっきオレが書いておいた消しゴムを机に置いて…


西片「あたた、急にお腹が痛くなったな」

高木さん「え?」

西片「先生、トイレに行ってきてもいいですか?」

高木さん「西片、平気?」

西片「あ、まあ…」

高木さん「ごめんね、調子が良くないのにからかおうとして」

西片「!?」

西片「あ、大丈夫、大丈夫だから…」


ぐぅ…からかうはずなのに心が痛い…というか


全く心が読み取れない…高木さんと同じ立場に立ったら心が読めると思ったのになぁ。


いや!ここは心を鬼にして、前人未到、オレの二連続からかい記録を達成するんだ!


高木さんと同じく、消しゴムには『ろうかみろ』と書いた。


オレはトイレに行くふりをして廊下に待機!


高木さんは我慢できずに消しゴムを見て廊下を見る!


完璧だ…さすがオレの(高木さんの)作戦だ!


西片「ふっ…」


高木さん「?」

西片「ふぅ…お腹痛いお腹痛い」


高木さん「…」キョロキョロ


高木さん「…消しゴム」パッ


おっ!消しゴムを手に取ったぞ!


高木さん「…」ジロジロ


あれ?カバーを取らないぞ…


高木さん「…ううん、ダメだよそんなの」

西片「えええええええ!!!?」


戻すの!?すぐそこに答えがあったのに!?


先生「西片うるせー!トイレいったんじゃねーのか!用がないなら席もどれ!」

高木さん「! 西片?」

西片「あ、えっと、すみませぇん!」


なんでだ…失敗するなんて…

西片「ねぇ!どうして消しゴム見なかったの!?」ヒソヒソ

高木さん「だって、西片いないのにこんなことしたら、いやな気分になるでしょ」

高木さん「西片はオトナだから何も書いてないかもしれないけど、西片は見ないでほしいって私のお願い聞いてくれたから」

西片「書いて…ないことは…ないけどね」

高木さん「そーなの?」

西片「ほら、見ていいよ」


やっぱり調子狂うなぁ、高木さんに困った顔されると。


高木さんからかい勝負、二連覇ならず…


高木さん「…」


西片「へ?何?」

高木さん「西片、ろうかみろ、って何?」

西片「それは、高木さんをからかうために…」

高木さん「ふーん…」

高木さん「…これだけ?」

西片「あ、はい…」

高木さん「そっか…ふぅん…」

西片「なんだよ…」


高木さん「西片、ウソついたんだ。私は西片にウソついたことないのに」

西片「え!?あれはウソというか、わざとで…」

高木さん「…もういいよ!」

高木さん「今日の西片つまんない!いつもみたいに優しくないし!いじわるするし!」

高木さん「あーあ、心配して損した!」

西片「うぇぇ!?」


なんだこの高木さんは!いくら感じが違うからって不安定すぎるだろ!


高木さん「私今日はもう西片と話さないから!あっち向いて!」プイッ

西片「ど、どうしてそうなるのさ!」

高木さん「…自分で考えれば?」

西片「自分で…?」

考えろ…?今日のオレは何をした…?


気づけば夢の中で…そこにいた高木さんがオレにそっくりな性格で…


つい調子に乗って、いつもオレがされてるように高木さんをからかって…オレがされてるように?


そうか。それがいけなかったんだ。

西片「高木さん!」

高木さん「…」ツーン

こっち向いてくれないの…

西片「ごめん高木さん。オレ、いつもされてること高木さんにやり返してるだけだった」

高木さん「え?」

西片「からかう、からかわない以前に、高木さんは女の子なんだよね、オレといっしょの感覚じゃ高木さんに失礼だった」

西片「ほんとごめん。オレ、ひとつだけなら高木さんの言うことなんでもするよ」

高木さん「…ほんとに?」

西片「ほんとほんと」

高木さん「そっかー!じゃあ何してもらおうかなー!」

西片「あはは…」


よかった…

やっとこっち向いた。

高木さん「これ!開けて!」

西片「…え?」

高木さん「ん!」


筆箱を…?今さらどうするんだよこのバレバレな仕掛けを。タネの分かってるからかいを、オレはどう対処するのが正解なんだ…?


西片「待ちなよ高木さん!な、なんでもいいんだよ!なんでも、さあ!」

高木さん「え、だから、なんでもって…あ!まさか…西片のエッチ!」

西片「なんでぇ!?」

高木さん「私たち仲良しだけど、そういうのはいけないんだよ!」

西片「何も言ってないじゃないかぁ!」

西片「うー…いいんだね、これで」

高木さん「うん!」

西片「いくよ…」

やれやれ、日々高木さんにからかわれているオレには、このレベルのからかいじゃ…

西片「…あれ?」

高木さん「? 早く開けなよ西片」

西片「いや、開けようとしてるんだけど…んっ!」


固っ!びくともしないぞ!?


西片「…高木さん、開かない」

高木さん「ええっ!?」

西片「おっかしいな…」

高木さん「…あっ」

西片「なんだい高木さん、今の『あっ』は!」

高木さん「そういえば…」

高木さん『んん~!』

高木さん「あれ、なかなか筆箱に入らなかったから、強引に入れた、かも…」

西片「絶対原因それじゃん!」

高木さん「そうかな!やっぱりそうかなぁ!?」

高木さん「どうしよう西片、私まだあの中にいろいろ入ってるの!」

西片「中身出しとけよ!よく詰め込んだね!それでびっくり箱とか筆箱ぎゅうぎゅうだったでしょぉ!」

高木さん「むむむ…そうだよ!悪い!?」

西片「逆ギレ!?」

高木さん「仕方ないでしょ、そこまで頭が回らなかったの!」

西片「ああ…」


忘れてた…こっちの高木さんはおバカさんだった…

西片「ムキになってもしょうがない…か」

西片「高木さん、オレが筆箱開けるから、手伝ってくれない?」

高木さん「…いいけど?」

西片「じゃ、反対側持って…」

高木さん「ね、ねえ。これすごく効率悪いんじゃ…」

西片「オレ他にうまくやる方法知らないし!」

それは端から見れば、二人の男女がひとつの筆箱を引っ張るという奇妙なものだった。

西片「ほら、早く」

高木さん「で、でも授業中…」

西片「それこそいまさらでしょ!後で二人で怒られよう!」

高木さん「…うん!」

西片「せーの!…うぎぎ…」

高木さん「にぃぃ~!」


がしゃ、と音がした。当然だ、非力でも二人のパワーが加われば…


西片「やった外れた!…ああっ!?」


高木さん「こわれちゃった…」


高木さんの筆箱は壊れてしまった。

西片「ごごごごめん!!」

高木さん「いや、元々は私が…!」


先生「お前らいい加減にしろやぁ!つまみ出すぞ!」


「「すいませんでしたぁ!」」


高木さん「怒られちゃったね西片…西片?」


ああ~!やってしまったぁ!夢だけど高木さんのものをこわしちゃったよ!


弁償しないと!いや、あれは高木さんのお気に入りだったかもしれないぞ!?取り返しのつかないことをしたんじゃないのかオレ!?


西片「ぐぅぅ~…」


高木さん「…あははは!」

西片「え?」

高木さん「西片、そんな顔もするんだぁ」

高木さん「あはは、おもしろいね」

西片「そ、そう…?」


これぐらい、高木さんと日常茶飯事だけど…オレの夢の西片はいったいどんなやつなんだよ。


高木さん「や、その表情も新鮮だよ。西片、あんまり反応してくれなかったし」

高木さん「私だけ西片をからかって、西片は楽しくないんじゃないかと思ってたの」

西片「あれでからかってたの…」

高木さん「え? 気づいてなかった?」

西片「気づいてたけども…」


もう忘れよう。この高木さんのレベルが低いんじゃない。元の高木さんのからかいレベルが高すぎただけだ…

西片「オレ、筆箱弁償するよ。後でお金渡すから」

高木さん「いいよ、西片の大事なおこづかいなんだから」

西片「でもさ…」

高木さん「なら、お買い物付き合ってよ」

高木さん「筆箱はこわれたからノーカウント…なんでも言うこと聞いてくれるんでしょ?」

西片「!」


満面の笑み。それはいつもの高木さん「…たー」また違った「…に……たー?」ああ、これが本当の高木さんなのだと深く胸に「西片ー?」


西片「…」

高木さん「あ、やっと起きた」

高木さん「西片、放課後ずっと寝てたんだよ?」

西片「…」

高木さん「体調悪いなら保健室…っていっても、西片爆睡してたから自力で起きるまで待ってたんだ」

高木さん「よっぽどいい夢見てたんだね」

西片「…夢…か…」

高木さん「どしたの?私の顔になんかついてる?」

西片「いいや!いつもの高木さんだよ!」

西片「いつものね!」

高木さん「…西片、今日は2人乗りして帰ろっか。一回こけそうになる度にジュースおごりね」

西片「なんで!?」

高木さん「遅くまで待ってたからそのくらいはしてもらわないと」

高木さん「あれれ、恥ずかしいの?2人乗りするのが?それとも負けるのが?」

高木さん「んん~?どっちかな~?」

西片「…ああ…」


オレ、一生高木さんには勝てないかも…

《おまけ》

≪あのままからかい続行していた場合≫

高木さん「」ツーン

西片(まだ振り向いてくれない…そうだ!今こそ100%片思いの出番じゃないのか!?)

西片「高木さん、こっち向いて」

高木さん「やーだ!」

西片「いいから、お願い」

高木さん「…もー、なにー…?」チラッ

西片「君かわいいね」キラッ

高木さん「…ふぇっ、なななななっ!?」

西片(決まった…)

高木さん「~~!!」

西片「あれ、高木さん?」

高木さん「バカーー!!!」パァン!

西片「ぐぇぇぇぇ!!」

高木さん「あーもうバカ!!ほんとバカ!!」


西片(逆効果だった…)

終わり。

違うんや…

スレタイと西片と高木さんを逆転する設定、結局高木さんには勝てなかったよ…だけ思いついて、後はネタ一直線にするつもりだったんや…

ノリノリで書いたはいいけど、オチが思いつかなくてこうなったんや…

逆転設定の高木さんは西片の空想高木さんと、ちーを足して2で割ったぐらいのつもりで書きました。

高木さんss増えろ…増えろ…

ずっこけたけどネタ自体は悪くないと思う(自画自賛)ので、暇を見つけたらこれでリベンジしようかな~

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