紗代子「えっなにあれは」
百合子「あおげ……?」
瑞希「おあげのようですね」
紗代子「なんで道におあげが落っこちてるの……」
百合子「これは、事件の香りがします……!」
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瑞希「七尾さんの推理の始まりです……どきどき。」
紗代子「今は朝の8時半、人影はまばらな住宅街の生活道路……」
百合子「分かりました!昨晩、お夕飯のお弁当を買って帰る途中のサラリーマンが、暴漢に襲われて……!」
紗代子「それなら、どうしておあげ『だけ』がここに残ってるの……?」
百合子「それはっ……きっと、犯人はおあげが大嫌いで、それ以外はおいしくいただいたけれども……!」
紗代子「かわいそうなおあげ……」
瑞希「七尾さん。まずは遺留品のおあげをもっとよく観察するべきです」
瑞希「乾き具合を見れば、これが昨晩お買い上げのお弁当に入っていたものかどうか、見当がつくはずです」
百合子「そっか!そうですよね!それじゃ失礼して……」
紗代子「……その白い手袋、いつも持ち歩いてるの?」
百合子「はい!こんなこともあろうかと……あっ!指紋採取キットもありますよ!」
紗代子「それはまた今度でいいかな……」
瑞希「うーん……まだみずみずしさが残っているように見えます」
百合子「ということは、昨日の夜から残っているものではない……」
百合子「つまり今朝方、お昼に食べるお弁当を買って出勤途中だったサラリーマンが暴漢に襲われて……!」
紗代子「暴漢好きだね」
瑞希「あ。野良猫がやってきました」
紗代子「ホントだ。すごく人懐っこいね。よしよし」
百合子「はっ……!閃きました!」
瑞希「あっ……」
紗代子「あぁっ……百合子、いきなり大声出したらびっくりするよ。猫も逃げちゃったし……」
百合子「このおあげは、もともと野良猫の戦利品だったんです!」
瑞希「……?」
紗代子「野良猫の……?どうしてそんなことが分かるの?」
百合子「こんな言葉を知っていますか?『犯人は現場に戻る』……」
百合子「つまり、今ここにやってきた野良猫は、おあげを持ち去ろうとした実行犯のひとりなのです!」
瑞希「あの純朴そうなねこさんが……瑞希、ショックだぞ。」
百合子「つまり今朝方、お昼に食べるお弁当を買って出勤途中だったサラリーマンが、さきほどの猫に襲われて……」
紗代子「ね、猫に?」
瑞希「なるほど……昨夜の集会で仲間を募り、集団でサラリーマンに乱暴してお弁当を奪った……」
紗代子「でもそうすると、あそこにいるカラスやハトにも疑いがかかってくるよね?」
百合子「う……そ、そうなってしまいますね……」
瑞希「七尾さん。少し切り口を変えて、犯人の候補を絞る方向に考えてみてはいかがでしょう?」
百合子「そうですね。やはり暴漢がサラリーマンに襲いかかったという線で考え直してみましょう」
紗代子「こだわるねぇ」
瑞希「その線で行くなら、やはりおあげだけがぽつんと落っこちているのが気になります」
瑞希「争いあったとすれば、おあげ以外のおかずが一緒にばら撒かれていてもおかしくありません」
百合子「こう考えることはできませんか?サラリーマンは、実際にはお弁当を買ったんじゃない」
百合子「自分の手作り弁当で、白いご飯やおかずをそれぞれ別のタッパーに入れていた、って」
紗代子「つまり、抵抗するうちに、偶然にもおあげ入りタッパーの蓋だけが外れて、しかもタッパーだけは回収して立ち去った、っていうこと?」
瑞希「もしかしたら、犯人はもとからタッパーが目当てで犯行に及んだのかもしれません」
百合子「そうか……おあげが目的でないなら、その場に打ち捨てていくのも頷ける……」
紗代子「いやぁ……たかだかタッパー1個のために窃盗の罪を犯すなんて、なかなか考えられないことだと思うけど」
百合子「紗代子さん、『事実は小説よりも奇なり』、ですよ!」
百合子「犯人は被害者の熱狂的なファン……いや、ストーカーだったのです!」
瑞希「な、なんだってー。」
百合子「彼は、サラリーマンの持ち物が何でもいいから欲しくなり、お弁当箱代わりのタッパーに目をつけました」
百合子「いざ奪い取ろうとした時には予想外の強い抵抗に遭い、タッパーの中身は散逸してしまった……」
瑞希「なるほど。そういうことならつじつまが合います」
紗代子「いや、つじつまだけは合ってるんだけど……」
百合子「そう言うなら、紗代子さんはどう推理しますか?」
紗代子「え」
瑞希「私も、高山さんの熱血推理、聞きたいです。」
紗代子「えっ、えぇっと……私は、おあげが何らかの事件によって、ここに残されたんじゃないと思うな」
百合子「えぇっ!?」
瑞希「そ、そんな……」
紗代子「いやいや、百合子が事件性ありと勝手に断定しただけだから、事故の線でも考えてみないと」
百合子「そっか……そうですね……私ったらまた暴走して……」
紗代子「例えば、トンビなんかが、おあげを奪ったのはいいけど、誤ってここの上空で取り落としちゃったとか……」
百合子「なるほど……でも、この辺りでトンビが飛んでるところなんて……」
瑞希「もう一度、おあげを見てみましょう。くちばしの跡か、爪痕が残っていれば……」
百合子「むむむ……」
紗代子「うーん、残ってないね。ちょっとだけ、甘く噛んだ跡みたいなのはあるけど……」
瑞希「七尾さん。何か閃きませんか?」
百合子「何者かがおあげをくわえていたところ、落としてしまったのだとすると……」
百合子「分かりました!おあげの落とし主は女子高生です!」
紗代子「じょ、女子高生……!?」
瑞希「なぜ、そのような結論に至ったのか、教えていただけますか」
百合子「今回の件、これは紗代子さんの推理の通り、きっと事故に違いありません!」
百合子「寝坊してしまい、遅刻ギリギリの時間になってしまった女子高生は、大急ぎで身支度をすませると、食パンをくわえて走り出しました」
紗代子「少女漫画みたいな話だね」
百合子「しかし、彼女はあまりにも急いでいたので、食パンの隣に置いてあったおあげをくわえてしまっていたのです!」
瑞希「わー。なるほどー。」
百合子「そんなことには気づかず、猛ダッシュする女子高生。曲がり角で転校生に衝突し、おあげを落っことしてしまいます」
百合子「時間に追われる彼女は、落として汚れてしまったおあげを放置して走り去った……これがことの顛末です!」
紗代子「さすがに気づくと思うんだけど。食パンとおあげじゃ全然食感が違うし」
瑞希「いや、どちらも穀物由来の食品ですから、意外に分からないかもしれません。」
紗代子「うーん。まぁ今回はそういうことにしとこうかな」
百合子「あっ!ちょっと紗代子さん、納得してないですね!?」
紗代子「そろそろ行かないと、レッスンに遅刻しちゃうよ。ほら、瑞希ちゃんも」
瑞希「あ。もうこんな時間……急ぎましょう、七尾さん。」
百合子「まっ、待ってください!私の名推理にはまだ続きがあるんです〜!」
……
以上にて終わります。
アイドルたちががやがや喋ってるとこが書きたかっただけなので、解決編はありません。ごめんなさい。
道端や植え込みに食べかけのコンビニ弁当を見つけると、強い物語性を感じてしまいます。SS書きの性ですね
ごめんなさい、圧倒的誤字です。あおげじゃなくておあげですね
なぜ今にならないと気付かないのか……
帰りは別のもの見つけてそう
乙です
>>1
七尾百合子(15)Vi/Pr
http://i.imgur.com/l59HZMN.jpg
http://i.imgur.com/MeJaqUS.jpg
高山紗代子(17)Vo/Pr
http://i.imgur.com/LdcCmKL.jpg
http://i.imgur.com/BtlBhJL.jpg
真壁瑞希(17)Da/Fa
http://i.imgur.com/FF5pnRB.jpg
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