芳乃「この事務所には不思議な力が多すぎでしてー」
朋「茄子さんとか?」
芳乃「うむー、わかりやすい例でありますなー」
芳乃「そしてまた、対となるほたる殿もー」
朋「あー」
朋「あと、歌鈴ちゃんとかもそうよね」
芳乃「でしてー」
芳乃「他と違い吉凶の類ではありませぬがー」
芳乃「彼女のドジは只ならぬ力によるものでしてー」
朋「ラッキーアイテムとか、芳乃ちゃんのお祈りとかでもなんともならなかったもんね」
朋「……いわれてみると不思議な力がいっぱいねー」
芳乃「……」
芳乃「……そなたもその一人ですよー?」
朋「えっ、うそ!?」
芳乃「おや、自覚がないのでしてー?」
朋「そりゃあねぇ」
朋「だって、その三人みたいに特別変な力が働いてるようにも感じないですし」
芳乃「では問いますがー、そなたはこれまでおみくじでどのような結果が出ていましてー?」
朋「19年間吉だったわね」
芳乃「ほら、ねー? 普通はそんなこと起こりえないのでしてー」
朋「でっ、でも、この前は始めて小吉を引いたのよ! 幸運の石の効果ね!」
芳乃「うむ、それこそがそなたに及ぶ不思議な力でしてー」
芳乃「占いや呪いの類に過剰に影響を受けるのが、そなたのー」
朋「へー……なんかあんまり実感がわかないけど……」
芳乃「当人にとってはそのようなものかも知れませぬねー」
芳乃「しかし、あまり考え込まずともよろしくてー」
芳乃「本日、わたくしがすべて解消しますゆえー」
朋「?」
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朋「とりあえず、みんな呼んできたわよ」
茄子「呼ばれてきました~♪」
芳乃「うむ、ありがとうございましてー」
ほたる「えっと……私たちはどうして呼ばれたのでしょうか?」
芳乃「おや、説明を受けてないのでして?」
歌鈴「あ、はい……とりあえずきてってつれて来られたので……」
朋「あたしの下手な説明より、芳乃ちゃんが説明したほうがわかりやすいかなって」
芳乃「……まあ、確かにそうかもしれませぬねー」
芳乃「朋殿が説明すると混乱しそうでありますー」
朋「……そう言われるのもそれはそれで腹立つわね」
茄子「うふふっ♪」
茄子「それで、どうして私たちを呼んだのですか?」
芳乃「……こほん」
芳乃「本日そなたらをお呼びしたのはー、そなたらに纏う不思議な力の効力を弱めるためでしてー」
ほたる「不思議な力……?」
芳乃「うむー」
芳乃「たとえば、歌鈴殿ー」
歌鈴「わ、私?」
芳乃「そなたのドジは、わたくしが祈りを捧げても、朋殿がそなたの運勢を上げようとしても消えませんでしたねー?」
歌鈴「あ……はい、そうですね」
歌鈴「……あっ、でもラッキーデーのとき、一回も転びませんでしたよ?」
芳乃「でも、ドジはしたでしょー?」
歌鈴「それは……まあ……」
芳乃「……他の皆々様もそのような心当たりはあるでしょー?」
芳乃「どのようなことをしてもなんともならぬものにー」
ほたる「……私の不幸」
茄子「私の幸運もですねー」
芳乃「うむ。その不思議な力の効力を、今から弱めましてー」
ほたる「そ、そんなことできるんですか!?」
芳乃「うむ、できるはずでしてー」
芳乃「先日帰省した際に、ばば様にどうにかできないかとお尋ねしたのですー」
芳乃「そうしたら、解消する方法を教えていただきましてー」
芳乃「ゆえに、その方法を今から試そうかとー」
歌鈴「なるほど……」
朋「どんな方法なの? あたしたちも何かする必要ある?」
芳乃「いえ、そなたらは何もする必要はありませぬー」
芳乃「ただ、同意さえ得られればー」
朋「ふーん」
芳乃「いかがしますー?」
歌鈴「じゃあ……お願いします」
朋「うん、私も」
ほたる「私も……」
茄子「私もお願いしますー♪」
朋「……あれ、茄子さんもなの?」
朋「だいぶ便利そうなのに」
茄子「そろそろ飽きちゃいまして♪」
朋「……えー」
ほたる「羨ましいなぁ……」
芳乃「満場一致ですねー」
芳乃「……こほん。では早速はじめましょー」
芳乃「こちらに座りませー」
朋「はーい」
茄子「順番とかはありますかー?」
芳乃「適当でー」
ほたる「なら、私はここで……」
茄子「私はほたるちゃんのとーなりっ♪」
歌鈴「じゃあ、私はその隣に……」
朋「その隣があたし……っと」
朋「じゃ、よろしくね芳乃ちゃん」
芳乃「うむー」
芳乃「では、皆々様、目を閉じませー」
ほたる「……」
茄子「……」
歌鈴「……」
朋「……」
芳乃「……」
芳乃「――」
………………
…………
……
芳乃「……うむ」
芳乃「終わりましてー」
歌鈴「……もう目を開けてもいいですか?」
芳乃「大丈夫でしてー」
朋「……」パチッ
ほたる「……?」パチッ
茄子「……あんまり変わった気がしませんねー?」
芳乃「そういうものかも知れませぬねー」
芳乃「あくまで、力自体はまだそなたらが纏っているはずでありますゆえー」
歌鈴「……ってことは、完全になくなるわけじゃないんですね」
芳乃「うむー」
芳乃「しかし、先ほども話したとおり加護を薄めることはできましてー」
芳乃「試してみてはー?」
朋「そうね……っていっても、すぐに試せそうなのは……」
ほたる「……あっ、私ですか?」
茄子「そうですねー♪」
茄子「私の手を握った後におみくじを引けば……」
茄子「……その力もまだ残っているんでしょうか?」
芳乃「さぁー?」
朋「……なら、ラッキーアイテムでも身に着けてみる?」
朋「ほたるちゃんって何座だったっけ?」
ほたる「あっ、えっと……ぷぎゃっ!」
歌鈴「あっ!」
芳乃「おやおやー」
茄子「盛大にこけちゃいましたねー」
朋「……大丈夫?」
ほたる「いたた……はい、大丈夫で……ぷぎゃっ!」
ほたる「……うぅ」
朋「あはは……」
歌鈴(……なんだか身に覚えがあるこけ方……)
芳乃「……ふむー?」
朋「……立てる?」
ほたる「たっ、立てます……!」
ほたる「……ほっ、ほら!」
茄子「わぁー♪」パチパチ
ほたる「このくらいのことで拍手しないでくださいっ!」
朋「それで、何座だっけ?」
ほたる「えっとおひちゅっ……」
ほたる「……牡羊座です」
朋「噛んだわね」
ほたる「噛んでないですっ!」
茄子「うふふっ、なんだか歌鈴ちゃんみたいですねー♪」
歌鈴「自分で言うのもなんですけど、確かにそんな感じですね……」
芳乃「ふむー……」
芳乃「……とりあえず、くじを作ってからでいいでしょうかー」
歌鈴「あれ、どうしたんですか、芳乃さん?」
芳乃「いえ、何もー」
芳乃「わたくしはくじを作るので、ラッキーアイテムの方はよろしくお願いしますー」
朋「はーい」
朋「……で、牡羊座なのよね?」
朋「牡羊座は……えっと、福袋……はすぐそばに無いし……」
朋「……あ、じゃあラッキーカラーがグレーだから。これとかどう? グレーのハンカチ」
ほたる「あ、ありがとうございましゅっ……すっ!」
朋「……って感じで、ラッキーアイテムは用意できたけど、そっちはどう?」
芳乃「簡易なものではありますが用意しましてー」
芳乃「大凶、吉、大吉の3種をこの箱に入れておりますー」
芳乃「わたくしや歌鈴殿の祈りもこめた特別製であるゆえ、おみくじとして機能を発揮するでしょー」
芳乃「ではほたる殿ー」
ほたる「は、はいっ……」
ほたる「……」ゴクッ
ほたる「……えいっ!」
茄子「どうでした?」
ほたる「……あっ、吉!」
ほたる「吉ですっ……!」
茄子「わぁ、本当ですね♪」
ほたる「やった……こんなの引いたの初めて……!」
ほたる「今までずっと大凶だったのに……!」
朋「ふふっ、おめでと。ほたるちゃん」
ほたる「ありがとうごじゃいっ……ございますっ!」
茄子「今日のほたるちゃんはよく噛みますねー♪」
ほたる「うぅ……なんでだろう……」
歌鈴「あはは……でも、これでほたるちゃんの不幸が抑えられた……ってことでいいんです
よね?」
歌鈴「それと、私たちも……」
芳乃「うむー」
芳乃「……と、言いたいところなのですがー」
歌鈴「?」
芳乃「念のため、歌鈴殿たちも引いてもらってもー?」
歌鈴「私たちも?」
芳乃「うむ、三度ほどー」
朋「んー」
朋「よいしょ……わっ、大吉!」
朋「えいっ……あれ、また大吉?」
朋「最後は……また大吉ね」
茄子「えいっ……ふふっ、大凶でした♪」
茄子「二回目……わっ、また大凶♪」
茄子「三回目っと……大凶ばっかりですねー♪」
歌鈴「んー……あ、吉」
歌鈴「やっ……これも吉ですね」
歌鈴「とっ……もう一回吉……?」
ほたる「わぁ……皆さんすごいですね……」
ほたる「同じ運勢を三回連続で引くのが三人連続で出るなんて……」
ほたる「……確率ってどれくらいなんだろう?」
芳乃「いえ、これは確率などではないかとー……」
ほたる「えっ」
芳乃「……少々お待ちをー。ばば様に連絡を取ってみましてー」
ほたる「う、うん……」
朋「やっば……どこまで大吉引けるか楽しくなってきたわね」
朋「あたし、変な力が無ければこんなに運がよくなるんだ……」
茄子「私にも引かせてくださーい♪」
茄子「大吉以外が出るのが楽しくって、楽しくって……特に大凶なんて……♪」
歌鈴「……あかまきがみあおまきがみきまきがみっ!」
歌鈴「わっ、噛まないでいえる……! よし、次は……」
ほたる「……」
芳乃「お待たせしましてー」
茄子「えーいっ!」
茄子「うふふっ、また大凶♪」
朋「茄子さん! 次あたし!」
歌鈴「この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから――」
芳乃「……こちらはー?」
ほたる「あの……みなさん楽しくなっちゃったみたいで……」
朋「えいっ! わっ、また大吉!」
朋「あっ、見てみて芳乃ちゃん! また大吉よ!」
芳乃「……喜んでいるところ申し訳ないのですが、そなたらにお伝えせねばならぬことがー」
朋「ん、何?」
芳乃「実はそなたらの力は効力を失ったわけではないのでしてー」
歌鈴「……えっ?」
歌鈴「でも私、早口言葉いえるようになりましたよ?」
茄子「私も、大凶なんて始めて引きましたよ?」
芳乃「うむ……それもそのはずでしょー」
芳乃「何せ、そなたらが持つ力は効力を失わないまま別のものへと移ったのですからー」
ほたる「……?」
歌鈴「……あっ、じゃあほたるちゃんが急にこけたり噛んだりしていたのは……!」
芳乃「そなたの……歌鈴殿が纏っていた力がほたる殿に移ったからでしてー」
ほたる「なるほど……」
芳乃「同じように、茄子殿の力は朋殿にー」
芳乃「朋殿の力は歌鈴殿にー」
芳乃「そしてほたる殿の力は茄子殿にー」
芳乃「といった風に、そなたらの力は別のものへと渡ったのでしてー」
朋「なるほどねぇ……」
朋「……ってことは今の私は幸運で」
茄子「今の私は不運なんですねー」
芳乃「うむ……そなたらのおみくじの結果がそれを教えてくれましてー」
芳乃「……まったくー」
芳乃「別の人に渡せば力は消えたも同じ……とは、なんて適当なことをばば様はー」
芳乃「酔っていたとはいえー、今度帰る時には灸をすえねばー」
芳乃「……っと、愚痴は後にしましょー」
芳乃「今はとりあえず元に戻さねばー……そなたらー、もう一度座ってくださいませー」
茄子「嫌です♪」
芳乃「……は?」
茄子「うふふっ、せっかくこんな面白い体質になったんですよ、堪能しなくちゃ♪」
茄子「大丈夫です、夕飯までには帰って来ますから♪」
芳乃「いや、そういう問題でなく――」
茄子「――アデュー♪」ダッ
芳乃「あっ!」
芳乃「こらー! 待つのでしてー!」
ほたる「そうですよ、茄子さん! もしそれが私と同じなら……ぷぎゅっ!」
芳乃「わっ! ほたる殿、大丈夫でして?」
ほたる「だ、大丈夫です……それより茄子さんを……ぷぎゅっ!」
ほたる「……こんなのでどうやって歌鈴さんは歩いてたんですか……」
歌鈴「わ、私はさすがにそこまでひどくはなかったはずだけど……」
芳乃「元より持ち合わせてない力であるゆえー」
芳乃「当人よりもより強く効力が発揮されるのかもしれませぬなー」
ほたる「……じゃあ、茄子さんも……私より強い不幸に……!」
芳乃「うむ。それもあるため、早く元に戻さねばならぬのですがー」
芳乃「まったく、茄子殿はー……まったく、茄子殿はー!」
朋「早く追いかけないと!」
芳乃「うむ」
芳乃「しかし、このままほたる殿を放っておくわけにもいきませぬー」
芳乃「今のほたる殿は、いつこけて頭を打ってもおかしくないゆえー」
ほたる「……どうにかならないんでしょうか?」
歌鈴「……あっ! 私、神様の前だったらこけたりとかぜんぜんしませんでしたよ!」
ほたる「そうなんですか?」
歌鈴「はい!」
歌鈴「……ただ、少しでもそばを離れるといつもの感じになっちゃってましたけど」
ほたる「なるほど……」
ほたる「……でも、神様なんて、どうすれば……」
芳乃「……なれば私が神となりましょー」
ほたる「……へ?」
朋「え、何。そんなことできるの芳乃ちゃん?」
芳乃「任せませー」
芳乃「こんなこともあろうかとー、現人神となる修行を積んでおりましたゆえー」
朋「えぇ……」
芳乃「今成り代わるので、しばしお待ちをー」
芳乃「変わりましてー」
芳乃「今の私は神でありー、私のそばにいれば問題は無いでしょー」
ほたる「……」
芳乃「……半信半疑なのはわかりますがー、信じてくださいませー」
芳乃「試しにわたくしの手を取り、立ち上がってみせませー」
ほたる「……」ギュッ
ほたる「……あ、立てた」
芳乃「でしょー?」
芳乃「また、早口言葉も言えるかとー」
ほたる「……バスガス爆発っ!」
ほたる「わ、本当……!」
芳乃「しかし、ひとたび手を離せばー……どうぞー?」パッ
ほたる「……ばしゅがっ!」
ほたる「――ッ!」
朋「……舌噛んだのね」
芳乃「これでわかりましてー?」
ほたる「――」コクコク
ほたる「――絶対離さないでくださいね」
芳乃「……これでよし」
芳乃「では茄子殿を探しにいきましょー」
朋「あっ、ちょっと待って!」
芳乃「んー?」
朋「今、歌鈴ちゃんがあたしと同じ感じになってるのよね?」
朋「じゃあ、たぶんラッキーアイテム持ってないと結構運が悪い感じになっちゃうから用意しなきゃかも」
歌鈴「えっ、そうなんですか?」
朋「うん……あたし昔は結構運悪くてさー……」
………………
…………
……
朋「これでよしっ!」
歌鈴「うぅ……恥ずかしい」
朋「……そんな恥ずかしがることないじゃない」
朋「リボンなんて衣装でいつもつけてるでしょ?」
歌鈴「それはステージの上だからで……」
歌鈴「普段はこんな大きいリボンつけないから、ちょっと恥ずかしくって……」
朋「歌鈴ちゃんのラッキーカラーで今渡せるのがこれしかなかったのよ、ごめんね」
歌鈴「いえ……うぅ」
芳乃「……とにもかくにも準備はできたようですねー」
芳乃「では、今度こそ参りましょー」
朋「おー!」
ほたる「よ、芳乃さん……絶対、絶対離さないでくださいね……!」
芳乃「わかっておりますー」
芳乃「……では、茄子殿の向かった方向へと……」
朋「……あれ、電話」
芳乃「……」
朋「……電話しながら歩くわよ、そんな目で見ないで」
芳乃「……急がねば、茄子殿がどんどん離れてしまいますー」
芳乃「なるべく足早にー……」
ほたる「わっ、わぁっ……! あんまり、離れないで……!」
芳乃「……」
歌鈴「……あはは」
朋「もしもし……あれ、お母さん。どしたの?」
朋「……」
朋「……えぇ!? 庭から温泉が出てきた!?」
歌鈴「えぇっ!?」
朋「えっ、嘘……嘘でしょ?」
朋「嘘じゃないって……えぇ、そんなこと言われても……」
朋「ってかそれを私に知らせてどうしろって言うのよ……」
朋「……ああ、喜びを知らせたかったのね」
朋「うん……まあ、今度帰る時を楽しみにしてるわ」
朋「……そうね、旅館になった実家を楽しみにしてる」
朋「……」ピッ
朋「えぇ……」
歌鈴「……温泉、掘り当てたんですか?」
朋「そうみたい……わっ、写真まで」
朋「……うわっ、本当に温泉でてるわ」
歌鈴「わっ、本当……」
歌鈴「これも茄子さんが纏ってた力のおかげなんでしょうか……?」
朋「……あ、そっか」
朋「そういえば、今あたし普段より幸運になってるのよね」
朋「……」
朋「……ちょっとゲームのガチャでも引いてみよっかな」
芳乃「……そなたー」
朋「や、だってほら……せっかくだし……」
芳乃「……それはそなたの力では無くなるのですからねー?」
朋「わかってるわよ……わっ、SSR出た……」
朋「じゃあ、こっちも……」
芳乃「……」
芳乃「では次はこちらにー」
ほたる「……あっ、芳乃さん。たぶんこっちです」
芳乃「おや、そうなのでしてー?」
ほたる「はい」
ほたる「……私と同じなら、カラスがたくさんいる方向にいるはずです」
ほたる「後は……ほら、植木鉢が落ちた後とかを辿れば」
芳乃「……なるほどー」
ほたる「……客観的に見ると、私の周りってあんな感じだったんですね」
芳乃「……」
朋「うわっ、こっちも欲しいの出た……」
朋「……」
朋「後、なんかこの体でできることあるかな……」
芳乃「……朋殿ー」
歌鈴「でも、朋さんの……いえ、茄子さんの力があるからか、信号にぜんぜん引っかかりませんね」
ほたる「そうですね……逆に私の場合は毎回引っかかるので……ある意味新鮮です」
芳乃「ふふー、追いやすそうでしてー」
朋「そうねー」
朋「……今のこの体で宝くじ買ったら……?」
芳乃「朋殿」
朋「じょ、冗談よ、冗談……」
芳乃「……は……はっ……」
芳乃「っくしゅん!」
朋「あら、大丈夫?」
芳乃「うむー……近頃はめっきり寒くなってまいりましてー」
歌鈴「そうですねー……私もちょっと寒いです」
ほたる「あ、あの。芳乃さん……」
芳乃「……あー、すみませぬ」
芳乃「口元を押さえるために離してしまいましてー」
ほたる「いえ……それより早く手、手を……ひゃわっ!」ステン
朋「……何も無い場所でもこけるのですねー」
歌鈴「そうなんですよ……あはは」
ほたる「うぅ……」
芳乃「しばしお待ちを――」
芳乃「――」
ほたる「……芳乃さん?」
芳乃「いえ……」
芳乃「……つかぬ事を聞きますがー」
芳乃「そなた、下着は?」
ほたる「へ?」
ほたる「……」スッ
ほたる「……!?」
ほたる「な、なんで!?」
朋「えっ!? ほたるちゃん、まさか……!?」
ほたる「わぁぁ、言わないでください、言わないでくださいっ!」
ほたる「な、なんで……ちゃんと履いてきたはずなのに……!?」
歌鈴「……あっ! もしかしてそれも私にあった力のせいかも……」
ほたる「えぇっ!?」
歌鈴「あはは……私、よく下着を忘れてきちゃうことがあって……」
歌鈴「……って思ってたんだけど……もしかして、本当は履いてたけど変な力で履いてないことにされてたのかも……って」
ほたる「どんな力なんですか……!」
朋「……でも、今ほたるちゃんがそんな状況になってるってことなのよね」
芳乃「うむー」
芳乃「……その、ちらりと見えてしまい」
ほたる「忘れてくださいっ!」
ほたる「今すぐにっ! 忘れてくださいっ!」
芳乃「う、うむ、忘れましょー」
ほたる「絶対に忘れてくださいねっ!」
ほたる「それともう二度と離れないでくださいっ! 絶対に! 絶対に!」
芳乃「う、うむ、わかっておりましてー」
ほたる「いえっ……また、何かで離れるかもしれませんから……私がずっと引っ付いてますっ!」ギュッ
芳乃「お、おー……」
ほたる「絶対に離しませんから!」
芳乃「……少々歩きづらいのでして」
ほたる「でも、もう絶対に離れたくないので……」
朋「……歌鈴ちゃんはよくいつもあんな感じでいれたわね」
歌鈴「私の時はここまでじゃないですし……ほら、芳乃ちゃんも言ってましたけど、私のときより強くなってるらしいし」
朋「あ、そっか……」
朋「……あれ、でも下着を忘れてたのは」
歌鈴「それは……き、気のせいですっ!」
朋「そ、そっか……」
芳乃「むー……」
芳乃「……」
芳乃「……あっ!」
芳乃「茄子殿を見つけましてー!」
朋「えっ、どこ!?」
ほたる「……あっ、あそこに!」
茄子「……あら、追いつかれちゃいました♪」ダッ
歌鈴「お、追いかけましょう!」
芳乃「うむー」
芳乃「……追いづらいので、離れていただいてもー?」
ほたる「嫌ですっ!」
芳乃「……むー」
朋「……とりあえずあたしと歌鈴ちゃんが追いかけるわ」
朋「いきましょ、歌鈴ちゃん」
歌鈴「はいっ!」
歌鈴「茄子さーんっ! 待ってくださーいっ!」
茄子「まだ堪能しきってないので待ちませーん♪」
朋「そういう問題じゃ……あっ、茄子さん! 上! 上!」
茄子「……きゃっ!」
茄子「うふふ……また植木鉢……こんな危険初めてです……♪」
朋「……うわぁ」
歌鈴「とっ、朋さん! 引いてないで追いかけましょう!」
朋「……ととっ、そうだった!」
朋「待ちなさーいっ!」
茄子「待ちませーん♪」
朋「もーっ!」
茄子「うふふっ、これでもっともっと幸運じゃない私を楽しむんですからー♪」
茄子「絶対に追いつかれませ――きゃっ、黒猫」
朋「……うわっ、黒猫の行列」
歌鈴「あんなのありえるんですね……」
歌鈴「……あっ! 今のうちですっ!」
朋「あっ、そうだったわ!」
茄子「んー……飛び越えるわけにも……」
朋「……よっし、追いついた!」
茄子「あっ!」
朋「捕まえたわっ!」ガシッ
歌鈴「もう逃げられませんよっ!」ガシッ
茄子「つかまっちゃいましたー♪」
茄子「んー……せっかく楽しんでたのに」
茄子「信号で止まったりー、目の前に急に飛び出たトラックに驚いたりー、上から落ちてきた植木鉢に驚いたりー」
朋「どんな楽しみ方してるのよ……」
歌鈴「芳乃さーん! 捕まえましたよー!」
芳乃「うむー! そのまま少々お待ちをー!」
ほたる「きゃっ! い、いきなり動いて離れないでください!」
茄子「……あの二人は何をやってるんですか?」
茄子「二人羽織の練習?」
朋「まあ、いろいろあって……」
茄子「……あれも楽しそうですねー♪」
歌鈴「当人たちにとってはそんなこと無いと思いますけどね」
茄子「……んー」
茄子「でも、これで終わっちゃうんですねー……せっかく楽しかったのに」
朋「元ある形に戻るだけよ」
茄子「そうなんですけどねー……」
茄子「でも、ちょっと戻りたくないって思う自分もいませんか?」
朋「……」
歌鈴「……」
茄子「朋ちゃんは……私の力でしたよね?」
茄子「もっともっといろんな幸運を試してみたいと思いませんか?」
朋「……」
茄子「それに、歌鈴ちゃんも」
茄子「せっかく、転ばないし噛まない体質になったんですから、いろいろしてみたいと思いませんか?」
歌鈴「……」
茄子「ね?」
朋「……」
歌鈴「……」
芳乃「……ようやく追いつきまして」
ほたる「……」ギューッ
朋「……まるでぬいぐるみみたいね」
芳乃「聞き捨てならない言葉であります……が、今は良いでしょー」
芳乃「さて、今度こそみなの力を元の体へと戻しますー」
芳乃「朋殿ー、歌鈴殿ー、茄子殿と共に座りませー」
朋「……」
歌鈴「……」
芳乃「……お二人ともー?」
朋「えーっと……ごめんね、芳乃ちゃん」
芳乃「へ?」
歌鈴「あのっ……満足したら戻ってきますから……」
歌鈴「だから……ごめんなさいっ!」ダッ
朋「ちゃんと戻ってくるから!」ダッ
芳乃「朋殿!? 歌鈴殿!?」
茄子「うふふ、ごめんなさい、芳乃ちゃん。二人をたぶらかしちゃいました♪」
茄子「そして私も、ちゃんと戻ってきますからー♪」ダッ
芳乃「あっ、待つのでして――」
ほたる「あっ、離れないでくださいっ!」ギュッ
芳乃「わぷっ!」
ほたる「お願いします……! 今の私を一人にしないで……!
芳乃「うぐ……むぐ……むー!」
芳乃「うがー! なんなのでしてー、どいつもこいつもー!」
おしまい
おまけ
芳乃「……なんなのでして……どいつもこいつも……」スー
朋「……ふふ、変な寝言」
歌鈴「どんな夢を見てるんでしょうか?」
朋「ちょくちょく聞こえる寝言を聞くに、あたしたちは出てるみたいだけどね」
茄子「私が出てるならきっといい夢ですよー♪」
茄子「鷹も、富士も、茄子も一気に出てきたようなもんですからー♪」
ほたる「茄子さん! 前! 前!」
茄子「私なら事故にはならないので、大丈夫ですよー♪」
ほたる「そういう問題じゃないですっ!」
茄子「うふふっ、冗談です、冗談♪」
ほたる「もう……」
朋「……でも、まさか茄子さんが運転できたとはねー」
茄子「あら、できなさそうでしたか?」
朋「うん」
茄子「……朋ちゃんには言われたくないです」
歌鈴「あー……」
ほたる「確かに朋さんは……」
朋「どういうことよ!」
茄子「うふふっ♪」
茄子「……あ、そろそろ神社につきそうですよー」
朋「そうなの? じゃあ芳乃ちゃんも起こさなきゃね」
芳乃「うぅ……ほたる殿……少し服をはだけるくらい良いのではー……?」
ほたる「どっ、どんな夢を見てるんですか!?」
茄子「……ほたるちゃん、そういうことするんですか?」
ほたる「しませんっ!」
歌鈴「ふふっ」
おしまい
ミス・フォーチュンとミス・ラッキー・テリングとかいう俺得ユニットが同タイミングで出てきて、かつ互いのユニットメンバーに対して言及していたりして喜びが天元突破したノリと勢いで書きたかったことを混ぜました。
お年玉もらった気分
誤字脱字、コレジャナイ感はすいません。読んでくださった方ありがとうございました
最近書いたの
アナスタシア「雪女」
アナスタシア「雪女」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513498009/)
芳乃「朋殿ー」朋「どしたの、芳乃ちゃん?」
芳乃「朋殿ー」朋「どしたの、芳乃ちゃん?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512293082/)
音葉「こちらがハイランダーずんいちという楽器ですね」
音葉「こちらがハイランダーずんいちという楽器ですね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510751595/)
まゆ「朋さんとハロウィン」
まゆ「朋さんとハロウィン」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509376120/)
よかったらこちらもよろしくお願いします
このSSまとめへのコメント
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