どちらから誘ったのか、どれ程時間が経ったのか、そんなことはとうの昔に忘れてしまった。
「ん………ふぁ、ん、ちゅ」
「ぁ、ふ………れろ、んっ♥」
身体を繋げての接吻を、生まれたままの姿での接吻を、ダージリンは愛おしそうに受け入れている。
幾度となく逢瀬を重ね、共に夜を越えてきたが、彼女のスイッチはこの儀式で完全に入るようだ。
交わる唇を、舌を、視線を解いて白いシーツへ組み敷き、同性であっても見惚れる彼女の曲線美をじっくりと見下ろす。
普段の優美な佇まいからは想像し難い、甘える子猫のような仕草と、娼婦のような妖艶な表情に、私━━西絹代の脚の間に反り立つ『それ』が、一層主張を激しくした。
「ふふ、もう限界かしら?」
「………はい。ですから━━━」
今夜も、貴女の全てを頂きます。
皆まで言わずに、燃えるようにいきり立った砲塔をダージリンへ突き込んだ。
「んあっ、あ、やぁっ♥ん、ぁ、はぅっ、ああっ♥ん、ん、ふぁぁ♥」
「ぅ…く、はあっ…………」
いつもより少し乱暴に腰を動かす。上擦った嬌声が脳内に流れ込むと同時に、中の媚肉が蠕動を始め、侵入者である私を蕩かそうと襲いくる。
手持ち無沙汰になり、無意識に獲物を求める私の牙は、いつの間にかダージリンの首筋に届いていた。
「やっ……跡、ついちゃ、ぅあぁっ!?♥♥」
さっきとは、明らかに違う反応。一際激しく跳ね上がった身体と声を逃すほど、私の五感は鈍くない。
どうやら、『当たり』を引いたようだ。
首筋を吸い上げる唇が微かに吊り上がった。捕らえた獲物を貪る獣のような格好のまま、執拗に、丹念に、そこだけを激しく擦り上げる。
「あぁぁっ♥だめっ、だめ、だめぇっ♥そこばっかぁ、っ、ひぃ、ゃあぁ♥」
「っ、ぷぁ……」
「や、ぁ"~~~っ♥♥」
唇が首筋から離れると、喉を突いて出た特段艶かしい声。
鮮やかな紅花が咲いたことと、その花の持ち主が軽い絶頂を迎えてしまったことを確かめて、嗜虐的な悦びと征服感に潤う口元から熱い溜め息が零れた。
しかし、まだまだ足りない。
私の到達を待たずに、はしたなく達してしまった貴女を。
快楽に乱れて、全身で儚く呼吸をしている貴女を。
何より、蕩けた瞳で、物欲しげに此方を見上げる貴女を、もっと。
━━━━もっと、貴女を。
どす黒い欲望が中枢神経を駆け抜け、その後は躊躇わなかった。
繋がったままのダージリンの腰を掴んでぐるりと半回転、ベッドへうつ伏せにさせる。尚も私を咥えこんだまま、ねっとりと絡みつく秘所の中で、思わず暴発しそうになる自身を踏ん張って抑え込んだ。
「ダージリン……」
「ん、ぅぅ♥」
仄かな照明に映える背中に覆い被さり、耳元で囁く。枕に埋もれてくぐもった喘ぎが、震える身体から感じられた。
彼女の性感帯が耳だというのは最近知ったことだ。囁きほどの僅かな刺激で、電流が走ったようにびくびくと細い身体が震え、その快感を私にも直に伝えようとナカがきゅう、と締まる。
危うく、こちらも達してしまいそうだった。流石にこのまま動く訳にもいかず、一方的に停戦協定を結んで、爆発寸前の自身を挿入したまま必死に安全帯まで鎮めることにした。
「……今から、もっと激しくします。怖いかもしれませんが……」
大丈夫ですかと問う前に、答えは返ってきた。少しだけ此方に振り向き、熱情に潤んだ瑠璃色の瞳で、じっと私を見つめる。
━━━━ああ、何て狡いひとだ。
そんな瞳で見つめられて、我慢なんて出来やしないのに。
下腹部に溜まった欲望が、時は今かと鎌首をもたげていた。その欲に従うがままに、熱を孕んだ剛直を蜜垂れる秘所へと叩き付けた。
「ふぅ、んっ♥んん、う、んっ……♥ぅう、む、ふ、んぅ………っ♥♥」
悦楽を枕にぶつけた、微かな嬌声。それだけでも、私を煽るのには充分すぎた。
加速度的に勢いを増す律動は、濡れそぼった秘裂を絶え間なく蹂躙し続ける。浮かせた細い腰に劣情を打ちつける度に、ぱちゅぱちゅと淫猥な音が、宙に浮かんでは消えていった。
傍から見れば、獣の類と大差ない交わり。しかし、今の自分には、この瞬間が狂おしいほど好きだ。
高めた熱が解き放たれる予兆を感じて、大きく穿つような動きから、小刻みに奥を刺激する動きに切り替える。肉を打つ音の間隔は、途端に手拍子のように短くなり、容赦なく襲い来る快感を逃がそうとダージリンは健気に、必死にシーツを握りしめていた。
そして、間もなくその時は訪れた。
「っあ、あ、もっ、駄目です………っ!」
「んぅ♥ん"っ、~~~~~~~っ!!♥♥♥」
一番奥へ押し込んで、腰が抜けてしまう程の勢いで、脳髄が焼き切れてしまいそうな絶頂と共に、私はダージリンへ溜め込んだ濁精を解放した。
どくどくと脈打つ感覚に当てられたのか、直後に残りの精を搾り取ろうとダージリンの中が淫らに蠢き、蛇のように私の肉茎を刺激して、一滴残らず飲み干さんとしている。
しかし当の本人はそんな事には気づいていないようで、受容し切れず零れた絶頂感を涙に変え、絶え絶えの呼吸を続けていた。
密着し合った身体からは、体温から心音まで何もかもが、手に取るように伝わってくる。
時折聞こえてくる、鼻にかかった彼女の淫靡な声音や、思い出したかのように内部を擦るとたちまち涙を流して悶える身体を味わっているうちに、再び私の下腹部へ血液が集まるのを感じた。
私の中の情欲は、まだ満腹には程遠いようだ。
「……すみません、あの……………」
「ん………」
肯定の意だろうか、ダージリンはびしょ濡れの枕から顔を離し、数分ぶりに嬌声ではない声を聞かせてくださった。
「まだ、足りないんでしょう?……好きなだけ、好きなふうに、好きなこと、シていいからっ………」
それは、予想だにしなかったほど蠱惑的で、魅力的な誘惑だった。
「もっと、わたしをっ、めちゃくちゃにしてぇ………!♥」
本当に、私を煽るのが上手いひとだ。
全身の肌が粟立つのを感じた刹那、すぐさま彼女の身体を起こした。弾みでダージリンの中にあった私のモノが、ぬぽ、と間抜けた音を立てて抜けた。
「ぁっ…♥」
どろり、と先程放った白濁が、愛液と混じりあって寝具へ滴り落ちる。
悦楽に彩られたダージリンの顔が、切なさを僅かに滲ませた。
「そんな顔、なさらないで下さい。
………すぐ、代わりを差し上げますから」
依然として屹立し続けたままの怒張を擦り寄せ、再び耳元で囁く。短く頷いたその火照った身体は、確かに一瞬、びくりと強張っていた。
「ちゅ、ん、ちゅう……」
「ふぁ♥やっ、むね、そんな、にっ、やぁぁっ♥」
対面座位(というらしい)を選んだのは、枕に彼女の声を吸われたくなかった一心だった。
既に味わい尽くした右の乳頭は指で弄りながら、丹念にもう片方を舐る。
二度の絶頂を迎えた身体は、ほんの少しの刺激でも反応してしまうほどに出来上がっており、今ならば例え指の先しか触れることが出来ないとしても、彼女を頂点へと追いやることはできると思っている。
「や、じらさないでぇ♥、はやくっ、はやく動いてぇっ!♥♥」
私には休憩が必要だった。早急に動くこともできたが、それではすぐに果ててしまって、何とも味気ないだろう。
そういう訳で、先刻からひくひくと涎を垂らして私を受け入れている「そこ」には、完全に彼女を征服する為に必要な量を装填し終わるまで、おあずけを食らわせていた。
「ね、もう、げんかいだから………♥」
「ええ。私もです……っ!」
一体、どれだけ焦らしたのだろうか。
臨界点を振り切ったダージリンの懇願に耐えかねて、ついに三度目の抽挿を開始した。
「あっ♥く、ひぅ、あっ、あ、やらあぁぁぁっ!♥」
両手の指を絡める。快感からも、私からも、絶対に逃げられないように。
彼女の啼き声を塞ぐものは最早なく、直接耳に響くその声は、私の鼓膜を侵して思考をも溶かしていく。
「っく、おくっ♥あたってぇ♥いっ、ぁ、いいっ♥」
「もっと、奥、ですか?」
「あ"━━━っ♥♥や、ぐりぐり、ってぇ♥いっちゃ、あ、ふぁぁぁっ♥♥♥」
呂律の回らぬ舌で必死に伝えたおねだりは、先程引いた『当たり』の場所をもう一度思い出させる結果になった。
たちまち仰け反って絶頂を迎えたが、そう簡単には逃がしはしない。離れた体を無理矢理此方へ引き戻し、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、肉壺の中身をかき混ぜ続ける。
「『待って』っ、まってぇっ♥も、いってるっ♥いってるからぁ♥♥♥」
「?『もっと』ですか…?しょうが、ない、ですねっ……!」
「ちが、あ、やだ、やだっ♥ゃあ"ぁ~~~~っ♥♥♥!?」
興奮すると周りが見えなくなるのは、私の生来の悪癖だ。加えて、酔いつぶれたように蕩けた彼女の言葉の意味を推し量ることなどもっての他。結局、ダージリンの意思とは裏腹に、私は彼女を底無しの絶頂地獄へ堕としてしまった。
「とまんないっ♥イくの、ぜんぜんっ、とまらないのぉ♥ひっ、ぁぁっ♥んやぁぁっ♥♥♥」
『当たり』を意識して下から抉るように突き上げる度に、喉奥から絞り出したような桃色の悲鳴が飛び、内部の襞が異物である筈の私を悦んで受け入れ、じゃれ合うように纏わりついてくる。
まるで、元々そこにあるべきものが納まったように。
抗うのが馬鹿馬鹿しくなる程の、途徹もない快感の坩堝に、私達はとっくに脱出不可能な深さまで呑み込まれていた。
「くぅ、う、ぁあ!これっ、すごいっ、あぁっ!?」
「い"っ、あぁ"っ♥絹代さんっ♥きぬよさんっ♥♥」
「…っ、名前っ、もっと、もっとよんで……」
「絹代さんっ♥ん、や、あぁっ♥♥♥っあ♥、わたし、おかしくっ、おかしくなっちゃぅ………っ♥♥きぬよさんにっ、たべられちゃうぅっ♥♥」
混じり合う互いの身体だけが、私達の感じられる全てだった。
彼女の言葉は言い得て妙だった。私はその時確かに、彼女の全てを食らい尽くしてしまいたいと思ったのだ。
「いきますっ、ぅ、んんっ♥」
「ん♥だしてっ♥♥絹代さんの、ぜんぶっ♥びゅー、って♥わたしの、ナカにっ、だしてぇぇっ♥♥♥」
「ダージリ、ん"っ……あ、ぁ━━━……っ!!」
「きひゃぅ♥あ♥い、ぁぁぁぁぁああ!♥♥♥♥」
張りつめた糸が、ぷっつりと切れた。意趣返しともとれるダージリンの囁きが決め手となり、私はありったけの精を膣内へぶちまけた。ダージリンも、繋いだ手をきつく握り締めながら、背筋を反らせて果ててしまった。
「んぁ、あついの、びくびく♥ ってぇ………♥♥」
堰をきったように放出された白濁は、瞬く間にダージリンを奥まですべからく染め上げ、なお余って逸物と秘裂の隙間からとろりと溢れていた。
一秒が永遠にも思われた吐精の多幸感の中で、力なく私にもたれかかるダージリンと舌を絡ませ合う。
くちゅ、くちゅと脳内で響く水音は次第に遠くなり、やがて私達の意識は共に、夜の帳へと沈んでいった。
最後にこの目が見たのは、恍惚とした表情のまま、私の頬を撫でる、愛しいひとの姿だった。
以上です。ありがとうございました。
遅ればせながら西さんお誕生日おめでとうございます。
西ダジはいいぞもっと流行れ。
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