アリサ「起きてルナちゃん、もう朝だよ!」
ルナ「んん、もうちょっとだけ……あれ?」
ルナ「ここ、どこ……? ルナのお家じゃない!」 ガバッ
アリサ「やっと目が覚めたのね。おはようルナちゃん、ひょっとしてまだ寝ぼけてるのかな?」
ルナ(そっか、ルナたちはネクサスって人をやっつけて)
ルナ(いまはお姉さんと一緒に暮らしてるんだったっけ)
アリサ「どうしたの? 朝ごはん冷めちゃうから、早く降りてきてね!」
ルナ「う、うん。おはようお姉さん」
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アリサ「ごめんねルナちゃん。本当はもっと早く起こそうと思ったけど、あんまり気持ちよさそうに寝てたからつい……」
ルナ「ううん、でもパパとママの夢をいっぱい見れたからいいの!」
アリサ「そっか。きっとルナちゃんのこと心配して、夢の中に会いに来たのかもね?」
ルナ「そんなことより、今日の朝ごはんはお姉さんが作ったの?」
アリサ「わ、私だって料理ぐらい作れるよ! それにいつも作ってもらってばかりじゃ悪いからね!」
ルナ「ホントに? お姉さん、いつもルナの作ったご飯食べてばっかりじゃん」
アリサ「ふっふっふ、私を甘く見てるなら大間違いだよ。今日はエルフに伝わる伝統の味を教えてあげる!」
コンコンコン
ルナ「っ!」 ビクッ
アリサ「あれ? こんな朝早くからいったい誰だろ。 ちょっと待っててね」
ルナ(あの時と同じ……! お姉さんが危ない!)
ルナ「お姉さん、ルナも一緒がいい!」 ギュッ
アリサ「そう? じゃあ二人で行こっか」
ルナ「うん!」
ルナ(パパ、ママ。今度はルナがお姉さんを守って見せるから!)
アリサ「はーい、どちら様……ってユリアスさん!?」
ユリアス「おや、私が来るのがそんなにおかしいことかね?」
ルナ「お、オジサン!? どうしたの……?」
ユリアス「たまたま近くを通りかかったのでな。そう構えるな、いまの貴様らと殺りあう気はないさ」
ユリアス「もっとも、そちらから来るというつもりなら私は選り好みしないがね」 ニィ
アリサ「そんなこと言って、また何か企んでるんじゃないですか?」
ユリアス「そのように見えるかね? まあいい、今のところ貴様らに用はないよ」
ルナ「じゃあオジサン、ルナたちと一緒にご飯食べる?」
アリサ「ル、ルナちゃん何いってるの!?」
ルナ「お姉さんの作ったご飯、きっとみんなで食べたほうが美味しいよ!」
ユリアス「ほう? この私を食事に誘うとは大した度胸だな」
アリサ「……嫌なら帰ってもいいんですよ? 三人分だと取り分減っちゃうし」
ユリアス「そうか? ちょうど珍しい果実酒が手に入ったのだが仕方があるまい、これは私一人で嗜むとしよう」
アリサ「吸血鬼の舌も唸らせる私の手料理を振る舞ってやりますよ!」
ルナ(お姉さん、分かりやすい……)
ルナ「ねえオジサン、いまは何してるの?」
ユリアス「私は気づいたのだ。この世界のどこにも私を超える強者はいない」
ユリアス「そこで待つことにしたのだよ。この私と対等に渡り合える、強者の芽が育つのをな」
ルナ「ふーん、ルナにはよくわかんないや。お友達じゃダメなの?」
ユリアス「友か。バルタザールを超える者が再び現れるのなら嬉しいのだが」
ユリアス「……ところで、エルフには炭を食べる習慣があるのかね?」
アリサ「なっ! 失礼ですね、そりゃあちょっと焼きすぎたかもしれませんけど!」
ルナ「オジサン、ルナが作ったのと交換する?」 ヒソ
ユリアス「では、半分いただくとしよう」
アリサ「ルナちゃんまで!」 ガーン
アリサ「でも意外ですね。ヴァンパイアって普通のご飯も食べるんだ」
ユリアス「どうも誤解が多いな。別にヴァンパイアは生血しか飲まない訳でも、ましてや不死などでもないさ」
ユリアス「もっとも、貴様らの血など私の舌に合わなさそうだ。特に血の気の多いエルフなどはな」
ルナ「うふふっ! お姉さんの血、ルナのより美味しくなさそうなんだって!」
アリサ「むっ、何だか分からないけど負けた気がする!」
ユリアス「それに私は弱者の血など好かん。いまの平和ボケした貴様らの血など吸うに値せんよ」
アリサ「言ってくれますね……これでも場数を踏んで、ルナちゃんよりは強くなった自信はありますよ?」
ルナ「そんなことないよ、お姉さんはルナが守ってあげてるの!」
アリサ「強がらなくてもいいってば。ルナちゃんはお姉さんがしっかり守ってあげるからね」
ルナ「ルナの方が強いよ!」
ルナ「お姉さんなんてルナがいないと何にもできないクセに!」
アリサ「言ったねルナちゃん! あんまり調子に乗ってるとお仕置きだよ!」
ルナ「お姉さんのことはルナが守るって決めたもん!」
アリサ「ならどっちが強いか確かめる!?」
ルナ「もう手加減してあげないから!」
ユリアス「……ほう? これはまた余興でも楽しめそうだな」
ルナ(お姉さんはずっとルナのこと心配してくれてたし、いっぱい助けてもらった)
ルナ(だからルナの大好きなお姉さんを、今度はルナが守ってあげる!)
アリサ「0羽虫0羽虫0ゴブリノ対空リノリノ進化」
ルナ「お姉さん大っ嫌い!!」 HP:17→13→7→0
アリサ「ルナちゃん、これで私の気持ち分かってくれた?」
ルナ「うぅ、お姉さんはルナが守らなきゃなのに……!」
ユリアス「ククク……なるほど、腕は落ちていないようだな?」
ユリアス「だがこうも特等席で見せつけられては、私も滾ってしまうではないか!」
アリサ「ええっ!? ちょっと待ってくださいよユリアスさん、戦う気はないってさっき言ってたハズじゃ―――」
エリカ「やはりここに潜伏していましたか、ユリアス・フォルモンド!」 バァン
アリサ「エリカさん!?」
ユリアス「また貴様か。懲りずによく来るものだ」
エリカ「私の敵は姫様の敵! ここが貴方の正念場です!」
ユリアス「まあ落ち着け。ここで暴れても良いが、家主に迷惑だと思わんかね?」
ルナ「そうだよ! ルナたちのお家をめちゃくちゃにしないで!」
エリカ「後ほど賠償致します。さあ観念なさいユリアス・フォルモンド!」
アリサ「そういう問題じゃないですよエリカさん!?」
ユリアス「ふん、いいだろう! だがここは私と貴様の戦いには相応しくない」
ユリアス「またいつもの場所で待っているぞ。今度は私を倒せるといいな?」 バサッ
エリカ「待ちなさい! くっ……またもや逃げられましたか」
エリカ「申し訳ありません。お久しぶりだというのに、このような再開で」
アリサ「いえ、私もエリカさんと出会えて嬉しいですよ!」
エリカ「ありがとうございます。ところであのヴァンパイアから何か危害を加えられませんでしたか?」
ルナ「オジサンはいい人だよ! メイドのお姉さん、オジサンのこと嫌いなの?」
エリカ「奴に騙されてはなりません。あのヴァンパイアは凶悪極まりないケダモノなのですから」
ルナ「ふーん。嫌いなのに追いかけてるのって、お姉さん変わってるね」
エリカ「姫様にたてつく愚か者を抹殺するのが私の役目ですので」 ニコ
エリカ「積もる話はありますが、私はこれから奴を追わなければなりません」
アリサ「そっか。またいつでも会いに来てくださいね!」
エリカ「貴方たちの顔が見れてよかったです。それでは、私はこれで失礼致します」
ルナ「あのお姉さん、オジサンのこと好きなのかな?」
アリサ「あはは、喧嘩するほど仲がいいって言うしね。でもエリカさんの前で言っちゃダメだよ?」
ルナ「でも絶対そうだよね!」
アリサ「うんうん、結構似たもの同士だもんね」
エリカ「くしゅっ! 風邪ですか。また姫様に温めて貰わなければ……」
アリサ「うわっ、もうこんな時間? 森番の見回りに遅れちゃう!」
ルナ「お姉さん、ルナも一緒についていってもいい?」
アリサ「ダメだよルナちゃん、森は危険な魔物がいっぱいなんだから今日もお留守番ね」
ルナ「えーっ!? 見回りってただお散歩してるだけじゃん。それに魔物だって最近はみんな大人しいよ?」
アリサ「み、見られてたんだ……うーん、しょうがないなぁ。今日は特別だからね?」
ルナ「わーい! やったぁ、お姉さん大好き!」
アリサ「えへへ、ありがとルナちゃん。お姉さん頑張っちゃうから!」
ルナ「見てお姉さん、ドングリこんなにたくさん見つけたよ!」
アリサ「すごいね! もうこんな季節なんだ……ん?」
「ところでイザベル、俺たちはなぜ土を捏ねてるんだ……?」
「このあたりの土壌は魔力が豊富なのよ。ほらローウェン、黙って続ける!」
アリサ「イザベルさん? こんな人気のないところで何やってるんですか……?」
イザベル「あら、二人とも久しぶりね」
ルナ「あ! 槍のオジサンだ!」
ローウェン「お、オジサンか……俺はまだそんな歳じゃないと思うが」
アリサ「解呪の儀式、ですか?」
イザベル「そ。確かにローウェンはあの人を……カイルを手にかけたわ」
イザベル「でもそれは黒龍の呪いのせいよ。なら私のすべきことは決まっているわ」
アリサ「それでこの森に勝手に入ってきちゃったんですか。本来なら許可がいるんですよ?」
イザベル「ごめんなさいね。けれど、どうしてもこの辺りの素材が必要なのよ」
ルナ「たかいたかーい! オジサン、発進!」
ローウェン「オジサンじゃなくてお兄さんだ!」
アリサ「……ま、ルナちゃんに免じて今日は目をつむってあげますけど」
イザベル「ありがとう、感謝するわ」
イザベル「ところであの子……変ったわね」
アリサ「ルナちゃんですか?」
イザベル「ええ。前はその、かなり危険な雰囲気だったから……」
アリサ「大丈夫、根はとってもいい子なんですよ! そういうイザベルさんも少し変わりました?」
イザベル「私が? そうかしら」
アリサ「はい! 何か吹っ切れたような、そんな感じがします!」
イザベル「ふふっ……あなたが言うのなら、きっとそうなのね」
イザベル「ところでここで会ったのも何かの縁よ。ちょっと見て貰いたいものがあるのだけれど」
アリサ「私に見せたいものって何です?」
イザベル「……これね。胸が大きくなる魔女の秘薬」 コソ
アリサ「……! ゆ、譲ってくれるんですか?」 ゴク
イザベル「ごめんなさいね。本当はタダであげたいのだけれど、あいにくと今はローウェンの解呪でちょっと資金繰りが悪くて……」
イザベル「一本10000ルピでどうかしら?」
アリサ「そ、それはいくらなんでも高すぎですよ!」
アリサ「それに、本当に効果があるのかも怪しいし……」
イザベル「私は毎日これを飲んでいたわ」 タユン
アリサ「…………」
アリサ「半額の5000ルピなら考えますけど」
イザベル「それはちょっと……そうね、8000ルピならなんとかなりそうかしら」
アリサ「ろ、6000ルピならどうです?」
イザベル「7500ルピ。私もこれ以上は下げられないわ」
アリサ「な……7000ルピ! 今の私にはこれが限界です!」
イザベル「残念ね。この話はなかったことにしましょう」
アリサ「ううっ、ううぅ……! ならこの際、30000レッドエーテルも―――」
ルナ「待ってお姉さん、その人に騙されてるよ!」
アリサ「ルナちゃん!? なんてこと言うの!」
ルナ「パパが言ってたよ。全然知らない人よりも、ちょっと知り合いの方が危ないんだって!」
アリサ「もうルナちゃんったら、イザベルさんが私にウソをつくなんてありえないよ。ね、イザベルさん?」
イザベル「…………」
イザベル「……………………」
イザベル「そうね」
アリサ「ほらぁ! 私の言う通りじゃない!」
ルナ(今のはさすがにウソだってルナでもわかるよ!)
ルナ「魔女のお薬がエルフに効くかなんてわからないし、お姉さんは大人だからもう大きくならないよ!」
アリサ「そ、そんなことないよ! 私だってまだまだ成長期だもん!」
ルナ「でもお姉さん、ルナのよりぺったんこじゃん……」
アリサ「ルナちゃん、あとでお説教だよ。すみませんイザベルさん、これ一つ買ってもいいですか?」
イザベル「ところで二本買うと14000ルピでお買い得なのだけれど、どうかしら?」
アリサ「」
アリサ「」
アリサ「買います」
ルナ「いい加減に目を覚まして!」
ローウェン「おいイザベル、それはいくら何でも酷すぎないか?」
イザベル「ローウェンは黙ってて! 私がどれだけ過酷溢れるスキンガチャに貢いだと思っているの!?」
ルナ(さっきと言ってること違うよ!?)
アリサ「うふふ、これで毎晩マッサージしなくて済むんだぁ……」
ルナ「お姉さんも考え直して! あの人どう考えても嘘つきだよ!」
アリサ「ルナちゃん……まだそんなことを言ってるの?」
アリサ「イザベルさんは私の大事な友達なの。イザベルさんを悪く言うのなら、たとえルナちゃんだって容赦しないよ!」
ルナ「お姉さんだってルナの大事なお友達だもん! だからルナが助けてあげなきゃなの!」
ローウェン「やめるんだ二人とも! そんなくだらないことで争うな!」
アリサ「くだらない!? あなたに女の子の悩みの何がわかるっていうんですか!」
ルナ「オジサンは黙っててよ! いま関係ないじゃん!」
ローウェン「うぐっ! そ、それはだな……」
アリサ「ルナちゃん、今すぐイザベルさんに謝って!」
ルナ「お姉さんこそ、少しはルナのこと信じてよ!」
アリサ「もういい、ルナちゃんがそういう態度なら力づくでも謝らせてあげる!」
ルナ(お姉さんは優しいから、すぐこういう人につけ込まれるんだ)
ルナ(だったらルナが守ってあげる。お姉さんはルナの大事なお友達だから!)
ローウェン「イザベル、俺はどうしたらいい……」
イザベル「土でも捏ねてなさい」
アリサ「わ「わ「わたしの矢があなたを貫くぅ!」」」
ルナ「ルナもうお友達やめる!!」 HP:18→9→0
アリサ「今日は久しぶりにみんなと会えてよかったね、ルナちゃん」
ルナ「うん! ルナ、みんなとお友達になれてホントに良かった!」
ルナ(ヴァンパイアのオジサンにメイドのお姉さん、それに槍のオジサンと魔女のお姉さんも!)
ルナ「……あれ。そう言えば、お姉さんのお友達は?」
アリサ「え? 誰のこと?」
ルナ「お姉さんがいつも言ってた、一番大事なお友達だよ? 名前は確か……ロザリアって人!」
アリサ「ろざ、りあ……? うーん、そんな人知らないけど」
ルナ「……え?」
ルナ「なに言ってるのお姉さん……そんな訳ないよ」
アリサ「ごめんねルナちゃん、でも知らないものは知らないの」
ルナ「嘘! だってお姉さんは、そのロザリアって人を助けるためにルナたちと出会ったんだもん!」
ルナ「お姉さん言ってたよね、死は永遠のお別れだって……! その人とお別れしたくないから、ルナにもそう言ったんじゃないの!?」
アリサ「私の一番大事なお友達はルナちゃんだよ。今日は疲れてるよね、もう寝よ?」
ルナ「お姉さん変だよ……なんか、ルナの知ってるお姉さんじゃないみたい」
アリサ「ルナちゃん、どうしちゃったの? 変なのはルナちゃんの方だよ」
ルナ「あのときお姉さんが言ってくれたこと、今のルナにはすごくわかるよ」
ルナ(もうお友達を死なせたくないし、殺したいって思わない。みんなお姉さんのおかげなのに……!)
ルナ「でも、どうしてお姉さんがその人のことを忘れちゃったの!?」
アリサ「いい加減にしてよルナちゃん……! 私はロザリアなんて人は知らないったら!」
ルナ「お姉さん、本当にルナの知ってるお姉さんなの……?」
アリサ「私は私だよ。もう寝ようルナちゃん、明日になればきっと忘れるよ」
ルナ「やだ、怖い……! お姉さんは誰!?」
アリサ「怖がらなくてもいいよ。ルナちゃんのことは、お姉さんが守ってあげる」
アリサ「それに辛いことも悲しいことも、みんなネクサス様が消してくれるからね!」
ルナ「ネクサス、様……? ルナたちがやっつけたんじゃ、なかったの?」
アリサ「ここはね、災いの樹の中なの。ネクサス様が作った願望の世界みたい」
ルナ「なに、それ……? 意味わかんないよお姉さん!」
アリサ「ここでは望んだことが本当になるの。だからルナちゃんが望む限り、ずっとずーっと一緒にいられるよ!」
ルナ(ここは、ルナの夢の世界なの?)
ルナ(みんなとお友達になったのも、お姉さんと一緒に過ごしてるのも、みんなルナがそうしたいって思ったから……?)
アリサ「ああそっか、まだルナちゃんの会いたい人がいたよね。ほら!」 パァァ
ルナの父「ルナ、元気だったかい?」
ルナの母「ルナ、私たちはいつもルナを見守ってるわ」
ルナ「あ、あぁ……パパ、ママ……!」
ルナ(パパとママだ……! ずっと会いたかった!) ポロポロ
ルナの父「どうしたんだいルナ、そんな顔をして」
ルナの母「あらあら、嬉しいことでもあったのルナ?」
ルナ「やっと会えた……! パパ! マ―――」
アリサ『聞いてルナちゃん。死は永遠のお別れなんだよ』
ルナ「う……ぁ……違、う」
アリサ「どうしたのルナちゃん、ご両親に会いたかったんだよね?」
ルナ「みんな違うっ! パパもママも死んじゃったし、本物のお姉さんはそんなこと絶対にしない!!」
アリサ「どうしてそんなこと言うの……? ここにいれば救いの時が来るまで、私やお友達のみんなと幸せに過ごせるんだよ」
ルナ「ルナ、お姉さんやみんなとお友達になりたいって思った。ここにいてすっごく楽しかったよ」
ルナ「でもルナは、まだみんなと仲直りしてないもん! まだルナとお姉さんはお友達じゃないの!」
ルナ「だからルナは元の世界に戻って、早く本物のお姉さんとお友達になりたい! 偽物のあなたは消えてよ……!」
アリサ「そっか……またルナちゃんはそういうこと言うんだね」
アリサ「それじゃ、お姉さんがルナちゃんの記憶を消してあげる。そしたらまたずっと一緒にいられるよね?」 ニコ
ルナ「今までそうやって、ルナのこと騙し続けてきたんだね……!」
アリサ「はぁ……ルナちゃんは黙って私に守られていればいいのに、どうしていつもこうなっちゃうのかな」
ルナ(怖い……けど見ててねパパ、ママ。それにお姉さんも)
ルナ(ルナは絶対ここから出て、もう一度みんなとお友達になってみせるから!)
アリサ「それじゃあ、今のルナちゃんは消えてね!」
ルナ「ルナは偽物のあなたなんかに負けたりしない……! 見ててねお姉さん!」
アリサ「偽物、偽物ってうるさいなぁ……偽物はあなたの方じゃない」
アリサ「私の思い通りにならないルナちゃんなんて、もういらない!」
ルナ「パパ、ママ! 今だけもう一度、ルナを守って!」
ルナ「痛、ぃ……なん、でぇ……?」 ドサ
アリサ「約束したじゃないルナちゃん。ずうっとお友達だって」
ルナ(いや、だぁ……ルナ、まだ本物のお姉さんと、仲直りしてない、のに……!)
アリサ「それじゃあルナちゃん、またね!」 ドシュッ
ルナ(死にたく、ないよ……! パパ、ママ……お姉、さ……) ボシュン
アリサ「……あーあ。今回のルナちゃんもダメだったかぁ」
アリサ「どうしていつも私の言うこと聞いてくれないんでしょうね? イリスさん」
イリス「…………」
アリサ「えへへ、またルナちゃん消しちゃいまいた。もう一度新しいルナちゃん作らないとダメですね!」
イリス「……ここは貴方の願望の世界。アリサ、貴方が望むだけ願いは叶います」
アリサ「イリスさん、こんな素敵なところに連れて来てくれてありがとうございます!」
イリス「……そんなことはありません」
アリサ「それにしてもロザリアって一体誰なんだろ? 思い出そうとすると頭の中にもやがかかったみたいに……まあいっか」
アリサ「私は一番守りたい人、ルナちゃんが傍にいればそれで十分!」 パァァ
ルナ「あれ、ここどこ……? あ、お姉さん!」
アリサ「ふふっ、やっぱりルナちゃんは私が守ってあげないとダメなんだから」 ギュッ
イリス(ああ……この者の心は完全に壊れてしまっている)
イリス(これではネクサス打倒など、夢のまた夢……ならばせめて、すべてが終わるまでここで安寧を享受している方が良いのでしょうか……)
アリサ「それじゃあ夜も遅いし、一緒に寝よっか? ルナちゃん」
ルナ「うん。お姉さん、ルナを一人にしないでね?」
アリサ「大丈夫、お姉さんがついてるよ。ねえルナちゃん、明日はどんなことしたい?」
ルナ「ルナ、お姉さんと一緒ならなんでもいいよ!」
アリサ「えへへ、そっかぁ。大好きだよルナちゃん」
ルナ「うん! ルナもお姉さんのこと大好きだよ!」
おわり
「ここは……元の世界じゃないのか?」
アリサ「だ、誰!? ……ってローウェンさん?」
ローウェン「キミはあの時の、なぜ俺の名前を?」
ローウェン(……いや、それよりも)
影『オジサン、こんな時間にどうしたの?』
ローウェン「そうか……キミもこの世界にとらわれてしまったんだな」
アリサ「へ? どうしたんですローウェンさん。いつもとなんか変ですよ?」
影『オジサン、ちょっと怖い……』
ローウェン「一応謝っておく。―――すまない!」 ザシュッ
影『きゃあぁぁぁっ!!』 ボシュン
アリサ「あ……ああああああああああッ!!!」
アリサ「なんで!? どうして!? 私のルナちゃんを返してよ!!」
ローウェン「一度はキミを助けそびれてしまった。だが俺にはこうすることしかできない」
ローウェン「構えてくれ。キミの居場所はここじゃない」
アリサ「よくも……よくもルナちゃんを!! 私が守るって決めたのに!!」
ローウェン「さあ、行くぞ!!」
☆原初の炎が世界を救うと信じて……! ご愛読ありがとうございました!
DORAJI END
敗因は王への忠誠不足
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