【ガルパン】 練習試合前日の戦車倉庫 そど子の決意 (25)

前作 【ガルパン】 ある日の生徒会室 杏の想い

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1508351394

そど子 「冷泉さーん!走りなさーい!予鈴がなったわよ!」

麻子 フラッ、 フラッ、

そど子 「留年の心配がなくなったからって、
たるみすぎよ!」

麻子 「朝っぱらからうるさいぞ、そど子。」

そど子 「卒業するまではきっちり取り締まりますからね!覚悟なさい!」

麻子 「フッ、 戦場に立とうともしないお前に何も言われたくない。」

そど子 「戦場? 何よそれ。」

麻子 「意味すらわからないのか? 貴様、それでも大洗女子の戦車乗りか!」

そど子 「貴様!? あなた先輩に対してその言い方、いいかげんにしなさいよ!」

麻子 「明日からは朝練だ、ここで顔をあわせることもない。安心しろ。」
「そど子、西住さんは、そど子のことをずっと気にかけてる。」

そど子 「えっ? 隊長が?」

麻子 「先に行くぞ、そど子。」

そど子 「あなたに言われたくないわよ!」
「(言われなくったって…)」

数日後 昼休みの学食

ぴよたん 「いっしょに食べてもいいだだちゃか?」

みほ 「ぴよたんさん。ええ、どうぞ。」

華 「学食でご一緒するのは初めてですね。」

麻子 「と言うより戦車道以外で学校で見かけるのは初めてかもしれん。」

ナカジマ ホシノ スズキ 「私たちもいいですか~」

優花里 「レオポンさんも車庫以外で会うなんてめずらしいですね。」

沙織 「制服姿初めて見たかも。」

みほ 「ぴよたんさん。毎日、朝練にまで出ていただいてありがとうございます。」

優花里 「他の3年生の先輩達は選択科目の時間と放課後練習ですけど……。朝、辛くないですか?」

ぴよたん 「大丈夫だっちゃ。」

華 「春からは東京の専門学校でゲームクリエイターを目指すんですよね。準備は進んでますか?」

ぴよたん 「戦車に乗ることが何よりの準備だっちゃ。」

みほ 「戦車がですか?」

ぴよたん 「戦車に乗ってるような戦車ゲーム作るのが夢だっちゃ。だから今は体に戦車の感覚を染み込ませてるところだっちゃ。」

優花里 「スゴイです~。早くやってみたいです~。」

ぴよたん 「隊長が戦車道の面白さを教えてくれたおかげだっちゃ。隊長のおかげで私にも夢ができたっちゃ。」
「本物の戦車に乗りたくなるようなゲームを作って戦車道の競技人口を増やすだっちゃ。」

麻子 「すそ野が広がれば広がるほど西住さんのような優秀な選手はより高い頂点を目指して行けるというものだ。」

みほ 「麻子さん、頂点だなんて……////」

ぴよたん 「お役に立てるとうれしいだっちゃ。」

ナカジマ 「私たちも隊長にお礼を言いに来たんだ。」
「このあいだの『ハードバンク』の話、正式に3人揃って採用、決まったよ。」

みほ 「本当ですか!おめでとうございます。」

沙織 「『ハードバンク』って戦車道実業団チームの?」

優花里 「プロ化の準備を進めているチームに採用なんてスゴイです~。いきなり大洗女子からプロ選手の誕生です~。」

スズキ 「あっ、あっ、違う違う。選手じゃないんだ。」

ホシノ 「メカニックとして採用されたんだ。」

麻子 「工学系の大学出ててもプロチームのメカニックなんて難しいのに凄いな。」

スズキ 「偶然、ハードバンクの監督が全国大会の決勝をテレビで見てたらしくてね。」

ホシノ 「『あのポルシェティーガーをあそこまで走らせるとは…。』って思ってくれたみたいで。」

ナカジマ 「隊長のおかげだよ。『日本一の戦車道チームのメカニック』って言う実績が何よりの決め手だったらしいから。」

みほ 「とんでもないです。日本一になれたのは自動車部のみなさんがいつも万全の状態に整備してくれたおかげです。」

スズキ 「うちの両親なんて泣いて喜んでるよ。」

ホシノ 「うちも、『あんたみたいなバカが一流企業に…』って。」

ナカジマ 「うちも『隊長さんには足向けて寝られない。』って。」
「隊長、ありがとね。3人揃ってプロ戦車道に携わっていけるなんて夢みたいだよ。」

みほ 「いえ、私は何も。」

優花里 「ハードバンクの拠点は福岡ですよね。」
「………みんなバラバラになっちゃうんですね。」

ナカジマ 「そんな、シンミリしな~い。」

ツチヤ 「センパ~イ。一人にしないでくださ~い。」

麻子 「凄くシンミリしてるヤツが来た。」

ツチヤ 「お願いです~。来年私をハードバンクに引っぱってくださ~い。」

ナカジマ 「オイオイ、そんな事、約束できる訳ないだろ。」 ナデナデ

ツチヤ 「ずっと先輩達と一緒に戦車いじってたいです~。」

スズキ 「その事で隊長に提案があってね。」

ホシノ 「ツチヤの負担を出来るだけ軽くしてやれないかと思って。」

ナカジマ 「ある程度のメンテナンスは全員が出来る様に、今、毎日指導してるところだけど。みんな思った以上にのみこみがよくてビックリしてるよ。」

みほ 「いえ、自動車部のみなさんの指導のおかげです。」

ナカジマ 「その中でもスジのいいのを四、五人選抜して専門的なことを教えていこうかと思うんだけど、どうかな?」

みほ 「来期のメンテナンス力の低下はずっと気にしていたところなので、とてもいい考えだと思います。」
「人選は自動車部のみなさんに一任します。」

ナカジマ 「じゃあ、早速。秋山さん当確ね!」

優花里 「私ですか?」

スズキ 「戦車の知識は群を抜いてるね。」

ホシノ 「プラモを作ってるだけあって構造も強いし。」

ナカジマ 「ツチヤの片腕になってくれると思うよ。」

優花里 「光栄です!」
「秋山優花里!大洗女子戦車道チームのため、身を粉にして働きます!」

ナカジマ 「その次の年の事も考えて、何人か一年生も含めて選んでみるよ。」
「隊長、私たちにできる恩返しってこれくらいの事だから……。」

みほ 「先輩……。ありがとうございます。」

“ガタッ” 少し離れた席を立つそど子

みほ 『!』

麻子 『!』

みほ 麻子 『!』

麻子 「西住さん、ちょっと話があるんだが。」

みほ 「私も麻子さんにお願いしたいことが。」

麻子 「まずは……。」

みほ 「その間に……。」

みほ 「麻子さんの負担が大きいですが……。」

麻子 「気にするな、きっと上手くいく。」

みほ 「では、ラストスパート作戦。決行です!」

麻子 「おぉ~!」

翌日、昼休みの図書室

そど子 コツコツ コツコツ

麻子 「何なら教えてやろうか?」

そど子 『!』
「なに言ってんのよ、だいたいあなたまだ2年じゃない。」

麻子 「『一生懸命やったけどダメでした~』って言うスタイルだけの受験勉強だな。」

そど子 「何ですって!」

麻子 「本当に本気だと言えるのか?」

そど子 「…………」

麻子 「そど子が本気ならいつでも面倒みてやる。」

そど子 「いいかげんに………」

麻子 「じゃあな。」




みほ 「どうでしたか?麻子さん。」

麻子 「今日のところはまだ……。」
「でも、一週間もあれば確実に……。」

みほ 「では、ゴモヨさんの方もお願いします。」

麻子 「あぁ、まかせとけ。」

数日後 昼休みの図書室

そど子 コツコツ コツコツ

麻子 「何なら教えてやろうか?」

そど子 「毎日、毎日しつこいわね!」

麻子 「会長から聞いた。楽勝で受かるはずの滑り止めに落ちてたんだってな。」

そど子 「………」

麻子 「それで心が折れて、『いっそダメなら戦車道の練習に出て後輩達の役にたちたい。』か?」

そど子 「私がどうしようと勝手でしょ!」

麻子 「まぁ勝手だが、後輩達のせいにされちゃいい迷惑だ。」
「本命は国立なんだろ。いつまでスタイルだけの受験勉強をしてるつもりだ?」
「私はいつでも協力できる準備はできてる。」

そど子 バンッ テーブルを叩く
「毎日、毎日偉そうに!2年のあなたに何ができるのよ!」

麻子 「信用してないのか?だったら明日、解いてほしい問題を持ってこい。」

そど子 「言ったわね。私が持ってきた問題を解いたら、あなたに頭下げて家庭教師お願いしてやるわよ!」

麻子 「解けなかったら、もう干渉するのはやめてやる。」




麻子 「西住さん。かかったぞ。」

みほ 「やりましたね麻子さん。」

翌日 昼休みの図書室

麻子 「持ってきたか?」

そど子 「えぇ」

麻子 「じゃあ、早速やらせてもらう。」

そど子 『有名予備校、難関大学対策模試。正解率3%の超難問。いくら冷泉さんでも解けるわけ………」

麻子 「出来たぞ。」

そど子 「嘘でしょ!?」

麻子 「合わせてみろ。」

そど子 「…………合ってる。」

そど子 「こんなもの無効よ!」
「……もう、浪人する覚悟は出来てる、今さら、何やったってただの悪あがきよ、それなら少しでも戦車道の練習に出てみんなの役にたちたい。みんなと……一緒にいたい……。」

麻子 「『しりぞいたら道はなくなる。』西住さんからの伝言だ。」

そど子 「隊長から?」

麻子 「大学選抜戦、私たちはライバル校の援軍を得て勝つことができた。」
「でも、あの試合、援軍が来る前に隊長は大学選抜チームの前に向かって行った。」
「そど子もその後ろ姿を見ただろ。」
「どんなに困難な状況でも、悪あがきだなんて戦い方はしない。」
「最後の1輌が白旗をあげるまで勝負を捨てたりしない。勝つために最善の方法を常に考えて走り続ける。」
「そど子も隊長のそんな姿を見てきたはずだ。」
「その隊長が誰よりもそど子のことを気にかけてる、『受験勉強に集中できる環境を作ってやれなかった』と、自分を攻めている。」

そど子 「隊長が……。」

麻子 「私たちの隊長はそういう人だ。」

麻子 「私は言いたい事は全部言わせてもらった。あとはそど子が決めろ。」

練習試合前日の戦車倉庫

杏 「明日は勝つぞ!」

「オォー!」

杏 「白旗をへし折るぞ!」

「オォー!」

杏 「青春するぞ!」

「・・・・おぉ?」

桃 「やめて~~////////」

そど子 「西住隊長!」

全員 「!」

そど子 「私、明日の練習試合が終わったら受験勉強に専念したいと思います。」
「3年生で私だけ練習に穴を開けてしまうけど許してください。」

みほ 「………」

みほ 「それは許可できません!」

麻子 「ここまで来て何を甘えたこと言ってる。」

そど子 「なんで……あなた、私に……。」

麻子 「そど子はまだわかってないらしい。」
「西住さん言ってやってくれ!」

みほ 「本当だね。」
「そど子さん、受験勉強に専念すると決めたなら『今すぐです!』」

そど子 「隊長……。」

みほ 「そど子さん、申し訳ありませんでした。」

そど子 「頭下げるなんてやめてよ、隊長が謝ることなんて何も……。」

みほ 「私、先輩の厚意に甘えてました。受験勉強に専念する環境を作ってあげなくちゃいけないのに、先輩の置かれている状況を知りながら8輌の戦車を動かすことばかり考えて、受験まで1ヶ月を切ってるこの時期まで先輩を追い詰めてしまって……。」

そど子 「悪いのは隊長じゃない。私が自分に甘かったから。」
「戦車道を落ちた時の言い訳にしようとしてたの。」

そど子 「『しりぞいたら道はなくなる』隊長の言葉で目が覚めた。」

そど子 「やるからには、私、勝つわ!絶対に合格してみせる!」

みほ 「はい!その意気です。」

そど子 「隊長にお願いがあるの。私、この受験に勝つために最善の方法をとりたい。」

みほ 「はい、もちろんです。」

そど子 「それには、冷泉さんの支えが必要なの。冷泉さんとなら、どんなに辛くても頑張れる、冷泉さんとならきっと勝てる。」

そど子 「受験が終わるまで冷泉さんを……私に下さい。」

みほ 「////////」

優季 「うわ~愛の告白~。」

おりょう 「嫁にする気ぜよ。」

華 「家庭教師と生徒が親密な関係になるのはよくある話です。」

沙織 「華、それって…Hなやつじゃ?」

麻子 「////////そど子、ちゃんと言葉を選んでくれ!おもいっきり誤解されてるぞ。」

そど子 「Ⅳ号の操縦手が抜けるのは、大きな痛手だけど……。」

みほ 「それも想定済みです。」

みほ 「明日の練習試合はカモさんを除く7輌でのぞみます。」
「パゾ美さんはアリクイさんの砲手をつとめてもらいます。ぴよたんさんは装填手に専念して下さい。」
「麻子さんが抜けたⅣ号の操縦手はゴモヨさんにお願いします。」

そど子 「いくらなんでも、ゴモヨにⅣ号の操縦手は荷が重いんじゃ……。」

麻子 「ゴモヨ、見せてやれ!」

ゴモヨ 「………」

麻子 「練習どおりやればいい。」

ゴモヨ 「うん!」

みほ 「レオポンさんいつもの位置にお願いします。」

ナカジマ 「了解。ツチヤ、前進。」

みほ 「落ち着いていきましょう。」
「では、前進!」

ゴモヨ 『止めてやる!そど子を安心して受験勉強に集中させてやるんだ……。』

そど子 「この位置どりって……。」

全員 「行けー、ゴモヨー!」

ナカジマ 「おぉ~いいぞ~、砲塔旋回。」

そど子 「決勝、黒森峰戦。」

全員 「止めろー!」

ゴモヨ 「止まれー!」


「………」


ゴモヨ 「隊長、ごめんなさい。目標の1メートルも手前に………」

みほ 「でも角度はウィークポイントの真正面をとらえてます。」
「華さんならこの距離でも撃破できます。」

ゴモヨ 「隊長?」

みほ 「はい、ゴモヨさん合格です!」

全員 「オォーー!」
「いいぞ~ゴモヨ~」

ゴモヨ 「そど子、私、合格したよ!次はそど子の番だからね!」

麻子 「もう一度確認する。本気か?」

そど子 「もちろん!」

麻子 「よし!じゃあ今日からそど子の家に泊まり込ませてもらう。いいな!」

そど子 「望むところよ!」

麻子 「必ず合格させてやる。約束だ。」
「そど子はちゃんと約束を守ってくれたからな。」

そど子 「じゃあ、私もちゃんとしないとね。」

お辞儀

そど子 「私の家庭教師になって下さい。」

麻子 「////////」

杏 桃 柚子 「おはよ~。」 朝練の風紀委員の代わりに、校門に立つ3人

大洗女子生徒 「おはようございます。」

杏 「は~い、おはよ~。」

大洗女子生徒 「おはよ~ございま~す。」

桃 「コラ!そこ、歩きながらスマホを使うんじゃない!」

柚子 「会長、あれ何でしょう?」

ナカジマ ホシノ スズキ 「おはよ~」

そど子 「会長、夕食と夜食の差し入れありがとう、美味しかった。勉強に集中できて助かったわ。」

杏 「食事は受験勉強中のささやかな楽しみだから役に立てたならうれしいよ。」

桃 「それより、なんなんだこのリアカーは?」

ナカジマ 「あぁこれ、冷泉さん専用寝台車。」

柚子 「ん?まぁ~よく寝てること。」

ホシノ 「武部さんから『そど子さん1人じゃ絶対無理』って言われてね。」

スズキ 「寝起きが悪いのは聞いてたけど、ここまでとはね~。」

ナカジマ 「あんまりヒドイからとりあえず制服だけ着せて乗っけてきたってわけ。」

桃 「冷泉!起きろ!学校だぞ!」

麻子 「スーー、スーー」

杏 「そど子、今夜は武部ちゃんが食事の用意してくれるからね。」

そど子 「なんか申し訳ないけど助かるわ。」

麻子 ムクッ
「沙織のメシも美味いぞ!」

そど子 「ワァッ、起きた!」

麻子 バタッ

そど子 「また寝た。」

桃 「いいかげんに起きろ!」

昼休み
優花里 「あの2人ずっと勉強してますね。」

華 「麻子さんがお昼寝しているところまったく見なくなりました。」

みほ 「麻子さんに聞いたら、まだ安全圏じゃないけど可能性は見えてきたらしいよ。」

沙織 「頑張ってる2人に料理で応援するか!」

みほ 「会長と交代で食事を差し入れしてるんだよね。」

沙織 「会長は縁起担いで、やたら『カツ』の日が多いらしいから、私はできるだけヘルシーに野菜メインにしてるの。」

華 「いよいよ勝負の日も近いですね。」

受験当日 試験会場

そど子 『しりぞいたら道はなくなる』

『大洗女子の戦車乗りの意地見せてやる!』


試験終了後

『部屋に戻ると冷泉さんは自分の荷物をまとめて私が帰ってくるのを待っていた。』

『私にひと言「お疲れ様」と言って部屋を出て行った。聞いたこともない優しい声に私はしばらく立ちつくした。』

『私は慌てて「今までありがとう」と後ろ姿に叫んだけど「礼なら合格してからにしてくれ」って、今度は相変わらずの無愛想な返事だった。』



『この部屋こんなに広かったかしら』



合格発表日の戦車倉庫

全員 「!」

そど子 無言のまま麻子に歩み寄って行く

そど子 「うっ………うっ………」
ギュッ
「うわ~~~」

麻子 「どっち……なんだ?」

そど子 「ありがとう。」

麻子 「…………おめでとう。」

全員 「オォーー!おめでとう!」

そど子 「うわ~~~」

麻子 ギュッ

麻子 「うっ………うっ………」
「よかった……本当、よかった………」

そど子 「えっ?あなた!ちょっと離しなさい。」

麻子 「離すもんか。そど子に泣き顔を見られてたまるか!」

そど子 麻子 「うわ~~~うわ~~~」


お読みいただきありがとうございました。





このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom