ルビィ「愛を込めて」 (14)
満月が照らし出す、午前2時
薄暗い明かりの下、ルビィは毛糸を紡いでいた
何かに憑かれたように、せっせと使い慣れた編み棒を取りまわしていく
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編み物は心を織り込んでいく、なんて言葉を読んだことがある
単純作業、何十何百もの繰り返しの中…贈る相手、想う相手のことを考えながら形作っていく
ルビィが今回贈るのも、その想う人
人生を共にした、大好きな人
ずっといっしょの、最愛の人
「ルビィ、こちらがわたくしからですわ」
当日の夜
真っ赤な包装紙に包まれたプレゼントを、お姉ちゃんから受け取る
断りを入れて、丁寧に紙を開き中身を取り出す
中から出て来たのは…ピカピカのソーイングセット
「あなた、中学の時買ったやつのままでしょう…?良かったらそれを使いなさいな」
「うん、ありがとう…!お姉ちゃん」
この歳になっても、誕生日プレゼントがとっても嬉しい
新たな自分のものが増えるワクワクと
自分の事を見て、考え、選んでくれたその気持ちに胸が熱くなる
「それじゃ、あまり遅くまで起きてないで…早く寝なさい」
プレゼントを渡してくれて
いつものように軽く言葉を投げかけ、寝る支度に入るお姉ちゃん
…その袖を軽く引っ張って、引き留める
「待って、お姉ちゃん」
「……はい、お姉ちゃん」
「…これは?」
訝し気な目で見てくるお姉ちゃんに、少し照れながら説明する
「これから寒くなるし…ルビィからお姉ちゃんに、プレゼント」
「……」
それでも、まだ表情に?印を残した、お姉ちゃん
「……今日はルビィの、誕生日よ…?」
「うん、でも…」
「でも……?」
「今日はお姉ちゃんが…ルビィのお姉ちゃんになってくれた日、だから」
「ルビィ!早くしないと置いていくわよ!」
「待って!お姉ちゃん」
誕生日も過ぎ、いつもと同じ朝が来る
寝ぼけた目をこすりながら食パンを咥え、駆け足で玄関までへと向かう
外履きの靴を履き、既に姿の見えないお姉ちゃんを追う
お姉ちゃんは、ルビィのことなんか構わず先に行ってしまったみたい
バスを逃したら最悪、歩いて学校まで向かわなければならない…そうなったら遅刻確定
少し青ざめた顔で石段を駆け下り、いつもの道を走って進む
たおやかな所作で先を行くお姉ちゃんの背に向かって走る
お姉ちゃんの後姿が見えてきた
いつもの黒セーラー、いつもの通学鞄
ただいつもと違うのは……首を覆う一枚の布
少し立ち止まって食パンを一思いに口に詰め込むと再度駆け出し、お姉ちゃんの横へと並ぶ
その首元に結わわれた真紅のマフラーと
追いついた時の、少し恥ずかしそうにするお姉ちゃんの横顔で
ルビィの胸は、いっぱいになりました
おわり
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