ほむら「貴女がくれたもの」 (234)

※注意事項

初投稿です。東方とのクロスになります。

割と長いですが台本形式ですのでサクサク読めると思います。

独自の設定や解釈があります。あくまで二次創作としてお楽しみください。

ほむほむが好きです。でも藍様はもっと好きです。

セリフについて下記のようになってます。

「 」 通常の会話文

( ) モノローグ

『 』 魔法少女の念話

《 》 藍様の術による念話

[ ] 電話等

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


それでは投下します。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1504338827

藍「御呼びですか、紫様」

紫「藍、そう遠くない未来に外の世界で異変が起こるわ」

紫「幻想郷にも影響が及びかねない規模よ」

紫「貴女は外の世界に行き其れを未然に防いで貰えるかしら?」

藍「わかりました」

藍「具体的な異変の内容は?」

紫「其れを調べるのも貴女の仕事よ」

紫「一つ言えるのは、凄まじい力が渦巻いているという事」

紫「現地に魔法少女と呼ばれる者が居るから、接触して上手く情報を引出しなさい」

紫「其れと、明日から貴女には見滝原中学に通って貰うわ」

藍「明日!? また急ですね」

紫「貴女は外の世界にも精通しているし、老若男女誰にでも化けられるでしょう?」

藍「そう言う問題では無いのです…其れに何故その学校なのですか?」

紫「その学校に魔法少女が居るからよ。それくらいは調べてあるわ」

紫「転校手続きは済ませて置いたから、早速向かって頂戴」

藍「はい、お任せください」

紫「頼んだわよ、藍」


藍(化けるなら今の私の姿から離れている方がいいわね)

藍(霊夢を少し幼くしたイメージにしよう)

藍(序でに口調も変えようかしら…)

――ほむら転校の一週間前


早乙女「本日は皆さんに転校生を紹介します」

さやか「そっちが後かよ」

早乙女「八雲さん、入って」

藍「はい」

さやか「うわっすげぇ美人」

まどか「綺麗な子だね」

早乙女「それじゃ八雲さん、自己紹介いってみよう」

藍「八雲藍です」

藍「東北の田舎から来たので分からない事も多いと思いますが、友達として色々教えてくれたら嬉しいです」

藍「よろしくお願いします」

早乙女「八雲さんは一番後ろの空いている席に座ってね」

――HR終了後


女子生徒A「八雲さんって前はどんな学校に居たの?」

女子生徒B「田舎ってどんなところ?」

女子生徒C「すっごい髪綺麗だよね、どんなシャンプー使ってるの?」

女子生徒D「部活とかやってた?」

藍「前は―――」

さやか「転校生、早速囲まれちゃってるね」

まどか「綺麗な子だし仕方ないよ」

仁美「でも、不思議な雰囲気の方ですわ」

さやか「そう? あたしは何も感じないけど」

仁美「ええ、普通の人とは違う感じがしますわ」

さやか「普通の人とはって・・・じゃあ何だって言うのさ」

仁美「それは・・・私もそう感じただけですので・・・」

まどか「ならさ、帰りに誘って見ない?」

まどか「友達になれたなら、それはとっても嬉しいなって」

さやか「そうだね。いつもの喫茶店にでも連れていってあげますか」

仁美「では、まずはお昼にでも誘ってみませんか?」

――昼休み


さやか「何なんだあの転校生はああぁぁぁ」

さやか「才色兼備、文武両道でおまけに無敵超人だぁ?」

まどか「さやかちゃん、落ち着いて・・・わけわかんないよ」

仁美「それより、早く声を描けませんと」

さやか「そうだった! おーい転校生」

藍「何? えぇと・・・」

さやか「あたしは美樹さやか。よかったら一緒にお昼食べない?」

藍「いいよ、さやか」

さやか「!」

藍「あぁごめん。私の住んでた処がそうだったから」

藍「馴れ馴れしかったかな?」

さやか「ううん、私も藍って呼んで良い?」

藍「ああ」

まどか「さやかちゃんばっかりずるいよ」

さやか「いやーごめんごめん」

まどか「私は鹿目まどか。まどかって呼んでね」

藍「よろしく、まどか」

仁美「私は志筑仁美と申します。よろしくお願いしますわ」

藍「ああ、よろしく仁美」

さやか「よーしっ、あいさつも終わったところでご飯食べようか」

――放課後


まどか「それでね、さやかちゃんたら」

藍「はは、さやかは中々ユニークだね」

仁美「さやかさんらしいですわね」

さやか「なんだとー、そう言うまどかだってこの前――」

まどか「そ・・・その話はいいよぉ」

仁美「もうこんな時間・・・私そろそろ行かなくては」

さやか「お嬢様は大変だね~」

まどか「頑張ってね仁美ちゃん」

藍「またね、仁美」

仁美「はい。それでは失礼致します」

さやか「この後どうしようか?」

藍「そうだな・・・この街を案内してくれると有り難いが」

まどか「ウェヒヒ、藍ちゃんにお勧めのお店に教えてあげるね」

さやか「あーいいね、そうしようか」

藍「ふふ、期待しておくよ」

――ほむら転校日


早乙女「本日はまた、転校生を紹介します」

さやか「珍しいね、この時期に二人もなんて」

まどか「どんな子だろうね」

藍(転校生か・・・)

早乙女「暁美さん、入って」

さやか「うわっまたしても美人」

まどか(えっ? あの子?)

藍「まどか? どうかした?」

まどか「な・・・なんでもないよ」

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

ほむら(まどか・・・今度こそあなたを救ってみせる)チラ

さやか(まどかのことを睨んでる?)

まどか「――!」ビクッ

ほむら「!」

ほむら(後ろの席の子は誰?)

ほむら(あんな子、今までの時間軸には居なかった)ジー

ほむら(とにかく注意する必要が有りそうね)ジー

まどか(あれ? 私じゃなかったのかな)

藍(私を見てる?)

藍(この一週間おかしな事は無かった)

藍(彼女が来たことにより転機が訪れるか・・・?)

早乙女「暁美さんは中沢くんの隣に座って下さい」

早乙女「それではHRを始めます」

――HR終了後


少女A「暁美さんって前はどんな学校だったの?」

少女B「部活とかやってた?」

少女C「暁美さんも髪綺麗だよね」

ワイワイガヤガヤ

さやか「また囲まれちゃってるよ」

さやか「話題を奪われた藍さん、心境は如何ですか?」

藍「私にはさやかが居るから十分さ」

さやか「な、なに言ってんのよ///」

まどか(あれ? まんざらでもなそう)

仁美「キマシ」

藍「冗談だ」

さやか「まったく・・・詰まんない冗談やめてよね」

ほむら(・・・・・・)

ほむら「ごめんなさい。少し緊張し過ぎたみたい」

ほむら「保健室に行かせて貰えるかしら?」

少女A「それなら私が案内するよ」

ほむら「いえ、係の人にお願いするから平気よ」

ほむら「これからもお世話になるだろうから挨拶もして置きたいし」

少女B「鹿目さーん、暁美さん保健室行きたいって」

まどか「あ、うん」

ほむら「あなたが鹿目まどかさん? 保健室、連れていって貰えるかしら?」

まどか「うん。いいよ」

――廊下にて


まどか「あの・・・暁美さん・・・」

ほむら「ほむらでいいわ」

まどか「あ、その・・・ほむらちゃんって変わった名前だよね」

ほむら「・・・」

まどか「変な意味じゃなくって・・・その・・・」

ほむら「鹿目まどか」

ほむら「あなたは自分の人生が尊いと思う? 家族や友達は大切にしてる?」

まどか「え? うん・・・とっても大切で大好きな人達だよ」

ほむら「なら、今とは違う自分になろうと思わないことね」

ほむら「さもなくば全てを失なうことになる」

――放課後 いつもの喫茶店


さやか「はぁ? なにそれ」

さやか「才色兼備、文武両道と思いきや実はサイコな電波さん!?」

さやか「藍とは違うキャラを立ててくるとは・・・くぅ~やるな転校生!」

まどか「それでね、笑わないで聞いて欲しいんだけど」

まどか「あの子と夢の中で会ったような?」

さやか「あっはっはっは」

さやか「まどかにまでキャラが立ち始めた」

まどか「さやかちゃん! 笑わないでって言ったのに」

さやか「いや~ごめんごめん」

藍「ふふ、あんまり笑ったらまどかに悪いぞ」

仁美「そう言えば、藍さんは暁美さんと会ったことがあるのですか?」

藍「いや、無いよ」

まどか「でも、じっと見られてたよね」

まどか「最初は私が見られてるのかと思っちゃった」

さやか「ほら、あれだよ夢の中であったとか」

まどか「さやかちゃん・・・それはもうやめてよ///」

藍「気にしても仕方無いさ」

藍「ところで、まどか」

藍「彼女は全てを失う事になるといったのかい?」

まどか「うん、今とは違う自分にはなっちゃ駄目だって」

さやか「なにさ、転校生の言ったこと気にしてんの?」

さやか「気にするだけ無駄だって」

藍「いや、物事には全て意味がある」

藍「其がどんなに些細な事であってもだ」

藍「無意味な事と決めつけて無視をするのは感心しないな」

さやか「じゃあどんな意味があるって言うのさ?」

藍「其はまだ解らないが・・・」

さやか「藍がそう言うなら何かあるんだろうけどさ」

さやか「あんまり考え過ぎるのも良くないよ」

藍「ああ、解ってるさ」

藍さやか「・・・」

仁美「すみませんが私はそろそろ」

藍「もうそんな時間か」

さやか「相変わらず大変だね~」

まどか「頑張ってね、仁美ちゃん」

仁美「はい。それでは失礼致します」

藍「またね、仁美」

さやか「そうだ、この後CD屋寄ってもいい?」

まどか「上条くんの?」

さやか「まぁね、この間のCDも気に入ってくれてたみたいだし」

藍「其じゃ行こうか」

――CDショップ


まどか「~♪」ウェ ヒ ヒ ウェヒ ワラッテルンダロウカ

まどか(たまにはこう言う曲も良いよね)

さやか「えーと・・・」

さやか「?」ウーン

さやか「今一かな?」

???『まどか・・・まどか・・・』

???『助けて・・・まどか』

まどか「何? 誰かが呼んでる?」

まどか「私・・・行かなきゃ」タタッ

藍「まどか?」

藍「さやか! まどかの後を追うよ」

さやか「ちょっと待って、今ノーベル賞物の発見をした!」

藍「良いから行くよ」グイッ

さやか「ああ・・・世紀の大発見が・・・」

――改装中フロア


まどか「あなたが私を呼んだの?」

ほむら「まどか、ソイツから離れて!」

まどか「ほむら・・・ちゃん?」

まどか「ほむらちゃんがやったの?」

まどか「駄目だよ、酷いことしないで」

ほむら「あなたには関係無いことよ」

ほむら「さあ、ソイツをこっちに渡して」

さやか「まどか、下がって!」

まどか「さやかちゃん!」

藍「さやか、消火器はやり過ぎだったのでは?」

さやか「そんな場合じゃ無いでしょ」

さやか「何なのよあいつ、コスプレで通り魔って頭おかしいんじゃないの?」

まどか「ねえ、さやかちゃん藍ちゃん何か変だよ」

さやか「・・・何なのここ?」

まどか「な・・・何か居るよ」

さやか「冗談だよね? 私、悪い夢でも見てるんだよね?」

まどか「やだ・・・来ないで」

さやか「く・・・来るな!」

藍「破ッ」バキッ

藍「二人とも私から離れるな!」ドカッ

まどか「すごい、あの変なのをやっつけてる」

さやか「藍、あんた何者?」

藍「別に? 田舎育ちだから荒事には慣れてるだけさ」

藍「熊とか猪も出るしね」

さやか「マジで!? 田舎育ちパネェ・・・」

まどか「さやかちゃん・・・」

藍「良ければ後で教えてあげるよ」バキッ

藍「おっと」サッ

藍(うーん、普通に殴っただけじゃ死なないか)

藍(二人の前で力を使うわけにもいかないし・・・)

藍(どうしたものか)

ドガガガガ

さやか「な、何? 綿毛が急に居なくなった」

???「危ない所だったわね」

さやか「あ、あなたは?」

???「ちょっと待っててね。一仕事片付けちゃうから」ドガガガガ

???「ふぅ」

まどか「すごい・・・」

さやか「ジーザス」

???「私の名前は巴マミ。見滝原中学の三年生よ」

マミ「あなた達、キュウべぇを助けてくれたのね」

マミ「ありがとう。キュウべぇは私の友達なの」

キュウべぇ「ありがとうマミ。助かったよ」

マミ「もう、気を付けなきゃ駄目でしょ?」

まどか「その子、キュウべぇって言うんですか?」

まどか「あなたが私を呼んだの?」

さやか「まどか?」

キュウべぇ「そうだよ、鹿目まどか、美樹さやか」

さやか「何で私達の名前を?」

さやか「と言うか藍は?」

キュウべぇ「君は初めて見る顔だね」

キュウべぇ「でも素質は申し分ない」

キュウべぇ「僕、君たちにお願いがあって来たんだ」

まどか「お願いって?」

キュウべぇ「僕と契約して、魔法少女になってよ」

さやか「魔法少女? って何さ」

マミ「いきなり言われても分からないわよね」

マミ「あなた達、この後時間はあるかしら?」

マミ「魔法少女について話をしてあげるわ」

ほむら「それには及ばないわ」

さやか「転校生!」

マミ「魔女は逃げたわよ」

ほむら「私が用のあるのは――」

マミ「飲み込みが悪いのね、見逃してあげるって言ってるの」

マミ「お互い余計な争いとは無縁でいたいでしょう?」

ほむら「・・・・・・」

ほむら「忠告しておくわ、彼女達を巻き込まないで頂戴」

マミ「あら? 契約を決めるのはこの子達よ」

マミ「あなたこそ、余計なことを吹き込まないで頂戴」

ほむら「・・・」

ほむら「忠告が無駄にならない事を祈ってるわ」

まどか「ほむらちゃん・・・」

藍(・・・・・・)

――マミのマンション


――少女説明中――


さやか「何でも願い事が叶うのか~」

さやか「不老不死とか、金銀財宝とか、圧倒的カリスマとか!?」

まどか「さやかちゃん、最後のはちょっと・・・」

キュウべぇ「契約する気になったかい?」

キュウべぇ「特にまどかと藍。君たちは凄い素質を持っているよ」

藍「素質ねえ」

さやか「あれ? さやかちゃんは?」

マミ「キュウべぇ、あまり急かすものじゃないわ」

マミ「たった一つの願い事ですもの、慎重に考えるべきだわ」

キュウべぇ「僕としては直ぐにでも契約して欲しいんだけどなあ」

マミ「せっかちな男の子は嫌われるわよ」

キュウべぇ「マミ、僕に性別はないよ」

さやか「急に願い事って言われても、思い付かないや」

まどか「そうだよね」

藍「無理に叶えてもらう事は無いんじゃないか?」

さやか「藍?」

藍「願い事や夢って言うのは、自分の力で叶えてこそ意味がある」

藍「もちろん、思い通りにいかないこともあるだろうが、努力したことは無駄にはならない」

藍「自分の力となり自信に繋がる」

藍「其に、過ぎ足る願いは身を滅ぼすぞ」

さやか「藍は魔法少女になることに反対なの?」

藍「逆にさやかは何故なりたいんだい?」

さやか「それは・・・」

藍「恭介の事か?」

さやか「べ、別にあいつのことなんか」

藍「嘘は付かなくていい、彼の事が心配なんだろう?」

藍「容態もあまり良くない用だしな」

さやか「うん・・・」

さやか「ねぇマミさん。願い事って他の人の為でもいいの?」

マミ「今話に出てた男の子のことかしら?」

キュウべぇ「前例がないわけでは無いし、可能だよ」

マミ「でも、あまり賛成は出来ないわね」

さやか「何でですか?」

マミ「美樹さん、あなたは彼の夢叶えたいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」

さやか「それは――」

マミ「嫌な言い方でごめんなさい。でも大切なことよ」

マミ「他人の為に願うならなおのこと、何故自分がその願いを叶えたいのかをはっきりさせておかないと」

さやか「私は・・・」

マミ「焦ることはないわ、たった一つの願い事ですもの」

藍「やはり、私は反対だ」

さやか「藍?」

まどか「藍ちゃん・・・」

マミ「八雲さん、どうしてかしら」

藍「さやか、君は優しい人だ。自らの犠牲を省みず願いを他人の為に使えるのだから」

藍「だからこそ、君に戦いは向いていない」

マミ「どうしてかしら? 美樹さんなら正義の魔法少女として沢山の人を救えると思うけど」

藍「ええ、そう思います。ですが理想と現実は違う物です」

藍「さやか」

さやか「なに?」

藍「君は人を殺せるか」

さやか「そんなこと出来るわけないじゃん!」

藍「恭介が人質に取られてもか?」

さやか「どういう事よ?」

藍「魔法少女の敵は魔女とは限らないと言うことさ」

マミ「八雲さん、あなたの言いたいことは解るわ」

キュウべぇ「確かに、GS目当てで他の魔法少女を襲う子もいるよ」

まどか「そんな・・・」

さやか「あたしはそんなの認めない!」

マミ「でも、それは滅多に無いことよ」

マミ「GS目当てで縄張りを拡げても、自分が狙われるリスクが高まるだけですもの」

藍「だが、無いわけではない以上いつかは選択を迫られるときが来る」

藍「その時迷いが生じれば・・・さやか、死ぬのは君だ」

藍「私は君に死んで欲しくない」

さやか「藍・・・」

さやか「わかったよ、あんたがそこまで言うなら―――」

マミ「そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないかしら?」

マミ「相手が襲ってきても、その子を殺さなきゃいけない訳ではないでしょう?」

マミ(折角素直な後輩が出来そうなのに! 邪魔しないでよ)

マミ「魔法少女どうしの争いなんてそうそう起きるものでもないし」

マミ「それに、仲間が居ればそういった危険は回避出来るわ」

マミ「そうだわ! あなた達、私の魔女退治に着いてこない?」

マミ「まだ魔法少女がどういうものか解らないでしょうし」

マミ「魔法少女体験ツアーをやりましょう」

――翌日


さっそく明日の放課後から行きましょう 


さやか「マミさんはああ言ってたけど、私はどうしたいのかな・・・」

まどか「おはよう、さやかちゃん!」

さやか「!」

さやか「おはよう、まど―――」ブッ

さやか「あ、あああんたそれ」

仁美「どうされましたの? さやかさん」

まどか『普通の人には見えないみたい』

さやか「えっ?」

仁美「?」

まどか『テレパシーって言うんだって。心で念じればさやかちゃんも出来るよ』

さやか『おおっ! いつの間に私達にもそんなマジカルな力が?』

キュウべぇ『君達は魔法少女ではないから僕の中継が必要だけどね』

藍「おはよう」

仁美「おはようございます。藍さん」

さやか「おはよう!」

まどか「おはよう、藍ちゃん」

藍「待たせてしまったかな? 早く学校に行こうか」

まどか「私達もいま来たところだよ」

さやか「それじゃ行きますか!」

――教室


さやか「おはよう!」

少女A「おはよう、さやか」

少女BC「おはよー」

さやか「転校生・・・!」

まどか「キュウべぇ、狙われたりしないよね?」

マミ『流石に学校で襲ってくる事はないと思うけど』

マミ『何かあったら私がすぐ駆けつけるから平気よ』

ほむら(・・・・・・)

さやか『マミさん!おはようございます』

まどか『おはようございます』

藍『おはようございます』

マミ『おはよう』

さやか『いや~、テレパシーって思った以上に便利だね』

藍「仁美、今日の放課後は時間とれるのかい?」

藍『便利だからと言って頼り過ぎるのは良くないぞ』

仁美「申し訳ありません、今日もお稽古がありまして」

さやか『いいじゃんか~、気分だけでも魔法を味わったって』

藍《おはよう、ほむら》

マミ『確かに便利だけど、魔法に頼り過ぎるのは良くないわ』

マミ『それじゃGSがいくつあっても足りないもの』

藍「そっか・・・残念だが仕方無いな」

ほむら(・・・)

ほむら《何の用かしら》

さやか『き、気を付けます』

まどか『でも、離れててもおしゃべり出来るのは良いよね』

藍「今度は是非私のうちに来てくれ」

藍《おはよう》

ほむら《・・・・・・・・・・・・おはよう》

仁美「はい。楽しみにしておきますわ」

藍《違う術式の物だから、盗聴の心配はないよ》

マミ『ふふ、そうね』

ほむら《違う術式?》

ほむら《と言うか、あなた器用ね》

藍『内緒話も出来るしね』

藍《そう? 慣れれば此くらい簡単だよ》

さやか『はっ! て言うことは・・・カンニングし放題じゃん』

藍《ほむら、単刀直入に聞くが君は何を知っているんだ?》

仁美「藍さんは一人暮らしでしたわね」

藍『さやか・・・』

藍《何か目的があるんじゃないか?》

まどか『さやかちゃん、ずるは駄目だよ』

ほむら《あなたには関係無いことよ》

藍「ああ、家の事情でね」

藍「其の分気兼ねなく過ごせるよ」

仁美「明後日でしたらお稽古がありませんから、お邪魔しても宜しいでしょうか?」

藍「ああ、構わないよ」

藍《魔法少女に関わることなら無関係とは言えないんじゃないか?》

藍「仁美は、コーヒーと紅茶どっちが好きかな?」

マミ『美樹さん、魔法を不正なことに使うのは感心しないわよ?』

仁美「私はコーヒーの方が好きですわ。家では紅茶ばかり出て来ますが」

藍「なら、最高のコーヒーを御馳走するよ」

ほむら《話した所で信じられるわけないわ》

仁美「はい、楽しみにしておきますわ」

仁美(明後日が待ち遠しいですわ)

藍『ははっ、さやからしいけどね』

藍《其を決めるのは私だ》

藍《信じられない事なら既に起こってるしね》

まどか『ウェヒヒ、さやかちゃん授業中いつも寝てるもんね』

ほむら《大体あなたは巴マミの仲間でしょう? キュウべぇを襲った私は敵のはず》

マミ『美樹さん、授業はちゃんと聞かないと駄目よ』

さやか『が、頑張ります・・・』

藍『一人だけ補習になっても知らないぞ』

藍《私は彼女の仲間になったつもりも、君の敵になったつもりもないが?》

藍「そろそろ授業だし、席に着こうか」

仁美「そうですわね」

さやか「ん?もうそんな時間?」

さやか『マミさん、授業が始まるのでまた後で』

マミ『ええ、またね』

藍《此でゆっくり話が出来そうだ》

ほむら《言ったでしょう、話すつもりはないと》

ほむら《大体、あなたは何者なの? 目的はなに?》

藍《私も一週間前に転校して来たんだ》

ほむら《私はあなたの目的を聞いているの!》

藍《そう怒るな、当面の目的は君と仲良くなる事・・・じゃ駄目かい?》

ほむら《ふざけないで!》

藍《私は真面目さ、別に私を信じろとは言わないよ》

藍《私がほむらを信じているんだ》

ほむら《何よそれ・・・》

藍《ふふっ、何だろうね》

藍《・・・私は二人を魔法少女にはしたくない》

藍《どうにも、彼女は二人を魔法少女にしたがってるようでね》

藍《出来れば君にも協力して貰いたいのだが・・・》

ほむら《あの二人を捲き込むのは、私も反対よ》

藍《なら!》

ほむら《それとこれとは別。私は私でやらせてもらうわ》

藍《頑なだな。手を組んだ方がより確実だと思うけど?》

ほむら《私の勝手よ》

藍《そうか・・・》

藍《ところで、ほむらはコーヒーと紅茶どっちが好きかな?》

ほむら《何よいきなり》

藍《只の興味本意だよ》

ほむら《・・・コーヒーかしら》

藍《なるほどね。良くわかった》

ほむら《どういう事かしら?》

藍《実は今のはちょっとした心理テストでね》

ほむら《心理テスト・・・?》

藍《嘘だけどね》

ほむら《はぁ?あなたいい加減に―――》

藍《少しは感情が出るようになってきたな》

ほむら《!?》

藍《心の“おもさ”を分からない者に他人の心は救えない》

藍《人を救うと言う事は、その人の心を救うと言う事だ》

藍《まあ、何かあったらいつでも言ってくれ》

ほむら《・・・・・・》

――放課後


マミ「それじゃ魔法少女体験コース、行ってみましょうか」

マミ「何か準備はしてきたかしら?」

さやか「私は一応バットを」サッ

藍「私は拳が武器ですので」

まどか「私は・・・その、取り敢えず衣装を考えてみたんですけど・・・・・・」オズオズ

さやか「あっはっはっはっは、まどからしいや」

マミ「ふふっ、意気込みとしては十分ね」

藍「くっ、よ・・・良く描けてると思うよ」プルプル

まどか「わ、笑わないでよぉ///」

――少女探索中――


マミ「こうやってソウルジェムをかざしながら探して行くの」

さやか「結構地味なんですね。もっと魔法でパーっと探せないんですか?」

藍(確かに、効率が悪いな)

藍(まあ、霊夢達が異常とも言えるが)

まどか「いつもこうやって探してるんですか?」

マミ「そうよ。でも、闇雲に探し回ってる訳じゃないのよ」

マミ「繁華街の様に人の集まる場所、逆に路地裏や廃屋みたいな人のいない場所」

マミ「そう言った所に魔女は潜んでいるわ」

まどか「それで繁華街に来たんですね」

さやか「私はてっきり買い物にでも来たのかと・・・」グー

マミ「もう! 遊びじゃないのよ美樹さん」

さやか「す、すみません・・・」クルックー

藍「まあ・・・小腹が空いたのは確かだね」

さやか「だよね! 流石藍は解ってる!」

マミ「二人とも!」

さやか「う・・・すみません」

藍「まあまあ、腹が減ってはなんとやらと言うし」

藍「歩きながら摘まむくらいなら構わないでしょう」

藍「其処でたい焼きを買ってくるよ」

マミ「まったく、八雲さんは勝手すぎるわ」

さやか「たまには良いじゃないですか! ね、まどか?」

まどか「う、うん。そうだね」

マミ「もう、鹿目さんまで・・・今日だけよ」

さやか「はーい」

藍「お待たせ」

マミ「さ、行きましょう」

さやか「やっぱりたい焼きは餡子だよね!」モグモグ

まどか「私はクリームの方が好きかな」モグ

マミ「私もどちらかと言えばクリームかしら」バクバク モグモグゥゥ‼

さやか「えー? 藍はどっち?」

藍「私は餡の方が好きだ」

さやか「だよねぇ!」

さやか(喉乾いたな)モクモク

藍「はい、お茶」

さやか「!」

さやか「流石藍、気が利いてる!」

藍「当然だ」

藍「ほら、まどかも」

まどか「ありがとう、藍ちゃん」

藍「マミさんも良ければ、紅茶じゃなくて申し訳ないですが」

マミ「いえ、頂くわ」

――少女食べ歩き中――


さやか「中々見つかりませんね」

マミ「そう言うときもあるわ」

マミ「街外れの廃屋まで行ってみましょうか」


――廃屋


マミ「!」

マミ「見て、SGが光っているでしょう」

まどか「ホントだ!」

さやか「暗い夜道もバッチリですね!」マッカナオハナノ

藍「確かに、暗くなって来たものな」トモエサンハ

さやか「ぶふっ」マッカナオハナノトモエサンッテ

藍「因みにソリに乗ってるのはキュウべぇだ」

まどか「――――」プルプル

マミ「あなた達、ふざけてる場合じゃないわよ!」

まどか「ごめんなさい、マミさん」

さやか「す・・・すみません」

藍「アイムソーリー」

さやか「ヒゲソーリー」ボソ

藍さやか「――――」バシバシ

まどか「~~~~」プルプル

マミ「遊びじゃないって言ってるでしょ!」ゴンゴンゴン

さやか「いったぁ~」

まどか「うう、痛いよ・・・」

藍「怒られてしまったな」

マミ「まったく、あなた達は」

マミ「もっとしゃきっとしなさい」

さやか「はぁい」

まどか「すみません・・・」

藍「すまない、悪ふざけが過ぎたみたいだ」

さやか「マミさん短気じゃね?」ヒソヒソ

藍「あの日かもしれないな」ヒソヒソ

さやか「だからってゲンコツする?」ヒソヒソ

藍「私達もふざけすぎたとは言え、やり過ぎ感はあるな」ヒソヒソ

まどか「こんなのってないよ、あんまりだよ」ヒソヒソ

藍「大丈夫か?まどか」ヨシヨシ

まどか「うん、ありがとう藍ちゃん」

藍「!」ピクッ

藍「マミさん、ビルの上に人が」

さやか「嘘・・・」

まどか「きゃあああぁぁ」

マミ「任せて!」バッ

まどか「助かったの?」

さやか「マミさんやるぅ」

藍「待て、様子が変だ」

マミ「魔女の口付けね」

さやか「魔女の口付け?」

まどか「何ですかそれ?」

マミ「魔女が獲物に付ける目印の様なものよ」

マミ「この人は操られてここまで来たのね」

まどか「そんな・・・もしマミさんが来なかったら・・・」

さやか「許せない!」

藍「魔女は、どうやってターゲットを決めてるんですか?」

藍「何らかの法則があるのでは?」

マミ「そうね。心の弱った人が狙われやすいわ」

さやか「心の弱った人?」

藍「簡単に言えば負の感情を溜めている人だ」

藍「悲しみや絶望等のね」

マミ「ええ、その通りよ」

OL「う・・・ん・・・ここは?」

マミ「悪い夢を見てたんですよ、もう大丈夫です」

OL「いけない、早くいかなきゃ」

OL「ありがとうね、あなた達」タタッ

藍(とは言え、根本的な解決にはなっていない)

藍(あのままではまた同じことが起きるだろう・・・)

藍(なら!)フワッ

さやか「藍、今何をしたの?」ヒソ

藍「悪い気を散らしたんだ、気休め程度だが運気が上がったはず」ヒソ

藍「人生辛い事ばかりではない、生きていれば良いことだってあるさ」ヒソヒソ

さやか「うん、そうだね」ヒソヒソ

さやか「って言うか、そんなこと出きるの!?」ヒソヒソ

マミ「?」

マミ(何を話してるのかしら)

マミ(ふふっ、きっとさっきの私の活躍のことね)

藍「世の中には不思議な事が沢山あるのさ。まぁ出来ることは限られてるけどね」ヒソヒソ

藍(さやかは中々鋭いな)

さやか「それって、私にも出来る?」ヒソ

藍「・・・無理だろうね、私だって長いこと修行したんだ」ヒソ

さやか「そっか・・・」

藍「背伸びをする事は無い、さやかはさやかに出来る事をやればいいのさ」

さやか「私にもあるのかな? 私にしか出来ないこと」

藍「当然だろ」

藍「さあ、行こう! 親玉のお出座しだ」

――【薔薇園の魔女結界内】


まどか「うう・・・気持ち悪い」

さやか「グロッ」

藍「この結界は、この前の?」

マミ「そうね、この間逃げたやつよ」

マミ「最深部へ急ぎましょう」


――結界最深部


マミ「あれが魔女ね」

さやか「もっとグロッ!」

まどか「もっと人に近いのかと思った・・・」

マミ「三人はそこに居て!」

さやか「あ、マミさん・・・」

まどか「マミさん・・・頑張って!」

藍「マミさんなら大丈夫さ」

藍「此処で待っていよう」

まどか「うん・・・」

――少女戦闘中――


さやか「あ、危ない!」

まどか「マミさん!」

マミ「平気よ、負けるもんですか!」

マミ「これで終わりよ」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

さやか「すげぇ・・・」

まどか「マミさん、凄い!」

藍(無駄な動きも多いし、隙も大きい)

藍(及第点には程遠いな)

カラン

さやか「マミさん、これは?」ヒョイ

マミ「それはGSよ、運が良ければ魔女が持ってることがあるわ」

マミ「言ってしまえば、魔女の卵ね」

さやか「うぇ!」バッ

さやか「だ、大丈夫なんですか?」

マミ「平気よ。それに私達魔法少女には必要なものなの」

マミ「見て、私のSGさっきより濁ってるでしょう?」

まどか「ホントだ! さっきより黒くなってる」

さやか「どうするんですか?」

マミ「魔法を使うほどにSGは濁っていくわ、そしてこうすると・・・」

まどかさやか「綺麗になった!」

マミ「これが魔女退治の見返りと言う訳」

キュウべぇ「どうだい? これが魔法少女と言うものだ」

藍「キュウべぇ、居たのか」

キュウべぇ「魔女の気配がしたから来たのさ」

キュウべぇ「それで、契約する気にはなったかい?」

藍「お前は其ばかりだな」

キュウべぇ「それが僕の仕事だからね」

キュウべぇ「まどかとさやかはどうだい?」

さやか「うーん、私はまだいいかな。願いも決まらないし」

まどか「私もまだ・・・ごめんねキュウべぇ」

マミ「キュウべぇ、あまり急かすものじゃないわ」

キュウべぇ「僕としては早く契約して貰いたいんだけどね」

キュウべぇ「マミだって、仲間が居れば戦いが楽になるだろう?」

マミ「それはそうだけど。急かすものじゃないわよ」

マミ「彼女たちは時間があるのだもの、しっかり考えて決めた方がいいわ」

まどか「そう言えば、マミさんの願いって何ですか?」

マミ「私は―――」

さやか(あ、重い話だこれ)

マミ「・・・家族で旅行に行った帰りに事故に遭ってね」

マミ「夢中で助かりたいと願ったの・・・」

マミ「考えてる余裕なんてなかった」

マミ「だから、あなた達にはちゃんと考えて願いを決めて貰いたいの」

さやか「マミさん・・・」

まどか「ごめんなさい・・・私・・・」

藍「まどかが気に病むことじゃ無いさ」ポンッ

まどか「でも、マミさん辛そうな顔してた・・・」

マミ「平気よ、もう昔の事だもの」

マミ「さあ、暗い話はお仕舞い! この後時間あるかしら?」

マミ「よかったら、家でお茶しない?」

さやか「良いですねー」

さやか「行こっか、まどか、藍」

まどか「うん!」

藍「そうだね、お邪魔させて貰おうか」

マミ「決まりね」

藍(暫くは彼女達と行動を共にして様子を見るか)

――マミのマンション


マミ「どうかしら、新作のケーキなんだけど」

さやか「めちゃうまっすよ」

藍「ああ、おいしいよ」

まどか「マミさんの手作りなんですか?」

マミ「ええ、趣味でね。よくお菓子作りをするの」


――少女談笑中――


さやか「やばっもうこんな時間!?」

まどか「うそ、早く帰らなきゃ」

藍「お暇しようか。マミさん、御馳走様でした」

まどかさやか「マミさん、さようなら」

藍「また、学校で」

――マミのマンション外


藍「送っていくよ、夜道は物騒だからね」

まどか「え、悪いからいいよぉ」

藍「女の子を一人で帰すわけにはいかないだろう」

さやか「藍だって女の子じゃん」

藍「私はいいのさ、人間相手なら負けないしね」

さやか(これがイケメンか)

まどか「それじゃ、お願いしようかな」

藍「ああ、任せてくれ」

さやか「うんうん、しっかりまどかを守ってやってくれたまえ」

藍「さやか、君もだよ」

さやか「え?」

藍「まどかの後だから、遠回りになるが」

さやか「いやいや、私はいいよ」

藍「私がそうしたいんだ。駄目かい?」

さやか「だ・・・駄目じゃないけど・・・///」

まどか「えぇー」

まどか(こんなの絶対おかしいよ!)

まどか(でも、藍ちゃんってかっこいいもんね)

まどか(私もあんな風になれたらなぁ)

――翌々日放課後


藍「ようやく終わったね」

さやか「疲れた~、いやー今日もいっぱい学習したわ」

まどか「さやかちゃんは一日中寝てただけじゃん」

仁美「さやかさん、授業はちゃんと受けなくてはいけませんわ」

さやか「難しい話を聞いてるとつい・・・」

藍「一人だけ、補修になっても知らないぞ」

さやか「う・・・それは勘弁」

藍「後で見てあげるから、しっかり勉強する事」

さやか「ありがとうございます。神様仏様藍様!」

藍「全く、調子の良い」ヤレヤレ

藍「じゃあ、家に行こうか」

仁美「楽しみですわ」ワクワク

さやか「藍の家は初めてだもんね」

まどか「藍ちゃんも一人暮らし何だよね?」

藍「ああ、そうだよ」

仁美「も?他にも、どなたかいらっしゃるのでしょうか」

藍「最近知り合った先輩が一人暮らしでね」

藍「まどかは、その事を言っていたんだろう」

仁美「そうでしたの」

藍「こっちだよ」

――少女移動中――


――藍のマンション


さやか「すっげぇ・・・」

仁美「最近出来た、見滝原スカイタワーですわね」

まどか「藍ちゃん、ここに住んでるの?」

藍「ああ、そうだよ」

さやか「何階に住んでるの」

藍「最上階だ、狭いところだけど眺めは良いよ」

まどか「これが狭いって・・・」

さやか「藍って、もしかしてお金持ち?」

藍「普通だと思うよ。向こうの家が広いってのもあるだろうけどね」

――藍の部屋


藍「用意してくるから、適当に寛いで居てくれ」

さやか「・・・あたしの家の4倍はあるんだけど」

まどか「藍ちゃんの実家ってどんな所だろうね?」

仁美「確かに、気になりますわね」

さやか「行ってみたいけど東北じゃねぇ」

さやか「んーしかし、良い眺めだね」

まどか「見て、さやかちゃん。富士山見えるよ」

さやか「おー! マジだ! すっげぇ」

キャッキャッ

藍「中々のはしゃぎ振りだね」

仁美「すみません、騒いでしまって」

藍「別に平気さ、皆お茶にしようか」

まどか「はーい」

さやか「待ちくたびれたよ」

藍「どうぞ」コトッ

藍「クレープ・シュゼットだ、口に合うと良いんだが」コトッ

さやか「すっげぇ、こんなの初めて見た」

まどか「これ、藍ちゃんが作ったの?」

藍「そうだよ。他にもレシピはあるから今度は別なものを作ろうか」

仁美「美味しそうですわ。早速いただいても宜しいですか?」

さやか「そうだね。早く食べよう!」

藍「ああ、どうぞ」

藍「二人は紅茶でいいかな?」

まどかさやか「うん」

藍「どうぞ、仁美」コトッ

仁美「ありがとうございます。藍さん」

藍「まどかとさやかも」コトッ

さやか「サンキュ」

まどか「ありがとう」

さやか「思ったんだけどさ、一人暮らしってことは料理も自分で作ってるんだよね?」

藍「そうだけど?」

さやか「藍の料理が食べてみたいなーなんて」

藍「なら、明日のお弁当で良いかい?」

さやか「マジでいいの?」

藍「其くらい構わないよ」

さやか「やりぃ!」

まどか「もう、さやかちゃんったら」

仁美「あまり迷惑を掛けてはいけませんわ」

藍「いいさ、多目に作っていくから皆で食べようか」

まどか「私達もいいの?」

藍「勿論!」

さやか「明日の昼が楽しみだわ」

――翌日昼


さやか「ようやく昼休みだ!」

まどか「さやかちゃん、ずっとお腹鳴ってたもんね」

さやか「き、聞こえてた?」

藍「教室中に響いてたと思うよ」

藍《ほむらも良かったらどうだい?》

ほむら《折角だけど、私は遠慮しておくわ》

さやか「あたしってホントばか・・・」グー

藍《そうか、たまには君と食事がしたかったが》

ほむら《あなたは、何故私に関わろうとするのかしら》

藍「其じゃ、屋上に行こうか」

藍《理由が要るのかい? なら、君と友達になりたいからだ》

ほむら《ふざけないで!》

藍《君が聞いたんじゃないか》

藍《まあいい、今夜二人きりで話がしたい》

ほむら《!》

ほむら《そうね、私もあなたに聞きたいことがあるわ》

藍《今夜八時に家に来てくれ、住所は後で渡す》

ほむら《わかったわ》

――屋上


まどか「あ、マミさんだ」

さやか「ホントだ! おーい、マミさーん」

藍「こんにちは、マミさん」

マミ「こんにちは、皆でお昼?」

藍「ええ、よかったら一緒にどうです?」

マミ「私も一緒で良いのかしら?」

さやか「もちろんっすよ!」

藍「仁美、彼女が昨日話しに出た巴マミさんだ」ボソ

仁美「そうでしたの」

仁美「初めまして巴先輩。私志筑仁美と申します」

仁美「巴先輩の話はさやかさん達から伺ってますわ」

マミ「初めまして、志筑さん」

マミ「改めて・・・巴マミよ、宜しくね」

仁美「こちらこそ、宜しくお願い致しますわ」

藍「さて、挨拶も済んだことだし、ご飯にしよう」

さやか「待ってました!」グー

マミ「あら? 八雲さんの手作りかしら」

藍「ええ、マミさんもどうぞ」

さやか「んー、めっちゃ旨い!」

仁美「家のシェフよりも美味しいですわ・・・!」

まどか「パパのよりも美味しい・・・」

マミ「本当・・・すごく美味しいわ!」

藍「ふふっ、そう言って貰えると作ったかいがあるよ」

――夜、藍のマンション


ほむら「ここね」

ほむら「随分大きなマンションに住んでいるのね」

ほむら(部屋は最上階だっわね)ピッピッピッ

藍[待ってたよ、上がってくれ]



ほむら「それで、話って?」

藍「そう逸るな、コーヒーで良いかい?」

ほむら「・・・ええ」

藍「はい」コトッ

ほむら「・・・ありがとう」ズズッ

ほむら(あ、美味しい)

藍「まだ、君の目的は話して貰えないのか?」

ほむら「言ったでしょう、私はあなたを信じたわけではない」

ほむら「それに・・・もう誰にも頼らないと決めたのよ」

藍「寂しいことを言うね」

藍「私も言ったはずだ」

藍「君を信じて要ると」

ほむら(・・・・・・)

ほむら(真っ直ぐな目、吸い込まれそうな程に・・・)

ほむら「あなたは強いのね」

藍「そんな事は無いさ・・・」

藍(私がもっと強ければ、紫様にあんな事などさせなかったのに)

藍「君の話を聞く前に・・・・・・」

藍「私の目的を話しておこう」

ほむら「!」

藍「私はある方の命により此処に来た」

ほむら(ある方の命?)

藍「其の御方が言うには、近い未来世界を滅ぼしうる異変が起こるそうだ」

ほむら(未来・・・世界が滅ぶ・・・・・・)

ほむら(まさか・・・まさか!)

藍「私は、其を未然に防ぐために来た訳だ」

ほむら「美国織莉子・・・」

藍「美国? 誰だい其は?」

ほむら「あなたもまどかを殺すつもりね」

藍「何を言ってるんだ」

ほむら「まどかに近づいたのはそれが目的ね」

藍「落ち着けほむら、言ってる事が滅茶苦茶だぞ」

ほむら「まどかは、殺させない!」チャキッ

藍(聞く耳持たずか・・・)

藍「落ち着け! 取り敢えず銃を下ろすんだ」

藍(だが、今ので少し見えてきたな)

藍(ほむらはまどかを守るために動いている)

藍「私がまどかを殺す訳が無いだろう?」

藍(そして異変には、まどかが関係している)

藍(別の誰かも異変を防ぐ為、まどかを狙っている)

ほむら「言ったでしょう、私はあなたを信用してないって」

ほむら「危険分子は排除するまで」パスパスッ

ほむら「なっ!?」

ほむら「弾が止まってる!」

藍「やれやれ、札を一枚無駄にしてしまった」

ほむら「くっ・・・!」

藍「遅い!」ビタッ

ほむら「体が…動かない!」

ほむら「何をしたの? あなたは何者?」

藍「金縛りの札を貼っただけだよ」

藍「こうでもしないと、話が出来なそうだったからね」

藍「まず、私は織莉子と言う人は知らない」

ほむら「嘘よっ! そうでなければあんなこと知ってる筈がない!」

藍「まあ、聞け」

藍「私は、私の主の命により来たんだ」

藍「其の方の名は、八雲紫様。私が誰よりも尊敬し敬愛している御方だ」

藍「紫様は賢者と称される方でな、何でもお見通しなのだ」

藍「今回の異変を事前に知った紫様は、私を使わせたと言う訳だ」

藍「当然、私が来た以上犠牲等出しはしない」

藍「それと、まどか達と友達になったのは偶々だが」

藍「君には意図的に近付いた」

藍「紫様が、現地の魔法少女と接触し協力を仰げと仰ったからね」

ほむら「そのために私に近づいてきたのね」

藍「君が現れたことで取り巻く環境が変わったからね」

藍「君の存在が鍵になると思ったんだ」

藍「私は目的を果たしたら彼方に帰るよ」

藍「だが、まどか達は友達だ。友達を犠牲にする気はない」

藍「だからこそ、君に協力して欲しいんだ」

ほむら「本当・・・真っ直ぐな目」ボソ

藍「ん? 目がどうかしたか?」

ほむら「いいえ・・・・・・良いわ、協力してあげる」

藍「本当か!」

ほむら「ええ、但しあなたも私に協力して頂戴」

藍「勿論だ! それと、拘束して悪かった」ペリ

ほむら「構わないわ」

藍「そうだ、此を渡しておこう」

ほむら「お札?」

藍「通信用の護符だ」

藍「此で、ほむらからも連絡が取れるよ」

ほむら「それって、この間使ってたやつ?」

藍「ああ、盗聴される心配もない」

藍「特にあの白饅頭。あいつはどうにも気に入らないからね」

ほむら(白饅頭・・・)

ほむら「確かに、キュウべぇは信用ならないわ」

ほむら「巴マミはキュウべぇを信じきっている」

ほむら「友達であるキュウべぇを襲ったことで、私は敵対視されてしまっている」

藍「其処は私が上手く取り持とう」

ほむら「策があるの?」

藍「単純だが、魔女に苦戦する彼女を助けるのはどうかな?」

ほむら「それなら、おあつらえ向きな魔女がいるわよ」ニヤリ

藍「ふふっ」

ほむら「何よ? 笑ったりして」

藍「いや、随分楽しそうな顔をすると思ってね」

ほむら(・・・楽しそう?)

藍「仏頂面してるよりも、ずっと良いよ」クク

ほむら「そうね・・・」

ほむら(思えば、ずっと一人で無理をしてきたものね)

ほむら(誰にも頼らないと決めて、肩肘はって強がって・・・)

ほむら(藍、あなたは不思議な人ね・・・)

ほむら(死んでも言わないけど・・・・・・)

ほむら(ありがとう)

藍「ほむら? 大丈夫か?」

ほむら「え、ええ。平気よ」ビクッ

ほむら「えぇと、何だっけ・・・そう! 三日後に病院に魔女が出るわ」

藍「何故わかる?」

ほむら「統計よ」

藍「そうか」

ほむら(え? 納得した?)

ほむら「この結界の主に、巴マミは敗れるわ」

藍「成る程、マミさんを助けつつ魔女を倒し」

藍「疲弊したマミさんにGSを使い、ほむらが利己的な魔法少女ではないと伝えるんだな?」

ほむら「理解が早くて助かるわ」

藍「さやか辺りじゃ理解の“り”の字も出ないだろうね」フフ

ほむら「目に浮かぶわ」フフ

藍「ほむら、折角だし晩御飯食べて行きなよ」

藍「君も一人暮らしだったろう?」

ほむら「そうね、頂くわ」

ほむら(もう一度だけ、信じてみようかしら)

ほむら(彼女となら、私の目的を達成出来るかもしれない)

藍(美国織莉子か・・・・・・少し探ってみるとしよう)

――翌日、集合場所


藍「おはよう、さやか」

さやか「おはよ! 藍」

藍「珍しく早いね」

さやか「さやかちゃんだって、いつも遅れる訳じゃありませんよ」

藍「いつもこうだと良いんだけどね」クス

さやか「い、良いじゃん、間に合ってるんだし///」

藍「・・・」

藍「恭介の具合あまりよくないみたいだな」

さやか「うん・・・」

藍「今日もお見舞いに行くんだろう」

さやか「もっちろん! 昨日またレアなCD見付けたんだ」

藍「さやか、その事なんだけど」

藍「たまにはCD以外の物にしたらどうだろうか」

さやか「どうしてさ?」

藍「自分で弾けないのにCDを貰うのは辛いんじゃないかと思ってね」

さやか「うぅん、そう言う考え方もあるか・・・」

さやか「じゃあ、何を持っていけば良いのかな?」

藍「其こそ何だって良いのさ、さやかの気持ちが籠っているなら」

さやか「んー、いざ違うものとなると・・・」

藍「手作りのお菓子なんてどうだい?」

さやか「無理無理! 藍やマミさんみたいにはいかないって」

さやか「第一料理なんてしたことないし」

藍「私が教えるさ、クッキーくらいなら簡単に作れるしね」

さやか「な、ならお願いしようかな」 

藍「任せてくれ。早速今日の放課後作ろうか」

さやか「恭介・・・・・・喜んでくれるかな?」

藍「ああ、必ずね」

――学校


さやか「転校生・・・!」

まどか「ほむらちゃん・・・」

藍「おはよう、ほむら」

さやか「ちょ、ちょっと藍」

ほむら「おはよう、藍」

さやか「え?」

さやか『どう言う事さ、何で藍と転校生が仲良くしてる訳?』

さやか『あんた、今度は何を企んでるの?』

ほむら『別に何も企んでなんかいないわ』

さやか『嘘! そんなはずない』

藍『さやか、落ち着け』

さやか『藍、騙されちゃ駄目だよ。あいつはまどかを襲ったやつなんだ』

藍『さやか、其は誤解だ。それに彼女には彼女なりの理由がある』

さやか『どんな理由があればまどかを襲うことになるんだ』

藍(まさか、さやかが此処まで融通の利かない奴だとは)

ほむら『私があの時狙ってたのはキュウべぇよ』

マミ『あら、どんな理由があってキュウべぇを狙ったのかしら?』

さやか『マミさん! やっぱりあいつは敵ですよ、マミさんの友達を襲ったんだもん』

藍《ほむらの苦労も解るよ。彼女達は、思い込みが激しすぎる》

ほむら《そう言って貰えると助かるわ》

藍《とは言え、此のままでは収集が着かないな》

藍《ほむら、不本意かもしれないが謝って貰えないか?》

藍《また、晩御飯を御馳走するからさ》

ほむら《・・・飛び切り美味しい物をお願いするわ》

藍《任せてくれ、魂が浄化される程の逸品を作ろう》

ほむら『ごめんなさい、私が悪かったわ。もうキュウべぇを狙ったりしないわ』

さやか『私は何でキュウべぇを襲ったか聞いてるんだ!』

藍『さやか、謝ってる相手を其以上責めるのはみっともないぞ』

藍『ほむらは皆と仲直りしたかったが、キュウべぇを襲った手前話しかけづらかったみたいでね』

藍『私に仲を取り持って貰えないかと相談してきたんだ』

さやか『・・・何で藍に話したのさ』

藍『さやか達はご覧の通りだし、まどかはこう言った事に向いていない』

藍『仁美に頼む訳にもいかないから、私と言う訳だ』

ほむら《良くぽんぽんと話が出てくるわね》

藍《相手を納得させるには勢いも大事さ。少しでも“そうかも”と思わせれば勝ちだ》

藍《まあ、信じやすくする術も使ってるけどね》

ほむら《便利なものね》

マミ『八雲さんがそう言うなら・・・良いわ許してあげる』

マミ『でも、今度キュウべぇを虐めたら許さないわよ』

ほむら『わかったわ』

さやか『その・・・悪かったよ』

まどか『よかったぁ、これで皆仲直りだね』

仁美「あら? 皆さん集まってどうされたんですの?」

藍「ほむらと話をしてたんだ」

藍「今日の昼は、ほむらも一緒だよ」

仁美「まあ! それは楽しみですわ」

まどか「転校生二人とも私達が独占しちゃったね」ウェヒヒ


――放課後、藍のマンション


藍「――――で、後は型で抜いてオーブンで焼けば出来上がりだ」

さやか「上手くいくかな?」

藍「さやかは心配性だな。大丈夫だって」

藍「焼けるまで一息着こうか。お茶でも淹れよう」

さやか「ありがとう、藍」



さやか「出来たー!」

藍「どれ、一枚・・・」サク

藍「うん、良く出来てる。ほら、さやかも」

さやか「ん、ホントだ! スゲーうまい!」

藍「言ったろう? 大丈夫だって」

藍「今なら面会時間も十分間に合う」

さやか「うん、ありがとう藍」

さやか「行ってくるね」

藍「ああ、気を付けてな」

さやか「もう! 子供じゃないっての!」

藍「ふふっ、すまない」


――病院


さやか「恭介ー、来たよ」

恭介「いらっしゃい、さやか」

恭介「今日もCDを持ってきてくれたのかい?」

さやか「ふふふ、今日はさやかちゃん特製のクッキーなのだ!」

恭介「珍しいね、さやかがお菓子作りなんて」

さやか「たまにはね。さやかちゃんだってこれくらいは出来るんですよ!」

恭介「正直言うとさ、CDを持ってきてくれるのは嬉しかったんだけど辛くもあったんだ」

さやか「ごめん・・・気が利かなかったよね」

恭介「そんな事はないよ。さやかなりに考えてくれてたんだろう?」

恭介「それに、お見舞いに来てくれるだけで嬉しいしね」

さやか「恭介・・・」

藍「どうやら上手くいったようだね」

さやか「おわああぁぁ」

さやか「なななな、何で藍が?」

藍「驚き過ぎじゃないかな?」

藍「助言した手前気になってね」

恭介「君は・・・?」

藍「私は八雲藍。君のクラスメイトだ」

藍「気軽に藍と呼んでくれ」

恭介「そんな・・・初対面の女の子を名前でなんて呼べないよ」

藍「まあ、好きに呼んでくれて構わないよ。私は恭介と呼ばせて貰うけど」

恭介(随分サバサバした性格だな)

恭介「うん、構わないよ」

恭介(さやかと気が合いそうだな)クス

藍「君の話はいつも、さやかから聞いているよ。事ある毎に恭介がー恭介がーってね」

さやか「ちょ、ちょっと藍! 何言ってんのさ!」

藍「ん、駄目だったかい?」

恭介「あはは、さやか。八雲さんに悪口言ってないだろうね?」

さやか「そんな事言わないよ!///」

藍「恭介、あまり手の具合が良くないらしいね」

恭介「うん、まだ動かないんだ・・・でも僕は諦めないよ」

恭介「この手を治して、またバイオリンを弾くんだ」

藍「ああ、諦めなければ道は拓ける」

藍「今直ぐでなくても、いつか必ずね」

さやか「そうだよ! きっと治るからさ、諦めないで頑張ろうよ」

恭介「ありがとう。さやか、八雲さん」

藍「なに、私は大したことはしてないさ」


――翌日、放課後


藍(さて、件の美国織莉子とやらに会いに行くか)

藍(魔力の残滓から式に捜させたが、我々の能力はホントに便利なものだな)


――美国邸


藍(・・・・・・これはまた、随分と斬新なデザインの家だな)

ピンポーン

ガチャ

キリカ「誰だい、君?」

藍「八雲藍と申します。此方は美国織莉子さんのお宅ですよね?」

キリカ「そうだけど、織莉子に何の用?」

藍「少しお尋ねしたいことがありまして」

キリカ「・・・ふむ? ちょっと待ってて」

キリカ「織莉子、客人が来てるけどどうする?」

織莉子「どんな方かしら?」

キリカ「魔法少女では無いみたい。見滝原の制服を着てるよ」

織莉子「いいわ、通して頂戴」

キリカ「待たせたね、上がってくれ」

藍「お邪魔します」

藍「突然御伺いして申し訳ありません」

キリカ「ホントだよ、私と織莉子の二人きりの時間を邪魔してくれて、客人は礼儀と言うものを知らないのかな」

織莉子「キリカ、口が過ぎるわよ」

キリカ「ご、ごめんよ織莉子。謝るから嫌いにならないで」

織莉子「大丈夫よキリカ、私があなたを嫌いになるなんて事はないわ」

キリカ「織莉子/// 私も織莉子のこと大好きだよ」

藍「話を進めても良いでしょうか?」

藍(中々重症だな・・・)

織莉子「ええ、ごめんなさい」

藍「改めまして、私は八雲藍と申します。此方はお口に合うかは解りませんが、宜しければ召し上がって下さい」

織莉子「ご丁寧にすみません、美国織莉子です。今お茶を淹れて来ますので掛けて居てください」

藍「では、失礼致します」

キリカ「織莉子のお茶は最高にして至高の逸品だからね、有り難く頂くように」

藍「ええ、そうさせて頂きます」ニコ

藍「失礼ですが、貴女は?」

キリカ「私は呉キリカ、織莉子のパートナーだよ」

藍「キリカさんですね、改めて宜しくお願いします。お二人は一緒に暮らしていらっしゃるのですか?」

キリカ「私が一方的に織莉子の所に押し掛けてる感じだけどね」

織莉子「お待たせ、折角なのでお菓子も頂きましょう」

キリカ「それは、客人の手作りかい?」

藍「藍で良いですよ。趣味でお菓子作りをしていますので、これくらいのものでしたら簡単に出来ますよ」

キリカ「なら、そう呼ばせて貰うよ」

キリカ『今のところ、不信な点はないね』

織莉子『ええ、警戒すべき所は見られないわ』

キリカ『気にしすぎだったかな?』

織莉子『注意してしすぎると言うこともないわ、もう少し様子を見ていきましょう』

キリカ『解ったよ織莉子』

藍「早速ですが、本題に入らせて頂いても宜しいでしょうか?」

キリカ「そう言えば織莉子に話があるんだったね」

織莉子「私に?」

藍「単刀直入に言います。貴女の目的は最悪の魔女の出現を未然に防ぐことで間違い有りませんか?」

織莉子「なぜそれを!?」

藍「少々調べさせて頂きました」

藍「幸いにもまだ事を起こしていない様子でしたので、出来れば話し合いで解決したいと思いまして」

キリカ「目的を知られてるなら、君をこのまま帰すわけにはいかないね」パアァ

織莉子「待ちなさいキリカ!」

キリカ「織莉子?」

織莉子「藍さん、と言ったわね」

藍「はい」

織莉子「何故知っているのかは一先ず置いておきましょう」

織莉子「あなたは話し合いで解決したいと言いましたが、それは彼女を狙うなと言うことですか?」

藍「いえ、彼女だけではありません。他の魔法少女もです」

織莉子(魔法少女狩の事も知っている?)

織莉子(まだ計画の段階なのに・・・・・・)

織莉子「そうしたとして、あれを防ぐ手立てはあるのですか?」

織莉子「魔法少女の契約をしてからでは遅いのですよ」

藍「契約をしただけなら手の打ちようはあります」

藍「私が気にしているのはあなた達のことです」

織莉子「あなたに気にして貰う必要はありません」

藍「手を汚してからでは遅いのですよ」

藍「あなた達はまだ若い」

藍「だからこそ其が最善だと思っている。自分の手を汚すことを厭わない」

藍「此から先、それは一生付きまとうでしょう」

藍「罪はいつか許される。でも、あなたの心は其を赦さない」

藍「人は後悔する生き物です。一度闇に染まってしまえばあなたはあなたを赦せなくなる」

藍「逸れでも、普通の人ならまだ良いでしょう。だが魔法少女にとってそれは死を意味する」


藍「織莉子さん、貴女は貴女達の幸せのために、その世界を守るために戦っているのでしょう?」

藍「では貴女は何と戦っているのですか? 貴女は誰と戦っているのですか? 貴女の守るべきものは何ですか?」

藍「貴女はもう少し廻りに目を向けた方がいい」

藍「貴女は一人ではない、二人だけでもない。貴女が気付いていないだけです」

藍「貴女を助けたいと思う人は沢山居ます、貴女の幸せを願う人も」

藍「少なくとも、此処に一人居ます」

藍「闇に堕ちるのではなく、光を求めて下さい」

藍「私も出来る限り力になります」

キリカ「ご高説どうもありがとう、でも私達には他の奴らは必要ないよ」

キリカ「勿論君もね」

織莉子「キリカ、待ちなさいと言ったでしょう」

キリカ「織莉子? わ、解ったよ」

織莉子「藍さん、あなたの言いたいことは解りました」

織莉子「ですが問題が解決したわけではありません。あれを何とかしなければ未来など無いに等しいのですよ」

藍「その為に仲間が要るのですよ」

藍「一人で出来ないことは皆で何とかすればいい」

藍「それに、此処では言えませんが策がない訳ではありませんので」

織莉子「何故ここでは言えないのですか?」

藍「何処で奴らが見ているかわかりませんので」

藍「あれに知られるのは得策ではありませんから」

藍「今度は是非うちに来てください。歓迎しますよ」

藍「それと、此を渡しておきます」スッ

織莉子「お札? これは・・・・・・?」

藍《通信用の護符です。魔法少女の念話と違い盗聴される心配もありません》

藍《やり方は同じ様なものです》


織莉子《あなたは一体?》

藍《逸れも、何れお話しします》

藍「今日のところは此で失礼します」

藍「念を推しておきますが、くれぐれも道を間違いませんように」

藍「其では、失礼致します」


*


織莉子「ねえキリカ、彼女のことどう思う?」

キリカ「藍のことかい? 正直胡散臭いかな」

キリカ「今一目的がはっきりしないし」

キリカ「彼女の仲間と言うのも気になるしね」

織莉子「でも、彼女の言葉に心牽かれてしまう私がいるのも事実・・・」

キリカ「なんにせよ、悩むくらいなら行動した方が良いと思うよ」

織莉子「そうね・・・今度はこちらから接触して見ましょうか」

キリカ「私は織莉子に従うよ、織莉子が藍を信じるなら私もそうするだけさ」

――翌々日、放課後


まどか「上条くん、どうだった?」

さやか「うん・・・あんまり良くないみたい」

藍「気が滅入って無ければ良いが」

まどか「さやかちゃん、藍ちゃん! あれって」

さやか「嘘・・・」

キュウべぇ「GSだ! まずいよ、孵化しかしかかってる」

まどか「それって・・・」

キュウべぇ「このまま孵化したら、沢山の犠牲者が出るだろうね」

さやか「そんな・・・恭介!」

さやか「まどか、マミさんの連絡先知ってる?」

まどか「ううん」

さやか「なら、まどかはマミさんを呼んできて」

藍「さやかはどうするんだ?」

さやか「あたしは、ここで見張ってる!」

藍「無茶だ、危険すぎる!」

さやか「このまま放っておけないよ」

キュウべぇ「なら、僕がさやかに着いているよ」

キュウべぇ「中からテレパシーでマミを案内出来るし、最悪契約することも出来るしね」

藍「なら、私とまどかでマミさんを探そう」

藍「まどかはあっちを頼む。見つけたら互いに連絡を」

まどか「わかった」タタタ

藍「さやか、一応これを渡しておくよ」

さやか「これは?」

藍「護符さ。あまり強い攻撃には耐えられないが、無いより良いだろう」

藍「くれぐれも無茶はしないでくれ」

さやか「わかった。ありがとう、藍」

藍「直ぐに戻る!」タタタ

藍(此処までは筋書き通り)

藍(だが、油断は出来ないな)

まどか[藍ちゃん、今マミさんと病院に向かってるところだよ]

藍[わかった、私も直ぐに向かう]ピッ

マミ「ここね」

マミ「無茶し過ぎって言いたい所だけど、今回は目を瞑るわ」

マミ「さぁ、行きましょう」

まどか「はい」

藍「まどか! マミさん!」

まどか「藍ちゃん」

マミ「八雲さん」

藍「間に合った様ですね・・・行きましょう」

マミ「ええ」

――【お菓子の魔女結界内】


ほむら「待ちなさい」

まどか「ほむらちゃん・・・」

マミ「なにしに来たのかしら?」

ほむら「今回の魔女は私が狩る」

ほむら「中の二人の安全も保証するわ」

マミ「キュウべぇの件は許したけど、あなたを信用した訳じゃないわ」シュルシュル

ほむら「馬鹿っ! こんなことしてる場合じゃ」

ほむら「今回の魔女はいつもとは違う、あなただけじゃ――」

マミ「負けるとでも言いたいの?」

マミ「心配しなくても、私は負けないわ」

マミ「覚えていたら帰りにほどいてあげる。行きましょう二人とも」

まどか「ほむらちゃん・・・」

マミ「鹿目さん! 行くわよ!」

まどか「は、はい」

藍《すく戻る》

ほむら《ええ、お願い》

藍(頃合いか・・・あの扉を通ったときに入れ替わろう)


――少女移動中――


藍「ほむら、大丈夫か?」

ほむら「ええ、それより早く拘束を」

藍「わかってる。来い、前鬼」

ほむら「それが式神?始めて見たわ」

藍「驚かないんだな」

ほむら「異形の存在なら見慣れてるもの」スタッ

藍「そうか・・・」

藍「行こう」

ほむら「ええ。それより向こうは平気なの?」

藍「式と入れ替わったから、様子を見てまた入れ替わるよ」

藍「何かあっても、彼方の私が対応してくれるだろう」

ほむら「本当に便利なものね」

藍「さあ、急ごう」


*


マミ「もう、何も怖くない」

藍(良いタイミングだな。今のうちに入れ替わろう)

マミ「ティロ・フィナーレ」

まどか「やった!」

さやか「さっすがマミさん!」

お菓子の魔女「・・・」ズル

産地直送恵方巻「アーン」グァバ

まどか「ま、マミさん・・・」ガクガク

さやか「マミさんが・・・食べられ・・・」ガクガク

キュウべぇ「まどか、さやか、藍! 早く契約を!」

ほむら「その必要は無いわ」

まどか「ほむら・・・ちゃん?」

まどか「あ! マミさん!」

さやか「マミさん! よかった!」

ほむら「あの魔女は私が狩る。あなたはそこに居なさい」

マミ「暁美さん・・・・・・」

藍(此処までは予定通り。後は仕上げを講じるのみ)


――少女戦闘中――


さやか「て、転校生・・・食べられちゃったよ」

まどか「さやかちゃん、あそこ!」

さやか「いつの間に!? 瞬間移動?」

ほむら「これで終わりよ」

お菓子の魔女「」ドガァドカンドカン

ほむら「マミ、大丈夫? あなた達も平気かしら?」

まどか「うん・・・」

さやか「転校生、助かったよ」

マミ「ごめんなさい・・・まだ脚が・・・」ガクガク

ほむら「掴まって、肩を貸すわ」

藍「・・・」スッ

藍「・・・」バチィン

ほむら「藍!?」

さやか「ちょっと藍、あんた何してんの!?」

まどか「藍ちゃん・・・」

藍「どれだけ自分に自信があるかは知らないが、他者の忠告を無視した挙げ句この様とは」

藍「慢心は油断を生み、油断は死を招く」

藍「マミ、君に戦う資格はない」

さやか「藍、あんた何言ってんのさ」

まどか「藍ちゃん、言い過ぎだよ・・・マミさんは私達の為に戦ってくれてるのに」

藍「人々の為に戦っているという心こそ傲りだ」

藍「マミ、君はヒーローにでもなったつもりか?」

藍「君は只の女の子だ、出来ることは限られている」

藍「君がどんなに崇高な志を持とうと、戦いとは非情で醜いものだ」

さやか「藍、そんな言い方無いだろ! あんたの事見損なったよ」

藍「なら、残酷な事実を伝えてやろう」

藍「ほむらが来なければマミは死んでいた」

藍「当然私達も無事では無かったろう」

藍「そして、その原因を作ったのは・・・彼女自身だ!」

藍「マミは、ほむらの忠告を無視したあげくリボンで拘束をした」

藍「ほむらが抜け出せてなければ、最悪全員死んでいただろう」

さやか「そんな・・・マミさん・・・・・・」

さやか「嘘ですよね・・・? マミさん」

マミ「本当よ・・・」

藍「マミ、悪いがこれ以上君とは付き合えない」

藍「命が幾つ有っても足りないからね」

藍「行こう。さやか、まどか」

藍《マミの事を頼む》

ほむら《わかったわ》

藍「・・・・・・」

藍「ふう、ヒールを演じるのも苦労するな」

さやか「ヒールって・・・さっきの態とだったの?」

まどか(そんな・・・さやかちゃんが難しそうな言葉を知ってるなんて・・・)

藍「ああ、だが此で二人の蟠りも無くなっただろう」

藍「遣るべき事は沢山有るが、今日はその第一歩と言った所だ」

藍「ところで二人とも、まだ魔法少女になりたいかい?」

まどか「それは・・・」

さやか「あんなとこ見ちゃね・・・」

藍「其が普通だよ」

藍「ベテランのほむらはマミに捕らえられ、其のマミも隙を着かれ死にかけたんだ」

藍「戦わずに済むなら其に越した事はない」

藍「さあ、今日はもう帰ろう」

――翌日放課後、病院


さやか「恭介ー、来たよ」

恭介「・・・」

さやか「どうしたの? 暗いよ恭介」

さやか「あ、今日はね―――」

恭介「さやかは、何でいつもお見舞いに来るんだい?」

さやか「それは・・・恭介の事が心配だから・・・」

恭介「本当は手の動かない惨めな僕を見て、優越感に浸ってるんじゃないのか?」

さやか「そんな訳ないじゃん! どうしちゃったの恭介?」

恭介「僕の手・・・もう動かないんだ」

恭介「医者に諦めろって言われたんだ。現代の医学では治らないって」

さやか「え? ・・・嘘・・・」

さやか「でも、藍だって言ってたじゃん。諦めなければいつかきっと治るって、恭介だってそう言ってたじゃんか」

恭介「さやかには分からないよ・・・」

恭介「どんなに希望を持ったって、その現実を突き付けられてしまったら・・・」

恭介「希望も、心の支えも、僕の全てが崩れ去ってしまったんだ!」

恭介「もうこんな手必要無いんだよっ!!」ガシャン

さやか「やめて! やめてよ恭介!」

恭介「痛みさえ感じない・・・」

恭介「奇跡や魔法でもない限り、治らないんだ・・・」

さやか「あるよ。奇跡も魔法も有るんだよ!」

恭介「慰めは止してくれ・・・・・一人にしてくれないか」

さやか「・・・」ダッ

藍「さやか?」オット

藍「・・・失礼するよ」コンコン

恭介「・・・」

藍「さやかが飛び出して行ったが、何か有ったのかい?」

恭介「・・・」

藍「私でよければ話を聞こう」

藍「話した方が楽になる事も有る」

恭介「・・・僕の手」

藍「うん」

恭介「もう動かないんだ・・・医者に諦めろって……」

藍「そうか」

恭介「慰めたりしないんだね」

藍「慰めて欲しかったのかい? なら何故さやかにあたったんだ」

恭介「分かってる。さやかは何も悪くない」

恭介「でも・・・怖いんだ、堪らなく。その事実が・・・言葉が」

恭介「僕は・・・僕・・・は・・・」

藍「恭介」ギュッ

恭介「八雲さん!? なっなにを///」

藍「バイオリンが弾けなくたって恭介は恭介だ」

恭介「……でも、バイオリンが弾けない僕には何の価値も無いよ……」

藍「さやかがそう言ったのか? 私がそう言ったか?」

恭介「それは・・・」

藍「なあ恭介。何で君はバイオリンを弾くんだ? 誰の為に弾いているんだい?」

藍「自分の為かい? 君を評価してくれる大人の為か? それとも・・・」

恭介「僕は・・・・・・」

恭介「・・・・・・僕のバイオリンで・・・・・・さやかが笑ってくれたから・・・」

恭介「初めは・・・それだけだったんだ」

恭介「ただ、彼女の笑顔が見たかった」

恭介「でも、それももう叶わない」

恭介「さやかだって、僕のバイオリンが聴きたいから毎日お見舞いに来てくれたんだろう」

藍「合っているけど、百点満点では無いな」スッ

恭介「どう言うこと?」

藍「君達は似た者同士だな」

藍「笑って欲しいからさ」

恭介「笑顔の為・・・」

藍「なあ、恭介。前に進むだけが道じゃ無いだろう?」

藍「回り道をしたって良い。後ろに戻ったって良いじゃないか」

藍「後ろを振り返った時、そこには何がある? 誰が居る?」

藍「いつだって、さやかが居てくれるんじゃないのか?」

藍「立ち止まったって良い。君を支えてくれた人と笑い会えるのならね」

藍「いつかまた君が前に進む決心をしたとき、その時は私が道を照らそう」

恭介「八雲さん・・・」

恭介「・・・・・・?」

恭介「手が・・・指が動く・・・」

藍「何?」

藍「まさか・・・」

藍(さやかが契約を・・・)

藍「恭介、奇跡は簡単には起こらない」


藍「その代償は君が思うより大きいものだろう」

恭介「どう言うこと? 八雲さんは何か知ってるの?」

藍「一人の少女が悪魔と契約してしまったのさ」

恭介「まさか・・・さやかが」

藍「其はとても残酷な話だ」

恭介「さやかは? さやかに何があったの?」

藍「其を聞けば君は後悔するかもしれない、苦悩と呼ぶには重すぎる話だ」

恭介「それでも・・・・・・僕は聞きたい。さやかの身に何が起こったのかを」

藍「・・・いいだろう」

藍「恭介、君は宇宙人や幽霊を信じるかい?」

恭介「僕はさやかに何があったか聞いてるんだよ!」

藍「妖怪の存在は?」

恭介「・・・前の僕なら信じられ無かったと思う」

恭介「でも、それが何だって言うんだい?」

藍「先程悪魔と言ったが、あれは宇宙人らしい」

恭介「らしい?」

藍「私も人から聞いたのでな」

藍「其事態は疑っては無いが・・・話を戻そう」

藍「結果から言えば、さやかは宇宙人と契約し魔法少女となった」

恭介「魔法少女って、テレビや漫画の?」

藍「まあ聞け、質問には後で答えよう」

藍「たった一つの奇跡と引換に、さやかは戦いの宿命を背負ってしまった」

藍「魔法少女は魔女と呼ばれる存在と戦い続けなければならない」

藍「魔法少女は契約の際、ソウルジェムと呼ばれる宝石を生み出す」

藍「其は文字通り魂を結晶化させたものだ」

藍「魔法少女は無意識の内に、魂が抜け殻の肉体を操っている」

藍「当然只生活するだけで、ソウルジェムは魔力を消費し濁っていく」

藍「そして其の魂が濁りきった時、魔女へと変貌する」

藍「濁りを取り除くには魔女を狩り続け、魔女の持つグリーフシードを手にいれなければならない」

藍「終わりの無い戦いは彼女の身体を縛るだろう」

藍「誰からも称賛されない苦しみは彼女の心を蝕むだろう」

藍「そして最後には自らも魔女になる」

藍「其はお伽噺の様でとても残酷な話だ」

藍「……何か質問は?」

恭介「さやかは・・・・・・魔法少女になってしまったのかい?」

藍「恭介の手が治ったのが証拠だ。十中八九さやかは契約しているだろう」

藍「他の誰かが其を願うとは考えられないからね」

恭介「八雲さんも・・・魔法少女なのかい?」

藍「私は違うよ。此の話は別の魔法少女から聞いた」

恭介「八雲さんは平気なの・・・?」

藍「平気な訳無いだろう。さやかには人のままで居て欲しかった」

藍「其のために君達に干渉していたが、運命は変えられなかったようだ」

恭介「さやかはこの事は?」

藍「知らないだろうな」

恭介「その宇宙人は、何でこんな酷いことをするんだい?」

藍「宇宙の延命の為らしい。魔法少女が魔女になる際エネルギーが発生するらしく」

藍「其を集め宇宙の寿命を延ばすのが目的らしい」

恭介「そんなことの為に・・・さやかは・・・・・・」

藍「ああ、許される事じゃない」

藍「恭介、今度は君がさやかを支えてあげるんだ。私も出来るだけの事はしよう」

恭介「わかった、さやかの事は任せてくれ」

藍「頼む」

藍「また来るよ」ニコ


――市街地


まどか「あれ・・・仁美ちゃん?」

仁美「あら、鹿目さん。ごきげんよう」

まどか「どうしたの仁美ちゃん、どこに行くの?」

仁美「ここよりも素晴らしい場所ですわ」

仁美「そうですわ、鹿目さんも一緒に行きましょう。それが良いですわ」グイ

まどか「わ・・・ひ、仁美ちゃん」

まどか(様子が変だよ・・・・・・!)

まどか「魔女の口付け・・・そんな!」

仁美「何をしているんですの?早く行きましょう」

まどか「そ、そうだね。行こう、仁美ちゃん」

まどか(このままじゃ仁美ちゃんが・・・)

まどか(マミさんに連絡しなきゃ!)

まどか(・・・駄目、あんなことがあったばかりなのに)

まどか(マミさんにお願い何て出来ないよ)

まどか(ほむらちゃんは番号知らないし・・・)

まどか(藍ちゃんなら・・・・・・藍ちゃんなら何とかしてくれるかも)


まどか[もしもし、藍ちゃん!]

藍[やあ、まどか。どうしたんだい?]

まどか[仁美ちゃんが大変なの、首に魔女の口付けがあって―――]

藍[落ち着いて、今どの辺りに居るか分かるかい?]

まどか[今は、××の辺りだよ。街外れの工場に向かってるみたい]

藍[わかった、直ぐに行くから絶対無茶はするな。ほむらには私から連絡しておくよ]

まどか[お願い、藍ちゃん]ピッ

藍《ほむら、仁美が魔女の口付けを受けた。分かるか?》

ほむら《箱の魔女ね。恐らくまどかも一緒ね》

藍《ああ、私は今向かってる。君も来てくれ》

ほむら《わかったわ》

ほむら「マミ、魔女が現れたみたいなの。悪いけどちょっと出てくるわね」

マミ「ええ、私の事は気にしないで」

ほむら「直ぐ戻るわ、帰ったら夕飯にしましょう」

マミ「ええ、待ってるわ」


――工場内


工場長「俺は駄目な奴だ・・・こんな小さな工場ひとつ満足に切り盛り出来なかった」

サラリーマン「こんなはずじゃない・・・・・・俺は・・・ホントはもっと出来るんだ」

OL「どうして・・・いつも私ばかり怒られなくちゃいけないの?」

まどか「ど、どうしよう・・・このままじゃ」

まどか「藍ちゃん、早く来て」

まどか「!」

まどか「あれは・・・前にママが混ぜちゃ駄目だって言ってた・・・!」

まどか「止めなきゃ!」ダッ

仁美「鹿目さん、邪魔をしてはいけませんわ。あれは神聖な儀式ですの」

まどか「でも、あれ危ないんだよ! 皆死んじゃうよ!」

仁美「そうですわ、私達は不浄な肉体を捨て、素晴らしい世界へ旅立ちますの」

まどか「そんなの間違ってるよ、死んじゃう事が素晴らしい訳無い!」

藍「まどかの言う通りだ」ガシャーン

まどか「藍ちゃん!」

「よくも儀式の邪魔を」

藍「何が儀式だ。とは言え、操られた人に言っても仕方ないか」ピッ

藍「そこで大人しくしていることだ」

藍(ほむらはまだ来ないか)

藍「まあいい、私の友達を苦しめた償いはして貰わねばな」

まどか「藍ちゃん、何したの?」

藍「捕縛の術を使ったんだ」

藍「まどかは仁美達と此処に居てくれ。私は魔女の元に行く」

まどか「大丈夫なの? ほむらちゃんを待った方が・・・」

藍「平気さ」


――【箱の魔女結界内】


藍「何もない空間だな」

藍「・・・早速御出座しか」

使い魔「××××××」

藍「邪魔だ」バラララララ

藍「弾幕も久しぶりだな。ごっこにすら成らないが」

箱の魔女「・・・・・・」

藍「あれが魔女か、ブラウン管のテレビにしか見えないが・・・」

藍「・・・元魔法少女でも容赦はしない」

藍「人を呪わば穴二つ」

藍「お前の分は私が掘ってやろう」

箱の魔女「××××××」ザーザザ

藍「精神攻撃か、下らない」

藍「そんなもの効くわけ無いだろう!」

藍「去ね」ガシャァン

藍「景色が戻っていく・・・終わったようだね」

ほむら「藍! まどかと仁美は無事?」

まどか「ほむらちゃん! 大丈夫だよ」

藍「二人とも無事だよ。すまないな、君を待たずに動いてしまって」

ほむら「構わないわ。それにしても、魔法少女でもないのに魔女を倒すなんて」


ほむら「あなたには本当に驚かされるわ」

さやか「あるぇ~、さやかちゃんの出番は?」

ほむら「さやか、居たのね」

まどか「さやかちゃん!?」

藍「すまない、さやか。急を要したものでな」

さやか「あーうん、いいよいいよ」ワタシノデビューセンガ

ほむら「それより、早く引き上げましょう」

ほむら「警察に連絡したから、直に来るでしょう」

藍「そうだね。さやか、まどかを送ってあげてくれ」

藍「私は仁美を送るよ」

さやか「わかった、またね」

まどか「バイバイ。藍ちゃん、ほむらちゃん」

ほむら「またね」

藍「また明日」

藍「・・・・・・」

藍「結局さやかは契約してしまった」

ほむら「ええ、何とか魔女化しないようにしましょう」

藍「ああ、ほむらも無理はするなよ」

ほむら「平気よ」


――住宅街


仁美「ぅ・・・ん・・・ここは?」

仁美「藍・・・さん?」ボー

藍「気が付いたかい?」

仁美「私・・・一体・・・・・・」

藍「覚えてないか、君は集団自殺に巻き込まれていたんだ」

仁美「え?」

藍「兎に角、無事で何よりだ」

仁美「私が、集団自殺?」

藍「あの場に残していく訳にはいかないから私が連れて来たんだ」

仁美「ありがとうございます」

藍「君に気付いたのはまどかだよ、彼女にも後で礼を言って置くことだ」

仁美「はい・・・藍さんも、助けていただいて本当にありがとうございました」

仁美「志筑の娘が自殺だなんて何を言われるかわかりませんわ」

藍「しかし、集団自殺とは穏やかじゃないね」

藍「何か思い当たる事でもあるかい?」

仁美「・・・・・・」

藍「まあ、無理に聞きはしないよ。語らずとも、誰かが傍に居るだけで救われる事もある」

仁美「・・・・・・」

仁美「藍さんにとって・・・」

藍「ん?」

仁美「藍さんにとっての私ってなんなんですの?」

藍「・・・そうだね」

藍「私の淹れたコーヒーを、美味しそうに飲んでくれる女の子・・・かな」


仁美「それだけですの?」

藍「其だけさ」

藍「其が私の幸せであり、私の全てとも言える」

藍「別に難しく考える必要は無いさ」

藍「仁美はさ、志筑の名前を意識し過ぎなんじゃないか?」

藍「もっと自由にして良いと思うが」

仁美「自由・・・ですか?」

藍「悪い言い方をするなら、我が儘にって事だ」

藍「言われた事をこなすのも素晴らしい事だが、自分で考え行動するのも大切な事だ」

藍「たまには、親や周りの大人達に逆らうのも良いんじゃないか?」

仁美「そんなこと・・・・・・」

仁美「・・・確かに、少しも考えたこと無いと言えば嘘になりますが」

仁美「志筑の家に生まれた以上、仕方の無い事ですわ」

藍「君の言わんとする事は分かるさ」

藍「だが、これだけは言っておこう」

藍「私は“志筑”と友達になった訳ではない、仁美と友達になったんだ」

藍「仁美が自分の意思で何かを成す決心をしたなら、私は自分の全てを以て答えるよ」

仁美「藍さん・・・」

藍「着いた様だね。今日はゆっくり休むと良い」

藍「またね、仁美」

仁美「はい、また明日」

藍(仁美の問題はまだ時間が掛かりそうだな)


*


まどか「さやかちゃん、契約しちゃったんだね」

さやか「うん・・・どうしても叶えたい願いがあってね」

まどか「それって、上条君の事?」

さやか「まあね、やっぱり私はあいつにバイオリンを弾いていて欲しいんだ」

まどか「さやかちゃんは怖くないの? マミさんだってあんな目にあったのに・・・」

さやか「友達を無くす方がよっぽど怖いよ」

さやか「だから、後悔なんてあるわけ無いよ」

まどか「さやかちゃん、無理だけはしないでね」

さやか「まどかは心配性だなぁ、大丈夫だって!」

さやか「でも驚いたな~、魔女を探してたらまどかと仁美が居るんだもん」

まどか「私もびっくりしたよ、さやかちゃん何にも言ってくれないんだもん」

さやか「ごめんごめん」

さやか「でも安心して、これからの見滝原は魔法少女さやかちゃんがガンガン守っちゃいますからね~」

さやか「まどかは泥船に乗ったつもりで居なよ!」

まどか「それを言うなら大船だよ」

さやか「泥船じゃなかったっけ?」

まどか「全然違うよ、さやかちゃん」


――翌日


まどか「藍ちゃん、おはよう」

藍「おはよう、まどか、さやか」

さやか「おはよう、藍」

藍「後は仁美だけか、彼女が遅れるのは珍しいね」

さやか「そう言えばそうだね」

仁美「すみません、遅れましたわ」

藍「噂をすればなんとやら・・・」

まどか「おはよう、仁美ちゃん」

さやか「おはよう」

仁美「おはようございます」

仁美「お待たせしてしまったようで・・・申し訳ありません」

藍「構わないさ」

藍「それじゃ、行こうか」


――放課後


さやか「ごめん皆、私は病院に寄って帰るね」

藍「ああ」

まどか「うん、上条君によろしく」

藍「仁美は今日も稽古が有るのかい?」

仁美「はい、ですが少しでしたら時間が取れますわ」

藍「なら、今日は何時もの喫茶店に行こうか」


――病院


さやか「やっほー、恭介!」

恭介「やあ、さやか」

さやか「具合はどう?」

恭介「聞いてくれ、手が動くようになったんだ」

さやか「本当? 良かったね恭介!」

恭介「足の方はまだ治ってないから、退院するのは少し先になるかな」

さやか「他に悪いところは無い?」

恭介「大丈夫だよ、無すぎて怖いくらいさ」

恭介「ねぇ、さやか」

さやか「なに? 改まっちゃって」

恭介「昨日はごめん、僕が無神経だった・・・」

さやか「もういいじゃん、お互い悪かったってことで!」

さやか「今は治ったことを喜ぼうよ」

恭介「そうだね・・・でも実感が無くて」

さやか「うん・・・無理もないよね」

さやか「よし! この話しはこれでお仕舞い」


さやか「恭介、ちょっと一緒に来て!」

恭介「何処にいくんだい?」

さやか「ふふ~、何処でしょう?」

恭介「これは・・・屋上?」

さやか「あはは、流石に気付くか」

恭介「屋上に何か有るのかい?」

さやか「着いてからのお楽しみだよ」

恭介「随分と勿体ぶるね」

さやか「まぁね・・・っと、着いたよ」

恭介「父さん? 母さんも・・・」

恭介「一体・・・」

上条父「お前からは処分してくれと言われたが、どうしても捨てられなくてな」

上条父「取っておいたんだ」

恭介「僕の・・・バイオリン・・・・・・」

上条父「弾いてみてくれないか」

さやか(これが私の願い)

さやか(後悔なんてある訳無い)

さやか(私、今最高に幸せだよ)


――展望台


杏子「・・・・・・」

キュウべぇ「本当に彼女と事を構える気かい?」

杏子「だってチョロそうじゃん」

杏子「瞬殺っしょ、あんな奴」

杏子「マミの奴がリタイアしたって聞いたから来たのに」

杏子「あんな奴に、こんな絶好の狩場を渡すなんてさ」

キュウべぇ「しかし、君の思うようには行かないかもね」

キュウべぇ「この街には他にも魔法少女が居るからね」

杏子「はぁ? 何さそれ」

杏子「そんなこと言ってなかったじゃんか」

キュウべぇ「聞かれなかったからね」

杏子「ふん、相変わらずだね」

杏子「で? 何者なのさ、そいつ」

キュウべぇ「僕にもよくわからない」

杏子「そいつもあんたと契約して魔法少女になったんでしょ?」

キュウべぇ「僕は彼女と契約した覚えがない、彼女は極めつけのイレギュラーだ」

キュウべぇ「どういう行動に出るか、僕にも予想出来ない」

杏子「上等だ、少しは楽しめそうじゃん」


――藍の部屋

藍「さやかが契約してしまったが、此からの方針はさやかの魔女化阻止でいいのかい?」ハイ コーヒー

ほむら「ええ、それについて何だけど」アリガト

ほむら「佐倉杏子を仲間にしようと思う」

藍「どんな子何だい?」

ほむら「利己的な魔法少女よ、GSを得るために使い魔を見逃したりしてるわ」

藍「何と言うか・・・さやかとは正反対な感じだな」

藍「大丈夫なのかい?」

ほむら「ええ、何時も反発し合いながらも一番仲が良いわ」

藍「ほう、さやかの嫌いなタイプだろうに」

藍「どういう訳だい?」

ほむら「杏子にも色々事情があるのよ」

ほむら「元はマミの様に正義を志す魔法少女だったの」

藍「なるほど、興味が湧いたよ」

ほむら「でも、和解するまでが大変よ」

ほむら「さっきも言ったけど、利己的で馴れ合うのを由としてない」

ほむら「何度か勧誘に失敗しているわ。相応の見返りを提示しても断られる事もあったわね」

ほむら「あ、おかわり頂戴」スッ

藍「わかった、私も慎重に動くとするよ」ハイハイ

藍「それで、その杏子がさやか対策って事かい?」

ほむら「ええ、近いうちに会いに行くつもりよ」

藍「私も同行しても構わないかい?」

ほむら「そのつもりよ」


ピンポーン

藍「はい、八雲です」

緒莉子[美国です。夜分にすみません]

藍「構いませんよ。どうぞ、上がって下さい」ピッ



藍「ようこそいらっしゃいました。此方にいらしたという事は少しは信用して頂けたのでしょうか」

緒莉子「それを見極めに来たのよ」

藍「左様でしたか。今お茶を入れますので少々お待ちを」

緒莉子「お構いなく」

藍「いえいえ、お客様にお茶も出さない等失礼ですわ」

藍「前回緒莉子さんにも頂きまたし、比べるべくもない事とは思いますが私のお茶も飲んでいってください」

緒莉子「そこまで言うのでしたら頂きましょう」

藍「ところで本日はキリカさんはご一緒ではないのですか?」

緒莉子「キリカは少し用がありまして……それにいつも一緒と言う訳ではありませんし」

藍「これは失礼しました。仲が宜しいようでしたのでご一緒にいらっしゃるものと思っておりました」

緒莉子「一緒には住んでいますが、常に一緒と言う訳ではありませんよ」

藍「それもそうですわね。どうぞ、お口に合うと良いのですが」

緒莉子「頂くわ」

緒莉子「……美味しい。私も自信があったのだけど……負けたわ」

藍「ありがとうございます」

緒莉子「ここならキュウべぇに盗聴される心配はないのでしたね」

藍「はい。まず敷地に一つ、そして建物全体に一つ、最後にこの部屋に一つ結界を張っております」

藍「あれもそれなりの科学力を持ってはいるようですが、私はそれ以上の者を知っておりますので」

緒莉子「結界?あなたは人間なのでしょう?」

藍「其れも含めて、お話致します」

藍「これからお話しすることは他言無用でお願い致します。尤も、こんな荒唐無稽な噺を信じれ無いでしょうが」

緒莉子「いいでしょう、話してください」

藍「先ず、先ほどの質問ですが、私は人間ではありません」

緒莉子「人間ではない?なら貴女も魔法少女だと言うのですか?」

藍「そう警戒しないでください、私は魔法少女でもありませんよ」

緒莉子(人間でも魔法少女でも無い? なら何だと…)

藍「私はあなた達人間が妖怪と呼ぶ存在です」

緒莉子「妖怪!? そんなものが居るはずがないわ」

藍「そうですね。この姿のままでは信じられないでしょう」ズズ…

緒莉子「なっ・・・その姿は!?」

藍「私は九尾の狐。主の命によってこの地に参りました」

藍「私の役目はこの地で起こる厄災を未然に防ぐことです」

緒莉子「厄災・・・最悪の魔女の出現ですね」

緒莉子「なら、鹿目まどかを殺すしか方法はないわ」

藍「必ずしも殺す必要はありませんよ」

藍「貴女達にとってもデメリットしかないでしょう」

緒莉子「なら如何すると言うのですか? 具体的な案がないのなら貴女と手を組むことは出来ませんわ」

藍「前にも言ったと思いますが、魔法少女に成っただけなら遣り様はあります」

藍「っと、その前に緒莉子さんは魔法少女についてどこまで知っていますか?」

緒莉子「最後には魔女になるという事は知っていますが」

藍「SGが自身の魂という事は知っていますか?」

緒莉子「・・・! いえ、それは知りませんでした」

緒莉子「でも、それが何か?」

藍「我々ほど魂の扱いに長けている者もいないでしょう」

藍「結晶化された魂を修復し体と定着させることも可能です」

緒莉子「つまり、人間に戻せるという事ですか!?」

藍「貴女達には出来なくても妖怪の私には出来るのですよ」

藍「或いは魔法少女自体に成れない様、力を封印する事も出来ます」

藍「まどかについては私の方で確実に対処します。貴女達が手を汚す必要はないのですよ」

緒莉子「わかりました。貴女の言葉を信じましょう」

藍「貴女さえ良ければここで人間に戻す事も出来ますが・・・」

緒莉子「いえ、それは遠慮しておきます」

緒莉子「救世の必要が無くなったとはいえ、遣るべき事が無くなった訳ではありませんので」

緒莉子「それに、キリカに何も言わず私だけ人間に戻るなんて出来ませんもの」

藍「そうですか・・・」

藍「緒莉子、世界は貴女に優しくないかもしれない。それでも、貴女が正しきことを続ける限り私は貴女の為に動くと約束しましょう」

藍「貴女の弱さも、悲しみも私が受け入れましょう。無理に変わろうとしなくていいのです、人には時間が必要なときがあります」

緒莉子「今が変わるべき時よ」

藍「なら、私と共に来ますか?」

緒莉子「ええ、私達の未来のために」

――翌放課後、いつもの喫茶店


ほむら「話って何?」

まどか「さやかちゃんの事何だけど」

まどか「ほむらちゃんも、さやかちゃんと仲良くして貰いたくて・・・」

ほむら「貴女は、それを私に言うの?」

ほむら「お願いしたければ、藍にでも言いなさい」

まどか「藍ちゃんに言ったら、任せとけって」

まどか「でも、ほむらちゃんにもお願いしたいの」

まどか「ほむらちゃんが仲良くしてくれたら・・・協力して戦ってくれたら」

まどか「ずっと安全だと思うんだ」

ほむら「・・・」

まどか「さやかちゃんはさ、思い込みが激しくて、意地っ張りで、すぐ人と喧嘩することもあるけど」

まどか「誰かの為に戦える、真っ直ぐな人なの」

ほむら「魔法少女としては致命的ね」

ほむら「度を越した優しさは甘さに繋がり、蛮勇は油断となる」

ほむら「そして、どんな献身にも見返りはない」

まどか「そんな言い方止めてよ!」

ほむら「さやかは契約すべきではなかった」

ほむら「さやかが契約したのは私のミスよ」

ほむら「だからと言う訳ではないけど・・・」

ほむら「なるべく気にかけるようにはするわ、でもそれだけよ」

まどか「ほむらちゃん・・・ありがとう!」


――病院


藍「やあ、恭介」

恭介「こんにちは、八雲さん」

藍「具合はどうだい?」

恭介「良すぎて恐いくらいさ」

恭介「でも、そのせいでさやかは・・・」

藍「今は其を言っても仕方ないさ」

藍「怪我の回復を喜ぶべきだ、その方がさやかも嬉しいだろう」

藍「それと魔法少女の件は、さやかから話してくるまで触れない方が良いだろう」

恭介「わかってる」

藍「ならいいさ」

藍「遅くなったが、お見舞いの品だ」

藍「甘いものは平気だったかな?」

恭介「大丈夫だよ、ありがとう」

恭介「さっきから良いにおいがするから気になってたんだ」

藍「お茶も持って来てるんだ」

藍「たまには一緒にどうだい?」

恭介「頂くよ」

恭介「これって手作りかい?」

藍「ああ、その方が愛が伝わるだろう?」

恭介「ぶっ」ゲホゲホ

恭介「冗談は止めてくれよ」

藍「ははは、すまん。君にはさやかが居るものな」

恭介「またそうやってからかって・・・」

恭介「八雲さんには、好きな人は居ないのかい?」

藍「好きなひとか・・・」

藍「私には居ないな」

藍「だが・・・この身をかけて守りたいひとなら居るよ」

藍「ただそのひとの為だけに生きる」

藍「そう思わせるひとが」

恭介「八雲さんにそこまで言わせる人か・・・」

恭介「どんな人なんだい?」

藍「凄いひとだよ」

藍「私が最も尊敬し、敬愛している方だ」

恭介「八雲さんは本当にその人の事が大切なんだね」

藍「まあね」

恭介「でもそれって、その人を好きなんじゃないの?」

藍「恋愛感情とは違うさ」

藍(此の想いはそんな次元のものではないさ)

藍「ただ、この世の誰よりも大切なひとではあるな」

恭介「すごいな、そこまではっきりと自分の気持ちを口に出来るなんて」

藍「確かに想いを伝えるのは容易いことではないな」

藍「だが、口にしなければ何も伝わらないぞ」

恭介「それはそうだけど、そんなに簡単にはいかないよ」


藍「まあ、そう焦ることはないさ」

藍「ところで退院はいつ頃になるんだい?」

恭介「足の方も治りが早いみたいで、近いうちに退院出来るだろうってさ」

藍「そうか、なによりだ」

藍「退院前にはさやかにも伝える様に、彼女も喜ぶだろう」

恭介「そうするよ」

藍「それじゃ、私は行くよ」

恭介「アップルパイご馳走さま、美味しかったよ」

藍「構わないさ、私が好きでやっている事だ」

藍「また―――」

藍「次は学校で」ニコ


――さやかのマンション前


まどか「さやかちゃん!」

さやか「まどか?どうしたのさ」

まどか「その・・・一人で平気?」

さやか「平気だよ、マミさんだってそうしてきたんだし」

さやか「後輩としてこれくらいはやらなくちゃ」

まどか「私も連れていって貰えないかな?」

まどか「足手まといになるのはわかってる・・・付いていける所までで良いの」

さやか「頑張り過ぎじゃない?でも凄く嬉しい」

さやか「私の手、震えてるの分かる?」

さやか「魔法少女として戦って行かなくちゃいけないのに怖いんだ」

さやか「一人が心細いなんてさ、情けないよね」アハハ

まどか「そんなこと無いよ」

まどか「一人で戦える方が凄いんだよ」

さやか「まどか・・・うん、一緒に行こう」

さやか「私が守るから安心して、一緒に魔女をやっつけよう」

キュウべぇ「危険は承知のうえなんだね?」

さやか「一人だと無茶しそうだしさ、まどかがいると思えば冷静になれるよ」

キュウべぇ「考えがあっての事ならいいんだ」

キュウべぇ「まどか、君にも考えあっての事何だろう」

キュウべぇ「実際、君がいることで最悪の事態に備えて一つだけ切り札を用意できるしね」


さやか「!」

さやか「SGに反応が!」

キュウべぇ「この反応は使い魔の物だね」

さやか「こっちは初心者だし、簡単な方が良いよ」

キュウべぇ「油断しないで」

さやか「わかってる」パァァ

さやか「これでも食らえ!」

さやか「良し!当たっ―――」

ギィン

さやか「!」

さやか「弾かれた!?」

杏子「ちょっとちょっと、何してんのさ」

さやか「見りゃ分かるでしょ」

さやか「あぁ、逃がしちゃう!」

杏子「待ちなって、あれは使い魔だよ」

杏子「倒したところでGSは手に入らないよ」

杏子「あんた、そんなことも知らないのかい?」

さやか「あれを放って置いたら誰かが犠牲になるのよ」

杏子「それで良いのさ、4、5人食わせてやれば魔女になるんだし」

杏子「そうすればGSだって孕むんだから」

さやか「魔女にするために誰かを犠牲にするって言うの?」

杏子「あんた、食物連鎖って知ってる?」


さやか「・・・それがどうしたのよ」

まどか(さやかちゃん、知らないんだろうな)

杏子(小学校で習ったよな?)

杏子「弱い人間を魔女が食う、。その魔女を魔法少女が食う」

杏子「そう言う強さの順番何だよ」

杏子「まさか、やれ正義だの、やれ人助けだなんて」

杏子「おちゃらけた理由で契約したんじゃないよね?」

さやか「だったら何だって言うのよ!」

杏子「ちょっとやめてくれない?遊び半分で首突っ込まれるのは迷惑なんだよね」ヒュン

さやか(柄が分かれ―――)バキッ

さやか「ぐ・・・ぅ」ドサ

杏子「トーシロが、ちっとは頭を冷やしな」

さやか「ま・・・て・・・・・・」

杏子「へぇ?全治三ヶ月ってくらいには傷を負わせた筈なんだけどね」

さやか「生憎、私は癒しの祈りで契約したんだ」

さやか「回復力なら人一倍だよ」

杏子「だからなんだってのさ、そうやって傷の舐め合いをしてるのがお似合いだよ」

杏子「帰ってお友達に慰めてもらいな」

杏子「負け犬」

さやか「あんたみたいなのが居るから・・・」

さやか「あんたみたいなのが居るからマミさんが!」

杏子「―――――っ!」

杏子「うぜぇ、超うぜぇ」

さやか「だまれ!」

杏子「言って聞かせても分からない、殴っても分からないバカじゃ」

杏子「後は殺しちゃうしか無いよねぇ」

さやか「負けない! 負けるもんか!!」

まどか「どうして・・・ねぇどうして味方同士で戦わなきゃいけないの?」

まどか「キュウべぇ、二人を止めてよ」

まどか「こんなのって無いよ」

キュウべぇ「僕にはどうすることも出来ない」

キュウべぇ「でも、どうしても力づくでも止めたいなら方法がない訳じゃないよ」

キュウべぇ「君が魔法少女になればいい」

キュウべぇ「あの戦いを止めるには、同じく魔法少女じゃなければ無理だ」

キュウべぇ「でも、君にはその資格がある」

キュウべぇ(もう一押しかな)

まどか「私が契約すれば・・・」

キュウべぇ「美樹さやかを助けたくないのかい?」

杏子「終りだよ」ジャキ

まどか「私・・・」

ほむら「それには及ばないわ」フワッ

杏子「なっ!?」スカッ

杏子「!」ハッ

さやか「え!?」

まどか「ほむら・・・ちゃん?」

さやか「お前・・・」

杏子「何しやがったてめぇ!」スカ

杏子「!」

杏子(まただ、どういう事だ・・・?)

さやか「転校生、邪魔しないで!」

ほむら「退きなさい、貴女に佐倉杏子の相手は無理よ」

さやか「あんたには関係ない!」

杏子「・・・あんた、何処かで会ったかい?」

ほむら「・・・」

藍「さやか、落ち着け」

さやか「藍? 止めないで!」

さやか「―――!」ビク

藍「お前か? さやかを虐めたのは」

杏子「~~~~っ!」ゾク

杏子(ヤバい、あいつはヤバい)

杏子(あたしの本能がそう告げている)

杏子「悪いがここは退かせてもらうよ」ガキン ヒュヒュン バッ

藍「さやか、頼むから無茶はしないでくれ」

さやか「だけどあいつは―――」

藍「さやか!」

さやか「―――っ」グッ

藍「私は君が心配なんだ」

藍「前にも言っただろう? 魔法少女とて万能ではない」

藍「君は君に出来ることをすればいい」

藍「一人で解決できない事は私達が力になる」

藍「相手を許せないのも解る。でも無茶はしないでくれ」

さやか「・・・ごめん、ちょっと意地になってた」

さやか「転校生も、ごめん」

ほむら「構わないわ」

藍「さやかが無事なら其で良いさ」

まどか「ほむらちゃん・・・助けてくれたの?」

ほむら「・・・・・・あなたは」

ほむら「一体何度忠告させるの?」

ほむら「何処まで貴女は愚かなの」

まどか「ぅ・・・」

さやか「あんた、そんな言い方―――」

ほむら「貴女は黙ってて」

さやか「なっ?」ムカ

ほむら「貴女は関わりを持つべきではないわ」

ほむら「散々言って聞かせたわよね?」

ほむら「愚か者が相手なら、私は手段を選ばない」

まどか「っ!」

藍「ほむら、そこまでだ」

ほむら「・・・・・・」コツッコツッ

さやか「何なのさあいつ!」

さやか「少しはいい奴かもって思ったのに」

藍「ほむらは間違いなくいい奴だよ、少し不器用なだけさ」

藍「彼女の変わりに謝るよ。すまなかった」

さやか「藍が謝ることじゃ無いよ」

藍「私ももう行くよ」

藍「さやか、まどかの事を頼む」

さやか「わかった」

藍「ほむら、待ってくれー!」

さやか「藍は何であんなにほむらに気をかけるんだろ」

キュウべぇ「何にせよ、暁美ほむらが何を考えているか分からない以上気をつけて」

―――ゲームセンター


杏子「後に立たれると気が散るんだけど」

藍「すまない、前には立てなかったものでな」

杏子「そう言う事を言ってるんじゃ―――」

藍「単刀直入言おう」

藍「私達の仲間になってほしい」

杏子「やなこった」

藍「理由を聞いても良いかな」

杏子「そんなもんねぇよ」

藍「そうかな?」

藍「君は一見粗暴に見えて、その実とても洗練された言動をしている」

藍「相手の事を良く観察してると言える」

藍「考え無しにものを言ったりしないだろう」

杏子「まぁ、あたしだって得体の知れない連中に仲間になれって言われて」

杏子「はい、わかりましたって言うほどバカじゃないさ」

杏子「それに、あんたらの仲間になるってことは」

杏子「あの青いのや巴マミが居るってことだろ?」

杏子「尚更お断りだね」

藍「なるほど、しかし私達も其で諦める程物分かりは良くないよ」

藍「どうしても君の力がいる」

杏子「どうしてあたしに拘る」

杏子「仲間ならあいつらが居るし、あんたらだってそうとうな実力者だろ?」

ほむら「彼女達だけでは不十分よ」

ほむら「現状では巴マミに戦闘は不可能」

ほむら「美樹さやかも契約したばかりで力不足」

杏子「だから、なんでそんなに仲間が必要なのさ」

ほむら「2週間後にワルプルギスの夜が来る」

杏子「なぜ解る?」

ほむら「私達の能力に由るものよ」

杏子「あんた達の・・・ね」

ほむら「私はワルプルギスさえ倒せればそれで良い」

ほむら「やつを倒せたら私はこの街を出ていく」

藍「因みに、私も問題が解決したら此処を去る事になる」

ほむら「巴マミには話を通しておくから、後は貴女の好きにしたら良い」

杏子「ここを好きに出来るってのは魅力的だが」

杏子「あんた達には残って貰うよ」

杏子「あたし一人でマミとあのトーシロの相手はごめんだ」

杏子「あんた達に間に入って欲しい」

藍「それは、仲間になってくれると言うことかい?」

杏子「ああ、あんたらの事気に入ったよ」

杏子「まるで正反対の目をしているのに、瞳の奥には強い意思を感じる」

杏子「ほら、食うかい?」

藍「頂こう」ポリポリ

ほむら「貰うわ」パキッ

藍「二人ともこの後時間は有るかい?」

藍「よければ、家で夕餉でもどうかな?」

杏子「マジで? 行く行く!」

ほむら「藍の料理は絶品よ、当然私も行くわ」


――翌日、路地裏


キュウべぇ「時間が経ちすぎてる」

キュウべぇ「昨日の使い魔は完全に逃げてしまっているね」

さやか「そう・・・」

まどか「ねぇ、さやかちゃん」

さやか「?」

まどか「このまま魔女退治を続けてたら、また昨日の子と会うんじゃないの?」

さやか「当然そうなるだろうね」

まどか「だったらさ、先にあの子ともう一度会って、ちゃんと話をしておくべきじゃないかな?」

まどか「じゃないと、またいきなり喧嘩の続きになっちゃうよ」

さやか「・・・・・・」

さやか「喧嘩ねぇ・・・」

さやか「夕べのあれが、まどかには只の喧嘩に見えたの?」

まどか「・・・ぇ?」

さやか「あれはね、正真正銘殺し合いだったよ」

さやか「お互い嘗めてかかってたのは最初だけ」

さやか「途中からは、あいつも私も本気で相手を終わらせようとしてた」

まどか「そんなの・・・尚更駄目だよ」

さやか「だから話し合えって?」

さやか「バカ言わないでよ!相手はGSの為に、人間を餌にしようって奴なんだよ」

さやか「どうやって折り合い付けろって言うの?」

まどか「さやかちゃんは、魔女をやっつけるために魔法少女になったんでしょ?」

まどか「あの子は魔女じゃない、同じ魔法少女なんだよ・・・」

まどか「仲良くする方法だってきっとあると思うの」

まどか「やり方は違っても、魔女を倒したいって気持ちは同じでしょ?」

さやか「そんな訳無い!転校生だって何を考えてるのか解らないし」

さやか「やっぱり・・・マミさんだけが特別な魔法少女だったんだ」

まどか「そんな・・・それは違うよ」

さやか「夕べ逃がした使い魔は小物だったけど、それでも人を殺すんだよ?」

さやか「次にあいつが狙うのは、まどかのパパやママかもしれない」

さやか「たっくんかもしれない、それでもまどかは平気なの?」

さやか「放って置こうって奴を許せるの?」

さやか「私はね、ただ魔女と戦うだけじゃなくて、大切な人を守りたくて魔法少女になったの」

さやか「だから・・・魔女より悪い人間がいるなら、私は戦うよ」

さやか「それが、魔法少女でも」カツッカツッ

まどか「さやかちゃん・・・」

まどか「キュウべぇも何とか言ってよ」

キュウべぇ「僕から言わせて貰うと、無謀すぎるってことだけだ」

キュウべぇ「今のさやかでは、暁美ほむらにも佐倉杏子にも勝ち目はない」

キュウべぇ「でも、さやかは聞き届けてくれないよ」


――マミのマンション


ほむら「ご飯出来たわよ」

マミ「ありがとう。でも、病人って訳じゃ無いんだからこれくらい出来るわよ?」

ほむら「気にすることは無いわ、私が勝手にやっているだけだから」

マミ「素直じゃないのね」

ほむら(学校にも行けないのに良く言うわね)

ピンポーン

マミ「あら?誰か来たみたいね」

マミ「はい、巴です・・・って鹿目さん!?」

ほむら「え!?」

ほむら(何故まどかが)

マミ「ええ、良いわよ」

マミ「それと、今―――」

ほむら「私が居ることは言わないで」ボソッ

まどか[どうかしたんですか?]

マミ「ううん、今夕飯を食べていたところだから」

マミ「私だけ食事しながらになっちゃうけど」

まどか[す、すみません!お食事中に・・・」

マミ「平気よ、今開けるわ。玄関も開けておくからそのまま入って」ピッ

マミ「どうして鹿目さんには秘密なの?」

ほむら「そう言う訳ではないのだけど」

ほむら「酷いことを言ってしまった手前、会わせる顔がないの」

マミ「あなたって本当・・・」

ほむら「何よ?」

マミ「何でもないわ」

マミ「でも、もう少し素直になっても良いんじゃない?」

ほむら「善処するわ」ガラガラッ

ほむら「また来るわ」バッ

マミ「何も窓から出ていかなくても良いのに・・・」

まどか「お邪魔します」ガチャ

まどか「すみませんマミさん、こんな時間に・・・」

マミ「気にしないで」

マミ「待ってて、今お茶を淹れるわ」

まどか「い、いえ大丈夫です」

マミ「好意は素直に受け取って置きなさい」

まどか「す、すみません」

マミ「ふふっ、謝らなくていいのよ」

マミ「それで、今日は何かあったのかしら?」ハイ コトッ

まどか「ありがとうございます」

まどか「その・・・さやかちゃんの事なんですけど」

マミ「そう言えば契約したんだったわね」

まどか「あれ?何で知ってるんですか?」

マミ「暁美さんに聞いたのよ」

まどか「ほむらちゃんに?」

マミ「あれ以来、あなた達二人はあまり来てくれてないけど」

マミ「暁美さんと八雲さんは良く来てくれるわ」

マミ「八雲さんにいきなり土下座されたときは驚いたわね」クスクス

まどか「そんな事が・・・私全然知りませんでした」

マミ「美樹さんの事だったわね、佐倉さんとぶつかっているとか・・・」

まどか「そうなんです・・・止めたいのに、私じゃどうしようも出来なくて」

マミ「暁美さんも色々動いてくれているみたいだし、一度思いっきりぶつかってみるのも良いんじゃないかしら」

まどか「そんな・・・魔法少女同士で戦うなんておかしいですよ」

マミ「鹿目さん、戦わなきゃ答えの出ないときもあるのよ」

マミ(あの時の私はそれが出来なかった)

マミ(戦おうと、何度ぶつかろうと、この手を離さずにいれば・・・)

まどか「でも・・・さやかちゃんが遠くに行っちゃった気がして・・・・・・」

まどか「このままじゃ、取り返しの付かないことになりそうで」

マミ「佐倉さんの方は、暁美さんがなんとかしてくれるわ」

マミ「美樹さんの方は、私も話をしてみるけど」

マミ「出来るだけ鹿目さんが付いていてあげて」

まどか「はい・・・」

マミ「こんなことしか言えなくてごめんなさい」

マミ「本当なら、私が先頭に立って解決しないといけないのに」

マミ「まだ戦うのが恐いの・・・情けない先輩でごめんね」

まどか「そんな、今でもマミさんは私達の憧れの先輩ですよ」

マミ「ありがとう、そう言って貰えると嬉しいわ」

マミ「今日はもう遅いし帰りなさい」

まどか「はい・・・あの、また来ても良いですか?」

マミ「もちろんよ、いつでも来て頂戴」

まどか「はい、今度はさやかちゃんも連れてきます」

マミ「ええ、待ってるわ」

まどか「お邪魔しました」バタン


――藍のマンション


藍「それで相談って?」

仁美「最近さやかさん達と距離を感じてしまうんです」

仁美「何か、隠し事をされているような・・・」

仁美「藍さんなら、何か知っているのではないかと思いまして」

藍「ふむ」

藍「仁美に話さないのは友達を巻き込みたくないと思っての事じゃないか?」

仁美「それでも・・・友達として何の相談もないのは寂しいですわ」

藍「確かに私は、さやか達が何をしているか知っている」

仁美「でしたら!」

藍「さやか達が言わないのに私が言うわけにはいかないよ」

仁美「そう・・・ですか・・・・・・」

藍「さらに言えば、私はさやか達にも秘密にしていることがある」

仁美「さやかさん達にもですか?」

藍「私はある目的のため、ほむらと手を組んでいる」

仁美「暁美さんと?」

仁美「そう言えば、暁美さんが来た頃からでしょうか・・・」

仁美「私に隠し事をしていると感じるようになったのは」

藍「仁美は鋭いね」

藍「ほむらが現れたことで転機が訪れたのは確かだよ」


仁美「教えてくださいまし、ある目的とはなんですの?」

仁美「さやかさん達は何をなさっているんですの?」

藍「仁美は何故其を知りたいんだい?仲間はずれは嫌だから?逸れとも・・・」

仁美「勿論それもありますわ。でもそれ以上に、何も知らず、何も出来ない事が歯痒いんです」

仁美「さやかさん達が何か悩んでいるのは知っています」

仁美「私では力にはなれないかもしれない・・・でも話を聞くことは出来ます。せめて相談してくれたら・・・・・・」

藍「日常と非日常は常に危ういバランスの上で成り立っている」

仁美「藍さん?」

藍「幻想の世界はいつも隣に在る」

藍「さやか達は非日常の世界に足を踏入れてしまった」

藍「私から言えるのは其くらいだ」

仁美「非日常の世界・・・」

藍「もう一つ、君が口外しないと誓えるなら秘密を教えよう」

藍「これは私に関する事だが、ほむらにも話していないことだ」

藍「つまり、私と仁美だけの秘密と言うことになる」

仁美「何故、私にそれを?」

藍「今の私に言えるのは自分の事くらいだ」

藍「それに・・・秘密を共有するって何か特別な感じがするだろう?」ニヤッ

仁美「確かに、ちょっとワクワクしますわね」クスッ

藍「だが、これを聞いたら君も非日常の世界に足を踏み入れることになる」

藍「君にその覚悟はあるか?」


仁美「どんな世界であろうと、私はそれを受け止めるだけですわ」

仁美「教えてくださいまし、藍さんの秘密を・・・」

藍「わかった・・・」

藍「私は非日常の・・・・・・幻想の世界から来た」

藍「今は人の姿をしているが、私は人間ではない」

藍「君達が妖怪と呼ぶ存在だ」

仁美「妖怪・・・・・・ですか?」

藍「言葉だけでは信じられないだろう」ドロロンパ

藍「これで信用してもらえたかしら?」

仁美「なっ!? あ? え?」

藍「驚かせてすまないね、私は九尾の狐。此が本当の私の姿よ」

藍「此の地には主の命で来たの」

藍「私はその目的を果たしたら彼方へ帰るわ」

仁美「そ・・・その目的とはなんなんですの?」

藍「此の地で起こる災いを未然に防ぐこと」

藍「今からおよそ二週間後に、それは起こるわ」

仁美「それは、確かなことなのですか?」

藍「ええ、なにもしなければ間違いなく起こる」

藍「その前触れとしてスーパーセルが発生するわ」


藍「其だけでもかなりの被害になるでしょうね」

仁美「そんな・・・・・・一体どうすれば・・・・・・」

藍「その為に私が居るのよ。スーパーセルにも原因があるわ、其を倒せば危機は回避できるでしょうね」

藍「但し、自然災害は避けられないでしょうから、避難する必要はあるわね」

藍「仁美には、その際の避難場所の確保と迅速な避難が出来るよう手を回して貰いたいの」

仁美「解りましたわ、私も全力でバックアップさせて頂きます」

藍「ありがとう」

仁美「あのっ! 藍さん、お願いがあるのですが」

藍「何かしら? 私に出来ることなら構わないわよ」

仁美「その・・・・・・尻尾に触らせ頂けますか?」

藍「ああ、其くらい構わないよ」モフリ

仁美「あふ・・・・・・」ビクン

仁美「し、失礼致しました///」

仁美「ふかふかもふもふですのね」モフモフ

藍「自慢の尻尾だもの」フリフリ


――少女もふり中――


藍「日も暮れてきたけど、どうする?」

仁美「そうですわね、そろそろ御暇させて頂きますわ」

藍「なら送っていくわ、夜道は危ないもの」ドロン


――鹿目家


まどか「ママ、ちょっといいかな?」

まどか「・・・・・・」

まどか「友達がね、大変なの」

まどか「やってることも、言ってることも、多分間違ってなくて」

まどか「なのに、正しいことを頑張ろうとすればする程、どんどん酷いことになっていくの」

詢子「良くあることさ」

詢子「正しいこと積み上げていってもハッピーエンドになるって訳じゃない」

詢子「寧ろ皆が皆自分の正しさを信じ込んで意固地になる程に、幸せは遠ざかって行くもんだよ」

まどか「間違ってないのに幸せになれないなんて・・・酷いよ」

詢子「・・・そうだねぇ・・・・・・」

まどか「私・・・どうすれば良いんだろう?」

詢子「そいつばかりは他人が口を突っ込んでも綺麗な解決にはならないな」

まどか「・・・・・・」


詢子「・・・例え綺麗じゃない方法だとしても、解決したいかい?」

まどか「・・・うん」

詢子「なら、間違えればいいさ」

まどか「え?」

詢子「正しすぎるその子の分まで、誰かが間違えてあげれば良い」

まどか「間違える?」

詢子「ズルイ嘘をついたり、怖いものから逃げ出したり・・・でもそれが、後になって正解だったって分かることもある」

詢子「他にどうしようもない程どん詰まりになったら、逸そ間違えるのも手なんだよ」

まどか「それがその子の為になるって、分かって貰えるかな?」

詢子「分かって貰えないときもある・・・特に直ぐにはね」

詢子「言ったろう? 綺麗な解決じゃないって」

詢子「その子の事諦めるのと、誤解されるの・・・どっちがましだい?」


――上条邸前


さやか「恭介、退院したって言ってたよね」

さやか「話って何だろ?」

さやか「・・・うー緊張してきた」

さやか(バイオリンの音・・・本当に治ったんだ)

さやか(・・・恭介)

杏子「そんなところで何してんのさ」

さやか「あんたは・・・!」

杏子「会いたいなら会えば良いじゃないか」

さやか「あんたには関係無い!」

杏子「ここの坊やなんだろ? あんたの願いの対象は」

さやか「だったらなんだって言うのよ」

杏子「たった一度の願いを他人のために使うなんて馬鹿な事したもんだね」

さやか「何も知らないくせに、知ったようなことを言うな!」

杏子「分かってないのは、あんたの方だ」

杏子「魔法ってのは徹頭徹尾自分の為に使うもんだよ」

杏子「他人の為に使ったってろくな事にはならないのさ」

杏子「巴マミはそんな事も教えてくれなかったのかい?」

さやか「黙れ!」

さやか「私は、あんたとは違う!」

さやか「この力は、ひとの為に使うと決めたんだ」

さやか「マミさんだって、ずっとそうやって来たんだ」

杏子「それでどうなるってのさ」

杏子「誰もあんたを見ちゃくれない。ここの坊やもね」

杏子「あんただって、本当は分かってるんだろ? だから会いに行けず、ただ眺めているだけしか出来ない」

さやか「そんなことはない! 私はただ確認してただけだ」

さやか「私の願いを、私の守りたいものを」

杏子「そんなことしないと、もう忘れてしまいそうなのかい?」

杏子「所詮はその程度の願いだった訳だ」

さやか「違う!」

杏子「坊やを物にしたいなら冴えた手が有るじゃないか」

杏子「折角手に入れた魔法でさぁ」

さやか「・・・何なのさ?」

杏子「今すぐ坊やの家に乗り込んでいって、二度と手足が使い物にならないよう潰してやりな」

さやか「な・・・!?」

杏子「あんたなしじゃ生きられない体にしてやるのさ」

杏子「そうすれば、身も心も坊やはあんたのものだ」

さやか「―――っ!」

杏子「気が引けるってんなら、あたしが変わりに引き受けても良いんだよ?」

杏子「同じ魔法少女のよしみだ」

杏子「御安い御用さ」

さやか「お前だけは・・・お前だけは絶対許さない!」

杏子「場所を変えようか、着いてきな」


――歩道橋


まどか「さやかちゃん、ダメ!」ウェイ

さやか(SGが!)

ほむら「はっ!?」カチ

杏子(消えた・・・あいつは何処に?)

さやか「まどか、あんた何て事をしてくれたの」

まどか「だってこうしないと・・・さやかちゃん、あの子と戦ってたでしょ?」

さやか「そうだよ!そのつもりでここに来たんだ!」

杏子「なああんた、何でSGを投げ捨てたんだ?」

キュウべぇ(おかしい・・・SGはとっくに100m圏外に行っている筈なのに)

キュウべぇ(何でさやかの体はまだ動いているんだ?)

まどか「だって、変身できなければ戦いにならないんじゃないかって思って・・・」

杏子「そりゃ、あたしだって生身の魔法少女と戦うほど馬鹿じゃないけどさ」

杏子「あんたの行動は突拍子も無さすぎる」

杏子「いくらなんでもSGを投げるなんて普通じゃねぇ」

キュウべぇ「杏子の言う通りだよ、まどか」

キュウべぇ「いきなり友達を投げ捨てるなんてどうかしてるよ」

まどか「なに?どう言うこと?」


鴉「カァー」

ほむら「鴉?」

ほむら「あれは!美樹さやかのSG」

ほむら「どうして鴉が?まぁ良いわ、返してもらうわよ」チャキ

鴉「やあ、ほむら。遅かったね」

ほむら「!?」

ほむら「この声・・・藍なの?」

鴉「ああ、式神を介してしゃべっているんだ」

鴉「しかし君らしくないな、こんなことになるとは」

ほむら「ええ、まどか行動を読めなかった私のミスよ」

鴉「それよりも、さやかのSGを早く渡してやれ」

鴉「あいつが余計なことを言う前にね」

ほむら「そうね。助かったわ、藍」

鴉「気にするな」


*


キュウべぇ「だから、さやかはさっき君が投げ捨てちゃったじゃないか」

まどか「キュウべぇ・・・何を言っているの・・・?」

キュウべぇ「何故さやかがまだ動けているかは分からないけど、そっちは脱け殻なんだってば」

さやか「私が脱け殻? 何を言ってるのよ? 説明して!」

キュウべぇ「やれやれ、人間と言うのは理解が遅くて困るね」

キュウべぇ「良いかい? 魔法少女と契約を取り結ぶ僕達の役割は、君達の魂を抜き取りSGに変換することなんだ」

さやか「何よ・・・それ・・・」

杏子「そんなの聞いてねぇぞ! それじゃあたし達・・・ゾンビにされたようなもんじゃねえか」

キュウべぇ「むしろ便利だろう? そのお陰で君達は今日まで戦って来れたんだ」

キュウべぇ「心臓が破裂しようと、ありったけの血を抜かれようと、魔法を使えば元通りだ」

キュウべぇ「そもそも壊れやすい人間の体で戦ってくれだなんて、とてもじゃないけどお願い出来ないよ」

ほむら「もういいわ、消えなさい」ゴリッ

キュウべぇ「どうやら無事見つけられた様だね」

ほむら「聞こえ無かったのかしら?」パスッ

キュウべぇ「」グチャ

まどか「ひっ・・・」

キュウべぇ「無駄なことだと分かってるくせに」スッ

さやか「え? キュウべぇがもう一匹?」

キュウべぇ「無暗に個体を潰すのは止めてくれないかな、勿体ないじゃないか」モグモグ

杏子「なっ・・・自分の死体を喰ってやがる・・・」

ほむら「これで分かったでしょう?コイツらがどういう存在か」

さやか「ねぇ、転校生はこの事知ってたの?」

ほむら「・・・ええ、知っていたわ」

さやか「だったら・・・」

さやか「だったら! なんで教えてくれなかったのさ!!」

ほむら「私も藍も忠告したわよね、こんなものになるべきじゃ無いと」

ほむら「それとも、知っていたら契約しなかったのかしら」

ほむら「私はね・・・自分の人生を、命を捨ててでも叶えたい願いがあった」

ほむら「あなたは違うのかしら? 美樹さやか」

まどか「・・・・・・ほむらちゃんの願いって?」

ほむら「・・・今となってはもう遅い。人に戻ること何て出来ないのだから」

ほむら「これからどうするか考えておきなさい」

ほむら「失礼するわ」

さやか「何だよ・・・それ・・・」

まどか「ほむらちゃん・・・」

杏子「・・・」


――藍のマンション


藍(さやかにばれてしまったか)

藍(自暴自棄になってなければ良いが・・・)

藍(さて、次はどう動くか考えねばな)


――さやかの部屋

さやか「騙してたのね・・・私達を・・・」

キュウべぇ「僕は魔法少女になってくれと、きちんとお願いしたはずだよ」

キュウべぇ「実際の姿がどう言うものか、説明は省略したけれど」

さやか「何で教えてくれなかったのよ!」

キュウべぇ「聞かれなかったからね」

キュウべぇ「それに、暁美ほむらも言っていただろう」

キュウべぇ「君は真実を知ったら契約をしなかったのかい?」

キュウべぇ「あの願いは、間違いなく君の心からの願いだったはずだよ」

キュウべぇ「戦いの運命を受け入れてでも叶えたい願いがあった」

キュウべぇ「それは間違いなく叶ったじゃないか」


――翌日 学校


藍(さやかは休みか)

藍《ほむら、この時期のさやかの状態と傾向を教えてくれ》

ほむら《どうするつもり?》

藍《無論彼女を救う。放っておけば不味いことになるのは明らかだ》

ほむら《一筋縄ではいかないわよ》

ほむら《真実を知った彼女はまどかの手さえ払い除けているもの》

藍《それでもだ。私は誰かを諦めたくはない》

ほむら《あなたならそう言うでしょうね》

ほむら《美樹さやかの事はあなたに任せるわ》

藍《任せてくれ。それで、さやかは?》

ほむら《この時期の彼女は非常に不安定よ》

ほむら《志築仁美からの宣戦布告により、それはより悪化する事になる》

藍《其については大丈夫だろう。恭介の心はさやかに向いている》

ほむら《あなた、何かしたの?》

藍《まあ、少しな》

藍《ひとつ問題が有るとすれば、さやかが其を素直に受けられるかどうかだ》

ほむら《そうね・・・今の彼女は意固地になってる》

藍《さやかが自分の心と向き合ってくれればいいんだがな》

藍《とは言え、そんな簡単には割り切れないか》


ほむら《ええ、魔法少女の真実を知ったからこそ悩み苦しむことになる》

ほむら《やはり、彼女は魔法少女に成るべきではなかった》

藍《今更其を言っても仕方ないさ》

ほむら《・・・・・・》

ほむら《美樹さやかは今後、自棄になり魔女狩りを続けて行くわ》

ほむら《痛覚を遮断し、傷付く事も構わず戦い続ける》

ほむら《そうなってしまえば本当に最後よ》

藍《わかった。そうなる前に何とかするよ》

藍《杏子はどうする?》

ほむら《杏子も美樹さやかに接触するでしょうね》

ほむら《早ければ今頃会ってるかも知れないわ》

藍《そうか・・・》

ほむら《杏子とも話をして三人であたっていきましょう》

藍《わかった》


――昼休み、屋上


まどか「ほむらちゃんは知ってたんだよね・・・どうして教えてくれなかったの?」

ほむら「前もって話しても、信じてくれた人は今まで一人も居なかったわ」

まどか「キュウべぇはどうしてこんな酷いことをするの?」

ほむら「あいつは酷いとさえ思ってない、人間の価値観が通用しない生き物だから」

ほむら「何もかも奇跡の正当な対価だと、そう言い張るだけよ」

まどか「全然釣り合ってないよ・・・あんな体にされちゃうなんて」

まどか「さやかちゃんは、ただ好きな人の怪我を治したかっただけなのに・・・・・・」

ほむら「奇跡であることに違いはないわ」

ほむら「不可能を可能にしたんだから」

ほむら「美樹さやかが一生を費やして介護しても、あの少年が再び演奏をできる日は来なかった」

ほむら「奇跡はね、本当なら人の命でさえ購えるものでは無いのよ」

ほむら「それを売って歩いてるのがあいつ」

まどか「・・・・・・」

まどか「さやかちゃんは・・・元の暮らしには戻れないの?」

ほむら「人には出来ることと出来ないことがある。魔法少女であってもそれは変わらない」

ほむら「私や藍が如何に尽力しようと、結局は美樹さやか自身が折り合いを着けるしかない」

ほむら「あなたには彼女を救う手だてなんて無い、あなたが引け目を感じる必要もない」

まどか「ほむらちゃん・・・どうしていつも冷たいの?」

ほむら「そうね・・・・・・きっともう人間じゃないから、かもね」


――廃協会


――少女身の上話中――


杏子「親父に全てのからくりがばれて、それでこのありさまさ」

杏子「あたしを残して一家無理心中」

杏子「他人の都合も考えずに勝手な願いをしたせいで、大切だったものはみんなこの手を零れていっちまったよ」

杏子「その時さ、馬鹿なあたしでも漸く分かったんだ。奇跡ってのはタダじゃない」

杏子「希望を願った分だけ、それと同じ分だけ絶望もまき散らされる」

杏子「そうやって差引をゼロにして世の中ってのはバランスが成り立ってるんだよ」

さやか「どうしてそんな話を私に……?」

杏子「あんたも開き直って好き勝手にやればいい。自業自得の人生をさ」

さやか「それって変じゃない? あんたは自分のことだけ考えて生きてるはずなのに、私の心配なんかしてくれるわけ?」

杏子「あんたもあたしと同じ間違いから始まった。これ以上後悔するような生き方を続けるべきじゃない」

杏子「あんたはもう対価としては高すぎるもんを支払っちまってるんだ」

杏子「だからさ、これからは釣り銭を取り戻すことを考えなよ」

さやか「……あんたみたいに?」

杏子「そうさ。あたしはそれを弁えてるが、あんたは今も間違い続けてる。見てらんないんだよそいつが」

さやか「あんたのこといろいろ誤解してた。そのことは謝るよ……ごめん」

さやか「でもね、私は人のために祈ったことを後悔してない」

さやか「その気持ちを嘘にしないために、後悔だけはしないって決めたの……これからも」

杏子「なんであんたは……」

さやか「私はね、高すぎる物を支払ったなんて思ってない」

さやか「この力は使い方次第でいくらでも素晴らしい物に出来るはずだから」

さやか「それからさ……あんた、そのりんごはどうやって手に入れたの?お店で払ったお金はどうしたの?」


杏子「いや、藍に貰ったんだけど……」

さやか「え? あ……そうですか」

さやか「なんか……ごめん」

杏子「別にいいけどさ、疑われるようなことしてるあたしが悪いんだし」

さやか(気まずい!)

さやか「な…なんであんたが藍からりんごを貰ったりしてるのさ!」

杏子「今は手を組んでるからね。利害が一致すれば手を組むのはどこの世界も同じだろう?」

さやか「あんたが裏切らないって保証はどこにも無いだろ」

杏子「それはあいつらにも言えることだ。まだ手を組んだばかりだし、これ見よがしに隙を見て襲い掛かってくるかもしれない」

杏子「それでもさ、信じてみてもいいかもって思わせてくれるのさ……あいつは」

杏子「なにより藍の飯は旨いし、食に対する妥協の無さは好きだしね」

さやか(完全に胃袋つかまれてるじゃん)

さやか「そ……そういう事なら、私も信じてあげるよ!」

杏子「いや、別にいい」

さやか「何でよ!? 私だけ仲間はずれみたいじゃん!」

杏子「と言ってもさっきの今だしなぁ」

さやか「私たちは魔法少女なんだよ! 他に同類なんて居ないんだよ!?」

藍《杏子、そろそろご飯だから帰ってきてくれ》

杏子《お! もうそんな時間か。すぐ戻る》

杏子「悪いな、飯の時間だから帰るわ」

さやか「おかしいでしょ! なんでこのタイミングで帰るのよ」

杏子「だって温かい飯のが旨いだろ?」

さやか「そういうことを言ってるんじゃない!」ダンダンッ

杏子「情緒不安定すぎだろ……じゃぁあんたも早く帰りなよ」

さやか「ちょっと待って、私も一緒に行く!」

杏子「はぁ? 飯時に行きなり来るとか非常識にも程があるだろ」

さやか「う……てか、何処に行くつもりよ?」

杏子「何処って、藍の家だけど?」

さやか「はぁ!? 何で藍の家に……ってそういや手を組んでるんだっけ」

杏子「そういう訳だから。またな」

さやか「ちょちょちょちょ……待ってってば」

杏子「なんだよ、まだ何か用か?」

さやか「う…えーっと……その」

杏子「別に今日じゃなくてもいいだろ? 考えをまとめてからにしてくれ。早くしないとほむらに皆食われちまう」

さやか「なんでそこで転校生が出てくるのさ」

杏子「手を組んでるって言ったろ。最近は三人で飯食ってるんだ」

藍《杏子、早くしてくれ。ほむらがすごいそわそわしてる》

杏子《今いく!》

さやか「ねぇやっぱり私も一緒に行っていい?」

杏子「それはあたしが決める事じゃないね。だいたいさ、親が居る奴は親と食うべきなんじゃないの?あんたの為に作ってくれてるんだろ」

さやか「それは……そうだけど」

杏子「そう言う訳だからまたなー」バッ

さやか「あ、ちょっ」

さやか「……もう居ない」

さやか「親と食べるべき……か」

さやか「今まで当たり前に思ってた事って、別に当たり前でもなんでもなかったんだよね…」

さやか「帰ろう…」


――翌日、通学路


藍「おはよう、さやか」

さやか「藍…おはよう」

藍「昨日はちゃんと寝れたかい?」

さやか「何さ急に? 私はいつでも元気百倍ってね」

藍「杏子から聞いたよ。昨日会ってたんだって?」

さやか「まあね。藍こそ、あいつや転校生と手を組んでるらしいじゃん」

藍「そうするだけの理由があるのさ」

さやか「それって…」

藍「勿論、魔法少女の事についてだ」

藍「今となっては仲たがいしている時ではないだろう」

さやか「確かにそうかもしれないし、あいつの事誤解してるところもあった」

さやか「でも、そんな簡単には割り切れないよ」

藍「今すぐにという話ではないさ」

藍「それに杏子だって、彼女なりにさやかを心配しているんだ」

藍「互いに歩み寄ることが出来るなら、それは近いうちに訪れるさ」

さやか「そうだね…」

藍「月並みな言葉しか言えないが、あまり無理はするなよ? 辛い時は周りに頼って良いんだ」

藍「私ならいつでも相談に乗るし、力も貸すよ」

さやか「藍……うん、ありがとう」

まどか「さやかちゃん、藍ちゃんおはよう」

仁美「おはようございます、さやかさん、藍さん」

さやか「ぁ……おはよう、二人とも」

藍「ああ、おはよう」



仁美「昨日はどうかしたんですの?」

さやか「あー、ちょっとばかり熱っぽくてね・・・一晩寝たらよくなったけどさ」

まどか「さやかちゃん…」

さやか『大丈夫だよ、もう平気。心配いらないから』

まどか『うん…』

まどか(さやかちゃん、まだ無理してる…)

さやか「さーって!今日も張り切って―――」

さやか(恭介…)

仁美「あら、上条くん…退院なさったんですの?」

さやか(結局会いに行けなかったな。何の話だったんだろう…)


――教室


中沢「上条、もう怪我はいいのかよ?」

恭介「ああ、家に籠ってても良くない事ばかり考えちゃうし、リハビリにならないからね」

恭介「来週までに松葉杖無しで歩けるようになるのが目標なんだ」



まどか「さやかちゃんも行ってきなよ、まだ声かけてないんでしょ?」

さやか「あ…たしは、良いよ…」

さやか(約束すっぽかした手前、声かけづらいし…)

仁美(……)

藍「ふむ、なら私が行くとしよう」

さやか「なんでそうなるのさ?」

藍「病院では話をしたが学校では今日が初めてだし、転校生として再度挨拶をしておくべきかなと思ってね」

藍「行ってくるよ」


藍「おはよう恭介」

恭介「八雲さん…おはよう。本当に同じクラスだったんだね」

藍「何だ疑ってたのかい?」

恭介「そうじゃないけど、こうして会うまでは実感が無くてさ」

藍「確かに会うのはいつも病院だったし、何か変な感じだな」クス

中沢「おい上条! お前美樹だけじゃなくて八雲さんにまで手を出してたのか?」

恭介「誤解だよ、彼女はさやかと一緒にお見舞いに来てくれて、それで仲良くなっただけだよ」

藍「ま、そういうことさ。それより、調子が良さそうで安心したよ」

恭介「ありがとう。八雲さんにも沢山迷惑かけちゃったよね」

藍「なに、私がやりたくてやった事だ」

藍「それと、落ち着いたらさやかと話してやれ。まだ話し出来てないんだろう?」ボソ

恭介「! うん、そのつもりだよ」ボソ

藍「ま、焦る事はない。頑張れよ、恭介」

恭介「ああ、ありがとう」


――放課後、ファストフード店


さやか「それで…話って何?」

仁美「恋の相談ですわ」

さやか「恋の相談かぁ…私に乗れるか分からないけど」

さやか「しかし仁美に好きな人が居たとはね」

仁美「私ね、前からさやかさんやまどかさんに秘密にしてきたことが有るんです」

仁美「さやかさんも、そう言ったことが御有りなのではないですか?」

さやか「ぅえっ…あーうん…」

仁美「失礼、話を戻しますわ」

仁美「ずっと前から私、上条恭介君のことお慕いしてましたの」

さやか「そ…そうなんだ」

さやか「あ…はは、何だ…恭介のやつ隅に置けないなぁ……」

仁美「さやかさんは、上条君とは幼馴染でしたわね」

さやか「あーまぁ、腐れ縁ってやつ?」

仁美「本当にそれだけ?」

仁美「私、もう決めたんですの。自分に嘘はつかないって…」

仁美「さやかさん、あなたはどうですか? 自分自身の本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「な、何の話をしてるのさ…」


仁美「あなたは私の大切なお友達。抜け駆けも横取りもしたくないんですの」

仁美「上条君を見つめていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですわ」

仁美「だからさやかさんには私より先を越す権利があると思いますの」

さやか「仁美…」

仁美「明日の放課後、上条君に告白します」

仁美「丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは後悔なさらない様決めてください」

仁美「上条君に気持ちを伝えるかどうか」

さやか「私は…」


――夜、さやかのマンション


さやか「……」


――後悔なさらない様決めてください


さやか(なんで…今になってそんなこと言うのよ)

さやか「ぁ……まどか…」

まどか「ついてっていいかな?」

まどか「さやかちゃんに独りぼっちになって欲しくないの…だから」

さやか「あんた…何で……何でそんなに優しいかな」

さやか「私にはそんな価値なんてないのに」

まどか「そんな…」

さやか「私ね、今日後悔しそうになっちゃった」

さやか「あの時…仁美が助からなければ良かったのにって、ほんの一瞬だけ思っちゃった」

さやか「正義の味方失格だよ・・・」

まどか「……」ギュ

さやか「仁美に恭介を取られちゃうよ…」グスグス

さやか「でも私…何もできない」ポロポロ

さやか「だって私…もう死んでるんだもん……ゾンビだもん…」

さやか「こんな体で抱きしめてなんて言えない……キスしてなんて言えない……よ…」


――建設現場


杏子「……」

ほむら「黙ってみてるだけなんて意外ね」

杏子「今日のあいつは使い魔じゃなくて魔女と戦ってる。ちゃんとGSも落とすだろうさ」

杏子「なら、何も文句はないよ」

ほむら「そんな理由であなたが獲物を譲るなんてね」

杏子「ちっ、あのバカ手こずりやがって」


――【影の魔女の結界】

さやか「っ!」

さやか「はああぁぁぁ」

まどか「さやかちゃん!」

杏子「まったく…見てらんないっつうの」

杏子「良いからすっこんでなよ、手本を見せてやるからさ」

さやか「邪魔しないで、一人でやれる」ダッ

杏子「お、おい!」

まどか「さやかちゃん…!」

さやか「何? 魔女の攻撃が弾かれてる?」

さやか(これって…藍がくれたお札)


――あまり強い攻撃には耐えられないが

一人で解決できない事は私達が力になる


さやか(藍、ありがとう)

さやか(でも私は……私の力でやらなきゃ意味がないんだ)

さやか「はぁああぁあああ」

さやか「あっははは……あはははは。ホントだ!その気になれば痛み何て…あはっあははは」

さやか「完全に消しちゃえるんだ」

まどか「やめて……もうやめて」

さやか「あはっ…うふふ……あはははは」

さやか「やり方さえ分かっちゃえば簡単なもんだね」

さやか「これなら負ける気がしないわ」


さやか「あげるよ、それが目当てなんでしょ?」ブン

杏子「お…おい」パシッ

さやか「あんたに借りは作らないから…これでチャラ、良いわね」

さやか「さあ帰ろう、まどか」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「っ!」フラ

さやか「ごめん、ちゃっと疲れちゃった」

まどか「無理しないで、捉まって」

杏子「あのバカ……」


――藍のマンション


杏子「藍、あのバカ早く手を打たないといよいよヤバいぞ」

藍「お帰り杏子」

杏子「ただいま。って挨拶してる場合じゃないんだって」

杏子「今日のあいつの戦い方がどんなのか分かるか?」

杏子「痛覚を遮断して魔女と戦ってやがった」

藍「痛覚を? それは拙いな」

藍「痛みは生物が等しく持つ危機反応だ」

藍「痛みに鈍くなればやがて心も鈍くなる」

藍「戦いどころか日常生活にも支障をきたすようになるぞ」

杏子「あいつ…変に意固地になってた。昨日会った時はそうでも無かったのに」

藍「確かに、今朝も空元気ではあったがそんな戦い方をするような感じではなかった」

杏子「今のあいつには、あたしの言葉じゃ届かない。藍、頼む…さやかを助けてやってくれ」

藍「ああ、任せておけ」

藍(さやか……何があったと言うんだ)

杏子「それじゃあたしは行くよ。ほむらのやつに呼ばれてるんだ」



藍[こんばんは。遅くに悪いね、少し話がしたいんだが会えないか?]

恭介[今から? 何かあったの?]

藍[さやかの事だ。良くない状況になってる]

恭介[さやか…!? さやかに何があったの?]

藍[詳しい事は今調べている。だが、このままでは拙い事になる]

藍[そっちに行っても大丈夫か?]

恭介[わかった。親にはうまく話しておくよ]

藍[すまない。また後で]ピッ

――上条邸


ピンポーン

恭介「待ってたよ、上がって」

藍「お邪魔します」

恭介「さやかの件だったよね。さやかに何があったの?」

藍「さやかに魔法少女の真実の一つが露見した」

恭介「それって…魔女になるっていう?」

藍「いや、そちらでは無くSGが魂の方だ」

藍「それだけでもさやかの心を蝕むには十分な事だ」

藍「だが、今朝の様子では無理に明るく振舞っていたが、そこまで酷くは無かったはずだ」

藍「放課後仁美と会っていた様だが、そこでさやかを追い詰める何かがあったんだろう」

恭介「でも、さやかと志筑さんはすごく仲が良いし、追い詰めるような事なんて…」
 
藍「人の心は複雑怪奇だ、様々な要因が絡み合い思いもよらない事になる」

藍「恭介、これを」

恭介「お札?」

藍《これを使えば遠く離れていても、魔女の結界内でも連絡が出来る》

恭介「なっ? 頭の中に直接声が!?」

藍《通信用の護符だ。それを持って心に強く念じれば会話が出来る》

恭介《君は一体?》

藍《私の事は魔法少女に似た存在と思ってくれ》

藍《これならキュウべぇに聞かれる心配もない》

恭介《キュウべぇって、確か魔法少女の契約をしてるやつだよね》



藍《そうだ、あいつはさやかを食い物にしようとしている。奴に聞かせていい話など一つもない》

恭介《そうだね、僕もそんなやつに話を聞かれたくは無い》

藍《ああ…それより、すまないな。本当なら君をこんな事に巻き込みたくは無かったのだが》

恭介《気にしないで、寧ろ秘密にされてたら怒ってるところだよ》

藍《ふふっ、君はいい男だな。さやかが惚れるわけだ》

恭介《なっ!? こんな時に何を///》

藍《こんな時だからこそさ。我々まで陰鬱とした雰囲気ではさやかの心を救うなど出来ないよ》

恭介《八雲さん…そうだね》

恭介《教えてくれ、さやかに何があったのか。僕は何をすればいい?》

藍《そうだな、さやかはある魔法少女に憧れて正義を志していた》

藍《そして、それを揺るがすことが起きてしまったのだろう》

藍《これがまず一つ。次は…》

藍《この話はするべきか悩んだが、やむを得まい》

藍《今日のさやかと仁美な話しは、学校に復帰した恭介の事だ》

恭介《僕の事?》

藍《ああ、仁美は恭介に恋心を抱いており宣戦布告をしたんだ》

恭介《志筑さんが!? それに宣戦布告って…》

藍《二つ目がこれだ。先日露見した魔法少女の真実と合わさり、自分は恭介に思いを伝える資格はないと思っているのだろう》

恭介《そんなこと…さやかが何者だろうと大切な人である事は変わらないのに》

藍《だが、さやかはそうは思えなかった》

藍《恐らく恭介が想いを伝えたとしても、今のさやかは自身を憐れんでの事としか思ってはくれまい》


恭介《そんな…それじゃどうすれば》

恭介《このままじゃさやかは…》

藍《出来ればさやかには自ら立ち直ってもらいたいが…いざと成ったら私が何とかする》

藍《恭介も諦めるな。出来るだけさやかに声を掛けてやれ》

藍《想いを伝えることを怖がるな。一回で足りないなら百回でも千回でも言ってやれ》

恭介《八雲さん…そうだよね。僕たちが…僕が諦めるわけにはいかない》

恭介《さやかにはずっと助けて貰ってきた》

恭介《この手だってそうだ。なのに僕は何も返せてないままだ》

恭介《こんなんじゃ、さやかに想いを伝えるなんて出来はしない》

恭介《さやかが相応しく無いんじゃない。僕がさやかに相応しく無いんだ》

恭介《助けよう。さやかを!》

藍《ああ、必ず!》  



――市街地、バス停


まどか「さやかちゃん……あんな戦い方ないよ」

まどか「痛くないなんて嘘だよ……見てるだけもで痛かったもん…」

まどか「感じないから傷ついても良いなんて、そんなのダメだよ……」

さやか「ああでもしなきゃ勝てないんだよ、私…才能ないからさ」

まどか「あんなやり方…さやかちゃんの為にならないよ」

さやか「私の為って何よ」

まどか「ぇ…」

さやか「こんな石ころにされて、何が私の為になるっていうの?」

さやか「自分は安全な位置から高みの見物でさぁ。知ったようなとこ言わないでよ」

まどか「さやかちゃん…私、そんなつもりじゃ……」

さやか「今の私はね、魔女を狩るだけの道具なの」

さやか「死んだ体を操って、生きてるふりをしてるだけ」

さやか「そんな私の為に誰が何をしてくれるってわけ?」

まどか「でも、私は…さやかちゃんに幸せになって欲しくて……」

さやか「なら、あんたが戦ってよ。幸せになって欲しいって言うんなら」

さやか「魔女の一体でも狩って見せなさいよ」

まどか「私は…」

さやか「キュウべぇから聞いたわよ。あんた誰よりも才能があるんでしょ」

さやか「私の為とか言うのなら、同じ土俵に立ちなさいよ」

さやか「無理よね。只の同情で人間やめられる訳ないもんね!」

まどか「同情なんて…そんな」


さやか「力を悪い事に使うやつも許せないけど、力があるのに何もしないやつも許せないのよ」

さやか「何でも出来る癖に、何にもしないあんたの代わりに私がこんな目に合ってるのに」

さやか「人を馬鹿にするのもいい加減にして」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「着いてこないで…」

さやか「偽善者」ダッ

まどか「……」



さやか「馬鹿だよ私…何てこと言ってんのよ……」

さやか「もう救いようが無いよ…」


――翌日、学校


藍(さやかは休みか…思い詰めてなければいいが)

まどか(あの時…追いかけなきゃダメだったのに)



――放課後


恭介「それにしても、志筑さんが一緒に帰ろうなんて珍しいね。八雲さんや鹿目さんはよかったの?」

仁美「今日は用事があるからとお断りさせて頂きましたの」

恭介「そうなんだ。それにしても志筑さんの家ってこっちだったの? 今まで見かけたこと無かったけど」

仁美「本当は全然逆方向ですわ」

仁美「今日は上条君とお話ししたい事がございましたの」

恭介(話し…か)


――仁美は恭介に恋心を抱いており宣戦布告をしたんだ


恭介(さやかが大変だという時に…なんで)


*


まどか[藍ちゃん、さやかちゃんが昨日から帰ってないみたいなの]

まどか[私…昨日一緒に居たのに……追いかけなきゃいけなかったのに…]

藍[まどか、落ち着け。悲しむのも後悔するのも後だ]

藍[先ずはさやかを見つけることだ]

藍(拙いな…もはや一刻の猶予もないかもしれない)

藍[まどかも心当たりを探してくれ。だが、一人で無理はするなよ]

まどか[お願い…藍ちゃん……私、もう藍ちゃんに頼るしか……]

藍(式を飛ばして探させるか…いや、それでは遅い)

藍[心配するな、必ずさやかと合わせてやる]

藍[絶対に見つけて、まどかの前で土下座させてやる]

藍[心配かけさせた罰だ!]

藍(元の姿になって魔力探知をするしかないな)

まどか[そんな…何もそこまで]

藍[いいのさ、それくらいで。まどかはさやかに会ったらどうしたいんだい?]

まどか[私は…その……]

藍[これから考えるのはそういう事さ。今から考えておくといい]

藍[それじゃぁね]

まどか[うん、ありがとう藍ちゃん]ピッ


読み直したら変な感じだ...

改装の所に――はいりませんでしたね。

――河川敷、遊歩道


さやか(何で…何であんたが隣にいるのよ)

さやか(そこはあたしの場所でしょ)

さやか(ずっと好きだったのに、ずっと一緒に居たのに)

さやか(なんで私はここに居るの)

さやか(すぐそこに居るのに…伸ばせば手が届くはずなのに)

さやか(何でこんなに遠いのよ…)

さやか(盗られたくない……誰にも盗られたくないよ……)ポロポロ

さやか(……今いけばまだ間に合うかもしれない!)

さやか「…っ!」グッ

さやか(ダメ…行ってどうするの。もう私は死んでるのに)

さやか(私はもう何も望んじゃいけない…期待しちゃいけないんだ)スッ


――【結界内】


さやか「うあああああああ」ザクッ ザク

さやか(消えろ…消えろ! 皆消えてしまえ!)



――立体駐車場、スロープ


さやか「はぁ…はぁ…」

藍「やあさやか、良い夜だね」

さやか「藍…何の用?」

藍「用が無ければ会いに来てはいけないのかい? 友達甲斐の無い奴だな」

さやか「ふざけないで!」

藍「私は真面目さ。君の方こそ随分とふざけた事をしている様だな」

さやか「私の勝手でしょ。私はもうこうするしか無いんだよ」

藍「魔女や使い魔を倒すんのはさやかの自由だが、君一人がやらねばならない訳ではない」

藍「言っただろう? もっと私達を頼ってくれ」

さやか「あんたに頼る? そうだよね、あんた凄い才能が有るもんね」

さやか「魔法少女じゃないのに魔女だって倒してさ」

さやか「なら、初めから全部あんたがやれば良かったんだ!」

さやか「そうすれば私がこんな思いをする事も無かったのに」

さやか「全部あんたのせいよ!」

藍「そうだな……力なき者の為に戦うは持つ物の努め」

藍「さやかがそう言うなら、私がやるとしよう」

さやか「あんた…本気なの?」

藍「そもそも私に言わせれば、特別な力を手に入れたから直ぐに戦える様になると思うなど」

藍「烏滸がましいにも程がある」

藍「私がどれだけの時間をかけて力を研鑚してきたか分かるまい」

藍「ちょっと特別な力を手に入れたら良い気になり」

藍「いざ戦えば自分には才能が無いと無茶をする」

藍「そもそもお前の場合才能以前の問題だ。手に入れたばかりの力で十全に出来る訳がないだろう」

さやか「じゃあどうしろって言うのさ! 私は悠長に強くなるのを待ってられない!」

さやか「このやり方しかないのよ!」

藍「何をそんなに焦っているんだ? それに、言っただろう」

藍「もっと周りを頼っていい」

藍「私はそんなに頼りないか? 信用ならないか?」

さやか「藍には…藍には分からないよ。魔法少女でも無いのに魔女を倒して」

さやか「美人で、頭も良くて、何でも出来てさ」

さやか「私何かとは全然違うんだよ! 藍には私の気持ちなんて分からないよ!」

藍「確かに、本当の意味で他人の心を理解するなど出来はしないのかもしれない」

藍「何年経とうと、どれだけそばに居ようとも」

藍「だがな、ふとした時相手が何を考えてるか分かる事も有る」

藍「その人の思いを汲んでやることも出来るんだ」

藍「それは表面的なことかもしれないし、そうでは無いかもしれない」

藍「だから私は信じたいんだ。今日まで共に歩んできた道程を」

さやか「藍……………」

さやか「……今更そんなこと」

さやか「もう放っておいて…」ダッ


――上条邸前

さやか(恭介……)

恭介「さやか?」

さやか「え!?」

恭介「やっぱりさやかだ! どうしたの今日学校休んでたみたいだけど」

さやか「何で…恭介が……」

恭介「何で…と言われると困るけど。何となくさやかに会える気がしてさ」

恭介「漸く家に来てくれたね。もう忘れちゃったのかと思ったよ」

さやか「恭介…」

恭介「さやか、伝えたいことが有るんだ」


明日の放課後、上条君に告白します


さやか「あ……」

恭介「僕は―――」

さやか「やめて! 聞きたくない!!」

恭介「さやか?」

さやか「っ!」ダッ

恭介「!」

恭介「君が好きだ!!」

さやか「!」ピタ

さやか「何で…何でそんなこと言うの? 恭介は仁美と付き合ってるんでしょ!」

さやか「同情でそんなこと言われても嬉しくない!」

さやか「これ以上私に惨めな思いをさせないでよ!!」ダッ

恭介「さやか!」

恭介「さやか……どうして…」

――藍のマンション


藍(さやか……もう駄目なのか? もう戻れないのか…)

藍(もう心が持たないかもしれない、最悪の事態に備えねば…)


ピンポーン


藍(こんな時間に来客か)

藍[はい、八雲です]

仁美[藍さん、夜分にすみません。仁美です]

藍[仁美? 兎に角上がってくれ]ピッ



藍「やあ、いらっしゃい」

仁美「すみません。こんな時間に」

藍「構わないさ。何かあったのかい?」

仁美「…………」

仁美「……………私……上条君に振られてしまいましたわ」

藍「そう……か」

仁美「狡いですわ…ずっと一緒で……たくさんの思い出があって……」

仁美「いつも…お見舞いに行ってて………あんな顔、私にはしてくれない…」

藍「仁美……」ドロン

藍「良いんだよ、辛い時は泣いたって」ギュッ

仁美「藍さん……」

藍「此処には私しかいないもの、好きなだけ泣くといい」

藍「でも…涙が止まったのなら、また笑って頑張らないとね」

藍「大丈夫、私が傍にいてあげるから」


仁美「ぅ…うう……あああ……あああぁああぁあ」ポロポロ

仁美「ぁああああぁああ」ポロポロ

藍(何でこんなに良い娘が泣かなければいけないの……)

藍(私がそう仕向けたとは言え、全ての人に笑っていて欲しいと思うのは傲慢なのかしら)

藍(せめて此の地に居る間だけは、この娘為に生きても良いだろうか…)



藍「落ち着いたかしら?」

仁美「すみません…取り乱したりして……」グス

藍「無理に心を押さえつける必要はないのよ? それになかなか可愛い泣き顔だったわよ」クス

仁美「なっ/// 破廉恥ですわ!」

藍「ふふ、少しは元気になったみたいね」

仁美「ぁ……」

藍「さぁ今日はもう遅いわ。ご両親も心配するでしょうし帰りなさい」

仁美「あの…藍さん! ありがとうございます」

藍「良いのよ、此れくらい」

藍「家まで送るよ」ドロン


――翌日放課後、藍のマンション


藍「すまないな、忙しい所集まってもらって」

杏子「私は構わないさ、どうせ藍の家で飯を食うつもりだったし」

マミ「佐倉さん、あまり八雲さんに迷惑を掛けてはダメよ」

杏子「別に迷惑なんて掛けてねえって」

藍「寧ろ一人で放って置く方が心配だよ」

杏子「子ども扱いすんなっての」

藍「悪い。ところでマミはもう良いのかい? 無理をさせてるんじゃないかと思ってね」

マミ「ええ。十分休ませてもらったしワルプルギス夜に向けてそろそろ復帰しようと思ってたところだもの」

 
ピンポーン


緒莉子[私です]

藍[いらっしゃい。上がってくれ]ピ

藍「悪いね、急に呼びだして」

緒莉子「構いませんわ。他ならぬ貴女の頼みですもの」

キリカ「全く君の頼みじゃなければ断っているところだよ」

杏子「藍、そいつらは?」

藍「ああ、そう言えば初対面だったね。紹介するよ緒莉子とキリカ」

藍「私の仲間だよ」



緒莉子「初めまして、美国緒莉子です」

キリカ「呉キリカだ」

マミ「巴マミです。よろしくお願いします」

杏子「佐倉杏子だ。あんたらも魔法少女なのか?」

緒莉子「ええ、ここで魔法少女じゃないのは藍さんくらいでしょう」


杏子「そう考えると、魔法少女じゃないやつの所にこれだけの面子が集まるってのも可笑しなもんだね」

マミ「そうよね。でも八雲さんの近くって居心地がいいのよね」

マミ「惹き付けられると言うか……」

杏子「確かになぁ」


ピンポーン


杏子「またか?」

まどか[こんばんは、藍ちゃん]

藍[待ってたよ。上がってくれ]ピ

まどか恭介「お邪魔します」

藍「いらっしゃい」

マミ「鹿目さん?」

杏子「おいおい、何だって一般人が来てるのさ」

藍「私か呼んだんだ。彼らも当事者だからね」

緒莉子(鹿目まどか!)

藍(緒莉子)フルフル

緒莉子(わかっています。もう私には彼女を狙う理由ありませんので)

藍(そうだな…)


杏子「てーことは、その坊やかい? さやかが願いを使ったて言うのは」

マミ「ちょっと佐倉さん!」

藍「大丈夫だ。恭介は魔法少女の事もさやかの件の知ってるよ」

まどか「そうなの?」

藍「ああ、前に病院でな」

恭介「うん、聞いたときは驚いたけど、実際に手も治ってる訳だしね」

藍「さて、もう一人もそろそろ来るはずだ。適当に寛いでいてくれ」

藍「緒莉子、お茶の準備を手伝ってくれ」

緒莉子「分かりました」



藍「すまないな、私を信じてくれたとは言えまだ合わせるべきではなかった」

藍「簡単に割り切れる問題でも無いのは分かっていたのだが…」

緒莉子「いいえ、遅かれ早かれこうなっていたでしょう」

緒莉子「それにこうして一堂に会したのも理由があるのでしょう」

藍「ああ、それについては全員そろったら話すよ」



藍「お待たせ。私と緒莉子特製の紅茶だ」

杏子「勿体ぶるなっての」

キリカ「何言ってるんだい、緒莉子の紅茶は至高にして最高の逸品だよ」

緒莉子「キリカったら…恥ずかしいから止めなさい」

キリカ「いーや、やめないね。緒莉子の紅茶がどれだけ素晴らしいか、君たちもしっかり味わうといい」

緒莉子「もう、キリカったら…」

まどか「緒莉子さんとキリカさんって仲が良いんですね」

キリカ「仲が良いだって? そんなのは当然だが私の愛に単位を付けられるのは納得がいかないね。そもそも愛とは無限で有限であってだね――――」


藍「キリカ、ストップ」

キリカ「藍、止めないでくれ。私は彼女に愛について教えているところなんだ」

緒莉子「キリカ、その辺にしておきなさい。まどかさんが困っているわ」

キリカ「お…緒莉子? ごめんよ、もう止めるから怒らないでくれ」

キリカ「君に嫌われたら私は腐って果てるよ」

杏子「またすごい奴が来たもんだね…」

まどか「あ…はは」


ピンポーン


藍「来たようだね」

ほむら[待たせたかしら?]

藍[いや、大丈夫だ。上がってくれ]

ほむら「お邪魔するわ」

杏子「やっと来たか。待ちくたびれたよ」

まどか「ほむらちゃんも来てくれたんだ」

ほむら「どうしてここにまどかが!?」

ほむら「藍、どういうこ―――!」

ほむら「美国緒莉子! まどかそいつから離れて」パアァ

緒莉子「貴女はあの場所に居た!」パアァ

藍「落ち着け二人とも。矛を収めろ」

緒莉子「ごめんなさい、いきなりだったものだから」シュン

ほむら「放して、こいつを放って置いたらまどかを…!」

まどか「私…?」

杏子「どういう事だ? こいつらが何だってんだよ」


藍「何でもないさ。この二人は今を生きている」

ほむら「藍、貴女の差し金なの!? 何故こいつらを連れて来たの!」

藍「二人の力が必要だからだ。条件付きで協力してもらってる」

ほむら「こいつらが何をしたか分かっているの!?」

藍「彼女たちは何もしていないよ。これまでもこれからもね」

ほむら「こいつらを引き入れるのは反対よ」

キリカ「さっきから黙って聞いてれば、何だい君は」

キリカ「こっちだって君と組むのは反対だよ。私達と藍が居れば済む話だ」

マミ「二人とも落ち着いて。まずは話をしましょう」

緒莉子「やめなさいキリカ! 暁美さん貴女もです。私は貴女と争うつもりはありません」

ほむら「嘘よ! そうやって油断させて、まどかを殺すつもりなんでしょう」

まどか「殺すって…」

藍「いい加減にしろ! 我々が仲違いしている場合ではないだろう!」

藍「今が運命の分岐点なんだ。だからこそ協力し合わなければ成らない」

藍「ほむら、私を少しでも信じてくれるのならこの手を取れ」スッ

ほむら「取らなかったらどうするのかしら?」

藍「言うまでもない」

ほむら「……」

ほむら(確かに藍のことは信頼している)

ほむら(マミや杏子ともこれ以上ないくらい良い関係だわ)

ほむら(でも…あいつらは……)

ほむら(藍は知らないから信じることが出来るのよ)

ほむら(さやかは恐らくもうダメ)

ほむら(でも、まどかはまだ契約していない。藍も杏子もマミもいる)

ほむら(次の時間軸でも藍が居るとは限らない)

ほむら(それに……)


私は誰かを諦めたくはない


ほむら(彼女ならこの狂った運命から皆を救えるかもしれない)

ほむら(諦めたくない…か。やる前から諦めるなんて可笑しな話しよね)

ほむら(……藍は誰かを諦めなくちゃいけない事があったのかな?)

ほむら「信じても……いいのよね?」グッ

藍「ああ」

藍「騒がせて済まない」

藍「さて、今日集まって貰ったのはさやかの事についてだ」

恭介「さやか……」

まどか「さやかちゃん…」

藍「さやかはここに居る恭介の手を直す事を願って、魔法少女になったんだ」

藍「そして先日魔法少女の真実が露見し、自分が人間ではないと悩み苦しんでいる」

藍「そして自棄になり痛覚を遮断して魔女狩りを続けている」

藍「恐らくはもって今夜だろう」

藍「さやかを見つけたら力ずくでも捕まえて欲しい」

藍「後は私が何とかする」

藍「それと連絡用にこれを渡しておく」

まどか「お札?」

杏子「なんなのさ、これ」

藍「通信用の護符だ。どんなに遠くだろうと結界内だろうと連絡が出来る」

藍「キュウべぇに盗聴される心配もない」

藍「何かあったら、私に連絡してくれ」


藍「緒莉子とキリカは南の地区を探してくれ」

緒莉子「分かったわ」

キリカ「任せてくれ」

藍「マミは北を杏子は中央を頼む」

杏子「おう」

マミ「ええ、任せて」

藍「ほむらは西地区を頼む」

ほむら「分かったわ」

藍「それから、まどかと恭介の事も頼む」

ほむら「私が?」

藍「ああ、二人を守ってやってくれ」

ほむら「私は反対よ、危険だわ」

藍「だからだよ。ほむらなら戦うことも逃げることも出来るだろう?」

藍「二人も事の顛末を見届ける理由がある」

ほむら「そうね…分かったわ」

藍「ああ、行こう」


*


藍《藍だ、東地区の○○駅でさやかを見つけた直ぐに来てくれ》

杏子《近いな、あたしが行く!》

マミ《すぐに向かうわ》

緒莉子《わかりました》

ほむら《くっ遠いわね》

まどか《藍ちゃん、さやかちゃんを助けてあげて》

恭介《八雲さん、さやかを頼む》

藍「やあ、さやか。ちゃんとご飯は食べてるかい?」

さやか「藍…またあんたなの?」

さやか「もう私に構うのはやめて」

パンッ

さやか「何すんのよ!」

藍「痛いか?」

藍「痛むだけの心は残っているか?」

さやか「心なんて・・・」

さやか「私の中に心なんて無い!」

さやか「あの石ころが私の心なんだよ!」

藍「さやか、大切なのは心が何処にあるかではない。心があると言うことか重要なんだ」

藍「それは間違いなく君の心だ」

藍「元気で、友達想いで、間違ったことが嫌いな、私の友達の美樹さやかの心だ」

藍「其を忘れない限り、心が何処にあろうとどんな形だろうとさやかはさやかであり続ける」

藍「人間だけが心を持つんだ」

藍「痛みも悲しみも、嫉妬さえも君が人間で、心がある証拠だ」

藍「だから自分を化け物だなんて言うな。石ころだなんて言うな。君は何も変わっていない、何も無くしてなんかない」

杏子「さやか! このバカこんな所に居やがったのか」

さやか「杏子…」

藍「杏子か!」

さやか「・・・もう遅いよ」

さやか「私、こんなになっちゃったもん」スッ

藍「!」

杏子「なっ・・・お前、それ」

さやか「これ、私の魂なんだよね?」

さやか「あんたの言った通りだった」

さやか「希望と絶望は差引ゼロだって」

さやか「私が余計なことを願わなければ、今も変わらずに居られたのかな?」

ジワ・・・

藍「何かを願うことが間違いだなんて事はない!」コツン

藍「くっ、一瞬で黒く」ブンッ カン カラン

杏子「どう言うことだ! 何でSGが浄化されねぇ!」

藍(絶望が大きすぎる)

藍「さやか、気をしっかり持て、諦めるな!」

さやか「もう無理だよ・・・大切な友達も傷付けて・・・・・・救いようがないよ」

ジワ・・・

藍「そんなことはない、誰だって間違いはするさ」

藍「さやかは其が人より少し大きかっただけだ」

さやか「私って、ホント馬鹿」

藍「さやか、大丈夫だ! 私が救ってやる、お前を救ってやる!」

ジワ・・・ ピキ

さやか「藍、私どうなっちゃうの? 怖いよ・・・死にたくないよ・・・・・・藍」

ピキ ピシ

さやか「たすけ―――」

パキィン

藍「さやか!」

杏子「さやかぁぁぁぁ!!」


――【人魚の魔女の結界】


オクタヴィア「ォオオオォォォォオオオオオ」

杏子「さやか!さやか、しっかりしろ!」

杏子「なんなんだてめぇ! さやかに何しやがった!」

藍「杏子、先ずはさやかを頼む」

杏子「ああ、わかってる」

杏子「さやか! おい、しっかりしろ」

ほむら「二人とも、こっちへ」パッ

杏子「ほむら!? どうするつもりだ?」

ほむら「一度退くわ。掴まっていて、離せばあなたの時間も止まってしまう」

ほむら「藍、早くこっちへ!」

藍「いや、ここでやる」

ほむら「冷静になりなさい、今は一度退くべきよ」

藍「私は何時だって冷静さ」

藍「私にやらせてくれ・・・・・・頼む」

ほむら「何か策があるの?」

藍「上手くいけばさやかを人間に戻せる」

藍(結界の展開・・・・・・・・・完了)

ほむら「なんですって!?」

ほむら「本当にそんなことが出来るの?」

藍(此で余計な邪魔は入らない)

杏子「おい! ちょっと待て、人間に戻すってどう言うことだ!」

杏子「さやかはどうなっちまったんだよ?」


藍(この二人になら、見せてもいいかもしれない)

ほむら「あなたも見ていたのでしょう?」

ほむら「さやかのSGは穢れを溜め込みすぎてGSへ変わってしまった」

ほむら「私達魔法少女はやがて魔女になる。それが魔女少女の最後の秘密よ」

杏子「ちっ、こんなときに冗談キツいぜ」

杏子「それより藍、ホントにさやかを人間に戻せるのか!?」

藍「ええ、其より・・・私を見ても驚かないでくれるかしら?」

ほむら「藍?」

杏子「今更何が来たって驚かないさ。さやかの事、頼んだぞ」

ほむら「杏子・・・・・・そうね。藍、お願い」

藍「ありがとう、それと今まで黙っていてごめんなさい」ズズズ

藍「私は人間ではないの。あなた達が妖怪と呼ぶ存在」ズズズズ

ほむら「なっ!?」

杏子「はは・・・流石にこれは驚くなって方が無理だ」

藍「それじゃ、始めるわ」

ほむら「ど、どうするの?」

藍「さやかを私の式神にする。幸い、肉体も魂も無事なことだし」

ほむら「そんなこと出来るの!?」

杏子「え? なに? 式神って?」

藍「ええ、別に魂自体が変質した訳ではないし」

藍「魔女の中にある魂を取り出し、さやかへ移すわ」


藍「魂が完全に定着するまでは私の式神として側に置くけど」

藍「それが終われば普通の人として生きられるわ」

杏子「ホントか!? なら、私達も戻れるのか?」

藍「此はあくまでも最後の手段よ。本来なら、人間を式神にするなんてあってはならないことよ」

杏子「そうだよな・・・そう都合よくはいかないよな」

藍「そう悲観することはないわ、戻る方法については一緒に考えていきましょう」

藍「先ずはさやかを救う、其からよ」

杏子「そうだな! 頼むぞ藍」

ほむら「お願い・・・・・・します」

藍「ふふっ、別に今まで通りで良いわよ」

ほむら「ごめんなさい、ちょっとまだ落ち着かなくて」

藍「私は私よ。そんなに畏まらないで良いわ」

藍「ただ、私の正体については他の人には秘密にしておいて」

ほむら「まあ、妖怪だなんて言われても信じられないでしょうし」

杏子「言うつもりなんかないさ」

藍「それじゃ、始めるわね」


――【???】


さやか「ここ、どこ?」

さやか「私どうなったんだっけ?」

さやか「ホームで藍と杏子に会って・・・」

さやか「・・・・・・駄目だ、思い出せない」

???「気が付いたようね」

さやか「誰!?」

???「自分の心配をしなさい」

???「このままでは、貴女は死んでしまうわ」

さやか「・・・それも良いかもね」

???「何故そう思うのかしら?」

さやか「散々周りに迷惑かけて、大切な友達まで傷付けてさ・・・」

さやか「今更、どの面下げて会えって言うのよ」

???「そんなこと、誰も気にしていないわよ」

さやか「そんなはずないよ、私の居場所なんて何処にもない」

???「貴女は今まで何を見てきたの?」

???「貴女に死んでほしいと思ってる人なんて居ないわよ」

???「見なさい、貴女のために涙を流している人達を」

???「貴女には、あの涙が偽りのものだと思えるのかしら?」

さやか「でも・・・」

???「悩む位なら行動しなさい」

???「その思いをぶつけなさい」

???「貴女は何故魔法少女になったのかしら?」

さやか「私は・・・」


さやか「私は・・・!」

さやか「大切な人を守りたい!」

さやか「誰かが泣いたりしないでいいように」

さやか「皆の笑顔を守るために!」

さやか「そうしてまた、あいつのバイオリンを聞くんだ!」

???「なら、私と契約をしなさい」

さやか「契約って・・・魔法少女の?」

???「いいえ、式神の契約よ」

???「契約を上書きし、貴女の魂を肉体に戻すわ」

さやか「本当!?」

???「但し!」

???「契約をすれば、貴女は人為らざるものになるわ」

???「人間では式神には為れないから・・・」

さやか「いいよ」

???「随分あっさりしているのね」

???「もっと悩むものと思ったわ」

さやか「もうゾンビみたいなもんだしね。それに、思い出したから」

さやか「私が何をやりたかったのか、何を願ったのか」

さやか「それさえ忘れなければ、どんな姿でも私は私だよ」

???「わかった、始めるわよ」

さやか「・・・」コクッ

???「××××××」

さやか(体が熱い)

さやか(けど、何だか心地いい感じ・・・)

???「契約完了よ。行きなさい、皆が貴女を待ってるわ」

――【人魚の魔女の結界】


藍「終わったわ」

藍「人の姿に戻ったし結界を解くわね。魔女の結界も崩壊が始まったわ」

藍「さやかは、次期に目を覚ますだろう」


――車庫


さやか・・・

さやかちゃん・・・

さやか(誰かが呼んでる・・・)

さやかちゃん!

さやか「!」

さやか「あれ? ここは?」

藍「気が付いたかい?」

まどか「さやかちゃん! 良かった!」

杏子「さやか! おい藍、さやかはもう平気なのか?」

藍「ああ、もう大丈夫だ」

マミ「美樹さん、本当によかったわ」

マミ「やはり、まだ消え去る運命では無かったのね」

さやか「・・・」ボー

まどか「さやかちゃん、さやかちゃんってば!」

さやか「あ・・・まどか?」

さやか「なんか、誰かに会ってた気がするんだけど・・・」

藍「夢でも見ていたんだろう」

ほむら「まさか、こんな事が起きるなんて」


緒莉子「本当に、最悪の運命を覆せるのね」

キリカ『藍は信ずるに足る存在だった。緒莉子良いんだよね』

緒莉子『ええ、彼女となら理想とする世界を作れるはず』

緒莉子『彼女を信じて共に歩みましょう』

マミ「闇に墜ちてなお、混沌の淵より不死鳥の様に蘇った・・・」

マミ「輪廻転生・・・巡る運命・・・・・・さしずめ円環の運命と言ったところかしら」

ほむら《誰よ、彼女連れてきたの》

藍《言うな・・・そっとしておこう》

杏子「さやかぁ、よかった・・・ホントによかった」グス

さやか「あれ~、杏子ちゃんは泣いているんですかぁ?」ニヤニヤ

杏子「ばっ、ちげえよ! これはあれだ、こ・・・心の汗だ!」

ほむら(涙じゃない)

藍(涙だな)

藍「さやか、お帰り。無事で何よりだ」

さやか「藍・・・ごめん、心配掛けたよね」

藍「いいさ、また会えたんだ」

藍「皆もありがとう。今日は疲れたろう、家で休んでいってくれ」

ほむら「貴女が礼を言うことじゃ無いわ」

ほむら「まあ、貴女の家には行くけど」

杏子「いいって、あたしがやりたくてやったことだ」

杏子「それより、今日の飯はなんだい?」

マミ「貴女たち、少しは遠慮しなさい!」


杏子「藍、マミは来ないってさ」ニヤ

藍「残念だが仕方ないな・・・さやかとまどかはどうだ?」ニヤ

さやか「私は大丈夫だよ」

まどか「私もパパに連絡すれば平気かな」

まどか「遅くなるとは言っておいたし」

さやか「いや~、しかしマミさんは来れないかぁ残念だなー」ニヤニヤ

まどか「仕方ないよ、マミさんにだって予定があるだろうし」ウェヒヒ

マミ「そんなこと言われたら行くしかないじゃない!」

マミ「今日と言う今日は遠慮なく行かせてもらうわよ」

杏子「ハイハイ、行ってらっしゃい」

ほむら「結局来るんじゃない」

藍「言ってやるな、其に賑やかな方が楽しいだろう?」

緒莉子(今回解決したのは彼女の力あってこそ)

緒莉子(いえ、そもそも彼女一人で十分だったはず)

緒莉子(なら、私達を集めた理由は……)

緒莉子《藍さん、聞いてもよろしいですか?》

藍《何だい?》

緒莉子《今回の件、本来なら貴女一人で解決出来た》

緒莉子《にも拘らず態々私達を全員集めたのは、魔法少女どうしの結束をより強固なものにする為ではありませんか?》

緒莉子《恐らく、藍さんの中では既にワルプルギスの夜討伐までのヴィジョンが出来ている》

緒莉子《違いますか?》

藍《やはり君を仲間にしたのは正解だった》

藍《緒莉子の言う通りだよ》


藍《本来なら皆でさやかを探す必要などなかった……だが、全員で一丸となったと言う事実が欲しかった》

藍《ワルプルギスだけじゃない。これから先多くの困難が待ち受けて居ようとも》

藍《互いに手を取り合えば乗り越えていける》

藍《その時、その場所に、私がいなくとも……》

緒莉子《藍さん、貴女は……》

藍《いいんだ、異変を解決したら彼方に変えるつもりだったんだし》

藍《私の存在は幻想でいい》

さやか「藍!何してんのさ、皆待ってるよ」

杏子「おーい!さっさと帰ろうぜ。つーか腹減った」

緒莉子「お呼びみたいよ?」

藍「ああ、今暫くはこの陽だまりの中にいるとしよう」


――藍のマンション、夜


藍「私の式神は何故こうも自由なのかしら・・・」

藍「私がまだ未熟と言うことかしらね」

藍「・・・未熟者同士、鍛練をする事にしましょう」

藍「夜はまだ長いもの」



――【???】


藍「さやか、さやか!」

藍「起きなさい、さやか」

さやか「・・・?」

さやか「誰? ・・・・・・誰かに呼ばれた様な?」

さやか「て言うか、ここ何処?」

さやか「藍の家に居た筈なんだけど」

藍「ここは狭間の世界。紫様のスキマを元に創ったんだけど・・・」

藍「まぁ、貴女に言っても仕方ないわね。精神世界とでも思っておいて」

さやか「精神世界? あんたは誰なの? 私をどうする気?」

藍「もう私の顔を忘れたの?」

藍「貴女は、私の式神に成ったのよ」

さやか「式神・・・そうだ、あの時の!」

さやか「夢じゃ・・・無かったんだ・・・・・・」

藍「あの時の言葉を覚えているかしら?」

藍「貴女は自ら戦う運命を選んだ」

藍「とは言え、今の貴女は魔法は使えないわ」

さやか「それじゃ戦いようがないじゃん!」

藍「其の術を今から教えるわ」

藍「貴女は今まで魔力を使っていたんだけど、此からは妖力を使ってもらうことになるわ」

さやか「ようりょく?」

藍「人為らざる者の力、妖術・・・まあ魔法の親戚とでも思って頂戴」

さやか「なるほど!」

藍「やり方はそう変わらないわ、剣を作ったりは出来ないけどね」

さやか「でも、武器が無くちゃ戦えないんじゃ・・・」

藍「そんなもの必要ないわ」

藍「式神となった事で、貴女の身体能力は飛躍的に上がっているわ」

藍「素手でも十分なくらいよ」

さやか「いきなり素手で戦えと言われても困るんだけど」

藍「分かってるわ、私の得意とする術を教えてあげる」

藍「炎と幻術よ」

藍「私の式神になったのだから貴女も使えるはずよ」

さやか「そう言うのを聞くと、いよいよ人間じゃないんだって実感してくるなぁ」

藍「無理強いはしないわよ?」

さやか「やるよ! もう決めたんだ」

藍「そうそう、使い魔相手には此も覚えておくといいわね」

さやか「なにさ?」

藍「弾幕よ」


――藍のマンション、朝


藍「後はこれを・・・・・・」ジュージュー

藍「そろそろ皆を起こすか」

杏子「・・・・・・良いにおい」ボー

藍「杏子か、おはよう」

藍「ご飯は出来てるから顔を洗ってきな」

杏子「おぉ・・・・・」トコトコ

藍「さて、皆を起こしにいくか」

藍「起きろ、お前達。朝餉が出来てるぞ」

マミ「ごはん!」カバッ

まどか「おはよう、藍ちゃん」

さやか「おはよ」ボー

藍「ん? ほむらはどうした?」

まどか「ほむらちゃん? ホントだ居ない」

藍《おはようほむら。朝餉が出来てる、戻って来てくれ》

ほむら《おはよう藍、今行くわ》

藍「声を掛けたから次期に来るだろう」

藍「準備が出来たらリビングに来てくれ、私は配膳をしておく」

一同「いただきます」

杏子「んー・・・うまい」パクパク

マミ「」バクバク モグモグ

さやか「相変わらず藍の料理は美味しいね」

まどか「私も頑張れば藍ちゃんみたいになれるかな?」


ほむら「・・・きっとなれるわよ」

藍「日々の積み重ねを怠らないことだ」

マミ「」モグモグ

藍「ところで、さやかの件はどうする?」

さやか「どうって?」

ほむら「あなたは今まで家にも帰らず行方知れずだったのよ」

ほむら「その間何処に居たのか、何をしていたのか聞かれるでしょうね」

さやか「あー・・・・・・」

藍「ずっと野宿してました、何て訳にはいかないしね」

ほむら「下手をすれば善からぬ噂が立つわ」

まどか「善からぬ噂って?」

藍「春を売って歩いていたってところか」

さやか「どうやって春を売るのよ?」

ほむら「そういう意味じゃ無いわよ」

杏子「さやかはホント馬鹿だなぁ」

さやか「あんたは解る訳?」

杏子「私も根無し草だったんだ、そういう奴らはみたことあるよ」

杏子「私はしたこと無いけどな」

藍「まぁ、そう言う事だ」

さやか「どういうことよ!?」

まどか「つまり、その・・・・・・それって・・・」

藍「ああ、皆まで言わなくて良い!」


マミ「」パクパク

杏子「いや、マミは何か喋れよ」

マミ「ごめんなさい、ご飯が美味しくてつい」

藍「良かったら私のも食べるか?」

マミ「頂くわ」バクバク

ほむら「マミは放って置きましょう」

ほむら「無難なところだと私たちの家に泊めていた事にするとかかしら」

藍「妥当だな。だがそれだと私たちは知っていて隠していたことになる」

杏子「ならあたしの家はどうだ? 荒れてるけど寝泊まり出来なくはない」

ほむら「野宿よりはましだけど、杏子の存在を隠したままだと難しいかしら?」

杏子「別に私と面識がある必要は無いだろ?」

杏子「寝泊まり出来そうだから使ったと言えば良い」

藍「そうだな、プチ家出をして廃教会で寝泊まりしていた事にするか」

ほむら「ええ、その線でいきましょう」

藍「次はさやかを見つけた経緯か」

藍「私たちがそこに行く理由が無いからな」

ほむら「そうね、さやかを探していたと言っても隣街の教会に行くのは些か不自然だわ」

まどか「なら、杏子ちゃんの教会が思い出の場所だった事にしたらどうかな?」

まどか「私とさやかちゃんは幼馴染だから、そう言うことを知っていてもおかしくないし」

藍「ふむ、まどかが心当たりを思いだし探しに行ったというところか」

ほむら「それでいきましょう。後は私達が着いていってフォローしていきましょう」


藍「そうだな、さやかだけでは少々不安だ」

さやか「なんだよー藍まで、さやかちゃん泣くぞ」

藍「さて、良い時間だな。学校へ行くとしよう」

さやか「無視!?」

さやか「あーもういいよ! さやかちゃん怒っちゃうもんねー! MK5だもんねー!」

杏子「古っ!」

ほむら「ほらほら、早く準備しないと間に合わないわよ」

さやか「まどかにキスする5秒前」ンー

ほむら「殺すわよ?」チャキ

さやか「や……やだなーほむらさん、それガチなやつじゃないですか」ゾッ

ほむら「貴女がくだらない事をするからよ」


藍「そうだな、さやかだけでは少々不安だ」

さやか「なんだよー藍まで、さやかちゃん泣くぞ」

藍「さて、良い時間だな。学校へ行くとしよう」

さやか「無視!?」

さやか「あーもういいよ! さやかちゃん怒っちゃうもんねー! MK5だもんねー!」

杏子「古っ!」

ほむら「ほらほら、早く準備しないと間に合わないわよ」

さやか「まどかにキスする5秒前」ンー

ほむら「殺すわよ?」チャキ

さやか「や……やだなーほむらさん、それガチなやつじゃないですか」ゾッ

ほむら「貴女がくだらない事をするからよ」


――学校


さやか「うぅ・・・凄い怒られた」

ほむら「あれくらいで済んだなら良い方でしょ」

藍「因みに、此から第二ラウンドだ」

さやか「え?」

藍「仁美や恭介が心配していたぞ、ちゃんと謝るように」

さやか「オーマイガッ」

まどか「皆さやかちゃんの事心配してたんだし、ちゃんと謝らないとダメだよ」

さやか「い、行ってくるよ」

藍「頑張れ!」

藍(まあ、昨日のうちに連絡は入れておいたんだけどね)

仁美「さやかさん!」

さやか「や、やっほー仁美。元気だった?」

仁美「馬鹿っ心配したんですのよ! 携帯にもお出になりませんし!」

さやか「あーうん、ごめん。心配かけたよね」

仁美「良いんです、こうして戻って来てくれたのですから」グスッ

さやか「仁美・・・・・・」

仁美「でも、ケジメは必要ですわよね」

さやか「仁美?」

仁美「歯ぁ食い縛りなさいですの」

さやか「ちょっ、まっ―――ふぐぅ」ドゴォ

さやか「腹パンだとぉ・・・」ガク

仁美「乙女の顔を殴るほど非情ではありませんので」

まどか「えぇー・・・・・・」

ほむら「腹パンも大して変わらないと思うけど」

藍「だか此で互いの蟠りはとれただろう。多分、きっと」

ほむら「自信がないにも程があるわね」

藍「まあ、なるようになるさ」

藍「よしさやか! 恭介の処にも行ってこい」

藍「勢い余ってちゅーしちゃっても今なら許されるぞ」

さやか「ななななな何言ってんのよあんたは///」

藍「あははー、ゆでダコみたい」

さやか「コロスっ///」ブン

藍「おっと」パシ

藍「まだ返事をしてないんだろう? ここでしてしまえば良いじゃないか」ボソボソ

さやか「なっなんであんたが知ってるのよ!?」ボソボソ

藍「まあ、相談されたし?」ボソ

さやか「なっ!? あ? ・・・馬鹿恭介めぇ」

藍「良い機会じゃないか」ボソボソ

さやか「皆いるなかで出来るわけ無いでしょ!」ボソ

ほむら(これがあの大妖怪と同一人物なんだから驚きよね)

藍「ま、からかうのはこれくらいにしておくか」

藍「ほら、行ってこい」ポン

さやか「うん・・・」ドキドキ

さやか「き、きょーすけ」

藍「緊張しすぎだろ」

ほむら「まあ、さやかだし」

恭介「さやか、無事でよかった・・・」

恭介「あまり心配掛けさせないでくれよ」

さやか「ごめん。もう大丈夫だから」

恭介「そっか・・・」

さやか「恭介・・・学校終わったら恭介の家行っても良い?」

恭介「うん、いいよ」

恭介「バイオリンも聞いてもらいたいし、話したいことが沢山あるんだ」

中沢「なんだ、遂にヤっちまうのか」

さやか「あ"ぁ"ん?」ギロ

中沢「怖っ! チンピラかよ」

藍「さやか、程々にな」

さやか「ら、藍まで何言ってんのさ」

藍「そうじゃない」

藍『自分の成すべき事を忘れるなよ』

さやか『! 解ってるよ』

藍『なら良いんだ』

藍「さて、授業の準備でもしますかね」

仁美「・・・藍さん、今日藍さんの家にお邪魔しても宜しいですか?」

藍「構わないよ」


――放課後、藍のマンション


藍「上がってくれ」

仁美「お邪魔しますわ」

杏子「おかえりー、邪魔してるぞ」

藍「杏子、来てたのか」

仁美「え・・・どちら様ですの?」

藍「私の友達だよ」

杏子「佐倉杏子だ、よろしくな」

仁美「志筑仁美ですわ、宜しくお願い致します」

仁美「ところで佐倉さんは、何故藍さんの家に?」

杏子「鍵を貰ってるからな」

仁美「合鍵ですって!?」ガーン

杏子「おい藍、なんかショック受けてるぞ」

藍「あー仁美、彼女にも事情があるんだ」

仁美「鍵・・・」

藍「うん?」

仁美「私にも鍵を頂けませんか?」

藍「まあ、別に良いけど・・・」

仁美「本当ですの?」パアァ

藍「あ、ああ」

杏子「大丈夫なのか?」ヒソ

藍「仁美にも協力してもらってるし、其れくらいはな」ヒソ

仁美「内緒話はやめてくださいまし!」

藍「す、すまない」

杏子「でも、仁美は魔法少女じゃないんだろ? 何の協力をするってんだ?」

藍「杏子!」

仁美「魔法少女・・・?」

杏子「まさか、話して無かったのか」

藍「・・・・・・・・・はぁ」

藍「其については話して無かったんだ。仁美が知ってるのは私の事」

杏子「あの事話したのか?」

仁美「藍さん、どういう事ですの?」

仁美「私たちだけの秘密だったんじゃ・・・」

藍「全部話すよ」ヤレヤレ


――少女説明中――


仁美「そんなことが・・・」

藍「まあ、そんな訳でやむを得ずね」

仁美「そう言うことなら仕方ありませんわ」

仁美「それに、今度からは堂々と・・・・・・」

藍「何を考えてるか手に取るように解るな」

杏子「えっ? どういう事?」

仁美「藍さん、早速尻尾に触らせていただいても宜しいですか?」

杏子「は?」

藍「ブレ無いなぁ仁美は」ドロン

杏子「うおっ!?」

杏子「急に戻るなよ! ビックリするだろ!」ドキドキ

藍「ごめんなさい、もうなれたかと思って」

杏子「慣れるほど見てないっての」

藍「仁美は一回で慣れてたわよ?」フワリ


仁美「あふぅ・・・・・・」トロン

杏子「それと一緒にしないでくれ」

仁美「杏子さんも触れば解りますわ」

杏子「遠慮しておくよ、色々と無くしそうだ」

藍「・・・・・・」フワリ

杏子「ひゃんっ!?」ビクゥ

杏子「なななななな何してんだお前///」

藍「杏子もどうかと思って」

杏子「いいよあたしは! まだ常識を無くしたくないし」

藍「私たちは常識とは程遠い存在よ?」

杏子「それでも人としての尊厳を無くしたくないの!」

藍「気が変わったらいつでも言って頂戴」

杏子「いいってのに」

藍「私が此処に居るのも後僅かだもの」

杏子仁美「!」

杏子「どう言う事だ!?」

藍「最初に言ったはずよ? 目的を果たしたら彼方に帰ると」

仁美「そんな・・・折角お友達になれたのに」

藍「ごめんなさい。でも此ればかりは仕方の無いことなのよ」

藍「私達はとうに幻想の存在になっているから」

藍「此方では生きられないの」

藍「狐に化かされたとでも思って、私の事は忘れて頂戴」

杏子「忘れろだぁ? ふざけんなっ! んなもん出来る訳ねぇだろ!」

杏子「私にとってお前は・・・お前はぁ・・・・・・」グッ

藍「杏子・・・」


仁美「杏子さん・・・」

藍「ありがとう杏子、その気持ちだけで十分よ」

杏子「ちくしょう・・・何でだよぉ藍・・・」グス

藍「今すぐ消える訳じゃないわ。それに、私達には成すべき事がある。そうでしょう?」

杏子「・・・ああ、今は目の前の壁を越えるのが先だ」

杏子「藍、一つ約束してくれ。黙って居なくならないって」

藍「解ったわ」

仁美「私とも同じ約束をしてくださいまし」

藍「ええ、違わずに」

藍「さ、この話は終わりだ」ドロン

藍「今ある時間を大切にしよう。お茶を淹れてくるよ」

ピンポーン

杏子「おぉ、上がりなよ」ピッ

ほむら[悪いわね]スタスタ

ガチャ

ほむら「お邪魔します」

ほむら(他に誰か来てるのかしら?)

仁美「暁美さん?」

ほむら「志筑さん・・・どうしてあなたが?」

藍「いらっしゃい、ほむら。コーヒーでいいかい?」

ほむら「ええ、大丈夫よ」

藍「ちょっと待ってて、お先に仁美と杏子」

杏子「サンキュ」ズズ

仁美「ありがとうございます」コク

仁美「私も非日常の世界に足を踏み入れましたの」


ほむら「まさか!?」

藍「大丈夫、彼女は魔法少女ではない」

藍「表側の協力者と言ったところだ」

ほむら「表側の・・・?」

藍「主にワルプルギスの際の避難関係でね」

ほむら「なるほどね、でも態々捲き込むことも事も無かったんじゃない?」

藍「戦いは兵士が居れば良いという訳ではない」

藍「バックアップする者も必要だ」

藍「私達の戦いは負けて良いものではない。なら最善を尽くすべきだろう」

ほむら「そうね……それに志筑さんが事情を知ってるのは大きいかもしれない」

仁美「どうしてですの」

ほむら「私たちが戦っている間まどかは無防備になる」

ほむら「そこをキュウべぇに付け込まれる可能性があるわ」

ほむら「志筑さんはキュウべぇを見れないでしょうけど、一緒にいれば牽制になるし、まどかの契約をを止める事も出来る」

杏子「そういった意味では事情を知る一般人が居るのはありがたいことだな」

藍「そうだな、防衛に手を割きたい所だが実際ワルプルギスで手一杯だろうし」

杏子「そこはあたしたちが頑張るしかないだろ」

ほむら「そうね。避難所へ使い魔一匹たりとも通すわけにはいかないわ」

藍「念の為、各避難場所には結界を張っておこう」

藍「細かい打合せは後日みんなが集まった時にするとしよう」

ほむら「そうね。今私達だけで話し合っても仕方ないわ」

杏子「ならこの話はこれで終わりだな」

杏子「藍、今日の菓子は何だい?」

藍「プリン・ア・ラ・モードだ。昨日のうちに作っておいたからすぐ食べれるよ」


藍「それじゃ改めてお茶にしようか」

杏子「んー! うまい」

仁美「本当においしいですわ」

ほむら「貴女達は……少しは遠慮しなさい」

杏子「別にいいだろ? うまいものを食べる事こそ人生の楽しみだ」

ほむら「貴女はそればかりね」

藍「良いじゃないか。否が応にも戦わなければならないんだ」

藍「息抜きをしないと戦う前に潰れてしまうぞ?」コトッ

仁美「ありがとうございます」コク

杏子「サンキュ」ズズ

ほむら「言いたいことは分かるけど……」

ほむら「コーヒー? てっきり紅茶が出てくるかと思ったわ」

藍「お茶しようと言ったからってお茶を飲むとは限らないだろう?」

藍「それとも、おコーヒーしようと言った方が良かったかい?」フフ

杏子「確かにそうだわな」ケラケラ

ほむら「そんな屁理屈……!」

仁美「まあまあ、良いではありませんか。ほむらさんがコーヒーをお好きだと分かっているからこそ出してくれたのでしょうし」

ほむら「釈然としないわ」


――ワルプルギスの夜襲来7日前


――ほむらのアパート

ほむら「ワルプルギスが出現するのはこの地点よ。確率は97%ね」

緒莉子「私の予知でもその場所で間違いないわ」

杏子「本当に便利な能力だよな」

藍「戦闘については私から話そう」

さやか「ちょっと待って、もしかして藍も戦うの?」

藍「そのつもりだが?」

さやか「いやいや、いくら魔女を倒せるって言っても藍は一般人じゃん」

ほむら「……は?」

さやか「何さその、何言ってんだこいつみたいな顔は?」

杏子「何言ってんだこいつ」

さやか「言わなくていいから!」

ほむら「貴女は何を言っているの?

キリカ「さやかは知らないんじゃなかったかい?」

杏子「あー…そう言えばさやかは知らなかったんだったか」

さやか「何の話よ」

仁美「こちらの話ですわ」

さやか「仁美まで? 何さ皆してのけ者にして」

さやか「独りぼっちは寂しいじゃんか」

マミ「大丈夫よ美樹さん。私も知らないわ」

さやか「それは全然大丈夫じゃないです」


藍「それは後で話すよ」

藍「今は会議に集中してくれ」

さやか「まあ…藍がそう言うなら」

藍「さて、ワルプルギス戦についてだが、初手にほむらの火器を使い山間部へ押し出す」

藍「此れには私の力を付与して有る為、ある程度のダメージは期待できる」

藍「その後は時間停止で仲間の支援と使い魔の掃討を頼む。緒莉子は後方で予知に専念して、仲間に随時情報を送ってくれ」

緒莉子「わかったわ」

藍「杏子、さやか、キリカは前衛を頼む。足場は私とマミで作る」

藍「キリカは速度低下をワルプルギスに掛けて前衛メンバーで休まずに攻撃してくれ」

キリカ「任せてくれ」

杏子「へへっ、腕が鳴るぜ」

さやか「ちょっと杏子、遊びじゃないんだよ!」

藍「さやか、落ち着け。其れくらいの気持ちで挑んでくれた方が良い」

藍「マミはセンターで支援攻撃と足場の作成をしてくれ」

藍「指揮は私が執る」

マミ「わかったわ」

藍「避難所には結界を張っておくから、人的被害は問題ないだろう」

藍「今日は此処までにしよう。決戦までは無理をせず休養を十分に取ってくれ」


――ワルプルギスの夜襲来5日前


――藍のマンション

藍「いらっしゃい、ほむら」

ほむら「お邪魔するわ」

杏子「おー、来たのかほむら」

ほむら「今日はその姿なのね」

仁美「いらっしゃいませ、ほむらさん」

ほむら「!?」

ほむら「ちょっ、何で尻尾に絡まってるのよ!」

仁美「ふかふかで気持ちいいんですのよ?」

杏子「あたしはもう気にしない事にしたよ」

藍「別に減る物じゃないし、気に入ってくれてるならそれで良いわ」

ほむら「ええー……」

藍「先ずはお茶にしましょう」

杏子「待ってました!」

藍「杏子はさっきエクレア食べたでしょうに」

杏子「その分動いてるから良いんだよ」

杏子「それに藍の作るものはみんな旨いからな、あたしだけ食べれないなんてごめんだよ」

仁美「確かに皆で食べた方が美味しいですわ」

藍「そう言われたら悪い気はしないけど……。元より其のつもりだったし」

藍「パンプキンケーキ~ココナッツクリーム仕立てよ」

杏子「かぼちゃのケーキか! なかなか珍しい物が出て来たな」


ほむら仁美「いただきます」

藍「どうぞ」


杏子「んー、うまい」

仁美「美味しいですわ」

ほむら「本当に何でも出来るわよね」

藍「此れくらい当然よ。全ては紫様の為だもの」

杏子「紫って誰?」

ほむら「確か藍の主だったかしら?」

藍「そうよ。あと杏子、様を付けなさい」

藍「私に対しては構わないけど、紫様に対する無礼は許さないわよ」ギロ

杏子「う……わかったからそんな睨むなよ」

仁美「その紫様という方はどういったお方なんですの?」

藍「妖怪の賢者と称されるお方でね、私など足元にも及ばないすごい方だよ」

杏子「妖怪の賢者ねぇ」

ほむら「藍よりすごいと言われても想像もつかないわね」

藍「紫様ならワルプルギスなど能力で簡単に消してしまえるでしょうね」

杏子「伝説の魔女を消すってどんな能力だよ……」

ほむら「そんな事が可能なの?」

藍「紫様はあらゆる境界を操ることが出来る」

藍「それを使えば魔女を人間に戻す事さえ容易いでしょうね」


ほむら「ワルプルギスさえ戻せると言うの?」

藍「尤も戻ったとしても、肉体が無い以上魂だけの存在となり直ぐに消滅するでしょうけど」

仁美「話を聞くだけで、私たちの理解の及ばない存在と言うのが感じられますわね」

杏子「でもよ、そんなに凄いんなら何でその紫様は来ないんだい?」

藍「私たちは幻想郷と言う結界に覆われた世界の中で暮らしているのだけど」

藍「紫様はその世界の監理者だから簡単には外の世界に行く訳にはいかないのよ」

藍「だから代わりに私が此処に来たと言う訳よ」

杏子「幻想郷ねえ」

藍「そう言う場所があると言う事だけ分かっていれば良いよ」

ほむら「私はそろそろ行くわね。ケーキ御馳走様」

藍「もう行くの?」

ほむら「対ワルプルギスの仕込みをするのよ」

杏子「あんまり無理はするなよ」

ほむら「平気よ」

仁美「またいらして下さい」

藍「夕餉はどうする?」

ほむら「それまでには戻るわ」


お詫び


途中から織莉子の名前が緒莉子になっていました。

大変申し訳ございませんでした。

以降の投下分は訂正しております。

残り僅かですが楽しんで頂ければ幸いです。

では投下します。

――ワルプルギスの夜襲来4日前


――美国邸

キリカ「もうすぐワルプルギスの夜が来るね」

キリカ「まだ未来は見えない?」

織莉子「ええ……」

織莉子「こんな事は初めてよ。まだ確定していないのか、私の能力の範疇を超えているのか……」

キリカ「どんな結末になろうと私は織莉子に着いて行くだけさ」

キリカ「それに、藍を信じるって決めたんだ。織莉子だってそうだろう?」

織莉子「そうね……藍さんは私達に奇跡を見せてくれた」

織莉子「彼女ならどんな不条理も覆せるかもしれない」

キリカ「だったら、私達もいつも通りにやるだけだよ」

キリカ「わからない事を考え続けても仕方ないさ」

キリカ「ワルプルギスとの戦いまでまだ時間が有るんだ、その内未来が見えるかもしれないだろう?」

織莉子「キリカの言う通りね」

織莉子「いつまでも考え込むなんて私らしくなかったわ」

織莉子「道が暗いのなら自ら明かりを灯すまでよ」

キリカ「それでこそ私の織莉子だよ」

織莉子「藍さんと出会って、私達の世界は大きく広がったわ」

キリカ「藍に出会わなければ、今頃倒錯的だったろうね」

織莉子「私達二人だけではここまで辿り着けなかったでしょう」

織莉子「でも、私達は二人ぼっちじゃない。共に道を照らしてくれる仲間がいる」

キリカ「なら闇を恐れる理由は無いだろう?」

織莉子「ええ、世界はこんなにも輝いているのだから」


――ワルプルギスの夜襲来2日前


――藍のマンション

藍「シャルロットだ。召し上がれ」

マミ「変わった形のケーキね、リボンがついてるなんて」

藍「女性の帽子に見立てた菓子なんだ」

藍「この皿が帽子のつばを表してるんだが……まあうんちくはこの辺にしよう」

さやか「本当に藍は何でも知ってるよね」

さやか「流石は私の御主人! いや、いっそ藍も私の嫁になるのだー!」

仁美「さやかさん? 上条君だけじゃ飽き足らず藍さんまで奪うと言うのですか?」ユラッ

さやか「ひ……仁美?」

杏子「受け取ると良い」ガシ

さやか「はっ!?」

藍「それが君の運命だ」ガシ

仁美「覚悟はよろしいですわね?」

さやか「マミさん! 助けて」

ほむら「その必要はないわ」

さやか「必要だよ! 大至急だよ!」

マミ「美樹さん、逝ってしまったのね。怨恨の理に導かれて」

さやか「まだ生きてます!」

仁美「往生なさい!」ドゴ

さやか「」

まどか「こんなのってないよ……あんまりだよ……」


キリカ「君たちには緊張感ってものが無いのかい?」

キリカ「もう直ぐワルプルギスとの戦いだと言うのに、こんなにのんびりしてて良いの?」

ほむら「遣るべき事はやったわ」

織莉子「キリカの気持ちは分かるけど、魔女の出現も無さそうだし今は休みましょう」

藍「平凡でありふれた1日こそ愛おしいものさ」

藍「私達はその平凡な日常を守る為に戦うんだ」

藍「だからこそ、今のこの時を大切にしよう」

ほむら「藍の言う通りよ。それにここならキュウべぇも来ないし寛げるわ」

杏子「いつの間にかすっかり溜まり場だもんな」

マミ「八雲さんの家というか、八雲さんの傍って居心地が良いものね」

ほむら(そう……藍の傍は不思議な安心感がある)

ほむら(気付けば皆が藍の周りに集まっている)

ほむら(だからこそ、皆その言葉を口に出来ないでいる)

ほむら(勝っても負けても、後2日でこの安らかな時間が永遠に失われてしまう事を……)


――ワルプルギスの夜襲来前日


――藍のマンション、昼

「見滝原市全域にて大雨洪水警報並びに竜巻警報が発令されてます。市民の皆様は速やかに指定された最寄りの避難所に避難をして下さい。繰り返します、見滝原市全域にて――――」

藍「いよいよ明日か」

杏子「1日前だってのにこれかよ」

さやか「まどか達は早く避難して」

恭介「本当にこれが魔女の仕業だって言うのかい?」

ほむら「こんなのはまだ序の口よ、ワルプルギスの夜が出現したらこれの比ではないわ」

仁美「藍さん……」

藍「大丈夫さ。それよりまどかの事を頼んだぞ! それと避難所には結界を張ってあるから絶対に外に出ないように」

まどか「さやかちゃん……無茶はしないでね」

さやか「大丈夫だって! 藍や皆も居るんだし、まどかは大船に乗ったつもりで待っててよ」

まどか(さやかちゃん……ちゃんと覚えてたんだね。逆に心配だよ……)

まどか「藍ちゃん、さやかちゃんを……皆を守ってあげて」

まどか「私には何も出来ないけど……皆を信じて待ってるから」

藍「ああ、任せろ! だから信じて待っていてくれ」



藍「仁美やまどか達は避難所に行ったか」

藍「取合えずお茶にしようか。今から気を張っていたら明日まで持たないぞ」

ほむら「そうね。戦い自体は明日だもの、休めるうちに休んでおきましょう」

杏子「お! 今日の菓子は何だ?」

藍「シュークリームだ。店ではよく見るが、作ってなかったんでね」

藍「さて、食べながらで良いから聞いてくれ。最終確認だ、まずは――――」


――藍のマンション、夜

藍「眠れないのか?」

ほむら「藍……」

ほむら「そうね、何度この夜を過ごしてきたか……」

ほむら「今度こそはと決意しても、不安で胸が潰されそうになるの」

ほむら「この時間軸は今までに無い最高の状況で挑むことが出来る」

ほむら「貴女が居て、杏子やマミもいる。あの織莉子達とさえ協力することが出来た」

ほむら「でも……それでも不安なの! 今回も駄目だったらどうしようって」

ほむら「こんな状況はきっともう来ないわ」

ほむら「もし今回もダメだったら、私はもう次に望みを繋ぐことは出来ない……」

ほむら「次の時間軸でも貴女が居るとは限らないわ……これだけの戦力を揃えるなんて無理よ」

ほむら「失敗するわけにはいかない。そう思えば思うほどに体が動かなくなる……」

藍「…………私はもともと紫様の命により此処へ来た」

ほむら「藍?」

藍「でも今は、自分の意志でこの世界を、仲間を救いたいと思う」

藍「大丈夫。私達は強いよ、誰が相手だろうと負けはしない」

ほむら「勝てるかしら……」

藍「勝さ! 其れにほむらに見せてやりたいのさ」

ほむら「見せるって……何を?」

藍「まだ見ぬ明日をさ」

ほむら「気障ったらしい言葉ね」フフ

藍「こういう方が私達らしいだろう?」クス


藍「其れより……まどかに話さなくて良かったのか?」

ほむら「良いのよ、今更こんな話をされたってまどかだって困るだけだわ」

ほむら「あの子は優しすぎるから……余計な気遣いをさせるだけよ」

藍「ほむらがそれで良いなら私も何も言わないさ」

藍「其れに、言おうと思えば此れからいくらでも言う事は出来るんだ」

藍「いつか話してやると良い。まどかなら受け止めてくれるさ」

ほむら「そうね…….いつか話すことにするわ」

ほむら「……ねえ藍、ここに残る事は出来ないの?」

ほむら「言葉に出さなくても分かるわ。皆貴女に居て欲しいと思ってる」

ほむら「他愛もない話をして、馬鹿やって、そんなありふれた......だけど幸せな時間をこれからも過ごして行きたいの」

藍「すまない……其ればかりは聞けないお願いだ」

藍「初めから異変を解決するまでと決めているんだ」

藍「それに、私は紫様の式神だ。何より私自身が紫様の為に生きたいんだ」

ほむら「………また会えるかしら?」

藍「君が望むなら……」

藍「例え遠く離れていてもこの想いは皆と共にある」

藍「其の繋がりが私達を引き寄せるだろうさ」


――ワルプルギスの夜襲来日


藍「魔力が高まっているわね。そろそろかしら?」

さやか「!」

杏子「何だこれ、サーカス? パレード?」

ほむら「そいつらは無視して良いわ。来るわよ」




マミ「絶対に皆で生きて帰りましょう」



杏子「へへっ、一番槍は私が貰うぜ」



織莉子「未来が見えないなら自らの手で掴み取るまで」



キリカ「さあ、織莉子の為に死んでくれ」



藍「準備は良いわね? 手筈通りに行くわよ」

ワルプルギスの夜「アハハハ アハハハハハ」


杏子「でけぇ……伝説と言われるだけはあるな」

さやか「ほむらは今迄あんなのと戦って来たの?」

織莉子「話し以上ね……」

キリカ「これは一筋縄ではいかなそうだね」

マミ「勝てる……かしら」

藍(不味いわね、皆奴の雰囲気にのまれている)

藍「臆する事はないわ、例え一人では勝てなくても私達が揃えば敵ではないわ」

藍「ほむら!」

ほむら「ええ、街から離すわ」カチ ズドドドド

さやか「おお……ハデだねぇ」

杏子「戦争でも始めるつもりかこいつは?」

ほむら「喰らいなさい」バシュバシュ 

マミ「迫撃砲に対空ミサイル!? そんな物まで用意していたなんて……」

ワルプルギスの夜「アハハ ウフフフ アハハハハハ」ズドドド

藍「追うわよ。振り落とされないように捕まってて」シュルシュル

織莉子「尻尾に包まって移動って何か変な感じね」

キリカ「布団にして寝たら気持ちよさそうだね」

さやか「はふぅ……癖になりそう」

ほむら「気を引き締めなさい! まだ始まったばかりよ」

杏子「わかってるよ。それよりこの後どうするんだい?」

杏子「マミの奴が足場を作るんだろう」

藍「まあ見てなさい」

藍「よし、予定通り山間部まで押し出せたわね」

藍「来い! 十二天将!!」


藍「織莉子は騰蛇に乗って後方で予知に専念を」

藍「マミは朱雀の上に。他の式にリボンを繋いで足場を作って頂戴」

マミ織莉子「わかったわ」

杏子「おお、式神って奴か!」

キリカ「まるで怪獣映画だね」

さやか「あれも私と同じ式神なのか……」

さやか「あれらと比べると私の存在って……」

藍「さやかはさやかよ。比べるようなことではないわ」ポン

さやか「藍……そうだよね」

杏子「どうしたさやか。慰めてもらわなきゃ満足に戦えないのか?」

さやか「なんですってぇ! 見てなさいよ杏子」

藍「天后、玄武! 前に出て火を防げ」

藍「他は散開してワルプルギスを攻撃しなさい」

織莉子《皆さん、ワルプルギスの使い魔が来ます》

藍《了解》

藍「聞こえたわね! ほむらは式神と連携して使い魔の撃破をして!」

ほむら「わかったわ」

藍「前衛の三人はワルプルギスに攻撃をお願い」

杏子「よっしゃ! いくぜぇ!」

さやか「ちょっと杏子。前に出過ぎないで」

キリカ「二人とも、もう少し連携を意識してくれないか?」

藍「マミは足場の維持とほむらの援護をして頂戴」

マミ「任せて!」


――避難所


まどか「ちょっとトイレに行ってくるね」



まどか「さやかちゃん、藍ちゃん……」

仁美「まどかさん、藍さん達なら大丈夫ですわ」

仁美「必ず勝って帰ってきてくださいます。だから信じて待ちましょう」

まどか「仁美ちゃん……でも外は凄い嵐だし、居ても立ってもいられなくて……」

キュウべぇ「そんなに心配ならその目で見届けてあげると良いよ」

まどか「キュウべぇ……」

キュウべぇ「相手はあのワルプルギスの夜だ」

キュウべぇ「八雲藍が居るとはいえ、勝ち目は低いだろうね」

キュウべぇ「でも君なら別だ。まどかが魔法少女に成りさえすればどんな魔女も一撃で倒すことが出来るだろうさ」

まどか「私は……」

キュウべぇ「迷うと良い。君が迷えば迷うほど彼女達の生存率は下がっていく」

キュウべぇ「その時僕は君の前に彼女達の亡骸を並べるとしよう」

キュウべぇ「そうすれば流石の君でも契約する気になるだろうさ」

キュウべぇ「もっとも、それを見ても契約しないのであれば」

キュウべぇ「君は生き残った人間達から臆病者の人でなしとして蔑まれるだろう」

仁美「さっきから黙って聞いていれば言いたい放題言ってくれますのね」

まどか「仁美ちゃん!?」

キュウべぇ「驚いた、君は僕が見えているのかい?」


まどかはあれで意外と頑固だけど……流されやすいところもあるわ。

私の力の一部を貴女に渡すわ。彼女の事、お願いね。



仁美「藍さん達は必ず勝ちますわ」

仁美「私達にはあなたの力など必要ありません」

仁美「まどかさん、信じると決めたのなら何故それを貫き通さないのですか?」

仁美「貴女がするべき事は契約ではありません。今戦っている人たちを信じて待つことです」

仁美「藍さんは大丈夫と仰っていました。あの方がそう言うのなら皆無事に帰ってきますわ」

仁美「そして………帰ってきた皆さんを温かく迎えましょう」

まどか「仁美ちゃん……うん。もう私は迷わない」

まどか「皆を信じて待つよ」

仁美「はい。独りで待つのが辛いのでしたら私が傍にいますわ」

キュウべぇ「やれやれ、僕には理解出来ないよ」

キュウべぇ「人間の思考と言うのは非合理的過ぎる」

キュウべぇ「希望的観測をするのは君たちの勝手だけど」

キュウべぇ「その希望が砕かれたとき人間は新しい希望を求めるものだ」

キュウべぇ「それを目の前に用意されたとき、君達はそれを掴まずにはいられないだろうね」

キュウべぇ「だから僕は待つとしよう。君が僕にお願いをして来る時をね」

仁美「待つだけ無駄ですわ。そんな時は永遠に来ませんもの」


キュウべぇ「君と話をしていても無駄のようだね。まどか、契約したくなったらいつでも呼んでくれ」

キュウべぇ「僕の方は準備は出来ているからね」トコトコ

仁美「とっと失せなさいですわ」ドカッ

キュウべぇ「きゅぶっ」

まどか「ひ……仁美ちゃん、何も蹴飛ばさなくても」

仁美「あれくらい優しい方ですわ」

仁美「まどかさん、もっと自分を強く持って下さいまし」

仁美「他人を思いやる心は素晴らしいものですが、簡単に他人に流され過ぎですわ」

仁美「私達は藍さんと出会い少なからず変わってきました」

仁美「でもまどかさん、貴女だけは変わっていませんわ」

仁美「貴女のその頑なさは長所でもあり最大の短所でもあります」

仁美「そして肝心なところで人に流されやすい」

仁美「先ほども自分の意志で契約をしようとしたお積もりでしょうけど」

仁美「明かにキュウべぇに流されてましたわ」

仁美「そしてその頑なさ故にそれが自分の意志だと信じて疑わない」

仁美「それが最善だと信じて疑わない」

仁美「まどかさん、貴女はいつか取り返しのつかない選択肢をしてしまうかもしれませんわ」

まどか「仁美ちゃん……何を言って……」

まどか「私はそんな……」

仁美(藍さんから聞いたほむらさんの過去の苦労も偲ばれますわね)


取合えずここまで

また後で投下します。

杏子「ちっ……固ぇな」

キリカ「もう随分攻撃を当ててるけど効いている感じがしないね」

さやか「並みの魔女なら一撃で倒せるのに!」

ほむら「ダメージは与えられているわ。このまま攻撃を続けて!」

藍「とは言えかなりの耐久力ね。伝説と言われるだけはあるわ」

杏子「効いてるってんならこのまま攻め続けるだけだ」

織莉子《皆さん気を付けて、新たな使い魔が出て来るわ》

織莉子《! 巴さんそこから離れて! 木が飛んでくるわ》

マミ「!」

マミ「避けて!」

藍「朱雀! 防げ!」

朱雀「……!」

朱雀「平気か、娘よ」

マミ「ええ……ってあなた喋れたの?」

朱雀「今は戦いに集中しろ」

マミ「そ、そうね」

さやか「何あれ……風で飛んだにしては軌道が不自然だった」

杏子「念力ってやつか?」

さやか《確かビルを飛ばして来たとか言ってたよね》

ほむら《ビルが無いから油断していたわ。気を引き締めていきましょう》

ワルプルギスの夜「アハハ ウフフフ アハハハハ」

杏子「ちっ馬鹿みたいに嗤いがって……今に笑えなくしてやる」

杏子「オラァ!」

ほむら《くっ使い魔の数が多い……杏子! 前に出過ぎないで!》


キリカ「木がリボンを……杏子!」

杏子「足場が! ちぃ……届け!」ブン

さやか「槍を歯車に刺すとか無茶するなぁ」ホッ

キリカ「敵も馬鹿じゃぁないってことか。そう来なくちゃ面白くないね」

ほむら《油断しないで! 使い魔が向かってるわ》ズドドドドド

藍「玄武は杏子を拾ってさやか達と合流」

藍「各員、式神と連携して攻撃の続行をして」



藍《! 下がれ》

織莉子《! キリカ、皆下がって》

キリカ《織莉子?》

ほむら《これは……結界!?》

杏子《結界だと!? 聞いてないぞ》

さやか「駄目、間に合わないっ」

藍「遅かったか……」

マミ「そんな……美樹さん…佐倉さん…呉さん……」

藍「マミ、落ち着いて。まだ結界に囚われただけよ」

織莉子「ほむらさん、ワルプルギスの夜は結界を張らないはずでは?」

織莉子「この場合はどうすれば? それに、中の三人は……」

ほむら「分からないわ……今までこんな事は無かったもの」

藍(中がどうなっているか分からない以上、三人を放置するのは不味いわね)

藍(かと言ってワルプルギスをこのままにして行く訳にもいかない……)

藍(なら此方も結界に捕らえてあげるわ)


藍「聞いて、今から奴を結界に閉じ込めるわ」

藍「その間に私達も中に突入し三人を救出、攻撃を再開するわ」

藍「結界内ではあくまでも救出に専念して頂戴」

マミ「わかったわ」

織莉子「大丈夫なの?」

藍「私の結界が破られる事は無いわ。問題は奴の結界の方よ」

ほむら「そうね……流石に私も初めての事だし用心していきましょう」

藍「行くわよ!」



――【舞台装置の魔女結界内】


ほむら「ここがワルプルギスの結界内……」

織莉子「奥の方に扉が見えるわね」

マミ「取り敢えずこの通路を進むしかなさそうね」

藍「彼女たちが心配だわ。早く行きましょう」

ほむら「開けるわよ?」ギイ

藍「ええ、お願い」

織莉子「あそこに誰かいるわ!」

ほむら「暗くてよく見えないわね……」

マミ「美樹さん? 佐倉さん!?」タッ

藍「待ってマミ! 彼女達じゃないわ」

マミ「女の子? どうしてこんなところに?」

織莉子「巴さん!!」グイッ

藍「魔力反応!? 二人とも下がって!」

女の子「………」バキッメキメキ

マミ「あ…あぁ……」

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