マリア「ねえ翼、前から気になってたけど…」 (26)

~ ある日のこと ~

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マリア「んん~…」

マリア「…んん~?」

マリア「………ん~………」

翼「どうした、深刻そうな顔をして」

マリア「ああ…翼」

翼「何か悩み事か?」

マリア「悩み事…といえば、そうかもしれないわね」

翼「なんだ、随分奥歯に物の挟まった言いようだな」

マリア「お、奥歯…?」

マリア「えっと、それどういう意味?」

翼「含みを残した言い方だと言ったんだ」

マリア「あ、ああ…そう」

翼「改めて聞くが、悩み事でもあるのか?」

マリア「ええ、ちょっと歌詞を考えていたんだけど…」

翼「ほう、歌詞を…」

マリア「今度の新曲、作詞に挑戦してみたいなって思ってて」

マリア「漠然としたイメージはあるんだけど、それを歌詞として文字に起こすのが難しくて…」

翼「ふむ、なるほどな」

マリア「ねえ翼、あなた確か自分で作詞した曲、何曲かあったわよね?」

翼「ああ、そうだな」

翼「しかし何分専門分野ではない故、不肖な出来ではあるのだがな」

マリア「…ん?えっと…」

翼「やはり餅は餅屋。私は歌を歌うことに専念した方が…」

マリア「ちょっとストップ…ストップ!」

翼「な、なんだ急に…大きな声を出して」

マリア「…………」

マリア「…えーっと、なんていうかその…」

マリア「あのちょっと…さっきから翼、何を言っているの?」

翼「な…何をとは?」

マリア「いや…だからね?」

マリア「さっきから翼の言ってること、全然意味が分からないんだけど…」

翼「な、なんだと?人が真面目に答えているというのに」

マリア「ご、ごめんなさい…でも…でもね?」

マリア「フショーとか、モチがどうのこうのとか、どういう意味なのかよく分からなくて…」

翼「な、なに…?」

マリア「…というか翼、前から気になっていたんだけど」

翼「な、なんだ?」

マリア「えっと…その喋り方はなんていうかその~…」

マリア(…あれ、なんて言えばいいんだろう…)

翼「私の喋り方がなんだ?」

マリア「え、え~っと、その~…」

マリア「………か………」

翼「……か?」

マリア「……か、可愛く…ない…?」

翼「え………」

マリア「……………」

翼「……………」

マリア(あ…!なんか心なしか落ち込んでるように見える…!)

マリア「あ、あのね!翼!」

マリア「私は好きよ!?翼の話し方!」

翼「え…?」

マリア「なんていうか、日本古来の言い回しが趣きあってカッコいいし…」

マリア「その~…時代劇に出てくる、サムライ?みたいよね~…」

翼「……そうか」

マリア(…な、なんとか誤魔化せたかな?)

翼「…………」

翼「…私は…可愛くない…」

マリア(……あちゃ~……)

【その後】


マリア「ねえ翼、そんなに拗ねなくても…」

翼「…拗ねてない」

マリア(す、拗ねてるわねぇ…)

マリア「…というか、ちょっと意外だったかも」

翼「…何が?」

マリア「私がイメージしてた風鳴翼は、可愛いだとか可愛くないだとか、そんなものは一切気にしない人だと思ってた」

翼「なによそれ…」

翼「…私だって、その…」

マリア「ん?」

翼「…私だって、一応女だし…」

翼「…可愛いって言われた方が…嬉しいし…」

マリア(…あれ、可愛い…)

マリア「…っていうか、翼!」

翼「な、なに?」

マリア「なんかさっきから普通に話してない?」

翼「普通…?」

マリア「ええ、普通…」

マリア「なんていうか、普通の女の子っぽい喋り方してるわ」

翼「そ、そう…?」

マリア(…うーん、それにしてもなんで急に…?)

翼「……それじゃあ、そろそろ私は行くぞ」

マリア「あ、ええ…」

翼「歌詞の件についてだが、あまり鯱張って考えすぎないようにな」

マリア「…しゃ、しゃちほこ?」

マリア(ま、また変な喋り方に戻ってるし…)


~ 後日 ~


マリア「…と、いうことがあったのだけれど」

マリア「翼の口調が変なのは…まあ今更だから良いとして」

マリア「なんか、たま~に普通の女の子っぽい話し方する時があるのよね」

マリア「あれは一体、どういうことなのかしら…」

響「そうですねぇ~…翼さん研究の第一人者たる私の口から言わせていただくとですねぇ~…」

クリス「風鳴先輩が防人モードで喋ってないんなら、心を許してる証だよ」

マリア「え?」

響「ああ!クリスちゃん、私に言わせてよ~!」

クリス「あ~、うっせ…」

マリア「えっと…どういうことかしら?」

響「つまりですね、翼さんはデレた相手にはたま~に警戒心が溶けて、つい普通に話しちゃうときがあるんですよ」

マリア「デレ…えっ?」

響「翼さんが標準語に戻るっていうなら、マリアさん翼さんから信頼されてるんですよ~」

マリア「は、はぁ…?」

クリス「っけ、お熱いこった…」

響「私も前に何度か標準語モードの翼さんと話したことあるんですよ~」

響「いや~、やっぱり拳と剣で語り合った仲だからねぇ…熱い絆で繋がってるんだねぇ…!」

クリス「…あほ」

マリア「…信頼…」

マリア(…翼が、私を…?)


~ 更に後日 ~


マリア「…信頼、ねえ」

マリア(…一度は殺し合った者同士が、信頼…)

マリア(…確かに、初めて出会った頃に比べれば、翼は私に心を許してる…かもしれない)

マリア(でもそれはあくまで"信用"であって、"信頼"とは違う筈…)

マリア(翼は…私のこと…)

翼「む、マリアか」

マリア「あ…翼」

翼「作詞作業の首尾はどうだ?」

マリア「おかげさまで、あの後すぐに書けたわ」

マリア「翼と話して、良い気分転換になったのかもね」

翼「そうか、それは重畳だな」

マリア「…ふふっ」

翼「なんだ?おかしな事でも言ったか」

マリア「いえ、翼は相変わらずね」

翼「…何がだ?」

マリア「別に、なんでもない」

翼「むう…なんだというのだ」

マリア「防人の剣は、今日も今日とて可愛いですこと」

翼「……………」

マリア(…あれ、また拗ねちゃったかしら?)

翼「…何を言っているんだ」

翼「私なんかより、マリアの方がよっぽど女性らしくて可愛いだろう」

マリア「え……」

マリア「……………」

翼「…ん?どうした、黙ったりして」

マリア「……く…ない……」



マリア「…この剣、やっぱり可愛くない…」

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